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佐賀崎しげる片田舎のおっさん、剣聖になる

小説「片田舎のおっさん、剣聖になる 11」感想・ネタバレ

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片田舎のおっさん、剣聖になる11の表紙画像(レビュー記事導入用) 佐賀崎しげる

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おっさん剣聖11巻レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

本作は、片田舎の村で細々と剣術道場を営んでいた自称「しがないおっさん」のベリル・ガーデナントが、大成したかつての弟子たちに囲まれながら歩む、おっさん成り上がりファンタジーの第11巻である。
本巻では、ベリルが義理の娘ミュイの夏休みを利用し、サリューア・ザルク帝国への初の私的旅行へ出立する。
護衛として元弟子のフィッセルも同行し、三人は旅を楽しむ傍ら、帝国建国祭の「闘技大会」へ参戦することになる。
他国の並みいる強豪たちと純粋な剣の技量だけで渡り合う中、華やかな祭りの裏で進行する帝国の不穏な情勢や、かつて王都で起きた誘拐未遂事件の背後にある巨大な影が徐々に浮き彫りになっていく。

■ 主要キャラクター

  • ベリル・ガーデナント:本作の主人公で、レベリオ騎士団の特別指南役を務める剣士。ミュイの見聞を広めるために帝国を訪れ、「剣術師範」として闘技大会に出場し、強者たちとの戦いの中で己の剣をさらに研ぎ澄ましていく。
  • ミュイ・フレイア:ベリルと同居している魔術師学院の生徒。初めての国外旅行で食べ歩きや景色の変化を新鮮に受け止めながら、旅を通じてベリルやフィッセルとの絆を深めていく。
  • フィッセル・ハーベラー:ベリルの元弟子で、魔法師団の若きエース。ベリルとミュイの旅に護衛として同行し、自身も「剣士」として闘技大会へ出場する。
  • ユキシロ・オリゼ:片刃の曲剣(サーベル)を操る、帝国皇室の客将。海上生活で培った独特の体幹と、初動を読ませない極めて変則的な剣技を武器に、決勝戦でベリルと対峙する。
  • ドレッグ・ハマー:小斧を獲物とする剛腕の傭兵。本選の一回戦でベリルと対戦し、敗北した後は敗者としての矜持を保ちながらも、気のいい戦友としてベリルと交流を深める。
  • ルーシー・ダイアモンド:レベリス王国の魔法師団長。ミュイたちの誘拐事件に関連する不穏な動きを極秘調査するために帝国を訪れており、現地でベリルたちをサポートする。
  • ウージー・ダイナマイト:魔力を持たないながらも、手先の器用さで魔装具を作る女性。自作の魔装具が闘技大会での妨害行為に利用されたことを知り、身の危険を感じてレベリス王国への亡命を決意、ベリルたちの帰路へ途中まで同行する。

■ 物語の特徴

本作の魅力は、華やかな魔法や特殊な能力に頼り切るのではなく、「培ってきた己の技術と経験」という剣士としての基本に立ち返る泥臭くも圧倒的な剣劇描写にある。
魔法が禁止された闘技大会という制限下で、ベリルは自身の特殊な「先読みの目」にすら依存せず、後の先を取る修練の真髄によって勝利を掴み取ろうとする。 また、元弟子フィッセルが卑劣な妨害工作によって敗北を喫した際、剣士としての誇りを守るために即座に対策の構えを授けて再起を促すといった、師弟間の強い信頼関係と成長が克明に描かれている。
ハノイらヴェルデアビス傭兵団や、怪しげなウージーとの対峙を通じ、善悪の二元論では割り切れない他者や国家のしがらみにベリルが直面し、指導者や親代わりとしての視座を広げていく精神的な成熟も、本作ならではの差別化された興味深いポイントである。

書籍情報

片田舎のおっさん、剣聖になる 11 ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~
著者:佐賀崎しげる 氏(インタビュー記事
イラスト:鍋島テツヒロ  氏
出版社:スクウェア・エニックス
発売日:2026年8月6日

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

おっさん、闘技大会で無双!!
ベリルの圧倒的な剣術が異国に熱狂を巻き起こす!!

サリューア・ザルク帝国建国祭にて開催される“闘技大会”。
実力者たちと力試しができる機会に興味を持ったベリルは、家族のミュイ、同じく大会参加を志すフィッセルとともに旅行を兼ねて西の隣国を訪れる。

闘技大会では久々の「弱そうな中年扱い」を懐かしみながら、次々に強敵を撃破してみせて――

『闘技場に突如として現れた、【枯れた新参】!
 しかしその腕前、まさに本物!!
 ベリル・ガーデナントォ!!』

(もう少しマシな呼び方あったと思う……)

おっさんの圧倒的な剣術が、異国に熱狂を巻き起こす!!

片田舎のおっさん、剣聖になる 11 ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~

感想

今回は夏休みを利用して、ベリルとミュイがサリューア・ザルク帝国へ旅行するところから始まる。

そこへ、

「先生ともミュイとも知り合いで、腕が立つ」

と自分から護衛役に立候補したフィッセルまで同行。

アリューシアは王族護衛の公務で帝国へ向かい、ルーシーも以前起きたミュイたちの誘拐未遂事件を追って帝国入りしている。

結果的に、いつもの顔ぶれが結構帝国に集まっている。

ただ、ベリル自身はあくまでミュイとの家族旅行。

異国の料理を食べたり、初めて見る街並みに驚いたりしながら、ミュイに外の世界を見せていく。

こういう大事件とは関係のない旅の部分も、結構好きだった。

ミュイとの家族旅行に、しれっと便乗するフィッセル

今回の旅行で印象に残ったのが、ミュイの変化である。

馬に乗ったことがなくて最初はベリルの後ろで緊張していたり、帝国へ入ると見たことのない食べ物に興味を示したりする。

ずっとバルトレーンで暮らしてきたミュイにとって、国境を越えること自体が大きな経験なのだろう。

ベリルも、

「強くする」

だけではなく、

「いろいろなものを見せる」

ことを意識するようになっている。

師匠というより、完全に父親だな。

そして、そこに普通に混ざっているフィッセル。

最初は護衛として同行したはずなのだが、本人も帝国旅行を楽しんでいる。

結果的にベリル、ミュイ、フィッセルの三人旅になっているのが微笑ましかった。

予選はフィッセルと共闘……したと思ったら普通に斬りかかってくる

帝国の建国祭で開催された闘技大会。

ベリルとフィッセルは二人とも参加する。

予選は一対一ではなく、三十人以上が同じ舞台で戦い、最後の五人まで残れば本選進出という乱戦形式だった。

ここで面白いのがフィッセル。

ベリルと同じ組なので、周囲の参加者が襲ってきた時には自然と背中を預けて戦う。

やっぱり元師弟。

こういう状況では連携も抜群である。

……と思ったら、普通にベリルへ不意打ちしてくる。

協力してるの?

戦ってるの?

どっちなんだ。

最後は二人とも生き残って本選へ進むのだが、フィッセルはベリルとの勝負が途中で終わったことに不満そう。

この辺りは実にフィッセルらしかった。

本選からは一対一のトーナメント。

魔術は禁止。

武器も刃を潰した大会用のもの。

普段と違う条件で、ベリルがどう戦うのかが見どころになっていく。

ベリルは決勝へ。だけど掛け声が軽いんだよなあ

本選初戦でベリルが戦ったのは、《剛腕》ドレッグ・ハマー。

小斧を使うパワータイプで、ベリルもかなり戦いづらそうにしていた。

普段なら相手の武器そのものを斬ってしまうこともできる。

しかし今回は刃を潰した大会用の剣。

さらに例の未来を読むような目も最初は働かない。

そこで特殊能力に頼るのではなく、自分が長年積み重ねてきた剣術の基本へ戻る。

この流れはベリルらしくてよかった。

その後もベリルは勝ち進み、フィッセルも準決勝へ。

フィッセルは独特な剣術を使うユキシロと戦うが、途中で不自然な光によって視界を妨害され、その一瞬の隙を突かれて敗北する。

そして決勝は、

ベリル対ユキシロ。

ユキシロは海上生活で身につけた独特な身体操作を使い、ベリルですら動きを読み切れない。

しかも決勝でも謎の光による妨害が飛んでくる。

本来ならかなり緊迫した接戦である。

……なんだけど。

なんか掛け声が軽いんだよなあ。

「おおっ」

とか、

「ほっ」

みたいな軽い調子で戦っている印象が強くて、読んでいてあまり死力を尽くした決勝という感じがしなかった。

いや、実際にはベリルも鼻血を出すほど集中しているし、ユキシロも相当強い。

未来を読むベリルに対して、その未来を途中から変えてくるほどの剣士である。

文章上では間違いなく接戦なのだ。

でも掛け声の軽さのせいか、

「これ、そんなギリギリの戦いなの?」

と思ってしまった。

ここは個人的に少し惜しかった。

それでも最後は、ユキシロの体当たりを紙一重でかわし、その勢いのまま右膝へ剣を叩き込んで勝利。

まさか家族旅行へ来たおっさんが、その国の闘技大会で優勝するとは。

相変わらず本人だけが自分の異常さをあまり理解していない。

皇帝からスカウトされても普通に断る

大会に優勝したベリルは、帝国皇帝から直々に呼び出される。

そして、

「帝国の客将にならないか」

と誘われる。

他国の祭りへ旅行に来て、闘技大会に参加して優勝。

そのまま皇帝からスカウト。

普通なら人生が大きく変わるイベントである。

しかしベリルは、

レベリス王国でレベリオ騎士団の特別指南役をやっているから。

という理由で普通に断る。

この辺の現実的な反応がおっさんらしい。

皇帝から誘われたからといって、急に野心へ目覚めたりしない。

もう仕事があるんで。

隣国で働いているんで。

まあ、そうなるよね。

皇帝側も無理強いせず、今後も交流を続けようという形で終わる。

こういうところもベリルらしかった。

楽しい家族旅行の裏で、帝国がかなり怪しい

ただし、今回の帝国旅行は闘技大会だけでは終わらない。

そもそもルーシーが帝国へ来ている理由は、以前ミュイたちを狙った誘拐未遂事件を追っているからである。

そこで使用されていた魔装弓が帝国製だった。

さらに闘技大会では、フィッセルとベリルを狙った謎の光による妨害まで発生する。

偶然出会った魔装具師ウージーも、かなり変な人物だった。

自称「大陸随一の魔術師」。

なのにフィッセルから、

「魔力ない」

と即座に見抜かれる。

何なんだこいつ。

ところが魔装具を作る腕そのものは悪くない。

しかも後になって、闘技大会で妨害に使われた光の魔装具を作ったのがウージーだったことまで分かってくる。

帝国内では皇室に反抗する勢力も動いており、人身売買や誘拐も増えているという。

ミュイたちの事件。

大会での妨害。

帝国内の反抗勢力。

少しずつ別々だったものが繋がり始めている感じがする。

ドレッグが消えたって、かなり不穏じゃない?

そして一番気になったのが最後である。

ベリルが本選初戦で戦ったドレッグ。

戦いが終わった後には普通に会話していた。

負けたことも引きずらず、

「負けたのも含めて自分の実力」

と笑える気持ちのいい男だった。

ところが大会後。

ルーシーから、

ドレッグが斧だけを残して行方不明になった

と聞かされる。

え?

あいつ消えたの?

ここまで楽しい旅行と闘技大会だったのに、急に不穏すぎる。

しかも帝国側も黒幕の正体を掴めていない。

ミュイを狙った事件と本当に繋がっているのか。

ドレッグは何に巻き込まれたのか。

大会でベリルたちを妨害した人物は誰だったのか。

かなり嫌なものを残したまま、第11巻は終わる。

読後の感想

『片田舎のおっさん、剣聖になる 11』は、帝国での家族旅行と闘技大会を楽しむ巻……だと思っていたら、最後にはかなり不穏なものが残った。

個人的には、ミュイが初めて外国へ行き、いろいろなものを見て食べて経験していく姿がよかった。

ベリルも剣術師範としてだけではなく、ミュイの親代わりとして少しずつ変わっている。

そこへフィッセルが自然に混ざっている三人旅も楽しい。

一方の闘技大会では、ベリルの強さが他国にも知られることになる。

優勝して皇帝から客将に誘われる。

もう「片田舎のおっさん」で押し通すのは無理じゃない?

とは思う。

ただ、決勝戦そのものは設定上かなりの接戦なのに、掛け声やベリルの語り口が軽いせいか、個人的にはそこまでギリギリの勝負には感じられなかった。

そこは少し惜しい。

そして何より気になるのがドレッグの失踪である。

斧だけ残して本人が消えている。

明らかに普通ではない。

楽しかった帝国旅行の最後に、

「まだ何か始まっているぞ」

と置いていかれたような感覚だった。

ベリルたちは一度レベリス王国へ帰る。

しかし帝国で起きている問題が、これで終わるとは到底思えない。

次巻では、あの誘拐未遂事件の裏側がどこまで見えてくるのかが気になるところである。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ベリルの帝国旅行

ベリルのサリューア・ザルク帝国旅行の全貌

『片田舎のおっさん、剣聖になる』におけるベリルのサリューア・ザルク帝国旅行について、旅行のきっかけと同行者、帝国への旅路と道中の出来事、帝都シウーバハでの滞在と人々との再会、闘技大会での無双と決勝の死闘、帝国の不穏な情勢への直面、および帰路とお土産の各点から解説する。

旅行のきっかけと同行者

旅行のきっかけは、ベリルの家を訪れたアリューシア・シトラスが、魔術師学院の夏季休暇に入ったミュイの思い出作りとして、サリューア・ザルク帝国への旅行を提案したことであった。

・国王の護衛を務める騎士団遠征にベリルを同行させることも可能であったが、その場合はミュイを連れていけず、闘技大会への出場も難しくなるため、ベリルは旅費を自己負担する私的な旅行を選んだ。
・長旅となるため、ベリルが自身とミュイの双方と面識のある腕の立つ護衛を探していたところ、魔法師団のエースである元弟子のフィッセル・ハーベラーが名乗りを上げ、三人での帝国旅行が決定した。

帝国への旅路と道中の出来事

時間と費用を抑えるため、三人は安全な地域では馬を利用して移動した。

・乗馬経験のないミュイはベリルの前に同乗し、当初は怯えていたが、進むうちに周囲の景色を楽しむ余裕を見せ始めた。
・最初の目的地であるスタンミッシュでは、フィッセルの魔法師団遠征時代の知り合いであるミスタが営む宿に宿泊した。
・その後、レベリス王国西端のヴェスパタに到着して三十日間有効の越境通行証を取得し、国境を越えてサリューア・ザルク帝国のスペルオルに入った。
・市場で帝国特産の強い甘味を持つ赤い果実パルイースイーツを購入して三人で味わうなど、食べ歩きを楽しみながら歩みを進めていった。

帝都シウーバハでの滞在と人々との再会

数日間の旅を経て、三人は建国祭でごった返す帝都シウーバハに到着した。

・到着早々、バルトレーンで消息不明となっていた魔法師団長ルーシー・ダイアモンドと偶然再会した。ルーシーはミュイたちの誘拐未遂事件で使用された帝国製の魔装弓に絡む極秘調査で帝国を訪れており、ベリルたちを宿屋街へと案内した。
・また、闘技場周辺の大通りでは、グレン王太子の護衛として招聘されていたヴェルデアピス傭兵団のハノイ・クレッサ、プリマベーラと遭遇した。ハノイは戦闘の意思はないとしつつも、帝国内で最近不穏な動きがあるとして、ミュイをしっかり守るよう忠告を残した。
・その他にも、自作の魔装具を売り込むために接触してきた魔力なしの自称大魔術師ウージー・ダイナマイトといった、奇妙な人物との出会いもあった。

闘技大会での無双と決勝の死闘

ベリルとフィッセルは、帝都滞在中に建国祭のメインイベントである闘技大会へエントリーした。

・予選の乱戦:約二百人が参加する生き残り形式の予選で、同じ第二ブロックに入ったベリルとフィッセルは、背中を預け合って共闘し、無傷で本選への進出を決めた。
・本選一回戦:ベリルは一回戦で剛腕の傭兵ドレッグ・ハマーと対戦した。刃を潰した長剣特有の加減に苦戦しつつも、後の先を取る剣士の基本に立ち返ることで顎へ全力の一撃を叩き込み、一回戦を突破した。
・準決勝の妨害:準決勝でフィッセルは、曲剣を操る客将ユキシロ・オリゼと対戦したが、試合中に何者かによる光の魔装具を用いた目潰し妨害を受け、敗北を喫した。
・決勝戦での死闘:ベリルはフィッセルの敗北の悔しさと、剣士の勝負に介入された怒りを胸にユキシロ・オリゼとの決勝戦に臨んだ。決勝戦中にもベリルを狙う光の妨害が放たれたが、事情を察したユキシロ自身が光の届きにくい側へ移動してくれたため、純粋な技術戦が継続された。ベリルは、ユキシロの海上生活で培われた独特な体幹から繰り出される変則的な剣技に苦戦しながらも、極限の先読みの目を駆使してユキシロの右膝を破壊し、見事に闘技大会優勝を飾った。

帝国の不穏な情勢への直面

大会後、ベリルは帝国皇帝から客将としての勧誘を受けたが、レベリス王国で特別指南役の職務があることを理由にのらりくらりと辞退した。

・さらに、治療を終えたユキシロから、帝国が領土平定や皇室に反する勢力の排除のために強者を欲していること、帝国内で人身売買や誘拐が増加している不穏な情勢を聞かされた。
・また、試合中の光の妨害は、ユキシロ以上の強者が皇帝に抱え込まれることを嫌う勢力によるものだったという推測が明かされ、ベリルはこれらの内情を後日ルーシーへ共有した。
・さらに、ルーシーからドレッグ・ハマーが大会後に行方不明になったことを知らされ、帝国の闇の深さを実感した。

帰路とお土産

帰国の準備をしていた三人のもとへ、妨害で使用された光の魔装具を製作した張本人であるウージー・ダイナマイトが駆け込んできた。

・製作者であることが皇室側に伝われば身が危ないと悟ったウージーはレベリス王国への亡命を希望し、ベリルはヴェスパタの手前までという条件で彼女の同行を認めた。
・出発前、フィッセルは魔法師団の仲間へ、ミュイは友人シンディたちへ、そしてベリルは両親やヘンブリッツ、クルニ、スレナ、バルデル、キネラへの土産を選び、ウージーの案内で土産物を購入した。
・帰り道も、帝国の様々な料理を堪能するミュイの旺盛な食欲に驚きつつ、三人(とウージー)は宿を取りながら穏やかに旅を続けた。
・ベリルは今回の旅が良い旅であったと総括し、帰国後はミュイの読み書きの練習を兼ねてこの旅を記録に残し、いつか共に振り返ろうと願いながら、帝国旅行を終えた。

まとめ

ベリルのサリューア・ザルク帝国旅行の全貌を巡る一連の全貌は、ミュイの思い出作りを目的とした私的旅行の選定から始まり、フィッセルを含めた三人旅での市場散策、帝都でのルーシーや傭兵団との再会、闘技大会での無傷予選突破と光の妨害を乗り越えた優勝、客将勧誘の辞退とドレッグ失踪に見る帝国の闇の体感、そしてウージーの亡命受け入れと穏やかな帰路に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
国家の混迷や裏社会の暗躍という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、温かな師弟旅と異国での圧倒的武威の証明の記録である。
旅の提案から、長距離移動、大会での無双、妨害の破砕、そして思い出の記録へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

帝都建国祭

帝都建国祭の全貌と裏に潜む政治的思惑

サリューア・ザルク帝国で催される「帝都建国祭」について、開催時期と帝都の熱狂、領地ごとの温度差、今年の目玉である闘技大会、および周辺国の招待と裏に潜む政治的背景の各点から解説する。

開催時期と帝都の熱狂

建国祭は、毎年夏の中頃から秋口にかけて開催される。

・お祭りの本丸である帝都シウーバハは期間中、国内外からの観光客を含む膨大な人々で溢れかえる。
・その混雑ぶりは、レベリス王国の首都バルトレーンを優に上回る規模であり、人と物でごった返す街並みは熱狂と表現されるほどの盛り上がりを見せる。
・煉瓦造りの赤い街並みと相まって、異国情緒の強い独特の活気に包まれるのが特徴である。

領地ごとの温度差

建国祭は帝都が中心となって盛り上がる一方、帝国のすべての地域が一様に湧いているわけではない。

・帝国は歴史的に侵略や併合を繰り返して領土を広げてきた背景がある。
・そのため、新しく切り取られた領地や国境付近の都市(スペルオルなど)では、お祭り騒ぎのような雰囲気はほとんど見られない。

今年の目玉「闘技大会」

建国祭のメインイベントは毎年異なるが、今年は久しぶりに闘技大会が開催されることとなった。

・帝都の南端にある巨大な闘技場を舞台に、国内外から集まった猛者たちが魔法抜きの純粋な武技を競い合う。
・この大会は、一般の観客だけでなく、勝敗を対象とした賭場(賭け)が開かれるなど、建国祭の中でも特に大きな注目を集める興行となっている。

周辺国の招待と裏に潜む政治的背景

今回の建国祭には、レベリス王国のグラディオ陛下やスフェンドヤードバニアのグレン王太子をはじめ、周辺国の要人が多数来賓として招かれている。

・レベリス王国の騎士団は要人警護のために大規模な動員を行って出立しており、帝国の武威を示しつつ、友好関係をアピールする場としての側面も持っている。
・しかし、その華やかな祭りの裏では、帝国側の不穏な思惑も絡んでいる。
・帝国では最近、皇室に反する勢力(逆賊)の存在や、人身売買・誘拐の増加といったきな臭い動きが活性化している。
・帝国皇帝が闘技大会を開き、ベリルのような勝者に客将(家臣)としてのスカウトを行う背景には、こうした国内の反抗勢力を排除し、平定するための強者(戦力)の囲い込みという極めて実利的な目的が存在している。

まとめ

帝都建国祭の全貌と裏に潜む政治的思惑を巡る一連の全貌は、夏から秋口にかけての帝都シウーバハでの熱狂から始まり、歴史的経緯に伴う領地ごとの温度差、魔法禁止の武技を競う闘技大会の開催、そして要人警護の裏での逆賊排除や戦力囲い込みという皇帝側の実利的目的に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
華やかな祭典の裏にひそむ謀略や内戦の気配という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、国家規模の熱狂と政治的謀略の記録である。
祭典の開幕から、領地の冷ややかさ、興行の熱狂、戦力のスカウト、そして暗闘の深化へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

帝都闘技大会

帝都闘技大会の全貌と裏に潜む陰謀

サリューア・ザルク帝国の建国祭において開催された帝都闘技大会について、大会の概要と特殊なルール、予選の動向、本選トーナメントでの激闘、および大会の裏に潜む不穏な情勢の各点から解説する。

帝都闘技大会の概要と特殊なルール

帝都シウーバハの南端にある巨大な闘技場で開催されたこの大会は、国内外から多数の猛者が集う一大興行であった。観客席は超満員となり、勝敗を対象とした大規模な賭場も開かれていた。大会には以下の徹底したルールが敷かれていた。

・徹底した魔法の禁止:純粋な武を競うため、魔法の行使は一切禁止されていた。不正な強化魔法などを検知するため、魔力を見通せる一流の魔術師が不正防止の監視役として付いていた。
・非殺傷武器の使用:相手を死に至らしめた場合は即座に失格・拘束となるため、主催側が用意した刃を潰した鉄の武器を使用することが義務付けられていた。
・防具の制限:金属鎧をはじめとした鉄製防具の着用は禁止されており、出場者の多くは布服やハードレザーを着用していた。
・回復魔法のサポート:試合後の怪我に対しては無償で回復魔法の治療が受けられたが、重傷や欠損が完治するかは自己責任とされ、魔法であっても肉体の疲労までは回復できなかった。

予選:第二ブロックの混沌と師弟の共闘

予選は、約200人の参加者が各ブロック30〜40人程度に分かれ、一堂に会して戦う生き残り戦(バトルロイヤル形式)であった。ベリルとフィッセルは同じ第二ブロックに配属された。

・試合が始まると、血気盛んな者や素人が自滅的に突撃し合って一気に脱落していった。ベリルは初手の乱戦を冷静に避けつつ、襲いかかる相手を無駄のない後の先でいなし、戦闘不能にしていった。
・中盤、フィッセルがベリルに奇襲を仕掛けて師弟対決が始まるが、そこに別の二人組(小剣使いと斧使い)が乱入した。
・二人は目線だけで意図を交わし、背中を預け合って一時的に共闘。フィッセルはカウンターで小剣使いを、ベリルは強烈な膝蹴りで斧使いを瞬く間に沈めた。
・最終的に生き残りが5名となった時点で審判の終了合図が響き、二人は無傷で本選への切符を手に指定した。

本選トーナメント:己を試す死闘と卑劣な罠

本選は完全な一対一のトーナメント方式となり、特別観覧席にはグラディオ国王やグレン王太子、アリューシア、さらには帝国の皇帝陛下が臨席する中で行われた。

・一回戦(ベリル vs 剛腕ドレッグ・ハマー):ベリルの初戦の相手は、高いフィジカルを誇る傭兵ドレッグ・ハマーであった。刃が潰された武器特有の加減や大音量の実況に気を取られ、当初は予知の目も発動せず苦戦を強いられた。しかし戦いの中で、ベリルは不確かな特殊能力や得物の性能に頼り、傲慢になっていた自分を深く自省した。自身の研鑽してきた基礎に立ち返り、ドレッグの攻撃が力を乗せきる前の初動に木剣を重ねて主導権を奪取。最後はがら空きとなった顎へ全力の一撃を滑り込ませて脳を揺らし、ドレッグを昏倒させて勝利を飾った。敗れたドレッグは潔く負けを認め、その後ベリルの気の良い戦友となった。
・準決勝(フィッセル vs 剣客ユキシロ・オリゼ):フィッセルは予選でも一緒だったフレイル使いを膝蹴りの一撃で破り、準決勝へと進出した。準決勝の相手は、変則的な歩法と体幹を持つ実力者ユキシロ・オリゼであった。フィッセルはユキシロと互角の激しい攻防を繰り広げ、あと一歩で有効打が届く瞬間を創り出した。しかしその瞬間、観客席から何者かによって光の魔装具による意図的な目潰しが放たれた。一瞬視界を奪われたフィッセルは剣先を乱され、ユキシロの苛烈な三連撃を受けてダウンし、敗北を喫した。
・決勝戦(ベリル vs ユキシロ・オリゼ):フィッセルの勝負を汚された怒りを胸に、ベリルは決勝戦へ臨んだ。
ユキシロの海上生活で培われたという初動を読ませない歩法としなるような変則的剣技は、剣士としての経験を積んだ者ほど先を読めない極めて厄介なもので、ベリルを後手に回らせた。試合中、再びベリルを狙って光の目潰し妨害が放たれた。しかし、ベリルが目を守る構えを取ったことでユキシロは裏での不正を察知。ユキシロは自ら位置を入れ替えるように動き、ベリルを光の届かない側へ移動させて、純粋な一対一の勝負を継続させた。膠着状態の末、ベリルの予知の目がユキシロの体当たりの予兆を捉えた。
ベリルは極限まで上体を後屈させて体当たりを紙一重で躱し、その勢いのまま半回転して長剣を全力で振り抜き、ユキシロの右膝を強烈に打ち据えた。右膝を粉砕されたユキシロは降参し、ベリルが帝都闘技大会の覇者となった。

大会の裏に潜む不穏な情勢

大会終了後、この闘技大会を巡る数々の闇が明らかになった。

・妨害行為の意図:ユキシロの推測によれば、ユキシロ以上の強者が皇帝に召し抱えられて皇室の戦力増強に繋がることを嫌う、帝国反抗勢力の者たちによる介入であった。
・目潰し魔装具の製作者:ベリルたちの前に現れた自称大魔術師ウージー・ダイナマイトが、その光の魔装具の製作者であった。製作者であることが皇室に知れれば身が危ないと悟ったウージーは、ベリルたちの帰路へ同行し、レベリス王国へ亡命することとなった。
・ドレッグ・ハマーの失踪:大会後、ベリルの初戦相手であり、気さくに語り合ったドレッグが愛用の小斧だけを現場に残したまま行方不明になったという極めて不穏な知らせが、ルーシーによってもたらされた。

まとめ

帝都闘技大会の全貌と裏に潜む陰謀を巡る一連の全貌は、魔法禁止や非殺傷武器使用といった特殊ルールの設定から始まり、第二ブロック予選でのベリルとフィッセルの共闘、ドレッグ戦での自己省察と後の先の完遂、光の魔装具による妨害工作とユキシロとの決着、そして大会覇者への戴冠と陰謀露呈・ドレッグ失踪に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
不正な妨害や裏社会の暗躍という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、愚直な剣術の証明と国家規模の混迷への直面の記録である。
予選の乱戦から、自己の省察、妨害の看破、変則剣技の撃破、そして亡命と失踪が織りなす不穏な情勢へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

帝国の不穏な情勢

サリューア・ザルク帝国の不穏な情勢と暗躍

『片田舎のおっさん、剣聖になる』におけるサリューア・ザルク帝国の不穏な情勢について、帝国製魔装弓の流出とバルトレーンの事件、帝国内部で蠢く逆賊と皇室の戦力囲い込み、急増する誘拐事件と見えない首謀者の不気味さ、および巻き込まれる市井の技術者とウージーの亡命の各点から解説する。

不穏な予兆:帝国製魔装弓の流出とバルトレーンの事件

帝国の不穏な情勢は、王都バルトレーンで発生したミュイたちの誘拐未遂事件から早くもその影を落としていた。

・実行犯であるカイナが使用していた魔装具付きの短弓を解析したところ、サリューア・ザルク帝国の軍組織「装弓大隊」が使用する魔装弓に酷似していることが判明した。
・これだけで帝国を直接追及すれば戦争の引き金になりかねないため、レベリス王国側も表立って動けず極秘裏に調査を進めていたが、国の重要な軍事技術や武器が裏社会へ流出しているという不穏な事実が浮き彫りになっていた。

帝国内部で蠢く「逆賊」と皇室の戦力囲い込み

帝都シウーバハを訪れたベリルは、再会したヴェルデアビス傭兵団のハノイから帝国内できな臭い動きがあるとの警告を受けた。

・その後、決勝戦を戦ったユキシロ・オリゼの口から、帝国皇帝が闘技大会の勝者などを客将として強引に囲い込もうとしている背景が語られた。
・帝国では現在、領土の平定と逆賊の排除に迫られており、皇室に対する革命(クーデター)を企む勢力が裏でうごめいている。
・実際に、闘技大会中にベリルとフィッセルが受けた光の魔装具による目潰し妨害は、ユキシロ以上の強者が新たに皇帝に召し抱えられて皇室の戦力が増強されることを嫌った、帝国反抗勢力(逆賊)の者たちによる意図的な妨害工作であったと推測されている。

急増する誘拐事件と「見えない首謀者」の不気味さ

魔法師団長ルーシーが私的に帝国に潜入して行った極秘調査により、帝国内で人身売買や誘拐(人攫い)が急増しているという事実が、先の逆賊の情勢とあわせて裏付けられた。

・さらに不穏な出来事として、闘技大会の一回戦でベリルと拳を交え、清々しく去っていった斧使いの傭兵ドレッグ・ハマーが、大会後に愛用の小斧だけを現場に残して行方不明になるという事件が発生する。
・これら一連の国家転覆や人攫いを裏で主導している首謀者については、帝国側もその存在すら掴みきれていない。
・実行犯を捕らえてもその背後にいる元締めまでどうしても届かないという構造は、バルトレーンの誘拐未遂事件とも完全に共通しており、根深い巨大組織の存在を予感させている。

巻き込まれる市井の技術者:ウージーの亡命

闘技大会の妨害工作で使用された光の魔装具は、市井の魔装具師であるウージー・ダイナマイトが自作して売ったものであった。

・彼女自身は暗殺や妨害の意図を知らずに販売したに過ぎなかったが、自分の顔が割れているため、このまま帝国に留まれば逆賊の協力者として皇室側から命を狙われる危険があると悟った。
・結果としてウージーは身の安全を確保するため、ベリル一行に同行してレベリス王国へ亡命せざるを得ない状況に追い込まれた。

まとめ

サリューア・ザルク帝国の不穏な情勢と暗躍を巡る一連の全貌は、軍事技術である魔装弓の流出から始まり、クーデターを狙う逆賊と皇室による客将の囲い込み、急増する人攫いやドレッグ・ハマーの失踪、そして魔装具師ウージーのレベリス王国への亡命に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
国家の混迷や巨大な組織の暗躍という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、内戦直前の混沌とした帝国情勢の記録である。
軍事流出の露呈から、妨害工作の勃発、首謀者不明の事件、巻き込まれた技術者の救出、そして渦中への吸引へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ミュイの成長

ミュイ・フレイアの成長と精神的自立の全貌

『片田舎のおっさん、剣聖になる』におけるミュイ・フレイアの成長について、日常生活と人間関係における情緒的成長、剣と魔法への真摯な向き合い方、誘拐未遂事件の挫折と守るための強さへの覚悟、および帝国旅行を通じた見聞の広がりと他者への信頼の各点から解説する。

日常生活と人間関係における情緒的成長

かつて裏社会でスリをして荒んだ生活を送っていたミュイは、周囲に対して声を荒らげて暴れることが多かったが、ベリルとの生活が日常となるにつれてその情緒には大きな変化が生じている。

・感謝や謝罪を素直に口にする姿勢:他人に何かしてもらった際、以前は言えなかった「ありがとう」や「ごめんなさい」といった言葉を、詰まらず自然に口にできるようになった。
・ベリルへの気遣いと関係性の深化:ベリルが料理中に不注意で指を切った際、からかいを交えながらも「交代しようか」と本気で気遣うなど、家族としての親密な距離感を築いている。
・学院における交友関係と安心感の獲得:当初は一人で食堂にいることが多かったが、シンディ、ネイジア、ルーマイト、フレドーラといった友人たちに囲まれ、彼らの優しさに触れることで、これまでに感じたことのない安心感と友情を理解し、素直に感謝を伝える姿が見られるようになっている。
・生活能力の向上:家事能力(掃除や料理、魚の下処理など)を実直に伸ばしており、自発的に手伝いを行うほどに成長している。

剣と魔法(武術)への真摯な向き合い方

ミュイは、ベリルの剣技に憧れて魔術師学院の「剣魔法科」を選択した。その取り組みは極めて真摯である。

・地道な自己鍛錬の継続:足腰を鍛えたいという自身の決意から、楽な馬車通学をやめて毎日徒歩で学院に通うようになった。また、長期の夏季休暇中も自宅の庭で木剣の素振りや走り込みに励んでいる。
・実力の向上と特異な才能の発現:ベリルとの最初の手合わせでは、ベリルの予想を超える「溜めのない流れるような剣魔法(赤い炎を伴う斬撃)」を実戦で発動させ、ベリルを驚かせるほどの成長と特異な魔法適性(炎の出力の高さ)を実証した。

誘拐未遂事件の挫折と「守るための強さ」への覚悟

物語の大きな転換点となったのが、中央区で発生したミュイの誘拐未遂事件である。

・自身の未熟さの痛感:路地裏での子供の誘拐現場に遭遇した際、正義感から自分たち三人なら倒せると力を過大評価して介入した結果、友人を巻き添えにして攫われるという挫折を味わう。
・師であり親代わりであるベリルからの叱責:救出後、ベリルから「君が犯した一番の間違いは、自分の力を過大評価したことだ」と頬を叩かれて厳しく叱責される。社会的なけじめとしての謝罪行脚を疲弊しながらもやり遂げた彼女は、己の未熟さと大人の庇護のありがたさを深く理解することとなった。
・強さに対する決意の更新:事件を経て、ミュイの心は折れることなく、より強い意志へ昇華された。ベリルに対し「強くなる。シンディも、フレドーラも、皆守れるくらいに。オッサンも守ってやる」と自らの意思で強さを求める決意をはっきりと宣言した。

帝国旅行を通じた見聞の広がりと他者への信頼

ベリル、フィッセルと共にサリューア・ザルク帝国へ私的な旅行に出かけたことは、ミュイの世界をさらに広げる契機となった。

・他者との印象の更新:かつて自身のスリを咎められた因縁から苦手意識を抱いていたレベリオ騎士団長アリューシアに対し、三人での散策や食事の場を共にしたことで、警戒を解いて良い人と素直に認め、アリューシアから頭を優しく撫でられるほどに慣れ親しんだ。
・世界の広さの体験と見聞の獲得:初めての国外旅行で、馬上の高い視界を怖がりながらも克服し、帝国ならではの甘い果実や料理を旺盛な食欲で楽しみ、活気あふれる帝都の巨大な門を見上げるなど、五感で世界の広さを学んだ。
・大人への甘えの習得:ルーシーから、学院を卒業したら自力で稼ごうとする前に、今は大人になるための準備期間なのだから、使える大人をもっと頼り、甘え、自信を持ちなさい、と言い含められた。ミュイは拗ねつつも、旅の終わりにベリルに対して「今回の旅行さ、すげぇ楽しかった。ありがと」と心からの感謝の言葉を自分から伝えるまでに精神的に成熟している。

まとめ

ミュイ・フレイアの成長と精神的自立を巡る一連の全貌は、裏社会でのスリ生活からの脱却と日常の情緒的安定から始まり、徒歩通学や素振りによる地道な自己鍛錬、誘拐未遂事件での過大評価の失敗と叱責を通じた意識改革、帝国旅行での見聞拡大と大人への信頼獲得に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
過酷な生い立ちや未熟さという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、守られる子供から他者を守る意志を持つ者への精神的成熟の記録である。
感謝の体得から、剣魔法の発現、挫折の受容、世界の体験、そして自立心と甘えの獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

剣術と自己研鑽

ベリル・ガーデナントと弟子たちの剣術と自己研鑽の全貌

『片田舎のおっさん、剣聖になる』において、剣術と自己研鑽について、ベリルの剣術観と極限の目標、頂点に立つ弟子たちの切磋琢磨、若き剣士たちの地道な努力と成長、および結論の各点から解説する。

ベリルの剣術観と「極限の目標」

ベリルにとって、剣を振るう行為はどれだけ技術が円熟しても素振りを切り離すことはできない。

・素振りはすべての要素が詰まった基本の動きであると同時に究極の動きであり、全身の筋肉を扱う剣士の礎となるからである。
・彼の自己研鑽は、強敵イド・インヴィシウスとの激闘を経て新たな次元へと移行した。
・魔法の素養の有無が勝負の前提となる理不尽さに直面し、一介の剣士としての限界を突きつけられたベリルは、強い悔恨を抱く。
・しかし、諦めが悪い剣士としての本能と傲慢さから、彼は、魔力は見えないが、それ以外の剣筋、呼吸、間合い、気配など、剣士として捉え得る物理的な要素を極限まで見極める、という新たな目標を設定した。
・さらに、肉体的な目の覚醒(数瞬先の未来の予知)を自覚したベリルは、頭で考えて動くのではなく、剣士としての本能と反射に身を委ねる、という自己研鑽の新たな境地に到達し、己の限界をさらに乗り越えていった。

頂点に立つ弟子たちの切磋琢磨

ベリルの圧倒的な先読みの強さを前にした弟子たちもまた、強烈な向上心と反骨心をもって自己研鑽に励んでいる。

・アリューシアとスレナのライバル関係:レベリス王国最高峰の実力者である二人は、ベリルとの武者修行の手合わせで完敗し、一対一では勝機がない現実を突きつけられた。師をいつか超えるべき壁と認識する彼女たちは、普段はソリが合わずいがみ合っているにもかかわらず、自身のレベルをさらに引き上げるための互角の相手が他にいないことから、互いに手合わせの時間を設ける、という約束を交わす。これは、強さを求める者同士の深い信頼と、貪欲な向上心の表れである。
・ヘンブリッツの謙虚な探求心:レベリオ騎士団副団長を務めるヘンブリッツも、ベリルに一太刀も触れられずに完敗したことで頂の遠さを実感した。しかし、彼はそれを悲観するのではなく、あくまで現時点での話と捉え、頂を目指すために日々の鍛錬を怠らない姿勢を貫いている。

若き剣士たちの地道な努力と成長

自己研鑽は、すでに一流に達した者たちだけのものではない。若き世代の騎士たちも、泥臭く研鑽を重ねている。

・クルニのツヴァイヘンダーへの転向:ベリルの助言により、ショートソードから大剣へと得物を変えたクルニは、扱いに不慣れな大剣を御すため、早朝から深夜まで修練場に残り大粒の汗を流して素振りを繰り返した。
・彼女は、腕力で振るのではなく、腰や足の可動域などの体幹を使って振る、というベリルの指導や、旧友フィッセルから助言された、ただ振るのではなく、常に相手を想定して振る、という実戦の意識を地道に咀嚼し、大剣使いとしての才能を開花させている。

まとめ

本作で描かれる武の道は、技術を修め、強さを実感すればするほど、上の景色が不鮮明になり、頂の遠さを自覚する、という果てしないものである。ベリルの物理的観察眼の極限追求や反射への委ね、アリューシアとスレナの相乗手合わせ、ヘンブリッツの直進的探求、そしてクルニの体幹と想定を意識した基礎反復に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
魔法の理不尽や天賦の才の壁という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、愚直な基礎の積み重ねと終わりなき向上心の記録である。
限界の自覚から、目標の再定義、手合わせの約束、体幹の体得、そして生涯にわたる研鑽へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

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登場キャラクター

主人公とその関係者

ベリル・ガーデナント

謙虚な性格である。自身の才能を過小評価する傾向がある。弟子や周囲の人々から深く尊敬されている。ミュイ・フレイアの後見人である。彼女と同居生活を送っている。

・所属組織、地位や役職
 ガーデナント剣術道場・師範。レベリオ騎士団・特別指南役。魔術師学院・臨時講師。

・物語内での具体的な行動や成果
 レベリオ騎士団で騎士たちの剣術指導に当たった。ミュイ、フィッセルとともにサリューア・ザルク帝国を旅行した。帝都の闘技大会に出場した。決勝戦でユキシロ・オリゼを破り、大会で優勝した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 闘技大会での優勝により、他国にまで名声が轟いた。帝国皇帝から客将としての勧誘を受けた。本国の特別指南役の公務を理由にこれを辞退した。

ミュイ・フレイア

元々は王都の路地裏でスリをしていた孤児である。現在はベリルに引き取られ、素直な一面を見せるようになった。周囲の人々に守られながら、いつか彼らを守れる強さを得たいと願っている。

・所属組織、地位や役職
 魔術師学院剣魔法科・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔術師学院でキネラやフィッセルの指導を受けて学んだ。ベリルやフィッセルに伴ってサリューア・ザルク帝国への旅行を体験した。旅先で様々な食べ物を楽しみ、見聞を広げた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベリルが書類上の後見人となった。高い魔力の出力を誇る炎の魔法適性を持っている。

レベリオ騎士団

アリューシア・シトラス

真面目で礼儀正しい性格である。師であるベリルを深く敬愛している。彼を特別指南役に推薦して王都へ呼び寄せた。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 王女サラキアの輿入れに伴う護衛任務の指揮を執った。夏季休暇中のミュイのために、ベリルへ帝国旅行を提案した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 若くして王国直轄レベリオ騎士団のトップに就任した。ベリルの名声が高まることを見越して行動する強かさも備えている。

ヘンブリッツ・ドラウト

実直で誠実な性格の剣士である。ベリルの実力に心酔している。アリューシアを補佐し、騎士団の規律を重んじている。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・副団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 ベリルとの模擬戦をきっかけに、彼を目標として慕うようになった。ミュイたちの誘拐未遂事件の際には、迅速に捜索隊を編成して指揮を執った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ”轟剣”の異名を持つ。圧倒的な身体能力を誇る。

クルニ・クルーシエル

明るく元気いっぱいで人懐っこい性格である。ベリルを心から尊敬している。騎士団のムードメーカー的な存在である。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・所属騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイたちの誘拐事件の際、逃走する犯人の馬車を単独で追跡した。ベリルの助言を受けてツヴァイヘンダーへ転向し、地道な鍛錬を重ねた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 高いフィジカルギフテッドを有している。

エヴァンス・ジーン

陽気で親しみやすい性格である。同期のクルニと切磋琢磨している。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・若手騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 修練場でクルニたちと共に鍛錬に励んだ。東区の門を押さえる捜索活動に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項は記載されていない。

アデル・クライン

勝気で元気いっぱいの性格である。双子の弟であるエデルを気にかけている。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・新米騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 叙任式直後に不作法な言動をヘンブリッツに咎められ、制裁を受けた。その後は態度を改め、遠征任務や鍛錬に真摯に取り組んだ。ミュイ誘拐事件の際には馬車を走らせて追跡を先導した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベリルの元弟子である。

エデル・クライン

大人しく気の弱い性格である。双子のアデルとともに行動することが多い。

・所属組織、地位や役職
 レベリオ騎士団・新米騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 姉のアデルとともに入団試験を突破した。ミュイ誘拐事件の際には、別地区の捜索活動に割り振られて任務をこなした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベリルの元弟子である。

魔法師団

フィッセル・ハーベラー

口数が少なくクールな性格の女性である。ベリルを師として深く尊敬している。剣術と魔術の双方を操る。

・所属組織、地位や役職
 魔法師団・所属。魔術師学院剣魔法科・講師。

・物語内での具体的な行動や成果
 ベリル、ミュイの帝国旅行に護衛として同行した。帝国の闘技大会に出場し、予選を突破した。準決勝でユキシロ・オリゼと対戦した際、外部からの光の魔装具による妨害を受けて敗北した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔法師団の若きエースと評されている。得意な剣魔法を駆使する。

ルーシー・ダイアモンド

自由奔放で強引な性格である。少女のような見た目をしているが、実年齢はベリルよりもはるかに年上である。優れた魔術の才能を持っている。

・所属組織、地位や役職
 魔法師団・団長。魔術師学院・学院長。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミュイたちの誘拐事件に使用された帝国製魔装弓の件を極秘に調査するため、単独でサリューア・ザルク帝国へ潜入した。帝都でベリルたちと再会し、宿の手配や情報共有を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔法によって現在の若い外見を維持している。王国最高峰 of の魔術師であり、強大な影響力を持つ。

レベリス王国

グラディオ

国の最高指導者である。レベリス王国の安寧と国民の生活を守る使命を持っている。

・所属組織、地位や役職
 レベリス王国・国王。

・物語内での具体的な行動や成果
 アデルたちの騎士叙任式を執り行った。サリューア・ザルク帝国の建国祭に招かれ、護衛を伴って帝国を訪れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベリルを王宮の晩餐会に招き、その功績を褒め称えた。

スフェンドヤードバニア

グレン

誠実な性格の青年である。隣国との良好な関係を重んじている。

・所属組織、地位や役職
 スフェンドヤードバニア・王太子。

・物語内での具体的な行動や成果
 レベリス王国の第三王女サラキアとの成婚儀を進めた。サリューア・ザルク帝国の建国祭および闘技大会に、要人として招かれて出席した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 これまでの第一王子から王太子へとその名が改まった。

サリューア・ザルク帝国

サリューア・ザルク帝国皇帝

実利を重んじる現実主義的な統治者である。他国の要人を建国祭に招き、自国の威光を示そうとしている。

・所属組織、地位や役職
 サリューア・ザルク帝国・皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会の特別観覧席で試合を観戦した。大会後、優勝したベリルを貴賓室へ呼び出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベリルの腕前を認め、帝国皇室の客将として勧誘した。

ユキシロ・オリゼ

にこやかで愛想がよく、掴みどころのない性格である。布服を纏い、変則的な剣技を操る。

・所属組織、地位や役職
 サリューア・ザルク帝国・客将。

・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会の本選に出場した。準決勝でフィッセルを破り、決勝戦でベリルと対峙した。決勝戦中に発生した目潰しの妨害を察知し、ベリルに純粋な勝負を促すために位置を入れ替えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 片刃の曲剣(サーベル)を扱う。元々は西の端の海出身であり、海上生活で培われた特異な体幹を持っている。

ウージー・ダイナマイト

派手な服装を好み、自分を大きく見せようとする尊大な性格である。魔力を持たないが、高い魔装具製作技術を持っている。

・所属組織、地位や役職
 魔装具師。

・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会の予選突破者一覧でベリルの名を知り、後援者を得るために魔術師を騙って彼らに接触した。闘技大会でフィッセルやベリルを妨害した光の魔装具の製作者であることが判明した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 製作した魔装具が悪用されたため、帝国内での身の危険を感じてレベリス王国へ亡命した。ベリルたちの帰路に同行した。

ヴェルデアピス傭兵団

ハノイ・クレッサ

特徴的な緑髪と黒衣を纏う大柄な男である。仕事(金)を最優先する冷徹さを持つ一方、子供を気遣うような面も見せる。

・所属組織、地位や役職
 ヴェルデアピス傭兵団・頭領。

・物語内での具体的な行動や成果
 グレン王太子の護衛として帝都シウーバハを訪れていた。闘技大会の予選後にベリルたちと遭遇し、帝国内での不穏な動きを警告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつてレベリス王国の遠征隊を襲撃し、ベリルらと刃を交えた因縁を持つ。

プリマベーラ・マレスカ

掴みどころのない性格の女性魔術師である。愛称はプリム。

・所属組織、地位や役職
 ヴェルデアピス傭兵団・所属。

・物語内での具体的な行動や成果
 ハノイとともにグレン王太子の護衛任務に当たった。シウーバハの大通りでフィッセルと互いの魔力を感知し合ってその実力を認識した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項は記載されていない。

冒険者・傭兵

ドレッグ・ハマー

筋骨隆々とした体格の剛腕の男である。裏表がなく、思ったことをそのまま口にする豪快な性格である。

・所属組織、地位や役職
 サリューア・ザルク帝国・傭兵。

・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会の本選一回戦でベリルと対戦した。顎に強烈な打撃を受けて昏倒し敗北した。試合後はベリルの控室を訪れ、彼の実力を認めて親しく言葉を交わした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 小斧を獲物とする。闘技大会後に愛用の小斧だけを残して行方不明となった。

その他

ミスタ

老齢ながら丁寧な所作とユーモアを兼ね備えた老紳士である。

・所属組織、地位や役職
 仮宿(スタンミッシュ)・経営者。

・物語内での具体的な行動や成果
 スタンミッシュへ到着したベリル一行に声をかけ、自身の宿に宿泊させた。長旅となる彼らのために食事の案内を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に魔法師団の遠征隊を受け入れた実績があり、フィッセルとも面識があった。

集団

レベリオ騎士団

レベリス王国を代表する王国直轄の軍事組織である。伝統と格式を持ち、市民からも絶大な人気を誇る。

・所属組織、地位や役職
 レベリス王国直轄・騎士団。

・物語内での具体的な行動や成果
 王国の治安維持や害獣・魔物の駆除を行っている。要人の警護任務や、新人騎士の育成を兼ねたヒューゲンバイトへの遠征演習を実施した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他国に対する王国の軍事的な牽制の役割も担っている。

魔法師団

レベリス王国が誇る、魔術師たちで構成された強力な主戦力である。

・所属組織、地位や役職
 レベリス王国・魔術師組織。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔術の研究や戦闘における後方支援、ポーションの調合と騎士団への供給を行っている。ミュイたちの誘拐事件に使用された帝国製武器の解析を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レベリオ騎士団と双璧を成す王国の防衛力である。

王国守備隊

バルトレーンの街の治安全般を守る実動組織である。

・所属組織、地位や役職
 レベリス王国・守備隊。

・物語内での具体的な行動や成果
 日々の巡回や軽犯罪の取り締まり、街道の安全確保を行っている。ミュイたちの誘拐事件が発生した際には、騎士団と連携して大規模な包囲網を敷いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 騎士団を退任した者も多く所属しており、市井に最も身近な組織である。

ヴェルデアピス傭兵団

高い戦闘力と組織力を有する精鋭の集団である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵団。

・物語内での具体的な行動や成果
 かつて帝国との戦争を生き残り、レベリス王国の遠征隊を襲撃した。スフェンドヤードバニアの大聖堂襲撃事件の際には王族の護衛として介入し、現在はグレン王太子の護衛として雇用されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 金や大義のみで動くため、周囲からの警戒心は強い。

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展開まとめ

一 片田舎のおっさん、計画を立てる

夏の修練とアリューシアの来訪
バルトレーンに夏が訪れ、ベリルは暑さと年齢による体力の衰えを感じながらも、レベリオ騎士団での指南を続けていた。修練を終えた後はアリューシアの執務室へ向かい、仕事を終えた彼女を待った。以前から家へ招いていたものの、多忙な騎士団長であるアリューシアとはなかなか予定が合わず、この日ようやく実現したのである。
帝国産の魔装弓
ベリルとアリューシアは家へ向かう途中、ミュイたちを狙ったカイナについて話した。カイナたちは依然として口を割っていなかったが、彼女が使っていた魔装弓がサリューア・ザルク帝国製であることは判明していた。ただし、それだけで帝国との外交問題に発展させることは難しく、調査はなお続いていた。
ミュイとアリューシア
ベリルの家では、ミュイとアリューシアが互いに緊張しながら顔を合わせた。アリューシアは学院生活や夏休みについて尋ね、剣のことで困れば相談に乗ると申し出た。その内容が以前スレナの口にした言葉とほとんど同じだったため、ベリルとミュイは驚いた。
ミュイが夏休みに素振りや走り込みを続けていると知ったアリューシアは、短期間で鍛錬の大切さに気付いたことを褒めた。ベリルもミュイの成長を喜ぶ一方、鍛錬だけでなく年相応の楽しみも経験してほしいと考えていた。
帝国への旅行
アリューシアは夏休みを利用し、ミュイとサリューア・ザルク帝国へ旅行してはどうかと提案した。帝国では建国祭が催され、今年は久しぶりに闘技大会も開かれる予定であった。グラディオらレベリス王国の要人も招かれ、レベリオ騎士団は護衛として帝国へ向かうことになっていた。
ベリルが護衛任務として同行することも可能だったが、その場合は騎士団の予定に従う必要があり、ミュイを連れて行けず、闘技大会への参加も難しくなる。一方、私的な旅行なら費用は自己負担となるものの自由に行動できた。ミュイが帝国に興味を示したため、ベリルは二人で旅行することを決め、闘技大会も楽しみにした。
三人での食事
その後、ベリル、ミュイ、アリューシアは中央区を歩き、肉料理の店で早めの夕食を取った。食事を通じてミュイの緊張は薄れ、アリューシアとの距離も縮まった。
別れ際、アリューシアはミュイに、ベリルのもとでよく学び、その成長が自分自身とベリルのためになると告げて頭を撫でた。帰り道でベリルが感想を尋ねると、ミュイはアリューシアを良い人だと評した。
ミュイの過去と現在
ミュイは、自分がかつて悪いことをしていたと振り返った。ベリルは過去の事実は消えないと認めながらも、今は悪事をせず、善くあろうとしていることが大切だと伝えた。ミュイが自ら以前の環境から抜け出したことを認め、これからは再びそこへ戻らないための教育と、人を助けるための正しい力を身につけさせようと考えた。
スレナとアリューシア
帰宅途中、ミュイは突然、スレナとアリューシアのどちらがベリルの好みなのかと尋ねた。ベリルは答えに窮し、スレナは妹のような存在で、アリューシアは元弟子だと考えながら悩んだが、ミュイは途中で質問を取り下げた。
ベリルは以前にもミュイからスレナと結婚するのか尋ねられたことを思い出し、ミュイが自分の結婚相手や母親代わりになる存在を気にしている可能性を考えた。自身もいつか結論を出さなければならないと理解しながら、なかなか踏み出せずにいた。
フィッセルへの旅行相談
数日後、ベリルは西区で偶然会ったフィッセルに帝国旅行の予定を伝えた。フィッセル自身は帝国への観光にはあまり興味を持っていなかったが、カイナが使った帝国製の魔装弓には強い関心を示した。
ベリルはミュイとの長旅に護衛を付けるべきか悩んでいた。騎士団は王族護衛や首都防衛があり、スレナほどのブラックランク冒険者を私的な旅行の護衛に頼むのも現実的ではなかったためである。
フィッセルの同行
ベリルが自分とミュイの双方と面識があり、腕の立つ護衛を探す難しさを口にすると、フィッセルは自分を指した。彼女はミュイを守ることも自分の仕事のうちだと述べ、休暇を取れば同行できると申し出た。
フィッセルはベリルともミュイとも親しく、戦闘能力にも不足がなかったため、ベリルは同行を依頼した。フィッセルも旅行を楽しみにしており、日程が決まれば早めに知らせるよう求めた。
こうしてベリル、ミュイ、フィッセルの三人で帝国へ向かう方向が固まり、ベリルは旅程や帰路、安全面を整えるため、冒険者ギルドで本格的な情報収集を始めることにした。

二 片田舎のおっさん、 帝都を目指す

帝国への旅立ち
馬での出発
帝国への旅行準備を終えたベリル、ミュイ、フィッセルは、バルトレーンから出発した。時間と費用を抑えるため、安全な地域では馬を利用し、必要に応じて乗合馬車や御者を使う旅程を組んでいた。
馬に乗った経験のないミュイはベリルと同乗し、高さや揺れに怯えながら彼の腰に掴まった。ベリルは無理をさせないよう気遣いながら進み、フィッセルが先導した。
初めての乗馬
しばらく進むと、ミュイは徐々に馬上の高さや揺れに慣れ、景色を眺める余裕を見せ始めた。ベリルは、戦う道を選んだミュイにとって騎乗経験も必要になると考えつつ、今回は訓練ではなく旅行であるため、楽しい思い出にすることを優先した。
フィッセルは実家にいた頃から馬に乗っており、慣れた様子で旅を進めた。三人は途中の村々で休憩を取りながら、最初の目的地であるスタンミッシュを目指した。
スタンミッシュ到着
日没直後、三人は交通の要衝スタンミッシュへ到着した。街には商人や冒険者、傭兵が集まり、夜になっても人と物が絶えず行き交っていた。
バルトレーンとは異なる活気にミュイは驚いた。スタンミッシュには各地へ向かう旅人が集まるため、宿屋や食事処が多く、一時的な滞在者を受け入れる街として栄えていた。
宿探し
三人は馬房のある宿を探し始めたが、大通りを外れると激しい客引きに遭った。フィッセルは、人を呼び込まなければ客が入らない宿には問題がある場合も多いとして、安易に選ばないよう勧めた。
ベリルもミュイを連れている以上、安全面を優先し、多少費用がかかっても信頼できる宿を選ぼうと考えた。
宿屋のミスタ
宿を探している途中、老紳士のミスタがフィッセルに声をかけた。ミスタはスタンミッシュで宿屋を営んでおり、以前に魔法師団が遠征した際、フィッセルも世話になっていた人物であった。
ちょうど三部屋空いていたため、ベリルたちはその宿に泊まることを決めた。魔法師団が利用していた実績もあり、ベリルは安心して宿を任せられると考えた。
旅先での縁
空腹を訴えるミュイのため、ベリルは荷物を置いた後で食事へ出ようとした。ミスタも宿で食事を提供していたが、育ち盛りのミュイには物足りないだろうと外食を勧めた。
ベリルは、旅先で偶然生まれたミスタとの縁を大切に受け止めた。すべての出会いが長く続くわけではなくても、一つひとつの良い巡り合わせを大切にしたいと考えながら、三人はミスタの宿へ入った。

ヴェスパタ到着
バルトレーンを発って一週間余り、ベリル、ミュイ、フィッセルはレベリス王国西端のヴェスパタへ到着した。天候に恵まれた一方、乗合馬車やキャラバンを利用する機会が少なく、騎乗中心となったため予定より早く進めたものの、費用とミュイの負担は増えていた。
三人は宿より先に帝国へ入るための越境通行証を取得した。三十日間有効の通行証へ署名する際、ベリルは以前は自分の名前も書けなかったミュイの字が上達したことに成長を感じた。
帝国への越境
ヴェスパタで一泊した翌日、三人は国境を越えてサリューア・ザルク帝国のスペルオルへ入った。ミュイは王国側と景色があまり変わらないことに拍子抜けしたが、フィッセルから西へ進むほど砂漠が増え、町の様子も変化すると教えられた。
市場では帝国特産のパルイースイーツという赤い果実を購入した。ベリルは帝国通貨の相場を把握しておらずフィッセルに助けられたが、三人は強い甘味を持つ果実を気に入り、道中で帝国の食べ物を楽しむことにした。
帝都シウーバハ
数日後、三人は帝都シウーバハへ到着した。建国祭の最中で街は膨大な人々で溢れ、煉瓦を多用した街並みもレベリス王国とは大きく異なっていた。人混みではぐれないよう、ベリル、ミュイ、フィッセルは手を繋いで進み、まず滞在拠点となる宿を探すことにした。
ルーシーとの再会
大通りを離れたところで、三人は帝都に滞在していたルーシーと偶然再会した。ルーシーはミュイたちの誘拐事件に関わる野暮用で帝国を訪れており、ベリルたちが旅行で来たと知るとホテル街まで案内した。
ベリルが闘技大会について尋ねると、会場はシウーバハ南端の闘技場で、まだ参加登録できる可能性があると教えられた。フィッセルも大会への参加を予定していると知ったルーシーは、二人が出場するなら観戦すると話した。
帝国の奴隷制度
闘技場では普段、奴隷たちを戦わせる見世物が行われているとルーシーから聞き、ベリルは帝国に奴隷制度が存在することを初めて知った。帝国には一般奴隷と犯罪奴隷があり、犯罪者が賠償金を払えない場合や、生活に困窮した者が身を売る場合などがあると説明された。
ミュイが奴隷について考え込むと、ベリルは今の彼女には関係のない制度だから気にしなくてよいと伝えた。
甘えの足りないミュイ
ルーシーはミュイに、まだ甘えが足りないと告げた。学院を卒業すれば自力で稼ごうとしているミュイの考え自体は否定せず、今はまだ大人になるための準備期間なのだから、ベリルをはじめ周囲の大人をもっと頼ればよいと諭した。
さらにミュイは多くの人に愛されているのだから、もう少し自信を持つよう伝えた。ベリルもその考えに同意し、ミュイには遠慮せず周囲を頼ることを覚えてほしいと考えた。
闘技大会への登録
翌日、ベリルとフィッセルはミュイを宿に残し、闘技場で大会への参加を申し込んだ。ベリルは職業を剣術師範、フィッセルは剣士として登録し、二人ともロングソードを使用すると申請した。
大会は多数が同時に戦う生き残り形式の予選を経て、一対一のトーナメント本選へ進む方式であった。相手を死亡させれば失格となり、武器は主催側が用意した刃を潰したものを使い、魔術は禁止されていた。負傷者には回復魔法による治療も用意されていた。
予選は四日後、本選はその三日後に開催されると知らされ、二人は正式に参加を決めた。ベリルは大会まで身体を整えつつ、ミュイに旅を楽しんでもらうことを最優先にしながら、帝都の地理や観光も覚えていこうと考えた。

予選への出場
闘技大会の登録から四日後、ベリルとフィッセルは予選の日を迎えた。それまでの間、三人は混雑した大通りを避けながらシウーバハを観光し、ミュイは帝都での食べ歩きも楽しんでいた。
会場でミュイから激励を受けた二人は、振り分け表を確認して同じ第二ブロックに入った。参加者は全体で二百人ほどおり、一ブロック三十人以上の乱戦になると分かった。ベリルはフィッセルも敵になることを意識しつつ、互いに恨みを残さず本気で戦うことを確認した。
第二ブロックの乱戦
刃を潰した長剣を選んだベリルは、試合開始直後に突進せず周囲を観察した。襲いかかってきた相手を腹への一撃や喉元への薙ぎで次々と退け、殺傷せず戦闘不能にする独特の加減を探りながら戦った。
やがてフィッセルがベリルへ不意打ちを仕掛けた。ベリルは辛うじて防ぎ、二人は長剣を交えたが、そこへ別の二人が割り込んだため、一時的に背中を預けて迎撃した。フィッセルは小剣使いを沈め、ベリルも斧使いを膝蹴りで倒した。
ベリルとフィッセルの打ち合い
参加者が七人まで減ると、ベリルとフィッセルは再び対峙した。周囲からの奇襲を警戒しながら、小刻みな攻撃と牽制を重ねて打ち合った。
決着がつく前に審判が試合を止め、最後まで立っていた五人の本選進出が決まった。ベリルとフィッセルはともに第二ブロックを突破したものの、フィッセルはベリルとの戦いが途中で終わったことに不満を見せ、本選で続きをすると告げた。
予選突破
予選を終えたベリルは、多人数戦でも自身の特殊な目を活かせることと、刃を潰した武器で相手を殺さず戦闘不能にする感覚を掴んだ。さらに、最後まで残ったフレイル使いから実力を認められ、本選で戦う可能性のある相手にも関心を持った。
ミュイと合流すると、彼女はベリルの戦いを凄かったと褒めた。ベリルにとって、自分の剣に憧れて剣術を学び始めたミュイからの評価は特別な意味を持っており、その期待を裏切らずに済んだことを喜んだ。
三日後の本選
フィッセルは予選参加者の実力差が大きく、素人に近い者も多かったと評した。ミュイも自分でも勝てそうな相手がいたと話したが、ベリルは訓練と実戦では違うと伝え、自身の力を正確に見極める難しさを改めて意識した。
本選は三日後のトーナメント形式で行われる予定であった。ベリルとフィッセルは予選を無傷で突破しており、疲労もほとんど残していなかった。二人は未知の強敵との戦いを楽しみにしながら、万全の状態で本選へ臨もうとしていた。

ハノイとの再会
闘技大会の予選後、ベリルたちはヴェルデアビス傭兵団のハノイとプリマベーラに遭遇した。ベリルはすぐにミュイを庇い、フィッセルも警戒したが、ハノイは戦う意思はなく、グレン王太子から依頼を受けて帝都に来ていると明かした。
ハノイたちは王太子の護衛を任されており、クリウも別行動で護衛に付いていた。さらにハノイは、帝国内で最近きな臭い動きがあるとして、ベリルにミュイをしっかり守るよう忠告した。ベリルは完全には信用しなかったものの、その場で敵対する理由はないと判断した。
傭兵団との因縁
ハノイたちと別れた後、ベリルはフィッセルとミュイにヴェルデアビス傭兵団との過去を説明した。事情を知ったフィッセルはすぐに殴りに行こうとしたが、現在はグレン王太子に雇われているため、私情で手を出せば問題になるとベリルが止めた。
ミュイから悪い奴なのかと尋ねられたベリルは、善人ではないものの、単純に悪人とも言い切れないと答えた。敵対したことも助けられたこともあるため、立場や組織を含めて相手を判断する難しさを感じていた。
建国祭への各国招待
レベリス王国だけでなくスフェンドヤードパニアの要人も帝国へ招かれていると知り、ベリルは今年の建国祭が例年とは異なる可能性を考えた。闘技大会を開くから各国を招いたのではなく、各国を招くために闘技大会を目玉にした可能性も浮かんだが、判断材料が足りず、それ以上は考えないことにした。
ベリルは自分たちは旅行者であり、必要な判断は各国の要人に任せ、今は祭りを楽しむことにした。
ウージー・ダイナマイト
食べ歩きを再開しようとした三人の前に、ベリルの名を知る女性が現れた。彼女は自らを大陸随一の魔術師ウージー・ダイナマイトと名乗ったが、フィッセルは即座に魔力を持っていないことを見抜いた。
ウージーは闘技大会の予選突破者一覧でベリルを知り、魔法を使えない戦士なら騙せると考えて接触していた。魔術師を騙った目的は、自作の魔装具を売り込み、後援者を得るためであった。
ウージーの魔装具
ウージーは魔力を持たないものの、独学で魔装具を作っていた。しかし自分では効果を確認できず、商品の説明も十分にできないため、露店でも組織相手でも売れずに困っていた。
フィッセルが持参していた魔装具を調べると、作り自体は丁寧で、魔力を吸収して魔術の発動を阻害する腕輪は実際に機能していた。一方、別の指輪は正常に働いていなかった。フィッセルはウージーの技術に一定の可能性を認めた。
魔法師団への道
ウージーが後援者を求めていると知ったフィッセルは、本気ならレベリス王国の魔法師団を訪ねるよう勧めた。技術と根性が本物なら拾われる可能性があり、偽物ならそこで終わるという考えであった。
さらにフィッセルは旅費を稼ぐ方法として、闘技大会でベリルか自分に賭ければよいと提案した。ベリルは勝敗を保証できないとして勧めなかったが、フィッセルはベリルの強さを強く信頼していた。
奇妙な出会い
ウージーは魔法師団を訪ねるか、闘技大会で賭けるかを考えるとして三人と別れた。ミュイは最後まで彼女の意図を理解できず、世の中には純粋に意味の分からない人間もいるのだと受け止めた。

幕間

夏のバルトレーン
帝国遠征への羨望
グラディオの護衛としてアリューシアたちが帝国へ出立した後、クルニは早朝から修錬場で鍛錬に励んでいた。しかし内心では遠征組に選ばれず、帝国へ行けなかったことを残念がっていた。
同期のエヴァンスは、自分たちが選抜されなかったのはまだ未熟だからだと受け止めていたが、クルニは護衛任務よりも帝国へ行けること自体を羨ましがった。さらにベリルも長期休暇で不在だったため、普段より人数の少ない修錬場に物足りなさを感じていた。
首都防衛の役目
エヴァンスは、帝国へ行かなかった騎士にもバルトレーンを守る役目があるとクルニを諭した。主力が遠征しているからこそ、残された者たちは普段以上に鍛錬と警戒を怠れなかった。
クルニもその点は理解しており、仕事は真面目にすると気持ちを切り替えた。
アデルとエデル
そこへ新人騎士のアデルとエデルが修錬場へやってきた。二人も遠征には選ばれておらず、クルニとエヴァンスとともにバルトレーンに残っていた。
エヴァンスからクルニが帝国遠征を旅行扱いしていたと聞いたエデルは苦笑した。先輩としての体面を気にしたクルニは話を切り上げ、鍛錬を再開しようとした。
四人での乱取り
アデルとエデルが一緒に鍛錬したいと申し出ると、クルニは四人で乱取りを行うことを提案した。エヴァンスも賛同し、クルニとエヴァンスのうち負け数が多かった方が四人分の昼食を奢ることになった。
互いに負けを譲るつもりはなく、新人二人も意欲を見せた。主力が帝国へ遠征している間も、残された若手騎士たちは夏の修錬場で鍛錬を重ねていた。

三 片田舎のおっさん、極限に臨む

本選トーナメント開幕
予選突破から三日後、ベリルは帝都闘技大会の本選を迎えた。予選とは比べ物にならない歓声が会場を包み、賭けの対象にもなっている大会の熱気を肌で感じた。
一方でベリルは、見せる剣と見世物として扱われる剣の違いに馴染めず、闘技大会そのものは自分の性に合わないと感じていた。しかし、本選を戦う前から大会の価値を低く評価し始めた自分に気付き、強くなったことで無意識に傲慢になっていないかと自省した。
剛腕ドレッグ・ハマー
一回戦第四試合で、ベリルは剛腕の異名を持つドレッグ・ハマーと対戦した。特別観覧席にはグラディオ、グレン、アリューシアらの姿もあり、ベリルは多くの観客が見守る中で舞台に立った。
小斧を操るドレッグは、高い身体能力を活かして激しく攻め込んだ。ベリルは刃を潰した長剣では普段のように武器を断てず、未来予知のような目も発動しなかったため、戦いづらさを感じた。
基礎への回帰
ベリルは戦いの途中、自身が優れた剣や特殊な目に頼ることを前提にしていたと気付いた。不確かな能力を待つのではなく、これまで積み上げてきた技術と経験で戦うべきだと考え直し、後の先を取る基本へ立ち返った。
ドレッグの攻撃が力を乗せ切る前に剣を重ね続けることで、徐々に主導権を奪った。ついにドレッグの腕が大きく泳いだ瞬間を捉え、全力の一撃を顎へ叩き込み、昏倒させて一回戦を突破した。
ドレッグとの交流
控室へ戻ったベリルのもとへ、敗れたドレッグが訪れた。既に自力で歩けるほど回復しており、最後の一撃を受けた記憶がないと豪快に笑った。
ドレッグは帝国で長く活動する傭兵であり、闘技大会も戦える人材を見出す場の一つだと説明した。さらにベリルほどの腕前なら皇室から声が掛かる可能性もあると語ったが、ベリルはそうした出世には興味を示さなかった。
腕試しの目的
ドレッグから大会に出た理由を尋ねられたベリルは、まだ見ぬ強者と戦うための腕試しだと答えた。そのうえで、自分が勝ったことでドレッグの成り上がる機会を潰したのではないかと気にした。
しかしドレッグは、戦いで負けた以上はそれも含めて自分の実力だと笑い飛ばした。ベリルもドレッグを強敵だったと率直に称え、彼との戦いを貴重な経験として受け止めた。
ドレッグは観客として残りの大会を見届けると言い残して控室を去った。ベリルは自分に敗れたドレッグの期待にも応えたいと感じ、次の試合へ向けて闘志を新たにした。

本選の観戦
サーベル使いユキシロ
一回戦を突破したベリルは、敗退したドレッグとともに本選出場者用の観覧席から他の試合を見ることにした。上位者の戦いを観察する価値に改めて気付き、サーベルを扱うユキシロ・オリゼの独特な剣技に注目した。
ユキシロは先を読みづらい独自の動きでロングソード使いを下した。ベリルは動きの理屈を掴めず、実際に戦ってみなければ攻略法は分からないと感じた。
フィッセルの一回戦
フィッセルは予選でも同じ組だったフレイル使いと対戦した。長剣をフレイルに絡め取られたものの、その力に逆らわず距離を詰め、無防備になった相手へ膝蹴りを叩き込んで勝利した。
ベリルは、魔法を使えない状況を想定して即座に体術へ切り替えたフィッセルの判断力を高く評価した。
ベリルの決勝進出
ベリルもその後の試合を順調に勝ち抜いた。闘技大会特有の非殺傷の戦い方にも徐々に適応し、刃を僅かに逸らして鋭い打撃として当てる方法などを用いながら、負傷することなく準決勝まで突破した。
準決勝でも相手の癖と隙を見抜き、首筋への一撃で勝利した。こうしてベリルは決勝進出を決めた。
フィッセル対ユキシロ
もう一方の準決勝では、フィッセルとユキシロが対戦した。ユキシロの独特な剣筋にフィッセルも苦戦したものの、互角に近い攻防を続け、一時は有効打を狙える場面まで持ち込んだ。
しかしその瞬間、フィッセルの剣先が僅かに乱れた。ユキシロはその隙を逃さず肩、腹、顎へ連撃を加え、フィッセルを倒して決勝進出を決めた。
光による妨害
敗退したフィッセルはベリルの控室を訪れ、試合中に自然光ではない光が目に入り、一瞬視界を奪われたと明かした。普段なら魔法で防げる程度の妨害だったが、魔術禁止の大会だったため対応できなかったのである。
ベリルはフィッセルの言葉を信じた。証拠はなかったものの、彼女が敗北の言い訳として虚偽を語る人物ではないと知っていたためである。
目潰しへの対策
ベリルは、同様の妨害を受けた場合に備え、剣の位置を僅かに変えて両目を同時に潰されにくくする構えをフィッセルに教えた。常用する構えではなく、魔法を封じられた場合などに備えるための補助的な対策であった。
フィッセルはすぐに意図を理解し、ユキシロについても妨害がなくても勝敗は分からなかったほど強かったと認めた。
再戦への意欲
フィッセルは当初、決勝でユキシロをぶちのめしてほしいとベリルを激励した。しかしすぐに考えを改め、自分が再戦して倒すため、ベリルには必要以上に痛めつけないよう求めた。
敗北を悔しがりながらも立ち止まらず、既に再戦を見据えるフィッセルを見て、ベリルは彼女がまだ強くなれると確信した。同時に、元弟子の真剣勝負に何者かが介入したことへの怒りを胸に、ユキシロとの決勝へ向けて気持ちを高めた。

帝都闘技大会の決勝戦
ベリルとユキシロ
決勝戦でベリルは、独特な片刃の曲剣を操るユキシロ・オリゼと対峙した。ユキシロは柔和な態度とは裏腹に、初動を読ませない歩法と身体をしならせる独特な剣技を使い、ベリルを後手に回らせた。ベリルはこれまで経験した剣士とは異なる動きに苦戦しながらも、未知の強敵との戦いに高揚していた。
再び起きた光の妨害
攻防の最中、観客席から人工的な光が放たれ、ベリルの視界を狙った。フィッセルが受けた妨害と同じものだと察したベリルは、剣で目を庇いながら大きく後退した。
その不自然な動きから事情を察したユキシロは、自ら位置を入れ替えるように攻撃を仕掛け、ベリルを光の届きにくい側へ移動させた。ベリルはユキシロが妨害に加担していないと考え、そのまま純粋な剣技による勝負を続けた。
読み合いの激化
ユキシロはベリルが攻撃の先を読んでいることにも気付き、見えているタイプなのかと指摘した。ベリルは目が良いだけだと誤魔化したが、ユキシロは通常の視力とは違うと見抜いていた。
互いに相手をやりづらいと認めながらも、負けるつもりはなく、剣撃と体術を交えた互角の攻防を続けた。ベリルの特殊な目も再び働き始めたが、ユキシロは予測された動きの途中から攻撃を変え、見えた未来すら書き換えていった。
決勝の決着
ユキシロが体当たりを仕掛けた瞬間、ベリルには肩へ一撃を受ける未来が見えた。ベリルは極限まで上体を反らして体当たりを紙一重で避け、その勢いのまま身体を回転させ、長剣をユキシロの右膝へ叩き込んだ。
一撃で膝を破壊されたユキシロは戦闘続行を断念し、降参した。こうしてベリルは帝都闘技大会の優勝者となった。激しい集中の反動から鼻血を流しながらも、強敵を倒したことに確かな満足を感じていた。
皇帝からの勧誘
表彰と賞金の授与を終えたベリルは、帝国皇帝から貴賓室へ呼び出された。そこには治療を受けたユキシロも控えていた。
皇帝はベリルの腕前を称賛し、帝国では優れた戦士を客将として迎えているとして勧誘した。しかしベリルは、すでにレベリオ騎士団の特別指南役を務めていることを理由に辞退した。
皇帝は無理強いせず、個人的な交流を続けたいと伝え、滞在期間を延ばすことも提案した。ベリルはミュイやフィッセルの予定があるためこれも断り、皇帝は今後も窓口を開いておくと告げて話を終えた。
ミュイからの称賛
闘技場の外では、フィッセルとミュイがベリルを待っていた。フィッセルはユキシロをぶちのめしたことを喜び、ミュイもベリルとフィッセルの戦いが格好良かったと褒めた。
ベリルはミュイの言葉を何より嬉しく受け止め、賞金で三人の食事を楽しもうと考えた。
ユキシロの正体
そこへ杖を突いたユキシロが現れた。彼は帝国皇室に仕える客将であり、西方の海で暮らした後に帝国へ流れ着き、闘技場で戦っていたところを皇帝に登用されていた。
海上生活で培った独特な身体操作が、ベリルにも読み切れない剣技の由来であった。
帝国の不穏な情勢
ユキシロは、帝国が領土の平定と逆賊の排除のために強者を求めていると明かした。国内では皇室に反する勢力が動いており、人身売買や誘拐も増加しているという。
その話を聞いたベリルは、ミュイたちを狙ったカイナの一件と帝国の情勢が繋がっている可能性を感じた。
妨害の目的
ベリルとフィッセルが試合中に受けた光の妨害について話すと、ユキシロは自分を勝たせるためだった可能性を挙げた。ユキシロ以上の強者が現れれば皇帝が新たに抱え込むため、皇室の戦力増強を嫌う者が大会へ介入したのではないかと推測した。
フィッセルは魔術の気配を感じなかったことから、妨害には魔装具が使われた可能性を示した。ユキシロはこの件を皇室側へ伝えると約束した。
ユキシロとの別れ
ユキシロは帝国内では特にミュイを守るよう忠告し、情報を教えた理由について、ベリルほどの強者には恩を売っておいて損はないからだと笑った。
三人は最後まで真意を掴みきれないユキシロを変わった人物だと評した。それでもベリルは、帝国の内情やカイナに繋がり得る情報を得られたことを収穫と捉え、アリューシアやルーシーへ共有することを考えながら、ミュイとフィッセルとともに夕暮れの帝都を楽しんだ。

ルーシーへの情報共有
闘技大会から数日後、ベリルはルーシーを訪ね、ユキシロから聞いた帝国の内情を伝えた。皇室が反抗勢力を警戒して戦力を増強していることや、人身売買や誘拐が増えているという情報は、ルーシーが掴んでいた内容とも概ね一致していた。
ルーシーはさらに、闘技大会でベリルと戦ったドレッグが大会後に得物の斧だけを残して行方不明になったと明かした。また、一連の動きを主導する首謀者についても、帝国側は存在すら掴み切れていなかった。
帝国の不穏な情勢
ベリルは、カイナたちによる誘拐事件と帝国内の動きに似たものを感じた。現場の実行犯を捕らえても、その背後にいる存在へ届かない点が共通していた。
ルーシーは、首謀者が巧妙に動いているか、組織的に匿われている可能性を挙げた。ベリルは自分一人で扱える問題ではないと改めて認識し、帝国の問題がレベリス王国へ波及しないことを願った。
高まったベリルの名声
グラディオたちも近く帰国すると聞き、ベリルは自分たちも帝都を離れる時期だと考えた。するとルーシーは、他国の闘技大会で優勝した以上、今後はさらに周囲から注目され、強く囲い込まれる可能性があると指摘した。
さらに、今回の旅行を勧めたアリューシアが、ベリルの名声が高まることまで見越していた可能性を示した。ベリルは否定し切れず、改めてアリューシアの強かさを感じた。
帰国の準備
数日後、ベリル、ミュイ、フィッセルは荷物をまとめ、シウーバハを発つ準備を整えた。三人は観光や食べ歩き、闘技大会を十分に楽しんでおり、ミュイも帰宅を受け入れていた。
フィッセルは食べ歩きを続けたミュイが少し太ったと指摘したが、ベリルは成長期として自然な変化だと考えた。ミュイ自身は気にしており、帰ったら少し運動すると決めた。
ウージーの同行
出発直前、旅装を整えたウージーが三人を追いかけてきた。彼女はレベリス王国へ向かうため、一緒に連れて行ってほしいと頼んだ。
その理由は、闘技大会でベリルとフィッセルを妨害した光の魔装具を、自分が製作していたためであった。使用目的までは知らなかったものの、妨害事件が皇室側に伝われば自分にも危険が及ぶ可能性があると考えていた。
ベリルはヴェスパタの手前までという条件で同行を認め、ミュイも騒がしくしないことを条件に受け入れた。
帝都でのお土産
出発前、フィッセルは魔法師団の仲間への土産を買うことにした。ベリルも両親やスレナ、ヘンブリッツ、クルニ、バルデル、キネラへの品を選び、ミュイもシンディたち友人への土産を探した。
ウージーの案内で帝都の門近くにある店を巡り、それぞれ渡す品を決めた。
シウーバハとの別れ
帝都の巨大な門を前に、ミュイは今回の旅行がとても楽しかったとベリルへ礼を伝えた。ベリルは、バルトレーンを離れて外の世界を知った経験が、これからのミュイの日常にも良い変化をもたらすことを願った。
三人はシウーバハへ別れを告げ、ウージーを加えた四人でレベリス王国への帰路についた。

末 片田舎のおっさん、帰路に就く

レベリス王国への帰路
帝国料理を楽しむミュイ
シウーバハを離れたベリルたちは、町ごとに宿を取りながらレベリス王国を目指していた。帝国の料理にすっかり馴染んだミュイは食欲旺盛で、フィッセルからクルニ並みに食べていると指摘されたが、ベリルは成長期として自然なことだと受け止めていた。
ベリルは食への興味が広がることも良い経験だと考え、自身も最近になって魚の美味しさを知ったと話した。
次の旅行先
魚の話から、ベリルとフィッセルは海沿いのヒューゲンバイトについて語った。魚介が新鮮で安く味わえると聞いたミュイは、興味がない素振りを見せながらも関心を示した。
ベリルは、帝国へ再び行くには遠すぎるため、次の旅行先としてヒューゲンバイトも悪くないと考えた。フィッセルも、ミュイにはこれから少しずつ外の世界を知ってほしいと話した。
ミュイの見聞
ベリルは、魔術師学院で知識を得るだけでなく、実際に各地を訪れて経験を重ねることも重要だと考えた。自身もビデン村を出てから剣以外の多くを学んだため、ミュイにも大人たちの庇護を受けられる今のうちに、さまざまなものを見て成長してほしいと思っていた。
一方で、いつかはミュイ自身が自立して世界を歩かなければならない。その時まで支えることが、後見人であるベリルの役目であった。
ウージーとの距離
食事を終えた三人のもとへ、別行動していたウージーが合流した。仲間外れだと不満を漏らしたものの、フィッセルから仲間ではないと言い切られて黙り込んだ。
ベリルも、帝国領を抜けるまでの道中では守ると約束したが、同行はヴェスパタ手前までであり、越境手続きやその先はウージー自身で行うよう改めて伝えた。ウージーもその条件を受け入れた。
旅の記憶
ベリルは今回の旅を振り返り、帝国の料理やウージーとの出会い、ルーシーやヴェルデアピス傭兵団との再会、闘技大会でのドレッグやユキシロとの戦い、さらに帝国の不穏な情勢まで、数多くの経験を得たと感じていた。
どれも異なる意味を持つ出来事だったが、全体としては良い旅だったと捉えていた。
未来に残す思い出
その日は町で宿を取り、ベリルは一人部屋、ミュイとフィッセルは同室で休むことになった。
ベリルはバルトレーンへ戻ったら、ミュイの読み書きの練習も兼ねて今回の旅を記録に残すことを思いついた。いつか成長したミュイと一緒に旅の思い出を振り返れる未来を願いながら、三人は帝国での最後に近い夜を穏やかに過ごした。

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