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宇宙兄弟小山宙哉

漫画「宇宙兄弟(46) 地球に帰還」感想・ネタバレ

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宇宙兄弟46の表紙画像(レビュー記事導入用) 宇宙兄弟
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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. 南波六太
        2. 南波日々人
        3. ゾーヤ・ラトキナ
        4. エディ・ジェイ
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
        1. 本当に帰ってきた。六太と日々人、宇宙兄弟の旅がついに完結
          1. あの手を掴めなかったら六太は……
          2. 一度では届かない。それでも、もう一度手を伸ばす
          3. 「おけーり」「た~いま」で一気に力が抜けた
          4. 六太が語る「漂流していた6時間」が重い
          5. 助かった。地球へ向かった。だからもう大丈夫……ではなかった
          6. 「ここまで生きたんだ」が重すぎる
          7. 宮古島近海へ着水。本当に「帰ってきた」
          8. 127日ぶりの地球
          9. シャロンの「あなたがあなただったから」
          10. 宮古島でのリハビリ生活が穏やかでいい
          11. そして兄弟、病院から脱走する
          12. 宇宙から帰ってきた二人が「地球」を感じる
          13. 再突入の最中、六太が見ていた夢
          14. 「俺が俺と出会った」
          15. しかも日々人も「俺も見た」
          16. 「最高な未来」はまだ確定していない
          17. 最後のミッションは「伊良部島から宮古島へ帰る」
          18. 最後まで「兄と弟」ではなく「弟 日々人と兄 六太」
          19. 「ゆっくり行こうぜ、日々人」で終わるのがいい
          20. まとめ|終わった。でも二人の人生はまだ続いていく
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:月周回軌道上での命がけの救出 
        2. 第2幕:地球帰還軌道への移行と心理的デブリーフィング 
        3. 第3幕:オリョールの先行帰還と兄弟の思索 
        4. 第4幕:弾道飛行モードでの再突入と宮古島近海への着水 
        5. 第5幕:地上の歓喜と再会、そして引き継がれる想い 
        6. 第6幕:地球の風とそれぞれの未来 
      2. 主要な転換点
      3. 南波六太を中心とした人物関係の変化
        1. 1:日々人による船外への飛び出しと六太の確保
        2. 2:ゾーヤによるアニメのブーメランをヒントにした軌道計算
        3. 3:ソユーズ再突入時の「弾道飛行モード」切り替え
        4. 4:エディから六太への「ブライアンの腕時計」の受渡
      4. 南波六太を中心とした人物関係の変化
        1. 南波日々人
        2. 伊東せりか
        3. エディ・ジェイ
      5. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
    1. 宇宙漂流と救出
        1. 漂流の発生と初動の判断
        2. 接触の成否と船内への収容
        3. 帰還を可能にした軌道計算
        4. 極限状態における精神の推移
        5. 互いを支え合う関係性の結実
        6. まとめ
    2. 地球帰還の成功
        1. 救出から地球帰還軌道への移行
        2. 再突入時の試練と弾道飛行モード
        3. 着水地点の変更と海上回収
        4. 地上での真の帰還と未来への展望
        5. まとめ
    3. 仲間たちとの絆
        1. 南波兄弟における相互救済の絆
        2. 宇宙飛行士と技術者たちの連帯
        3. 受け継がれる意志と厚い信頼
        4. 未来へと連鎖する絆
        5. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. JAXA(宇宙航空研究開発機構)
      1. 南波六太
      2. 伊東せりか
      3. 古谷やすし
      4. 吾妻滝生
      5. 北村絵菜
      6. 星加正
      7. 小町勝男
      8. 紫三世
      9. 福田直人
      10. 真壁ケンジ
      11. 新田零次
      12. 馬場
      13. JAXA理事長(茄子田シゲオ)
    2. ロスコス(ロシア連邦宇宙庁)
      1. 南波日々人
      2. ゾーヤ・ラトキナ
      3. マクシム・ウルマノフ
      4. フランツ・クラーキン
      5. イヴァン
      6. オリガ
      7. エミリーア
      8. グレゴリー・ゴーリー
      9. パブロフ長官
    3. NASA(アメリカ航空宇宙局)
      1. エディ・ジェイ
      2. フィリップ・ルイス
      3. ハガード
      4. クジョー
      5. ベティー・レイン
      6. ローリー
      7. ジェニファー
    4. 家族・協力者・一般関係者
      1. 南波長介
      2. 南波真弓
      3. 金子シャロン
      4. 五十嵐
      5. 国比
      6. 平良
    5. 作中アニメ・劇中キャラクター
      1. クリムゾンメサイヤ
      2. グレナダベガール
      3. マスターセバルコ
      4. アセットバックトセキュリティの大群
      5. Mr.ヒビット
      6. ラムッタ
      7. ヤーマンキー
  7. 展開まとめ
    1. #422 掴んだ
    2. #423 おけーり
    3. #424 吉報
    4. #425 ピースしながら出てきたみたいな
    5. #426 ヒーローインタビュー
    6. #427 なんの告白
    7. #428 弾道飛行
    8. #429 帰ってきた
    9. #430 ただいま おかえり ただいま
    10. #431 シャアアアアアッ
    11. #432 最終話 弟 日々人と兄 六太
        1. 「宇宙兄弟」おわり
  8. 同シリーズ
    1. 宇宙兄弟
    2. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

六太は月周回軌道上で救命ネットの手を離してしまい、宇宙空間を漂流する危機的状況にある。一方の日々人はネットでの救出を諦め、自ら船外へ飛び出して六太を追う。

 日々人が六太の手を直接掴み、命綱へ接続してソユーズ船内へ収容したことをきっかけに状況は大きく好転する。 

ソユーズは地球帰還軌道に入り、心理的デブリーフィング等を経て大気圏再突入を行う。

再突入の際、軌道のずれにより「弾道飛行モード」へ切り替わり6Gを超える高Gに見舞われるが、久米島・宮古島中間付近の海上に無事着水し救出される。

宮古島の病院での検査・リハビリを経て、帰還から40日後には兄弟で借りた自転車に乗り、伊良部島を走りながら「地球」を感じるまでに状況が進展する。 

■ 主要キャラクター

南波六太
  • 立場・所属:JAXA所属の宇宙飛行士。
  • 主人公との関係:主人公本人。
  • この巻での主な役割:月周回軌道上での漂流から日々人に救出され、ソユーズで地球へ帰還する。漂流中の体験や死生観を心理的デブリーフィングで語り、帰還後は療養とリハビリを行いながら未来のミッションへ思いを巡らせる。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:漂流中に絶望と希望の狭間でヘルメットを脱ぐことまで考えたが正気を保ち、日々人に救助される。帰還時の弾道飛行による高Gを耐え抜き、病院でのリハビリ中に日々人と宮古島を自転車で走る「脱走計画」を発案・実行した。
南波日々人
  • 立場・所属:ロスコス所属の宇宙飛行士。六太の弟。
  • 主人公との関係:主人公・南波六太の弟。
  • この巻での主な役割:危険を顧みず自ら船外へ飛び出して漂流する六太を追い、手をつないで命綱に接続し救出を成功させる。ソユーズの操縦および状況確認を行い、兄弟で地球へ帰還する。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:救命ネットで届かない位置へ離れた六太を自力で追いかけて確保した。帰還後は六太の体調に寄り添い、共にリハビリや島内サイクリングを行う。
ゾーヤ・ラトキナ
  • 立場・所属:ロスコス所属の技術者(フライトディレクター)。
  • 主人公との関係:六太救出作戦の支援者。
  • この巻での主な役割:日本のアニメに登場するブーメランからヒントを得て、元の場所に戻ってくる軌道を計算し、限られたソユーズの燃料で六太を救出する再接近プランを立案した。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:記者会見にて「陰の立役者」として紹介され、自身の発想の源となったアニメや感謝の循環について語った。
エディ・ジェイ
  • 立場・所属:NASA所属の宇宙飛行士(CES-66ミッションのコマンダー)。
  • 主人公との関係:六太の先輩宇宙飛行士・ミッションの仲間。
  • この巻での主な役割:CES-66ミッションの完了を見届け、無事帰還した六太と日々人を温かく出迎える。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:六太が返却しようとした弟ブライアンの遺品である腕時計を受け取らず、「もうお前のもんだ」と託し、次の宇宙でも六太自身がリューズを巻くよう言葉をかけた。

書籍情報

宇宙兄弟(46)
著者:小山宙哉 氏

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

ふたりをつなぐラッシングベルトが切れ、宇宙に漂流することになった六太。

生死の狭間で何度も絶望に襲われながら、ようやく日々人が投げた“救助ネット”を掴んだ。

しかし、6時間以上にも及ぶ遭難の中で、六太は体力も精神も限界が近づいており……。

世界中の人々がふたりの帰還を見守る中、南波兄弟は無事に地球に帰ることができるのか――?

宇宙兄弟、ついに完結。

宇宙兄弟(46)

感想

本当に帰ってきた。六太と日々人、宇宙兄弟の旅がついに完結

『宇宙兄弟』そのものを読み終えた。

まず出てきた感想は、本当にこれだった。

無事に帰ってきてくれてよかった。

長い物語だった。

六太が宇宙飛行士を目指すところから始まり、日々人の月面事故、パニック障害、六太の月面行き、そして兄弟が同じ宇宙へ。

最後には六太が宇宙空間を漂流するという、これ以上ないほど恐ろしい状況にまで追い込まれた。

だから46巻は、最終巻という寂しさよりも、

「頼むから二人とも地球へ帰ってくれ」

という気持ちの方がずっと強かった。

日々人が六太を掴んだ。

ソユーズへ戻った。

地球帰還軌道へ入った。

大気圏へ再突入した。

着水した。

それでも最後まで安心できない。

何度「もう大丈夫だ」と思わせてから危機が来るのか。

最後の最後まで『宇宙兄弟』だった。

そして本当に地球へ帰ってきた二人を見た時、

ああ、終わったんだな。

とようやく実感できた。

あの手を掴めなかったら六太は……

序盤から怖すぎる。

日々人が救命ネットを伸ばす。

六太が手を伸ばす。

そして、

掴んだ。

助かった。

そう思った。

ここで一度安心したのである。

ところが六太が反応しなくなる。

掴んでいた手が離れる。

そして再び宇宙空間へ流されていく。

読んでいて、

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

である。

いや、本当に怖い。

一度助かったと思わせてからのこれはキツい。

宇宙空間では少し離れただけでも自力では戻れない。

足場もない。

走ることもできない。

泳ぐこともできない。

ただ離れていく。

それを見た日々人は、ネットではもう間に合わないと判断する。

そして自分から船外へ飛び出した。

ここからの兄弟の手が繋がるまでが、本当に長く感じた。

一度では届かない。それでも、もう一度手を伸ばす

日々人が手を伸ばす。

六太も手を伸ばす。

しかし届かない。

もう一回。

日々人が再び近づく。

六太も日々人の名前を叫びながら腕を伸ばす。

そして今度こそ、

掴んだ。

この瞬間の安堵感は凄かった。

もしここで掴めなかったら。

考えたくもない。

しかも、この場面が「兄弟」であることがまたいい。

かつて月面事故に遭った日々人を六太たちが救った。

今度は宇宙空間を漂流する六太を日々人が救う。

どちらか一人がずっと助ける側なのではない。

兄が弟を助ける。

弟が兄を助ける。

六太自身が日々人へ「命の恩人だ」と言っても、日々人は以前自分が救われたことを覚えている。

お互いに助けられながら、ここまで来た兄弟なのだ。

この関係が最後まで変わらなかったことが嬉しかった。

「おけーり」「た~いま」で一気に力が抜けた

ソユーズへ戻っても、まだ緊張感が残っていた。

命綱へ接続する。

船内へ入る。

ハッチを閉じる。

ここまで来て、ようやく本当に大丈夫だと思えた。

そして日々人の、

「ムッちゃん、おけーり」

に対する六太の、

「た~いま」

である。

こんな大変な救出劇だったのに、最後はいつもの兄弟みたいな会話になる。

ここが好きだった。

六太はまだ生きている実感すら薄い。

それなのにトイレへ行きたいなんて話をして、兄弟で笑う。

ついさっきまで死ぬかもしれなかった。

だからこそ、こういうどうでもいい会話が妙に嬉しい。

生きているから、くだらない話ができる。

その当たり前のことが、この巻ではものすごく大切なものに感じられた。

六太が語る「漂流していた6時間」が重い

助かってから六太が漂流中のことを話す場面も印象に残った。

助かるかもしれない。

やっぱり無理かもしれない。

希望を持つ。

絶望する。

また希望を持つ。

それを何度も繰り返していた。

酸素の残量から自分に残された時間も分かってしまう。

そして酸素がなくなって苦しむくらいなら、自分でヘルメットを外すことまで考えていた。

読んでいて苦しくなる。

六太はいつものように冗談を言っている。

助かった後も笑っている。

でも、あの漂流中に経験したものは、そんな簡単に言葉へできるものではないと思う。

その中でブギーの声が聞こえた。

仲間からのメッセージが届いた。

そして最後にソユーズが見えた。

六太には、それがソユーズではなく、

日々人がピースしながら現れたように見えた。

というのがいい。

絶望の果てで見えたのが弟だった。

六太にとって日々人は、昔からずっとそういう存在だったのかもしれない。

助かった。地球へ向かった。だからもう大丈夫……ではなかった

六太を救出した。

ソユーズへ戻った。

月周回軌道を離脱した。

地球帰還軌道へ入った。

これで終わりだと思った。

あとは地球へ帰るだけ。

ところが、

まだ試練が残っていた。

大気圏再突入である。

しかも予定通りにいかない。

分離時の軌道のズレによって、ソユーズが通常とは異なる弾道飛行モードへ切り替わる。

着水予定地点もずれる。

そして船内の二人には強烈なGが襲いかかる。

5Gを超える。

さらに6.4G。

宇宙漂流から助かった直後ですよ?

もう普通に帰らせてあげてくれ。

と思った。

「ここまで生きたんだ」が重すぎる

強烈なGの中、六太がソユーズへ願う。

ここまで生き延びた。

だから自分と日々人を地球へ帰してくれ。

この場面はかなり印象に残った。

本当にその通りなのである。

日々人は月面事故を経験した。

六太も月面で危機を経験した。

さらに宇宙空間を漂流した。

兄弟で再会した。

命懸けで救出した。

そこまでやって、

最後の最後、大気圏再突入で終わるなんて絶対に嫌だ。

読んでいるこちらまでソユーズへお願いしたくなる。

しかも通信が途絶える。

予定時間になっても戻らない。

管制室も不安になる。

最後まで安心させてくれない。

そしてようやく日々人から通信が入る。

パラシュートが開いた。

着水地点は予定とは違う。

でも六太は、

同じ地球だからいい。

もう本当にそれでいい。

どこでもいいから帰ってきてくれ。

宮古島近海へ着水。本当に「帰ってきた」

そしてソユーズが海へ着水する。

南波兄弟が地球へ帰ってきた。

ここはもう、

本当によかった。

それしかない。

セリカたち。

ケンジ。

新田。

エディ。

ベティ。

シャロン。

両親。

JAXA。

NASA。

ロシアの仲間たち。

みんなが二人の帰還を待っていた。

長いシリーズを読んできた側からすると、そこにいる一人一人にも思い出がある。

だから単純な「宇宙飛行士が地球へ帰還した」という場面ではなかった。

これまで関わってきた人たち全員の物語が、一度ここへ集まってきたように感じた。

六太自身も回収された後、ようやく実感する。

帰ってきた。

帰ってきた。

その言葉が本当に重かった。

127日ぶりの地球

六太にとって127日ぶりの地球。

月面事故。

長期滞在。

宇宙漂流。

弾道飛行。

とんでもない経験をして帰ってきた。

世界中から「おかえり」が届く。

でも『宇宙兄弟』らしいと思ったのは、ここで感動一辺倒にならないところだった。

両親がやって来る。

父親がソユーズ型の醤油差しを作っている。

名前は、

「しょゆーず」

である。

お父さん……。

息子二人が歴史に残るような生還を果たしたのに、通常運転である。

こういうところが好きだ。

壮大な宇宙の話をしているのに、ちゃんと南波家の日常へ戻ってくる。

宇宙から地球へ帰ってきたことを、こういうくだらない笑いでも実感させてくれる。

シャロンの「あなたがあなただったから」

そしてシャロンとの再会。

ここもかなり良かった。

シャロンは、六太が日々人を救い、日々人が六太を救ったことを、

自分の知っている二人そのものだった

と受け止める。

確かにそうだと思う。

特別な英雄になったから助けたのではない。

この兄弟ならそうする。

昔からずっと見てきたシャロンだからこそ言える言葉なのだと思う。

六太は、自分が宇宙飛行士になれたことも、月へ行けたこともシャロンのおかげだと話す。

でもシャロンは違うと言う。

自分は応援しただけ。

六太が夢を叶えられたのは、

六太が六太自身だったから。

最初に読んだ時は、六太と同じように、

「どういうことだろう?」

と思った。

でもこの言葉が、最後の最後で繋がってくる。

宮古島でのリハビリ生活が穏やかでいい

地球へ帰ってからは宮古島でリハビリ生活が始まる。

これも良かった。

宇宙空間で死にかけていた兄弟が、

今度は病院でリハビリしている。

日々人は短期ミッションだったこともあって、かなり元気。

六太も少しずつ回復していく。

世界的な英雄になった二人には、リハビリ後も取材や表彰など、とんでもない量の予定が待っている。

それでも今は病院で過ごす。

この急激なスケールダウンが妙に心地いい。

宇宙から帰った人間も、地球へ戻れば身体を元に戻すところから始めなければならない。

それも「帰還」の一部なのだと思う。

そして兄弟、病院から脱走する

ところが六太は思う。

せっかく宮古島にいる。

なのに病院から出られない。

そこで出てくるのが、

「脱走計画」

である。

最終話直前に何をしているんだ、この兄弟。

でも、これも凄く分かる。

宇宙空間で漂流していた時、六太は地球へ帰れたら海へ行きたいと考えていた。

だったら行きたい。

宮古島にいる。

海がすぐそこにある。

兄弟二人で病院を抜け出す。

自転車を借りる。

そして島を走る。

この展開がものすごく好きだった。

宇宙から帰ってきた二人が「地球」を感じる

借りた自転車はボロボロ。

ギアがおかしい。

ブレーキも怪しい。

そんな自転車で二人は走る。

そして六太が言う。

宮古島の自然を感じたい。

もっと言えば、

「地球」を感じたい。

この言葉が凄くいい。

宇宙へ行く物語だった。

月を目指す物語だった。

ずっと空を見上げていた。

そんな六太が最後に求めたものは、

地球だった。

突然、雨が降ってくる。

普通なら雨宿りする。

でも六太たちは止まらない。

そのまま濡れて走る。

六太なんてもっと降れと叫んでいる。

宇宙服もいらない。

酸素残量も気にしなくていい。

雨に濡れても死なない。

風を感じられる。

海がある。

地面がある。

重力がある。

ただ地球にいることが、こんなにも幸せに見える。

宇宙を描き続けた作品の最終話だからこそ、この地球の描写が強く印象に残った。

再突入の最中、六太が見ていた夢

そして最終話で、ずっと気になっていたものが明らかになる。

大気圏再突入。

弾道飛行による凄まじいG。

意識が朦朧としていた六太。

その時、六太は不思議なものを見ていた。

夢なのか。

幻覚なのか。

本人にもはっきり分からない。

船内が歪み、透けていく。

そしてシャロンの言葉を思い出す。

「あなたがあなただったから」。

その先で六太が出会ったのは、

自分だった。

「俺が俺と出会った」

ここが46巻で一番考えさせられた。

六太は、

「俺が俺と出会った」

と表現する。

宇宙飛行士になった六太。

会社員だった六太。

日々人を追いかけていた六太。

何度も失敗した六太。

月へ行った六太。

宇宙空間を漂流した六太。

いろいろな六太がいる。

でも結局、その全部が六太なのだと思う。

シャロンが言った、

六太が夢を叶えられたのは、六太が六太だったから。

その意味に、六太自身がようやく触れたのではないか。

何か特別な人間へ変身したから夢を叶えたのではない。

失敗する。

格好悪い。

余計なことを考える。

怖がる。

それでも考える。

仲間を助ける。

諦めきれない。

そういう六太だったから、ここまで来た。

長い『宇宙兄弟』という物語そのものを肯定しているような場面に感じた。

しかも日々人も「俺も見た」

さらに驚いた。

六太は以前から、この夢について日々人へ聞こうとしていた。

でも聞けなかった。

そして宮古島の海を前にして、ようやく話す。

すると日々人が、

自分も見た

と言う。

ここはゾクッとした。

兄弟は同じ極限状態の中で、同じようなものを見ていた。

もちろん、それが何だったのかは明確には説明されない。

だからこそいい。

宇宙という場所で、人間の理解を超えるような体験をした兄弟。

子供の頃から同じ夢を見てきた二人。

その二人が、最後にまた同じ何かを見る。

『宇宙兄弟』というタイトルが、最後にもう一度強く響いてきた。

「最高な未来」はまだ確定していない

最終話では、六太がこれからの未来を想像する。

セリカとの宮古そば。

ケンジと新田の小惑星探査。

やっさんの新しいミッション。

シャロンの治療。

そして六太と日々人の次の宇宙。

どれも楽しそうだ。

ただし、全部が実現すると決まったわけではない。

ここが良かった。

すべてが叶うわけではない。

でも、

すべてが叶わないわけでもない。

『宇宙兄弟』は、夢を持てば絶対に叶うという話ではなかったと思う。

日々人は挫折した。

六太も何度も壁にぶつかった。

仲間たちにもそれぞれの苦労があった。

叶わなかったこともある。

予定通りに進まなかったこともある。

それでも未来を想像することはできる。

そして、その未来へ向かって動くこともできる。

この作品らしい終わり方だと感じた。

最後のミッションは「伊良部島から宮古島へ帰る」

そして最後。

兄弟で自転車に乗る。

海を見る。

海ガメを見つける。

六太は、この伊良部島での一日を月旅行みたいだと言う。

宮古島が地球。

伊良部島が月。

だったら最後は、

帰還ミッションである。

日々人が伊良部島を離脱したと言う。

宮古島帰還軌道へ入る。

壮大な宇宙飛行を経験した兄弟が、最後にやっていることは自転車で島から島へ帰るだけ。

でも、それでいい。

むしろそれがいい。

月から地球へ。

宇宙から地球へ。

そして伊良部島から宮古島へ。

スケールは全然違うのに、二人にとってはどれも冒険なのだと思う。

最後まで「兄と弟」ではなく「弟 日々人と兄 六太」

最終話のタイトルも印象に残った。

「弟 日々人と兄 六太」

宇宙飛行士・南波日々人。

宇宙飛行士・南波六太。

世界的な英雄になった二人。

でも最後に残るのは、

弟の日々人。

兄の六太。

ただの兄弟である。

子供の頃、一緒に宇宙を見上げた兄弟。

日々人が先に宇宙飛行士になった。

六太が後から追いかけた。

今度は二人で月へ行った。

互いに命を救った。

そして最後は、また二人で並んで走る。

この形に戻ってくるのが本当に良かった。

「ゆっくり行こうぜ、日々人」で終わるのがいい

そして先へ行く日々人に、六太が声をかける。

少しゆっくり行こう。

これも『宇宙兄弟』らしい。

昔から日々人は先へ行く。

六太はその背中を追いかけていた。

弟が先に宇宙飛行士になった。

弟が先に月へ行った。

六太はずっと追いかけていた。

でも最後は違う。

追いついた。

同じ場所へ立った。

もう必死に追いかけなくていい。

だから、

ゆっくり行こう。

そして二人で並んで走っていく。

ここで終わる。

派手な宇宙ミッションで終わらない。

月面でもない。

ロケットの打ち上げでもない。

宮古島で自転車を漕ぐ兄弟の姿で終わる。

これ以上ないくらい『宇宙兄弟』らしいラストだった。

まとめ|終わった。でも二人の人生はまだ続いていく

『宇宙兄弟』46巻。

本当に終わってしまった。

最終巻で一番強く感じたのは、

「生きて帰ってきてくれてよかった」

という安堵だった。

六太が救命ネットを掴む。

しかし意識を失い、手を離してしまう。

日々人が追う。

手を伸ばす。

一度は届かない。

それでももう一度手を伸ばす。

そして今度こそ兄弟の手が繋がる。

あの瞬間だけでも十分すぎるほど緊張した。

なのに地球への再突入では弾道飛行になり、今度は強烈なG。

最後まで普通に帰らせてもらえない兄弟だった。

それでも帰ってきた。

宮古島近海へ着水した。

家族と再会した。

仲間と再会した。

シャロンとも再会した。

そしてリハビリ生活の途中で病院を抜け出し、兄弟で自転車に乗って海へ行く。

宇宙から帰ってきた二人が雨に濡れながら、

「地球」を楽しんでいる。

この光景がとても印象に残った。

さらに六太が再突入中に見た、

「俺が俺と出会った」

という不思議な夢。

そして日々人も同じものを見ていたと分かる。

宇宙飛行士になったから六太になったわけではない。

六太が六太だったから、ここまで来られた。

日々人も日々人だったから、ここまで来た。

いろいろな人と出会い、助けられ、時には助けながら、二人は子供の頃に見上げていた宇宙へ本当に行ってしまった。

そして最後は地球へ帰ってくる。

未来についても、すべてが決まったわけではない。

全部の夢が叶うとは限らない。

それでも、全部が叶わないとも限らない。

だから次の未来を想像する。

この考え方は、長い『宇宙兄弟』という作品を締めくくる言葉として、とても好きだった。

物語は終わった。

でも六太と日々人は、まだ走っている。

今度は宇宙船ではない。

ボロボロの自転車である。

先へ行く日々人。

追いつく六太。

そして、

「ゆっくり行こうぜ、日々人」

と声をかける。

二人は並んで地球の上を走っていく。

宇宙を目指して始まった物語が、

地球の上を走る兄弟の姿で終わる。

読み終えて寂しい。

もっと見ていたい。

でも同時に、

ここで終わるからこそいいのだろうな

とも感じる。

本当に長い旅だった。

六太。

日々人。

おかえり。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:月周回軌道上での命がけの救出 

漂流する六太に対し救命ネットを伸ばすも、六太が手を離してしまいソユーズから遠ざかる状況から始まる。 日々人はネットでの救出は間に合わないと判断し、自ら船外へ飛び出して六太を追う。

一度目は届かなかったものの諦めずに再接近し、ついに六太の手を掴んで命綱へ接続した。 六太を抱えてソユーズへ戻りハッチを閉じたことで、漂流事故は救出成功という結末を迎える。

 この救出成功の報が地球へ届き、世界中に大きな歓喜と安堵が広がるとともに、ソユーズは月周回軌道を離脱して地球帰還軌道へと進む原因となった。

第2幕:地球帰還軌道への移行と心理的デブリーフィング 

ソユーズが地球帰還軌道に入り、地球到着まで約3日の旅路が始まった時点の状況から始まる。

 六太と日々人は先に帰還中のオリョールチームと通信を交わし、仲間たちの安堵や感謝を確認する。その後、心理的デブリーフィングとして六太が漂流中の体験を語り始める。

 六太は絶望と希望が数分おきに入れ替わったこと、酸素残量から死の恐怖を感じてヘルメットを脱ぐことまで考えたこと、そしてブギーや紫からのメッセージ、最後には日々人がピースしながら現れたように見えたことを明かす。

 地上では救出プランを立案したゾーヤとグレゴリーが会見に臨み、アニメのブーメランから想を得た軌道計算の経緯が明かされた。

第3幕:オリョールの先行帰還と兄弟の思索 

オリョールチームの大気圏再突入と着陸が迫っている状況から始まる。 オリョールは月着陸船や推進モジュールを切り離し、大気圏へ再突入して無事に着地を果たした。

ソユーズ船内の六太と日々人も仲間の無事を喜び、自らもソコールを着用してシートに身体を固定する。

 その際、日々人は六太の漂流中に仮眠を取れていたことを打ち明け、六太も漂流中に考えた死の概念(記憶や言葉が消える無の恐怖)や、別の星で何かとして目覚める想像によって恐怖が和らいだ体験を告白する。

 二人は「どうせなら面白い星に生まれたい」「宇宙にガンガン行ける人になりたい」と語り合い、大気圏再突入への備えを終えた。

第4幕:弾道飛行モードでの再突入と宮古島近海への着水 

ソユーズが大気圏再突入姿勢に入り、地上や回収船が待機している状況から始まる。

 大気圏突入後、分離時の軌道のズレにより、通常航法からバックアップの「弾道飛行モード」へと自動的に切り替わる。過酷なGが船内を襲い、加速度は6Gを超え、六太と日々人は腹に力を入れて意識を保とうとする。

 この軌道変更により着水予定地が種子島近海から沖縄の久米島・宮古島中間付近へ大きくズレ、回収班や近海の漁船が急遽移動を開始した。

 パラシュートが無事に開き、ソユーズは海面へ着水し、兄弟は無事に生きて地球へ帰還を果たした。

第5幕:地上の歓喜と再会、そして引き継がれる想い 

回収船に引き上げられた六太と日々人が、宮古島の病院へ運ばれ療養・リハビリに入る状況から始まる。 ニュースやSNSでは兄弟の生還が「奇跡」として大々的に報じられ、病室には両親や宇宙飛行士仲間が次々と訪れる。

せりかは退院時期に合わせて宮古そばを食べに行く約束を交わし、エディはブライアンの腕時計を六太へ正式に譲り渡した。

 さらにシャロンも駆けつけ、互いに無事を感謝し再会を喜んだ。 順調に回復した兄弟は、病院を抜け出して宮古島を自転車で走る「脱走計画」を密かに準備し始めた。

第6幕:地球の風とそれぞれの未来 

帰還から40日が経過し、世間の熱狂が落ち着きを見せ始めた状況から始まる。 六太と日々人は借りた自転車に乗り、途中で突然の激しい雨に降られながらも伊良部島を疾走する。 

六太は雨を受け止めながら「地球」を感じ、海ガメを見つけたことをきっかけに、漂流中の記憶や「俺が俺と出会った」体験を日々人と共有する。 

六太は仲間たちの未来(ケンジ・新田の小惑星探査、やっさんのISS修復、シャロンの新薬開発、兄弟のカルロム洞窟居住区建設)を思い描き、伊良部島からの帰路を「宮古島帰還軌道」と称して兄弟で走り抜けた。

主要な転換点

南波六太を中心とした人物関係の変化

1:日々人による船外への飛び出しと六太の確保
  • それ以前の状況:救命ネットの手を離した六太が、ソユーズからさらに遠ざかっていた。
  • 出来事:日々人がネットでは間に合わないと判断し、危険を承知で自ら船外へ飛び出し、六太の手を掴んで命綱に接続した。
  • 変化:漂流状態だった六太が確実に確保され、二人ともソユーズ船内へ無事生還した。
  • 次への影響:地上や仲間に吉報が届き、ソユーズが月周回軌道を脱出して地球帰還軌道へ入る展開へと繋がった。
2:ゾーヤによるアニメのブーメランをヒントにした軌道計算
  • それ以前の状況:ソユーズの燃料が限られており、漂流する六太を救出する航路の選定が難航していた。
  • 出来事:ゾーヤが日本のアニメ『クリムゾンメサイヤ』に登場するブーメランから「元の場所に戻ってくる」軌道を発想し、限られた燃料で救出できる接近プランを導き出した。
  • 変化:限られた燃料で六太に最接近・救出するための具体的かつ精密な飛行プランが確定した。
  • 次への影響:日々人の船外活動による六太の救出成功を技術面で裏付け、二人の無事な生還を可能にした。
3:ソユーズ再突入時の「弾道飛行モード」切り替え
  • それ以前の状況:種子島近海への着水を予定し、通常の誘導飛行で大気圏再突入を開始していた。
  • 出来事:分離時の軌道ずれにより、ソユーズが自動的にバックアップである「弾道飛行モード」へ切り替わり、6Gを超える強烈な高Gが発生した。
  • 変化:着水地点が種子島近海から沖縄の久米島・宮古島中間付近へ大きく変更された。
  • 次への影響:六太と日々人が激しい高Gに耐えて宮古島近海へ着水し、宮古島の病院での療養および島内サイクリングへと物語が展開した。
4:エディから六太への「ブライアンの腕時計」の受渡
  • それ以前の状況:六太が宇宙滞在および漂流中に、エディから借りたブライアンの腕時計を身につけていた。
  • 出来事:帰還後、六太が時計を返却しようとした際、エディが「もうお前のもんだ」と受け取りを断り、次の宇宙でも六太自身がリューズを巻くよう託した。
  • 変化:先輩宇宙飛行士から六太へ、意志と役割の象徴である腕時計が完全に譲渡された。
  • 次への影響:六太が次の宇宙ミッション(カルロム洞窟居住区建設ミッションなど)へ向けた決意を新たにする力となった。

南波六太を中心とした人物関係の変化

南波日々人
  • 開始時:漂流する兄(六太)と、それを救出しようとする弟(日々人)という極限の救助関係。
  • 主な出来事:宇宙空間での直接救助、ソユーズ船内での「おけーり」「た〜いま」の会話、漂流中の死生観や仮眠の告白、宮古島でのサイクリング。
  • 巻末時:互いの命を救い合った絆を再確認し、同じ地球で軽口を叩き合いながら、共に次の宇宙(カルロム洞窟居住区建設ミッション)を目指す対等で強固な兄弟関係となった。
伊東せりか
  • 開始時:六太の無事生還を地上から祈り見守る関係。
  • 主な出来事:帰還後に宮古島の病院を訪れたせりかが「退院できる頃にまた来ます」と伝え、美味しい宮古そばの店へ一緒に行く約束を交わした。
  • 巻末時:リハビリ終了後に実際に宮古そばを食べ、さらに次のデートの約束にも成功するなど、関係が一歩前進した状態となった。
エディ・ジェイ
  • 開始時:ミッションを率いるコマンダー(先輩)と、腕時計を借りている後輩の関係。
  • 主な出来事:帰還後、六太が返却しようとした時計を受け取らず、「もうお前のもんだ」と所有権を完全に譲渡し、次の宇宙へ連れていくよう言葉をかけた。
  • 巻末時:単なる先輩・後輩を超え、宇宙飛行士としての受け継がれた精神と役割を託された深い信頼関係となった。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識
  • 六太は漂流中、絶望と希望の間で激しく揺れ動き、一時は「死を受け入れるしかない」「ヘルメットを脱いで一瞬で終わろうか」とまで考えるなど、自分の無力さや死への恐怖を素直に認めていた。
  • 地球帰還後も、自分自身を不器用な存在と捉えつつ、ヤンじいの飛行訓練やシャロンの言葉(「あなたが“あなた”だったから」)を思い返し、「もし地球に帰れたなら何だってやれる」と自分を見つめ直していた。
周囲からの評価
  • 地上や管制室、宇宙飛行士仲間からは、宇宙漂流からの生還および激しい弾道飛行を耐え抜いた「奇跡の英雄」「持ってる兄弟」として世界中で称賛されている。
  • ハガードやクジョーは、極限状態を経験しながら深刻な精神的異常を見せず、笑って振り返ることができる六太の精神的強靭さに感心し、人類初の宇宙漂流体験者として高く評価した。
  • シャロンは、六太が日々人を救い日々人が六太を救った姿について、「自分の知っている二人の姿そのもの」であり、六太が夢を叶えられたのは「六太が六太自身だったから」と評価している。
認識の差が現れた場面
  • 心理的デブリーフィングにおいて、六太自身は漂流中にパニックになり暴れ、ヘルメットを脱いで死の苦しみから逃れようとまで考えていた情けない実態を告白しているが、周囲(マクシムやハガード、メディア等)は六太を落ち着いて生還を果たした「奇跡の英雄」として見ており、その評価のギャップに対して六太は「英雄度合いが1:9になっちゃった」「大げさだよ」と恐縮している場面に表れている。

宇宙漂流と救出

月周回軌道上における南波六太の漂流と、弟の日々人および管制チームによる救出劇は、物語の中でも最大の山場を形成する。極限の状況下で繰り広げられた救出の経緯、地上による軌道計算の裏側、漂流者の心理状態、そして兄弟の精神的な結びつきについて整理する。

漂流の発生と初動の判断

・船外への離脱

月周回軌道上において、六太は救命網を一度掴みながらも手を離してしまい、船体から急速に遠ざかる事態に陥る。

・機転を利かせた追跡

通常の救出手段では間に合わないと直感した日々人は、自ら船外へ身を投じる道を選ぶ。消火器の噴射圧力を姿勢制御に利用しながら、漂流する兄の元へ一直線に接近を試みる。

接触の成否と船内への収容

・一度の失敗と再度の接触

初回の試みでは接触に至らなかったものの、即座に軌道を立て直して再接近を果たす。互いに腕を伸ばし合い、漆黒の宇宙空間で指先を絡ませて把持に成功する。

・確実な確保と気密の回復

日々人は六太の身体を抱き寄せて命綱を接続し、声をかけながらソユーズ船内へと引き入れる。外扉を閉鎖して気圧を回復させたことで、絶望視された事態を打開する。

帰還を可能にした軌道計算

・管制チームの功績

残存燃料が逼迫する中、漂流者と再び交差する精密な飛行経路を構築したのは、現地の運用責任者たちによる迅速な解析作業となる。

・投擲具の動きに着想を得た飛行計画

責任者の一人は、親しんでいた映像作品に登場する道具の軌道から、元の位置へ回帰する物理特性を連想する。最小限の推進剤消費で目標へ到達できる経路を導き出し、作戦成功の礎を築く。

極限状態における精神の推移

・揺れ動く感情

漂流中の六太は、わずかな時間の中で希望と絶望の間を激しく往来する。酸素残量の減少に伴い自らの最期を意識した際には、苦痛からの解放を求めて装具を外す思考すら頭をかすめる。

・通信がもたらした踏みとどまり

同乗機や仲間から届いた通信記録に支えられ、最後の瞬間を地球の眺望に捧げようと身体を反転させた際、接近してきた支援船の姿を視界に捉える。

互いを支え合う関係性の結実

・交わされた合言葉

船内へ戻り装具を解いた日々人の軽い挨拶に対し、六太も気安い返答を口にする。飾らないやり取りが世界中へ安堵の感情を波及させる。

・立場を越えた相互の救済

かつて弟の危機に兄が手を差し伸べた経験に対し、今回は弟が兄を絶望から救い出す構図を描く。幼少期から育まれた関係性が極限の宇宙空間で忠実に再現され、長年の旅路を象徴する場面となる。

まとめ

この救出劇は、現場の果敢な即応力と地上の技術的な機転が噛み合ったことで奇跡的な結末を迎える。生死の境を越えて交わされた兄弟の誓いは、過酷な宇宙開発の歴史においてかけがえのない到達点を示す。

地球帰還の成功

宇宙兄弟における地球帰還の成功は、極限の宇宙漂流を乗り越えた南波六太と日々人の兄弟、そして地上と軌道上の全スタッフによる連携によって結実した重要な局面を指す。救出から大気圏再突入、海上回収、そして地上での歩みに至る一連の過程を以下に整理する。

救出から地球帰還軌道への移行

・月周回軌道からの離脱

月周回軌道上での救出劇を経て、ソユーズは月周回軌道を離脱し、約3日間の行程となる地球帰還軌道へ進入する。

・船内での対話と交信

船内では心理的デブリーフィングが行われ、六太が漂流中に抱いた恐怖や心情を吐露する。先行して地球へ向かっていたオリョールチームや地上の管制室とも通信を交わし、関係者全員で生存の安堵を分かち合う。

再突入時の試練と弾道飛行モード

・自動バックアップ機能の作動

地球の大気圏へ突入する際、分離時の軌道にわずかなズレが生じたため、機体は自動的にバックアップ機能である弾道飛行モード(バリステック・ディセント)へ移行する。

・過酷な重力加速度への耐え抜き

急角度での大気圏突入を余儀なくされ、船内は6Gを超える強烈な加速度に見舞われる。兄弟は腹筋に力を込めて耐え忍び、意識の維持に努めながらこの過酷な負荷を突破する。

着水地点の変更と海上回収

・予定海域の修正

弾道飛行モードへの切り替えを受け、着水目標は当初予定の種子島沖から、久米島と宮古島の中間付近へと大幅に変更される。

・無事の着水と引き上げ

通信再開とともに減速用パラシュートの正常な開傘が確認され、近海を航行する漁船や急行した回収班の支援を得て、機体は宮古島近海で無事に回収船へ収容される。開かれたハッチから二人が笑顔で手を振る様子が世界中へ中継される。

地上での真の帰還と未来への展望

・奇跡の生還に対する祝福

119日間に及ぶ月面滞在と漂流事故を潜り抜けた二人の帰還は、世界各地で奇跡として称賛を集める。

・療養生活と再会の実現

現地の医療施設における療養期間中、家族や仲間たちが駆けつける。エディからブライアンの形見である腕時計が六太へ手渡され、シャロンとの再会も果たされる。

・地球の実感と次なる目標

帰還から40日後、二人は施設を密かに抜け出し、自転車で伊良部島を疾走する。雨風を全身に浴びて地球の息吹を噛み締めながら、洞窟居住区の建設をはじめとする新たな宇宙開発の構想へ目を向ける。

まとめ

幾重もの危機を乗り越えて達成された地球帰還は、技術者たちの献身と搭乗者たちの強い意志が導いた必然の成果といえる。過酷な試練をくぐり抜けた南波兄弟の歩みは、次世代へ向けた新たな挑戦の幕開けを告げる。

仲間たちとの絆

宇宙兄弟第46巻において描かれる仲間たちとの絆は、単なる協力関係の枠組みを超え、互いの存在や思いが生死を分かつ力となり、次の未来へと連鎖していく重要な主題を形成する。

南波兄弟における相互救済の絆

・命がけの救出劇

救命ネットから手を離してしまった六太に対し、日々人は消火器を用いた推進で船外へ飛び出し、腕を伸ばして手をつなぎ命綱へ接続して生還を果たす。

・交わされた合言葉

帰還した船内で防護装備を外した際に交わされた気安い挨拶には、極限の危機を乗り越えた兄弟ならではの深い信頼が表れる。

・繰り返される救済の構図

かつて弟の危機に兄が手を差し伸べた過去と同様に、今回は弟が兄を絶望から救い出す展開を辿る。恩師であるシャロンも、互いを救い合う姿に二人本来の絆を見出す。

宇宙飛行士と技術者たちの連帯

・オリョールチームの安堵

先行して帰還の途にあったマクシムやフランツたちは、漂流が続いた時間を自らにとっても過酷な試練だったと振り返り、六太の生還によって自らの心も救われたと語り合う。地上での再会や交流を誓い合う姿に強固な連帯が宿る。

・感謝の循環による軌道計算

救出計画を立案した管制官のゾーヤは、過去に日本の映像作品から勇気を得た経験を胸に、恩返しの思いを込めて精密なブーメラン軌道の算出に挑む。善意と感謝が巡り巡って当事者を救う好循環が結実する。

・地上の仲間たちから届いた祈り

古谷からの容赦のない激励通信や、涙を流して無事を祈り続けた同期たちの姿勢など、世界中から寄せられた強い思いが極限状態にあった六太の意識を支える。

受け継がれる意志と厚い信頼

・受け継がれた腕時計

生還後に六太が返却を申し出た先輩飛行士の形見の時計に対し、所持者であったエディは返還を断り、次の宇宙開発の場でも時を刻み続けるよう求めて託す。先達の情熱と覚悟が正式に後進へ継承される。

・恩師との再会

療養先を訪れたシャロンは二人の無事を心から喜び、再会を果たした瞬間を生涯最大の幸運と称して抱擁を交わす。

未来へと連鎖する絆

・それぞれの道を歩む仲間たち

退院後の個人的な交流の約束をはじめ、同期たちによる人類初の小惑星探査計画、技術者としての軌道上施設修復任務、難病治療に向けた新薬開発など、関わった人々が次なる挑戦へと歩みを進める。さらに兄弟自身も新たな居住区建設という未知の計画へ向けて歩調を合わせる。

まとめ

極限の漂流事故と地球帰還を通じて示された人々の繋がりは、危機の克服にとどまらず、個々の志を未来の挑戦へと押し上げる原動力となる。互いを信じて託された意志の数々は、宇宙開発の新たな地平を切り拓く確固たる道標を築き上げる。

登場キャラクター

JAXA(宇宙航空研究開発機構)

南波六太

JAXA所属の宇宙飛行士。弟の日々人に救助されて地球へ帰還する。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。CES-66ミッションクルー。

・物語内での具体的な行動や成果  月周回軌道上での漂流から日々人に救助された。ソユーズに乗船して大気圏再突入のGを耐え抜く。宮古島でリハビリを行い、日々人と自転車で島内を走った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  人類初の宇宙漂流体験者として記録される。エディからブライアンの腕時計を託された。将来のカルロム洞窟居住区建設ミッションを見据える。

伊東せりか

JAXA所属の宇宙飛行士。六太の生還を地上から見守る。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  JAXA管制室で六太の救助成功と地球着水を確認した。宮古島の病院を訪問する。六太へ宮古そばの店を案内する約束を交わす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  担当した実験成果がシャロンの新薬開発へつながる。

古谷やすし

JAXA所属の宇宙飛行士。六太の同僚。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  漂流中の六太へ電子メールを送った。宮古島近海に着水した六太を出迎える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  地球帰還日が自身の誕生日と重なる。民間企業宇宙飛行士としてISS修復ミッションのクルーに任命された。

吾妻滝生

JAXA所属の宇宙飛行士。オリョールに搭乗して先行帰還する。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。オリョール乗組員。

・物語内での具体的な行動や成果  大気圏再突入を経て無事に地球へ帰還した。六太と日々人の帰還を待ち望むメッセージを伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  月面レスキューミッションを終えて地球へ生還する。

北村絵菜

JAXA所属の宇宙飛行士。広報や状況発表を担当する。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  JAXAの会見場で六太の救助成功を発表した。ゾーヤの記者会見後にアニメのフレーズを共に歌う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  六太の無事生還を地上から支える。

星加正

JAXAの職員。救助の経過を現場で見守る。

・所属組織、地位や役職  JAXA職員。

・物語内での具体的な行動や成果  記者会見場で六太の救助成功を発表した。病室で南波兄弟にアニメ化や勲章授与の件を伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  帰還後の公式手続きや広報活動を調整する。

小町勝男

JAXAの職員。南波兄弟の両親に同行する。

・所属組織、地位や役職  JAXA職員。

・物語内での具体的な行動や成果  南波兄弟の両親とともに管制室近くで吉報を待つ。帰還後に表彰や勲章授与の予定を二人に伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  両親のサポートを行う。

紫三世

JAXA所属の宇宙飛行士。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  漂流中の六太に向けて無線メッセージを送る。そのメッセージが六太の精神的支えとなった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  漂流中の六太と交信を成功させる。

福田直人

JAXA関係者。

・所属組織、地位や役職  JAXA関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  漂流中の六太へ応援メールを送信した。回収船の現場で六太を出迎える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  地上から六太の安否を見守り続ける。

真壁ケンジ

JAXA所属の宇宙飛行士。六太の同期。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  六太へ無事を喜ぶメールを送った。宮古島の病室を訪れる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  新田とともに「スウェッツ」として人類初の小惑星探査へ向かうことが決定した。

新田零次

JAXA所属の宇宙飛行士。六太の同期。

・所属組織、地位や役職  JAXA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  漂流中の六太を心配しメールを送る。着水時には歓声を上げて祝福した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ケンジとともに小惑星探査ミッションを担当する。

馬場

JAXA関係者。

・所属組織、地位や役職  JAXA関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  病室の六太へ両親の到着を伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  面会手続きを案内する。

JAXA理事長(茄子田シゲオ)

JAXAの理事長。最高責任者を務める。

・所属組織、地位や役職  JAXA理事長。

・物語内での具体的な行動や成果  病室を訪れる。六太と日々人に勲章授与や表彰の予定を伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  帰還を果たした南波兄弟を称える。

ロスコス(ロシア連邦宇宙庁)

南波日々人

ロスコス所属の宇宙飛行士。六太の弟。

・所属組織、地位や役職  ロスコス所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  船外へ飛び出して漂流する六太を救出した。ソユーズを操作して地球へ帰還する。宮古島で六太と自転車移動を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  兄の救出に成功し世界的に称賛される。

ゾーヤ・ラトキナ

ロスコス所属のフライトディレクター。

・所属組織、地位や役職  ロスコス所属フライトディレクター。

・物語内での具体的な行動や成果  アニメのブーメランから着想を得て軌道を計算した。ソユーズの帰還軌道噴射を担当する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記者会見で陰の立役者として紹介される。

マクシム・ウルマノフ

ロスコス所属の宇宙飛行士。オリョール乗組員。

・所属組織、地位や役職  ロスコス所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  オリョールで先行帰還した。帰還後に日本へ訪れて陶芸体験をすると誓う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  無事に大気圏再突入を終えて地球へ帰還した。

フランツ・クラーキン

ロスコス所属の宇宙飛行士。

・所属組織、地位や役職  ロスコス所属宇宙飛行士。オリョール乗組員。

・物語内での具体的な行動や成果  オリョール船内で六太の生還を喜ぶ。無事に地球へ着地した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  リハビリ後に日本訪問を予定する。

イヴァン

ロスコス関係者。

・所属組織、地位や役職  ロスコス関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  六太の救出成功を聞き歓声を上げた。日々人の行動を称える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  管制室で救出を見守る。

オリガ

イヴァンの娘。

・所属組織、地位や役職  ロシア側関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  日々人の救出成功を知り安堵する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  モニタ越しに無事を喜ぶ。

エミリーア

ロシア側の関係者。

・所属組織、地位や役職  ロシア側関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  六太救出の吉報を聞いて喜んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  現地で救出劇を見届ける。

グレゴリー・ゴーリー

ロスコス所属の技術者。

・所属組織、地位や役職  ロスコス所属技術者。

・物語内での具体的な行動や成果  ゾーヤとともに六太救出の軌道計算を行った。記者会見でゾーヤの意図を補足説明する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  陰の立役者として記者会見に出席した。

パブロフ長官

ロスコスの長官。

・所属組織、地位や役職  ロスコス長官。

・物語内での具体的な行動や成果  ゾーヤとグレゴリーの功績を認める。オリョールの分離許可を出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ロシア側の運用全体を指揮する。

NASA(アメリカ航空宇宙局)

エディ・ジェイ

NASA所属の宇宙飛行士。CES-66コマンダー。

・所属組織、地位や役職  NASA所属宇宙飛行士。コマンダー。

・物語内での具体的な行動や成果  六太に貸していたブライアンの腕時計を託す。受け取りを辞退して譲渡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  CES-66ミッションの完了を見届ける。

フィリップ・ルイス

NASA所属の宇宙飛行士。オリョール乗組員。

・所属組織、地位や役職  NASA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  オリョールで地球へ帰還した。六太と挨拶を交わす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  無事に地球へ帰還した。

ハガード

NASAの運用責任者。

・所属組織、地位や役職  NASAミッション責任者。

・物語内での具体的な行動や成果  六太の精神的強靭さに感心した。事故を今後の教訓にすると決意する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  CES-66ミッションを完了させた。

クジョー

NASAの医療担当。

・所属組織、地位や役職  NASA医療担当(サージャン)。

・物語内での具体的な行動や成果  六太のメディカルチェックを行った。心理的デブリーフィングを担当する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  六太の健康状態を管理する。

ベティー・レイン

NASA所属の宇宙飛行士。

・所属組織、地位や役職  NASA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  帰還した南波兄弟へ歓声を送った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  地上から仲間を出迎える。

ローリー

NASA所属の宇宙飛行士。ISS滞在者。

・所属組織、地位や役職  NASA所属宇宙飛行士。

・物語内での具体的な行動や成果  Tシャツを着てISSから祝福メッセージを送った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宇宙ステーションから生還を祝う。

ジェニファー

NASAの広報担当および宇宙飛行士。

・所属組織、地位や役職  NASA関係者。配信者。

・物語内での具体的な行動や成果  自身の動画配信で南波兄弟の生還を熱弁した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  南波兄弟との友交を配信でアピールする。

家族・協力者・一般関係者

南波長介

六太と日々人の父親。

・所属組織、地位や役職  南波兄弟の父。南波工房。

・物語内での具体的な行動や成果  宮古島の病院を訪れた。自作のグッズを披露する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ネットで自身の作品が話題となった。

南波真弓

六太と日々人の母親。

・所属組織、地位や役職  南波兄弟の母。

・物語内での具体的な行動や成果  宮古島の病院へ駆けつけた。自作箸置きの売れ行きを語る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  兄弟の帰還を温かく迎えた。

金子シャロン

天文学者。六太と日々人の恩師。

・所属組織、地位や役職  天文学者。

・物語内での具体的な行動や成果  宮古島の病院を訪れた。生還した二人へ感謝の言葉を伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  新薬開発が進み筋力が回復し始めた。

五十嵐

古谷やすしの知人。

・所属組織、地位や役職  一般関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  やっさんの誕生日に帰還した南波兄弟の話題で盛り上がった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  やっさんを祝福する。

国比

宮古島の病院の入院患者。元教師。

・所属組織、地位や役職  入院患者(元教師)。

・物語内での具体的な行動や成果  病院で六太と交流した。教え子のレンタル店を紹介して自転車手配に協力する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  六太と秘密を共有した。

平良

宮古島の病院の入院患者。

・所属組織、地位や役職  入院患者。

・物語内での具体的な行動や成果  国比とともに六太たちの脱走計画を口外しないと約束した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  六太のリハビリを見守る。

作中アニメ・劇中キャラクター

クリムゾンメサイヤ

アニメ『女宇宙盗賊クリムゾンメサイヤ』の主人公。

・所属組織、地位や役職  劇中アニメの主人公。

・物語内での具体的な行動や成果  ブーメラン攻撃で敵を全滅させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ゾーヤが六太救出の軌道を発想するヒントとなる。

グレナダベガール

アニメ『女宇宙盗賊クリムゾンメサイヤ』の登場人物。

・所属組織、地位や役職  劇中アニメの登場人物。

・物語内での具体的な行動や成果  クリムゾンメサイヤと会話を交わした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  劇中世界で描かれる。

マスターセバルコ

アニメ『女宇宙盗賊クリムゾンメサイヤ』の師匠役。

・所属組織、地位や役職  劇中アニメの登場人物。

・物語内での具体的な行動や成果  心で感じることの重要性を教える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  劇中アニメ内でメッセージを伝える。

アセットバックトセキュリティの大群

アニメ『女宇宙盗賊クリムゾンメサイヤ』に登場する敵軍団。

・所属組織、地位や役職  劇中アニメの敵キャラクター。

・物語内での具体的な行動や成果  集団で進軍するが攻撃により倒された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  劇中の戦闘シーンに登場する。

Mr.ヒビット

日々人をモデルにしたアニメの主人公。

・所属組織、地位や役職  作中アニメのキャラクター。

・物語内での具体的な行動や成果  月にとり残されたキャラクターの救助に向かった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  世界的な人気を博す。

ラムッタ

六太をモデルにしたアニメキャラクター。

・所属組織、地位や役職  作中アニメ『Mr.ヒビット&ラムッタ』のキャラクター。

・物語内での具体的な行動や成果  ヒツジ姿のキャラクターとして登場する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  六太のアニメ化企画として進行する。

ヤーマンキー

アニメ『Mr.ヒビット&ラムッタ』のキャラクター。

・所属組織、地位や役職  作中アニメのキャラクター。

・物語内での具体的な行動や成果  月にとり残される役柄として設定された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  救助対象として描かれる。

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展開まとめ

#422 掴んだ

救命ネットを掴んだ六太

月周回軌道上を漂流する六太に対し、日々人は救命ネットを伸ばした。六太は必死に手を伸ばしてネットを掴み、日々人も成功を確信した。しかし六太は直後に反応を失い、掴んでいた手を離してしまった。その身体はソユーズからさらに遠ざかっていった。

六太を追う日々人

ネットではもう間に合わないと判断した日々人は、自ら船外へ飛び出して六太を追った。日々人は何度も兄へ呼びかけ、こちらを見るよう促した。意識を取り戻した六太も日々人を確認して手を伸ばした。

つながった兄弟の手

一度目は届かなかった。それでも日々人は諦めず、もう一度接近した。六太も日々人の名を叫びながら腕を伸ばし、ついに二人の手がつながった。日々人は六太をしっかり抱え込み、漂流していた兄を確保した。

#423 おけーり

六太の救出成功

日々人は六太を掴むと、すぐに命綱へ接続した。「もう大丈夫だ」と声をかけ、管制室へ六太を確保してソユーズへ戻ると報告した。

救出成功を知った管制室では歓声が上がった。セリカは涙を流し、やっさんも喜びを爆発させた。二人がソユーズへ入り、ハッチを閉じたことが伝えられると、管制室は再び大きな歓声に包まれた。

仲間たちの安堵

先に帰還していたオリョールでも、マクシム、フランツ、フィリップ、吾妻たちが二人の無事を知った。仲間たちは安堵し、マクシムは六太と日々人を「最高だ」と称えた。

「おけーり」と「た~いま」

ソユーズ船内へ戻った日々人は六太の装備を外した。六太は大きく息を吐き、ようやく緊張から解放されていった。

日々人はそんな兄へ「ムッちゃん、おけーり」と声をかけた。

六太は「た~いま」と返した。

#424 吉報

互いに救った兄弟

緊張から解放された日々人は六太を抱きしめ、「よかった」「怖かった」と本音を漏らした。六太が「お前、命の恩人だ」と感謝すると、日々人は以前、自分の命綱が外れた際に六太に助けられたことを思い出し、「何言ってんだよ、ムッちゃんがだよ」と返した。

六太はまだ自分が生きていることに実感が湧かない様子だったが、トイレへ行きたいと言い出し、兄弟は笑い合った。日々人は救出の際に掴んだ六太の手甲を見て、それが本当に「お守り」になったと振り返った。

世界へ広がった吉報

六太救出の知らせはJAXAから発表され、世界へ広がった。日本時間7月30日21時30分頃、月周回軌道上で漂流していた南波六太宇宙飛行士が無事救助されたことが公式に確認されると、ニュースやSNSには歓喜の声があふれた。

日本だけでなく世界中で兄弟の救出劇が報じられ、二人を見守っていた人々は涙を流し、抱き合って喜んだ。南波家でも両親たちが安堵し、小町は「二人とも帰ってくる」と励ました。

地球帰還軌道へ

やがてソユーズは月周回軌道を離脱し、地球帰還軌道へ入った。

#425 ピースしながら出てきたみたいな

救出作戦を終えた管制室

ソユーズが無事に地球帰還軌道へ入ったことで、管制室ではようやく安堵が広がった。地球到着までは約3日。前代未聞の救出作戦を終えたスタッフたちは次の班へ仕事を引き継ぎ、ひと息つくことになった。

オリョールの仲間たちとの通信

休息を取った六太と日々人は、先に地球へ向かっているオリョールの仲間たちと通信した。フィリップやフランツは二人を心配し続けていたことを明かし、マクシムは南波兄弟ばかりが英雄になって自分たちの存在が忘れられていると冗談を飛ばした。

しかし六太が漂流していた約6時間は、仲間たちにとっても地獄のような時間だった。マクシムは素直に言葉にできなかったが、フランツが代わって、六太が救出されたことで自分たちも救われたのだと伝えた。

漂流中に繰り返した希望と絶望

その後、六太は心理的デブリーフィングとして漂流中の体験を語った。

最初に襲ってきたのは強烈な絶望だった。助かる可能性を信じようとしては、どう考えても無理だと悟る。そのたびに希望と絶望が何度も入れ替わった。酸素残量から残された時間を知り、酸素が尽きる苦しみへの恐怖から、自らヘルメットを脱ぐことまで考えた。

それでも六太は落ち着くために言葉を発し続けた。やがてブギーの声を受信し、自分が基地上空を通過していることを知った。さらに紫からのメッセージも届いた。

ピースしながら現れた日々人

指示された通り待ってもソユーズが見えず、最後には諦めて地球を見ようとした。その時、六太の視界にソユーズが現れた。

しかし六太には、それがソユーズというより、日々人がピースしながら現れたように見えていた。

#426 ヒーローインタビュー

宇宙漂流を経験した六太

救助後の六太にはコルチゾール値や血圧、心拍に多少の変化が見られたものの、極限状態を経験した後としては想定内であり、精神面を含めて深刻な異常は確認されなかった。

ハガードは、あれほどの体験をしてなお笑える六太に感心した。一方、クジョーは六太が人類初の宇宙漂流体験者であることを指摘した。

ハガードはNASAとして、この経験を事故の教訓にしなければならないと考え、「ムッタを“最後”にしなければならない」と語った。

救出作戦を生んだゾーヤの発想

一方、六太の救出作戦を生み出したグレゴリー・ゴーリーとゾーヤ・ラトキナは、「陰の立役者」として記者会見に臨んだ。

ゾーヤは日本のSFアニメに影響されて宇宙関係の仕事を志し、その作品に何度も勇気づけられてきた。そして今度は自分が日本人宇宙飛行士を救う番だと考え、救出方法を探し続けていた。

その発想のきっかけとなったのが、アニメに登場するブーメランだった。ゾーヤは「元の場所に戻ってくる」という性質から軌道を発想し、限られたソユーズの燃料でも六太を救出できるプランへたどり着いた。

ゾーヤは、自分が日本から受け取ったものが巡り巡って六太の救出につながり、今度は多くの感謝となって自分のもとへ戻ってきたと感じていた。

「地球で会おう」

やがてオリョールチームの地球帰還が迫った。マクシムは六太と日々人へ、次に話せるのはしばらく先になると告げた。フランツとフィリップはリハビリを終えたら日本へ行くと約束し、吾妻も日本へ帰るため、再び皆で会えることになった。

日々人は南波家で陶芸体験ができると誘い、六太は自分さえまだ帰ったことのない実家だと突っ込んだ。

そしてマクシムが別れを告げると、六太と日々人は「地球で会おう」と返した。

オリョールの大気圏再突入

オリョールは軌道離脱噴射を終え、月着陸船、推進モジュールを順次分離した。仲間たちを乗せた帰還カプセルは大気圏へ再突入し、高度100キロを通過した。

#427 なんの告白

オリョールの地球帰還

オリョールは秒速6.4キロ、高度80キロを通過して大気圏へ再突入した。耐熱シールドの温度が上昇する中、通信が途絶するブラックアウトを経て、ドローグシュート、メインパラシュートを順次展開した。

やがて帰還カプセルは無事に着地した。マクシム、フランツ、フィリップ、吾妻は地球への帰還を果たし、管制室や家族たちも歓声を上げた。ソユーズにいる六太と日々人も仲間たちの無事を喜んだ。

兄弟が語った死と宇宙

続いて六太と日々人にも帰還の時が迫った。二人はソコールを着用し、シートに身体を固定した。日々人のシートは衣類などで隙間を埋めて調整され、ソユーズは再突入に向けた準備を整えた。

緊張する六太に、日々人は六太が漂流していた際、管制の指示で仮眠を取り、意外にも眠れてしまったことを打ち明けた。六太は「なんの告白だよ」と笑ったが、自身も漂流中、不思議なほど落ち着いて死について考えた時間があったと明かした。

死ねば言葉も記憶も消え、自分が死んだことすら認識できないのではないか。それでも、いつか別の星で別の何かとして目覚めることがあるのかもしれない。そう考えることで、六太は死への恐怖が少し和らいでいた。

日々人も、もしそうなら面白い星に生まれたいと応じた。二人は次に生まれるなら「宇宙にガンガン行ける人」がいいと語り合った。

やがて管制室から、約50分後に着水すると伝えられた。ソユーズは減速噴射を開始し、南波兄弟の地球帰還が始まった。

#428 弾道飛行

ソユーズの分離と再突入

地上ではセリカや絵菜、シャロンたちが南波兄弟の帰還を見守っていた。回収船も予定海域へ向かい、管制室ではゾーヤたちがソユーズの状態を監視していた。

逆噴射を終えたソユーズは帰還軌道へ入り、分離態勢へ移行した。軌道モジュールと推進モジュールが切り離され、六太と日々人を乗せた帰還船だけが地球へ向かった。

大気圏へ突入すると通信はブラックアウトした。ところが六太は、想定よりも早く強いGがかかっていることに気づいた。加速度は5Gを超え、さらに6.4Gへ上昇した。

日々人はソユーズが通常とは異なる「弾道飛行モード」に入った可能性を察した。

予定外の弾道飛行

管制室でも異常が確認された。ソユーズは分離時の軌道のずれによって弾道飛行モードへ切り替わった可能性があり、予定していた着水地点から外れることになった。

管制室は新たな着水地点を計算し、回収班も移動を開始した。シャロンを心配させまいと、セリカは弾道飛行が誘導飛行のバックアップとして備えられた、安全に帰還するための機能であると説明した。

帰還船内では激しいGが六太と日々人を襲っていた。日々人は六太に腹へ力を入れて意識を保つよう呼びかけた。

六太は、ここまで生き延びた自分と日々人を地球へ帰してくれとソユーズに願った。月面事故と宇宙漂流を乗り越えた兄弟は、最後の試練となる激しい大気圏再突入に耐え続けた。

#429 帰ってきた

途絶した通信の回復

予定なら通信が戻り、すでにパラシュートで降下している時間になっても、ソユーズから連絡はなかった。管制室に緊張が走る中、ようやく日々人から通信が入った。

大気圏を抜けたソユーズはパラシュートを展開し、高度5.4キロを降下していた。

弾道飛行の影響により、着水地点は当初予定されていた種子島近海から大きくずれ、沖縄の久米島と宮古島の中間付近へ変更されていた。六太は予定と違っても「同じ地球だ」と受け入れた。

近海の漁船もソユーズを発見し、回収に向けた準備が進められた。

南波兄弟、地球へ帰還

ソユーズは海面へ着水した。

日々人から着水の報告を受けた管制室では歓声が上がった。セリカや絵菜、ケンジ、新田、エディ、ベティ、シャロンたちも兄弟の帰還を喜んだ。

強烈なGを経験した六太は、ヤンじいとの飛行訓練を思い出していた。かつての経験が思わぬ形で役立っていたのである。

先に地球へ帰還していたマクシムたちも南波兄弟の着水を知った。吾妻はようやく力が抜けたと安堵し、エディはハガードに、これでジョーカーズ全員が帰還し、CES-66ミッションが本当に完了したと告げた。

その後、回収船がソユーズへ到着した。カプセルが船上へ引き上げられると、日々人と六太は集まった人々に迎えられた。

六太はやっさんや福田たちの姿を見つけ、長旅をさせてしまったと笑った。そして改めて、自分が地球へ帰ってきたことを実感した。

#430 ただいま おかえり ただいま

世界中から届いた「おかえり」

南波兄弟の帰還は大きなニュースとなった。宮古島近海で回収された二人は、疲れを見せながらも笑顔で手を振り、世界中から「おかえり」という言葉が寄せられた。

六太にとっては127日ぶりの地球であり、月面での事故、長期滞在、宇宙漂流、さらに帰還時の弾道飛行まで経験した兄弟の生還は、多くの人々から「奇跡の日」と受け止められた。

しかし帰還は終わりではなく、二人には検査とリハビリが待っていた。

家族と仲間たちとの再会

療養中の六太と日々人のもとには両親も訪れた。父は兄弟の帰還に便乗して新たな陶芸作品を作っており、ソユーズを模した醤油差し「しょゆーず」まで披露した。

ケンジ、セリカたち宇宙飛行士仲間も二人を訪ねた。セリカは六太が退院する頃にまた来ると約束し、宮古そばのおいしい店を知っていると話した。

エディは六太から返されようとした腕時計を受け取らず、もう六太のものだと告げた。そして、これからは六太自身がそのリューズを巻き、次の宇宙へ連れていくよう伝えた。

エディは改めて六太と日々人の帰還を喜び、「おかえり」と迎えた。六太は「ただいま」と返した。

その頃、シャロンも南波兄弟との再会を果たすため、病院へ到着していた。

#431 シャアアアアアッ

シャロンとの再会

シャロンは、六太が日々人を救い、日々人が六太を救ったことは、自分が知っている二人そのものだったと伝えた。ソユーズへの移動から六太の事故、漂流、日々人による救助、そして地球帰還まで、シャロンには祈り、泣きながら見守ることしかできなかった。

だからこそ、こうして二人と再び会えたことが、自分の人生で最も幸運で素晴らしい瞬間だと語った。

六太は、自分が宇宙飛行士になれたことも月へ行けたこともシャロンのおかげだと感謝した。しかしシャロンは、自分は応援しただけであり、六太が夢を叶えられたのは、六太が「六太自身だったから」だと伝えた。

次へ進み始めた兄弟

NASA、JAXA、ロスコスは六太と日々人への表彰と勲章授与を予定していた。さらに「Mr.ヒビット」の新作として、兄の六太をモデルにした「ラムッタ」まで登場することになった。

療養中も六太と日々人はリハビリに励んだ。短期ミッションだった日々人はすでに元気を取り戻しており、長期滞在を経験した六太も着実に身体を回復させていった。

病院での日々が続く中、六太はせっかく宮古島にいるのに病院から出られないことを残念がった。

そして兄弟は、退院後に宮古島を自転車で走ることを考え始めた。

#432 最終話 弟 日々人と兄 六太

地球を感じる兄弟の旅

2029年9月12日。六太と日々人が地球へ帰還して40日が経っていた。

世間では「宇宙兄弟帰還」の熱狂も落ち着き、新しい食べ物や街の話題が人々の関心を集めていた。その一方では、宇宙飛行士を夢見る少年が南波兄弟へのファンレターを投函していた。

六太と日々人は宮古島で自転車を借り、島を走っていた。借りた自転車にはギアやブレーキなどに問題があったものの、六太は宮古島の自然、そして何より「地球」を感じながら走ることを楽しんだ。

突然の激しい雨にも雨宿りせず、二人はそのまま自転車を走らせた。六太はもっと降れと叫び、全身で地球の雨を受け止めた。

それぞれが進む未来

六太はこれからの未来を思い描いた。

リハビリを終えた後にはセリカと宮古そばを食べ、次のデートの約束をする。

その9か月後には、ケンジと新田が「スウェッツ」として人類初の小惑星探査へ向かう。

やっさんは民間企業宇宙飛行士としてISS修復ミッションのクルーに選ばれる。

シャロンも、セリカの実験結果から進んだ新薬開発によって、少しずつ筋力の回復が認められるようになる。

そして六太と日々人自身も、信頼できる仲間たちとともに「カルロム洞窟居住区建設ミッション」へ向かう。

それはまだ実現した未来ではなく、六太が思い描いた「最高な未来」であった。

すべてが叶うわけではない。それでも、すべてが叶わないわけでもなかった。

弟・日々人と兄・六太

伊良部島を自転車で走る中、六太と日々人は海ガメを見つけた。

ビーチで六太は、再突入していた時に見た光景を思い出した。日々人も同じものを見ていたことが分かり、二人は互いの人差し指を近づけた。

それは、かつて兄弟で見た光景と重なっていた。

六太は、この日の「伊良部島ミッション」がどこか月旅行に似ていると話した。宮古島を地球に見立てれば、伊良部島から宮古島へ戻ることは、月から地球への帰還のようでもあった。

日々人は「伊良部島を離脱成功」「宮古島帰還軌道に入りま~す」と笑いながら自転車を走らせた。

先を行く弟に、六太は少しゆっくり行こうと呼びかけた。

兄と弟は再び並び、地球の上を走っていった。

「宇宙兄弟」おわり

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