物語の概要
本作はファンタジー×異世界転生ライトノベルである。やり込みゲーマー・召喚士アレンが、学園都市で仲間と共に“ダンジョン攻略”に挑む内容である。アレンは学友クレナやドゴラと再会し、僧侶候補の少年キールをスカウト。混在する学園生活とダンジョン攻略、さらに学園武術大会における英雄ヘルミオスとの駆け引き、書き下ろし「ヘルミオス回想編」や「商人ペロムスの奮闘」なども収録されている
主要キャラクター
- アレン:やり込みゲーマーかつ召喚士。学園都市での攻略と仲間集めに奔走する主人公。
- キール:僧侶として参加する少年。謎めいた「グランヴェル家の秘密」を抱えている。
- クレナ/ドゴラ:開拓村から来た仲間たち。再集結し、パーティーに貢献する。
- ヘルミオス:王国の大英雄で「人類の希望」と呼ばれる勇者。アレンに興味を示し、「回想編」では過去が明かされる。
- ペロムス:幼馴染で商人。書き下ろしエピソードに登場し、その奮闘ぶりが描かれる。
物語の特徴
本作は、ただの“お手軽チート”ではなく、本格的なダンジョン攻略とチーム構成に重点を置く点が特徴である。学園という制限空間での攻略や、学園武術大会、英雄たちとの交流・対峙、そして過去エピソードの挿入といった構成は、従来の異世界転生ものと一線を画する。リアルなレベリング感と戦術構築、書き下ろしエピソードによるキャラ掘り下げが、読者に強い没入感と満足感を与える。
書籍情報
ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 3
著者:ハム男 氏
イラスト:藻 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2021年3月15日
ISBN:9784803016222
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あらすじ・内容
パーティー名は「廃ゲーマー」!?
学園都市編、スタート!!
グランヴェル家の従僕を卒業し、セシルとともに学園へと入学したアレン。
開拓村からやってきたクレナやドゴラとも再開し、新たな生活をスタートさせる。
アレンを中心にパーティーを組んだ4人は、打倒魔王を目標に、学園都市にあるダンジョンを積極的に攻略していく。
ヒーラーを求め、学園で出会った「僧侶」の才能を持つ少年、キールをパーティーに誘うアレンだが、彼には「グランヴェル家」に関連する、ある「秘密」があり……。
一方学園では、「学園武術大会」が開催され、クレナが参加することとなった。
優勝者は王国の大英雄、剣聖ドベルグとの試合が行われる予定だが……。
そして「人類の希望」と呼ばれる勇者ヘルミオスは、入学試験で出会ったアレンに興味を持つが、実力を見せる気のないアレンに対し、ある条件を提示する。
感想
今巻は、アレンたちがグランヴェル家の従僕を卒業し、学園都市での生活を始める物語である。開拓村で共に過ごしたクレナやドゴラとの再会もあり、新たな仲間と共に魔王討伐を目指す日々が描かれている。しかし、読み進めるうちに、いくつかの点が気になった。
まず、アレンたちの成長速度が異常に速い点だ。学園に入学して間もないにもかかわらず、レベルがあっという間にカンストしてしまう。もちろん、主人公たちが並外れた才能を持っていることは理解できる。しかし、カンスト後も魔王軍に太刀打ちできないとなると、ゲームバランスが崩壊しているように感じてしまう。まるで、ヘルモードどころか、魔王軍だけがチートを使っているかのようだ。アレンが限界突破しても、一人ではどうにもならない状況は、今後の展開に不安を抱かせる。
また、セシルの存在感が薄れてしまったのも残念だ。初期の頃は重要な役割を担っていた彼女が、今巻ではその他大勢に埋もれてしまっているように感じる。彼女の今後の活躍に期待したいところだ。
一方で、学園武術大会でのクレナの活躍や、勇者ヘルミオスとの対戦は見応えがあった。特に、ヘルミオスとの対戦は、アレンの底知れぬ実力を垣間見ることができ、今後の展開への期待を高めてくれる。まだ成長途中であるにもかかわらず、あれほどの力を持っているとは驚きだ。
学園生活を満喫し、ノーマルモードの限界まで鍛え上げるアレンたち。残る課題は装備とプレイヤースキル。影で暗躍する王太子の存在は気になるものの、留学生のエルフやドワーフも加わり、一見すると順風満帆な日々を送っているように見える。しかし、物語はそう簡単には終わらない。
今巻を読み終えて、今後の展開に対する期待と不安が入り混じった。アレンたちはこの絶望的な状況をどのように打破していくのだろうか。そして、セシルは再び輝きを取り戻せるのだろうか。次巻が待ち遠しい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第一話 学園での入学試験
グランヴェル家での再会と学園都市への出発
アレンはグランヴェル家での従僕を辞めた後も、学園入学まで庭師の仕事を手伝っていた。ある日、学園受験のためにクレナとドゴラがグランヴェル家に到着し、彼らは子爵の厚意で館に滞在することとなった。ペロムスは商業の道を選び、別の進路に進んだ。アレンは村への帰省時に、従僕を辞したことや家族への支援について報告し、両親から仕送りとして金貨を受け取ったが、逆に驚かせる結果となった。
剣聖クレナとセシルの初対面
館に到着したクレナは子爵やセシルと初めて対面した。剣聖としての地位に物怖じしない態度で接するクレナに、セシルは戸惑いを見せた。アレンは将来の魔王軍との戦いを見据え、セシルとクレナの連携を意識していた。配属先は王家でも不透明であり、学園での3年間を通じて戦いの準備を進める必要があった。晩餐時、クレナの豪快な食事姿に周囲は驚かされたが、アレンはいつも通り給仕に徹していた。
学園都市への到着と鑑定の儀
アレンたちは魔導船と魔導列車を乗り継ぎ、ラターシュ王国の学園都市に到着した。数万人規模の受験生が集まり、入学前に才能と能力値を確認する「鑑定の儀」が行われた。ドゴラは斧使いとして、セシルは魔導士として、クレナは剣聖として認定され、いずれも合格した。アレンは召喚士と鑑定されたが、全能力値がEで不合格とされた。
ヘルミオスとの邂逅と真の能力の開示
その場に居合わせた勇者ヘルミオスと学園長がアレンの異常な鑑定結果に関心を示し、ヘルミオスの鑑定によって高い知力や攻撃力などが明かされた。アレンは自身の才能を見せる条件として、ヘルミオスにも鑑定を要求し、彼の能力値を記録したうえで、自らの召喚スキルを披露した。召喚獣の登場によりアレンは正式に合格とされた。
試験内容と合否結果
学科試験では算数・国語・王国史などの筆記試験に加え、状況判断を問う論述問題も課された。翌日には合否が発表され、アレンはS判定、セシルはA、ドゴラはB、クレナはCで合格となった。試験に合格した者は寮か通学かを選び、制服の受け取りや冒険者証の取得など入学準備が説明された。
新生活への第一歩
アレンは4人での共同生活を提案し、まず冒険者証の取得を優先することとした。こうして彼らは、学園生活とその先にある魔王軍との戦いに向けて、学園都市での新たな一歩を踏み出したのである。
第二話冒険者ギルドでの情報収集
冒険者ギルドでの登録と情報収集
学園の合格後、アレンたちは冒険者ギルドに向かい、学生としての登録手続きを行った。水晶による個人認証と羊皮紙への記入ののち、冒険者に関する基礎的な説明を受けた。冒険者は王国から独立した存在で、全員Eランクから開始する。依頼の種類には通常・緊急・指名の3種があり、Cランク以上になると緊急および指名依頼が受けられる。
ダンジョンの情報と装備品探索
学園都市には20のダンジョンが存在し、C級からA級までに分類されている。C級はE~Cランクの魔獣が出現し、難易度も比較的低い。アレンは3年間のうちに「魔力回復リング」を手に入れることを最大目標としており、ダンジョンでの入手を想定していた。過去に「体力回復リング」がA級ダンジョンで発見された事例もあり、その存在可能性を信じていた。
魔石収集の依頼とパーティー結成
ダンジョンでは魔獣を倒すことで魔石のみが得られ、それ以外の素材は郊外での狩猟により入手する必要がある。アレンは魔力回復リングの発見とスキル成長のために、Dランクの魔石を最低200万個集める計画を立て、1万個分の依頼を即座に発注した。また、パーティー名「廃ゲーマー」で登録を行い、拠点とする住居の確保に向けて動き出す。
新たな拠点の確保と仲間への説明
翌日、アレンたちは不動産ギルドで駅近かつ複数のダンジョンが近接する物件を探し、20人規模の大きな一軒家を借りることに決定した。その後、新居での夕食中にアレンは3年間の目標として魔王軍との戦いへの参加を明かし、セシルやクレナ、ドゴラと共に戦う意志を確認した。
召喚士の真実と100人分の試練
アレンは自らが召喚士であること、100人分の試練を課されており、それを乗り越えるために魔石と魔力回復リングが不可欠であると仲間たちに明かした。魔導書に仲間のステータスが表示されることも確認され、今後は僧侶を加えることで回復面を強化する方針が示された。こうしてアレンたちは、戦いに備えての体制を整え、明確な目的の下で学園生活を開始することとなった。
第三話学園生活とダンジョン攻略の始まり
学園生活の始まりと担任カルロバとの出会い
アレンたちは学園での生活を開始し、週4日は授業、週末2日はダンジョン攻略という日課を定めた。初日、担任として紹介されたのは剣豪の才能を持つ冒険者ギルド支部長カルロバであった。彼は剣聖クレナの存在により、学園へ派遣された経緯を説明し、才能別の訓練や落第制度、身分にかかわらない敬称廃止などを告げた。アレンは歴代最高得点で注目を集め、同時に他の生徒に勉強を教える役割も担うこととなった。
授業と才能別訓練、週末のダンジョン準備
入学式を経て、アレンたちは講義として魔獣研究などの授業を受け、午後は才能別の訓練に参加した。召喚士の授業が存在しないため、アレンは他の授業を見学する形を取った。週末にはダンジョン攻略を実施する方針が固まり、初期装備の購入費用はアレンが負担し、ダンジョンでの収益は魔石購入に充てることで一致した。
初めてのダンジョン攻略と管理システムとの対話
初回のダンジョンでは、運用管理システム「C205」と対話し、異次元へ転移して迷宮を探索する形式であることを理解した。装備や野営道具は魔導書に収納済みで、軽装での進行が可能であった。迷宮は小部屋と通路で構成され、最短経路での攻略を目指し、宝箱は危険回避のため無視する方針を取った。
ダンジョンでのステータス管理とスキル考察
アレンはパーティーメンバーのステータス確認とスキルの傾向分析を進めた。セシルはスキル習得に成功し、スライムを倒して初の経験値を獲得した。一方、クレナとドゴラは未だスキル発動の実感を得られておらず、実技演習での習得を目指していた。ダンジョンでは素材は残らず魔石のみが入手でき、魔石は鳥型召喚獣によって回収された。
階層ごとの構造と帰還方法の確認
1階層を抜けて2階層に到達した際、ダンジョン記録の維持方法と別部屋からの侵入による記録消滅のリスクを確認した。実験により、同一パーティーで同じ部屋を利用すれば継続探索が可能と分かり、以降は複数の召喚獣を各階層に配置して魔石回収を並行して行った。
最下層ボス戦と召喚獣の戦力披露
5回目の探索で6階層に到達し、ゴブリンキングとその配下が待ち受けるボス部屋に突入した。セシルの提案により、アレンの召喚獣による戦闘が行われ、強化スキルにより大幅に能力が上昇した獣D召喚獣が魔獣を圧倒した。戦闘後、魔石を回収し、討伐報酬として鋼鉄の剣を獲得した。
初ダンジョン攻略と今後の展望
ボス討伐後、各階層ごとの管理システムの特性や1日1回の挑戦制限などを確認した。C級ダンジョンを1つ攻略したことで、今後のB級進出に向けて足掛かりを得たアレンたちは、より高難度のダンジョンと有用なアイテム獲得を目指して活動を続けていくこととなった。
第四話 学園の課題と野良募集
最下層ボス周回と生活方針の確立
アレンたちはC級ダンジョンの攻略を終え、Dランク冒険者となった。学園のある日も最下層ボスの討伐を日課とし、報酬を活動資金に充てる体制を整えた。拠点近隣には6つのダンジョンが存在し、順次ノルマに加える方針である。生活費や学費に加え、拠点維持の手間も課題となり、セシルからは家事労働者の雇用が提案されたが、判断は保留された。
学園での授業とダンジョン課題の発表
5月に入り、アレンは授業と並行して魔力の実の生成を行い、冒険と学習の両立を続けた。ある日、担任カルロバより夏休みの課題として「ダンジョン攻略」が課され、未達成者は退学となる旨が告げられた。対象は1年生限定、最大8人編成で他学年・外部協力は禁止。前年の死亡例も伝えられ、生徒たちは衝撃を受けた。
野良募集と僧侶探しの始動
課題の発表により教室内は混乱し、生徒同士で即席の仲間募集が始まった。アレンも僧侶の仲間を募るべく、大声で募集をかけ、自身の冒険者ランクと実績を提示した。しかし応募者は現れず、教会による保護や卒業後の安定性から、学園に僧侶が少ないことが背景にあった。
新たな仲間キールの加入
昼休みにキールという金髪の生徒がアレンのもとを訪れ、僧侶としての参加を希望した。彼は教会で回復魔法を学び、金銭目的でアレンの募集に応じた。試験的にダンジョンに同行し、実力と性格を確認することとなった。
ダンジョン攻略と実力の確認
C級ダンジョンでの共闘では、キールは回復魔法を問題なく行使し、実力を示した。最下層ボス討伐後、銀箱からミスリル製の盾を獲得し、金貨15枚で売却した収益を均等に分配。その報酬を得たことで、キールは正式にパーティー加入を申し出た。
キール加入と今後の方針
キールは拠点での生活は断ったが、最下層ボスの周回には積極的に参加する意向を示した。全員のC級ダンジョン攻略が完了すれば、B級ダンジョンへ挑戦可能となる。アレンたちはキールを待って冒険者証の更新を揃える方針とした。
スキル強化とCランク召喚獣の発見
深夜、アレンは召喚レベル6に到達し、新たな召喚獣や覚醒スキルの検証に取り組んだ。霊Cの召喚獣「マリア」は知能が高く、会話も可能で、壁の透過移動能力を持っていた。さらに虫Hと獣Hの覚醒スキルにより、大量増殖する召喚獣の存在を確認し、使用制限や再使用の可否についても記録した。
深夜の騒動とパーティーの団結
覚醒スキルの実験中、セシルやクレナ、ドゴラが騒動に気づきアレンの部屋に集まり、互いの存在に驚きつつも和やかな雰囲気が生まれた。霊Cのマリアも新たな仲間として受け入れられ、アレンたちの拠点にまたひとつ力が加わったのであった。
第五話 剣聖ドベルグがやってくる
アレンへの相談とキールの孤立
夏休みの課題が発表されて以降、実績あるアレンの元には、パーティー構成や攻略時期について助言を求める生徒が集まりはじめた。一方で、僧侶キールは日々ダンジョンで報酬を得ながらも食生活が改善せず、アレンはその理由を気にかけていた。
剣聖ドベルグの来訪とクレナの決意
剣聖ドベルグと勇者ヘルミオスらが学園を訪れ、1年生合同の特別授業が開催された。質疑応答の場で、クレナはスキルの使い方を尋ねる。担任の制止を無視しての問いにドベルグは応じ、実戦形式でクレナのスキル修得を促すこととなった。
クレナのスキル修得とドベルグの評価
ドベルグは一切の助言をせず、実戦での体得を求めた。クレナは何度も吹き飛ばされながらも諦めず挑み続け、最終的に「斬撃」のスキルを発現。その一撃はドベルグの構えを破るほどの威力で、クレナの成長に対しドベルグは感嘆の声を漏らした。ヘルミオスもその変化に驚き、スキル経験値の増加を確認したアレンは、クレナの努力が報われたことに安堵した。
ダンジョン攻略と騎獣召喚の活用
後日、アレンは召喚レベル6の成果として、鳥Cの召喚獣「フラン」を活用し、パーティーを騎獣化させての高速ダンジョン移動を開始した。これにより1日で複数階層を攻略可能となり、全員のCランク昇格も実現した。
キールの家庭事情と拠点の新体制
拠点での昇進祝いを兼ねた食事会の提案に対し、キールは「家族がいる」ことを告白。家族と同居しているため、拠点に移れなかった事情を語った。セシルの提案により、拠点の家事をキールの家族に委託し、報酬を支払う代わりに魔石はアレンが受け取るという契約が成立した。
キール一家の歓迎と過去の背景
キールの家族は全員子供で構成されており、その衣服や礼儀作法から、元従者もしくは平民以上の背景が推測された。キールは何らかの事情を抱えつつも、アレンたちの提案を受け入れ、正式に拠点での共同生活を始めることとなった。
こうしてアレンたち「廃ゲーマー」パーティーは、新たな仲間と共に、戦力と生活の体制をさらに強化することとなった。
第六話 歓迎会
歓迎会の始まりとキールの「家族」
キールの「家族」との歓迎会が拠点で開かれた。霊Cの召喚獣マリアが現れると、ニーナは歓喜して抱きしめ、和やかな空気に包まれる。料理が並ぶ中、キールの「家族」は最初遠慮しながらも次第に緊張を解き始めた。しかし、その言葉遣いや容姿から、彼らが血縁ではなく元使用人であることが明らかになった。
キールの過去とセシルとの関係の発覚
セシルがキールの出自を「貴族だったのでは」と問い、キールはカルネル子爵家の子息であることを明かす。セシルもグランヴェル家の令嬢であることを明かすと、キールは激昂し、カルネル家が潰された原因がグランヴェル家の謀略であると断じた。アレンはその場を治めるため、自らがカルネル家の失脚に関与したと明言し、矛先を自身に向けた。
セシルによる真相の説明
セシルはカルネル子爵がセシルとアレンを誘拐し、暗殺者に命じて命を狙った事件の詳細を語り、王家の調査と対応の結果、カルネル家が取り潰された経緯を説明した。セシルはこの件においてアレンに責任はないと明言し、キールと二人だけでなく、拠点の仲間にも聞かせる形で真実を共有した。
キールの動機と王家の提案
キールは5歳の時に僧侶の才能が判明したことで父から疎まれ、別宅で7年暮らしていたことを語った。カルネル家が潰れた後、王家の使いから学園入学を命じられ、卒業後5年間の兵役を果たすことでカルネル家再興を許すと告げられた。キールはその提案を受け入れ、ニーナや使用人たちを伴って学園都市に移住していた。
共闘への提案とキールの決断
アレンは、キールに対して「一緒に勤めを果たそう」と共闘を提案し、目的が違っても協力して戦うことを提案した。キールは迷いつつも、カルネル家再興という目標のためにアレンたちの力を利用する覚悟を決め、共に戦う決意を固めた。
仲間たちの受け入れと新たな絆
セシルやドゴラもその提案を受け入れ、キールを改めて仲間として迎え入れた。クレナは笑顔で手を差し伸べ、キールの心を和らげた。歓迎会は改めて再開され、キールの「家族」も再び席に戻ることとなった。アレンたちは、騒動を経て新たな絆を結び、今後の戦いに向けて一層の結束を深めたのであった。
第七話罠と検証
キールの家族との新生活と不信の残滓
キールとその「家族」は正式に拠点で暮らし始めた。6人の使用人たちには年齢に応じた月給が支払われ、生活費はダンジョン収益の一部からまかなう体制が整えられた。しかし、キールが幼少期に冷遇されていた背景や、王家の使いがもたらした再興の約束には不審な点が多く、アレンは今後の調査を必要と考えた。
B級ダンジョンの罠への対策と調査活動
アレンたちはB級ダンジョンへの挑戦に向け、冒険者ギルドの資料室で罠に関する情報収集を行った。B級ダンジョンの危険性は罠によるもので、毒、睡眠、矢など多様な仕掛けが存在していた。斥候は加入させず、召喚獣と薬品で対応する方針が取られた。
魔導知識と召喚獣による検証の開始
罠検証の一環として、アレンは草Cの召喚獣の特技「薬味」の効果を確認した。事前使用によって睡眠罠にかからず、持続的な効果が確認された。霊Cの召喚獣が開封前の宝箱に干渉するとミミックが現れ、Bランクの魔獣であるそれを瞬時に撃破。報酬としてミスリルの槍と魔石を得た。
睡眠罠の検証と召喚獣の耐性調査
アレンは自ら睡眠罠にかかり検証を進めた結果、「薬味」が睡眠を解除し、召喚獣にも効果があること、系統による耐性差があることを明らかにした。草・石・霊系は無効、その他の生物系は影響を受ける。これによりパーティーの罠対策が一層明確になった。
仲間たちの成長とスキル発動
ドゴラがようやくスキルを発現し、大声で喜びを爆発させた。また、アレンは獣系召喚獣の覚醒スキルを実験し、拠点内の擬似ペットとして活用するなど多角的な運用を進めた。
B級ダンジョン最下層でのボス戦
準備を整えた一行はB級ダンジョンへ出撃し、罠対策のために解毒剤を事前に服用した。獣系中心のダンジョンにおいて、慎重な探索でミミックや罠を処理しつつ階層を進み、ついに最下層に到達した。ボスである巨大な「ヒュージボア」戦では、召喚獣とスキルを駆使し、パーティー一丸で討伐に成功した。
銀箱報酬とキールの本性
戦利品として銀箱から高級武器「ヒヒイロカネのナックル」を獲得したキールは、誇らしげに武器を掲げた。金銭への執着は家族思いから来るものと見られていたが、彼の笑顔からは単純に金好きな一面も垣間見えた。セシルは「金の聖者」と揶揄しつつも、キールの存在がパーティーの戦力に不可欠であることを認める様子を見せた。
こうしてアレンたちは、罠への理解と対策を深めながら、B級ダンジョンの攻略において確かな一歩を踏み出したのであった。
第八話故郷に戻って
クレナの成長とB級ダンジョン攻略の進展
8月上旬、アレンたちはB級ダンジョンを2つ制覇し、3つ目も目前に控えていた。クレナは無事に教養試験に合格し、拠点での合格祝いが盛大に行われた。Dランク魔石の収集依頼も再開され、アレンの召喚獣チームによるCランク魔石の大量回収により、経済基盤も着実に整っていった。
鳥F召喚獣による帰省と新たなスキルの活用
夏休みとなったが、拠点を離れずにダンジョンへ集中する方針が取られた。アレンは鳥Fの召喚獣に荷物と手紙を持たせ、故郷クレナ村とグランヴェル領に向かわせた。鳥Fの覚醒スキル「伝令」は100km圏内に音声と映像を届けることができるものであり、戦場での伝達手段として極めて有用であった。
実家での再会と父ロダンの村長就任
鳥Fを通じてアレンは実家と会話を交わし、ミュラが才能なしであったこと、父ロダンが新たな開拓村の村長に就任することを知った。開拓は来年春から開始予定で、ゲルダ(クレナの父)も同行するという。アレンは父の就任に感慨を覚え、可能な範囲で支援を考えるようになった。
グランヴェル子爵への報告とカルネル家再興の真相
次に鳥Fはグランヴェル家へ飛び、子爵に近況報告と共にカルネル家の再興について確認を取った。子爵は直接的な情報を知らなかったが、僧侶の才能があるキールが王家に利用されている可能性に言及し、事態の深刻さを認めた。僧侶は数が少なく、王侯貴族にとって戦場で不可欠な存在であり、彼らが貴族内で回復役を囲い込む実情も明かされた。
草属性召喚獣と覚醒スキルの進化
この間にもアレンの召喚獣は著しく成長していた。草系の覚醒スキルには以下のような効果が確認された:
- 草F「ハーブ」:魔力回復周期短縮
- 草日「命の葉」:体力1000回復
- 草D「魔力の種」:魔力1000回復
- 草C「香味野菜」:状態異常の範囲回復(持続24時間)
半径50m内のパーティー全体に効果を発揮するため、実戦では数千人単位への同時支援も可能であることが判明した。
子爵の支援と王城への確認
アレンはキールの件に関し、王家による搾取の可能性を認識し、その真意を確かめるために王城への陳情を考えていた。グランヴェル子爵は、王家の使いが自らの名を使ったことを重く見て、この件に自ら動くと申し出た。こうして子爵が王城での確認を担当し、アレンたちは再び日常へと戻ることとなった。
冒険者ギルドでの新たな依頼と情報収集
アレンたちは3つ目のB級ダンジョンを制覇し、CランクからBランクへの冒険者証更新を申請。加えて、戦場に備えてEランク魔石10万個の募集依頼も新たに提出した。ギルド職員からはA級ダンジョンの最下層ボスがAランク魔獣であり、攻略例が極めて少ないとの情報も伝えられた。
オークション制度と装備強化への展望
アレンは装備強化の一環として、冒険者ギルド主催のオークションについて情報を得た。毎月1日に開催され、希少装備やリング、防具が出品される。特にステータス上昇系や状態異常耐性の指輪、防御に優れたドラゴン素材の装備などが取引されており、アレンは卒業までに最強の装備を整える決意を新たにした。
A級ダンジョンへの準備と覚悟
すべての準備を終えたアレンたちは、いよいよA級ダンジョンの攻略に挑む段階に入った。戦果を挙げ、仲間を守り、そしてキールの未来を切り拓くために、アレンはさらなる戦いへと歩みを進めていくのであった。
第九話 A級ダンジョン
A級ダンジョン攻略の難航
9月上旬、アレンたちはA級ダンジョンの攻略を開始した。これまでのC級・B級に比して階層数や広さ、罠の多様さなどが飛躍的に増加しており、1階層の攻略に丸1日以上かかることも多かった。特にランダムな位置に飛ばされる「転移罠」が深刻な脅威となっていた。小部屋に泊まりながら地図作成を進め、霊Cの召喚獣による罠探知と警戒を強化することで攻略の効率を上げていた。
転移罠による仲間の分断と緊急救出作戦
12階層の攻略中、ドゴラがサイクロプスの攻撃を受け吹き飛ばされ、転移罠を踏んだことでセシルともども分断された。アレンは即座に召喚獣隊を再編し、霊Cを四方八方に展開。発見された小部屋では、ドゴラが血まみれの状態でセシルをかばいながら戦っていた。霊Cの覚醒スキル「ポルターガイスト」により敵を一掃し、命の葉で2人を回復。その後、アレンたち本隊が鳥Cの覚醒スキル「韋駄天」による超高速移動で駆けつけ、無事に合流を果たした。
罠対策とパーティーの再評価
この一件をきっかけに、罠対策としての斥候職の導入が議論されたが、仲間たちの意見により現状維持となった。立ち位置の改善や召喚獣の先行運用によって再発防止を図ることとなった。また、今後の強化方針として、補助スキル専門職やタンク職の必要性が挙げられ、パーティーが未完成であることを皆で認識した。
要塞と戦場に関する情報と王城への連絡
グランヴェル子爵から、王国軍の要塞配備やクラス単位での戦場投入についての情報が伝えられた。また、キールの件については、子爵の館に鳥Fの召喚獣を常駐させており、王都と連絡を取りながら対応が進められている。子爵からは引き続き任せるよう指示があり、アレンたちは対応を託したまま日常に戻っていた。
A級ダンジョン最下層ボスへの挑戦
ついに最下層ボス攻略の日を迎えたアレンたちは、準備を整えてダンジョンへ突入。ボス部屋に現れたのは、巨大なフルプレート鎧とオークキング10体であった。アレンは石Eの召喚獣による爆破攻撃「メテオ(仮)」で先制し、オークキングを一掃。鎧型のAランク魔獣「グレイトウォリアー」との一騎打ちに持ち込んだ。
全員の連携によるボス撃破と報酬獲得
クレナとドゴラが攻撃を引き受け、召喚獣とセシルの魔法が集中砲火を浴びせる形で戦闘は進行。硬さこそ厄介であったが、隙を作ることでダメージを蓄積し、ついに討伐に成功。経験値48万と紫色の魔石を入手した。宝箱は木箱だったが、中身はヒヒイロカネ製の斧であり、ドゴラが装備を更新。今後、全員の装備をアダマンタイト以上にする方針が再確認された。
S級ダンジョンへの資格獲得と次なる挑戦
討伐直後、ダンジョン統括システムが出現し、パーティー名「廃ゲーマー」宛にA級ダンジョンの攻略証明書を発行した。証明書には1つの印が刻まれ、5つ集めることでS級ダンジョンへの挑戦資格が得られることが明かされた。アレンは、ゲーム世界のような仕組みに前世の記憶を重ねつつも、次なる戦いに意欲を燃やすのであった。
第十話 学園武術大会〇
A級ダンジョン攻略の反響と王太子の関与
夏休みを終えたアレンは13歳を迎え、A級ダンジョンの攻略証明書を冒険者ギルドに提出し、S級ダンジョンの存在とその条件を確認した。一方、学園ではアレンの偉業が噂となり、リフォル=ハミルトンからキールの家の件について呼び出しを受けた。王城では、グランヴェル子爵が謁見の間でカルネル家再興に関する発言を行い、それが王太子の独断であったことが明らかとなった。王太子は国王の甥であり、王位継承予定者である。キールに働きかけた王家の使いも王太子の配下であったと判明し、アレンはその情報を得つつも静観を決めた。
剣術授業とクレナの飛躍
午後の授業では、剣の才能を持つ生徒200人以上が集まり、素振りと模擬戦が行われた。アレンはリフォルと対戦し、クレナは担任のカルロバと剣を交えた。模擬戦用の剣が双方折れるほどの激戦となり、担任はミスリルの大剣を持ち出して再戦。結果として互角に近い戦いが展開され、クレナの成長が証明された。その後、学長からアレンとクレナに学園武術大会への参加を打診される。クレナは快諾したが、アレンは対人戦を無意味と判断し辞退した。ただし、王太子が来訪するという情報は頭に留めておいた。
学園武術大会の開催と優勝
大会本戦には16名が参加し、物理系の才能を持つ上級生が出場する中、1年生のクレナが次々と勝ち進んだ。決勝では3年生の優勝候補を打ち破り、会場を大いに沸かせた。武器の質や戦闘センスで上回ったクレナの勝利は、才能と努力の賜物であった。グランヴェル子爵も来賓として観戦しており、娘の活躍を見届けた。
剣聖ドベルグとの戦いと敗北
優勝者は恒例行事として剣聖ドベルグとの試合を行う。クレナは全力で挑んだが、ドベルグとの実力差は歴然であり、攻撃は全ていなされ、最後は完膚なきまでに敗北した。救護班に運ばれたクレナを、アレンは命の葉で回復。敗北の悔しさを抱きながらも、クレナは更なる成長を誓った。
新たな目標の設定
ドベルグとの戦いを通して、クレナは自分の未熟さと目指すべき高みを明確にした。アレンと語らう中で、来年の武術大会にてドベルグに勝つことを新たな目標と定め、さらなる努力を誓う。こうして学園武術大会は幕を閉じ、剣聖クレナの成長物語は次の段階へと進むこととなった。
第十一話 王太子からの誘い
学園武術大会後のセレモニーと王太子の祝辞
武術大会を終えたクレナは、王太子より出場者代表として祝辞を受けた。形式のみのセレモニーで、物品や報酬は無く、王太子の言葉とクレナの力強い返答だけが場を印象付けた。アレンは鳥の召喚獣を通じてその場の様子を把握していた。
キールの契約とカルネル家再興の条件
その夜、グランヴェル子爵はキールに対して正式な契約書を手渡した。そこには国王の署名および王印があり、5年間の戦場任務を前提としたカルネル家再興の条件が明示されていた。ハミルトン伯爵家とグランヴェル子爵家の協力義務も併記され、ニーナら使用人はハミルトン家の庇護下に置かれることとなった。キールは迷いなく署名し、覚悟を示した。
感謝の贈り物と王家の使いの訪問
アレンたちは感謝の印として毒防御リングを子爵に贈ったが、その後すぐに王家の使いが深夜に訪問した。王太子より子爵への夕食の誘いが届き、警戒を強める中、アレンは従僕として同行することを申し出た。
王国派と同盟派の対立構造
王国は現在、王国派と同盟派に分裂しており、王太子は王国派の中心人物として勢力を拡大している。これに対し、現国王および学園は同盟派に属し、魔王軍との全面戦争に注力している。王国派は協力を最小限にとどめようとし、派閥間の対立は王政を分断していた。
王太子との会食と威圧的な応対
翌日、子爵とアレンは王太子のもとを訪れ、高級宿の食堂で食事を共にした。王太子は騎士を従えて威圧的に振る舞い、クレナの大会での振る舞いやカルネル家との契約に言及した。さらにキールとクレナを危険な戦地に送り、セシルまでも同行させるよう示唆した。
アレンの介入と王太子への対応
王太子の意図を察したアレンは、あえて無邪気に戦果の好機として賛同するふりをし、王太子に従う使用人という立場を演じた。自らをパーティーのリーダーと名乗り、剣聖クレナやセシル、キールが自分の仲間であると明言したことで、王太子の関心を引き、利用される存在として印象付けた。
それぞれの思惑と物語の展開
王太子の策謀とアレンの計算が交錯する中、子爵とアレンは高級宿を後にする。クレナの強さ、キールの再興、そしてアレンの戦果への執着が複雑に絡み合いながら、それぞれの立場と目標が浮かび上がる。王国と同盟、個人の信念と派閥の思惑が交差する物語は、次なる局面へと進もうとしていた。
第十二話 A級ダンジョン最下層ボス
ダンジョン漬けの日々とアレンの成長
年が明けた1月、アレンたちは正月もそこそこにA級ダンジョンの攻略に明け暮れていた。学園がある日は周回でボスを倒し、休日は野宿をしながら深層攻略に挑むというハードな日程である。転移罠によって予定通り戻れないこともあり、学園には「ダンジョン休暇」制度があることも活用していた。
アレンはこの期間で強化スキルをレベル7に到達させ、装備面でも全員のアイテムが充実した。各自が最適な装備を手に入れた結果、召喚獣隊との連携による戦闘効率が大幅に向上した。
最下層ボス・ドラゴンとの激闘
75回目のボス戦でついに初のドラゴンが出現。最下層ボスの中でも最強格とされる存在で、防御力・物理耐性が桁違いだった。アレンたちは石Eの召喚獣による自爆攻撃を仕掛けつつ、ブレスへの対策として石Cの「自己犠牲」を活用するが、ドラゴンの強烈な連続ブレスでパーティーは窮地に陥る。
この状況を打破したのが、クレナのエクストラスキル「限界突破」であった。全ステータスが3000上昇し、体力が秒間1%回復するこのスキルによって、クレナは単身でドラゴンを撃破した。ドラゴン討伐報酬として金箱が出現し、中からは体力回復リングが手に入った。
レベルキャップ到達と今後の方針
3月末、クレナのレベルが60に達し、アレン以外のメンバーも全員レベル・スキルレベルの上限に到達した。これにより、レベルアップによる成長が頭打ちとなり、次なる成長手段が必要となった。
魔王による魔獣強化が経験値量を10倍に引き上げていた可能性が指摘され、これがキャップ到達の早さに影響していたと推測された。レア度による職業別ステータス上昇値も整理され、星8の召喚士アレンは最大級の能力増強を得ていた。
新たな目標の設定と可能性の追求
今後の課題として、以下が挙げられた:
- エクストラスキルの自在な使用
- 金箱から得られるステータス増加指輪の収集
- オリハルコン製装備の入手
- オークション活用による装備強化
- 図書館での伝承・未確認情報の収集
金箱からのアイテム入手率が極めて低いため、確実性のあるオークションでの購入も視野に入れる。一方で、オリハルコン装備の入手法は不明のままであり、情報収集の必要性が強調された。
強さを追い求めて
セシルの指摘にあるように、世界中が魔王出現により強化手段を探してきたが、それでも未発見の手段があるとアレンは信じている。伝承や噂の中に眠る可能性を信じ、彼らは情報収集と探求を続ける。
アレンは、仲間を率いて本気で強くなる道を考える。それは彼が転生してまでこの世界で目指すべき宿命でもあった。
第十三話 転入生がやってくる
新学期と転入生の到着
アレンたちは2年生に進級し、新たな校舎での生活が始まった。クラス替えはなく、1年次と同じ生徒たちとともに学ぶ。教室には3人分の空席があり、春休み中に転入生が来るとの噂は現実となった。現れたのは、ハイエルフの王女ソフィアローネ、護衛のフォルマール、ドワーフの少女メルルの3名であった。
転入生の目的と異種族との共生
ソフィアローネはローゼンヘイム王女、フォルマールはその護衛、メルルはバウキス帝国出身の「魔岩将」の才能持ちであった。種族の違いや出自に戸惑う生徒もいたが、アレンの提案で彼らは『廃ゲーマー』の一員として受け入れられ、同じ拠点で暮らすことになる。使用人2名を含め、拠点は18人の大家族となった。
精霊王とダンジョンマスター、種族の信仰
歓迎会ではエルフたちが精霊王への祈りを捧げ、ドワーフのメルルはディグラグニという「ダンジョンマスター」への信仰を語る。精霊王やディグラグニは、各種族の文化や宗教に根差した存在であり、特に精霊王はハイエルフの祈りによって亜神へと昇華した存在とされていた。
ソフィーの正体と精霊王の予言
ソフィーはアレンを「アレン様」と呼び続け、その理由が精霊王の予言によるものであることを明かす。精霊王は10年以上も前から、「黒髪の少年が生まれる」「全ての才能が最低」などと寝言で語り続けていた。アレンの特徴が予言と一致することから、ソフィーは運命を感じ、彼と行動を共にする決意を強めていた。
ダンジョン攻略の再編と方針の決定
新たな課題として、B級ダンジョンの攻略とスキル発動の習得が課される。アレンは既存メンバーがA級ダンジョンを攻略する一方、自らはドゴラと共に新メンバーをB級ダンジョンに連れていく方針を取った。パーティーを分割し、同時に複数のダンジョンを攻略する運用体制が取られることとなる。
メルルの才能と戦力化への課題
メルルは「魔岩将」という1,000万人に1人の希少な才能を持つが、現時点では実力を発揮できず、申し訳なさを滲ませる。しかしアレンは、その才能がミスリル級のゴーレムを操縦できること、ドラゴンをも討伐可能な火力を持つことを知っており、将来性に大きな期待を寄せていた。
王族同士の権威と戦場の選択
アレンが王太子に睨まれていることを再確認すると、ソフィーは「女王陛下に伝えてある」と動じずに応じる。ローゼンヘイム、バウキス帝国といった大国の王族たちは、王太子の圧力を意に介さない立場にあり、戦場選択も各国の主権に委ねられていた。彼らとは卒業後、別の戦場に赴く可能性が高いことも共有された。
新たな仲間と共に
アレンたちは歓迎会を通じて結束を深め、異種族の仲間たちとの新たな学園生活とダンジョン攻略を開始した。予言、信仰、才能、それぞれが未来の戦いを彩る布石となり、物語はより壮大な舞台へと進展していく。
第十四話 ロダン村の開拓
村の開拓と支援物資の搬送
アレンたちはソフィーらと共にB級ダンジョンを攻略しつつ、4月中旬には新たな任務に着手していた。アレンは父ロダンが村長となった新開拓地「ロダン村」へ、召喚獣を使って多くの物資を運搬した。持ち込まれたのは、ヒヒイロカネ製の槍と盾、ミスリルの武具、金貨、道具類などであった。これらはアレン、クレナ、ドゴラ、セシルの共同出資によるものであり、家を再興する立場のキールは資金負担を免除された。
開拓作業と召喚獣の活躍
草原の開拓地では、獣Cの召喚獣が次々と巨木を引き抜いてゆくという、常識外れの光景が展開された。人間では数日かかる作業をわずか数分で済ませる召喚獣の力は圧倒的であった。召喚獣の存在は子どもたちにも影響を与え、特に魔獣に怯えないミュラの存在にアレンは一計を案じるが、後にその無邪気さが仇となる。
食糧問題と“夕飯”の捕獲
夕食の準備が始まる中、アレンは鳥Eの召喚獣を使って、はぐれたグレイトボアを村へ誘導した。村人たちは脅威に怯えるが、霊Cの召喚獣がたった一撃で討伐。これにより肉不足の問題は解消され、同時に子どもたちに魔獣の脅威を理解させる教育効果も得られた。霊Cの一言「夕飯デス」によって、緊張は笑いに変わる。
転入生の成長と学園の進展
時は流れ7月末。クレナが教養試験を合格し、転入生たちはB級・A級ダンジョンをそれぞれ攻略する成果を出した。アレンたち既存のメンバーも4つ目のA級ダンジョンを制覇し、S級挑戦の条件まであと1つに迫った。並行して、エクストラスキルの習得にも取り組んでいる。
学長室の呼び出しと武術大会への誘い
ある日、アレンとクレナは学長室に呼ばれ、仲間と共に出向くと、勇者ヘルミオスが待っていた。目的は10月に開催される武術大会への出場要請であった。アレンは当初辞退する意向を示し、「力を示す必要がない」「敵に情報を与えるだけのリスクがある」と冷静に理由を述べる。
ヘルミオスの提案と“餌”の提示
説得の一環として、ヘルミオスは精霊王から贈られた「魔力回復リング」を提示。「大会に出場し、私と戦って勝てば譲ろう」と条件を出す。リングは毎秒最大魔力の1%を回復する超希少品で、アレンも強く惹かれる。鑑定の結果、アレンは本物と確信し、条件付きで大会参加を承諾する。
二つの条件とドベルグの参加
アレンは出場の条件として2点を提示した。第一に、クレナが剣聖ドベルグと戦う機会を持つこと。第二に、魔力回復リングの真贋確認を行うこと。どちらもヘルミオスと学長に認められ、正式に大会参加が決定した。
勇者との対決とその意図
ヘルミオスとの対決は、アレンにとって「魔力回復リングを得る唯一の現実的手段」であり、それはS級ダンジョンでも手に入らないと判明したためである。アレンはこの戦いをチャンスと見做し、「戦果と利得の両取り」を狙う。こうして、アレンの大会参加は実利と目的に基づく明確な判断により決定された。
終わりに
村の開拓、異種族の仲間との交流、ダンジョン攻略、そして勇者との対決と、多方面で進展を見せるアレンたち。物語は世界の命運に関わる新たな戦いへと、着実に歩を進めていくのであった。
第十五話 学園武術大会②
アレン、武術大会出場を決意
アレンは魔力回復リングを得るため、学園武術大会への出場を決定した。目的のために全力を尽くす方針を貫き、勝利後に勇者ヘルミオスとの対戦を見据えていた。アレンは夏休みを利用して王国内を巡り、大量の魔石とアイテムの収集に励むことを宣言。これにより、召喚レベルを7まで引き上げることを目論んだ。
パーティーの方針と夏の活動
アレンが単独で王国内を巡る間、他のパーティーメンバーは予定通り、要塞都市フェルドラにて5つ目のA級ダンジョン攻略を進行。転入生3名のレベルも飛躍的に向上し、9月末までに攻略を完了した。アレンも遅れて同ダンジョンを攻略し、仲間たちと合流。10月を迎える頃には召喚レベルが7に到達し、Bランク召喚獣の運用が可能となった。
武術大会準決勝:アレンの圧勝
武術大会本戦では、アレンは3年生との準決勝に挑む。アレンは冷静に相手の動きを読み、スキを突いて一撃で戦意を喪失させる勝利を収めた。この戦いぶりにより、観客と来賓の注目を一身に集め、「学長推薦」の肩書きも強調される中、決勝戦へと進出した。
決勝戦:アレン vs クレナ
アレンとクレナは全力の対戦を約束し、スキル・回復薬の使用も含めた真剣勝負を行う。剣術スキルではクレナが上回るも、アレンはステータスと召喚スキルの活用で優位に立つ。紅蓮破を直撃されたアレンはダメージを受けるも即座に反撃し、最終的にはクレナの喉元に剣を当てて勝利を収めた。
剣聖ドベルグ vs クレナ
続くエキシビションマッチでは、剣聖ドベルグとクレナが対峙。アレンはクレナに素早さ+1000の指輪を2つ授けていたが、ドベルグの戦闘技術と装備性能には及ばず、序盤はクレナが劣勢に立たされる。だが、クレナは窮地に陥ったことでエクストラスキル「限界突破」を発動。一気に形勢を逆転し、ドベルグを吹き飛ばす場面も見られた。
ドベルグの逆襲と暴走
クレナの猛攻により追い詰められたドベルグは、自らもエクストラスキルを発動。スキルに心を呑まれ暴走したドベルグは、クレナの剣を両断し、止めを刺そうとするが、ヘルミオスが間一髪で割って入り、事なきを得た。正気を取り戻したドベルグは、自らの行動に深く後悔し、クレナに謝罪の意を示すと共に、自らの大剣を託して闘技台を去った。
結末と次への布石
アレンはクレナとの真剣勝負を制し、見事学園武術大会を優勝で終えた。そして、観衆の前で存在感を示したことで、いよいよ勇者ヘルミオスとの対決が現実味を帯びてくる。
ドベルグとクレナの死闘を経て、両者が抱いた「強さ」と「責任」の意味は、今後の成長と戦いに深く関わっていくことになるであろう。
第十六話勇者ヘルミオスとの戦い
ドベルグ戦の余韻と最後の対決への準備
剣聖ドベルグが敗北を宣言したことでクレナの勝利が決定し、観客席は騒然となった。アレンは闘技台に立ち、次なる対戦相手である勇者ヘルミオスと対峙した。クレナを救ってくれたヘルミオスに感謝を伝えると、彼は穏やかに応じ、試合でのスキル使用を許可した。学長やローゼンヘイムの了承も取り付けており、観客全体の注目が集まる中、2人の戦いが始まった。
勇者の強さと初撃の衝撃
ヘルミオスはアレンの挑発を受け、闘技台を割るほどの加速で突撃した。オリハルコンの剣による攻撃は凄まじく、アレンはかろうじてアダマンタイトの剣で受け止めたが、その威力に圧倒された。耐久力に振っていないアレンは防御から回避戦術へと切り替え、剣術スキルの差に苦戦を強いられた。
召喚獣による反撃と観客の混乱
アレンは竜Bの召喚獣を召喚してヘルミオスに奇襲を仕掛け、さらには自らも横薙ぎの攻撃を加えてダメージを与えることに成功した。竜Bのブレス攻撃に続き、ヘルミオスは回復魔法と飛行スキルを発動して宙に浮かび、観客席は神々しい姿に賞賛の声を上げた。アレンはこれまでの戦いを通じて、勇者のステータス構成を分析し始めた。
自爆戦術と高速召喚の活用
アレンは石Eの召喚獣による自爆戦術と、召喚レベル7で獲得した高速召喚スキルを駆使してヘルミオスを攻撃した。連続した召喚と爆発によりヘルミオスの体力を削り、回復魔法の使用を引き出すことに成功。さらに獣B「ケロリン」を投入して勇者をかく乱し、遠距離からの連携攻撃を仕掛けていった。
勇者の本気と「反射」スキルの炸裂
ヘルミオスは「勝負を決める」と宣言し、剣にスキルを込めて突撃した。これを受けてアレンは石B「ミラー」を召喚し、反射スキルによって勇者のスキルを跳ね返す。激しい衝撃の末にヘルミオスは吹き飛ばされ、アレンはこのために全てを整えていたことを確信した。
精霊王の予言と魔力回復リングの譲渡
ヘルミオスはアレンの戦術を称賛しつつ、精霊王ローゼンから預かった魔力回復リングを渡した。これは「始まりの召喚士」と名乗る者に渡すよう指示されていたもので、アレンがその名を口にしたことで条件を満たしたと判断された。互いにリングを手にした2人の間に静かな対話が交わされ、戦場の重圧や絶望すら超えていく意志が確かめられた。
エクストラスキルの激突と最後の勝負
試合はなお続き、ヘルミオスはエクストラスキル「神切剣」を発動して全力の一撃を放った。石Bの召喚獣はスキルに耐えきれず消滅し、アレンは「みがわり」召喚獣を次々と展開するも防ぎきれず、両腕を吹き飛ばされて倒れた。だが、回復薬により即座に腕を再生させ、戦意を失うことなく立ち上がった。
アレンの名乗りと降参宣言
ヘルミオスはアレンの戦意に驚き、その背負う覚悟を問う。アレンは「始まりの召喚士」として立つことを宣言し、絶望の先にある希望を語った。戦いの終わりに、アレンは突如片手を上げ、「降参します」と棒読みで宣言。観客が状況を理解しきれぬ中、試合はアレンの降参という形で幕を下ろした。
勇者との戦いの終幕と周囲の余韻
闘技場は破壊され、観客も騎士も来賓もその異様な結末に圧倒されたまま、アレンとヘルミオスのやり取りを見つめていた。こうして、学園武術大会の最終戦は勇者ヘルミオスの勝利で幕を閉じたが、始まりの召喚士アレンの存在は、確かに世界に刻まれることとなった。
第十七話 大会セレモニー
セレモニーの延期とその理由
ヘルミオスとの戦いから1週間が過ぎ、アレンは平常通り学園生活を送っていた。武術大会の善戦によって生徒たちからの接し方が変化し、敬遠する者もいたが、多くは関心を寄せて声をかけるようになっていた。例年行われる大会後のセレモニーが今年は見送られたが、その原因はアレンの存在が各国来賓に波紋を呼んだためであった。王国はその対応に追われ、結果的にセレモニーの実施が大幅に遅れることとなった。
王太子主催の式典とアレンの存在
延期されたセレモニーは学園都市の高級宿で開催され、武術大会の本戦出場者たちが招かれた。王太子や各国来賓100名以上が出席し、厳粛な式典が始まった。アレンは壇上で王太子から称賛を受けるが、その実力を恐れるような言動も見られ、護衛騎士たちの態度にも緊張が走っていた。
グランヴェル子爵との関係の誤解
式典中、王太子はアレンの実力に言及しつつ、グランヴェル子爵の責任を示唆する発言を行った。アレンが客人として子爵のもとに身を置いていた事実と、護衛を目的とする「用心棒」という発言により、貴族たちは過去の騒動を想起して動揺することとなった。王太子もそれを追認するかたちで場を締めくくり、式典はアレンの立場を明確にする場として終結した。
ロダン村の発展と冬の準備
12月初旬、アレンの父ロダンが率いる開拓村では、防柵が完成し、冬のボア狩りも順調に行われていた。アレンたちが贈ったヒヒイロカネやミスリル製の槍によって、村人たちはグレイトボアを20体以上討伐し、越冬の糧を得ることに成功していた。
A級ダンジョン最下層の制覇とS級ダンジョンの招待
学園都市にあるA級ダンジョン最下層で、アレンたちはついにドラゴンを討伐した。これにより、廃ゲーマーの黒いカードには5つ目の印が刻まれ、S級ダンジョンへの招待券が発行された。S級ダンジョンは「ヤンパーニの試練の塔」と呼ばれ、バウキス帝国の北東に存在する神殿であると判明した。
ダンジョンマスターの存在と遠征の構想
S級ダンジョンを攻略した先には、ダンジョンマスターへの挑戦が待つことが明かされ、アレンは大いに興奮した。メルルの故郷であるバウキス帝国への留学という形式での移動を提案し、ソフィーが学長への働きかけを引き受けた。これにより、S級ダンジョンへの挑戦が現実味を帯びていく。
新年の変化とアレンの召喚修練
年が明けると国王が崩御し、王太子が新たな国王に即位した。世情は自粛ムードに包まれたが、学園は通常通り授業を継続していた。アレンは魔力回復リングと高速召喚スキルを用いて、日々効率的な召喚修練を重ねていた。
学長室からの召集と緊急要請
そんな折、担任の突然の呼び出しにより、アレンたちは学長室に向かう。学長からは、ローゼンヘイムへの出動要請が通達された。魔王軍が1000万規模の大軍で3大陸を侵攻し、ローゼンヘイムの首都フォルテニアが300万の魔王軍に陥落させられたことが報告された。
ソフィーの衝撃とエルフ部隊の撤退
学長の報告に、ソフィーは女王の安否不明に激しく動揺した。中央大陸北部では、エルフ部隊が母国防衛のために撤退しつつあり、魔王軍はその隙を突いて連合軍に壊滅的打撃を加えようとしていた。
出動決断と世界の危機
学長はローゼンヘイム救援のための出動を正式に要請し、初めてアレンに頭を下げた。アレンはそれを受け入れ、仲間と共に滅亡の危機に瀕するローゼンヘイムへ向かうことを決断した。こうして、世界を救う戦いが再び幕を開けたのであった。
特別書き下ろしエピソード①ヘルミオス回想編
魔神撃破作戦と仲間との連携
中央大陸北部の魔王軍本拠地にて、勇者ヘルミオスは仲間たちと共に敵将の魔神を撃破した。作戦は少数精鋭による別働隊としての奇襲であり、剣聖アニッサや聖女リクティナら人類最強の布陣を敷いた小隊が見事に敵将を仕留めた。回復によって傷を癒した一同は喜びを分かち合いながらも、主力が抜けた要塞の安否に不安を抱き、急ぎ帰還する。
陥落した要塞と果てなき絶望
帰還した要塞では既に魔王軍により殲滅が完了しており、生存者は皆無だった。戦死者の多くは若い兵士であり、彼らの絶命の表情に、ヘルミオスは自らの行動の意味を問い直すことになる。いかなる作戦の成功があっても、代償として命が失われる現実に直面したヘルミオスは、自らの立場が「人類の希望」という象徴であることに葛藤を覚えていた。
上位魔神キュベルとの遭遇と惨敗
続く作戦で、ヘルミオスたちは敵将の拠点にて仮面の男・キュベルと遭遇する。見た目は道化のようなその男は、上位魔神と判明。ヘルミオスの「神切剣」でさえ無効化され、逆に一撃で意識を失う。仲間たちは応戦するも全滅し、キュベルはとどめを刺さず姿を消した。
仲間の死と戦場の無常
目覚めたヘルミオスは、斥候により要塞へと運ばれたことを知る。仲間たちは全員死亡していた。死体のみが残された戦場の報告を聞き、ヘルミオスは愕然とする。剣も鎧も最強、スキルも最高。それでもなお、倒せない敵の存在に、彼の精神は深く傷つく。やがて新たな仲間が送られてくることも分かっているが、心は空虚だった。
精霊王からの使者と「本当の希望」
失意の中、ヘルミオスのもとにローゼンヘイムからエルフの使者が訪れる。精霊王ローゼンは「人類の希望の光が間もなくやってくる。それは勇者ヘルミオスの希望にもなる」と予言し、ヘルミオスの来訪を求めていた。かつてエルフ部隊を救った恩義はすでに断っていたが、「希望」という言葉に心が揺れる。
絶望の先の光へ
仲間を失い、力の限界を知り、偽りの希望の象徴として振る舞ってきた勇者ヘルミオス。その心が折れかけたとき、彼は「本物の希望」に会うため、ローゼンヘイムへ向かう決意をする。その後の学園でのアレンとの出会いが、彼の運命を再び動かすのであった。
特別書き下ろしエピソード②商人ペロムスの奮闘
幼馴染の訪問
夏休みのある日、アレンの元にかつての幼馴染・ペロムスが訪れた。彼は商業学校に通う商人志望の少年であり、王都からわざわざアレンを探してやって来た。その目的は、富豪チェスターの娘フィオナとの交際を認めてもらうため、アレンの協力を仰ぐことであった。
結婚の条件と苦悩
フィオナの父チェスターから「自分の価値を証明しろ」と言われたペロムスは、商業学校に通いながらも結果が出せず、半年が経過していた。焦りとともに訪れた彼を見たセシルやキールは驚くが、興味本位でアレンに協力を促す。
アレンの提案と騒がしい仲間たち
ペロムスに向け、アレンは「チェスターの店を買収すればいい」と無茶な助言をする。セシル、クレナ、ドゴラも加わり、冗談交じりに店名を勝手に考え始め、場はにぎやかな空気に包まれる。
ペロムスのエクストラスキル「天秤」
そんな中、ペロムスは興奮のあまりエクストラスキルを無意識に発動してしまう。それは「天秤」と呼ばれる能力で、物の価値を即座に判断できるものだった。アレンが示した食品やアイテムの価格を的確に言い当て、その実用性が証明される。
「天秤」の価値と商才
このスキルは市場調査を不要とし、商品価値を即座に把握できる極めて有用な能力であるとアレンは断言する。ビジネスにおいて価格設定の失敗は致命的だが、「天秤」はそのリスクをなくすため、商人にとっては破格の才能である。
アレンの支援と出資
アレンはペロムスに金貨100枚を差し出し、さらに自らが料理長と開発した特製ソースの販売権の譲渡について、グランヴェル子爵に掛け合うことを約束する。これにより、ペロムスは自らの店を持ち、販路を拡大して商人としての道を歩み始めることになる。
店の名は「ペロムス廃課金商会」
最後に、仲間たちの注目の中でアレンは店の名前を提案する。「誰もがお金を出したくなるほど魅力的な商品を扱う店に」という願いを込めて、名付けたのは──**「ペロムス廃課金商会」**。ペロムスもこれを気に入り、晴れて開業の決意を固めた。
新たなる旅立ち
こうして、ペロムスは学園生活1年目の夏にして、商人としての第一歩を踏み出すこととなった。夢と野望を胸に、彼の「奮闘」が始まる。
特別書き下ろし
最北の要塞攻防戦
要塞の威容とエルフの防衛体制
舞台はローゼンヘイム最北端、50年以上にわたり魔王軍の侵攻を退け続けてきた巨大要塞。100万人の兵を収容し、100メートルを超える防壁を備えた世界最大級の防衛拠点である。精霊の加護を受けし「大精霊使い」の力で築かれたとされるこの要塞は、ルキドラール大将軍を最高責任者として運営されていた。
魔王軍の不穏な動きと警戒態勢
斥候隊の報告により、魔王軍が例年よりも上陸を遅らせている異常な動きが判明する。大将軍はこれを増援との合流と見做し、侵攻軍の数が倍以上となる可能性を示唆。各部隊に準備命令を出し、村人たちの避難を開始。万が一の要塞陥落に備え、首都フォルテニアとも連携を取る。
襲来──300万の魔獣軍団
数日後、ついに300万を超える魔獣の大軍が姿を現す。これまでの6倍という圧倒的な数に、要塞のエルフたちは臨戦態勢を整える。矢の雨を降らせる弓隊、火炎魔法で敵を焼き尽くす精霊魔法隊、そして被害を回復する治癒部隊。エルフたちは徹底した防衛戦術で魔獣を押しとどめ、戦場には夥しい死体が積み重なっていった。
敵将レーゼルと「山を動かす」奇策
魔王軍の敵将レーゼルは、エルフの守備に「芸がない」と冷笑し、オークジェネラルに「山を動かせ」と命じる。その命令により、魔獣たちは味方の死体や瀕死の仲間を積み上げ、死体の山を築き始めた。この山は前進しながら防壁に接近し、エルフの遠距離攻撃を防ぐ盾となる。
要塞の崩壊と侵攻の始まり
死体の山はやがて防壁の高さに達し、魔獣たちはその斜面を駆け上がって要塞へなだれ込む。防衛線は一気に崩壊し、鉄壁を誇った最北の要塞は、僅か一日で陥落した。こうして、ローゼンヘイムへの本格的な侵攻が始まることとなった。
同シリーズ





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