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紅霞後宮物語雪村花菜

小説「紅霞後宮物語 第十三幕」感想・ネタバレ

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紅霞後宮物語13の表紙画像(レビュー記事導入用) 紅霞後宮物語

紅霞後宮物語12巻レビュー
まとめ
紅霞後宮物語14巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. 小玉(充媛)
        2. 文林(皇帝)
        3. 帝姫(令月)
        4. 貞(袁氏)
        5. 紅燕(馮貴妃)
        6. 李賢妃(真桂)
        7. 清喜
        8. 史夏湖(小史氏)
        9. 綵(鄭綵)
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. 小玉の部屋が保育園に。そして文林、昔から痔だったのか!
          2. 小玉の部屋が、いつの間にか保育園になっている
          3. 15歳の乳母・夏湖もなかなか強烈である
          4. 冷宮から出たその日に出産する綵
          5. 板に乗せられて運ばれるほどの重傷
          6. 綵が強すぎる
          7. 清喜が戻ってきたのも嬉しい
          8. 重い話なのに、どこか力が抜ける
          9. 文林、痔だったのか!
          10. 髭を生やして貫禄が増したのに……
          11. なぜ小玉に頼むのかという事情は重い
          12. 小玉と文林だから成立する距離感
          13. 皇帝の威厳を一瞬で破壊する「痔」
          14. 「家族」の形が変わってきた巻でもある
          15. 元通りではなく、新しく作り直していく
          16. まとめ|赤ちゃん三人と痔の皇帝。久しぶりに肩の力が抜けた
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:過去の怒りの顕在化と後宮の現実
        2. 第2幕:帝姫の名付け「令月」とお披露目
        3. 第3幕:冷宮からの恩赦と新たな宮の日常
        4. 第4幕:母子の再会と文林の隠された苦心
        5. 第5幕:紅燕の自害未遂と「令月・馮王婚約案」
        6. 第6幕:馮王領への訪問と王太妃の臨終
        7. 第7幕:それぞれの変容と未来への布石
      2. 主要な転換点
        1. 1:文林による小玉への謝罪
        2. 2:帝姫の「令月」命名と由来の開示
        3. 3:紅燕の自害未遂と小玉による婚約案の提示
        4. 4:王太妃の薨去と紅燕の精神的自立
      3. 小玉を中心とした人物関係の変化
        1. 文林
        2. 貞(袁氏)
        3. 鴻(皇子)
        4. 紅燕(馮貴妃)
      4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
    1. 文林の謝罪
        1. 謝罪の内容と文林の姿勢
          1. ・過去の強制に対する反省
          2. ・安易な赦免を求めない覚悟
        2. 小玉の反応と抑圧された感情の噴出
          1. ・噴き出した積年の鬱屈
          2. ・暴力の抑制と淑女の片鱗
        3. 蒸し返しの宣言と関係性の再定義
          1. ・怒りの継続に関する通告
          2. ・相手側の受容と甘受
          3. ・自身の甘えに対する省察
        4. まとめ
    2. 帝姫の誕生
        1. 生母の死と残された幼子
          1. ・命と引き換えの出産
          2. ・直後の自死による孤立
          3. ・宿敵との因縁の残滓
        2. 関小玉による庇護と養育
          1. ・恩怨を超えた引き取り
          2. ・乳幼児が集う賑わいの創出
          3. ・新たな家族の形成
        3. 皇帝による命名と精神の安定
          1. ・令月の名に託された祈念
          2. ・過酷な過去への救済
          3. ・精神的な回復の支柱
        4. 周囲への波及と宮廷関係の再生
          1. ・義兄妹としての情愛
          2. ・母子関係の深化
          3. ・殺伐とした秩序の刷新
        5. まとめ
    3. 女官たちの再配置
        1. 再配置が必要となった背景と人手不足の深刻化
          1. ・旧勢力の崩壊に伴う人材の漂流
          2. ・冷宮処分に伴う組織構造の疲弊
          3. ・充媛としての復帰と規模の制限
        2. 具体的な人事配置と新たな役割分担
          1. ・旧敵側近の登用と適材適所の配分
          2. ・苦難を共にした側近たちの復権
          3. ・乳母機能の集約と合同養育体制の確立
          4. ・総務統括との緊密な連携
        3. 再配置がもたらした組織的成果と環境の変化
          1. ・派閥対立の融解と疑心暗鬼の払拭
          2. ・安心感の醸成と忠誠心の獲得
          3. ・温かな生活空間の創出
        4. まとめ
    4. 紅燕の自害未遂
        1. 自害未遂に至った背景と心身の疲弊
          1. ・名門一族からの苛烈な要求
          2. ・政情不安と孤立の深化
          3. ・精神的な孤立と身体の衰弱
        2. 事件の発生と宮廷への衝撃
          1. ・自室における決行と発見
          2. ・公的危機と実家の動揺
        3. 関小玉による介入と政治的打開策
          1. ・恩怨を排した庇護の差し伸べ
          2. ・帝姫との婚約による地位の保全
          3. ・重責からの解放と安定の獲得
        4. まとめ
    5. 文林の秘密
        1. 身体的な持病と気まずい相談
          1. ・長年隠し続けた身体の悩み
          2. ・小玉への率直な薬の相談
          3. ・威厳との落差が生む親密さ
        2. 過去の非行に対する悔恨と心情の露呈
          1. ・過去の強制に対する反省の告白
          2. ・心身の衰弱と安息の獲得
        3. 関係性の変容と人間味の回復
          1. ・虚飾を脱した対等な対話
          2. ・過酷な物語における清涼剤の役割
        4. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 皇室・皇族
      1. 関小玉(関大花)
      2. 文林
      3. 鴻
      4. 嬉児(鳳)
      5. 令月(帝姫)
      6. 馮王家の王太妃
      7. 馮王
      8. 梨后
      9. 慎妃(衛夢華)
      10. 寛の皇帝
      11. 康の女王
    2. 後宮
      1. 李真桂(李賢妃)
      2. 馮紅燕(馮貴妃)
      3. 徐昭儀(徐氏)
      4. 茹仙娥(茹昭儀)
      5. 劉梅花
      6. 雨雨
      7. 貞(仙娥の元女官)
      8. 麗丹
      9. 細鈴
      10. 袁氏
      11. 史夏湖(小史氏)
      12. 裴徹娘
      13. 大史氏(鴻の乳母)
      14. 妃嬪たち
      15. 女官たち
      16. 宦官たち
    3. 朝廷・文官・武官
      1. 沈賢恭(沈太監)
      2. 鄭綵(綵)
      3. 琮夫人
      4. 丙
      5. 花先生
      6. 廷臣たち(官僚たち)
    4. 外国・その他・民間
      1. 薄雅媛(姫妃)
      2. 香児
      3. 清喜
      4. 貞児(綵の娘)
      5. 復卿
      6. 万氏
      7. 李桃(元皇后)
      8. 阿嬌
      9. 門番たち
      10. 冷宮の女たち(囚人たち)
      11. 市井の民(大衆)
  7. 展開まとめ
        1. 文林の謝罪と小玉の怒り
        2. 文林の体調不良
        3. 貞との関係
        4. 帝姫の名付け
        5. 令月の誕生
        6. 令月のお披露目
        7. 清喜の帰還
        8. 女官たちの再配置
        9. 新しい乳母・夏湖
        10. 文林の変化
        11. 綵の出産
        12. 三人の赤子
        13. 鴻との母子関係
        14. 紅燕の来訪
        15. 紅燕の自害未遂
        16. 令月と馮王の婚約案
        17. 文林の秘密

物語の概要

■ 作品概要

物語は、主人公・小玉が皇后を廃され、充媛として甘霖宮(かんりんきゅう)に配される局面から始まる。
皇帝・文林が過去の身勝手な振る舞いを直々に謝罪したことを契機に、小玉は長年抑圧していた怒りを自覚・表明しつつも、感情的対立を超えた実利的な協力関係へ足を踏み出す。
文林の持病である頻発性めまいと、過去に茹昭儀(仙娥)から受けた性的トラウマに起因する他者接触嫌悪に伴い、小玉は文林の痔の塗り薬の塗布という極めて私的な介助を引き受ける。
また、仙娥の遺児である帝姫の養育を開始し、仙娥の元側仕え・貞と相互不信を前提とした実利的な同盟を構築する。
後宮内では恩赦により冷宮から清喜が復帰し、さらに過酷な人生背景を持つ十五歳の史夏湖(小史氏)や、冷宮門前での路上出産を経て武官復帰を断念した綵(鄭綵)が乳母として甘霖宮へ入宮することで、三人の赤子を抱える養育環境が再構築される。
一方、母である馮王家王太妃の重体と、自らの立場・思慕に追い詰められた馮貴妃(紅燕)が服薬による自害未遂を起こす。
小玉は後宮と馮王家の政治的安定、ならびに紅燕の救済を図り、「帝姫令月と馮王の将来の婚約案」を文林に提案・決定させる。
小玉は王太妃の見舞いと婚礼手配のため馮王領へ向かい、病床の王太妃の臨終を看取る。
帝都帰還後、母の死と小玉の恩義を経て精神的偶像視から脱却した紅燕の変容を確認する。
最終的に、文林から帝姫の地位保全および後宮再編を目的とした「数年内の皇后復位構想」を告げられた小玉が、子供たちの未来を見据えてこれを受け入れ、新たな関係性へと足を踏み出す地点で完結する。

■ 主要キャラクター

小玉(充媛)
  • 立場・所属:  元皇后、現・充媛(甘霖宮)
  • 主人公との関係:  本人
  • この巻での主な役割:  帝姫(令月)の養育体制の確立、文林との実利的な信頼関係の再編、紅燕の自害未遂への政治的・心理的対処、および馮王領訪問による王太妃の看取り。
  • 重要な変化・行動:  文林からの謝罪に対し、過去の不当な扱いに対する怒りを表明しつつも歩み寄る。他者接触を嫌う文林の痔の塗り薬を塗る役目を引き受ける。養母の権利を失った皇子・鴻との私室での対話を再開し、母子関係を再確認する。紅燕の自害未遂に際し、「帝姫令月と馮王の将来の婚約案」を案出して政情の安定を図る。馮王領で王太妃の臨終に立ち会い、帝都帰還後、令月の未来のために文林の皇后復位構想を受諾する。
文林(皇帝)
  • 立場・所属:  皇帝
  • 主人公との関係:  夫、かつての上官
  • この巻での主な役割:  小玉への過去の行いの謝罪、帝姫の命名(令月)、不調の開示と治療受容、鴻と小玉の私的母子関係の容認、後宮政治の調整。
  • 重要な変化・行動:  小玉に対し過去の無理押しや不誠実さを直接謝罪する。頻発するめまいと持病の痔の治療にあたり、過去に仙娥から強いられた性的トラウマから身体接触を強く拒絶するが、小玉にのみ塗り薬の塗布を依頼する。故人(枝、張明)や「嘉辰令月」に由来する「令月」の名を定可し、将来的に令月の政治的地位を確保するため、小玉を数年内に皇后へ復位させる構想を明かす。
帝姫(令月)
  • 立場・所属:  皇帝(文林)と茹昭儀(仙娥)の娘
  • 主人公との関係:  小玉が養育する赤子
  • この巻での主な役割:  名付けとお披露目、甘霖宮における養育の軸。
  • 重要な変化・行動:  生後まもなくの体調不良や乳母確保の難航から命名が遅れていたが、文林により「令月」と名付けられる。内輪のお披露目会を経て、小玉の提案により馮王の許嫁となる構想が決定される。
貞(袁氏)
  • 立場・所属:  亡き茹昭儀(仙娥)の元側仕え女官
  • 主人公との関係:  帝姫保護のための協力関係(相互不信を前提とした同盟)
  • この巻での主な役割:  甘霖宮における令月の身の安全の確保、生活・風呂の世話。
  • 重要な変化・行動:  仙娥への忠義から令月を守るため動くが、小玉から「帝姫を守るためには自らの保身も徹底せよ」と示達され、互いに情や好意を持たない実利的な連携関係を構築する。
紅燕(馮貴妃)
  • 立場・所属:  馮貴妃
  • 主人公との関係:  後宮の上位妃(小玉をかつて偶像視していた)
  • この巻での主な役割:  精神的孤立、服薬による自害未遂、精神的自立。
  • 重要な変化・行動:  母(王太妃)の重体による馮王家の動向、皇帝の皇子出産という重圧、小玉への思暮と皇帝への拒絶感の間で追い詰められ、自室で服薬自害を図る。救命後、小玉による「令月・馮王婚約案」を受け入れ、小玉への偶像視や母の死を乗り越えて一人の妃として自立し、令月の養育へ積極的に関与する姿勢を示す。
李賢妃(真桂)
  • 立場・所属:  賢妃
  • 主人公との関係:  後宮の上位妃嬪、協力関係
  • この巻での主な役割:  後宮の統括、帝姫の名付け手配、自害未遂後の紅燕の介護と精神的支援。
  • 重要な変化・行動:  充媛となった小玉を点前として立てつつ、上位妃としての威厳と配慮を保ち、文林へ帝姫命名の文を手配する。仙娥の事件の真相解明や、自害未遂を起こした紅燕の介抱と対話を行い、後宮の平穏を支える。
清喜
  • 立場・所属:  宦官(小玉の側近)
  • 主人公との関係:  従者・腹心
  • この巻での主な役割:  冷宮からの恩赦復帰、甘霖宮の管理、小玉との対話・分析。
  • 重要な変化・行動:  冷宮への自主的入宮と去勢を経て恩赦により復帰。かつての恋人・復卿の死因となった万氏に対し、「相手を満足させないため」に復讐を拒絶する論理を示す。小玉の過去への反省を「単なる後悔や愚痴」と冷静に分析し、文林の自己否定と価値観更新の凄まじさを指摘する。
史夏湖(小史氏)
  • 立場・所属:  帝姫の新しい乳母(15歳)、鴻の乳母の弟の娘
  • 主人公との関係:  甘霖宮の雇用人
  • この巻での主な役割:  令月への授乳・養育、実娘(徹娘)の同行。
  • 重要な変化・行動:  裴家の妾として入宮し、第一子(男児)を正妻の子として奪われ、婚家と絶縁した過酷な過去を持つ。第二子(徹娘)を連れて甘霖宮の乳母に着任し、15歳とは思えぬ異常なまでの達観と度胸で養育にあたる。
綵(鄭綵)
  • 立場・所属:  甘霖宮の乳母、元武官・元罪人
  • 主人公との関係:  元部下、甘霖宮の雇用人
  • この巻での主な役割:  冷宮脱出直後の出産、甘霖宮での乳母就任。
  • 重要な変化・行動:  恩赦直後に冷宮門前で突発的な路上出産を果たし、内外に渡る重度の外陰部裂傷を負って板で送還される。身体的損傷から武官復帰を断念し、娘(貞児)を連れて甘霖宮の乳母に就任する。将来の骨肉の争いを避けるため、元夫(温青峰)との関係を遮断する徹底した保身策をとる。

書籍情報

紅霞後宮物語 第十三幕
著者:雪村花菜 氏
イラスト:桐矢隆  氏
出版社:KADOKAWA(富士見L文庫)
発売日:2022年2月15日
ISBN:9784040744223

紅霞後宮物語13の表紙画像(レビュー記事導入用)
紅霞後宮物語 第十三幕

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あらすじ・内容

ここで生きていく――清濁併せのみ、小玉は新しい自分を歩み出す。

仙娥の娘を託された小玉は人手の少ない後宮で育児に奮闘していた。それと同時に、はじめての「家族」の穏やかな時間を手に入れる。さらに清喜や綵も戻ってきて、後宮に新しい風が吹きはじめ――。

紅霞後宮物語 第十三幕

感想

小玉の部屋が保育園に。そして文林、昔から痔だったのか!

前幕までの凄惨な展開を考えると、今回はかなり雰囲気が変わった巻である。

もちろん重い話がなくなったわけではない。

むしろ冷静に考えると、

「いや、それ普通に死んでもおかしくないだろう」

という話まで出てくる。

それなのに妙に明るい。

小玉の周囲に人が戻ってきて、赤ちゃんまで増えていく。

清喜との掛け合いも復活する。

そして最後には皇帝・文林の長年の秘密まで明らかになる。

文林、昔から痔だったのか!

前幕までの重苦しさで張り詰めていたものが、一気に緩んだ気がした。

小玉の部屋が、いつの間にか保育園になっている

仙娥が遺した娘は「令月」と名付けられ、小玉のもとで育てられることになる。

ただでさえ赤ちゃんの世話は大変なのに、最終的には甘霖宮に赤ちゃんが三人集まってしまう。

令月。

夏湖が連れてきた娘・徹娘。

そして綵の娘・貞児。

赤ちゃん三人である。

後宮の一室だったはずなのに、完全に保育園である。

妃も女官も宦官も赤ちゃんをかわいがる。

これまで陰謀や政争、死が身近にあった場所とは思えない。

前幕までの殺伐とした展開を読んできただけに、この光景にはかなり救われた。

小玉自身も、鴻を育てた経験を振り返りながら、子供たちへ愛情を注いでいく。

成長すれば身分の違いによって距離ができる。

だからこそ、幼いうちは惜しまず愛情を示す。

そんな小玉の考え方も印象に残った。

単純に赤ちゃんが増えて賑やかになっただけではない。

小玉自身も過去を振り返りながら、少しずつ変わっているのである。

15歳の乳母・夏湖もなかなか強烈である

新しく令月の乳母となった史夏湖も印象に残った。

まだ十五歳。

しかも自分の娘である徹娘を連れている。

年齢だけを見ると、

「大丈夫なのか?」

と思ってしまう。

ところが本人は妙に落ち着いている。

これまでの人生があまりにも過酷だったためか、十五歳とは思えないほど腹が据わっているのである。

第一子を婚家に奪われ、婚家とは絶縁。

それでも第二子を連れて後宮へやってくる。

小玉の周囲には、本当にたくましい女性が多い。

そして、さらに上を行く人物が戻ってくる。

冷宮から出たその日に出産する綵

今回、一番、

「よく生きていたな……」

と思ったのが綵である。

恩赦によって冷宮から出られる。

普通なら、

「ようやく解放された」

となるところだろう。

ところが、その日に産気づく。

しかも場所は冷宮の門前。

助産経験のある女性は冷宮から出られない。

そこで門の向こう側から指示を出し、外にいる出産経験者たちが綵を助ける。

冷宮の内と外で協力して出産するという、とんでもない状況である。

そして女児を無事に出産。

めでたし、めでたし。

……ではない。

板に乗せられて運ばれるほどの重傷

綵は出産によってかなり深刻な傷を負ってしまう。

最終的には自力で普通に移動できるような状態ではなく、板に乗せられて運ばれる。

これを読んだ時は、

傷が化膿したら普通に死ぬぞ……。

と思った。

現代なら医療機関へ直行するような状態である。

ましてや、この作品の時代である。

感染症だけでも命に関わりそうだ。

ところが後になって本人が出産の顛末を語ると、妙にあっけらかんとしている。

いやいやいや。

笑い話みたいに話しているけれど、

それ、かなりの死線を越えているからね?

と思わず突っ込みたくなった。

綵が強すぎる

これまで武官として生きてきただけあって、綵は精神的にも肉体的にも強い。

とはいえ今回の出産は、その「強い」の方向性が違う。

命懸けの出産。

身体に重傷を負う。

武官への復帰を諦めざるを得なくなる。

普通なら人生そのものが変わってしまうほどの出来事である。

それでも娘を連れて甘霖宮へやってきて、令月の乳母になる。

この切り替えの早さがすごい。

「もう武官として以前のようには働けない」

ならば別の生き方をする。

悲劇として延々と引きずるのではなく、次の生活へ移っていく。

小玉もそうだが、この作品の女性たちは本当にしぶとい。

ここでいう「しぶとい」は、かなり良い意味である。

何が起きても、とりあえず生きる。

生きて、その後を考える。

前幕まで多くの人間が傷ついてきたからこそ、この生命力が余計に印象に残った。

清喜が戻ってきたのも嬉しい

そして清喜も冷宮から戻ってくる。

この人が戻ってくると、小玉との会話が一気に軽くなる。

遠慮なく言う。

普通に突っ込む。

小玉が何か考え込んでいても、必要以上に持ち上げない。

場合によっては、

「それ、ただの愚痴や後悔では?」

くらいの勢いで切り込んでくる。

この距離感がいい。

最近は本当に重い展開が多かった。

陰謀。

裏切り。

死。

後宮の権力争い。

人間関係もかなり壊れていた。

だからこそ、清喜と小玉が普通に話しているだけで、

ああ、これだよ。

という気持ちになった。

重い話なのに、どこか力が抜ける

もちろん十三幕にも重い話はある。

紅燕は追い詰められ、自ら命を絶とうとする。

王太妃の死もある。

小玉と文林の関係も、過去の問題がすべて解決したわけではない。

小玉自身も、昔の自分が周囲の好意に甘えていた部分を振り返っている。

決して「平和な日常巻」だけではないのである。

それでも前幕までとは読後感がかなり違った。

傷ついた人たちが戻ってくる。

新しい命が増える。

人間関係を作り直していく。

失ったものを完全に取り戻すのではなく、

失った状態から、新しい生活を始める。

そんな巻だったように感じる。

そして、その象徴が赤ちゃん三人で賑やかになった甘霖宮なのかもしれない。

……と思っていたところに、とんでもない話が出てくる。

文林、痔だったのか!

今回、個人的に最も力が抜けた場面。

文林が小玉へ相談する。

かなり言いづらそうである。

何事かと思ったら、

痔である。

しかも最近なったわけではない。

武官だった頃から患っていたらしい。

さらに皇帝になってからは座っている時間が増えたことで悪化。

……皇帝の職業病みたいになっている。

これまで文林といえば、皇帝としてさまざまな問題を抱えてきた。

政治。

後宮。

家族。

過去の傷。

体調不良。

かなり深刻な話が続いている。

そこへ突然、

痔。

申し訳ないが笑ってしまった。

髭を生やして貫禄が増したのに……

文林は以前より外見にも貫禄が出ている。

髭まで生やして、皇帝らしい威厳が増している。

いろいろな経験をして、精神的にも変化してきた。

そんな文林が真剣な顔で小玉に相談する。

「薬を塗ってほしい」

……。

髭。

皇帝。

威厳。

貫禄。

全部どこかへ飛んでいった。

小玉に痔の薬を塗ってもらう皇帝。

その光景を想像した瞬間、もう駄目だった。

なぜ小玉に頼むのかという事情は重い

ただし、笑えるだけの場面ではない。

文林が小玉へ頼むのには事情がある。

めまいのために新しい薬を使うことになり、長年使ってきた痔の飲み薬との相性が悪い。

そのため飲み薬をやめて塗り薬へ変更する必要がある。

ところが文林は他人に身体を触られることを嫌がる。

特に仙娥との一件以降、その拒絶はさらに強くなっている。

そこで、

小玉なら頼める。

となる。

状況だけ切り取れば完全にコメディなのに、そこには文林が小玉へ寄せる信頼がある。

ここが面白い。

小玉と文林だから成立する距離感

普通なら皇帝が元皇后に、

「痔の薬を塗ってほしい」

なんて頼む場面は、ロマンスとはかなり遠い。

しかし小玉と文林の場合、妙に二人らしい。

格好をつける必要がない。

弱いところも見せる。

情けないところも見せる。

過去への怒りも消えていない。

完全に許したわけでもない。

それでも一緒にいる。

こういう関係になっていること自体が、二人の長い付き合いを感じさせる。

派手な愛情表現より、

痔の薬を塗ってもらえる関係。

ある意味、とんでもなく信頼している。

皇帝の威厳を一瞬で破壊する「痔」

それにしても文林。

せっかく髭まで生やしたのに。

前より落ち着いた。

皇帝らしい風格も出てきた。

いろいろ背負っている。

そして、

痔の薬を小玉に塗ってもらう。

駄目だ。

どうしても最後で全部持っていかれる。

個人的には今回の十三幕で一番忘れられない情報になってしまった。

後宮の政治より先に、

「文林、武官時代から痔だったのか」

が頭に残る。

恐るべし痔。

「家族」の形が変わってきた巻でもある

笑える部分が多かった一方で、十三幕で印象に残ったのは「家族」の変化である。

小玉は令月を育てる。

甘霖宮には赤ちゃんが三人集まる。

綵も夏湖も、それぞれ事情を抱えながら子供と生きている。

そして鴻と小玉も、制度上は親子ではなくなってしまった。

それでも二人が母子として過ごした過去まで消えるわけではない。

人前では立場に従う。

二人きりなら「母上」と呼んでもいい。

完全に元通りにはならない。

それでも、できる範囲で関係を取り戻していく。

このあたりは今の小玉らしいと思った。

元通りではなく、新しく作り直していく

十三幕を読んでいて感じたのは、

何もかも以前の状態には戻らない

ということである。

小玉は皇后ではない。

綵は武官へ戻れない。

鴻との親子関係も以前と同じではない。

文林も大きな傷を負っている。

清喜にも失ったものがある。

それでも生きている。

ならば今の状態から、新しい関係を作っていけばいい。

そんな空気がある。

だから赤ちゃん三人で騒がしい甘霖宮が、とても象徴的に感じられた。

かつてと同じ後宮には戻らない。

それでも、新しい生活は始められる。

まとめ|赤ちゃん三人と痔の皇帝。久しぶりに肩の力が抜けた

『紅霞後宮物語 第十三幕』は、前幕までの重苦しい展開から少し空気が変わった一冊だった。

もちろん紅燕の件など、まだまだ重い話は残っている。

それでも清喜たちが戻ってくる。

綵も壮絶な出産を乗り越えて戻ってくる。

そして甘霖宮には、

赤ちゃんが三人。

もはや保育園である。

その賑やかさが嬉しかった。

特に綵の出産話には驚かされた。

冷宮から出たその日に出産。

門の内側から指示を受けながらの出産。

板で運ばれるほどの重傷。

それを後になってあっけらかんと話している。

強すぎるだろう。

そして最後にすべてを持っていったのが文林。

昔から痔持ち。

皇帝になって悪化。

薬の都合で塗り薬へ変更。

他人には触られたくない。

そこで小玉へお願いする。

前より貫禄が出た。

髭も生やした。

皇帝としても変わってきた。

なのに、

小玉に痔の薬を塗ってもらう。

申し訳ない。

どうしてもその姿を想像してしまう。

そして想像した瞬間、

皇帝の貫禄が全部消えた。

ここ最近の『紅霞後宮物語』は本当にヘヴィな展開が続いていただけに、こうした人間臭いやり取りにはかなり救われた。

傷ついた人が戻ってくる。

赤ちゃんが増える。

くだらない話もできる。

そして皇帝だって痔になる。

凄惨な出来事を経験しても、人生は重苦しいことだけでは終わらない。

そんな当たり前の生活が少しずつ後宮へ戻ってきたことが、何より印象に残る十三幕であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

紅霞後宮物語13の表紙画像(レビュー記事導入用)
紅霞後宮物語 第十三幕

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紅霞後宮物語12巻レビュー
まとめ
紅霞後宮物語14巻レビュー

考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:過去の怒りの顕在化と後宮の現実
  • 【状況】  皇后を廃され充媛へ降格した小玉は、甘霖宮にて過ごしていた。皇帝・文林が訪れ、これまでの不誠実な振る舞いや無理押しについて直接の謝罪を行った。
  • 【発端】  文林の謝罪を受けた小玉は、長年抑圧していた怒りを自覚し、衝動的に手を振りかぶった。
  • 【行動】  小玉は平手打ちを試みたが、直前で亡き侍女・梅花の小言の顔が脳裏をよぎり、軌道を逸らして文林の肩を強く叩くにとどめた。小玉は今後何度でも不満を蒸し返す権利を宣言し、文林もそれを受け入れた。また、小玉は文林が以前から抱え、最近頻発しているめまい・頭痛の不調を確認した。
  • 【結果・因果関係】  小玉は仙娥の遺児(帝姫)を守るため残った女官・貞に対し、相互不信を前提としつつ「帝姫を守るためには自身の身も守れ」と示達した。互いに好意を持たないまま、「帝姫の防衛」という唯一の共通目的による実利的な同盟関係が構築された。
第2幕:帝姫の名付け「令月」とお披露目
  • 【状況】  生後まもなく体調を崩した帝姫は、乳母の手配難も重なり名付けが後回しにされたままお披露目の期日が迫っていた。
  • 【発端】  直接皇帝へ直訴しづらい立場となった小玉は、上位妃である李賢妃(真桂)の宮を訪れて助力を求めた。
  • 【行動】  真桂は小玉の立場を察し、馮貴妃(紅燕)との連名で文林へ名付けを促す文を手配した。文林は「嘉辰令月」の語に加え、かつて甘霖宮で文林のために命を落とした「枝」や、自身が深く尊敬する「張明」の名を忍び、「令月」の命名を決定して沈賢恭を介し小玉へ伝えた。
  • 【結果・因果関係】  文林が令月を実の娘として責任を持って育てる覚悟を確認した小玉は、仙娥の娘に対する複雑なわだかまりを和らげた。その後、皇族や妃嬪を中心とした小規模なお披露目会が執り行われ、琮夫人ら親族からの好意的な反応が得られた。
第3幕:冷宮からの恩赦と新たな宮の日常
  • 【状況】  帝姫のお披露目に伴い冷宮から恩赦が出され、甘霖宮の人手不足解消と環境再編が進められた。
  • 【発端】  自主的に冷宮へ入っていた側仕えの清喜が帰還し、冷宮門前で起きた過酷な路上出産の事実を小玉に報告した。
  • 【行動】  綵は恩赦直後に陣痛に見舞われ、冷宮門前で門越しの経験者による指示と門外の女性たちの救護により女児を出産した。しかし中も外も深く裂ける重傷を負い、板に乗せられて送還された。清喜は復卿の死の真相(万氏の関与)について「相手を満足させないため」に復讐を拒絶する冷徹な論理を明かした。一方、甘霖宮には15歳の史夏湖(小史氏)が娘の徹娘を連れて着任した。
  • 【結果・因果関係】  裴家で第一子を奪われ婚家と絶縁した夏湖の並外れた胆力により養育体制が整う。回復した綵も武官を断念し、娘(貞児)を連れて乳母として加わり、甘霖宮は令月・徹娘・貞児の三人の赤子が過ごす環境へと再編された。
第4幕:母子の再会と文林の隠された苦心
  • 【状況】  文林は度々甘霖宮を訪れ、周囲には秘匿している心身の不調と苦しい胸中を小玉に開示し始めていた。
  • 【発端】  文林はめまいの新薬と飲み合わせが悪い持病の「痔」の治療のため、塗り薬への切り替えを余儀なくされた。しかし過去に仙娥から強いられた性的トラウマから他者に身体を触れられることを強く拒絶していた。
  • 【行動】  文林の切迫した依頼を受けた小玉は、彼の事情と尊厳に配慮し、薬を塗る役目を引き受けた。さらに文林は、制度上「充媛」と呼ぶことを強いられやさぐれていた皇子・鴻に対し、人目のない私室に限り小玉を「母上」と呼ぶことおよび母子としての対話を容認した。
  • 【結果・因果関係】  小玉と鴻は私室で母子の絆を再確認して鴻の表情は明朗化し、文林と小玉の間にも互いの不完全さと傷を認め合う独自の信頼関係が再構築された。
第5幕:紅燕の自害未遂と「令月・馮王婚約案」
  • 【状況】  馮貴妃(紅燕)は母・王太妃の重体により、馮王家唯一の皇帝の身内となる焦り、皇子出産という後宮妃の圧力、小玉への思暮と文林への拒絶感の間で孤立していた。
  • 【発端】  雨の夜、紅燕は自室で服薬による自害を図り、昏睡状態に陥る。側仕えの雨雨の急報を受け、小玉と文林が対応した。
  • 【行動】  文林は政治的動揺を避けるため自害を「事故」として処置することを決めた。現場へ急行した小玉は、紅燕の絶望の背景を察し、馮王家の後ろ盾確保と紅燕を皇帝側室の義務から解放する救済を同時に果たすため、「帝姫令月と馮王の将来の婚約案」を文林に提案・決定させた。
  • 【結果・因果関係】  馮王家の将来的な地位向上と安全が保障され、目覚めた紅燕は自害の過ちを悟り、小玉の恩義に応えて生きる意欲を取り戻した。
第6幕:馮王領への訪問と王太妃の臨終
  • 【状況】  馮王家との結束および婚約の儀礼、重体である王太妃の見舞いのため、小玉は馬車で馮王領へ赴く許可を得た。
  • 【発端】  小玉は遠路馮王領へと向かい、現地で馮王および自身の甥である丙と再会した。
  • 【行動】  丙は現地で農作業に没頭し「様々な野菜を育てたい」と生き生きと語り、小玉はその個人の情熱を否定せず温かく受容した。その後、小玉は病床で瀕死の状態にある王太妃と面会した。王太妃は小玉の手を取り、かつての武官時代と比べ手が柔らかくなったことを指摘しつつ、小玉の人生を近くで見届けられたことへの満足を伝えた。
  • 【結果・因果関係】  最期の対話を終えた直後、王太妃は薨去した。小玉は亡き王太妃へ静かな哀悼を捧げ、葬儀を終えて帝都へと引き返した。
第7幕:それぞれの変容と未来への布石
  • 【状況】  帝都の甘霖宮へ戻った小玉を、母の死を受け入れ精神的に自立した紅燕が出迎えた。
  • 【発端】  紅燕は小玉への過度な依存や偶像視を脱し、一人の妃として後宮に立つ覚悟を固めていた。
  • 【行動】  紅燕は小玉に感謝を述べ、馮王の姉および義理の母として帝姫令月の養育へ積極的に関与する意思を表明した。一方、文林は小玉に対し、令月に十分な血統的・政治的威信を与えるため、数年内に小玉を皇后の位へ復位させる構想を明かした。
  • 【結果・因果関係】  過去の破天荒な自身ではなく現在のあり方を受け入れた小玉は、令月をはじめとする子供たちの未来を守るため、文林の皇后復位構想を受け入れ、新たな局面へと踏み出した。

主要な転換点

1:文林による小玉への謝罪
  • それ以前の状況:  小玉は過去の文林による後宮入りや一方的な押しつけに対し、怒りの感情を無意識下に沈殿させたまま表面上のやり取りを行っていた。
  • 出来事:  文林がこれまでの身勝手さや無神経な行いについて小玉に直接謝罪した。
  • 変化:  小玉は自身の中に溜まっていた怒りを自覚・表明し、直前の平手打ちを肩への打撃へ変更しつつも、過去の不当さを何度でも蒸し返す権利を獲得した。
  • 次への影響:  互いの不完全さや負い目を認めた上で、持病(痔)の介助や鴻の養育方針など、対等で実利的な協力関係へと移行した。
2:帝姫の「令月」命名と由来の開示
  • それ以前の状況:  生母・仙娥の事件や体調不良、乳母の手配難により、帝姫の名前が決まらないままお披露目の期日が迫っていた。
  • 出来事:  真桂らの働きかけを受け、文林が「嘉辰令月」および過去の恩人・故人(枝、張明)を偲ぶ「令月」の名を定めた。
  • 変化:  小玉は文林が令月を実の娘として責任を持って育てる覚悟を確認し、生母・仙娥に対する複雑な葛藤や毒気が和らいだ。
  • 次への影響:  令月を中心とした後宮の人間関係や養育体制(夏湖や綵の乳母就任)が急速に整い、甘霖宮の再編が進んだ。
3:紅燕の自害未遂と小玉による婚約案の提示
  • それ以前の状況:  王太妃の病状悪化、馮王家継承の圧力、意に沿わぬ皇子出産の義務に追い詰められた紅燕が精神的に孤立していた。
  • 出来事:  紅燕が薬物による自害を図り昏睡。小玉は紅燕の絶望を回避し馮王家との結束を維持するため、「帝姫令月と馮王の将来の婚約案」を文林に提案・決定させた。
  • 変化:  馮王家の将来的な政治的地歩が保障され、自害は「事故」として処理された。目覚めた紅燕は小玉の恩義に応えるため生きる意欲を取り戻した。
  • 次への影響:  小玉が王太妃の臨終に立ち会うため馮王領へ赴く契機となり、後宮全体の政治的安定と各自の政治的救済が図られた。
4:王太妃の薨去と紅燕の精神的自立
  • それ以前の状況:  紅燕は母(王太妃)の存在や、母が憧れた小玉という偶像に捉われ、自身の感情と現実の狭間で揺れ動いていた。
  • 出来事:  馮王領で王太妃が薨去し、小玉がその最期を見届けた。
  • 変化:  紅燕は母の死と向き合う中で、小玉への感情を他者の追認ではなく「自分自身の恩義」として整理し、一人の自立した妃としての落ち着きと威厳を獲得した。
  • 次への影響:  紅燕が真桂や小玉と共に令月の養育・後宮の運営に前向きに関与する体制が確立した。

小玉を中心とした人物関係の変化

文林
  • 開始時:  皇帝と廃后(充媛)。過去の不当な扱いに対する澱んだ感情を抱えたまま、形式的な対応を行っていた。
  • 主な出来事:  文林の謝罪と小玉の怒りの表明、痔の塗り薬の塗布手伝い、鴻との私的母子関係の承認、皇后復位構想の提示。
  • 巻末時:  互いの心理的傷や不完全さを客観的に共有し、帝姫令月の未来と後宮の平穏のために協力する、実利と絶対的信頼に基づいた関係。
貞(袁氏)
  • 開始時:  仙娥の元側仕えと、仙娥に陥れられた元皇后。激しい不信感と警戒感が残る状態。
  • 主な出来事:  帝姫の風呂・世話を通じた作業の共有、保身と帝姫防衛に関する小玉の示達、令月・馮王婚約案への合意。
  • 巻末時:  好意や情の交流はないものの、「帝姫令月を守り育てる」という唯一共通の目的において完璧な実利的連携を図る協力関係。
鴻(皇子)
  • 開始時:  養母の権利を失った充媛と、公の場で「母上」と呼ぶことを禁じられた皇子。制度的距離が存在していた。
  • 主な出来事:  人払いを施した私室での対話、小玉による「育てた事実は消えない」という宣言、文林による人前以外の母子関係の容認。
  • 巻末時:  私的な場において「母上」と呼び合い、心を通わせる明確な母子関係の回復(鴻の表情が明朗化)。
紅燕(馮貴妃)
  • 開始時:  過去の破天荒な小玉を偶像視し、小玉の立場転落と自身の現実の狭間で苦しむ上位妃と、距離を置かざるを得ない充媛。
  • 主な出来事:  紅燕の自害未遂、小玉による「令月・馮王婚約案」の策定、馮王領訪問による王太妃の看取り。
  • 巻末時:  偶像視の関係を脱し、令月の養育や馮王家・後宮の未来を共に支える、上位妃と下位妃としての成熟した信頼関係。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識
  • 自身を「老い」「つまんねー女」「外的な動きに無感動になりつつある」と捉えている。
  • 過去の型破りな振る舞増や妃たちにもてはやされていた状態を「好意の上にあぐらをかき、周囲に苦労をかけていた」と客観的に反省している。
  • 帝姫令月に対しては、鴻の時のような純粋な愛情ではなく、自らの恩赦と引き換えの義務・仕事に近い感覚からスタートしたと自覚している。
周囲からの評価
  • 文林:  後宮の中で最も信頼・依存できる唯一の存在。帝姫の将来的な地位保全と後宮再編のために皇后へ戻すべき唯一無二の伴侶と評価している。
  • 清喜:  過去の自分を省み柔軟に変える力があると認めつつも、その反省の仕方を「単なる後悔や愚痴に見える」と冷静に分析し、過去の自己を完全否定して更新する文林の態度の凄まじさを指摘している。
  • 李賢妃(真桂):  位が下がっても卑屈にならず、賢妃としての自身を適切に立てて礼節を守る、深く尊重すべき人物として接している。
  • 史夏湖(乳母):  過酷な境遇を経験した15歳の自身を寛大に受け入れ、実娘と共に養育にあたらせてくれる頼りになる主君として仕えている。
認識の差が現れた場面
  • 清喜との対話場面:  小玉が自身の内面的な変化や過去への後悔を語った際、清喜から「単なる愚痴や後悔に見える」と切って捨てられ、過去の価値観を完全に否定して他者に示す文林の強靭さと比較され、小玉自身の甘さを痛感させられる場面。
  • 文林からの痔の薬塗布依頼:  小玉自身は家族の世話と同等の日常的作業として引き受けようとするが、文林からは仙娥のトラウマによる身体接触嫌悪を背景に「自身の尊厳と死地を預けるに等しい絶対的信頼の対象」として切迫した覚悟をもって依頼される場面。

文林の謝罪

紅霞後宮物語第十三幕において描かれる文林の謝罪は、皇帝と皇后という公的な立場を超え、一組の夫婦として歪みを抱え続けてきた関係性を根本から見つめ直す極めて重大な転換点を形成する。自らの過ちを認めた男の告白と、長年封じ込めてきた怒りを噴出させた女の衝突、そして対等な絆を模索し始めるに至る一連の過程を以下に整理する。

謝罪の内容と文林の姿勢
・過去の強制に対する反省

自らの都合で小玉を後宮へ引き留め、過酷な重責と理不尽な環境を強いてきた過去の仕打ちに対し、取り繕うことなく非を全面的に認める。

・安易な赦免を求めない覚悟

謝意を伝えた上で勝手な許しを請う無神経さに逃げ込まず、相手がどのような感情を返してこようとも甘んじて受け止める姿勢を貫く。

小玉の反応と抑圧された感情の噴出
・噴き出した積年の鬱屈

率直な謝罪を受けた刹那、言葉ひとつで過去の苦難を清算できない現実を突きつけられ、心の奥底に抑圧していた激しい憤りと涙を溢れ出させる。

・暴力の抑制と淑女の片鱗

激昂のあまり平手で殴打しようと腕を振り上げるものの、脳裏をかすめた亡き筆頭女官の戒めによって直前で軌道を逸らし、相手の肩を強く叩く結果に落ち着く。

蒸し返しの宣言と関係性の再定義
・怒りの継続に関する通告

胸中に沈殿する感情を解消したわけではないと断言し、今後も過去の失策を折に触れて何度でも蒸し返すと宣言する。

・相手側の受容と甘受

理不尽とも取れる追及の予告に対し、当然の報いとして反論を挟まず静かに受け入れる姿勢を示す。

・自身の甘えに対する省察

糾弾と同時に、かつて周囲の厚意や奔放な立場にあぐらをかき、無自覚に他者へ負担を背負わせていた自らの至らなさをも痛感する。

まとめ

文林の真摯な謝意と小玉の怒りの表出は、過去の傷痕を帳消しにする甘い救済ではなく、互いの罪悪感や澱をそのまま抱えて歩み直す契機を形作る。都合の良い和解を拒み、痛みを共有する道を選んだことで、二人は一方的な従属関係を脱却し、真の対等な伴侶としての第一歩を踏み出すに至る。

帝姫の誕生

紅霞後宮物語第十三幕において描かれる帝姫の誕生は、凄惨な権力闘争と血の因縁を越え、後宮に新たな生の息吹と家族の温もりをもたらす重要な節目に位置づけられる。生母の自害という過酷な境遇から始まった幼子の生が、関小玉による庇護や文林の命名を経て、荒涼とした宮廷を再生へ導く象徴へと変化していく過程を以下に整理する。

生母の死と残された幼子
・命と引き換えの出産

激しい暗躍と野心の果てに、茹仙娥は文林の血を引く女子を出産する。

・直後の自死による孤立

我が子の誕生を見届けた生母は直後に自ら命を絶ち、庇護者を失った新生児だけが宮廷の渦中に取り残される。

・宿敵との因縁の残滓

かつて小玉を皇后の座から冷宮へと追いやった張本人の遺児という出自が、周囲に極めて複雑な緊張感を漂わせる。

関小玉による庇護と養育
・恩怨を超えた引き取り

政治的な利害や過去の怨恨を一切持ち込まず、孤立無援となった乳児を自らの宮へ迎えて慈育する方針を定める。

・乳幼児が集う賑わいの創出

同時期に宮廷へ戻った側近たちの幼児も加わり、居室は複数の赤子が過ごす活気あふれる空間へと一変する。

・新たな家族の形成

軍人として生きてきた女が不慣れな育児に奮闘する日々を通じ、これまでの人生で味わえなかった家庭的な安らぎを獲得していく。

皇帝による命名と精神の安定
・令月の名に託された祈念

父である文林は、誕生した娘に対し佳き月を意味する令月という銘を授ける。

・過酷な過去への救済

度重なる心労と自責の念に苛まれていた為政者にとっても、無垢な愛娘の存在は父親としての愛情を呼び覚ます契機となる。

・精神的な回復の支柱

幼い生命と触れ合う平穏なひとときが、荒廃していた胸中に癒やしをもたらし、人間らしい落ち着きを取り戻す原動力となる。

周囲への波及と宮廷関係の再生
・義兄妹としての情愛

皇太子である鴻も幼き妹を深く慈しみ、居室へ足繁く通っては無邪気な交流を重ねる。

・母子関係の深化

幼子を介した触れ合いが小玉と皇太子の間に横たわっていた距離感を融解させ、真の親子にも似た信頼を育む。

・殺伐とした秩序の刷新

対立関係にあった者たちの血を引く子どもを中心に据え、皇帝一家と古参の側近たちが緩やかに結束する温かな気風が醸成される。

まとめ

帝姫令月の誕生と成長は、謀略と排斥に明け暮れた後宮の負の連鎖を断ち切る光として機能する。過去の敵対者の娘すら包み込んで育てる関小玉の度量は、傷を抱えた文林や皇太子の心を救い、冷徹な権力構造の中に真の絆を根付かせる決定的な礎となる。

女官たちの再配置

紅霞後宮物語第十三幕において描かれる女官たちの再配置は、前幕で生じた劇的な勢力交代と混乱を収束させ、後宮の業務機能を回復させるための重要な実務的再編に位置づけられる。実力者の自死や主たる妃嬪の位階変動に伴う人手不足に対し、怨恨を排した柔軟な人事と育児体制の構築を通じて、宮廷内の秩序と安定を取り戻していく過程を以下に整理する。

再配置が必要となった背景と人手不足の深刻化
・旧勢力の崩壊に伴う人材の漂流

茹仙娥の自害によって配下にいた多数の女官が庇護者を失い、宙に浮いた状態へ陥る。

・冷宮処分に伴う組織構造の疲弊

関小玉の廃后と隔離によって従前の指揮系統が寸断され、後宮内の日常業務を滞りなく運営するための人員が著しく枯渇する。

・充媛としての復帰と規模の制限

小玉が九嬪の最下位である充媛の地位で宮廷へ戻った結果、制度上割り振られる女官の定員が皇后時代に比べて縮小を余儀なくされる。

具体的な人事配置と新たな役割分担
・旧敵側近の登用と適材適所の配分

行き場を失った茹仙娥の元側近である貞をはじめとする人員について、断罪や排斥を行わず実務能力を評価して再配置に組み入れる。

・遺児の養育を核とした職務の割り当て

生母を失った帝姫令月の身の回りの世話や養育実務を担わせることで、旧勢力の女官たちに新たな居場所と生きる目的を与える。

・苦難を共にした側近たちの復権

過酷な幽閉生活を耐え抜いた雨雨や彩愛といった忠実な側近が再び小玉の居宮へ集結し、組織の中核を固める。

・乳母機能の集約と合同養育体制の確立

幽閉解除の直後に出産を遂げた側近らが乳母役を引き受け、複数の乳幼児を共同で育てる手厚い養育網を構築する。

・総務統括との緊密な連携

実務処理に秀でる李真桂が全体の調整業務を一手に引き受け、小玉が精神的支柱を担う役割分担により、円滑な職務運用を実現する。

再配置がもたらした組織的成果と環境の変化
・派閥対立の融解と疑心暗鬼の払拭

敵対関係にあった人員を寛大に包摂した処置が後宮内の緊張を緩和させ、身分や過去の遺恨を超えた協調体制を定着させる。

・安心感の醸成と忠誠心の獲得

過ちや過去の所属を咎めず実務を重視する姿勢が、現場で働く女官層に確固たる精神的安堵と自発的な敬慕をもたらす。

・温かな生活空間の創出

血筋や利害の対立を越えて乳幼児を慈しむ環境が整い、殺伐としていた権力の中枢に家庭的な団結と安息の場を根付かせる。

まとめ

第十三幕における女官たちの再編成は、過酷な権力闘争で疲弊した後宮を再建するための現実的かつ寛容な解決策として結実する。恩讐を乗り越えて能力と人間性を活かした配置転換は、組織の機能不全を解消するにとどまらず、新しい時代へ進む宮廷の温かな礎を形作る。

紅燕の自害未遂

紅霞後宮物語第十三幕において描かれる馮紅燕の自害未遂は、名門一族の重圧と孤立によって限界を迎えた妃嬪の苦悩を浮き彫りにし、後宮の政治力学を大きく揺るがす重大な事件に位置づけられる。実家の野心と政変の狭間で追い詰められた女性の悲劇から、命の救出、そして新たな政治的打開策に至る一連の過程を以下に整理する。

自害未遂に至った背景と心身の疲弊
・名門一族からの苛烈な要求

名家である馮王家の威信と権勢を後宮内で支える重責を一身に背負わされ、過度な期待と政治的重圧を受け続ける。

・政情不安と孤立の深化

前幕における実力者の自死や宮廷内の混乱、皇帝の衰弱といった激動の煽りを受け、一族の勢力を自力で維持する限界に直面する。

・精神的な孤立と身体の衰弱

助けを求められないまま居室で病に倒れ、自身の存在意義と将来に対する深い絶望から、死を選択する心理状態へと追い込まれる。

事件の発生と宮廷への衝撃
・自室における決行と発見

追い詰められた末に命を絶とうと図るものの、間一髪のところで発見されて未遂に終わり、一命を取り留める。

・公的危機と実家の動揺

高位の妃による自害の試みは宮廷中枢に激震を走らせ、一族全体の立場を一層危うくしかねない重大な醜聞として浮上する。

関小玉による介入と政治的打開策
・恩怨を排した庇護の差し伸べ

過去の対立や派閥の違いにとらわれず、極限状態にある紅燕の境遇を深く思いやり、これ以上の犠牲を防ぐ保護の手を差し伸べる。

・帝姫との婚約による地位の保全

生まれたばかりの帝姫令月と馮王家当主との将来的な婚姻関係を提案し、皇室との確固たる結びつきを担保する策を講じる。

・重責からの解放と安定の獲得

実家の存続を制度的に保証することで、紅燕ひとりが背負わされていた過酷な政治的責務を取り除き、平穏を取り戻す道筋を敷く。

まとめ

馮紅燕の自害未遂は、権力闘争の道具として扱われてきた宮廷女性の過酷な現実を鮮明に映し出す。過去の因縁を越えて救済の手を伸ばし、現実的な着地点を見出した関小玉の決断は、一人の命を救うにとどまらず、混迷を深めていた宮廷秩序に新たな安定をもたらす礎となる。

文林の秘密

紅霞後宮物語第十三幕において明かされる皇帝文林の秘密は、絶対的な権力者としての威厳や重苦しい政争の影とは対照的な、日常的かつ人間味あふれる側面を浮き彫りにする。統治者としての仮面を脱ぎ捨て、関小玉に対してのみ露わにした身体的な苦悩や過去への悔恨は、二人の関係性に新たな親密さをもたらす転換点となる。

身体的な持病と気まずい相談
・長年隠し続けた身体の悩み

昔から密かに患っていた痔の持病を抱えており、皇帝の威信に関わる問題として周囲へ伏せ続ける。

・小玉への率直な薬の相談

気まずさを抱えつつも小玉に症状を打ち明け、患部に用いる塗り薬について真面目に相談を持ちかける。

・威厳との落差が生む親密さ

前幕で口髭を蓄えて凄みを増した為政者が、最も恥ずかしい悩みを打ち明ける姿を通じ、虚飾を排した男女の距離感が生まれる。

過去の非行に対する悔恨と心情の露呈
・過去の強制に対する反省の告白

小玉を一方的に後宮へ囲い込んで過酷な重責を強いた過去を素直に認め、長年抱えていた罪悪感を言葉にして伝える。

・心身の衰弱と安息の獲得

激務と孤独により限界を迎えていた精神状態の中、小玉や幼い娘と過ごす時間を通じて弱音を隠さない自然体の安らぎを見出す。

関係性の変容と人間味の回復
・虚飾を脱した対等な対話

皇帝と臣下という立場を取り払い、醜態や弱点を晒し合える真の伴侶へと歩み寄る。

・過酷な物語における清涼剤の役割

凄惨な権力闘争が続く作中において、人間らしい可笑しみと温もりを添える重要な要素として機能する。

まとめ

文林が抱えていた秘密の開示は、崇高な君主像を解体し、一人の生身の人間としての弱さを露わにする契機となる。恥部や罪悪感を隠さず共有した出来事は、小玉との間に横たわっていた心理的な障壁を取り払い、歪みを抱えつつも対等な信頼関係を築き直すための確固たる礎となる。

紅霞後宮物語12巻レビュー
まとめ
紅霞後宮物語14巻レビュー

登場キャラクター

皇室・皇族

関小玉(関大花)

後宮に復帰した充媛であり令月の養母。過去の葛藤を受け入れつつ育児と後宮の統制にあたる。

・所属組織、地位や役職  後宮・充媛。元皇后。

・物語内での具体的な行動や成果  亡き仙娥の娘である令月を引き取って育てる。文林との間に新たな信頼関係を築く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  充媛から賢妃へと昇進を果たす。

文林

皇帝であり小玉の夫。衰弱した心身から徐々に回復を見せる。

・所属組織、地位や役職  皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉との対話を通じて過去の傷を向き合う。令月の命名を行い父としての役割を果たす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  小玉との絆を再構築する。

鴻

文林の三男であり皇太子。義母である小玉を敬う。

・所属組織、地位や役職  皇太子。

・物語内での具体的な行動や成果  幼い義妹の令月を可愛がる。小玉との関係を修復する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  次代の君主として成長を見せる。

嬉児(鳳)

元第一皇子。宮廷を離れて農村で生活を続ける。

・所属組織、地位や役職  元第一皇子。

・物語内での具体的な行動や成果  穏やかな環境で農作業に勤しむ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  皇位継承から外れた生活を送る。

令月(帝姫)

仙娥が遺した皇女。小玉のもとで育てられる。

・所属組織、地位や役職  帝姫(皇女)。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉や鴻から愛情を受けて育つ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  文林から名を与えられる。

馮王家の王太妃

馮王家の長老。一族の勢力維持を図る。

・所属組織、地位や役職  王太妃。

・物語内での具体的な行動や成果  宮廷の情勢を見守る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  一族の影響力を保持する。

馮王

馮紅燕の父。馮王家の当主を務める。

・所属組織、地位や役職  馮王家当主。

・物語内での具体的な行動や成果  政治的な動きを警戒する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  貴族としての立場を維持する。

梨后

過去の皇后。歴史上の人物として言及される。

・所属組織、地位や役職  元皇后。

・物語内での具体的な行動や成果  過去の後宮における先例として参照される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  故人として扱われる。

慎妃(衛夢華)

後宮の妃。静かに暮らす。

・所属組織、地位や役職  慎妃。

・物語内での具体的な行動や成果  自らの立場を守りつつ過ごす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  妃としての位を保つ。

寛の皇帝

隣国・寛の君主。

・所属組織、地位や役職  寛国皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果  自国の統治にあたる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  外政における存在となる。

康の女王

隣国・康を治める女王。

・所属組織、地位や役職  康国女王。

・物語内での具体的な行動や成果  国家の維持に努める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  異国の君主として君臨する。

後宮

李真桂(李賢妃)

後宮の実務を支える高位の妃。

・所属組織、地位や役職  賢妃(元昭儀)。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉とともに後宮の管理業務を分担する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  賢妃へと昇格する。

馮紅燕(馮貴妃)

馮王家出身の貴妃。体調の悪化に苦しむ。

・所属組織、地位や役職  貴妃。

・物語内での具体的な行動や成果  自殺未遂を起こすなど精神的に追い詰められる。小玉からの庇護を受ける提案を受ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  衰弱により後宮内での動きが制限される。

徐昭儀(徐氏)

過去に陰謀を張り巡らせた妃。

・所属組織、地位や役職  昭儀。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮内で静観を余儀なくされる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  影響力を低下させる。

茹仙娥(茹昭儀)

令月の生母。故人。

・所属組織、地位や役職  元昭儀。

・物語内での具体的な行動や成果  前幕で出産後に自害を遂げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  故人として令月の背景に残る。

劉梅花

小玉の亡き筆頭女官。

・所属組織、地位や役職  元女官。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉の記憶の中で支えとなる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  故人として影響を残す。

雨雨

小玉に仕える女官。

・所属組織、地位や役職  女官。

・物語内での具体的な行動や成果  令月の世話や小玉の生活を補佐する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  小玉の側近として機能する。

貞(仙娥の元女官)

仙娥に仕えていた女官。

・所属組織、地位や役職  女官。

・物語内での具体的な行動や成果  仙娥の死後に残された業務を処理する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  立場を維持する。

麗丹

後宮の女官。

・所属組織、地位や役職  女官。

・物語内での具体的な行動や成果  日々の雑務をこなす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宮中で勤める。

細鈴

後宮の女官。

・所属組織、地位や役職  女官。

・物語内での具体的な行動や成果  指示に従い業務にあたる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  役割を果たす。

袁氏

後宮の関係者。

・所属組織、地位や役職  後宮関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮内で生活を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  立場を維持する。

史夏湖(小史氏)

宮中の関係者。

・所属組織、地位や役職  後宮関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  定められた職務を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宮中に留まる。

裴徹娘

後宮に属する女性。

・所属組織、地位や役職  後宮関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮の事務に関わる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  生活を続ける。

大史氏(鴻の乳母)

鴻を育てる乳母。

・所属組織、地位や役職  乳母。

・物語内での具体的な行動や成果  鴻の身の回りの世話を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  乳母としての任を務める。

妃嬪たち

後宮に身を置く女性たちの集団。

・所属組織、地位や役職  後宮妃嬪。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉の復帰や位の変化を見守る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  後宮の序列に従う。

女官たち

後宮で働く女性職員集団。

・所属組織、地位や役職  後宮職員。

・物語内での具体的な行動や成果  育児や宮中の管理を補佐する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  実務を担当する。

宦官たち

後宮を支える男性職員集団。

・所属組織、地位や役職  後宮職員。

・物語内での具体的な行動や成果  各所での雑務や連絡にあたる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宮内を維持する。

朝廷・文官・武官

沈賢恭(沈太監)

将軍の能力を持つ武官。

・所属組織、地位や役職  太監。将軍。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉や文林の動向を注視する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  軍事的な重鎮として機能する。

鄭綵(綵)

小玉の警護役であり友人。

・所属組織、地位や役職  武官。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉の相談に乗り支える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  信頼される側近として活動する。

琮夫人

琮尚書の妻。

・所属組織、地位や役職  尚書夫人。

・物語内での具体的な行動や成果  社交や交際に関わる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  地位を守る。

丙

小玉の甥。

・所属組織、地位や役職  小玉の親族。

・物語内での具体的な行動や成果  指示を受けて外部との連絡をとる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  連絡役を務める。

花先生

知識人。

・所属組織、地位や役職  学者。

・物語内での具体的な行動や成果  助言を与える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  知識を提供する。

廷臣たち(官僚たち)

朝廷を構成する文官集団。

・所属組織、地位や役職  朝廷官僚。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮の改編や人事を見守る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  政務を担当する。

外国・その他・民間

薄雅媛(姫妃)

異国で暮らす元充儀。

・所属組織、地位や役職  姫妃。

・物語内での具体的な行動や成果  遠方から小玉に思いを寄せる。執筆活動を続ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  異国での立場を確立する。

香児

周囲の人物。

・所属組織、地位や役職  民間人。

・物語内での具体的な行動や成果  日々の生活を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  一般人として暮らす。

清喜

小玉を助けた側近。

・所属組織、地位や役職  元側近。

・物語内での具体的な行動や成果  小玉の復帰後も動向を見守る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  小玉を陰から支える。

貞児(綵の娘)

綵の愛娘。

・所属組織、地位や役職  綵の娘。

・物語内での具体的な行動や成果  母のもとで元気に育つ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  家族の希望となる。

復卿

関係者の一人。

・所属組織、地位や役職  民間関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  個人の行動を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  生活を営む。

万氏

民間に関わる人物。

・所属組織、地位や役職  民間人。

・物語内での具体的な行動や成果  市井で過ごす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  自らの立場を守る。

李桃(元皇后)

過去の皇后。

・所属組織、地位や役職  元皇后。

・物語内での具体的な行動や成果  歴史的な出来事に関連する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の存在として扱われる。

阿嬌

民間の女性。

・所属組織、地位や役職  民間人。

・物語内での具体的な行動や成果  日常の生活を営む。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  平和に過ごす。

門番たち

施設を守る兵士集団。

・所属組織、地位や役職  警備兵。

・物語内での具体的な行動や成果  出入りを監視する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  警護を行う。

冷宮の女たち(囚人たち)

冷宮に幽閉されている女性たちの集団。

・所属組織、地位や役職  囚人。

・物語内での具体的な行動や成果  冷宮での生活を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過酷な環境に置かれる。

市井の民(大衆)

街で暮らす一般庶民集団。

・所属組織、地位や役職  一般大衆。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮の噂話を聞き流す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  社会の基盤をなす。

紅霞後宮物語12巻レビュー
まとめ
紅霞後宮物語14巻レビュー

展開まとめ

文林の謝罪と小玉の怒り

文林は小玉に、これまでの自分の行いについて謝罪した。小玉はその言葉によって、自分が長年抱えていながら気づかずにいた怒りを自覚した。文林が一方的に小玉を後宮へ入れ、その後も多くのことを当然のように押しつけてきた事実は、謝罪一つで消えるものではなかった。

涙を流した小玉は文林を平手打ちしようとしたが、直前に梅花の小言を思い出して思いとどまり、代わりに肩を強く叩いた。そして、今後も過去のことを何度でも蒸し返すつもりだと宣言した。文林もそれを受け入れた。

一方で小玉は、自分自身も後宮で周囲の好意や献身に甘えていたことを振り返った。型破りな自分を面白がる妃たちに囲まれ、梅花らに負担をかけながら、そのことを十分に意識してこなかったのである。人は生きている限り変わり続けるのだと考え、小玉は過去の自分だけを正しいものとして扱うことをやめようとしていた。

文林の体調不良

文林は以前からめまいや頭痛を起こしており、最近になって頻度が増していた。医師や側仕えはすでに事情を把握していたが、小玉には知らされていなかった。

小玉は文林の不調を心配したものの、自身はすでに皇后ではなく充媛であり、皇帝の健康管理に直接関われる立場ではなかった。それでも必要な情報が自分へ届いていない可能性を考え、後宮側の連絡について確認することにした。

文林はまた、仙娥の遺児である帝姫を守るために残った女官・貞を小玉の側に置いてよいのかと尋ねた。小玉は、貞が自分を信用していないことを承知しながらも、帝姫にとって絶対的な味方となれるのは彼女しかいないとして、そのまま置くことを選んだ。

貞との関係

小玉と貞は、互いに好意も信頼もないまま、帝姫を守るという共通の目的によって関係を築き始めた。

文林との会話中に物音を聞いた貞が部屋へ飛び込んだことについて、小玉は無礼そのものを責めるのではなく、貞自身が処罰されれば帝姫を守れる者が減ると指摘した。帝姫を守りたいのであれば、自分自身の身も守るべきだと諭したのである。

小玉は帝姫をかわいいと思い、日々世話をするうちに愛着も増していた。しかし鴻を育てた時とは事情が違った。帝姫は、小玉にとって文林を傷つけた仙娥の娘であり、文林の子であるかどうかさえ確定していなかった。

もし帝姫の存在が文林を決定的に傷つけるなら、小玉は文林を優先する可能性があると自覚していた。そのため、自分が帝姫の絶対的な味方になれるとは言い切れなかった。だからこそ、帝姫だけを見て守ろうとする貞の存在を必要としていた。

帝姫の名付け

帝姫は出生直後から体調を崩し、乳母の確保にも苦労したため、名付けが後回しになっていた。月末にはお披露目が迫っており、小玉はこのままでは間に合わないと焦った。

現在の小玉は皇帝へ直接要求を通す立場ではなかったため、上位の妃である李賢妃・真桂を訪ねた。真桂は小玉の事情を理解し、馮貴妃・紅燕との連名で文林へ名付けを促すことを引き受けた。

その際、二人は仙娥についても話した。仙娥が後宮へ毒を持ち込んだ理由について、貞は、父王の敵がいれば殺すためだったと証言していた。一方で真桂と小玉は、仙娥自身が最初から毒で死ぬことも考えていた可能性を推測した。

父王のために妃として役割を果たそうとした仙娥が、皇帝や皇后の振る舞いを見て考えを変え、自らの望みのために動き始めたのではないかと二人は考えた。しかしそれはあくまで推測にすぎず、仙娥の真意を断定することはできなかった。

令月の誕生

翌日、沈賢恭が文林から帝姫の名を預かってきた。

文林はめでたい日や月を意味する嘉辰令月から名を取り、帝姫を令月と名付けた。出生以来、穏やかではない日々を送ってきた娘に、これから先はめでたい年月を送ってほしいという願いが込められていた。

さらにその名には、かつて甘霖宮に住み、文林のために死んだ枝と、文林が深く尊敬していた張明を偲ぶ意味も重ねられていた。

小玉はその由来を聞き、文林が令月を自分の娘としてきちんと扱う覚悟を持っているのだと理解した。それだけで令月へのわだかまりが少し薄れた自分に気づき、複雑な思いを抱いた。

令月のお披露目

令月のお披露目は、妃や皇族の女性を中心とした小規模なものとなった。生母を失った嫡出ではない帝姫という立場から、鴻の時ほど盛大にはならなかった。

小玉は機嫌の悪い令月を抱き続けながら儀式に参加した。かつて養母として育てた鴻も出席していたが、皇后位と養母の立場を失った今、小玉は人前で以前のように声をかけることができなかった。

紅燕は暗い表情を見せており、その母である馮王家の王太妃も体調不良で欠席していた。小玉は王太妃の体調を気にかけた。

令月への挨拶を代表した琮夫人は、彼女へ優しい眼差しを向けた。令月が文林の子であっても茹王の子であっても、琮夫人は血縁上の身内にあたった。将来多くの敵を持つかもしれない令月に好意的な親族がいることに、小玉は安堵した。

清喜の帰還

令月のお披露目に伴う恩赦によって、冷宮に残っていた清喜も戻ってきた。小玉は久々に清喜と再会し、宮にも女官たちが戻り始めた。

清喜は、同じく恩赦された綵が直後に産気づき、冷宮の外で女児を出産したことを知らせた。母子ともに命は無事だったものの、綵はかなり壮絶な出産を経験していた。

また小玉は、清喜の恋人だった復卿の死に万氏が関係していたことについて、改めて清喜の気持ちを尋ねた。清喜は万氏への復讐を望まず、復卿は万氏のために死んだのではなく、小玉のために死んだのだと考えていた。万氏自身が清喜に殺されてもよいと覚悟していたため、殺せば彼女を満足させるだけだとも考えていた。

さらに復卿本人も復讐を喜ばないはずだと清喜は語った。小玉は、清喜が屈託なく笑う姿を久しぶりに見て、彼が長い間そうした笑い方をしていなかったことに気づいた。

女官たちの再配置

皇后だった小玉のもとにいた女官全員を、充媛となった現在の小玉が抱えることはできなかった。そのため女官たちの一部は紅燕や真桂の宮、六局、低位の妃のもとなどへ配置換えされた。

小玉は去っていく女官たちを惜しみつつ、新しい場所で元気に働いてくれればそれでよいと受け入れた。

一方、残った者たちによって甘霖宮の人手不足は解消され、貞も大勢の女官に囲まれる環境へ少しずつ馴染んだ。先に小玉と貞の間で一定の関係が築かれていたことが、結果的に良い方向へ働いていた。

新しい乳母・夏湖

令月の一時的な乳母は、家庭を離れた精神的負担から痩せてしまったため、予定を早めて交代することになった。

新たにやってきた史夏湖は十五歳で、幼く見える女性だった。しかし態度は堂々としており、婚家とはすでに縁を切られ、娘の裴徹娘と共に後宮で生きる覚悟を固めていた。

小玉は、自身も十五歳で故郷を離れて軍へ入ったことを思い出し、夏湖にできないところは周囲が支えればよいと考えた。夏湖は若さに似合わぬ胆力を持ち、文林の前でも落ち着いていた。

文林は、鴻の乳母も史氏であることから、区別のため夏湖を小史氏、鴻の乳母を大史氏と呼ぶことを決めた。小玉と清喜は、以前より周囲への細かい配慮を見せるようになった文林の変化を感じた。

文林の変化

小玉は、仙娥によって意に染まぬ性行為を強いられたことが、文林の心を大きく傷つけたのだと改めて考えた。

男女にかかわらず、本人が傷ついたのであれば、その傷を外部の基準で軽いものとして扱ってはならないと小玉は考えた。文林がその経験によって自分の過去を見直し、子供や周囲への接し方を変え始めたことも、真剣に受け止めることにした。

清喜も、過去の自分の価値観を否定し、新しい考えを他人へ示すことは容易ではないと文林を評価した。一方で、小玉の反省は後悔や愚痴に見えるところがあると遠慮なく指摘した。

その会話の中で、小玉は文林から謝罪されたことを初めて他人へ明かした。清喜は謝罪だけで許すのかと尋ねたが、小玉は許すかどうかを決めるのは自分自身であり、現時点ではまだ許していないと答えた。

綵の出産

回復した綵は小玉たちへ、自身の出産について語った。

恩赦の日、すでに陣痛が始まっていた綵は長い恩赦文を跪いて聞き、終了直後に立ち上がれなくなった。冷宮にいた女たちはすぐに産気づいたと判断し、綵を外へ運び出した。

助産経験のある女性は冷宮から出られなかったため、門越しに指示を出し、出産経験のある女たちが綵を取り上げることになった。門の外では迎えに来ていた母とも再会し、綵は母に抱きつきながら出産に臨んだ。

周囲の女たちは布や湯を用意し、冷宮の内外から協力して綵を支えた。綵は無事に女児を産んだものの身体を傷め、板に乗せられて帰宅するほどの状態となった。

文林はその話を聞き、出産が命懸けであることを改めて実感した。将来的に産婦を支援する仕組みを整えるよう小玉へ勧め、小玉も引き継ぎを前提として考えることにした。

三人の赤子

回復した綵は自身の娘を連れ、令月の乳母として甘霖宮へ入った。夏湖も娘の徹娘を連れていたため、宮では令月を含む三人の赤子が暮らすことになった。

静かだった後宮の一角は一気に賑やかになった。妃や女官、宦官たちも三人をかわいがり、小玉も赤子たちへ惜しみなく愛情を向けた。

小玉は、成長後には身分や立場によって一定の距離を取らなければならないからこそ、幼いうちははっきり愛情を示そうと考えていた。鴻への接し方を振り返り、過去から学ぼうとしていたのである。

鴻との母子関係

文林は、小玉に鴻へ再び母として接してほしいと頼んだ。

廃后となった小玉は、制度上は鴻の養母ではなくなっていた。鴻も人前では小玉を充媛と呼び、小玉も一妃として皇子へ接していた。しかし二人がかつて母子として暮らした事実まで消えたわけではなかった。

小玉は鴻へ、皇后でも養母でもなくなったが、自分が彼を母として育てた過去は二人の中に残っていると伝えた。そして久しぶりに名前で鴻と呼んだ。

鴻は小玉へ抱きつき、母上と呼んで涙を流した。文林は人前以外であればそう呼んでよいと認めた。

その後、鴻は目に見えて明るくなった。文林と鴻の間に残る距離は解消されなかったが、文林自身も鴻が自分を根本では嫌っていると受け入れており、小玉も無理に修復させようとはしなかった。

紅燕の来訪

紅燕は次第に食が細くなり、眠る時間が増えていた。幼い頃、母である王太妃や父と過ごした幸福な記憶を夢に見ることも多くなっていた。

やがて紅燕は小玉の宮を訪れた。小玉は以前より痩せた紅燕を気にしたが、立場が逆転した現在では、以前のように踏み込んで世話を焼くことができなかった。

夏湖は紅燕に明確な害意は感じなかったものの、何かを思いつめていると察し、授乳を口実に令月をその場から遠ざけようとした。

小玉も紅燕の様子を不安に思い、真桂へ報告した。しかしそれ以上のことはできず、紅燕自身が再び小玉へ助けを求めることもなかった。

紅燕の自害未遂

ある雨の夜、雨雨が甘霖宮へ駆け込み、紅燕が薬物を飲んで自害を図ったと伝えた。

紅燕の命は助かったものの、意識は戻っていなかった。妃の自害は罪となるため、文林は政治的な問題を避けるため事故として処理することを決めた。

小玉は雨雨と清喜を連れて紅燕のもとへ向かった。雨雨によれば、王太妃の体調悪化が紅燕を追いつめていた。王太妃が亡くなれば、紅燕は馮王にとって唯一の身内となるが、皇帝の嫡女である王太妃ほど強力な後ろ盾にはなれなかった。

馮王家との結びつきを強める最も確実な方法は、紅燕が文林の子、できれば皇子を産むことであった。

しかし紅燕には想う相手がいた。その相手への思慕、小玉への憧れ、母への思い、そして小玉が皇后でなくなったことで文林の妃としての役割を果たさなければならないという重圧が重なり、紅燕は追いつめられていた。

小玉は、自分が皇后だった頃であっても、紅燕が文林と関係を持つと言えば拒まなかっただろうと考えた。紅燕が理想とした小玉と、実際の小玉には大きな隔たりがあったのである。

それでも現在の小玉は、自分自身の望みを認めていた。文林が他の女性と関係を持つことは嫌であり、同時に紅燕にも幸せでいてほしかった。

令月と馮王の婚約案

紅燕の問題を解決するため、小玉は令月を馮王の許嫁にする案を文林へ提案した。

皇帝の唯一の帝姫が将来馮王へ嫁げば、王太妃が亡くなった後も皇室と馮王家の結びつきを保てた。年齢差は大きいものの、令月の将来を安定させる意味もあった。

貞も、令月が王妃になれるなら将来の立場が保障されるとして賛成していた。

文林は、小玉自身が子供の政略結婚を提案したことに驚いた。かつての小玉は、自分の好き嫌いを政治へ持ち込むことを避けていた。しかし今の小玉は、国益を損なわない範囲で、自分の望みも守ろうと考えるようになっていた。

文林の秘密

紅燕の件が一段落した後、文林は夜に小玉を訪れ、めまいの治療薬について話した。

新しく使う薬が、長年服用していた別の薬と相性が悪いことが分かったのである。その薬とは痔の薬だった。

文林は武官時代から痔を患い、皇帝となって長時間座る生活が続いたことで悪化していた。新しい治療のため飲み薬を中止し、代わりに塗り薬を使うことになった。

しかし文林は、男に尻へ触れられることも、仙娥の一件以降は女性に触れられることも強く嫌がっていた。そのため、小玉に薬を塗ってほしいと頼んだ。

小玉は文林がそこまで嫌がることを軽く扱わず、本人が嫌なものは嫌なのだと受け入れた。そして文林の頼みを引き受けた。

以後、小玉は令月を文林へ会わせるという名目で頻繁に皇帝の宮を訪れ、鴻や令月、文林と共に過ごす時間を増やした。

小玉と文林は、過去の問題が消えたわけでも、完全に互いを許したわけでもなかった。それでも互いの変化と傷を認めながら、新しい形で関係を築き直し始めていた。

紅霞後宮物語12巻レビュー
まとめ
紅霞後宮物語14巻レビュー

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