小説「凶乱令嬢ニア・リストン 9」感想・ネタバレ

小説「凶乱令嬢ニア・リストン 9」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンル
異世界ファンタジー・アクションである。前世の英雄が病弱令嬢として転生し、己の武人としての才覚をいかんなく発揮しながら、華麗に無双する壮絶譚である。
内容紹介
武闘大会を大成功で終え、満足していたニアを待ち受けていたのは、国王による突然の国外追放である。追放先は機兵(魔法強化甲冑)至上主義を是とする閉鎖的な機兵王国・マーベリア。その国では機兵以外を否定する価値観が支配的であり、対立の予感しかない場だった。敵意むき出しの国で、ニアは無慈悲に“ケンカ”を仕掛けていくことになる。

主要キャラクター

  • ニア・リストン:本作の主人公。前世では神を殺した英雄であり、転生後は病弱令嬢という肉体を与えられた戦士である。見た目からは想像できぬほどの武人としての才覚を持ち、無慈悲かつ華麗に敵を蹂躙する美貌と狂気を併せ持つ存在。

物語の特徴

本作の魅力は、「病弱令嬢という外見と、神殺しの武人としての内面との強烈なギャップ」にある。さらに、機兵を絶対視する閉鎖社会へ“無双令嬢”が乗り込み、信念と力で暴れる構図は、ただの異世界バトル譚を超えた痛快さを伴う。ニアの狂気と可憐さが融合した魅力は、本作を他の作品と明確に差別化している。

書籍情報

凶乱令嬢ニア・リストン 9 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
著者:南野海風 氏
イラスト:刀 彼方  氏
レーベル/出版社:HJ文庫ホビージャパン
発売日:2025年9月1日
ISBN:9784798639567

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あらすじ・内容

国外追放されたお嬢様、機兵王国に殴り込み!!
大成功で終わった武闘大会。個人的にも勇者候補と戦って満足したニアを待っていたのは、国王からの突然の国外追放! その原因はニアたちが撮影したとある番組にあって―― そして、ニアが追放された先は機兵王国マーベリアの機兵学校。 「魔法強化甲冑」機兵を崇拝し、それ以外を否定する閉鎖的なその国と学校はニアにとって気に食わないものばかりで―― 「ケンカの相手はこの国よ。――ね、楽しくなりそうでしょ?」 天使のような凶乱令嬢の最強無双譚、新章早々大暴れな第9弾!!

凶乱令嬢ニア・リストン 9
病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録

感想

今巻もまた、ニアの規格外な活躍に笑いが止まらなかった。
武闘大会での成功の後、まさかの国外追放という展開には驚かされたけれど、その原因が王様を落とし穴に落とす映像を放送してしまうという、ニアの破天荒すぎる行動だったと知り、納得してしまった。
イギリスがどうこう、という偏見はさておき(笑)、確かにこれは処罰を下さざるを得ない状況だよね。

追放先となった機兵王国マーベリアは、機兵を崇拝する閉鎖的な国。そんな場所で、ニアが大人しくしているはずがない。
機兵至上主義の空気に、案の定ケンカを売りまくっていて、読んでいてとても愉快だった。
指一本で機兵を倒してしまうなんて、もはや笑うしかない。
でも、そんな圧倒的な強さで、閉鎖的な世界をぶち壊していくニアの姿は、やっぱりかっこいい。

個人的には、ニアが一番イキイキしているように感じられた第9巻。
抑圧された場所で、自分の力を思う存分に発揮できるからだろう。

今巻も、安心して読むことができた。ただ、大暴れするニアが、この機兵王国で一体どんな騒動を巻き起こすのか、そして、どんな人々と出会い、どんな影響を与えていくのか、続巻が今から待ち遠しい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

ニア・リストン

武闘と映像の両面で中心に立つ少女であり、周囲の安全を優先しつつ自ら責を負う覚悟を持つ。
・所属組織、地位や役職
 王立学院・普通科の編入生。魔法映像の企画と演出の主導者。
・物語内での具体的な行動や成果
 武闘大会後の賞金を分配した。王を落とし穴に落とす企画を決断し、放送を成功させた。マーベリアで屋敷を確保し、襲撃者や機兵を多数制圧した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 形式上は国外追放となったが、実態はマーベリア機兵学校への留学である。孤児を雇用し生活基盤を築いた。

リノキス

実務に長けた冒険家であり、戦闘と日常の両面でニアを支える。
・所属組織、地位や役職
 冒険家。ニアの随伴者。
・物語内での具体的な行動や成果
 授賞式後の行動を共にした。屋敷の不法占拠者を排除した。襲撃時に子供たちを地下へ誘導して守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 留学に同行し、安全面と生活面の後見を担った。

レリアレッド・シルヴァー

同世代の協力者であり、社交の場でニアと行動を共にした。
・所属組織、地位や役職
 王立学院の生徒。準放送局の協力者。
・物語内での具体的な行動や成果
 打ち上げで挨拶回りを担った。重大発表の映像に出演した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寮の部屋替えにより距離は離れたが、関係は維持された。

ヒルデトーラ

王族として調整を担う少女であり、映像企画の推進役となった。
・所属組織、地位や役職
 アルトワール王族。
・物語内での具体的な行動や成果
 国王の伝言を届けた。重大発表を共同で告知した。落とし穴作戦を主導し、現場許可を通した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王妃と連携し、王城内で計画を実現させた。

ヒュレンツ王

現国王であり、経済効果を重視する統治者である。
・所属組織、地位や役職
 アルトワール国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔晶板の普及策を推進した。目玉企画をニアに要請した。落とし穴後に裁定を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寛容を示しつつも、国外追放という形でニアに留学を命じた。

ウォルカス

規律を重んじる騎士団長であり、取り調べと警護を担った。
・所属組織、地位や役職
 アルトワール騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 表彰式を進行した。ニアを軟禁し尋問した。疑いが晴れると釈放した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王の体面を守るために厳格な姿勢を示した。

ニール

家業と映像の両面で表舞台に立つ兄である。
・所属組織、地位や役職
 リストン家の長子。魔法映像の実務参入者。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔法映像の普及へ参画した。処罰の実態を留学と見抜いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普及が自走可能な体制を築いた。

ガンドルフ

情に厚い若者であり、武闘大会で実績を残した。
・所属組織、地位や役職
 天破流の修行者。
・物語内での具体的な行動や成果
 大会で準優勝した。別れに際し随伴を懇願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 師範代代理として道場に残留した。

フレッサ

実直な弟子であり、鍛錬の基礎を積む段階にある。
・所属組織、地位や役職
 天破流の門下。
・物語内での具体的な行動や成果
 賞金分配で喜びを示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 裏社会から接触を受ける可能性が示された。

リネット

穏やかな協力者であり、鍛錬の継続を課せられた。
・所属組織、地位や役職
 天破流の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ニアから鍛錬継続を厳命された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 必要時の協力関係に戻った。

王妃

安全確認を自ら行う気質を持つ王妃である。
・所属組織、地位や役職
 アルトワール王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
 落とし穴に試験落下して安全を確かめた。現場で計画を後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王の憤激を笑いで受け流し、場の空気を整えた。

アカシ・シノバズ

情報収集に長けた密偵であり、柔軟な立場を取る。
・所属組織、地位や役職
 王家関係の密偵。王族の先輩格。
・物語内での具体的な行動や成果
 潜入後に身分を開示し、事情聴取に応じた。捕虜解放の件を一部伏せて報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔法映像への関心を示し、交渉の橋渡しを担った。

シィルレーン・シルク・マーベリア

板挟みの立場に立つ第四王女であり、政治的帰結を重視した。
・所属組織、地位や役職
 マーベリア第四王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 機兵の体面と国益の両立を模索した。現場へ急行する決断を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 象徴としての機兵の扱いに責任を負った。

リグナー

かつて空賊であったが、現在は輸送を担う船長である。
・所属組織、地位や役職
 飛行船の船長。
・物語内での具体的な行動や成果
 餞別の飛行船で送達を担った。港での差別的対応から速やかに離脱した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現地での機動力確保に貢献した。

シグ

責任感の強い少年であり、妹と仲間を守る意思を持つ。
・所属組織、地位や役職
 屋敷の住み込み手伝い。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷に残る意思を示し、清掃に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 氣の基礎を習得する機会を得た。

ミト

病弱な少女であり、療養と回復を優先した。
・所属組織、地位や役職
 屋敷の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 医師の診察で容体が改善した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生活の安定により体力づくりの準備が整った。

ソーベル

状況判断が速い憲兵長である。
・所属組織、地位や役職
 六番憲兵長。
・物語内での具体的な行動や成果
 事情聴取を行い、完全な正当防衛と結論づけた。地下の捕虜移送を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過度な介入を避け、関係改善の糸口を作った。

トルク

商会の実務担当であり、現場への支援を行った。
・所属組織、地位や役職
 セドーニ商会の幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
 中型飛行船を餞別として提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 移動と物流の基盤を与えた。

カフス・ジャックス

裏社会に通じる顔役であり、人脈を使い立場を整える。
・所属組織、地位や役職
 裏社会の有力者。酒場経営の後見。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンゼルの五億を罪の洗浄に充てる案を示した。酒場の権利書を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 演者派遣事業を立ち上げ、映像分野に進出した。

アンゼル

賞金と過去の清算に向き合った寡黙な青年である。
・所属組織、地位や役職
 酒場「月下の白鼠亭」の店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 五億の小切手を受け取った。洗浄案を受け入れ、酒場を開いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 公的な問題を回避し、生活の基盤を得た。

ナスティン

連絡役として動く部下である。
・所属組織、地位や役職
 カフスの部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンゼルを呼び出した。小切手の額に驚愕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報伝達の要として働いた。

展開まとめ

プロローグ

謁見の間での表彰式
アルトワール王城の謁見の間で、騎士団長ウォルカスが王の代理として表彰を行った。玉座の前に跪いていたリーノとアンゼルが立ち上がり、五億クラムと記された大きな小切手を受け取った。リーノは緊張した笑顔を浮かべ、アンゼルは無表情で場を後にした。二人が絨毯を進む様子は兵士や騎士たちに見守られ、拍手で送られた。この映像は武闘大会の終結を示すものとなった。

映像と解説の余韻
大会の再放送は頻繁に流れており、専門家と称する人物たちが解説を加えていた。胡散臭い解説者も混じるが、映像越しには魅力的に映ることがあり、魔法映像という文化の不思議さが語られた。

打ち上げへの準備
リノキスが声を掛け、ニアは魔晶板を消して立ち上がった。両親は時間に間に合わず、兄のニールも別行動であったため、ニアはリノキスを伴い客間を後にした。最大の功労者として王城に招かれ、豪華な部屋を与えられたが、数ヵ月後に再び訪れることになるとは知らなかった。大会終了から一週間後、関係者のみを招いた打ち上げが開催されることになった。

友人との再会
廊下でニアはレリアレッド・シルヴァーと遭遇した。互いの家族の状況を語り合い、軽口を交わしつつ会場へ向かった。レリアレッドが否定しながらもニアを待っていたことを認め、二人は連れ立って歩いた。

打ち上げ会場の様子
大広間は庶民から貴人まで多くの招待客で賑わっていた。給仕も中庭まで広がるほど大勢を相手にしていた。ヒルデトーラが姿を現し、王族として気品ある振る舞いで挨拶を済ませた後、すぐに場を後にした。ニアとレリアレッドも協力者への感謝を示すため挨拶回りをすることを決めた。

新たな顔ぶれとの邂逅
冒険者ギルド長ククリジィフと鍛冶師ギルド長ハッドウェアの姿が確認され、ニアとレリアレッドは彼らに挨拶することを選んだ。打ち上げは華やかに進み、二人もまた多忙になる兆しを見せた。

第一章 ニアの悩み事

大会後の王都と私的打ち上げ
武闘大会の喧騒が消え、王都は例年の冬の顔を取り戻していた。ニアは「黒百合の香り」の個室で弟子のアンゼル、フレッサ、ガンドルフ、リネットと再会し、約束通りリノキスの優勝賞金五億クラムを五等分して一人一億クラムを分配した。ガンドルフの準優勝賞金は別扱いとなり、フレッサは歓喜した。アンゼルは自らの五億を罪の清算として用い、現状維持を得たと述べたが、詳細は語られなかった。ニアは用件を終え、門限のためにリノキス、リネットと店を後にし、三人との関係は必要時の協力に戻ると見立てた。

鍛錬の展望と強者への希求
ニアはアンゼル、フレッサ、ガンドルフの三名が「氣」の基礎段階にあり、ここから個性が伸長すると評価した。一方で自身より強い者は未だ見当たらず、勇星会の若者たちの成長に希望を見いだした。神との本気の殴り合いを望むほどの対戦欲は残しており、いなければ育てる方針も視野に入れていた。

帰省とニールの参画
終業式後、ニアは飛行船でリストン領へ帰省し、王都の港の静けさから大会期を回想した。冬休みの最中、兄ニールが魔法映像の仕事に本格参入する決意を固めていたことを知り、普及活動と家業の両面で兄が前に出る体制を受け止めた。ニアは自らの役割の縮小可能性を意識し、春休みまでに家族へ考えを示す決意を固めた。

前世の回想と強さの空虚
王都への航海中、リノキスに促されニアは心中を語った。前世の武闘家として頂点へ至ったが、そこには何も残らず、肩を並べる者もいなかったと回想した。その記憶は過程の断片のみで、勝敗や相手の特定は曖昧であった。強さはすべてを捨てて求める価値はなく、弟子たちは技を継いでも生き様は継がず、結果として現代の武闘家は彼女の愚行を踏襲しなかったと総括した。リノキスは今生でニアの身体を生かした強さの価値を指摘し、ニアはわずかに心が軽くなった。

学期再開と日常の回復
三学期が始まり、放課後の撮影や宿題など日常が戻った。胡散臭い解説者ウエヴェーの出演話題など、魔法映像界隈の賑わいは続いた。寮の部屋替えの周期からレリアレッドとの居室距離は離れる見込みだが、関係性は変わらないと見通した。

ヒルデトーラの訪問と王の伝言
ニアの部屋をヒルデトーラが訪れ、ムサシ會の抹茶を贈呈した。これはアルトワール国王からの大会労いの品であり、併せてニアへ相談がある旨の伝言が伝えられた。ニアは対等ではない立場差ゆえ実質的な要請と理解し、応じる構えを見せた。

普及活動と身の引き際の熟考
武闘大会を機に魔法映像は広く周知され、演者の裾野も拡大した。ニールの参画により普及は自走可能と判断し、ニアは自らが前面に出続ける必然性の減少を認識した。家業と兄の進路を妨げぬよう、当面は露出を控える選択肢を検討しつつ、必要に応じて役割を見直す意向を固めた。

第二章 厄介な相談事

面会までの経緯
ヒルデトーラの伝言から二週間後、ニアは放課後に王城を訪れ、ヒルデトーラとともに国王ヒュレンツの執務室を訪ねる運びとなった。王城は厳かな空気に包まれており、ニアとリノキスは案内に従い無用の詮索を避けて進んだ。

執務室での応対と前置き
国王は事務処理の最中であり、応接に移ると武闘大会の労をねぎらい、抹茶の褒美に触れつつ本題へ入った。王は大会の経済効果を高く評価しつつ、個々の勝敗には関心を示さず、運営と来客対応に忙殺されていたと述懐した。

魔晶板普及の急伸と制度の裏側
王は王都の魔晶板普及率が三割を超えた事実を示し、予測二割五分を上回った成果であると語った。その背景として、期間限定の割引に加え、頭金のみで所持を許し一定期間後に購入か返却かを選ばせる「お試し期間」制度を導入していたことを明かした。返却期限の延長方針も示され、普及勢いの維持が当面の課題であると定義された。

王の要請とニアの反発
王は魔法映像の人気を盤石にするため、誰もが観たいと感じ見逃せない企画の立案をニアに要請した。ニアは不可能命令だとして辛辣に反駁し、ヒルデトーラも同調したが、王は撤回せず、いま返却期間を乗り切る「目玉」が必要だと強調した。加えて王は、子供であるニアの立場ゆえの大胆さに期待し、犯罪でない限りの無茶は自身が処理すると約束した。

子供主体の体制と準放送局の合流
翌日、ニアとヒルデトーラは学院準放送局に合流し、撮影実務は彼らが担う前提で共同企画会議を開始した。大人を介在させると責任が集中し萎縮が生じると判断し、子供主体で進める方針が確認された。流血や過度の暴力表現は避け、しかし視聴欲求を最大化する線引きを探ることとなった。

難航する会議と満場一致の条件
ワグナスのネタ帳も投入されたが、興味の薄さ、実現性、準備期間、資金やコネの不足、安全性、最悪シナリオなどの理由で案は次々却下された。合意条件は「全員が観たいと思うこと」を満たす満場一致であり、妥協は禁じられたため議論は連日に及んだ。

境界線上の結論
最終的に、倫理的に不謹慎と批判され得るが誰もが本能的に「観たい」と感じる案が浮上し、満場一致で可決された。その内容は、王族相手でも「子供のやったことだから」でぎりぎり許容され得る境界を攻めるものとして、王を落とし穴に落とす企画であった。ニアは決断を下し、目玉企画として「王様を落とす」方針が確定した。

第三章 王様落とし穴事件

重大発表の告知
ヒルデトーラ、レリアレッド、ニアの三人は魔法映像にて「五日後の重大発表」を宣言した。内容は明かされなかったが、視聴者の期待を煽る演出が行われた。王城の騎士団長ウォルカスは冷ややかな視線を向け、ニアは王様暗殺未遂の嫌疑を受けて軟禁下に置かれた。

軟禁生活と尋問
ニアは王城の客間で監視付きの生活を送り、ウォルカスの尋問を繰り返し受けた。尋問内容は毎回同じであり、茶番と化していた。見張りの女騎士は差し入れを共に食べるなど緊張感を欠き、騎士団長とのやり取りも日常的な口論となっていた。ニア自身は軟禁を予想の範囲内として受け入れ、被害を最小限にするために自ら責を負う覚悟を語った。

カウントダウン映像と世間の反応
日を追うごとに「残り〇日」と題したカウントダウン映像が流れ、レリアレッドやキキリラらが交代で登場した。世間では噂が広まり、王城内でも話題を呼んだ。ニアは差し入れの菓子を楽しみながら、企画の狙いが「子供だから許される境界線を攻めるもの」であり、好奇心を最大限刺激する点に価値があると内心で総括した。

釈放と学院への復帰
最終日前日、ウォルカスはニアの疑いが晴れたことを告げ、放免を命じた。ニアはヒルデトーラと再会し、感謝を伝えた後に寮へ戻った。翌日、三人の少女は映像内で「王様にイタズラを仕掛け、落とし穴に落とした」と重大発表を行い、緊急特番の放送を予告した。

特番前編の放送
冒険家リーノに扮したリノキスが登場し、落とし穴の種類や作戦の理論を講義形式で解説した。無差別型ではなく、誘導を伴う「ネズミ捕り型」を選択すべきと語り、王城中庭での決行を示唆した。映像には掘削作業や仕掛けの実習も収録され、準放送局の面々が真剣に取り組む様子が映された。

ヒルデトーラの動機
映像中、ヒルデトーラは「子供として最後の思い出を作るため」と説明したが、ニアはそれを嘘と見抜いた。実際の彼女は嬉々として穴を掘り、作戦を主導しており、その姿には子供らしい無邪気さと、父王に対する私情すら滲んでいた。こうして特番前編は終了し、翌日の後編で王様が実際に落とし穴へ落下する映像が放送されると告知された。

計画立案と現場確保
ニア、ヒルデトーラ、レリアレッドは「王城中庭の美観撮影」を名目に準放送局から申請し、ヒルデトーラ経由でヒュレンツ王の許可を得た。条件は「城内と要人を映さない」ことであり、当日は「話題作りとして王も顔を出すように」とニアの意向を添え伝達した結果、王は渋々応じた。兵士と使用人には「王の撮影ゆえ近づかぬよう」と通達し、動線を確保したのである。

落とし穴の施工と安全対策
老庭師の助力で中庭に落とし穴を掘削し、底に藁を厚敷きしたうえで硬化魔法を施し、表芝を被覆して痕跡を消した。負傷防止を最優先とし、見た目の自然さと安全性の両立に成功した。庭師は事情を察した可能性が高かったが、明確な追及は避けられた。

王妃の参加と協力体制
王妃は計画の全容を把握したうえで現場に同席し、自ら試験落下して安全性を確認した。非常事態の際に制止役となる想定であったが、むしろ乗り気で協力し、企画の推進力となった。庭師と王妃の協力によって準備は万全となった。

決行当日と撮影布陣
快晴の決行日に、準放送局は地中や植え込みに複数のカメラを隠匿し、魔石の入替や死角排除など撮影体制を整えた。王と王妃が到着すると、王妃は歩調を遅らせ、王のみが先行する導線を形成した。

落下の瞬間と二段構え
王は中庭の一点で地面が抜け落下した。救出後、憤激して追及に移ろうとした王は、想定済みの第二の落とし穴にも再び落下した。王妃は終始哄笑し、騎士団長ウォルカスや周辺の兵士・使用人は困惑した。ニアは即座に自首して連行され、主犯扱いとなった。

放送と社会的反響
特番「私たちは王様にイタズラしました!」は前後編で放送され、後編で王の落下映像が公開された。再放送は王の体面上行われず、長期的にも退位後まで見送りとされた。番組は賛否両論の大反響を呼び、瞬間的熱量では武闘大会を凌駕した可能性があると受け止められた。結果として魔晶板の普及率は三割を維持し、春を越えて夏まで勢いが続いた。事件は支配階級の権威に揺らぎを与え、君主も人であるという認識を広め、のちに「多面的情報制王国」へとつながる文化変容の契機となった。

裁定と形式上の処罰
表向き王は番組内で「悪ガキ」として笑って収めたが、高位貴人層の手前、主犯のみの処罰が必要と判断された。ニアはあらかじめ単独での処罰受容を申し出ており、王は「国外追放」を宣告した。もっとも実態は「留学」として公表され、王は「他国で魔法映像の実績とコネを作り、必ず帰還せよ」と命じた。留学先は機兵王国マーベリアの機兵学校であり、ニアは学期末をもってアルトワールを発つこととなった。

第四章 国外追放

処罰の決定と影響範囲
王から正式な処罰が下り、ニアは国外追放となった。ヒルデトーラやレリアレッド、準放送局には一切の責任追及はなく、両親はリストン領へ戻された。王とは数年後に呼び戻す旨の約束と念書が交わされ、表向きは留学として処理された。

処罰の趣旨と帰還命令
王は有能な人材を手放さない方針を示し、他国で魔法映像を広め実績と人脈を作って帰還せよと命じた。留学先は機兵王国マーベリアの機兵学校に定まり、ニアは処罰を受け入れた。

同行者の決定
リノキスが同行を申し出て採用された。以後、マーベリアでの生活・安全面の支援を担うこととなった。

別れの挨拶(学院・関係者)
レリアレッドは留学に涙を見せ、ヒルデトーラは数年で呼び戻すと述べて励ました。天破流道場ではガンドルフが随伴を懇願して号泣したが、師範代代理として残留した。リネットには今後の鍛錬継続を厳命した。準放送局は送別会を催し、演者・撮影班が激励した。アンゼルとフレッサは「けじめ」を評価しつつ門出を受け止めた。セドーニ商会会頭マルジュは餞別を申し出た。

家族とのやり取りと決意
帰省の途上で兄ニールは処罰による留学と見抜き、ニアのみの負担に憤った。ニアは自分一人が責任を負うのが最適と説明し、兄は再会を約した。リストン家での最後の晩餐は明るい空気で締めくくられた。

餞別の飛行船と航路
出立の朝、セドーニ商会のトルクが中型飛行船を餞別として提供し、元空賊のリグナーが船長としてマーベリアまで送ることになった。私物化への逡巡はあったが受領し、利便性を活かして出発した。

入国と首都の第一印象
八日の空路を経て国境手続きを済ませ、首都シラフェに到着した。飛行船の数は少なく、灰色を基調とした機能美の街並みと大容量の乗合馬車が目立つ様相であった。

外国人への当たりと初動
港で憲兵に嘲笑され、リグナーは速やかに離脱した。情報収集のため一流ホテルに入ったところ、掲示料金を無視した倍額先払いを要求されるなど露骨な差別的応対を受けた。ニアは機兵偏重を揶揄して挑発し、警備員が掴みかかったが、リノキスが一撃で制して退去した。

今後の方針
日常と活動の支障を見据え、殺傷は避けつつも不当な扱いには正面から応じ、この国そのものを相手に実力で立ち位置を確保する方針を定めた。機兵による威圧には屈さず、必要なら機兵を破壊してでも自衛と目的達成を優先する構えであった。

第五章 留学先のマーベリア

商業ギルドでの住居探し
ニア・リストンとリノキスはホテルを出て商業ギルドを訪れ、城下町での住居を求めた。貴族寮は高額で制約が多く、一般寮は使用人の同居が認められなかったため、屋敷を借りて暮らすことに方針を定めた。受付嬢は上司の意向に縛られながらも、小声で治安や物件事情を伝え、外国人軽視の風潮の中で密かに助力した。

荒れた元貴族屋敷の確保
候補の中で、長く空き家となり不法占拠がある元貴族屋敷を選んだ。錆びた門や荒れ放題の庭が放置されていたが、部屋数と地下室を備えており、防衛や捕縛にも適すると判断したのである。ニアは「誰がいても力ずくで追い出す」と告げ、速やかに拠点確保を決意した。

孤児たちとの出会いと雇用
屋敷には大人の不法占拠者六人と、病床の少女ミトがいた。リノキスが大人たちを排除した後、兄シグと双子のバルジャ、カルアが戻ってきた。子供四人は物乞いのような生活を続けており、行き場を失っていた。ニアは掃除と手入れを条件に雇い入れることを提案し、病弱なミトには医師と薬を与えて療養させると約束した。シグは相談の末に受諾し、子供たちは新たな住人となった。

生活基盤の整備と協力者の出現
屋敷の清掃と修繕は新学期直前まで続いた。受付嬢の協力により、堅苦しい大店を避け、気の良い仕立て屋や下町の大工を紹介してもらい、制服や修繕を整えた。市場で食料や雑貨を扱う商人とも顔なじみを得て、地域での取引基盤を築いた。屋敷は見違えるほどに整い、子供たちも大いに働いた。

機兵学校での検査と宣戦布告
新学期当日、ニアは制服を着て登校した。校門での識別色検査では何も映らず、教員は驚きと嘲りを隠さずに告げた。周囲の生徒たちもざわめいたが、ニアは「機兵など蹴れば壊れる玩具にすぎない」と言い放った。その言葉は機兵至上の国民意識を正面から挑発するものとなり、対立の火種が明確になった。ニアは戦いを避けるつもりはなく、マーベリアでの生活を力によって切り拓く覚悟を固めた。

機兵中心の学科構成とニアの選択
マーベリア機兵学校は八歳開始の十年制で、機兵科が最上位、次いで機兵技師科、飛行船技師科が人気であった。魔力や識別色の資質が要件とされ、資質を欠く者は選外となりやすかった。ニアは九歳で三年生相当として編入し、普通科を選択した。普通科は五人編成の四クラスのみで、校内では隅に置かれる扱いであった。

下町で整える生活基盤と受付嬢の助力
到着後一か月で、ニアは下町の市場を拠点に暮らしを整え、商業ギルドの受付嬢の支援で仕立て屋や大工、食料品店など信頼できる店とつながりを得た。屋敷の修繕確認や制服の仕立てもこの縁で円滑に進んだ。

屋敷の確保と子供たちの雇用
空き家の元貴族邸を賃借し、不法占拠者をリノキスが排除した。屋敷には病弱な少女ミトと兄シグ、双子のバルジャとカルアが暮らしており、ニアは住み込みで清掃と手入れを任せた。医師の手配でミトの容体は回復に向かい、ニアは氣の基礎を授けて体力づくりを進めた。屋敷は清掃と整備で貴族邸相応の姿を取り戻した。

裏社会からの襲撃と地下室の捕虜管理
屋敷は度重なる荒事に狙われ、ニアとリノキスは夜襲・白昼の侵入を退けて加害者を拘束し、魔法封じを施した地下室に収容した。食事と水は一日一回配給し、点呼に応じない者には配給を減らす規律で統制した。伝令にはボスが直接来れば引き渡すと告げたが、首魁は現れず捕虜だけが増え続けた。ニアは費用負担の増大を厭い、情け容赦のない運用で沈静化を図った。

機兵崇拝の風土と宣戦布告の波紋
機兵を国是とする価値観は中上流でとりわけ強く、ニアが機兵を玩具程度と評した発言は校内外に広がった。ニアは敵視の拡大を承知で応じる構えを取り、やられたらやり返す方針を明確にした。

学内での対峙と挑発の受理
新年度初日、識別色を持たないニアは水晶検査で機兵科の資質がないことを確認されたが、機兵を壊せると断言した姿勢を崩さなかった。翌朝、校門内で訓練用機兵と機兵科の上級生が待ち受け、指一本で倒してみろ、できねば謝罪せよと迫った。ニアは壊さず倒すか全壊かの程度を逆に問い、嘲笑を買いながらも挑戦を受ける意志を示した。

普通科での孤立と今後の火種
普通科の教室では四人の同級生が距離を置き、昼には恐れの色を強めた。屋敷では子供たちへの当面の報酬支払いと今後の雇用方針の協議を予告し、ニアは学内外で同時進行の火種に対処する段取りを進めた。

第六章 何気にとんでもない監禁事件

路上での接触と屋敷での即時捕縛
機兵学校二日目の帰途、ニア・リストンは屋敷近くで四人組に囲まれた。挑発に対し、屋敷へ案内すると告げて正面から帰宅し、門をくぐった瞬間に四人を捕虜として制圧した。人通りの少ない貴族街の外れという環境を逆手に取り、敷地内での捕獲に踏み切った経緯である。

子供たちへの開示と居住継続の意思確認
ニア・リストンは捕虜増加の実情を子供たちに示し、屋敷の危険性を説明した。シグは夜間の物音や制圧の気配から既に状況を把握していたと明かし、シグ・バルジャ・カルアは屋敷に残る意思を示した。ニア・リストンは人質化の危険を明示しつつ受け入れ、短期的な庇護継続に傾いた。

機兵孤児の背景と上流階級の選別文化
対話の中で、シグらが機兵孤児である事実が判明した。機兵適性の識別色がない子を切り捨てる慣習が存在し、貴族や退役機士の隠し子である例も含まれていた。上流階級の見栄と肩書き優先の文化が暗黙裡に子の選別を容認している現状に、ニア・リストンは強い嫌悪を示した。

学内で拡散した噂とシィルレーンの反応
一方、機兵学校では白髪の留学生が指一本で機兵を倒したという噂が広まった。第四王女シィルレーン・シルク・マーベリアは当初荒唐無稽とみなしたが、アカシ・シノバズが工房での修理状況を裏取りし、正面装甲の損傷という具体的事実を報告したことで、事態の真実味が増した。

夜の襲撃と喧嘩師の撃退
深夜、ニア・リストンは屋敷前で喧嘩師ゲンダイの不意打ちの蹴りを受けたが、追撃の甘さを見切って反転し、真正面からの打撃で瞬時に無力化した。素人ではない暴力の気配を評価しつつも、制圧は迅速であった。

密偵アカシの潜入と高速制圧、身分開示による事態収拾
その直後、庭の片隅に潜む密偵の気配を察知したニア・リストンは、逃走を図るアカシを外壁上で捕捉し、空中から敷地内へ投げ戻して行動不能にした。アカシは即座に学校の先輩かつ王家関係者である身分を開示し、敵意がないと強調したため、ニア・リストンは殺気を収め、事情聴取へ切り替えた。

翌朝の食卓とアカシの同席
翌朝、ニア・リストンは子供たちの体調確認を兼ねた朝食にアカシを同席させた。リノキスは不機嫌ながら身元の説明を求め、ニア・リストンは前夜の迷い込みとして一旦受け入れた。アカシは前日の調査対象に対する謝罪と協力の意志を示し、詳細は帰宅後に改めて協議する流れとなった。

深夜の聴取と政治的慎重さ
ニア・リストンはアカシ・シノバズからの供述を徹夜気味に聴取し、嘘はなく答えられないが多いと判断したうえで、王族と事を構える段階ではないと結論づけた。自身の暴力は正当防衛の名分を要し、国王の支持を失わぬために理由ある行動でなければならないと整理したのである。

登校時の合意と子供たちへの不可侵ライン
翌朝、ニア・リストンはアカシ・シノバズと登校し、昨夜の合意として自分への調査は正面から行う条件で一部伏せて報告することを確認した。また、探る行為は構わないが子供たちに危害が及べば皆殺しで済むといいと通告し、仲間へも共有するよう牽制した。

学内の反発と噂の定着
機兵科では留学生が機兵をオモチャと評した噂が実例として定着し、この一ヵ月で約二十名がニア・リストンに挑発しては貸与機兵を破壊される事態が続発した。目撃の有無に関わらず結果は積み重なり、ニア・リストンは機兵より圧倒的に強いという認識が広がった。

ジーゲルン・ゲートの動向とシィルレーンの板挟み
上級生は不満を訴え、やがて話題はジーゲルン・ゲートの出動に及んだ。シィルレーン・シルク・マーベリアは私闘の敗北自体は厭わないとしつつ、国の象徴としての機兵の体面と政治的帰結を重く見た。アカシ・シノバズはジーゲルン敗北後にシィルレーンが次の相手に指名される流れを示唆し、ニア・リストンが国に喧嘩を売っている可能性を警告した。シィルレーンは回避を望むが、立場上の追い込みを予感した。

憲兵の来訪と大規模監禁の開示
下校時、憲兵が接触し周辺で五十人以上が消えた件を追及したところ、ニア・リストンは百人超の捕虜が屋敷地下にいると即答した。彼女は留学生としての貴族籍相当の扱いと身分保証の構造を整理し、取り調べ拒否も可能であるが、憲兵が裏付けを得て来訪したと判断した。憲兵の手配で地下の捕虜は一斉に連行された。

事情聴取の結末と法的評価
六番憲兵長ソーベルは応接で経緯を聴取し、敷地内のみでの制圧、所持品不取、拷問痕なし等の状況からニア・リストンの説明を是認した。結果は完全なる正当防衛であり、貴族には自領内犯罪と犯人を自裁できる特権があるとして、罪科は問われないと結論づけた。門番紹介や巡回提案は拒否され、憲兵の信用は得られなかった。

挑発不発と次段の主導
ニア・リストンは不躾な憲兵を想定して恫喝から中枢反応を探るつもりであったが、ソーベルの低姿勢により機会は潰えた。裏社会のボスが迎えに来なかった件を踏まえ、近いうちに自ら会いに行く方針を決め、事情次第では徹底的に潰す意図を示した。リノキスは子供の教育上、暴力礼賛の発言を慎むよう釘を刺し、ニア・リストンは表向きの自重を受け入れた。

第七章 大規模な襲撃

密偵アカシの接触と捕虜解放の反響
登校中、アカシ・シノバズが捕虜解放の情報に言及して接触し、約束通り一部を伏せて報告したと述べた。ニア・リストンは信用は薄いが一応受け入れ、監禁事件が前代未聞として話題化していると知っても意に介さない姿勢を示した。

魔法映像への関心と広報任務の想起
アカシが魔法映像に関する情報提供を求めたことで、ニア・リストンは自らがマーベリアで魔法映像を広める役目を負っていたことを思い出した。キャプテン・リグナーの来訪予定を踏まえ、撮影候補地の情報収集を進める必要を再確認した。

屋敷での魔晶板上映と文化説明
放課後、ニア・リストンはアカシを屋敷に招き、広報用魔晶板で自作映像を見せて娯楽目的の文化であると説明した。アカシは興味を示し、ニア・リストンが国外追放の身であると知ると定住を勧め、さらに結婚を申し出たが、ニア・リストンは一度は帰国する意向を示して退けた。

シィルレーンとアカシの協議と付け入る隙の仮説
同刻、シィルレーン・シルク・マーベリアはアカシからニア・リストンに付け入る隙が魔法映像にあるとの報告を受け、暴力ではなく搦め手と交渉による抑止が最善と合意した。アカシは留学理由が国王を落とし穴に落として国外追放となった点に関わるとし、長時間の協議で今後の接触方針の目途を立てた。

真夜中の大規模襲撃の開始
その夜、ニア・リストンの屋敷は総勢五十余の賊と複数の機兵により強襲された。ニア・リストンは三日月の下で迎撃態勢を取り、リノキスに子供たちの地下避難を命じた。襲撃側はサーチライトと大砲で威圧しつつ全方位から侵入を図った。

ニア・リストンの迎撃と機兵撃破
ニア・リストンは飛来した大砲弾を受け止めて投げ返し機兵を無力化し、さらに正面装甲へ拳を叩き込んで別の機兵を弾き飛ばした。連撃の余波で屋敷に損壊が生じたが、彼女は原因を襲撃者に帰し、逃走を始めた賊は一時見逃して残存勢力の掃討に移った。憲兵到着までの間、殺さぬよう配慮しつつ制圧を継続した。

地下に避難した子供たちとリノキスの対応
地下では屋敷の激しい揺れに子供たちが恐怖し、リノキスは平静を保って警護した。襲撃者が地下ドアを破壊して侵入を図ったが、リノキスは破られたドアを蹴り返して撃退し、外の掃討が進む気配を感じつつ引き続き待機した。やがて屋敷の揺れは収まり、戦闘の終息が示唆された。

エピローグ

アカシの急報とシィルレーンの覚醒
早朝、シィルレーンの部屋にアカシが飛び込み、激しく揺さぶって叩き起こした。アカシが直接訪れたことから事態の緊急性は明らかであり、ニア・リストンの屋敷が襲撃されたと告げられた。シィルレーンは眠気を払い、即座に身支度を整えながら状況を確認した。

大規模襲撃の概要
襲撃は数十名規模の賊によって行われ、その中には所属不明の機兵六機が含まれていた。屋敷は半壊し、大規模な事件となったため、すでに多数の憲兵が動員されていた。ニア・リストンの無事は確認されたが、詳細は不明であった。

王族の介入と緊迫する情勢
アカシは兄リビセィルと姉クランオールも現場に向かっていると報告した。シィルレーンはこれが事態をさらに複雑にすると認識した。ニア・リストンを刺激しかねない大規模襲撃に加え、厄介な兄姉の介入が加わったことで、状況は一層厳しくなった。

現場へ向かう決断
今のところ、ニア・リストンの危険性を最も理解しているのはシィルレーン自身であった。彼女は対応を一任される立場にあると自覚し、アカシと共に馬に跨り、城門を抜けて現場へ急行した。

書き下ろし 裏の動向

秘密裏の授賞式と安堵
アンゼルは王城で秘密裏に行われた武闘大会の授賞式を終え、自分の足で馬車から降りられたことで終了を実感して安堵した。冒険家リーノことリノキスと共に城から城下へ移動し、彼女が御者に礼を述べると馬車は去った。授賞式は厳戒の謁見中に行われ、アンゼルは捕縛の恐れと五億クラムの小切手を得る期待の間で覚悟を固めて臨み、無事に賞金を受け取った。

目立ちすぎた者たちの退避と生活方針
アンゼルは目立ちすぎたため自宅兼酒場へ戻らず高級ホテルに滞在していた。店を狙われる危険を避けるためであり、昼間は外出を控えていた。一方でホテルのバーで酒の知識と心得を学ぶ利点を見出し、リノキスからお嬢様主催の打ち上げへの参加要請を受け、必ず行くと返答した。

カフスの召集と五億の扱いの迷い
高級ホテル前に到着したアンゼルは、ナスティンからボスの呼び出しを受けて路地裏の店へ向かった。道中で小切手の額にたじろぐナスティンに返却を求め、使い道が決まっていないこと、手元に置くには危険で現金化にも難があると本音を述べた。投資の提案を賭けだとして退けるなど、五億の扱いに迷っていた。

罪の洗浄という提案と受諾
店内で対面したカフス・ジャックスは、五億と自らのコネでアンゼルの罪を消す、すなわち洗濯代として使う案を提示した。アンゼルは授賞式でも捕縛の不安を抱えていた経緯からこの提案に助けられると感じ、小切手を差し出して今後は巻き上げられたと答えることにすると述べた。二人は酒を酌み交わし、アンゼルは酒の扱いに慣れた様子を見せた。

酒場の権利書という褒美
カフスは褒美として書類を渡し、アンゼルが確認するとそれは今いる店の権利書であった。看板がないのは名称をアンゼルが決めるためであり、彼は仕入れを思案して新しい酒場経営に思考を巡らせた。酒場「月下の白鼠亭」は早期に開店した。

裏稼業の次手と魔法映像業界への進出
店を出たカフスはナスティンと合流し、スカーレット確保の進捗や外国籍の主立った者への打診状況、フレッサへの接触方針を確認した。さらに「脚龍」の頭ダウ・ザンシーも控える中、武闘大会で人気を得たアンゼルの効果を見極めつつ、魔法映像業界への殴り込み、すなわち同業界初の演者派遣事業の密かな発足を決めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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