小説「私の心はおじさんである 3」感想・ネタバレ

小説「私の心はおじさんである 3」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンル
異世界転生ファンタジー・ヒューマンドラマである。孤独な中年男性が異世界で美少女ダークエルフとして生まれ変わりながらも、“おじさん”としての心のまま成長していく物語第2弾である。
内容紹介
武闘際の予選を突破したアルベルトは決勝トーナメントに挑まんとし、ハルカはその裏でも面倒な事態に巻き込まれてしまう。謎の青年イーストンと協力して吸血鬼との戦闘に挑むハルカだが、“おじさんの鈍感力”が思わぬ活躍を生む。武闘際の救護室では人生を揺さぶる師との出会いもあり、ハルカの心の成長がさらに深まる展開となっている。

主要キャラクター

  • 山岸 遥(ハルカ):元中年サラリーマンであり、本作の主人公。異世界で美少女ダークエルフに転生したものの、心は依然として“おじさん”のままで、人付き合いに不器用ながらも成長を続けている存在である。
  • アルベルト:ハルカと共に武闘際に挑む戦士であり、決勝進出を目前に控える心強い仲間である。

物語の特徴

本作は“見た目に反して心が中年男性”という不思議でユーモラスな状況設定にもかかわらず、そこから生じる内面の葛藤や成長が丁寧に描かれている点が魅力である。第3巻では武闘際や吸血鬼との共闘、そして師との出会いといったイベントが連続し、ハルカの心の揺れ動きと“おじさんとしての覚悟”が際立っている。異世界転生ものとして“俺TUEEE”の派手さとは異なる、心情と成長に寄り添った描写が読者の共感を呼ぶ他作品との差別化点である。

書籍情報

私の心はおじさんである 3
著者:嶋野夕陽 氏
イラスト:NAJI柳田  氏
出版社:主婦と生活社PASH! ブックス
発売日:2025年08月01日
ISBN:978-4-391-16606-4

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あらすじ・内容

曲者揃いの武闘際、その予選を見事突破したアルベルトは、決勝トーナメントに挑む!
熱い戦いの裏でまたもや面倒ごとに巻き込まれるハルカは、謎の青年イーストンと協力し、吸血鬼と戦闘することに…
危険な戦いに巻き込まないよう配慮するイーストンに対し、ハルカはおじさんの鈍感力を活かしてまさかの大活躍?
さらに、武闘際の救護室では人生を変える、師との出会いが待っていた!?
人間関係を諦めたおじさんが、異世界で心を成長させる王道冒険譚第3弾!!

私の心はおじさんである3

感想

読み終えて、まず感じたのは、ハルカの人間としての成長が、物語を追うごとに着実に深まっているということだ。武闘祭での出来事、そして師匠との出会いを通して、彼の内面が少しずつ、けれど確かに変化している様子が、読んでいてとても心地よかった。

今回の物語は、武闘祭の決勝トーナメントから始まる。曲者ぞろいの参加者たちが繰り広げる熱い戦いは、読んでいて胸が躍る。そんな中、ハルカはまたしても面倒ごとに巻き込まれてしまうのだが、謎の青年イーストンとの協力、そして持ち前の鈍感力を活かした活躍は、思わず笑ってしまうほどだ。

そして、何と言っても今回のキーパーソンは、表紙にも描かれている師匠、ノクトの登場だろう。ハルカにとって、まさに人生の師となる運命の出会いなのだが、正直なところ、ノクトの性格は一筋縄ではいかない。いたずら小僧がそのまま歳を取ったような人物なので、素直に尊敬するのは難しいかもしれない。しかし、そのクセのある性格こそが、ノクトの魅力であり、物語に深みを与えていることは間違いない。

気のいい少年少女たちとの冒険も、今回もハラハラワクワクで楽しそうだ。ハルカの内面の変化は、本人の表情だけでなく、周りの反応からも伝わってくる。特に、無表情美人が微かに微笑むシーンは、想像するだけでその破壊力が凄いのだろうなと感じる。

武闘祭から師匠との出会い、そして新たな依頼へと繋がる今回の物語をまとめて読むと、ハルカはのんびりしていてお人好しで、そして何よりも食べるのが大好きなのだと改めて感じる。そりゃあ、仲間も心配するよな、と共感してしまう。

不思議な美青年イーストンとの出会いや、特級冒険者クダンさんとの会話(クダンさんは見た目と違って面倒見がいい!)、鉄砕聖女レジーナとのあれこれなど、魅力的なキャラクターたちが物語を彩っている。そして、ユーリを巡る不穏な依頼へと物語は進んでいく。

『私の心はおじさんである 3』は、ハルカの成長と、これからの冒険への期待感を高めてくれる一冊だった。次巻が待ち遠しい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

ハルカ

仲間思いで観察力が高く、他者の作戦や心理を理解し支える行動を取る。治癒魔法の使い手であり、戦闘でも障壁魔法や身体能力を発揮する。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。ノクトの弟子。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルベルトの戦いを支援し、イーストンと共に吸血鬼を撃退した。ノクトから治癒魔法や戦闘訓練を受け、成長の兆しを見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ノクトに師事し、仲間の役に立つための技術習得を進めている。

アルベルト

冷静かつ真面目な性格で、武闘祭においては最年少で決勝進出を果たした実力者である。仲間や作戦を信頼し、勝利を目指す姿勢を持つ。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。武闘祭決勝進出者。
・物語内での具体的な行動や成果
 モンタナの作戦を活用して予選を突破し、決勝初戦でエレオノーラと対戦。先制攻撃を成功させるも敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 敗北後も周囲から実力を認められ、仲間からの信頼を深めた。

モンタナ

戦況分析や作戦立案に長け、冷静な判断を下す。仲間を支える一方で、感情を素直に表す場面もある。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 武闘祭予選でアルベルトに戦法を助言し、勝利の一因を作った。仲間との会話や対応で場を和ませた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦術面で仲間からの信頼を得ている。

コリン

実務的で慎重な性格を持ち、契約や依頼に関して厳格な対応を行う。仲間の安全や利益を守ることに長ける。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギーツからの依頼を契約書なしで拒否し、冒険者としての立場を守った。ハルカや仲間を叱責しつつも支援を惜しまない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 交渉・契約管理役として仲間から頼られている。

ノクト=メイトランド

「竜の獣人」と呼ばれる特級冒険者で、治癒魔法と障壁魔法を得意とする。
・所属組織、地位や役職
 特級冒険者。治癒魔法士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハルカの師となり、治癒魔法や戦闘訓練を指導。危険を伴う治療も行い、患者の希望に応じた対応を取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その希少な治癒能力ゆえに誘拐の危険があるとされるが、自ら公表し活動している。

ギーツ

直情的な性格で、過去の経験からエレオノーラを恐れている。
・所属組織、地位や役職
 フーバー子爵家の嫡男。
・物語内での具体的な行動や成果
 エレオノーラとの婚約を避けるため、アルベルトやハルカに代理決闘を依頼したが拒否された。父フォルカーの仲裁で誤解が解かれ、婚約が継続した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家の立場と婚約条件の間で揺れている。

エレオノーラ=ペルレ

戦場経験を持つ双剣の使い手で、高い実力と強い意志を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ペルレ男爵家の長女。武闘祭決勝進出者。
・物語内での具体的な行動や成果
 決勝初戦でアルベルトを撃破し、試合後には彼の実力を認める態度を見せた。幼少期からギーツに好意を寄せていたことを告白。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 婚約を自ら望み、家の事情と個人の感情を一致させている。

クダン

威圧感のある態度を持つが、仲間思いで護衛や仲裁も行う。
・所属組織、地位や役職
 特級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 レジーナと大男の戦いを止め、ギーツを威圧して制止した。ハルカの安全確保にも関与。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家庭を持ち、娘も冒険者であることが明かされた。

イーストン=ヴェラーテネブ=ハウツマン

細身の青年で、戦いを避ける立ち回りを見せるが高い戦闘力を秘める。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 武闘祭ではほとんど戦わず決勝進出。吸血鬼の追跡・戦闘においてハルカと協力し撃退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 街を離れ吸血鬼の追跡を続けるため、武闘祭を辞退した。

レジーナ=ーキケロー

「鉄神聖女」と呼ばれ、圧倒的な戦闘力と挑発的な態度で知られる。
・所属組織、地位や役職
 二級冒険者。武闘祭決勝進出者。
・物語内での具体的な行動や成果
 予選で多数の相手を圧倒し、大男との激戦を繰り広げた。ハルカと休憩中に短い会話を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 恐れられる存在として他者との距離を置かれている。

フォルカー

厳格な性格で、息子ギーツを徹底的に鍛える父親である。必要とあれば拳で諭し、家の名誉を守る行動を取る。
・所属組織、地位や役職
 フーバー子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギーツの無断依頼を問い詰め、叱責と拳骨で戒めた。エレオノーラとの誤解を解く場を設け、婚約を前向きに進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家の決定権を持ち、息子と婚約者の関係を直接調整する立場にある。

ペルレ男爵

温厚な態度で他者を諫めるが、武術にも通じている。
・所属組織、地位や役職
 ペルレ男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 幼少期のギーツとエレオノーラの訓練に立ち会い、フォルカーの厳しさを苦笑混じりに抑えようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 領主として隣領との交流に関わっている。

ヘルマ

人懐こいが警戒心も強く、姉エレオノーラを慕っている。
・所属組織、地位や役職
 ペルレ男爵家の次女。
・物語内での具体的な行動や成果
 イーストンに付きまとい、ハルカを警戒。姉の試合相手がアルベルトであることを告げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 姉の試合や人間関係に積極的に関わる姿勢を見せた。

オクタイ

豪放な性格で、実戦的な戦い方を得意とする。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。武闘祭出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルベルトと喧嘩の末に親しくなり、武闘祭初戦を突破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘経験を重ねた実力者として描かれている。

ジーグムンド

鍛え上げられた体格と闘気を持つ格闘家である。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。武闘祭出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 肩の治療をノクトとハルカから受けた。治療後、武闘祭で初戦を突破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上位冒険者としての力量を示した。

シュオ

強靭な精神力を持つ格闘家で、痛みを伴う治療を選ぶ覚悟を持つ。
・所属組織、地位や役職
 冒険者。武闘祭出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 武闘祭で右腕を再び重傷化させ、ノクトとハルカの治療で以前より強固な腕を得た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 治療後も武闘祭に復帰した。

ナーイル

軍務に従事する冷静な将校である。
・所属組織、地位や役職
 帝国兵将校。
・物語内での具体的な行動や成果
 負傷した腕をハルカに治癒され、即座に剣の素振りで回復を確認した。旅の途中で黒髪黒目の赤子を探していることを明かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軍所属の立場を利用して情報収集を行っている。

コーディ

落ち着いた物腰で人との交流に慣れており、冒険者への理解が深い。
・所属組織、地位や役職
 貴族。詳細な爵位は不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷でハルカたちを迎え入れ、旅の話を聞いた。ノクトを旧知として認識し、名を呼んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 旅人や冒険者を受け入れる柔軟さを持つ人物として描かれている。

オレーク

元王国兵士で、家族を守るために冒険者としての道を選んだ人物である。
・所属組織、地位や役職
 元王国兵士。冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 病気の娘と栄養失調の妻を抱えていたが、ハルカの治癒魔法で家族全員が回復した。ノクトとは旧知の関係であり、感謝の意を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族を伴い独立商業都市国家プレイヌのヘアシュドゥルへ移住する決意を固めた。

オレークの妻

病に苦しんでいたが、治癒魔法により回復した女性である。
・所属組織、地位や役職
 特定の所属は不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハルカの治癒を受け、健康を取り戻した。家族と共に新たな生活を始める準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 回復後は移住を前向きに受け入れた。

オレークの娘

幼くして病を患っていたが、治癒によって健康を回復した。
・所属組織、地位や役職
 特定の所属は不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 ノクトやハルカから治癒を受け、病状が改善した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族と共に新天地での生活を迎えることになった。

ペルレ男爵夫人

エレオノーラとヘルマの母で、直接の行動描写は少ない。
・所属組織、地位や役職
 ペルレ男爵家の夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文中での行動や台詞は明確に描かれていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族内での立場は安定しているが、物語への直接的関与は少ない。

ホット=ミッド=ケット

光魔法を扱うことができる人物として名前のみ登場する。
・所属組織、地位や役職
 詳細は不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 クダンによって光魔法使いとして紹介された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘や治療の場面で有効な光魔法を扱える。

展開まとめ

<アルベルトの戦い>

一、始まりの合図

始まりの合図と余韻
予選を突破したアルベルトの姿に、司会者も驚きを交えて解説を入れた。舞台を堂々と降りる四名の選手に観客席から大きな拍手と歓声が送られる。ハルカは姿が見えなくなるまでアルベルトを目で追い、いつの間にか立ち上がっていたことに気づく。周囲にも同じように立ち上がって声援を送る者が多く、自然な高揚感として受け入れられた。

再会と食事へ
午前の試合が終了し、観客たちが一斉に外へ出る中、はぐれぬよう三人は固まって移動。コロシアム前の石像の上から手を振るアルベルトと合流し、称賛の言葉をかける。混雑を避け、空いている店で食事を取ることになった。

勝利の要因とモンタナの作戦
食事の席でアルベルトは「モンタナの作戦がなければ勝てなかったかもしれない」と語る。モンタナは、参加者を「勝ちを狙う者」「強さを誇示する者」「暴れたい者」に分類し、目立たず立ち回る助言をしていた。アルベルトはその戦法を実行し勝利を得たが、「ずるをしたような気がする」と複雑な表情を見せる。

勝利への肯定と激励
ハルカは「あれは立派な勝利」と断言し、作戦の遂行や戦いたい気持ちを抑えることも実力だと評価。決勝に自信を持って臨むよう促す。アルベルトは納得し、優勝を目指す決意を新たにした。旗の応援案は再び却下されたが、ハルカは少し名残惜しさを覚える。

食事と道中の出来事
食事は独特な味付けのパスタと炒め物で、店員から赤い果実のサービスを受けるが、コリンから愛想を振りまきすぎないよう注意される。コロシアムへ戻る途中、モンタナは筋骨隆々の赤茶色の肌を持つドワーフの一団を避けるようにハルカの陰に隠れる。知り合いがいたが「今はまだいい」と挨拶を避け、四人は再び足並みをそろえて歩き出した。

二、恐れられるには理由がある

注目選手レジーナの登場
第三ブロックの舞台中央には、他の選手たちが距離を置くように空間ができていた。原因は【鉄神聖女】レジーナ=ーキケローの存在である。司会者が「聖職者風の外見は趣味であり、各地で喧嘩を繰り返す問題児」と紹介すると、レジーナは周囲に挑発的な言葉を投げ、賢明な者は離れ、怒った者たちが彼女を取り囲む構図となった。

試合開始と圧倒的な暴れぶり
銅鑼が鳴ると同時に袋叩きに遭うかと思われたレジーナは、逆に相手を吹き飛ばし、笑みを浮かべて猛攻を開始。受ける攻撃を選びつつ、倒れた者を無視して次々と敵を排除していく。その暴れぶりに、コリンは「二級冒険者の強さではない」と顔をしかめた。

大男との激闘
やがて山のような大男が立ちはだかり、巨大な武器で激しくぶつかり合う。武器は数合で砕け散り、拳による殴り合いへ移行。割り込もうとする選手も一撃で沈み、舞台は二人の戦場と化した。最終的に残ったのはレジーナ、大男、そして端で避難していた少年のみだった。

クダンの仲裁
司会者の要請を受け、観客席にいたクダンが舞台へ跳躍。助走なしで着地し、二人の間に割って入ってレジーナを気絶させ、戦いを終わらせた。唐突な決着に観客からブーイングが起こるが、モンタナは「頭部への一撃で気絶させた」と解説した。

観客への威圧と沈静化
クダンはブーイングにも怒らず大男と短く言葉を交わすが、観客席から小石のようなものが飛ぶと一変し、「ぶち殺すぞ」と咆哮。観客は恐怖で逃げ散り、場は静まり返った。追撃せず立ち去る姿に、ハルカは「態度は怖いが大人」と感じた。

その後の様子
クダンは正規ルートで観客席に戻り、最上段からむすっと舞台を見下ろす。その姿はどこか子供のようで、ハルカはアルベルトと似た気質を感じ、コリンと目を合わせて笑みを交わした。

三、イース様

サーカス団の登場と華やかな演目
第四ブロック開始前、司会者の紹介でサーカス団が入場し、空を滑空して炎の輪をくぐる小型竜など、圧巻の演目が披露された。観客席では子供を中心に歓声が上がり、ハルカも思わず見入ってしまう。クダン周辺の観客の一部は退散したが、会場は全体的に華やいだ雰囲気に包まれた。

イーストンとの再会とコリンのからかい
選手入場後、ハルカは集団の中に長い黒髪を束ねた細身の青年イーストン=ヴェラーテネブ=ハウツマンを発見する。前夜に会話を交わした人物であり、その姿を見て心配を口にするが、コリンは「ハルカの好み」だとからかい、恋愛話に持ち込もうとする。ハルカはこれを否定しつつ、会場の観察に集中しようと努めた。

旗を振る貴族風の女性と試合展開
試合開始後、イーストンは気だるげな様子ながら、攻撃をかわしては他者に押し付ける立ち回りで生き残っていく。その姿に、右斜め前の観客席から貴族然とした女性が小さな旗を振り、熱烈な声援を送る。ハルカはその様子を見て、自作の大きな旗を振らなくて良かったと感じる。最終的にイーストンはほとんど戦わずに決勝進出を決め、女性は歓喜の声を上げた。

勝ちたくないように見える態度
試合後、モンタナが「負けたがっているように見えた」と発言し、ハルカもそれに同意する。イーストンの出場理由や背景に何らかの事情があるのではないかと推測する。

祭りの夜と翌日への備え
会場を出ると、街はかがり火に照らされ、祭りの夜を楽しむ人々で賑わっていた。ハルカは屋台巡りの誘惑を断ち、アルベルトの翌日の試合に備えて早めに宿へ戻る。アルベルトは少し疲れた様子ながらも、モンタナと共に訓練へ向かい、ハルカは布団の中で意味のない後悔を抱えたまま眠りに就いた。

四、観戦と緊張と

アルベルトの観戦意欲と仲間の反応
アルベルトは自分の試合が終わった後も全試合を見届ける姿勢を示し、特に初日に喧嘩をして親しくなったオクタイの試合を楽しみにしていた。モンタナは複雑な表情を見せたが、仲間たちは互いに気持ちを和らげながら観戦する雰囲気を保った。

会場の様子と選手たちの交流
会場は多くの観客で賑わい、包帯姿の者も見られ、前日の出場者であることがうかがえた。アルベルトは観客や昨日戦った選手から声を掛けられ、試合を通じた交流と友情の広がりが見られた。

試合結果とオクタイの戦いぶり
第八ブロックまでの試合は順当に勝者が決まり、オクタイも勝ち残った。その戦い方は実戦的で冒険者らしいものであり、基礎を重視するアルベルトやモンタナとは対照的であった。

アルベルトの沈黙と仲間の励まし
試合後、アルベルトは勝ち残った対戦相手の強さに思案を巡らせ、帰り道も考え込んでいた。コリンやモンタナは背中を叩いて気持ちを切り替えさせようとし、ハルカも同じく励まそうとしたが、力加減の危険を指摘され控えた。代わりに髪を乱す程度の接触で応援し、普段通りの雰囲気を維持することを選んだ。

ギーツとの再会
宿へ向かう途中、先を歩いていたコリンが足を止め、依頼人のギーツと再会した。ギーツは偶然の再会を縁として頼み事を持ちかけ、コリンはため息をついた。

五、上手い付き合い方

ギーツとの再会と状況説明
宿でコリンたちは依頼人であったギーツと再会した。ギーツは過去の出来事によりフォルカー子爵に殴られたことを明かし、顔の腫れを見せた。これにより彼らを避ける必要がなくなったとして、改めて頼み事を持ちかけた。コリンは貴族の依頼に警戒しつつも席につき、アルベルトとモンタナは訓練に向かった。

婚約者エレオノーラの存在
ギーツは武闘祭決勝トーナメント進出者の一人、エレオノーラが自分の婚約者であると告げた。婚約は勝手に決められたもので、幼少期に彼女から酷く打ち負かされた経験があるため結婚を望んでいなかった。父親との交渉で、彼女が武闘祭優勝、またはギーツとの直接対決で勝利した場合に結婚が成立する条件が決まっていた。

依頼内容と拒絶
ギーツはエレオノーラの優勝を阻止するため、まずアルベルトに彼女を破ってほしいと依頼したが、ハルカは他人の事情を試合に持ち込むなと強く否定した。次にギーツはハルカに代理としてエレオノーラを倒すよう依頼し、報酬として金貨六十枚を提示したが、コリンはこれを即座に拒否した。

報酬交渉と契約の不成立
コリンは逆に、アルベルトが優勝またはエレオノーラに勝利した場合、ギーツが金貨三十枚を支払うかを確認した。ギーツは了承し立ち去ったが、コリンは依頼を受けた覚えはないと主張し、契約書もないため拘束力はないと説明した。これは契約書なしで冒険者に依頼をさせようとしたギーツへの対応であり、冒険者としての矜持を守った行動であった。

対応後の方針
コリンは今回の対応は単にギーツを追い払うためのもので、今後揉めるようであれば再び話し合うと述べた。ハルカは、この件がアルベルトに伝わらないようにすることを自分の役目と考え、秘密を守る決意をした。

六、食べ歩きと遭遇

街のグルメコンテストと買い物
決勝トーナメント前日の休養日に街ではグルメコンテストが開催され、多くの屋台が並び賑わっていた。ハルカはコリンから遊び用の資金を預かり、朝食抜きで屋台巡りを開始した。手軽に食べられる品や持ち帰り用を次々と購入し、試食を勧められた店でも買い物を重ね、両手いっぱいに手提げを抱えることになった。

レジーナとの出会い
休憩場所を探す途中、人々が避けて通るベンチに座る女性と遭遇した。顔に傷を持つその人物は決勝トーナメント出場者レジーナ=ーキケローであり、鋭い視線で威圧していた。ハルカは隣に座り、屋台で買った食べ物を味わいながら様子をうかがった。二十分経ってもレジーナは動かず、やがて彼女から強さの秘密を問われる。ハルカは理由が分からないと答えたが、レジーナは不満を示しつつも立ち去った。

コロシアムでの確認とイーストンとの再会
ハルカはトーナメント表の確認のためコロシアムへ向かい、人混みを避けて様子を見ていた。そこへ夜に会った青年イーストンが、痴漢を捕まえて兵に引き渡す姿を目撃する。二人は日陰で会話し、互いに人混みで被害に遭ったことを確認した。イーストンは自分を応援する少女に付きまとわれていると明かした。

ヘルマの登場と対戦相手の判明
間もなくその少女ヘルマが現れ、イーストンに抱きつきながらハルカを警戒した。彼女は決勝進出者エレオノーラ=ペルレの妹であり、エレオノーラがアルベルトと対戦することを告げた。ハルカは偶然の組み合わせに驚きつつも、その場を離れることにした。

その場からの離脱
ヘルマはイーストンと一緒に表を見に行こうと誘ったが、混雑を理由に後回しにされ、ハルカにも同行を提案した。ハルカは用事を口実に断り、イーストンの無言の視線を受け取って速やかに立ち去った。街中でもトーナメント表は入手できるため、余計な火種を避けることを優先した。

七、路地裏

商店街での注目と路地裏への退避
イーストンたちと別れたハルカは商店街に戻り、混雑で寄れなかった屋台を巡った。しかし店主たちから過剰な呼び込みや無料提供を受け、不自然な注目を集める。後にフードを被り忘れていたことに気づき、理由に納得するが、視線は収まらなかった。手提げが満杯になったため、大通りから路地裏へ逃げ込み、買い込み過ぎた品を消費することにした。

路地裏での子供たちとの交流
路地裏で米に似た料理を食べていたハルカは、周囲を貧しい身なりの子供たちに囲まれる。食べ物を分けようとするが、警戒され近寄られないため、その場に置いて離れることでようやく手を伸ばさせた。多くの子供が去った後、小柄な少年が残り、ハルカはシロップ入りマフィンを差し出す。少年は受け取らずに去ったが、遠くから感謝の言葉を残し、ハルカはそれを嬉しく感じた。

審査員と誤認された理由
再び大通りに戻ったハルカは、自分がグルメコンテストの審査員と勘違いされていたと耳にする。誤解を解かず、押し付けられた品には支払いをして宿へ帰還した。

宿での報告とアルベルトの成長
宿ではコリンに土産としてマフィンを渡し、甘味を喜ばれる。その後、訓練から戻ったアルベルトとモンタナが現れ、アルベルトは身体強化の方法を掴んだと報告した。モンタナは以前から身体強化が可能だったと判明し、互いに秘密を持つ関係性が垣間見えた。

明日の対戦表と気合い
ハルカはギーツの件を伏せ、対戦表を見せて話題を逸らす。アルベルトは一戦目の相手が二刀使いのエレオノーラであることを確認し、強敵と認めつつも勝利を誓った。コリンは背中を叩いて気合を入れ、場は和やかな雰囲気となり、ハルカも明日を楽しみに感じることができた。

八、乾坤一城

早朝の会場入り
試合当日、アルベルトとハルカは緊張から早く目を覚まし、仲間を連れて会場入りした。観客席はまだ掃除中で、舞台では演奏隊がリハーサルを行っていた。開始まで時間がある中、モンタナはハルカに寄りかかって眠り、コリンは余裕の態度で軽食をつまんでいた。

試合開始前の紹介
司会者が試合ルールを説明し、第一試合の選手紹介が始まる。エレオノーラ=ペルレは双剣の使い手で戦場経験もある男爵家の長女として紹介され、女性客からの歓声を浴びた。続くアルベルトは最年少の決勝進出者として紹介され、冒険者や年配女性からの声援を受けながら登場した。仲間たちは手を振って応援し、アルベルトは不敵な笑みを浮かべて舞台に上がった。

アルベルトの先制攻撃
開始の合図と共に、アルベルトは身体強化と治癒魔法の効果で軽快な動きで突進した。ロングソードの長さを悟らせぬ構えから踏み込み、エレオノーラの指先をかすめる一撃を与える。これは彼女の予想を外す捨て身の攻撃であり、先制点を奪うことに成功した。

形勢の変化と突きの狙い
エレオノーラは距離を取って体勢を立て直し、アルベルトは間合いを詰めて突きで肩口を狙う。だが直前で彼女の短剣に軌道を逸らされ、剣は顔をかすめるに留まった。この時点でエレオノーラは新人と侮る意識を捨て、本気で応じる構えとなった。

決定打と試合終了
間合いの至近で隙を見せたアルベルトは、エレオノーラの長剣による顎への強打を受け、身体強化の一撃で意識を奪われた。審判が止めるまでもなく試合は終了し、エレオノーラは追撃を控えた。深い傷を負いながらも呼吸を整え、倒れたアルベルトを尊敬の念をもって見下ろした。

九、心配性

試合後の焦燥と行動
アルベルトが宙に浮くほどの打撃を受けた瞬間、ハルカは初めて「手に汗握る」感覚を実感し、立ち上がって容態を確認しようとした。後ろの観客に注意されて我に返るが、モンタナとコリンの誘いでアルベルトのもとへ向かう決意を固めた。

立ち入り制限とギーツの登場
選手用通路で兵士に阻まれ、証明書がないため立ち入りを拒否される。交渉も通じず諦めかけたところ、ギーツが現れ、フーバー子爵嫡男として身元を保証し通行を許可させる。コリンは素直に礼を述べ、ギーツが案内役となった。

治癒室での安堵
治癒室に入り、ベッドで眠るアルベルトの無事を確認したハルカは安堵する。既に治癒魔法を受けており、外傷は見られなかった。

治癒魔法士ノクトとの出会い
部屋には獣人の治癒魔法士ノクト=メイトランドが居合わせ、穏やかな口調で容態の安定を説明した。ギーツは無邪気に獣人の体格について口にし、コリンは再び彼を値踏みするような視線を向けていた。

くつながる縁>

一、竜の獣人

ノクトの正体と年齢
ノクトは自分が特別に小柄なだけで、獣人は人よりがっしりしていると説明した。見た目は十代半ばほどだが、実年齢は百歳を超えており、長寿ぶりは常識外れであった。ハルカはその理由を魔素の影響と推測するが、戦闘より治癒魔法に長ける彼が肉弾戦を行う姿は想像しづらかった。

クダンの来訪とギーツの失神
突然クダンが現れ、ノクトの頭を軽く叩きながら、ギーツが許可なく人を通したことを咎めた。威圧に耐えられなかったギーツは気絶し、ハルカたちは空きベッドに寝かせた。クダンはノクトを「竜の獣人」で特級冒険者と紹介し、治癒魔法の価値ゆえ誘拐されることもあると語った。

アルベルトの覚醒と会話
やがてアルベルトが目を覚まし、治癒したのがノクトだと知る。軽口を叩くも、ノクトから実戦の危険性を諭され、真剣に応じた。クダンが既に立ち去ったと聞くと悔しがるが、モンタナに「自分は会えた」とからかわれる。

ギーツの事情とノクトの紹介
アルベルトはなぜギーツが同室で寝ているのかを尋ね、コリンからクダンの威圧で気絶したと知らされる。さらにノクトが特級冒険者と知ると驚き、年齢を問うが、自分の祖父より年上と聞いて獣人の年齢感覚に戸惑った。

二、月の神様の話

治癒魔法の希少性と危険性
アルベルトたちが部屋を出た後、ハルカはノクトに治癒魔法の希少性を尋ねた。ノクトは、瀕死の重傷を治せる使い手は百人に一人、その中で一日に複数回使える者は国中で片手ほどしかいないと説明し、能力を公表すると狙われる危険があると忠告した。特に戦闘能力を持たない治癒魔法使いは、権力の庇護を受けざるを得ないという。

ノクトの素性と提案
ノクトは自らが治癒魔法と障壁魔法を得意とする特級冒険者であることを明かし、ハルカが戦えるなら選択肢は広がると示唆した。さらに、自身が「竜の獣人」であり、ある神秘的な体験を経て今の力を得たことを語り始めた。

月の神様との出会い
ノクトは死に瀕した際、「月の神様」に遭遇したと語る。獣人族は太陽神と月神を信仰し、月神は死を司る存在とされる。生きる理由を抱えていたノクトは月神と会話し、力を授かって生還したという。

ハルカとの共通点
ノクトは、クダンから「強いのか弱いのか分からない人物」と聞いており、それがハルカだと察していた。そして月神がハルカに酷似した姿をしていたと明かす。この事実は、以前聞いた子供たちの噂話を裏付けるものであり、ハルカは関係性を否定できなかった。

会話の終わりと余韻
ノクトは月神は気まぐれで人族が恐れるほど恐ろしくないと補足し、話が役に立ったかを確認した。ハルカは多くの疑問を抱えつつも感謝を述べ、情報量の多さに頭を抱えることとなった。

三、師匠

信頼を試す質問
ハルカはノクトを信用できるか見極めるため、なぜ狙われる危険を承知で治癒魔法士であることを公表しているのか尋ねた。ノクトは、自分の力を腐らせず必要とする人が探しやすいようにするためだと説明し、危険性については障壁魔法で対処し、治す相手は直接会って判断すると答えた。

生き方への共感と羨望
ノクトの行動原理は「わがまま」であり、自分がやりたいことを満たしたうえで人を助けると語った。ハルカは、人の意見に流され拒絶を恐れてきた自分と違い、芯を持って生きる彼の姿に眩しさと羨望を覚え、一歩踏み出す決意を固めた。

力の評価を依頼
ハルカは自分も治癒魔法を使えることを明かし、その実力を評価してほしいと依頼。さらに、魔法や身体強化についても見てもらいたいと申し出た。ノクトは興味を示し、承諾した。

師弟関係の提案と拒否
礼を述べたハルカは、憧れからノクトを「師匠」と呼びたいと願い出たが、ノクトは笑顔でこれを否定。それでも、その人間らしい反応にハルカはますます彼への興味と好感を深めた。

四、教授

治癒魔法の理論
ノクトは、治癒魔法は術者の想像力を魔素に乗せて効果を発揮する技術であり、想像の仕方によって負担や効果が異なると説明した。ハルカの「自然治癒を加速させる」イメージでは、患者か術者が栄養を負担する必要があり、ハルカの場合は大量の魔素を流して補っていると推測した。ハルカはこれまで一度も魔法で負担を感じたことがないと告げ、ノクトは珍しい事例として受け止めた。

障壁魔法の実演と破壊
ノクトは障壁魔法を披露し、ハルカに試しに叩かせたところ、ハルカの拳で破壊されてしまった。これにノクトは驚き、ハルカの身体強化は上位冒険者並みと評価した。続いて本気の障壁を張り、再挑戦を促すと、今度は破れずに強く跳ね返し、ハルカは床にめり込むほど吹き飛ばされた。

師弟関係の再提案と承諾
吹き飛ばされたことで悩みが一時的に吹き飛んだハルカは、再びノクトを「師匠」と呼びたいと願い出た。今度はノクトも承諾し、握手を交わしたが、ハルカは床から抜けられず、ノクトも引き上げられなかった。

クダンの登場と救出
大きな音を聞きつけたクダンが駆け込み、事情を聞くと呆れながらもハルカを引き抜いて救出した。クダンは迷惑をかけるなと釘を刺し、去っていった。

次の試験への誘い
クダンを見送った後、ノクトは魔法のテストを提案したが、ハルカはクダンへの迷惑を避けるため、後日別の場所で行うよう頼み込んだ。

五、お迎え

床のへこみと価値観の違い
床に自分の形でへこんだ跡を見て、ハルカは修繕費の心配をするが、ノクトは国営の物だから弁償は不要と軽く受け流す。公営物は弁償すべきと考えるハルカとは価値観が異なっていたが、人生の先輩の意見にひとまず従うことにした。

モンタナの迎えと会話の中断
ドアをノックして現れたモンタナが床のへこみに気付き、事情を尋ねる。観戦途中だったことを思い出したハルカは、話の続きを夜か翌日に回すことをノクトに提案され、宿の住所を受け取る。ノクトは武闘祭後もしばらく街に滞在すると告げ、ハルカとモンタナを見送った。

モンタナの誤解と心配
廊下を歩く途中、モンタナはハルカがノクトと師弟になったことを聞き、パーティを抜けて彼について行くのではないかと問いかける。ハルカは全くそのつもりがなく、仲間の役に立つために学びたいだけだと説明する。モンタナは一時的にそっけない態度を見せたが、徐々に理解を示した。

チーム継続の意思表明
ハルカは今回の旅だけでなく、長く同じパーティで活動したいとモンタナに伝える。モンタナは照れ隠しのため視線を合わせないが、頭を撫でられることは拒まなかった。その反応から、ハルカはモンタナの気持ちを肯定的に受け止めた。

六、路地裏の兵士

観戦の終わりと提案
ハルカはモンタナと共に席へ戻り、武闘祭の試合観戦を楽しんだ。出場選手の一人が欠場したため試合数は少なかったが、オクタイやレジーナ、ジーグムンドらが初戦を突破した。昼過ぎにアルベルトが珍しく休むことを提案すると、ハルカは気分転換を兼ねて美味しい屋台料理へ誘い出すことにした。屋台を巡った末、米料理を勧めるも仲間の反応は芳しくなかった。

路地裏の異変とイーストンとの再会
甘味を求めて街を歩く途中、兵士が集まる裏路地に遭遇する。野次馬を避けつつ様子を窺っていると、知り合いのイーストンを見つけ、彼から話を聞くことにした。人気のない場所へ移動すると、路地裏で男と女性の二人の遺体が見つかったこと、そして近隣でも似た手口の殺人が発生していることを知らされる。被害者の多くは美しい女性であり、犯人は吸血鬼と噂されていた。

吸血鬼の特徴とイーストンの追跡
吸血鬼は白い肌と整った容姿を持ち、夜間に強大な力を発揮する破壊者であると説明される。イーストンは腕に自信があるとし、一人で吸血鬼を追っていると語った。ハルカが協力を申し出るも、夜間は宿で休むよう促された。

疑念と仲間の反応
イーストンが去った後、アルベルトは彼の強さに感心し、コリンは吸血鬼の特徴がイーストンと一致すると指摘する。しかし冗談めかして否定しつつ、ハルカは内心で疑念を抱くのだった。

七、彼らの時間

広場での警戒とイーストンとの再会
ハルカはコリンの世話を終え、夜の広場へ出て警備兵の多さに気付き、自己満足のパトロールを始めた。イーストンの素性を考えながら歩く中、後方から本人が現れ、昼間の忠告を破っていることを指摘される。吸血鬼の闇魔法について説明を受けた後も残る意思を示すが、イーストンは危険を理由に帰宅を促す。

拘束試験と同行の許可
イーストンはハルカの力を試すため手首を掴んで壁に押し付けるが、容易に拘束を外され、形勢逆転される。意外な力に驚いたイーストンは同行を許可し、路地裏で怪しい男女を発見する。接近したイーストンは男に斬りかかり、左腕を切断するも、相手は蝙蝠となって再生したことで吸血鬼と判明する。

吸血鬼との交戦と人質化
ハルカは障壁魔法で援護するが、吸血鬼は高速で反撃し、彼女を人質に取る。首元に剣を突き付けられたハルカは障壁と腕力で拘束を突破し、吸血鬼の腕を引きちぎって投げ飛ばす。激しく吹き飛ばされた吸血鬼は蝙蝠となって撤退を宣言し、空へ逃げ去った。

戦闘後の対応
イーストンは追跡を断念し、腕を失った吸血鬼はこの地で活動を続けないだろうと判断する。ハルカは突き飛ばされた女性に治癒魔法を施し、イーストンがその女性を抱えて人のいる場所まで運ぶことになった。

八、成果

女性の救出と状況説明
気を失っていた女性は路地裏を出る前に意識を取り戻し、魅了の魔法を受けていたことを語った。戦闘の様子を夢のように見ていたが、吸血鬼が逃走した時点で気を失ったという。兵士たちに事情を説明し、女性を引き渡した後、ハルカはイーストンと並んで歩きながら自分のせいで逃げられたと謝罪したが、彼は否定し追い払えただけでも成果だと慰めた。

互いの素性と詮索しない約束
イーストンは片腕を失わせたことで吸血鬼の動きが制限されると説明し、ハルカの勤勉さを称えつつ素性を尋ねた。ハルカは自分でも正体が分からないと答え、イーストンは深く詮索しないことを提案した。ハルカは彼の紅い瞳に隠された秘密を感じつつ、その提案を受け入れた。

試合辞退と依頼の提示
翌日の武闘祭への出場を勧めるハルカに対し、イーストンは吸血鬼追跡のため街を離れると告げた。彼は本来出場意思がなかったが、知人に勝手に登録された経緯を明かし、最後にハルカへ依頼を提示した。それは吸血鬼が再び街に現れた場合の追い払いで、成功・失敗を問わず赤い宝石を依頼料として渡した。

別れと心境
イーストンは「また縁があれば」と言い残し、振り返らずに去った。ハルカは彼が破壊者に関わる存在かもしれないと考え、再会を願った。吸血鬼との戦闘を振り返り、素手戦闘での過剰な破壊力を自覚した彼女は、今後は極力避けることを心に決めた。宿に戻るとコリンが眠たげに迎え、ハルカは今日の出来事を翌日に回し、休息を取った。

<師匠と学び>

一、朝一番から

朝の会話と昨晩の出来事
朝食の席でコリンとアルベルトから昨晩の行動を問われたハルカは、吸血鬼を探していたイーストンに会っていたことを明かした。吸血鬼を撃退したと聞いたコリンは驚き、危険性を理由に夜間外出をやめるよう忠告した。ハルカはイーストンと二人で行動していたこと、吸血鬼の能力や戦闘内容を説明し、ギルドへ報告する必要性をコリンに指摘され承諾した。

宝石の正体と価値
ハルカはイーストンから託された紅い宝石を取り出し、吸血鬼を再び見かけた場合に追い払う依頼を受けていたことを話した。モンタナはそれを「ヴァンパイアルビー」と鑑定し、金貨数十枚に相当する価値があると説明した。宝石は吸血鬼の死後に魔素が結晶化して生じるもので、魔法の媒体としても利用可能だとされた。コリンは宝石の安全管理をモンタナに任せたが、彼の扱い方にやや不安を覚えた。

ギルド報告と待ち時間
一行はギルドへ向かい、ハルカは昨晩の経緯を報告した。アルベルトは訓練場で冒険者との手合わせに向かい、残ったコリンは退屈しのぎにハルカの髪を編み始めた。会話の中で、ハルカは武闘祭を観戦せずに特級冒険者ノクトのもとで治癒魔法を学ぶ予定を告げ、コリンは羨ましがった。

髪遊びと匂いの話
コリンは髪を編んだ後すぐにほどき、髪質や香りについて話題にした。香りの理由を問われたハルカは何もつけていないと答えたが、コリンは髪に顔を埋めて匂いを嗅ぎ続けた。アルベルトが戻るまでその行動は続き、最終的には彼の帰還を機嫌よく迎えたことで、その場は穏やかに収まった。

二、治癒室にて

治癒室での吸血鬼談義
ハルカはノクトの治癒室を訪れ、昨晩吸血鬼と遭遇したことを報告した。ノクトは吸血鬼の特徴として高い身体能力や再生力、蝙蝠などへの変形能力を挙げ、銀製や魔法の武器、光魔法が有効だと説明した。会話に加わったクダンは光魔法使いの知人「ホット=ミッド=ケット」の名を補足しつつ、ノクトの記憶力を揶揄した。さらに魔法の武器の希少性や入手経路についても解説が行われた。

クダンの人柄と家庭事情
クダンは試合観戦に向かう前に、ハルカの護衛を依頼し、乱暴な言動の裏に気遣いがあるとノクトが説明した。ノクトはクダンが妻と娘を持つ家庭人であり、娘も冒険者であることを明かした。この意外な一面にハルカは驚き、娘の強さを想像した。

尻尾と脱皮の話
ノクトは自身の尻尾が脱皮直後で柔らかいことを話し、ハルカに触らせたうえで、獣人の中には尻尾や耳を触られるのを嫌う者が多いと忠告した。さらに自分にも触られるのを嫌う「逆鱗」があると示し、注意を促した。

治癒魔法の使い分け
本題に戻り、ノクトは治癒魔法には時間を戻す、治癒力を促進する、奇跡を起こすといった種類があり、症状や経過時間によって使い分けるべきと教えた。多くの使い手は使い分けができないが、魔力量に優れるハルカなら可能だと期待を示した。

実践の始まり
そこへ帝国兵ナーイルが腕を負傷して訪れ、ノクトはハルカに治癒の実践を命じた。ナーイルは不安を口にするが、ハルカは師匠を信頼して引き受け、治療の準備に入った。

三、実し訓練

負傷兵ナーイルの治療
ノクトは歌唱なしで治癒魔法を使うよう助言し、負傷兵ナーイルの包帯を外した。肩口には太い血管や腱が損傷した深い傷があり、ハルカは緊張しつつも魔法を行使し、出血を止めて傷を消失させた。ノクトの確認後、ナーイルは腕の可動や剣の素振りを行い、完治を確認した。

軍からの勧誘と断り
ナーイルは見事な治癒の腕前を称賛し、軍への勧誘を行ったが、ハルカとノクトは共に冒険者であることを理由に断った。ナーイルは未練を見せず、気が変われば歓迎すると述べて退室の準備をした。

黒髪黒目の赤ん坊の話題
退室間際、ナーイルは旅の途中で黒髪黒目の生後半年ほどの赤ん坊を見かけなかったかと尋ねた。ハルカは心当たりがあったが否定し、詳細を聞き出すとユーリの特徴と一致していたため、内心で疑念を抱いた。ノクトも黒髪黒目は珍しいと認め、ハルカはコーディと再度情報交換の必要を感じた。

師弟関係の確認
ノクトはハルカの実力から師は不要と評したが、ハルカは魔法の理解不足を理由に指導を求めた。ノクトは明確には断らず、効率より効果を重視する方針を示した。

角削りをめぐるやり取り
ノクトが角を削り始めたため、ハルカは手伝いを提案するが、尻尾の件を思い出して焦る。ノクトは冗談で注意したと笑い、最終的に角削りを依頼した。ハルカは慎重に作業しつつも、ノクトの意外に意地悪な一面を感じ、緊張しながら作業を進めた。

四、ロージィナイトメア

角削りの続きと力加減の指摘
ハルカはノクトの角にやすりをかけ、引っかかりをなくして滑らかに整えた。ノクトは力加減の苦手さを見抜き、所作からその慎重さを指摘した。訓練の必要性を伝えつつも、からかいと配慮を交えたやり取りが続いた。

元の世界での記憶と師弟関係の意識
作業中、ハルカは自分が過去に優等生として無難に生き、教師の記憶にも残らなかったことを思い出す。ノクトの記憶に残る弟子になれるかを考え、丁寧に礼を述べると、ノクトは笑いを含めて応じた。

負傷格闘家シュオの搬送
突然、治癒室に担架で武闘祭出場者のシュオが運び込まれる。彼は過去にノクトが治療した右腕を再び重傷化させ、加えて全身に擦過傷を負っていた。ノクトは落ち着いて傷を確認し、骨の露出を指摘する。

治療方針の選択
ノクトは患者に「痛みの少ない治療」と「死ぬほど痛いがより丈夫になる治療」の二択を提示。シュオは後者を選択するが、その方法は骨を手で押し戻すという衝撃的なものだった。ノクトは猿ぐつわと固定を準備し、ハルカに処置を依頼する。

処置の実施と精神的負担
ハルカは逡巡しつつも、患者の意思を尊重し骨を砕いて整復する。処置中にシュオは気絶するが、ハルカは治癒魔法で強度を増した腕を再生。結果、以前よりたくましく丈夫な腕となった。

治療後のやり取りと二つ名の判明
目を覚ましたシュオは怒りを露わにし、ノクトを警戒。だがノクトが特級冒険者【桃色悪夢(ロージィナイトメア)】と知ると態度を一変させ、距離を取りながら退室。ハルカはその様子から、ノクトの実力と異名の重みを実感した。

五、異形の中身

ノクトへの警戒心と麻酔の有無
ノクトの二つ名に一瞬警戒したハルカは、治療時の痛みについて麻酔の有無を尋ねる。ノクトは幻覚や依存性のある煙草草の存在を説明し、自身は使用していないと語った。魔法では闇魔法が痛覚誤魔化しに近いが、強い痛みの抑制は難しいと補足した。

治療方法と戦士の気質
ノクトは骨を元に戻す治療は非常に痛いと述べ、自身なら別の治癒魔法を使うと答える。一方で、痛みを耐える前衛戦士の精神力を称賛し、シュオの覚悟と回復力を評価した。

病気治療における治癒魔法の限界
病気の初期症状には有効だが、原因が特定できない内部疾患には難しいと説明。薬師との連携を勧め、自己治癒能力を高める方法もあるが、病状悪化のリスクを伴うことを指摘した。

薬師ギルドとの関係と裏事情
治癒魔法使いは薬師から商売敵として嫌われやすいと述べ、幻覚作用のある煙草草が薬師ギルドの一部で密かに利用されている事実を共有。薬師ギルドは毒にも精通し、国の暗部と繋がる場合もあるため注意を促した。

戦闘訓練と赤子の件の暴露
ハルカが戦闘訓練を求めると快諾し、黒髪黒目の赤子の件について心当たりがあると告げ、ハルカがナーイルに嘘をついたことを看破。反応や行動から推測し、本人には悟られていないと説明した。

ハルカの精神面の不足と改善指摘
ノクトはハルカの肉体能力に比して精神力・技術・勇気が不足していると分析。経験不足から自信が育たず、勇気が持てない悪循環を断ち切る必要性を説いた。

強くなりたい理由と肯定
ハルカは仲間の役に立ちたいと動機を明かし、ノクトはきっかけに間違いはないと肯定。障壁を展開し訓練方法を教えると告げ、最終的に優しさと深い思慮を持つ人物像が再確認された。

六、大事な話をいくつか

コリンからの叱責と食事の提案
ハルカは夕食の時間になっても戻らず、心配したコリンから叱られる。モンタナが探し出して事情を伝えたことが判明。叱責の最中、屋台の食べ物の匂いに腹が鳴り、コリンは怒りを収め、何か買って食べるよう促した。

訓練内容の説明とアルベルトへの提案
宿に戻り、ハルカはノクトとのやり取りや、力加減を覚えるための障壁破壊訓練について説明。訓練の成果を活かし、アルベルトを送り出す際の気合入れを試したいと提案するが、本人は拒否。コリンとモンタナは面白がるが、アルベルトは最後まで拒否を貫く。

仲間への感謝と場の和み
やり取りの中で、ハルカは仲間と共に冒険者として活動できる喜びを再認識。コリンやアルベルトもパーティに恵まれていると口にし、モンタナも同意する。照れ隠しの雰囲気の中、場が和んだ。

ナーイルに関する重要情報の共有
ハルカは本題として、帝国の将校ナーイルが黒髪黒目の赤子を探していると語る。ユーリがその特徴に当てはまるため、警戒の必要性を示唆。ナーイルには何も知らせず様子を見る方針で全員一致した。

コーディへの連絡方法の決定
情報をコーディへ伝える手段として手紙を送る案が採用される。ハルカは郵便制度に不慣れなため、手続きはコリンが担当することになった。

チーム登録の提案と決定
モンタナが<オランズ>帰還後にパーティから正式なチームへの登録を提案。アルベルトとコリンも即座に賛成し、ハルカも同意。全員一致で決定し、<オランズ>への帰還が楽しみだという気持ちで締めくくられた。

七、人の範疇

朝の支度と治癒室訪問
翌朝、晴天の中で四人揃って朝食をとった後、ハルカはノクトの治癒室へ向かう。残り少ない期間に学びを得るためであり、ノックして入るとノクトは菓子を食べながらくつろいでいた。短いやり取りの後、決勝戦の前に訓練を行うこととなる。

ノクトの同行提案
ノクトはハルカに興味を持ち、武闘祭後の旅への同行を提案。冒険者は気ままな存在であり、不要なら途中で離れると語る。ハルカは遠慮を捨てて同行を快諾した。

上位冒険者への社会的認識
決勝戦を観戦する意義として、ノクトは二級冒険者上位層の戦闘力と、市井の人々から「得体の知れない化け物」と見られる現実を説明。ハルカの特殊な力も同様に見られる可能性を指摘し、覚悟を促した。

治癒訓練とジーグムンドの治療
ノクトは障壁を用いた魔法訓練を行い、来訪したジーグムンドの肩をハルカに治療させる。彼の闘気と鍛え上げられた体格にハルカは憧れを覚える。治癒魔法の技量に問題はなく、使い所を弁えれば十分とノクトから評価を受けた。

決勝戦観戦への移動準備
訓練を終えたノクトは予定より早く観戦に向かうことを提案。ハルカは仲間と合流しても良いかを確認し了承を得る。武闘祭後の行動予定も確認し、情報共有の必要を話し合う。

金貨の申し出と辞退
移動中、ノクトは決勝戦観戦用に小遣いとして金貨を渡そうとするが、ハルカは辞退し席確保を優先。ノクトは手を引かれながら笑い声を上げ、観戦会場へと向かった。

八、強さ、恐れ、憧れ

ノクトの知人との再会
ハルカは観客席に向かう途中、ノクトの知人オレークに呼び止められる。彼は元王国兵士で、現在は病気の娘と栄養失調の妻を抱えていた。ノクトは自ら治癒せず、ハルカを紹介して治療を依頼した。ハルカは家族全員に治癒魔法を施し、感謝を受ける。

ノクトの思いと弟子への期待
焚火の前でノクトは、王国兵士が代替可能な存在として切り捨てられる現実を語る。自身の行動は大義ではなく知人訪問の延長だとしつつも、何かの希望になるなら良いと述べる。そして、ハルカの変わった性質と妙な力に、常識外の行動を期待していると告げる。ハルカは即答を避け、旅の中で答えを見つけると返した。

心境の変化
ハルカは、相手の望む答えだけを返す人付き合いをやめ、自分と相手の気持ちに向き合う決意を固める。ノクトはその姿勢を肯定し、頭を撫でて休みに入った。

翌朝の別れ
オレークは一家で独立商業都市国家プレイヌのヘアシュドゥルへ向かう予定を語り、冒険者として生きる決意を示す。別れ際、ハルカは将来訪問した際に美味しい店を案内してほしいと頼み、オレークも了承。家族を見送ったハルカたちは、西への旅路を再開した。

九、コーディのお屋敷

新たな訓練方法と旅路
道中の後半、ハルカは新たな訓練としてウォーターボールを複数展開し、歩きながら制御を行うことになった。訓練中は不意の会話で魔法が逸れることもあり、十日間の行程で八回自ら水をかぶり、仲間たちも数回被害を受けた。時間と共に制御力は向上し、仲間も回避が上達した。ノクトは障壁で完全防御を行い、濡れることを回避していた。やがてヘヴィスタの都市景観が見え、ハルカは再びその美しさに感嘆した。

屋敷での待機と落ち着かない心
ヴィスタの街に到着後、ハルカたちはコーディの屋敷を訪問。昼前に到着し、使用人から夕刻に帰宅予定と聞かされ、応接室で待つこととなった。高級な家具に囲まれた環境にハルカは落ち着かず、テーブルに触れることすらためらった。気を紛らわせるためノクトに身分開示の可否を確認し、了承を得た後、地図を広げて作業を始めたが、テーブルではなく床に座って行った。

コーディとの再会と夕食の準備
日暮れに戻ったコーディは、床に座っているハルカを見て笑い、再会を喜んだ。食事の準備を告げ、ハルカにテーブルを使うよう促す。椅子に座ったのはハルカとコリンのみで、他の仲間は床に留まった。コーディは冒険者慣れした様子でそのまま許容し、旅の話を聞くことを提案した。

ノクトとコーディの対面
会話の中でコーディは、床で眠るノクトが「ノクトリメイトランド」であることを言い当てた。ハルカが冗談で老人呼ばわりすると、ノクトは聞こえていたようで反論しつつも認め、椅子に座ってコーディと向き合った。ハルカは二人のやり取りを見守りながら、これからの会話に備えて気持ちを整えた。

電子版特別付録  ギーツの覚悟しなければいけない日

幼少期の訓練と恐怖の相手
幼いギーツは父フォルカーに厳しく鍛えられ、隣領ペルレ男爵家の娘エレオノーラとの手合わせで常に打ちのめされていた。フォルカーは訓練時のみ鬼のような厳しさを見せ、ペルレ男爵が時折苦笑混じりに諫めても効果はなかった。エレオノーラは普段は無愛想だが、訓練になると笑顔でギーツを叩きのめし、彼は彼女に嫌われていると確信していた。

武闘祭後の決闘依頼と父の呼び出し
武闘祭後、ギーツはハルカたちに決闘の代理を依頼するため外出準備をしていたが、父フォルカーに呼び出される。過去にも小細工が露見して叱責された経験があり、今回も無茶を頼んだ自覚から緊張する。エレオノーラの試合を見て成長した美貌と実力に圧倒され、恐怖を新たにした。

父との対峙と謝罪
フォルカーの部屋でギーツは決闘依頼の件を問い詰められ、白状と同時に張り倒される。フォルカーは謝罪のため同行し、道中で二度拳骨を落として諫めた。謝罪後、エレオノーラを怖がる理由を問われたギーツは「自分を嫌っているから」と答えるが、フォルカーは誤解と判断し直接会話する場を設けた。

エレオノーラの告白と父の判断
呼び出されたエレオノーラは上等な服と愛用の剣を身に着け登場。フォルカーがギーツの誤解を伝えると、彼女は婚約を自ら申し出た過去と幼少期からの好意を明かした。好意の理由は、ギーツの怯えや涙目になる様子など、常識外れなものだった。ギーツは拒否の姿勢を示すが、フォルカーは「ちょうど良い」として婚約に前向きな姿勢を崩さなかった。

ギーツの動揺とエレオノーラの満足
必死に反対するギーツを前に、エレオノーラは幸せそうな笑みを浮かべていた。フォルカーは二人の性格を「割れ鍋に綴じ蓋」と見なし、この縁が最適であると考えていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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