絶頂除霊 ! 9巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 11巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、対象を強制的に絶頂させて除霊する能力「絶頂除霊」を両手に宿す主人公・古屋晴久たちが活躍する退魔活劇シリーズの第10巻である。 ある朝、晴久が目を覚ますと、自身の魂がヒロインである宗谷美咲の子宮の中へ移されていた。それは、男性の魂を女性の胎内へ閉じ込め、一週間以内に出産させて強制的に新生児として転生させる(元の肉体は死亡する)という「処女懐胎」の怪異によるものであり、東京中で同様の被害が続出していた。晴久たちは、出産までのタイムリミットが迫るなか、魂を胎外へ顕現させた「三人羽織」の戦闘形態を駆使し、元十二師天の逆神忍や、怪異を生み出した黒幕「呪殺法師」に立ち向かう。
■ 主要キャラクター
古屋晴久:絶頂除霊の呪いを両手に宿す少年である。処女懐胎怪異によって魂を宗谷の胎内へ移されるが、胎外へ顕現したり、反動で赤ん坊の姿になったりしながら、絶頂除霊で事態の解決を図る。
宗谷美咲:淫魔眼を宿す少女である。晴久の魂を宿して「処女懐胎」状態となり、膨らんだ腹と出産のリミットに追われながらも、晴久の肉体と魂を守るために最前線で戦う。
ミホト:晴久の両手に宿る少女霊である。晴久の魂を宗谷の胎内から一時的に顕現させ、三人の両腕を同化させた「三人一体の戦闘形態」を構築する役割を担う。
ゼパル(朝風春美):人間の女子高生として学園に編入してきた最年少魔王候補の魔族である。護衛として強力な魔力を振るい、落下する巨大な電波塔を真正面から受け止めるなど、規格外の力で晴久たちを支援する。
土御門雅(呪殺法師):龍脈諸島の優秀な研究者として登場していたが、その正体は悪霊を共食いさせる外法で人工怪異を作り出した黒幕である。強化した特級怪異霊《姑獲鳥》を操り、晴久たちを圧倒する。
逆神忍:元十二師天の霊能犯罪者である。あらゆる性質を反転させる《絶対領域》や、強制的に課題をこなさせる怪異《王様ゲーム》を展開し、晴久たちを過酷な状況へ追い込む。
■ 物語の特徴
本作は、過激なエロコメディと本格的な異能バトルが融合した作風が特徴である。 第10巻では、「主人公の魂がヒロインの子宮に閉じ込められる」という前代未聞の怪異により、ヒロインが疑似的な妊娠状態(処女懐胎)に陥るというフェティッシュな事態が描かれている。魂を顕現させた反動で「赤ん坊化した主人公にヒロインたちが授乳して回復させる」といった独自の設定や、敵の怪異によって「脱衣や授乳の課題を強制される王様ゲーム」に挑まされるなど、本作ならではの過激なギャグ要素が詰め込まれている。その一方で、刻一刻と迫る出産のタイムリミットへの焦燥感や、信頼していた人物が黒幕だったという衝撃的な展開、さらには天界から主人公への暗殺指令が下される結末など、息を呑むシリアスなサスペンスとバトルが絶妙なバランスで展開される点が最大の魅力である。
10巻は3位か・・
読んだ本のタイトル
出会ってひと突きで絶頂除霊!10
著者:赤城大空 氏
イラスト: 魔太郎 氏
出版社:小学館(ガガガ文庫)
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あらすじ・内容
怪異! 処女懐胎で俺が産まれる!?
古屋晴久はある朝目を覚ますと、宗谷美咲の子宮の中にいた。なにを言ってるかよくわからないと思うが、事実なので仕方がない。またトンデモ怪異に関わってしまったと頭を抱える晴久たちだったが、“処女懐胎”怪異は東京中に拡がっていた。美咲の淫魔眼で確認した出産までのタイムリミットは、1週間。それまでに除霊しないと、強制人生やり直しルート確定だ。焦りをつのらせる面々の前に現れたのは、元十二師天・逆神忍と、呪殺法師を名乗る女で――? 産まれるが先か、祓うが先か。絶頂退魔シリーズ、大台突破の第10巻!
出会ってひと突きで絶頂除霊!10
感想
シリーズらしい破天荒な発想と、緊張感のある怪異との戦いが詰め込まれた一冊だった。夏休み明けの新学期から物語は一気に動き出し、序盤から最後まで勢いに圧倒される。
まず驚かされたのは、古屋が怪異によって宗谷の中へ閉じ込められてしまうという異常事態だ。
突然の出来事に戸惑う宗谷と、近くにいるのに思うように意思を伝えられない古屋のやり取りは、シリアスな状況でありながらどこかコミカルでもあり、序盤から引き込まれてしまった。
人間関係の描写も印象深い。
異変を知った文鳥や葛乃葉が宗谷の様子を見て動揺し、慌てて古屋の部屋へ駆け込む場面は、本作らしいドタバタ劇として楽しめた。それぞれの感情が入り乱れながら騒動が大きくなっていく流れは、シリーズならではの面白さだと感じる。
今回の怪異は、これまで以上にスケールが大きかった。
東京中で同様の被害が発生し、多くの人が巻き込まれていく展開には危機感があった。さらに、怪異同士の力が共鳴することで、本来では考えられない規模へ発展していく設定も興味深い。単なる力比べではなく、怪異の仕組みが物語へしっかり組み込まれている点が印象に残った。
中盤の「王様ゲーム」を題材にした一連の展開も見応えがあった。
最初は軽い雰囲気で始まるものの、次第に状況が悪化していき、笑える場面と緊張感が入り混じる展開になっていく。この作品らしい独特のテンポが最後まで続いており、ページをめくる手が止まらなかった。
終盤の黒幕との戦いも熱い。
刻一刻と状況が悪化する中で、それでも諦めずに立ち向かう古屋たちの姿には引き込まれた。絶望的な状況から一気に形勢を逆転するクライマックスは爽快感があり、シリーズらしい締めくくりだった。
そして最後に待っていたエピローグも印象的だった。
これまで比較的出番が少なかった烏丸に新たな動きがあり、一気に物語の空気が変わる。欧州側から重要人物ではないかと疑われる展開には思わず驚かされると同時に、今後は彼女が物語の中心へ関わっていくのではないかという期待が膨らんだ。
今巻は、シリーズらしい勢いのあるコメディを楽しみつつも、怪異や世界観の設定がさらに掘り下げられた一冊だった。次巻では烏丸を中心にどのような物語が描かれるのか、続きが気になる読後感を味わえた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
宗谷の処女懐胎
本作の第10巻において中心となる最大の異常事態「宗谷の処女懐胎」は、前代未聞の怪異によって引き起こされた絶体絶命の危機であり、過激なギャグ要素とシリアスなタイムリミットが交錯する展開を生み出した。その詳細な設定、影響、そして結末を構成する要素は以下の通りである。
男性魂の女性胎内幽閉と一週間以内強制転生タイムリミットおよび接近時時間短縮
ある朝、古屋晴久が目を覚ますと、自身の魂がヒロインの一人である宗谷美咲の子宮内に移されていた。
・宗谷の身体は一晩で臨月のように大きく腹が膨らみ、疑似的な妊娠状態へと陥る。
・この怪異は男性の魂を女性の胎内に閉じ込めるものであり、最大の特徴は一週間以内に出産へ至るというタイムリミットがあることである。
・出産を迎えてしまうと、男性の元の肉体、すなわち晴久の場合は自室で昏睡状態の肉体は死亡し、魂は新生児として強制的に転生させられ、人生をやり直すことになってしまう。
・さらに、怪異の発生源に近づくほど、出産までの残り時間が急激に短縮されるという厄介な性質を持っている。
胎内晴久声の内側響鳴と宿主視界共有および淫魔眼による残時間目視
胎内にいる晴久の魂と、宿主である宗谷は特殊な繋がりを持つ。
・晴久の声は外からではなく宗谷の身体の内側から直接響くように届き、晴久は宗谷の視界を共有することができる。
・また、宗谷の持つ淫魔眼の能力を通すことで、出産までの具体的な残り時間を視覚的に確認することが可能である。
・二人は常に迫り来る死と転生へのプレッシャーに晒されながら行動することになる。
両腕同化三人一体戦闘形態の構築と強引顕現反動の早産赤ん坊化および擬似授乳
この危機を打開するため、晴久に宿る少女霊ミホトの力により、晴久の魂を一時的に宗谷の胎内から外へ顕現させた。
・晴久とミホトの両腕を宗谷の両腕と同化させる三人一体の戦闘形態を構築し、敵の怪異と戦う。
・しかし、怪異の法則に逆らって強引に胎外へ顕現した反動は大きく、戦闘を解除すると晴久の魂は急激に縮み、言葉も話せない赤ん坊の姿の早産状態になってしまう。
・これを元の姿に戻すためには、宗谷や仲間の桜、楓から疑似的な授乳による生命力の提供を受けて魂を落ち着かせる必要があった。
・これが一行の間に非常に気まずい空気を生み出した。
土御門雅外法人工怪異化の全貌露呈と五分延長偽装出産経由の至近距離除霊解決
この一連の怪異を生み出した黒幕は、信頼していたはずの研究者・土御門雅であった。
・彼女は悪霊を共食いさせる外法でこの人工怪異を作り出し、特級怪異霊姑獲鳥や元十二師天・逆神忍の能力と共振させて極めて強力な事象へと引き上げていた。
・決戦の終盤、雅の罠と怪異の強化によって宗谷の出産期限がついに尽き、晴久の魂が赤ん坊として出産されたかのように見える事態となる。
・しかし、これは晴久とミホトが自ら胎内に戻って口の能力で怪異を弱め、期限を5分だけ延長した上で行った偽装出産の奇策であった。
・完全に油断して接近してきた雅の懐で晴久たちは再び顕現し、三人一体形態の至近距離から絶頂除霊を叩き込んで怪異を完全に浄化する。
・怪異が消滅したことで宗谷の膨んでいた腹は元に戻り、晴久の魂も無事に自身の肉体へと帰還した。
・これにより東京中で発生していた百組以上の処女懐胎被害者たちも元通りに救出されて事件は幕を閉じ高水準の解決を見た。
まとめ
宗谷美咲の処女懐胎怪異を巡る一連の顛末は、男性の魂を胎内に閉じ込めて強制転生させるという理不尽な精神・肉体汚染に対し、三人一体の変則的な戦闘形態の構築と絶体絶命の局面における偽装出産の奇策によって黒幕を打破した過酷な防衛戦の記録である。出産期限の迫る中で赤ん坊化するリスクを背負いながらも、美咲との強固な信頼関係とミホトの補助を駆使して土御門雅の懐に飛び込み、絶頂除霊を直撃させたプロセスは、彼らの戦術的知略と絆の深さを示している。最終的に、雅の人工怪異を完全に無力化して晴久の魂を元の肉体へ還し、都内百組以上の被害者をも同時に救う完全勝利を収めた顛末は、どれほど不気味で過激なタイムリミット型の呪いであっても、冷静な時間延長の計算と本質的な除霊技術の執行によって打破され、失われた秩序と平穏が完璧に奪還されることを厳密に証明している。
土御門雅の裏切り
第10巻において、龍脈諸島で優秀な研究者として登場していた土御門雅の裏切りは、物語の根幹を揺るがす最大の衝撃であり、一連の異常な怪異事件の真相であった。彼女の裏切りと真の目的、そしてその結末を構成する要素は以下の通りである。
癒やしグッズ偽装工作の遠隔機器紛れ込みと百組以上処女懐胎引き起こしの黒幕
雅は本土へ来たついでと称して学園の晴久を訪ね、龍脈諸島で怪異を除去してもらったお礼として入浴剤などの癒やしグッズをプレゼントしていた。
・しかし、実は彼女こそが東京中で百組以上の処女懐胎の怪異を引き起こした黒幕である呪殺法師であった。
・晴久に渡した差し入れの中には、怪異を発動させるためにテレビを遠隔操作する機器を密かに紛れ込ませていた。
退魔師社会怨恨に伴う先天能力優遇不満と人造怪異技術承認欲求の凶行動機
彼女がこのような凶行に及んだ理由は、退魔師社会に対する強い不満と怨恨であった。
・彼女は努力して退魔術を学んだにもかかわらず、社会が評価するのは生まれつき怪異能力を持つ者や残留怪異を持つ者ばかりであることに理不尽さを感じていた。
・そのため、才能に恵まれない者でも力を得られる人造怪異の技術を完成させる。
・晴久たちのような実力者を倒すことで、たとえ倫理に反していても社会が自分の研究成果を認めざるを得ない状況を作ろうとした。
悪霊共食い外法実験の狂気と逆神忍罠仕込み腕輪経由姑獲鳥取り込み増幅
彼女の狂気は、これまでのショタ化怪異や王様ゲームなどの事件もすべて彼女の実験の一環であったことにも表れている。
・悪霊同士を共食いさせて怪異の種を作るという外法を用いていた。
・さらに雅は、敵対する晴久たちだけでなく、協力者として雇っていた元十二師天の逆神忍すらも裏切る。
・最初から使い捨てるつもりで電撃装置の罠を仕込んだ腕輪を渡し、彼女の逆転能力を封じた。
・そのうえで特級怪異霊姑獲鳥に逆神忍を取り込ませて、自らの力を増幅させるという冷酷な手段に出た。
偽装出産奇策至近距離除霊敗北とナギサ才能評価吐露に伴う次元監獄収監
最終的に、雅は晴久たちが仕掛けた偽装出産の奇策によって隙を突かれ、至近距離からの特殊な除霊を受けて敗北した。
・倒れ伏し、なおも自分の研究の有用性を叫ぶ雅に対し、ナギサは、雅が過去に開発した生命維持装置のおかげで自分は退魔師を続けられている、と明かす。
・以前から彼女の才能を正当に評価していたことを告げた。
・この言葉を聞いた雅は意識を失い、その後、次元監獄へ収監されることとなった。
まとめ
土御門雅の裏切りを巡る一連の顛末は、科学的信頼を集めていた研究者が、血統や先天的な才能を優遇する退魔師社会への怨恨から非道な人造怪異の研究に手を染め、味方すらも特級怪異の贄として取り込む狂気に奔った凄惨な内部崩壊の記録である。癒やしグッズを偽装した遠隔発動工作や、悪霊の共食い外法を用いて百組以上の処女懐胎災害を引き起こしたプロセスは、彼女の極めて高い技術力と歪んだ承認欲求の深さを示している。最終的に、晴久たちの時間延長を伴う偽装出産の盲点を突いた至近距離除霊によって打倒され、ナギサから過去の業績に対する正当な評価を告げられて次元監獄へと収監された顛末は、どれほど社会への不満から生じた天才的な術式構築であっても、倫理を逸脱した非道な外法は確実な除霊の執行によって打破され、歪んだ承認の叫びもまた過去の正当な絆の記憶によってのみ救済されるという冷徹な因果律を厳密に証明している。
王様ゲームの突破
本作の第10巻において、新東京電波塔の展望室を目指す晴久たちの前に立ち塞がった逆神忍が展開した《王様ゲーム》は、過酷な条件と逆神の能力が組み合わさった非常に厄介な怪異であった。その突破に至るまでの詳細な経緯を構成する要素は以下の通りである。
隔離空間幽閉と初期カウント二十消費要求および命令失敗時数値増加ルール
逆神忍が発動した怪異《王様ゲーム》は、参加者全員を隔離空間へ閉じ込め、くじで選ばれた命令を強制的に達成させるという能力であった。
・開始時に20のカウントが設定されており、これをゼロにするまで空間からの脱出も敵への攻撃もできない。
・さらに、命令に失敗すれば残りカウントが増加してしまうという厳しい仕組みであった。
ラブコメ風命令隠し条件違反の連続失敗と烏丸の羞恥心皆無暴露快進撃
処女懐胎怪異による出産期限が迫るなか、晴久たちは命令をこなして脱出を試みた。
・しかし、見つめ合いながら好ましい異性の特徴を三つ明かす、最近見た刺激的な夢を耳打ちする、三秒間キスをする、といったラブコメ風の命令が下される。
・晴久や楓、宗谷、桜は羞恥心や厳密な隠し条件、すなわち視線が外れる、対象の名前を伏せる、制限時間超過などによって次々と失敗し、カウントを増やしてしまう。
・そんな中、羞恥心の薄い烏丸だけは自らの夢や性的な興奮をためらいなく暴露し、次々と命令を成功させてカウントを減らす快進撃を見せた。
あらゆる性質逆転能力による理不尽妨害と命令対象変更に伴うカウント増加
烏丸と《王様ゲーム》の相性の良さで活路が見えたかに思えたが、逆神は自身のあらゆる性質を逆転させる能力を使って妨害を始めた。
・烏丸が逆神を拘束するはずの命令を反転させて逆に烏丸を捕らえてしまう。
・楓が晴久の服を脱がす命令を、晴久が楓の服を脱がす内容へ変える。
・こうした理不尽な反転によって晴久たちは再び失敗を重ね、カウントは開始時より増えた状態に陥ってしまった。
代用品越し一分間授乳命令の現出と強引顕現解除に伴う赤ん坊化攻略
終わらない失敗が続く中、おみくじ箱が輝き、最高難度の命令が下された。
・それは、晴久が宗谷、楓、桜へ代用品越しに一分ずつ授乳を受けるという、通常であれば達成不可能な羞恥を伴う最凶の課題であった。
・逆神は達成不可能だと嘲笑したが、晴久は三人羽織の戦闘形態から顕現状態を解除する際の反動を利用する。
・自ら迷わず言葉も話せない赤ん坊の姿へと変化した。
・これにより羞恥心を乗り越え、宗谷、楓、桜の三人も迷わずラップという代用品越しに順序よく晴久へ授乳を行い、時間を厳密に計測してこの難題を完遂した。
カウント二十一から三への急減と箱破壊隔離空間消滅に伴う呪殺法師進撃
この極めて重い命令を成功させたことで、カウントは21から一気に3へと減少した。
・その後に続いた膝枕や恋人繋ぎといった比較的軽い命令は、すでに覚悟を決めていた晴久たちや烏丸によって難なくクリアされる。
・カウントがゼロになった瞬間におみくじ箱は破壊され、隔離空間も消滅した。
・無敵に思えた《王様ゲーム》を完全に攻略された逆神は逃走を余儀なくされ、晴久たちはついに怪異の本体である呪殺法師のもとへと進撃することになった。
まとめ
逆神忍の《王様ゲーム》を巡る一連の顛末は、強制的な命令遵守と属性反転という理不尽なルールによって侵入者を足止めする精神汚染型の隔離怪異に対し、自らの肉体を赤ん坊化させるという常軌を逸した機転とヒロインたちの迅速な連携によってこれを完全攻略した過酷な突破の記録である。羞恥心と隠し条件の罠によってカウントを増大させられ、反転能力で術式を歪められながらも、代用品越しの授乳という最凶の命令を赤ん坊化の反動を逆利用して完遂したプロセスは、晴久の驚異的な戦術的発想と生存への執念を示している。最終的に、カウントを21から急減させて空間を消滅させ、無敵のゲーム領域を内側から崩壊させて逆神を敗走に追い込んだ顛末は、どれほど悪趣味で厳密な行動制限を課す精神的怪異であっても、羞恥を捨て去った冷徹な計算と条件の完全執行によって打破され、閉鎖された活路が呪殺法師の核心へと実力でこじ開けられることを厳密に証明している。
姑獲鳥との決戦
本作の第10巻における姑獲鳥との決戦は、空飛ぶ新東京電波塔の展望室を舞台に繰り広げられる、一連の怪異事件のクライマックスに位置づけられる。強大化する怪異と絶望的な戦況、最悪の連鎖によるタイムリミットの切迫、そして決死の陽動から逆転へと至る全容は以下の通りである。
逆神忍取り込みによる姑獲鳥特級怪異化と高圧黒色液体および暴風迎撃
展望室で待ち構えていた姑獲鳥は、黒幕の土御門雅によって操られる巨大な特級怪異霊である。
・この怪異は処女懐胎の怪異と共振して互いの力を大幅に増幅させている。
・そのうえ、雅が元十二師天の逆神忍を裏切って姑獲鳥に取り込ませたことで、さらに強大な力を獲得していた。
・姑獲鳥は毒と呪詛を含む黒い液体を高圧で放ち、巨大な翼から暴風を生み出して晴久たちを容易に接近させない。
状態共有腕輪投入に伴う複数人処女懐胎化と母子反応強化による期限削落
敵の強化に伴い、宗谷美咲の出産期限は40分未満へと急激に短縮される。
・さらに雅は、怪異能力《状態共有》を封じた腕輪を使用し、文鳥桜、葛乃葉楓、烏丸葵の腹まで膨らませて新たな処女懐胎状態へと陥れた。
・姑獲鳥には母子を前にすると力を増すという厄介な性質があり、増えた母子に反応して際限なく強化されてしまう。
・この影響で宗谷の出産期限はついに10分未満にまで削られ、晴久たちは絶体絶命の危機へ追い込まれた。
変身札偽装の強制胎内帰還と口の能力による五分延長偽装出産奇策
晴久たちは楓の変身術や式神を用いて三方向からの突撃を仕掛け、一度は雅の腕輪を破壊して桜たちの状態共有を解除する。
・しかし雅が予備の腕輪を取り出したことで、決死の作戦も即座に無効化されてしまった。
・さらに、晴久の魂の顕現状態が限界を迎え、強制的に宗谷の胎内へ戻される事態が発生する。
・そのまま出産期限が尽き、宗谷の下腹部から晴久の魂が放出されて敗北したかのように見えた。
・だがこれは、晴久とミホトが自ら胎内へ戻り、サキュバス王の口の力で怪異の影響を弱めて期限を5分だけ延長したうえで行った偽装出産の奇策であった。
宗谷霊力回復に伴う巨大式神姑獲鳥拘束と角の力見切り二処急所除霊浄化
赤ん坊を装った変身札で完全に油断し、接近してきた雅に対し、晴久たちは至近距離から猛反撃を開始した。
・晴久は胎内に戻った際、宗谷の霊力を大量に回復させることに成功しており、その力で宗谷は四神を模した巨大式神を召喚して姑獲鳥を押さえ込んだ。
・桜たちも拘束術で援護する中、晴久は角の力で敵の動きを見切り、姑獲鳥の二つの急所へ特殊な除霊を叩き込む。
・これによって強大化した姑獲鳥は浄化され、処女懐胎怪異との共振も完全に消滅した。
・続けて雅本人にも最後の一撃が施され、東京中を巻き込んだ前代未聞 of 怪異事件は終結を迎えることとなった。
まとめ
姑獲鳥との決戦を巡る一連の顛末は、仲間を取り込み母子反応によって無限に強化される特級怪異の絶望的な猛威に対し、精神同調による霊力回復と時間延長を計算に入れた偽装出産という執念の奇策によって戦況を覆した極限の空中結戦の記録である。短縮されるタイムリミットや状態共有による被害拡大を前に、油断を誘って懐に入り込み、巨大式神での拘束から急所への確実な一撃へと繋げたプロセスは、晴久たちの高い戦術的連携と状況打開への覚悟を示している。最終的に、姑獲鳥を完全に浄化して共振術式を解体し、呪殺法師である雅本人をも打倒して東京全域の被害者を救済した顛末は、どれほど因果を弄ぶ強固な複合型人造怪異の試みであっても、本質を突いた時間管理と揺るぎない絶対的な除霊技術の執行によって打破され、崩壊寸前の平穏が完璧に奪還されることを厳密に証明している。
天界の暗殺指令
本作の第10巻のエピローグにおいて明らかになる「天界からの暗殺指令」は、サキュバスパーツを巡る神魔の争いが、ついに主人公・古屋晴久の命を直接脅かす段階へと突入したことを示す衝撃的な展開である。その詳細な背景と経緯を構成する要素は以下の通りである。
欧州祓魔連合本部地下祭殿の最重要聖域における上位神族ケルビムの帰還
指令が下されたのは、欧州祓魔連合本部の地下祭殿である。
・ここは上位神族との会談に使われる最重要の聖域である。
・当時の祓魔連合における暫定トップである第二聖人が一人で守っていた。
・そこへ、第二聖人に力を貸している上位神族ケルビムが天界から帰還し、姿を現した。
アザゼルやミホトの情報天界伝達に伴う宿主晴久の即座暗殺最終命令
ケルビムが天界上層部へ呼び出されていた理由は、地上で暗躍するアザゼルや次期魔王候補の存在、ミホト、そしてサキュバスパーツに関する詳細な情報が天界へ伝わったためであった。
・天界上層部は、パーツを集めて計画を進める者たちの目論見を確実に阻止するための最終手段を選ぶ。
・主要なパーツの宿主である晴久を即座に暗殺するよう命じた。
国際混乱を招く過酷指令への絶対服従と欧州祓魔連合および神族の敵対化
日本の退魔師協会が保護する晴久を暗殺するという指令は、国際関係において大きな混乱を招きかねない極めて危険なものであった。
・しかし、第二聖人は神族からの命令を絶対視している。
・この過酷な指令に対しても迷うことなく従う意思を示した。
・この出来事により、晴久たちは魔族や国際霊能テロリストだけでなく、これまで同盟関係に近い立場にあった欧州祓魔連合、さらにはその背後にいる天界からも直接命を狙われることになる。
・次巻以降でかつてない規模の危機に直面することが示唆されている。
まとめ
天界からの暗殺指令を巡る一連の歩みは、サキュバスパーツの完全復活や魔族の陰謀を阻止するためであれば宿主の抹殺をも辞さないという神族側の冷徹な絶対秩序が下され、主人公たちが全世界および天界すらも敵に回す孤立無援の戦いへと引きずり込まれていく新章への絶対的な転換点の記録である。アザゼルやミホトの情報を掴んだ天界上層部が下した即座暗殺の命令に対し、第二聖人が国際的な混乱を厭わず絶対服従の姿勢を示したプロセスは、神族の権威の絶対性と今後の対立の深刻さを示している。最終的に、同盟関係にあったはずの欧州祓魔連合や背後の神族までもが命を狙う敵へと変貌し、魔族と神族の双方から狙われる極限の多面闘争の盤面が確定した顛末は、この暗殺指令が単なる局地的な警告にとどまらず、晴久たちの生存を賭けた戦いを人間界の枠組みから神魔の全面戦争の地獄へと強制的に引き上げるための絶対的な号砲となったことを厳密に証明している。
絶頂除霊 ! 9巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 11巻レビュー
登場キャラクター
都立退魔学園
古屋晴久
両手に特殊な除霊能力とサキュバスのパーツを宿す少年である。ある朝、処女懐胎の怪異によって魂を宗谷の胎内に閉じ込められた。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷の胎内から一時的に顕現し、三人一体の戦闘形態で戦った。王様ゲームでは自ら赤ん坊の姿へ変化し、難題を突破している。最後に特殊な除霊で姑獲鳥と土御門雅を撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新たに《サキュバス王の口》の能力を得ている。天界の上層部から暗殺指令を出された。
宗谷美咲
淫魔眼を持つ少女である。晴久の魂を胎内に宿し、疑似的な妊娠状態へ陥った。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久と視界を共有し、出産までのタイムリミットを確認した。自身の霊力を晴久やミホトへ供給している。四神を模した巨大式神を召喚し、姑獲鳥を押さえ込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
快楽媚孔が存在せず、快楽を与える能力が効かない体質を持つ。
小林
晴久とゼパルの関係を疑う男子生徒である。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久の席に捕縛術を仕掛けた。捕らえた晴久を一方的に尋問している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
文鳥桜
晴久を護衛する少女である。晴久へ恋慕を抱いている。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷の膨らんだ腹を見て錯乱した。晴久の寝間着を脱がせて既成事実を作ろうと試みている。王様ゲームでは晴久へキスする命令に失敗した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雅の腕輪によって一時的に処女懐胎状態となった。
烏丸葵
捕縛術を操る少女である。羞恥心が薄く、欲望に忠実な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
王様ゲームで自らの夢や興奮した出来事を暴露し、命令を次々と成功させた。戦闘では捕縛術による援護を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
腹部に聖痕らしき紋様が浮かび、第一聖人ではないかと疑われた。雅の腕輪によって一時的に処女懐胎状態となった。
南雲
晴久の能力を利用しようとする男子生徒である。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
小林たちと一緒に晴久を捕らえた。両手の封印具を外して自分へ能力を使わせようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
葛乃葉楓
変身術を得意とする少女である。晴久へ好意を寄せている。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷の妊娠を晴久の責任だと即断し、包丁を持ち出した。王様ゲームでは衣服を脱がし合う命令に失敗している。変身札を用いて雅の注意を分散させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雅の腕輪によって一時的に処女懐胎状態となった。
小日向
瞬間移動の能力を持つ少女である。男性恐怖症の克服を続けている。
・所属組織、地位や役職
情報なし。
・物語内での具体的な行動や成果
訓練として晴久の部屋へ転移を試みた。結界に弾かれて晴久の上へ落下している。散乱した成人向け用品を見て誤解した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
退魔師協会・退魔師
ナギサ
処女懐胎事件の対策本部で責任者を務める人物である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会の指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久たちに電波塔への突入を命じた。雅へ向けて、彼女の才能を以前から認めていたと直接告げている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雅が開発した生命維持装置によって退魔師を続けられている。
医療従事者と退魔師
大学病院の対策本部で対応に追われる人々である。
・所属組織、地位や役職
大学病院、退魔師協会。
・物語内での具体的な行動や成果
疑似妊娠状態の女性と意識不明の男性を次々に収容した。治療や被害状況の確認を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
霊視班
怪異の探知や追跡を行う部隊である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会。
・物語内での具体的な行動や成果
被害者と宿主の間に残る繋がりを逆にたどれる可能性を見いだした。怪異の宿主の捜索を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
欧州祓魔連合
第二聖人
神族からの命令を絶対視する人物である。欧州祓魔連合の暫定トップを務める。
・所属組織、地位や役職
欧州祓魔連合の暫定トップ(第二聖人)。
・物語内での具体的な行動や成果
処女懐胎事件の早期解決を退魔師協会へ要求した。天界からの晴久暗殺指令に対し、迷うことなく従う意思を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上位神族ケルビムから力を貸し与えられている。
イザベル・ジャパリ
白い翼を持つ女性である。強引な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
欧州祓魔連合の第七聖人。
・物語内での具体的な行動や成果
怪異を討つため欧州から急行した。烏丸を第一聖人だと疑い、強引に連れ去っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
病院の結界を破壊して現れた。事件が解決済みであることを知らなかった。
霊能犯罪組織・テロリスト・犯罪者
土御門雅(呪殺法師)
処女懐胎怪異を生み出した黒幕である。才能を持つ者への怨恨を抱いている。
・所属組織、地位や役職
退魔学園の卒業生。(呪殺法師)
・物語内での具体的な行動や成果
晴久へ癒やしグッズを贈り、怪異を発動させるための機器を紛れ込ませた。逆神を裏切って姑獲鳥に取り込ませている。晴久の特殊な除霊を受けて敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
悪霊同士を共食いさせて怪異の種を作る外法を完成させた。事件後、次元監獄へ収監されている。
逆神忍
あらゆる性質を逆転させる能力を持つ人物である。
・所属組織、地位や役職
元十二師天。特級霊能犯罪者。
・物語内での具体的な行動や成果
電波塔で《絶対領域》や《王様ゲーム》を展開した。雅に裏切られ、罠によって逆転能力を封じられている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
姑獲鳥に取り込まれた。事件後、次元監獄へ収監されている。
ラピス
欧州の隠れ家に潜伏する人物である。
・所属組織、地位や役職
国際霊能テロリスト。
・物語内での具体的な行動や成果
最後のサキュバスパーツに関する情報を集めていた。上位神族や欧州祓魔連合の不審な動きを察知している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
処女懐胎事件において、晴久を弱体化させる以外の目的も達成した。
ジェーン・ラヴェイ
ラピスとともに隠れ家へ潜伏している人物である。晴久への執着が強い。
・所属組織、地位や役職
霊能犯罪者。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久に新たな動きがあると聞き、再会への執着を露わにした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
弱体化した状態が続いている。
魔族
ゼパル(朝風春美)
晴久たちを護衛するため学園へ送り込まれた魔族である。人間をからかう性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
次期魔王候補。都立退魔学園の編入生。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久の寝床へ潜り込んで写真を撮影した。落下する電波塔を暴風をまとって真正面から受け止めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
神族
ケルビム
第二聖人に力を貸している人物である。
・所属組織、地位や役職
上位神族。
・物語内での具体的な行動や成果
天界から欧州の地下祭殿へ帰還した。天界上層部からの指令を伝え、第二聖人へ晴久の暗殺を命じている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アザゼルやミホトの情報が天界へ伝わったため呼び出されていた。
怪異・精霊
ミホト
晴久の両手に宿る少女霊である。
・所属組織、地位や役職
怪異。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久の魂を宗谷の胎内から顕現させた。三人一体の戦闘形態を構築している。胎内へ戻ることで期限を延長する偽装出産の奇策を実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
《サキュバス王の口》を通じて霊力を吸収するため、補充に時間がかかるようになった。
姑獲鳥
巨大な黒い翼を持つ存在である。他人の子供を奪う習性がある。
・所属組織、地位や役職
特級怪異霊。
・物語内での具体的な行動や成果
処女懐胎怪異と共振し、電波塔を空へ飛ばした。逆神を取り込んで強大化し、毒と呪詛を含む黒い液体で攻撃している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
母子を前にすると力を増す性質を持つ。晴久の特殊な除霊によって浄化された。
絶頂除霊 ! 9巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 11巻レビュー
展開まとめ
プロローグ
虫ではなく胎児
晴久は、カフカの『変身』で突然巨大な虫になった人物の心境を思い返していた。かつては不条理すぎて理解できなかったが、自身も同じように不可解な変化へ見舞われたため、その戸惑いを痛感していた。
子宮の中の晴久
ある朝、晴久は宗谷の子宮内で目を覚ました。
温かな空間を漂いながら、なぜ宗谷に宿ることになったのか理解できず、現実から目を背けるように、それまでの経緯を振り返り始めた。
第一章 退魔学園の新学期
新学期の編入生
日常への復帰
龍脈諸島から帰還した晴久たちは、敵が現状では晴久と宗谷からパーツを奪えないと判明したため、協会上層部の指示で新学期を迎えることになった。
アザゼルと魔族への対応は天界に委ねられ、手鞠や千鶴の封印解除も神族の協力待ちとなっていた。アンドロマリウスも異界の監獄へ収容され、晴久は久しぶりの学校生活へ戻ろうとしていた。
宗谷の特異性
晴久は、アザゼルのパーツ強奪が宗谷に通用しなかった理由を考えた。
宗谷には快楽を与える能力が効かず、あらゆるものに存在するはずの快楽媚孔も見当たらなかった。しかし本人にもミホトにも原因はわからず、晴久はひとまず疑問を保留した。
朝風春美の編入
新学期初日、Dクラスへ朝風春美が編入してきた。
その正体は、晴久と宗谷を護衛するため学園へ送り込まれたゼパルであった。晴久は龍脈諸島での働きから彼女を信用していたが、人間をからかう性格が学園生活の火種になると警戒していた。
教室への挑発
ゼパルは自己紹介で、晴久の部屋へ頻繁に出入りしていると明かし、男子生徒たちの嫉妬を煽った。
さらに担任は、次期魔王候補であるゼパルの要求を断れず、彼女を晴久の隣席にした。ゼパルは恋人のような態度で晴久へ話しかけ、教室の男子たちから強烈な敵意を集めた。
男子生徒の罠
晴久はホームルーム終了と同時に逃げようとしたが、小林たちは事前に晴久の席へ捕縛術を仕掛けていた。
ゼパルとの関係を疑う男子たちは晴久を縛り上げ、一方的な尋問を始めた。桜と烏丸はゼパルへの制裁に夢中で、南雲も晴久の両手の封印具を外して自分へ能力を使おうとしていた。
《サキュバス王の口》
両手の封印が外れた晴久は、新たに得た《サキュバス王の口》の力を使った。
長く伸びた舌で口枷の捕縛術を舐めると、その霊力を吸収して無効化できた。晴久はさらに角の力で男子たちの動きを読み、包囲を突破して教室から逃げ出した。
霊力補充と雅の贈り物
実習棟への避難
晴久はDクラスの男子たちと南雲の追跡を振り切り、人気のない実習棟へ身を隠した。
新たに得た《サキュバス王の口》は、強力な術式には十分通用しないものの、舌で触れた術式を吸収して弱められるため、両手を封じられた際の保険として役立つ能力であった。
宗谷の霊力補充
晴久を捜しに来た宗谷は、桜や楓に知られないうちに霊力補充を済ませたいと申し出た。
宗谷は特定の刺激を膨大な霊力へ変換できる一方、霊的に相性のよい晴久からでなければ十分に回復できなかった。二人は人目を避けて実習棟の一室へ入り、晴久が宗谷の指を舐めることで霊力を補充した。
《口》の新たな用途
宗谷が生み出した霊力の一部は、晴久の舌を通じてミホトへ直接供給された。
これにより宗谷の霊力回復とミホトのエネルギー補充を同時に行えるようになった。ただしミホトも霊力を吸収するため、以前より補充に時間がかかるようになった。
宗谷の不可解な体質
晴久は、わずかな刺激でも霊力を生み出す宗谷に、アザゼルのパーツ能力が通用しなかったことを改めて不思議に思った。
宗谷には快楽媚孔も存在せず、その原因は本人にもミホトにもわからなかった。結論を出せないまま、二人は人に怪しまれる前に実習棟を離れた。
土御門雅の来訪
授業を終えて寮へ戻った晴久は、自室の前で土御門雅と再会した。
雅は龍脈諸島で怪異を除去してもらった礼を伝えるため、本土へ来たついでに学園を訪れていた。退魔学園の卒業生であり、土御門家の関係者も多いため、校内へは容易に入れたのである。
雅の学生時代
雅は学園の生徒たちを眺め、怪異由来の能力を持つ者を羨ましく思っていた過去を漏らした。
しかしすぐに感傷を打ち消し、晴久への礼として、入浴剤や安眠用品、漢方薬などの癒やしグッズを詰めた紙袋を渡した。結界への影響を考慮し、霊具は避けていた。
余計な対策用品
雅は晴久の女性関係を心配し、一般的な癒やし用品に加えて成人向けの対策用品まで用意していた。
晴久は強く拒否したが、雅は必要なければ処分すればよいと言い残し、研究へ戻るため式神で立ち去った。
小日向からの着信
晴久は問題のある品々を共用部に置けず、仕方なく自室へ運び込んだ。
桜たちに見つからないよう隠そうとしていたところ、スマートフォンに着信が入った。発信者は、以前怪異から救い、男性への恐怖を克服するため定期的に連絡を取っていた小日向であった。
宗谷の胎内
小日向のワープ訓練
晴久は、男性恐怖症の克服を続ける小日向から連絡を受けた。小日向は残留怪異による瞬間移動能力を使いこなせるようになり、訓練を兼ねて晴久の部屋を訪れたいと申し出た。
晴久は了承したが、部屋を守る強力な結界が転移を妨害したため、小日向は不安定になった空間から放り出され、晴久の上へ落下した。
雅の贈り物による誤解
衝撃によって隠していた雅の成人向け用品がクローゼットから散乱し、小日向は晴久が自分のために用意したものだと誤解した。
晴久が慌てて事情を説明していたところへ、夕食の準備に来た宗谷、桜、楓が現れた。晴久は冷たい視線を浴びながら、雅の贈り物と転移事故について詳しく説明した。
小日向との夕食
晴久はどうにか三人の誤解を解き、小日向も夕食へ招いた。
その後、小日向は結界の影響を調整した転移で無事に帰宅した。晴久は一日の騒動に疲れ果て、雅からもらった入浴剤で身体を休めた。
深夜番組の放送
入浴後、晴久はテレビで新番組『はぎゅっとマリア!』の宣伝を目にした。
晴久が就寝した深夜二時、テレビはひとりでに点灯し、アニメの少女が癒やしを与えると呼びかけた。その直後、映像は突然途切れた。
白い空間での目覚め
翌朝、晴久は温かな液体に満たされた球形の空間で目を覚ました。
晴久は全裸で漂っていたが、液体の中でも呼吸や会話が可能であった。周囲には出口がなく、へそからは壁へ繋がる管が伸びていた。
届かない宗谷の声
晴久の耳に宗谷の声が聞こえたため、近くにいると考えて呼びかけた。
しかし宗谷には晴久の声が届かず、腹が重いと独り言を漏らすだけであった。その声は外からではなく、身体の内側から響いているように聞こえた。
宗谷の胎内
温かな液体、球形の空間、へそから伸びる管、宗谷の体内に響く声が一つの答えへ繋がった。
晴久は、自分が宗谷の胎内に宿っていると悟った。あまりにも異常な状況であったが、本能的な感覚がその推測を肯定していた。
第二章 処女懐胎事件
人工怪異と胎内の晴久
逆神忍と呪殺法師
深夜の展望台で、元十二師天の逆神忍は、呪殺法師が作り出した人工怪異の完成度を評価していた。
呪殺法師は、パーツ持ち同士を引き合わせる怪異を発動させ、逆神へ時間稼ぎを依頼した。逆神は危険な力を制御する腕輪を装着し、晴久たちのもとへ向かった。
宗谷の胎内
晴久は現状を整理し、自分の魂が宗谷の子宮内に閉じ込められていると認めた。
ミホトへ呼びかけても反応はなかったが、《手》《角》《口》の能力は使用できた。角の力を強めると、晴久の視界は宗谷と共有され、桜の部屋で目覚めた宗谷の見ている光景が映るようになった。
宗谷との視界共有
宗谷は自分の身体の違和感に気づかないまま、洗面所で身支度を始めた。
晴久は視界の共有を止めようとしたが制御できず、宗谷の腹が臨月ほど大きく膨らんでいることを知った。宗谷も鏡を見て異変に気づき、激しく動揺した。
届いた晴久の声
混乱した宗谷が服を脱ごうとしたため、晴久は全力で制止した。
それまで届かなかった晴久の声が宗谷にも聞こえるようになり、晴久は自分が宗谷の胎内にいるらしいことと、互いの視界が共有されていることを説明した。
淫魔眼の情報
宗谷が霊視と淫魔眼を使うと、体内に晴久の気配があることが確認された。
さらに淫魔眼の視界まで晴久へ共有され、宗谷の情報には妊娠経験一回と表示された。二人は、宗谷が晴久を宿している状態だと突きつけられた。
宗谷の混乱
晴久が淫魔眼の情報まで見えていると認めると、宗谷は激しく取り乱した。
晴久は大半の情報は読めなかったと宥め、周囲に気づかれる前に落ち着くよう求めた。しかし直後、騒ぎを聞きつけた桜が洗面所へ入ってきた。
宗谷の出産騒動
桜への事情説明
宗谷は膨らんだ腹を隠したまま硬直し、晴久の声も宗谷にしか聞こえなかった。
晴久は説明の順番を誤れば危険だと考え、宗谷へ冷静に事情を伝えるよう促した。しかし桜は異変に気づかず、宗谷が晴久の隣席を譲らなかったことや、最近洗濯物が増えていることを問い詰めた。
露見した膨らんだ腹
宗谷が必死に話題を遮ったことで、桜は隠している腹へ疑いを向けた。
太っただけだと思い込んだ桜は宗谷を取り押さえ、服を捲った。臨月のように膨らんだ腹を目にした桜は、晴久との間に子供ができたと誤解した。
桜の錯乱
宗谷は、晴久が自分の中へ入った結果だと説明したが、かえって桜の誤解を深めた。
以前から二人が密かに霊力補充をしていた気配を感じていた桜は、自分だけ取り残されたと思い込み、子供のように取り乱した。さらに晴久との既成事実を作ろうとして、異常な行動を始めた。
楓の制裁
騒ぎを聞きつけた楓も宗谷の腹を目撃し、晴久が問題を起こしたと即断した。
楓は協会から再び危険視される事態を防ぐため、晴久へ責任を取らせ、宗谷の腹の異変も秘密裏に処理しようと包丁を持ち出した。宗谷と桜は慌てて止めようとしたが、楓は二人を引きずったまま晴久の部屋へ向かった。
眠り続ける晴久の身体
晴久は自分の魂だけが宗谷の胎内へ移され、肉体が死亡している可能性を恐れた。
しかし部屋には、何事もなかったように眠り続ける晴久の身体が残されていた。魂と肉体が分離しているだけだと判明し、晴久はひとまず安堵した。
ゼパルの悪ふざけ
晴久の寝床には、派手な格好をしたゼパルが潜り込み、晴久と一緒に眠っているような写真を撮影していた。
楓は事情を聞く前にゼパルへ襲いかかり、宗谷と桜はその隙に晴久の身体を避難させようとした。だが桜は再び錯乱し、晴久の寝間着を脱がせて既成事実を作ろうとしたため、部屋は完全な混乱状態となった。
突然の出産
晴久の声が宗谷以外へ届かず、全員の誤解を解く手段もないまま騒動は拡大した。
その最中、宗谷の胎内が大きく脈打ち、閉ざされていた空間に出口が開いた。晴久の魂は抗えない力で外へ引き出され、宗谷も出産が始まったと悟って悲鳴を上げた。
処女懐胎怪異への緊急対応
魂となった晴久の顕現
宗谷の胎内から押し出された晴久の魂は、人の姿を取り戻してリビングに現れた。晴久は宗谷と白い管で繋がっており、その状態はミホトの顕現に似ていた。
直後にミホトも晴久の両手から現れ、宗谷が晴久を宿した現象は怪異によるものだと説明した。しかし外で活動するほど力を消耗するため、晴久とともに再び宗谷の胎内へ戻った。
処女懐胎怪異
晴久たちは学校を休み、楓、桜、ゼパルへ異変の経緯を説明した。
ミホトは前夜から怪異の侵入に気づいていたが、晴久の意識を保つことで精いっぱいであった。この怪異は晴久の魂を宗谷の胎内へ移し、宗谷を疑似的な妊娠状態にするほど強力なものであった。
宿主除霊の必要性
ゼパルの霊視により、異変は怪異の大元を除霊しなければ解除できないと判明した。
晴久の肉体や宗谷へ直接処置を施しても意味はなく、宿主を探し出す必要があった。さらに強固な結界を突破した方法も不明であり、ゼパルは詳しく調べようとした。
百組を超える被害
その直前、晴久たちへ退魔師協会から緊急招集が届いた。
同じ怪異によって男性の魂が女性の胎内へ閉じ込められる事件が、都内で百組以上発生していた。被害者は一週間以内に出産へ至り、男性の元の肉体が死亡すると、新生児として生まれ変わると報告されていた。
大学病院の対策本部
晴久たちは眠ったままの肉体も運び、大学病院に設置された対策本部へ向かった。
そこでは疑似妊娠状態の女性と意識不明の男性が次々に収容され、医療従事者と退魔師が対応に追われていた。責任者となったナギサは、霊視の結果から出産と受肉が実際に進んでいると断言した。
出産までの時間
宗谷の淫魔眼には、被害者ごとの出産までの残り時間が表示されていた。
宗谷自身にも一時間半ほどの制限時間が現れており、怪異が想定以上の速さで進行していることが判明した。ナギサは変化を把握するため、宗谷へ定期的な報告を求めた。
深夜アニメとの契約
怪異は、テレビ局が放送した覚えのないアニメCMを通じて被害者を誘導していた。
深夜の本編を視聴し、怪異の呼びかけに応じることで契約が成立していた。室内のテレビを自ら点灯させたことが招き入れる行為となり、警戒結界をすり抜けた可能性も考えられた。
受肉の仕組み
ゼパルは、受肉とは霊力や魔力を物質化した器へ霊体を宿す術だと説明した。
本来は莫大な力が必要であったが、元の男性の肉体を犠牲にし、小さな新生児として生まれることで成立していた。それでも多数の被害者へ同時に作用する出力は規格外であった。
欧州祓魔連合の圧力
事件は処女懐胎を神聖視する欧州祓魔連合の信仰と権威にも関わっていた。
第二聖人は事件の早期解決を要求し、対応が遅れれば退魔師協会との連携強化を白紙にすると警告した。怪異を放置すれば、被害者の人生だけでなく国際関係にも深刻な影響が及ぶ状況であった。
宿主への逆探知
霊視班は、怪異の出力が強すぎるため、被害者と宿主の間に残る繋がりを逆にたどれる可能性を見いだした。
ナギサは宿主の捜索を対策本部へ任せ、晴久たちには戦闘準備を命じた。手鞠と千鶴が封印されているなか、パーツ持ちとゼパルを擁する晴久たちのチームは重要な戦力と見なされていた。
魂の顕現と赤ちゃん化
晴久の肉体保護
対策本部から個室を与えられた晴久たちは、まず昏睡状態にある晴久の肉体をどう守るか話し合った。
南雲と小日向も護衛を申し出たが、宗谷や桜まで役目を巡って争い始めた。楓は晴久の肉体をぬいぐるみに変えて隠したものの、騒ぎはさらに広がった。
次元監獄への移送
混乱の末、晴久の肉体は辰姫が用意した次元監獄で保護されることになった。
宗谷の式神が護衛と世話を担当し、南雲と小日向は緊急時に動けるよう別の場所で待機することとなった。
三人羽織の戦闘形態
ミホトは、晴久の魂を一時的に宗谷の胎内から外へ顕現させた。
さらに晴久とミホトの両腕を同化させ、その状態で宗谷の両腕とも繋げた。これにより、宗谷の肉体を介して晴久とミホトの怪力や特殊な除霊能力を使える三人一体の戦闘形態が完成した。
屋上での模擬戦
晴久たちは病院の屋上で模擬戦を行い、桜や楓たちを相手に動作を確認した。
動きの細かさには難があったものの、角による五感強化、《口》による霊力補充、ミホトの怪力、特殊な除霊はいずれも使用できた。宗谷の身体にも大きな異常はなく、実戦参加は可能と判断された。
顕現の反動
戦闘形態を解除した直後、晴久の魂は急激に縮み、赤ん坊の姿へ変わった。
意識は保たれていたが、言葉を話せず、身体も本能のまま動く状態となった。ミホトは、怪異に逆らって強引に胎外へ顕現した反動により、晴久の魂が早産したような状態になったと説明した。
本能的な要求
赤ん坊となった晴久は宗谷に抱きかかえられたが、自分の意思とは無関係に母乳を求めるような行動を始めた。
ミホトによれば、元の姿へ戻るには誰かから授乳を受けて魂を落ち着かせる必要があった。晴久は疑ったものの、時間が経つほど強まる衝動から、その説明が事実だと悟った。
宗谷の覚悟
宗谷はほかに方法がないなら自分が晴久を元へ戻すと申し出た。
桜と楓は危険性やミホトの説明への疑念から制止したが、宗谷は自分が晴久を宿している以上、責任を負うつもりであった。その場が行き詰まるなか、ゼパルは直接触れずに済む方法を提案した。
魂の反動と電波塔の異変
授乳用の代用品
ゼパルは、雅から贈られたおしゃぶりと自分の衣類を組み合わせ、直接触れずに済む授乳用の代用品を作った。
宗谷は晴久の赤ちゃん化を治すため、それを装着して晴久を抱いた。晴久の魂は本能に従って吸い付き、少しずつ元の姿へ戻り始めた。
生命力の消耗
ミホトは、授乳によって晴久の状態が改善している一方、宗谷の生命力まで吸収されていると気づいた。
一人だけに負担を集中させれば戦闘へ支障が出るため、複数人の協力が必要となった。ゼパルが自分も協力すると煽ったことで、桜と楓も晴久を助けるため代用品を使う覚悟を決めた。
晴久の回復
宗谷、桜、楓から順に生命力を得たことで、晴久の魂は赤ん坊から元の十六歳の姿へ戻った。
胎外での顕現状態も再び維持できるようになり、三人羽織による戦闘も可能となった。しかし一連の出来事によって、晴久たちの間には非常に気まずい空気が残った。
戦闘準備の完了
晴久は再び宗谷の胎内へ戻り、一行は護符や霊具の手入れを進めた。
胎外で戦った反動には対処法があると判明し、危険は残るものの、怪異の宿主と戦う準備は整った。
大規模探知儀式
翌日、ナギサから怪異探知の準備が完了したとの連絡が入った。
晴久たちは総合病院の駐車場に築かれた巨大祭壇へ向かい、楓を中心に霊力を提供した。相馬家の退魔師たちが術式を制御し、被害者と怪異の宿主を結ぶ痕跡をたどった。
新東京電波塔
儀式の結果、怪異の宿主は新東京電波塔の最上階展望台付近にいると特定された。
怪異がテレビ電波を使って被害者へ干渉していたことから、宿主は電波塔を拠点にして広範囲へ力を送っていたと考えられた。
空を飛ぶ電波塔
晴久たちが電波塔へ向かおうとした直後、塔の地上四百メートル付近で大爆発が起きた。
折れた上半分には巨大な黒い翼が生え、展望台ごと東京上空へ飛び立った。宿主は建造物そのものを移動させ、追跡を振り切ろうとしていた。
第三章 逆さまの戦場
空飛ぶ電波塔への突入
逆神忍の時間稼ぎ
空飛ぶ新東京電波塔では、逆神忍が呪殺法師から依頼された時間稼ぎを始めていた。
逆神は怪異共振によって電波塔が実際に飛行したことを確認し、接近する晴久たちから身を隠すため塔内へ移動した。
姑獲鳥との怪異共振
ナギサは、電波塔に生えた黒翼の正体を特級怪異霊《姑獲鳥》と見抜いた。
処女懐胎怪異と姑獲鳥は近い性質によって共振し、互いの力を大幅に増幅させていた。さらに両者が潰し合わず行動を共にしていることから、何者かが姑獲鳥を制御している可能性も高かった。
晴久たちへの出撃命令
共振した怪異霊を相手にできる戦力が限られるため、ナギサは晴久たちへ電波塔への突入を命じた。
ほかの退魔師たちは避難誘導や進路予測、電波塔落下に備えた結界準備へ回され、ナギサは黒幕の別働作戦も警戒して指揮に残った。
呪殺法師の迎撃
宗谷の式神で電波塔へ接近した一行を、大量の呪詛精霊が空中で包囲した。
一体ごとの強さも異常に高く、桜と楓は術式の特徴から呪殺法師の関与を見抜いた。今回の怪異事件が、パーツを狙う勢力による計画である疑いがさらに強まった。
攻勢遮断陣
晴久は《角》で五感を強化し、四方から迫る呪詛精霊の位置を宗谷たちへ伝えた。
宗谷、桜、楓は合同結界《攻勢遮断陣》を発動し、敵の攻撃を遮断しながら自分たちの術だけを通した。晴久が包囲の薄い場所を見抜き、三人が集中攻撃を加えたことで、一行は呪詛精霊の群れを突破した。
電波塔の落下
一行が塔内へ突入しようとした瞬間、姑獲鳥の黒翼が消え、電波塔は市街地へ向けて落下を始めた。
首都防衛結界が展開されたものの、高度約千メートルから落ちる巨大な鉄塊を受け止められる強度はなかった。
ゼパルの支え
ゼパルは温存していた魔力を解放し、暴風をまとって落下する電波塔を真正面から受け止めた。
限界に近い状態ながら、応援が来るまで塔を支えると告げ、晴久たちへ先へ進むよう促した。一行はゼパルに後を託し、静止した電波塔の内部へ突入した。
歪んだ塔内
塔内へ入った晴久たちは、外観からはあり得ないほど広く歪んだ通路を目にした。
その空間は、霊能犯罪者が拠点防衛に用いる強力な術式《絶対領域》によって作り変えられていた。
絶対領域と王様ゲーム
反転する絶対領域
電波塔内部には、術者の力を増幅しながら空間を迷宮化する《絶対領域》が展開されていた。
宗谷たちは式神を使って警戒しながら進んだが、突然重力が反転して宙へ浮かされた。さらに通常の攻撃は呪詛精霊を強化し、治癒術だけがダメージを与えるという異常が起きた。
逆神忍の関与
楓は、領域内で術式や重力の効果が反転していることから、構築者が逆神忍であると見抜いた。
逆神は童戸手鞠を封印した元十二師天であり、あらゆる性質を逆転させる能力を持つ特級霊能犯罪者であった。呪殺法師の呪詛精霊と逆神の絶対領域が組み合わさり、晴久たちは通常の攻撃手段を封じられた。
反転を利用した除霊
宗谷は、晴久の特殊な除霊能力なら反転を逆に利用できると考えた。
晴久とミホトは宗谷の胎内から顕現し、三人一体となって呪詛精霊へ接近した。与えた快楽が痛みへ反転したことで、呪詛精霊は次々と消滅した。
三人羽織の改良
ミホトは戦いやすくするため、晴久を先頭にして宗谷と自身が後ろから両腕を同化させる形へ変更した。
晴久が前衛を務め、桜と楓が敵の動きを封じ、宗谷の式神が足場を作ることで、一行は迷宮内を進めるようになった。
加速する出産期限
怪異の宿主へ近づくにつれ、宗谷の腹はさらに大きくなり、精神状態にも異変が現れた。
淫魔眼で確認すると、出産までの残り時間は四日以上から二十四時間未満へ急減していた。怪異本体へ近づくほど影響が強くなるため、一行は引き返さず急いで展望室を目指した。
逆神忍との対峙
広い展示室へ到達した晴久たちの前に、逆神忍が姿を現した。
逆神は処女懐胎怪異に抗いながら戦う晴久たちを嘲笑した。晴久は背負わされた危険と仲間への負担を軽視されたことに激怒し、烏丸の捕縛術を合図に速攻を仕掛けた。
《王様ゲーム》
逆神は捕縛を破り、晴久たちの攻撃を怪異能力で停止させた。
彼女の怪異《王様ゲーム》は、参加者全員を隔離空間へ閉じ込め、くじで選ばれた命令を達成させる能力であった。二十のカウントをゼロにするまで脱出も攻撃もできず、失敗すれば残り回数が増える仕組みであった。
最初の命令
出産まで残り二十二時間となるなか、晴久たちは命令を素早くこなして脱出すると決めた。
最初に選ばれた課題は、晴久と楓が見つめ合いながら、好きな相手か好ましい異性の特徴を三つずつ明かすというものであった。
王様ゲームの難題
晴久と楓の理想
最初の命令は、晴久と楓が見つめ合いながら好みの相手の特徴を三つ明かすというものであった。
晴久は家庭的で責任感が強く、困難に屈しない人物を挙げた。楓も自分に普通に接し、他人のために命を懸けられる真っ直ぐな人物を語ったが、最後に二人の視線が外れたため失敗と判定された。
宗谷の夢
次の命令では、宗谷が最近見た最も刺激的な夢を晴久へ耳打ちすることになった。
宗谷は恥を忍んで内容を伝えたが、相手が誰だったかを伏せたため不完全な回答とされ、再びカウントが増加した。
桜の決意
続いて桜が晴久へ三秒間キスするよう命じられた。
桜は監査部の責任から覚悟を決めたものの、決心に時間をかけすぎて制限時間を超過した。命令は失敗となり、カウントはさらに増えた。
烏丸の快進撃
一行が厳密な条件と秘匿された制限時間に苦戦するなか、烏丸は自らの夢や興奮した出来事をためらいなく暴露した。
羞恥心の薄い烏丸は次々と命令を成功させ、増えていたカウントを減らした。晴久たちは、烏丸と《王様ゲーム》の相性が非常によいことに気づいた。
逆神の逆転
烏丸が逆神を拘束して罰を与える命令が出ると、逆神は自身の能力で対象を逆転させた。
命令は逆神が烏丸を拘束する内容へ変化し、烏丸は逆に捕らえられた。さらに逆神は晴久たちに出た命令まで反転させ、楓が晴久の服を脱がす課題を、晴久が楓の服を脱がす内容へ変えた。
終わらない失敗
晴久と楓は躊躇せず命令をこなそうとしたが、衣服の構造に手間取り、またしても時間切れとなった。
烏丸が成功を重ねても、逆神の反転能力と厳しい条件によって失敗が続き、カウントは開始時より増えたままであった。
最凶命令
やがておみくじ箱が強く輝き、最高難度の命令が選ばれる兆候を示した。
選ばれたのは、晴久が宗谷、楓、桜へ代用品越しに一分ずつ授乳を受けるという課題であった。逆神は達成不可能だと笑ったが、晴久はこれまでの経験を利用し、ミホトへ指示して迷わず赤ん坊の姿へ変化した。
王様ゲーム突破と呪殺法師の正体
最凶命令の攻略
晴久は顕現の反動を利用して赤ん坊の姿となり、宗谷、楓、桜は迷わず命令を実行した。
三人はラップ越しに順番よく晴久へ授乳し、時間を厳密に計測して課題を完遂した。重い命令を成功させたことで、カウントは二十一から三まで一気に減少した。
王様ゲームからの脱出
続く命令は膝枕や恋人繋ぎなど比較的軽い内容であり、覚悟を決めた晴久たちと烏丸は次々に成功した。
カウントがゼロになるとおみくじ箱は破壊され、隔離空間も消滅した。王様ゲームを突破された逆神は逃走し、晴久たちは即座に追跡を開始した。
展望室への進撃
通路には再び呪詛精霊が現れたが、逆神の反転領域は解除されていたため、桜や楓の攻撃も通用した。
呪詛精霊が展望室から湧き続けていることから、晴久たちは逆神だけでなく呪殺法師も待ち構えていると警戒した。展望室を塞ぐ結界は、晴久の特殊な除霊によって破壊された。
陣痛の発生
展望室へ入った直後、宗谷は激しい腹痛に襲われた。
怪異本体へ近づいたことで処女懐胎怪異の影響が強まり、出産へ向けた陣痛が始まっていた。晴久も感覚を共有し、二人は残された時間がさらに少ないことを悟った。
姑獲鳥と怪異の宿主
展望室には、巨大な怪異霊《姑獲鳥》が待ち構えていた。
その肩にはフード姿の人物が座り、姑獲鳥と共振しながら強烈な怪異の気配を放っていた。楓は、その人物こそ処女懐胎怪異の宿主だと見抜いた。
呪殺法師の告白
逆神はフードの人物を呪殺法師と呼び、自分は依頼された時間稼ぎを果たしたと告げた。
呪殺法師は、晴久たちが反転領域や王様ゲームを突破したことを評価しつつ、差し入れにテレビを遠隔操作する機器を紛れ込ませていたと明かした。
土御門雅の正体
フードを外した呪殺法師の正体は、龍脈諸島で晴久たちを助け、後に癒やし用品を届けた土御門雅であった。
雅は二日前と変わらぬ態度で晴久へ話しかけながら、全身から邪悪な怪異の気配を放っていた。晴久たちは、信頼していた研究者が事件の黒幕だった事実に言葉を失った。
第四章 呪殺法師
人造怪異の真相と姑獲鳥戦
呪殺法師への疑念
展望室で土御門雅の正体を知った晴久たちは、あまりの衝撃に言葉を失った。
ナギサは、龍脈諸島の作戦情報が早期に魔族へ漏れていたことから、術式や呪具に詳しい雅を内通者候補として疑っていた。晴久は操られている可能性を訴えたが、雅は研究が完成したため正体を隠す必要がなくなったと否定した。
人造怪異の完成
雅は、狙った能力を持つ怪異を人為的に作り、任意の人物へ植え付ける技術を完成させたと明かした。
これまでのロリコンスレイヤー、ショタ化怪異、王様ゲーム、処女懐胎怪異も実験の一環であった。怪異共振や十二師天級の宿主を利用することで、霊級格の低さも克服していた。
悪霊の蠱毒
ナギサが製造方法を問いただすと、雅は悪霊同士を共食いさせ、負の感情を濃縮して怪異の種を作る外法だと説明した。
さらに望む能力へ調整するため、悪霊へ苦痛や幻覚を与えていた。晴久たちはその非道な方法を拒絶し、ナギサも技術ごと雅を監獄へ送ると断言した。
雅の怨恨
雅は、努力して退魔術を学んでも、怪異能力や残留怪異を持つ者ばかり評価されてきたことへの不満を吐露した。
自分のように能力へ恵まれない者でも力を得られる方法を作りたかったのであり、晴久たちを倒して研究の価値を証明すれば、倫理に反していても社会は成果を無視できないと主張した。
逆神忍の取り込み
雅と逆神が晴久たちへ戦いを挑もうとした直後、姑獲鳥の触手が逆神を捕らえた。
雅は、金で裏切る可能性のある逆神を最初から使い捨てるつもりであった。理性維持用として渡した腕輪にも電撃装置を仕込み、逆転能力を封じたうえで姑獲鳥に取り込ませた。
強化された姑獲鳥
十二師天級の逆神を吸収した姑獲鳥は、怪異共振によってさらに強大化した。
雅は鹿島霊子の力を模倣する腕輪で姑獲鳥を制御し、自身もその肩へ同化した。姑獲鳥は毒と呪詛を含む黒い液体を高圧で放ち、晴久たちへ猛攻を始めた。
縮まる出産期限
姑獲鳥の強化に伴い、処女懐胎怪異の力も増幅された。
宗谷の出産期限は四十分未満まで短縮され、病院に収容されたほかの被害者たちも二十四時間以内へ縮まった。母子を前にすると力を増す姑獲鳥の性質も加わり、二つの怪異は互いをさらに強化していた。
姑獲鳥への突撃
晴久たちは一刻も早く共振を断つため、まず姑獲鳥の除霊を狙った。
晴久は《角》で感覚を強化し、ミホトの怪力と宗谷たちの援護を受けながら、呪詛精霊と高圧攻撃を回避して接近した。しかし姑獲鳥の巨大な翼が放つ暴風に吹き飛ばされ、あと一歩で攻撃を届かせられなかった。
新たな怪異の発動
晴久たちは暴風への対策を立て、再度の突撃を決意した。
だが雅は研究成果が敗れる可能性を排除するため、三つ目の腕輪を発動した。直後、桜、楓、烏丸の腹まで突然大きく膨らみ、新たな処女懐胎状態へ陥った。
状態共有と出産の瞬間
桜たちへの状態共有
雅はラピスの怪異能力《状態共有》を封じた腕輪を使い、宗谷の処女懐胎状態を桜、楓、烏丸へ伝播させた。
三人は腹が大きく膨らみ、言動まで母親のように変化した。増えた母子を前に姑獲鳥はさらに力を増し、共振する処女懐胎怪異も急激に強化された。
十分を切った期限
宗谷の出産までの時間は十分未満へ短縮された。
姑獲鳥は毒液を翼へまとわせ、暴風とともに広範囲へ飛散させた。晴久たちは防御だけで手いっぱいとなり、近づくことさえ難しくなった。
宗谷の奇策
撤退すれば病院の被害者まで狙われる恐れがあり、晴久たちは戦場に残るしかなかった。
宗谷は楓の変身術と式神を利用し、三方向から同じ姿の晴久たちを突撃させる作戦を考えた。煙幕で準備を隠し、雅へ本物を見誤らせようとした。
三方向からの突撃
雅は処女懐胎怪異による霊的な繋がりから、本物の晴久たちを見抜いた。
しかし楓と桜は大量の破魔札を偽装して注意を分散させ、その隙に天井へ罠型術式を設置した。さらに烏丸の捕縛術と宗谷の式神を組み合わせ、晴久たちは雅へ接近した。
腕輪破壊の狙い
雅は姑獲鳥の全方位攻撃で晴久たちの策を防いだ。
だが本当の目的は雅本人ではなく、姑獲鳥の操作と状態共有を支える腕輪であった。式神の攻撃が腕輪を破壊すると、桜たちの腹は元へ戻り、姑獲鳥も雅の制御を外れて弱体化した。
予備の腕輪
晴久たちは残り二分で雅を倒そうとしたが、状態共有が再び発動して桜たちの腹も膨らんだ。
雅は失敗や紛失に備え、同じ能力を封じた予備の腕輪を複数用意していた。晴久たちが全力で得た成果は、即座に打ち消された。
胎内への強制帰還
晴久は残り時間を使って再び突撃しようとしたが、魂の顕現状態が限界を迎えた。
晴久とミホトの身体は崩れ、宗谷の胎内へ強制的に戻された。実際に戦える時間は、出産期限より短かったのである。
晴久の出産
晴久とミホトが胎内へ戻った直後、宗谷は出産の衝動に抗えなくなった。
雅が勝利を確信するなか期限が尽き、宗谷の下腹部から晴久の魂と思われる白い霧が一気に放出された。
処女懐胎怪異の決着
偽装された出産
宗谷から晴久が赤ん坊として生まれたように見えたため、雅は勝利を確信し、姑獲鳥に取り込ませようと接近した。
しかし出産期限はまだ残っていた。晴久とミホトは自ら胎内へ戻り、《口》の力で怪異の影響を弱め、期限を五分だけ延長していた。さらに変身札で赤ん坊を装い、雅を姑獲鳥の懐へ誘い込んだのである。
宗谷の最後の作戦
晴久は宗谷の胎内で怪異の力を吸収しながら、宗谷の霊力も大量に回復させた。
桜たちが救出を装って雅の注意を引く間に、晴久は元の姿で再び顕現した。宗谷とミホトも両腕を同化させ、三人は暴風の届きにくい至近距離から攻撃を開始した。
姑獲鳥への総攻撃
宗谷は増大した霊力で四神を模した巨大式神を召喚し、姑獲鳥と呪詛精霊を押さえ込んだ。
桜、楓、烏丸も拘束術や攻撃で援護した。雅は姑獲鳥の翼と高圧の毒液で抵抗したが、晴久は《角》で動きを読み、仲間が作った一瞬の隙へ飛び込んだ。
姑獲鳥の浄化
晴久は姑獲鳥の二つの急所へ特殊な除霊を叩き込んだ。
強大化していた姑獲鳥は激しく震えながら浄化され、処女懐胎怪異との共振も消滅した。展望室を満たしていた負の気配は一気に薄れた。
雅への一撃
姑獲鳥を失った雅にも、晴久は続けて特殊な除霊を施した。
雅は研究への執着を叫びながら抵抗したが、怪異の力は押し流され、姑獲鳥との同化も解除された。雅は床へ倒れ、処女懐胎怪異も完全に消滅した。
元に戻った宗谷
怪異が消えたことで、宗谷の膨らんでいた腹は元へ戻った。
晴久と宗谷を繋いでいた白い管も消え、晴久は肉体へ戻れる状態となった。病院に収容されていた被害者たちにも同じ変化が起き、事件は収束へ向かった。
ナギサの言葉
拘束された雅は、それでも自分の研究は有用だと繰り返した。
ナギサは、雅が開発した生命維持装置によって自分が退魔師を続けられていると明かし、晴久たちだけでなく自分も以前から雅の才能を認めていたと告げた。雅はその言葉を受けたあと意識を失い、処女懐胎事件はひとまず決着した。
エピローグ
処女懐胎事件の後始末と第一聖人の謎
病院での検査
雅を無力化した晴久たちは、対策本部の病院で治療と精密検査を受けた。
全員に大きな異常はなかったが、宗谷には晴久の魂を何度も出入りさせた影響が残っていた。時間とともに回復していたものの、晴久は負担をかけたことへ強い罪悪感を抱いた。
事件の収束
空中の電波塔は、増援とゼパルの協力によって東京湾へ安全に移された。
雅と逆神は拘束され、次元監獄へ収監された。晴久の魂も肉体へ戻り、ほかの被害者たちも転生することなく元の状態へ回復した。
国際問題の回避
ナギサは事件解決を欧州祓魔連合へ直ちに報告した。
処女懐胎への信仰を巡る対立や、退魔師協会との関係悪化は回避された。晴久たちは、事件が国際問題へ発展しなかったことに安堵した。
第七聖人イザベル
事件解決から二日後、退院した晴久たちの前で病院の結界が突然破壊された。
現れたのは、白い翼を持つ欧州祓魔連合の第七聖人イザベル・ジャパリであった。彼女は処女懐胎怪異を討つため欧州から急行していたが、飛行中に連絡を見逃し、事件がすでに解決していることを知らなかった。
烏丸の聖痕
帰ろうとしたイザベルは、烏丸から異様な気配を感じ取った。
烏丸の腹部を確認すると、そこには聖痕らしき紋様が浮かんでいた。イザベルは烏丸が行方不明の第一聖人ではないかと疑い、詳しく調べるため強引に連れ去った。
第一聖人の疑惑
烏丸は必死に否定したが、イザベルは話を聞かず、そのまま空の彼方へ飛び去った。
晴久たちは、烏丸が欧州祓魔連合の第一聖人かもしれないという突然の疑惑を理解できず、呆然と空を見上げるしかなかった。
ラピスの潜伏
欧州の隠れ家では、国際霊能テロリストのラピスが最後のサキュバスパーツに関する情報を集めていた。
晴久と宗谷からパーツを奪えないと判明したため、日本での攻撃より未知のパーツ捜索を優先していた。処女懐胎事件については、晴久を弱体化させる以外にも隠された目的があり、その狙いは達成されていた。
欧州祓魔連合の動き
ラピスは、日本の神族から晴久たちの情報を得た上位神族と、欧州祓魔連合に不審な動きがあると報告した。
詳細は不明であったが、晴久たちを引き続き監視すべきだと判断した。
ジェーンの再接近
同じ隠れ家には、弱体化したまま潜伏を続けるジェーン・ラヴェイもいた。
晴久に新たな動きがあると聞いたジェーンは、再会への執着を露わにした。処女懐胎事件が終わった一方で、晴久たちの周囲には新たな脅威が迫り始めていた。
エピローグ2
天界からの暗殺命令
欧州祓魔連合の地下祭殿
欧州祓魔連合本部の地下祭殿は、上位神族との会談に使われる最重要の聖域であった。
その祭殿を、祓魔連合の暫定トップである第二聖人が一人で守っていた。
上位神族ケルビムの帰還
祭壇に神聖な光が弾け、第二聖人に力を貸す上位神族ケルビムが姿を現した。
ケルビムは、アザゼルや次期魔王候補、ミホト、パーツに関する情報が天界上層部へ伝わったことで呼び出されていた。
晴久への暗殺指令
天界から戻ったケルビムは、パーツを集める者たちの計画を確実に阻止するため、晴久を即座に暗殺せよとの命令を伝えた。
その指令は大きな混乱を招きかねないものであったが、第二聖人は神族の命令を絶対視し、迷うことなく従う意思を示した。
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