物語の概要
異世界に召喚された少年・菜月昴が、死して時間を巻き戻る「死に戻り」の力を使い、過酷な運命に立ち向かう物語である。本巻では、スバルがロズワール邸に招かれ、双子メイドのラムとレム、屋敷の主ロズワールらと交流を深めるが、再び死の運命に巻き込まれる。屋敷での静かな日々の裏に潜む陰謀と、スバルの新たな試練が描かれる。
主要キャラクター
• 菜月昴:異世界から召喚された少年であり、死に戻りの力を持つ。本巻では屋敷で新たな仲間と出会い、彼らとの絆を深めようと奮闘する。
• エミリア:王選候補者の一人であり、スバルの恩人。ロズワール邸においても変わらぬ優しさと強さを見せる。
• パック:エミリアに付き従う精霊であり、彼女を守護する存在。屋敷生活でもたびたびスバルを助ける。
• ラム:ロズワール邸で働く双子の姉メイド。無愛想ながらも洞察力に優れ、スバルに対して辛辣な態度を取る。
• レム:ロズワール邸で働く双子の妹メイド。礼儀正しく、姉ラムに強い忠誠心を抱きつつ、スバルに対して複雑な感情を抱き始める。
• ロズワール・L・メイザース:ロズワール邸の領主であり、エミリアを支援する立場にある魔法使い。独特な言動を持ち、スバルに関心を寄せる。
物語の特徴
本作では、前巻の王都での死闘から一転し、田舎の屋敷での生活が舞台となる。日常と謎、平和と恐怖が交錯し、緊張感に満ちた展開が続く。死に戻りによる「やり直し」が、心理的な恐怖と葛藤をより深く描く要素となっており、スバルの成長と葛藤が一層際立つ構成となっている。双子メイドとの関係性や新たな謎が物語に厚みを加え強い没入感を与える。
書籍情報
RE:ゼロから始める異世界生活 2
著者:長月 達平 氏
イラスト:大塚 真一郎 氏
出版社:KADOKAWA(MF文庫J)
発売日:2014年9月25日
ISBN:9784040668685
メディア展開:アニメ化(TVアニメ第1期は2016年放送開始)、漫画化、ゲーム化など多数
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あらすじ・内容
――これはナツキ・スバルが、彼女たちと過ごした平穏な日々の物語。ロズワール邸を発端とした魔獣騒動が一段落し、屋敷と村に平和な時間が訪れていた。そんななんでもない穏やかな時間は、しかし他でもないスバルの思いつきやエミリアたちの事情によって、騒がしくも賑やかに塗り潰される。エミリアの弱点克服に挑む『E・M・Tにラブソングを』。スバルとラムが望まぬピクニックに出かける『ラム・イズ・オーダー』。屋敷を襲った突然の寒波に便乗して遊び回る『冷たいのがお好き』など、WEB未掲載の短編集第二弾!
『死に戻り』のない優しい時間、これがナツキ・スバルの望んだ楽しい異世界生活!
感想
平穏な日常がもたらす安らぎ
本作では、スバルがロズワール邸とアーラム村で過ごす平穏な時間が描かれた。
死に戻りの苦難を離れた穏やかな日々は、読者に温かい感情を呼び起こした。
エミリア、ラム、レム、ベアトリスらとの交流は、これまでの激動とは対照的な安らぎに満ちていた。
何気ない一言や行動が、彼らの絆を静かに深めていく様子が印象的であった。
キャラクターたちの新たな一面
これまで戦いの中でしか見られなかったキャラクターたちの柔らかな表情が、本作では数多く描かれた。
エミリアの不器用ながらも懸命な努力、ラムの辛辣さの裏にある姉としての優しさ、レムの微笑ましい成長、そしてベアトリスの拗ねた態度に垣間見える寂しさが、それぞれの人物像をより立体的に浮かび上がらせた。
特にレムの変化は、後の物語を思うと感慨深く、胸を打たれるものであった。
一方で、スバルの言動には一定の違和感も覚えた。
前巻まで苦難を重ねた彼が、短期間でここまで軽妙な振る舞いを見せることに、引っかかりを覚える場面が少なくなかった。
特に、異世界という舞台にありながら、現代日本の学生らしいノリを強く引きずっている点は、物語世界との間に小さなズレを感じている。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
スバル
異世界に召喚された少年であり、本作の主人公である。異能『死に戻り』の力を持ちながら、周囲との関係を築こうと必死に行動するが、軽薄な言動が目立つ一面もある。
・所属組織なし
・異世界で数度の死と再生を繰り返しながら、屋敷と村での生活に適応しようと努めた
・何度も失敗を重ねながらも、エミリアを守る決意を新たにした
少女
プロローグに登場する存在であり、過去に世界の崩壊を経験した少女である。罪悪感に囚われ、贖罪を胸に秘めたまま生き続けている。
・所属組織なし
・崩壊した世界の記憶と罪悪感を抱え続けた
・その体験が後の行動原理に大きな影響を与えた
ベアトリス
ロズワール邸の禁書庫に住む精霊であり、独特な口調と態度を持つ少女である。表面的には冷淡だが、内心ではスバルに対して一定の情を抱いている。
・ロズワール邸禁書庫の管理者
・スバルに対し、助言や保護を行った
・仮契約を結び、スバルの護衛役を担った
ラム
ロズワール邸に仕える双子メイドの姉であり、毒舌家である。妹レムを深く愛しており、スバルに対しては辛辣ながらも時に助力する存在である。
・ロズワール邸の使用人
・スバルに読み書きを教えるなどの支援を行った
・レムの死後、怒りと悲しみに支配され、スバルに攻撃を加えた
レム
ラムの双子の妹であり、ロズワール邸に仕えるメイドである。穏やかで献身的な一面を持ちながら、強い魔女への嫌悪感を抱いていた。
・ロズワール邸の使用人
・スバルを魔女教徒と疑い襲撃した
・後に呪術により死亡し、物語に深い悲劇をもたらした
エミリア
銀髪のハーフエルフであり、王選候補者の一人である。スバルを異世界で初めて救った存在であり、彼にとって特別な存在となっている。
・王選候補者
・スバルに対して常に優しく接し続けた
・苦しむスバルを献身的に支えたが、全てを救うには至らなかった
パック
エミリアと契約している小さな精霊であり、彼女を守護する存在である。普段は愛らしい猫のような姿をしている。
・エミリアの守護精霊
・エミリアの傍らで日常的に支援を行った
・直接的な戦闘行動は記録されていない
ロズワール
ロズワール邸の主であり、王選に関わる重要な立場にある道化風の男である。スバルを静観し、時に助言を与えた。
・ロズワール邸の領主
・スバルの行動を評価しつつ、一定の距離を保った
・エミリアの後見人として王選に関わっている
フレデリカ
屋敷の控室で言及される元使用人であり、制服の持ち主である。直接の登場はないが、名前が重要な役割を担った。
・元ロズワール邸使用人
・制服の引き継ぎにより存在が示唆された
・本格登場は後の巻に持ち越された
村の子どもたち
アーラム村に住む無邪気な子どもたちであり、スバルと交流を持った。スバルに親しみを寄せ、軽く扱う場面もあった。
・アーラム村の住民
・スバルに懐き、村での交流を生んだ
・物語終盤で呪術師による事件に巻き込まれた
呪術師
屋敷や村を襲った正体不明の存在であり、呪いによる衰弱死を引き起こした犯人である。直接の描写はないが、物語に大きな影響を及ぼした。
・不明
・スバルやレムに呪いをかけ、悲劇をもたらした
・存在そのものがロズワール邸に緊張をもたらした
展開まとめ
プロローグ『贖いの始まり』
罪悪感に彩られた少女の原点
世界の崩壊と絶望の記憶
少女は、かつて見慣れた世界が業火に包まれ、人々が骸と化していく光景を目に焼き付けた。終焉に向かう世界は、無慈悲で理不尽な現実に満ちていた。彼女は手を伸ばし、声を震わせながら救いを求め続けたが、世界はその祈りを容赦なく踏みにじった。
背中に隠れて見た世界と変化
少女は長らく他者の背後から世界を見つめ、守られる存在であり続けた。しかし、その庇護が失われた瞬間、初めて自らの目で世界の眩しさと苛烈さを直視した。炎の熱さ、焦げる臭い、宙を舞う角の美しさ──すべてを瞼の裏に刻み付けたのである。
刻まれた感情とその後の日々
世界の終わりを目前にして芽生えた一つの感情を、少女は今なお鮮明に記憶していた。その感情は深く彼女の心を支配し、それ以降の彼女の日々を、ひたすらその罪悪感に対する贖罪で満たしていったのである。
第一章 『自覚する感情』
目覚めと現状確認
スバルは豪奢な客室で目覚め、己の無事と周囲の状況を確認した。異世界で幾度も死に直面した記憶を辿りつつ、今回は「死に戻り」を回避できたことに安堵した。
屋敷内での迷走と邂逅
広大な屋敷を探索し始めたスバルは、廊下がループしている可能性に気付き、適当に選んだ部屋で巻き毛の少女・ベアトリスと遭遇した。ベアトリスはスバルにマナ干渉を行い、敵意の有無を確かめた。
双子メイドとの対面とエミリアの再会
再び眠りに落ちたスバルは、目覚めた後、双子のメイドであるラムとレムに出迎えられた。エミリアも姿を現し、スバルが助かったことを互いに感謝し合った。スバルは異世界でもメイド文化が存在することに歓喜した。
屋敷の庭での交流
エミリアと共に屋敷の庭に出たスバルは、準備運動としてラジオ体操を教え、エミリアとパックとの交流を深めた。精霊との契約やエミリアの日課についても理解を深めた。
ロズワールとの対面への準備
庭でのひとときを終えたスバルは、屋敷の主であるロズワールとの対面に臨むよう促された。双子メイドとエミリアは、ロズワールの人物像を言葉で表現できないと語り、スバルは期待と不安を抱きながら屋敷へと向かった。
第二章 『約束した朝は遠く』
朝食の場でのベアトリスとのやり取り
スバルは食堂で巻き毛の少女ベアトリスと顔を合わせた。エミリアとは着替えのために一旦別れたため、食堂には二人だけが残された。ベアトリスは皮肉を交えた言葉でスバルに接し、スバルも応じる形で反論を繰り広げた。スバルは教えを請う素振りを見せながらも、無作法に上座に腰を下ろし、ベアトリスを呆れさせた。その後、双子のメイドたちが朝食を運び入れ、食卓は整えられた。
食卓を囲む双子メイドとの交流
スバルは配膳を済ませた双子のメイドたちと共に食卓を囲んだ。青髪のレムが料理を、桃髪のラムが飲み物を手際よく並べた。食事を進める中で、スバルは改めて双子とベアトリスの存在に感謝を覚えたが、やり取りは終始軽妙なものとなった。場の雰囲気は和やかであり、食事の時間が静かに過ぎていった。
ロズワール邸での新生活開始
スバルは、ラムの案内によりロズワール邸での生活を開始した。エミリアとは別行動となり、使用人としての訓練を受けることとなった。最初に使用人服を用意するため、控室でフレデリカの制服を受け取るよう指示され、屋敷内の私室も与えられた。
ベアトリスとの出会い
控室探しの途中、スバルは禁書庫にいるベアトリスと遭遇した。扉渡りの力に翻弄されながらも、強引にベアトリスの元へたどり着いたが、怒りを買い吹き飛ばされた。結果、ラムからも「相性が良い」と評されつつ、ロズワール邸での波乱の幕開けを迎えた。
使用人服の調整とレムの登場
制服に袖を通したスバルであったが、肩幅が合わず不恰好であったため、レムが修繕を担当することになった。採寸のため衣裳部屋に案内される中、レムとスバルの間に微妙な距離感が生まれた。特に、スバルの「個性を出すべき」という発言は、レムの冷たい反応を招いた。
屋敷内の案内と異世界の常識
屋敷の案内を終えた後、スバルは異世界特有の時間表現や魔刻結晶について説明を受けた。ロズワール邸は本棟、西棟、東棟から成り、使用人たちは本邸に残されていることが判明した。また、ロズワール家の複雑な親族関係もほのめかされた。
厨房での修業とスバルの奮闘
昼食準備のため、スバルはラムやレムと共に厨房で作業を行った。野菜の皮剥きに苦戦するスバルは、レムの助言を受けて徐々に技術を向上させたものの、たびたび怪我を負った。さらに、見た目を整えるためにレムから髪を梳く提案を受け、使用人としての見た目の重要性を痛感した。
レムとの関係の深化
レムは、スバルの髪型や見た目に気を配る一方で、姉であるラムに対して忠誠心を示し続けた。スバルはレムとの間に小さな信頼関係を築き始めたものの、依然として微妙な距離が残ったままであった。
スバルの初仕事とレムとの交流
スバルは一日目の使用人業務を終え、自室で疲労困憊の様子を見せた。自身の不器用さを痛感しつつも、教育係ラムの懇切丁寧な指導に救われたと振り返った。そこへレムが訪れ、直した制服の上着を届ける。スバルは完成度の高さに驚き、ズボンの裾上げに自ら挑戦する。得意の裁縫スキルを披露し、レムから素直に称賛を受けた。
髪の手入れをめぐる提案とスバルの条件
昼の話題を蒸し返し、レムはスバルの髪の手入れを申し出たが、スバルは逆に「毛先を整えてくれるなら」と条件を提示した。レムは覚悟を決めて了承し、互いの距離を少し縮める結果となった。スバルはズボンの裾上げを完了し、仲直りの空気を醸成した。
ロズワールとラムによるスバルの評価
夜、ロズワールとラムが執務室でスバルの状況を報告し合った。ラムはスバルの使用人能力の低さを酷評したが、間者の可能性は低いと判断した。ロズワールはエミリアとスバルの交流を見下ろし、彼の純粋さを評価しつつも静観することを決めた。
エミリアとの夜の会話とスバルの決意
スバルはエミリアと庭園で語らい、自身の努力と成長への思いを打ち明けた。エミリアもまた、女王候補としての重圧に苦しみながら努力していることが示唆された。互いに励まし合い、スバルはエミリアと村に出かける約束を取り付ける。エミリアの素直な微笑みに、スバルはさらなる決意を新たにした。
ベアトリスとの短い交流とレムとの約束
スバルは禁書庫に立ち寄り、ベアトリスに挨拶を交わした。別れ際に聞こえた彼女の寂しげな声が気にかかりつつも、スバルは深追いしなかった。その後、レムと出会い、夜遅くにもかかわらず散髪を申し出られるが、翌朝のエミリアとの約束を優先して断った。代わりに、翌日の夜に約束を交わし、レムを納得させた。
翌朝の異変とスバルの絶望
翌朝、スバルは気合いを入れて起床したが、ラムとレムの態度に異変を感じた。二人はスバルを「お客様」と呼び、まるで初対面のような距離感を見せた。困惑するスバルは、自身の手にあったはずの傷がすべて消えていることに気づき、自分が時間を巻き戻された事実を認識した。喪失感と絶望に打ちのめされながら、スバルは再びロズワール邸での一日目をやり直す運命に巻き込まれていった。
第三章 『鎖の音』
双子とのすれ違いと逃走
目覚めたスバルは、ラムとレムに対する違和感を覚えた。四日間の生活で築いた信頼が、完全に失われていたのである。彼女たちはスバルをまるで初対面の客人のように扱い、スバルは耐えがたい孤独感と恐怖に襲われた。耐えきれず逃げ出したスバルは、無我夢中で禁書庫へとたどり着いた。
禁書庫での現実との向き合い
禁書庫でベアトリスと再会したスバルは、心を落ち着かせた。ベアトリスの言葉から、現在がロズワール邸に来た初日の朝に巻き戻っていることに気づいた。原因は不明だが、前回同様に時間遡行が起きたと推測するに至った。死の瞬間を感じなかったことから、単なる死によるループではなく、別の条件が働いた可能性を考えた。
エミリアとの再会と決意
禁書庫を出たスバルは、庭でエミリアと再会した。彼女の無事を確認し、スバルは新たな決意を胸に抱いた。失われた四日間を取り戻し、エミリアとの約束を再び交わすため、スバルは五日間を乗り越える覚悟を固めた。
ロズワール邸での二度目の生活開始
再び始まったロズワール邸での生活において、スバルは前回の出来事をなぞる方針を立てた。しかし、使用人として課される仕事の内容が前回と大きく異なり、初日から過酷な労働を強いられることとなった。過去の記憶を頼りにしたはずが、わずかな違いが大きなずれとなり、前回とは異なる展開を迎えてしまった。
ロズワールとの入浴と新たな情報
一日の労働を終えたスバルは浴場でロズワールと遭遇した。ロズワールから、屋敷の設備や魔法についての説明を受ける中で、スバルには「陰属性」の適性があることが判明した。火・水・風・土の基本四属性とは異なり、陰属性は希少ではあるものの、補助・妨害に特化した地味な力であることを知った。
魔法の才能と新たな課題
スバルは魔法の才能にも乏しく、さらなる絶望を味わった。期待していたエミリアによる魔法指導も叶わず、「陰属性」の専門家であるベアトリスに学ばなければならないことが判明した。理想とは程遠い現実を突きつけられたが、それでもスバルは諦めず、次なる行動に向けて歩みを進める覚悟を新たにした。
湯当たりとラムとのやりとり
スバルは浴場での長湯により湯当たりし、脱衣所で赤い顔のまま文句を言いながら着替えていた。脱衣所を出たところでラムに遭遇し、洗濯物をゴミ箱に捨てられる一幕もあった。ラムはロズワールの着替えの手伝いに待機しており、スバルに対しても相変わらず辛辣な態度を取っていた。
読み書きの勉強開始
部屋に戻ったスバルは、突然ラムから読み書きを教わることになった。基本のイ文字を覚えるため、童話集を使った地道な練習が始まり、スバルは慣れないながらも努力を重ねた。ラムは自分たちの負担軽減を理由に挙げつつも、スバルに対して手を貸した。
ラムへの感謝と成長への決意
スバルは、忙しい中で自分を気遣ってくれるラムに感謝し、早く戦力になることを誓った。ラムが勉強を見守りながら寝てしまう微笑ましい場面もあり、スバルの心に小さな絆が芽生えていた。
村での交流とレムとの会話
翌日、スバルはレムとアーラム村で買い物に出かけた。村の子どもたちに懐かれたスバルは、苦笑しながらも親しみを感じた。レムとの会話では、スバルが子どもたちに侮られた理由を分析され、辛辣な意見を浴びせられつつも和やかな時間を過ごした。
スバルの傷とレムの変化
村の子どもたちが連れていた犬に噛まれた傷をレムが手当てしようと申し出たが、スバルはそれを辞退した。『死に戻り』のために傷を目印にしておきたかったからである。レムの対応から、彼女が少しずつスバルに心を開き始めている様子が窺えた。
エミリアとの勉強とデートの約束
夜、ラムとレムが不在だったため、エミリアがスバルの勉強の監督を代わりに引き受けた。緊張しながらもスバルは勉強に励み、エミリアに褒められた。スバルはこの機会にデートへ誘い、エミリアは彼の真剣な気持ちに応えて了承した。
翌朝への決意
エミリアとの約束を果たすため、スバルは改めて働く決意を固めた。四日目の夜を乗り越え、五日目の朝を無事に迎えるために、スバルは心を奮い立たせたのである。
夜明けを待つスバルの覚醒
スバルはベッドを背もたれにして床に座り、夜明けを待ち続けた。心臓は高鳴り、手足に痺れが生じるほど覚醒していた。エミリアとの約束への期待に胸を膨らませつつ、何時間も空を見上げて過ごした。警戒を怠らず思考を続けることで、襲撃への備えを怠らなかった。
二度目の四日間の振り返りと心残り
スバルは二度目の四日間を振り返り、初回との違いと成功したイベントを確認した。しかし、ループの原因を特定できていない不安が残った。また、ベアトリスと十分に接触できなかったことに後悔を覚えた。ベアトリスの存在がスバルの心を救ったことを思い出し、感謝の気持ちを抱いた。
襲い来る異常な寒気と倦怠感
朝を待つ中で突然襲った寒気と倦怠感に、スバルは異変を察知した。体の震えと呼吸困難に見舞われながら、助けを求めて必死に上階へ向かった。体力は尽きかけ、吐き気と痛みに苦しみながら、ただエミリアのもとへ行こうと這い進んだ。
謎の衝撃と悲惨な最期
廊下で聞いた鎖の音の直後、スバルは強烈な衝撃を受けて弾き飛ばされた。左半身を失い、大量出血に見舞われた彼は、地面をのたうち回りながら死を待った。最後には再び鎖の音を聞き、頭部を砕かれることで命を落とした。
『死に戻り』による再覚醒
絶叫とともにスバルは目を覚ました。左腕が無事であることを確認し、自分が『死に戻り』により時間を巻き戻ったことを悟った。今回もロズワール邸で初日を迎えたと推測し、周囲にいたラムとレムに対し、記憶を失っていると察しながらも友好的に振る舞った。
再起への決意
スバルはラムとレムに礼を述べ、再起を宣言した。突飛なポーズを取りながら、時間の確認を求めることで、三度目の挑戦に向けて動き出したのである。
第四章 『逢魔時の鬼ごっこ』
スバルの推測と衰弱死の考察
スバルは四日目の夜に襲った衰弱症状を思い返し、初回の死因は眠っている間の衰弱死であったと結論付けた。鎖の音と体の欠損から襲撃者の存在を確信したものの、襲撃者が誰かは特定できなかった。屋敷への襲撃が王選に関係している可能性を考えたが、証拠も対策手段も持たない自分に苦悩した。
ベアトリスとの対話と情報収集
思考を巡らせるスバルに対し、ベアトリスは鬱陶しさを露わにした。スバルは禁書庫で彼女との再会を果たし、気兼ねなく振る舞うことで心を落ち着かせた。そして、衰弱の原因を探るため、ベアトリスに魔法や呪いに関する知識を尋ねた。
呪術師の存在とマナドレインの危険性
ベアトリスは、衰弱死を引き起こす可能性のある呪いが存在することを認めた。呪術師は他者を害することしかできない術者であり、忌避されている存在であった。また、マナを強引に吸収する行為も衰弱死を招くと語り、自身もその技術を持つことを明かした。
死の危険とベアトリスの態度
スバルはベアトリスにより衰弱死の危険があったと知り、戦慄した。しかしベアトリスは、死骸処理が面倒だという理由で加減したと冷淡に告げた。ベアトリスの態度に困惑しつつも、スバルはなおも情報を求め続けた。
ロズワール邸での別れ
スバルは三日間の逗留を終え、ロズワール邸の面々に見送られながら旅立った。エミリアや双子メイドたちに感謝を述べ、重い道具袋を背負いながらアーラム村への道を進み始めた。エミリアの心配に応えつつ、スバルは強く成長する決意を胸に抱いた。
林道から森への進入
屋敷を離れたスバルは、林道から外れて森へと進み、ロズワール邸を一望できる小高い丘に陣取った。異変に即応するための偵察拠点を設け、夜に予想される襲撃に備えた。スバルは今回、自らを囮とし、襲撃者の正体と手口を把握する作戦に出た。
緊張の待機と奇襲
夕方まで屋敷に変化はなかったが、油断した瞬間、超重量の鉄球による奇襲を受けた。間一髪で回避したスバルは、命綱を使って崖を下り脱出を図った。しかし、追撃を受けながらも執念で走り続けた。
襲撃者との対峙
逃走中、スバルはモーニングスターを携えた襲撃者と対峙した。その正体は、信じがたいことにレムであった。スバルは信頼していた彼女が敵となった現実に衝撃を受けた。
レムの真意と尋問
レムは、スバルを魔女教関係者と疑い、容赦ない尋問を開始した。スバルは痛みと絶望の中、必死に否定を続けたが、レムはスバルの存在そのものに嫌悪を抱いていた。
レムの憎悪とスバルの慟哭
レムは、スバルが放つ「魔女の臭い」に嫌悪感を抱き続けてきたことを明かした。屋敷での交流や優しさすら、表面上のものだったと知り、スバルは涙を流して絶望した。
最後の抵抗と無力な最期
抵抗の意志を見せたスバルだったが、足を切断され、鎖に打ち据えられ、最終的に喉を抉られた。命を落とす間際、スバルはわずかにレムの悲しみの混じる言葉を聞いた。
第五章 『待ち望んだ朝』
ロズワール邸での四度目の目覚めと絶望
スバルは意識を取り戻した直後、激しい苦痛と混乱に襲われた。四肢の感覚は希薄で、断続的な痛みと恐怖に苛まれながらも、エミリアや双子の姉妹たちの声に少しずつ現実に引き戻されていった。彼の四度目のロズワール邸での初日は、過去最悪の形で幕を開けた。
死に戻りによる心の崩壊
これまで何度も命を落とし、それでも前を向いてきたスバルであったが、今回の『死に戻り』は彼の心を完全に打ち砕いた。積み上げた絆がもたらす喪失感と絶望に、彼は立ち上がる気力すら失っていた。エミリアの献身的な看病にも心を閉ざし、自己嫌悪と無力感に苛まれていた。
エミリアへの打ち明けを決意するも妨害される
エミリアへの信頼を頼りに『死に戻り』の事実を打ち明けようとしたスバルであったが、世界から音と動きが消える異常現象に襲われた。黒い靄が現れ、スバルの心臓を直接握り潰すような激痛をもたらした。この体験により、彼は「打ち明けることは許されない」と痛感し、絶望的な孤独に陥った。
孤独に沈むスバルとエミリアの心遣い
エミリアの心遣いにも応えられず、スバルは再び心を閉ざした。ロズワールの訪問にも無関心を装い、屋敷内で孤独に耐えることを選んだ。眠ることすら恐れ、自らを傷付けることで存在を確かめようとする悲惨な日々を送った。
ベアトリスとの邂逅と契約
絶望の中、ベアトリスがスバルの部屋を訪れた。最初は辛辣な態度であったが、エミリアの気遣いを伝えるうちに、スバルの心にわずかな温もりが生まれた。ベアトリスとの会話を通じ、スバルは自らに纏う「魔女の臭い」の存在を知る。これが双子たちの不信や敵意の一因であると推測した。
スバルはベアトリスに対し、五日目の朝まで自身を守ってほしいと懇願した。ベアトリスはためらいながらもスバルの手を取り、仮契約を結んだ。この救いの手に、スバルは初めて心から笑みを浮かべることができた。
ロズワール邸 四日目夜から五日目朝にかけての出来事
仮初の契約と孤独な警戒
スバルはベアトリスとの仮初の契約により、わずかな安堵を得た。しかし、根本的な状況は改善されず、彼は依然として客室に引きこもる日々を送っていた。四日目夜から五日目朝にかけて、護衛のためベアトリスは姿を消し、代わりにエミリアが頻繁に訪れた。
エミリアの優しさとスバルの葛藤
エミリアはスバルに対して変わらぬ優しさを見せ、無神経な発言を許してくれた。冷えた食事を前にエミリアが食事を促す中、スバルは心の葛藤に苦しみながらも、エミリアの手で食事を口にした。涙を堪えながら、彼は優しさに触れた自身の無力さを痛感していた。
寝落ちと禁書庫での避難
食事後、エミリアに感謝と警戒の言葉をかけ、スバルは疲労により眠りに落ちた。目覚めたスバルは禁書庫に移されており、ベアトリスと共に安全な場所に身を置いていた。ベアトリスはスバルの不安を軽くあしらいながらも、契約によって自身も束縛されていることをほのめかした。
書庫での時間と精神の摩耗
禁書庫では時間感覚が曖昧になり、スバルは緊張と焦燥に苛まれ続けた。外の様子を窺うこともできず、ただ静かに時間が過ぎるのを待つしかなかった。やがて、ベアトリスが「呼ばれている」と言い残し、禁書庫を出て行った。
五日目の朝の到来
スバルも後を追い外に出ると、眩しい朝日が屋敷を照らしていた。四日目の夜を無事に越え、五日目の朝を迎えた事実に、スバルは言葉にならない歓喜と動揺を覚え、通路に蹲って笑い続けた。
エミリアとの再会と悲報
そこへエミリアが現れ、スバルを急かしてどこかへ連れて行った。エミリアの焦燥した態度に戸惑いながらも、スバルは彼女に従った。二人が到着した部屋では、ロズワールとベアトリスが待っており、部屋の中からは痛ましい悲鳴が聞こえていた。
レムの死
スバルが部屋に入ると、そこには絶叫しながら泣き崩れるラムの姿があった。ラムの腕の中には、既に息絶えたレムの遺体が横たわっており、スバルは目の前の現実に言葉を失った。
絶望に沈む夜
レムの死とスバルの混乱
スバルはレムの死を目の当たりにし、深い混乱に陥った。これまで警戒してきたレムが無惨に殺されていたことに、彼は動揺し、呪術師の存在を疑った。ロズワールの推測により、呪術による衰弱死がレムの死因と判明し、スバルは自らの認識の誤りに苦しんだ。
ラムの怒りとスバルへの拒絶
レムの死を前にラムは激しく取り乱し、スバルに対して怒りと憎しみをぶつけた。スバルは事情を説明できず、ラムの疑念を深めた。さらにロズワールからの詰問、エミリアの不安げな視線に晒され、スバルは絶望的な孤立を深めた。
崩壊する信頼と逃亡
エミリアの信頼を裏切る形でスバルは後退し、ラムからの風の魔法による攻撃を受けた。ベアトリスが間に入ってスバルを庇うも、屋敷内の対立は収束せず、スバルは逃走を選んだ。背後ではラムの悲痛な叫びが響き、スバルは全てから逃げ続けた。
崖の上での葛藤
走り続けたスバルは森に迷い込み、崖の上にたどり着いた。死を選べば全てが楽になると考えたが、恐怖から一歩を踏み出せなかった。自分の無力さと情けなさに涙を流し、地面に伏して苦しみ続けた。
ベアトリスとの再会
意識を失っていたスバルの前に現れたのは、ベアトリスであった。彼女は契約を理由にスバルを守り続けると告げたが、その裏にはスバルへの深い慈悲が隠されていた。ベアトリスはスバルに、領地の外へ逃げる選択肢を与えた。
過ちの自覚と痛烈な後悔
ベアトリスの言葉により、スバルはラムとレムについて何も知らなかったこと、自分の独りよがりに過ぎなかったことを痛感した。屋敷での記憶はただの幻想であり、現実の彼には彼女たちとの絆など存在しなかったと理解した。
手の温もりと小さな希望
スバルは、眠っていた間に両手を誰かに握られていたことを思い出し、それがラムとレムの優しさによるものだと気付いた。その小さな温もりが、スバルの心にかすかな希望を灯した。
新たな決意
絶望に呑まれながらも、スバルは「拾った命」を自らの意志で使うと決意した。逃げることもできたが、逃げずに向き合うことを選び、再び立ち上がった。その矢先、森から足音が近づき、ラムがスバルの前に姿を現した。
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