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<物語>シリーズ西尾維新

小説〈物語〉「恋物語 第恋話 ひたぎエンド 13」感想・ネタバレ

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〈物語〉恋物語 第恋話 ひたぎエンド13の表紙画像(レビュー記事導入用) <物語>シリーズ

12.鬼物語 第忍話 しのぶタイム
まとめ
14.憑物語 第体話 よつぎドール

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. 貝木泥舟
        2. 戦場ヶ原ひたぎ
        3. 千石撫子
        4. 阿良々木暦
        5. 忍野扇
        6. 羽川翼
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. 『ひたぎエンド』なのに戦場ヶ原が語らない
          2. ヤンデレが極まって神になった撫子をどうするのか
          3. 貝木は撫子を倒すのではなく「騙す」
          4. ところが詐欺師、普通に失敗する
          5. 撫子を人間に戻したのは「漫画」だった
          6. 「漫画家になりたい」ではなく「漫画を描くのが好き」
          7. 「騙されたと思ってやってみろ」と詐欺師が言う
          8. 今回の貝木、格好よすぎないか?
          9. タイトルの御方は依頼人でした
          10. そして全てが終わってから主役登場
          11. 貝木、アドバイスまでして帰る
          12. で、最後にこれかよ
          13. 多分手遅れだと思う。合掌
          14. まとめ|撫子を救ったのが詐欺師なのが最高に皮肉だった
  5. 考察・解説
    1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:沖縄での再会と命がけの依頼
        2. 第2幕:北白蛇神社への参拝と蛇神・千石撫子との接触
        3. 第3幕:情報収集と忍野扇・羽川翼との接触
        4. 第4幕:撫子の部屋への潜入と秘密の漫画原稿の発見
        5. 第5幕:北白蛇神社での最終対決と蛇神化の解除
    2. 主要な転換点
        1. 1:沖縄での戦場ヶ原ひたぎからの依頼受諾
        2. 2:千石撫子の自宅潜入と漫画原稿の発見
        3. 3:北白蛇神社でのご神体回収と撫子の人間化
    3. 貝木泥舟を中心とした人物関係の変化
        1. 戦場ヶ原ひたぎ
        2. 千石撫子
    4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
  6. 登場キャラクター
      1. 直江津高校関係者
        1. 戦場ヶ原ひたぎ
        2. 阿良々木暦
        3. 忍野扇
        4. 羽川翼
        5. 神原駿河
      2. 中学校関係者・千石家
        1. 千石撫子
        2. 撫子の父
        3. 撫子の母
        4. 中学生の男子生徒
      3. 詐欺師・専門家・怪異関係者
        1. 貝木泥舟
        2. 忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
        3. 神原遠江(臥煙遠江)
        4. 沼地蠟花
  7. 展開まとめ
    1. 第恋話 ひたぎエンド
        1. 戦場ヶ原からの依頼
        2. 撫子への調査
        3. 北白蛇神社の撫子
        4. 羽川翼との接触
        5. 忍野メメの捜索
        6. 卒業式を待たない決着
        7. 暴かれた漫画の秘密
        8. 漫画家という夢
        9. 蛇神からの帰還
        10. 阿良々木への忠告
        11. 戦場ヶ原への報告
        12. 貝木への襲撃

物語の概要

■ 作品概要

本作の主人公(語り手)は、詐欺師の貝木泥舟である。
物語開始時、貝木は沖縄に滞在していたが、かつて自らが騙した相手である戦場ヶ原ひたぎから連絡を受け、元日の沖縄で面会する。
ひたぎは、蛇神となった千石撫子によって自分と阿良々木暦が卒業式に殺害される危険に直面しており、撫子を騙して殺害を諦めさせる依頼を貝木に懇願する。
貝木は当初拒絶するものの、ひたぎの切迫した状況や自身の過去の因縁から依頼を引き受ける。町に戻った貝木は北白蛇神社に通い詰めて撫子と接触し、彼女の調査を進める。
撫子の自宅に潜入して隠された漫画原稿を発見した貝木は、彼女の真の夢と本音を破滅の危機と引き換えに突きつけ、ご神体を吐き出させることで蛇神化を解除し、ひたぎと暦の命を救う結末に至る。

■ 主要キャラクター

貝木泥舟
  • 立場・所属:フリーランスの詐欺師。
  • 主人公との関係:本作の主人公であり語り手。
  • この巻での主な役割:千石撫子を騙して蛇神化を解除し、ひたぎと暦の命を救う。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:戦場ヶ原ひたぎからの依頼を受け、北白蛇神社に通って撫子の弱点を調査する。撫子の部屋から秘密の漫画原稿を発見し、神社での対面時にそれを盾に本音を突きつけてご神体を回収する。
戦場ヶ原ひたぎ
  • 立場・所属:高校3年生。阿良々木暦の恋人。
  • 主人公との関係:かつて貝木に家族を騙された被害者。
  • この巻での主な役割:貝木に千石撫子を騙す依頼を持ちかける。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:自分と暦の生命の危機を回避するため、因縁のある貝木に頭を下げて依頼を頼み込む。
千石撫子
  • 立場・所属:北白蛇神社の蛇神(中学生)。
  • 主人公との関係:詐欺の標的。
  • この巻での主な役割:神となり、阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの殺害を予告する脅威。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:神社でお酒の供物を受け取り神として君臨していたが、貝木に自宅の漫画原稿を暴かれ、漫画家になりたいという本音を叩きつけられてご神体を吐き出し、人間に戻る。
阿良々木暦
  • 立場・所属:高校3年生。
  • 主人公との関係:ひたぎの恋人。
  • この巻での主な役割:千石撫子の殺害対象。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:北白蛇神社に通い撫子に命を狙われ続ける状況にあったが、貝木の介入によって命を救われる。
忍野扇
  • 立場・所属:直江津高校1年生。
  • 主人公との関係:貝木に接近する謎の存在。
  • この巻での主な役割:貝木に対し、千石撫子の件から手を引くよう助言・警告を行う。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:街中で貝木の前に現れ、不審な助言を与える。
羽川翼
  • 立場・所属:高校3年生。
  • 主人公との関係:情報提供者・協力者。
  • この巻での主な役割:海外から帰国し、貝木に情報を提供する。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:海外での捜索を終えて帰国し、貝木と接触して情報交換を行う。

書籍情報

<物語>恋物語 第恋話 ひたぎエンド
著者:西尾維新 氏
イラスト:VOFAN(ヴォーファン) 氏
出版社:講談社
発売日:2016年7月29日
JDCN:0628379200100011000N

〈物語〉恋物語 第恋話 ひたぎエンド13の表紙画像(レビュー記事導入用)
恋物語 第恋話 ひたぎエンド

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あらすじ・内容

阿良々木暦を守るため、神様と自分の命を取引した少女・戦場ヶ原ひたぎ。約束の“命日”が迫る冬休み、彼女が選んだのは、真っ黒で、最悪の手段だった……。-物語-はその重圧に軋み、捩れ、悲鳴を上げる――-物語-シリーズセカンドシーズンこれにて完結!アニメ第二期も1月よりオンエア開始!2012年も怪異!怪異!怪異!

恋物語

感想

読み始めて、まず言いたい。

貝木テメェ!!!

完全に騙された。

思いっきり騙された。

タイトルが『ひたぎエンド』なのだから、普通に考えれば語り手は戦場ヶ原ひたぎだと思うではないか。

これまで阿良々木暦以外の人物が語り手になることもあった。

だから、

「ついに戦場ヶ原視点か」

くらいに思って読み始めた。

ところが出てきたのは――

貝木泥舟。

詐欺師である。

しかも冒頭から、期待していた人は残念だったなと言わんばかりの語り。

……地面に叩き落とされた気分である。

やられた。完全にしてやられた。

しかし、読み終わってみると、この物語の語り手は貝木でなければ成立しなかったとも感じる。

『ひたぎエンド』というタイトルなのに、戦場ヶ原はほぼ依頼人。

そして物語の中心にいるのは、

ヤンデレが極まった結果、とうとう神様になってしまった千石撫子。

そんな撫子を救うのが、まさかの詐欺師・貝木泥舟なのである。

『ひたぎエンド』なのに戦場ヶ原が語らない

まずタイトル詐欺である。

いや、貝木が語り手なのだから、これすら狙ってやっているように思えてくる。

タイトルは『ひたぎエンド』。

戦場ヶ原の名前が入っている。

当然、戦場ヶ原中心の話だと思う。

しかし実際の彼女は、物語の最初に貝木へ仕事を依頼する立場で登場する。

その依頼とは、

神となった千石撫子を騙してほしい。

撫子は卒業式の日に、

阿良々木暦。

戦場ヶ原ひたぎ。

忍野忍。

この三人を殺すつもりでいる。

そこで戦場ヶ原は、阿良々木には内緒で貝木に助けを求める。

かつて自分の家族を騙した男に、

「恋人を助けるために、あの子を騙してほしい」

と頼むのである。

ものすごい関係だ。

普通なら絶対に頼りたくない相手だろう。

それでも戦場ヶ原は貝木を頼る。

それだけ追い詰められていることが伝わってきた。

ヤンデレが極まって神になった撫子をどうするのか

今回の問題は単純である。

撫子が神になってしまった。

しかも阿良々木への恋が完全にこじれている。

失恋した。

だったら諦めよう。

……とはならない。

殺そう。

しかも本人だけではない。

戦場ヶ原も忍もまとめて殺す。

もう恋する少女という段階を完全に通り越している。

ヤンデレが極まった結果、

神になった。

字面だけ見ると、とんでもない話である。

しかも本当に強い。

阿良々木たちが正面から何とかしようとしても無理だった。

では、どうするのか。

そこで投入されるのが、

詐欺師・貝木泥舟。

怪異には怪異。

神には神。

……ではない。

神には詐欺師。

この人選がすでに面白い。

貝木は撫子を倒すのではなく「騙す」

貝木が考えた方法は、撫子と戦うことではない。

阿良々木たちが死んだと思わせる。

殺したい相手がもういないのなら、撫子が三人を殺す理由もなくなる。

実に詐欺師らしい。

そのために貝木は撫子を調べる。

学校へ行く。

家族を調べる。

部屋にも入る。

そして神社へ何度も通う。

賽銭と酒まで持っていき、撫子と話をする。

一発勝負の大嘘ではない。

一か月もかけて信用を作ってから騙そうとする。

これまでのシリーズで貝木といえば、

「信用してはいけない男」

という印象だった。

なのに今回は、そんな男が誰よりも地道に仕事をしている。

読んでいて、

「お前、意外と真面目に働くんだな……」

と思ってしまった。

ところが詐欺師、普通に失敗する

そして満を持して貝木は嘘をつく。

阿良々木たちは死んだ。

交通事故で三人とも死んだ。

だからもう殺せない。

これで撫子を騙せる。

……はずだった。

騙せない。

撫子はあっさり嘘を見抜く。

おい。

一か月かけたぞ。

毎日神社へ通ったぞ。

賽銭も酒も持っていったぞ。

あれだけ準備して、

失敗するのかよ。

ここも面白かった。

詐欺師だから何でも思い通りに騙せるわけではない。

むしろ肝心なところで失敗する。

貝木も万能ではないのである。

そして撫子は激怒。

大量の蛇に囲まれ、貝木は殺されそうになる。

絶体絶命である。

ところが、ここから貝木が本当に撫子を救ってしまう。

撫子を人間に戻したのは「漫画」だった

貝木が調査中に見つけたもの。

それが撫子の部屋に隠されていた漫画原稿だった。

誰にも見せていない。

誰にも知られたくない。

撫子だけの秘密。

貝木はそこを突く。

阿良々木への恋が叶わなかった。

だから人生が終わる。

阿良々木を殺す。

戦場ヶ原も殺す。

忍も殺す。

それしかない。

そんな撫子に対して、

本当にお前の人生には阿良々木しかないのか。

と突きつける。

漫画がある。

高校生活だってある。

家族だっている。

これからやりたいことだって見つけられる。

一つの恋が叶わなかったからといって、そこで人生全部を終わらせる必要はない。

これが効く。

「漫画家になりたい」ではなく「漫画を描くのが好き」

ここが特に印象に残った。

貝木は単純に、

「漫画家になればいい」

と言うわけではない。

撫子自身も、漫画家になりたいなんて思っていないと否定する。

でも、

漫画を描くことは好きだったんじゃないか。

そこを突くのである。

これがすごく良かった。

夢というと、どうしても大げさに考えてしまう。

将来の職業。

人生の目標。

絶対に叶えたいもの。

しかし、最初からそんな立派なものでなくてもいい。

ただ好きだからやる。

描きたいから描く。

それでいい。

恋愛だけが人生ではない。

一つの願いが叶わなかったからといって、別の願いを持ってはいけないわけでもない。

撫子はようやく、

阿良々木以外の自分の人生

を見ることになる。

「騙されたと思ってやってみろ」と詐欺師が言う

そして貝木は撫子に、漫画を描くことを勧める。

しかも、

騙されたと思ってやってみろ。

詐欺師が言う。

これはずるい。

ここまでずっと人を騙してきた男だからこそ、この言葉が妙に似合う。

そして撫子も、

騙されてあげる。

と笑う。

最初に考えていた詐欺は失敗した。

しかし最後には、別の意味で撫子を騙すことに成功した。

殺したいほどの恋に縛られていた少女へ、

「お前の人生には、まだ別のものがあるかもしれない」

という可能性を信じさせる。

神を倒したのではない。

怪異を力で消したわけでもない。

人生をやり直してもいいと思わせた。

それによって撫子は神ではなくなり、普通の女子中学生へ戻っていく。

詐欺師らしいような。

詐欺師らしくないような。

でも貝木にしかできない決着だったと思う。

今回の貝木、格好よすぎないか?

困る。

非常に困る。

これまで散々、

「こいつは信用ならない」

と思っていた男である。

ところが今回、妙に格好いい。

戦場ヶ原の依頼を受ける。

撫子について真面目に調査する。

危険だと忠告されても仕事を続ける。

撫子に殺されそうになっても話を続ける。

最後には人生についてまで助言する。

しかも撫子を救った後、戦場ヶ原から必要以上の金を取ろうともしない。

……誰だお前。

ただし、ここで忘れてはいけない。

語り手は貝木である。

詐欺師である。

この物語そのものが、どこまで信用できるのか分からない。

自分を格好よく語っている可能性だってある。

読んでいるこちらは、貝木の話を聞くしかない。

つまり『恋物語』を読んでいる間、こちらもずっと貝木の話術の中にいる。

そう考えると、

格好いいと思った時点で負けなのでは?

という気もしてくる。

貝木テメェ。

タイトルの御方は依頼人でした

そして改めて思う。

戦場ヶ原、全然主役じゃない。

もちろん彼女の依頼から物語は始まっている。

阿良々木を救いたいという思いも重要である。

それでも実際に撫子を調べ、会話し、騙し、最後に人生の方向まで変えてしまうのは貝木である。

『ひたぎエンド』。

タイトルの御方は依頼人。

主役は詐欺師。

救われるのは撫子。

ものすごい構造である。

しかし、戦場ヶ原が自分で撫子を説得する話だったら、こうはならなかっただろう。

阿良々木でも駄目だった。

撫子にとって阿良々木は、救いであると同時に執着そのものでもある。

だから関係の薄い貝木だからこそ言える。

お前には別の人生もある。

この距離感が必要だったのだと思う。

そして全てが終わってから主役登場

撫子が人間へ戻る。

大量の蛇も消える。

神格を与えていた札も取り出される。

事件解決。

そこでようやく、

阿良々木暦登場。

遅い。

今回の主人公、全部終わってから来たぞ。

……いや、今回は主人公ではないのか。

これまで散々、怪異に関わって女の子を助けてきた阿良々木。

ところが今回は貝木がほとんど全部やってしまった。

しかも貝木は、阿良々木にまでアドバイスする。

撫子を家まで送れ。

ただし、自分が助けたように思わせるな。

そして今後は、できるだけ関わるな。

阿良々木は責任を取ろうとする。

しかし貝木からすれば、

お前がそばにいるから駄目なんだ。

という話になる。

かなり厳しい。

でも撫子については、その通りなのだろう。

戦場ヶ原にとって阿良々木との関係は前へ進む力になった。

一方で撫子にとっては、阿良々木への恋そのものが自分を縛るものになっていた。

同じ阿良々木でも、相手によってまったく意味が違う。

ここも面白かった。

貝木、アドバイスまでして帰る

事件を解決する。

撫子を人間へ戻す。

阿良々木にも忠告する。

戦場ヶ原へ仕事完了を報告する。

もう完全に今回の主人公である。

これまで敵側にいた人間が視点人物になると、ここまで印象が変わるのかと思った。

前の『花物語』でも感じたが、貝木は見る方向によって本当に印象が変わる。

詐欺師。

金に汚い男。

戦場ヶ原の過去に関わった男。

怪異について詳しい大人。

そして今回は、

神になった中学生へ人生相談するおじさん。

なんだこれ。

しかし、そのどれか一つだけが貝木ではないのだろう。

で、最後にこれかよ

全部終わった。

戦場ヶ原からも感謝された。

撫子も助かった。

阿良々木たちも助かった。

貝木も今回の仕事を引き受けてよかったと思っている。

これで終わり。

……ではない。

町を離れようとした貝木の前に、少年が現れる。

貝木が過去に広めた偽物の呪いに関係する少年。

その少年に、

襲われる。

頭を殴られる。

倒れる。

さらに攻撃される。

意識が薄れていく。

おい。

待て。

さっきまでいい話だっただろ。

撫子を救っただろ。

ちょっと格好よく終わろうとしていただろ。

それなのに最後の最後で、

過去の詐欺が殴り返してきた。

因果応報と言えばそれまでなのだが、あまりにも容赦がない。

多分手遅れだと思う。合掌

貝木は阿良々木や撫子にアドバイスまでして、妙に格好よく去っていった。

その直後にこれである。

多分手遅れだと思う。

合掌。

……いや。

待てよ。

語り手は貝木である。

そして最初から、

この男の話を信用していいのか?

という作品だった。

だったら、この最後だってそのまま信じていいのか分からない。

そもそも本人が人間なのかどうかすら怪しく感じてくる。

まあ、

本人もヒトじゃないから大丈夫?

……いや、分からん。

貝木なので何も分からん。

最後まで読者を信用させてくれない。

そこまで含めて『恋物語』なのだろう。

まとめ|撫子を救ったのが詐欺師なのが最高に皮肉だった

『恋物語 第恋話 ひたぎエンド』は、最初から最後まで騙された気分になる一冊だった。

まずタイトルに騙される。

『ひたぎエンド』だから戦場ヶ原が語ると思った。

貝木だった。

そして貝木という人物にも騙される。

どうせ金で動く詐欺師だと思っていた。

ところが撫子について調べ、何度も神社へ通い、最後には彼女の人生そのものへ助言する。

そして千石撫子にも驚かされた。

阿良々木への恋だけが彼女のすべてではなかった。

クローゼットの奥には漫画があった。

誰にも見せていなかった、本当に好きなものがあった。

失恋したから人生終了。

ではない。

別のものを好きになってもいい。

別の夢を持ってもいい。

一度こじらせても、やり直していい。

それを撫子へ教えたのが、

誰よりも信用できない詐欺師だった。

そこが面白い。

力で神を倒すのではない。

正義の主人公が少女を救うのでもない。

嘘を仕事にしてきた男が、

「騙されたと思って、もう一度生きてみろ」

と少女を人間へ戻す。

こんな決着になるとは思わなかった。

そして読み終えて改めて言いたい。

貝木テメェ!!!

タイトルから最後まで、完全にしてやられた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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恋物語 第恋話 ひたぎエンド

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12.鬼物語 第忍話 しのぶタイム
まとめ
14.憑物語 第体話 よつぎドール

考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:沖縄での再会と命がけの依頼

貝木泥舟は元日の沖縄のホテルに滞在していた。そこへかつて騙した相手である戦場ヶ原ひたぎから電話が入り、直接面会することとなる。ひたぎは、蛇神となった千石撫子によって、卒業式である3月15日に自分と阿良々木暦が殺害される予定であることを告げ、撫子を騙して殺害を撤回させる依頼を懇願する。貝木は最初この依頼を拒否するが、ひたぎの切迫した態度や過去の因縁を考慮し、最終的に依頼を引き受ける決断を下す。

第2幕:北白蛇神社への参拝と蛇神・千石撫子との接触

町に戻った貝木は、千石撫子が君臨する北白蛇神社へ連日参拝を開始する。神社で蛇神となった撫子と対面した貝木は、一人の参拝者を装ってお酒を供物として捧げながら会話を重ねる。撫子は明るく無邪気に応対するものの、暦たちの殺害に関しては一切の迷いや罪悪感を持たない頑なな神の思考を有していることが判明する。力づくでの解決が不可能であることを悟った貝木は、彼女の人間時代の過去や精神的な弱点を探る方針へと切り替える。

第3幕:情報収集と忍野扇・羽川翼との接触

貝木は撫子を攻略するための情報収集を進める。その過程で直江津高校の忍野扇から接触を受け、事件から身を引くよう警告されるが、貝木はこれを無視する。また、海外から帰国した羽川翼と合流し、千石撫子の人物像や事件の背景について詳細な情報交換を行う。これらの情報から、撫子の内面にある「可憐な被害者」としての仮面の裏に隠された抑圧と本心が解決の鍵であると突き止める。

第4幕:撫子の部屋への潜入と秘密の漫画原稿の発見

撫子の両親が不在の時間を狙い、貝木は千石家に潜入して家宅捜索と同等の調査を行う。撫子の自室を調べた貝木は、鍵のかかった押し入れの奥から大量の漫画原稿と描画道具を発見する。これにより、撫子の真の情熱と本心が「漫画家になりたい」という夢であり、それを周囲に隠し続けていたという決定的な弱点を把握する。貝木はこの原稿を最終対決の手段として確保する。

第5幕:北白蛇神社での最終対決と蛇神化の解除

約定の期日が迫る中、貝木は北白蛇神社を訪れ、撫子に対して彼女が隠していた漫画原稿の存在を突きつける。秘密を暴かれた撫子は激昂し、蛇の髪を振るって貝木を殺害しようと襲いかかる。貝木は襲撃に耐えながら、彼女の「漫画家になりたい」という本音を叫び突きつけ、神として死ぬことの虚しさを指摘する。精神的な限界を迎えた撫子は口からご神体を吐き出し、貝木がそれを回収したことで神の力を失って人間に戻る。これにより、ひたぎと暦の命は救われる。

主要な転換点

1:沖縄での戦場ヶ原ひたぎからの依頼受諾
  • それ以前の状況:貝木は事件とは無関係に沖縄で滞在していた。
  • 出来事:ひたぎから連絡を受け、千石撫子を騙して自分と暦の命を救ってほしいと頼まれた。
  • 変化:貝木が依頼を受諾し、当事者として千石撫子の事件へ介入することとなった。
  • 次への影響:貝木が町に戻り、北白蛇神社での調査を開始する動機となった。
2:千石撫子の自宅潜入と漫画原稿の発見
  • それ以前の状況:撫子は蛇神として圧倒的な力を持ち、説得や詐欺の糸口が見つかっていなかった。
  • 出来事:撫子の部屋の押し入れから、隠されていた大量の漫画原稿を発見した。
  • 変化:撫子の最大の秘密と本音(漫画家になりたいという夢)を貝木が把握した。
  • 次への影響:力ではなく心理的な揺さぶりによって撫子を攻略する具体的な手段が確立した。
3:北白蛇神社でのご神体回収と撫子の人間化
  • それ以前の状況:撫子は蛇神として神社に君臨し、3月15日に暦たちの殺害を予定していた。
  • 出来事:貝木が漫画原稿を盾に本音を突きつけ、撫子にご神体を吐き出させた。
  • 変化:撫子が神の力を失って人間に戻り、暦たちの殺害予告が無効化した。
  • 次への影響:戦場ヶ原ひたぎと阿良々木暦の命が救われ、事件が完全に解決した。

貝木泥舟を中心とした人物関係の変化

戦場ヶ原ひたぎ
  • 開始時:詐欺師と元被害者であり、敵対・憎悪の関係であった。
  • 主な出来事:沖縄でひたぎが土下座して依頼し、貝木がこれを受け入れて事件を解決した。
  • 巻末時:過去の因縁を超えて取引を成立させ、ひたぎの命を救ったことで協力関係が終了した。
千石撫子
  • 開始時:参拝者と蛇神であり、騙す側とターゲットの関係であった。
  • 主な出来事:貝木が神社に通い詰め、彼女の秘密の漫画原稿を暴いて本音を叩きつけた。
  • 巻末時:蛇神から人間に戻された元神様と、彼女の命を救い本音を引き出した詐欺師の関係となった。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識

本文中で貝木は自分自身を、金のみで動き、平気で嘘をつく不誠実で冷酷な詐欺師であると捉えている。

周囲からの評価

戦場ヶ原ひたぎをはじめとする周囲からは、信用できない危険な詐欺師とみなされつつも、目的を果たすための手腕と実行力を持つ人物として評価されている。

認識の差が現れた場面

貝木自身は「儲からない仕事やリスクのある仕事はしない」と自称しているが、実際には報酬に見合わない命がけのリスクを冒し、ひたぎや撫子のために最後まで行動を遂行した場面に認識の差が現れている。

12.鬼物語 第忍話 しのぶタイム
まとめ
14.憑物語 第体話 よつぎドール

登場キャラクター

直江津高校関係者

戦場ヶ原ひたぎ

直江津高校の三年生女子生徒である。阿良々木暦の恋人である。蛇神となった千石撫子から卒業式の日に殺害されると予告された。自身と暦の命を救うため、かつて家庭崩壊の元凶となった貝木泥舟に千石撫子を騙すよう依頼した。

・所属組織、地位や役職

直江津高校三年生。

・物語内での具体的な行動や成果

元日に沖縄へ赴き、貝木泥舟と直接対面して十万円の前金で依頼を持ちかけた。阿良々木暦に知られないよう秘密裏に連絡を取り続けた。貝木からの解決報告を受け、無事に助かったことに安堵して感謝を伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

貝木泥舟の詐欺工作により、千石撫子による殺害予告の脅威から逃れることに成功した。

阿良々木暦

直江津高校の三年生男子生徒である。春休みの事件で吸血鬼の力を得た過去を持つ。戦場ヶ原ひたぎの恋人である。千石撫子からの殺害対象とされ、北白蛇神社に通い続けていた。

・所属組織、地位や役職

直江津高校三年生。

・物語内での具体的な行動や成果

千石撫子を人間に戻そうと北白蛇神社へ足を運んでいた。貝木が千石撫子を説得して神格を解除した直後に現場へ駆けつけた。気絶した撫子を自宅まで送り届ける役目を引き受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

貝木の介入によって自身および戦場ヶ原ひたぎ、忍野忍の命を救われた。

忍野扇

直江津高校の女子生徒である。正体や目的が判然としない不気味な雰囲気を漂わせている。貝木泥舟の前に現れ、状況を観察するような態度を取る。

・所属組織、地位や役職

直江津高校生徒。

・物語内での具体的な行動や成果

町中で貝木泥舟と接触し、会話を交わした。千石撫子に関わる事件の推移を注視していた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

貝木に対して不審な言動を残し、警戒心を抱かせた。

羽川翼

直江津高校の三年生女子生徒である。学年トップの優等生であり、戦場ヶ原ひたぎや阿良々木暦の友人である。行方不明の忍野メメを捜すため海外を放浪していた。

・所属組織、地位や役職

直江津高校三年生。クラス委員長。

・物語内での具体的な行動や成果

一時帰国した際に北白蛇神社の麓で貝木泥舟を待ち伏せ、ホテルで情報交換を行った。千石撫子が心を閉ざしている本質を貝木に伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

海外探索を継続しつつ、貝木に千石撫子へのアプローチに関する客観的な知見を提供した。

神原駿河

直江津高校の二年生女子生徒である。戦場ヶ原ひたぎの後輩である。故人である神原遠江(臥煙遠江)の娘にあたる。

・所属組織、地位や役職

直江津高校二年生。弱小バスケットボール部所属。

・物語内での具体的な行動や成果

作中において直接の登場は限られるものの、貝木泥舟が依頼を引き受ける精神的な動機として強く意識された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

本人は直接関知しないまま、貝木の行動指針に決定的な影響を与えた。

中学校関係者・千石家

千石撫子

公立中学校の二年生女子生徒である。蛇の死体とお札を呑み込んだことで北白蛇神社の神となった。阿良々木暦への狂信的な好意をこじらせ、卒業式の日に彼らを皆殺しにすると宣言した。

・所属組織、地位や役職

公立中学校二年生。北白蛇神社の蛇神。

・物語内での具体的な行動や成果

賽銭と酒を持参して通い詰める貝木泥舟と交流を重ねた。クローゼットに隠していた自作の漫画原稿を貝木に暴かれ、激昂して襲撃した。将来漫画家になりたいという本当の夢を突きつけられ、説得を受け入れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

体内の蛇の札を吐き出し、神格を失って人間の女子中学生へと戻った。

撫子の父

千石撫子の父親である。娘を大切に育てているが、その内面や抱えている悩みについては十分に理解していなかった。

・所属組織、地位や役職

会社員。千石撫子の保護者。

・物語内での具体的な行動や成果

娘の同級生の父親を装って自宅を訪れた貝木泥舟を迎え入れた。貝木が娘の部屋を調べることを許可した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

娘が神となって失踪した理由を知らないまま、行方を案じ続けていた。

撫子の母

千石撫子の母親である。娘を溺愛している一方で、娘が自室のクローゼットを触らせない言いつけを頑なに守っていた。

・所属組織、地位や役職

主婦。千石撫子の保護者。

・物語内での具体的な行動や成果

貝木泥舟がでっち上げた娘の嘘のエピソードを聞き、涙を流した。貝木が部屋のクローゼットを開けようとした際に制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

娘の真の趣味や秘密に気づかないまま生活を維持していた。

中学生の男子生徒

千石撫子の中学校に通う男子生徒である。かつて千石撫子をめぐる恋愛のもつれから、貝木泥舟が広めた偽物のおまじないに手を出した。

・所属組織、地位や役職

公立中学校生徒。

・物語内での具体的な行動や成果

町を離れようとしていた貝木泥舟を駅で待ち伏せした。貝木の頭部を鈍器で殴打して重傷を負わせた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

過去の詐欺被害への恨みから、貝木泥舟を襲撃して昏倒させた。

詐欺師・専門家・怪異関係者

貝木泥舟

金のみを信条とする不吉な風貌の詐欺師である。本作の語り手を務める。悪党を自認しながらも、かつて関わった戦場ヶ原ひたぎからの依頼を引き受けた。

・所属組織、地位や役職

フリーランスの詐欺師。

・物語内での具体的な行動や成果

千石撫子の自宅へ侵入して秘密の漫画原稿を特定した。北白蛇神社へ連日参拝して千石撫子と親交を結んだ。漫画家になりたいという本心を突いて撫子の神格を解き、ご神体のお札を回収した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

戦場ヶ原ひたぎと阿良々木暦の命を救った直後、恨みを持つ中学生の男子生徒に襲撃された。

忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)

阿良々木暦の影の中に潜む吸血鬼である。力を封じられ幼女の姿となっている。千石撫子からの殺害対象に含まれていた。

・所属組織、地位や役職

怪異の王(現在は阿良々木暦に従属)。

・物語内での具体的な行動や成果

作中では阿良々木暦とともに行動し、千石撫子の脅威に対処しようとしていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

貝木泥舟の詐欺工作により、千石撫子に殺害される危機を脱した。

神原遠江(臥煙遠江)

故人である。神原駿河の実母であり、臥煙伊豆湖の姉にあたる。貝木泥舟が大学時代から特別な感情を抱き続けていた女性である。

・所属組織、地位や役職

故人。

・物語内での具体的な行動や成果

貝木泥舟の回想の中で登場した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

遺児である神原駿河の存在を通じ、貝木が危険な依頼を引き受ける決定打となった。

沼地蠟花

元バスケットボール選手の中学生である。

・所属組織、地位や役職

中学生。

・物語内での具体的な行動や成果

貝木泥舟の記憶や思考の中で言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

貝木泥舟の過去の回想として記録されている。

〈物語〉恋物語 第恋話 ひたぎエンド13の表紙画像(レビュー記事導入用)
恋物語 第恋話 ひたぎエンド

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12.鬼物語 第忍話 しのぶタイム
まとめ
14.憑物語 第体話 よつぎドール

展開まとめ

第恋話 ひたぎエンド

戦場ヶ原からの依頼

一月一日、詐欺師の貝木泥舟は戦場ヶ原ひたぎから電話を受け、騙してほしい相手がいると依頼された。相手は神となった千石撫子であり、卒業式の日に阿良々木暦、戦場ヶ原、忍野忍を殺すと宣言していた。戦場ヶ原は阿良々木に知られないよう撫子を騙し、三人を救ってほしいと頼んだ。

貝木は一度断ろうとしたが、戦場ヶ原が用意できる十万円を報酬として受け取り、調査費用は別途請求する条件で仕事を引き受けた。かつて戦場ヶ原の母親を騙し、その家庭を崩壊させる一因となった貝木にとって、彼女からの依頼は奇妙なものであった。

撫子への調査

貝木は町へ入り、戦場ヶ原と直接会って事情を聞いた。撫子は北白蛇神社で神となっており、阿良々木たちは彼女を止められずにいた。貝木は撫子を殺すのではなく、三人が死んだと思い込ませ、殺害する理由そのものを失わせる計画を立てた。

貝木は撫子の中学校や自宅周辺を調べ、彼女の友人関係や性格、家庭環境を探った。撫子の両親には、失踪した娘を捜している人物を装って接触した。両親は娘を大切にしていたものの、撫子の内面や学校生活について十分に理解していなかった。

貝木は撫子の部屋にも入り、一見すると年頃の少女らしい整った部屋を調べた。その中で、クローゼットに隠された大量の漫画原稿を発見した。撫子は漫画を描くことを誰にも知られたくない秘密として抱えていたのである。貝木は原稿を読まずに戻し、この秘密を撫子攻略の材料として記憶した。

北白蛇神社の撫子

貝木は北白蛇神社へ向かい、神となった撫子と初めて対面した。撫子は大量の白蛇を従え、かつての内気な少女とは異なり、明るく無邪気に振る舞っていた。

貝木は正体を隠さず名乗ったが、撫子は過去に自分が貝木の詐欺の間接的被害者だったことさえ忘れていた。貝木は撫子が重要な出来事を忘れる一方、自分にとって都合のよい記憶だけを抱え続ける人物だと捉えた。

貝木は毎日のように神社へ通い、賽銭と酒を差し入れながら撫子と雑談を重ねた。撫子は神としての生活を楽しみ、阿良々木たちを卒業式の日に殺すという約束も当然の予定として語った。貝木は急いで嘘を仕掛けず、撫子との関係を築きながら騙すための下地を作った。

羽川翼との接触

神社から下りた貝木の前に羽川翼が現れた。海外を巡っていた羽川は、阿良々木たちを救うため帰国していた。貝木は彼女から撫子について情報を得ようとした。

羽川は、撫子が単純な被害者ではなく、自ら問題を抱え込んで現在の状況へ至ったことを語った。貝木は羽川の情報から、自分が調べた撫子像とのずれを埋めていった。

一方、貝木の周囲では何者かによる尾行や、仕事から手を引けと警告する置き手紙も現れた。それでも貝木は調査を続行した。

忍野メメの捜索

戦場ヶ原は事態を解決できる可能性のある忍野メメを捜していたが、行方はつかめなかった。貝木も独自に情報網を使って忍野の所在を探したものの、有力な手掛かりは得られなかった。

その過程で貝木は斧乃木余接とも接触した。余接は臥煙伊豆湖の意向を伝え、貝木が撫子を騙そうとしていることについて忠告した。臥煙は貝木なら撫子を騙せる可能性が高い一方、貝木は肝心なところで失敗する人間だと見ていた。

それでも貝木は仕事を中止しなかった。戦場ヶ原をかつて脆そうな少女だと感じていた貝木は、壊れそうだった彼女が今まで壊れずに生きてきたことを意識していた。

卒業式を待たない決着

貝木は一か月にわたって撫子との交流を続けた。そして計画を予定より早め、二月一日に決着をつけることにした。

その日、貝木はいつも以上の賽銭と酒を持って北白蛇神社を訪れた。そして撫子へ、阿良々木、戦場ヶ原、忍が前夜に交通事故で死んだと告げた。殺したい相手がすでに死んだ以上、撫子が三人を殺す願いは叶えられないという筋書きであった。

しかし撫子は即座に嘘を見抜いた。貝木が一か月かけて信用を得たつもりでも、撫子は最初から彼を信用も疑いもしていなかったのである。

暴かれた漫画の秘密

騙されたと知った撫子は激怒し、大量の白蛇を操って貝木を追い詰めた。貝木は殺されかけながらも、最後の手段として撫子がクローゼットに隠していた漫画原稿の存在を口にした。

誰にも知られていないはずの秘密を指摘された撫子は激しく動揺した。彼女は漫画家になりたいわけではないと否定したが、貝木は、なりたいかどうかではなく、漫画を描くことが好きだったのではないかと問いかけた。

撫子は阿良々木への恋だけを特別なものとし、それが叶わないなら他には何もないように振る舞っていた。しかし貝木は、高校生活や漫画、家族など、彼女には阿良々木以外にも多くのものがあったと突きつけた。阿良々木への恋だけを人生の目的にする必要はなく、別のやりたいことへ進んでもよいと説いた。

撫子は、自分のことを何も知らない貝木に何がわかるのかと反発した。貝木は何も知らないからこそ、撫子自身のことは撫子にしかわからず、自分も夢も自分で大切にするしかないと答えた。

漫画家という夢

撫子は、ひとつの望みを諦めて別の望みへ進むような生き方をしてもよいのかと迷った。貝木は、人間はいくらでもやり直せると告げ、戦場ヶ原も現在の恋を初恋のように生きていると話した。

そして貝木は、これまで渡した賽銭で画材を買えばよいと勧めた。撫子は漫画家になりたいと思ったことはないと否定しつつも、漫画を描いて神様と呼ばれる人もいるのだから、そこを目指してもよいと考え始めた。

貝木が騙されたと思って挑戦してみろと告げると、撫子は騙されてあげると笑った。撫子から殺意と神への執着が失われ、大量の蛇も消えていった。

蛇神からの帰還

そこへ阿良々木が現れた。貝木は戦場ヶ原から依頼されたことを隠し、臥煙に頼まれて撫子を除霊したと嘘をついた。そして撫子の体内から神格を与えていた蛇の札を取り出した。

撫子の白蛇の髪は黒髪へ戻り、服装も中学生の制服へ変わった。神だった千石撫子は、普通の女子中学生へ戻ったのである。

貝木は蛇の札を阿良々木へ渡し、今度は使う相手を間違えるなと告げた。しかし阿良々木は、もう札を使わないと答えた。

阿良々木への忠告

貝木は意識を失った撫子を阿良々木に任せ、彼女を家まで送り届けるよう命じた。ただし、阿良々木が助けたと撫子に思わせてはならず、今後もできるだけ彼女に関わらないよう忠告した。

阿良々木は撫子がこうなった責任を取ろうとしたが、貝木は阿良々木がそばにいる限り撫子は駄目になると断じた。戦場ヶ原は阿良々木によって強くなれたが、撫子にとって阿良々木への恋は彼女を縛るものになっていたのである。

阿良々木が自分なしで撫子は幸せになれるのかと尋ねると、貝木は幸せになることだけが人生の目的ではなく、生きていればそのうち良いこともあるだろうと答えて神社を去った。

戦場ヶ原への報告

貝木は戦場ヶ原へ連絡し、依頼が終わったことを伝えた。撫子は人間へ戻り、阿良々木たちを殺す危険もなくなった。

戦場ヶ原は安堵し、貝木に礼を述べた。貝木は依頼以上の金を要求せず、仕事を終えた。かつて戦場ヶ原とその家族を騙した詐欺師が、今度は彼女から依頼を受け、嘘によって彼女たちを救う結果となった。

貝木への襲撃

町を離れようとした貝木は、駅でかつて自分が中学生たちへ広めた偽物の呪いに関係する少年と遭遇した。少年は貝木への恨みを抱えており、突然襲いかかった。

貝木は頭部を殴られて倒れ、さらに何度も攻撃を受けた。薄れていく意識の中で、貝木は自分が今回の仕事を引き受けた理由について考えた。

戦場ヶ原から金を受け取ったからなのか、かつて彼女を騙した責任からなのか、それとも別の理由だったのか、貝木自身にも明確な答えはなかった。

それでも貝木は、今回の仕事を引き受けてよかったと心から思った。

12.鬼物語 第忍話 しのぶタイム
まとめ
14.憑物語 第体話 よつぎドール

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