どんな本?
大逆転後宮とりかえ伝、第八巻「道術我慢の鎮魂祭」編に突入した本作では、皇帝による朱慧月への監視が強まる中、黄玲琳たちは一度雛宮へと戻ることになった。玲琳たちは、近く行われる『鎮魂祭』に便乗して、入れ替わりの解消を目指す。しかし、皇帝の策略により、民への粥施し『慈粥礼』に駆り出される。慧月の身体を借りる玲琳は劣悪な地に送り込まれ、道術も使えず孤立を深める。皇帝の監視下、玲琳と慧月は厳しい環境を乗り越えようと奮闘し、ついに皇帝との直接対峙に至る。絶体絶命の中で、少女たちは己の絆と誇りを賭けた戦いに挑んだ。
主要キャラクター
• 黄 玲琳(こう れいりん):気丈な少女。朱慧月の身体に入れ替わり、苦境にも屈せず奮闘する。
• 朱 慧月(しゅ けいげつ):玲琳と入れ替わった雛女。道術が使えない中、玲琳を支えるために努力を続ける。
• 皇帝:玲琳たちを監視し、様々な妨害を仕掛ける存在。己の思惑で少女たちを試す。
物語の特徴
本作は、道術や後宮の政治劇を背景に、少女たちの友情と成長を描き出す点が魅力である。特に、監視の目をかいくぐりながら策略を練る少女たちの逞しさや、困難な状況下でも助け合う姿が心を打つ。また、祭りという華やかな舞台装置と、密かな戦いを交錯させる演出も秀逸であり、読者に緊張感と高揚感を同時に与える展開が印象的であった。他の巻と比較しても、少女たち自身の成長と絆が一層深く描かれている点が、シリーズ中でも際立つ特徴である。
出版情報
• 出版社:一迅社
• 発売日:2024年4月2日
• ISBN:9784758096324
• 判型:四六判
• 定価:1,430円(税込)
読んだ本のタイトル
ふつつかな悪女ではございますが : 8 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~
著者:中村颯希 氏
イラスト:ゆき哉 氏
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あらすじ・内容
厳しい監視の中、玲琳たちは……釣って、歌って、大爆発!?
大逆転後宮とりかえ伝、第五幕「道術我慢の鎮魂祭」、開幕!
皇帝が朱 慧月を監視している――怪しい隠密の動きを察知して、一度雛宮に戻った玲琳たち。
次なる一手は、近く執り行われる『鎮魂祭』に乗じて、入れ替わりの解消をすること。
しかし、またしても皇帝の妨害が!
隣国、丹との国境沿いの地域で、民に粥を施す『慈粥礼』を行うよう、雛女全員に命じたのだ。
その上、慧月の身体に入っている玲琳は、ほかの雛女と引き離され、劣悪な環境に赴くことに……。
「突然の炊き出しなんて無理難題よ」
「慧月様と一層離れてしまうことだけが気がかりです……」
道術が使えない慧月、孤立してしまう玲琳。監視の目に注意を払い、身動きが取りづらくなる二人に、ついに皇帝が自ら接触してきて――!? 絶体絶命の第8巻!
感想
皇帝の罠と雛女たちの絆
第八巻は、皇帝・弦耀の厳しい監視下で、玲琳と慧月たちが必死に入れ替わり解消を目指す姿が描かれていた。
慈粥礼という新たな試練を課せられ、散り散りにされた彼女たちであったが、互いを信じ、暗号を駆使しながら連携を取り続けた。
彼女達の絆が、外からの圧力に抗う強い支えとなっていた点に胸を打たれた。
慧月と玲琳、それぞれの奮闘
慧月は玲琳になりきって行動する中で、外見だけではなく、内面まで演じきる苦悩と葛藤を抱えていた。
皇帝との対面では、清佳たちの機転と支援を受けながら、己の未熟さと向き合い、それでも必死に耐え抜こうとする姿が印象深かった。
一方、玲琳は烈丹峰で民たちと直接触れ合い、釣りや慈粥礼を通じて、弱き者たちを救おうと奮闘した。
彼女の行動力と柔軟な発想には、ただただ感嘆するばかりであった。
イケオジ二人組の過去と影を落とす復讐劇
今巻では、隠密頭領アキムの過去も描かれ、彼の秘めたる哀しみと皇帝への忠誠が物語に重い陰影を与えていた。
かつて激情に燃えたアキムが、今や空虚な忠義に身を捧げている姿は、単なる脇役では終わらない深みを持っていた。
彼と弦耀、イケオジ二人の過去が今後の展開にどう影響していくのか、期待せずにはいられない。
皇帝との対峙と、成長する少女たち
ついに慧月と玲琳は、皇帝に真っ向から対峙する場面を迎えた。
慈粥礼の妨害や、幼少期の記憶を問われる試練など、次々と襲いかかる困難に、二人は己の誇りと友情を支えに挑み続けた。
玲琳は冷静な判断力で、民たちと心を通わせ、慧月は仲間たちと共に皇帝の疑念をかわしてみせた。ふたりの成長が、静かだが確かに感じられる巻であった。
読後の余韻と続刊への期待
第八巻を読み終えて、皇帝の手が雛女たちにどこまで及ぶのか、弦耀とアキムの復讐劇はどのような結末を迎えるのか、興味は尽きない。
そして何より、玲琳と慧月、すれ違いながらも深い友情で結ばれた二人が、どのように未来を切り開くのかを見届けたい気持ちでいっぱいである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ
父帝との朝食と警戒心
尭明は父帝・弦耀との朝食に招かれた。冷めた粥を口にしながら、父親に対する警戒心を改めて強めたのである。彼は、黄玲琳や朱慧月と城下町で会った二十日前の出来事を回想し、弦耀の罠によって入れ替わりの解消が失敗したことを振り返った。
鎮魂祭の計画と新たな策略
尭明たちは、近く開催される国家行事「鎮魂祭」に乗じて、奇跡を演出しながら秘密裏に入れ替わりを解消する計画を立てていた。しかし、弦耀はさらに「慈粥礼」という新たな儀式を雛女たちに命じ、彼女たちを王都から遠ざける新たな妨害策を仕掛けた。
慈粥礼の配置と慧月への標的
弦耀は朱慧月を特に過酷な地、烈丹峰へと派遣し、他の雛女たちから引き離して孤立させた。尭明はこの配置に危機感を抱きながらも、逆に慈粥礼の機会を利用し、王都の外で入れ替わりを解消しようと考えを巡らせた。
父帝・弦耀の冷徹な思惑
父帝・弦耀は隠密頭領アキムに対し、尭明へのさらなる妨害を命じた。弦耀は、かつて十星奪嫡に勝ち抜いた際、自らの兄弟たちを容赦なく殺し、帝位を奪い取った過去を持っていた。彼の本質は、冷酷で無慈悲なものであった。
隠密アキムと弦耀の会話
隠密頭領アキムは弦耀の命に従いながらも、その非情な手段にわずかな抵抗感を覚えていた。一方で弦耀は、朱慧月ではなく黄玲琳を真の標的と定め、極陰日に自ら現地へ出向き、術師の正体を暴くことを決意していた。
弦耀の決意と復讐心
弦耀は、二十五年前に受けた屈辱と復讐心をいまだ忘れていなかった。彼は、兄を奪った仇敵である術師を必ず捕らえると固く誓い、その決意を胸に、次なる行動に踏み出す覚悟を新たにした。
1.玲琳、気合いを入れる
炊き出し命令と出立準備
朱駒宮は、突然命じられた「慈粥礼」の準備で大騒ぎとなった。皇帝・弦耀の命により、玲琳たち雛女も被災地へ炊き出しに向かわねばならず、特に玲琳の担当地域は遠方であったため、その夜にも出発を強いられた。使用人たちは急ぎ馬車や食料、護衛の手配を進め、玲琳も準備に奔走した。
秘密裏の作戦と雛女たちの連携
玲琳は慧月との入れ替わりを隠し続け、入れ替わり解消を鎮魂祭で行うための準備を進めていた。他家の雛女たちにも協力を仰ぎ、秘密裏に連絡を取り合っていた。芳春はその連絡役として暗号文を届け、玲琳と慧月を支えた。雛女たちは互いに絆を深め、協力体制を築いていた。
芳春との確執と助力
芳春は玲琳に対し、慧月の未熟さを指摘し挑発的な態度を取ったが、玲琳は冷静に対応した。芳春は水害地の過酷さを語り、恐怖を煽ろうとしたが、玲琳は怯むことなく、むしろ対策に前向きであった。芳春もまた、玲琳の優しさに触れ、最終的には丸薬を受け取り、感謝の念を抱きながら去っていった。
霊廟での知識探求
玲琳は莉莉を連れ、後宮の霊廟を訪れた。そこにはかつての皇子や公主たちが隠した答案や地形図が残されており、玲琳は熱心にそれらを読み漁った。烈丹峰や丹關の地理、水害情報を学び、実地経験を活かす準備に励んだ。知識への飽くなき探求心は、彼女の強さの源であった。
旅立ちへの覚悟と友情への想い
玲琳は遠方の被災地に赴くことへの不安を抱えながらも、それ以上に慧月と離れる寂しさを感じていた。慧月との友情を大切にし、彼女と再会するためにも、迅速に慈粥礼を終える決意を固めた。炊き出し、民への奉仕、そして入れ替わり解消に向け、玲琳は一層気を引き締めたのである。
雑事房への潜入と隠密行動
後宮から離れた本宮の雑事房に、気だるげな足取りで踏み入る男がいた。雑事房とは、宮中の雑務をこなす使用人たちの集まる場所であり、広大な施設であったが、劣悪な環境に耐えながら寝泊まりする場でもあった。男は周囲に警戒することなく廊下を進み、隠し取っ手を使って屋根裏へと潜り込んだ。そこには、鏡台と変装道具一式が揃えられていた。男は隠密アキムであり、記録官に扮していた朝から変装の準備を整え、新たな役目に向けて旅支度を進めた。
過去の復讐と現状への思い
屋根裏で地図を破損し、丹關という土地を思い出したアキムは、自身の故郷を重ね合わせた。峻険な自然環境と過酷な生活を知る者として、彼はその土地への複雑な思いを抱えていた。かつて復讐心に燃え、若き日に皇帝暗殺を試みた過去を思い返しつつ、二十年を経た今、自らの感情がすり減っていることを実感した。若き日の激情は失われ、現在はただの退屈と共に生きていた。
弦耀への忠誠と願い
恩義を感じる弦耀に仕え、彼の命に従い政敵を屠る日々を送るものの、アキムの心には虚無感が広がっていた。かつての自分のように滾る激情を抱く弦耀を想い、その憎悪が凍り付き停滞していることに気づいたアキムは、彼の復讐が終わり、共に退屈を嘆ける日が来ることを願った。しかし現実には、二十年以上事態が進展しなかったことを思い、奇跡など起こらないと諦めた。
新たな任務への出発
考えを振り切ったアキムは、最後に髪形を整え、刺青を隠して変装を完成させた。彼は弦耀の復讐を進めるため、次なる任務――朱慧月を追い詰め、道術を使わせること――に向け、静かに屋根裏から立ち去った。
2.慧月、しごかれる
雲梯園での宿営と鎮魂歌の練習
王都から北西に二日半かけて到着した宿営地「雲梯園」は、皇帝の巡幸にも使われる立派な施設であった。金清佳、玄歌吹、藍芳春、そして黄玲琳の体に入った朱慧月ら四人の雛女は、荷解きを女官に任せ、四阿で密談を開始した。表向きには鎮魂歌の練習を名目とし、周囲を遠ざけたが、実際にも慧月には歌の練習が必要であった。慧月の歌唱力の低さに清佳が厳しく批判し、互いに感情をぶつけ合う場面も見られた。
鎮魂歌への違和感と言い訳
慧月は自らの音程の悪さを「鎮魂歌の旋律がいびつであるため」と主張し、清佳を騙そうと試みた。しかし、芳春が巧妙にその矛盾を突いたことで、慧月の言い訳は破綻した。清佳はさらに慧月への不信感を強め、芳春に対しても裏の顔を見抜き、牽制するような態度を見せた。一方、玄歌吹は冷静に、捧歌の質には過度にこだわる必要がないと助言し、場をなだめた。
擬態訓練と慧月の奮闘
外見や仕草の練習にも話題は移り、慧月は玲琳になりきるための所作を披露した。雛女たちはその完成度に驚いたが、清佳は更なる即興対応力を求め、突発的な受け答え訓練を課した。慧月は苦戦しつつも応じたが、清佳との間に新たな火種を生む結果となった。そんな中、慈粥礼に向けた心構えも改めて確認された。
見張り役たちの会話と警戒
池の茂みでは、見張り役である冬雪、鷲官長・辰宇、黄景彰が雛女たちを見守っていた。彼らは皇帝の妨害に警戒しつつ、黄家の皇太子・景行の動向に注目していた。景行は剛蹄馬を駆り、予定通り宿営地に到着する手はずとなっていたが、密かな連絡手段として飛ばされるはずの伝書鳩を心配する声も上がった。
迫る不穏な気配
冬雪は空を飛ぶ鳩を見分け、景行の手勢ではないと断定した。警戒を強めつつも、景彰は楽観的に振る舞い、冬雪に対して冗談めいた忠告を送った。しかし辰宇は景行の腹芸に言及し、単なる楽観だけでは済まない状況であることを示唆した。静かな夜の中で、彼らは不安を抱えつつも、何事もないことを祈り続けた。
新たな波乱の予兆
その願いも虚しく、翌日、彼らのもとには急を知らせる伝令の鳩が飛来することになる。物語はさらなる緊張をはらみながら、次なる局面へと進んでいった。
3.玲琳、匙を投げる
険しい山道の移動と避難所への到着
玲琳たちは王都を発ち、馬車、駕籠、徒歩と手段を替えながら三日間の山道を進み、烈丹峰の避難所に到着した。朱家付きの女官たちは疲労困憊していたが、黄玲琳は終始朗らかに道中を楽しんでいた。同行していた黄景行も驚異的な体力を見せ、わかさぎ釣りに情熱を燃やしていた。
女官たちとの軋轢と玲琳の自重
朱家に残った少数の女官たちは、かつての慧月によるいびりへの反発心を抱き、玲琳に対しても敵意を隠さなかった。玲琳は、親友である慧月のために直接介入を避けつつも、陰で状況を静観し、必要な情報だけは密かに収集していた。
避難民たちとの出会いと現状把握
避難所には、水害と貧困に苦しむ住民たちが集まっていた。玲琳は、王都や領主家からも見捨てられたこの土地の過酷な現実を目の当たりにし、責任感を新たにした。慈粥礼による施しを通じて、住民たちに恩寵を届けようと決意した。
荷物落下による危機と女官たちの反応
慈粥礼用の荷が道中で崖下に落下し、食材が半分しか到着していないことが判明した。女官たちは騒ぎ立て、事態を嘲笑する者もいた。住民たちは不満を爆発させ、集落の空気は一触即発の緊張に包まれた。
董順徳の登場と住民たちの不満
集落の相談役である董順徳が登場し、住民たちを宥めようと試みた。だが、住民たちの怒りと諦めは根深く、王都への不信感があらわになった。女官たちは冷笑し、莉莉は状況の悪化に焦燥を募らせた。
玲琳の機転と釣り作戦
玲琳は状況を打開するため、慈粥礼の不足分を補う策を講じた。川の水質に注目し、護衛の黄景行とともに即席の釣り道具を用意して、魚を釣って不足を補うことを提案した。この機転により、集落の子どもたちの表情にも希望が戻りはじめた。
慈粥礼に向けた釣りと子どもたちとの交流
烈丹峰にて、玲琳は子どもたちと共に川で釣りを行い、大漁を達成した。自作の簡易釣り竿を使い、皆に喜ばれたものの、子どもたちの中には未来への希望を抱けない少女リアンもいた。彼女の冷めた態度に、玲琳はより深い支援の必要性を痛感した。
慈粥礼における騒動と女官たちの陰謀
集落に戻った玲琳は、炊き出しの場で女官・可晴が粥に汚物を混入させるという問題を起こしているのを目撃した。可晴は朱慧月への私怨からこの行動に及び、失態を隠そうとした。玲琳はその場を収めつつも、可晴に形式的な罰として釜の近くに立たせる命令を下した。
山賊の襲撃と玲琳の機転
慈粥礼の最中、山賊たちが現れて粥を奪おうとしたが、玲琳は冷静に対処した。粥の釜に仕掛けを施していた玲琳は、山賊たちを煮えたぎる粥で撃退し、残った荷持ちたちと共に彼らを捕らえた。この一連の戦いにより、集落の人々は救われた。
女官たちへの戒めと再教育
玲琳は、可晴たち女官に対して強硬な態度を取ることなく、彼女たち自身の過ちを悟らせた。過去の過ちを悔い、今後の努力を誓わせたことで、女官たちは改心し、配膳の仕事に尽力するようになった。玲琳は食事の段取りを整え、慈粥礼を再開させた。
被災民リアンと董との交流
董との会話を通じ、玲琳は被災地で生きる人々の絶望や冷笑的態度の背景に理解を深めた。リアンたちが置かれた環境を知り、玲琳は改めて、この地の支援を続ける決意を固めた。
皇帝の動向と緊急事態の発覚
兄・景行からの報告により、皇帝が密かに雲梯園へ向かっていることが判明した。玲琳は皇帝が自分たちの入れ替わりに気付き、直接手を下す可能性を危惧した。彼女はただちに行動を決意し、険しい山道を単身で越えて雲梯園へ向かう覚悟を固めた。
友への強い思いと覚悟の出発
玲琳は、黄家の誇りと親友・朱慧月への想いを胸に、たとえ無力であろうとも手をこまねいてはおれないと決意した。景行を烈丹峰に残し、慈粥礼の段取りも整えた上で、玲琳は夜陰の
4.慧月、奮闘する
被災地での粥配りと慧月の苦悩
慧月は「黄玲琳」として被災地に粥を配り続け、民の前では終日微笑みを絶やさず過ごした。心身の疲労に加え、王都の形式的な慈善行為に疑問を抱きつつも、雛女の名誉を守るために振る舞い続けた。だがその努力の裏には、己の限界と孤独への葛藤があった。
皇帝来訪の報せと慧月の動揺
黄景彰が急報を携え、慧月のもとを訪れた。皇帝・弦耀が突然、雲梯園に巡幸してきたこと、そして慧月が疑われている可能性を告げた。慧月は動揺しつつも、単独での謁見を避けるため夕餉の席に出席することを決意した。
皇帝との対面と雛女たちの機転
夕餉の席では、皇帝の探るような視線にさらされながら、雛女たちと慎重に応対した。皇帝は雛女たちの間で起こる言い争いに触れ、慧月を試す発言を続けたが、芳春や清佳が機転を利かせ、場を和らげる発言を重ねた。慧月も、黄玲琳の人格を装い続けた。
即興の捧歌要求と慧月の危機
皇帝は慧月に即興で鎮魂歌を歌うよう命じた。慧月は歌唱力に自信がなかったため絶体絶命の窮地に立たされたが、清佳の機転で辣酢入りの液体を飲まされ、喉を潰すことで難を逃れた。代わりに芳春と歌吹が歌を披露し、皇帝の注意をそらした。
皇帝の執拗な探りと冬雪たちの救援策
皇帝はなおも慧月に幼少期の思い出話を要求した。景彰や冬雪たちは状況の打開を図り、室内の燭台を増やしつつ慧月を退室させる口実を作ろうと画策した。しかし皇帝は頑として慧月を手元に留め、追及の手を緩めなかった。
山賊襲来と慧月の危機回避
一方、別の場面では、玲琳が烈丹峰で民に粥を配る最中に、山賊が炊き出しを襲撃する事件が起こった。玲琳は巧みな策で釜の突沸を利用し、山賊たちを撃退。慈粥礼の妨害を目論んだ女官たちにも天罰をもたらし、民と己の誇りを守った。
慧月の咄嗟の機転と清佳たちの支援
慧月は咳き込みながらも辛うじて皇帝の尋問を切り抜け、芳春や歌吹、清佳の支援に助けられた。彼女たちは互いに庇い合い、見事な連携で皇帝の疑念をかわし続けた。慧月も己の未熟さを痛感しつつ、周囲への感謝を新たにした。
被災地での慈粥礼と慧月の奮闘
慧月は、黄玲琳の姿を借りて、被災地で慈粥礼に従事していた。粥を配る民の列に微笑みながら応対したが、空腹と寒さに苦しみ、心身共に疲弊していた。筆頭女官・冬雪に促されながら支度を整えていたところ、黄家の次男・景彰が現れ、皇帝が密かに視察に訪れることを伝えた。慧月は慌てながらも、皇帝との対面に備える決意を固めた。
皇帝との夕餉と疑念の深まり
雲梯園の広間では急ごしらえの宴席が設けられ、皇帝・弦耀が直々に雛女たちに労いの言葉をかけた。慧月は周囲の支援を受けつつ、警戒心を強めていた。皇帝は後宮での雛女たちの足の引っ張り合いについて語り、現在の雛女たちの争いを詰問した。芳春と清佳は巧妙に助け舟を出し、慧月もまた冷静に立ち回ったが、皇帝の疑念は完全には拭いきれなかった。
慧月への試練と清佳の救援
皇帝は「玲琳」の歌を披露するよう求めた。慧月は自分が玲琳のように歌えないことに絶望し、追い詰められる。絶体絶命の状況で清佳が慧月に酒を飲ませ、仮病を装う策を授けた。慧月は指示に従い、その場をうまく乗り切ることに成功した。
慈粥礼での妨害と玲琳の対処
一方、烈丹峰では、慈粥礼の場において朱可晴ら女官たちが粥に汚物を混入させるという妨害行為を働いた。玲琳は冷静に状況を見極め、彼女たちを厳罰に処すのではなく、静かに釜の近くに立たせるという罰を与えた。この対応に、周囲の者たちは複雑な思いを抱きつつも、玲琳の矜持と状況判断を評価した。
山賊の襲撃と玲琳の策
その直後、烈丹峰の炊き出し会場に山賊が押し入り、粥を奪おうとした。玲琳は動揺する住民を抑え、山賊たちに粥を渡す振りをして罠に誘い込む策を立てた。問題のある釜の粥を差し出し、山賊を食中毒に陥らせることで、逆に山賊たちを無力化することに成功した。
玲琳と慧月、それぞれの覚悟
慧月は、入れ替わりの秘密を守るため自らを抑え続け、玲琳の名に恥じぬ行動を取り続けた。一方、玲琳は己の信念と民への愛情を貫き、巧みに困難を乗り越えていった。それぞれが異なる立場ながら、雛女としての誇りと使命を胸に、運命に抗い続けたのである。
5.玲琳、爆破する
被災地での慈粥礼
慧月は「黄玲琳」の姿で、被災地「丹央」に赴き、粥を配る慈粥礼に従事していた。寒さと空腹に耐えながら民に笑顔で接し、寄り添うことで好意を得る一方、自らは疲弊していた。女官冬雪は彼女を労いながらも支度を促し、すぐに次の行事へと備えさせた。
皇帝の突然の訪問
黄家次男・景彰から、皇帝が密かに雲梯園へ訪れるとの報せが届いた。皇帝は烈丹峰ではなく「黄玲琳」を疑っていたため、慧月は皇帝の疑惑をかわすべく、急遽夕餉に同席することとなった。景彰は慧月に道術を使わず、玲琳を演じきるよう厳命した。
皇帝との対面と警戒
急ごしらえの宴席にて、皇帝は鷹揚な態度を見せながらも、雛女たちの様子を観察していた。歌吹と金清佳が機転を利かせ、雛女たちの言い争いを健全な競争と偽り、場を取り繕った。慧月も慎重に振る舞い、皇帝の疑念をかわす努力を続けた。
炊き出し場での騒動
一方、烈丹峰では、炊き出しを担当していた女官可晴が、粥に汚物を混入させるという事件を起こしていた。これに怒った莉莉は可晴と対立し、事態の収拾に玲琳が乗り出した。可晴は過去の慧月への怨みを理由に、挑発的な態度を取ったが、玲琳は感情的な報復をせず、冷静に対応した。
玲琳の冷静な裁定
玲琳は可晴に対し、粥釜の傍に立ち続ける罰を与えるに留めた。これにより、表面上は寛容さを見せつつも、背後に潜む陰謀を察知した。可晴の行動には誰かが偽りの噂を吹き込んでいると考え、玲琳は更なる調査を心に誓った。
民と子供たちへの支援
炊き出しの合間に、玲琳は子どもたちと共に釣りを行い、大漁を達成して彼らに喜ばれた。疑似餌に金の簪を用いる工夫も施し、飢えに苦しむ民に現実的な支援を提供した。玲琳は一時的な慈善だけでは解決できない現実を痛感し、より踏み込んだ支援の必要性を感じていた。
皇帝の真意と今後の危機
皇帝は一見して雛女たちを労う素振りを見せたが、その真意は入れ替わりを探るためであり、慧月にとっては依然として危機的な状況であった。雛宮内部の不穏な動きと、皇帝の監視を前に、慧月と玲琳は慎重な立ち回りを求められていた。
6.慧月、馬に乗る
慈粥礼の疲労と慧月の葛藤
慧月は、黄玲琳の姿で慈粥礼に参加し、被災地の民に粥を配る務めを果たした。寒さと空腹、慣れない丁寧な応対に疲れ果てた彼女は、自室に戻ると寝台に倒れ込んだ。冬雪に促されて夕餉の支度を始めたものの、心の内では王都の形式だけの慈善行事に疑念を抱いていた。そんな折、黄景彰が急報を携えて訪れ、皇帝が急遽視察に来ることを告げた。慧月は動揺しながらも、入れ替わりが露見しないよう振る舞う覚悟を固めた。
皇帝との対面と慧月の緊張
宴席では、雛女たちが年功序列に従って座らされ、慧月は皇帝・弦耀と距離を取る配置にされた。皇帝は鷹揚な態度を見せつつ、慈粥礼を労う言葉を口にしたが、同時に雛女たちの間での不和を指摘し、彼女たちの振る舞いを注意深く観察していた。慧月は内心で冷や汗をかきながらも、芳春の機転による援護に助けられ、なんとか平静を装い続けた。
烈丹峰での釣りと民との交流
一方、烈丹峰では玲琳が子どもたちと釣りを楽しみ、冬にもかかわらず大漁を達成した。金の簪を砕いて疑似餌を作った玲琳の工夫により、子どもたちは喜び、釣り竿を宝物のように抱えた。だが、移民の少女リアンは、災害が多いこの地での釣りの意義に冷めた見方を示し、玲琳はさらなる支援の必要性を痛感した。
慈粥礼での事件と玲琳の対応
集落に戻った玲琳は、炊き出しの粥に不正が行われたことを知る。朱可晴という女官が、粥に汚物を混入させた上で、その責任を慧月に押し付けようと画策していた。可晴は過去の個人的な恨みから慧月を陥れようとし、陰謀を仕掛けたのである。玲琳は冷静に状況を整理し、可晴の背後に別の黒幕がいる可能性に思い至った。過去の謝罪や事実関係を確認しながら、玲琳は表面上は冷静に対応を進めた。
慧月の成長と仲間たちの支え
慧月は、皇帝の監視下に置かれながらも、道術を使わず、黄玲琳として振る舞い続けた。景彰や冬雪、さらには芳春といった仲間たちの支えによって、入れ替わりの秘密を守り抜くため懸命に立ち回った。彼女たちの連携と機転は、慧月にとって何より心強い支えとなった。
7.玲琳、水面を見上げる
慈粥礼に励む慧月
黄家の雛女としてふるまう慧月は、寒風吹きすさぶ中で丹央の被災民に粥を配り続け、疲労困憊して自室へ戻った。外見を保ちながら献身を演じる苦労に辟易していたが、冬雪女官からの思いがけない称賛に素直な喜びを覚えた。しかし、休む間もなく夕餉の支度を促され、さらに黄家次男・景彰の急報により、皇帝が雲梯園を訪れることを知る。慧月は「黄玲琳」としての振る舞いを守り、皇帝との接触に備える決意を固めた。
皇帝との緊迫した対面
夕餉の場には、皇帝・弦耀が直々に現れ、雛女たちを労うかたちで言葉を掛けた。雛女たちは慎重に応対しつつ、皇帝の真意を探った。表向きは慈粥礼への感謝を述べた弦耀であったが、雛女同士の足の引っ張り合いに言及し、婉曲に監視の意図を示した。慧月は警戒心を強め、少しでも疑念を抱かれないよう細心の注意を払った。
炊き出しに起きた騒動
一方、烈丹峰では玲琳が粥の炊き出しを指揮していた。彼女は子供たちと共に川釣りをして食料を確保し、炊き出しの準備を進めた。しかし、銀朱女官・可晴の一派によって、粥の一釜に汚物が混入される事件が発生した。可晴は慧月への個人的な恨みを動機に行動し、玲琳は事態の収拾を迫られた。
可晴との対峙と誤解の糾明
可晴はかつて慧月から受けた仕打ちを理由に、復讐心を燃やしていた。玲琳は彼女の行動の背景にある皇后に関する偽りの噂を見抜き、状況を整理した。騒動の責任を慧月に押し付けようとする可晴に対し、玲琳は毅然と対応を続けた。
玲琳の機転と苦境の克服
玲琳は、事実を隠すのではなく、ありのままに公表する決意を固めた。民に対して粥の汚染を正直に説明し、食べられる粥を配り直す対応に出た。その姿勢は民衆に受け入れられ、場の混乱は収束へ向かった。慧月と玲琳、それぞれが置かれた場所で、陰謀と困難に立ち向かいながらも、確かな成長を遂げつつあった。
特別編 砕氷
皇帝の監視と慈粥礼の強制
黄玲琳の体に入った朱慧月は、宿営地近くの被災地「丹央」で寒さと空腹に耐えながら粥の施しを続けた。己の身を飾ることすら忘れ、民に笑顔を向け続けた慧月であったが、その疲労は相当なものであった。慈粥礼に隠された目的を皇帝が探ろうとしていることが判明し、慧月たちはますます慎重な行動を求められた。
皇帝弦耀の直接訪問と警戒
突如、皇帝弦耀が密かに現地を訪れるとの報せが届き、黄家の次男・景彰は慧月に警告した。陛下は道術の不正を疑い、特に玲琳(中身は慧月)に目を光らせている様子であった。慧月は景彰の助言を受け、雛女たちの中で振る舞うことを選び、道術の使用を堅く禁じられた。
夕餉の席での緊張と演技
急ごしらえの宴席で、皇帝は雛女たちに労いの言葉と酒を与えたが、その場は緊張に満ちていた。慧月は玄歌吹や金清佳と共に席に着き、皇帝からの疑念をかわすため、細心の注意を払って玲琳を演じ続けた。皇帝の視線を避けるため、巧妙に身を隠しながら夕餉を終えたのである。
烈丹峰での慈粥礼と釣り
一方、烈丹峰に向かった玲琳たちは、地元の子どもたちと共に釣りを行い、大漁を得た。玲琳は金の簪を犠牲にして作った疑似餌で成果を上げ、子どもたちに釣り竿を与えることで、彼らの食糧確保を助けようとした。釣りに興じる子どもたちの無邪気な声に、玲琳は短いながらも確かな喜びを覚えた。
慈粥礼の妨害と内部抗争
しかし、慈粥礼の最中に問題が発生した。銀朱女官の可晴が、大釜の一つに痰壺の汚物を混入するという暴挙に出たのである。これにより、貴重な粥の一部が台無しとなり、騒動が巻き起こった。可晴は慧月に対する私怨から故意に事を起こし、責任を慧月に押し付けようと画策していた。
玲琳の決断と対応
現場に駆けつけた玲琳は、毅然とした態度で可晴に問いただし、民の信頼を守るために対応に乗り出した。可晴の悪意を見抜いた玲琳は、単なる個人攻撃を超え、雛宮全体の名誉を守るため、強い意志をもって事態収拾に向かったのである。
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