- 国王の額に「ハゲ」!? 幼馴染の運命の恋と王位継承争いが面白すぎる
- ※以下、『異世界転生騒動記3』のネタバレを含む感想。
- 母マゴット、ついに国王へ報復。額に「ハゲ」は反則だろう(笑)
- サンファン王国へ到着。外交任務のはずが王位継承争いに巻き込まれる
- 幼馴染テレサと第二王子フランコ。まさかの運命の出会い!
- 暗殺者からフランコを守るテレサ。恋愛が一気に命懸けになる
- フランコの母エレーナが激怒。親の思惑と本人の幸せは別問題
- 第一王妃マリアの性格がいい。王宮の女性たちが強すぎる
- 避雷針で大海賊を攻略。現代知識の使い方が今回も面白い
- アカバ海戦でカイラスと激突。岡左内の強さが頼もしすぎる
- ウラカまでバルドに惚れる。人間関係がまたややこしくなる
- 暗殺者バルトロメオの最期。第二王妃エレーナの暴走が招いた結末
- フランコとテレサ、二人だけの結婚式。今回一番好きな場面
- おしどり夫婦の秘密が300年後に発覚。後日談まで面白い(笑)
- 政治も海戦も面白いが、やはり人間関係の濃さが魅力
物語の概要
■ 作品概要
本巻の中心人物は、マウリシア王国の若き親善大使バルド・セヴァーン・コルネリアスである。 物語開始時、バルドは友人ブルックスやテレサらを伴い、南方の海洋国家サンファン王国へ向かう途上にあった。
サンファン王国では第一王子アブレーゴが疫病で病死し、第二王子フランコ(貴族・文官派)と第三王子ペードロ(軍部・マジョルカ派)による王位継承争いが激化していた。
バルドが持ち込んだ疫病対策や手押しポンプの技術が王家の権威付けに利用される中、フランコとテレサが惹かれ合い電撃的に婚約を宣言したことで状況が一変する。
軍部の危機感から放たれた秘密諜報機関「アカイシ機関」の暗殺者を撃退したバルドは、フランコの王位継承とテレサとの平穏な将来を両立させるため、大海賊「サンパニラデオン」討伐によって軍部とマジョルカ王国を味方につける策を主導する。
避雷針を活用したアカバ海戦で海賊を降伏させて軍部を懐柔し、帰還直後に発生したアカイシ機関による港の襲撃も首魁バルトロメオを討ち取って粉砕する。
最終的にフランコの立太子とテレサとの事実上の婚姻が成立し、バルドは両国間の強固な同盟関係を築いてマウリシアへの帰路に就くところまで状況が進む。
■ 主要キャラクター
バルド・コルネリアス
- 立場・所属:マウリシア王国親善大使、コルネリアス伯爵家嫡男、男爵。
- 主人公との関係:主人公本人。
- この巻での主な役割:サンファン王国との同盟交渉、技術供与(手押しポンプ・避雷針)、フランコの陣営工作、海賊討伐および暗殺者の排除。
- この巻で起きた重要な変化や行動:内なる岡雅晴の科学知識と岡左内の戦術・武術を状況に応じて行使。フランコとテレサの婚約を成立させるべく、海軍卿ホセやマジョルカ海軍卿ウラカを巻き込んでサンパニラデオン討伐を成功させた。アカバ海戦では海賊頭目カイラスを、港の襲撃では暗殺機関長バルトロメオを左内の力で制圧し、外交使節としての任務を完全勝利で終えた。
フランコ・コルドバ・デ・サンファン
- 立場・所属:サンファン王国第二王子(のち王太子)。
- 主人公との関係:交渉相手、友人、テレサの想い人。
- この巻での主な役割:王位継承候補者、テレサとの婚約、王位獲得への覚悟の受容。
- この巻で起きた重要な変化や行動:女性と見紛う美貌を持ち、内面では女性として愛される生き方を望んでいたため王位に執着していなかった。テレサからの求愛と暗殺未遂からの救出を受け、彼女と結ばれる決意を固める。バルドの説得により、テレサを守り抜くため王位継承争いに勝つ覚悟を決め、母エレーナを放逐して立太子を果たした。
テレサ・ブラッドフォード
- 立場・所属:マウリシア王国ブラッドフォード子爵令嬢、バルドの使節団同行者。
- 主人公との関係:バルドの幼馴染、親友。
- この巻での主な役割:使節団の護衛、フランコの身辺警護、フランコとの婚姻。
- この巻で起きた重要な変化や行動:男装の麗人であり、女性にしか性的関心を持たなかったが、フランコと出会った瞬間に恋に落ちる。暗殺者の襲撃から身を挺してフランコを守り重傷を負うが、想いを通じ合わせて婚約を宣言。夫(男役)としてフランコを生涯愛し抜くことを誓い、サンファン王国の将来の王太子妃となる道を選んだ。
ウラカ・デ・パルマ
- 立場・所属:マジョルカ王国海軍卿、女伯爵。「漆黒の暴風」の二つ名を持つ。
- 主人公との関係:共同作戦の提督、バルドに好意を寄せる女性。
- この巻での主な役割:マジョルカ艦隊の指揮、サンパニラデオン討伐への参戦。
- この巻で起きた重要な変化や行動:過去に敗北した海賊カイラスへの雪辱に燃えていたが、バルドの持ち込んだ避雷針の有用性を認め連合艦隊を出撃させる。アカバ海戦で座礁しカイラスに追い詰められるが、左内の人格となったバルドに救出され、祖父の面影を重ねてバルドへ異性としての激しい好意を抱くようになった。
カイラス
- 立場・所属:大海賊集団「サンパニラデオン」の大頭目、「千里眼」の異名を持つ元トリストヴィー海軍士官。
- 主人公との関係:海戦における敵対者、のちに降伏し配下となる。
- この巻での主な役割:アカバ内海での迎撃、ウラカとの一騎討ち。
- この巻で起きた重要な変化や行動:卓越した操船術と風を読む力でウラカの旗艦を座礁させ、白兵戦でウラカを打ち倒したが、割って入った左内(バルド)の圧倒的な技量に敗れ峰打ちで倒された。部下の命を救うため潔く降伏を選び、ウラカの助命によりマジョルカ海軍の傘下へ入った。
バルトロメオ・デ・セルバンテス
- 立場・所属:サンファン王国軍務卿直属秘密諜報部門「アカイシ機関」の長。
- 主人公との関係:暗殺・襲撃を主導した黒幕、敵対者。
- この巻での主な役割:フランコ暗殺の実行、エレーナへの接近、港でのマリア・ペードロ襲撃。
- この巻で起きた重要な変化や行動:サンタクルズ侯爵の命でフランコ暗殺を仕掛けるも失敗。軍部からの切り捨てを察知すると第二王妃エレーナに取り入り、ペードロとマリアの暗殺を企て港を強襲するが、左内に阻まれ、あらゆる暗殺術を突破されて一刀両断にされ死亡した。
エレーナ・デ・コルドバ
- 立場・所属:サンファン王国第二王妃、コルドバ公爵の娘、フランコの母。
- 主人公との関係:敵対的勢力(政争の障害)。
- この巻での主な役割:第一王妃マリアへの対抗、フランコの王位擁立の強要、暗殺の教唆。
- この巻で起きた重要な変化や行動:権力欲からフランコの王位即位に執着し、テレサとの婚約に激怒する。軍部とマジョルカのフランコ支持への傾斜を焦り、バルトロメオにマリアとペードロの暗殺を依頼するが失敗し、フランコから処刑を免れる代償としてコルドバへの永久追放処分を言い渡された。
書籍情報
異世界転生騒動記 3
著者:高見梁川 氏
イラスト:りりんら 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2014年11月7日
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
三人の魂が合体!累計7.5万部突破の大人気シリーズ第3巻!
累計7.5万部突破!アルファポリス「第6回ファンタジー小説大賞」大賞受賞作、第3巻刊行! 守銭奴戦国武将・岡左内と、オタク高校生・岡雅晴の魂を併せ持った少年――バルド・コルネリアス。南国サンファン王国にやって来たバルドは、いきなり王位継承を巡る争いに巻き込まれてしまう。王族、官僚、軍部……様々な思惑が交錯するなか、多数派工作を目論むバルドが選択したのは、南洋を跋扈する海賊の討伐だった。才色兼備の女船乗りと共に向かうは、強烈な雷が荒れ狂う魔の海域――洋上の覇者を決める大海戦の幕が開く!
感想
国王の額に「ハゲ」!? 幼馴染の運命の恋と王位継承争いが面白すぎる
『異世界転生騒動記』第3巻は、前巻以上に笑いと政治的な駆け引きが入り混じった一冊だった。
前巻でコレラに感染した王女レイチェルを救い、自分まで死にかけたバルド。
その功績で男爵になったかと思えば、今度は親善大使としてサンファン王国へ派遣されることになる。
まだ学生なのに、外交官として他国へ行かされるのだから大変である。
しかも、その事実を後から知った母親マゴットが激怒。
なんと、就寝中の国王の額に「ハゲ」と落書きするという、とんでもない報復に出る。
いや、いくら何でもやりすぎだろう(笑)。
そんな衝撃的な幕開けから、物語はサンファン王国の王位継承争いへと進んでいく。
今回、特に印象に残ったのは、バルドの幼馴染テレサと第二王子フランコの出会いである。
男装の麗人であるテレサと、女性として愛されることを望む美貌の王子フランコ。
お互いの望む関係が驚くほどぴったりとはまり、運命の相手を見つけてしまう。
まさか外交任務に同行した幼馴染が、訪問先の王子と恋に落ちて、そのまま王位継承争いの中心人物になるとは。
しかも、後世には理想のおしどり夫婦として語り継がれ、その本当の夫婦関係が約300年後に明らかになるという後日談まで用意されている。
この作者、こういうオチが本当にうまい。
一方で、王妃たちの性格もなかなか強烈だ。
権力に執着して暗殺まで企てる第二王妃エレーナ。
そして、豪快な魔法と肝の据わった振る舞いが印象的な第一王妃マリア。
どちらも一筋縄ではいかない。
さらに、雷が降り注ぐ海域での大海賊討伐まで始まるのだから、今回もバルドに休む暇はない。
恋愛、政争、暗殺、海戦、そして母親による国王への落書き。
何とも騒がしい第3巻である。
※以下、『異世界転生騒動記3』のネタバレを含む感想。
母マゴット、ついに国王へ報復。額に「ハゲ」は反則だろう(笑)
まず笑ってしまったのが、母マゴットの報復である。
前巻でバルドは、コレラに感染したレイチェル王女を救うために奔走した。
その結果、自分自身も感染し、生死の境をさまようことになる。
何とか助かったものの、今度は男爵に叙爵され、親善大使としてサンファン王国へ送り出されてしまう。
王国にとっては有能な人材を活用しただけなのかもしれない。
しかし、母親からすれば話は別だ。
息子が命の危険にさらされたうえに、また危険な仕事を任されている。
それを後から知らされたマゴットが怒るのは分かる。
ただし、その怒りの表現方法が普通ではない。
就寝中の国王ウェルキン五世のもとへ忍び込み、額に「ハゲ」と書いてしまうのだ。
いや、何をやっているんだ。
相手は国王である。
普通なら近づくだけでも大変なはずなのに、眠っている間に落書きまでしてしまう。
しかも、内容が「ハゲ」。
暗殺でも脅迫でもなく、子供のいたずらみたいな報復なのが余計に面白い。
伝説の女傭兵が本気で怒った結果、国王の額に書かれた文字が「ハゲ」。
この落差には思わず吹き出してしまった。
ただ、よく考えると恐ろしい。
マゴットは国王の寝室まで侵入できるということを、実際に証明してしまったのだ。
今回は落書きで済んだから笑い話になっている。
しかし、国王からすれば、自分の命がいつでも狙える状態にあると知らされたようなものだろう。
笑えるのに、よく考えるとまったく笑えない。
このあたりがマゴットらしい。
前巻では夫イグニスや後輩傭兵たちが八つ当たりを受けていたが、今回はついに国王まで被害者になった。
バルドが出世するほど、母親の怒りが国家規模になっている気がする。
息子を心配する母親の愛情なのだが、もう少し穏やかな表現方法はないものだろうか。
サンファン王国へ到着。外交任務のはずが王位継承争いに巻き込まれる
そんな母親の騒動をよそに、バルドは親善大使としてサンファン王国へ向かう。
同行するのは、騎士学校の友人ブルックスや幼馴染のテレサたち。
前巻で知り合った仲間が、今度は外交の舞台でも活躍する。
こうして人物同士の関係が広がっていくところは、シリーズの面白さの一つだと思う。
ただし、訪問先のサンファン王国は穏やかな状況ではなかった。
第一王子アブレーゴが疫病で亡くなり、王位継承をめぐる争いが起きていたのだ。
候補となるのは、第二王子フランコと第三王子ペードロ。
フランコには文官や大貴族たちがつき、ペードロには軍部やマジョルカ王国がついている。
一見すると、王子同士が王位を奪い合っているように見える。
ところが、実際には本人たちがそれほど王位を望んでいない。
兄弟仲も悪くない。
それなのに、周囲の大人たちが勝手に争いを激化させている。
この構図が興味深かった。
王位継承争いというと、野心的な王子たちが互いを蹴落とそうとする展開を想像しがちである。
しかし今回は、王子本人たちよりも、その背後にいる貴族や軍人たちの利害関係が問題になっている。
誰が王になるかによって、自分たちの立場や権益が変わる。
だから、当事者の気持ちとは関係なく争いが続いてしまう。
何とも面倒な話だ。
バルドは親善大使として訪れただけなのに、そんな事情を知ることになる。
しかも、ここへテレサの恋愛が絡んでくるのだから、さらにややこしい。
幼馴染テレサと第二王子フランコ。まさかの運命の出会い!
今回、個人的に一番面白かったのが、テレサとフランコの関係である。
テレサはバルドの幼馴染で、男装が似合う凛々しい女性だ。
剣の腕も立ち、振る舞いも男勝り。
一方、フランコは女性と見間違えるほど美しい第二王子である。
しかし、その美貌とは裏腹に、王族としての立場に強い息苦しさを感じている。
フランコは、女性として美しく着飾り、愛されることを望んでいた。
けれど、王子という立場では、その願いを素直に表に出すことができない。
そんな二人が出会ってしまう。
男らしく振る舞うことを好むテレサと、女性として愛されたいフランコ。
お互いが求めていた相手が、目の前に現れたようなものである。
いや、こんなにぴったりはまることがあるのか。
まさに運命の出会いだろう。
テレサはフランコの美しさに一目で心を奪われる。
そしてフランコも、自分を一人の女性のように見つめてくれるテレサに惹かれていく。
この二人の関係が面白いのは、単に男女の役割が逆転しているからではない。
お互いが、これまで周囲に理解されにくかった自分の気持ちを、相手の前では自然に表現できるところにある。
テレサは無理に女性らしく振る舞う必要がない。
フランコも、無理に男性らしく振る舞う必要がない。
二人でいるときだけは、自分の望む姿でいられる。
そんな相手に出会えたのだから、惹かれ合うのも分かる気がした。
それにしても、外交任務に同行した幼馴染が、訪問先の王子とこんな関係になるとは。
バルドも予想していなかっただろう。
暗殺者からフランコを守るテレサ。恋愛が一気に命懸けになる
テレサとフランコの関係は、ただの一目惚れでは終わらない。
王位継承争いが激化する中、フランコを狙った暗殺計画が実行される。
バルドが持ち込んだ手押しポンプを民衆に披露する場面で、刺客たちが襲いかかってくるのだ。
ここでテレサが見せる行動が印象的だった。
彼女はフランコを守るため、自分の身を危険にさらして戦う。
しかも、重傷を負いながらも守り抜こうとする。
それまでの二人は、どこか微笑ましい恋愛関係として描かれていた。
しかし、この襲撃によって、テレサの気持ちが本物であることがはっきりする。
好きだから守りたい。
相手が王子だからではない。
自分にとって大切な存在だから、命を懸けてでも守ろうとする。
その姿がよかった。
そして、危機を乗り越えた二人は、互いの気持ちを確かめ合う。
ここから一気に婚約へと話が進んでいく。
いや、展開が早い。
しかし、あれだけ命懸けの出来事を経験したのだから、気持ちが固まるのも無理はない。
ただし、相手は王子である。
恋愛だけで話が済むはずもなかった。
フランコの母エレーナが激怒。親の思惑と本人の幸せは別問題
フランコとテレサが婚約を宣言すると、当然ながら宮廷は大騒ぎになる。
特に激怒するのが、フランコの実母である第二王妃エレーナだ。
エレーナは息子を王位に就けることに強く執着している。
そのためには、結婚相手も政治的に有利な人物でなければならない。
ところが、フランコが選んだのは外国の子爵令嬢テレサである。
母親の思惑からすれば、到底受け入れられない相手だったのだろう。
しかし、フランコはテレサを侮辱されることを許さない。
結婚を認めないのであれば、王位継承権を放棄するとまで言い切る。
ここは、フランコの変化が感じられる場面だった。
それまでは王位に興味がなく、周囲の期待に流されるように生きていた王子である。
そんな彼が、初めて自分の意志で大切なものを守ろうとする。
テレサとの出会いが、彼を変えたのだ。
ただし、王位を放棄すればすべて解決するわけではない。
その現実を指摘するのがバルドである。
王位継承争いから降りたとしても、政敵にとってフランコは危険な存在のままだ。
生きているだけで担ぎ上げられる可能性がある。
だから、本当にテレサを守りたいなら、争いから逃げるのではなく勝たなければならない。
この助言は厳しいが、納得できるものだった。
好きな人と一緒にいたいだけなのに、そのためには王位を勝ち取らなければならない。
何とも大変な恋愛である。
それでも、フランコは覚悟を決める。
恋をしたことで、王子としても成長していく。
この流れが印象的だった。
第一王妃マリアの性格がいい。王宮の女性たちが強すぎる
今回、もう一人印象に残ったのが、第一王妃マリアである。
この人も、なかなかいい性格をしている。
第二王妃エレーナが権力への執着をむき出しにする一方、マリアはもっと豪快で肝が据わっている。
しかも、ただの王妃ではない。
かつて海巫女として名を知られた、強力な魔法の使い手なのだ。
バルドが避雷針の有効性を説明する場面では、マリアが雷魔法を使って実験に協力する。
普通なら、王妃が雷を落として実験するという状況自体がおかしい。
しかし、この人ならやりそうだと思えてしまう。
さらに、終盤の暗殺者による襲撃では、強大な魔法で敵を吹き飛ばしてしまう。
王宮にいるからといって、守られるだけの存在ではない。
むしろ、下手な護衛より本人の方が強そうである。
こういう女性キャラクターは好きだ。
権力者としての立場を持ちながら、自分自身にも圧倒的な力がある。
しかも、必要なときには遠慮なく使う。
エレーナの陰湿な策略とは対照的で、その豪快さが気持ちよかった。
それにしても、このシリーズの母親世代はどうしてこうも強烈なのだろう。
マゴットは国王の額に「ハゲ」と書く。
エレーナは息子の結婚に激怒して陰謀を巡らせる。
マリアは雷魔法や爆発魔法で敵を吹き飛ばす。
王国の政治を動かしているのは、実はこの女性たちなのではないか。
そんなことまで考えてしまった。
避雷針で大海賊を攻略。現代知識の使い方が今回も面白い
フランコの王位継承を実現するため、バルドは軍部や周辺国の支持を取り付けようと動く。
その切り札になるのが、大海賊サンパニラデオンの討伐である。
海賊たちが拠点とするアカバの海域は、激しい落雷が続く危険な場所だった。
高いマストを持つ軍船にとって、雷は大きな脅威である。
そのため、海賊たちは自然の力を防壁として利用していた。
ところが、バルドはここで避雷針を持ち出す。
現代ではよく知られた技術だが、この世界では画期的な発想である。
しかも、第一王妃マリアの雷魔法で実験まで行う。
この組み合わせが面白い。
魔法が存在する世界で、科学の知識を使って雷に対抗する。
それも、魔法を否定するのではなく、実験に利用してしまう。
こういう場面を見ると、異世界転生ものならではの楽しさを感じる。
バルドの中には現代日本の高校生・岡雅晴の知識がある。
さらに、戦国武将・岡左内の経験もある。
その二つを状況に応じて使い分けることで、普通なら突破できない問題を解決していく。
今回の海賊討伐は、その特徴がよく表れた展開だった。
ただし、避雷針があれば簡単に勝てるというわけでもない。
海賊の頭目カイラスも、相当に手ごわい人物なのだ。
アカバ海戦でカイラスと激突。岡左内の強さが頼もしすぎる
アカバ海域へ突入した連合艦隊を待ち受けていたのは、大海賊カイラスの巧妙な罠だった。
カイラスは古い船を沈め、海中に人工的な暗礁を作っていた。
その罠により、マジョルカ王国の海軍卿ウラカが率いる旗艦は座礁してしまう。
雷への対策を整えたと思ったら、今度は海底の罠である。
海賊側もただ待っているだけではない。
むしろ、海を知り尽くしているからこそできる戦い方だ。
ここは、カイラスの強さがよく伝わってきた。
さらに、カイラスは自ら船へ乗り込み、ウラカとの一騎討ちに勝利する。
ウラカも実力者なのだが、それでも押し切られてしまう。
そんな危機的状況で前に出るのが、バルドの中にいる戦国武将・岡左内である。
ここからの戦いが痛快だった。
カイラスは海の戦いに慣れた猛者であり、剣の腕も確かだ。
しかし、左内の戦闘経験はそれを上回る。
傾いた船の上でも動じず、相手の攻撃を見切り、最後は峰打ちで倒してしまう。
いや、強すぎるだろう。
しかも、左内はカイラスの武人としての気概を認め、むやみに命を奪わない。
ただ強いだけではなく、相手の覚悟や立場を理解している。
このあたりに、長年戦場を生き抜いてきた武将らしさを感じた。
結果として、カイラスは部下の命を守るために降伏する。
大海賊を討伐するだけでなく、その戦力まで味方側に取り込むことになるのだから、大きな成果である。
それにしても、外交官として派遣されたはずのバルドが、いつの間にか海戦の勝敗まで決めている。
外交官って、ここまでやる仕事だっただろうか。
前巻に続いて、バルドの仕事の範囲がどんどん広がっている。
ウラカまでバルドに惚れる。人間関係がまたややこしくなる
海賊討伐で印象に残ったのは、戦闘だけではない。
マジョルカ王国の海軍卿ウラカも、なかなか強烈な人物だった。
「漆黒の暴風」の異名を持つ女伯爵で、海戦では豪快な指揮を見せる。
気性も激しく、簡単に人へ頭を下げるような性格ではない。
そんな彼女が、カイラスに追い詰められたところをバルドに救われる。
正確には、バルドの中の岡左内に救われたわけだが、その姿に亡き祖父の面影を重ねてしまう。
そして、バルドへ強い好意を抱くようになる。
いや、また増えたのか。
セイルーンにセリーナ、シルク。
ただでさえ周囲の女性関係がややこしいのに、今度は他国の女海軍卿まで加わってしまった。
しかも、ウラカはかなり積極的である。
バルドの方が困惑するのも無理はない。
ただ、ウラカが惹かれた理由も分かる気がする。
彼女にとって強さは大切な価値観なのだろう。
自分が勝てなかった相手を圧倒し、命を救ってくれた人物。
しかも、その戦い方に懐かしい祖父の姿まで重なった。
そうなれば、特別な感情を抱くのも自然なのかもしれない。
もっとも、バルド本人としては迷惑な話だろう。
海賊を倒したら、なぜか女海軍卿に求婚されそうになる。
この主人公、本当に落ち着く暇がない。
暗殺者バルトロメオの最期。第二王妃エレーナの暴走が招いた結末
海賊討伐によって軍部や周辺国の支持を得たフランコ。
王位継承争いも、ようやく決着へ向かう。
しかし、そこで終わらないのが今回の物語である。
追い詰められた第二王妃エレーナは、ついに暗殺という手段に踏み切る。
標的となったのは、第一王妃マリアと第三王子ペードロだ。
自分の息子フランコを王にしたい。
その気持ちが強すぎるあまり、息子自身の幸せも、王国の安定も見えなくなっている。
何とも厄介な母親である。
しかも、フランコ本人はテレサとの結婚を望んでいる。
その願いを受け入れるどころか、母親が勝手に政敵を排除しようとするのだから、親子関係としても悲しい。
暗殺を実行するのは、秘密諜報機関アカイシ機関の長バルトロメオ。
この男も、かなり危険な人物だった。
変装や毒、暗器などを使い、相手を確実に殺すことを得意としている。
港での襲撃では、多数の刺客を動員して混乱を引き起こす。
しかし、ここでもバルドの中の岡左内が立ちはだかる。
さらに、第一王妃マリアまで強力な魔法を放つ。
暗殺者たちからすれば、相手が悪すぎた。
バルトロメオも最後まで抵抗するが、左内の圧倒的な剣技の前に敗れる。
こうして、王位継承争いを裏から操ろうとしていた勢力は崩壊する。
そして、暗殺を企てたエレーナも失脚。
息子フランコから、実家への永久追放を告げられることになる。
ここは少し考えさせられた。
息子を王にしたいという母親の願いが、最後には息子との決別を招いてしまう。
子供のためと言いながら、実際には自分の望みを押しつけていたのではないか。
そんなことを感じた場面だった。
フランコとテレサ、二人だけの結婚式。今回一番好きな場面
政治的な争いが決着したあと、印象的な場面が待っていた。
フランコとテレサの、二人だけの結婚式である。
この場面がとてもよかった。
フランコは純白のウェディングドレスを身にまとい、テレサは白いタキシードを着ている。
公の場では、フランコは王として、テレサは王妃として振る舞わなければならない。
しかし、二人が本当に望んでいる関係は、その役割とは逆なのだ。
そこで、バルドを立会人として、自分たちらしい結婚の誓いを交わす。
これが何とも微笑ましい。
単なる変わったカップルとして描かれていた二人が、ここでは真剣に互いの人生を預け合っている。
フランコは、テレサの前で自分の望む姿になれる。
テレサもまた、フランコを自分らしい形で愛することができる。
世間にどう見られるかよりも、二人がどう生きたいかを大切にしている。
その姿が印象に残った。
そして、そんな二人の結婚式に立ち会うのがバルドというのもいい。
幼馴染としてテレサを知り、外交官としてフランコと関わり、二人のために王位継承争いまで解決した。
バルドがいなければ、この結婚は実現しなかったかもしれない。
そう考えると、今回の外交任務は単なる国同士の交渉ではなく、二人の人生を大きく変えた旅でもあったのだ。
おしどり夫婦の秘密が300年後に発覚。後日談まで面白い(笑)
そして、今回の恋愛話には、さらに面白い後日談が用意されている。
フランコとテレサは、その後も仲睦まじい夫婦として知られるようになる。
四男四女、合わせて八人の子供に恵まれ、後世にも理想的なおしどり夫婦として語り継がれる。
それだけでも十分に幸せな結末だ。
しかし、二人の本当の夫婦関係が世間に知られるのは、約300年後だという。
いや、そんなに長く秘密が守られるのか(笑)。
しかも、その真実が歴史研究によって明らかになるというのだから面白い。
当時の人々は、国王フランコと王妃テレサを理想的な夫婦として見ていた。
しかし、実際には、夫婦の中での役割や愛情表現が一般的な想像とは逆だった。
それが数百年後に判明し、大きな話題になる。
歴史に残るおしどり夫婦の秘密が、まさかのアベコベ夫婦だったとは。
思わず笑ってしまった。
ただ、この後日談がいいのは、二人の関係が一時的な恋愛で終わらなかったことも分かるところである。
王位継承争いの中で出会い、命を懸けて守り合い、互いの望む姿を受け入れた。
その関係が生涯続いた。
周囲からどう見られていたとしても、二人にとってはそれが自然な夫婦の形だったのだろう。
奇抜な設定から始まった恋愛なのに、最後には素直に幸せでよかったと思えた。
今回、最も記憶に残るエピソードだった。
政治も海戦も面白いが、やはり人間関係の濃さが魅力
『異世界転生騒動記』第3巻は、外交任務をきっかけに物語の規模が一気に広がった一冊だった。
王位継承争いに巻き込まれたバルドが、現代知識と戦国武将の経験を生かして問題を解決していく。
手押しポンプや避雷針といった技術を使い、軍部や貴族たちの支持を取り付ける。
さらに、大海賊との海戦では岡左内の圧倒的な強さを見せつける。
こうした展開も十分に面白い。
しかし、個人的には、今回の魅力は人間関係にあったと思う。
まず、母マゴット。
息子が危険な目に遭ったと知って激怒するのは分かる。
しかし、国王の寝室へ忍び込み、額に「ハゲ」と書くのは予想外すぎた。
本当にこの母親は何をするか分からない。
そして、幼馴染テレサと第二王子フランコ。
お互いの望む関係が驚くほどぴったりとはまり、運命の出会いを果たしてしまう。
最初は変わった組み合わせだと思ったが、読み進めるうちに、二人が出会えてよかったと感じるようになった。
特に、ウェディングドレス姿のフランコとタキシード姿のテレサが、バルドの前で結婚を誓う場面が印象的だった。
二人が自分らしくいられる関係を見つけたことが、何よりうれしい。
しかも、後世にはおしどり夫婦として語り継がれ、その秘密が300年後に明らかになる。
最後まで笑わせてくれる。
一方、第二王妃エレーナと第一王妃マリアの対比も面白かった。
息子を王にするためなら暗殺も辞さないエレーナ。
豪快な魔法と胆力で存在感を見せるマリア。
どちらも強烈な女性だが、その強さの方向性がまったく違う。
このシリーズは、主人公だけでなく周囲の人物も本当に濃い。
それにしても、バルドは大変である。
学生なのに外交官として派遣され、王位継承争いを収め、大海賊を倒し、幼馴染の結婚まで取りまとめる。
それだけ働いているのに、本人は平穏と金儲けを望んでいるのだから、何とも皮肉だ。
バルドが有能であればあるほど、仕事も人間関係も増えていく。
この調子では、次巻も穏やかな日々は期待できそうにない。
それでも、今回のように笑えて、熱くなれて、最後には少し温かい気持ちになれるなら、次の騒動も楽しみである。
ただ、国王の額に「ハゲ」と書く母親だけは、もう少し自重した方がいいと思う(笑)。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:南国への使節と王位継承の暗雲
マウリシア王国の若き使節バルドは、友人ブルックス、テレサらを従えてサンファン王国へ到着した。
サンファン王国では第一王子アブレーゴが疫病で急死し、第二王妃エレーナの息子フランコと、第一王妃マリアの息子ペードロの間で後継争いが激化していた。
国境の都市マラガで太守ロドリゲスから母マゴットの過去の武勇伝を聞かされたバルドは、フランコ本人が王位に無頓着である一方、軍部とマジョルカ王国がペードロを支持しているという政争の実情を掴む。
王都カディスで国王カルロス五世と会見したバルドは、疫病の治療法がマウリシア発である事実を伏せる代わりに両国が実質的な同盟関係を築く約束を取り付け、美貌の第二王子フランコおよび素直な第三王子ペードロと対面した。
この会見で、男装の騎士テレサはフランコの妖艶な美しさに一目で心を奪われた。
第2幕:給水ポンプの設置とアカイシ機関の急襲
フランコを推す文官・貴族派の台頭により権益縮小を恐れた軍務卿サンタクルズ侯爵は、秘密諜報機関「アカイシ機関」の長バルトロメオにフランコ暗殺を命じた。
その裏で、フランコはバルドの宿舎を訪れて手押しポンプの民衆公開への同行を希望し、テレサと親交を深めていた。
翌日、街頭でポンプが設置され民衆が歓声を上げる中、潜んでいたアカイシ機関の刺客がフランコを狙撃するが、テレサがフランコの髪に花を挿したことで照れたフランコが体を動かし、矢は偶然外れる。
直後に刺客集団が白昼の強襲を開始し、バルドとブルックスが敵の先鋒を返り討ちにする一方、逃げたフランコを追ったテレサは機関屈指の刺客と交戦し、重傷を負いながらも彼を庇い続けた。
窮地に駆けつけたバルドの中で戦国武将・岡左内の人格が覚醒し、毒を塗った暗器をことごとく打ち返して刺客を瞬殺した。
助けられたフランコは血を流すテレサを抱き締め、二人は互いの想いを交わして口づけを結んだ。
第3幕:婚約宣言とフランコの覚悟
フランコとテレサは国王や重臣の前で突然の婚約を宣言し、マウリシア子爵令嬢との婚姻という政治的横紙破りに宮廷は騒然となった。
息子の独断に激怒した母エレーナが怒鳴り込むが、フランコはテレサを侮辱するなら王位継承権を放棄すると断固として撥ねつけた。
バルドはフランコに対し、王位を放棄してもペードロ派や支持貴族から命を狙われ続ける現実は変わらず、テレサと生きるためには権力闘争に勝利して王位を奪取する覚悟が必要だと説いた。
フランコが手を汚して戦う決断を下すと、バルドは軍部を切り崩すため中立派の海軍卿ホセに接触し、外洋航行を可能にする「吊り下げ式羅針盤」と壊血病予防策を提示してフランコ支持へ誘導した。
ホセは提案を歓迎しつつ、海軍と軍部を完全に動かすにはマジョルカ王国海軍卿ウラカを説得し、難攻不落の大海賊「サンパニラデオン」を討伐することが不可欠だと告げた。
第4幕:避雷針の実証と連合艦隊の結成
バルドは第一王妃マリアの私室で、マジョルカ王国海軍卿ウラカ・デ・パルマと対面した。 ウラカは過去に敗北したサンパニラデオンの頭目カイラスへの雪辱を熱望していたが、海賊の本拠地アカバは無数の落雷が降り注ぐ天然の要塞であった。
バルドは落雷を安全に海中へ逃す「避雷針」の理論を提案し、元「海神の申し子」と呼ばれた凄腕魔法士である第一王妃マリアが落とした雷撃魔法を用いて船上実験を行い、その有効性を完全に証明した。
歓喜したウラカは祝宴を開いて泥酔し、バルドに絡んで寝室へ倒れ込む一幕を経て、マジョルカ艦隊とホセ率いるサンファン王国第一艦隊による討伐連合軍が結成された。
これを知ったカルロス国王も、バルドの政治工作の手腕を認め、フランコを正式に後継者として立てる肚を固めた。
第5幕:アカバ海戦と海賊王カイラスの降伏
連合艦隊は雷雲渦巻くアカバの内海へ突入し、待ち構えていたサンパニラデオン艦隊と激突した。
ホセの艦隊が敵別動隊を着実にすり潰す一方、ウラカの旗艦ラ・マンチャ号は、カイラスが沈めていた廃船の人工暗礁に誘い込まれて座礁し、孤立する。
精鋭海兵「黒シャチ」を率いて乗り込んできたカイラスは、一騎討ちの末にウラカを組み敷いて勝利を宣言した。
止めを刺されかけたウラカの前に岡左内の人格となったバルドが立ちはだかり、傾く船体をものともせず、カイラスの剛剣を峰打ちで叩き落として脳震盪を起こさせた。
左内の武人としての器量に感服したカイラスは全軍に戦闘停止を命じ、サンパニラデオンはマジョルカ海軍の傘下に入る条件で降伏を受け入れた。
この一戦で自らを救ったバルドの背中に亡き祖父の面影を見たウラカは、彼に激しい恋心を抱くようになった。
第6幕:港の奇襲と暗殺者バルトロメオの誅殺
凱旋したマジョルカでウラカの不器用な求愛をなんとか回避したバルドらは、王都カディスの港へ帰還した。
一方、軍部に見限られたバルトロメオは、失脚を恐れて暗殺者を求めていた第二王妃エレーナと接触し、マリアとペードロの暗殺計画を請け負っていた。
出迎えのペードロとマリアが港で合流した瞬間、市民や物売りに扮したアカイシ機関の暗殺者たちが一斉に蜂起した。
混乱に乗じてバルトロメオがペードロの喉元へ刃を伸ばすが、左内が瞬時に割り込み攻撃を受け止めた。 さらにマリアが海巫女としての強大な魔法を炸裂させて周囲の刺客を吹き飛ばし、敵の包囲網は崩壊した。
逃亡を捨ててバルドへ毒針と劇薬による奇襲を仕掛けたバルトロメオだったが、左内はその小細工を一切意に介さず神速の踏み込みから一刀両断にし、即死させた。
第7幕:エレーナの失脚と真実の結婚式
アカイシ機関の壊滅に伴い、暗殺を教唆したエレーナの罪状が露見した。 フランコは自ら母の居室を訪れ、王家の醜聞を防ぐための最後の温情として、コルドバの実家への永久追放処分を通告し、死を恐れたエレーナはこれを受け入れた。
軍務卿サンタクルズが引責辞任して後任にホセが就任し、軍部と貴族の双方の支持を取り付けたフランコの立太子が正式に決定された。
祝賀晩餐会の夜、バルドはフランコの私室に招かれ、純白のウェディングドレスを纏ったフランコと、白のタキシードを着たテレサの姿を目にする。 公には国王と王妃という建前を背負い続ける二人は、バルドを唯一の司祭役として、夫としてのテレサ、妻としてのフランコという真実の愛を生涯貫く誓いを立てた。
任務を終えたバルド一行はカルロス国王から最大の感謝を受けて帰国し、国境で待ち構えていたテレサの父マティス子爵も娘の結婚相手決定を涙を流して歓迎した。
主要な転換点
転換点:手押しポンプ設置現場での暗殺未遂とフランコ・テレサの婚約宣言
- それ以前の状況:フランコは政治に無関心を装い、テレサは同性愛嗜好からフランコを女性として愛でていたが、二人の関係は公的なものではなかった。
- 出来事:アカイシ機関の刺客集団がフランコを襲撃し、テレサが身を挺して重傷を負いながら守り抜いた直後、二人が愛を認め合い公然と結婚を発表した。
- 変化:フランコの後継争いがマウリシア王国を巻き込む国際問題へ激化し、フランコ自身もテレサを守るため王位継承争いから逃げずに戦う覚悟を決めた。
- 次への影響:バルドが本格的にフランコ陣営の参謀として介入し、軍部およびマジョルカ王国を味方につける大規模な政治工作を開始する契機となった。
転換点:避雷針の実証とサンパニラデオン討伐への出撃決定
- それ以前の状況:海軍およびマジョルカ王国は第三王子ペードロの後ろ盾であり、海賊サンパニラデオンの雷撃要塞アカバを攻略できず膠着していた。
- 出来事:バルドが避雷針の技術を持ち込み、第一王妃マリアの雷撃魔法を用いた実験によって落雷が無害化されることをウラカの眼前で実証した。
- 変化:長年の懸案だった海賊本拠地の攻略が可能となり、ウラカ率いるマジョルカ艦隊とホセ率いるサンファン艦隊がバルドの主導で出撃に合意した。
- 次への影響:アカバ海戦の勝利を経て、軍部とマジョルカ王国がフランコ支持へ転じる決定的なカードとなった。
転換点:アカバ海戦におけるカイラスの降伏
- それ以前の状況:座礁したラ・マンチャ号の船上でウラカがカイラスに敗北し、サンパニラデオンによる人質確保が成功しかけていた。
- 出来事:左内の人格となったバルドが一対一の白兵戦でカイラスを圧倒して峰打ちで倒し、カイラスが部下の助命のために降伏を選択した。
- 変化:サンパニラデオンがマジョルカ海軍の傘下に組み込まれ、マルマラ海の制海権問題が解決すると同時に、ウラカがバルドに心服・求愛するようになった。
- 次への影響:海軍の長であるホセとウラカの全面的な協力を獲得し、サンファン王国軍部のフランコ支持が不可逆なものとなった。
転換点:港における暗殺部隊の返り討ちとエレーナの追放
- それ以前の状況:窮地に陥ったバルトロメオが第二王妃エレーナと密約を交わし、港でのペードロとマリアの暗殺を謀っていた。
- 出来事:左内がペードロを庇ってバルトロメオを切り捨て、マリアの魔法爆発によってアカイシ機関の暗殺部隊が全滅、エレーナの関与が露見した。
- 変化:エレーナがコルドバへの永久追放処分を受け、サンタクルズ侯爵の引責辞任とホセの軍務卿就任により、宮廷内の対立勢力が完全に無力化された。
- 次への影響:フランコの立太子が満場一致で確定し、サンファン王国の後継者争いが平和裏に完全決着した。
バルドを中心とした人物関係の変化
フランコ
- 開始時:マウリシアの大使と、病弱な第一王子の死により浮上した他国の第二王子という儀礼的な関係。
- 主な出来事:テレサとの電撃婚約を受け、バルドが政治闘争を勝ち抜く覚悟を問い、海賊討伐や宮廷工作を代行して王太子への道を拓いた。
- 巻末時:命と未来を救われた最大の恩人として絶大な信頼を寄せられ、秘密の結婚式を託すほどの無二の親友となった。
テレサ
- 開始時:気心の知れた幼馴染であり、男勝りで同性愛嗜好を持つ腐れ縁の親友。
- 主な出来事:テレサがフランコに一目惚れして暴走し、暗殺者から命懸けで彼を守る中、バルドが二人の結婚のために奔走した。
- 巻末時:テレサが他国の王太子妃(実質的な夫役)となる運命を見届け、二人だけの誓約式で祝福を授ける関係となった。
ウラカ
- 開始時:他国の使節である小僧と、百戦錬磨の荒くれ女海軍卿という不信感の強い関係。
- 主な出来事:避雷針による雷撃無効化を証明され、アカバ海戦でカイラスに敗れて殺されかけたところを左内(バルド)の剣技に救われた。
- 巻末時:亡き祖父の面影を重ね合わされ、結婚や子供を望んで逆夜這いを仕掛けられるほど猛烈な求愛を受ける対象となった。
ホセ
- 開始時:サンファン王国海軍を率いる中立派の高官と、新任の若い外国人使節。
- 主な出来事:バルドから羅針盤や壊血病対策の技術を提示され、軍縮ではなく海軍拡張路線であることを説かれて秘密裏に提携した。
- 巻末時:サンファン王国の新軍務卿となったホセから、実年齢以上の智謀を持つ怪物として深く一目置かれる同盟関係となった。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
バルド自身は、自らを「前世の知識(雅晴)と老将の経験(左内)を借りているだけの、平穏と金儲けを好む普通の14歳の少年」と認識している。 外交任務についても「ウェルキン国王の悪巧みによって面倒な政治闘争に巻き込まれた」と捉えており、他国の王位継承争いには極力深入りせず、マウリシアの国益と自身の安全、そして幼馴染テレサの幸福を守る最低限の立ち回りを意図していた。
周囲からの評価
- カルロス五世:若年でありながら老練な君主の意図を汲み取り、サンファン王国に百年の幸運をもたらした稀代の知謀を持つ救国の恩人と評価している。
- フランコ:自己の絶望的な境遇を救い、愛する人との未来を勝ち取るための覚悟と道筋を与えてくれた、生涯をかけて報いるべき盟友と認識している。
- ウラカ:最初は生意気な子供と見下していたが、船上の戦闘力とカイラスを打ち倒した圧倒的な強さに触れ、尊敬すべき「完成された男」として異性として強く意識している。
- ホセ:子供の皮を被った老練な政治家・戦略家であり、決して敵に回してはならない恐るべき知者と評価している。
- バルトロメオ:何百人もの命を奪ってきた本物の殺人者特有の殺気を放つ、絶対に組み伏せることができない怪物として恐怖と執着を抱いた。
認識の差が現れた場面
- フランコとの覚悟の対話:バルド本人は「自立した大人として、自分の我儘(テレサとの結婚)を通すなら相応のリスクと戦う責任を負うべきだ」という現実的な道理を突きつけたつもりであったが、フランコからは「すべてを見透かした上で自分を真の主君・男へと導いてくれる悪魔的な指導者」として受け止められた。
- アカバ海戦でのカイラス戦:左内自身は「女を足蹴にする男を諫め、骨のある戦人と手合わせを楽しんで峰打ちにした」という戦国の感覚であったが、倒されたカイラスからは「自分を完全に手玉に取った底知れぬ歴戦の猛者」と映り、目撃したウラカからは「窮地から救い出してくれた理想の強き男(祖父の再来)」として見做された。
- 港でのバルトロメオ戦:左内は「姑息な小細工ばかりで武の気概がない下郎を処分した」程度の認識であったが、バルトロメオにとっては「自らが築き上げた完璧な暗殺の舞台を理不尽な超常の武威で無に帰した絶対的な死神」として映っていた。
王位継承争い
異世界転生騒動記第3巻に描かれるサンファン王国の王位継承争いは、病死した王太子の後任を巡り、国を二分する政治闘争へと発展したエピソードとなる。
争いの発生背景
・王太子の病死 王位継承権第1位であった第一王子アブレーゴが疫病により急死した事実を受け、空位となった座を巡る政争が勃発する。
・国王の重病 現国王カルロス五世は長男の急逝による精神的打撃に加え、自身も重い病に侵されていたため、強力な統率力を発揮できない状況に陥る。
2人の王子と対立する派閥構造
・第二王子フランコ派(文官・大貴族勢力) 第二王妃エレーナの息子に該当する。宮廷内で強い支持基盤を持つ大貴族や文官勢力が後ろ盾となり、王位継承を推進する。
・第三王子ペードロ派(軍部・マジョルカ王国) 第一王妃マリアの息子に該当する。文官の台頭を警戒する軍務卿ら軍部勢力と、海軍同盟国であるマジョルカ王国が支持基盤を形成する。
王子たちの本音と当事者の乖離
・当事者間の良好な関係 兄弟仲は良好を保ち、ペードロは兄フランコを慕い、自らが王位に就く意思を示さない。フランコ自身も重責を嫌気し、互いに王位を望まない姿勢を根本に持つ。
・神輿としての政争 本人たちの意向とは無関係に、背後の文官勢力と軍部勢力による権益争いの象徴として担ぎ上げられた結果、対立は先鋭化の一途を辿る。
軍部の暗躍とバルドの介入による決着
・暗殺工作の激化 焦燥を募らせた軍務卿サンタクルズが非合法組織に命じ、フランコ排除の工作を企てる。
・バルドの助言とフランコの決意 幼馴染のテレサとフランコが心を通わせた際、バルドは退いても命を狙われ続ける現実を説き、守るべき者のために座を勝ち取る覚悟を促す。
・大海賊討伐と支持の獲得 バルドが避雷針の知識を供与して大海賊の討伐を支援し、軍部の新指導層や同盟国の支持をフランコ陣営へ引き寄せる成果を挙げる。
・事態の結末 暴走を重ねた第二王妃エレーナは退場を余儀なくされ、各方面の合意を得たフランコが正式に王太子へ就任し、弟ペードロを補佐役に迎える形で騒乱は終息を迎える。
まとめ
権益争いに巻き込まれた王子たちの思惑を越え、外部からの知恵と武功の介入によって対立構造が再編される。能力と覚悟を示した者が正当な支持を集め、兄弟の結束を保ったまま新たな国家体制へと移行を果たす。
暗殺計画
異世界転生騒動記第3巻のサンファン王国編では、王位継承争いに伴い2つの大規模な暗殺計画が引き起こされた。権益を巡る軍部や王妃の焦燥、暗殺機関の暗躍、そしてバルド一行の介入によって辿った結末の全貌を以下に整理する。
サンタクルズ軍務卿によるフランコ王子暗殺計画
・背景と動機 第一王子アブレーゴの病死後、文官や貴族勢力が推す第二王子フランコが優勢となった。これに対し、軍部の権益削減を恐れた軍務卿サンタクルズ侯爵が計画を主導した。軍部は第三王子ペードロを支持していたものの、政治工作が不得手であったため、武力行使によってフランコを排除しようと企てた。
・実行体制 サンファン王国海軍の秘密謀略機関であるアカイシ機関の長であり、殺傷そのものに愉悦を見出すバルトロメオ・デ・セルバンテスと、配下の暗殺者たちが動員された。
・襲撃の展開と防衛 フランコが王都の民衆の前で手押しポンプを披露した際、変装した刺客や屋根からの狙撃手による襲撃が実行された。テレサが身を挺して負傷しながらも王子を守り抜き、最後はバルドの内に眠る老将・岡左内定俊が覚醒した。左内は毒塗りの暗器や双剣を駆使する刺客を相手に立ち回り、襲撃を完全に阻止した。
第二王妃エレーナによるマリア王妃およびペードロ王子暗殺計画
・背景と動機 フランコがマウリシア王国の子爵令嬢テレサとの婚約を強行し、結ばれない場合は王位を放棄すると宣言したことで、母エレーナは激昂した。さらに、バルドらの活躍による海賊討伐を経て軍部やマジョルカ王国がフランコ支持へ傾き、追い詰められたエレーナは第一王妃マリアと第三王子ペードロの暗殺へと踏み切った。
・実行の経緯 軍部から見限られ新たな後ろ盾を求めていたバルトロメオが、偽名を用いてエレーナに接近し、将来の庇護を条件に暗殺の密約を取り交わした。
・襲撃の決行と失敗 カディス港でマリアを出迎えたペードロに対し、市民や屋台の店主、少女、射手などに扮した刺客が一斉に襲いかかった。しかし、ペードロへ迫ったバルトロメオの一撃を左内が迅速に遮断した。さらに元海巫女で高い資質を持つマリアが爆破魔法を展開し、救援勢力の参戦も重なって計画は瓦解した。
暗殺計画の結末と処分
・首謀者たちの末路 組織と後ろ盾を失ったバルトロメオは、バルドを仕留めることに固執して劇薬や毒針などの工作を仕掛けたが、左内により斬り伏せられて絶命した。
・エレーナの処分 王族暗殺未遂の事実が露見したエレーナは、醜聞の隠蔽とフランコらの配慮により死刑を免れ、実家のあるコルドバへの終身追放処分となった。
・軍部体制の刷新 暗殺を命じたサンタクルズ軍務卿は内密に責任を取る形で辞任し、後任として現実的な判断力を持つホセ・リベリアーノが就任したことで組織の正常化が進められた。
まとめ
王位継承の対立から生じた2つの暗殺計画は、実行を担った謀略機関の壊滅と首謀者たちの排除によって終息を迎えた。一連の事件を経て軍部と王宮の歪みが是正され、サンファン王国の政治体制は新たな安定期へと移行した。
海賊討伐
異世界転生騒動記第3巻に描かれるサンパニラデオン海賊討伐(アカバ海戦)は、バルドが前世の科学知識と戦国武将の武芸を駆使して、難攻不落の大海賊を攻略する屈指の山場を形成する。
討伐の対象と難攻不落の要因
・大海賊サンパニラデオン もともとはトリストヴィー王国の商船を護衛する海の傭兵集団だったが、内乱に伴う裏切りを経て独立し、周辺各国の脅威となる大海賊へと姿を変えた。頭目は元トリストヴィー海軍の士官で千里眼と恐れられる男カイラスが務める。
・天然の防壁アカバ 本拠地のアカバ近海は、一年中猛烈な落雷が発生する自然現象に見舞われる海域となり、高いマストを持つ軍船が接近できない天然の要塞を構築していた。
避雷針の導入と決戦の準備
・避雷針の提案 バルドは前世の知識を活かし、マストの先端から海中へ電流を逃す避雷針の仕組みを考案した。
・効果の実証と連合艦隊の結成 元海巫女で優れた資質を持つ第一王妃マリアの雷魔法を用いて避雷針の効果を証明し、マジョルカ海軍卿ウラカやサンファン海軍のホセ提督らとともに連合艦隊を編成して出撃に踏み切った。
アカバ海戦の展開と防衛側の奇策
・雷雲下の突入 連合艦隊は避雷針によって落雷被害を防ぎながらアカバ海域へ突入したものの、カイラス側も老朽船40隻を自沈させて即席の暗礁を造成する奇策で迎撃した。
・旗艦の座礁と白兵戦 暗礁に乗り上げて座礁したウラカの旗艦に対し、カイラス率いる精鋭部隊が斬り込みを敢行して激しい近接戦闘へと移行した。ウラカはカイラスへ一騎打ちを挑んだものの、相手の技量と実戦経験に圧倒されて敗れ、窮地に追い込まれた。
岡左内の介入と事態の収束
・老将の意識覚醒 戦局が逼迫する中、バルドの意識深層から戦国武将である岡左内定俊が目覚めて前線へ割り込んだ。
・傾斜した甲板での制圧 船体の損傷により傾いた足場をもろともせず、左内は卓越した武芸を発揮した。果敢に対峙するカイラスの気概を一家を背負う男として認めつつ、峰打ちの一撃をもって昏倒させた。
・降伏と組織の編入 意識を取り戻したカイラスは配下の助命を最優先に考えて退き鐘を鳴らし、全面降伏を選んだ。ウラカの働きかけによりカイラスは極刑を免れ、サンパニラデオンの勢力はマジョルカ王国の管理下に組み込まれる形で決着を見た。
まとめ
自然の猛威を利用した難所に対し、近代科学の原理を用いた技術導入と古流武術の冴えを組み合わせることで完全攻略を成し遂げた。敵対組織の壊滅にとどまらず戦力を傘下へ収める結末を導き、周辺海域の安全確保と国家間の連携強化を同時に確立する節目となった。
フランコとテレサの結婚
異世界転生騒動記第3巻のサンファン王国編におけるフランコとテレサの婚姻劇は、国家を揺るがす王位継承争いの渦中において成立した印象的なエピソードに位置づく。互いの本質を受け入れ合い、政治的な困難を乗り越えて独自の絆を結ぶに至った経緯を整理して記述する。
運命的な出会いと内面の適合
サンファン王国の第二王子フランコとマウリシア王国の子爵令嬢テレサの巡り合いは、双方の特殊な個性が合致する形で幕を開けた。
・フランコの内面と葛藤 宝塚の男装麗人を思わせる端麗な容姿を備える一方、内面には可憐に着飾って愛されたいという繊細な乙女心を秘めていた。しかし王族の義務を鑑み、本心を押し殺して生きるほかないと諦観していた。
・テレサの気質 騎士としての勇ましさを持ち合わせながら、女性的な美しさに強い関心を抱く型破りな性格を有していた。
・宮廷での邂逅 カディスの宮廷で対面した瞬間、テレサはその美貌に魅了され、フランコもまた自身を一人の姫のように情熱的な視線で見つめてくるテレサに対し、生まれて初めて胸の高鳴りを覚えた。
襲撃事件と深まる愛情
暗殺組織による急襲を契機として、二人の関係は決定的な進展を迎えた。
・命懸けの防衛 アカイシ機関の刺客による襲撃の際、テレサは負傷を厭わずに身を挺してフランコを護衛し続けた。
・真情の吐露と電撃発表 危機を脱したフランコはテレサを抱擁し、互いの素顔と真心を確かめ合って口づけを交わした。直後に宮廷へ向けて電撃的な結婚の意志を表明し、国王や重臣たちに大きな衝撃を与えた。
バルドの助言と権力闘争への覚悟
他国の下位貴族を正妃に迎える行為は、国内の支持母体や実母からの強い反発を招く政治的な難局を生み出した。
・安易な妥協への叱責 反対を受けるなら王位継承権を放棄して弟へ譲る姿勢を示したフランコに対し、親友のバルドは厳しく苦言を呈した。王位を退いても政敵からの標的であり続ける現実を説き、愛する者を守り抜くために権力を掌握する重要性を突きつけた。
・王太子の座の獲得 助言を受けて覚悟を固めたフランコは、強硬派の実母を退けて失脚に追い込み、軍部や同盟国マジョルカ王国の支持を取りまとめることで、正式に王太子の地位を勝ち取った。
密室における独自の挙式
公的には国王と王妃という建前を維持せざるを得ない二人は、出立の前夜にバルドを自室へ招いた。
・装飾の逆転 室内に現れたフランコは純白のドレスを身にまとい、テレサは白いタキシードを着用して対照的な姿を整えていた。
・誓約の承認 自らの真の役割を反映した結婚式の司祭役をバルドへ委ねた。バルドは困惑しつつも温かく見守り、生涯の伴侶としての誓約を正式に承認した。
後日談
後年における二人の軌跡と歴史的な評価は以下のように記録されている。
・家庭の繁栄 大陸内でも屈指の仲睦まじい夫婦として知られ、4男4女の子供に恵まれた。テレサ側が側室の設置を打診した際にも、フランコは生涯にわたり他の女性へ関心を示さなかった。
・後世への伝承 約300年の歳月を経たのち、歴史研究者により逆転夫妻と題した記録が出版され、大陸全土で大きな話題を呼ぶ結果となった。
まとめ
重圧に晒された王族と枠にとらわれない気質を持つ令嬢の結合は、権力闘争を勝ち抜く強い意志へと昇華された。外面的な役割と内面的な真実を巧みに両立させ、生涯にわたる強固な結束を保ち続けた。
バルドの外交任務
マウリシア王国の親善大使として派遣されたバルドは、政争や暗殺計画、難攻不落の海賊問題を解決し、両国間に強固な同盟関係を築き上げた。
任務の背景と目的
・若き親善大使としての起用 マウリシア王国史上でも例を見ない若さでサンファン王国への親善大使に任命された。
・恩義の提供と同盟強化 猛威を振るっていたコレラの治療法や手押しポンプなどの技術を提供してサンファン王国に恩を売り、両国の友好と同盟関係を強化することを目的とした。
・王位継承争いという危険な情勢 サンファン王国では第一王子アブレーゴが病死したため、第二王子フランコ(文官・大貴族派)と第三王子ペードロ(軍部・マジョルカ王国派)による過酷な後継者争いが勃発しており、提供技術が政争に利用されかねない状況となった。
外交工作と政争への介入
・国王カルロス五世との信頼関係の構築 王都カディスでカルロス五世と会見し、疫病の治療法はマウリシアからもたらされたという事実を伏せたい王家の意向を快諾することで、深い信頼と事実上の秘密同盟を獲得した。
・フランコ王子への覚悟の要求 争いを避けてテレサと平穏に生きようとしていたフランコに対し、王位を捨てても命は狙われ続けるため、愛する者と生きるなら戦って勝利せよと助言し、参謀として支えた。
・軍部の味方化 政治工作が不得手な軍部に対し、全天候型避雷針や壊血病予防法、紡績機などの海洋・経済技術を提示して知性派の海軍卿ホセ・リベリアーノに働きかけ、軍部の中立およびフランコ支持を引き出した。
暗殺計画の撃退と海賊討伐
・暗殺機関の強襲を阻止 軍務卿サンタクルズやアカイシ機関の長バルトロメオが放った刺客に対し、テレサの奮戦やバルドの内に眠る老将・岡左内の武芸によって刺客を排除した。
・サンパニラデオン討伐 マジョルカ王国海軍卿ウラカや第一王妃マリアと協力し、避雷針を導入して難攻不落のアカバの雷雲を攻略した。大海賊カイラス率いるサンパニラデオンを降伏させて傘下に収め、軍部とマジョルカ王国の支持を確定させた。
・バルトロメオの討伐 港で敢行されたバルトロメオの最終襲撃を左内の剣技とマリアの爆破魔法で粉砕し、首謀者を討ち取った。
任務の成果と帰結
・政治的決着と政権樹立 暗殺未遂を画策した第二王妃エレーナをコルドバへ追放し、旧軍務卿サンタクルズを辞任させてホセを新軍務卿に据えることで、フランコの立太子と安定政権を確立した。
・二人だけの結婚式の司祭 フランコとテレサの深い絆を見届け、親友および司祭役として二人の本当の結婚式の誓いを承認した。
・大成功の帰国 カルロス国王から称賛を受け、サンファン王国との強い盟約や制海権、貿易上の膨大な国益をマウリシア王国にもたらして帰国を果たした。
まとめ
バルドが主導した外交任務は、単なる技術供与にとどまらず、サンファン王国の内政不安や海難の脅威を根本から取り除く成果を生み出した。軍部や王室との強固な信頼を結び、二国の結束を盤石なものとしたこの遠征は、双方の国家関係に計り知れない利益をもたらした。
登場キャラクター
コルネリアス伯爵家・マウリシア使節団
バルド・コルネリアス(バルド・セヴァーン・コルネリアス)
マウリシア王国の親善大使を務める。前世の知識と戦国武将の武芸を併せ持つ。周囲の状況を見極めながら外交交渉と治安維持に当たる。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・嫡男。マウリシア王国・セヴァーン男爵。親善大使。
・物語内での具体的な行動や成果 サンファン王国へ大使として渡航する。国王カルロスと秘密裏に提携を結ぶ。手押しポンプや避雷針の技術を提示する。暗殺者の強襲を退けてフランコとペードロを保護する。カイラス率いる海賊船団の討伐を支援する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 サンファン王国との協力関係を強固にする。フランコとテレサの誓約に司祭役として立ち会う。
マゴット・コルネリアス(マルグリット)
バルドの母親を務める。かつて「銀光」の二つ名で知られた元傭兵に当たる。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・伯爵夫人。元傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果 過去にマルマラ海でロドリゲスの命を救う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 元傭兵として他国の武官にも名を知られる。
イグニス・コルネリアス
バルドの父親を務める。コルネリアス伯爵家の当主として領内を統治する。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・当主。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 マゴットの様子を気にかける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 当主として領地を支える。
セイルーン
コルネリアス伯爵家に仕える侍女を務める。バルドの幼馴染に当たる。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果 王都でバルドを見送る。バルドと恋人としての関係を深める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドと将来を約束する。
ブルックス・アーバイン
マウリシア王立騎士学校の生徒を務める。バルドの友人として使節団に同行する。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王立騎士学校生徒。マウリシア使節団員。
・物語内での具体的な行動や成果 サンファン王国へ同行する。王都での襲撃時にバルドとともに戦う。ペードロの護衛を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの友人として行動をともにする。
テレサ・ブラッドフォード
ブラッドフォード子爵家の令嬢を務める。武芸に優れ、男装の騎士として振る舞う。
・所属組織、地位や役職 ブラッドフォード子爵家・令嬢。マウリシア使節団員。
・物語内での具体的な行動や成果 使節団としてサンファン王国へ渡航する。フランコと出会い深く想いを寄せる。暗殺者の襲撃から身を挺してフランコを守る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 フランコと婚約を結ぶ。サンファン王国の将来の王太子妃となる。
オリバー
マウリシア王国の宮廷書記官を務める。バルドの補佐として使節団に同行する。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・宮廷書記官。マウリシア使節団員。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドへサンファン王国の政治情勢を説明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 使節団の事務と補佐を担当する。
マウリシア王国(王室・貴族・関係者)
ウェルキン五世
マウリシア王国の国王を務める。政治的駆け引きに優れる。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドをサンファン王国へ親善大使として派遣する。テレサを養女として迎える手筈を整える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 国際外交を活発に進める。
レイチェル
マウリシア王国の第二王女を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果 過去にコレラから回復を果たす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王室の王女として過ごす。
ウィリアム
マウリシア王国の第四王子を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・第四王子。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの言動に関連して言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王室の一員として過ごす。
マティス・ブラッドフォード
ブラッドフォード子爵家の当主を務める。テレサの父親に当たる。
・所属組織、地位や役職 ブラッドフォード子爵家・当主。子爵。元蒼炎騎士団副団長。
・物語内での具体的な行動や成果 国境で使節団を出迎える。テレサの婚約決定を大いに喜ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 かつて他国へ武勇を轟かせる。
セリーナ・サバラン
サバラン商会の会頭を務める。犬耳族の女性として事業を率いる。
・所属組織、地位や役職 サバラン商会・会頭。犬耳族。
・物語内での具体的な行動や成果 王都でバルドを見送る。バルドへ自らのハンカチを渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドと将来を約束する。
ロロナ
サバラン商会の番頭を務める。
・所属組織、地位や役職 サバラン商会・番頭。
・物語内での具体的な行動や成果 容姿の比較対象として言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 商会の実務を統括する。
サンファン王国(王室・政府・貴族)
カルロス五世
サンファン王国の国王を務める。海洋国家としての発展を支える。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドと会見して協力関係を約束する。病を隠しながら後継者問題に対応する。フランコの立太子を認める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 重い病を抱えながら政務を執る。
アブレーゴ
サンファン王国の元王太子を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・第一王子(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 娼館でコレラに感染して病死する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 死により後継者争いを引き起こす。
フランコ(フランコ・コルドバ・デ・サンファン)
サンファン王国の第二王子を務める。女性的な美貌と優れた資質を保持する。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・第二王子。サンファン王国・王太子。
・物語内での具体的な行動や成果 民衆の前で手押しポンプを披露する。テレサと想いを注ぎ合い婚約を結ぶ。バルドの助言を受けて自ら立太子へ動く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 貴族と軍部の支持を得て正式に王太子に就任する。
ペードロ(ペードロ・マジョルカ・デ・サンファン)
サンファン王国の第三王子を務める。素直で兄フランコを慕う。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・第三王子。
・物語内での具体的な行動や成果 暗殺者に狙われるが左内らに救われる。フランコの立太子を心から祝福する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 将来的にフランコの右腕となる立場を決める。
エレーナ
サンファン王国の第二王妃を務める。フランコの母親に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・第二王妃。
・物語内での具体的な行動や成果 フランコの即位のために陰謀を巡らせる。バルトロメオへマリアとペードロの暗殺を依頼する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 暗殺未遂の発覚により実家コルドバへの追放処分を受ける。
マリア
サンファン王国の第一王妃を務める。マジョルカ王国出身の元海巫女に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・第一王妃。
・物語内での具体的な行動や成果 すぐれた雷魔法で避雷針の実証実験を行う。港の襲撃時に巨大な爆発魔法で刺客を退ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高い魔法能力で王家を支える。
ステファン・デ・コルドバ
コルドバ公爵家の当主を務める。エレーナの父親に当たる。
・所属組織、地位や役職 コルドバ公爵家・当主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果 内乱のリスクを避けて多数派工作を志向する。エレーナの暴走を抑えようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王国貴族の重鎮として影響力を持つ。
ホアン
サンファン王国の前宰相を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・宰相(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 コレラに感染して没する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍部出身の政治家として存在感を示した。
ロドリゲス・デ・ベガ
マラガの太守を務める。かつて武官として海戦を経験する。
・所属組織、地位や役職 マラガ太守。
・物語内での具体的な行動や成果 使節団を出迎える。バルドへ国内の政治情勢を説明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 過去にマゴットへ命を救われた縁を持つ。
セパタ・サルミエント
王宮警護隊の騎士を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・王宮警護隊騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 使節団を王宮内へ案内する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 上級貴族出身の精鋭騎士として働く。
ディエゴ・モリアス
サンファン王国海軍の英雄を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍提督(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 数々の海戦で勝利を収める。船上で病を発して亡くなる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 海軍の求心力として名を残す。
サンファン王国軍・裏社会
サンタクルズ
サンファン王国の軍務卿を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・軍務卿。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 ペードロの即位を狙いバルトロメオへフランコ暗殺を命じる。計画失敗後に暗殺命令の露見を恐れて苦悩する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 事件の責任を取る形で辞任する。後任にホセを推薦する。
ホセ・リベリアーノ
サンファン王国海軍の提督を務める。「レパントの悪魔」の二つ名を持つ。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍卿。サンファン王国・軍務卿。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドと会談してフランコ支持を決める。サンパニラデオン討伐作戦で第一艦隊を指揮する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 辞任したサンタクルズの後任として軍務卿へ昇進する。
バルトロメオ・デ・セルバンテス(アレス・デ・ピエラゴス男爵)
アカイシ機関の長を務める。変装と暗殺に長ける。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍・アカイシ機関長。
・物語内での具体的な行動や成果 サンタクルズの命令でフランコ暗殺を狙う。エレーナからマリアとペードロの暗殺を引き受ける。港で大規模な強襲を実行して左内に討ち取られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 非合法工作の責任者として暗躍する。
カシム
王都カディスの情報屋を務める。
・所属組織、地位や役職 情報屋。
・物語内での具体的な行動や成果 エレーナが殺し屋を探している情報をバルトロメオへ売る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 裏社会の情報仲介を行う。
マジョルカ王国
ウラカ・デ・パルマ
マジョルカ王国海軍卿を務める。「漆黒の暴風」の二つ名で知られる。
・所属組織、地位や役職 マジョルカ王国海軍卿。女伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 避雷針を装備してサンパニラデオン討伐に出撃する。カイラスとの一騎打ちで追いつめられる。バルドに助けられて恋心を抱く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 21歳で海軍卿へ就任する。高い艦隊指揮能力を持つ。
サンチョス・デ・パルマ
ウラカの父親を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 パルマ伯爵(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 病により没する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ウラカへ伯爵家を残す。
カムセン
ウラカの祖父を務める。
・所属組織、地位や役職 マジョルカ王国貴族。
・物語内での具体的な行動や成果 幼いウラカを甘やかして育てる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ウラカの好みに影響を与える。
オバル
マジョルカ王国海軍の副船長を務める。
・所属組織、地位や役職 マジョルカ王国海軍・副船長(ラ・マンチャ号副長)。
・物語内での具体的な行動や成果 ラ・マンチャ号の指揮や戦闘補佐を担当する。避雷針の導入に慎重な姿勢を示す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ウラカの側近として戦闘を支える。
サンパニラデオン(大海賊)
カイラス
サンパニラデオンの大頭目を務める。「千里眼」の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職 サンパニラデオン・大頭目。元トリストヴィー王国海軍士官。
・物語内での具体的な行動や成果 老朽船を沈めて即席の暗礁を作る。ウラカを暗礁戦術で倒す。左内と手合わせて敗北を認め降伏を宣言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 降伏後にマジョルカ王国の傘下に入る。
カズル
サンパニラデオンの頭目を務める。
・所属組織、地位や役職 サンパニラデオン・序列三位頭目。
・物語内での具体的な行動や成果 操船技術を活かしてホセ率いる第一艦隊を引きつける。限界まで時間稼ぎの戦闘を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 カイラスの右腕として部隊を指揮する。
モルガン
サンパニラデオンのかつての大頭目を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 サンパニラデオン・大頭目(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 ダモス家の二代目の裏切りに遭い艦隊とともに討ち取られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 サンパニラデオンの独立のきっかけとなる。
トルパ
モルガンに飼われていた愛鷹に当たる。
・所属組織、地位や役職 モルガンの愛鷹。
・物語内での具体的な行動や成果 モルガンの最期とダモス家の裏切りを伝える手紙をカイラスへ届ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 真相をカイラスへ知らせる役割を果たす。
トリストヴィー公国関連人物
ダモス家の二代目
ダモス商会の会頭を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 ダモス商会・会頭(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 大公派へ寝返るため護衛のサンパニラデオンを裏切る。激怒したカイラスにより一族とともに討ち取られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 裏切りによりサンパニラデオンの海賊化を引き起こす。
バルドの前世・地球の人物・歴史的言及人物
岡雅晴
現代日本の高校生を務めた前世の人格に当たる。
・所属組織、地位や役職 現代日本の高校生(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 知識からマラカイボの灯台や避雷針、ジェニー紡績機の情報をバルドへ与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの思考内で技術的知見の土台となる。
岡左内定俊
戦国時代を生きた武将を務めた前世の人格に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの身に危険が迫った際に意識を表へ出す。刺客やバルトロメオを剣技で無力化する。カイラスを峰打ちで倒す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの武芸と戦術眼の土台となる。
上泉主水泰綱
戦国時代を生きた武将に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将・剣客(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上杉家に仕えて長谷堂城の戦い周辺で討死する。人を斬る剣の使い手として左内の回想に登場する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 上泉信綱の孫として言及される。
上泉信綱
日本の戦国時代に存在した剣豪に当たる。
・所属組織、地位や役職 剣豪・新陰流創始者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 新陰流を創始して多くの弟子を育てる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 伝説の剣聖として言及される。
丸目蔵人
戦国時代の剣豪を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 武芸者・タイ捨流創始者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上泉信綱に学びタイ捨流を九州へ伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 信綱の弟子として名が挙がる。
柳生石舟斎
戦国時代の剣豪を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 武芸者・柳生新陰流創始者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上泉信綱から新陰流の印可を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新陰流の正統として名が挙がる。
疋田文五郎
戦国時代の剣豪を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 武芸者・疋田陰流創始者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上泉信綱の弟子として各地を巡る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 剣豪の一人として言及される。
豊臣秀吉
日本の戦国時代から安土桃山時代の天下人を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 関白・太閤(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 小田原征伐を行い後北条氏を滅ぼす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 歴史的背景の言及に登場する。
上杉景勝
戦国時代の大名を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 上杉家当主・五大老(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 岡左内や上泉主水を召し抱える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の主君として回想される。
車丹波
戦国時代の武将を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上杉家に仕える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内と同時代の武将として言及される。
才道二
戦国時代の武将を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上杉家に仕える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内と同時代の武将として言及される。
反町大膳
戦国時代の武将を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 上杉家に仕える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内と同時代の武将として言及される。
前田慶次郎
戦国時代の武将を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 戦国武将・傾奇者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 自由苛烈に生きる姿で知られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の回想内で生き様の例として登場する。
蒲生氏郷
戦国時代の大名を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 蒲生家当主(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 岡左内を召し抱えて重用する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の主君として回想される。
織田信長
戦国時代の大名を務めた人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 織田家当主(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 天下統一を推し進める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の回想で合理的な人物として示される。
源義経
日本の平安時代末期から鎌倉時代初期の武将に当たる。
・所属組織、地位や役職 源氏の武将(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 壇ノ浦の戦いで潮の流れを利用して平氏を破る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 戦術の例えとして言及される。
ジェームズ・ハーグリーブス
地球の18世紀に存在した発明家に当たる。
・所属組織、地位や役職 発明家(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 ジェニー紡績機を発明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 技術史の文脈で言及される。
ベンジャミン・フランクリン
地球の18世紀に存在した政治家・科学者に当たる。
・所属組織、地位や役職 科学者・政治家(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 凧揚げの実験により雷が電気であることを証明する。避雷針を発明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 避雷針の解説文脈で言及される。
ファウスト博士
地球の戯曲作品に登場する人物に当たる。
・所属組織、地位や役職 架空の学者。
・物語内での具体的な行動や成果 悪魔メフィストフェレスと契約を結ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの笑顔の比喩として名が挙がる。
メフィストフェレス
地球の戯曲作品に登場する悪魔に当たる。
・所属組織、地位や役職 架空の悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果 ファウスト博士と契約を交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの悪魔的微笑の比喩として名が挙がる。
集団
アカイシ機関(サンファン王国海軍秘密謀略機関)
サンファン王国海軍に所属する非公然工作組織を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍軍務卿直属謀略機関。
・物語内での具体的な行動や成果 暗殺、ゲリラ戦、麻薬取引、密貿易などを担当する。バルトロメオのもとで強襲を実行する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルトロメオの敗北と討滅により解体・再編へ向かう。
人形師(アカイシ機関精鋭暗殺者集団)
アカイシ機関の中でも精鋭とされる暗殺者たちの集団を務める。
・所属組織、地位や役職 アカイシ機関・精鋭暗殺部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 フランコ暗殺作戦で先陣を切る。テレサを負傷させるが左内により無力化される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 機関の最高戦力として扱われる。
黒シャチ(カイラス直属乗船襲撃専門部隊)
カイラスの直属で乗船戦闘を専門とする部隊を務める。
・所属組織、地位や役職 サンパニラデオン・精鋭海兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 ラ・マンチャ号へ止め綱を打って乗り込む。強固な連携でマジョルカ海兵を押す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 サンパニラデオン屈指の白兵戦力として機能する。
サンファン王国海軍第一艦隊
サンファン王国海軍の中核をなす主力艦隊を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍・第一艦隊。
・物語内での具体的な行動や成果 ホセ提督に率いられてアカバへ出撃する。カズル率いる海賊艦隊を包囲・制圧する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王国の最大海上戦力として機能する。
マジョルカ王国海軍(連合艦隊)
マジョルカ王国の艦隊を務める。ウラカが率いる。
・所属組織、地位や役職 マジョルカ王国海軍。
・物語内での具体的な行動や成果 避雷針を装備してアカバに突入する。サンパニラデオンと激しい海戦を展開する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 制海権の確保に大きな影響力を持つ。
トリストヴィー公国三派(大公派、王党派、商人派)
トリストヴィー公国の内乱で対立する三分派を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー公国内部勢力。
・物語内での具体的な行動や成果 独立したサンパニラデオンの取り込みを図り争う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 公国の衰退と難民流出の原因となる。
フランコ派(文官・大貴族勢力)
フランコ王子の即位を推進する勢力を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国内部派閥。
・物語内での具体的な行動や成果 コルドバ公爵を中心に貴族や文官を結集する。軍部の影響力削減を目指す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 フランコの立太子とともに政権の基盤となる。
ペードロ派(軍部・マジョルカ王国勢力)
ペードロ王子の即位を支持する勢力を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国内部派閥。
・物語内での具体的な行動や成果 軍務卿サンタクルズを中心に軍の権益を守ろうとする。マジョルカ王国との連携を期待する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍部の改編や同盟関係の整理に伴いフランコ支持へ吸収される。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
展開まとめ
第一章 王位を継ぐ者
サンファン王国への大使就任
バルド・コルネリアスは、マウリシア王国の親善大使として南方の海洋国家サンファン王国へ向かった。同行者はブルックス、テレサ、紅炎騎士団の騎士、宮廷書記官オリバーらであった。
サンファン王国では王位継承権第一位だった第一王子アブレーゴが疫病で死亡し、第二王妃エレーナの息子フランコと、第一王妃マリアの息子ペードロのどちらを後継者とするかで政争が激化していた。バルドが提供する疫病対策や手押しポンプの技術も王家の権威回復に利用できるため、彼は否応なく後継者争いへ関わる立場となった。
ロドリゲスとマゴットの縁
国境を越えたバルド一行は、マラガの太守ロドリゲス・デ・ベガに迎えられた。ロドリゲスはかつて海賊との戦いで窮地に陥った際、バルドの母マゴットに救われた過去を持っていた。
ロドリゲスは恩人の息子であるバルドへ王位継承争いの実情を明かした。能力ではフランコがペードロを上回っているものの、当のフランコ本人には王位への執着が薄かった。一方でペードロには軍部と母マリアの故国マジョルカ王国が付いており、単純な継承順位だけでは決着しない状況だった。
カルロスとの会見
王都カディスへ到着したバルドは、国王カルロス五世と会見した。疫病はバルドから伝えられた対処法によって収束へ向かっていたが、アブレーゴが感染拡大に関わっていたため、カルロスは治療法がマウリシアからもたらされた事実を伏せたいと求めた。
バルドはその要望を受け入れ、手押しポンプなどの技術提供にも応じた。カルロスは恩を忘れないと約束し、両国の間には事実上の強い協力関係が成立した。
その席でバルドは第二王子フランコと第三王子ペードロに出会った。フランコは女性と見紛うほど美しい容姿を持つ少年であり、テレサは一目で彼に強く惹かれた。一方のペードロは素直で人懐こく、兄フランコへの敵意を持っているようには見えなかった。
軍部の危機感
軍務卿サンタクルズ侯爵は、フランコを支持する文官と貴族が勢力を増すことで、軍部の権益が削られることを恐れていた。
軍部はペードロを王太子に据えることで影響力を維持しようとしていたが、政治工作を不得手としていた。追い詰められたサンタクルズは、秘密諜報部門アカイシ機関の長バルトロメオ・デ・セルバンテスを呼び、フランコ暗殺を命じた。
バルトロメオは暗殺や誘拐、麻薬取引などを担ってきた男であり、人の不幸そのものを愉悦とする性質を持っていた。彼は王子という大物を殺せることを喜び、暗殺計画を開始した。
フランコとテレサ
フランコはバルドの宿舎を訪れ、手押しポンプ設置への同行を申し出た。テレサは積極的に彼へ接近し、フランコもその好意を嫌がるどころか、次第に意識するようになった。
翌日、民衆の前で手押しポンプを設置すると、簡単に水を汲める仕組みに人々は歓声を上げた。フランコも王家から一輪車などを貸し出すことを説明し、民衆から歓迎された。
しかし周囲には暗殺者が潜んでいた。狙撃手がフランコを狙った瞬間、テレサが髪へ花を飾ったためフランコは照れてその場を離れ、偶然にも矢を回避した。
奇襲に失敗した刺客たちは一斉に襲撃を開始した。バルドとブルックスが暗殺者を倒す一方、フランコを追ったテレサはアカイシ機関屈指の刺客と対峙した。
テレサの騎士道
テレサは技量で上回る刺客を相手に傷を増やしながらも、フランコを守り続けた。フランコは自分の命を差し出すからテレサを助けてほしいと懇願したが、刺客は聞き入れなかった。
テレサが重傷を負ったところへ、バルドの中で左内が表に出た。
左内は相手が人を殺すことを楽しむ堕ちた人斬りだと見抜き、その剣を卑しいものと断じた。毒を塗った投擲武器すら容易に打ち返し、刺客を圧倒して戦闘不能にした。
救われたフランコはテレサを抱きしめ、二人は互いの想いを認めて口づけを交わした。フランコは女性として美しく着飾り、男性から愛される生き方を密かに望んでおり、男のように凛々しく振る舞うテレサはその理想の相手だった。
王位を望まない兄弟
暗殺未遂を知ったペードロは、フランコを本気で案じて駆けつけた。彼は自分ではなくフランコこそ王になるべきだと考えていた。
ところがフランコもまた王位を望んでいなかった。本人同士に争う意思がないにもかかわらず、フランコの背後には文官と貴族、ペードロの背後には軍部が集まり、二人を政争の神輿として利用していたのである。
フランコはテレサと添い遂げられれば王位など不要だと語り、ペードロも国王になりたくないと打ち明けた。しかし二人の意思とは無関係に、後継争いはすでに国家を二分する問題へ発展していた。
第二章 悪魔との契約
漆黒の暴風ウラカ
フランコ暗殺未遂をペードロ派の仕業と決めつけたエレーナは、第一王妃マリアを責めようとした。だがマリアの部屋には、マジョルカ王国海軍卿ウラカ・デ・パルマがいた。
ウラカは「漆黒の暴風」と恐れられる名将であり、かつて侵攻してきたトリストヴィー艦隊を壊滅させた人物だった。エレーナは彼女に圧倒され、何もできずに引き下がった。
フランコとテレサの婚約
暗殺未遂の直後、フランコとテレサは突然結婚すると宣言した。マウリシア王国の子爵令嬢を王妃として迎えることは、国内貴族を後ろ盾とするフランコにとって政治的には大きな危険を伴った。
母エレーナは激怒したが、フランコはテレサを侮辱するなら王位継承権そのものを返上すると言い切った。王位に執着するエレーナは息子の言葉を理解できず、最後には引き下がるしかなかった。
戦う覚悟
バルドはフランコへ、王位を捨てれば争いから逃れられるという考えは甘いと指摘した。
たとえペードロが即位しても、軍部は将来の火種となるフランコやその子供を放置しない可能性があった。逆にフランコを支持する貴族たちが、テレサを排除して彼を王位へ戻そうとすることも考えられた。
フランコは、テレサとの平穏な生活を守るためにも後継争いそのものに勝たなければならないと悟った。
バルドは王国とテレサの双方を望むなら手を汚してでも戦えるかと問い、フランコは覚悟を決めた。こうしてバルドは彼へ協力することになり、最初にエレーナとその父コルドバ公爵を利用して貴族勢力を掌握する方針を示した。
ホセへの接触
一方、フランコ暗殺を命じたサンタクルズは失敗に怯え、追い詰められていた。軍部内部でも海軍卿ホセ・リベリアーノは、暗殺やクーデターにまで進みかねない軍務卿の姿勢を危険視していた。
バルドはホセへ接触し、フランコが軍縮を望んでいるという認識は誤りであり、むしろ海軍の拡張を必要としていると説明した。
サンファン王国の海運力強化は、交易相手であるマウリシア王国にも利益をもたらす。バルドは両国の国益を結び付け、ホセ個人からフランコへの支持を引き出そうとした。
カルロスの病と後継者
カルロスは長男アブレーゴの死だけで衰弱していたのではなく、自身も重い病に侵されていた。残された時間が少ないと悟りながらも、フランコとペードロのどちらを王太子にするか決められずにいた。
能力ではフランコが優れていたが、カルロス自身は第一王妃マリアの子であるペードロを王位に就けたい気持ちも持っていた。
そのカルロスに対し、フランコは自らの意思で後継争いを終わらせるために動き始めた。テレサを王妃に迎えることも含め、自分の望む未来を得るため、受け身で生きる姿勢を捨てたのである。
サンパニラデオン討伐
フランコの立場を固めるため、バルドは軍部とマジョルカ王国を味方につける策を進めた。
両者が抱える共通の問題が、大海賊集団サンパニラデオンだった。もとはトリストヴィー王国の商船を護衛する海上傭兵だったが、内乱によって報酬を失い、海賊化して周辺諸国の船を襲っていた。
ウラカはサンパニラデオンを率いるカイラスに過去の戦いで苦杯をなめており、強い対抗心を抱いていた。
さらに海賊の本拠地アカバは雷の多発地帯であり、それが天然の防壁となっていた。しかしバルドは避雷針を使えば雷を防げると説明した。
ウラカはバルドの知識を認めつつも、完全に信用するには船の上で実力を示せと要求した。
第三章 漆黒の暴風
海上のバルド
バルドはウラカの旗艦ラ・マンチャ号に乗り、海上での戦いを経験した。
ウラカは船の性能と風を自在に利用し、敵船を圧倒した。バルドも海賊との白兵戦では高い戦闘能力を発揮し、ウラカは彼を認めるようになった。
一方、海賊王カイラスは元トリストヴィー海軍の優秀な軍人で、「千里眼」と呼ばれるほど卓越した観察力と操船能力を持っていた。サンパニラデオンが単なる無法者の集団ではなく、正規軍に匹敵する海上戦力であることが明らかになった。
避雷針とマリア
バルドはアカバの雷を攻略するため避雷針を製作した。その試験には第一王妃マリアも加わった。
マリアは結婚前、マジョルカで「海神の申し子」と呼ばれた天才魔法士であり、海巫女を務めていた。普段のおとなしい王妃の姿とは異なり、故郷ではウラカを殴って黙らせるほど気の強い一面も見せた。
避雷針によって落雷を船から安全に逃がせることが実証され、アカバ攻略の最大の障害が取り除かれた。
連合艦隊の出撃
ホセ率いるサンファン王国艦隊も合流し、ウラカ率いるマジョルカ艦隊との連合軍が成立した。
バルドがサンパニラデオンを討伐する策を実現したことで、フランコは軍部とマジョルカの双方へ大きな利益を与えられる立場となった。
一方のカイラスも連合艦隊の接近を察知していた。サンパニラデオンには老朽化した艦艇が多く、長期的な存続が難しくなっていたため、彼はこの戦いを組織の未来を懸けた決戦と捉えた。
アカバ海戦
アカバの内海で連合艦隊とサンパニラデオンが激突した。
ホセは数と合理的な艦隊運用によって敵艦隊を追い詰めたが、カイラスは地形と操船技術を利用し、ウラカのラ・マンチャ号を座礁させることに成功した。
サンパニラデオンの精鋭海兵「黒シャチ」がラ・マンチャ号へ殺到し、船上は激しい白兵戦となった。
ウラカはカイラスと直接戦った。速度と技量を駆使して攻めたものの、カイラスは彼女を上回る経験と観察力を持ち、ついにウラカを打ち倒した。
左内とカイラス
ウラカへ止めを刺そうとしたカイラスの前に、左内が表へ出たバルドが立ちはだかった。
左内はカイラスを優れた戦人と認め、真正面から戦った。船が傾く状況まで利用しようとしたカイラスだったが、死地を生き続けてきた左内には通用しなかった。
それでも逃げずに戦い続けるカイラスの姿を、左内は男として認めた。最後は峰打ちで意識を奪われながらも、カイラスはサンパニラデオンの仲間を救うため降伏を宣言した。
サンパニラデオンはマジョルカ王国の指揮下へ入ることになり、カイラス自身もウラカの強い反対によって処刑を免れた。ウラカは個人としてカイラスに負けたことを納得できず、再戦を望んでいた。
第四章 闇の終わり
ウラカの恋心
マジョルカへ凱旋したウラカは、戦いで自分を守ったバルドを意識するようになっていた。
祝賀会の夜、酔ったウラカはバルドの部屋を訪れ、自分の想いをぶつけた。バルドにはすでにセイルーンとセリーナがおり、さらにウラカも領主として国を離れられないため、簡単に結ばれる関係ではなかった。
それでもウラカは諦めず、バルドとの子供まで欲しいと口にした。翌朝、自分がバルドと同じ寝台で眠っていたことに気付くと、激しく動揺して逃げ出した。
その現場をマリアに見られたことで、バルドはさらに面倒な立場へ追い込まれた。
エレーナとバルトロメオ
サンパニラデオン討伐によって軍部とマジョルカがフランコへ接近したことを知らないエレーナは、自分の息子が王位を失うと焦り、マリアとペードロを殺すための暗殺者を探し始めた。
同じころ、軍部から切り捨てられようとしていたバルトロメオも新しい後ろ盾を求めていた。
両者の利害は一致した。バルトロメオは偽名を使ってエレーナへ接近し、報酬ではなく将来の庇護を求める代わりに、マリアとペードロの暗殺を引き受けた。
港の襲撃
連合艦隊がカディスへ帰還すると、ペードロが母マリアを迎えに港へ現れた。
バルドは港に漂う不自然な気配を察知し、直後に市民へ変装したアカイシ機関の暗殺者たちが一斉に襲撃した。
子供や屋台の主人まで暗殺者として潜伏していたため、護衛の騎士たちは混乱した。その隙を突き、バルトロメオがペードロへ迫った。
しかし左内が攻撃を防ぎ、ペードロを救った。
さらに、かつて海巫女だったマリアが圧倒的な魔力を解放し、周囲の暗殺者を吹き飛ばした。ウラカとオバルも加わったことで、バルトロメオの計画は完全に崩れた。
バルトロメオの最期
組織も後ろ盾も失ったバルトロメオは、最後にバルドを倒すことへ執着した。
毒針、目くらまし、劇薬など、暗殺者として培った手段を惜しみなく使ったが、左内にとっては取るに足らない小細工だった。
左内はバルトロメオを武人として認めず、斬り捨てるべき下郎として扱った。
バルトロメオは自分が何をされたのか理解する間もなく一刀で斬られ、これまで多くの人間を送り込んできた死の世界へ自らも送られた。
エレーナの追放
アカイシ機関の壊滅によって、エレーナがマリアとペードロの暗殺を依頼した事実も明らかになった。
一方で軍部はフランコ支持へ転じ、ほとんど反対なく彼の立太子が決定した。
浮かれて晩餐会の衣装を選んでいたエレーナのもとへフランコが現れ、彼女へ王都から去るよう命じた。
王族暗殺未遂は本来死罪だった。しかし王家の醜聞を公表できない事情もあり、カルロスとフランコは最後の温情として、エレーナをコルドバへ追放することにした。
自分だけは特別であると信じていたエレーナも、初めて自らの死を現実のものとして恐れ、処分を受け入れるしかなかった。
フランコの立太子
王位継承問題が決着し、フランコの立太子を祝う晩餐会が開かれた。
サンタクルズはフランコ暗殺を命じた責任を表に出さぬまま辞任し、後任の軍務卿にはホセが就任した。
フランコは貴族と軍部の双方から支持を得て、マジョルカ王国との関係も保った。さらにテレサとの婚姻によってマウリシア王国との結び付きも深まることになった。
フランコは、ここまでの状況を作った最大の功労者としてバルドへ深く感謝した。
二人だけの結婚式
その夜、バルドはフランコの部屋へ呼ばれた。
そこには純白のウェディングドレスを着たフランコと、白いタキシード姿のテレサが待っていた。
公の場ではフランコが国王、テレサが王妃として振る舞わなければならない。しかし本当の二人は、夫として生きるテレサと妻として生きるフランコであった。
二人はその本当の自分たちの結婚を、親友であるバルドだけには見届けてほしいと望んだ。
バルドは司祭役を引き受け、テレサは夫としてフランコを生涯愛すると誓い、フランコは妻としてテレサを生涯愛すると誓った。
バルドは二人の誓約を認め、幼馴染をよろしく頼むとフランコへ託した。
サンファン王国からの帰還
一月近い滞在を終え、バルドたちはマウリシアへの帰路についた。
カルロスは、バルドがサンファンを訪れたことは百年の幸運にも勝ると感謝した。テレサとフランコは別れを惜しみ、再会を誓った。
国境を越えた一行を待っていたのは、テレサの父マティスだった。
バルドは娘を他国の王太子へ嫁がせたことを責められると覚悟したが、マティスは逆に、娘の結婚相手を見つけてくれたと感激してバルドへ抱きついた。
こうして大使としての任務は成功し、テレサは未来の王太子妃となり、バルドはサンファン王国との強固な関係を築いて帰国した。
一方、マジョルカに残ったウラカはバルドへの恋を諦めきれず、再び彼を追いかけようと騒ぎを起こしていた。
Share this content:


コメント