- 荒んでいたアスナがキリトと出会う。本編よりしっくりくる二人の馴れ初め
- 500ページ超えの大ボリューム。なかなか読み終わらないと思ったら……
- 初期のアスナが想像以上に荒んでいた
- キリトとの出会い。最初から優しいわけではない距離感がよい
- 黒パンにクリームを塗るだけで、アスナが変わり始める
- お風呂に入るアスナ。日常を取り戻すことの大切さ
- 第一層攻略会議。プレイヤー同士の不信感が生々しい
- ディアベルの戦死。ベータテストの知識が通用しない怖さ
- キリトが《ビーター》を名乗る理由。不器用すぎる自己犠牲
- 第二層で再会する二人。もう自然に一緒に行動している
- アスナの《ウインドフルーレ》消失。武器強化詐欺が怖い
- キリトが詐欺の仕組みを見破る。戦闘以外でも頼りになる
- ネズハは単なる悪人ではなかった。それでも詐欺は詐欺
- ネズハがチャクラムで再出発。役割を見つける展開がよい
- 第二層ボス戦。まさか本当のボスが別にいるとは
- 本編第1巻とは違う馴れ初め。でも、こちらのほうがしっくりくる
- キリトとアスナは、互いに足りないものを補い合っている
- アスナが「生きる」ことを選び直していく物語
- まとめ|500ページ以上あっても、二人の馴れ初めを読む価値があった
物語の概要
■ 作品概要
デスゲームと化したVRMMORPG《ソードアート・オンライン》(SAO)開始から約一か月が経過して二千人の死者が出ながらも第一層すら突破できず、プレイヤーたちの間に絶望が漂う中、キリトは第一層迷宮区で自暴自棄に戦う細剣使いの少女アスナと遭遇して保護する。
騎士ディアベルが主導する第一層ボス攻略隊への参加をきっかけに状況が動き出す。
ボス戦での想定外の事態によりディアベルが戦死した際、キリトは攻略隊の瓦解を防ぐため自ら悪名高い《ビーター》を名乗って憎悪を引き受けつつ、アスナやエギルらと連携して第一層フロアボスを撃破する。
第二層へ進出後、キリトはアスナと再会して行動を共にし、鍛冶屋ネズハによる武器強化詐欺の手口と背景を暴く。
ネズハの改心と協力を得て、第二層フロアボス戦で発生した想定外の危機を乗り越えて死者を一人も出さずに勝利し、キリトとアスナが第三層へ通じる扉へと足を踏み出すところまで状況が進む。
■ 主要キャラクター
キリト
- 立場・所属:元ベータテスターのソロプレイヤー。片手剣使い。
- 主人公との関係:本人。
- この巻での主な役割:第一層および第二層フロアボス攻略戦における主戦力・指揮支援、ならびに武器強化詐欺の真相解明。
- この巻で起きた重要な変化や行動:迷宮区で力尽きかけたアスナを救出し、第一層ボス戦でディアベルの戦死後にボスを撃破した。元テスターへの敵意を一身に背負うため《ビーター》を名乗り、第二層ではネズハの強化詐欺を暴いたうえで、ボス戦で彼の協力を得て第二層攻略を成し遂げた。
アスナ
- 立場・所属:初心者プレイヤー。細剣使い。
- 主人公との関係:第一層および第二層での攻略パートナー。
- この巻での主な役割:第一層と第二層におけるボス戦やクエストでの共闘、ネズハの詐欺被害者。
- この巻で起きた重要な変化や行動:はじまりの街での絶望から自暴自棄に迷宮区へ潜っていたが、キリトとの出会いや食事を経て生き残る意思を取り戻した。第一層ボス戦でキリトと共に戦い、第二層で愛剣《ウインドフルーレ》を奪われる被害に遭いながらも、真相解明後はネズハを前線に導き、第二層ボス攻略に貢献した。
ディアベル
- 立場・所属:元ベータテスターのプレイヤー。《騎士》を自称する攻略隊リーダー。
- 主人公との関係:第一層攻略隊の指揮官。
- この巻での主な役割:第一層フロアボス攻略会議の主催とレイドの統率。
- この巻で起きた重要な変化や行動:第一層攻略レイドをまとめ上げてボス戦に挑んだが、ラストアタックボーナスの取得を狙って単独突撃した結果、ベータ版から変更されていたボスのカタナスキルを受けて戦死した。
キバオウ
- 立場・所属:片手剣使い。攻略隊のE隊リーダー。
- 主人公との関係:元ベータテスターに強い敵意を抱く対立者。
- この巻での主な役割:初心者プレイヤーの代弁者、第二層攻略集団の一方の旗頭。
- この巻で起きた重要な変化や行動:攻略会議で元ベータテスターの責任を追及した。ディアベルの指示でキリトの剣を買い取ろうとしたが断られ、ボス戦後はキリトを非難した。第二層では自らの集団を率いて攻略に挑み、ボス戦ではリンドの集団と協力して前線を支えた。
エギル
- 立場・所属:両手斧使い。攻略隊のB隊リーダー。
- 主人公との関係:冷静な判断力を持つ協力者。
- この巻での主な役割:攻略会議での対立仲裁、第一層および第二層ボス戦での防御・前線維持。
- この巻で起きた重要な変化や行動:攻略会議でアルゴの無料攻略本を示して元テスター叩きを諫めた。第一層ボス戦では危機に陥ったキリトを援護し、第二層ボス戦でも前線で戦った。
アルゴ
- 立場・所属:情報屋《鼠のアルゴ》。
- 主人公との関係:情報取引を行う元ベータテスター仲間。
- この巻での主な役割:攻略本を通じた情報共有、第二層ボスの弱点情報の提供。
- この巻で起きた重要な変化や行動:第一層でボスの情報を含む攻略本を無償配布して攻略を支援した。第二層ではキリトにエクストラスキル《体術》の所在を教え、ボス戦の最中には真ボスの情報をもたらして全滅の危機を救った。
ネズハ
- 立場・所属:プレイヤー鍛冶屋。元《レジェンド・ブレイブス》メンバー。
- 主人公との関係:武器強化を依頼した鍛冶屋であり、詐欺の実行者から協力者となる。
- この巻での主な役割:武器強化詐欺の実行、第二層ボス戦での遠距離支援。
- この巻で起きた重要な変化や行動:仲間の装備資金を稼ぐため武器すり替え詐欺に手を染め、アスナの剣を騙し取ったが、キリトに見破られて改心した。チャクラムによる遠距離攻撃役へと転向し、第二層ボス戦で麻痺した本隊を救うため囮となって時間を稼ぎ、ボスのブレス妨害に貢献した。
書籍情報
ソードアート・オンライン プログレッシブ 1
著者:川原礫 氏
イラスト:abec 氏
出版社:KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2012年10月10日
ISBN:9784048869775
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あらすじ・内容
≪プログレッシブ≫シリーズ、ついに刊行開始!!
「このゲームはクリア不可能なのよ。どこでどんなふうに死のうと、早いか……遅いかだけの、違い……」
茅場晶彦によるデスゲームが開始されて一ヶ月。この超難度のVRMMO内で犠牲になったプレイヤーは二千人にも及んだ。 ≪第一層フロアボス攻略会議≫当日。自身の強化のみを行うと決めて、≪ソロ≫として戦うキリトは、会議場に向かう中途で、最前線では珍しい女性プレイヤーと出会う。強力なモンスター相手にレイピア一本で戦い続ける彼女は、あたかも夜空を切り裂く≪流星≫のようだった──。
キリトが≪黒の剣士≫と呼ばれる契機となったエピソード 『星なき夜のアリア』、さらに≪第二層フロアボス≫攻略戦にまつわる、とある少年鍛冶職人の悲哀を描く 『儚き剣のロンド』 他全三編を収録!
感想
荒んでいたアスナがキリトと出会う。本編よりしっくりくる二人の馴れ初め
まず思ったのは、とにかく長かったということだ。
読み進めても、なかなか終わらない。
第一層のボスを倒して、ようやく一区切りかと思ったら、今度は第二層の攻略が始まる。
「まだ続くのか……」と思いながら読んでいたが、あとで確認すると500ページを超える大ボリューム。
そりゃ、なかなか読み終わらないわけだ(笑)。
ただ、長いから退屈だったわけではない。
むしろ、ここまで細かく描かれているからこそ、キリトとアスナがどのように出会い、少しずつ距離を縮めていったのかがよく分かる。
本編第1巻では、二人はすでにアインクラッドの最前線で活躍する実力者だった。
アスナは攻略組の中心人物であり、キリトも《黒の剣士》として知られている。
しかし、本作のアスナはまったく違う。
最初のアスナって、こんなに荒んでいたのか。
そこが一番驚いたところだった。
死ぬことさえ受け入れたように迷宮で戦い続けていた少女が、キリトとの出会いを通して少しずつ変わっていく。
本編で知っている二人の関係に至るまでの過程が丁寧に描かれており、個人的にはこちらの馴れ初めのほうがしっくりきた。
今回は、第一層を描く「星なき夜のアリア」と、第二層を描く「儚き剣のロンド」を中心に、印象に残った場面を振り返っていく。
※以下、物語の結末までネタバレを含む。
500ページ超えの大ボリューム。なかなか読み終わらないと思ったら……
最初に触れておきたいのは、本の厚さである。
本作は、第一層と第二層の攻略をじっくり描いている。
しかも、単にボスと戦うだけではない。
迷宮の探索、攻略会議、プレイヤー同士の対立、武器の強化、食事、宿泊、情報収集。
ゲームの中で生きていくために必要なことが、細かく描かれている。
本編第1巻では、すでに攻略が進んだアインクラッドが舞台だった。
そのため、ゲーム開始直後の混乱については、限られた描写から想像する部分も多かった。
しかし、プログレッシブでは、その混乱を一つずつ追体験できる。
一か月経っても第一層すら突破できない。
約二千人が死亡している。
元ベータテスターへの不信感も強い。
そんな状況で、ようやく第一層のボス攻略に挑む。
これだけでも一冊分の物語になりそうなのに、さらに第二層の事件とボス戦まで続く。
そりゃ長いわけだ。
ただ、読み終わってみると、この長さにも意味があったように感じる。
キリトとアスナの関係を、急いで進めていないからだ。
最初はほとんど他人だった二人が、食事をし、戦い、言葉を交わしながら少しずつ親しくなる。
その過程を読むには、これくらいの分量が必要だったのかもしれない。
初期のアスナが想像以上に荒んでいた
今回、一番驚いたのはアスナである。
本編でのアスナは、強くて冷静な攻略組の中心人物という印象がある。
しかし、プログレッシブのアスナは違う。
デスゲームが始まった直後、彼女は《はじまりの街》で救助を待っていた。
現実世界から助けが来ることを期待していたのだ。
しかし、一か月が経っても状況は変わらない。
死亡者だけが増え続ける。
そんな現実に絶望したアスナは、街を出て迷宮へ向かう。
そして、ろくに休まず戦い続けるようになった。
いや、これは相当危ない。
キリトが見つけたときも、彼女は強力なコボルドを相手に凄まじい剣技を披露していた。
しかし、戦い方は危険そのもの。
敵を倒すために必要以上の攻撃を繰り返し、自分の体力や疲労を十分に考えていない。
キリトから見れば、いつ倒れてもおかしくない状態だった。
実際、アスナは限界を迎えて倒れてしまう。
彼女は、最初から攻略を目指して戦っていたわけではない。
絶望の中で、自分を使い切ろうとしていた。
ここが印象に残った。
本編であれほど頼もしかったアスナにも、こんな時期があったのか。
そう思うと、彼女が後に攻略組の中心人物になるまでの変化が、より興味深く感じられた。
「どうせ死ぬ」というアスナの絶望が重い
アスナが抱えていた絶望は、単なるゲームへの不満ではない。
この世界で死ねば、現実世界でも死ぬ。
しかも、ゲームをクリアできる保証はない。
一か月経っても第一層すら突破できず、多くのプレイヤーが命を落としている。
その状況を考えれば、希望を失うのも無理はない。
ただ、アスナは何もしないで待つことにも耐えられなかった。
だから迷宮へ向かい、戦い続けた。
彼女の行動は、攻略への強い意志というより、絶望への抵抗だったのだろう。
死ぬことを恐れていないのではない。
何もできないまま終わることが、もっと嫌だったのかもしれない。
読んでいて、そこが痛々しかった。
しかも、アスナはゲームの初心者である。
剣技には優れていても、戦闘の知識やゲームシステムの理解は十分ではない。
そんな状態で迷宮に籠もっているのだから、危険すぎる。
キリトが声をかけなければ、どうなっていたのだろう。
そう考えてしまった。
キリトとの出会い。最初から優しいわけではない距離感がよい
キリトは、迷宮でアスナの戦いを目撃する。
その剣技は見事だった。
細剣のソードスキル《リニアー》は、流星のような速さを持っている。
しかし、戦い方が危うい。
そこでキリトは、彼女に声をかける。
この出会いがよかった。
最初から二人が親しくなるわけではない。
キリトはソロプレイヤーとして生きることを決めていた。
アスナも、他人と積極的に関わろうとはしていない。
それでも、キリトは彼女を放っておけなかった。
ただ、本人は素直に助けたとは言わない。
アスナが持っている未踏破区域のマップデータが惜しかっただけだ、というような説明をする。
いや、素直じゃないな(笑)。
しかし、この不器用さがキリトらしい。
自分から他人に近づかないと決めているのに、危険な相手を見ると放っておけない。
その一方で、親切にした理由をうまく説明できない。
アスナとの関係は、こうした小さなやり取りから始まっている。
だからこそ、後の二人の関係に説得力があるように感じた。
黒パンにクリームを塗るだけで、アスナが変わり始める
今回、特に好きだったのが食事の場面である。
キリトは、安価な黒パンにクエスト報酬のクリームを塗って食べる。
そして、アスナにも分ける。
それだけのことなのだが、この場面がとても印象に残った。
それまでアスナは、仮想世界の食事に大きな価値を感じていなかった。
どうせ本物ではない。
現実の身体が満たされるわけでもない。
そんな考えだったのだろう。
しかし、クリームを塗ったパンを食べたことで、その考えが少し変わる。
この世界にも、おいしいものがある。
それは、当たり前のようで大切な発見だったのではないだろうか。
デスゲームの中で生きていると、どうしても攻略や生存だけが目的になってしまう。
しかし、食事を楽しむことも、生きている時間の一部である。
キリトは、アスナに戦い方だけを教えたわけではない。
この世界での過ごし方も、少しずつ教えていたのだと思う。
それが説教ではなく、パンを分け合うという形で描かれているのがよかった。
お風呂に入るアスナ。日常を取り戻すことの大切さ
もう一つ印象に残ったのが、お風呂である。
キリトが借りている部屋には、浴室がある。
それを知ったアスナは、強い興味を示す。
彼女は、それまで十分に休息できる環境で生活していなかった。
悪夢に悩まされ、迷宮では無理な戦いを続けていた。
そんなアスナにとって、ゆっくり風呂に入れることは大きな意味があったのだろう。
仮想世界のお風呂であっても、気持ちが落ち着く。
そして、もう一度おいしいものを食べたい、また風呂に入りたいと思うようになる。
ここがよかった。
アスナは、突然前向きな人間に変わったわけではない。
大きな目標を与えられたから、希望を取り戻したわけでもない。
おいしいものを食べたい。ゆっくり休みたい。
そんな小さな気持ちが、生き続ける理由になっていく。
デスゲームという過酷な状況だからこそ、こうした日常の描写が強く印象に残った。
第一層攻略会議。プレイヤー同士の不信感が生々しい
第一層の攻略会議では、ディアベルが中心となってプレイヤーをまとめる。
しかし、会議は簡単には進まない。
キバオウが、元ベータテスターへの不満をぶつけるからだ。
元ベータテスターは、ゲームの知識を持っている。
有利な狩場や攻略情報も知っている。
それなのに、初心者たちを十分に助けなかったのではないか。
そんな不満が出てくる。
これは、なかなか難しい問題だと思った。
キリト自身も元ベータテスターである。
知識を持っていたからこそ、生き残れた部分はあるだろう。
一方で、初心者たちが不公平だと感じる気持ちも分からなくはない。
ただ、元ベータテスター全員が情報を独占していたわけではない。
情報屋アルゴは、攻略本を無料で配布していた。
エギルがその事実を示したことで、会議は落ち着く。
この場面を読んで感じたのは、敵はモンスターだけではないということだ。
プレイヤー同士の不信感も、攻略を妨げる。
全員が生き残るために協力しなければならない状況なのに、互いを責め合ってしまう。
デスゲームの恐ろしさは、こうした人間関係にも表れていた。
ディアベルの戦死。ベータテストの知識が通用しない怖さ
第一層のボス攻略戦では、ディアベルが戦死する。
ここは、やはり重い場面だった。
攻略隊は事前に情報を集め、ボスの攻撃パターンを調べていた。
しかし、実際のボスはベータテスト時代と違う武器を使用する。
想定していた攻撃が来ない。
そして、ディアベルは致命的な一撃を受けてしまう。
攻略情報を知っているからといって、安全とは限らない。
この怖さがよく伝わってきた。
しかも、ディアベル自身も元ベータテスターだった。
攻略隊をまとめながら、その事実を隠していたのである。
彼もまた、自分なりの考えを持って行動していたのだろう。
しかし、ラストアタックを狙った判断が命取りになってしまう。
第一層を突破するために集まったプレイヤーたちが、いきなりリーダーを失う。
この状況で、キリトがどう行動するか。
そこが本作の重要な見どころだった。
キリトが《ビーター》を名乗る理由。不器用すぎる自己犠牲
ディアベルの死後、元ベータテスターへの不満が再び強まる。
そこでキリトは、自分が《ビーター》であると名乗る。
ベータテスターとチーターを組み合わせた呼び名だ。
彼は、自分がほかの元ベータテスターとは違う特別な存在だと強調する。
そして、プレイヤーたちの敵意を自分一人に向けようとする。
ここがキリトらしい。
いや、そこまで自分が悪者にならなくてもいいだろう。
そう思ってしまう。
しかし、キリトには考えがあった。
元ベータテスター全体が排除されれば、攻略に必要な知識や経験を持つ人々まで孤立してしまう。
それでは、ゲームの攻略がさらに難しくなる。
だから、自分だけが悪者になる。
理屈は分かる。
ただ、あまりにも不器用である。
もっと別の方法はなかったのかとも思う。
それでも、キリトが単なる利己的なソロプレイヤーではないことがよく分かる場面だった。
そして、そんなキリトをアスナが追いかける。
ここがよかった。
周囲から悪く言われても、アスナはキリトの行動を自分の目で判断している。
この時点で、二人の間には確かな信頼が生まれ始めていたのだろう。
第二層で再会する二人。もう自然に一緒に行動している
第一層を突破した後、キリトとアスナは第二層で再会する。
ここからの二人のやり取りが、実に微笑ましい。
最初に出会った頃のアスナは、他人と関わることを避けていた。
しかし、第二層ではキリトと一緒に行動するようになる。
モンスターの討伐数を競ったり、食事をしたり、クエストを進めたりする。
命懸けの世界であることは変わらない。
それでも、二人の間には少しずつ日常が生まれている。
ああ、もうこの二人は相性がいいんだな。
読んでいて、そう感じた。
キリトはゲームの知識が豊富だが、人付き合いは得意ではない。
アスナは戦闘の才能があるが、ゲームについては知らないことが多い。
互いに足りない部分がある。
だからこそ、一緒に行動する意味があるのだろう。
ただ強い者同士が組んでいるわけではない。
お互いの考え方や性格を少しずつ理解していく。
その過程が丁寧に描かれていた。
アスナの《ウインドフルーレ》消失。武器強化詐欺が怖い
第二層では、鍛冶屋ネズハによる武器強化詐欺事件が発生する。
アスナは、愛用の細剣《ウインドフルーレ》を強化してもらおうとする。
しかし、鍛冶の途中で剣が砕け散ってしまう。
ここは驚いた。
SAOでは、武器は単なる装備品ではない。
命を守るための大切な道具である。
特にアスナにとって、ウインドフルーレは戦い続けるための相棒だった。
それが突然失われる。
これはショックが大きいだろう。
しかも、ネズハは強化失敗を装って武器をすり替えていた。
鍛冶の光に紛れて、同じ外見の武器と交換する。
そして、偽物を破壊することで、本物が壊れたように見せかける。
なるほど、そういう手口か。
ゲームのシステムを利用した詐欺というのが面白かった。
ただ、面白いと同時に恐ろしくもある。
現実世界でも、専門知識を持つ相手に道具を預けるときは、相手を信用するしかない部分がある。
SAOでは、その信用を裏切られることが命に関わる。
そう考えると、かなり悪質な事件だった。
キリトが詐欺の仕組みを見破る。戦闘以外でも頼りになる
アスナの武器が失われた後、キリトは事件を調べ始める。
そして、武器が単純に破壊されたのではなく、すり替えられた可能性に気づく。
ここが面白かった。
キリトは戦闘が強いだけではない。
ゲームの仕様やスキルの知識を使って、事件の仕組みを解き明かしていく。
しかも、実際に自分の武器を使って手口を確かめる。
なかなか大胆である。
自分の大切な武器まで危険にさらして検証するのか。
そう思ったが、アスナの剣を取り戻すためでもあるのだろう。
そして、アスナのウインドフルーレも無事に戻ってくる。
ここは安心した。
アスナにとって、あの剣は単なる数値データではない。
自分が生き残るために使い続けてきた、大切な存在である。
キリトも、その気持ちを理解していた。
二人が互いを理解していることが、こうした場面からも伝わってきた。
ネズハは単なる悪人ではなかった。それでも詐欺は詐欺
武器強化詐欺を行っていたネズハには、事情があった。
彼は、仲間たちが攻略組に追いつけるよう、装備を整えるために詐欺へ加担していた。
もちろん、だからといって許されることではない。
他人の武器を奪う行為は、命を危険にさらすことにもつながる。
しかし、ネズハにも仲間を助けたいという気持ちがあった。
このあたりが、単純な悪人として描かれていないところだと思う。
しかも、詐欺の手口を教えた黒いポンチョの男がいる。
その人物は、利益の分配すら要求していない。
では、何のために詐欺を教えたのか?
ここが気になった。
単に金を稼ぐことが目的ではないのかもしれない。
プレイヤー同士の不信感を強め、対立を生み出すことが目的だった可能性もある。
デスゲームの中で、プレイヤー同士が争うようになれば、攻略どころではなくなる。
そう考えると、ネズハの事件は単なる武器詐欺以上の問題を抱えていた。
ネズハがチャクラムで再出発。役割を見つける展開がよい
詐欺が明らかになった後、ネズハは鍛冶屋を辞める。
そして、戦闘に参加することを決意する。
しかし、彼は近接戦闘が得意ではない。
そこでキリトが勧めたのが、投擲武器のチャクラムである。
この展開がよかった。
剣がうまく使えないからといって、戦えないわけではない。
自分に合った武器や役割を見つければ、前線で活躍できる可能性がある。
ネズハは、詐欺をしていた過去を消せるわけではない。
それでも、別の形で仲間たちに貢献しようとする。
この変化には、少し救われるものがあった。
しかも、後の第二層ボス戦で、彼のチャクラムが重要な役割を果たす。
ここでつながるのか。
そう思った。
単に改心して終わるのではなく、自分の力で役割を果たす場面が用意されている。
この構成が印象に残った。
第二層ボス戦。まさか本当のボスが別にいるとは
第二層のボス攻略では、再び想定外の事態が発生する。
攻略隊は、ベータテスト時代の情報をもとに戦闘を進める。
しかし、途中でさらに巨大な《アステリオス・ザ・トーラスキング》が現れる。
いや、まだ別のボスがいるのか!?
第一層でも、ベータテスト時代とボスの攻撃パターンが違っていた。
今回は、さらに大きな変更が加えられている。
しかも、アステリオスの雷ブレスには麻痺効果がある。
攻略隊は一気に危機へ陥る。
ここで活躍するのがネズハだった。
チャクラムによる遠距離攻撃でボスの注意を引きつけ、仲間たちが回復する時間を稼ぐ。
さらに、ボスの攻撃を妨害する役割も果たす。
あのネズハが、ここまで重要な働きをするとは。
武器強化詐欺をしていた人物が、今度は攻略隊を救う側に回る。
この展開はよかった。
そして、キリトとアスナたちも協力し、第二層のボスを撃破する。
第一層ではディアベルが命を落とした。
しかし、第二層ではボス戦の死者を出さずに勝利できた。
この違いは大きい。
プレイヤーたちが、少しずつ攻略の方法を学んでいることが伝わってきた。
本編第1巻とは違う馴れ初め。でも、こちらのほうがしっくりくる
今回、読み終わって一番強く感じたのは、キリトとアスナの関係についてである。
本編第1巻とプログレッシブでは、二人の出会いや初期の関係に違いがある。
そのため、細かい部分を比べると、つながりが気になるところもある。
しかし、個人的にはそこまで気にならなかった。
それはそれ、これはこれである。
むしろ、プログレッシブで描かれる二人の馴れ初めのほうが、自然に感じられた。
本編では、すでに強い信頼関係を築いている二人が登場する。
そのため、なぜそこまで互いを信頼しているのか、想像する部分もあった。
しかし、プログレッシブでは、その過程が丁寧に描かれている。
最初は互いに距離を置いていた。
アスナは絶望していた。
キリトは一人で生き残ろうとしていた。
そんな二人が出会い、食事を分け合い、ボス戦で協力する。
そして、第二層でも自然に行動を共にするようになる。
この積み重ねがよかった。
本当に、この二人はお似合いだと思う。
キリトとアスナは、互いに足りないものを補い合っている
二人の関係がしっくりくる理由は、互いに足りない部分を補い合っているからだと思う。
キリトはゲームの知識が豊富で、戦闘経験もある。
しかし、人付き合いは得意ではない。
自分だけで問題を抱え込み、悪者になることもいとわない。
一方、アスナはゲームの初心者だった。
しかし、剣技の才能があり、判断力も優れている。
そして、キリトが一人で背負おうとするものを理解しようとする。
この組み合わせがよい。
キリトが一方的にアスナを守っているわけではない。
アスナも、キリトを支えている。
第一層のボス戦でも、第二層の攻略でも、二人は互いの力を必要としている。
しかも、戦闘以外の場面でも相性がよい。
食事をしたり、冗談を言い合ったり、互いの行動にツッコミを入れたりする。
そうしたやり取りを読んでいると、二人が一緒にいることが自然に思えてくる。
命懸けの世界で出会った二人だが、戦いだけで結ばれているわけではない。
そこが魅力だと感じた。
アスナが「生きる」ことを選び直していく物語
今回のアスナを見ていると、彼女の変化が特に印象深い。
最初は、いつ死んでも構わないというような状態だった。
しかし、キリトと出会い、食事を楽しみ、風呂に入り、仲間と戦うようになる。
そして、次の階層へ進もうとする。
この変化は、単純に強くなったという話ではない。
この世界で生きていくことを、少しずつ受け入れていったのだと思う。
SAOはデスゲームである。
現実世界へ帰れる保証はない。
それでも、今いる世界で食事を楽しみ、誰かと話し、目標を持つことはできる。
アスナは、そのことをキリトとの交流を通して知っていく。
この描写がよかった。
本編のアスナは、すでに強い人物として描かれていた。
しかし、最初から強かったわけではない。
絶望し、荒れた時期があり、そこから少しずつ立ち直っていった。
そう考えると、本編での彼女の姿が、以前よりも魅力的に感じられる。
まとめ|500ページ以上あっても、二人の馴れ初めを読む価値があった
『ソードアート・オンライン プログレッシブ1』は、第一層と第二層の攻略を通して、キリトとアスナの関係が始まる過程を丁寧に描いた一冊だった。
正直、読み始めたときは、ここまで長いとは思っていなかった。
なかなか読み終わらないと思ったら、500ページを超えるボリューム。
そりゃ時間がかかるわけだ(笑)。
しかし、その長さのおかげで、二人の関係が変わっていく様子をじっくり読むことができた。
特に驚いたのは、初期のアスナである。
本編では頼もしい攻略組の中心人物だった彼女が、最初は絶望して迷宮で無茶な戦いを続けていた。
そんなアスナが、キリトと出会う。
黒パンにクリームを塗って食べる。
久しぶりに風呂に入る。
ボス戦で協力する。
第二層でも一緒に行動する。
こうした小さな出来事が積み重なり、少しずつ二人の距離が縮まっていく。
この過程がとてもよかった。
第一層では、ディアベルの戦死や《ビーター》の誕生が描かれた。
第二層では、ネズハの武器強化詐欺事件や、予想外のボスとの戦いがあった。
どちらも緊張感のある展開だったが、その中で描かれるキリトとアスナのやり取りが、物語を重苦しいだけのものにしていない。
そして、読み終わって改めて思った。
やっぱり、この二人はお似合いである。
本編第1巻とは馴れ初めの描写に違いがあるものの、個人的にはプログレッシブのほうがしっくりくる。
最初から特別な関係だったわけではない。
命懸けの戦いを通して、互いを知り、信頼するようになった。
その過程が丁寧に描かれているからこそ、二人が一緒にいる姿に納得できる。
まだ第二層を突破したばかり。
アインクラッドには、さらに多くの階層が待っている。
この先、二人がどのような経験を重ねていくのか。
続きが楽しみになる一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:迷宮区での邂逅と攻略会議
SAO開始から約一か月が経過し、二千人もの死者が出る中、キリトは第一層迷宮区の奥深くで、自暴自棄に連続戦闘を行う細剣使いアスナと出会う。
限界を迎えて気絶したアスナを外へ搬出したキリトは、トールバーナで開かれるフロアボス攻略会議の存在を伝える。街へ戻ったアスナはキリトと黒パンを食べながら心境を語り、死ぬためではなく自分を保つために戦っていると明かす。
広場で開かれた会議では、主催者のディアベルが攻略を呼びかけるが、キバオウが元ベータテスターの責任を追及して紛糾する。しかし、エギルがアルゴの攻略本が無料配布されている事実を提示して場を収め、ボス部屋発見の報告とともにパーティー編成が行われる。あぶれたキリトとアスナは二人でパーティーを組み、取り巻きモンスターの遊撃支援を担当することになる。
第2幕:準備と交錯する思惑
会議後、キリトは初心者のアスナに戦闘知識を説明するため、風呂付きの農家の部屋へ案内する。入浴を通じてアスナは生きる意欲を取り戻し始める。一方、キリトを訪ねてきた情報屋アルゴから、キリトの愛剣《アニールブレード+6》を高額で買い取ろうとしていた依頼人がキバオウであると知らされる。翌朝、四十四名の攻略隊が第一層迷宮区のボス部屋へ突入し、ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》および取り巻きのセンチネルとの戦闘が開始される。事前情報の通りに各部隊が連携し、キリトとアスナも取り巻きを順調に撃破していくが、キバオウとの会話から、彼を裏で操りキリトの弱体化を狙っていた真の依頼人がディアベルであった事実が浮かび上がる。
第3幕:第一層ボスの撃破と《ビーター》の誕生
ボスのHPが最後のゲージに突入した瞬間、イルファングは攻略本に記載された曲刀ではなく、ベータ版には存在しなかった野太刀を抜く。
ラストアタックのレアアイテム取得を狙って突撃したディアベルは、初見のカタナスキル《旋車》と連続攻撃を受けて致命傷を負う。駆けつけたキリトに後を託してディアベルが消滅し、攻略隊が動揺する中、キリトは撤退の危険性を考慮して戦闘継続を決断する。アスナがフードを脱ぎ捨てて前線を鼓舞し、キリトはボスの技を見極めながら相殺と指示を繰り返す。エギルらの支援を受けて窮地を脱し、最後はアスナの《リニアー》に続いてキリトが二連撃技《バーチカル・アーク》を叩き込んでボスを撃破する。
戦闘後、キバオウらからディアベルを見殺しにしたと非難されたキリトは、一般テスターへの迫害を防ぐため、自ら知識を独占する悪質な《ビーター》を名乗って孤立を選び、単身第二層へと進出する。
追いかけてきたアスナと互いに名前を名乗り合い、二人は再会を期して別れる。
第4幕:第二層の転移門開通と体術スキルの獲得
第二層主街区ウルバスに到達したキリトは、第一層フロアボス撃破から二時間後に転移門が自動的に有効化されるまで、第二層を単独で探索していた。広場で忍者の姿をした二人組に追われていたアルゴを助けたキリトは、貸しを精算する名目で、この層に存在する隠しスキル《体術》の情報を得る。岩山の小屋に住む仙人NPCの課した過酷な試練により顔に落書きを施されながらも、キリトは三日間の修行の末に岩を素手で割り、素手攻撃スキル《体術》を習得する。街に戻ったキリトは変装を解いてアスナと再会し、ケーキの代金を賭けた巨大蜂モンスターの討伐競争を行いながら親交を深める。
第5幕:ウインドフルーレの消失と強化詐欺の露見
ウルバスの東広場で露店を開くプレイヤー鍛冶屋ネズハに対し、アスナは集めた素材を上限まで投入して愛剣《ウインドフルーレ》の強化を依頼する。しかし、九割五分以上の成功率にもかかわらず剣は粉々に砕け散り、消滅する。
悲嘆に暮れるアスナを慰めつつ、システム上あり得ない《武器消滅》に強い不審を抱いたキリトは、ネズハの尾行やアルゴの調査を通じて真相を追う。
その結果、強化試行回数を使い切った同型のダミー武器と瞬時にすり替え、失敗させて破壊するという強化詐欺の手口が明らかになる。キリトは自らの剣を囮にしてネズハの現行犯を押さえ、アスナの剣を取り戻す。
ネズハは実力不足に悩む仲間《レジェンド・ブレイブス》のために詐欺に加担していたと判明するが、キリトとアスナは彼を私刑にせず、遠距離攻撃武器チャクラムを渡して前線で戦う道を与える。
第6幕:第二層フロアボス戦と死線突破
第二層迷宮区の最奥でフロアボス攻略戦が始まる。ディアベルの死後に攻略組を二分していたリンドの集団とキバオウの集団が競い合う中、部隊はベータ版でフロアボスだった《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》との戦闘を進めていた。
しかし、バラン将軍を撃破する前に、ベータ版には存在しなかった真のフロアボス《アステリオス・ザ・トーラスキング》が出現した。
攻略隊はバラン将軍との戦闘を続けながら、新たに出現したアステリオス王にも対処しなければならなくなった。その後、アステリオス王の雷ブレスによって主力が麻痺状態に陥った。
壊滅の危機に際し、後方にいたネズハがチャクラムを投擲して単身ボスの注意を引きつけ、本隊が麻痺から回復するまでの時間を稼ぐ。駆けつけたアルゴから弱点情報が共有され、戦列を立て直した攻略隊は、ネズハのブレス妨害支援のもとで総攻撃を敢行し、死者を一人も出さずに第二層フロアボスを撃破した。
第一層の突破から第二層の突破までに要した日数は十日間であった。
第7幕:和解と第三層への幕開け
戦闘終了後、反目し合っていたリンドとキバオウは互いの健闘を認め合い、攻略のための共闘関係を築く。真の功労者であるネズハは最前線を離れる道を選ぶが、キリトは彼の再起を確信する。キリトはボスの仕様変更が今後も続くことを確信し、情報収集と準備の重要性を再認識する。第三層へ通じる階段を上りながら、アスナはキリトがボスのラストアタックを取ったことを見抜きつつ追及を交わす。二人はエルフの剣士が描かれた第三層の扉の前に立ち、さらなる攻略へと進んでいく。
主要な転換点
転換点:第一層迷宮区でのアスナの救出
- それ以前の状況:アスナは死を覚悟して飲まず食わずで迷宮に籠もり、キリトも他者と深く関わらないソロプレイを続けていた。
- 出来事:迷宮区で倒れたアスナをキリトが保護して街へ連れ帰り、食事を共にして攻略会議へ誘った。
- 変化:アスナが自暴自棄な精神状態を脱して生き残る意思を取り戻し、キリトと二人で攻略パーティーを結成した。
- 次への影響:二人の連携が第一層フロアボス戦の主戦力となり、以後の階層でも継続して協力し合う基盤が形成された。
転換点:第一層ボス戦でのディアベルの戦死
- それ以前の状況:攻略隊はディアベルの卓越した統率力のもと、順調にボスのHPを削っていた。
- 出来事:事前情報と異なるカタナスキルを用いたボスの攻撃により、ラストアタックを狙ったディアベルが戦死した。
- 変化:部隊の指揮系統が崩壊して全滅の危機に瀕し、ディアベルに代わってキリトが前線の指揮と迎撃を引き受けることになった。
- 次への影響:キリトとアスナが前面に出てボスを撃破する契機となり、その後の攻略隊の分裂と勢力争いを生む原因となった。
転換点:キリトの《ビーター》宣言
- それ以前の状況:ボスの撃破に成功したものの、ディアベルの死の責任を巡って元ベータテスターへの糾弾が再燃しかけていた。
- 出来事:キリトが自らを一般テスターすら見下す不正な存在《ビーター》と詐称し、悪役を買って出た。
- 変化:新規プレイヤーたちの憎悪と警戒心がキリト個人に集中し、他の一般元テスターへの迫害が回避された代わりに、キリトは前線集団から孤立した。
- 次への影響:第二層以降、キリトは単独行動を余儀なくされつつも、アスナやアルゴなど彼の本質を理解する者との絆を深めていくことになった。
転換点:ネズハの武器強化詐欺の解明
- それ以前の状況:アスナの愛剣が不可解な強化失敗によって消滅し、二人は大切な武器を喪失した絶望の中にいた。
- 出来事:キリトが詐欺のトリックを暴き、ネズハを問い詰めて本物の剣を取り戻すとともに、犯行の背景を聞き出した。
- 変化:ネズハが罪を認めて改心し、キリトから遠距離投擲武器チャクラムを授けられて新たな役割を見出した。
- 次への影響:ネズハが第二層ボス戦において決死の足止めとブレス妨害を行う決定的な戦力となり、攻略隊の全滅を未然に防ぐ結果をもたらした。
転換点:第二層真ボスの出現と攻略成功
- それ以前の状況:第二層ボス《バラン》を撃破し、攻略隊が勝利の油断に包まれていた。
- 出来事:未確認の真ボス《アステリオス》が出現して麻痺ブレスを放ち、リンドやキバオウら主力が行動不能に陥った。
- 変化:ネズハの必死の牽制とアルゴの情報提供によって全滅を回避し、部隊全体が立て直されて死者ゼロでの勝利を達成した。
- 次への影響:第二層が突破され、リンドとキバオウの陣営が対立を越えて協調する道が開かれ、第三層への進出が実現した。
キリトを中心とした人物関係の変化
アスナ
- 開始時:迷宮区で偶然見かけた、無謀な戦い方をする見知らぬソロの細剣使いであった。
- 主な出来事:共に食事や入浴の便宜、ボスの攻略会議を経てパーティーを組み、第一層・第二層のボス戦で背中を預けて死線を越えた。武器を失ったアスナのためにキリトが真相を暴き、愛剣を取り戻した。
- 巻末時:互いの名前と強さを認め合い、過酷な世界を共に生き抜くかけがえのない攻略パートナーとなった。
ディアベル
- 開始時:攻略部隊を率いるカリスマ的な騎士風のリーダーと、集団の後方に位置する一介のソロプレイヤーであった。
- 主な出来事:ディアベルが裏でキバオウを操ってキリトの剣を買い取らせようとしていた事実が判明したが、ボス戦で致命傷を負ったディアベルから後を託された。
- 巻末時:己の利益を求めつつも集団の未来を信じて散った先駆者として、キリトの記憶に深く刻まれる存在となった。
キバオウ
- 開始時:元ベータテスターに対して激しい敵意を剥き出しにし、キリトの排除や従属を迫る敵対的な関係であった。
- 主な出来事:ボス戦でディアベルを失い絶望するキバオウをキリトが叱咤して役目を与え、第二層ボス戦では共に死線を潜り抜けた。
- 巻末時:キリトの強さと貢献を認めざるを得なくなりつつも、自身のやり方でクリアを目指すライバル的関係を維持した。
ネズハ
- 開始時:ウルバスの東広場で露店を営む、人の良さそうな見知らぬプレイヤー鍛冶屋であった。
- 主な出来事:アスナの武器を騙し取った詐欺の犯人としてキリトに暴かれたが、私刑にされずチャクラムを渡されて再起を促された。
- 巻末時:ボス戦で自らを盾にして前線を救った恩人として互いに敬意を抱き、いつかの再会を願う関係となった。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
キリトは自身を、ベータテストで得た知識を初心者に分け与えず独占し、自分一人が生き延びることだけを優先してきた利己的な人間であると強く自覚している。そのため、元ベータテスターとして初心者たちが命を落とした現状に深い負い目を抱いており、《ビーター》としての汚名や孤立も当然受けるべき報いとして受け入れている。
周囲からの評価
攻略隊の大半のプレイヤーからは、他のテスターすら出し抜いて利益を貪る狡猾で危険な《ビーター》として恐れられ、嫌悪と不信の目を向けられている。しかし、アスナやエギル、アルゴといった一部の者からは、悪役を演じて集団の崩壊を防ぎ、最前線で命を張って道を切り拓く実力と誠実さを備えた剣士として深く信頼されている。
認識の差が現れた場面
第一層フロアボス撃破直後、キバオウらがディアベルの死の責任を元テスター全体に転嫁しようとした際、キリトは「自分は他の未熟なテスターとは違う、知識を独占するチーター(ビーター)だ」と傲慢に振る舞って周囲を挑発した。周囲の一般プレイヤーは彼の言葉を額面通りに受け取って激しい敵意を抱いたが、アスナとエギルだけはキリトが仲間を守るために自ら泥をかぶった事実を正しく察し、無言の眼差しを向けた場面にその認識の差が明確に現れている。
ビーターの誕生
デスゲームと化したアインクラッドの第1層ボス討伐戦直後、攻略集団の崩壊を防ぐ目的からキリトが自ら悪役を買って出た出来事により、ビーターという異名が誕生する運びとなった。集団の空中分解を回避すべく下された決断の背景、心理的葛藤、そして孤高の道を歩み出すに至った経緯を以下に整理する。
発生の契機と非難の噴出
- 指揮官の戦死と混乱 第1層のフロアボス討伐戦において、攻略隊を率いていた指揮官ディアベルが、ベータテスト時とは異なる未確認のカタナスキルを受けて戦死を遂げた。
- 参加プレイヤーによる糾弾 ボスの撃破直後、ディアベルの仲間や一般プレイヤーの間に動揺が広がり、ボスの行動パターンを知りながら秘匿していたのではないかという疑念が浮上した。さらに、元ベータテスター全般や情報屋のアルゴが虚偽の情報を流布したのではないかという激しい非難が噴出し、怒りの矛先がキリトたちへ集中する事態を招いた。
キリトの抱いた危機感
- 攻略集団の分裂懸念 新規参加者たちの憤りと不信感が元ベータテスター全体へ波及した場合、プレイヤー同士の私刑や攻略組の瓦解を引き起こす危険性を強く察知した。
- 罪なき関係者の保護 知識の乏しい一般の元テスターや、攻略を支えてきた情報屋のアルゴにまで不当な敵意が飛び火する状況を、何としても阻止しなければならないという強い焦燥感を抱いた。
悪役の受容とビーターの命名
- 不遜な態度の演出 キリトは冷笑を浮かべながら、自身を他の一般的な元テスターと同列に扱わないよう周囲へ傲慢に言い放った。他の参加者が知り得ない上層の情報を独占していた特権的な存在を装い、意図的に周囲の反感を買う言動を取った。
- 蔑称の受容 周囲のプレイヤーからベータテスターと不正者を意味するチーターを掛け合わせた蔑称であるビーターという言葉が浴びせられた際、キリトは動じることなくその呼称を受け入れ、不敵な笑みとともに自認してみせた。
決断の結末と孤高の選択
- 憎悪の一身への集約 キリトが悪質な情報独占者を名乗り出た結果、一般の元テスターと悪質な存在とが切り離され、プレイヤーたちの敵意はキリト一人へと収束していった。
- 漆黒の衣と孤独な旅立ち ラストアタック報酬として獲得した漆黒のロングコートを身に纏い、他者とパーティやギルドを結成する道を自ら絶ち、単独で未踏の第2層へと続く階段を駆け上がっていった。
まとめ
第1層ボス討伐戦の結末において生まれたビーターという呼称は、未曾有の極限状態の中で攻略組の結束を保つため、一人の少年が憎まれ役を引き受けた自己犠牲の証を意味する。すべての悪意と誹謗を一身に背負い、漆黒のコートとともに孤独な戦場へ身を投じた歩みは、デスゲームを生き抜くキリトの壮絶な覚悟を鮮明に物語る。
第一層の攻略
デスゲームと化したアインクラッドにおいて、開始から約一ヶ月にわたり犠牲者を出し続けた閉塞状況を打破した第一層フロアボス討伐戦は、生還への第一歩を刻む歴史的な節目に位置づく。単なる迷宮突破の戦いにとどまらず、プレイヤー間に渦巻く不信や対立を乗り越え、主人公キリトが孤高の存在へと身を投じる契機となった攻略劇の全容を整理する。
キリトとアスナの遭遇と再生の契機
- 迷宮の奥底における孤軍奮闘 デスゲームの宣告から一ヶ月が経過した頃、単独で探索を継続していたキリトは、第一層迷宮区の深部で細剣を振るう少女アスナと遭遇した。自暴自棄に近い精神状態で数日間にわたり戦闘を継続し、限界を超えた過酷な連戦によってその場に倒れ込む姿を目撃する。
- 人間性を保つための矜持 安全な森へと救出されたアスナは、始まりの街で腐敗していく生き方を拒絶し、最後まで自分自身であり続けたいという強い覚悟を口にした。その言葉に胸を打たれたキリトは、トールバーナで開催予定のボス攻略会議へ彼女を同伴させる決断を下した。
トールバーナ攻略会議とプレイヤー間の不協和音
- 攻略集団の結成と理念の提示 広場に集結した四十四名の参加者を前に、青髪の騎士ディアベルが登壇し、第一層を突破してゲームクリアの可能性を全住民へ証明しようと団結を呼びかけた。
- 元テスターに対する反発の噴出 新興勢力を束ねるキバオウが突如割って入り、知識や物資を独占して多数の初心者を死に至らしめた元ベータテスターの責任を追及し、謝罪と資産の供出を要求して場を紛糾させた。
- 情報共有の証明と陣形編成 斧使いのエギルが情報屋アルゴの手による無償の攻略本を掲げ、元テスターからの情報提供が既に全域へ還元されていた事実を示して騒動を鎮静化させた。事態の収拾を受け、六人編成の七部隊が組織され、余剰人員となったキリトとアスナは支援を担う遊軍部隊として編入された。
フロアボス討伐戦の展開と指揮官の戦死
- 秩序ある集団戦の遂行 迷宮区二十階のボス部屋へ突入した攻略集団は、防壁部隊が敵の注意を惹きつけ、攻撃部隊が打撃を加え、支援部隊が随伴する怪物を処理する綿密な連携を機能させた。
- 未知の武装変化と突入の代償 ボスの体力が最終段階へ移行した局面において、事前情報に存在した曲刀ではなく、長大な野太刀を抜刀するという深刻な仕様変更が発生した。最後の一撃による希少報酬を狙って突出したディアベルは、未確認の刀技による猛攻を一身に浴びて致命傷を負い、後事をキリトへ託して消滅した。
- 混乱の収拾と前線の死守 指揮系統の崩壊による壊滅の危機に直面したキリトは、即座に全軍へ後退を指示して間合いを確保させた。アスナとともに最前線へ進出して敵の斬撃を相殺し、味方の支援を受けながら渾身の連続剣技を叩き込んでボスの撃破を成し遂げた。
ビーターの誕生と第二層への歩み
- 憎悪の矛先と責任の追及 勝利の歓喜も束の間、指揮官の死を悼む仲間からボスの変貌を知りながら秘匿していたのではないかという疑念が投げかけられ、怒りの矛先が元テスター全体へ波及する危機を迎えた。
- 悪役の受容による秩序の維持 組織の瓦解と仲間割れを回避すべく、キリトは不敵な冷笑を浮かべて一般のテスターを素人と蔑み、上層の知識を独占していた特権的地位を装う道を選んだ。投げつけられた蔑称を受け入れ、すべての敵意を一身に引き受ける決意を固めた。
- 漆黒の衣と新たな盟約 報酬として得た漆黒の外套を羽織り、単独で階段を駆け上がるキリトの背を追って現れたアスナと互いの名を明かし合い、過酷な死の世界を生き抜く誓いを交わして未踏の第二層へと踏み出した。
まとめ
第一層の攻略戦は、未知の脅威が潜む仮想空間において、恐怖に怯える人間集団が結束を取り戻すまでの過酷な過程を浮き彫りにした。自ら汚名を被る道を選んで仲間を守り抜いた少年の覚悟と、絶望の淵から生への意志を取り戻した少女の歩みは、死と隣り合わせの世界を切り拓く開拓者たちの壮絶な戦いを鮮やかに物語る。
ネズハの詐欺
アインクラッド第二層の主街区ウルバスおよびタランの村で発生した鍛冶屋ネズハによる武器強化詐欺事件は、仮想空間のシステム仕様に潜む盲点を突いた手口と、フルダイブ環境への適応困難に苦しむプレイヤーの葛藤が交錯する重要な出来事に位置づけられる。初期の攻略前線において信頼を揺るがした事件の背景、巧妙な詐欺の全貌、看破に至る過程、そして当事者たちが迎えた結末を以下に整理する。
詐欺の背景と動機
- フルダイブ不適合の判定 本名およびアバター名の由来を古代中国の神に持つ鍛冶屋ネズハは、ナーヴギア接続時の初期判定において視覚の遠近感や奥行き把握が正常に機能しない障害を抱えていた。モンスターとの正確な間合いを捉えられず、一度は活路を求めて投剣技術の習得を試みるも挫折を余儀なくされた。
- 仲間に対する焦燥感と生産職への転向 現実世界からの知人関係にあったギルドの仲間五名に対し、戦闘での足手まといとなる恐怖を抱いた結果、最前線での戦闘職を断念して鍛冶職人への道を選択する経緯を辿った。
- 謎の教唆者による悪意の吹き込み 攻略の遅れに焦燥を募らせる彼らの前に黒いエナメル地の雨具を羽織る正体不明の男が現れ、システムで禁止されていない行為はすべて許容されるという歪んだ理屈を提示した。見返りを要求することなく、装備の即時換装機能を用いた武器すり替えの手口を指南した。
詐欺の仕掛けと手口の全貌
- 預かり状態の形成 依頼主である客から強化を委託された希少武器を左手に受け取る手順を踏む。
- 装備即時換装によるすり替えの実行 鍛冶炉に強化素材を投入した際に生じる強烈な光と破砕音を利用して客の注意を逸らし、作業台の下に隠蔽していた操作画面から装備即時換装機能を起動した。客から預かった本物の武器と、自身の保管庫に用意していた同型の外見を持つ模造武器を一瞬で入れ替える動作を完遂させた。
- 上限到達品を用いた確定破壊の偽装 すり替えに用いた模造品は、強化試行回数の上限に達した限界品に該当した。システムの仕様上、上限に達した装備へ追加強化を試みると百パーセントの確率で破片となって消滅する法則が存在した。
- 損失の演出と実物の搾取 客の目前で模造品を破壊してみせることで、極めて稀な強化失敗による装備消失事故を装い、本物の希少武器を自らの保管庫へと回収した。不正に獲得した武器や資金は、仲間全員の装備一式を最高水準まで強化するための費用へ充当された。
キリトによる手口の見破りと暴露
- 所有権限の保持による本物の回収 細剣の破壊宣告を受けて失意に沈むアスナに対し、キリトは操作画面の深層に存在する所有アイテムの完全実体化機能を実行させた。その結果、預け主の足元へ本物の細剣が落下して出現する事態に至った。システム上、他者に預けた武器であっても一定時間以内かつ同一の部位に新たな装備を装着しない限り所有権限が維持されるため、遠隔での実体化召喚が成立した。
- 技能の即時習得と逆換装による現行犯確保 すり替えの手法を完全に特定したキリトは、短期間で剣技の熟練度を引き上げて同一の装備即時換装機能を習得した。重装甲の鎧で正体を隠して自身の愛剣を預け、職人が模造品を破壊した瞬間に自らの換装機能を発動させて相手の保管庫から本物を手元へと引き戻し、その場で不正の動かぬ証拠を押さえた。
決着と再起への道
- 自暴自棄の制止と新たな適性の提示 犯行を認めて自死を図ろうとしたネズハに対し、キリトとアスナは制止を加えて罪の清算と迷宮突破への貢献を促した。迷宮区で入手した投擲武具である円月輪と、素手格闘の補助技能をネズハへ提供した。手元へと自動帰還する特性を備えた円月輪は、空間把握に障害を抱える彼であっても距離の制約を受けずに必中で標的を捉えられる唯一の装備となった。
- 第二層フロアボス戦における窮地の打破 牛頭の巨人が君臨するボス部屋において、広範囲に及ぶ強力な雷の息吹により攻略部隊が全滅の危機に直面した際、ネズハが放った円月輪がボスの頭上に戴く王冠を正確に射抜いて攻撃の中断に成功した。死者を一人も出すことなく戦局の逆転を導く功績を残した。
- 仲間の謝罪と被害者への弁償誓約 戦闘の終息後、背後で事情を把握したギルドの仲間たちも自らの非を認め、身に着けていた最高峰の強化装備をすべて差し出して謝意を示した。装備を換金して被害を受けた全員へ全額の賠償を行う旨を公約した。
まとめ
鍛冶屋ネズハの武器強化詐欺事件は、過酷なデスゲーム下における個人の劣等感と仲間の結束が、悪意ある教唆によって不正へと傾斜していった悲劇を物語る。システムの盲点を暴いて真実を白日の下に晒しつつ、断罪のみに終わらず新たな居場所と役割を切り拓いた結末は、絶望の仮想世界において人間性と尊厳を保ち続けるための重要な道標を示した。
第二層の戦い
アインクラッド第二層の攻略を描く物語は、第一層における指導者の戦死と孤高の存在が誕生した直後の混乱期を舞台に展開する。攻略集団の分裂や思惑の交錯、予期せぬ強敵との死闘が繰り広げられた第二層攻略の全貌について、政治的背景、裏で起きた事件、ボス戦の激闘、そして迎えた結末の視点から整理する。
攻略組の二大勢力化と政治的緊張
- 指導者喪失による集団の分裂 第一層で全体を統率したディアベルが倒れた後、前線の攻略組は青の騎士リンド率いるドラゴンナイツと、反ベータテスター感情を掲げるキバオウ率いる緑のアインクラッド解放隊という二大陣営へと分裂した。
- 功名心を巡る激しい対立 主街区ウルバスや狩場において、両勢力は階層攻略の手柄や最後の一撃による希少報酬を巡って敵対関係を深めた。中ボス戦においても敵の標的を奪い合う威嚇スキルを互いに撃ち合うなど、攻略陣営全体の機能不全すら懸念される極度の緊張状態へと陥った。
鍛冶屋ネズハの強化詐欺とチャクラムの誕生
- 装備換装機能を悪用した巧妙な手口 第二層攻略の裏側において、プレイヤー鍛冶職人ネズハによる装備すり替え詐欺が深刻な影を落とした。客から預かった高価値な希少武器を装備即時換装機能により一瞬で限界品へとすり替え、目の前で意図的に破壊させて本物を着服する工作を重ねた。キリトは所有権限保持に伴う特殊コマンドの活用や自らの技能検証を通じて、この巧妙な仕掛けを暴き出した。
- 身体的障害の克服と新たな武器の授与 不正に手を染めた背景には、仮想環境への適応不全により近接戦闘の間合いを把握できない苦悩が存在した。キリトは単なる告発や処罰を選択せず、隠し課題で取得可能な体術の技能と、空間把握の困難を補う自動帰還型の投擲武器チャクラムを提供し、戦士としての再起を後押しした。
第二層フロアボス討伐戦と壊滅の危機
- 事前情報を覆す真の支配者の出現 総勢四十七名の討伐隊が迷宮区最深部へ突入し、事前情報に存在した牛頭の将軍を打ち倒した瞬間、常識を覆して真のフロアボスであるアステリオス・ザ・トーラスキングが突如として姿を現した。
- 広範囲麻痺による前線の瓦解 ボスが放つ広範囲の雷撃ブレスを受け、両陣営の指導者を含む主力が次々と重篤な麻痺状態に陥り、前線部隊は全滅寸前の危機へ直面した。
- 潜入者による狙撃と情報屋の合流 物陰から戦況を見守っていたネズハが意を決して前線へ進出し、体術を付与したチャクラムを投擲してボスの額に輝く王冠を正確に射抜いた。致命的な息吹の予備動作を中断させて貴重な猶予を作り出すと同時に、駆けつけた情報屋アルゴが敵の行動特性と弱点情報を共有し、崩壊しかけた戦線を劇的に立て直した。
- 連携攻撃による無犠牲の完全勝利 麻痺から回復した全戦力が結束して反撃へ転じ、最後はキリトとアスナによる空中突進技の同時連撃がボスの弱点を貫いた。階層解放からわずか十日間、戦死者を一人も出すことなく完全討伐を成し遂げた。
戦いの結末と第三層への旅立ち
- 確執の解消と謝罪の決断 死線を共にした二大勢力の指導者は互いの健闘を認め合い、強固な握手を交わして結束を取り戻した。また、詐欺に関与したネズハとその仲間たちも自らの非を認めて公衆の面前で謝罪し、所持していた最高峰の装備一式を競売に掛けて全額の弁償へ充てる道を選んだ。
- 未踏の領域へ向かう前進 第一層の悲劇と第二層の摩擦を乗り越えたキリトとアスナは、互いの信頼を胸に上層へと続く螺旋階段を進み、未知の冒険が待ち受ける第三層へと歩みを進めた。
まとめ
第二層における攻略劇は、極限状態に置かれた人間集団が抱える疑心暗鬼と功名心の衝突を乗り越え、真の団結を取り戻すまでの道程を浮き彫りにした。システムの盲点を突く悪意に晒されながらも、個々の適性を見落とさず救い上げた機転と、階層の垣根を越えて結ばれた絆は、デスゲームを生き抜くプレイヤーたちの不屈の意志を力強く証明する。
アスナとキリト
仮想世界のデスゲーム初期という極限状況下において、キリトとアスナが紡いだ関係性は互いの命と精神を救い上げ、単なる攻略上の協力関係を超えた絶対的な信頼へと昇華していく。出会いから階層攻略を重ねる中で育まれた強固な結びつきについて、その過程を整理する。
絶望の中の出会いと生の実感の回復
- 第一層迷宮区での救出劇 デスゲーム開始から約一ヶ月が経過した頃、第一層迷宮区の深部で連戦の果てに倒れ込んだアスナをキリトが発見し、安全地帯へと運び出した。当時のアスナは全員の死亡を予期し、無為に過ごすくらいなら最期まで自分であり続けたいと願い、自暴自棄な戦闘を続けていた。
- 不器用な配慮と日常性の奪還 キリトは地図作成データの損失を惜しんだと強弁しつつ、トールバーナで開かれるボス攻略会議へ彼女を案内した。広場で安価な黒パンに特製クリームを添えて分け合い、宿屋での入浴機会を得た経験を通じて、アスナは食事や休息を楽しむ人間らしい生への執着を取り戻していった。
第一層ボス戦における共闘と孤高の覚悟
- 余剰人員による暫定編成 攻略会議で周囲が部隊を固める中、余剰となった二人は二人だけの部隊を結成し、ボス戦における随伴敵の処理を担当した。
- 指揮官の戦死と戦線の立て直し 統率役を務めたディアベルが戦死して陣形が瓦解しかけた際、指示に応じたアスナは深く被っていた外套を外し、持ち前の敏捷性を活かした鋭い突刺技で敵を強襲した。
- 悪名の受容と階段での誓約 戦闘後、元テスター全体への排斥を防ぐため、キリトは自身へ悪評を集める道を選んだ。単独で上層へ向かうキリトをアスナは追いかけ、互いの登録名を確認し合った上で、共に生存し強くなる意志を交わした。
第二層における関係性の進展と事件の解決
- 打ち解けた日常の交流 第二層の主街区ウルバスで合流した二人は、討伐数を競う勝負に興じ、飲食店で名物料理や菓子を巡って言葉を交わすなど、年相応の少年少女らしい親密な距離感を築いていった。
- 特殊機能による武器の奪還 鍛冶職人による強化詐欺により愛用の細剣を消失させられた際、仕組みを看破したキリトは宿室へ赴き、深層操作による完全実体化コマンドを作動させて足元へ本物の細剣を呼び戻した。
- 装備への愛着と精神的共鳴 武具を単なる数値データと見なさず、生存を支える相棒として扱うアスナの心情に対し、キリトも深い理解と共感を示した。
卓越した連携と相互評価
- 第二層フロアボス戦での空中連撃 牛頭の王が君臨するボス部屋において、広範囲麻痺攻撃によって生じた混乱を収拾した後、最後は二人の跳躍突進技を同時に命中させて弱点を貫き、死者を一人も出さずに攻略を完了させた。
- 互いの資質に対する敬意 キリトは急所を正確に捉え続けるアスナの卓越した剣技を、暗闇を照らす流星のようだと称賛した。一方のアスナも、一人で責任を背負い込もうとするキリトの不器用さを受け止め、周囲の視線に惑わされることなく自らの意志で隣に並び続ける覚悟を示した。
まとめ
過酷な環境下で始まった二人の歩みは、互いの人間性と尊厳を支え合うことで強固な絆へと成長を遂げた。命懸けの死闘を通じて培われた確固たる信頼は、過酷な仮想空間を切り拓くための最大の力として機能していく。
登場キャラクター
ドラゴンナイツ(旧ディアベル隊)
ディアベル
彼は長髪を青く染めた片手剣使いとなる。 第一層フロアボス攻略会議の主導役を担う。 元ベータテスターの過去を伏せて部隊を束ねる。 キリトの所有する強力な剣の買い取りを試みる。
・所属組織、地位や役職 第一層フロアボス攻略隊・リーダー(自称ナイト)。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層フロアボス攻略会議を招集して攻略隊をまとめた。 ボス戦においてラストアタック獲得を目指して前進する。 ベータ版と異なるボスの連撃を受けて命を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アインクラッド初のボス攻略戦で最初の戦死者となった。 彼の死は攻略隊の分裂やキリトのビーター化に強い影響を与える。
リンド
彼は青いマントを羽織るシミター使いとなる。 ディアベルのパーティーで前衛を務める。 ディアベルの死後に彼の遺志を継ぐ立場をとる。 キバオウ率いる解放隊と競い合いながら攻略を進めていく。
・所属組織、地位や役職 旧ディアベル隊・メンバー。のちに青グループ(ドラゴンナイツ)のリーダーとなる。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層フロアボス攻略戦で前線の指揮を執った。 討伐後にキバオウと健闘を称え合い握手を交わす。 ネズハたちの処分についてオークションによる弁償を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ディアベルの死後に攻略組の二大勢力の一角を率いる存在となった。 髪を青く染めてディアベルの面影を継承している。
シヴァタ
彼は青いダブレットを着る片手直剣使いとなる。 リンドが率いる青グループに所属する。 自身の愛剣であるスタウトブランドを大切に扱う。 ネズハに武器の強化を依頼する。
・所属組織、地位や役職 ドラゴンナイツ(旧ディアベル隊)・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果 ネズハにスタウトブランドの強化を預けた。 強化詐欺により愛剣をエンド品へとすり替えられて失ってしまう。 ボスの討伐後にネズハへ真相を問い詰めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 強化詐欺の被害者となり、下位の武器で第二層ボス戦を戦い抜いた。
アインクラッド解放隊
キバオウ
彼は茶色の髪をサボテンのように逆立てた片手剣使いとなる。 元ベータテスターへの強い敵意を表明する。 初心者や一般プレイヤーの権利主張を代弁していく。 キリトに対して警戒心と対立姿勢を向け続ける。
・所属組織、地位や役職 E隊・リーダー。のちにアインクラッド解放隊のリーダーとなる。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層攻略会議で元ベータテスターの責任を非難した。 アルゴを通じてキリトの武器を高額で買い取ろうと試みる。 第二層フロアボス戦で麻痺に陥りながらも戦線を維持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 攻略組における二大勢力の一角として解放隊を設立した。 はじまりの街での大規模な人員募集と組織化を計画している。
レジェンド・ブレイブス
ネズハ
彼は小柄で真面目な印象を与える生産職のプレイヤーとなる。 フルダイブ不適合により遠近感をうまく掴めない問題を抱える。 仲間の足手まといになる恐れから鍛冶屋へと転向した。 キリトからチャクラムと体術を授けられる。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・鍛冶屋(ナタク)。
・物語内での具体的な行動や成果 クイックチェンジを悪用して依頼された武器をすり替える詐欺を行なった。 キリトにすり替えの仕掛けを見破られてしまう。 第二層フロアボス戦でチャクラムを投げ、ボスの雷ブレスを阻止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 鍛冶屋を廃業して投擲武器を扱う戦闘職へ転向した。 第二層ボス戦の全滅の危機を救う功労者となる。
オオルランド
彼はタマネギ頭のバシネットを被る片手直剣使いとなる。 レジェンド・ブレイブスのリーダーを務める。 ネズハを仲間として気にかける。 全身の装備を高く強化して戦力向上を図っていく。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果 ネズハに強化詐欺を行わせて資金を得ていた。 第二層フロアボス戦で高強化防具を活かして前線で戦う。 戦闘後にネズハの隣でひざまずき罪を自白した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 全所持装備をオークションに出して被害者への弁償に充てた。
ベオウルフ
彼は小柄な体格の両手剣使いとなる。 レジェンド・ブレイブスに所属する。 オルランドと共に前線へ進出していく。 高強化の装備を身につけて戦う。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・メンバー(両手剣使い)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層フィールドボスおよびフロアボス攻略戦に参加した。 オルランドと共に前線でボスに立ち向かっていく。 事件後に装備を床に置いて謝罪した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ネズハの罪を共にかばい自白を行なった。
クフーリン
彼は痩せた体格の両手槍使いとなる。 レジェンド・ブレイブスに所属する。 仲間と共に最前線攻略を目指していく。 高強化の装備を整えて戦線に立つ。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・メンバー(両手槍使い)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層でのボス攻略戦にリザーブとして参加した。 オルランドやベオウルフと共に戦いを展開する。 事件発覚後に所持装備を提出して膝をついた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ネズハの不正による利益を受け取っていたことを認めた。
ギルガメシュ
彼は盾持ちのハンマー使いとなる。 レジェンド・ブレイブスに所属する。 第二層フロアボス戦から攻略レイドに加わる。 フル強化された防具で敵の攻撃に耐えていく。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・メンバー(ハンマー使い)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層フロアボス戦で前線に張り付いて攻撃を防いだ。 ボスのナミング攻撃を高い耐性で耐え抜いていく。 真相判明後に武具を手放して謝罪した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高い防具強化値によって前線での存在感を示した。
エンキドゥ
彼は革装備のダガー使いとなる。 レジェンド・ブレイブスに所属する。 チームの仲間と共に前線へ加わっていく。 高い能力値を装備強化で補う。
・所属組織、地位や役職 レジェンド・ブレイブス・メンバー(ダガー使い)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層ボス戦において仲間と共に前線で奮闘した。 ネズハの自白後に他のメンバーと並んでひざまずく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 不正に得た資金で装備を強化していた事実を受け入れた。
風魔忍軍
コタロー
彼は灰色の忍装束を纏うプレイヤーとなる。 風魔忍軍のメンバーとして活動する。 敏捷力数値を極限まで高めている。 隠しスキルである体術の情報を追い求めていく。
・所属組織、地位や役職 風魔忍軍・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果 アルゴを追い詰めて体術スキルの情報を要求した。 乱入したキリトと対峙していく。 現れた野牛モンスターに追われて逃走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベータテスト時代から素早さで知られたギルドの忍者となる。
イスケ
彼はコタローと共に行動する忍者プレイヤーとなる。 風魔忍軍に所属している。 忍者としてのスタイルにこだわりを持つ。 語尾にござるをつけて会話を進める。
・所属組織、地位や役職 風魔忍軍・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果 アルゴに体術スキルの開示を迫った。 コタローと共にキリトを伊賀者と誤認してしまう。 巨大野牛の出現を受けて撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 忍者のロールプレイを徹底して行動している。
無所属・その他
キリト(桐ヶ谷和人)
彼は黒いコートを羽織る片手直剣使いとなる。 ソロプレイヤーとして効率的な攻略を追及していく。 元ベータテスター全体の保護のために悪役を引き受ける。 自身をビーターと名乗って孤立を選択した。
・所属組織、地位や役職 ソロプレイヤー(ビーター)。
・物語内での具体的な行動や成果 倒れたアスナを助けて攻略会議へ誘った。 第一層ボスを討伐してラストアタック報酬を獲得する。 ネズハの強化詐欺の仕掛けを見破って回収した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ビーターとして最前線の全プレイヤーから警戒される存在となった。
アスナ(結城明日奈)
彼女は栗色のロングヘアを持つ細剣使いとなる。 兄のナーヴギアを使用してSAOへログインした。 最初は自暴自棄な精神状態で戦っていた。 キリトとの出会いを通じて生き残る意志を取り戻していく。
・所属組織、地位や役職 ソロプレイヤー(細剣使い)。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層および第二層のボス戦で高いクリティカル精度を発揮した。 ネズハの詐欺によりウインドフルーレを失いかける。 所有アイテム完全オブジェクト化により愛剣を取り戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 最前線で唯一の女性トッププレイヤーとして知られるようになる。
アルゴ
彼女は頬に三本線のペイントを施した情報屋となる。 鼠のアルゴの通称で広く知られている。 買える情報はすべて売る方針を掲げる。 初心者のために攻略本を無料配布していく。
・所属組織、地位や役職 情報屋(通称・鼠のアルゴ)。
・物語内での具体的な行動や成果 キリトへアニールブレード買取りの代理交渉を行なった。 第一層および第二層の攻略本を作成して配布する。 第二層ボス戦でアステリオス王の弱点情報を持ち込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 最前線のプレイヤーたちへ不可欠な情報提供を行なっている。
エギル
彼はスキンヘッドでチョコレート色の肌を持つ両手斧使いとなる。 至極堂々とした態度で仲間を率いていく。 元ベータテスターへの不当な追及に対して反論する。 キリトたちの実力を高く評価した。
・所属組織、地位や役職 B隊・リーダー。H隊・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果 攻略会議でアルゴの無料攻略本を示して場を鎮めた。 第二層ボス戦で麻痺したキリトとアスナを庇って前線に立つ。 キリトとアスナを自分のパーティーへ招き入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 攻略組の中で信頼される壁役リーダーとして活躍している。
クライン
彼はキリトがゲーム開始初日に出会った友人となる。 侍風の装備を好む片手刀使いとなる。 デスゲーム開始時に仲間を守るためキリトと別れた。 はじまりの街周辺で慎重に育成を進めていく。
・所属組織、地位や役職 ソロプレイヤー(のちにギルドリーダー)。
・物語内での具体的な行動や成果 デスゲーム初日にキリトから基本操作を習った。 リアルの知人たちを見捨てずに共に行動することを選ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 キリトが心の中で常に無事を気に掛ける存在となっている。
茅場晶彦
彼はSAOの開発者でありゲームマスターとなる。 全感覚投入型VRマシンであるナーヴギアを開発した。 プレイヤーを一万人閉じ込めてデスゲームを開始していく。 自身の姿を巨大な赤いローブの巨人として現した。
・所属組織、地位や役職 SAO開発者。ゲームマスター(GM)。
・物語内での具体的な行動や成果 デスゲーム開始時にログインアウトボタンを削除した。 プレイヤー全員のアバターを現実の容姿へと変化させる。 全百層の踏破を唯一の解放条件として提示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アインクラッド世界の絶対的な支配者として君臨している。
結城浩一郎
彼は結城明日奈の歳の離れた兄となる。 大手電子機器メーカーの社長の長男となる。 ナーヴギアとSAOのパッケージを自ら購入した。 海外出張のためプレイを断念していく。
・所属組織、地位や役職 レクト代表取締役社長の長男。
・物語内での具体的な行動や成果 SAOの正式サービス開始前日に出張へ出かけた。 自分の部屋にナーヴギアをセットしたまま放置してしまう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 彼が置いた機器をアスナが使用したことで事件に巻き込まれる原因となった。
リュフィオール
彼は三本ツノのヘルメットを被るノームの戦士となる。 最前線近くで活動する高レベルプレイヤーとなる。 自身の武器であるアニールブレードの強化に執着していく。 四連続で失敗して取り乱してしまう。
・所属組織、地位や役職 前線プレイヤー。
・物語内での具体的な行動や成果 ネズハにアニールブレードの強化を依頼した。 四連続失敗により数値がプラスゼロに戻り激怒する。 ネズハから八千コルでエンド品を買い取られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ネズハの強化詐欺の被害者の一人となった。
Hokkkura(北海いくら)
彼は三叉槍をメイン武器とするプレイヤーとなる。 第一層フロアボス攻略隊に参加する。 名前の読み方は北海いくらとなる。 前線で戦う実力を備えていく。
・所属組織、地位や役職 第一層フロアボス攻略隊・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層フロアボス討伐戦に三叉槍使いとして参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 初期攻略組の一人として前線で活動した。
黒いエナメルポンチョの男
彼は顔を隠す黒いマントを羽織る正体不明の男となる。 レジェンド・ブレイブスの前に突如現れた。 プレイヤー間の秩序を乱す思想を持つ。 巧みな話術でネズハたちを唆していく。
・所属組織、地位や役職 正体不明のプレイヤー。
・物語内での具体的な行動や成果 クイックチェンジを使った強化詐欺の手口をネズハたちへ教えた。 見返りや利益の分配を一切要求せずに去っていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 プレイヤー同士の猜疑心や暴力を誘発させようと暗躍した。
集団
第一層フロアボス攻略隊(レイド部隊)
第一層フロアボスを倒すために集まった四十四名の集団となる。 ディアベルの呼びかけによって結成された。 元ベータテスターと新規プレイヤーが混在していく。 七つの六人パーティーと二人のおまけパーティーで構成された。
・所属組織、地位や役職 四十四名の合同レイド部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層迷宮区最上階でボス部屋へ突入した。 ディアベルの死闘とキリトの指揮のもとでイルファングを討伐していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アインクラッドで初めてフロアボスを撃破した集団となった。
ドラゴンナイツ
ディアベルの死後にリンドが率いるようになった攻略集団である。旧ディアベル隊のメンバーを中心に構成され、青いダブレットやマントを統一装備として着用していた。効率的な最前線攻略とラストアタック獲得を目指していた。
・所属組織、地位や役職 青グループ(最前線攻略ギルド)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層のフィールドボスおよびフロアボス戦で主力として戦った。 リンドがボスのラストアタックを獲得していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アインクラッド最前線における二大勢力の一角となった。
アインクラッド解放隊
キバオウが率いる反ベータテスターの攻略集団である。緑色の胴衣を統一装備として着用し、一般プレイヤーの育成や数の力によるゲーム攻略を重視していた。
・所属組織、地位や役職 緑グループ(最前線攻略ギルド)。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層ボス戦に三パーティー十八名で参加した。 前線でボスの攻撃に耐えて戦い抜いていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ドラゴンナイツと並ぶ攻略組の二大勢力へと成長した。
レジェンド・ブレイブス
英雄や神の名を戴くプレイヤー集団となる。 オルランドをリーダーとして結成された。 全員が全身の装備を高レベルまで強化していく。 最前線攻略組への仲間入りを果たそうとする。
・所属組織、地位や役職 最前線進出チーム。
・物語内での具体的な行動や成果 ネズハの強化詐欺で得た資金で装備をフル強化した。 第二層フロアボス戦で高い防具耐性を生かして活躍していく。 戦闘後に詐欺の罪を告白して全装備を売りに出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 罪の自白と弁償により一から出直す道を選んだ。
風魔忍軍
忍者風の装備を身につけたプレイヤー集団である。コタローやイスケらが所属し、高い敏捷力を生かして活動していた。第二層では隠しスキル《体術》の情報を求め、アルゴを追跡していた。
・所属組織、地位や役職 忍者ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果 アルゴを追跡して体術スキルの情報を迫った。 野牛モンスターの出現により撤退を余儀なくされていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベータテスト時代から独自のスタイルで知られている。
A隊
重装甲の防御型プレイヤーを中心に編成された部隊となる。 第一層および第二層フロアボス戦に参加する。 ボスのタゲを引き受ける壁役を担当していく。 ヒーターシールドなどを掲げて衝撃に耐える。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・壁部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボス戦で最前線に突進してタゲを取った。 第二層ボス戦でも壁役としてボスの攻撃を防いでいく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 レイド戦術の要として前線防御を支えた。
B隊
エギルがリーダーを務める両手斧主力の部隊となる。 高い耐久力と威力を備えたプレイヤーが集まる。 ボスの攻撃に耐えながら反撃を行なっていく。 キリトたちのピンチを庇う役割を果たす。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・壁兼火力部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボス戦で崩れかけた戦線を立て直した。 第二層ボス戦でリンド隊と共にメインの攻撃を担当していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 非常に安定した戦力としてレイドの危機を救った。
C隊
ディアベルが直接率いたパーティーとなる。 のちにリンドやシヴァタたちが中心となる。 ディアベルの死後に激しいショックを受けた。 ボスのラストアタック獲得に執念を燃やしていく。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・主力攻撃部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボス戦でボスの主要HPゲージを削った。 ディアベルの死後にキリトを激しく糾弾していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ドラゴンナイツ設立の母体となった。
D隊
長身の両手剣使いがリーダーを務める部隊となる。 高機動高火力の攻撃を担当する。 第一層および第二層フロアボス戦に参加していく。 壁部隊のスイッチに合わせて攻撃を撃ち込む。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・攻撃部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボスの二本目のHPゲージを削り取った。 第二層ボス戦でも火力担当として成果を上げていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 レイド部隊の主要な火力源として貢献した。
E隊
キバオウが率いる遊撃・取り巻き殲滅部隊となる。 元ベータテスターへの対立意識を持つ者が集まる。 取り巻きモンスターの討伐を優先担当していく。 手柄やラストアタックに強いこだわりを見せる。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・取り巻き処理部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボス戦でセンチネルのタゲを取って処理した。 第二層ボス戦でもキバオウのもとで前線に立っていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アインクラッド解放隊の母体となった。
F隊
長柄武器を装備した支援部隊となる。 長距離からの行動遅延スキルをメインに使う。 第一層および第二層ボス戦で敵の動きを阻害していく。 後方からのサポートに徹する。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・支援部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第一層ボス戦でボスの攻撃をスキルで阻止した。 第二層ボス戦でメイン火力として貢献していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 阻害スキルによる安定した支援を提供した。
G隊
長柄武器装備の支援部隊(のちにレジェンド・ブレイブス)となる。 第一層ではF隊と共に支援を担当した。 第二層ではレジェンド・ブレイブスの五人がG隊を務めていく。 高い防具強化値でボスの猛攻に耐え抜いた。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・支援兼火力部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 第二層ボス戦でナミング攻撃を耐えながら貼り付いて攻撃した。 ボスのHPを大幅に削る活躍を見せていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 第二層ボス戦において大きな存在感を示した。
H隊
キリト、アスナ、エギルとその仲間で構成された部隊となる。 あぶれ者の二人とエギル隊が合流して成立した。 取り巻きモンスターの処理と非常時の補佐を担当していく。 ボス戦の危機において決定的な働きを見せる。
・所属組織、地位や役職 フロアボス攻略レイド・八番目の部隊。
・物語内での具体的な行動や成果 ナト大佐を撃破し、真ボスのアステリオス王戦で戦線を支えた。 キリトとアスナの二連撃でボスのラストアタックを決めていく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 死者ゼロでの第二層完全攻略を達成させた。
元ベータテスター
SAOのクローズドベータテストに参加した経験者たちとなる。 豊富な知識とゲーム経験を保持している。 新規プレイヤーたちから情報独占の責任を追及されていく。 死者の発生に伴い隠伏や孤立を強いられた。
・所属組織、地位や役職 ベータテスト経験者集団。
・物語内での具体的な行動や成果 デスゲーム開始直後に先の村へダッシュして攻略を進めた。 アルゴを通じて攻略情報を匿名で提供していく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新規プレイヤーからの憎悪の対象となり、キリトがビーターを自称することで守られた。
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展開まとめ
星なき夜のアリア
迷宮で出会ったレイピア使い
SAOがデスゲームと化して約一か月が経過した頃、キリトは第一層迷宮区の最前線で、コボルドを相手に凄まじい速度の《リニアー》を放つレイピア使いと遭遇した。剣技の完成度に反して戦い方は危険であり、キリトがオーバーキルだと指摘すると、相手はその意味すら知らなかった。
レイピア使いは三、四日も迷宮に籠まり続け、安全地帯で休みながら戦っていた。キリトがそんな戦い方では死ぬと警告すると、彼女は一か月で二千人が死亡しながら第一層すら突破できていない以上、全員いずれ死ぬのだと答えた。その直後、疲労の限界に達して倒れたため、キリトは彼女を迷宮の外まで運び出した。
目を覚ましたレイピア使いは、結城明日奈ことアスナであった。兄が購入したナーヴギアを偶然使ったことでSAOに囚われたアスナは、当初はじまりの街に閉じこもって救出を待っていた。しかし外部から助けが来ず、死亡者だけが増えていく現実を知り、ただ怯えて待ち続けるより、自分の力を使い切って死のうと考えて街を出ていた。
キリトは彼女を救ったのではなく、未踏破区域のマップデータが失われるのを惜しんだだけだと説明した。アスナがデータを渡して迷宮へ戻ろうとすると、キリトはトールバーナで第一層フロアボス攻略会議が開かれると教えた。
クリームパンとアスナの本心
トールバーナへ戻ったアスナは、最低価格の黒パンを食べていたところで再びキリトと出会った。キリトはクエスト報酬のクリームを黒パンに塗り、アスナにも勧めた。仮想の食事に価値を感じていなかったアスナだったが、その味に夢中になった。
キリトから何のために戦っているのか尋ねられたアスナは、はじまりの街で腐るように生きるより、最後まで自分自身でありたいと明かした。怪物に殺されても、この世界そのものには負けたくないと考えていたのである。
それを聞いたキリトは謝罪しかけた。元ベータテスターだったキリトは、豊富な知識を持ちながら自分だけが生き残るために使い、他の初心者たちを救わなかったことへの負い目を抱えていた。しかし説明する前に攻略会議の時間となり、二人は広場へ向かった。
第一層ボス攻略会議
攻略会議には四十四人が集まった。主催者のディアベルは、自らを気持ち的にはナイトだと名乗り、第一層を突破してSAOが攻略可能であることを示そうと呼びかけた。
そこへキバオウが異議を唱えた。彼は、元ベータテスターが有利な情報や狩場を独占したため多くの初心者が死亡したと非難し、攻略に参加する元テスターは謝罪して資産を差し出すべきだと主張した。自身も元テスターであるキリトは沈黙した。
しかしエギルが、各地で無料配布されているアルゴの攻略本を示した。その情報源は元ベータテスター以外には考えられず、彼らの知識自体は初心者にも公開されていたと指摘した。ディアベルも今は責任追及より第一層突破を優先すべきだとまとめ、対立はいったん収まった。
翌日、迷宮最上階でボス部屋が発見され、《イルファング・ザ・コボルドロード》の情報も判明した。さらにアルゴがベータテスト時代の情報をまとめた攻略本を無料配布し、取り巻きの出現回数や攻撃パターンまで共有された。
部隊編成では周囲が次々とパーティーを作る中、キリトとアスナだけが残った。二人は仕方なくパーティーを組み、そこでキリトは初めて彼女の名前がAsunaであることを知った。二人は取り巻きコボルドの討ち漏らしを処理する役目を与えられた。
農家の部屋と入浴
攻略会議後、キリトはネットゲーム初心者のアスナに、スイッチなどの戦闘知識を説明することになった。人目を避けられる場所を探す中、キリトが借りている農家の二階には広い部屋や大きなベッド、風呂まであると聞いたアスナは強く興味を示した。
アスナは睡眠だけは現実の身体にも影響する本物の行為だと考えており、粗末な宿では悪夢に悩まされていた。そのため、キリトの部屋で風呂を借りることにした。久々に湯船へ浸かったアスナは、仮想世界の風呂であっても強い安堵を覚えた。
それまで彼女は、いつ死んでも構わないと考えていた。しかしクリームパンをもう一度食べたい、風呂にもまた入りたいという欲求が生まれ、仮想だから偽物だと切り捨てていたものにも意味があるのではないかと思い始めた。
その最中、情報屋のアルゴがキリトの部屋を訪れた。アルゴは以前から匿名の依頼人に頼まれ、キリトの《アニールブレード+6》を高額で売るよう交渉していた。提示額は約四万コルに達していたため、キリトは依頼人の名前を買い取った。
アルゴが明かした人物はキバオウであった。しかしキリトは、キバオウがそれほどの資金を持ちながら自分の装備を更新していないことに違和感を抱いた。その後、アルゴが誤って浴室へ入り、入浴中のアスナと鉢合わせしたことで騒動となった。
第一層フロアボス戦
翌朝、四十四人の攻略隊は第一層迷宮区へ向かった。道中、アスナは大人数で歩く様子を修学旅行に重ね、キリトと他愛のない会話を交わした。キリトが攻略生活はいずれ日常になると語ると、アスナは何年もこの世界で生きることのほうが死ぬことより怖いと答えた。しかしキリトが上層にはもっと豪華な風呂があると告げると、彼女は思わず興味を示した。
ボス部屋で《イルファング・ザ・コボルドロード》との戦闘が始まった。序盤は攻略本どおりに進み、各部隊は取り巻きのセンチネルを処理しながらボスのHPを削っていった。
しかし最後のHPゲージに入ったイルファングは、攻略本に記載された曲刀ではなく野太刀を抜いた。キリトは正式サービス版で武器と攻撃パターンが変更されていたことに気づいたが、ディアベルはラストアタックを狙って単独で突撃した。
ボスはベータ版にはなかったカタナスキルを放ち、ディアベルを瀕死に追い込んだ。キリトが駆け寄ると、ディアベルも元ベータテスターだったことを察した。さらにキリトは、以前自分のアニールブレードを買おうとしていた真の依頼人が、ディアベルだったのではないかと考えた。ディアベルは元ベータテスターであり、ベータ時代にラストアタックを数多く獲得していたキリトを知っていた可能性があった。キリトは、ディアベルが自分の戦闘力を落とし、ボスのラストアタック報酬を得ようとしていたのだと推測した。
ディアベルはキリトに後を託し、そのまま消滅した。
ビーターの誕生
指揮官を失った攻略隊は動揺した。撤退すれば未知のカタナスキルによって背後から多くの死者が出る可能性があり、このまま戦っても危険であった。キリトは戦闘継続を決断し、アスナやエギルたちと共にイルファングへ挑んだ。
キリトは自らボスの攻撃を受けながらパターンを見極め、アスナと連携して戦った。途中で攻撃を読み違えて大ダメージを受けたが、エギルたちの援護によって立て直した。最後はアスナの《リニアー》に続いてキリトが《バーチカル・アーク》を叩き込み、イルファングを倒した。
勝利後、キバオウはディアベルが死亡した責任を元ベータテスターに求めようとした。キリトはこのままでは元テスター全体への敵意が強まり、攻略組が分裂すると考えた。そこで自らを通常のベータテスターとは違い、彼らすら知らない情報を独占していた者だと偽って強調した。
キリトはベータテスターとチーターを合わせた《ビーター》という呼び名を受け入れ、他の元テスターから憎悪を自分一人へ向けさせた。そしてラストアタック報酬の黒いコートを装備し、一人で第二層へ進んだ。
しかしアスナは彼を追いかけた。キリトが名を尋ねると、彼女はアスナと名乗り、キリトも自分の名を告げた。第一層で死ぬことだけを考えていたアスナは、次の層へ進む道を選んでいた。
儚き剣のロンド
第二層での再会
第一層攻略から数日後、第二層主街区ウルバスではキリトが《ビーター》として知られるようになっていた。キリトは目立たないよう行動しながら攻略を進めていたが、街でアスナと再会した。
アスナは第一層で使っていた武器から《ウインドフルーレ》へ持ち替え、前線で戦い続けていた。二人は再び共に行動するようになり、第二層の牛型モンスターやクエストを攻略していった。
一方、第一層でディアベルが率いていた攻略組は、彼の死後に二つの勢力へ分かれつつあった。ディアベルの意志を継ごうとするリンドの集団と、キバオウを中心とする集団である。両者は競争するように第二層攻略を進めていた。
ウインドフルーレの消失
アスナは武器強化を行うため、プレイヤー鍛冶屋ネズハへウインドフルーレを預けた。強化成功率を高める素材を用意していたにもかかわらず、鍛冶中に剣は砕け散った。
アスナは大切な剣を失った衝撃を受けたが、ネズハ自身も強く動揺して謝罪したため、故意だとは考えなかった。しかしその後、アスナが所有アイテムをすべてオブジェクト化すると、砕けたはずのウインドフルーレが戻ってきた。
キリトとアスナは、単なる強化失敗ではなく、何らかの方法で武器がすり替えられた可能性を疑った。アルゴへ調査を頼むと、通常の強化失敗で武器が破壊されることはないが、強化可能回数を使い切った武器にさらに強化を試みれば必ず破壊されると判明した。
ネズハの強化詐欺
二人はネズハの店を監視し、別の客が強化を依頼した武器が同様に破壊される場面を確認した。キリトは強化時の光に紛れて、ネズハが一瞬だけ武器を入れ替えていると推測した。
キリトは片手剣スキルの熟練度を上げ、《クイックチェンジ》を習得したうえで変装し、自分のアニールブレードをネズハへ預けた。ネズハはキリトの剣を、外見が同じで強化回数を使い切った別のアニールブレードへ瞬時に交換し、その偽物を鍛冶によって破壊した。
キリトは同じクイックチェンジを使って本物のアニールブレードを取り戻し、正体を明かした。詐欺の手口は、預かった武器を同型品と入れ替え、強化失敗を装って本物を奪うというものであった。
ネズハは、仲間であるオルランドたち《レジェンド・ブレイブス》のために詐欺へ加担していた。彼らは能力値では攻略組に及ばなかったため、騙し取った武器や金を装備強化へ注ぎ込み、最前線へ追いつこうとしていたのである。
さらに、この手口自体は正体不明の黒いポンチョの男から教えられたものだった。その男は利益の分配さえ要求しておらず、目的も不明であった。
ネズハの再出発
キリトは詐欺を公表すれば、ネズハだけでなくプレイヤー社会に処刑などの危険な前例を生みかねないと考えた。アスナもネズハを単純に断罪するのではなく、奪ったものを可能な限り返させる道を選んだ。
ネズハは鍛冶屋を廃業し、戦闘に参加する決意を固めた。しかし彼には近接武器を扱う適性が乏しかった。そこでキリトは、遠距離から攻撃できる投擲武器チャクラムを渡した。ネズハはそれを練習し、自分にも前線で役割を果たせる可能性を見いだした。
一方、リンドとキバオウの対立は続き、攻略隊は青と緑の二勢力に分かれていた。それでも第二層迷宮区の攻略は進み、やがてフロアボスへの挑戦が決まった。
第二層フロアボス戦
第二層の攻略隊は、ベータテスト時代のボス《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》を想定して戦闘を開始した。キリトたちは幹部格の牛型モンスターを倒し、本隊も順調に戦っていた。
しかしバラン将軍のHPが残っている段階で、さらに巨大な《アステリオス・ザ・トーラスキング》が出現した。攻略隊はバラン将軍との戦闘を続けながら、ベータ版には存在しなかった真のフロアボスにも対処しなければならなくなった。ベータ版には存在しなかった真のフロアボスであり、強烈な雷ブレスには麻痺効果まで備わっていた。
予想外の攻撃によってリンドやキバオウを含む攻略隊は麻痺し、壊滅寸前となった。その中で動けたネズハがチャクラムを投げ、単独でアステリオス王の注意を引きつけた。彼は何度も遠距離攻撃を当てながら逃げ続け、仲間たちが麻痺から回復する時間を稼いだ。
そこへアルゴが現れ、ボスの攻撃情報を提供した。攻略隊は戦術を立て直し、リンドとキバオウも戦闘続行を選んだ。ネズハのチャクラムは雷ブレスを妨害する重要な役割を果たし、レジェンド・ブレイブスも強化された装備を生かして前線を支えた。
キリトとアスナ、エギルたちも総攻撃へ加わり、攻略隊はアステリオス王のHPを削り切った。第二層攻略に要した期間は十日であり、第一層とは異なりボス戦で一人の死者も出さずに勝利した。
第三層への道
ボス戦の終了後、ネズハは攻略隊の前で武器強化詐欺を告白した。被害者たちから激しい非難を受け、処刑を求める声まで上がったが、キリトはそれを阻止しようとした。詐欺の手口を教えた黒いポンチョの男が、プレイヤー同士の殺害を誘発しようとしていた可能性を考えたためである。
その後、オルランドをはじめとする〈レジェンド・ブレイブス〉の五人も、ネズハに詐欺をさせていたことを認め、全員で謝罪した。リンドとキバオウは、彼らの装備を売却して被害者への弁償に充てる方針を決めた。ネズハは処刑されず、仲間たちも詐欺の責任を引き受けることになった。
戦闘後、リンドとキバオウは互いの健闘を認めて腕を取り合った。対立そのものが消えたわけではなかったが、ボス攻略では協力できることを示した。
キリトは今回の戦いから、今後のボスについてもベータテスト時代から仕様が変更されている可能性を前提にしなければならないと考えた。また、周辺クエストを可能な限り攻略して情報を集め、事前偵察も必要になると理解した。ネズハについては第二層攻略の大きな功労者と認め、いつか最前線へ戻ってくることを願っていた。
ネズハは第二層攻略の中心人物となりながらも、戦いが終わると最前線から離れていった。キリトは彼こそ第二層攻略の真の功労者だと考え、いつか戻ってくることを願った。
第三層へ続く階段を上りながら、アスナはキリトがボスのラストアタックを取ったのではないかと追及した。キリトは答えを誤魔化しながら先へ進んだ。
二人の前には、古木の中で剣を交える二人の長耳の剣士が刻まれた扉が現れた。キリトは第三層から本格的なSAOの攻略が始まると呟き、アスナと共に新たな層へ踏み出そうとしていた。
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