小説「ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈上〉」感想・ネタバレ

小説「ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈上〉」感想・ネタバレ

Table of Contents

物語の概要

■ 作品概要

本作は、現代の自衛隊が異世界「特地」へと派遣され、現地の帝国や住人たちと関わる姿を描いたミリタリー・ファンタジー小説の文庫版第5巻(上巻)であり、本編の最終章の幕開けとなる作品である。 本作「冥門編〈上〉」では、日本と異世界を繋ぐ「門(ゲート)」の存在が世界規模の天変地異(アポクリフ)を引き起こしていることが判明し、日本政府は門の閉鎖を決定する。しかし、特地の利権を狙う米・中・露などの諸外国はこれに反発し、実力行使として東京・銀座を占拠するという暴挙に出る。 さらに、特地では門を再び開く鍵となる魔法使いの少女・レレイが何者かに攫われてしまい、主人公であるオタク自衛官・伊丹耀司と美少女たちは彼女の奪還に向けて動き出す。地球と異世界、双方で巻き起こる未曾有の混乱と、世界の存亡を懸けた戦いが描かれる。

■ 主要キャラクター

  • 伊丹耀司(いたみ ようじ): 陸上自衛隊の二等陸尉。趣味を最優先するオタクであるが、部下や特地の住人からの信頼は厚い。攫われたレレイを救出するため、自衛隊の任務とは別に美少女たちと共に独自の行動を開始する。
  • レレイ・ラ・レレーナ: 特地の魔法使いの少女であり、伊丹の旅に同行するヒロインの一人。冥王ハーディから門を開閉する能力を授かったため、その力を狙う様々な勢力から標的とされ、拉致されてしまう。
  • ロゥリィ・マーキュリー: 死と断罪の神エムロイの使徒である亜神。巨大なハルバートを振るう圧倒的な戦闘力を持つ。伊丹たちと共にレレイ奪還のため行動する。
  • テュカ・ルナ・マルソー: 金髪碧眼のハイエルフ。炎龍に集落を滅ぼされた過去を持つが、伊丹たちに救われて行動を共にしている。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、自衛隊の武力による局地的な戦闘から、地球規模の国際政治ドラマへと物語のスケールが一気に拡大する点である。 門の向こう側の「特地」で帝国軍との戦いが大詰めを迎える中、現実世界の日本(銀座)が他国の特殊部隊によって占拠されるという衝撃的な展開が描かれる。自衛隊は特地と日本の両方で深刻な危機に直面し、隊員たちは「特地に残るか、日本へ戻るか」という究極の選択を迫られる。 また、ヒロインの一人であるレレイが門の鍵を握る重要人物となったことで、彼女を巡る誘拐と奪還劇が物語のサスペンス要素を高めており、ファンタジー、ミリタリー、政治謀略が高度に絡み合うクライマックスが本作の特徴である。

書籍情報

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈上〉
著者:柳内たくみ 氏
イラスト:黒獅子
出版社:アルファポリス
発売日:2013年12月27日

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あらすじ・内容

累計100万部突破!超人気の自衛隊×異世界ファンタジー、文庫化第五弾・前編! 『門』の封鎖を決定した日本政府に対し、異世界の権益を求める諸外国陣営は銀座占拠という暴挙に出た。さらに『門』を再開通させる能力を持つ魔法少女レレイが何者かに攫われ、日本は外交上窮地に追い込まれていく。その頃『特地』では、自衛隊の進撃の前に防戦一方だったはずのゾルザル軍主力が、ピニャ率いる正統政府軍の本拠地イタリカを急襲。巨大帝国を二分する内乱は、ついに最終決戦の時を迎える――!

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈5〉冥門編〈上〉

感想

本作を読み終え、物語がこれまでの局地的な戦闘から、泥沼の国際政治サスペンスへと大きく舵を切ったことに驚かされた。

門の封鎖をめぐる認識のズレ

まず印象に残ったのは、「門(ゲート)」の存在が世界を歪めているという事実と、それに対する人々の認識の大きなズレである。世界の安全を考え、アルヌスの門を閉鎖しようとする日本政府の論理は間違っていない。しかし、門の周辺で暮らす元難民たちからすれば、その封鎖は自分たちの生活基盤が絶たれることを意味していた。彼らが生活の不安から封鎖を阻止しようと必死になるのも当然であり、現場の切実な姿には深く考えさせられるものがあった。

諸外国の工作とレレイ誘拐

そして、この弱者の不安を悪辣に利用するのが、中国をはじめとする諸外国の工作員たちであった。難民の不満を煽り、門を再び開く力を持つレレイがあっさりと誘拐されてしまう展開には、強い憤りを覚えた。さらには多国籍の謀略が絡み合い、日本の銀座にある門そのものが占拠・封鎖されてしまうという暴挙にまで発展する。特地の利権をめぐる各国の強引な暗躍は、フィクションとはいえ背筋が寒くなるような恐ろしさがあった。

日本政府の弱腰

それにしても腹立たしいのは、事ここに至っての日本政府のトップの頼りなさである。中国から「異世界への移民受け入れに協力しろ」という無茶な命令を突きつけられ、なんと総理大臣は門の管理を国連へ丸投げして委託しようと傾いてしまう。保身に走る政治家たちの弱腰が、最前線で命を懸ける自衛官や特地の人々をどれほど窮地に陥れるのかが、まざまざと描き出されていた。

隔離された伊丹という希望

そんな息の詰まるような絶望的な状況を覆す希望となるのは、やはり主人公の伊丹しかいない。ところが彼は今、未知の空間で「エイリアン的な何かに寄生され、腹を食い破られるのではないか」と疑われ、病院で厳重に監禁されていた。この国を揺るがすシリアスな局面で、彼一人だけがSFホラー映画のようなコメディチックな理由で足止めを食らっている落差が、たまらなく面白い。

しかし、その隔離された伊丹のもとに、事態を動かすべくついにレレイ誘拐の情報がリークされた。大人しくベッドの上で漫画を読んでいた彼が、大切な仲間を救うためにこれからどう動くのか。国や政治家の思惑など意に介さず、彼らしい型破りなやり方で現状を打破してくれるに違いない。

重苦しく理不尽な展開が続いたからこそ、次巻での伊丹や美少女たちの痛快な反撃が心底楽しみになる、見事な「溜め」の巻であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

ジゼル

冥王ハーディに仕える高位の神官であり、亜神である。アルヌスで借金を背負い、食堂で働く羽目になった。人間への過干渉を望むが、ロゥリィから人間の成長を促す必要性を説かれる。

・所属組織、地位や役職

 冥王ハーディの神官・使徒。亜神。アルヌスの食堂のウェイトレス(借金返済中)。

・物語内での具体的な行動や成果

 アルヌスの食堂で無銭飲食を行い、借金返済のためにウェイトレスとして働き始めた。掃除などの雑務を通じて、過去の下積み時代の苦労を思い出した。アポクリフ問題に対して神の介入を主張したが、ロゥリィとの対話を通じて自らの未熟さを自覚した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 高位の存在でありながら、アルヌスでは特別扱いされず、労働を強いられる厳しい現実に直面している。

メイア

アルヌスのPXで働く猫耳の店員である。門の閉鎖後の生活と恋に不安を抱き、酒に頼る日々を送っている。

・所属組織、地位や役職

 アルヌスPX・店員。

・物語内での具体的な行動や成果

 昼間から酒を飲み、料理長に咎められた。レレイ誘拐計画において、恩知らずだと葛藤しながらも送り状にサインし、計画に加担した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 日本への移住に不安を感じており、アルヌスに残ることを強く望んでいる。

ロゥリィ・マーキュリー

アルヌス協同生活組合の代表であり、街の運営者である。人間自身の選択と成長を重んじる思考を持つ。

・所属組織、地位や役職

 アルヌス協同生活組合・代表。

・物語内での具体的な行動や成果

 ジゼルに対して借金の肩代わりを拒否した。アポクリフ問題について、人間に決断と自覚を促す必要があるとジゼルを諭した。伊丹を特地に残すため、富田の死亡フラグ発言を利用して伊丹に結婚を意識させる策を提案した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 街の運営者として特別扱いを受けている。使徒として「自ら考える」ことを重視している。

レレイ・ラ・レレーナ

門の開閉能力を持つ少女である。門が閉じられた後の未来を見据え、新たな街と村を築く構想を進めていた。

・所属組織、地位や役職

 魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果

 ジゼルへの借金貸し付けにおいて高利の利息を提示した。伊丹の嗜好を分析し、彼を特地に留めるための戦略を女性陣に共有した。開拓民を募り新都市を造る計画を語っていたところ、睡眠薬草を飲まされて誘拐された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 彼女の誘拐が、日本と諸外国の外交問題、そして伊丹たちの行動の大きな引き金となった。

テュカ・ルナ・マルソー

伊丹に強い想いを寄せるエルフの女性である。家庭的な振る舞いで彼の関心を引こうと試みる。

・所属組織、地位や役職

 エルフ。

・物語内での具体的な行動や成果

 ジゼルに働くことの意味を教え、エプロンを渡した。手料理と身の回りの世話で伊丹の心を繋ぎ止める作戦を選んだ。銀座の暴動から逃れる際、木箱が運び去られるのを目撃した。伊丹の病院脱出において、精霊魔法で警務官の注意を逸らす活躍を見せた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 精神的な寄り所として伊丹を強く求めており、日本の法制度や世間体とは異なる価値観を持っている。

料理長

アルヌスの食堂を取り仕切る人物である。レレイの誘拐計画に加担する。

・所属組織、地位や役職

 アルヌス食堂・料理長。

・物語内での具体的な行動や成果

 昼間から酒を飲むメイアを咎めた。レレイに睡眠薬草ナルコを混ぜた茶を飲ませて昏倒させ、帝国側のディアボ達と共に彼女を木箱に詰めて密かに送り出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 不明。

栗林(くりばやし)

陸上自衛隊の隊員である。同僚の富田を案じ、強引な手段に出る。

・所属組織、地位や役職

 陸上自衛隊。

・物語内での具体的な行動や成果

 富田の死亡フラグを折るため、自分を妻として届け出る案を提示し、婚姻届を迫った。銀座の暴動に巻き込まれた後、伊丹の病院脱出作戦に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 不明。

富田(とみた)

陸上自衛隊の隊員である。死亡フラグを立ててしまい、周囲を心配させる。

・所属組織、地位や役職

 陸上自衛隊。

・物語内での具体的な行動や成果

 栗林からの婚姻届の提出を拒否した。銀座の暴動時には、群衆を押しのけて道を切り開き、栗林とテュカを先導して逃走した。伊丹の病院脱出にも協力している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 不明。

ディアボ

帝国側の人物であり、レレイの誘拐を主導する。

・所属組織、地位や役職

 帝国側。

・物語内での具体的な行動や成果

 料理長らと結託し、昏倒したレレイを木箱に梱包した。レレイを傷つけることは本意ではないと釘を刺しつつ、運搬中の盗難を装って目的の相手に渡す計画を進めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 不明。

駒門(こまかど)

自衛隊関係者(公安部門)である。冷静な状況判断と行動力を持つ。

・所属組織、地位や役職

 公安部門。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座のデモの異変にいち早く気づき、発煙筒を使用して脱出を図った。テュカの病院宿泊を巡って黒川と交渉したが、彼女の規則至上主義の前に沈黙した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 マスコミの報道隠蔽に対して強い苛立ちを見せ、伊丹たちに事実を共有した。

ピニャ・コ・ラーダ

正統政府軍を率いる皇太女である。冷静な分析力と決断力を持ち、内乱の終結を目指す。

・所属組織、地位や役職

 正統政府軍・皇太女。

・物語内での具体的な行動や成果

 ゾルザル軍一万の来襲に対し、籠城ではなく野戦で迎え撃つ決断を下した。部下たちにゾルザルの劣等感や過去の失敗を語り、彼への恐れを払拭させた。戦場では局地優位戦術を用い、後方休息を指示しながら粘り強い防御指揮を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 前線に立つ指揮官として、亜人部隊や騎士団の士気を繋ぎ止める重要な役割を担っている。

ゾルザル

帝国軍の主力を率いる皇太子である。英雄を気取る一方で、劣等感と臆病さを抱えている。

・所属組織、地位や役職

 帝国軍・皇太子。

・物語内での具体的な行動や成果

 イタリカを急襲し、正面攻撃を仕掛けた。ピニャが野戦を選んだ理由を誤読し、皇帝の退路を断つための行動をとった。時間を焦り、ボウロの別働隊による成果を期待している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 ピニャからは「本来は臆病で賭けに出る気概はない」と評されている。

ヘルム

ゾルザル軍の将軍である。戦術に長け、状況に応じて柔軟な指揮をとる。

・所属組織、地位や役職

 ゾルザル軍・将軍。

・物語内での具体的な行動や成果

 千人規模の部隊を段階的に投入し、ピニャ軍に圧力をかけた。一時後退を命じて戦線崩壊を防ぎ、その後は亜人の追撃衝動を誘発する分断戦術を構想した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 ピニャの指揮能力を敵手として評価している。

メイド長(ラム)

フォルマル伯爵家の城館を取り仕切るメイド長である。皇帝とミュイの守護を最優先とする。

・所属組織、地位や役職

 フォルマル家・メイド長。

・物語内での具体的な行動や成果

 ゾルザル派の密偵による襲撃に対し、迎撃と防衛線を徹底させた。皇帝の寝室へ急行し、護衛の騎士に死守を命じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 不明。

皇帝モルト

帝国の皇帝であり、病床にありながらも冷徹な政治判断を下す。

・所属組織、地位や役職

 帝国・皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果

 ゾルザルに統治の才覚がないと語った。戦況が悪化する中、退避を拒否し、シェリーを日本への特使(亡命者のパイプ役)として任命した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 自らの責任を認めつつも、次代へ向けた布石を打っている。

シェリー

伯爵夫人であり、皇帝のお気に入りである。聡明で政治的な洞察力に優れている。

・所属組織、地位や役職

 伯爵夫人。在ニホン帝国大使(特使)。

・物語内での具体的な行動や成果

 ミュイに対して統治の才覚について説明した。皇帝から日本への特使という大任を命じられ、断れない形で引き受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 皇帝からの信頼が厚く、万が一の敗戦に備えた重要な役割を担うこととなった。

健軍(けんぐん)

自衛隊第四戦闘団を率いる一等陸佐である。作戦の遂行と部下の安全の間で苦悩する。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊第四戦闘団・一等陸佐。

・物語内での具体的な行動や成果

 ヘリボーンによる急襲で帝国軍の拠点を連続して陥落させた。神子田からの合コン要求を条件付きで了承した。退去準備命令「韋駄天」が発令された際、イタリカ防衛を主張する倉田を退け、撤退の準備を命じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 戦況を的確に判断する一方で、上層部からの命令と現場の感情との間で板挟みになっている。

デュラン

エルベ藩王国の国王である。自ら前線に立ち、兵を鼓舞する勇猛な性格である。

・所属組織、地位や役職

 エルベ藩王国・国王。

・物語内での具体的な行動や成果

 ヘリでの空中戦において、兵士たちに具体的な指示を出して鼓舞した。敵将ボダワンと空中で格闘になり、義手に仕込んだ短弓で彼を射殺した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 左腕を失っているが、それを逆手にとった戦い方で勝利を収めた。

古田(ふるた)

ゾルザル陣営に潜入している自衛隊の工作員である。料理人として振る舞っている。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊・潜入工作員(料理人)。

・物語内での具体的な行動や成果

 退去命令「韋駄天」を受けたが脱出できず、補助兵に紛れ込んだ。ボルホスに随行し、テューレの尋問現場に居合わせた際、彼女の前で正体を現した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 彼の存在がテューレの精神を大きく揺さぶることとなった。

テューレ

ゾルザルに侍る奴隷であり、密かに彼への復讐を企てている。

・所属組織、地位や役職

 奴隷。

・物語内での具体的な行動や成果

 捕らえた男たちを過激な手段で尋問し、ボウロの策謀を聞き出した。古田が姿を見せたことで激しく取り乱し、泣き叫んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 屈しない態度を見せていたが、古田の存在によって精神的な脆さを露呈した。

森田(もりた)

日本の首相である。中国などの外交圧力に屈しやすく、事なかれ主義の傾向がある。

・所属組織、地位や役職

 日本政府・首相。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座占拠事件に関して中国の楊大使を詰問したが、逆に恫喝された。米国のディレル大統領に助力を求めたが拒絶され、「門」の管理を国連に委ねる方針を示した。中国の多方面からの圧力に耐えきれず、狼狽して崩れ落ちた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 彼の弱腰な姿勢が、夏目や嘉納による倒閣工作を招く原因となった。

夏目(なつめ)

日本の防衛大臣である。国防と主権の維持を最優先に考える強硬派である。

・所属組織、地位や役職

 日本政府・防衛大臣。

・物語内での具体的な行動や成果

 森田の国連委任案に強く反対し、領土を守るための抑止力の必要性を説いた。嘉納と共に、特地派遣部隊に自由な行動を許す訓令の起草と、森田を引き下ろすための倒閣工作を決意した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 中国の「超限戦」を正確に分析し、危機感を持って行動している。

嘉納(かのう)

日本の外務大臣である。現実的で決断力のある政治家である。

・所属組織、地位や役職

 日本政府・外務大臣。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座の暴動収束のため、いっそ「門」の破壊を容認する冷徹な提案を出した。森田の弱腰に失望し、夏目と共に倒閣工作を主導し、自らが次期首相を引き受ける覚悟を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 「政治家の戦争」として、国家の危機に対処するための強硬手段を選択した。

黒川茉莉(くろかわ まり)

自衛隊中央病院で働く看護師(自衛官)である。伊丹の価値観に影響を受け、過激な言動をとる。

・所属組織、地位や役職

 自衛隊中央病院・看護師(三等陸佐)。

・物語内での具体的な行動や成果

 隔離された伊丹の管理を任され、脅迫的な言葉や過剰な医療行為(体操や湿布の強要)で彼を威圧した。駒門たちに対しても病院の規則を盾に長文で罵倒した。後に伊丹の病院脱出に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 特地での経験を経て性格が変質しており、現場の不満を晴らすような容赦のない態度を見せる。

栗林菜々美(くりばやし ななみ)

日本のジャーナリストである。報道の偏りに直面し、葛藤する。

・所属組織、地位や役職

 ジャーナリスト。

・物語内での具体的な行動や成果

 銀座の暴動が報じられないことに絶望した。警察への暴行を撮るよう指示したが、砂川に偏向取材だと指摘され、自らの姿勢を省みて反省した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 報道の真実と、メディアの別の目的(絵作り)との間で揺れ動いている。

出来事一覧

01

ジゼルの無銭飲食騒動
  • 当事者: ジゼル vs 食堂のウェイトレス(料理長)
  • 発生理由: ジゼルがアルヌスの食堂で無銭飲食を行い、伊丹の名前を出して支払いを免除されようとしたため。
  • 結果: 特別扱いは認められず、ロゥリィやレレイに借金の肩代わりを拒否された末、ジゼルは食堂のウェイトレスとして働いて借金を返済することになった。
女性陣の作戦会議とカトー老師との小競り合い
  • 当事者: テュカ、レレイ、ヤオ、ロゥリィ vs カトー老師
  • 発生理由: 伊丹を特地に留めるための策を女性陣が協議している際、カトー老師が現れてレレイの料理を揶揄したため。
  • 結果: 小競り合いが発生したが、テュカは手料理と世話で伊丹の関心を引く戦術を選んだ。
栗林の婚姻届強要
  • 当事者: 栗林 vs 富田
  • 発生理由: 栗林が富田の「死亡フラグ」を折るため、自分を妻として届け出る案を提示し、署名捺印済みの婚姻届を迫ったため。
  • 結果: 富田はこれを拒否し、栗林は舌打ちをして婚姻届を懐へしまい込んだ(未遂)。
レレイ誘拐事件
  • 当事者: 料理長、ディアボ達(メトメス、パナシュなど) vs レレイ
  • 発生理由: ディアボ達がレレイを保護しつつ「門」を閉じる計画を妨げるため。
  • 結果: 料理長が睡眠薬草ナルコを飲ませてレレイを昏倒させ、ディアボ達が彼女を木箱に梱包して密かに運び出した。
銀座でのデモ暴徒化と木箱略奪
  • 当事者: 国際NGO(暴徒化したデモ隊) vs 警察・機動隊、自衛隊(駒門、富田、栗林、テュカ)
  • 発生理由: 銀座でのデモの一部が突如として暴徒化し、駐屯地から出ようとしたトラックを襲撃したため。
  • 結果: 暴徒が積み荷を略奪し、「壊れ物」表示の木箱(レレイが入っている箱)を運び去った。駒門らは発煙筒を使用して脱出した。

02

イタリカ城外会戦(緒戦)
  • 当事者: 正統政府軍(ピニャ、亜人連合等) vs ゾルザル軍一万(ヘルムら)
  • 発生理由: ゾルザルがイタリカを決戦場として急襲し、ピニャが内乱を早期に終わらせるためにあえて籠城せず城外で迎え撃ったため。
  • 結果: 両軍が正面衝突し苛烈な死傷者が続出。正統政府軍は多種族の強みを活かして堅守し、ピニャの局地優位戦術と白薔薇隊の速攻により一進一退の攻防となった。
フォルマル家城館への密偵侵入
  • 当事者: フォルマル家私兵、戦闘メイド(メイド長、ペルシアら)、騎士団(シャンディーら) vs ゾルザルの密偵集団
  • 発生理由: ゾルザル勢の密偵が皇帝の身柄を狙い、城館へ力尽くで踏み込んできたため。
  • 結果: 館内が戦場となり、メイド長が防衛線を敷いて迎撃と追跡を開始した。

03

レッキ要塞へのヘリ急襲
  • 当事者: 自衛隊第四戦闘団(健軍一佐ら) vs 帝国軍(ゾルザル派)
  • 発生理由: ゾルザル討伐の合同軍が、帝国軍の布陣を崩すため後方拠点へ奇襲を仕掛けたため。
  • 結果: ヘリボーン部隊による急襲で城塞が陥落し、帝国軍は指揮系統が崩壊して包囲殲滅された。
翼竜部隊の対ヘリ奇襲と空中戦
  • 当事者: 帝国軍翼竜部隊(ボダワンら) vs 自衛隊ヘリ部隊、エルベ藩王国軍(デュラン王ら)
  • 発生理由: 翼竜部隊がヘリの弱点を狙い、鎖製投網を投下して奇襲を仕掛けたため。
  • 結果: 一部のヘリが墜落・炎上。デュラン王が敵将ボダワンと空中で格闘になり、仕込み短弓で射殺した。その後、航空自衛隊のファントムが参入し、翼竜部隊を粉砕して制空権を確立した。
神子田一佐による合コンの強要
  • 当事者: 神子田一佐(航空自衛隊) vs 健軍一佐
  • 発生理由: 救援に駆けつけた神子田が、見返りとして合コンの開催を執拗に要求し、返事がないと墜落すると脅迫したため。
  • 結果: 健軍は内心で悪態をつきつつ、「席を設けるだけ」という条件付きで渋々了承した(威嚇による強要)。
状況「韋駄天」発令を巡る対立
  • 当事者: 倉田 vs 健軍一佐
  • 発生理由: 退去準備命令「韋駄天」が発令され、目前のゾルザル討伐とイタリカ防衛を優先したい倉田が撤退指示に激しく反発したため。
  • 結果: 健軍は私情を挟めないと苦渋の決断を下し、単独行動を叫ぶ倉田を部下に制止させて黙らせた。
テューレの尋問と古田の露見
  • 当事者: テューレ vs 男たち(ボウロの手下等)、古田
  • 発生理由: ボウロの策謀を探るため、テューレが男たちを追い込んで情報を吐かせたため。その後、テューレが衣服を求めた際に古田が正体を現した。
  • 結果: 尋問された男たちは死亡。古田が姿を見せたことでテューレは激しく取り乱して泣き叫び、ボルホスの注目を集める結果となった。
銀座駐屯地占拠事件
  • 当事者: 国際NGO(中国人武装勢力中心の暴徒) vs 警察・機動隊、自衛隊
  • 発生理由: 特地開放などを求めるデモ隊が暴徒化し、特地派遣部隊を人質に取る目的で銀座駐屯地を襲撃・占拠したため。
  • 結果: 駐屯地が占拠され、特地との通信網が切断された。武装集団の混在が疑われ、自衛隊は発砲を控えて退避した。

04

森田首相と楊大使の会談
  • 当事者: 森田首相 vs 楊大使(中国)
  • 発生理由: 銀座占拠事件を受け、森田が中国大使を呼び出して事態の説明と抗議を行ったため。
  • 結果: 楊は関与をとぼけつつ、特地への移民受け入れや共同開発を要求。切り札としてレレイの杖を提示し、特地派遣部隊の孤立をちらつかせて森田を恫喝した(言葉による威嚇・葛藤)。
森田首相とディレル大統領の電話会談
  • 当事者: 森田首相 vs ディレル大統領(米国)
  • 発生理由: 中国の圧力に対抗するため、森田が米国に同盟国としての助力を求めたため。
  • 結果: ディレルは「門」の国連管理を要求し、日本の独占阻止を鮮明にした。森田は失望して通話を切り、米国側は独自に中国の「切り札」確保へと動き出した。
中国による多方面同時攻勢
  • 当事者: 中国政府 vs 日本政府
  • 発生理由: 日本に「門」関連の要求を呑ませるため、中国が各分野から一斉に圧力をかけたため。
  • 結果: 日本人商社マンの逮捕、尖閣への艦隊接近、急激な円高の誘発、大使館デモ、サイバー攻撃による交通インフラ停止などが同時多発し、森田首相は崩れ落ちた。
伊丹の悪戯騒動
  • 当事者: 伊丹耀司 vs 病院職員・警務官
  • 発生理由: 中央病院の隔離病棟で、伊丹が体内の寄生生物が飛び出すふりをして悪ふざけをしたため。
  • 結果: 院内でサイレンが鳴る大騒ぎとなり、完全武装の警務官と火炎放射器装備員が配置される厳戒態勢となった。
黒川の過剰医療と暴行未遂
  • 当事者: 黒川茉莉 vs 伊丹耀司
  • 発生理由: 退屈する伊丹に対し、黒川が過剰な体操を強要し、さらに湿布の全身貼付を強行しようとしたため。
  • 結果: 黒川が伊丹を組み伏せてズボンを下ろそうとした瞬間、見舞いに来たテュカたちに目撃され中断した(暴行未遂)。

05

テュカの宿泊を巡る口論
  • 当事者: 黒川茉莉 vs 駒門、伊丹
  • 発生理由: 銀座の暴動からテュカを保護するため、駒門たちが病室への宿泊を要請したが、黒川が病院の規則を盾に拒絶したため。
  • 結果: 黒川が長文の罵倒で駒門たちを圧倒し、最終的に「管理者の許可を取る」という条件で決着した。

06

取材方針を巡る菜々美と砂川の対立
  • 当事者: 栗林菜々美 vs 古村崎、砂川
  • 発生理由: 暴動が報道されないことに憤る菜々美が、警察への暴行など過激な場面を撮るよう指示したのに対し、砂川が偏向取材だと指摘したため。
  • 結果: 菜々美は自分の反感による取材対象の偏りを自覚し、衝撃を受けて反省した。
森田首相と閣僚の対立と倒閣工作
  • 当事者: 夏目防衛相、嘉納外相 vs 森田首相
  • 発生理由: 森田が中国の圧力に屈して「門」の管理を国連に委ねようとし、夏目と嘉納が主権侵害だと猛反発したため。
  • 結果: 森田は解任を示唆して方針を強行しようとした。嘉納と夏目はこれに対抗し、特地派遣部隊に自由な行動を許す訓令を起草するとともに、閣僚の一斉辞任による倒閣工作を決意した。
イタリカ夜戦とヴィフィータらの突撃
  • 当事者: 正統政府軍(ヴィフィータ、ボーゼスら) vs ゾルザル軍
  • 発生理由: イタリカでの野戦が夜戦に突入して膠着し、ピニャ側の戦線が疲弊してきたため。
  • 結果: ヴィフィータとボーゼスが相次いで出撃・突撃し、敵の奇襲を蹴散らした。しかしピニャの周囲の護衛戦力が大きく減少した。
フォルマル家城館への“影戦”大規模襲撃
  • 当事者: ゾルザル派の影戦組織(ハリョ) vs フォルマル家戦闘メイド(ペルシア、マミーナら)
  • 発生理由: ゾルザル派が城館深奥への突破を狙い、百人規模の密偵で襲撃を仕掛けたため。
  • 結果: メイド達は乱戦に持ち込み迎撃。敵は若い獣人を残して足止めを図ったが、ペルシアは掴まれたスカートを切り捨てて追跡を継続した。
病院脱出作戦
  • 当事者: 伊丹耀司、テュカ、黒川、栗林、富田 vs 警務官
  • 発生理由: レレイ誘拐の可能性を知った伊丹が、真相確認と救出のためアルヌスへ帰還すべく、病院の監視網を突破しようとしたため。
  • 結果: 黒川らの協力を得て病室を抜け出し、地上で待機していた警務官の注意をテュカの突風(精霊魔法)で逸らすことで、完全な脱出に成功した。

展開まとめ

01

自衛隊の進軍と隊員達の高揚

陸上自衛隊特地派遣部隊の戦闘・輸送車両は長い列を成してアルヌスの砂利道を進んでいた。巻き上がる土埃の中でも隊員達の士気は高く、これが帝国との最後の戦いになると理解していたため、それぞれが戦争の終結と帰還への期待、そして決着への決意を胸に進軍していた。アルヌスの丘は、その決意に満ちた熱気に包まれていた。

門の閉鎖を前にした街の空虚と不安

一方で、アルヌスのPXでは客の姿がまばらとなり、門が閉じられた後の街の未来を強く意識させていた。隊員達の戦意が高まるほど、ここに暮らす者達の間には寂寥感が広がっていた。猫耳の店員メイアは非番のため昼間から酒を飲んでおり、料理長はその姿を咎めたが、メイアはやるべきことは全て済ませており、時間を持て余しているだけであった。

門の閉鎖がもたらす生活と恋の不安

メイアはアルヌスに娯楽がなく、友人と会っても門の閉鎖後の不安な話題ばかりになるため、酒に頼っていた。また、戦いに向かう日本人の男性に想いを寄せており、他の男と遊ぶ気になれないと語った。しかし彼を引き留めることは、彼に家族との別れを強いることになるため望んでいなかった。さらに、日本へ移住する選択肢も提示されていたが、異文化の中で生きることへの不安や、差別的な視線を向けられた経験から、決断できずにいた。

アルヌスに残りたいというメイアの願い

門が閉じれば街の価値は低下し、多くの人々が去ることが予想されていた。メイア自身も配置転換の可能性を示唆されていたが、アルヌスへの愛着からここを離れたくないと考えていた。食堂で働くことを望んだものの、料理長は新人の竜人女性ジゼルが借金のために働かされている事情を明かし、単純な配置転換とは異なる現実を示した。

神官ジゼルの転落と借金の現実

食堂で働くジゼルは、本来は冥王ハーディに仕える高位の神官であり、その姿は多くの者に衝撃を与えていた。傭兵達も彼女が下働きをしている現実に驚愕したが、ドワーフはそれが借金によるものであると語った。この出来事は、たとえ亜神であっても借金をすれば働いて返さねばならないという厳しい現実を示す象徴的な出来事であった。

ジゼルのアルヌス訪問と誤解

ジゼルはハーディから課された宿題の検分のため、伊丹やロゥリィ達の様子を確認すべくアルヌスへ向かった。伊丹達の乗るヘリコプターに同乗した際、拒否されなかったことから、ジゼルはアルヌス滞在中は当然のように歓待されるものと誤解していた。しかし伊丹は多忙であり、ジゼルの世話について何の取り決めもされていなかった。

無銭飲食の発覚と支払いの要求

アルヌス到着後、放置されたジゼルは当然のように食堂で飲み食いを行い、満足して立ち去ろうとしたが、ウェイトレスから勘定書を突きつけられた。ジゼルは伊丹の名前を出して支払い免除を主張したが、伊丹からそのような取り決めはないと確認され、支払いを求められた。さらにアルヌスにはハーディの神殿や信徒も存在せず、代わりに支払う者もいなかったため、ジゼルは完全に支払い義務を負うこととなった。

特別扱いされるロゥリィとの違いの理解

ジゼルはロゥリィが支払いを免除されていることを不公平だと主張したが、料理長はロゥリィがアルヌス協同生活組合の代表であり、街の運営者であるため特別扱いされるのは当然であると説明した。この事実により、ジゼルは自分が例外ではないことを理解し、逃げることも出来ない状況に追い込まれた。

借金返済を巡る絶望と交渉

ロゥリィ達が現れると、ジゼルはレレイに助けを求めたが、レレイは支払いを拒否した。ただし貸し付けることは可能であり、その場合は高利の利息が発生すると告げた。返済の見込みがない借金の危険性を理解していたジゼルは、それを拒否し、絶望して取り乱した。ロゥリィやレレイ達にからかわれ、身体で返済する可能性を示唆されて恐怖したジゼルは、自分の運命に怯えた。

食堂で働くことでの借金返済の開始

最終的にテュカは、身体で返すとは働いて返済することを意味すると説明し、ウェイトレスのエプロンを渡した。ジゼルはこれを受け入れ、接客や皿洗いなどの仕事を行うことで借金返済を始めることとなった。本来であれば十日ほどで返済できる額であったが、ジゼルは賄いの範囲を超えて酒や食事を楽しみ続けたため、借金は減らず、食堂で働き続ける状況に陥ったのである。

ジゼルは食事の美味さを理由にしながらも、終わらぬ借金返済の日々に悔しさを募らせていたのであった。

ジゼルの現在と過去の回想

ドワーフが語ったジゼルの物語を聞き終えたウォルフ達は、同情と自業自得の感情が入り混じり、評価を控えた。彼らが立ち去った後、ジゼルは客から置かれた銅貨を受け取り、その情けを深く実感した。店内では掃除に取り掛かり、汚れた床を這いながら清掃する中で、神官見習い時代の過酷な下積み生活を思い出した。長命種であるがゆえに昇進も遅れ、後輩に追い抜かれながら雑務に従事した過去の屈辱と孤独を思い返し、母の記憶とともに涙を流した。

ジゼルはかつて亜神となる天啓を受けたが、その理由を理解できず、境遇の変化を恐れて事実を隠した。しかし偶然の怪我の治癒をきっかけに露見し、周囲の態度は一変した。だがアルヌスでは亜神であっても容赦なく労働を課される現実に直面し、自らの手で働くことに納得と誇りを見出していた。

ロゥリィとの対話と人間への信頼

ロゥリィと対面したジゼルは、世界を滅ぼしかねない「門」とアポクリフの問題について、神が介入すべきだと主張した。しかしロゥリィは、人間自身に選択と責任を委ねることこそが成長に繋がると説いた。危険を排除するだけでは人間は成長できず、自らの意思で危機を乗り越えることに意味があると語ったのである。

さらにロゥリィは、使徒は神の命令に従うだけでなく、自ら考えるべき存在であると諭した。ジゼルは信仰に従うだけの姿勢を指摘され、自らの未熟さを自覚することとなった。

伊丹を巡る女性達の策略

その後、テュカ、レレイ、ヤオらは伊丹を特地に留めるための策を協議した。伊丹が現実の女性よりも空想の存在に強く関心を持つ傾向を分析し、単なる色仕掛けではなく、家庭的な振る舞いや感情的な繋がりによって彼の心を動かす必要があると結論付けた。テュカは手料理と身の回りの世話によって彼の関心を引く戦術を選び、他の者達もそれぞれの方法を模索した。

また栗林と富田は死亡フラグを回避するため、伊丹にそれを肩代わりさせようとする冗談めいた策を実行しようとしていた。ロゥリィはそれを利用して伊丹に結婚を意識させる契機とすることを考え、女性達は彼の心を繋ぎ止めるため協力することを決意した。

レレイの構想と誘拐

一方、レレイは「門」が閉じられた後の未来を見据え、新たな街と村を築く構想を進めていた。住民の生活を維持したまま移行する計画であり、日本の制度を利用して自治を確立することも視野に入れていた。しかしその壮大な構想は多くの者に理解されていなかった。

その最中、料理長が睡眠薬草ナルコを混ぜた茶をレレイに飲ませ、彼女は意識を失った。料理長と帝国側のディアボ達は、レレイを木箱に詰めて密かに「門」の向こうへ送り出そうとした。これはレレイを保護しつつ「門」を閉じる計画を妨げるための策であり、彼女の意思を無視した裏切りであった。料理長とメイアは葛藤を抱きながらも計画に加担し、レレイは荷物として運び出されることとなった。

ジゼルの現状と「働く」実感
ドワーフはジゼルの過去を語り終え、同情と自業自得の間で言葉に詰まるウォルフ達に深入りせず仕事へ戻った。彼らはジゼルへの“賽銭”として銅貨を置き、ジゼルもそれを受け取り、人の情けが身に沁みるようになったと実感した。店内が引けた後、ジゼルは酔い潰れた猫耳メイアを寝かせたまま、清掃と片付けに取りかかった。

過去の下積みが呼び起こす涙
床を這って食べこぼしを拾う作業は、神官見習い時代の過酷な雑用と重なった。凍った井戸の水、手荒れ、先輩の嫌味、長命種ゆえに閑職に回されず最下級に留め置かれた屈辱が蘇り、ジゼルは涙をこぼし、亡き母の記憶とホームシックまで噴き上がらせた。

亜神の発覚とアルヌスの“容赦のなさ”
ジゼルが亜神となった経緯は「運」や「主神に愛された」などと解釈されがちだが、本人は喜べず、事実を隠そうとした。しかし些細な怪我が瞬時に治るのを見られ噂が広まり、周囲は手のひらを返した。一方アルヌスでは、亜神と知りつつ請求書を突きつけ、払えないなら働けと言う。ジゼルはその“容赦のなさ”を悪態混じりに受け止めつつ、仕事を完遂した。

ロゥリィとの対話:門・人間・成長への賭け
ロゥリィはジゼルを貴賓室に呼び、アポクリフ拡大の報せに対し「門」に手出し無用、信じて待てと告げた。ジゼルは神が力で片付けるべきだと主張するが、ロゥリィは「危険を取り上げる」発想の延長は人間そのものの否定に行き着くと論じ、人間に選択の自由が与えられている以上、人間自身に決断と自覚を促す必要があるとした。ハーディがレレイに術を与えた意図もそこにあると示唆し、ジゼルには「自分で考える習慣」を求めた。

伊丹を特地に残すための“女の作戦会議”
テュカが私服姿の栗林・富田を伴い登場し、伊丹を特地に残らせるための“勝負”が共有された。ヤオは色仕掛けや寝台潜入を提案するが却下され、レレイは伊丹の嗜好を同人誌等の分析で説明し「色気で迫るのは逆効果」「不器用で拗ねた態度やギャップ、気持ちの迫り方が重要」「短期決戦に不向き」と断じた。テュカは手料理と世話(弁当・肌着・タオル)で家庭性を出す策を選び、ロゥリィも有効と評価した。ここでカトー老師が現れ、レレイの料理を揶揄して小競り合いとなった。

死亡フラグ騒動と栗林の婚姻届
栗林は富田の「死亡フラグ」を折るため伊丹の元へ連行すると言い出し、ロゥリィは“伊丹に死亡フラグ発言をさせる”ことで厄を移し、同時に結婚を意識させる狙いを語った。富田が嫌がると、栗林は自分を妻として届け出る案を提示し、署名捺印済みの婚姻届まで取り出すが、富田に拒否され、栗林は舌打ちしつつ婚姻届を懐へしまい込んだ。

レレイの「門」後の生活設計と、睡眠薬草ナルコ
皆が去った後、レレイは「門」を閉じる影響で生活が変わることが嫌われていると捉え、生活を変えずに済む代替案として、開拓民を募り複数の村と中心都市を新造し雇用を創出する計画を示した。アルヌスが自治体化され住民(日本国籍者)が代表を選ぶ仕組みも説明し、実現可能だと語るが、説明が少なく話が飛ぶ悪癖も描かれた。料理長は珍しい香草茶ナルコを勧め、実は眠りを誘う薬草だと明かすと、レレイは即座に倒れた。

レレイ拉致:木箱輸送と「中国」への連絡
現れた三者(メトメス、パナシュ、ディアボ役の一団)はレレイを縛り猿ぐつわをし、緩衝材入りの大型木箱に丁寧に梱包した。箱には「壊れ物」「天地無用」等のシールを貼り、PX返品の書類として扱えば検問で開封されにくい信用があることを利用した。メイアは恩知らずだと葛藤しつつも説得され送り状にサインし、パナシュは携帯で「ちゅうごく」に受け取り手配を依頼した。運搬中の“盗難”を装って目的の相手に渡す算段であり、ディアボはレレイを傷つけるのは本意でないと釘を刺しつつ計画を進めた。

銀座側の物流事情と、デモの異変
特地と日本の往来は厳重管理だが、銀座駐屯地には輸送と民間物流が出入りし、物資はドーム内で検査後に「門」を越える。一方、返品は送り状チェック程度で戻せる運用があり、ここが悪用され得る形になっている。テュカは積み込み作業の乱暴さに怒り、精霊魔法で声を届けて注意させた後、特別許可で通関し黒服運転手付き車両に乗り込む。

国際NGOデモが暴動化し、木箱が狙われる
銀座では「補償」「特地委託」「門を閉じるな」等を掲げる国際NGO主体のデモが渋滞を作っていた。駒門は統制の取れすぎた隊列に違和感を抱き、脱出を指示するが遅れ、デモの一部が突如として列を乱しトラック群を襲撃、荷を投げ落とし中身を探し始めた。略奪は便乗犯もいるが、中核は指揮系統付きで“何か”を探索していると駒門は見抜く。駒門は発煙筒で隙を作り脱出を図り、富田が群衆を押しのけて道を切り開き、栗林とテュカを先導して走り出した。テュカは「壊れ物」表示の木箱が暴徒にはなぜか慎重に扱われ、運び去られていくのを目撃したが、煙で追跡できなかった。

02

イタリカの停滞と士気崩壊
ゾルザル討伐の合同軍を送り出した後のイタリカは閑散とし、残留戦力(フォルマル伯爵家私兵・亜人諸部族・ピニャ騎士団)は当初の高揚を失って惰性で動いていた。白薔薇隊隊長ヴィフィータは、正統政府貴族が亜人を持ち上げておきながら、援軍到着と傭兵充足で亜人のポストをヒト種士官に差し替え、亜人部隊を“置き去り”にした掌返しを嘆いた。ピニャは恩義を強調して士気を繋ぎ、「決戦まで英気を養う」と言い聞かせるが、内心の不信は残った。

敵接近の報と斥候の連鎖
六肢族兵が敵接近を訴えるも、ダークエルフ警備隊長は当初一笑に付した。だが訴えが切実であるため剽悍な狼系獣人部隊を斥候に出し、狼族斥候が転げるように帰還したことで、敵が実際に迫っていると判明した。イタリカは騒然となり、ピニャはボーゼスに強力な幹部斥候の派遣を命じ、規模と目的の確認を急がせた。

ゾルザル軍一万来襲と、ピニャの確信
斥候報告により、ゾルザルの旗印を掲げる帝国軍約一万が接近していると確定した。ピニャは、ゾルザルが最初からイタリカを決戦場に定めていたと判断し、守勢で消耗して敗れるより乾坤一擲の大勝負に出る可能性を想定していたと語った。一方で「本来は臆病で、こんな賭けに出る気概はないはず」とも述べ、状況を“意外でもある”と位置づけた。

ゾルザル評:劣等感と英雄願望の滑稽さ
ピニャは、ゾルザルが英雄を気取る一方で劣等感が強く、貴族女性を直視できず奴隷女に逃げ、屈辱を嫌って虐待に走ると断じた。さらに、過去にゾルザルがピニャの寝所へ忍び込んだが拒絶されたこと、それが恥の上塗りとなり歪みを深めたことまで語り、部下達を茫然とさせた。ピニャはこの話を内密にするよう求め、結果として部下達から“恐れ”を抜き取り、ゾルザルを脅威視しない空気を作った。

籠城だけでは終わらないという判断
イタリカ残留兵力は八千に届かないが、籠城戦には十分であり、守り切れば援軍到着まで耐えられる状況であった。だがピニャは「それでは内乱を終わらせられない」と断言し、城外に出てゾルザルを迎え撃つ意志を示した。常道に反する方針に皆は驚くが、ピニャは理由説明のため、ボーゼス以下の子飼い幹部と亜人連合指揮官(ドッツエル、メイソン、エルナン、コルドール等)を広間へ招集するよう命じ、隊長格を集める動きが始まった。

野戦を選ぶ狙い:ゾルザルを逃がさない「決戦場化」
ピニャは、籠城すればゾルザルが遮二無二攻める一方、手間取れば臆病さゆえ「本隊が戻る前に見切って撤退し、別地で再起」すると見た。内戦を終わらせるにはそれを許さず、勝利が目前だと思わせ続けて時間感覚を奪い、味方本隊が帰還する瞬間までこの地に縛り付ける必要がある。そのために、あえて城外での野戦を選ぶと説明した。犠牲は増えるが、ゾルザルを逃がして内戦が長引くより総犠牲は減る、という計算であった。

隊長格の葛藤と亜人側の覚悟の転換
説明を聞いた隊長格は、犠牲を「顔と名前のある兵」として捉えているため沈黙した。グレイの「味方は本当に戻るのか、いつか」に対し、ピニャは断言できないが一両日中の可能性が高いと見積もった。これを受け、ドワーフ族長メイソンが先鋒を申し出て、ドッツエル、エルナン、コルドールら亜人指揮官も続いた。「ここで戦果を示さねば次も蔑ろにされる」という危機感が戦意を押し上げ、隊長の覚悟が兵へ伝播していった。

正面激突の緒戦:堅守する亜人混成軍
ゾルザル軍はイタリカの要害を背にした布陣に対し、回り込みが難しく正面攻撃を選ぶ。先鋒同士が槍と楯で力任せに衝突し、槍が折れ楯が割れ、死傷者が続出する苛烈な押し合いとなった。だが正統政府軍は隊列を崩さず踏みとどまり、ワータイガーの低い薙ぎ、ドワーフ重装の圧、エルフ弓の矢雨、巨人種族の乱打、サムツァの刺突など、多種族の強みを積み上げてゾルザル軍を攻めあぐませた。

ゾルザル側の見立て:包囲と退路監視、波状投入
ゾルザルは「小勢でも正面は手間取る」と退屈げに語り、ヘルムは「籠城は堅いが逃げられない。野戦は囲まれないため」と解説した。ゾルザルはピニャが包囲を嫌う理由を「皇帝(ここでは自分側の認識として“逃げる者”)の退路確保」と誤読し、逃走監視の斥候を出して“大魚”を狙う構えを取る。ヘルムは第三・第四梯団を前進させ、千人規模の部隊を段階投入して圧をかけ、ピニャを奔命させる形を作った。

ピニャの局地優位戦術と統制問題
ピニャの野戦配備は約六千。ゾルザル軍は一万を千人単位で自在に動かし波状攻撃を行う。ピニャは都度、約千五百で局地優位を作って損害を抑えつつ粘るが、敵投入が三個を超えると本隊対応が必要になるため、戦場を狭くして参入を制限しようとする。ここで問題になるのが亜人兵の統制で、優位に立つと前進しがちで、他種族への対抗意識が隙間を生み、そこへ敵が突入する危険が増した。

白薔薇隊の騎兵運用:規律が生む速攻速退
第四部隊の接近で手が回らない局面に、ピニャはヴィフィータ(白薔薇隊)を投入する。白薔薇隊は楔形で突入し、ヴィフィータがロングスピアで敵将を落馬させつつ敵陣を攪乱する。隊列・歩調の揃った統制で歩兵を圧倒しながらも、混戦は不利と理解して戦果を欲張らず速やかに離脱する。「儀仗兵」と揶揄されていた規律が、ここでは最適解として機能した。

ヘルムの後退成功と戦線の小休止
ヘルムは予備戦力で支えつつ全軍に一時後退を命じ、追撃を禁じたピニャの方針も相まって、戦線崩壊を避けたまま距離を開くことに成功した。空白時間で双方が休息・武器交換・隊列入替・飲食を行い、短いながらも再編の機会が生まれた。

ヘルムの次手:亜人の「追撃衝動」を狙う分断
アブサンは正面激突を称賛するが、ヘルムは「愚の骨頂」と内心で捉え、次は亜人運用の弱点を突くと宣言する。再開後、二千〜三千を正面突撃させつつ、見せかけの後退と新手投入で拮抗を演出し、亜人兵が退却に釣られて陣列を飛び出す性質を誘発する。そこへ弓箭兵で指揮官を狙い、制止役を失わせて烏合化させ、波状攻撃で削り取る構えが示された。

城館内で始まる影戦:密偵侵入と防衛態勢
城外の野戦が続く中、フォルマル伯爵家の城館にもゾルザルの密偵集団が力尽くで踏み込んできた。迎撃はフォルマル家私兵と戦闘メイドが担い、メイド長は「皇帝陛下とミュイを守る」ことを最優先に据えて持ち場の維持を徹底させた。侵入者の追跡はキャットピープル部隊(ペルシア班)が行い、メイド長は今回を陽動と見て、混乱で配置が崩れないよう釘を刺した。

最終防衛線:寝室前のシャンディーとスィッセス
メイド長は皇帝の寝室へ急行し、扉前の警護として配置されていた騎士団女性士官に警戒を促した。そこに立つのはシャンディー・ガフ・マレアとスィッセス・コ・メイノであり、ピニャはこの二人を「死守」の任務で直々に任せていた。ピニャは二人を抱きしめ、命令が文字通りの死守になり得ることを理解した上で、最後の剣として託した。

寝室の状況:皇帝、内相、シェリー、ミュイとアウレア
寝室内には、寝台の皇帝モルトと内相マルクス伯爵、皇帝お気に入りの伯爵夫人シェリーが控える。フォルマル家当主ミュイは敷物の上で人形遊びを続け、相手はメイド服のメデュサ種アウレアであった。メイド長は異常なしを確認した上で、ゾルザル勢が攻め寄せていることを告げた。

統治の才覚の話:ミュイの問いとシェリーの説明
ミュイは「ゾルザルは皇帝になれないのか」と問う。皇帝は、巨大国家を保ち次代へ伝える才覚がゾルザルには足りないと述べ、説明役をシェリーに振った。シェリーは「人は地位に従うのではなく、従わせる力があるから従う。地位は飾りに過ぎない」と語り、期待と信用が人を支える構図をミュイに示した。
さらにミュイが「ゾルザルが悪い子だったからか、育て方が悪かったのか」と踏み込むと、皇帝は「至らぬ子に育てたのは自分だ」と責を引き受けつつ、責任転嫁をどこまでも遡っても状況は改善しないという方向へ話を転じた。シェリーも、自分の例を用いて「親の善悪が子の善悪を決めるわけではない」と結び、ミュイは「良い子になる」と応じ、メイド長(ラム)がそれを支える姿勢を示した。

シェリーの退避指示と皇帝の新任務
会話が落ち着くと、メイド長は「影戦が始まり館内も戦場になった」と警告し、シェリーに自室へ戻るよう促した。だが皇帝は、戦の結果は家族と共に待つしきたりだとして退室を退け、代わりにシェリーへ任務を授けると告げた。
任務は「在ニホン帝国大使」相当の役回りであり、今すぐ日本へ向かい、万一敗れた場合に亡命者を受け入れるためのパイプ役を担えというものであった。内相は大任だと難色を示すが、皇帝は交渉席での実績と、好意・同情を引き出せる点を理由に押し切る。マルクス伯は信任状を急ぎ作成し「今すぐ支度せよ」と命じ、シェリーは周囲の期待と「万が一」に備える必要性に押され、断れない形で日本行きを引き受けることになった。

03

第四戦闘団の突破:正統政府軍を「武器」に変える運用
第一〜第三戦闘団が各目標へ突進する中、健軍団長率いる第四戦闘団は、共同作戦で足枷になり得る正統政府軍を逆用し、敵拠点を連続して陥落させた。指揮所の図上では、帝国軍の集団(赤)が次々と緑の部隊に包囲され、参謀達は常識外れの展開に驚愕し続けた。ここで語られる要点は、前衛・中軍・後衛の連携(双頭の龍)という帝国的常道が、ヘリボーンによる敵中急襲で中軍ごと破砕され、指揮系統が崩れて烏合の衆へ堕するという構造である。

帝国軍の布陣崩壊:触覚前衛と後方拠点の急落
帝国軍は西方からの侵攻を想定し、要塞群を軸に前衛をまばらに広く展開して敵を捕捉し、中軍で支える設計だった。しかし本戦では「安全な後方」のはずの城塞群(補給庫を兼ねる)が急襲され、短時間で二つが陥落した。高度な情報収集、指揮継承、柔軟な判断が必要な包囲殲滅を、帝国側は実行できず、図上でも赤い駒が袋状に追い込まれていく。包囲網の口を閉じるため、回転翼機(青)が敵陣奥のレッキ要塞へ突進し、決定的局面を作ろうとしていた。

翼竜の対ヘリ戦術:鎖網投下からドッグファイトへ
帝国軍翼竜部隊は、ヘリの弱点(主ローター・尾部ローター)を狙い、鎖製投網を空中投下して編隊を崩させた。鎖は主ローター破壊こそ難しいが、安定を奪い、尾部ローターに絡めば機体を自転させ墜落に追い込める。実際に一部のUH-1Jが不時着・炎上し、帝国兵は久々の「勝ち」を感じて士気を上げ、翼竜部隊は急降下や側面攻撃に移行した。だが真正面・真上の突撃はローターブレードにより竜槍もろとも竜騎長が寸断されるなど危険が露呈し、戦いは弓矢とドアガンを交えた複雑な空中戦へ移った。

エルベ藩王国の奮戦:デュランの強引な介入
UH-1Jに同乗していたエルベ藩王国の将兵は弓矢で竜騎士を牽制し、国王デュランは「狙わずに矢をばらまけ」「当てずとも顔をかすらせろ」と具体的に鼓舞して突撃の勢いを鈍らせた。さらに正面から投擲された竜槍は、デュランが素手で握って操縦士を救い、その気迫で機内を圧倒する。機体は過負荷で限界に近づくが、デュランは上空の禿頭の老竜騎士を敵将と見抜き、機長を半ば強制して接近させる。

空中一騎打ち:デュラン対ボダワンの決着
敵将はゾルザル配下の将帥ボダワンであり、デュランの挑発に応じて槍合わせが始まる。機長の首を捻って強制的に回避・旋回させるデュランの無茶な操縦介入の末、デュランは空中へ投げ出されながらもポダワンに飛びつき、翼竜の鞍上で殴り合いに発展する。ポダワンが短剣で止めを刺そうとした瞬間、デュランの左腕に仕込まれた短弓が矢を放ち、ポダワンは胸を射抜かれて墜落した。デュランは「左腕などとうの昔に捨てた」と言い放ち、義手と仕込み武器の優位を示して勝利を確定させた。

航空自衛隊の介入:ファントム到来で制空が確定
なおも翼竜が群がる中、どこからともなく弾丸の奔流が翼竜を粉砕し、航空自衛隊の神子田一佐らがF-4ファントム四機で参入した。圧倒的な速度と20mmバルカン砲の火力により、翼竜部隊は追い回され、翼をもがれ、挽肉のように撃ち落とされていく。無限に続くかに見えた死の回旋は、空自の登場で終結し、味方側は一気に士気を回復した。

ファントム来援と第四戦闘団の消耗
健軍一等陸佐は、空自ファントムの来援で翼竜の脅威が薄れたことに安堵した。だが、上下左右に振り回され続けたヘリ内部は「ミキサー」にかけられたような惨状で、隊員は床や椅子にしがみついて疲弊し、投げ出された者や装備の欠落確認に追われていた。

神子田の“合コン要求”と強引な駆け引き
救援した神子田一等空佐は、礼なら合コンを開けと要求し、健軍が騎士団の娘と親しいという噂まで持ち出して嫉妬混じりに絡んだ。燃料が危ないとまで言い出し、返事がないと墜落すると脅す形で交渉を迫り、健軍は渋々「席を設けるだけ」と条件付きで了承した。神子田は満足して離脱し、健軍は内心で悪態をつきつつも着陸と状況確認を急がせた。

損害の現実と作戦継続の困難
地上では投網や翼竜の攻撃で墜落したヘリの残骸から負傷者が運び出され、自衛官とエルベ藩王国軍の双方に犠牲が出ていた。部下の報告では作戦続行自体は可能だが、怪我人の収容と後送に「ほぼ半日」かかり、第四戦闘団の作戦行動は大きく鈍る見通しとなった。健軍は救助と後送の最優先を命じた。

ゾルザルの動きとイタリカ転進判断
若い情報幕僚は、ゾルザル陣営に潜伏する「料理人」から「帝国軍がフォルマル伯爵領にいる」と報告が入ったと説明した。健軍は山岳地帯を横断した潜入を推測し、森の深さと偵察重点の偏りで捕捉できなかった可能性を指摘した。さらにイタリカでは正統政府軍が城外で応戦する構えと聞き、健軍は負傷者対応に必要な最小限を残して、残余戦力をイタリカへ転進しゾルザルを叩くと即断した。デュラン国王も参加を表明し、動ける兵を集めて同行する空気が高まった。

状況「韋駄天」発令という最悪の報せ
しかし情報幕僚は、より重大な報告として状況「韋駄天」(退去準備命令)の発令を告げた。これは「門」に異常が生じ、日本と特地の連絡断絶が迫る恐れが高い場合に、任務を放棄して可及的速やかに退去準備を行うという想定事態であり、続いて「脱兎」が出れば総員退去となる。あと一歩で勝利に届く局面で撤退準備を強いられる命令に、隊員たちは悔しさを抑えきれず、健軍も苛立ちと頭痛を抱えることになった。

倉田の反発と健軍の苦渋
通訳の倉田は、脱兎が出ていないなら今すぐイタリカでゾルザルを討てると食い下がり、皇太女やフォルマル家ら協力者を見捨てるのかと迫った。健軍は、門の異常が示す危機を「沈む船」に例え、いつでも退避できる態勢を取る必要があると説明した上で、私情で他の隊員を巻き込めないと苦渋の判断を示した。倉田は単独行動を叫ぶが部下に制止され、健軍は「黙らせておけ」と命じて機体を急がせた。

「韋駄天」の波及とイタリカの撤収準備
韋駄天の通信は特地で活動する全自衛官に流され、資源探査班や潜入工作員も直ちに引き返した。イタリカ駐在の菅原にも命令が届き、シェリーは旅装を整え、出発直前の状態となる。菅原は動揺を隠しつつ柳田二等陸尉のもとへ向かい、韋駄天の撤回を求めるが、柳田は閣議決定に基づくマニュアルであり現場判断では覆せないと退け、援軍が来ない以上イタリカ側は壊滅すると淡々と語った。

菅原の残留決意と関係者の反応
菅原は、特地専門の外務官僚としての立場、将来の国益と信頼のために自分は残ると宣言した。柳田はそれを「日本外交官の鑑」と評しつつも、若い“嫁”シェリーとの生き別れの可能性を突き、菅原は実家に託す段取りを述べた。柳田は条件付きで引き受け、デリラも最初は強がりながら結局同行を選ぶ。さらにゾルザル近くに潜伏する「料理人」古田も韋駄天を受領するが、現在位置と状況から脱出が容易ではないと困惑し、緊迫した局面で章が締まった。

古田の脱出工作と軍陣の偽装
古田はゾルザル軍のど真ん中に取り残され、脱出のため補助兵の列に紛れ込んだ。雑役夫と同じような貫頭衣姿で矢束を運び、後方警戒の薄い場所を探して抜け出そうとするが、百人隊長に呼び止められて進路を変えざるを得なくなった。

首席百人隊長ボルホスへの同行
呼び止めたのはボルホス首席百人隊長であり、古田は矢束を運ぶ要員として随行させられた。周囲の兵や士官が敬礼するほどの地位で、疑いではなく労いの言葉までかけられたため、古田は身分を悟られぬよう返事を合わせつつ同行を続けた。

前線の“女騎士”問題と亜人の処置要請
副隊長が、ピニャ配下の女騎士を前に兵の欲情が高まり、捕虜狙いで攻撃が鈍って逆に殺されると訴えた。ボルホスは「手加減するな」と命じればよいと言うが、戦場で興奮が煽られ続ければ統制不能だと押し返され、ボルホスは渋々、別方向へ向かって現場を確認しに行く流れとなった。

納屋の“拷問”の正体
朽ちた納屋から嬌声めいた悲鳴が漏れ、ボルホスは殿下命令で「拷問」だと説明したが、内部は想定と逆で、倒れて累々と横たわるのは男たちだった。中心にいたテューレは男を挑発と愛撫で追い込み、情報を吐かせると、限界まで搾り取って死に至らせる形で尋問を遂行していた。

テューレが引き出したボウロの策謀
テューレは、ボウロが皇帝血統にハリョを混ぜ、ハリョの娘にゾルザルの子を産ませて皇統を乗っ取る意図を持っていた、と下っ端から証言を得た。だが実際に殿下の傍に侍ったのはテューレと少数のヒト種奴隷であり、計算外だったためボウロがテューレに接近した、という筋立てが語られた。

ボルホスの動揺と鎖の破壊
用を済ませたテューレは、鎖を引きずりながら現れ、ボルホスにも挑発的に迫った。ボルホスは戦前に女を近づけるのを嫌うと退け、斧とハンマーで手首の鎖の環を叩き割って解放し、どこへなりと逃げろと告げた。

衣服要求と古田の正体露見
裸のままでは動けないとテューレが衣類と水を求め、ボルホスは補助兵(古田)に「何か着る物はないか」と尋ねた。その瞬間、古田が苦笑しつつ姿を見せ、テューレは驚愕してしゃがみ込み、身体を隠して「見ないで」と泣き叫ぶ。屈しない女が一転して取り乱したことで、ボルホスは原因である古田を注視する状況になった。

官邸招集と銀座駐屯地占拠の概要
安全保障会議が首相官邸で開かれ、危機管理監が事態を報告した。午前9時58分、銀座四丁目付近で行進中の国際NGO(「銀座事件の外国人被害者への補償を求め、特地を開放する会」)約3000人の一部が暴徒化し、銀座駐屯地から出ようとしたトラックを襲って積み荷を略奪、警官隊と乱闘になった。騒ぎは拡大し、投石やプラカードで暴れ、機動隊の放水にもかかわらず駐屯地を占拠して立て籠もった。要求は「門」を国連安保理常任理事国の共同管理下に置くこと、帝国側に外国人犠牲者への補償を約束させることであり、強硬手段なら「門」を破壊すると脅迫した。

初動の責任転嫁と武力行使の制約
官房長官の木檜が、素手の暴徒に侵入を許した理由を追及した。警察庁次長は、一部に自動小銃・ロケット弾・爆発物で武装した集団がいた可能性を示し、密輸は地理的に起こり得ると説明した。木檜は自衛隊にも「撃ち殺せばよかった」と責め立てるが、防衛大臣の夏目は、非武装と武装の識別が困難で民間人混在の状況での発砲は虐殺批判を招くと反論し、現場の撤退判断をむしろ妥当と位置付けた。さらに、平時から現場を縛っておいて有事だけ強硬を求めるのは矛盾だと指摘し、こちら側では「武装確認がない限り武力行使不可」という運用上の限界を明確にした。

駐屯地内の退避と通信遮断
統合幕僚長は、駐屯地の職員・隊員の多くが特地側へ退避して無事であり、助けを求めた観光客十数名も保護したと報告した。鉄扉を閉じ損ねたのは、その観光客を保護するためだったという。ただし、その連絡の最中に特地派遣部隊との回線が切断され、10時35分に光ファイバーを含む通信手段が使用不能になった。

暴動の計画性と“人質”構図の浮上
警察庁次長は、行動が異様に組織的で統制が取れており、単なるNGO暴走ではなく周到な計画の可能性が高いと述べた。外務大臣の嘉納は、これが特地派遣中の約2万6500人(文中表現)の自衛官を人質に取る魂胆だと整理し、危機管理監も妥当と認めた。

参加者の国籍構成と各国の思惑
公安情報として、デモ参加者の大多数が中国人、次いで韓国人、さらにロシア・英仏独米などが混在すると示された。観光ツアー名目で入国した体格の良い男性集団が統一行動しており、騒ぎの中心と見られた。中国政府の関与疑いが提示され、首相(森田)が中国大使を呼んで追及中とされた。要求が「国連管理」である点は、各国が自国利益ではなく日本の独占阻止だと主張できるため厄介であり、英仏独米は日本が賛成するなら共同管理機関に賛成し得る、韓国・ロシアは中国に積極協力、という整理がなされた。

「門」破壊の現実性と“切除”としての選択肢
危機管理監は、「門」は石積みで鉄筋もなく、勢いのついた車両衝突で破壊され得ると述べた。嘉納は、いっそ「門」が破壊されれば要求対象が消え、暴動収束の可能性があるとして、門喪失を容認する提案を出した。装備は更新予定の中古中心で損失は限定的、門閉鎖自体は元々方針、問題は現地に残る隊員規模だが「いずれ戻れる」前提なら許容可能という冷徹な危機管理論が展開され、政治判断とは何を犠牲にして全体を守るかだと説明された。

前提崩壊の報告:レレイ確保の可能性
会談を終えた首相・森田が合流し、中国側から「レレイ嬢の身柄」に関する示唆があり、中国側に確保された可能性を告げた。レレイの協力が帰還の鍵であるため、「門」喪失を容認しても隊員が戻れない危険が増し、嘉納案の成立条件が崩れたことで会議の空気は一転して蒼然となった。

04

首相・森田の招集と中国大使への詰問
銀座駐屯地が中国人武装勢力に占拠されたとの報告を受け、森田は安全保障会議を招集し、中国大使の楊を呼び出して説明を求めた。森田は強い口調で問いかけたが、怒り慣れていないため言葉に鋭さを欠き、外交上の主導権を握るには力みが目立った。

楊大使のとぼけと“多国籍デモ”へのすり替え
楊は「銀座の件はよく分からない」と惚け、国際NGOには中国人だけでなく米仏露韓なども参加していると述べ、なぜ中国だけを詰問するのかと論点を逸らした。森田は写真で中国人が多数であること、負傷者が出ており「デモではなく騒乱」だと反論したが、楊は「中国では珍しくない程度」と受け流し、政府関与を否定しつつ「民主国家なら外国籍でも意見表明に耳を傾けるべき」と正当化した。

武装の存在をめぐる“証拠”攻防
森田は、占拠勢力の一部に自動小銃やロケット弾で武装した者がいる報告と、「門」破壊によって特地派遣の自衛官を漂流者にすると脅している点を突き付けた。楊は「報道されているのか」と問い、報道されない以上「無いも同然」で客観的証拠を出せと迫った。森田は駐屯地が占拠され報道陣が近づけないと反駁するが、楊はその説明自体を材料にして、政府が情報を出せない状態を「信用できない」と構図化した。

要求の同質化と日本政府の強硬姿勢の固定
楊は、NGOの要求が「門の管理権を国連へ」という点を確認し、それが「国際社会が貴国に要求しているものと同じ」と位置づけた。森田は「テロに屈しない、交渉しない」「門閉鎖の決定は変更しない」と断言し、楊はそれを“自由な民衆の圧殺”と表現して、外形上の正当性を日本側から剥がそうとした。

数字の精確さが示す不穏と“平和的解決”の誘い
楊は「失敗すれば特地派遣の自衛官二万六千人は戻れない」と述べ、森田はその人数を正確に把握している点に違和感を覚えた。楊は個人的提案として、門閉鎖を撤回し、特地へ毎年五十万人の移民受け入れを求めた。森田は、移民流入は特地情勢を不安定化させ、領土切り取りによる「第二の中国」を作る意図すら疑うと拒絶したが、楊は“その分こちら側(=地球側)は安定する”と交換条件を匂わせた。

人口論と国内統治の論理による圧力の正当化
楊は十三億人口を「武器であり危険因子」と位置づけ、国家は自国民を養うために資源を掻き集めると語った。一人っ子政策の副作用として高齢化・人口構造の歪みが将来の不安定要因になるとし、特地への移民受け入れが重荷を減らし、結果として中国が“紳士的に振る舞える”と論じた。

反日教育をめぐる対立と“未来志向”の空転
森田は移民受け入れ以前に反日教育の是正を求め、「日本鬼子」と罵る状況を例に出した。楊は反日教育の存在自体を否定し、歴史教育は国内政治の火種であり、外国圧力に屈したと見なされれば国内不安定を招くと説明した。森田は「未来志向」で友好的にしてきたが裏切られてきたと述べ、尖閣問題などで譲歩してきた経緯を挙げた。楊はそれを逆用し、「友好に利益があるから譲ったのなら今回も譲れるはず」と迫り、企業活動や在中邦人の安全を引き合いに出して譲歩を要求した。

最終通告:共同開発協定の要求とレレイへの楔
楊は「二万六千人を漂流させたくなければ命令を聞け」と言い、国連管理では中国の利益が小さいとして、特地の共同開発協定を要求した。森田が拒絶すると、楊は「門を扱える娘(レレイ)がいなければどうにもならない」と切り札を提示し、包みからレレイの杖を出して見せた。森田は杖に見覚えがあり衝撃を受けるが、二万六千人の重さが反発を封じ、楊の勝ち誇った表情を前に、森田は抑えきれない憤りに震えるしかなかった。

ホワイトハウスでの電話と“見棄てない”の定義
任期満了が近い米大統領ディレルは、日本の首相・森田からの電話に対応した。森田は同盟国を見棄てるのかと詰るが、ディレルは「日本列島は中国膨張を抑える絶対防衛線」「米国は日本列島から退かない」と断言した。ただし対象は日本政府や日本人ではなく“列島”であり、森田はその含意を強く意識した。

対中認識の転換要求と日米の一体化の強調
ディレルは、従来の日本が米中間で均衡を取り繁栄する方針だったと述べつつ、それが中国を“化け物”に育てたと皮肉り、いまは日米が一体となって中国に当たらねばアジアの安定は維持できないと迫った。森田は米国も都合が悪い時に日本を槍玉に挙げてきたと反論し、近隣諸国に力を付けさせざるを得なかった経緯を示した。

“安全保障ではなく経済”としてのゲート介入
森田が「門」問題で中国寄りに見える態度を責めると、ディレルは「我が国にとっては安全保障より経済問題」と言い、利益最大化のためには日本との二国間交渉より国連安保理常任理事国の管理が相応しいと説明した。さらに、嘉納の説明など日本側情報は“日本のフィルター”を通っているとして、米国独自の調査と関与を求める姿勢を明確化した。

“独占への我慢”と国連管理要求の本音
ディレルは、異世界への道を開く技術を日本が独占していることに米国は耐えられないと述べた。国連管理を求めるのは真実を“つまびらかにする”ためであり、門が閉じられれば日本の独占を追認する形になるため、次期大統領マハナへの引き継ぎ前に手を打ちたいという国内政治の事情も示した。

銀座騒乱との関係否定と“同じ言葉”の不信
森田は各国首脳が同じ理屈・同じ言い回しで迫る点を「口裏合わせのようだ」と疑うが、ディレルは「真実は誰が語っても似る」と返し、銀座で起きている騒動自体は米国と無関係だと断った。森田が“漂流の脅し”を持ち出して揺さぶると、ディレルは初耳だと装い、説得の助力を申し出るが、森田は楊大使と話す方がマシだとして切り上げた。

通話後に明かされる米側の工作と誤算
電話を終えたディレルは補佐官に対し、NGOを焚きつけてキャンプギンザ包囲デモに参加させたことへの謝意を述べ、反捕鯨団体を混ぜた理由を問うた。補佐官は急場で他に使える団体が無かったと釈明する一方、当初は“外圧+座り込み”で日本の選択肢を絞る想定だったが、チャイナ側が水面下で別工作をしていると分析した。

中国が握った“切り札”の発生と米国の危機感
ディレルは、中国政府が米国との約束以上の要求を日本に突き付けていると見ており、森田が楊と話す方がマシと言ったことから、中国が日本を窮地に追い込む切り札を得たと推測した。補佐官は、日本がゲート技術を持つなら致命傷にならないはずと疑問を呈するが、ディレルは“チャイナが入手した切り札”を特定する必要があると結論付けた。

“助ける”ではなく“切り札の確保”へ
補佐官が挽回として日本支援を提案するが、ディレルは明確な依頼があるまで動くべきではないと退けた。優先すべきは中国の切り札の正体を探り、それを米国が確保することであり、任期残り僅かな自分が次代へ最低限の成果を残すのが使命だとして、補佐官に全力調査を命じた。

森田の報告と米中連携への疑念
森田が通話を終えると、官房長官の木檜が米大統領の反応を急かした。森田は、ホワイトハウスの反応が「森田を国連共同管理へ誘導するための芝居」には見えず、米中の連携は想定ほど噛み合っていない可能性、さらに中国の“抜け駆け”の可能性を示した。嘉納は「米中協調は長続きしない」と断じ、反捕鯨団体の投入がちぐはぐな証拠だと受けた。

レレイ確保の有無を巡る推理の対立
嘉納は、中国がレレイの身柄を確保しているなら銀座の「門」に執着せず、北京へ連れ帰って別地点で門を開けばよいはずだとして「未確保」説を提示し、夏目も一定の合理性を認めた。一方、森田は楊大使が示した杖の木目が以前見たものと同一で“本物”と確信し、レレイが中国の手に落ちている可能性は低くないと主張した。夏目は、杖入手の方法が想像できないから不可能と決めつけるのは危険であり、ミスリードの可能性も含め慎重に判断すべきだと釘を刺した。

不足情報下での決断という為政者の条件
嘉納は「情報が揃うまで待つのは最悪」と反論し、危機下では不完全な情報でも決断するのが為政者の責務だと強調した。危機管理監は状況を三つに整理した。①杖は偽物、②杖だけ入手(身柄なし)、③レレイ身柄を確保。いずれの場合も、中国が杖の存在を提示した狙いは「日本側の決断を遅らせる=時間稼ぎ」にあると結論づけ、夏目は「そう思わせるため」の可能性も併記した。

特地との連絡断絶と打開策の不在
時間稼ぎの目的は「門の向こう側への介入」を疑うべきだと危機管理監は見るが、特地派遣部隊と連絡する手段がないことが致命傷となった。ドームで遮蔽され、手旗・灯火・音響の類も使えず、現実的には使者を送り込む程度しかないが、群衆の目を盗んで門を越えるのは統合幕僚長が不可能と判断し、森田は落胆した。

中国による多方面同時攻勢の発動
その直後、各省庁から連続して“第二波”の報告が入った。中国国内で日本人商社マンが逮捕され、日本向け輸出品の通関が停止。尖閣へ中国海軍艦隊が接近し、数時間で領海侵入の恐れが示される。金融面では大量の円買いで急激な円高が進み、輸出企業に数兆円規模の為替損が発生し得ると財務大臣が読み上げた。さらに在中国大使館前の暴徒化デモで大使館機能が麻痺し、上海で日本料理店が襲撃される。国内ではATM回線がハッキングで停止し送金が麻痺、JRのダイヤ管理コンピューターも停止して列車が広範囲に止まった。

森田の崩落
軍事・外交・通商・為替・治安・サイバー・交通を同時に叩く全面的な圧力を前に、森田は「そこまでやるのか」と狼狽し、椅子からずり落ちる形で動揺を露呈した。

医療現場の気風と環境が人格を作るという導入
語り手は「血液型性格診断程度の信憑性」という断りを置きつつ、診療科や職場環境が医療者の性格傾向を形成すると説いた。整形外科は「削る・繋ぐ」の大工仕事に近く、病棟側も事故外傷の患者が多く、体力が有り余るのに安静を強いられるため荒れやすい。そのため、叱り飛ばせる“さっぱりした性格”が残るか、そうでなければ性格が変質するか配置換えになる、という因果が示された。ここから「特地の戦場」も同様に人格へ強烈に作用したと繋がる。

黒川茉莉の変質と伊丹的価値観の内面化
伊丹耀司の部下だった黒川茉莉は、戦場での死と苦痛、帝都の悪所での破滅を見続けた結果、伊丹の生き方――「息抜きの合間に人生」「楽しんだ者が勝ち」「気負うと損」――を真理に近いものとして受け入れてしまった。テュカの件で、自分の理屈より伊丹の“無謀”が効いたという敗北感も作用し、「遠慮しても無駄」「思うままに生きても案外どうにかなる」という学びが黒川の深層に沈んだ。

自衛隊中央病院での黒川の“臨時勤務”と苛烈な看護
黒川はなぜか自衛隊中央病院で白衣を着て働く。手際の良さで高評価を得る一方、食止め患者の買い食いを没収し「犬畜生以下」と罵倒し、拘束・おむつ・剃毛・バルーンカテーテルまで言い立てるなど、精神を折りかねない言葉の攻撃を行った。さらに隊員が看護師の臀部に触れた件では、打腱槌で頭を叩き、上司の叱責に「反射検査」と言い抜け、落語由来の“オクトパシー反射”なる屁理屈まで披露した。現場の不満が鬱積しやすい病棟で、黒川の容赦ない言動が一部の看護師に“スカッとする清涼感”として受け取られる空気も描かれる。

黒川が病院へ送られた理由と“防衛機密カルテ”
本来はアルヌスで「新難民」(帝国ゲリラで家や家族を失い保護された者)の対応をしていた黒川は、檜垣三等陸佐に呼び出され中央病院へ。院長と看護部長が示したカルテには「防衛機密」の押印だけで、住所年齢病名が空欄だった。唯一の情報は氏名「伊丹耀司」。情報を出せないが“患者をよく知るスタッフ”を寄越すと言われ、その役目が黒川に回った。入院理由は「伊丹の体内に異世界の謎の寄生生物がいる可能性があるので隔離観察」という突飛な命令で、院長自身も現実感のなさを吐露した。

伊丹の不良入院態度と警務官による厳戒化
伊丹は自分を患者と思っておらず、個室を漫画や同人誌めいた印刷物で埋め、隔離病棟を歩き回る。看護師は同情で黙認していたが、看護ステーション前で胸を押さえ「来やがった」と悶えて寄生生物の飛び出しを装う冗談を行い、院内がサイレン・警務官出動・物品散乱の大騒ぎとなった。憤慨した職員は「遠慮不要」と理解し、完全武装の警務官24時間帯同、火炎放射器装備員の待機まで決まる。

黒川による伊丹“管理”と脅迫的な言語医療
黒川は伊丹に病室待機を求め、再発時には「火炎放射器でウェルダン」「汚物は消毒」と滅菌名目で焼却処分まで示唆し、巨大な浣腸ポンプを手に威圧して従わせた。伊丹は黒川の過激化を指摘するが、黒川は「そう見えるなら隊長のせい」と返し、久々の病棟勤務への高揚や、看護職を離れた不本意さが影響している可能性を自覚した。また父が海自潜水艦の艦長であることを明かし、特地で活躍できない海自への皮肉も口にする。

見舞いの招致と伊丹の“解放感”の終わり
黒川はロゥリィ達を見舞いに呼ぶと告げ、伊丹は嫌とは言えないが隔離による解放感を失うことを恐れる。結果として伊丹は、美少女・美女の面会を受けつつ比較的大人しく過ごすようになり、看護師側も自分達の手がかからない限りは許容する雰囲気になる。

自衛隊体操と過剰医療の暴走、そして最悪の目撃
退屈を訴える伊丹に黒川は自衛隊体操を勧め、さらに「ビリーズ風のリズムでやれ」と強要して失敗させ、筋肉の損傷を診断めかして湿布の全身貼付実験を宣言する。伊丹が拒絶すると黒川は迫り、伊丹は組み伏せられ、パジャマのズボンを引き下ろされかけ、警務官も冷笑して傍観する。そこへ扉が開き、テュカが硬直し、背後に駒門と部下、顔に青あざの富田と寄り添う栗林が立ち尽くす形で、この“状況”を目撃して場面が切れる。

05

黒川の撤退と伊丹の“救出”
来訪者が揃うと、黒川はさすがに手を出せず壁際へ退いた。伊丹は半端に下がっていたズボンを直し、テュカ達を「救いの女神」のように歓迎した。

テュカのおめかしと差し入れの温度
伊丹はテュカの普段と違う装いに気づき、テュカは「ヨウジに会うから」と嬉しそうに見せた。衣類など入った袋を渡し、さらに伊丹の好物で揃えた弁当まで用意していた。中身はキャラ弁で、伊丹は恥ずかしさからすぐ蓋を閉じつつ強く喜び、テュカの「洗濯してあげる」という申し出には遠慮するが、「一緒に暮らした仲」という言葉で押し切られかける。

“世間体”問題と年齢の弁明
テュカの発言は周囲(駒門や部下、警務官A)の視線を硬くし、伊丹は反射的に「この娘、百六十五歳」と年齢を言って弁明した。以前ロゥリィ来訪時に「青少年保護」絡みの疑いで警務官に叱られ、訓告を受けた過去が語られる。黒川は日本の法制度を説明し、テュカは「禁じるより教育で制御を学ばせる」エルフ的感覚で違和感を示す。駒門は現場の基準設定の必要性として年齢線引きの現実を語る。

泊まり込み宣言と“銀座の騒乱”の共有
テュカは「今夜ここに泊まる」と言い、伊丹と黒川は即座に反発する。そこで駒門が前に出て説明し、伊丹と黒川はここで初めて銀座の騒乱(都市機能の混乱、銀行回線の障害、電車停止など)を知る。だがテレビ報道は銀座デモを同情的・平和的に描き、暴徒化や襲撃の実態は映らないため、伊丹は当初信じきれない。

“報道されない事実”への苛立ちと長野の想起
駒門は「信じろ」と迫り、北京五輪の聖火リレー(長野)で中国国旗が街を埋め尽くし、チベット旗の者が暴行されたが報道されなかった事例を挙げ、今回も同種の隠蔽だと示唆する。栗林がチャンネルを変え続けても裏付け映像は出ず、駒門と富田はマスコミへの怒りを露わにする。栗林は自分の体験として逃走の危険を語り、富田の青あざもあり、伊丹は状況を受け入れていく。

テュカを病院に預ける合理と、黒川の規則至上主義
結論として、銀座が危険で宿の手配も厄介なため「今夜はここでテュカを預かれ」という要請にまとまる。駒門は警備体制の強さ(散弾銃を持つ警務官)を示し、警務官Aも黙礼する。
しかし黒川は、病院には規則があり勝手に決めるなと冷静に遮り、駒門を罵倒に近い長文で圧倒する。「許可を取ってしろ」という一点に論旨を収束させ、伊丹も駒門も言葉の破壊力に沈黙する。栗林が「管理者の許可を取れと言っている」と通訳し、黒川も同意する。

06

報じられない銀座と菜々美の絶望
栗林菜々美は、怒号と投石が飛び交う銀座で放水を避けつつ車の陰に身を隠し、取材を重ねてきたにもかかわらず、地上波も衛星も騒乱を「存在しないかのように」扱っている現実に愕然とした。報道局へ電話すると「局長から“流すな・触れるな・臭わすな”のお達し」と告げられ、憤りは絶望へ変わる。

“今”報じない意味への問い
楯を構えた機動隊が警戒線を維持する一方、暴徒は石や火炎瓶を投げて銀座を占拠する。目の前の事実が報じられない状況に、菜々美は「今、報じなくて何の意味がある」と叫ぶ。上司は「映像を集め続けろ、いつか流せる」と諭すが、彼女の疑問は消えない。

ニュースの加工と別目的化への違和
菜々美は、報道は取材と編集で不可分の出来事を整理・取捨選択する営みであり、時間制約の中で不可避の加工があると理解している。しかし今回は、加工が“別の目的”に奉仕し、都合が悪ければ取り上げすらしない点に強い違和感を抱く。

古村崎の現実主義と“絵作り”の選択
現場に駆けつけた古村崎は「使ってもらえる絵を撮れ」と言い、機動隊に連行される外国人を撮らせる。乱暴に見える瞬間を切り取れば、警察の過剰さを印象づけられるからである。比較的穏当な座り込みの外国人のコメント取りにも向かうなど、放送可能性を最優先する姿勢を示す。

菜々美の対抗と“偏り”の自覚
菜々美は、孤立した機動隊員が袋だたきに遭う場面を撮れと指示し、暴動の凶暴さを伝えようとする。だがカメラマンの砂川は「反感から取材対象を偏らせている」と指摘し、「真実を流したいなら双方の映像を集めるべきだ」と諭す。
その言葉に、菜々美は頭を殴られたような衝撃を受け、自らの姿勢を省みる。

嘉納と夏目の同乗、森田への失望
首相官邸を出た嘉納は外務省車を断り、防衛大臣・夏目の車に乗り込む。森田が「門」の管理を国連安保理へ委ねると言い出したことに、嘉納は「参った」と漏らす。夏目は強く反対し、国益と主権の毀損を懸念した。

国連委任案と中国圧力の板挟み
森田は、安保理に預ければ責任を分散できると主張する一方、中国の圧力(人質化された商社マン、レアアース通関停止、急激な円高、尖閣での軍事的緊張)を挙げ、国内支持率や選挙への影響まで踏まえて弱腰を正当化する。夏目は、相手の言いなりはさらなる既成事実化(艦艇常駐・拿捕・上陸)を招くと警告する。

抑止の論理とフィンランドの例
夏目は、領土を守るには「多大な犠牲を払わせる覚悟」を示す抑止が不可欠だと説き、先の大戦前夜のフィンランドを引き合いに出す。勝敗だけでなく「侮れない」と思わせることが独立維持に繋がると主張し、国家は愛されるだけでなく“恐れられる”側面も必要だと訴える。

話し合い信仰と対米依存の提示
森田は暴力の論理を嫌い、「いじめは話し合いで解決できる」と述べ、最終的には米国の関与に期待する。特地と「門」は安保理へ委ね、その代わり中国を牽制する働きかけと、尖閣を安保条約の対象と明言させることで均衡を図る構想を示す。

解任示唆と時間の猶予
夏目が強く翻意を求めると、森田は首班としての意思を盾に解任を示唆する。嘉納が最終手段としての安保理委任を留保し、外務省で打開策を探ると取りなすと、森田は「明日まで待つ」と期限を区切り、従わねば既定方針で進めると閣議決定として念押しした。

虚脱の夜景と指導者論
霞が関を走る車中、夏目は灯りの消えない官庁の窓を見上げ虚脱を滲ませる。嘉納は、無難に仕事をこなし上司に気に入られる者が昇る組織の性質が、調整型で事なかれ主義の人材を残し、指導者に不向きな者を頂点に据えがちだと評した。

抑止と“中途半端な平和主義”への批判
夏目は自らを暴力主義者かと問うが、嘉納は否定する。守るべき一点で血を流す覚悟を示すことが、結果として流血を減らす抑止になると説き、ナチス台頭期の対応を例に「中途半端な平和主義が悲劇を拡大する」と指摘する。

中国の“超限戦”という枠組み
夏目は、中国が軍事に限らず全領域を戦場とする「超限戦」を仕掛けていると説明する。メディア戦、金融戦、資源戦、心理戦、サイバー攻撃などを統一指揮で展開し、毛沢東思想に基づき相手の資金や武器を利用する手法で、日本は“利用された味方”とも戦う消耗戦を強いられていると分析する。

安保理委任の真意と森田の見誤り
特地と「門」を安保理へ委ねさせる動きも、その一環で日本を多次元で弱らせる狙いだと見る。だが森田はそれを理解せず、責任回避へ傾いていると二人は沈黙する。

レレイの所在と“動かせる手札”
夏目はレレイがなお特地にいる可能性を問う。嘉納は根拠なき直感を示す。夏目は、自身は監視下で動けないが、嘉納には動かせる友人がいると示唆する。特殊作戦群の投入は総理に察知される恐れがあるため、嘉納が“けしかけ役”を担い、後始末は共同で整えると合意する。

訓令の起草と政治の一手
夏目に、防衛大臣署名入りで「国益確保のため必要なあらゆる処置を許可する」内容の訓令を特地派遣部隊へ出させる方針を決める。閣議に逆らわず現行方針の範囲内で動く建て付けである。

総理退陣工作という“政治家の戦争”
さらに嘉納は、全閣僚の一斉辞表で森田を引き下ろす策を提示する。自らが選挙前に首相を引き受ける覚悟を示し、制服組が命を懸けるなら政治家も政治生命を賭すべきだと宣言する。「こいつが俺達の戦争だ」と言い切り、夏目に協力を求めた。

イタリカ城外会戦の膠着と消耗戦
ゾルザル軍とピニャ軍の会戦は、開始から半日を経ても決定打が出ず、夜戦へ移行して膠着した。両軍は消耗部隊を下げ、予備を投入して戦線を支える持久戦を繰り返したが、戦力に劣るピニャ側にとっては損害が累積し、悪循環で戦意と体力が削られていく構図であった。

白薔薇隊ヴィフィータの反復突撃
戦線の綻びが報告される中、満身創痍のヴィフィータは再度の出撃を宣言し、女性騎士たちを鼓舞して前線へ駆けた。粗野な言葉遣いを窘められつつも、彼女は「男どもに活を入れる」と豪語し、恋や生死を絡めた挑発で士気を焚き付け、白薔薇の隊旗の下で夜の戦場へ突入した。

黄薔薇隊ボーゼスの前進と“花”の減少
ヴィフィータに続き、妊娠中のボーゼスも後方に籠もることを拒み、黄薔薇隊を率いて前進した。これにより、ピニャの周囲を固めていた戦力が次々と前へ出ていき、指揮所の周囲から“花”が減っていく光景が生まれ、ピニャは赤薔薇隊のみを背負う形で戦場を凝視することになる。

ピニャの持久判断と後方休息の指示
ピニャはハミルトンに対し、遠方の情勢確認よりも目前の維持を優先するよう命じ、第二線部隊に交代休息と食事を隊列維持のまま実施させた。最前線の血戦の背後で、兵を座臥させ補給する運用は、崩壊を避けるための粘り強い防御指揮として描かれた。

ゾルザル軍指揮官ヘルムの評価と味方の軽率
ゾルザル軍の将軍ヘルムは、亜人突撃や揺さぶり、偽装撤退など多様な手を打ってもピニャが動じないことに半ば呆れつつ、敵手として認めた。一方で、ドッツエル隊・メイソン隊の後退を好機と見て軽率に本陣襲撃に出た味方が、ヴィフィータとボーゼスの騎兵挟撃で蹴散らされるなど、ゾルザル側にも不甲斐なさが露呈した。

“時間”を焦るゾルザルとボウロの別働
ゾルザルは勝敗そのものより「時間」が問題だと強調し、ピニャが援軍到着まで自らを餌に足止めしている意図を確認する。ボウロはハリョの総力で別方面を攻めていると報告し、近く良報を届けられると伏して誓った。

フォルマル家城館への“影戦”大規模襲撃
フォルマル家城館では戦闘メイドが、常識外の数の敵に襲撃され苦戦した。正面玄関担当のペルシアらが確認しただけでも二十人規模で、呼び子が複数箇所から鳴ることで、合計百超の襲撃である可能性が示される。ゾルザル派の影戦組織ハリョが想像以上に巨大である疑いが強まった。

乱戦への誘導と“突破狙い”の敵行動
守り切れぬ場合でも敵戦力を削ぐため乱戦に持ち込む方針が共有され、マミーナは「一人二人、最低三人で六人削る」と自嘲気味に確認しつつ、全滅の可能性を受け入れる。戦闘が始まると、敵の一部は交戦を避けて城館深奥へ突入を図り、警備兵が足止めされる間にすり抜けていく“目的優先”の動きを見せた。

追跡班編成と若い獣人の足止め
ペルシアは呼び子で支援を集め、追跡班と玄関固守を分けて指揮し、逃げる敵を追う。敵は若い獣人二名を残して足止めに充て、未熟ながら生還を度外視した無茶な攻撃で時間を稼ぐ。ペルシアはこれを制圧するが、倒れた敵が服の裾に噛みついて死ぬなど執念を見せ、追跡の足を鈍らせた。

スカート切除と羞恥が生む遅延
裾を引かれて行動不能になるのを避けるため、ペルシアは破れたスカートをさらに切り捨て脚と尻尾の付け根近くまで露出する状態で追走する。マミーナは服装の乱れを揶揄し、メイド長の叱責や交際相手の倉田の嗜好まで持ち出して揺さぶる。羞恥で裾を押さえる動作が速度低下を招き、結果として幼い敵の足止めが別の形で達成された。

病室での宿泊準備とテュカの奔放な就寝
駒門の許可を受け、黒川はテュカと栗林の病室宿泊を認めたが、風紀を理由に伊丹との同衾は禁止し、ベッドはテュカと栗林に割り当てられた。テュカは躊躇なく服を脱いで布団に潜り込み、文化の違いに戸惑う栗林を巻き込んで眠りについた。伊丹はその様子を見守りつつ、テュカが精神的に誰かに寄り添うため抱きつく習慣を持つことを語り、自身もかつて同様の状況に耐えた経験を明かした。

伊丹の信念とテュカへの想いの確認
栗林は、テュカが伊丹を真剣に想っている以上、その気持ちに向き合うべきだと助言する。伊丹は、過去に手を出さなかったのはテュカの弱さにつけ込まないためであり、彼女を守るための選択だったと説明した。その信念は、信頼に応えようとする意志こそが行動を律するという伊丹の価値観を示していた。

太郎からの連絡と脱出決意
深夜、太郎からの電話で「門」に関する重大事態と、レレイの杖が中国外交官の手に渡った可能性が伝えられる。レレイ拘束の最悪の事態を想定した伊丹は、監視を突破してアルヌスへ戻る決断を下す。監視役を排除するため、テュカと親密な演技を行い、警務官を自主的に退室させることに成功した。

監視網突破のための偽装と協力者の結集
黒川の協力で汚物入れに潜り込み、病棟から密かに搬出されることに成功する。栗林と富田も協力し、監視の目を欺きながら病院屋上へ到達した。黒川は報酬と説明を要求しつつも協力を約束し、伊丹とテュカは脱出用ロープで地上へ降下を開始した。

警務官Aの存在とテュカの精霊魔法による突破
地上には時間稼ぎのため待機していた警務官Aが存在し、脱出は危機に陥る。しかしテュカは精霊に呼びかけ、突風で警務官の制帽を吹き飛ばし注意を逸らすことに成功する。その隙に伊丹とテュカは着地し、病院からの完全な脱出を果たした。

再合流とレレイ拘束の可能性の提示
栗林らと再合流した伊丹は、タクシーで指定された河川敷へ向かいながら事情を説明する。中国側がレレイの杖を所持している事実は、レレイ拘束の可能性を強く示していた。特地との通信は途絶しており真偽確認は不可能であるため、最悪を想定してアルヌスへ戻る必要があると結論づけた。

アルヌス帰還の決意と不確実な戦局
レレイの身柄が中国にある場合は個人では対処不能だが、嘉納は依然として特地内にいる可能性が高いと判断していた。中国の強引な外交行動は何らかの意図的な圧力であり、真相を確かめるためにも伊丹達は特地への帰還を急ぐ決意を固めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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