- 娘を誘拐されて激怒するおっさん。それでも最後は「うちの子カワイイ」
- ※以下、第3巻の内容に触れるネタバレ感想である。
- ラビのためなら高価な魔道具も惜しくない
- 失敗を怖がるラビに、ダグラスが伝えた言葉
- ラビの魔法がついに覚醒。父親のほうが大喜び
- 英雄としての名声より、娘との平穏な暮らしが大切
- 『豚の夜鳴き亭』が全壊。娘を誘拐されたダグラスの怒り
- 賢者エドモンドの要求があまりにも身勝手
- エドモンドを圧倒する戦闘。怒った父親は容赦しない
- 「今度は私がお父さんを守る」。ラビの言葉がうれしい
- 勇者アランの呪いを解く。復讐ではなく過去との決着
- 壊れた宿屋を再建する。お金を出すだけでは解決しない
- 女性大工カトリとの出会い。能力より見た目で判断される理不尽さ
- カトリの図面に込められた思いやり。本当に大切なのは技術だけではない
- エルフの集落で木材を調達。以前の縁が新しい助けになる
- 植林地の整備まで一瞬。ダグラスの魔法が便利すぎる
- 地鎮祭で女性を排除しようとする理不尽な決まり
- 完成間近の屋根を破壊される。カトリが傷つく姿がつらい
- 職人たちの態度が変わる。偏見を乗り越えて宿屋を完成させる
- サマーキャンプに行きたい娘。おっさんの過保護ぶりが爆発する
- 親に隠れてキャンプを見守る。最強スキルの使い道がおかしい
- エルフのニキへの差別。ラビが見せた精神的な成長
- ニキを回復魔法で治す。ラビが守られるだけの子ではなくなった
- 国王から王立騎士団長への誘い。それでも娘が一番
- 第3巻で印象に残ったのは、ダグラスの強さより人との関わり方
- まとめ|過去に決着をつけ、娘と新しい居場所を作る物語
- 一話 おっさんと少女、ふたりでお買い物
- 二話 おっさんと少女、学習教材を手に入れる
- 三話 おっさんと少女、雨の夜の過ごし方
- 四話 おっさんと少女、失敗を恐れないということ
- 五話 おっさんと少女、眠っていた魔力を目覚めさせる
- 六話 おっさんと少女、記念日について話す
- 七話 おっさん、ケットシーからサインを求められる
- 八話 おっさん、ファンレターの山を渡される
- 九話 おっさん、激怒する
- 十話 おっさん、かつての仲間と対峙する
- 十一話 おっさん、賢者エドモンドを成敗する
- 十二話 おっさんと少女、守り守られる
- 十三話 おっさん、娘にとって恥ずかしくない父親でありたいと思う
- 十四話 おっさんと少女、お見舞いに行く
- 十五話 おっさんと少女、職人探しをする
- 十六話 おっさんと少女、娘を初めて馬車に乗せる
- 十七話 おっさんと少女、おやつタイムを楽しむ〜ゴロゴロ林檎のアップルパイと暑い日に最高レモン水〜
- 十八話 おっさんと少女、懐かしい人々と再会する
- 十九話 おっさんと少女、夏の林業を手伝う
- 二十話 おっさんと少女、エルフの宴に招待される
- 二十一話 おっさん、才能の片鱗を見いだす
- 二十二話 おっさんと少女、材木店を見学する
- 二十三話 おっさんと少女、地鎮祭に参加する
- 二十四話 おっさんと少女、建前を楽しむ
- 二十五話 おっさんと少女、傷ついた仲間に寄り添って励ます
- 二十六話 おっさん、職人たちの架け橋となる
- 二十七話 おっさんと少女、新『豚の夜鳴き亭』の誕生を喜ぶ
- 二十八話 おっさん、過保護レベルも世界一
- 二十九話 おっさんと少女、語り合う夜のはなし
- 三十話 おっさん、テントを張る少女たちを見守る
- 三十一話 おっさん、子供たちのケンカを見てハラハラする
- 三十二話 おっさん、娘の歩んでいく道に想いを馳せる
- 三十三話 おっさん、王立騎士団団長へのスカウトをあっさり断る
物語の概要
■ 作品概要
愛娘となった少女ラビと共に旅を続け、再び大都市バルザックへ戻ってきた元強化魔術師のダグラス。
ダグラスは取り置きを頼んでいた防犯用魔道具の受け取りや、自身を英雄視するかわら版への抗議、元仲間である勇者アランの動向確認を果たすため、フードを目深に被って街へ入る。
しかし、魔道具の入手やラビの魔法覚醒を経て平穏な生活を目指す矢先、かつて勇者パーティーで仲間だった賢者エドモンドが宿屋『豚の夜鳴き亭』を全壊させ、ラビを連れ去る事件が発生したことで状況が一変する。
ダグラスはエドモンドを打倒してラビを取り戻し、病床のアランを蝕んでいた呪詛返しを解呪して過去の因縁に決着をつける。
さらに大破した友人の宿屋を再建するため、獣人の大工カトリや親交のあるエルフたちと協力して困難を乗り越え、子供たちのサマーキャンプを通じて娘の精神的成長を見届ける。
最終的に、国王からの王立騎士団長就任の勅命を「育児で忙しい」と断った結果、翌朝宿屋を五十人余りの憲兵隊に完全包囲されるところまで状況が進む。
■ 主要キャラクター
ダグラス・フォード
- 立場・所属:元勇者パーティー所属の強化魔術師。現在はギルドに属さない流れ者で、ラビの父親。
- 主人公との関係:主人公本人。
- この巻での主な役割:ラビの養育と防護、エドモンドの撃破とアランの解呪、宿屋再建の主導。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ラビの安全を守るため高額な魔道具や教材を購入し、娘の魔法覚醒を支える。ラビを誘拐したエドモンドを圧倒して成敗し、重体の元仲間アランの呪いを解呪した。破壊された宿を金貨五枚の低予算で再建するためエルフの集落フローリアへ赴き、土魔法や怪力で支援して新店舗を落成させた。国王からの騎士団長スカウトを一蹴したことで、憲兵隊に包囲される。
ラビ
- 立場・所属:ダグラスの愛娘。元は呪詛でフェンリルに変えられていた少女。
- 主人公との関係:ダグラスの養女。
- この巻での主な役割:ダグラスの行動の動機、精神的成長、魔法の習得。
- この巻で起きた重要な変化や行動:魔道具教材を用いた特訓の末に光魔法シャイニングを覚醒させる。エドモンドに拉致されるもダグラスに救出され、父親を守りたいという思いを強くする。宿の再建では差別と悪意に傷ついたカトリの心に寄り添い、サマーキャンプではエルフの友人ニキの怪我を自力で完全回復魔法により治療して偏見の連鎖を止めるよう諭した。
エドモンド
- 立場・所属:勇者アラン一行に所属していた賢者。
- 主人公との関係:元パーティーメンバー、本巻における敵対者。
- この巻での主な役割:宿屋の破壊、ラビの誘拐、ダグラスへの脅迫。
- この巻で起きた重要な変化や行動:アランの弱体化によって特別ライセンスを剥奪され、困窮と零落からダグラスに呪いを再び引き取らせようと画策する。『豚の夜鳴き亭』を魔法で破壊してラビを人質に取るが、神殿跡での戦闘でダグラスの氷魔法に完敗し、肩を脱臼させられて魔法を解除した後に憲兵隊へ引き渡された。
アラン
- 立場・所属:国王から称号を授かった勇者パーティーの元リーダー。
- 主人公との関係:元パーティーの仲間。
- この巻での主な役割:呪詛返しの被害者、過去の因縁の対象。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ダグラスを陥れた呪詛が跳ね返った影響で急速に弱体化し、任務失敗と内紛の末に失踪してスラム街の安宿で瀕死となっていた。ダグラスによる二重の呪詛解除スキルによって命を救われたが、代償としてレベルが初期値の1へとリセットされた。
エイハブ
- 立場・所属:バルザックの宿屋兼食堂『豚の夜鳴き亭』の店主。
- 主人公との関係:ダグラスの旧友。
- この巻での主な役割:ダグラスらの生活拠点の提供者、被災者。
- この巻で起きた重要な変化や行動:エドモンドの襲撃時に娘ダイアナを庇って重傷を負い、ダグラスの完全回復魔法で治療を受ける。全壊した宿の修繕費をダグラスから借りることを拒みつつも、手持ちの金貨五枚で再建する方法をダグラスに一任し、完成した新店舗に涙を流して感謝した。
カトリ
- 立場・所属:職人ギルドに所属するウサギ耳の獣人大工。
- 主人公との関係:宿屋再建を依頼された協力者。
- この巻での主な役割:宿屋再建の設計・施工棟梁。
- この巻で起きた重要な変化や行動:女性であることを理由に仕事に恵まれていなかったが、ダグラスとラビの信頼を受けて『豚の夜鳴き亭』の再建を引き受ける。住む人の目線に立った図面を引き、同業者の悪意による屋根破壊の嫌がらせに一度は絶望するも、ラビの励ましで再起し、改心した大工たちの協力を得て最高の宿を完成させた。
ルーイ
- 立場・所属:エルフの集落フローリアの住人。
- 主人公との関係:ダグラスの友人。
- この巻での主な役割:格安木材の提供、宿屋再建作業の助っ人。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ダグラスへの憧れから身体を鍛え上げて筋骨隆々となっていた。閉鎖的なエルフ社会を変えるため、息子ニキと共にバルザックへ同行して宿屋の再建を手伝った。息子のサマーキャンプ参加を巡り、差別にやり返さない強さを教えた。
書籍情報
冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する3
著者:斧名田 マニマニ 氏
イラスト:藤 ちょこ 氏
出版社:SBクリエイティブ
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
「小説家になろう」発!
最強お父さん&最嬌の娘、楽しい冒険の日々を満喫! 心温まるファンタジー無双譚。
「ラビはどこだと聞いている!」
ダグラス不在のおり、ラビが攫われてしまう!!
犯人はかつての仲間だった勇者パーティの賢者?
「もう以前の俺ではない。娘のためなら、どんなことだってできる」
怒り心頭のダグラス、ついに本気で戦う時が!? そして賢者の思惑は?
その他にも、ラビが魔法能力に覚醒したり、かわら版へ抗議に行ったり、
獣人の女性大工と家を建てたり、エルフの里に買い付けに行ったり、
ラビが林間学校に参加したり、ダグラスが騎士団長に任命されたりと、
仲良し父娘の日常は、騒がしくも楽しいイベントが盛りだくさん!!
「私、ずっとお父さんの傍にいられるよね……?」
冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する3
感想
娘を誘拐されて激怒するおっさん。それでも最後は「うちの子カワイイ」
今回も、ダグラスの親バカぶりは健在である。
ただし、前巻までと比べると、かなり物騒な事件が起きる。
かつて勇者パーティーで仲間だった賢者エドモンドが、ダグラスの娘ラビを誘拐してしまうのだ。
しかも、ダグラスたちが世話になっている宿屋『豚の夜鳴き亭』を全壊させるという、とんでもない暴挙に出る。
さすがに、これは許せない。
自分たちの都合でダグラスを追い出しておきながら、今度は娘を人質にして呪いを引き受けろと要求する。
どこまで身勝手なのだろうか。
当然、ダグラスは激怒する。
ここは、親バカな父親が本気で怒ったらどうなるのかを見せつける場面だった。
一方、後半では壊された宿屋の再建が始まる。
獣人の女性大工カトリとの出会い、エルフたちとの再会、建築現場で起きる差別や嫌がらせ。
戦闘とは違う問題に向き合う展開が続く。
さらに、ラビが初めて魔法を使えるようになり、友達とのサマーキャンプでは、自分の考えで行動する姿を見せる。
ダグラスが娘を守るだけではなく、ラビ自身も少しずつ成長しているのがうれしい。
そして最後には、国王から王立騎士団長への就任を打診される。
普通なら名誉な話だろう。
しかし、ダグラスはあっさり断る。
理由は、娘の子育てで忙しいから。
相変わらずである。
国王からの誘いより、うちの子がカワイイ。
第3巻は、過去の因縁に決着をつけながら、ダグラスとラビが新しい居場所を作っていく物語だった。
※以下、第3巻の内容に触れるネタバレ感想である。
ラビのためなら高価な魔道具も惜しくない
物語は、ダグラスとラビがバルザックへ戻ってくるところから始まる。
目的の一つは、前巻で注文していた『防犯用魔法クック鳥』を受け取ることだ。
ラビを危険から守るための魔道具である。
店で改めて説明を受けると、かなり高級な品らしい。
ラビは、自分のためにそこまでお金を使わせていいのかと不安になる。
ここでのダグラスの言葉がよかった。
自分も母親から無償の愛情を注がれて育ったことを話し、ラビも同じように大切な存在なのだと伝える。
子どもにとって、自分が負担になっていないかという不安は大きいのかもしれない。
特にラビは、これまで安心して甘えられる環境にいなかった。
だから、高価なものを買ってもらうことにも遠慮してしまう。
ダグラスは、その不安をきちんと受け止めている。
ただ甘やかすだけではなく、娘が安心できるように言葉を尽くす。
こういう場面を読むと、彼が少しずつ父親らしくなっていることを感じる。
それにしても、魔黒竜を倒せるほどの男が、娘の防犯対策に熱心なのは面白い。
自分が一緒にいるときなら、ほとんどの敵を撃退できるだろう。
それでも、自分がいない時間のことまで考えている。
この慎重さは、ラビを本当に大切にしているからこそなのだと思う。
失敗を怖がるラビに、ダグラスが伝えた言葉
魔道具店では、ラビのために子ども向けの魔法教材も購入する。
ラビは魔法を使えるようになりたいと思っていた。
しかし、いざ練習を始めようとすると、なかなか踏み出せない。
失敗してしまったらどうしよう。
お父さんをがっかりさせてしまうかもしれない。
そんな不安があるのだ。
ここは、読んでいて少し胸が痛くなった。
失敗することより、失敗した自分を嫌われることが怖い。
ラビがそう考えてしまうのは、これまでの境遇が影響しているのだろう。
ダグラスは、自分も何度も失敗してきたことを話す。
最初から何でもできたわけではない。
うまくいかないことを繰り返しながら、少しずつできるようになった。
そして、ラビが失敗しても、そばで支えると約束する。
この言葉が印象に残った。
子どもに努力を求めるのは簡単である。
しかし、失敗しても大丈夫だと安心させることは、案外難しい。
ダグラス自身、冒険者として苦しい時期を経験してきた。
だからこそ、失敗することのつらさも分かるのだろう。
ラビの魔法がついに覚醒。父親のほうが大喜び
ダグラスに励まされたラビは、光魔法『シャイニング』の練習を始める。
最初は小さな火花が散る程度。
それでも、何度も挑戦を続ける。
すると、次第に光が強くなり、最後には部屋中を照らすほどの光魔法が発動する。
ついに成功したのだ。
この場面は素直にうれしかった。
もちろん、ラビ本人も大喜びしている。
しかし、それ以上に喜んでいるのがダグラスである。
娘を抱き上げ、涙まで浮かべてしまう。
相変わらずの親バカだ。
ただ、この喜び方がいい。
魔法を使えたこと自体もすごいが、失敗を怖がっていたラビが、自分の力で一歩踏み出せたことが何より大きい。
ダグラスは、そこを喜んでいるように見えた。
ラビが成長するたびに、父親としての喜びも増えていく。
この親子を見ていると、冒険の目的が強敵を倒すことから、日々の小さな成長を見届けることへ変わっているのだと感じる。
英雄としての名声より、娘との平穏な暮らしが大切
ダグラスは、以前から自分に関する記事が出回っていることを気にしていた。
魔黒竜を倒した英雄として名前が広まり、街では注目の的になっている。
しかし、本人は静かに暮らしたいだけである。
そこで、新聞を発行している印刷商会へ抗議に向かう。
ところが、そこで見せられたのは大量のファンレターだった。
ダグラスの記事を読んで励まされた人々からの手紙である。
ここは少し意外だった。
ダグラスにとっては迷惑な報道でも、その生き方に勇気をもらっている人がいる。
自分が知らないところで、誰かの支えになっていたのだ。
その事実を知ったダグラスは、娘の情報を伏せることなどを条件に、時折コラムを書くことを承諾する。
ただ名声を嫌って逃げるのではなく、できる範囲で応えようとする。
その姿勢にも人柄が表れている。
しかし、この穏やかな流れは長く続かなかった。
『豚の夜鳴き亭』が全壊。娘を誘拐されたダグラスの怒り
ラビの魔法習得を祝うため、ダグラスはアップルパイを買いに出かける。
娘の喜ぶ顔を想像しながら、買い物をしていたのだろう。
ところが、そこへクック鳥が飛んでくる。
宿屋が襲撃され、ラビが危険な目に遭っているというのだ。
ダグラスが急いで戻ると、『豚の夜鳴き亭』は無残に破壊されていた。
さすがに衝撃的だった。
これまで何度も世話になってきた宿屋である。
ダグラスとラビにとって、安心して帰れる場所でもあった。
それが、突然瓦礫の山になっている。
しかも、宿の主人エイハブは瀕死の重傷を負っていた。
ダグラスは回復魔法でエイハブを救うが、ラビの姿が見当たらない。
娘は誘拐されていたのである。
犯人は、かつて勇者パーティーで一緒だった賢者エドモンド。
ここで、ダグラスの過去が再び襲いかかってくる。
しかし、今度は自分が傷つけられるだけではない。
大切な娘と、世話になった友人たちが巻き込まれている。
これでは怒らないほうがおかしい。
賢者エドモンドの要求があまりにも身勝手
エドモンドがラビを誘拐した理由は、勇者アランにかかった呪いにあった。
かつてダグラスを苦しめていた呪詛が跳ね返り、今度はアランを蝕んでいたのである。
その影響で勇者パーティーは弱体化し、特別ライセンスまで失っていた。
エドモンドは、それを何とかしようとした。
しかし、選んだ方法がひどい。
ラビを人質にして、ダグラスに再び呪いを引き受けさせようとするのだ。
思わず呆れてしまった。
そもそも、ダグラスを追い出したのは彼らである。
それなのに、自分たちが困ったら戻ってきて犠牲になれという。
しかも、断れば娘の命を奪うと脅す。
もはや仲間だった頃の情など感じられない。
ダグラスが要求を拒絶したのは当然だろう。
彼には、守るべきラビがいる。
自分が犠牲になってしまえば、娘を残していくことになる。
過去の仲間のために、今の家族を捨てることなどできない。
この場面では、ダグラスの優先順位がはっきりしていた。
エドモンドを圧倒する戦闘。怒った父親は容赦しない
エドモンドは、最高位の火魔法を使ってダグラスを攻撃する。
炎の大蛇を放つ強力な魔法である。
しかし、ダグラスは氷の鷹を生み出す魔法『羅刹氷鷹』で迎え撃つ。
炎の大蛇を完全に凍結させ、消滅させてしまうのだ。
ここは爽快だった。
エドモンドは賢者として相当な実力者なのだろう。
それでも、今のダグラスには敵わない。
しかも、ダグラスは娘を救うために冷静さも保っている。
相手を倒すことだけが目的ではない。
ラビがどこに隠されているのかを突き止め、救出しなければならない。
エドモンドを追い詰め、隠蔽魔法を解除させる。
そして、ようやくラビの姿が現れる。
娘を強く抱きしめるダグラスの姿には、こちらもほっとした。
あれほど強い人物でも、娘を失うかもしれない恐怖には耐えられない。
無事に取り戻せたことを涙ながらに喜ぶ姿は、英雄というより一人の父親だった。
「今度は私がお父さんを守る」。ラビの言葉がうれしい
ラビを救出したあと、ダグラスは勇者アランに会いに行くことを決める。
過去の因縁に、きちんと決着をつけるためである。
しかし、ラビは父親のことを心配する。
そして、自分がお父さんを守ると伝えるのだ。
この言葉がよかった。
これまでラビは、守られる側だった。
ダグラスが危険を引き受け、彼女を守ってきた。
しかし、ラビも父親を大切に思っている。
自分にできることは少なくても、そばにいたい。
力になりたい。
そう考えるようになったのである。
父親と娘は、ただ一方が守るだけの関係ではない。
互いを大切に思い、支え合う家族なのだ。
そのことが伝わってくる場面だった。
勇者アランの呪いを解く。復讐ではなく過去との決着
アランは、スラム街の安宿で死にかけていた。
かつて勇者として名を馳せた人物が、見る影もなく衰弱している。
この落差は大きい。
ダグラスを追放した側だったはずなのに、今ではダグラスに助けられる立場になっている。
ダグラスがアランを見捨てたとしても、不思議ではない。
しかし、彼は呪詛返しを解除する。
その結果、アランの命は助かる。
ただし、レベルは1に戻ってしまう。
この結末が興味深かった。
アランは命を取り留めたが、以前のような勇者としての力は失った。
これからどう生きていくのかは、本人次第である。
ダグラスは、かつての仲間を救った。
しかし、再び勇者パーティーに戻るわけではない。
恨みを晴らすために命を奪うこともなかった。
自分の過去に区切りをつけ、今の生活へ戻っていく。
ここは、ダグラスの変化を感じさせた。
以前の彼なら、冒険者としての評価や仲間との関係に強くこだわっていたかもしれない。
しかし、今はラビと過ごす日々のほうが大切なのだ。
過去に縛られ続ける必要はない。
そんな姿勢が印象に残った。
壊れた宿屋を再建する。お金を出すだけでは解決しない
エドモンドとの事件が終わっても、問題は残っている。
『豚の夜鳴き亭』が全壊してしまったのだ。
ダグラスは、宿の主人エイハブに修繕費を負担したいと申し出る。
しかし、エイハブは簡単には受け入れない。
友人に金を出してもらうのではなく、自分の力で宿を再建したいと考えているのである。
ここは、少し考えさせられた。
ダグラスには十分な力も資金もある。
だからといって、何でも代わりに解決してしまえばいいわけではない。
相手には相手の誇りがある。
エイハブにとって、宿屋は単なる建物ではない。
家族と暮らし、仕事を続けてきた大切な場所なのだ。
その気持ちを無視して金を渡しても、本人は納得できないのだろう。
そこでダグラスは、エイハブが用意できる予算の範囲で建て直す方法を探す。
この展開がよかった。
相手の気持ちを尊重しながら、できることを考える。
戦闘とは違う意味で、ダグラスの頼もしさが表れていた。
女性大工カトリとの出会い。能力より見た目で判断される理不尽さ
宿屋を再建するため、ダグラスは職人ギルドを訪れる。
しかし、予算が少ないこともあり、なかなか引き受け手が見つからない。
そんな中、名乗りを上げたのがウサギ耳の獣人の少女カトリだった。
彼女は大工として働いている。
しかし、周囲の職人たちからは軽く見られていた。
女性であること。
体格が小さいこと。
そうした理由で、まともに評価されていないのである。
ここは読んでいて嫌な気分になった。
実際にどんな仕事ができるのかを見る前に、性別や見た目だけで判断される。
しかも、本人の前で侮辱する。
カトリが悔しい思いをしてきたことは、想像に難くない。
そんな中、ラビが素朴な疑問を口にする。
どうして女の人では駄目なのか。
子どもらしい、まっすぐな問いである。
しかし、周囲の大人たちは、その問いにきちんと答えられない。
ダグラス自身も、自分の中にあった思い込みに気づく。
そして、カトリに仕事を任せることを決める。
この流れがよかった。
偏見を持つ人をただ責めるだけではなく、自分も同じような見方をしていなかったかと考える。
ダグラスのそういうところに好感を持った。
カトリの図面に込められた思いやり。本当に大切なのは技術だけではない
カトリと一緒に宿屋の再建計画を進める中で、ダグラスは彼女が描いた図面を見る。
ここが、第3巻でも特に印象に残った場面だった。
図面には、ただ建物を建てるための情報だけが書かれているわけではない。
背の高いエイハブが使いやすい流し台。
妻が花を育てられる花壇。
朝日が差し込む食堂の窓。
実際に暮らす人たちのことを考えた工夫が、細かく盛り込まれている。
これを読んで、カトリは本当にいい職人なのだと感じた。
建物は、完成したら終わりではない。
そこから何年も、人が暮らし、働き、生活を続けていく。
使う人が不便を感じないか。
家族が気持ちよく過ごせるか。
そういうことまで考えて図面を描いているのだ。
ダグラスがカトリの仕事を認め、心から褒める場面もよかった。
これまで周囲から軽く見られてきた彼女にとって、自分の仕事を正当に評価してもらえたことは大きかっただろう。
カトリが涙を浮かべる姿には、こちらも胸が熱くなった。
エルフの集落で木材を調達。以前の縁が新しい助けになる
宿屋を安く建て直すには、材料費を抑える必要がある。
そこでダグラスは、以前親しくなったエルフたちを頼ることにする。
フローリアの集落へ向かい、木材を直接購入しようというのだ。
ここは、これまでの旅で築いた人間関係が生きてくる展開だった。
ダグラスは、各地で困っている人を助けてきた。
そのときは、見返りを求めていたわけではない。
しかし、そうした縁が後になって自分たちを助けてくれる。
この流れが心地よい。
ただし、再会したエルフたちの姿には驚いた。
以前ダグラスに憧れていた男たちが、すっかり筋骨隆々になっているのである。
エルフといえば、細身で優雅なイメージがある。
それが、まるで屈強な戦士の集団のようになっている。
思わず笑ってしまった。
しかも、ニキまで見違えるほど成長している。
ラビが戸惑うのも無理はない。
こういう妙な方向への成長も、本作らしい面白さだと思う。
植林地の整備まで一瞬。ダグラスの魔法が便利すぎる
エルフたちは、ダグラスのために良質な木材を安く提供してくれる。
しかし、ダグラスは相手の好意に甘えるだけでは終わらない。
その代わりに、植林地の整備を手伝うことにする。
ここで活躍するのが土魔法である。
ダグラスは、木の根を傷つけないようにしながら、広い土地を一気に耕してしまう。
これも凄まじい。
戦闘で強いのはもちろんだが、こういう作業に使っても規格外なのだ。
人の手で行えば相当な時間がかかる作業を、ほとんど一瞬で終わらせてしまう。
現場仕事では、段取りや人手、作業時間が大きな問題になる。
だからこそ、こういう魔法が使えたらどれほど助かるだろうと思ってしまった。
もちろん、現実にはそんな便利な方法はない。
それでも、魔法を戦闘以外に活用する場面は見ていて楽しい。
地鎮祭で女性を排除しようとする理不尽な決まり
宿屋の再建工事では、地鎮祭も行われる。
しかし、その準備中に問題が起きる。
神殿の助手が、女性は結界内に入ってはいけないと言い出すのだ。
カトリだけでなく、エイハブの妻や娘まで排除しようとする。
これにはダグラスも怒る。
当然だと思った。
宿屋は、エイハブと家族が暮らす場所である。
しかも、工事を担当する棟梁はカトリだ。
その人たちを除外して、いったい誰のために安全を祈るのだろうか。
儀式や慣習には、それぞれ意味があるのだろう。
しかし、目的を忘れて形だけを守ろうとすれば、おかしなことになる。
ダグラスがその矛盾を指摘し、全員で祈れるようにする場面は気持ちがよかった。
カトリの仕事を認めたことともつながっている。
誰かを見た目や立場だけで排除しない。
その姿勢が、物語を通じて一貫していた。
完成間近の屋根を破壊される。カトリが傷つく姿がつらい
工事が順調に進んでいたところで、再び事件が起きる。
完成したばかりの屋根が、何者かによって破壊されてしまうのだ。
雨水が建物に入り込み、工事は大きな被害を受ける。
カトリは、自分が女性だからこんなことになったのだと思い詰めてしまう。
ここは読んでいてつらかった。
本人は誰よりも真剣に仕事をしている。
図面にも、宿の家族への思いやりが込められていた。
それなのに、周囲の悪意によって努力を踏みにじられる。
しかも、カトリ自身が悪いわけではないのに、自分を責めてしまうのである。
こういうところが、何ともやりきれない。
しかし、ここでラビがカトリに寄り添う。
自分も怖い思いをしてきたこと。
それでも、お父さんに支えられて前へ進めたこと。
そうした経験を伝えるのだ。
この場面がよかった。
以前のラビは、失敗することさえ怖がっていた。
しかし、今では傷ついた人を励ますことができる。
父親から受け取った優しさを、別の人へ渡せるようになっているのである。
カトリが再び立ち上がる姿には、ほっとした。
職人たちの態度が変わる。偏見を乗り越えて宿屋を完成させる
屋根を壊した犯人は、女性のカトリが大きな仕事を任されたことを妬んだ職人だった。
何とも情けない理由である。
実力で勝負するのではなく、相手の仕事を壊してしまう。
それで自分の評価が上がるわけでもないのに、どうしてそんなことをするのだろう。
しかし、ここで印象的だったのは、ほかの職人たちの反応である。
彼らは犯人を処分するだけでなく、自分たちにも偏見があったことを反省する。
そして、宿屋の修復に協力するのだ。
この展開がよかった。
最初はカトリを見下していた人たちが、彼女の仕事と姿勢を認めるようになる。
もちろん、すべての偏見が一度に消えるわけではないだろう。
それでも、実際に一緒に仕事をすることで、考えが変わることはある。
完成した『豚の夜鳴き亭』には、多くの人の手が関わっている。
ダグラスとラビ。
カトリ。
エルフたち。
職人ギルドの大工たち。
そして、宿を再建したいと願ったエイハブ一家。
一人の力ではなく、さまざまな人が協力して作り上げた場所なのだ。
向日葵が咲く新しい宿屋の完成は、素直にうれしかった。
サマーキャンプに行きたい娘。おっさんの過保護ぶりが爆発する
宿屋が完成したあと、ラビは友達とサマーキャンプへ行くことになる。
しかし、このキャンプには親が同伴できない。
それを知ったダグラスは、猛烈に不安になる。
まあ、そうなるだろう。
これまで何度も危険な目に遭ってきたラビである。
エドモンドに誘拐されたばかりでもある。
ダグラスが心配する気持ちは分かる。
しかし、いつまでも娘を自分のそばに置いておくわけにはいかない。
ラビには友達がいる。
自分で経験してみたいことも増えている。
父親としては、少しずつ見守ることも必要なのだろう。
結局、ダグラスはクック鳥を連れていくことを条件に参加を認める。
ただし、これで安心して家で待てるわけではない。
案の定、ステルススキルで姿を消して、こっそりキャンプ場へついていく。
相変わらずである。
親に隠れてキャンプを見守る。最強スキルの使い道がおかしい
キャンプ場では、子どもたちが協力してテントを張る。
しかし、強風でなかなか作業が進まない。
そこでダグラスは、姿を隠したまま風魔法を使う。
風を弱め、子どもたちがテントを立てやすいようにするのだ。
ここは笑ってしまった。
やはり、見守るだけでは我慢できないらしい。
危険がないように、少しだけ手を貸してしまう。
父親としての気持ちは分かるが、過保護にもほどがある。
ただ、ラビたちはダグラスが見ていることを知らない。
自分たちで協力してテントを完成させたと喜んでいる。
この微妙な距離感が面白い。
本当は何もせずに見守るのがいいのかもしれない。
しかし、危なっかしい姿を見ていると、つい手を出したくなる。
ダグラスも、まだまだ子離れの途中なのだろう。
エルフのニキへの差別。ラビが見せた精神的な成長
サマーキャンプでは、ニキが人間の子どもたちから差別的な言葉を浴びせられる。
エルフであることを理由に、ひどいことを言われるのだ。
当然、ニキは怒る。
相手に殴りかかろうとするほど、感情が高ぶってしまう。
しかし、ラビが止めに入る。
ここが印象的だった。
ラビは、ただ喧嘩を止めようとしたわけではない。
やり返してしまえば、憎しみが続いていく。
だから、同じことをしてはいけないと伝える。
以前、ダグラスから聞いた話を覚えていたのだ。
人間とエルフの間には、過去の争いがある。
しかし、その憎しみを今の子どもたちまで引き継ぐ必要はない。
ラビは、その意味を自分なりに理解していた。
ここに大きな成長を感じた。
父親から教えられたことを、ただ覚えているだけではない。
実際に困っている友達を前にして、自分の言葉として伝えられるようになっているのである。
ニキを回復魔法で治す。ラビが守られるだけの子ではなくなった
傷ついたニキは、森の奥へ走り去ってしまう。
ラビは、その後を追いかける。
そして、転んで怪我をしたニキを見つける。
ここでラビは、練習してきた回復魔法を使う。
ニキの傷を治してしまうのだ。
この場面はうれしかった。
巻の序盤では、魔法を使うことに自信がなかったラビである。
失敗したらお父さんに嫌われるのではないかと、怖がっていた。
それが、今では友達を助けるために魔法を使っている。
しかも、自分の判断で行動している。
ダグラスに守られてきた少女が、今度は誰かを守ろうとしているのだ。
この変化がよかった。
ダグラスも、隠れてその様子を見守っている。
きっと、娘の成長がうれしくて仕方がなかっただろう。
ただ、父親としては少し寂しい気持ちもあるかもしれない。
子どもは、いつまでも小さいままではない。
少しずつ、自分の世界を広げていく。
ラビの成長は、ダグラスにとって喜びであると同時に、子離れを考えるきっかけにもなりそうだ。
国王から王立騎士団長への誘い。それでも娘が一番
物語の終盤、ダグラスのもとに国王からの親書が届く。
王立騎士団長に就任してほしいという要請である。
これは、かなり大きな話だ。
かつて冒険者ライセンスを剥奪された男が、今度は国の騎士団を率いる立場に誘われている。
普通なら、名誉を取り戻す絶好の機会だろう。
しかし、ダグラスは断る。
子育てで忙しいからである。
思わず笑ってしまった。
本当に、何も変わっていない。
いや、正確には変わったからこそ、こういう選択ができるようになったのだろう。
以前のダグラスにとって、仕事や冒険者としての地位は大切なものだった。
しかし、今はラビとの生活が最優先である。
国王からの誘いであっても、その考えは揺らがない。
さらに、現職の騎士団長を軽んじるような人選にも納得していない。
ただ娘がかわいいだけではなく、相手の立場や誇りも考えているのだ。
もっとも、国王側は簡単に諦めてくれない。
翌朝には、宿屋が五十人以上の憲兵隊に包囲されてしまう。
せっかく宿屋を建て直したばかりなのに、また物騒なことになっている。
どうしてダグラスは、静かに娘と暮らすことができないのだろう。
次巻への引きとしても、なかなか気になる終わり方だった。
第3巻で印象に残ったのは、ダグラスの強さより人との関わり方
第3巻には、激しい戦闘がある。
エドモンドを圧倒する場面は、最強主人公らしい爽快感があった。
しかし、読み終えて強く残ったのは、むしろ宿屋の再建やラビの成長だった。
ダグラスは、困っている人を助ける力を持っている。
それでも、何でも自分一人で解決しようとはしない。
エイハブの誇りを尊重する。
カトリの仕事を認める。
エルフたちの協力に感謝する。
傷ついた人が立ち直るまで、そばで支える。
こういう行動が印象に残った。
そして、ラビも父親の姿を見ながら成長している。
失敗を怖がっていた少女が、魔法を覚え、友達を励まし、怪我を治すようになる。
父親が娘に教えた優しさが、少しずつ周囲へ広がっていく。
その流れが心地よかった。
ダグラスにとって、ラビは守るべき大切な存在である。
しかし、ラビにとってもダグラスは大切な家族だ。
二人は、一方的に助けるだけの関係ではなくなってきている。
そこが、第3巻で最もよかったところだと思う。
まとめ|過去に決着をつけ、娘と新しい居場所を作る物語
第3巻も面白かった。
特に、前半と後半で物語の雰囲気が大きく変わるところが印象的である。
前半では、エドモンドによるラビの誘拐事件が起きる。
大切な娘を奪われたダグラスは、かつての仲間を容赦なく追い詰める。
そして、勇者アランの呪いを解き、過去の因縁にも区切りをつける。
一方、後半では宿屋の再建が中心になる。
女性大工カトリが周囲の偏見に苦しみながらも、自分の仕事を認めてもらい、仲間と協力して建物を完成させる。
この展開がよかった。
特に、カトリが描いた図面には感心した。
ただ立派な建物を作るのではなく、そこで暮らす家族のことを考えている。
本当にいい仕事とは、こういうものなのだろう。
また、ラビの成長も見逃せない。
最初は魔法を使うことさえ怖がっていたのに、サマーキャンプでは友達を守るために行動する。
ダグラスから教わったことを、自分の言葉で伝えられるようにもなっている。
父親としては、これほどうれしいことはないだろう。
ただし、ダグラスの過保護ぶりは相変わらずである。
娘のキャンプが心配で、姿を消して尾行してしまう。
それでも、少しずつラビの成長を受け入れているように見えた。
そして、最後には国王からの王立騎士団長就任の要請を断る。
ここまでくると、もう何を言われても驚かない。
ダグラスにとって、地位や名誉よりも娘との暮らしが大切なのだ。
かつては冒険者ライセンスを失い、自分の居場所まで失った男である。
しかし、今ではラビという家族がいて、帰る場所があり、助け合える仲間も増えている。
それだけで、以前とはまったく違う人生になった。
もっとも、平穏な生活を望んでいるのに、毎回大事件に巻き込まれている気もする。
今回も最後は憲兵隊に宿屋を包囲されてしまった。
せっかく建て直した宿屋なのだから、今度こそ壊さないでほしい。
そう思いながらも、次はダグラスが何をやらかすのか楽しみである。
結局、どれほど偉くなれるとしても、ダグラスにとって一番大切なのは「うちの子カワイイ」なのだ。
その変わらない親バカぶりと、少しずつ成長していくラビの姿が楽しい第3巻だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:バルザック帰還と魔道具の調達
ダグラスとラビは周囲の目を警戒し、顔を覆ってバルザックへ戻り、拠点とする宿屋『豚の夜鳴き亭』へ荷物を預ける。
二人は荒原の『挑戦の門』を抜けて『バルザック魔道具店』を訪れ、取り置きを頼んでいた金貨十枚の『防犯用魔法クック鳥』を購入する。
高価な出費に引け目を感じるラビに対し、ダグラスは亡き母から受けた無償の愛を語り、ラビは自分にとってかけがえのないお姫さまだと伝えて不安を取り除く。
さらに、魔法を使えないことに悩むラビの希望を汲み、小人族の双子店主から『お子様向け魔法教材セット』を買い求めた。
第2幕:失敗の克服とラビの魔法覚醒
激しい雨の中を宿へ戻った二人は、夕食時に情報屋ハムからトイ・ベリーでの活躍への称賛を受ける。
部屋で教材を開いたラビは、失敗してダグラスを失望させることを恐れて練習をためらうが、ダグラスが自身の潜在能力の低さや無数の失敗談を明かし、「何度失敗しても支え続ける」と励ます。勇気を得たラビは真剣に集中力を高め、光魔法シャイニングの詠唱を繰り返した末に、部屋中を温かく照らす強い光を放って魔法の覚醒に成功する。
翌日、ダグラスはラビの誕生日が十二月十二日であることを確認し、祝いのケーキの購入と記事への抗議を兼ねてカシマシ魔法印刷商会へ向かう。
編集長に取材中止を求めるが、大量に届いた読者からの感謝のファンレターを提示され、娘の情報を伏せることを条件に時折自身の日記を提供するコラム連載を承諾した。
第3幕:宿屋の壊滅とエドモンドの凶行
ケーキ屋で特大のアップルパイを購入したダグラスの元へ、頭上からクック鳥が飛来し、宿が襲撃されラビが危険に晒されていると警告する。
現場へ駆けつけたダグラスは、全壊した『豚の夜鳴き亭』の瓦礫の中から瀕死のエイハブを救出し、完全回復魔法で一命を取り留めさせる。
意識を取り戻したエイハブから、勇者パーティーの賢者エドモンドが火魔法で宿を破壊してラビを連れ去り、「二日後に街外れの廃墟へ来い」と言い残したことを聞かされる。
怒りに燃えるダグラスはクック鳥の誘導に従い、街の北にある朽ちた神殿へ即座に突入する。
待ち構えていたエドモンドは、呪詛返しによって弱体化したアランが任務に失敗し続け、勇者パーティーの特別ライセンスを剥奪された現状を語り、ラビの命と引き換えにダグラスへ呪いを再び引き取るよう要求する。
第4幕:賢者の成敗とアランの呪詛解除
娘を残して死ぬ選択を拒否したダグラスはエドモンドの要求を一蹴し、戦闘に突入する。
エドモンドが放った最高位火魔法の炎の大蛇に対し、ダグラスは氷の鷹を放つ羅刹氷鷹で完全に凍結させて相殺する。
魔力が尽きたエドモンドの右肩を脱臼させ、魔法解除を強制して隠されていたラビを無事に救出する。エドモンドは憲兵隊に引き渡され、ダグラスは過去の因縁に決着をつけるため、情報屋ハムの調査を頼りにスラム街の傾いた安宿へ向かう。
そこには呪詛返しの衰弱で死に瀕したアランが横たわっており、ダグラスは娘に恥じない生き方を示すため、二重の呪詛解除スキルを行使してアランの呪いを取り除く。
アランは一命を取り留めたものの、代償としてレベルが初期値の1へとリセットされ、ダグラスは彼を病院へと搬送した。
第5幕:女大工カトリとの出会いとエルフの里への調達行
入院中のエイハブを見舞ったダグラスは、宿の修繕費を出させてほしいと申し出るが、友人から金を借りたくないと拒否される。
そこでエイハブの手持ちである金貨五枚の予算内で再建する方法を探すことになり、職人ギルドを訪れる。低予算を理由に他の大工から冷遇される中、ウサギ耳の獣人の少女カトリが名乗りを上げる。
女性であることを理由に周囲から嘲笑されたカトリに対し、ラビが疑問を投げかけたことでダグラスは自らの偏見を反省し、カトリと正式に契約を結ぶ。
建築費の多くを占める木材費を抑えるため、ダグラスは親交のあるエルフの集落フローリアから直接買い付ける策を思い立ち、ラビとカトリを馬車に乗せて出発する。
集落へ到着すると、ダグラスへの憧れから筋骨隆々となったエルフたちに歓迎され、最高級のヒノスギ材を破格で譲り受ける代わりに、ダグラスは土魔法で広大な植林地を一瞬で開墾して作業を手伝った。
第6幕:悪意の妨害と職人たちの団結
人間社会との交流を望むエルフのルーイとニキを仲間に加え、木材を搬入してバルザックへ帰還した一行は、カトリの引いた住む人の立場に立った図面をエイハブに提示し、正式に施工を開始する。
地鎮祭では「女性は穢れている」として神殿の助手がカトリらを排除しようとしたが、ダグラスとエイハブが強く抗議して差別を撤廃させ、全員で安全を祈願した。
屋根まで組み上げる建前も無事に成功するが、翌朝、完成したばかりの屋根が同業者の悪意によって故意に切り裂かれ、内部が浸水する被害に見舞われる。
女である自責の念から逃げ出したカトリを追いかけたダグラスとラビは彼女の心に寄り添い、カトリは差別に屈しない決意を固める。
ダグラスが職人ギルドへ出向いて仲間の無念を訴えた結果、犯人の若い大工は破門され、改心した大工たちが無償の資材と労働を提供して修復を支援し、一ヶ月後に向日葵が咲く新『豚の夜鳴き亭』が見事に完成した。
第7幕:子供たちのサマーキャンプと王立騎士団長の拒絶
平和が戻った後、ダイアナの誘いにより、ラビとニキは親の同伴が禁じられた二日間のサマーキャンプへ参加することになる。
過保護なダグラスは心配のあまりステルススキルで姿を隠して尾行する。森の中で薪集めをしていた際、ニキが人間の少年たちからエルフへの偏見に基づく心ない暴言を浴びせられるが、ラビが駆け寄って争いを制止する。
転んで負傷したニキに対し、ラビは特訓していた完全回復魔法を行使して傷を治し、やり返さないことが憎しみの連鎖を止める道なのだと諭した。
娘の精神的成長を陰から見守ったダグラスは深く心を打たれる。
キャンプから帰還した直後、国王の親書を持った憲兵隊長が現れ、現団長グウェンダルを解任してダグラスを王立騎士団長へ据えたいと要請してくるが、ダグラスは「育児で忙しい」とあっさり拒絶する。
しかし翌朝、宿屋はダグラスを強制連行するために集結した五十人余りの憲兵隊によって包囲された。
主要な転換点
1:ラビの魔法の覚醒
- それ以前の状況:ラビはエルフの集落で魔法の適性を認められながらも、練習で一度も発動できず、失敗への恐怖から自信を喪失していた。
- 出来事:『バルザック魔道具店』で購入した教材を使い、ダグラスから「何度失敗しても支える」と励ましを受け、光魔法シャイニングを完全に成功させた。
- 変化:ラビの魔力回路が覚醒して自力で魔法を行使できるようになり、失敗を恐れず前向きに挑戦する自信を得た。
- 次への影響:後にサマーキャンプの現場で、負傷したニキの傷を自力で完全回復魔法により治療する決定的な行動へとつながった。
2:賢者エドモンドによる宿屋破壊とラビの誘拐
- それ以前の状況:ダグラスとラビはバルザックへ戻り、報道への対処や買い物を済ませて平穏な日常を過ごしていた。
- 出来事:エドモンドが火魔法で『豚の夜鳴き亭』を全壊させ、エイハブに重傷を負わせた上で、アランの呪いを引き取らせる人質としてラビを連れ去った。
- 変化:街での平穏な滞在が突如として奪われ、ダグラスはかつての仲間との全面対決を強いられることとなった。
- 次への影響:ダグラスが神殿跡でエドモンドを成敗して捕縛させ、瀕死のアランの元へ乗り込んで呪詛返しの解呪と過去の因縁の精算を行う契機となった。
3:アランの呪詛返し解呪とレベルリセット
- それ以前の状況:ダグラスに呪いをかけた勇者アランは、跳ね返った呪詛の衰弱によりスラムの安宿でレベル1・HP1の瀕死状態に陥っていた。
- 出来事:ダグラスが娘の前で恥じない父親でありたいと願い、二重の呪詛解除スキルを発動してアランの呪いを完全に取り除いた。
- 変化:アランは一命を取り留めたが、勇者として培った力やスキルをすべて喪失し、レベル1の無職となった。
- 次への影響:ダグラスを苦しめていた呪いの因縁が完全に消滅し、パーティー崩壊と勇者失脚の事態が収束へ向かうとともに、ダグラスは迷いなく宿屋再建へと注力できるようになった。
4:女大工カトリとの契約とエルフの木材調達
- それ以前の状況:全壊した『豚の夜鳴き亭』をエイハブの出せる金貨五枚(相場の半額)で再建するため、施工を引き受ける大工を探していたが門前払いが続いていた。
- 出来事:職人ギルドで冷遇されていた獣人の少女カトリと契約を結び、高価な木材費を抑えるために親交のあるエルフの集落フローリアから最高級ヒノスギ材を格安で仕入れた。
- 変化:低予算での宿屋再建が現実的な計画となり、エルフのルーイ親子も大工仕事の助っ人としてバルザックへ同行することとなった。
- 次への影響:地鎮祭での差別撤廃や同業者による屋根損壊事件を経て職人ギルド全体が結束し、新店舗の完成へと結実した。
5:王立騎士団長就任の拒絶と憲兵隊による包囲
- それ以前の状況:新店舗が完成し、子供たちもサマーキャンプを終えて、ダグラスは次の旅立ちを検討していた。
- 出来事:国王からの親書を携えた憲兵隊長から王立騎士団長への就任を要請されたが、ダグラスは現団長への不義理と育児の優先を理由に要請を一蹴した。
- 変化:国家権力からの要請を明確に拒絶したことで、平穏な一市民としての立場から、公権力に追われる身へと立場が反転した。
- 次への影響:翌朝、宿屋が五十人余りの憲兵隊に完全包囲され、ダグラスが国王本人と直接対峙せざるを得ない緊迫した状況が生み出された。
ダグラスを中心とした人物関係の変化
ラビ
- 開始時:本当の家族になる誓いを交わしたばかりで、ダグラスは過保護になり、ラビは費用や手間に遠慮を見せる部分が残っていた。
- 主な出来事:魔道具教材による魔法覚醒の支援、エドモンドからの救出劇、アランの解呪を通じた父親の背中の提示、サマーキャンプへの送り出し。
- 巻末時:ラビが父親の助けを借りずに他者を癒やし導くまでに精神的成長を遂げ、互いに深く尊敬し愛情を注ぎ合う揺るぎない親子の絆が確立された。
エドモンド
- 開始時:過去にダグラスを追放した勇者パーティーの仲間であり、遠く離れた別の街にいると思われていた相手。
- 主な出来事:宿屋の破壊とラビの誘拐、神殿跡での戦闘、右肩脱臼による脅迫と魔法解除、憲兵隊への引き渡し。
- 巻末時:保身と利己心のために一線を越えた犯罪者として完全に成敗され、司法の裁きを受けるべき対象として関係が清算された。
アラン
- 開始時:自身に呪詛をかけて冒険者を追放させた張本人であり、いつか形見の指輪を返却して決着をつけねばならないと重荷に感じていた相手。
- 主な出来事:スラムの安宿での衰弱死寸前の発見、二重の呪詛解除による救命、病院への搬送。
- 巻末時:呪いを解いて命を救ったことでダグラス側の心残りや怨恨は完全に消滅し、過去のしがらみから解放された。
カトリ
- 開始時:職人ギルドで居合わせた見知らぬウサギ耳の駆け出し大工。
- 主人公との出来事:金貨五枚での施工契約、エルフの里への木材調達の同行、屋根損壊事件での励まし、新店舗の完成。
- 巻末時:性別の偏見を乗り越えて腕前と人柄を認め合い、互いの家族を思いやる深い信頼関係で結ばれた仕事仲間となった。
ルーイ
- 開始時:過去に集落の火災を救ったことで親交のあったエルフの友人。
- 主な出来事:集落での再会、格安木材の提供と開墾作業の共同作業、バルザックへの同行と宿屋再建の手伝い、子供の教育方針の共有。
- 巻末時:種族の垣根を越えて親としての苦悩や信念を分かち合い、対等に支え合える無二の親友関係となった。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
ダグラス自身は、自らを「英雄などではなく、娘を何よりも大事に想うただの父親」「才能がなく、人の何倍も失敗して努力してきただけの普通のおっさん」と認識している。世間のかわら版による熱狂的な報道を「身に余る迷惑な騒ぎ」と捉えており、名誉や地位、莫大な報酬には一切の興味を示さず、愛娘ラビの笑顔と日々のささやかな平穏を守ることだけを生きる目的としている。
周囲からの評価
- 市民・読者・記者:「魔黒竜を倒し数々の悪党を退けた、国中が憧れる最強の英雄」「娘を深く愛し、冒険者の知恵をフル活用して生きる理想的な父親」として絶大な人気と尊敬を寄せている。
- エドモンド(序盤):「他人に傷を負わせることを恐れる腰抜けの甘ちゃん」「娘を人質に取れば言う通りに呪いを引き受けるお人好し」と見下していた。
- カトリ・大工たち:「性別や種族に関係なく職人の心と誇りを真っ直ぐに認めてくれる恩人」「理不尽な差別に毅然と立ち向かい、皆を団結させる器を持った人物」として心服している。
- ラビ:「何でも知っていて、どんなに怖いことがあっても絶対に助けてくれる、世界一かっこよくて自慢のお父さん」として絶対的な信頼と愛情を抱いている。
認識の差が現れた場面
- 神殿跡でのエドモンドとの対峙場面:エドモンドはダグラスを「他人に怪我をさせる勇気もない甘ちゃん」と侮り、娘の命を盾に脅迫すれば容易に従うと高をくくっていたが、ダグラス自身は「娘の安全と未来を守るためなら腕をねじり折ることも辞さない」という覚悟を持っており、一切の躊躇なく肩を脱臼させてエドモンドを屈服させた。
- 地鎮祭での助手との対立場面:神殿の助手は「女性を結界から排除することは伝統であり当然の決まり」と捉えていたが、ダグラスは「作り手や住まう家族を女という理由だけで穢れていると排除する行為は理不尽な差別に他ならない」と真っ向から反論し、儀式の慣習を覆させた。
- 憲兵隊による王立騎士団長スカウト場面:憲兵隊長や周囲は「元冒険者にとって国王から騎士団長に任命されることは最高の栄誉であり、断るはずがない」と考えていたが、ダグラス自身にとっては「娘との平穏な暮らしを奪い、現団長への敬意も欠いた無用な押しつけ」に過ぎず、「育児で忙しい」とあっさり返答して周囲を唖然とさせた。
育児と成長
第3巻における育児と成長という主題について、ダグラスの父親としての姿勢や、愛娘ラビの技術面および精神面における変化の観点から整理して記述する。
失敗を恐れない心を育み才能を開花させる関わり
術式を上手く行使できず失敗を恐れる少女に対し、自身の潜在能力の低さや無数の挫折経験を明かした上で、何度失敗しても支え続ける旨を伝えて挑戦を促す。
・自己肯定感の醸成 防犯用の魔道具や学習教材の調達に際しても、子供の安全や将来のためであれば出費を惜しまない姿勢を示し、愛情を注いで安心感を与える。
・技術的な飛躍 確かな信頼に支えられたラビは恐怖心を克服し、光属性の魔法を覚醒させる。さらに父親を喜ばせる目的で自主的な鍛錬を重ね、負傷を瞬時に癒やす完全回復魔法を単独で習得するに至る。
偏見や差別に対して正しい背中を見せる教育
言葉による訓話にとどまらず、自らの振る舞いを通じて規範を提示する。
・不当な排除への抗議 儀式の場において性別を理由に立ち入りを拒まれた際、理不尽な慣習に異議を唱え、全員が参加できるよう状況を是正させる。
・歴史の理解と融和の姿勢 種族間の対立の理由を問われた際には、過去の過ちを平易に解説し、古い確執を引き継ぐことなく互いの差異を認め合って許容する重要性を説く。
・他者への共感と成熟 父親の姿勢に接して育ったラビは、住居を損壊され苦悩する職人に寄り添い、行事で暴言を受けた異種族の少年に報復を思いとどまらせるなど、他者の痛みを察する寛容な精神を培う。
自立の歩みと過保護な親心の葛藤
自ら携行品の一覧を作成して遠出の準備を整えるなど、独力で物事を進める姿が描かれる。
・保護者の動揺 親の同行が禁じられた合宿へ参加する際、数日間の離別に対して激しい不安と寂寥感を抱く。
・成長の実感 隠蔽技術を駆使して陰から同行するものの、子供たちが知恵を絞って設営を行い、課題を自力で打開していく過程を目の当たりにし、子供本来の順応力と自立を認識する。
名誉より家庭を最優先とする生き方
物語の終局、国家元首から高位の役職への就任を打診された際、子育てへの従事を理由に申し出を固辞する。
・確固たる価値観 社会的な権勢や報酬に惑わされることなく、娘の健やかな歩みに寄り添う時間を最上の価値と見なす父親としての確固たる信条を示す。
まとめ
親の献身的な支えと行動規範は、過酷な過去を背負った少女に安心感を与え、優れた技術と豊かな道徳心を育む土台となる。世俗的な名声に背を向け、子供の育成を至上の喜びとする姿勢を通じて、血縁を越えた家族の確かな絆が描かれる。
仲間との絆
第3巻における仲間との絆について、過去の因縁への決着から新しい仲間たちとの協力関係、そして子どもたちへ引き継がれる絆の観点から整理して解説する。
かつての仲間との因縁と決着
かつて主人公を絶望に追い込んだ元仲間たちとの過去に対し、明確な終止符が打たれる。
・賢者エドモンドの卑劣な罠と制裁 少女を連れ去り滞在先の宿屋を大破させた賢者エドモンドに対し、怒りを抱えながらも冷静に対峙する。脅迫を一蹴し、上位魔法を氷魔法によって打破して身柄の拘束と処罰へ追い込む。
・元勇者アランへの救済と父親としての誇り 呪詛の跳ね返りによって能力を喪失し、瀕死に陥っていた元勇者アランに対し、過去の裏切りに葛藤しつつも娘に恥じない生き方を選ぶ。技術の並行行使によって呪いを解除して命を救い、復讐心を捨てて因縁を自らの手で乗り越える。
街の仲間や異種族との信頼と協力
主人公の誠実な人柄は、周囲の人々や異種族を結びつけ、困難を打開する推進力となる。
・宿主一家との強固な友情 全壊した宿屋の再建に際し、資金難に苦しむ旧友の自尊心を損なわないよう配慮しながら、職人の手配や資材の調達に尽力する。
・女大工カトリへの信頼と支援 性別を理由に不当な扱いを受けていた大工のカトリに対し、偏見を抱くことなく設計の巧みさと技術を正当に評価する。妨害に苦しむ彼女を家族で支え、周囲の職人たちを味方に引き入れる契機を作る。
・エルフの集落との種族を越えた連携 かつて救出したエルフたちが、最高級資材の安価な提供や労力支援を申し出る。異種族間の交流の契機として人間社会へ同行し、関係者全員で建物の再建を完遂する。
次世代へ引き継がれる絆と心の成長
大人が示した行動規範や教えは、子どもたちの精神にも深く浸透する。
・報復の連鎖を止める友情 屋外活動の場において、種族の違いから暴言を浴びせられたエルフの少年に対し、報復を選ばず寄り添う姿勢を示す。密かに習得していた回復魔法を行使して外傷と心の傷を癒やす。相手を許し互いを認め合う姿勢が、子どもたちの絆と自立した心として結実する。
まとめ
過去の悪意を払拭して勝ち取った平穏は、新たな仲間たちとの温かな協力体制によってより強固なものとなる。大人が示した寛容と思いやりの精神が次代を担う子どもたちへと確実に継承され、血縁や種族の垣根を越えた絆が物語の核を形成する。
差別の克服
第3巻では、性別に関する職業差別や慣習、ならびに種族間の歴史的偏見という二つの視点から、不当な障壁を乗り越えていく過程を克明に描く。
性別に関する差別と不平等への抗議
・女大工への偏見と意識の改革 獣人のカトリは大工として確かな技量を備えながら、男性主導の職人社会において女性であることを理由に軽視を受ける。これに対しラビが純粋な疑問を呈し、ダグラスも無意識の先入観を省みて謝罪し、正式に建築を委託する。居住者の視点に立った設計図面を評価され、妨害によって現場を損壊される被害に遭いながらも、親子の支援を受けて再起を果たす。性別を問わず一人の職人として向き合う姿勢を訴えた結果、周囲の職人たちも認識を改め、協力して建物の完成へと至る。
・儀式における旧弊の撤廃 再建現場で行われた地鎮祭において、女性の立ち入りを禁じる古い慣習を理由に関係者が排除されかける事態が発生する。理不尽な排除に対してダグラスが強く異議を唱え、施主もこれに同調する。最終的に信仰の対象側からも偏狭な制約を否定する見解が示され、性別の隔てなく全員で祈祷を捧げる形態へと是正を果たす。
種族間の隔たりと連鎖の遮断
・歴史的対立から歩み寄りへの挑戦 過去の係争により土地を巡る確執が続いていた人間とエルフの間では、世代を超えて相互不信が継承される状況にあった。これに対し、孤立を避けて自ら変化を受け入れる決意を固めたエルフのルーイが市街地へ同行し、共同作業を通じて心理的な障壁を解消していく。
・次代が示す報復連鎖の抑止 屋外活動の場において、種族の違いから人間側の児童より暴言を受けたエルフの少年が激昂した際、ラビが介入して報復を押しとどめる。感情的な反発を重ねることの無益さを説き、密かに習得していた治癒術を用いて外傷と心の痛みを和らげる。
親が示す背中と未来への展望
出自や属性を理由に他者を蔑視する姿勢を明確に否定し、保護者自らが行動を通じて道理を娘へ示す。社会に根深く残る悪意を直ちに根絶することは困難を伴うものの、対話を諦めずに差異を受け入れ合う積み重ねこそが、確かな共生へと繋がる道筋を提示する。
まとめ
作中で描かれる差別の克服は、硬直した規範への異議申し立てと、他者を一個の存在として尊重する誠実な態度によって支えられる。大人が示した公正な振る舞いを次世代が確実に受け継ぎ、憎悪の連鎖を断ち切る姿勢を示す点に、作品が掲げる普遍的な主題が表れる。
宿の再建
第3巻における宿「豚の夜鳴き亭」の再建は、事件の克服にとどまらず、性別や種族を超えた絆と協力の象徴として描かれる極めて重要な物語となる。
宿の大破と再建に向けた課題
・賢者エドモンドによる襲撃と被害 賢者エドモンドがラビを連れ去る際、火魔法で宿屋「豚の夜鳴き亭」を襲撃し、建物を全壊させるとともに宿主エイハブに重傷を負わせる。ダグラスは完全回復魔法で友人の命を救うものの、生活の拠点を喪失する。
・友人の誇りと費用の制約 責任を感じたダグラスは全額負担を申し出るが、エイハブは友人からの借金を固辞する。一般的な相場である金貨10枚に対し、用意できる資金は蓄えの金貨5枚のみという厳しい制限の中、ダグラスは相場の半額で再建を成し遂げる方法を模索する。
女大工カトリとの出会いと差別の撤廃
・職人ギルドでの冷遇と契約の締結 予算半額の条件で職人を探す過程で、男大工たちから嘲笑を浴びる。ウサギ耳の獣人カトリが名乗りを上げるものの、女性への偏見から心ない中傷を受ける。ラビの素直な疑問とダグラスの後押しを通じ、自身の無意識な偏見を省みたダグラスはカトリと正式に契約を結ぶ。
・地鎮祭における因習の打破 儀式の際、神殿関係者が女性の穢れを口実にカトリやエイハブの妻子を排除しようとする。不当な差別に激怒したダグラスの抗議と施主の賛同により、神の使いも狭隘な制約を否定し、全員で祈りを捧げる儀式を実現させる。
エルフの集落フローリアでの協力
・木材費用の克服 建築費の大半を占める木材費用の高騰は、他種族を警戒するエルフ側の手数料設定に起因していた。
・最高級材の提供と共同作業 集落を訪ねた際、恩義を感じていたエルフのルーイたちが最高級のヒノスギ材を破格で提供する。ダグラスは返礼として土魔法による開墾作業を支援し、ルーイと息子のニキも大工仕事の補助として街へ同行する。
職人たちの改心と新施設の完成
・妨害被害と職人たちの協力 工事が順調に進む中、女性への嫉妬から若い大工に屋根を破壊され浸水被害を受ける。失意に沈むカトリを親子で激励し、ダグラスがギルドで職人としての真摯な姿勢を説いた結果、偏見を恥じた大工たちが犯人を追放し、総出で無償の復旧作業に加わる。
・住む人に寄り添った建物の誕生 利用者の体格や趣味に配慮したカトリの繊細な設計と、多くの人々の尽力により短期間で新たな宿が完成を迎える。玄関前に向日葵が咲き誇る新拠点の誕生を前に、宿主一家の涙の感謝とともに盛大な祝宴が催される。
まとめ
相場の半額という難題から始まった再建計画は、不当な偏見の撤廃と他者への思いやりを軸として、異種族や周囲の職人を巻き込む確かな協力関係へと発展を遂げる。完成した建物は、単なる店舗の復旧を超えて、互いを尊重し合う人々の絆が結実した確かな証を示す。
冒険者の戦い
第3巻における戦闘は、かつてのような名誉や任務達成のためではなく、大切な愛娘や仲間を守り、過去の因縁に自らの手で終止符を打つことを目的として描かれる。
賢者エドモンドとの死闘
愛娘を誘拐し、滞在先の宿屋を大破させた元仲間との衝突は、冒険者としての圧倒的な技量と父親としての覚悟を示す契機となる。
・最高位魔法の相殺 相手の放つ意志を持った炎の大蛇に対し、冷気を纏う巨大な氷の鷹を顕現させて対抗する。鋭い爪で炎を捉えて凍結粉砕し、脅威を完全に消滅させる。
・冷徹な強さの発現 甘さを捨てきれないと侮る相手に対し、娘を守る強い決意を告げて肩関節を脱臼させ、術式の展開を強制的に遮断して制圧を果たす。
勇者アランとの対峙と葛藤の克服
自身を陥れた元凶であり、呪詛の跳ね返りによって瀕死の状態に陥っていた元勇者との対面は、内面の葛藤を乗り越える精神的な試練となる。
・二重スキルの行使と救済 憎悪や裏切られた痛みを抱えながらも、娘に恥じない生き方を貫く姿勢を選ぶ。高度な解呪術の並行行使を成功させ、衰弱していた標的の生命を救い出す。
・過去との決別 相手は以前の能力を完全に喪失する結果となるが、医療施設へ送り届ける対応をとることで長年の因縁に終止符を打つ。
冒険者の技術と守るための力
卓越した強さの本質は、恵まれた天賦の才ではなく、途方もない修練で培った知識とスキルの応用力に根ざす。
・高度な技術制御 隠密行動時の消音と筋力増強の併用、移動時の加速、広大な耕作地を一瞬で開墾する土魔法など、状況に応じた多重術式を自在に行使する。
・世俗的な名誉の拒絶 物語の終盤、国家元首から高位の役職への就任を打診された際にも、子育てへの従事を理由に申し出を即座に固辞する。
まとめ
かつて追い求めた称号や地位を手放し、一人の保護者として家族の平穏と笑顔を守り抜く姿勢こそが、主人公の揺るぎない矜持を物語る。
登場キャラクター
ダグラスと旅の同行者
ダグラス・フォード
本作の主人公を務める。元トップランカーの強化魔術師に位置する。愛娘ラビを深く慈しむ。仲間を守るため強い決意を示す。
・所属組織、地位や役職 元勇者パーティーの強化魔術師を務める。元バルザック冒険者ギルドのトップランカーに該当する。
・物語内での具体的な行動や成果 賢者エドモンドの攻撃を破り宿屋の損害を防ぐ。呪詛返しを受けた勇者アランの命を救う。女大工カトリを支援して宿の再建を成功させる。王立騎士団長のスカウトを退ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 過去の因縁に決着をつける。国王からの要請を拒否して育児に専念する。
ラビ
ダグラスの愛娘となる。明るく素直な心を持つ。成長への意欲を見せる。
・所属組織、地位や役職 ダグラスの旅の同行者(義理の娘)。
・物語内での具体的な行動や成果 初級光魔法を習得する。完全回復魔法の行使に成功する。サマーキャンプで他の子供たちと交流する。エルフへの差別を制止する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 魔法の才能を開花させる。精神的な成長を果たす。
クック
ダグラスたちが所有する防犯用魔法アイテムとなる。クック鳥の姿を示す。防犯や警戒の役割を担う。
・所属組織、地位や役職 ダグラス家の防犯用魔道具。
・物語内での具体的な行動や成果 不審者の接近を察知する。大声で鳴いて異常を伝える。ラビの安全確保に貢献する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 家の防犯システムとして機能する。
バルザック魔道具店
エスター
『バルザック魔道具店』を営む小人族の女性となる。店主を務める。知識が豊富となる。
・所属組織、地位や役職 バルザック魔道具店の店主。
・物語内での具体的な行動や成果 ダグラスにクック鳥の取り扱いを説明する。魔道具の販売を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 希少な魔道具を取り扱う。
キャリー
エスターの双子の妹となる。共に店を管理する。手際よく業務をこなす。
・所属組織、地位や役職 バルザック魔道具店の共同店主。
・物語内での具体的な行動や成果 商品の包装を行う。客の対応を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 姉と共に店舗を運営する。
豚の夜鳴き亭
エイハブ
宿屋『豚の夜鳴き亭』の店主を務める。ダグラスの友人となる。責任感が強い。
・所属組織、地位や役職 『豚の夜鳴き亭』の店主。
・物語内での具体的な行動や成果 エドモンドの襲撃で重傷を負う。ダグラスの完全回復魔法で救われる。カトリに宿の再建を依頼する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新しい宿の営業を再開する。
豚の夜鳴き亭の泊り客たち
宿屋を利用していた客たちとなる。
・所属組織、地位や役職 『豚の夜鳴き亭』の宿泊客。
・物語内での具体的な行動や成果 火災から退避する。避難を余儀なくされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一時的に宿を離れる。
ダイアナ
エイハブの娘となる。ラビの友人となる。活発な性格を示す。
・所属組織、地位や役職 エイハブの娘。
・物語内での具体的な行動や成果 ラビと一緒に遊ぶ。完成した新しい宿を喜ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ラビとの友情を深める。
エイハブの妻
エイハブの配偶者となる。家庭を守る。
・所属組織、地位や役職 『豚の夜鳴き亭』の女将。
・物語内での具体的な行動や成果 負傷した夫を看病する。新しい宿の準備を手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 宿の運営を支える。
ドワーフ・情報屋
ハム
ドワーフ族の情報屋となる。ダグラスと旧知の仲となる。素早い動きを見せる。
・所属組織、地位や役職 情報屋。
・物語内での具体的な行動や成果 エドモンドの潜伏先を探し出す。ダグラスへ情報を提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 貴重な情報源として協力する。
カシマシ魔法印刷商会
受付のケットシー
印刷商会の受付を担当する。猫の姿を持つ。親切に応対する。
・所属組織、地位や役職 カシマシ魔法印刷商会の受付。
・物語内での具体的な行動や成果 訪問者を案内する。取り次ぎを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 受付業務を管理する。
ミラー
記者を務める男性となる。熱心な取材を行う。
・所属組織、地位や役職 カシマシ魔法印刷商会の記者。
・物語内での具体的な行動や成果 ダグラスの活躍を取材する。かわら版の記事を書き上げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 記事の執筆を担当する。
かわら版編集長
編集部門の責任者を務める。決断力を持つ。
・所属組織、地位や役職 カシマシ魔法印刷商会の編集長。
・物語内での具体的な行動や成果 記事の発行を許可する。号外の印刷を指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 編集部を統括する。
かわら版編集部の記者たち
取材を行うスタッフたちとなる。多忙に働く。
・所属組織、地位や役職 カシマシ魔法印刷商会の記者。
・物語内での具体的な行動や成果 街の情報を収集する。原稿を作成する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 報道活動に従事する。
編集部のケットシーたち
編集部で働くケットシーとなる。雑務をこなす。
・所属組織、地位や役職 カシマシ魔法印刷商会の作業員。
・物語内での具体的な行動や成果 印刷用紙を運ぶ。作業の手伝いを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 印刷作業を支える。
勇者パーティー(元仲間)
賢者エドモンド
元勇者パーティーの賢者を務める。冷酷な性格を示す。卑劣な手段を用いる。
・所属組織、地位や役職 元勇者パーティーの賢者。
・物語内での具体的な行動や成果 ラビを誘拐する。宿屋を攻撃して放火する。ダグラスの魔法により敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 罪を問われて逮捕される。
勇者アラン
元勇者パーティーのリーダーとなる。呪いにより衰弱する。後悔の念を抱く。
・所属組織、地位や役職 元勇者パーティーの勇者。
・物語内での具体的な行動や成果 呪詛返しを受けてレベルが1まで低下する。病床でダグラスに助けられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 すべての力を失う。ダグラスによって一命を取り留める。
バルザックの住民・施設関係者
ケーキ屋の店員
菓子店の接客を担当する。丁寧に対応する。
・所属組織、地位や役職 ケーキ屋の店員。
・物語内での具体的な行動や成果 商品を箱に詰める。ダグラスへ商品を渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 販売業務を行う。
救助に駆けつけた住民たち
火災現場に集まった人々となる。協力し合う。
・所属組織、地位や役職 バルザックの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 バケツで消火活動を行う。負傷者の救助を手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 消火活動に貢献する。
バルザックの憲兵隊
街の治安を守る組織となる。厳格に対応する。
・所属組織、地位や役職 バルザック憲兵隊。
・物語内での具体的な行動や成果 事件現場を封鎖する。エドモンドを身柄拘束する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 法に基づく処置を行う。
安宿の老婆
スラム街の宿を管理する老婦人となる。無愛想な態度を見せる。
・所属組織、地位や役職 安宿の管理人。
・物語内での具体的な行動や成果 アランの宿泊を許可する。案内を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 部屋の提供を行う。
バルザックの病院の医師
医療を担当する専門職となる。適切な処置を施す。
・所属組織、地位や役職 バルザックの病院の医師。
・物語内での具体的な行動や成果 エイハブを診察する。回復に驚きを見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 患者の治療を担当する。
バルザックの病院の看護師
患者の世話を行う職員となる。優しく対応する。
・所属組織、地位や役職 バルザックの病院の看護師。
・物語内での具体的な行動や成果 病室の掃除を行う。患者の経過を観察する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 看護業務に従事する。
近所の住人たち
近隣に住む人々となる。工事の様子を見守る。
・所属組織、地位や役職 バルザックの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 再建工事を応援する。完成を祝福する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地域社会を形成する。
バルザックの憲兵隊長
憲兵隊の指揮官を務める。責任感が強い。
・所属組織、地位や役職 バルザック憲兵隊長。
・物語内での具体的な行動や成果 ダグラスへ事件の報告を行う。治安維持に努める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 隊の指揮を執る。
職人・建築関係者
職人ギルドの受付のケットシー
ギルドの窓口を担当する。案内をこなす。
・所属組織、地位や役職 職人ギルドの受付。
・物語内での具体的な行動や成果 依頼の手続きを受け付ける。大工の紹介を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 窓口業務を担当する。
職人ギルドの大工たち
建築に携わる職人たちとなる。最初は偏見を持つ。
・所属組織、地位や役職 職人ギルドの大工。
・物語内での具体的な行動や成果 カトリをあざ笑う。反省した後に工事を手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 意識を改めて全員で施工にあたる。
カトリ
ウサギ耳を持つ獣人の女性大工となる。技術が高い。誇りを持って働く。
・所属組織、地位や役職 大工。
・物語内での具体的な行動や成果 新しい『豚の夜鳴き亭』の設計図を描く。嫌がらせに屈せず施工をやり遂げる。素晴らしい宿を完成させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一人の優秀な棟梁として認められる。
材木店の職人たち
木材を扱う業者となる。材料を供給する。
・所属組織、地位や役職 材木店の職人。
・物語内での具体的な行動や成果 木材の運搬を行う。加工の手伝いをする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 建築資材を提供する。
鳶職たち
高所での作業を担当する職人となる。手際が良い。
・所属組織、地位や役職 鳶職。
・物語内での具体的な行動や成果 骨組みの組み上げを行う。屋根の作業を進める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高い場所の施工を担う。
屋根を壊した若い大工
嫉妬心を持つ職人となる。不誠実な行動をとる。
・所属組織、地位や役職 元大工。
・物語内での具体的な行動や成果 カトリの工事を妨害するため屋根を壊す。悪事が発覚して追及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ギルドから追放される。
職人グループのリーダー格の大工
大工たちをまとめる存在となる。責任感を示す。
・所属組織、地位や役職 大工の頭領。
・物語内での具体的な行動や成果 犯人の悪事を謝罪する。無償で作業を手伝うと申し出る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 職人たちの取りまとめを行う。
エルフの集落フローリア
ルーイ
エルフの男性となる。ダグラスの友人となる。親切な心を持つ。
・所属組織、地位や役職 エルフの集落フローリアの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 ヒノスギ材の提供に応じる。バルザックへ渡り建築を手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 人間との交流の架け橋となる。
ニキ
ルーイの息子となる。活発な性格を示す。ラビと仲良くする。
・所属組織、地位や役職 エルフの少年。
・物語内での具体的な行動や成果 父と一緒にバルザックへ行く。サマーキャンプで暴言を受けるが耐える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 困難を通して精神的に成長する。
フローリアのエルフたち
集落に住む人々となる。自然を大切にする。
・所属組織、地位や役職 エルフの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 ダグラスの開墾作業に感謝する。木材の切り出しに協力する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ダグラス親子に好意を示す。
ローズ
エルフの若い女性となる。控えめな性格を持つ。
・所属組織、地位や役職 エルフの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 訪れたダグラスたちをもてなす。食事の準備をする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集落で穏やかに過ごす。
ルーイの妻
ルーイの配偶者となる。優しい態度を見せる。
・所属組織、地位や役職 エルフの住民。
・物語内での具体的な行動や成果 料理を振る舞う。夫と息子の旅立ちを見送る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 家庭を支える。
ニキの祖父
エルフの老人となる。長老的な役割を担う。
・所属組織、地位や役職 エルフの長老。
・物語内での具体的な行動や成果 木材の提供を許可する。ダグラスたちを歓迎する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集落の意思決定を行う。
サマーキャンプ関係者
引率の教師たち
キャンプを指導する教員となる。安全に配慮する。
・所属組織、地位や役職 サマーキャンプの引率教師。
・物語内での具体的な行動や成果 子供たちに指示を出す。野外活動の監督を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 行事の安全管理を務める。
キャンプに参加した子供たち
参加した少年少女たちとなる。元気に活動する。
・所属組織、地位や役職 キャンプ参加者。
・物語内での具体的な行動や成果 テントを設営する。料理作りを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 野外生活を通して協調性を学ぶ。
ローガン
キャンプに参加した大柄な少年となる。乱暴な言動をとる。
・所属組織、地位や役職 キャンプ参加者の少年。
・物語内での具体的な行動や成果 ニキに偏見の言葉を浴びせる。作業を押し付けようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 周囲から態度を注意される。
腕白そうな少年たち
ローガンの仲間となる。同調して行動する。
・所属組織、地位や役職 キャンプ参加者の少年。
・物語内での具体的な行動や成果 ローガンの発言に調子を合わせる。後から反省の素振りを見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団行動に参加する。
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展開まとめ
一話 おっさんと少女、ふたりでお買い物
バルザックへの帰還と三つの用事
ダグラスとラビは、身元を隠すためにフードを目深に被りスカーフで顔を覆ってバルザックの街へ戻ってきた。宿を『豚の夜鳴き亭』に定めたダグラスは、取り置きを頼んでいた防犯用魔道具の受け取り、街を騒がせる記事への抗議、そして勇者アランの動向確認という三つの目的を果たすため行動を開始した。
魔道具店での買い物とラビへの誓い
荒原に立つ転送ゲート『挑戦の門』を経て『バルザック魔道具店』へ入店したダグラスは、店主である小人族の双子エスターとキャリーから、注文していた『防犯用魔法クック鳥』が要人警護用の極めて高価な品であると告げられた。高価な買い物を巡りラビが恐縮して不安げな様子を見せたため、ダグラスは亡き母の無償の愛を引き合いに出し、ラビは自分にとってかけがえのないお姫さまだと温かく言い聞かせて不安を解消させた。
二話 おっさんと少女、学習教材を手に入れる
クック鳥との対面と魔法の悩み
金貨十枚を支払い、言葉を話すオレンジ色のクック鳥を受け取ったラビは、その鳥を頭の上に乗せて親しみを示した。魔力充填の話題からラビがまだ魔法を使えない悩みを打ち明けると、双子の店主は倉庫の奥から『お子様向け魔法教材セット』を探し出してきた。
魔法教材の購入
教材を前に自信なさげな態度をとるラビに対し、ダグラスは子供の学びたいという意志を応援したいと考え、教材の代金を即座に支払って購入を決めた。父親の惜しみない後押しを受けたラビは笑顔を取り戻し、魔法の習得に向けて努力することを約束した。
三話 おっさんと少女、雨の夜の過ごし方
土砂降りの帰路と宿での再会
悪天候の中、ダグラスは教材を抱えるラビを抱き上げて宿へ急ぎ、雨に濡れながらも無事に帰着した。入浴を済ませて食堂で夕食をとっていると、情報屋のドワーフであるハムが現れ、トイ・ベリーでの一件を解決したダグラスの手腕を絶賛した。
部屋干しと穏やかな夜
部屋に戻った二人は、客室の麻ひもに洗濯物を一枚ずつ干していった。ラビが丁寧に皺を伸ばして手伝う姿を見守りながら、ダグラスは日々の何気ない体験が娘の成長に繋がっていく喜びを噛み締めた。
四話 おっさんと少女、失敗を恐れないということ
教材の開封とラビの不安
洗濯を終えた後、ラビは教材セットに付属していた帽子を被りステッキを手にして魔法の学習を始めた。しかし、いざ簡単な魔法を唱える段階になると、失敗して父親を失望させるのではないかという恐怖に囚われ、練習をためらってしまった。
父親の励まし
ダグラスは自身の潜在能力の低さや過去に重ねてきた無数の失敗談を語り、何度失敗してもそばで支え続けると約束した。父親の確かな支えに勇気をもらったラビは、恐怖を振り払って真剣に魔法と向き合う決意を固めた。
五話 おっさんと少女、眠っていた魔力を目覚めさせる
光魔法の覚醒
ラビは深呼吸を繰り返して全身の力を抜き、ステッキを構えて光魔法シャイニングを唱え続けた。最初はかすかな火花が散る程度だったが、諦めずに挑戦を重ねるうちに光は急速に膨らんでいった。
成功の歓喜
部屋中を包み込むような温かく眩い光を放ち、ラビはついに魔法の覚醒に成功した。ダグラスは歓喜のあまりラビを抱き上げて喜びを分かち合い、努力を実らせた娘の成長に涙を拭った。
六話 おっさんと少女、記念日について話す
悪天候の朝とダイアナとの約束
翌朝も激しい雷雨が続いたため、宿主エイハブの提案により、ラビは学校を休んだダイアナと宿の中で遊んで過ごすことになった。ダグラスは魔法習得の祝いとしてケーキを買ってくると約束した。
誕生日の確認
会話の中でラビの誕生日を聞いていなかったことに気付いたダグラスが尋ねると、十二月十二日であると判明した。まだ当日は迎えていないと知って安堵したダグラスは、その日には望みをすべて叶える特別なお祝いをしようと約束を交わし、取材対応のためカシマシ魔法印刷商会へ向かった。
七話 おっさん、ケットシーからサインを求められる
印刷商会への来訪
雨の中を駆け抜けてカシマシ魔法印刷商会へ到着したダグラスは、受付にいたケットシーの職員に取り次ぎを頼んだ。
息子のためのサイン
職員は目の前の人物が英雄ダグラスであると気付くと興奮の声を上げ、大ファンである息子のためにサインが欲しいと頭を下げた。ダグラスは戸惑いつつも求めに応じ、手帳へぎこちなく自身の名前を書き記した。
八話 おっさん、ファンレターの山を渡される
編集部への抗議と提示された手紙
会議室で担当記者のミラーや編集長と対峙したダグラスは、平穏な育児を守るため自身に関する取材や報道を控えるよう申し入れた。編集長が真摯に謝罪する一方、記者は山積みの木箱を運び込み、全国から届いた大量のファンレターをダグラスに示した。
コラム連載の合意
手紙にはダグラスの生き様や記事に救われた市井の人々の感謝が綴られていた。自身が誰かの励みになっている事実を知ったダグラスは、取材を一切行わないことと娘の情報を伏せることを条件に、時折自身の近況を日記として提供するコラムの掲載を承諾した。
九話 おっさん、激怒する
クック鳥の急報
ケーキ屋で大きなアップルパイを購入したダグラスの元へ、頭上からクック鳥が飛来し、宿が何者かの襲撃を受けてラビが危険に晒されていると告げた。
大破した宿と拉致の判明
宿へ急行したダグラスは、全壊した建物の前で救出活動が行われている惨状を目の当たりにした。瓦礫の下から瀕死のエイハブを救い出して完全回復魔法を施すと、意識を取り戻したエイハブから、火魔法を操る賢者エドモンドがラビを連れ去り二日後に郊外の廃墟へ来るよう言い残した事実を告げられた。
十話 おっさん、かつての仲間と対峙する
朽ちた神殿への突入
クック鳥の誘導に従い、ダグラスは街の北にある神殿の廃墟へ辿り着いた。仕掛けられた罠魔法と扉を筋力増強と消音の二重スキルで粉砕して最奥へ踏み込むと、衰弱した姿のエドモンドが待ち構えていた。
エドモンドの要求と拒絶
エドモンドは、ダグラスが跳ね返した呪詛によって弱体化したアランが任務に失敗し続け、勇者パーティーの特別ライセンスを剥奪された現状を明かした。エドモンドはラビの命と引き換えに呪詛を再び引き受けるよう要求したが、娘を残して命を落とす選択を拒んだダグラスは交渉を一蹴し、風魔法でエドモンドを吹き飛ばした。
十一話 おっさん、賢者エドモンドを成敗する
最高位魔法の衝突
エドモンドは意思を持つ炎の大蛇を放つ最高位火魔法で反撃したが、ダグラスは氷の鷹を放つ羅刹氷鷹でその炎を完全に凍結させて消滅させた。幾度もの詠唱で魔力が底をついたエドモンドに対し、ダグラスは接近して右肩を脱臼させ、魔法を解除しなければ左腕も折ると宣告した。
ラビの救出
激痛に屈したエドモンドが解除の呪文を唱えると、部屋の隅の長椅子から姿を隠されていたラビが現れた。魔法の縄から解き放たれたラビをダグラスは強く抱きしめ、無事の再会を涙ながらに喜んだ。
十二話 おっさんと少女、守り守られる
エドモンドの連行と残された課題
神殿の騒ぎを聞きつけた憲兵隊により、エドモンドは誘拐や器物損壊の罪で連行された。恐怖からダグラスにしがみついて離れないラビに対し、ダグラスはもう危険な目には遭わせないと固く誓った。
勇者アランとの対峙を決意
ダグラスはアランの衰弱に決着をつけ、手元の指輪を返却するために会う必要があるとラビに打ち明けた。ラビは父親の心痛を案じつつ、どんな時でも自分が父親を守ると告げて小さな腕でダグラスを抱きしめた。
十三話 おっさん、娘にとって恥ずかしくない父親でありたいと思う
スラムの安宿へ
情報屋ハムの調査により、アランがスラム街の傾いた安宿に滞在していることが判明した。ラビの強い希望を受けて同行を許したダグラスは、薄暗い部屋のベッドで死に瀕しているアランを発見した。
呪詛返しの解除
ダグラスは自らの手で呪詛返しの解除スキルを二重に重ねて発動し、アランを蝕んでいた呪いを完全に取り除いた。呪いは消滅したものの、代償としてアランのレベルは初期値の1へとリセットされた。命を取り留めたアランを抱え、ダグラスはラビを連れて宿を後にした。
十四話 おっさんと少女、お見舞いに行く
病院での見舞いとエイハブの頑なさ
アランとエイハブが入院する病院へ連日通ったダグラスは、エイハブの病室で宿の修繕費を負担させてほしいと申し出た。しかしエイハブは友人から金を借りることを拒み、自力で借金をして再建すると譲らなかった。
新たな解決案の提示
エイハブが出せる金貨五枚という相場の半額の予算内で宿を再建する方法を見つけ出すとダグラスは提案し、家族を守りたいというエイハブの承諾を得て工事の計画を引き受けた。
十五話 おっさんと少女、職人探しをする
職人ギルドでの冷遇
半額の予算で施工を引き受けてくれる大工を探すため、ダグラスとラビは職人ギルドを訪れた。金貨五枚という条件を聞いた屈強な大工たちから嘲笑され断られる中、ウサギ耳の獣人の少女カトリが名乗りを上げた。
カトリとの契約
周囲の職人たちから女大工であることや体格を理由に侮辱されたカトリに対し、ラビがなぜ女ではだめなのかと疑問を投げかけた。その言葉に心を打たれたダグラスは自らの偏見を詫び、予算内で宿を建てる方法を共に模索することに同意してカトリと正式に契約を結んだ。
十六話 おっさんと少女、娘を初めて馬車に乗せる
木材費用の課題と閃き
食堂へ場所を移して打ち合わせを行った一行は、建築費用の大半を占める木材の価格が、他種族嫌いのエルフによる手数料の高騰に起因していると知った。ダグラスは以前親交を結んだ集落フローリアのエルフたちから直接木材を買い付ける案を思い立ち、馬車を仕立てて出発した。
十日間の旅路
馬車に揺られながら、カトリは一人前の大工になって実家の両親に認められたいという夢を語った。ラビやカトリと交流を深めつつ、道中で冷たいレモン水や特大のアップルパイを味わい、一行は十日をかけてフローリアの森へ到着した。
十七話 おっさんと少女、おやつタイムを楽しむ〜ゴロゴロ林檎のアップルパイと暑い日に最高レモン水〜
馬車内の団欒とカトリの決意
夏の強い日差しの中、馬車内でラビの前髪をリボンで結び直したダグラスは、冷やしておいた手製のレモン水を取り出して二人に振る舞った。喉を潤したラビの鋭い嗅覚に促され、バルザックで買い求めておいた特製アップルパイを皆で頬張り、美味しい時間を共有した。
十八話 おっさんと少女、懐かしい人々と再会する
筋骨隆々となったエルフたち
集落フローリアへ入った一行を出迎えたのは、ダグラスへの憧れから身体を鍛え上げ、以前の数倍に筋骨隆々となったエルフの男たちであった。
ニキの急成長とラビの困惑
父親のルーイだけでなく、息子のニキまでもが大人顔負けの体格へ急成長していた。以前の面影を大きく変えたニキの姿に警戒したラビは、ダグラスの背中に隠れてしまい、ニキは落胆の声を上げた。
十九話 おっさんと少女、夏の林業を手伝う
破格の木材提供と手間の相殺
カトリの案内により、乾燥を終えて保管されていた最高級のヒノスギ材を格安で譲り受ける合意が取れた。恩人であるダグラスへの好意で手間賃を辞退しようとするエルフたちに対し、ダグラスは対価を正当に支払う代わりに植林地の下準備を引き受けると申し出た。
土魔法による一瞬の開墾
手分けしてラビとカトリが草刈りを行い、ダグラスが指定された土地へ土魔法を発動すると、地下の根を傷つけることなく一帯の土が一瞬で柔らかく耕された。人知を超えた作業速度にエルフたちは熱狂し、ダグラスへの称賛を惜しまなかった。
二十話 おっさんと少女、エルフの宴に招待される
集落での賑やかな宴
作業の完了を祝し、ルーイの自宅で大宴会が催された。エルフの伝統料理を囲みながらラビが旅先での出来事を誇らしげに語り、以前ダグラスに想いを寄せたエルフの娘ローズも穏やかに再会を喜んだ。
ルーイの決意とバルザックへの同行
閉鎖的なエルフ社会を変えるため人間との交流を望んでいたルーイは、宿の再建を手伝う名目で二ヶ月半の休暇を利用してバルザックへ同行したいと願い出た。ダグラスはその申し出を歓迎し、快く同行を承諾した。
二十一話 おっさん、才能の片鱗を見いだす
深夜の図面確認
宴の後、深夜に起きたダグラスは、衝立の向こうでカトリが熱心に宿の図面を引いている姿を目にした。カトリの図面には、長身のエイハブに合わせた高い流し台や、妻の園芸のための花壇、朝日を取り込む食堂の窓など、住む者への細やかな配慮が図解入りで綿密に記されていた。
職人への賛辞
図面の丁寧さに深く感動したダグラスは、カトリの住む人に寄り添う姿勢を本物の大工であると心から称賛した。カトリは自身の努力を認めてもらえた喜びから涙を浮かべ、必ず良い宿を建てると誓った。
二十二話 おっさんと少女、材木店を見学する
退院したエイハブへの提案
ヒノスギ材を積んだ馬車でバルザックへ戻ったダグラスは、リハビリを終えて杖なしで歩けるようになったエイハブにカトリを紹介した。
図面の採用と木材加工
カトリの図面を見たエイハブは家族を想う工夫の数々に感動し、施工を正式に託した。材木店で原木がすべすべの角材へ加工される様子を見学したラビは職人たちに声援を送り、現場は和やかな空気に包まれた。
二十三話 おっさんと少女、地鎮祭に参加する
地鎮祭の決まりとダグラスの怒り
更地となった現場で地鎮祭の準備が進む中、神殿の助手が女性は穢れているため結界内に入ってはならないとカトリやエイハブの妻子を排除しようとした。
差別の撤廃と祈り
理不尽な差別に激怒したダグラスは、家族や作り手を排除した儀式に何の意味があるのかと助手を問い詰めた。エイハブもその意見に賛同したため、神の御使いの老人は女性の参加を認め、全員揃って工事の安全を祈願した。
二十四話 おっさんと少女、建前を楽しむ
屋根の上での指揮
骨組みを組み上げる建前の日、カトリは棟梁として屋根の上に立ち、全体の指揮を執った。
餅と菓子のばらまき
集まった近隣住民へ向けて屋根から銭や菓子が投げられ、ダグラスは下で見守るラビの足元へ次々とお菓子を届けて喜ばせた。儀式は盛況のうちに幕を閉じた。
二十五話 おっさんと少女、傷ついた仲間に寄り添って励ます
屋根の損壊とカトリの絶望
翌朝、完成したばかりの屋根が故意に切り裂かれ、建物内が雨水で浸水する事件が発生した。自身が女であるせいで災いを招いたと自責の念に駆られたカトリは、泣き叫びながら現場から逃走した。
ラビの共感と再起の誓い
加速スキルでカトリに追いついたダグラスとラビは、カトリの痛みに寄り添った。ラビが自身の心の中にあった恐怖と父親の支えについて語りかけると、カトリは涙を拭い、大工の仕事が好きだから差別や悪意には屈しないと力強く立ち上がった。
二十六話 おっさん、職人たちの架け橋となる
職人ギルドへの訴え
現場の痕跡から同業者の犯行と確信したダグラスは職人ギルドへ出向き、仲間を傷つけられたカトリの無念を説いて大工たちへ協力を求めた。
犯人の追放と修復の支援
ギルドの職人たちが現場へ連れてきた若い男は、女が英雄の仕事を受けたことが気に入らず屋根を破壊したと白状した。職人たちはその男をギルドから即座に破門し、自分たちの偏見を深く恥じ入って無償の木材と総出の復旧作業を提供した。
二十七話 おっさんと少女、新『豚の夜鳴き亭』の誕生を喜ぶ
新店舗の落成
一ヶ月の突貫工事を経て、向日葵が咲き誇る新『豚の夜鳴き亭』が完成した。エイハブは最高の宿を作ってくれたカトリの手を握って涙を流し、手伝いに集まった職人たちや仲間全員で完成を祝う宴が盛大に執り行われた。
二十八話 おっさん、過保護レベルも世界一
サマーキャンプの誘い
学校から戻ったダイアナが、山の麓で開かれる二日間の子供サマーキャンプへ行こうとラビとニキを誘った。親の同伴が禁じられていると知ったダグラスは、ラビと離れる不安から過保護ぶりを爆発させて苦悶した。
ニキの不安と親の決断
エルフが混ざると虐められるのではないかと不安がるニキに対し、ルーイは差別に負けない心を育てるため参加を後押しした。娘の純真なおねだりに抗えなくなったダグラスも、護衛のクック鳥を連れていくことを条件に参加を許可した。
二十九話 おっさんと少女、語り合う夜のはなし
キャンプの準備と過去の歴史
前夜、ラビは自作のリストを確認しながら一人で荷物を揃えた。寝室でラビから人間とエルフが仲違いした理由を尋ねられたダグラスは、かつて人間がエルフの住処を奪った歴史と、憎しみを引き継いではならない大切さを分かりやすく語り聞かせた。
三十話 おっさん、テントを張る少女たちを見守る
ステルススキルでの追尾
翌朝、子供たちを見送ったダグラスは、暗殺者の警戒を理由にステルススキルで姿を隠してキャンプ場へ潜入した。
見守りと風の補助
子供たちが協力してテントを組み立てる中、強風に煽られて作業が難航したため、ダグラスは密かに風魔法を放って風を鎮め、一番乗りでテントを完成させた子供たちの笑顔を見届けた。
三十一話 おっさん、子供たちのケンカを見てハラハラする
森での薪集めとエルフへの偏見
森へ薪集めに向かった子供たちは、ラビの知識を活かして乾燥した小枝を選定していた。そこへ乱暴な少年ローガンたちが現れ、ニキに対してエルフを理由にした心ない暴言を浴びせかけた。
ラビの制止とニキの逃走
ニキが怒りに拳を握りしめた瞬間、ラビが駆け寄って父親ルーイの言いつけを思い出させ、争いを未然に防いだ。しかし悔し涙を流したニキはそのまま森の奥へ走り去ってしまい、ラビも後を追って駆け出した。
三十二話 おっさん、娘の歩んでいく道に想いを馳せる
完全回復魔法の行使
転んで足を大きく擦りむいていたニキの元へ追いついたラビは、特訓していた完全回復魔法を必死に唱え、ニキの傷を完全に治療してみせた。
連鎖を断つ心
ラビは父親の言葉を引き合いに出し、やり返さないことが憎しみの連鎖を止める第一歩なのだとニキを諭した。娘の精神的な成長を陰から見守ったダグラスは、その清らかな心に深く胸を打たれた。
三十三話 おっさん、王立騎士団団長へのスカウトをあっさり断る
国王からの勅命
キャンプから無事に帰着した子供たちを出迎えた直後、憲兵隊長が宿へ踏み込み、国王からの親書を携えてダグラスへ王立騎士団長の就任を要請した。
断固たる拒絶と包囲
現団長グウェンダルへの敬意を欠く非道な人選を嫌悪したダグラスは、育児で忙しいと言い放って要請を一蹴した。しかし翌朝、宿はダグラスを強制連行するために集結した五十人余りの憲兵隊によって完全に包囲された。
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