- Fランクなのに実力はCランク以上!スライム使いの少年が洗濯屋を開業するまで
- ※以下、第2巻のネタバレを含む感想である。
- 公爵家の廃坑調査。幼い竜馬が護衛以上に頼もしい
- お嬢様に実戦経験を積ませる竜馬。教える側になっているのが面白い
- 天井に大量のケイブバット。索敵魔法の使い方まで教える
- サウンドボムでケイブバットを一網打尽。発想が完全に現代人
- 廃坑の土から鉄を抽出。錬金術で鉱山の価値まで変えてしまう
- モーガン商会のセルジュと出会う。スライム研究が商売につながり始める
- FランクなのにCランク以上の実力。冒険者仲間との再会が楽しい
- 後ろからついてくる低ランク冒険者。事情を知ると少し複雑な気持ちになる
- 不良冒険者による強請り。竜馬の冷静な反撃が怖い
- アサギとレイピンが救援。後始末をギルドに任せる判断もよかった
- 公爵家に守られすぎている。竜馬が自立を決意した理由
- 公爵家はすでに察していた。自立を認める代わりに連絡を約束させる
- 自立の第一歩は廃坑管理。結局、また仕事を任される竜馬
- ゴブリンの集落を発見。想定以上の大群に討伐作戦が混乱する
- スライム軍団が前線を支える。竜馬の本領発揮
- 二千匹を超えるゴブリン。実は集落の一部だったという恐ろしさ
- 戦闘後の清掃でクリーナースライムが大活躍。ここから商売が生まれる
- セルジュに洗濯屋を相談したら、話がどんどん大きくなる
- 商業ギルドに登録して土地まで購入。小遣い稼ぎの規模ではない
- 店舗を自分で建築。魔法とスライムで工事を進めるのが面白い
- 近所の人々との交流。森で引きこもっていた竜馬が商売を始める変化
- 洗濯代行業者「バンブーフォレスト」。いよいよ開店直前へ
- 第2巻で一番印象に残ったのは、竜馬が自立を選んだこと
- スライム研究が仕事になる。好きなことが人の役に立つ面白さ
- ブラック企業時代と違い、自分で仕事を選べるようになった竜馬
- 特別書き下ろしで描かれる地球の職場。竜馬がいなくなってもひどかった
- まとめ|Fランク冒険者から洗濯屋の店主へ。竜馬の新しい人生が本格的に動き出す
- 2章 1話 休日の昼下がり
- 2章 2話 魔法の訓練
- 2章 3話 誘いを受けて
- 2章 4話 廃坑調査
- 2章 5話 本物の錬金術
- 2章 6話 午後の探検と贈り物
- 2章 7話 モーガン商会
- 2章 8話 大規模な討伐依頼
- 2章 9話 一般的な冒険者
- 2章 10話 魔獣討伐の休憩時間
- 2章 11話 不良冒険者
- 2章 12話 鉱山の魔獣討伐・ 1日目終了
- 2章 13話 報告
- 2章 14話 鉱山の魔獣討伐・ 2日目
- 2章 15話 事情聴取
- 2章 16話 集団戦闘
- 2章 17話 終わる戦い、続く戦い
- 2章 18話 帰宅
- 2章 19話 開業の相談(前編)
- 2章 20話 開業の相談(後編)
- 2章 21話 即断即決
- 2章 22話 店作り・ 1
- 2章 23話 店作り・ 2
- 2章 24話 店作り・ 3
- 2章 25話 店作り・ 4
- 特別書き下ろし・残された人々と変化の兆し
物語の概要
■ 作品概要
本巻の中心人物は、公爵家の庇護を受けつつギムルの街で活動を始めた転移者の少年リョウマ(竹林竜馬)である。
物語開始時、前巻での共同トイレ汲み取り作業による疫病封じ込めの功績により多額の報酬を得たリョウマは、公爵令嬢エリアリアとの魔法訓練や北鉱山の廃坑調査に参加する。
北鉱山での魔獣討伐の合間に、生活困窮から獲物を拾っていた駆け出しの少年少女冒険者6人組と遭遇し、彼らを脅迫・恐喝していた不良冒険者サッチの一味を返り討ちにして拘束する事態が発生する。
この事件を通じて自身の暴力性や公爵家への甘えを省みたリョウマは、精神的な自立を決意して公爵家から離れることを申し出る。
続く大規模なゴブリン掃討作戦においてスライムを駆使した迎撃陣地を構築して大群を退けた後、自立のための副業としてクリーナースライムを活用した「洗濯代行業者バンブーフォレスト」の開業を着想する。
商人のセルジュや商業ギルドの協力を得て土地を購入し、土魔法やスライムの力を活かして店舗の建設を急速に完了させ、プレオープンおよび完成祝いの前日準備まで状況が進む。
■ 主要キャラクター
リョウマ・タケバヤシ(竹林竜馬)
- 立場・所属:地球からの転移者、冒険者(作中でFランクからEランクへ昇格)、従魔術師。
- 主人公との関係:主人公本人。
- この巻での主な役割:廃坑調査と魔獣討伐、不良冒険者の制圧、ゴブリン迎撃陣地の設営、洗濯屋店舗の自力建設。
- この巻で起きた重要な変化や行動:カミルやセバスから攻撃魔法や空間魔法(『ワープ』『ディメンションホーム』)を習得した。不良冒険者との衝突を経て公爵家からの自立を決意し、廃坑管理の仕事を引き受ける。クリーナースライムを活用した洗濯屋の開業を計画し、購入した土地に魔法とスライムを駆使して店舗を建て上げた。
エリアリア・ジャミール
- 立場・所属:ジャミール公爵家の令嬢。
- 主人公との関係:友人、魔法訓練のパートナー。
- この巻での主な役割:実戦訓練の実施、リョウマとの交流。
- この巻で起きた重要な変化や行動:リョウマから水魔法を応用したシャボン玉遊びを通じて魔力制御の指導を受けた。北鉱山の廃坑調査で氷魔法を用いて魔獣と戦う実戦経験を積んだ。リョウマの自立宣言に動揺しつつも、3年後と6年後の再会を約束した。
ラインハルト・ジャミール
- 立場・所属:ジャミール公爵領の現当主。
- 主人公との関係:リョウマの保護者役。
- この巻での主な役割:リョウマの自立の受容、廃坑管理の依頼、モーガン商会の紹介。
- この巻で起きた重要な変化や行動:リョウマが錬金術で赤土から高純度の鉄を抽出できることを知り、モーガン商会のセルジュを紹介した。リョウマからの自立の申し出を受け入れ、条件付きで許可するとともに、廃坑の定期的な見回りと管理を依頼した。
ウォーガン
- 立場・所属:冒険者ギルド・ギムル支部長(ギルドマスター)。
- 主人公との関係:リョウマの上位監督者、理解者。
- この巻での主な役割:討伐依頼の総指揮、不良冒険者問題の事後処理、昇格認定。
- この巻で起きた重要な変化や行動:イダケ病の封じ込め報酬を分配し、役所から押し付けられた共同トイレの清掃をリョウマに再度依頼した。サッチらの暴挙に対しリョウマを不問とし、ゴブリン掃討戦を経てリョウマをEランク冒険者に昇格させた。
セルジュ・モーガン
- 立場・所属:モーガン商会の会頭。
- 主人公との関係:取引相手、商業面での協力者。
- この巻での主な役割:リョウマ製品の買い取り窓口、洗濯屋開業の支援。
- この巻で起きた重要な変化や行動:リョウマの実演を見て本物の錬金術師であると認め、鉄インゴットや防水布の秘密裏の買い取りを承諾した。リョウマの洗濯屋構想に大きな利益を見出し、商業ギルドへの登録斡旋や従業員の派遣を申し出た。
サッチ
- 立場・所属:冒険者(元Cランク)。
- 主人公との関係:対立者。
- この巻での主な役割:駆け出し冒険者への恐喝、リョウマとの武力衝突。
- この巻で起きた重要な変化や行動:仲間を率いて6人組の少年少女冒険者を恐喝していたところをリョウマに介入され、武器を抜いて襲いかかるが、リョウマの体術によって両腕を脱臼・骨折させられて無力化され、ギルドに引き渡された。
ベック、ルース、ウィスト、マルタ、フィニア、ルーミル
- 立場・所属:生活に困窮するG・Fランクの駆け出し冒険者6人組。
- 主人公との関係:リョウマに助けられた後輩冒険者たち。
- この巻での主な役割:サッチらによる恐喝の被害者、ゴブリン戦での後方支援。
- この巻で起きた重要な変化や行動:住民税を支払うためにリョウマの班が捨てた獲物を無断で拾っていたが、サッチらに言いがかりをつけられていたところをリョウマに救われた。後にリョウマに謝罪と事情を話し、ゴブリン戦では協力して戦った。
読んだ本のタイトル
神達に拾われた男 2
著者:Roy 氏
イラスト:りりんら 氏
出版社:ホビージャパン
レーベル:HJノベルス
発売日:2017年9月22日
ISBN:9784798615097
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
新魔法、錬金術による新商品――そして、スライムたちと魔獣討伐!
神達に拾われた男 2
三柱の神々に見守られながら、自分なりのペースで異世界生活を営む転生者の少年・竜馬。縁あって優しく温かな公爵一家と共に旅をすることになった彼は、持ち前の戦闘技能を活かせる冒険者となり、初めての大仕事をスライムたちと一緒に無事やり遂げる。その後、竜馬は公爵令嬢エリアリアの魔法訓練に同行し、新たな魔法を獲得! さらには前世の知識や錬金術を駆使した商品が新たなビジネスにも繋がっていき……!? 魔獣討伐ではスライムたちの意外過ぎる戦闘技能も発揮される異世界スローライフファンタジー、第二幕!
感想
Fランクなのに実力はCランク以上!スライム使いの少年が洗濯屋を開業するまで
前巻では、ブラック企業で働いていた竹林竜馬が異世界へ転生し、森で三年間もスライム研究に没頭していた。
そして、公爵家の人々と出会ったことで街へ出て、冒険者として活動を始める。
最初に大きな活躍を見せたのが、共同トイレの清掃だった。
スライムを使って汲み取り槽を掃除していたら、危険な疫病の存在を発見。
三日間ほぼ不眠不休で街の汲み取り槽を清掃し、疫病の流行を未然に防いでしまった。
いや、異世界に転生してまで働きすぎだろう。
そんな竜馬だが、第2巻でも相変わらず働いている。
今回は公爵家の廃坑調査に同行し、エリアリアお嬢様の実戦訓練を手伝う。
さらに冒険者ギルドの大規模討伐に参加し、不良冒険者を撃退。
ゴブリンの大群を相手に、スライムを使った防衛戦まで繰り広げる。
そして最後には、クリーナースライムの能力を活用して洗濯屋を開業することになる。
最初は、ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだった。
ところが、商人のセルジュに相談した結果、話がどんどん大きくなってしまう。
商業ギルドへ登録し、土地を購入し、従業員を確保し、店舗まで建築する。
気がつけば、本格的な事業になっているではないか。
前世では会社に振り回されていた竜馬が、今度は自分で仕事を作り始める。
この変化が、なかなか興味深かった。
ただし、やはり一つ気になる。
この人、のんびり暮らすつもりだったのではないだろうか。
※以下、第2巻のネタバレを含む感想である。
公爵家の廃坑調査。幼い竜馬が護衛以上に頼もしい
今回の物語は、公爵家が所有する廃坑の調査から大きく動き始める。
長く放置されていた鉱山に魔獣が棲みついているため、冒険者ギルドへ討伐依頼を出す必要があった。
しかし、いきなり冒険者たちを送り込むわけにはいかない。
どんな魔獣がいるのか。
どの程度の危険があるのか。
まずは現地を調べる必要がある。
そこで、公爵家の人々が廃坑へ向かうことになった。
竜馬も同行する。
しかも、今回はエリアリアお嬢様の実戦訓練を兼ねている。
お嬢様にとっては、初めて本格的に魔獣と戦う機会である。
当然、護衛たちも一緒だ。
ところが、実際に戦闘が始まると、竜馬がやたらと頼もしい。
魔獣の動きを見極め、護衛たちと連携し、お嬢様が安全に攻撃できる状況を作っていく。
最後の一撃は、お嬢様に任せる。
単に敵を倒すだけではなく、相手に経験を積ませることまで考えている。
いや、指導がうますぎないか。
見た目は幼い少年である。
周囲には、経験豊富な大人の護衛たちがいる。
それなのに、竜馬が自然と戦闘の流れを整えてしまう。
この光景を想像すると、何ともおかしい。
前世では、あの筋肉だらけの身体で武術を鍛え込んでいた男である。
今は子どもの姿だが、戦い方の基本は身体に染みついているのだろう。
本人は普通に行動しているつもりでも、周囲から見ると妙な状況になってしまう。
この見た目と中身のギャップが、本作の面白さの一つだと思う。
お嬢様に実戦経験を積ませる竜馬。教える側になっているのが面白い
廃坑で遭遇したのは、ケイブマンティスというカマキリ型の魔獣だった。
エリアリアお嬢様は、氷魔法で攻撃する。
最初は狙いを外してしまうものの、すぐに修正して魔獣を倒す。
初めての実戦なら、緊張して当然だろう。
それでも、落ち着いて次の攻撃につなげている。
お嬢様もなかなか優秀である。
そして、竜馬は自分の役割をよく理解していた。
お嬢様の獲物を横取りするのではなく、危険を取り除きながら経験を積ませる。
必要なときには前に出るが、できるだけ本人に戦わせる。
このあたりの判断が、実に大人びている。
もっとも、中身は前世で長年働いていた大人なのだから、当然といえば当然かもしれない。
それにしても、周囲の護衛たちは複雑だったのではないだろうか。
守るべき子どもが二人いる。
そのうち一人は公爵家のお嬢様。
もう一人は、護衛たち以上に戦闘経験が豊富そうな少年である。
竜馬の動きを見ていると、護衛として頼もしいのか、それとも自分たちの立場がないのか。
何とも微妙な空気になりそうだ。
思わず笑ってしまった。
天井に大量のケイブバット。索敵魔法の使い方まで教える
廃坑の調査で印象に残ったのが、索敵魔法を使う場面だった。
竜馬はエリアリアお嬢様に、探査魔法の使い方を教える。
ただ魔力を広げればいいわけではない。
どのように魔力を扱えば効率よく周囲を調べられるのか。
実際に方法を示しながら説明していく。
そして、お嬢様が探査を行うと、驚くべきことが分かる。
洞窟の天井に、大量の魔獣が張りついていたのである。
正体は、コウモリ型の魔獣ケイブバット。
一匹ずつなら、それほど強い魔獣ではない。
しかし、数が多すぎる。
狭い洞窟で一斉に飛び回られたら、かなり面倒なことになるだろう。
普通なら、どうやって安全に討伐するかを考える場面である。
ところが、竜馬は少し違った。
新しい魔法を試してみたいと言い出す。
いや、ここで実験するのか。
危険な状況なのに、どこか研究者のような反応である。
もちろん、竜馬は周囲の安全を確認している。
それでも、本人が少し楽しそうにしている様子が想像できた。
スライム研究だけでなく、魔法の研究も相当好きなのだろう。
サウンドボムでケイブバットを一網打尽。発想が完全に現代人
竜馬が試したのは、音魔法の「サウンドボム」だった。
名前からして、現代のスタングレネードを思い出させる。
強烈な音で相手の動きを止める魔法である。
竜馬は周囲への影響を抑えるため、遮音結界を用意する。
さらに、スティッキースライムを使って捕獲の準備も整える。
そして、サウンドボムを発動。
結果は見事だった。
天井に張りついていた大量のケイブバットが、一斉に気絶して落ちてくる。
そこをスライムがまとめて処理する。
これで終わり。
いや、あっさりしすぎではないだろうか。
大量の魔獣が棲みついているという問題を、ほとんど一撃で解決してしまった。
しかも、倒した魔獣はスライムの餌になる。
戦闘が終われば、スライムたちは十分な栄養を得て分裂を始める。
討伐と育成が同時に進んでいるわけである。
何とも効率がいい。
普通の冒険者なら、魔獣を倒した後に死体の処理や素材の回収が必要になる。
しかし、竜馬の場合はスライムが処理してくれる。
本人にとっては、魔獣討伐がスライムの食事の時間にもなっている。
この独特の戦い方が面白かった。
廃坑の土から鉄を抽出。錬金術で鉱山の価値まで変えてしまう
廃坑の調査では、魔獣以外にも興味深い発見があった。
竜馬は、鉱山の周囲に積まれていた赤土に目をつける。
そこには鉄分が含まれていた。
そこで、錬金術を使って鉄を取り出してみる。
すると、高純度の鉄ができてしまう。
いや、そんな簡単にできるものなのか。
普通なら、鉱石を採掘し、運搬し、精錬する必要がある。
それを魔法陣で処理してしまうのだから、相当便利である。
ただし、純度が高ければ何でもいいわけではない。
竜馬は、加工に向いた性質になるよう調整まで行う。
このあたりが興味深かった。
単に魔法で物を作って終わりではない。
実際に使える素材なのか。
どんな用途に向いているのか。
そこまで考えている。
そして、作った鉄の品質を確かめるため、ラインハルト公爵に相談する。
ここから、竜馬の世界がさらに広がっていく。
モーガン商会のセルジュと出会う。スライム研究が商売につながり始める
ラインハルト公爵の紹介で、竜馬はモーガン商会の会頭セルジュと出会う。
目的は、錬金術で作った鉄の品質確認だった。
しかし、話はそれだけでは終わらない。
竜馬がスティッキースライムの粘液を使って作った防水素材にも、セルジュが興味を示す。
レインコートや糸として利用できると分かり、商品として扱う話が進む。
ここが面白い。
竜馬にとって、スライム研究はもともと趣味だった。
便利だから育てる。
新しい能力が気になるから調べる。
自分の生活に役立つから使う。
それだけだった。
ところが、商人のセルジュは、その成果を商品として見ている。
防水素材が安定して手に入るなら、売り物になる。
丈夫な糸を作れるなら、需要がある。
研究成果に、商売としての価値を見いだしたのである。
竜馬は前世で会社員だったが、異世界では自分の技術そのものが収入につながり始める。
しかも、本人はまだそれほど商売を意識していない。
この温度差が、後半の洗濯屋開業にもつながっていく。
FランクなのにCランク以上の実力。冒険者仲間との再会が楽しい
廃坑の調査が終わると、今度は冒険者ギルドによる本格的な魔獣討伐が始まる。
竜馬も依頼を受けて参加する。
そこで同じ班になったのが、ジェフ、ミーヤ、ウェルアンナ、ミゼリア、シリアたちだった。
前巻の疫病騒動で一緒に仕事をした顔なじみである。
竜馬にとっては、気心の知れた相手が多く、安心できる編成だったのではないだろうか。
しかし、ここで意外な事実を知る。
彼らはBランクの冒険者だったのである。
一方、竜馬はFランク。
数字だけを見れば、かなりの差がある。
ところが、実際に戦うと竜馬はまったく見劣りしない。
むしろ、戦闘経験や魔法の使い方では周囲を驚かせている。
ガナの森でブラックベアーを倒した経験まで話すと、仲間たちは竜馬がCランク以上の実力を持っていると判断する。
それなら、なぜFランクなのか。
理由は、冒険者としての実績がまだ少ないからだ。
この設定は納得できた。
どれだけ強くても、登録したばかりなら評価は低い。
仕事をこなし、実績を積み重ねて初めてランクが上がる。
竜馬本人も、その仕組みに大きな不満はないようだった。
前世で仕事をしていた経験があるからだろうか。
肩書きより、実際に何ができるかを重視しているように見える。
もっとも、Fランクの少年がBランク冒険者と普通に戦っているのだから、周囲から見れば相当おかしい。
このギャップが楽しい。
後ろからついてくる低ランク冒険者。事情を知ると少し複雑な気持ちになる
討伐を進めていると、竜馬たちの後ろからついてくる冒険者たちが現れる。
六人組の若い冒険者である。
どうやら、竜馬たちが倒して放置した魔獣の死体を拾い集めていたらしい。
最初は、何をしているのだろうと思った。
他人の獲物を勝手に持ち去るのだから、褒められた行為ではない。
実際、ウェルアンナも彼らを叱っている。
しかし、事情を聞くと印象が変わる。
彼らは生活費に困っていた。
冒険者としての経験も浅く、自分たちだけでは十分に稼げない。
そのため、危険を承知で強い冒険者の後をついてきていたのである。
さらに後で分かるのだが、彼らは以前、共同トイレの清掃で収入を得ていた。
ところが、役所による報酬削減で仕事が成り立たなくなってしまった。
そのうえ、住民税の支払いまで迫られている。
つまり、前巻で問題になった役所の手抜きが、ここにも影響していたわけである。
このつながりが印象に残った。
竜馬は前巻で、疫病の流行を防ぐために共同トイレを清掃した。
しかし、その仕事をもともと担っていた人々は、生活の手段を失っていた。
清掃の問題が解決しても、別のところに困っている人が残っていたのである。
竜馬たちは六人組を頭ごなしに追い払うのではなく、事情を聞いたうえで対応する。
このあたりに、冒険者仲間の人柄が表れていた。
不良冒険者による強請り。竜馬の冷静な反撃が怖い
六人組との一件が終わった後、竜馬は別の騒動に遭遇する。
先ほどの若い冒険者たちが、大勢の冒険者に取り囲まれていたのである。
最初は、また他人の獲物を勝手に拾って怒られているのかと思った。
しかし、どうも様子がおかしい。
相手は十人以上。
人数で威圧し、六人組を責め立てている。
単なる注意ではなく、強請りに近い。
そこで竜馬が介入する。
まずは双方の話を聞こうとするのだが、相手は聞く耳を持たない。
それどころか、武器を抜いて襲いかかってくる。
ここからの竜馬が怖い。
土魔法で石の柵を作り、六人組を守る。
さらに、相手の動きを見ながら逃走経路を確保する。
そして、敵対する冒険者たちを次々と無力化していく。
このとき、竜馬が公爵家と関係していると知った相手が動揺する場面もある。
しかし、動揺したからといって素直に引き下がるわけではない。
なおも実力行使に出ようとする。
そこで竜馬は、主犯格のサッチを一瞬で戦闘不能にしてしまう。
斧を振るって襲いかかってきたサッチに対し、冷静に動きを封じ、腕を負傷させる。
それまで威勢のよかった冒険者たちは、一気におとなしくなる。
いや、強すぎるだろう。
Fランクの少年だと思っていた相手が、実際には手に負えない実力者だった。
しかも、竜馬は感情任せに暴れているわけではない。
相手の行動を見極め、必要なだけの力で制圧している。
前世で父親から鍛えられた武術が、こういう場面で生きているのだろう。
アサギとレイピンが救援。後始末をギルドに任せる判断もよかった
騒動の途中で、アサギとレイピンが駆けつけてくる。
六人組が助けを求めてくれたらしい。
竜馬はすでに不良冒険者たちを拘束していたため、事態はほぼ収束していた。
その後の処理は、ギルドマスターに任せることになる。
ここがよかった。
竜馬は強い。
自分一人で相手を倒すこともできる。
しかし、冒険者同士の問題を裁く権限まで持っているわけではない。
だから、正式な手続きはギルドに任せる。
この線引きができている。
前世で会社員として働いていた経験もあるのだろう。
問題が起きたら、関係者に報告する。
自分の判断だけで何もかも決めない。
そうした対応が自然にできている。
ただ、ギルドマスターのウォーガンにとっては頭の痛い事件だったようだ。
サッチは、もともと真面目な冒険者だったという。
しかし、Cランクで挫折したことをきっかけに、次第に素行が悪くなってしまった。
この話も少し考えさせられた。
実力が伸び悩むこと自体は、珍しくない。
しかし、そこで腐ってしまい、弱い相手から金品を奪うようになってしまった。
努力が報われなかったからといって、他人を傷つけていいわけではない。
竜馬とは対照的な人物だった。
公爵家に守られすぎている。竜馬が自立を決意した理由
不良冒険者との騒動が終わった後、竜馬は自分自身について考え始める。
今回、相手が動揺した理由の一つは、竜馬が公爵家と関係していると知ったことだった。
つまり、竜馬は自分の実力だけでなく、公爵家の後ろ盾にも守られている。
もちろん、公爵家の人々は親切である。
竜馬を利用しようとしているわけではない。
むしろ、彼のことを本当に心配している。
しかし、竜馬はこのままでいいのだろうかと考える。
公爵家の庇護に甘え続けていたら、自分が駄目になってしまうのではないか。
そう感じたのである。
この決断が、第2巻で最も印象に残った部分の一つだった。
前世の竜馬は、会社に縛られていた。
自分の意思とは関係なく、仕事を押しつけられ、理不尽な扱いを受けていた。
異世界では、ようやく自由になった。
しかし、今度は親切な人々に守られすぎていると感じてしまう。
何とも難しい性格である。
少しくらい甘えてもいいのではないかと思った。
それでも、竜馬が自立を望む気持ちは分かる。
誰かに守られることと、自分の人生を自分で決めることは別だからだ。
公爵家への感謝を忘れず、それでも自分の足で立とうとする。
この姿勢には好感を持った。
公爵家はすでに察していた。自立を認める代わりに連絡を約束させる
竜馬は、公爵家の人々に自立したいと伝える。
しかし、彼らはすでに竜馬の気持ちを察していたようだった。
ここが温かい。
引き止めて、自分たちのそばに置いておこうとするのではない。
竜馬の意思を尊重しようとする。
ただし、何の条件もなく送り出すわけではない。
無茶をしないこと。
定期的に連絡すること。
困ったときには頼ること。
そうした約束を求める。
何とも親らしい対応である。
竜馬は、まだ幼い少年の姿をしている。
中身が大人だと分かっていても、周囲としては心配なのだろう。
特にエリアリアお嬢様との別れを考えると、少し寂しい。
せっかく仲良くなったのだから、これからも一緒に過ごしたいと思うのは当然だ。
しかし、彼女も竜馬の決意を受け入れる。
そして、将来の再会を約束する。
この場面には、単なる後ろ盾以上の関係が感じられた。
竜馬は公爵家に助けられている。
しかし、それだけではない。
公爵家の人々にとっても、竜馬は大切な存在になっているのだろう。
前世では、会社にいても安心できる居場所がなかった。
それが今では、離れて暮らしても帰ってこられる場所ができている。
この変化がうれしかった。
自立の第一歩は廃坑管理。結局、また仕事を任される竜馬
竜馬の自立を認めたラインハルト公爵は、新しい仕事を提案する。
それが、廃坑の管理である。
廃坑には魔獣が棲みつきやすい。
放置すれば、また大規模な討伐が必要になるかもしれない。
そこで、竜馬に定期的な見回りと魔獣の討伐を任せたいという。
竜馬は快く引き受ける。
いや、結局また仕事が増えているではないか。
ただし、今回は悪い話ではない。
廃坑は、竜馬にとってスライムの訓練や研究にも使える場所である。
魔獣を倒せばスライムの餌になる。
管理の仕事をしながら、自分の研究も進められる。
しかも、公爵家から正式に任された仕事である。
単なる好意ではなく、役割と責任がある。
竜馬が自立するためには、ちょうどいい仕事なのかもしれない。
ここでも、彼の能力と周囲の需要がうまくかみ合っていると感じた。
ゴブリンの集落を発見。想定以上の大群に討伐作戦が混乱する
廃坑での討伐が進む中、新たな問題が発生する。
ゴブリンの集落が発見されたのである。
しかも、かなりの規模だった。
冒険者ギルドは、急きょ大規模な討伐作戦を立てる。
高ランク冒険者が集落へ攻め込み、低ランク冒険者は逃げてくるゴブリンを迎え撃つ。
竜馬は低ランク側に配置される。
Fランクなのだから、形式上は当然だろう。
ただし、実力はCランク以上と評価されている。
ここでも、ランクと実力の差が妙なことになっている。
竜馬は、低ランク冒険者でも安全に戦えるよう、地形を利用した防衛方法を提案する。
土魔法で深い溝を掘る。
そこにアシッドスライムを配置する。
さらに、弓や魔法を使う冒険者のために高台を作る。
転落防止の手すりまで設置する。
準備が細かい。
ただ強い魔法を撃てばいいとは考えていない。
経験の浅い冒険者でも戦えるよう、危険を減らしている。
このあたりは、前世の仕事で培った段取りのよさが表れているように感じた。
しかし、作戦が始まると問題が起きる。
ゴブリンの数が、想定よりはるかに多かったのである。
次から次へと現れるゴブリン。
迎撃する冒険者たちも、次第に疲れていく。
このままでは、防衛線が崩れてしまう。
スライム軍団が前線を支える。竜馬の本領発揮
戦況が厳しくなると、竜馬は自分とスライムたちを前線へ投入する。
ここからが、なかなかすごい。
竜馬自身は短剣を使い、ゴブリンの急所を的確に狙っていく。
一方、スライムたちも、それぞれの能力を活用して戦う。
スティッキースライムは粘着液で敵を拘束する。
ポイズンスライムは毒で攻撃する。
アシッドスライムは、溝に落ちたゴブリンを処理する。
さらに、スライムたちは戦闘だけでなく、使い終わった矢の回収まで行う。
これが面白かった。
ただ魔獣を倒すだけではない。
弓を使う冒険者が戦い続けられるよう、補給まで手伝っている。
まるで小さな軍隊である。
しかも、竜馬はスライムたちを日頃から訓練している。
ただ数が多いだけではなく、それぞれが役割を理解して動いている。
この積み重ねが、大規模な戦闘で役立っているわけだ。
前巻では、スライムの能力を使って街を清掃した。
今回は、その能力が戦場でも発揮されている。
弱い魔物として軽く見られていたスライムが、集団戦では非常に頼もしい。
竜馬の研究が、思わぬ形で実を結んだ場面だった。
二千匹を超えるゴブリン。実は集落の一部だったという恐ろしさ
竜馬たちの防衛戦は、長時間に及ぶ。
次々と襲いかかってくるゴブリン。
その数は、最終的に二千匹を超える。
いや、多すぎるだろう。
これだけでも十分に大規模な集落である。
しかし、後からさらに恐ろしい事実が判明する。
竜馬たちが相手にしていたのは、ゴブリンの群れの一部だったのである。
本隊は、もっと巨大だった。
しかも、ゴブリンキングやゴブリンナイトまで存在していたという。
どうやら、ゴブリンたちは廃坑の内部を掘り進め、活動範囲を広げていたらしい。
そのため、事前の調査では全体像を把握できていなかった。
ここまでくると、単なる魔獣討伐では済まない。
下手をすれば、周辺の街や村にも大きな被害が出ていただろう。
竜馬たちが防衛線を維持できたのは、本当に大きかったと思う。
それにしても、廃坑がここまで危険な状態になるまで放置されていたのは気になる。
前巻の共同トイレの問題といい、今回の廃坑といい、行政の管理が十分に行き届いていないように見える。
ラインハルト公爵は、また頭を抱えているのではないだろうか。
領主という立場も、なかなか大変そうである。
戦闘後の清掃でクリーナースライムが大活躍。ここから商売が生まれる
大規模なゴブリン討伐が終わると、冒険者たちは疲れ切っていた。
しかも、戦闘で身体や装備が汚れている。
特にゴブリンの血は、なかなか落ちないらしい。
そこで竜馬が使ったのが、クリーナースライムだった。
汚れた装備や衣服を、スライムがきれいにしてくれる。
これが冒険者たちに大好評だった。
考えてみれば、当然である。
冒険者は魔獣と戦う仕事だ。
血や泥で衣服が汚れることも多いだろう。
それを簡単に落とせるなら、非常に便利である。
しかも、クリーナースライムは汚れを落とすだけでなく、清潔な状態にしてくれる。
ここで竜馬は思いつく。
これを商売にできないだろうか。
洗濯屋である。
最初は、ちょっとした収入源を増やすつもりだったのだろう。
冒険者の仕事だけに頼らず、安定した収入があれば自立しやすい。
そう考えたのだと思う。
しかし、この思いつきが、予想以上に大きな話へ発展していく。
セルジュに洗濯屋を相談したら、話がどんどん大きくなる
竜馬は、モーガン商会のセルジュに洗濯屋の相談をする。
クリーナースライムを使えば、汚れた衣服を短時間できれいにできる。
冒険者だけでなく、鍛冶屋や建築関係の仕事をしている人にも需要がありそうだ。
しかも、竜馬は料金設定まで考えている。
個人用。
パーティー用。
大人数向け。
洗濯物の量に応じて袋を分け、料金を設定する。
大量に持ち込む客には割引も考える。
なかなか商売上手ではないだろうか。
ところが、セルジュは竜馬の話を聞いて、予想以上に乗り気になる。
これは商売になる。
しかも、かなりの需要が見込める。
そう判断したのだろう。
竜馬は、ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだった。
しかし、セルジュは本格的な事業として考え始める。
その結果、商業ギルドへの登録を勧められる。
さらに、店舗の確保や人員の手配まで話が進んでいく。
いやいや。
話が大きくなりすぎではないだろうか。
竜馬も、ここまで本格的になるとは思っていなかったはずだ。
それでも、セルジュの説明を聞きながら、一つずつ決めていく。
この展開が面白かった。
商業ギルドに登録して土地まで購入。小遣い稼ぎの規模ではない
竜馬は、セルジュと一緒に商業ギルドへ向かう。
そこで正式に商人として登録する。
さらに、店舗用の土地を購入することになる。
いや、もう完全に起業である。
しかも、土地付きの店舗だ。
ちょっとした副収入を得るという話から、ずいぶん遠くまで来てしまった。
ただ、竜馬は勢いだけで決めているわけではない。
土地の立地や広さを確認し、必要な費用も考えている。
購入したのは、以前に酒場があった土地だった。
建物は火事で損壊しており、そのままでは使えない。
普通なら、解体や整地だけでも相当な費用がかかるだろう。
しかし、竜馬には土魔法とスライムがある。
壊れた建物を片づける。
土地を整える。
必要な石材を作る。
建物そのものも魔法で建築できる。
そのため、一般的な店づくりと比べると、建設費を大幅に抑えられる。
ここが、竜馬ならではの強みだった。
商売の経験は十分とはいえない。
しかし、前世の知識と魔法、スライムの能力を組み合わせれば、普通では考えられないことができる。
セルジュが期待するのも分かる気がした。
店舗を自分で建築。魔法とスライムで工事を進めるのが面白い
土地を購入した竜馬は、いよいよ店舗の建築を始める。
まずは、残っていた建物を解体する。
雑草やゴミの処理にはスライムを使う。
その後、土魔法で地面を整え、基礎を作る。
建物は地下1階、地上2階の構造にする。
店舗だけでなく、従業員のための住居や裏庭まで用意する計画である。
かなり本格的だ。
しかも、竜馬は建築作業をほとんど自分で進めてしまう。
魔法で石材を作り、壁を組み立てる。
木材を加工するため、新しい魔法まで開発する。
さらに、スライムの粘液を防水加工や仕上げに利用する。
このあたりは、読んでいて楽しかった。
普通の異世界転生ものなら、強い魔法を覚えたら戦闘に使うことが多い。
しかし、竜馬は店づくりに使っている。
しかも、ただ建物を完成させるだけではない。
周囲の景観まで考えている。
白い外壁に仕上げ、芝生や花を植える。
近隣住民にも挨拶し、洗濯屋の宣伝まで行う。
前世で会社員だった経験が、こういうところに表れているのかもしれない。
ただ、建築の進み方があまりにも早い。
普通なら専門の職人を集めて、かなりの期間をかける仕事である。
それを一人でどんどん進めてしまう。
もはや、魔法使いというより建設会社である。
近所の人々との交流。森で引きこもっていた竜馬が商売を始める変化
店舗の建築中、竜馬は近所の人々とも交流するようになる。
隣人のポリーヌや子どもたちと話し、洗濯屋の計画を説明する。
料金や利用方法も案内する。
ここで、少し不思議な気持ちになった。
第1巻の竜馬は、三年間も森に引きこもっていた。
前世の人間関係に疲れ、誰にも邪魔されない生活を楽しんでいた。
それが今では、街で店を開こうとしている。
しかも、近隣住民に自分から話しかけ、商売の説明までしている。
ずいぶん変わったものだ。
ただ、竜馬が無理をして社交的になったわけではない。
自分の好きなスライム研究が、自然と人の役に立つようになった。
その結果、周囲との関わりが増えていった。
そう考えると、納得できる。
前世では、人と関わることが苦痛だった。
しかし、異世界では自分の技術を認めてくれる人がいる。
困っている人を助ければ、感謝してくれる。
商売の相談をすれば、真剣に協力してくれる。
人間関係そのものが嫌だったのではなく、前世の環境がひどすぎたのだろう。
そんなことを感じた。
洗濯代行業者「バンブーフォレスト」。いよいよ開店直前へ
建物が完成に近づくと、竜馬は店の名前を決める。
その名も「洗濯代行業者 バンブーフォレスト」。
自分の名前である竹林を、そのまま英語にしたような店名である。
分かりやすい。
そして、看板を作り、料金表を用意し、庭も整える。
セルジュの協力で、店の運営を手伝う人員も確保する。
開業準備は、順調に進んでいく。
さらに、竜馬は完成祝いを兼ねた試験営業を計画する。
公爵家の人々。
モーガン商会の関係者。
冒険者ギルドの知人たち。
商業ギルドの関係者。
そうした人々を招くことになる。
参加者は約三十人。
いや、立派な開店イベントではないか。
しかも、竜馬は料理まで自分で準備する。
ミートソーススパゲッティーやステーキ、アップルパイなど、なかなか豪華な献立である。
店を建てて、看板を作って、宣伝して、料理まで用意する。
どこまで自分でやるつもりなのだろう。
この人、やはり仕事を抱え込みすぎる性格なのではないか。
それでも、前世と違って楽しそうなのが救いだった。
自分で考え、自分で決め、自分の店を作る。
そこには、会社から押しつけられた仕事とは違う充実感があるのだろう。
そして、物語は店の試験営業を目前にして終わる。
ここで終わるのか。
実際にお客さんが来たらどうなるのか。
洗濯屋は本当にうまくいくのか。
続きが気になるところだった。
第2巻で一番印象に残ったのは、竜馬が自立を選んだこと
第2巻では、さまざまな出来事があった。
廃坑の調査。
ケイブバットの大量討伐。
錬金術による鉄の抽出。
不良冒険者との戦闘。
ゴブリンの大群との防衛戦。
そして、洗濯屋の開業準備。
どれも面白かった。
しかし、個人的に最も印象に残ったのは、竜馬が公爵家から自立しようと決意したことだった。
竜馬は、前世で理不尽な職場に苦しんでいた。
そのため、異世界では森に引きこもり、誰にも邪魔されない生活を送っていた。
ところが、公爵家の人々と出会い、温かく迎えられる。
自分を心配してくれる人がいる。
能力を認めてくれる人がいる。
困ったときには助けてくれる人がいる。
それは、竜馬にとって大きな救いだったはずだ。
しかし、彼はその環境に甘え続けることを選ばなかった。
自分の足で立ちたい。
自分の力で生活したい。
そう考えたのである。
この決断には、少し考えさせられた。
誰かに頼ることは、悪いことではない。
むしろ、頼れる人がいるのはありがたい。
ただ、自分の人生を誰かに任せきりにすることとは違う。
竜馬は、公爵家との関係を断ち切ろうとしているわけではない。
感謝しながら、自分の生活を作ろうとしている。
その姿勢がよかった。
スライム研究が仕事になる。好きなことが人の役に立つ面白さ
もう一つ印象に残ったのが、スライム研究の広がりだった。
竜馬は、最初から商売をするつもりでスライムを研究していたわけではない。
森で一人暮らしをしている間、興味があったから育てていた。
餌を変え、能力を調べ、種類を増やす。
それを三年間も続けていた。
普通なら、変わった趣味で終わってしまいそうである。
しかし、その研究成果が街で役に立ち始める。
ゴミ処理。
汲み取り槽の清掃。
魔獣の死体処理。
戦闘支援。
衣服の洗浄。
さらには、防水素材や糸の製造までできる。
これだけ用途があれば、商売につながるのも当然だろう。
ただ、興味深かったのは、竜馬が自分の研究を無理に売り込もうとしていないことだった。
まず、自分が便利だと思うから使う。
困っている人がいれば、その能力で助ける。
すると、周囲が価値に気づく。
そこから仕事が生まれる。
この流れが自然だった。
好きなことを続けていれば必ず仕事になる、という単純な話ではない。
しかし、長く積み重ねてきた知識や技術が、思いがけないところで役に立つことはある。
竜馬のスライム研究を見ていると、そんな可能性を感じた。
ブラック企業時代と違い、自分で仕事を選べるようになった竜馬
第1巻から続けて読んでいると、竜馬の働き方の変化がよく分かる。
前世では、仕事を押しつけられていた。
上司や部下の都合に振り回され、自分の意思で仕事を選ぶ余裕もなかった。
ところが、異世界では違う。
廃坑の管理を引き受けるのも、自分の判断である。
洗濯屋を始めるのも、自分で思いついたことだ。
商業ギルドへ登録し、土地を購入するのも、自分で決めている。
もちろん、セルジュに話を大きくされてしまうところはある。
それでも、最終的には竜馬自身が納得して進めている。
ここが大きな違いだと思った。
同じように忙しく働いていても、誰かに強制されるのと、自分で選んで取り組むのとでは感じ方が違う。
竜馬は、異世界でも相変わらず働きすぎている。
しかし、今度は少なくとも、自分の意思で動いている。
そして、その仕事を楽しんでいるように見える。
だからこそ、読んでいて前世ほどつらく感じないのだろう。
ただし、身体を壊してしまっては意味がない。
そこだけは、少し心配である。
特別書き下ろしで描かれる地球の職場。竜馬がいなくなってもひどかった
巻末の特別書き下ろしでは、竜馬が死亡した後の地球の様子も描かれる。
これが、なかなか嫌な話だった。
竜馬が出社しなくなっても、会社の人々は最初から心配するわけではない。
仕事を放り出したのではないか。
無断欠勤しているのではないか。
そんな反応を見せる。
そして、上司の指示で同僚たちが竜馬の自宅を訪ねる。
そこで、竜馬がすでに死亡していることが判明する。
何とも後味が悪い。
しかも、訪問した社員の一人は、現場で騒ぎを起こしてしまう。
結局、警察にまで拘束される騒動になる。
ここまで読んで、改めて思った。
竜馬は、あの会社から離れられてよかったのかもしれない。
もちろん、死亡してしまったこと自体は悲しい。
しかし、あの職場に居続けていたら、いつまでたっても報われなかったのではないだろうか。
一方、異世界では、竜馬を心配してくれる人たちがいる。
仕事を認めてくれる人たちがいる。
そして、自分で店を持とうとしている。
この対比が、何とも印象的だった。
前世の竜馬が失ったものは大きい。
しかし、新しい世界では、それ以上に大切なものを少しずつ手に入れているように感じた。
まとめ|Fランク冒険者から洗濯屋の店主へ。竜馬の新しい人生が本格的に動き出す
『神達に拾われた男』第2巻は、竜馬が冒険者として実績を積みながら、自分の生活を作り始める物語だった。
廃坑調査では、エリアリアお嬢様の実戦訓練を手伝う。
見た目は幼い少年なのに、護衛たちと連携して戦闘を進める姿が面白かった。
大量のケイブバットをサウンドボムで一網打尽にする場面も、竜馬らしい。
魔法を戦闘だけでなく、研究や実験として楽しんでいるところがいい。
さらに、錬金術で廃坑の土から鉄を抽出するなど、相変わらず規格外の能力を見せてくれる。
冒険者としてはFランクだが、実力はCランク以上。
そのギャップも楽しかった。
一方、不良冒険者との騒動では、竜馬の冷静な強さが印象に残った。
弱い冒険者たちを守るために介入し、相手が武器を抜けば容赦なく無力化する。
しかし、必要以上に暴れたり、独断で処罰したりはしない。
後始末はギルドに任せる。
このあたりに、前世で積み重ねてきた経験が表れているように感じた。
そして、今回最も大きな変化だったのが、公爵家からの自立を決意したことだ。
竜馬は、ようやく安心できる人間関係を手に入れた。
しかし、そこに甘え続けるのではなく、自分の力で生活しようとする。
公爵家の人々も、その決意を尊重してくれる。
この関係が温かかった。
さらに、ゴブリンの大規模討伐では、スライムたちが大活躍する。
二千匹を超えるゴブリンを相手に、防衛線を支え続ける。
弱い魔物として扱われていたスライムが、戦闘でも補給でも役に立つ。
三年間の研究が、ここで大きな成果を見せたわけである。
そして、戦闘後の清掃をきっかけに、竜馬は洗濯屋を始めることになる。
最初は小遣い稼ぎのつもりだった。
ところが、セルジュに相談した結果、商業ギルドへの登録、土地の購入、店舗建築と、どんどん話が大きくなる。
最後には、立派な洗濯屋「バンブーフォレスト」が完成する。
ここまでくると、もはや冒険者というより経営者である。
それでも、竜馬は楽しそうだった。
前世では、会社に振り回されていた。
しかし、今度は自分で仕事を選び、自分の技術を使い、自分の店を作っている。
この違いが大きい。
読んでいて感じたのは、竜馬が本当に取り戻したかったのは、働かなくてもいい生活ではなく、自分の意思で生きられる生活だったのかもしれないということだった。
仕事そのものが嫌いだったわけではない。
理不尽な人間関係に疲れていただけなのだろう。
だからこそ、今は忙しくても楽しそうに見える。
もっとも、やはり働きすぎではある。
廃坑を管理し、冒険者として討伐に参加し、スライムを研究し、洗濯屋まで経営する。
いったい、いつ休むつもりなのだろう。
第2巻は、洗濯屋の試験営業を目前にして終わる。
実際に店が開いたら、どんな騒動が起きるのか。
セルジュの期待どおり、商売はうまくいくのか。
そして、竜馬は本当に公爵家から自立できるのか。
続きが楽しみになった。
ただ、最後に一つだけ言いたい。
ブラック企業から解放されたのだから、今度は自分で自分をブラック企業の社員にしないでほしい。
竜馬の働きぶりを見ていると、どうしてもそう思ってしまうのである。

最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:報酬受領と魔法訓練の開始
前回の共同トイレ清掃によるイダケ病の封じ込めを成功させたリョウマは、冒険者ギルドで正式に高額の報酬を受け取る。ギルドマスターのウォーガンから、疫病の危険性や役所の責任者罷免、放置された北鉱山の廃坑討伐計画が告げられる。宿に戻ったリョウマは、公爵令嬢エリアリアの実戦訓練を兼ねた旅の予定を聞き、訓練への参加を要請される。郊外の岩場で、リョウマは水魔法を応用した弾力あるシャボン玉遊びを披露してエリアリアに魔力制御の感覚を教える。その後、カミルから各属性の初級攻撃・防御魔法を教わり、セバスからは空間把握の基礎を学んで中級空間魔法『ワープ』と『ディメンションホーム』を短時間で習得する。
第2幕:北鉱山の廃坑調査と錬金術の実演
翌日からの廃坑調査に備え、リョウマはディガー武具店でハードリザードの革鎧と短剣、投擲ナイフを購入して装備を整える。翌朝、一行は北鉱山の廃坑に到着し、エリアリアの実戦経験を積ませるため坑道の探索を開始する。多数出現したカマキリ型魔獣ケイブマンティスに対し、エリアリアが氷魔法で仕留め、リョウマは短剣術や自作の土魔法『プレイング・クレイ』を駆使して接近戦で撃破していく。
昼食時、リョウマは赤土のボタ山から鉄を取り出せる可能性に言及し、公爵夫妻の前で錬金術の魔法陣を用いて高純度の鉄インゴットを抽出してみせる。午後は音魔法『サウンドボム』で天井のケイブバットの大群を一網打尽にし、エリアリアたちからプレゼントされたメタルスライムと従魔契約を結ぶ。
帰路、ラインハルトの紹介でモーガン商会のセルジュを訪ね、鉄インゴットや防水布の買い取り取引を取り付ける。
第3幕:不良冒険者の制圧と自立の決意
翌々日、廃坑での大規模魔獣討伐が開始され、リョウマはジェフやウェルアンナらBランク冒険者たちの班に加わって魔獣を掃討する。その途上、班の捨てた獲物を拾い集めていた駆け出しの6人組冒険者と遭遇し、注意を与えつつもケイブバットの死体を譲渡する。昼休憩中、転がったメタルスライムを追ったリョウマは、先ほどの6人組がサッチ率いる冒険者集団に言いがかりをつけられ恐喝されている現場を目撃する。
仲裁に入ったリョウマに対し、サッチらが武器を抜いて襲いかかったため、リョウマは土魔法『アースフェンス』で分断し、体術でサッチの両腕を破壊して無力化、逃亡を図った者たちも『テレポート』で先回りして捕縛する。この一件で自身の攻撃性や公爵家への甘えを自省したリョウマは、宿に戻ると公爵家に対し、己を鍛え直すために自立して街に残る意志を告げる。
公爵家は3年後と6年後の再会などを条件にこれを認め、ラインハルトから廃坑の管理業務を委託される。
第4幕:ゴブリン大群の迎撃戦とEランク昇格
討伐2日目、廃坑奥部で想定外の大規模なゴブリンの村が発見され、緊急の殲滅作戦が発動される。リョウマは実力を認められて特例でEランク部隊に加わり、防衛拠点として土魔法で深い溝を掘り、底にアシッドスライムを配置して酸のプールを作る作戦を提案・施工する。
作戦が始まると本隊の奥から2000匹を超えるゴブリンが雪崩れ込み、前線が疲弊したため、リョウマはスライム軍団を前線に投入し、自身も短剣で迎撃して戦線を支える。本隊がゴブリンキングを討伐して戦闘が終結した後、リョウマはヒールスライムと共に重傷者の治療に当たり、スライムが『ハイヒール』を覚えたことも手伝って死者を出すことなく収拾させる。
討伐完了後、リョウマは大量のゴブリンの死体をスライムの餌として譲り受け、クリーナースライムで冒険者たちの装備を清掃して高い評価を得るとともに、正式にEランク冒険者へ昇格する。
第5幕:洗濯屋の構想と商業ギルドへの登録
戦後、仲間たちとの雑談の中でクリーナースライムの清掃能力を活かした洗濯屋の構想を話したところ、全員から絶賛される。数日後、モーガン商会のセルジュに相談を持ちかけたリョウマは、ゴブリンの腰布を瞬時に綺麗にする実演を行い、個人向け・集団向けの袋ごとの料金体系や割引案を提示する。セルジュはその収益性と将来性を確信し、店舗運営の支援や商業ギルドへの登録を強く勧める。翌日、セルジュに伴われて商業ギルドを訪れたリョウマは、ギルドマスターのグリシエーラやピオロ・サイオンジと面会し、「街商人」「行商人」として登録を済ませる。さらに、過去の火災により損壊していた好立地の元酒場・宿屋の敷地(約20m×40m)を小金貨650枚(諸税・年会費含む)で購入する。
第6幕:店舗の急速建設と完成祝いの準備
購入した土地において、リョウマはスカベンジャースライムに雑草を食べさせ、防音結界を張った上で建物の解体を進める。地下1階・地上2階の構造を設計し、土魔法『クリエイト・ブロック』や『ペイブメント』で強固な基礎と壁を構築する。さらに新魔法『サークルソー』『ポリッシュホイール』を開発して木材を加工し、内装を木造風に整え、外壁には生石灰から作った白い石材を貼り付けてスティッキースライムの粘着液でコーティングする。
隣人の花屋ポリーヌから種を購入し、木魔法『グロウ』で庭に芝生と花を茂らせ、看板を制作して店名を「洗濯代行業者バンブーフォレスト」と定める。
公爵家、冒険者ギルド、商業ギルド、テイマーギルドの関係者約30名を招くプレオープン兼完成祝いを3日後に控え、大量の食材を仕入れて下ごしらえを進め、教会の神託でクフォから精神の幼児退行について教わった後、翌日の開催に向けて休息を取る。
主要な転換点
転換点:サッチら不良冒険者との武力衝突
- それ以前の状況:リョウマは公爵家の庇護を受け、宿や食事を提供されながら冒険者としての活動を行っていた。
- 出来事:6人組の少年少女を恐喝するサッチらに対し、リョウマが介入して土魔法と体術で圧倒し、全員を拘束した。
- 変化:サッチらの言動に強い怒りを覚えたことで自身の精神的な未熟さや暴力性を自覚し、公爵家に甘え続けている現状に強い危機感を抱いた。
- 次への影響:公爵家から離れて自立する決意を固め、公爵家へその意志を伝える契機となった。
転換点:公爵家への自立宣言と廃坑管理の受託
- それ以前の状況:リョウマは公爵家と共に旅を続け、いずれガナの森へ戻るか同行を続けるか迷っていた。
- 出来事:リョウマが自らの意志で公爵家からの自立を申し出たところ、公爵家はこれを受け入れ、定期報告や数年後の再会を約束させた上で、ラインハルトから廃坑の管理業務を委託された。
- 変化:公爵家の同行者から、ギムルの街を拠点に自活する独立した冒険者・管理者へと立場が変化した。
- 次への影響:廃坑を自由に使える活動拠点として確保し、街で自立するための安定した収入源(副業)を本格的に模索し始めることになった。
転換点:ゴブリン大群の迎撃戦とスライムの実戦投入
- それ以前の状況:廃坑の魔獣討伐は小規模な魔獣を対象とした平穏な駆除作業として進められていた。
- 出来事:想定外の巨大なゴブリン集落から2000匹を超える敵が押し寄せ、リョウマはアシッドスライムの酸プールやスライム軍団を前線に投入して戦線を死守した。
- 変化:多数の冒険者の前でスライムの高い実戦能力と清掃能力が実証され、リョウマはEランク冒険者への昇格を果たした。
- 次への影響:冒険者たちの間でクリーナースライムの清掃能力への需要が極めて高いことが判明し、「洗濯屋」を開業する具体的な着想へとつながった。
転換点:商業ギルドへの登録と店舗用地の購入
- それ以前の状況:リョウマは露店や各戸訪問による小規模な副業として洗濯の仕事を考えていた。
- 出来事:セルジュに相談したことで事業の規模と収益性の高さが指摘され、商業ギルドに登録して元酒場の広い土地を購入した。
- 変化:個人の雑用仕事から、店舗を構えて従業員を雇う本格的な事業者(店主)としての道を歩むことになった。
- 次への影響:自力での大規模な店舗建設工事の開始と、プレオープンに向けた各ギルドや公爵家を巻き込む事業展開へと発展した。
リョウマを中心とした人物関係の変化
エリアリア・ジャミール
- 開始時:互いに魔法に関心を持つ同年代の友人。
- 主な出来事:シャボン玉を用いた魔法制御の訓練、北鉱山の廃坑探索での共闘、リョウマの自立宣言、夜遅く帰宅したリョウマへの心配による涙の叱責。
- 巻末時:リョウマの自立を認めつつも、3年後と6年後の長期休暇での再会を約束し、より深い友情と信頼で結ばれた。
ラインハルト・ジャミール
- 開始時:森から連れ出してくれた恩人であり、保護者的な公爵当主。
- 主な出来事:錬金術による鉄抽出の確認、モーガン商会の紹介、リョウマからの自立申し出の受諾と廃坑管理業務の委託。
- 巻末時:単なる保護対象から、廃坑管理や商品供給を任せられる信頼の置ける個人・協力者としての関係へ進展した。
ウォーガン
- 開始時:新人冒険者とそれを見守るギルドマスター。
- 主人公の出来事:疫病処理の報酬支払い、サッチ拘束事件の不問判定、ゴブリン戦でのEランク部隊への登用、Eランク昇格の認可。
- 巻末時:リョウマの実力と人柄に全幅の信頼を置き、ギルドの重要案件を安心して任せられる関係となった。
セルジュ・モーガン
- 開始時:ラインハルトの紹介で訪れた初対面の高級商会会頭。
- 主な出来事:鉄インゴットや防水布の買い取り取引、クリーナースライムの実演、洗濯屋ビジネスの相談、商業ギルドへの推薦と人員派遣の約束。
- 巻末時:リョウマの才能と製品の将来性に強い確信を持ち、店舗経営を全面的に支援するビジネスパートナーとなった。
6人組冒険者(ベックら)
- 開始時:リョウマたちの獲物を無断で拾い集めていた不審な駆け出し冒険者。
- 主な出来事:サッチらによる恐喝からの救出、生活困窮と住民税の事情聴取、ゴブリン戦での共闘。
- 巻末時:疑念や見下しが解消され、リョウマの実力と恩義に深く感謝する良好な関係となった。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
リョウマは前世の経験から、自身を「42歳の精神を持つ大人であり、感情を制御すべき存在」と捉えており、サッチらに苛立ちを覚えたことに対して「精神的な自制心が足りず、暴力に頼りかけたのではないか」と自省している。また、自身の能力や魔法、スライムの活用については「前世の知識や森でのサバイバルの延長に過ぎない」と考え、公爵家の厚意に甘えすぎていることに強い罪悪感を抱き、1日100スートの生活費を地道に稼いで自立することを重視している。
周囲からの評価
- 公爵家(ラインハルト、ラインバッハ、エリーゼ、セバス):「卓越した魔法技術と知識を持ち、礼儀正しく勤勉だが、あまりにも真面目すぎて自分を追い込み、他人に甘えることを知らない心配な少年」として深く慈しまれている。
- 冒険者仲間(ジェフ、ウェルアンナら):「外見は幼く大人しそうに見えるが、実際にはブラックベアーを単独討伐できるCランク以上の実力を持ち、スライムを自在に操る頼もしい仲間」として認めている。
- セルジュ・モーガン:「11歳にして既存の常識を覆す製品や優れた経営戦略を生み出す、計り知れない将来性を持った天才的な事業家」として畏敬の念を抱いている。
- 商業ギルド(グリシエーラ、ピオロ):「若さに似合わぬ真面目さと商才を持ち、スライムという独自の強みを活かして大儲けを狙える有望な商人」として歓迎している。
認識の差が現れた場面
- 魔法習得速度と魔力量の行使:リョウマは『ワープ』や『ディメンションホーム』の習得、魔法による建築工事を「集中して練習した結果の普通の作業」と考えていたが、セバスや公爵家の人々にとっては「宮廷魔導士でも倒れるほどの魔力を惜しげもなく注ぎ込み、短時間で最高難度の魔法をものにする異常な働きぶり」であった。
- 洗濯屋の事業規模:リョウマは「空いた時間に最低限の生活費(1日100スート程度)を稼ぐためのささやかな副業」として構想していたが、セルジュや商業ギルドにとっては「市場に一石を投じ、莫大な富を生み出す可能性を秘めた大規模な新産業」であった。
- 不良冒険者制圧後の自己評価:リョウマ自身は「感情に任せて暴力を振るってしまい、自制心を欠いた危険な行動」と深く落ち込んでいたが、ウォーガンらギルド側は「人質を取られかねない危機的状況で少年少女を完全に守り抜いた、正当かつ見事な制圧・人助け」と評価していた。
備忘録
2章 1話 休日の昼下がり
寝坊と急ぎのギルド訪問
リョウマは昼近くに目覚め、ギルドへの遅刻に気づいた。急いで準備を済ませ、隠蔽と肉体強化、テレポートの魔法を駆使してギルドへ向かった。到着した部屋では、既に全員が揃っており、ギルドマスターから報酬が分配された。リョウマは大量の報酬を得たが、それはイダケ病という危険な疫病の封じ込めに成功したことが理由であった。
イダケ病の脅威と役所の問題
ギルドマスターから、イダケ病の詳細が語られた。その病気は広がりやすく、後遺症が深刻で、生き残っても生活が困難になると説明された。また、今回の問題で役所の責任者は罷免され、多くの役人が処分を受けた。掃除の仕事はギルドに任されることになり、ギルドマスターは今後の対応に頭を悩ませていた。
リョウマの過去と今後の展望
リョウマは、ギムルに来るまでの経緯を説明した。彼が森での自給自足生活を語ると、周囲は驚きつつも感心した。ギルドマスターは、リョウマの自由な選択を尊重しつつ、街に留まるよう提案した。さらに、廃坑となった鉱山での魔獣討伐依頼が告知され、解散となった。
お嬢様との魔法訓練の誘い
宿に戻ると、お嬢様がリョウマを昼食に誘い、訓練への参加を提案した。ジャミール公爵家の習わしとして、若者が旅と実戦訓練を経験することが説明され、リョウマも訓練に参加することとなった。
シャボン玉魔法と訓練の開始
訓練場所でリョウマは、水魔法を応用したシャボン玉を披露した。お嬢様や周囲の者たちは、その美しさに感嘆した。リョウマは魔法の細かいコツを教え、お嬢様も粘りのあるシャボン玉を成功させた。魔法を楽しむ様子に、リョウマも満足感を覚え、今後のさらなる訓練への意欲を感じていた。
2章 2話 魔法の訓練
シャボン玉遊びの終了と訓練の開始
訓練が始まる際、お嬢様は引き続き魔法の制御訓練を行うことになった。一方、リョウマは攻撃魔法の指導を希望し、カミルがその役目を担うこととなった。安全のため、お嬢様とリョウマは別の場所で訓練を行うことが決まった。
攻撃魔法の習得
リョウマはまずカミルの手本を見ながら、火属性の『ファイヤーアロー』をはじめとする複数の初級攻撃魔法を習得した。カミルはリョウマの習得速度の速さに驚きつつも、スムーズに次の魔法を教えた。その後、防御魔法の指導にも移り、こちらも同様に迅速に習得が進んだ。
空間魔法の指導開始
リョウマの魔法習得速度の速さを見たカミルは、空間魔法の指導をセバスに引き継いだ。セバスはリョウマの実力を確かめるため、まず『テレポート』の使用を確認した。リョウマの動きの自然さと熟練度に驚いたセバスは、次に中級魔法『ワープ』の指導を開始した。
『ワープ』と『ディメンションホーム』の成功
リョウマは『ワープ』を短時間で習得し、続けて『ディメンションホーム』の練習に取り組んだ。『ディメンションホーム』の習得には時間を要したものの、リョウマは何度も挑戦を繰り返し、最終的に成功を収めた。セバスはリョウマの集中力と魔力の多さに感心し、今後の成長に期待を寄せた。
訓練の終了と帰還
リョウマは訓練の成功に満足しつつ、セバスとともにお嬢様たちの元へ戻ることとなった。彼の魔法の才能と努力は、周囲にさらなる期待を抱かせる結果となった。
2章 3話 誘いを受けて
魔法訓練後の帰還と新魔法の披露
リョウマは集中した訓練を終え、セバスと共にワープでお嬢様たちの元へ戻った。戻るとお嬢様たちは新しい魔法の習得を喜び、リョウマに披露を求めた。リョウマはカミルとセバスから教わった魔法を一通り見せ、ディメンションホームの成功も披露した。驚きを見せる一同に囲まれ、リョウマは褒められるが、年齢相応に照れた表情を浮かべた。
武器と防具の調達
廃坑での訓練を翌日に控え、リョウマはセバスの提案で防具を買うことに決めた。紹介状を使って訪れたディガー武具店で、リョウマは短剣2本と投擲用ナイフ10本を購入した。また、動きやすく丈夫なハードリザードの革鎧を選んだ。店主ダルソンの説明を聞き納得したリョウマは、装備を整えて宿へ戻った。
廃坑へ向かう道中
翌朝、リョウマたちは馬車で北鉱山へ向かった。お嬢様は初めての実戦訓練に少し緊張していたが、ラインハルトと家族が温かい言葉をかけ、リラックスさせようとしていた。道中では訓練の目的として、廃坑内の魔獣の調査と情報収集が挙げられた。これは冒険者ギルドへの依頼内容を決定するための準備であり、同時にお嬢様の実戦経験を積む機会であった。
2章 4話 廃坑調査
坑道探索の開始
リョウマたちは目的地である廃坑に到着し、調査を開始した。廃坑は長い間放置されており、草や蔦で覆われた入口が荒廃を物語っていた。護衛のジルたちと共に、リョウマとお嬢様は一列になって坑道へと進んだ。内部は暗く、廃坑特有の湿気が漂っていたが、ジルが光魔法「ライト」を使い明かりを確保した。
ケイブマンティスとの初戦闘
坑道内を進むと、大型のカマキリ型魔獣ケイブマンティスが現れた。ジルとゼフから説明を受けたお嬢様は、魔法「アイスアロー」で魔獣を撃破した。一度目は外したものの、すぐに軌道を修正し見事に仕留めた。その後、リョウマは4匹のケイブマンティスと対峙し、短剣と「肉体硬化」を駆使して的確に仕留めた。リョウマの動きは護衛たちからも高評価を得た。
増える魔獣と疲労
坑道内の魔獣は徐々に数を増やし、連戦が続いた。お嬢様は氷魔法で援護しつつも、慣れない戦闘と環境の影響で疲労が見え始めた。リョウマはこれを察して休憩を提案し、全員で坑道内で一息つくことにした。
土魔法「プレイング・クレイ」の活用
休憩中、リョウマが戦闘で使用した「プレイング・クレイ」について護衛たちが興味を示した。この魔法は土や石を粘土状にするもので、リョウマが独自に開発したものだった。護衛たちはその発想力に驚きつつも感心した。リョウマのスライムたちは魔獣の片付けを続け、探索は順調に進んでいった。
2章 5話 本物の錬金術
廃坑探索の一区切り
リョウマたちは最初の坑道の調査を無事に終え、外へと出た。清々しい空気を吸いながら集合場所へ向かう途中、廃坑周辺の景色を眺めて気を休めた。赤土のボタ山を目にしたリョウマは、土砂に含まれる鉄分を錬金術で取り出せる可能性を思い、少しの間考え込んでいた。
調査報告と昼食
集合場所に到着すると、リョウマとエリアは公爵夫妻に午前中の戦果を報告した。エリアは魔法を駆使して健闘したことを誇らしげに話し、リョウマが接近戦で助けてくれたことにも感謝を述べた。報告後、全員で昼食をとりながら、午前の探索の感想や今後の計画について語り合った。
錬金術の提案
昼食の途中、エリアがお嬢様がリョウマに「勿体無い」と呟いていた理由を尋ねたことをきっかけに、リョウマは赤土から鉄を抽出できる可能性について語った。彼は錬金術の技法で酸化鉄から鉄を取り出せると説明し、ラインハルト公爵から試してみるよう提案を受けた。
錬金術の実演
食後、リョウマは簡単な魔法陣を描き、錬金術を用いて赤土から鉄を抽出した。工程は成功し、高純度の鉄を得ることができた。しかし、純度が高すぎるため通常の用途には向かないと判断し、不純物を混ぜる「混合」の魔法陣を用いて鉄を調整した。この結果、鉄の色合いが通常の鉄に近づき、加工に適したものになった。
鉄の品質検証の提案
リョウマは作った鉄の品質を確認するため、ラインハルト公爵に適切な商人や鍛冶職人を紹介してもらうことになった。ラインハルトは検討に没頭し始め、午後の探索には参加しなかった。この結果、エリアは少し不満そうだったが、リョウマはどう対応するべきか迷いながらも午後の調査に向けて準備を進めた。
2章 6話 午後の探検と贈り物
午後の訓練の開始
午後の訓練はラインハルトが不参加となり、リョウマ、お嬢様、奥様、ラインバッハの4人で行われた。公爵夫妻から課題が与えられ、お嬢様が主導して行動を決める形式となった。新たな坑道へ踏み込むと、苔むした壁と暗闇が広がっていた。リョウマは探査魔法の実践的な使い方を説明し、器を用いて魔力の流れを視覚的に示した。お嬢様はその方法を試みて魔法を発動したが、魔力の使用量が多すぎる問題点が浮き彫りとなった。
ケイブバットへの対処法
探査により、広い空間の天井にケイブバットが大量に棲息していることが判明した。ケイブバットは弱い魔獣だが、その数が膨大であったため、一網打尽にする方法が求められた。リョウマは音魔法『サウンドボム』を提案し、坑道の安全性を確認した後に実施することとなった。遮音結界で音の影響を抑えつつ、ビッグスティッキースライムの網を用意し、実験を開始した。結果、『サウンドボム』によりケイブバットは一撃で気絶し、スライムがそのほとんどを処理した。
鉄のインゴット作り
午後の訓練終了後、ラインハルトが鉄のサンプルを依頼した。リョウマは錬金術を用いて長方形のインゴットを迅速に作成した。作業は短時間で完了し、ラインハルトへ引き渡された。その後、スライムの分裂と訓練を行いながら広場で過ごした。
メタルスライムとの契約
訓練中に戻ってきたお嬢様と奥様から、メタルスライムをプレゼントされた。このスライムは金属の特性を持ち、リョウマはすぐに従魔契約を結んだ。さらに餌として鉄分を含む赤土を与える実験を計画し、ボタ山から必要な土砂を持ち帰る準備を整えた。
スライムの訓練
リョウマはスライムを戦闘訓練で育成し、その特性を活かした戦術を教えていた。柔軟な体と核を守る性質を利用して防御と回避を重視し、一部のスライムは武器を使えるまで成長していた。これに対し、公爵夫妻は驚きつつもテイマーギルドでの講習を勧めた。
帰路の準備
訓練の合間にスライムの分裂や契約を進めたリョウマは、赤土を大量にディメンションホームへ収容した。鉱山での活動を終え、リョウマは収穫物と共に帰路につく準備を整えた。
2章 7話 モーガン商会
午後の訓練の開始
午後の訓練はラインハルトが不参加となり、リョウマ、お嬢様、奥様、ラインバッハの4人で行われた。公爵夫妻から課題が与えられ、お嬢様が主導して行動を決める形式となった。新たな坑道へ踏み込むと、苔むした壁と暗闇が広がっていた。リョウマは探査魔法の実践的な使い方を説明し、器を用いて魔力の流れを視覚的に示した。お嬢様はその方法を試みて魔法を発動したが、魔力の使用量が多すぎる問題点が浮き彫りとなった。
ケイブバットへの対処法
探査により、広い空間の天井にケイブバットが大量に棲息していることが判明した。ケイブバットは弱い魔獣だが、その数が膨大であったため、一網打尽にする方法が求められた。リョウマは音魔法『サウンドボム』を提案し、坑道の安全性を確認した後に実施することとなった。遮音結界で音の影響を抑えつつ、ビッグスティッキースライムの網を用意し、実験を開始した。結果、『サウンドボム』によりケイブバットは一撃で気絶し、スライムがそのほとんどを処理した。
鉄のインゴット作り
午後の訓練終了後、ラインハルトが鉄のサンプルを依頼した。リョウマは錬金術を用いて長方形のインゴットを迅速に作成した。作業は短時間で完了し、ラインハルトへ引き渡された。その後、スライムの分裂と訓練を行いながら広場で過ごした。
メタルスライムとの契約
訓練中に戻ってきたお嬢様と奥様から、メタルスライムをプレゼントされた。このスライムは金属の特性を持ち、リョウマはすぐに従魔契約を結んだ。さらに餌として鉄分を含む赤土を与える実験を計画し、ボタ山から必要な土砂を持ち帰る準備を整えた。
スライムの訓練
リョウマはスライムを戦闘訓練で育成し、その特性を活かした戦術を教えていた。柔軟な体と核を守る性質を利用して防御と回避を重視し、一部のスライムは武器を使えるまで成長していた。これに対し、公爵夫妻は驚きつつもテイマーギルドでの講習を勧めた。
帰路の準備
訓練の合間にスライムの分裂や契約を進めたリョウマは、赤土を大量にディメンションホームへ収容した。鉱山での活動を終え、リョウマは収穫物と共に帰路につく準備を整えた。
2章 8話 大規模な討伐依頼
冒険者ギルドでの依頼の手続き
リョウマは廃坑山の魔獣討伐依頼の手続きのため、冒険者ギルドを訪れた。ギルドマスターに呼ばれ、廃坑内で確認された魔獣の情報を提供する。討伐対象はケイブマンティス、ケイブバット、スモールラットなどで、特にメタルスライムの存在が話題となった。また、汲み取り槽の掃除依頼も受け、スライムの処理能力の向上を活かしてすべて引き受けることを約束した。
スライムの管理と昇格条件の達成
リョウマは自身が保有するスライムの数を確認し、合計で4,310匹に上ることに驚かれた。ギルドの手続き中、受付のメイリーンから、前回の汲み取り槽の掃除依頼による成果でFランクに昇格していることが告げられた。また、Eランクへの昇格条件を満たす可能性も見込まれ、順調にランクを上げていることを確認した。
討伐依頼への準備
翌日、リョウマは討伐依頼に参加するため冒険者ギルドに向かった。ギルド前には多くの冒険者が集まり、賑わっていた。そこで知り合いのジェフ、レイピン、シェールと再会し、共に討伐に向かうこととなった。道中の雑談で、リョウマが討伐後の魔獣の死体をスライムの餌として買い取る計画を話し、驚かれながらも納得される。
討伐班の編成と戦力確認
現地でギルドの指示に従い、リョウマは知り合いばかりの班に編成された。班の戦力確認では、リョウマが主に土属性の魔法や雷、氷属性の攻撃魔法を使い、飛行系魔獣を担当する役割を担った。他の班員は近接戦闘や回復を得意としており、バランスの取れた布陣で討伐を開始した。
討伐の開始
班員たちと役割を分担しながら、リョウマは洞窟内で討伐を進めた。魔法を駆使してケイブマンティスやケイブバットを効率的に処理しつつ、班全体の連携を強化する行動を取った。討伐活動は順調に進行し、リョウマの魔法と戦闘技術が大いに役立った。
2章 9話 一般的な冒険者
弱い魔物との戦闘とリョウマの実力
新たな坑道での戦闘はスモールラットやスライムばかりで手応えがなく、リョウマたちは軽い調子で進んでいった。途中、リョウマが自分のFランクについて疑問を抱き、班員たちから実力を評価されていると聞かされる。リョウマがガナの森でブラックベアーを討伐した経験を明かすと、班員たちは彼がCランク相当の実力を持つと判断し、ギルドマスターの配慮で班に配属されたのだと納得した。
後をつけていた冒険者との出会い
坑道を進む中、リョウマたちは後ろから自分たちをつけていた6人組の冒険者と出会った。彼らはGランクやFランクの駆け出し冒険者で、生活費に困り、リョウマたちが捨てた魔物の死体を拾い集めていた。ウェルアンナが彼らを叱責するも、ミーヤやシリアが配慮し、拾った死体を持ち帰ることを許可した。また、彼らにケイブバットの群れ討伐の手伝いを依頼し、協力する形となった。
ケイブバットの群れの討伐
リョウマは自作の魔法「サウンドボム」を使い、ケイブバットを一斉に気絶させることに成功した。手際よく作業を進めた結果、ケイブバットの群れを殲滅することができた。この実力を目の当たりにした6人組はリョウマを見直し、彼への疑念を抱いていたことを反省した。
リョウマの外見と実力のギャップ
作業後、班員たちはリョウマの戦闘能力が外見からは想像できないと語った。リョウマ自身も盗賊に舐められることが多かったと振り返るが、返り討ちにしてきたと笑った。班員たちはリョウマを「天然の罠」と冗談交じりに評価しつつ、彼の実力を改めて認めた。
昼食準備のため広場へ戻る
討伐を終えた一行は、昼食の準備が整う時間になったため、広場へと戻ることにした。道中、リョウマの実力に関する軽い談笑が交わされ、穏やかな雰囲気で次の行動に備えることとなった。
2章 10話 魔獣討伐の休憩時間
昼食後のスライムの世話
冒険者広場で昼食を終えたリョウマは、手持ち無沙汰となりスライムの世話をすることを決めた。仮設受付で許可を得た後、受け取った魔獣の死体を使いスライムたちに餌を与えた。ポイズンやスティッキースライムが豪快に食事を進める中、メタルスライムは鉄粉を用意されるまで地面を掘る素振りを見せていた。リョウマはスライムの特徴や行動を観察しつつ、時間を過ごした。
スライムの実験とメタルスライムの弱点
リョウマはスライムの特性を知るため、毒液や酸などを用いてメタルスライムへの影響を試みた。毒液や粘着液には無反応だったが、酸には反応を見せて苦手としていることが判明した。その後、実験の過程で汚れてしまったメタルスライムを磨き上げ、球体に整えた。しかし、不意に坂の上でメタルスライムを地面に置いてしまい、球体の形状のまま転がり落ちるハプニングが発生した。
坂を転がるメタルスライムとその救出
メタルスライムは坂を勢いよく転がり、坂下の茂みで停止した。リョウマが急いで追いかけ確認したところ、スライムは動揺して固まっていたが、特に損傷はなかった。リョウマはメタルスライムの頑丈さを確かめる実験を考えつつ、再び安全な状態に戻した。
鉱山下での争いの発見
鉱山を下る途中、リョウマは争いの声を聞きつけ、声のする方向へ向かった。そこでは10人以上の冒険者たちが、かつてリョウマの班の後をつけていた6人組の冒険者を取り囲み、激しい口論を繰り広げていた。状況を観察したリョウマは、6人組が再び他人の獲物を無断で持ち去った可能性を考慮しつつも、人数で圧倒して罵声を浴びせるやり方に疑問を抱いた。
争いの仲裁と新たな展開
リョウマは場に姿を現し、双方の言い分を確認しようと試みた。6人組がリョウマの班から獲物を譲り受けたことを証言し、穏便な解決を提案したが、冒険者たちは反発し、6人組を責め続けた。最終的に髭面の男「サッチ」が場を収めるよう提案し、事態は収束しかけた。しかし、その直後、冒険者たちは武器を抜き、緊張が一気に高まった。
2章 11話 不良冒険者
突如現れた石柵の防御
冒険者たちの中で緊張が高まる中、リョウマは土魔法「アースフェンス」を発動させ、大きな石の柵を作り出した。これにより、6人組と敵対する男たちを隔てつつ、一部の男を牽制した。柵の効果を説明しつつ、敵の動きを分析したリョウマは、男たちが荒事に慣れていることを見抜いた。これにより、彼らの行為が単なる冒険者としての振る舞いではなく、盗賊に近いものであることを確信した。
挑発と本格的な衝突の始まり
リーダー格の男サッチは仲間たちに檄を飛ばし、リョウマへの攻撃を指示した。6人組の少年の警告を受けたリョウマは、彼らに走る準備をさせつつ、自身で敵の注意を引きつけた。さらに、敵が増長する態度や公爵家に関する話題を利用し、敵の混乱を誘うことに成功した。
反撃と撤退の指示
混乱の中でリョウマは土魔法「クリエイト・ブロック」で石材を生成し、柵を武器として利用。男たちをまとめて吹き飛ばし、6人組に逃走を促した。リョウマの迅速な対応により、6人組は無事に撤退を開始したが、サッチはなおもリョウマへの攻撃を続行しようとした。
リーダーとの一騎打ち
サッチは斧を振るいリョウマに迫ったが、リョウマは冷静に彼の動きを封じ、右腕を脱臼させたうえで左腕も骨折させた。サッチの戦闘不能により、男たちは恐れおののき、攻撃の手を止めた。
追撃者の封じ込め
一部の男が逃亡を図ったが、リョウマは空間魔法「テレポート」を用いて阻止。男たちを次々に拘束し、ギルドマスターの前で事実を明らかにする意向を示した。最終的に敵対する男たちは全員無力化され、6人組の安全は確保されたが、この対応により集合時間に遅刻することとなった。
2章 12話 鉱山の魔獣討伐・ 1日目終了
援軍の到着と拘束の引き継ぎ
リョウマが不良冒険者を拘束している最中、アサギとレイピンが現れた。6人組の少年冒険者から助けを求められ、状況を確認しに来たという。リョウマが施した拘束は、スライムを利用した万全のもので、不良冒険者たちは身動きが取れない状態であった。アサギは見張りを引き受け、リョウマに受付への報告を促した。レイピンの魔法の助けを借り、リョウマはスライムを片付けて急ぎ受付へ向かった。
ギルドマスターとの会話と評価
受付に到着したリョウマは、事情を説明し、そのままギルドマスターに呼び出された。ギルドマスターは、リョウマの行動が正当性を持つものであり、罰則を科さないことを告げた。また、不良冒険者たちのリーダーであるサッチの過去について語られた。サッチは元々真面目な冒険者だったが、Cランクで挫折し、次第に素行を悪化させていったという。信頼を寄せかけた相手に裏切られた形となり、ギルドマスターは憔悴していた。
自分への疑問と反省
馬車に揺られながら、リョウマは自らの行動を振り返った。サッチたちに苛立ちを覚えたことが自分の行動に影響を与えていなかったか、冷静さを欠いていなかったかと問い直した。さらに、この世界での自身の在り方を省み、公爵家に依存しすぎている現状に危機感を覚えた。戦闘能力には自信があるものの、精神面での自立が必要であると結論づけ、公爵家を離れる決意を固めた。
決意の確立
宿へ戻るまでの間、リョウマは自分を鍛え直し、恩に報いるために自立する道を模索することを決めた。過去の行動を省みた結果、今のままでは堕落した人間になると危惧し、自らの在り方を改める必要性を強く感じたのである。
2章 13話 報告
公爵家への決意表明
リョウマは宿に戻ると、公爵家のメンバーが集う部屋を訪れた。そこで、自立の決意を伝えた。リョウマが自らを鍛え直すために公爵家を離れたいと申し出ると、エリーゼが驚き、必死に引き止めようとしたが、リョウマの意思の強さに理解を示した。奥様やラインハルトはその意志を尊重しつつ、「無茶をせず、必ず戻ること」「定期的な報告」「困った時は頼ること」の三つを条件に挙げ、彼の決断を応援した。
エリーゼの条件と再会の約束
エリーゼはさらに独自の条件を提示し、3年後と6年後に再会する約束を提案した。リョウマもその提案を受け入れ、エリーゼと笑顔で未来の再会を誓った。これにより、リョウマの決意は固まり、彼と公爵家の絆はより一層深まった。
冒険者としての新たな使命
リョウマが自立後の生活を街周辺での冒険者活動と定めると、ラインハルトは廃坑の管理を依頼した。廃坑に魔獣が巣を作るのを防ぐため、定期的な見回りと討伐を任せたいとのことだった。リョウマはこの提案を快諾し、廃坑を訓練やスライム育成の拠点として活用することを決めた。
宿泊の申し出とリョウマの葛藤
リョウマは公爵家の厚意に甘え続けることを避けようとしたが、奥様やラインバッハの説得により、彼らが街を離れるまで宿で一緒に過ごすことを了承した。内心の葛藤を抱えつつも、その優しさに感謝し、彼らの好意を受け入れることで自分をさらに鍛え直す決意を新たにした。
新たな始まりの準備
リョウマは部屋に戻り、再び感謝の気持ちを胸に抱きつつ、自らの成長のための新たな一歩を踏み出す準備を整えた。公爵家との絆を大切にしながら、これからの冒険者としての道を力強く進む覚悟を固めた。
2章 14話 鉱山の魔獣討伐・ 2日目
ゴブリン討伐の準備と計画
リョウマは自立に向けた初日として魔獣討伐に参加していた。彼は現在の生活費や収入を考えつつ、堕落しないようにするため冒険者以外の収入源も模索する必要があると考えた。しかし考え事に集中しすぎたことで、周囲から淡々と魔獣を仕留める姿が「怖い」と評される一幕もあった。
その時、坑道でゴブリンの村が発見されるという報告が入り、緊急討伐の招集がかかった。集まった冒険者たちはギルドマスターの指示のもと作戦会議を開始し、リョウマも特例でEランクとして参加することが決まった。
ゴブリン討伐作戦の提案と準備
作戦の要としてリョウマは、自ら提案した「溝にスライムを配置し、ゴブリンを効率よく仕留める」方法を説明した。この案は戦闘経験の乏しいFランクやGランク冒険者でも安全に戦えるものとして採用された。
リョウマは他の土魔法使いと共に指定の地点で深い溝を掘り、そこにアシッドスライムを配置。溝に落ちたゴブリンを溶かすための環境を整えた。また、冒険者たちが使用するための武器としてケイブマンティスの鎌を加工し、長い棒に接着して使用できるようにした。
地形の改良と準備完了
さらに溝周辺には、弓使いや魔法使いが安全に攻撃できるよう高台を設置し、物理攻撃に耐えられる結界を張った。また、誤って溝に落ちないように手すりをつけるなど、安全性を重視した地形改良を施した。準備を終えたリョウマは、リーダーに報告し、討伐作戦の開始を待つこととなった。
再会した6人組
休憩を取る冒険者たちの中、リョウマは自身の装備やスライムを再確認していた。すると、突然声をかけられ振り向くと、昨日遭遇したあの6人組の姿があった。彼らとの再会が、討伐作戦にどのような影響を与えるのかが注目される状況であった。
2章 15話 事情聴取
冒険者たちの再会と挨拶
リョウマは討伐準備の中、前日に助けた6人組と再会した。彼らはリョウマに感謝と謝罪を伝えるため、全員で頭を下げた。リョウマが自己紹介すると、彼らもそれに応じた。6人の構成は以下の通りであった:
• 小猿人族のベック(13歳)
• 犬人族のルース(12歳)
• 大猿人族のウィスト(11歳)
• ハーフエルフのマルタ(12歳)
• ハーフドワーフのフィニア(12歳)
• 犬人族のルーミル(12歳)
6人は種族特有の身体能力を持っており、各々がその特徴を活かして冒険者として働いていたが、技術や経験の不足が課題であると判明した。
彼らが抱える問題と過去の出来事
リョウマが6人に質問を重ねると、彼らが獲物を盗む行為に及んだ理由が判明した。きっかけは住民税の支払いであった。彼らは一人400スートという税を納める必要があり、6人分で2400スートもの負担が生活を圧迫していた。
かつて彼らは汲み取り槽の掃除で収入を得ていたが、報酬が減額されたうえ、周囲から病気の危険性を指摘され、仕事を辞めざるを得なかった。その後、冒険者として稼ぎ始めたが、経験不足から効率的に収入を得ることができず、住民税を払うために不正な手段に頼る結果となった。
住民税と支援の欠如
住民税に対する救済措置についても尋ねたが、6人によると、タダ働きで埋め合わせる方法があるものの、大人の影響で仕事が得られる保証はなく、鉱山での雇用も子供であるがゆえに拒まれる状況であった。彼らの困窮は、社会的な支援の欠如が影響していることが明らかである。
リョウマの助言
リョウマは6人に現在の汲み取り槽掃除の管理がギルドによるもので、報酬の不正は起こらないと伝えた。これを聞いた6人は、再びその仕事を考慮する姿勢を見せた。リョウマは真剣に働く意志がある彼らを見て、自身のスカベンジャーに餌が必要な場合以外は掃除を任せるつもりであると考えていた。
2章 16話 集団戦闘
作戦開始とゴブリンの襲来
冒険者たちはプロリアの指揮のもと、配置に就き緊張感が漂う中、作戦が開始された。間もなくベックの報告で最初のゴブリンが確認され、その後も続々とゴブリンが現れた。冒険者たちは溝とスライムを活用し、ゴブリンを効率的に倒していった。毒矢や魔法の援護も加わり、序盤は優勢であったが、想定外のゴブリンの多さに困惑が広がった。
溝とスライムを活用した防御戦
リョウマのスライムたちはそれぞれ特性を活かして戦い、スティッキースライムが粘着液で敵を拘束し、ポイズンスライムが毒を利用して戦果を上げた。スカベンジャースライムも巧みにゴブリンを転倒させ、効果的に対処していた。冒険者たちは溝や高台を駆使し、前線を維持していたが、ゴブリンの数が増え続けたことで消耗が進んでいた。
リョウマの前線参加と反撃の開始
前線の消耗が目立ち始めたため、リョウマがプロリアに提案し、自身とスライムを前線に投入した。リョウマは短剣でゴブリンの急所を的確に狙い、次々と仕留めていった。スライムたちも武器を巧みに操り、ゴブリンに応戦し続けた。その成果により、冒険者たちは一時的に休息を取る余裕が生まれた。
戦場の安定と矢の補給
リョウマのスライムたちは戦闘に加え、使い終わった矢を回収して後方へ届ける役割も担った。これにより弓部隊の矢不足が緩和され、戦況が持ち直しつつあった。冒険者たちはリョウマとスライムの活躍に感嘆しながらも、その間に体力を回復し、再び戦闘に備えていた。
長期戦への対応
リョウマとスライムたちは引き続きゴブリンと対峙し、投擲用ナイフでゴブリンメイジを仕留めるなど、着実に戦果を挙げていった。他の冒険者たちが体力を回復するまで、リョウマたちは全力で戦闘を続け、戦線を維持する役割を果たした。
2章 17話 終わる戦い、続く戦い
戦闘の収束と救援の到着
ゴブリンを倒し続けた結果、総数が2000匹を超えた段階でゴブリンの襲来が止まった。その直後、空間魔法を使ってレイピン、アサギ、ゴードン、シェールの4人が救援に現れた。彼らの報告によると、本隊が予想以上の規模のゴブリン群と遭遇し、さらにゴブリンキングとその取り巻きであるゴブリンナイトが存在していたことが判明した。廃坑の構造はゴブリンによって掘り進められ、偵察で把握しきれなかったことが今回の混乱の原因とされていた。
救援活動とヒールスライムの成長
リョウマはヒールスライム2匹とともに救援部隊へ合流し、軽傷者から重傷者まで治療を進めた。治療の過程でヒールスライムが「ハイヒール」を習得し、回復効率が大幅に向上した。さらに、リョウマの手持ちの魔力回復ポーションが活用され、全員の治療を完了。重傷者も命を取り留め、現場は安定を取り戻した。
戦後処理と報酬の発表
戦闘後、ギルドマスターが全員に大銀貨1枚以上の報酬を約束し、冒険者たちは歓声を上げた。リョウマにはゴブリンの死体をスライムの餌として自由に使う許可が与えられた。リョウマはスライムを使い、ゴブリンの死体処理と周辺の清掃を進めた。クリーナースライムによる清掃は特に冒険者たちから高い評価を受け、全員の装備と体をきれいにした。
スライムの分裂と帰路
ゴブリンを食べたスライムたちは分裂可能となったが、従魔契約の魔力が不足していたため、回復を待つ必要があった。リョウマは乗合馬車を見送りながらスライムたちと休憩を取り、最後の馬車で帰路に就く準備を整えた。戦闘と治療、そして後処理の忙しさから、リョウマは心身の疲労を感じていた。
2章 18話 帰宅
スライムの研究と仲間との会話
リョウマは汲み取り槽の掃除仲間と共に馬車乗り場を離れた場所で休んでいた。彼らと「ゴブリンの大群が滅ぼした国」の話題になり、ゴードンの言葉を受けてレイピンがヒールスライムへの興味を示した。リョウマはヒールスライムの特性や光合成スキルについて説明し、その生態が野生での生存を難しくしていることを指摘した。また、スライムの価値が正当に評価されない現状に触れ、研究成果を公表しない理由を明かした。
洗濯屋の提案と仲間の反応
リョウマはクリーナースライムを活用した洗濯屋を思いつき、仲間に相談した。汚れを効率的に落とせるスライムの能力は冒険者や獣人族から高い評価を受け、全員が成功の可能性を肯定した。リョウマは自立のための収入源の一つとして洗濯屋の実現を検討する意向を示した。
宿での報告と新たな計画
宿に戻ったリョウマは、公爵家の面々にゴブリン討伐の結果を報告し、特にゴブリンキングの出現について詳細を伝えた。その後、6人組の困窮した状況とギルドの対応を説明し、公爵家の協力を得ることになった。また、公爵家が滞在期間中に行う予定の「グレルフロッグ」や「リムールバード」に関する活動についても知り、リョウマはその場に同行することを約束した。
スライムの分裂と就寝前の活動
その夜、リョウマはスライムの分裂と従魔契約を行った。アシッドスライム、ポイズンスライム、クリーナースライム、スティッキースライムが分裂を果たしたが、契約の途中で魔力が尽きたため、残りは翌日に回した。魔力回復ポーションの使用を控え、効率的な契約を進める計画を立てた。
2章 19話 開業の相談(前編)
魔獣討伐とスライムの成長
リョウマはスライムたちと共に魔獣討伐に従事した。スティッキースライムの特性を活かし、天井に張り付かせたり、空中で網を作るよう指示する実験を行い、多くのケイブバットを効率よく捕獲した。また、スライムたちが日々の訓練で個々の能力を着実に向上させていることを実感した。午後も小型魔獣の狩りを続け、スライムの多用途性を再確認した。
馬車の事故と街への帰還
夕方、乗合馬車の車輪が壊れ、乗客は徒歩で街へ戻ることになった。リョウマは街の夕暮れの雰囲気を楽しみながら歩き、モーガン商会を訪れた。魔力回復ポーションのお礼を伝えるためであった。
洗濯屋の提案とクリーナースライムの実演
商会のセルジュに自立計画を説明したリョウマは、クリーナースライムの能力を披露した。ゴブリンの腰布を短時間で清潔にするスライムの実力にセルジュは驚愕し、洗濯屋の成功の可能性に太鼓判を押した。
袋の選定と料金構想
リョウマは洗濯屋で使用する袋の大きさを選び、料金設定の案を示した。個人用、パーティー用、大規模集団向けの袋を用意し、薄利多売で利益を上げる計画を練った。また、洗濯物の量や顧客のニーズに応じた料金割引を提案した。
顧客層の拡大案
リョウマは鍛冶屋や建築作業従事者など汚れがちな職業の人々を対象とした営業案を説明した。職場での依頼を通じて個人顧客を増やす戦略を語り、クリーナースライムの活用がもたらす利便性を強調した。しかし、説明に熱が入りすぎた結果、セルジュを圧倒する場面も見られた。
2章 20話 開業の相談(後編)
セルジュとの会話と商業ギルドの提案
リョウマはセルジュに洗濯屋の構想を説明した際、商業ギルドへの登録を勧められた。セルジュはリョウマの計画性と行動力を評価し、ギルド登録が必要な理由や商業の仕組みについて丁寧に説明した。最終的にリョウマは商業ギルドへの登録を決意し、セルジュの協力を得ることとなった。
洗濯屋計画の拡大
セルジュはリョウマの洗濯屋が成功する可能性に強い確信を持ち、店舗運営や人員確保の支援を申し出た。リョウマは当初、規模を拡大するつもりはなかったが、セルジュの熱意に押され、最低限の協力を受け入れることにした。店舗の開設や運営については慎重に進める方針を取った。
帰宅後のお嬢様の叱責
宿に戻ると、お嬢様がリョウマの帰りの遅さを心配していたことが判明した。ゴブリンキングとの戦闘があった翌日ということもあり、彼女は非常に不安を抱いていた。リョウマはその心配に謝罪し、次回からの連絡を約束した。
スライムの成長と契約の進捗
部屋に戻ったリョウマは、スライムの分裂と契約を進めた。スティッキースライムの数が900匹を超え、ポイズンスライムとアシッドスライムは666匹に達した。クリーナースライムも倍増し、スライムたちの強化が顕著となっていた。スライムたちが新たに物理耐性や戦闘スキルを習得しており、今後の活用の幅がさらに広がることを確信した。
2章 21話 即断即決
商業ギルドでの登録手続き
リョウマはセルジュと共に商業ギルドを訪れ、ギルドマスターのグリシエーラとサイオンジと出会った。彼らはリョウマの若さに驚きつつも、その計画性や洗濯屋のアイデアを評価した。リョウマは職種として「街商人」と「行商人」を選択し、登録を無事に完了した。
洗濯屋の計画に対する反応
ギルドマスターらはセルジュから聞いた洗濯屋のアイデアに強い興味を示し、特にスライムの活用による効率的な洗濯が注目された。彼らはこの計画が大きな利益を生む可能性を認め、リョウマに成功を期待すると共に温かい言葉をかけた。
土地の選定と購入
リョウマは商業ギルドから紹介された土地を購入することを決めた。この土地はかつて酒場があった場所で、立地が良く、人目につきやすい特徴があった。しかし火事で建物が損壊しており、整備が必要であった。リョウマは土魔法やスライムを活用することで、自ら整備可能と判断し購入を決意した。
商業ギルドでの登録費用と条件
土地購入費用と商業権、地税、年会費などの支払い条件が説明された。リョウマは十分な資金を持っており、すべての条件を受け入れた。商業権や年会費の仕組みは商人の評価や信頼に関わるものであり、リョウマはこれを理解した上で対応した。
今後の建築計画
手続きが終わった後、セルジュはギルドに残り、リョウマは一人で帰路についた。リョウマは購入した土地での建築作業を楽しみにしつつ、次の段階へと進む準備を始めていた。
2章 22話 店作り・ 1
ゴブリン討伐の余波と洗濯屋の計画
昼休み中、リョウマは血まみれになった冒険者たちに助けを求められた。ジェフたちはゴブリンの巣を討伐したが、ジェフの豪快な死体処理が原因で血にまみれたという。リョウマはクリーナースライムを用いて彼らを清潔にし、感謝された。その後、洗濯屋を始める計画を伝えると、彼らは喜び、利用を約束した。集団割引の案内も興味を引き、早速利用を考える者もいた。
購入した土地の初作業
仕事を終えたリョウマはセルジュと共に購入した土地を訪れ、初めて目の当たりにした。敷地は広く、建物は崩壊していたが、リョウマはスカベンジャースライムを使い雑草を刈り、魔法で建物の解体作業を始めた。防音結界を活用し、周囲に迷惑をかけないよう配慮しながら、効率的に進めた。セルジュはこのスピードに驚きつつ、リョウマの魔力とスライムの活用力を評価した。
鉱山での魔獣討伐の完了と昇格
魔獣討伐の依頼が完了し、リョウマは正式にEランクへ昇格した。ギルドマスターからは廃坑管理についての助言と共に、洗濯屋の噂が冒険者の間で広まっていることを聞かされた。リョウマは店の建設を急ぎ、ギルド職員にも集団割引の案内を行った。
新しい隣人との出会い
土地の整備中、近所の子供たちや隣人のポリーヌと出会った。リョウマは洗濯屋の計画を簡潔に説明し、袋の使用方法と料金を案内した。ポリーヌはこの案内に興味を持ち、試しに利用することを約束した。また、隣人との交流を通じて地域の情報を得るなど、今後の活動に役立つ関係を築き始めた。
整備作業の進展
リョウマは魔法やスライムを駆使して雑草刈りや建物の解体を効率よく進めた。作業の合間には近隣の住人と交流しつつ、洗濯屋の開業に向けて少しずつ準備を整えていった。
2章 23話 店作り・ 2
建築計画の確定と基礎工事
リョウマは建物の構造を地下1階・地上2階に決定した。土地を3つの区画に分け、店舗、従業員寮、裏庭を設ける計画を立てた。基礎工事ではクリエイト・ブロックで地下室を掘り、石材を生成。土魔法「ペイブメント」を用いて地盤を強化した。スライムの力も活用し、作業を効率化しながら基礎部分を完成させた。
1階と2階の建設
3日目には地下室と1階の床、壁を硬化液と石材で構築し、4日目には2階の壁と仕切りを完成させた。順調に作業が進む中、スライムのサポートを受けつつ建物が形になっていった。
木材加工と新魔法の開発
5日目、リョウマは廃坑付近の木材を利用し、新魔法「サークルソー」と「ポリッシュホイール」を開発。これにより木材の切断と表面研磨が効率的に行えるようになった。錬金術で木材を乾燥させるが、一部の材木に割れが生じるも、柱としての使用は避けることで問題を解消した。
内装の仕上げとスライムの成長
6日目には木材で棚やカウンターを作り、粘着液をニス代わりにコーティング。内装を木造風に仕上げる中、クリーナースライムが清掃スキルを覚えていることを発見。他のスライムも木工スキルを習得し、加工速度が大幅に向上した。
外壁の変更と新素材の活用
7日目には店舗の外壁を清潔感のある白色に変更するため、石灰を用いた新しい石材を作成。スティッキースライムの粘着液でコーティングし、白い外壁が完成した。作業後、店周辺に芝生や花を植える計画を立て、隣人のポリーヌの助言を受けて芝生の種15袋と花の種を購入した。
地域住民との交流と新たな顧客獲得
ポリーヌや近隣住民と交流する中で、洗濯屋のサービスを紹介。初回無料のサービスを提供し、新たな顧客を獲得するきっかけを作った。住民からは、リョウマの迅速な建築作業とスライムの能力に驚きの声が上がり、洗濯屋の評判が広まりつつあった。
2章 24話 店作り・ 3
店名の決定と作業の進捗
リョウマは宿で広告の内容を考えつつ、店の名前に悩んでいた。気分転換に公爵家の面々とお茶を共にし、これまでの作業の進捗を報告。店舗建築がほぼ完成したと伝えたが、その無理な作業量が指摘された。魔法を多用している点で特に心配されたが、リョウマは過去の労働経験を例に挙げつつ大丈夫だと説明した。その後、店名を「洗濯代行業者 バンブーフォレスト」に決定し、広告内容を固めた。
看板制作とギルド訪問
翌日、セバスから画材を受け取ったリョウマは、看板の制作を開始。白く塗った板に店名とスライムの絵を描き、乾燥後の仕上げを計画した。その後、冒険者ギルドを訪れるも、宣伝用掲示板がないことを確認。自力での宣伝活動が必要と分かったため、まずはゴミ掃除の依頼を受けることにした。
汲み取り槽の掃除と庭整備
依頼を受け、スカベンジャースライムを使って汲み取り槽を迅速に掃除。その後、店の周囲の土にスカベンジャーが生成した肥料を混ぜ、芝生や花の種を植えた。魔法で水やりを行い、日が暮れる前に作業を切り上げた。
庭の完成と店の準備
翌日、リョウマは木属性魔法「グロウ」を使い、芝生を青々と茂らせ、花を咲かせた。さらに風魔法で芝を整えることで、店周りの環境を整備。その後、看板の仕上げや値段表の制作を行い、最低限の開業準備を完了させた。
完成祝いの計画
リョウマは店舗完成を祝うプレオープンイベントを計画。セルジュや商業ギルドの関係者、公爵家の面々、冒険者ギルドの知人たちに声をかけ、参加の確認を取った。最終的に約30名の参加者を迎えることが決定し、試験営業と完成祝いの準備を進めた。
準備完了と最終確認
リョウマはギルドで確認を取り、全参加者の予定を確定。廃坑の見回りと魔獣討伐を行った後、宿で最終確認を済ませ、いよいよ試験営業と完成祝いの日を迎える準備を整えた。
2章 25話 店作り・ 4
食材調達と料理の準備
リョウマは大量の食材を購入し、明日の店完成祝いに向けて料理の下ごしらえを行った。メニューはサラダ、ミートソーススパゲッティー、ステーキ、デザートにアップルパイであった。錬金術を活用して乾燥麺や果物ジュースを効率的に作り、準備を進めた。完成した料理は保冷庫に保管し、夕方には一通りの準備を終えた。
教会での祈りと神との再会
夕方、リョウマは思いつきで教会を訪れ、祈りを捧げた。すると再び神界の白い部屋に呼び出され、クフォと再会した。ガインとルルティアは地球を訪問中で不在であり、クフォから地球観光の理由や転移者にまつわる話を聞いた。
転移者の歴史と失伝の事情
クフォは、転移者がこの世界にもたらした技術や知識の多くが広まらず、あるいは失伝していった事情を説明した。ピオロ・サイオンジが転移者の子孫であることや、過去に聖女となった転移者が病を消し去った壮絶な物語を語った。転移者の影響力と、それに伴う問題の大きさが明かされた。
肉体と精神の影響
会話の終盤、クフォはリョウマに、転生に伴う肉体の若返りが精神にも影響を与え、微妙な幼児退行が起きていると伝えた。これが原因で感情が顔に出やすくなるなど、前世との違いが生じているという。その話を心に留めつつ、リョウマは元の世界へ戻り、教会で喜捨を行ってその場を後にした。
明日に備える休息
教会から宿に戻ったリョウマは、翌日の店完成祝いに向け、早めに休息を取ることを決めた。多くの人々を迎える準備に思いを巡らせながら、気を引き締めて次の日に備えた。
特別書き下ろし・残された人々と変化の兆し
竹林の失踪と社内の混乱
竹林竜馬が出社せず、会社では上司や同僚がその行動を非難していた。理不尽に怒鳴られる田淵や嘲笑する若手社員たちがいたが、一部の社員は触らぬ神に祟りなしと静観し、竹林の復帰を密かに願っていた。しかし竹林は姿を見せなかった。
田淵と井口の訪問
上司の指示を受けた田淵と井口は、竹林の自宅を訪れることになった。道中、井口は公共の場でも不満を漏らし、周囲に迷惑をかける態度をとった。竹林の家に到着すると、井口は騒々しく振舞い、大家や近隣住民とトラブルを起こしながらも部屋への立ち入りを試みた。
竹林の死の発覚
部屋に入ると、竹林が布団の中で眠っているように見えた。しかし、田淵が声をかけても反応がなく、触れた瞬間にその体が冷たく硬直していることに気づいた。竹林が既に亡くなっていたことが判明し、大家が警察に通報した。
警察の事情聴取と井口の暴走
警察の事情聴取が始まる中、井口は感情を爆発させて暴れ出した。結果として警察官に拘束され、公務執行妨害で逮捕された。田淵は井口の行動を謝罪しつつ、会社への報告を考えていた。
竹林の死がもたらす波紋
竹林の死をきっかけに、彼の職場環境や会社の問題点が外部に知られることとなった。偶然現場にいた雑誌記者が一連の出来事を記録し、会社の隠れた問題を暴露する可能性を示唆していた。この出来事は、竹林の死と共に会社に新たな波乱をもたらす前触れであった。
同シリーズ
神達に拾われた男












その他フィクション

Share this content:


コメント