物語の概要
本作は宇宙ヒューマンドラマを描いた漫画である。幼少期に宇宙飛行士を志した兄・南波六太(ムッタ)と弟・日々人(ヒビト)は、それぞれの道を歩む。本巻では、宇宙で漂流する六太を弟・日々人が救出しようとする、緊迫の救出ミッションが描かれている。酸素残量や軌道のズレなど予断を許さない状況の中、兄弟の絆とプロフェッショナルとしての覚悟が際立つ内容である。
主要キャラクター
• 南波六太(ムッタ):主人公の兄。無職から宇宙飛行士へ再挑戦し、漂流ミッションの中心人物。
• 南波日々人(ヒビト):六太の弟。月面第一長期滞在クルーの一員であり、兄を救出するためソユーズ機で奔走する。
物語の特徴
本巻の最大の魅力は、リアルな宇宙空間描写と緊迫感あふれる救出ドラマだ。酸素残量の限界、軌道のズレ、運命を分ける兄弟の心理描写、国際協力によるミッション遂行といった要素は、手に汗握る展開を読者に提供する。他作品にはないリアリズムと家族愛、プロフェッショナルの葛藤が同居しており、クライマックスに向けて次巻完結という緊張感が続くのも大きな魅力である。
書籍情報
宇宙兄弟 45
著者:小山宙哉 氏
出版社:講談社(モーニングKCシリーズ)
発売日:2025年7月23日(水)
ISBN:978‑4065400326
アニメ:2012〜2014年全99話。
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あらすじ・内容
NASA、JAXA、ロスコスモスの共同作業によって、漂流中の六太の軌道を割り出すことに成功。
そのルートに日々人が乗るソユーズを向かわせるという救出ミッションが進行している。
予断を許さない酸素残量や軌道のズレによる発見の遅延と、不安要素は多い。
絶望の中、兄弟のランデヴーは成功するのかーーー。
感想
今巻を読み終えて、まず心に浮かんだのは「本当に良かった」という安堵の気持ちだった。
宇宙空間で何度も死を覚悟したムッタ。
その絶望的な状況から、希望へと繋がっていく展開に、胸が熱くなった。
特に印象的だったのは、ムッタがシャロンとの約束を胸に、諦めずに生きようとする姿だった。
シャロンとの絆が、彼の心の支えとなり、生きる力になっているのが伝わってくる。
それでも死を常に感じていたが。
また、月面基地上空でムッタが通過するのを待機していた紫のメッセージも、ムッタにとって大きな希望の光となっただろう。
宇宙という孤独な空間で、誰かが自分を想ってくれている、その事実は計り知れない力になるはずだ。
そして、何よりも感動したのは、ヒビトがムッタを救出するためにソユーズで向かうシーンだ。
地上班の懸命なバックアップを受け、兄弟の絆が奇跡を起こした瞬間だった。
宇宙という極限状態の中で、兄弟が互いを想い、助け合う姿は、読んでいるこちらの心を強く揺さぶる。
『宇宙兄弟』は、宇宙飛行士たちの挑戦や葛藤を描いた作品だが、それだけではない。
困難に立ち向かう勇気、仲間との絆、そして夢を追いかけることの大切さを教えてくれる。
今巻では、特にその人間ドラマが色濃く描かれており、改めてこの作品の魅力を感じることができた。
今後の展開も非常に楽しみだ。ムッタとヒビトが、この経験をどのように活かしていくのか、そして、彼らの夢の続きを、これからも見守っていきたい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第413話「4時間半」
シャロンの願い
車椅子に座ったシャロンは、酸素マスクをあてがわれながらも、ムッタの無事を心から願っていた。看病する女性に「疲れたんじゃない?」と声をかけられながらも、「ムッタが助かるところを見届けたい」と語る。仲間たちは彼女の想いを尊重し、彼女のそばに寄り添った。
過去の思い出と決意
シャロンはムッタとの思い出を回想しながら、「ヒビトと二人で帰ってきて……!」と祈るように呟いた。「あなたが帰ってこないと、私はもう……」と、涙ながらにムッタへの想いを募らせていた。
宇宙空間での絶望
場面は宇宙へと移り、ムッタが宇宙空間を漂いながら「クソッ!!」「ダメだ……」と絶望する様子が描かれる。何度もシュミレーションのように発作的にパニックに陥り、酸素を無駄遣いしてしまうことを自覚していた。
諦めかけた心と再起
「ダメだ、何度も絶望感に襲われる……」と弱音を吐きながらも、ムッタは「エディは助けると言ってたんだ」と信じることで気力を取り戻す。「助かる方法はある!! 絶対助けに行くからな!!」と、仲間たちからのメッセージに支えられ、希望の光を見出す。
映像分析と突破口
宇宙服のカメラ映像から、自分の漂流した軌道を分析できれば助かる可能性があることに気づいたムッタは、「いける……!」と確信を深めていく。自らの命を懸けた希望への一歩を踏み出す決意を固めるのだった。
漂流の経過と酸素の残量
ムッタは、日々人を宇宙空間に押し出してから約2時間が経過していることを思い返す。オリョール(脱出船)の酸素は限界があり、マクシムたちはすでに月を離脱している頃と推測する。自身の酸素残量は48%、バッテリーも50%と表示されており、残り時間は「あと4時間半」と判明する。
絶望と冷静な分析
このままでは死ぬ。ムッタは冷静に状況を分析し、オリョールは地球往復分の燃料しか積んでいないため、彼の救助に割く余力はないと結論づける。もしかすると日々人の帰還を優先するため、自分はすでに「切り捨てられた」存在かもしれないとまで思い詰める。
心の葛藤とシャロンへの共感
何もできない無力感の中、ムッタはシャロンの姿を思い出す。身体が不自由になった彼女もまた「自分でどうすることもできない状況」と闘っていたのではと悟り、その気持ちに初めて真に共感する。
恐怖と約束の想起
宇宙で一人、極限状態に置かれたムッタは「こんなに怖いのか……」と震えながらも、シャロンの「帰ってきて、笑顔を見せて」という言葉を思い出す。「ついでにハグもしてくれたら最高です」と添えられた言葉が彼の心を支える。
生きる決意と新たな約束
絶望の中で「これは私とあなたとの新たな約束です」というシャロンのメッセージを心に刻み、「俺はまだ動ける」「ヘルメットを脱いで終わらせることもできる……自分で」と語るムッタは、自ら死を選ぶことすら可能な状態で、なおもシャロンとの約束にすがり、生き延びる道を模索し続ける。
静かな覚悟
ムッタは宇宙空間に漂いながら「ごめんシャロン……俺今……死に方を考えてる」と独白する。
第414話「ブライアンのように」
月面の静寂と宇宙飛行士の孤独
月面のクレーター群と広大な宇宙の描写から始まり、宇宙飛行士・南波六太が宇宙空間を漂っている様子が描かれた。彼の腕にはオメガのスピードマスターが装着されており、時計の針は静かに動き続けていた。彼はその動作音に耳を傾け、時計が自分の死後も動き続けることを想像していた。
時計の鼓動と死への思索
六太は「時計は2〜3日、自分が死んでも動き続ける」と考え、そのことに静かに思いを巡らせていた。地上の回想シーンでは、NASA職員が「人生はコントロールが効く」と語っていたことを思い出しながら、六太は現在の自分が「コントロールできないところまで来た」と自覚していた。
無力感と死の受容
彼は、今の状況下では何もできず、唯一できるのは時計のリューズを巻くことくらいだと述べた。そして残るは「死に方」だけであると語り、宇宙服の酸素が切れるまでの時間を把握していた。また、兄・日々人の経験に思いを馳せ、聞いておけばよかったと後悔していた。
死の選択肢と恐怖
酸欠死が苦しいと予測し、ヘルメットを脱げばすぐ死ねるのではないかと考えた。映画のように一瞬で凍るのか、それとも体内の水分が沸騰してミイラ化するのか、様々な死のシナリオを思い浮かべた末、どの方法も「ひどい死に方」だと感じていた。
冷静な思考と最終判断
彼は「ヘルメットを外した瞬間に空気が吹き出す」ことを想定し、その衝撃で首が折れる可能性を懸念した。冷静さを保ちつつ、ヘルメットを外すことの物理的な影響を思考し、即死の可能性についても分析していた。
運命と向き合う静かな覚悟
六太は、もし衝撃で気を失えたらラッキーだと述べつつも、「発作的にヘルメットを脱ぐかもな」と自嘲気味に呟いた。死の恐怖と苦しみに耐えながらも、彼は依然として宇宙空間にただ一人、漂っていた。
苦悩と決意の狭間
宇宙空間を漂う六太は「死にたくねえよ」と叫び、葛藤の中で過去の訓練や仲間との会話を回想していた。その中で、かつてブライアンが事故時に冷静に報告を続けたことを思い出し、自身も何かを残す決意を固めた。
録音という行動
彼はボイスレコーダーを起動し、自身の名前と状況を記録し始めた。記録には、事故の発生時刻や位置情報、酸素・バッテリーの残量、通信不能の現状など、詳細なデータが含まれていた。これは自身の死後に誰かが発見し、教訓にしてくれることを願っての行動であった。
残される者への想い
録音の中で六太は「誰かに聞いてほしい」「こんな奴がいたことを知ってもらえたら嬉しい」と語った。さらに、自身の遺体が発見された際には博物館などで展示され、宇宙飛行士の歴史として後世に残されることを願う想像を描いた。
教訓としての死を目指して
シャロンの月面天文台にかかわった者として記憶されたいという想いを抱きつつ、「こんな死に方を他の飛行士がしないように」という願いとともに、音声と記録が後の世代に役立つことを信じた。彼は、自らの死が無駄でないものになるよう、ブライアンのような最期を目指した。
地上の動きと希望の兆し
地上では、六太と通信する手段がないかを模索するメンバーたちが集まっていた。困難な状況ながらも、「メッセージだけでも送る手段はないか」との提案がなされ、その価値が認められるとすぐに対応に取り掛かることが決定された。
第415話「楕円軌道」
南波家に集まる報道陣
六太の実家である南波家には、多くの報道関係者が集まり、状況を聞き出そうと押しかけていた。南波家の関係者は敷地内への無断侵入に対して制止し、取材を断る姿勢を明確にした。記者たちは、家族の気持ちや六太の状況に対する感想を求めようとするが、家族は一切の対応を拒否した。
楕円軌道の状況説明
場面はJAXAの記者会見へと移り、六太を救出するための軌道修正計画が説明された。現在、六太はソユーズから逸れて楕円軌道を周回しており、これは以前に六太が日々人を押した反動によるものであった。会見では、噴射による航行制御や軌道のズレ、速度調整の理屈が図解付きで丁寧に説明された。
低軌道による接近と救出計画
説明によると、六太はソユーズよりも低い軌道を飛行しているため、周回速度が速く、次第にソユーズに追いつきつつあるという。ただし、急な接近は避ける必要があり、ゆっくりと距離を詰める段取りが必要であった。そのため、2回目の噴射後には一定の待機時間が設けられた。
待機時間と乗員の体力管理
JAXAは日々人に仮眠を指示し、救出任務に向けた体力温存を求めた。本人は緊張した様子を見せながらも、最終的には「分かりました」と応じた。これは、日々人の体力が六太救出の鍵を握っているためであった。
3回目の噴射に向けた準備
JAXAは次の噴射に向けて、再び速度を調整しながら低軌道に移行する準備を開始した。記者会見では、視聴者やメディアを通じて希望的観測と応援の声が寄せられていた。JAXAの職員は3回目の噴射による軌道修正と、最終段階の救出計画について明言した。
六太の録画インタビューと人々の思い
六太の過去のインタビュー映像がテレビで再放送され、多くの人々が見守っていた。インタビューでは、彼が月面天文台の建設ミッションに強い意欲を持ち、特にシャロン博士への感謝と夢の実現について語っていた。この映像は家族や支援者たちの心を打ち、六太への期待と応援の声が各地で高まっていた。
チームへの信頼と決意
六太はインタビューの中で、ジョーカーズのチームワークが最初は不安だったものの、今では信頼し合い、目配せだけで意思疎通ができるようになったことを述べた。また、月に行くと決まった際には周囲が自分のことのように喜んでくれたことも語り、彼にとっての誇りとなっていた。
地上からの応援と感動
映像を見た関係者たちは「とうとうやったね」「地上で応援しているよ」などの温かいメッセージを寄せていた。かつて六太を見守っていた人々の姿や言葉が交錯し、月面で奮闘する六太への感情が強く描かれた。
月面ミッションへの期待と覚悟
六太は、月で転ばないようにと声をかけられたエピソードを回想しながら、皆の期待に応えるには「しっかりミッションをやり遂げることだ」と決意を新たにしていた。JAXA関係者たちも彼の努力を見守り、今できる支援を進めていた。
ソユーズの再噴射と接近開始
3回目の噴射が完了し、ソユーズは六太がいる軌道へと確実に近づいていた。日々人はミッションコントロールと連携を取りながら、その進行を見守り、「ムッちゃん、もう少しの辛抱だ」と決意を込めて宇宙へと呼びかけた。
第416話「苦しいほどの希望」
漂流を続ける中での意識の確認
宇宙空間を漂う六太は、酸素残量が41%であることを確認し、現在の時刻やこれまでの経過時間、酸素とバッテリーの残り時間などを冷静に記録していた。まだ計算や判断が可能な状態であり、自身が正気を保っていると確認した。
会話で酸素消費を抑える工夫
六太は酸素消費を抑えるために、動きを極力控え、呼吸を落ち着けるよう努めていた。話し続けることで精神が安定し、消費量の抑制にもつながっていた。動くことによる未知の影響を恐れ、体勢を変えることも避けていた。
ブライアンの教えを実行
彼はかつてブライアンから教えられた「今できることをやる」という言葉を思い出し、自身ができる「話すこと」「記録すること」に集中する。死を目前にしながらも、生きるためにできることを一つひとつこなそうとしていた。
星々との対話と感動
夜側へ再び到達した六太は、圧倒的な星空の美しさに言葉を失った。地上では見えない星々やサソリ座を発見し、最後に見るかもしれない光景に深い感動を覚えていた。その中には、自分の星座を宇宙で見上げるという、唯一無二の体験が含まれていた。
最期の場所としての覚悟
彼は、酸素の枯渇が4回目の夜に訪れるだろうと予測し、その時が「死ぬ瞬間」になるかもしれないと考えていた。しかしその中でも「この星空の中で死ねるなら最悪の中では最高だ」と受け止め、宇宙の中で静かに心を整えていた。
日々人への想いとつながり
最後には、星空を見つめながら「なあ日々人」と語りかけ、弟への想いを胸に、孤独な漂流の中でも心のつながりを感じ続けていた。
絶望の受容と死の覚悟
宇宙空間に漂流を続ける六太は、酸素の残量と経過時間から、自身の死が目前に迫っていることを理解する。希望を抱こうとすればするほど苦しさが増し、死を受け入れるほうが心の安定を保てると気づく。「希望はもうない」と自分に言い聞かせようとするも、広大な宇宙の孤独と恐怖に圧倒されていた。
通信の奇跡的な接続
絶望の中、突如としてヘルメット内部に電子音と共にノイズ混じりの声が届く。「ブギー」という名前が繰り返され、それが録音音声であると六太は気づく。発信源は月面基地「ブギーテス」であると判明し、六太は必死に応答する。
通信システムの仕組みと確認
基地ではプギーがパラソルアンテナを操作し、電波を用いた間接的な音声伝達を試みていた。地上からの声は直接六太には届かないが、録音音声を宇宙に向けて送ることで、漂流中の彼の通信機に届くようになっていた。この仕組みによって、六太と月面基地との間で奇跡的に通信が成立する。
希望の光の視認と反応
六太は通信の相手が確かに月面基地であると確信し、周囲を観察する。そして、月面のクレーター内に整然と並んだ光の列を視認する。それは基地側が操作したパラソルアンテナからの光の反射であり、六太にとって確かな“証”であった。彼の中に、再び希望が灯る。
希望の周波数を捉える
六太は宇宙空間で漂流しながらも、月面基地から送信される電子音の周波数に注意を集中させ、通信チャンネルを正確に合わせることに成功した。基地側ではプギーが、紫の録音メッセージを使って彼に最初のコンタクトを試みていた。六太は受信機の指針が反応する位置を見つけ、基地からの呼びかけを聞き取った。
紫からの通信と救助計画の通告
通信の中で紫は、六太の現在の軌道をすでに解析できていること、そして日々人がソユーズで救出に向かっていることを伝えた。六太は紫の声に反応し、通信内容を真剣に聞き取った。紫はランデブーの時刻を「12時頃」と指定し、ソユーズは六太の後方下側から接近してくると説明した。
救助に向けた待機姿勢の指示
紫は、六太に対して「今、見えていなければならない」と強調し、訓練で学んだ動きの組み合わせにより向きを変えてソユーズを捉える必要があると指示した。日々人から六太は視認しづらい位置にいるため、逆に六太自身がソユーズを発見しなければならないという現実が告げられた。
生還への確信と決意
最後に紫は、「ムッちゃんがソユーズを見つけるんだ」と語り、通信を終えた。六太はその言葉を受け止め、自らが生き延びるためには自分の目でソユーズを捉えるしかないという覚悟を固めた。彼は再び宇宙の中で姿勢を整え、救助の時を待ち構えた。
第417話「日々人が来る」
眠りからの始動
日々人はソユーズ内部で束の間の眠りから目覚め、目前のミッションに向けて意識を集中させていた。時計は10時を示し、ランデブーの時間が迫る中、彼は窓の外に広がる宇宙を見つめながら六太の名をつぶやいた。
地上との通信と状況確認
JAXAの宮田との通信が再開され、日々人は十分に休息を取ったことを報告。ランデブーは12時頃を想定しており、地上では11時1分に軌道修正用の第4回噴射が予定されていた。日々人にはNASAからの指示に従ってメールを確認し、装備の準備を進めるよう伝えられる。
救出作戦の具体的準備
日々人は受信した指示に従い、荷物バッグのラッシングベルトを外して命綱を延長する準備を開始。ロスコスとの協議により編み出されたこの装備は、六太救出のために特別に再構成されたものであった。彼は訓練で学んだ手順を思い出しつつ、動画で手順を再確認しながら結び方などの実践に取りかかった。
救出の準備作業
日々人は、テザー延長のために荷物バッグのラッシングベルト4本を解く作業に取りかかり、送信された動画や手順を確認しながら訓練通りに装備を組み立てた。NASAとロスコスは、万全の準備でムッタ救出を後押ししていた。
ムッタの位置を探す日々人
宇宙空間を漂うムッタは、地球との通信が切れた状態で、訓練で習得した姿勢制御を使って後方を向いた。そして、「日々人が来る」と確信し、ソユーズの出現方向を注視し始めた。
4度目の噴射
11時1分、地上管制室ではカウントダウンののちに4回目の軌道修正噴射が実施され、日々人の乗るソユーズは予定通りの進路をたどっていた。現時点でムッタとの通信は不可だが、36分後に再開可能となる予定である。
支援チームの決意
宇宙センターに集まった各国の関係者たちは、それぞれの想いを胸にモニターを見つめていた。特にロシアの面々は、自分たちがこの場に集ったのはナンバ兄弟を助ける使命のためだと自覚していた。
迫る接近の瞬間
ソユーズの軌道は順調にムッタに近づいており、日々人はムッタを発見するための視野角や時間を確認していた。太陽が昇った11時17分、ムッタが視界に入ることを期待し、日々人は計器を注視し続けた。
ムッタ捜索の決意
日々人は「どこだムッちゃん」とつぶやきながら、絶対に見つけると心に誓った。視野の中に現れるであろうムッタの姿を探し、彼の位置を示すために、正確な座標報告を準備していた。
第418話「捜す」
捜索の開始とカメラ設定
日々人はペリスコープを用いて、六太の捜索を開始した。地上の管制から提供された予測範囲にカメラの視野を合わせ、ヨー0度・ピッチ50度に設定し、飛行士の姿を探し始めた。
手がかりが見えず焦り始める
何も映らない状況に、日々人は焦りを見せる。視野を変えても画面には何も映らず、「見落とすな」「よく見ろ」と自分を鼓舞しながらカメラを操作し続けた。
小さな点を発見するも確信できず
やがて小さな白い点を画面上に確認するが、それが六太であるかどうかは不明であった。日々人はカメラをさらに操作し、ズームを試みるが映像が不明瞭で、指先で画面をなぞりながら六太を追いかけようとした。
時間制限に迫られる中での苦闘
ランデブーまで残り20分、宇宙服を着用する時間も考慮すると猶予は限られていた。管制からは「焦らず続けろ」との助言が届くが、日々人の緊張は高まっていた。
六太もまた不安と戦う
一方、月面の六太もまた不安に苛まれていた。見えるはずのソユーズが見えず、時間が過ぎていくことに焦りを覚えながらも、「ズレはあるかもしれない」と自身を落ち着けようとした。
互いに捜し合うも見えず
六太はソユーズを見ようと試みるが、背景の月面と視界の錯覚により、目が霞み見つけられない。日々人もまたカメラのピッチを変えながら視野を調整するが、なかなか発見には至らなかった。
運命の20分経過と失望
やがて捜索開始から20分が経過し、両者ともに見つけられぬまま焦燥と落胆に沈む。六太は「やっぱりそうだよな……」と呟き、救助の希望が途絶えたかのような沈黙の中浮遊する。
第419話「遺言」
日の出に感動する一同
夜明け前、天文台の屋上でムッタ、ヒビト、シャロンたちは日の出を見守っていた。美しい光景に感嘆の声が上がり、絵日記に描くとヒビトは言う。シャロンは「もし月にいたら、これは“地球の出”になる」と言い、その概念を共有した。
「地球の出」の意味を遊びに変える少年たち
子どもたちは「地球の出」という言葉から着想を得て、ギャグのような振る舞いを始める。「ピースの出」「俺の出」などと言い合い、笑い合う中で無邪気に盛り上がっていた。
思い出とともに始まる現在の通信
場面は再び現在の月面へと戻り、ソユーズが通信可能域に入ったことで地上との交信が再開される。だが日々人は依然として六太の姿を捉えられず、管制室には焦りと不安が広がっていた。
月面で孤立する六太
酸素残量が9%を切り、六太はソユーズを目視でもアシストモードでも確認できず、絶望的な状況に陥る。仲間たちの努力を思い出しながらも、「もうだめだ」と心が折れかける。
最期の選択と感謝の想い
六太は最期を覚悟し、ヘルメットを脱ぐかどうかを考え始める。シャロン天文台完成という夢は叶ったことに感謝しながらも、シャロンや地上の皆に帰れないことを詫びる。その想いは「ごめん、じゃねえな」という言葉に集約されていた。
夢が叶ったという実感
ムッタはこれまで関わった仲間たちの顔を思い出し、「みんなのおかげで宇宙に来られた」と心の中で感謝を述べる。宇宙飛行士としての夢は叶ったことを確信し、その感謝と別れの言葉を静かに口にした。
日々人との対話と励まし
死を覚悟するムッタの心に、日々人の姿が現れ、「生きろよ」と励ましの言葉を送る。ムッタは兄としての誇りと家族への思いを日々人に託し、「お前が弟でよかった」と心からの言葉を贈る。
希望の兆しと探索再開
日々人は通信圏に入ったソユーズからの情報をもとに、可能性が低いとされていた後方の探索を開始する決意を固める。地球の管制チームも連携し、残された一縷の望みに賭けて、探索が再び動き出した。
最期の地球の出
南波六太は、自身が最期に見届けることになるかもしれない「地球の出」に目を向けた。限界の中で故郷を想い、地球を静かに見つめるつもりで方向転換をする。
三日月になった地球を見るムッタ。
弟・日々人への託し
六太は、弟である日々人に両親のことを託す言葉を口にした。静かに浮かぶ六太の前に、幼少期の思い出の中の笑顔の弟が現れ、兄弟の絆を象徴する「ピースの出」を思い返していた。
光の中の再会
地球を見ながら彷徨う六太の前方に、強い光を放つ何かが現れた。
六太はその輝きを目撃し、全身で叫ぶ。「ひ……日々人!」。光の正体は救出に来た日々人のソユーズであり、二人は宇宙空間で再会を果たした。
第420話「点滅」
必死の呼びかけ
咄嗟にムッタは信号弾を手にし、光を掲げて全力で日々人へ呼びかけた。その声は通信の届かぬ中で宙に消えたが、信号弾の強い光が日々人の乗るモジュールのセンサーに捉えられた。
祈りと発見
ムッタの光を頼りに、管制室ではレーダーや望遠装置による捜索が進められた。管制官たちは緊張の面持ちで計器とにらみ合い、ついにレーダーに小さな点が浮かび上がる。ピッチ角を調整しながら光の点滅を確認した管制官は、「いた!これだ!」と叫び、周囲に歓喜が広がった。
歓喜と安堵の広がり
「ムッちゃん生きてます!」という報告が瞬く間に部屋中に伝わり、仲間たちは「いたぞ!生きてる!」と次々に声を上げた。涙ぐむ者、拳を握りしめる者、全員がその瞬間にムッタの無事を確信し、緊張から解放された。
座標の特定とEVAの準備
確認された光点の座標が詳細に伝えられ、日々人に向けての救出作戦が開始された。日々人には宇宙服の着用とEVA(船外活動)の準備が命じられ、ソユーズからの噴射対応も並行して進められた。予想以上の軌道のズレがあったが、位置の特定は成功していた。
第421話「最後のチャンス」
救援の兆しと希望
宇宙空間に取り残された南波六太は、遠くから接近する機体を目撃し、それが上昇してくることに気づいた。彼はそれが自分を助けに来ていると認識し、安堵と希望の表情を浮かべた。
日々人の出動準備
ソユーズでは、南波日々人が宇宙服の着用を完了させ、出動に向けて準備を整えていた。地上からは「シミュレーション通りなら大丈夫」との声援が送られ、日々人は「絶対助ける」と強く決意していた。
発射準備と最終確認
日々人の行動を支援する地上のスタッフたちは、機体のテザーやハンドレールの接続状況、ハッチ開放のタイミングを最終確認した。日々人は目前に迫る救出行動に集中し、「もうすぐだ」と心を引き締めた。
救出作戦の開始と接近
地上ではソユーズとムッタの現在の距離が150mから100mへと縮まっていくことが確認され、作戦が順調に進行していることが伝えられた。日々人は「絶対助ける」と強く再認し、ムッタもそれを感じ取っていた。
接近と異変の兆し
ソユーズがさらにムッタへと接近していく中、ムッタは安堵の表情を見せるが、突如ソユーズが噴射を再開し、上昇を始めた。ムッタはその動きを見て困惑しながらも、見失わないように注意を払った。
兄弟の通信再開
宇宙空間でムッタとソユーズが近づく中、通信が再開され、ムッタは日々人の声を聞き取ることができた。日々人の「ムッちゃん、聴こえるか?」という問いかけに、ムッタは「聴こえるよ」と応じ、兄弟の連絡がつながった。
救援作戦の実行へ
日々人は「今向かってる、もうすぐ助ける」とムッタに伝えた。ムッタは落ち着いて酸素と電池の残量を報告するよう指示され、冷静に状況の確認に入った。両者は通信を確保したまま、救助作戦の実行に向けて動き始めた。
酸素と電池残量の確認
ムッタは、ヒビトの指示に従ってスーツ内の酸素と電池残量を確認し、それぞれ5%と12%であることを報告した。地上管制センターでもその情報が共有され、ヒビトは状況を把握した。
ソユーズの接近と姿勢の指示
ソユーズはムッタの後方から接近する計画となっており、ムッタにはハッチに正対する姿勢を維持するよう指示が出された。さらにヒビトから「ライトを消しても地上が把握している」との安心材料が伝えられた。
救助ネットの準備
ソユーズには即席の救助ネットが用意されており、ヒビトはムッタに対して、ハッチから押し出されるネットにしっかり掴まるよう伝えた。このネットは先端を掴みやすく加工されたもので、エディたちが考案したものである。
最終フェーズへの突入
地上では「最後のフェーズ」としてソユーズの降下噴射が開始され、管制官は「チャンスは一回きり」と緊張感を強調した。ムッタと最も接近できるタイミングは12時19分からの2分間であるとされ、再度の接近は燃料の関係で不可能と通達された。
最接近への意志と確認
ヒビトは「そのつもりです」と返答し、地上管制も見守る中、ソユーズはムッタとの距離をさらに縮めていった。ハッチを開けたヒビトの姿がムッタの視界に入り、両者の視認が確認された。
救助ネットの発射準備
20メートルまで接近した時点で、ヒビトは「今ハッチ開ける」と準備に入った。ムッタからも「見えてる」と応答があり、救助の最終段階へ突入した。地上からもヒビトに「そろそろ時間」と通達され、彼はネット発射のタイミングを見極めていた。
救助ネット発射
ヒビトはネットを操作し、「今だ!」の合図と共に六太に向けてネットを発射した。全員が固唾を飲んで見守る中、ムッタがネットを掴み宇宙兄弟は再度繋がった。
同シリーズ
宇宙兄弟







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