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2027年 冬姫騎士様のヒモ白金透

小説「姫騎士様のヒモ 1」感想・ネタバレ

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姫騎士様のヒモ1の表紙画像(レビュー記事導入用) 2027年 冬

まとめ
姫ヒモ2レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. マシュー
        2. アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
        3. デズ
        4. ヴァネッサ
        5. ポリー
        6. ローランド・ウィリアム・マクタロード
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
      1. 元最強探索者がヒモになった理由。コブラを思わせる男の危うい生き方
        1. 姫騎士に小遣いをねだる主人公。第一印象は本当に情けない
        2. ヤク中の姫騎士を支えるという、あまりにも危うい関係
        3. 太陽光がなければ弱くなる。元最強探索者の残酷な呪い
        4. 強さを失ったのではなく、使える場所を奪われた
        5. ドワーフのデズとギルドでくだを巻く姿が、妙に似合っている
        6. デズは、マシューが失ったものを知っている
        7. 記憶を失っていた頃のコブラを思い出した理由
        8. ヒモなのに裏社会では恐ろしく有能。落差が大きすぎる
        9. アルウィンを守るためなら、どこまで手を汚しても構わない
        10. 一年前の出来事で、二人がヒモ関係になった理由が分かる
        11. 「ヒモになってほしい」という申し出の意味
        12. ポリーの変貌が怖い。薬物が人間を壊していく
        13. リントヴルムとの戦い。アルウィンが恐怖を乗り越える瞬間
        14. マシューは英雄なのか。それとも危険な男なのか
        15. 太陽神の呪いと「仮初めの太陽」。強さを取り戻しても自由にはなれない
        16. 呪いを力ずくで跳ね除ける場面には驚いた
        17. 最後までヒモであり続ける。マシューの選んだ生き方
        18. 「命綱」という言葉が、この関係をよく表している
        19. まとめ|情けない男の中に残る、元英雄の意地
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:日常と背後からの襲撃
        2. 第2幕:アストン兄弟の排除と森の決闘
        3. 第3幕:偽金事件と「白猿」の壊滅
        4. 第4幕:一年前の邂逅と共犯関係の始まり(回想)
        5. 第5幕:北の屋敷の惨劇とリントヴルム討伐
        6. 第6幕:隠された麻薬とヴァネッサの排除
        7. 第7幕:異形の怪物と命綱の誓い
      2. 主要な転換点
        1. 1:貧民街での襲撃とアストン兄弟の尋問
        2. 2:スターリングのアトリエ調査と偽金の鋳型発見
        3. 3:ポリーによるマシューの拉致と手首の提示
        4. 4:ヴァネッサの自宅での首飾り発見と彼女の殺害
        5. 5:怪物化したローランドとの死闘と撃破
      3. マシュー中心とした人物関係の変化
        1. アルウィン
        2. ラトヴィッジ
        3. ヴァネッサ
        4. ポリー
      4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
      5. 元英雄のヒモ
        1. 正体と過去:呪われた元・七つ星冒険者
        2. 表の顔:堕落した無能なヒモ
        3. 裏の顔:圧倒的戦闘力と泥にまみれた暗躍
        4. アルウィンとの関係:命綱としての誇り
        5. まとめ
      6. 姫騎士アルウィン
        1. 生い立ちと目的
        2. 抱える精神的負債と迷宮病
        3. マシューとの関係構造
        4. 高潔な理念と精神的脱皮
        5. まとめ
      7. 迷宮病と薬物
        1. 迷宮病の構造と治療の限界
        2. 麻薬「解放」の猛威と流通機構
        3. アルウィンが直面した苦難と克服
        4. 迷宮都市の闇を象徴する宿痾
      8. 太陽神の呪い
        1. 呪いの発端
        2. 『百万の刃』に及んだ影響
        3. マシューに課された制約条件
        4. 呪縛への抵抗と例外
        5. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 『戦女神の盾』
      1. アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
      2. マシュー(マデューカス)
      3. ラルフ
      4. ラトヴィッジ・ルスタ
      5. アンディ
      6. ジャネット
    2. 『百万の刃』
      1. デズ
    3. 冒険者ギルド『灰色の隣人』支部
      1. エイプリル
      2. ギルドマスター
      3. ヴァネッサ
      4. 黒髪の元冒険者女性職員
      5. 冒険者ギルド職員たち(集団)
    4. 冒険者
      1. ビル
      2. ネイサン
      3. ニール
      4. ナッシュ
      5. ノーマン
      6. アラン
      7. 丸坊主の大柄な冒険者
      8. 伏兵の冒険者たち(集団)
      9. 運び屋(集団)
      10. 潜り屋(集団)
      11. 街の冒険者たち(集団)
    5. マクタロード王国関係者
      1. ローランド・ウィリアム・マクタロード
    6. 犯罪組織『三頭蛇』
      1. レジー
      2. のっぽの薄ひげ
      3. 三頭蛇の手下たち(集団)
    7. 犯罪組織『白猿』
      1. テリー(「虎手」のテリー)
      2. 白猿の親分
      3. 白猿の構成員たち(集団)
    8. 街の住民・その他関係者
      1. スターリング
      2. ポリー
      3. マギー(メリンダ)
      4. セーラ
      5. シンシア
      6. オスカー
      7. ブラッドリー
      8. トビー
      9. 『双子の金羊亭』の亭主
      10. 娼館の用心棒たち(集団)
      11. 養護施設の子供たち(集団)
      12. 貧民街の物乞いたち(集団)
    9. 衛兵組織
      1. ちょびひげの衛兵
      2. 色黒の衛兵
      3. 衛兵隊(集団)
    10. 神格
      1. 太陽神アリオストル
  7. 展開まとめ
    1. 第一章 ありふれたヒモの日常
    2. 第二章 ヒモは朝まで戻れない
    3. 第三章 一年前
    4. 第四章 ヒモは世渡り上手
    5. 第五章 命綱のその先で
    6. 第六章 姫騎士様のヒモ
    7. 終章 一年前 その後

物語の概要

■ 作品概要

マシューは昼間から酒や女に溺れる無気力な男を装い、アルウィンの生活を支えつつ、太陽神の呪いにより日光が当たらない場所では無力化する身体を抱えている。

アルウィンへの横恋慕からマシューを排除しようとするパーティ仲間ラトヴィッジの襲撃、偽金事件、そして過去の愛人ポリーやマクタロード王国の元侯爵令息ローランドによる麻薬「解放」を巡る陰謀に巻き込まれたことをきっかけに状況が激変する。

マシューはアルウィンの名誉や精神を守るため、日光を浴びて力を取り戻しつつ裏で敵対者を排除していき、最終的に街を脅かす魔物リントヴルムや異形の怪物と化したローランドを討ち破り、アルウィンの命綱(ヒモ)として共に歩み続ける道を選ぶところまで状況が進む。

■ 主要キャラクター

マシュー
  • 立場・所属:アルウィンのヒモ。かつて最強と謳われた七つ星冒険者パーティ『百万の刃』の元戦士「巨人喰い」マデューカス。
  • 主人公との関係:主人公本人。
  • この巻での主な役割:裏からの脅威の排除、アルウィンの精神的・肉体的支援。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:太陽神の呪いにより日光下でしか怪力を発揮できない制約を抱えつつ、アルウィンを脅かすラトヴィッジ、偽金に関わったテリー、変貌した元愛人ポリー、怪物化したローランドを秘密裏に始末した。
    さらにアルウィンの薬物依存の秘密を守るため、真相に気づいた鑑定士ヴァネッサと絵描きスターリングをも自ら手にかけ、証拠を隠滅した。
アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
  • 立場・所属:壊滅したマクタロード王国の元王女、冒険者パーティ『戦女神の盾』リーダー、「深紅の姫騎士」。
  • 主人公との関係:マシューの同居人であり養い主。
  • この巻での主な役割:迷宮攻略の指揮、マシューが守るべき対象。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:過去のトラウマと迷宮病への恐怖から麻薬「解放」に手を染めていたが、マシューの支援と手製の飴玉により耐え忍ぶ。
    誘拐されたマギーの娘セーラをマシューと共に救出した過去を持ち、本巻終盤では因縁の魔物リントヴルムと対峙し、マシューの激励を受けて恐怖を乗り越え討伐を果たした。
デズ
  • 立場・所属:冒険者ギルド「灰色の隣人」支部の専属職員(用心棒)。ドワーフ。元『百万の刃』の戦士「移動要塞」。
  • 主人公との関係:マシューの冒険者時代からの親友。
  • この巻での主な役割:情報提供、武力支援、ギルド内の騒動抑止。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:太陽神の呪いで手先の器用さを奪われ職人の道を断たれている。
    マシューの依頼に応じて襲撃者アストン兄弟の足止めを行い、偽金騒動で疑いをかけられた際はマシューに救われる。
    ローランドの屋敷の戦闘では完全武装で駆けつけ、魔物リントヴルムとの戦闘でも共闘した。
ヴァネッサ
  • 立場・所属:冒険者ギルドの専属鑑定士。
  • 主人公との関係:マシューの知人、情報源。
  • この巻での主な役割:調査依頼主、マジックアイテムの提供。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:交際相手スターリングの不審な金回りの調査をマシューに依頼し、解決の礼として「仮初めの太陽」を譲渡した。
    かつて薬物で家庭を崩壊させた過去から薬物を激しく憎んでおり、終盤に自宅床下からアルウィンの首飾りと手紙を発見してアルウィンの薬物関与の公表を主張したため、マシューによって絞殺され遺体を焼却された。
ポリー
  • 立場・所属:底辺の娼婦。
  • 主人公との関係:マシューの一年前の同居人(元愛人)。
  • この巻での主な役割:マシューを誘拐する実行犯、薬物の被害者兼加害者。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:一年前、金目当てに知人の娘セーラを誘拐組織に売り渡し、マシューと決別した。
    その後ローランドに拾われて「解放」の中毒となり冷酷な性格へ変貌、セーラとマギーを殺害して手首を切り取る凶行に及んだ。
    マシューを拘束して「解放」の在処を迫るが、屋上バルコニーの追走劇の末に日光を浴びたマシューに指先を蹴落とされ、転落死した。
ローランド・ウィリアム・マクタロード
  • 立場・所属:旧マクタロード王国の元侯爵令息(勘当者)。
  • 主人公との関係:アルウィンの従兄弟、敵対者。
  • この巻での主な役割:一連の陰謀の首謀者、最終的な敵。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:太陽神に傾倒して家宝を寄進し勘当された身でありながら王位奪取を目論み、アルウィンを失脚させるためマシューを誘拐した。
    屋敷の乱戦時に封印されていた魔物リントヴルムを解放して逃走。終盤、太陽神の力を借りて自ら「解放」を飲み干し怪異へと変貌するが、マシューに首を引きちぎられて灰となって消滅した。

書籍情報

姫騎士様のヒモ
著者:白金透 氏
イラスト:マシマサキ 氏
出版社:KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2022年02月10日
ISBN:9784049142150

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あらすじ・内容

悪徳の迷宮都市を舞台に、 一人の『ヒモ』とその飼い主の生き様を描く!

★第28回電撃小説大賞《大賞》受賞作★

 灰と混沌の迷宮都市『灰色の隣人(グレイ・ネイバー)』。

 数多のモンスターと財宝を孕むダンジョンの鮮烈な灯りの影には、必ず害虫が潜む。そんな掃き溜めに咲く汚れなき深紅の花が姫騎士・アルウィン。王国再興を志し秘宝を求めるダンジョン攻略の急先鋒――そして彼女に集る元冒険者・マシューは、この街に数いる害虫の一人だ。

 仕事もせず喧嘩も弱い腰抜け、もらった小遣いを酒と博打で浪費するクズ、そう人は罵る。

 ――しかし、彼の本当の姿を知る者はこの街にはいない。

「お前は俺の飼い主(おひめさま)の害になる――だから殺す」

「おい、てめぇ! ただの腰抜けじゃ……ッ!」

「内緒にしてくれよ。俺たちみたいな害虫が何をしているかなんて、彼女は知らなくていいんだ」

 ――彼は自らの手を汚すことを厭わない。

「マシュー、お前は私にとって大切な命綱だ」

「君が必要とする限り、俺はこの手を離さない。言っただろ。俺は君の『ヒモ』だって」

 ――全ては姫騎士様のために。

 選考会騒然! エンタメノベルの新境地をこじ開ける、衝撃の異世界ノワール!

姫騎士様のヒモ

感想

元最強探索者がヒモになった理由。コブラを思わせる男の危うい生き方

第1巻を読んで、最初に興味を引かれたのは、主人公マシューの立場だった。

かつては最強クラスの探索者として名を知られた男。

しかし、今は姫騎士アルウィンに養われるヒモとして暮らしている。

酒を飲み、女遊びをし、働きもせず、周囲から軽蔑されている。

しかも、アルウィンから小遣いをもらって生活しているのだから、傍から見れば本当にどうしようもない男である。

ところが、読み進めると印象が変わってくる。

マシューは、ただ働きたくないからヒモをしているわけではない。

太陽神の呪いによって、日光の届かない場所では本来の力を発揮できない。

つまり、迷宮探索が中心となるこの街では、かつての実力を生かせないのだ。

探索者として生きてきた男が、探索者として働けなくなる。

かといって、別の仕事をするための学識や技能が十分にあるわけでもない。

そんな男が、薬物に依存しながら迷宮へ挑み続ける姫騎士を支えている。

この関係が、何とも危うい。

そして、マシューの言動を読んでいるうちに、ふと別の作品の主人公が頭に浮かんだ。

『コブラ』の、記憶を失っていた頃のコブラである。

普段は冴えない男に見える。

酒場でくだを巻き、周囲から軽く扱われている。

しかし、実はとんでもない過去と実力を持っている。

何かの拍子に、その本性が顔を出す。

もちろん、マシューとコブラは同じ人物像ではない。

むしろ、マシューの方がずっと陰惨で、容赦がない。

それでも、表向きの情けない姿と、隠された実力との落差には、どこか共通するものを感じた。

ただし、本作で印象に残ったのは、主人公が実は強かったという爽快感だけではない。

強かった人間が、かつての自分には戻れないまま、それでも誰かを支えようとしている。

そこに、この物語の面白さと苦さがあるように思う。

※以下、『姫騎士様のヒモ 1』の結末を含むネタバレがあります。

姫騎士に小遣いをねだる主人公。第一印象は本当に情けない

物語の冒頭、マシューはアルウィンから小遣いを受け取る。

しかし、渡された銀貨三枚では酒代が足りないと文句を言う。

その態度が、実に情けない。

自分で働いて稼いだ金ではない。

アルウィンが危険な迷宮へ潜り、命懸けで手に入れた金である。

それなのに、もっと欲しいとねだる。

さらに、アルウィンの機嫌を取るために髪を梳き、甘い言葉をかける。

これでは、周囲の仲間たちが怒るのも無理はない。

特に戦士ラルフは、マシューを露骨に嫌っている。

アルウィンを利用しているようにしか見えないのだから、当然だろう。

しかし、マシューは殴られても態度を変えない。

むしろ、軽口を叩いて相手を怒らせる。

ここで感じたのは、マシューが自分の評判をほとんど気にしていないことだった。

普通なら、少しは取り繕いたくなる。

少なくとも、アルウィンの仲間にはよく思われたいはずだ。

ところが、マシューはそんなことをしない。

周囲からヒモと呼ばれ、軽蔑されることを受け入れている。

なぜ、そこまでしてこの生活を続けるのか。

最初は疑問だった。

しかし、物語が進むにつれて、その理由が少しずつ見えてくる。

ヤク中の姫騎士を支えるという、あまりにも危うい関係

アルウィンは、ただの姫騎士ではない。

かつて王女だった人物であり、今は迷宮探索を続けている。

しかし、その心身は決して健全ではない。

迷宮で仲間を失った過去があり、恐怖や後悔を抱えている。

さらに、薬物「解放」に依存してしまった経験がある。

迷宮病の恐怖から逃れるために薬へ手を伸ばし、その代償として大切なものまで失っている。

それでも、彼女は探索をやめない。

仲間とともに迷宮へ潜り、危険な魔物と戦い続ける。

読んでいて感じたのは、アルウィンが強いから戦えているというよりも、壊れそうな自分を何とか保ちながら戦っているように見えることだった。

その彼女を、迷宮の外から支えているのがマシューである。

彼は、アルウィンの体調を気遣う。

手製の飴玉を渡す。

疲れて帰ってきた彼女のために食事を用意する。

鎧を脱がせ、湯を沸かし、体を洗う。

こうした場面を読むと、単なるヒモという言葉では説明できない関係だと感じる。

もちろん、マシューの生活態度が立派というわけではない。

アルウィンからもらった金で酒を飲み、娼館へ行く。

決して褒められるような男ではない。

それでも、アルウィンが帰る場所を整えていることは確かだ。

迷宮で戦うことはできなくても、帰ってきた彼女を支えることはできる。

マシューは、その役割を自分で選んでいるのだと思う。

太陽光がなければ弱くなる。元最強探索者の残酷な呪い

マシューの正体は、かつて七つ星パーティの英雄として知られたマデューカスである。

本来なら、街の冒険者たちとは比較にならないほどの実力者だ。

実際、日光を浴びた状態のマシューは圧倒的に強い。

敵が武器を構えていても、素手で制圧してしまう。

丸太を振り回し、複数の冒険者を一方的に倒す場面には驚かされた。

普段の情けない姿からは想像できない戦闘能力である。

しかし、その力には致命的な制約がある。

太陽神の塔を踏破した際に受けた呪いによって、日光が届かない場所では筋力を奪われてしまうのだ。

これが、あまりにも皮肉だった。

迷宮探索で名を上げた男なのに、迷宮では本来の力を発揮できない。

強さを持っているのに、必要な場所で使えない。

元最強という肩書きが、かえって残酷に感じられる。

強さを失ったのではなく、使える場所を奪われた

ここが、個人的には重要だと感じた。

マシューは、戦い方を忘れたわけではない。

経験も判断力も残っている。

敵の動きを読む能力も、裏社会の人間を出し抜く知恵もある。

しかし、肝心の身体が思うように動かない。

かつてできたことが、今はできない。

それも、努力すれば簡単に克服できるような問題ではない。

こうした設定には、単なる能力制限以上の重さを感じた。

人間は、自分が得意だったことを失うと、思った以上に生き方を変えなければならなくなる。

以前と同じ場所で、以前と同じように働けるとは限らない。

マシューもまた、探索者としての人生を続けられなくなった人物なのだろう。

だからといって、すぐに別の職業へ移れるわけでもない。

これまで戦うことを中心に生きてきた男には、ほかの仕事で暮らしていくための準備がない。

その結果が、今のヒモ生活である。

表面的には情けない。

しかし、その背景を知ると、簡単に笑えなくなる。

ドワーフのデズとギルドでくだを巻く姿が、妙に似合っている

マシューの親友として登場するドワーフのデズも、印象に残った人物だ。

彼もまた、太陽神の呪いを受けている。

現在は冒険者ギルドの職員として働いているが、かつてはマシューとともに戦っていた仲間である。

この二人のやり取りが、なかなかよい。

マシューはギルドへ顔を出し、デズと酒や仕事の話をする。

時には軽口を叩き、時には厄介事を持ち込む。

傍から見れば、仕事もせずにギルドでくだを巻いている男と、その相手をしている職員である。

しかし、二人には共通の過去がある。

かつての強さを知っている。

そして、今の不自由さも理解している。

だからこそ、必要以上に説明しなくても通じ合う部分があるのだろう。

マシューが他人には見せない一面を、デズには見せているように感じた。

デズは、マシューが失ったものを知っている

特に興味深かったのは、デズがマシューの実力を理解していることだ。

周囲の冒険者たちは、マシューをただのヒモだと思っている。

だから、平気で侮辱する。

時には暴力まで振るう。

しかし、デズは違う。

マシューが何者なのかを知っている。

そのため、彼が危険な相手に絡まれたときには、迷わず助けに入る。

この関係には、昔からの仲間らしい安心感があった。

何もかも説明しなくても、自分の過去を知っている人がいる。

今の姿だけで判断しない相手がいる。

それは、マシューにとって大きな支えなのかもしれない。

ただ、二人とも呪いによって以前のようには戦えない。

だからこそ、酒場やギルドでの何気ない会話に、少し寂しさも感じる。

昔は迷宮の奥で戦っていた男たちが、今は街で酒を飲みながら過ごしている。

その落差が、何ともいえない。

記憶を失っていた頃のコブラを思い出した理由

マシューを読んでいて、なぜか『コブラ』の主人公が頭に浮かんだ。

特に、記憶を失い、平凡な生活を送っていた頃のコブラである。

普段は冴えない男に見える。

酒を飲み、軽口を叩き、周囲からは大した人物だと思われていない。

しかし、実はとんでもない実力と過去を持っている。

何かが起きたとき、普段とはまったく違う顔を見せる。

マシューにも、そんな落差がある。

普段はアルウィンに小遣いをねだるヒモ。

ギルドでは冒険者に馬鹿にされ、殴られることさえある。

しかし、日光の下では別人のように強い。

しかも、敵を倒すための判断が速い。

この二面性が、コブラを連想させたのだと思う。

ただし、決定的に違う部分もある。

コブラには、どこか明るい冒険活劇の雰囲気がある。

一方、マシューの世界はずっと暗い。

薬物中毒。

人身売買。

裏社会の抗争。

偽金。

裏切り。

そして、容赦のない殺人。

マシュー自身も、必要だと判断すれば人を殺す。

敵を倒して終わりではなく、証拠を隠し、死体の処理まで手配する。

このあたりは、爽快なヒーロー像とは大きく違っている。

コブラのような隠された強さを持ちながら、もっと汚れた世界で生きている男。

マシューには、そんな印象を受けた。

ヒモなのに裏社会では恐ろしく有能。落差が大きすぎる

物語の序盤、マシューは何者かに襲撃される。

相手は、裏の仕事を請け負うアストン兄弟だった。

日光のない場所では本来の力を発揮できないマシューは、正面から戦おうとはしない。

財布を差し出して油断を誘う。

大声で火事だと叫び、衛兵を呼び寄せる。

そして、いったん逃げ延びる。

この場面が面白かった。

元最強探索者なのだから、敵を簡単に倒してしまいそうなものだ。

しかし、今のマシューには制約がある。

だから、知恵を使う。

相手の行動を読み、周囲の状況を利用する。

単純な力押しではない。

その後、襲撃者の正体を調べ、相手の宿へ忍び込む展開では、さらに印象が変わった。

マシューは罠を仕掛け、相手を尋問し、依頼主を突き止める。

そして、敵を容赦なく処分する。

ここまでくると、もはや単なるヒモではない。

裏社会の人間よりも、よほど裏社会に慣れている。

むしろ、こうした危険な仕事こそ、マシューの本領なのかもしれない。

ただ、そこで感じるのは爽快感だけではなかった。

マシューは、敵に対して驚くほど冷酷である。

必要と判断すれば、ためらわず命を奪う。

その姿を見ていると、アルウィンの前で見せる穏やかな態度との落差に戸惑う。

優しい男なのか。

冷酷な男なのか。

おそらく、その両方なのだろう。

アルウィンを守るためなら、どこまで手を汚しても構わない

マシューを襲わせた黒幕は、アルウィンの仲間であるラトヴィッジだった。

彼はアルウィンに好意を抱いており、マシューを邪魔者として排除しようとしていた。

この展開には、何ともいえない嫌な感じがあった。

アルウィンのためを思っているように見せながら、実際には自分の感情を優先している。

しかも、仲間の恋人を裏から殺そうとする。

それでは、アルウィンを支える人物とは言えないだろう。

マシューは、その企みを見抜いて対決する。

そして、日光の下で圧倒的な実力を見せつける。

ここは、元最強探索者らしい場面だった。

それまで殴られ、侮辱されていた男が、本来の強さを発揮する。

正体を知らなかった相手からすれば、恐怖しかないだろう。

しかし、マシューはラトヴィッジを殺さない。

アルウィンを守り続けるよう命じて、その場を去る。

この判断が印象に残った。

マシューにとって重要なのは、自分を侮辱した相手への復讐ではない。

アルウィンを守ることなのだ。

自分が迷宮へ入れない以上、彼女を支える仲間が必要になる。

だから、気に入らない相手でも使えるなら残す。

その考え方は合理的だが、同時に少し怖い。

人間関係を感情だけで判断していない。

アルウィンを生かすために、必要なものを選んでいる。

そこに、マシューの覚悟が見える気がした。

一年前の出来事で、二人がヒモ関係になった理由が分かる

物語の途中では、一年前の出来事が描かれる。

ここで、マシューとアルウィンの関係がどのように始まったのかが明らかになる。

当時のマシューは、娼婦ポリーと暮らしていた。

しかし、その関係も決して健全なものではなかった。

ポリーは金のために、知人の娘セーラを誘拐組織へ売り渡してしまう。

この展開は、かなり重かった。

生活のためとはいえ、越えてはいけない一線がある。

しかも、ポリーは罪悪感を抱きながらも、自分の苦しさばかりを訴える。

マシューが愛想を尽かすのも理解できた。

一方、アルウィンも追い詰められていた。

仲間を失い、迷宮への恐怖を抱え、薬物「解放」に依存していた。

そして、大切な翡翠のネックレスまで奪われている。

マシューは、そんな彼女を放っておけなかった。

薬物を捨てさせ、話を聞き、誘拐された子供を救うために協力する。

この一連の出来事を読むと、二人の関係が単なる金銭的な依存ではないことが分かる。

「ヒモになってほしい」という申し出の意味

アルウィンは、マシューがかつての英雄マデューカスであることを知っていた。

そのうえで、自分のヒモになってほしいと頼む。

この申し出が、妙に印象に残った。

普通なら、元最強探索者に対して、もう一度戦ってほしいと願いそうなものだ。

しかし、アルウィンは違う。

自分を癒やし、慰めてほしい。

帰る場所で待っていてほしい。

そういう役割を求めている。

マシューも、その提案を受け入れる。

ここで二人は、奇妙な形で互いを必要とする関係になったのだろう。

アルウィンは迷宮で戦う。

マシューは街で彼女を支える。

世間から見れば、働く女と養われる男である。

しかし、二人にとっては、それぞれが生き続けるための関係なのかもしれない。

そう考えると、「ヒモ」という言葉の印象が少し変わってくる。

ポリーの変貌が怖い。薬物が人間を壊していく

一年前の回想で登場したポリーは、後に再びマシューの前へ現れる。

しかし、その姿は以前とは大きく変わっていた。

薬物に依存し、残虐な行動を平然と取るようになっている。

特に、マギーとセーラの最期を知った場面は、読んでいてつらかった。

マシューが助けようとした親子が、結局は殺されてしまう。

しかも、その犯人がポリーだった。

この展開には救いがない。

一度助けたからといって、その人たちが幸せに暮らせるとは限らない。

悪意や欲望が残っている限り、悲劇は繰り返される。

そんな世界の厳しさを感じた。

マシューは、ポリーに対して最後まで情を残していたのかもしれない。

しかし、彼女が犯したことを知った後は、容赦しない。

日光を浴びて力を取り戻し、ポリーを死へ追いやる。

この場面は、決して気持ちのよい勝利ではなかった。

かつて一緒に暮らしていた相手を、自分の手で殺す。

そこに爽快感はない。

ただ、取り返しのつかないことが起きてしまったという重さが残る。

リントヴルムとの戦い。アルウィンが恐怖を乗り越える瞬間

終盤では、かつてアルウィンの仲間を殺した大蛇リントヴルムが現れる。

アルウィンにとっては、忘れたくても忘れられない相手だ。

その姿を目にした瞬間、彼女は恐怖で動けなくなる。

この反応が印象的だった。

どれほど強い騎士でも、過去の恐怖が簡単に消えるわけではない。

頭では戦わなければならないと分かっていても、身体が動かなくなることはある。

アルウィンも、その状態に陥ってしまう。

しかし、そこでマシューが動く。

日光を浴びて力を取り戻し、リントヴルムに立ち向かう。

そして、アルウィンにも恐怖を振り払うための言葉を与える。

ここで重要なのは、マシューがすべてを代わりに解決するわけではないことだ。

彼はアルウィンを守る。

しかし、アルウィン自身も剣を抜いて戦う。

彼女が再び立ち上がるためのきっかけを作る。

この関係は、二人のあり方をよく表しているように感じた。

マシューはアルウィンの代わりに迷宮へ潜れない。

だからこそ、彼女が戦い続けるための支えになる。

その役割を、今回の戦いでも果たしていた。

マシューは英雄なのか。それとも危険な男なのか

ここまで読んで、マシューを単純な英雄として評価することは難しいと感じた。

彼は確かに強い。

アルウィンを守ろうとする。

子供を助けようとする。

困っている知人に手を貸すこともある。

しかし、その一方で、必要だと判断すれば平然と人を殺す。

証拠を隠す。

相手を欺く。

自分の目的のためなら、かなり危険な手段も選ぶ。

特に終盤、ヴァネッサを殺害する展開には驚かされた。

彼女は、マシューに協力してくれた人物だった。

それでも、アルウィンの薬物中毒の秘密が公になることを恐れたマシューは、彼女を殺してしまう。

ここは、さすがに簡単には受け入れられなかった。

アルウィンを守りたいという気持ちは分かる。

しかし、そのために他人の命を奪ってよいのか。

しかも、相手は敵対組織の人間ではない。

それまで協力してくれていた知人である。

この行動によって、マシューの危うさがはっきりした。

彼は、正義のために戦っているわけではない。

アルウィンを守るという目的のために、自分なりの判断で行動している。

その判断が、必ずしも正しいとは限らない。

だからこそ、マシューという人物は面白いのだと思う。

頼もしいが、怖い。

優しいが、冷酷。

守る相手には献身的だが、それ以外の人間には残酷になれる。

そんな矛盾を抱えた主人公だった。

太陽神の呪いと「仮初めの太陽」。強さを取り戻しても自由にはなれない

物語の後半では、マシューが「仮初めの太陽」というマジックアイテムを手に入れる。

これは、光を蓄えて周囲を照らす道具である。

太陽光がなければ力を発揮できないマシューにとって、非常に重要な品だ。

実際、この道具によって夜間でも本来の力を使える場面が生まれる。

これで呪いの問題が解決するのかと思った。

しかし、そう簡単ではない。

道具には限界がある。

使えなくなれば、再び力を失ってしまう。

終盤のローランドとの戦いでは、その弱点がはっきり描かれる。

相手は太陽神の力を得て異形の怪物へ変貌する。

マシューは「仮初めの太陽」を使って応戦するものの、効果が切れて窮地に陥る。

ここは、かなり緊張感があった。

普段は圧倒的な強さを見せる男が、光を失った途端に追い詰められる。

強さと弱さの差が極端なのである。

呪いを力ずくで跳ね除ける場面には驚いた

そして、最後の戦いでは、マシューが呪いの重圧を力ずくで跳ね除ける。

この展開には驚かされた。

それまでの物語では、太陽光がなければ弱くなるという制約が絶対的なものとして描かれていた。

しかし、ここでマシューは、その限界を超えようとする。

もちろん、これで呪いが完全に解けたわけではない。

それでも、彼の中にまだ何かが残っていることは伝わってきた。

かつての英雄マデューカスとしての意地なのか。

アルウィンを守るための執念なのか。

あるいは、その両方なのか。

普段はヒモとして暮らしている男が、最後の最後で本来の強さを見せる。

この落差は、やはり魅力的だった。

最後までヒモであり続ける。マシューの選んだ生き方

ローランドとの戦いを終えたマシューは、傷だらけになりながらも街へ戻る。

しかし、周囲の人々は彼の活躍を知らない。

むしろ、いつものように情けないヒモとして見ている。

この結末が、妙に印象に残った。

普通の英雄譚なら、ここで主人公の正体が明らかになり、人々から称賛されそうなものだ。

しかし、マシューは違う。

自分が何をしたのかを誇らない。

周囲からどう思われようと、ヒモとしての生活を続ける。

なぜなら、彼にとって大切なのは名誉ではないからだ。

アルウィンが迷宮から帰ってくること。

そのときに、自分が彼女を迎えられること。

それが、今のマシューの生きる理由なのだろう。

「命綱」という言葉が、この関係をよく表している

マシューは、アルウィンの命綱であり続けようとする。

この言葉が、読後に強く残った。

命綱は、普段は目立たない。

何も起きなければ、その存在を意識することも少ない。

しかし、危険な場所へ向かう人間にとっては、なくてはならないものだ。

マシューも、そんな存在になろうとしているのだと思う。

迷宮で戦うことはできない。

英雄として称賛されることもない。

それでも、アルウィンが戻ってくる場所を守る。

彼女が折れそうになったときに支える。

必要なら、裏で手を汚すこともためらわない。

もちろん、そのやり方には大きな問題がある。

守るためなら何をしてもよいわけではない。

しかし、マシューが自分の役割を見失っていないことは伝わってきた。

だからこそ、彼はヒモという立場を受け入れているのだろう。

まとめ|情けない男の中に残る、元英雄の意地

『姫騎士様のヒモ』第1巻は、想像していた以上に暗く、重い物語だった。

タイトルだけを見ると、姫騎士に養われる男の気楽な生活を描いた作品にも思える。

しかし、実際にはまったく違う。

薬物中毒。

迷宮病。

裏社会の抗争。

人身売買。

裏切り。

殺人。

そして、太陽神の呪い。

登場人物たちは、それぞれに傷や問題を抱えながら生きている。

その中心にいるのが、元最強探索者のマシューである。

普段は酒を飲み、女遊びをし、アルウィンに小遣いをねだる。

傍から見れば、どうしようもないヒモ男だ。

しかし、実際にはかつての英雄であり、今でも日光の下では圧倒的な強さを持っている。

その落差が、まず面白かった。

そして、読んでいるうちに『コブラ』の記憶を失っていた頃の姿を思い出した。

冴えない男のように見えて、実はとんでもない人物。

普段の軽口と、本気になったときの強さ。

そんな二面性に、どこか共通する魅力を感じた。

ただし、マシューはコブラよりもずっと暗い世界に生きている。

彼は正義の英雄ではない。

アルウィンを守るためなら、他人を殺すことさえ選んでしまう。

その危うさには、何度も考えさせられた。

また、個人的に印象に残ったのは、マシューが元最強探索者でありながら、探索者として働けないことだった。

能力がなくなったわけではない。

しかし、太陽神の呪いによって、迷宮ではその能力を生かせない。

それまでの人生で積み上げてきたものが、ある日突然、使えなくなる。

その苦しさは、簡単には割り切れないものだと思う。

そんなマシューが、今はアルウィンの帰りを待つヒモとして暮らしている。

社会的には立派な生き方ではないかもしれない。

しかし、彼女にとっては必要な存在なのだ。

そして、同じ呪いを受けた親友デズとギルドでくだを巻く姿にも、どこか哀愁がある。

かつては迷宮で名を上げた男たちが、今はそれぞれの事情を抱えながら街で生きている。

その姿には、単なる強者の物語とは違う味わいがあった。

今回の第1巻を読み終えて感じたのは、人間の価値は、今どんな仕事をしているか、周囲からどう見られているかだけでは決まらないということだった。

もちろん、マシューの行動をすべて肯定することはできない。

むしろ、危険で身勝手な部分も多い。

それでも、かつての自分には戻れない男が、今の自分にできる役割を見つけている。

その姿には、妙に引きつけられるものがあった。

アルウィンは、これからも危険な迷宮へ挑み続ける。

マシューは、これからもヒモとして彼女を待ち続ける。

その関係が、いつまで保たれるのか。

そして、太陽神の呪いの先に何が待っているのか。

決して明るい物語ではないが、続きが気になる。

元最強探索者のヒモ男は、果たして姫騎士の命綱であり続けられるのだろうか。

そんな不安と興味が残る第1巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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まとめ
姫ヒモ2レビュー

考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:日常と背後からの襲撃

マシューは同居するアルウィンから生活費として銀貨三枚を渡されるが、男の付き合いを理由に小遣いの増額を交渉する。
仲間の戦士ラルフから暴行を受けるも元騎士ラトヴィッジが仲裁に入り、マシューは手製の飴玉を勧めつつ密かに金貨を入手してパーティの迷宮探索を見送る。
娼館で娼婦シンシアと過ごした後、迷宮病で錯乱した元冒険者アランを目撃し、街から脱出するための手配書を渡す。
その帰路、貧民街で短剣を持った二人組の男に襲撃されるが、大声で火事を叫び衛兵の呼び笛を引き寄せて難を逃れる。
未明、冒険者ギルドを騙る同じ二人組が自宅に現れたため、マシューは勝手口から荷物を抱えて脱出し、敵の正体を突き止めるべく動き出す。

第2幕:アストン兄弟の排除と森の決闘

マシューは冒険者ギルドへ赴き、旧友の職員デズから襲撃者が裏仕事に手を染めるアストン兄弟(ネイサン、ニール)であることを聞き出す。
デズにギルドでニールを足止めさせ、マシューは安宿の梁にロープを仕掛けて待ち伏せを行う。
戻ってきたニールを自重で首吊り状態にして尋問し、依頼人がパーティ仲間の聖騎士ラトヴィッジであることを自白させた後、ロープを切ってニールを床に下ろし、既に自ら絞殺していた兄ネイサンの遺体を晒した。
直後に呼び出された死体処理屋ブラッドリーが、まだ息のあったニールの心臓をナイフで突いて息の根を止め、二人の遺体を迷宮へ運ばせた。
翌日、人目のない森の広場で待ち合わせ、雇われた冒険者やナッシュたち伏兵を率いて現れたラトヴィッジと対峙する。
マシューは日光の下で丸太を怪力で振り回して伏兵を殲滅し、ラトヴィッジの魔剣を奪って関節を折り戦闘不能に追い込む。
ラトヴィッジから英雄マデューカスであると見破られるが、アルウィンを守る役割を果たすよう命じて命を奪わずに立ち去り、ラトヴィッジは負傷を理由にパーティを離脱する。

第3幕:偽金事件と「白猿」の壊滅

ギルドの鑑定士ヴァネッサから、売れない絵描きの恋人スターリングの急な羽振りの良さを調べてほしいと依頼される。
アトリエを調べたマシューは、王様の肖像画の髭が本物より1本少なく反転して描かれている点に着目し、偽金の鋳型制作に関与していることを見抜く。
スターリングは犯罪組織「白猿」の幹部テリーに脅されていたと白状する。
マシューはスターリングをデズの部屋に匿わせ、裏社会へ情報を流して冒険者と衛兵に「白猿」のアジトを襲撃させ組織を壊滅させる。
ヴァネッサから礼として光を蓄えて頭上を照らすマジックアイテム「仮初めの太陽」を譲り受けるが、数日後、逃亡していたテリーが夜の街でマシューを急襲する。
教会へ逃げ込んだマシューは夜明けの光が窓から差し込んだ瞬間に怪力を取り戻し、テリーの手足を粉砕した上で頭部を殴り砕いて絶命させるが、直後に路地裏で変わり果てた元恋人ポリーに戦棍で殴り倒される。

第4幕:一年前の邂逅と共犯関係の始まり(回想)

一年前、マシューは情緒不安定な娼婦ポリーのヒモとして暮らしていた。
ある日、ポリーが金欲しさに知人マギーの娘セーラを誘拐組織「三頭蛇」へ売り渡したことを告白する。
愛想を尽かしたマシューが街へ飛び出すと、路地裏でアルウィンが売人オスカーから麻薬「解放」を受け取り脅迫されている場面に遭遇する。
マシューは薬物を排水溝へ流し、アルウィンから迷宮病の恐怖により薬物に手を出したこと、先祖伝来の翡翠のネックレスを奪われたこと、友人の娘が「三頭蛇」に捕らわれている苦境を聞かされる。
マシューは自ら囮となって倉庫の見張りを煙玉等で撹乱し、アルウィンが子供たちを馬車で救出する。
アルウィンはマシューが英雄マデューカスであることを知った上で、以前マシューが出任せで語った「女性を助け癒やす命綱としての指南役(ヒモ)」の役割を求め、同居を申し出た。マシューはその奇妙な契約を受け入れ、彼女の屋敷に転がり込んだ。 

第5幕:北の屋敷の惨劇とリントヴルム討伐

現在に戻り、マシューは北の屋敷の地下室へ監禁される。
「解放」の中毒となり冷酷に変貌したポリーと、マクタロード王国の元侯爵令息ローランドが現れ、アルウィンを失脚させ王位を奪うためマシューを誘拐したと明かす。
ポリーはセーラとマギーを殺害して縫い合わせた手首を提示しマシューを恫喝する。
そこへアルウィン、完全武装のデズ、ラルフが突入して乱戦となる。
逃げたポリーを屋上バルコニーまで追ったマシューは、雲の切れ間から差した日光で力を得て短剣を粉砕し、すがりつく彼女の指先を蹴落として転落死させる。
屋敷ではローランドが巻物の封印を解いて大蛇リントヴルムを解き放ち暴れさせるが、日光を浴びたマシューが巨体を投げ飛ばしデズの戦鎚で顎下を粉砕、恐怖を振り払ったアルウィンが剣を抜いて討ち取った。

第6幕:隠された麻薬とヴァネッサの排除

騒動収束後、アルウィンは新たな仲間を得て迷宮探索を再開し、マシューはもらった小遣いで子供向けの教本を買い、セーラの死に落ち込むエイプリルを励ます。
酒場でデズから「解放」が再び出回っていると聞いたマシューは、取引の符牒からスターリングが関与していると見抜く。
スターリングを問い詰めてヴァネッサの床下から「解放」を盗み出したことを自白させると、マシューは口封じのためノミで彼の喉を突いて殺害する。
薬物を回収するためヴァネッサの自宅へ忍び込むが、彼女と鉢合わせ、床下からオスカーの手紙とアルウィンの翡翠のネックレスが見つかる。
アルウィンの薬物関与を知ったヴァネッサが事実の公表を主張したため、マシューは「仮初めの太陽」を起動して彼女を絞殺し、油を撒いて放火した。

第7幕:異形の怪物と命綱の誓い

葬儀後、街中で黒い斑点のある男を見かけたマシューは尾行し、路地裏で生き延びていたローランドと対峙する。
ローランドの口を借りて太陽神アリオストルから試練合格を告げられた後、街を浄化するという自らの使命を果たすべくローランドは「解放」を飲み干し、異形の怪物へと変貌した。
マシューは「仮初めの太陽」を起動して戦うが、怪物の再生能力に押され廃屋へ吹き飛ばされる。
光が切れて呪いにより全身の力を奪われる窮地に陥るが、マシューは意地で呪いの重圧を力づくで跳ね除け、怪物の巨体を叩きつけて首を引きちぎり消滅させる。
駆けつけた衛兵を被害者を装ってやり過ごし、周囲からの蔑視を受けながらも、アルウィンの歩みを支える命綱であり続ける決意を胸に帰路につく。

主要な転換点

1:貧民街での襲撃とアストン兄弟の尋問
  • それ以前の状況:マシューは昼間から娼館に通い、アルウィンから小遣いを貰って平穏に暮らすヒモ生活を送っていた。
  • 出来事:貧民街で暗殺未遂に遭い、同日夕方に安宿でニールを捕縛・尋問して依頼人がアルウィンのパーティ仲間ラトヴィッジであると突き止めた。
  • 変化:外部からの突発的なトラブルではなく、アルウィンの身内による明確な排除工作であることが判明し、マシュー自身が直接武力を用いて始末をつける行動へ移った。
  • 次への影響:森の広場でラトヴィッジおよび伏兵たちを返り討ちにし、ラトヴィッジをパーティから離脱させる展開へとつながった。
2:スターリングのアトリエ調査と偽金の鋳型発見
  • それ以前の状況:ヴァネッサから恋人スターリングの不審な羽振りの良さについての身辺調査を依頼されていた。
  • 出来事:スターリングの部屋にあった反転した王様の肖像画の髭が三本であることを確認し、偽金作りの鋳型制作に関与している証拠を掴んだ。
  • 変化:単なる浮気や小遣い稼ぎの疑いから、裏社会の組織「白猿」が関わる重大な経済犯罪の摘発へと調査の規模が拡大した。
  • 次への影響:アジト襲撃による「白猿」の壊滅、「仮初めの太陽」の入手、そして幹部テリーによる報復襲撃へと事態が進展した。
3:ポリーによるマシューの拉致と手首の提示
  • それ以前の状況:テリーを倒したマシューは安堵し、アルウィンが待つ自宅へ戻ろうとしていた。
  • 出来事:路地裏でポリーに襲われて北の屋敷へ拉致され、二度と引き離されないようにと手首を縫い合わされた末に出血死したマギーとセーラの手首を突きつけられた。
  • 変化:一年前の未解決だった人間関係の清算を迫られるとともに、アルウィンを失脚させようとするローランドの存在が表面化した。
  • 次への影響:屋敷での総力戦、屋上でのポリーの転落死、そして封印されていた魔物リントヴルムの解放という直接の武力衝突を引き起こした。
4:ヴァネッサの自宅での首飾り発見と彼女の殺害
  • それ以前の状況:街に再び出回り始めた「解放」の出所を追う中で、マシューはスターリングからヴァネッサの床下に薬物が隠されていることを聞き出していた。
  • 出来事:薬物を回収するため忍び込んだヴァネッサの自宅で鉢合わせ、床下からアルウィンの翡翠のネックレスと手紙が見つかり、ヴァネッサが真相公表を口にしたため彼女を絞殺・放火した。
  • 変化:マシューにとって数少ない理解者であったヴァネッサを、アルウィンの秘密を守るために自らの手で排除することになった。
  • 次への影響:アルウィンの過去の薬物中毒の露見が完全に阻止される一方、逃走していたローランドとの最終決戦へと向かう契機となった。
5:怪物化したローランドとの死闘と撃破
  • それ以前の状況:ヴァネッサとスターリングの葬儀が終わり、事件は沈静化したように見えていた。
  • 出来事:街中で黒い斑点のある男を追ったマシューが太陽神の声を宿すローランドと対峙し、「解放」を飲んで怪物化したローランドの首を力づくで引きちぎって討伐した。
  • 変化:アルウィンの身辺を脅かしていた王位継承を巡る陰謀と麻薬「解放」の流通ルートが完全に断たれた。
  • 次への影響:マシューは世間から蔑まれる無力なヒモの立場に甘んじながらも、アルウィンの歩みを陰から支え続ける決意を確固たるものとした。

マシュー中心とした人物関係の変化

アルウィン
  • 開始時:マシューは養われるヒモ、アルウィンは迷宮に挑む主という形式的な関係でありつつ、マシューが手製の飴玉等で彼女の精神を支えていた。
  • 主な出来事:ラトヴィッジの排除、セーラ救出の過去の共有、屋敷での共闘とリントヴルム討伐を経て、互いの弱さと存在価値を再確認した。
  • 巻末時:マシューはアルウィンの名誉を守るため裏で冷徹に手を汚し続け、アルウィンにとってなくてはならない「命綱」としての絆をより深めた。
ラトヴィッジ
  • 開始時:アルウィンに仕える聖騎士と、彼女に寄生する卑屈なヒモとして嫌悪され、暴力を向けられる関係だった。
  • 主な出来事:ラトヴィッジが裏仕事の刺客を放ってマシュー暗殺を企てたため、森の広場でマシューが伏兵ごと返り討ちにし、魔剣を奪って骨折させた。
  • 巻末時:マシューの正体が英雄マデューカスであることを知らされ、口封じとアルウィンの守護を義務付けられた上で、負傷を理由にパーティを離脱させられた。
ヴァネッサ
  • 開始時:ギルド内で偏見なくマシューと接し、時に金貸しや調査依頼を行う友好的な関係だった。
  • 主な出来事:スターリングの身辺調査を引き受け「仮初めの太陽」を譲り受けるなど良好だったが、自宅でアルウィンの首飾りと薬物の手紙を発見したことで対立した。
  • 巻末時:アルウィンの過去を公表しようとしたため、マシューによって絞殺され、現場を放火されて死亡した。
ポリー
  • 開始時:一年前、知人の娘を売った罪悪感から自暴自棄となり、マシューの前から失踪した元同居人(愛人)。
  • 主な出来事:ローランドの手下となり薬物中毒者として現れ、マシューを拘束して拷問を企て、母娘を惨殺した事実を誇った。
  • 巻末時:屋上バルコニーの追走の末、日光を得たマシューに拒絶され、縁から指先を蹴り落とされて転落死した。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識

マシュー自身は、自分を「腕っぷしも知恵もなく、女の稼ぎに寄生して酒と博打に耽るだけのクズな男(ヒモ)」と規定している。日光が当たらなければ一般人以下の力しか出せず、人助けや正義といった崇高な志からは程遠い存在であると自嘲し、過去の英雄マデューカスとしての名声は既に捨て去ったものと捉えている。

周囲からの評価
  • 一般冒険者・衛兵:「高潔な姫騎士の美貌と金に群がる能なしの穀潰し」「ケンカもできない腰抜けのデカブツ」と蔑視され、日常的に嘲笑や暴力の標的にされている。
  • アルウィン:だらしのない男と小言を言いつつも、自らの心の弱さや薬物への恐怖を唯一曝け出せる相手であり、自分を支える「大切な命綱」として深く依存している。
  • デズ・ラトヴィッジ:かつて神話クラスの魔物を屠った英雄『百万の刃』の「巨人喰い」マデューカス本人として、圧倒的な実力と理外の怪力を持つ危険人物と認識している。
認識の差が現れた場面
  • ギルド内での冒険者ビルや丸坊主からの暴行時:相手はマシューを「女がいなければ何もできない無力なヒモ」と見下して顔を踏みつけ嘲笑したが、マシュー自身は相手の攻撃を余裕で受け流しつつ、毒舌で相手を挑発して楽しんでいた。
  • 森の広場でのラトヴィッジおよび伏兵との対峙時:ラトヴィッジたちはマシューを非力な男と侮り多人数で容易に始末できると考えていたが、マシューが五ユールを超える巨大な木を軽々と担ぎ上げ、一撃で伏兵を粉砕したことで、伝説の英雄マデューカスであると悟り恐怖に戦慄した。
  • 北の屋敷でのポリーによる脅迫時:ポリーはマシューを「以前と変わらず女の腕力にすら怯える弱い男」と認識して刃物を突きつけたが、マシューは日光を浴びた瞬間に短剣を素手で握りつぶし、圧倒的な力でポリーをバルコニーから放り投げた。

元英雄のヒモ

マシュー(マデューカス)は本作『姫騎士様のヒモ』の主人公であり、物語の核心を担う元英雄のヒモに位置づく。表向きの自堕落な生態と、裏で発揮される圧倒的な武力および冷徹な暗躍について、その人物像と行動原理を整理する。

正体と過去:呪われた元・七つ星冒険者

・伝説の英雄「マデューカス」

かつて大陸最強と謳われた七つ星冒険者パーティ『百万の刃』に所属。竜や悪魔、巨人を素手や怪力で粉砕してきた実績を持ち、「巨人喰い」の異名で恐れられた伝説的冒険者として名を馳せる。

・太陽神の呪縛

遺跡『太陽神の塔』の探索時、太陽神アリオストルから呪いを受ける。日光が直接照りつける環境下でしか本来の腕力を発揮できず、日陰や夜間、屋内、曇天では筋力を奪われ一般人以下の脆弱な肉体へと変貌。冒険者の廃業を余儀なくされ、名を捨てて放浪を重ねた末、迷宮都市『灰色の隣人』へ流れ着く。

表の顔:堕落した無能なヒモ

・姫騎士との同棲生活

亡国マクタロード王国の再興を志し大迷宮『千年白夜』へ挑む「深紅の姫騎士」アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロードの屋敷に居座る。彼女から与えられる金銭で酒や娼館、賭博に溺れる日々を浪費。

・周囲からの蔑視と受容

街や冒険者ギルドからは、武功を立てる姫騎士に寄生する無能な穀潰しや腰抜けとして白眼視される。同業者や職員から理不尽な暴力や嘲笑を浴びせられても、一切の反駁を行わず飄々と受け流す。

裏の顔:圧倒的戦闘力と泥にまみれた暗躍

・限定環境下における絶対的武威

直射日光下、あるいは日光の力を蓄えた魔道具『仮初めの太陽』の効力下において、かつての神域の怪力を解放。巨木を一腕で振るい刺客を一撃で粉砕、大蛇の魔物リントヴルムを素手で投げ飛ばす規格外の破壊力を行使。

・裏社会の脅威の排除

アルウィンが迷宮攻略に専念できるよう、彼女の名誉や生命、精神を脅かす暗部の敵対者を自発的に捜索。刺客集団、元仲間、犯罪組織『三頭蛇』や『白猿』、麻薬『解放』の流通者に対し、暗殺や密告、政治工作を駆使して徹底的に抹殺。

アルウィンとの関係:命綱としての誇り

・ヒモという語の定義

マシューはヒモの語源について、海深く潜る女性潜水士が生死を預ける命綱を船上で握り続ける男のことと説明。

・精神的支柱と汚れ役の完遂

過酷な探索、亡国の重圧、精神的外傷や薬物の誘惑に苛まれるアルウィンに対し、唯一無二の防波堤として機能。彼女が光の当たる道を歩み続けられるよう、自らの手で一切の血や泥を拭い去る役目を引き受ける。

まとめ

表面上は軽薄で怠惰な居候を演じながら、裏では愛する対象を守るために命を賭して暗闘を繰り広げる。自らの過去を誇示せず、血塗られた功績を闇に埋葬し続ける姿勢が、元英雄のヒモたるマシューの本質を形づくる。

姫騎士アルウィン

アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロードは本作のヒロインを務め、迷宮都市の灰色の隣人で名を馳せる深紅の姫騎士と称される人物。

生い立ちと目的

・亡国の王族

大陸北部に栄えたマクタロード王国の王女として誕生。大量発生した魔物の猛攻により祖国は壊滅を迎え、両親である国王と王妃も本人の眼前で落命。

・迷宮攻略と国家再興

生存した民の未来と故国の再興を果たすため、あらゆる願望を叶えると伝わる伝説の秘宝・星命結晶の獲得を志望。大迷宮の千年白夜における最深部への到達を期して冒険者隊の戦女神の盾を統率し、同胞や残存住民から戦乙女や女神と仰がれる存在へ昇華。

抱える精神的負債と迷宮病

・重圧と薬物依存の危機

度重なる過酷な交戦や国家再建の重責、両親ならびに親友の非業の死が刻んだ外傷体験により、迷宮探索への恐怖や精神失調を伴う迷宮病を発症。激しい恐怖心を緩和する代償として禁制品の薬物・解放に一時傾倒し、家伝の翡翠製装飾品を密売組織に奪われる窮地へ直面。

・同居者による回復支援

同居するマシューの手で薬物を廃棄された後は、禁断症状を抑制するために処方された特製の薬草飴を摂取し、隠密裏に病状の克服を継続。

マシューとの関係構造

・精神を防護する命綱

外部へは定職に就かない寄生者として同棲を容認する一方、内実としては精神の崩壊を防ぐ絶対的な命綱として深甚な信頼を寄託。世間から堕落を非難する書状が送付される事態にあっても、関係性を強固に維持。

・相互補完と隠蔽された庇護

頭髪の洗浄や手製菓子を受ける日常の対話に平静を見出す背後で、自らの純潔性を維持するために暗殺や謀殺といった裏社会の排除工作をマシューが一手に処理。

高潔な理念と精神的脱皮

・弱者救済の信条

高貴な身分を保持しながらも階層差別の意識を排斥し、親交を結んだ下層娼婦の遺児が犯罪組織の三頭蛇に拘束された際は、周囲の諫止を排して救出を強行。

・恐怖の克服と主敵討伐

過去に親友を捕食した大蛇の魔獣リントヴルムと再会した折、精神的支柱から託された不屈の合言葉を胸に恐怖心を克服し、単独討伐を達成。

まとめ

重責を担う崇高な指導者としての外観を保ちつつ、人知れず脆弱性と向き合い続ける多面的な精神構造が、深紅の姫騎士の輪郭を形成。

迷宮病と薬物

迷宮都市において、冒険者や市民を精神と肉体の両面から追い詰める重大な脅威が迷宮病と麻薬「解放」に他ならない。華々しい冒険譚の裏側に横たわるこの二つの影は、登場人物たちの葛藤を生み出し、街の暗部を形成する中核的な要因として機能する。

迷宮病の構造と治療の限界

大迷宮「千年白夜」に潜る者が直面する極限状態は、心身に回復困難な傷跡を刻み込む。

・発症原因と主な症状

過酷な戦闘や致死的な仕掛け、極限状態での仲間割れといった生死の境を彷徨う体験が強い外傷記憶となり、精神に変調を来す。発症者は暗闇や未知の恐怖に怯え続け、迷宮への再突入のみならず、日常の対話や平穏な生活すら維持できなくなる。悪化すると錯乱を招き、人前での叫喚や暴力、奇行に走る事例も目立つ。

・治療手段の欠如

根本的な特効薬は存在せず、希少な治療薬も一般層には入手不能な価格帯にとどまる。神職による支援術式や精神高揚の奇跡をもってしても一時的な対症療法に過ぎず、恐怖を紛らわせようとした結果として多くの者が違法薬物へ救いを求める契機となる。

麻薬「解放」の猛威と流通機構

心の隙間に入り込む形で都市深部に浸透した代表的麻薬が「解放」と呼称される劇薬となる。

・もたらす効能と依存性

微量の摂取で急激な精神昂揚を促し、恐怖や苦痛を忘却させて虚構の多幸感をもたらす。反面、依存性は極めて高く、短期間で自己制御を失わせる。

・身体へ及ぼす悪影響

感情の激変や幻視、幻聴といった重度の離脱症状を伴い、通常の解毒魔術も効果を示さない。長期使用によって内臓や骨格組織が破壊され、急速に寿命を縮める。慢性中毒者の首筋や手首には特有の黒い斑点が浮上する。

・聖地からの流出と組織犯罪

起源を辿ると、太陽神の塔の近隣に位置する聖地サニーヘイズの神父が、信仰に基づく啓示を機に信徒の救済目的で調合した秘薬に端を発する。しかし製法が外部の不法勢力へ漏洩した結果、三頭蛇や白猿といった犯罪集団が独占的に製造と密売を掌握し、莫大な利益を吸い上げる資金源へと変質した。

アルウィンが直面した苦難と克服

高潔な信念を掲げるアルウィンも例外なく、この精神的危難の当事者となった。

・重圧と精神的脆弱化

祖国再興と過酷な探索行の重圧から迷宮病の恐怖に抗しきれず、密かに「解放」の摂取に至る。離脱症状に苛まれた末、薬物の対価として家宝である翡翠の首飾りを売人に差し出す寸前まで追いつめられた。

・マシューによる介入と庇護

同居するマシューが破滅を阻止すべく薬物を強奪して破棄。同時に離脱症状を緩和する特製の薬草飴を処方し、恐怖心を和らげることで、陰ながら薬物離脱と心の平静を支え抜いた。

迷宮都市の闇を象徴する宿痾

迷宮病と麻薬「解放」は、探索者の栄光に隠された代償を象徴し、都市の暗部で蠢く犯罪組織や裏社会の暗闘を駆動させる根本要因を形づくる。恐怖から逃れるために手を出した救済の幻影が、さらなる悲劇を呼び寄せる構造こそが、この地における最大の病弊を物語る。

太陽神の呪い

太陽神の呪いは、主人公マシューがかつての華々しい冒険者稼業から身を引き、ヒモとして暮らすに至った決定的な契機となる。神の宣告によって課された過酷な制約と、それに抗いながら生きる肉体の実態を整理して記す。

呪いの発端

かつて大陸最強と謳われた七つ星冒険者集団『百万の刃』が、遺跡『太陽神の塔』の最上階へ到達した瞬間に災厄が訪れる。神の視界が届く範囲でのみ力を振るうことを許すという神託とともに、太陽神アリオストルからパーティ全体へ呪詛が放たれた。

『百万の刃』に及んだ影響

神の呪縛は隊員全員の資質を奪い去り、かつての栄光を根底から解体させた。

・ある者は視覚を失い前途を閉ざされた

・ある者は修めた魔術の行使を封じられた

・ある者は冒険者としての目標そのものを失った

・ドワーフのデズは誇りとしていた手先の器用さを奪われた

マシューに課された制約条件

前線で比類なき威容を誇ったマシューに対しては、剛力を奪う呪いが刻まれた。

・直射日光下でのみ本来の怪力を行使可能

・日陰、曇天、建造物内、夜間、森林、洞窟では筋力が一般人以下に減退

・日光が届かない大迷宮『千年白夜』への突入が不可能となり、冒険者の引退を余儀なくされた

呪縛への抵抗と例外

絶対的な制約を抱えながらも、限定的な手段によって力を取り戻す手法が存在する。

・太陽光を蓄積する魔道具『仮初めの太陽』の照射を受け、夜間や屋内でも一時的に膂力を回復

・極限状態において肉体と魂の気迫を振り絞り、短時間のみ神の重圧をねじ伏せて怪力を発動

まとめ

日光が途切れる瞬間に無力化する制約は、かつての英雄から日常の自由と戦う場を等しく奪い去った。神が刻んだ枷を背負いながら、残された例外的な手段と精神の意地を拠り所に生きる姿が、元英雄の輪郭を際立たせる。

まとめ
姫ヒモ2レビュー

登場キャラクター

『戦女神の盾』

アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード

マクタロード王国の元王女。滅びた故国の再興を目指して大迷宮の攻略に挑む。責任感が強く真面目な性格を示す。同居人であるマシューに精神的に依存する。

・所属組織、地位や役職  マクタロード王国・元王女。冒険者パーティ『戦女神の盾』・リーダー。

・物語内での具体的な行動や成果  大迷宮『千年白夜』の攻略に励む。迷宮病の恐怖により薬物『解放』に手を染める。マシューの支援を受けて薬物からの脱却を図る。誘拐された子供たちを救出するために犯罪組織のアジトへ突入する。出現した大蛇リントヴルムを討伐するに至る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  亡国のお姫様として生き残りからあがめられる。世間からは「深紅の姫騎士」の異名で呼ばれる。マシューを自らの「ヒモ」として側に置く。

マシュー(マデューカス)

アルウィンの同居人を務める。表向きは彼女に養われる「ヒモ」として過ごす。過去には伝説的な冒険者として名を馳せる。太陽神の呪いにより日光下でのみ本来の力を発揮する。

・所属組織、地位や役職  アルウィンの同居人(ヒモ)。元『百万の刃』メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果  アルウィンの名誉や安全を陰から守る。襲撃してきたアストン兄弟を返り討ちにする。偽金作りの犯人を追及して白猿の壊滅に寄与する。太陽神の伝道師となったローランドを激闘の末に討ち果たす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  かつて七つ星冒険者「巨人喰い」として恐れられる。力を失った後は街で「ヒモ」と蔑まれる。裏社会や冒険者ギルドに深い関わりを持つ。

ラルフ

『戦女神の盾』に所属する若き戦士を指す。アルウィンに対して強い崇拝を抱く。マシューを激しく憎悪する。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・戦士。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューに対して度々暴力を加える。アルウィンに近づくマシューを敵視する。ローランドのアジトへ突入して戦闘に参加する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  パーティの新入りとして活動する。アルウィンへの忠誠心を原動力として動く。

ラトヴィッジ・ルスタ

マクタロード王国の元騎士に相当する。アルウィンに密かに恋心を寄せる。嫉妬心からマシューの抹殺を計画する。

・所属組織、地位や役職  マクタロード王国・元騎士。冒険者パーティ『戦女神の盾』・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果  アストン兄弟などの冒険者を金で雇い入れる。マシューを森へ誘い出して刺客とともに襲う。マシューの返り討ちに遭い負傷に至る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  負傷を理由にパーティから離脱する。マシューの正体が「マデューカス」であることを看破する。

アンディ

『戦女神の盾』と親しい若き冒険者を指す。大剣を振るう戦闘スタイルを特徴とする。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  武器屋での支払いに偽金が混ざる。店で衛兵と言い争いを起こす。突き飛ばされて頭を強く打ち死亡に至る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  彼の死が偽金騒動の発端に位置づけられる。アルウィンに強いショックを与える。

ジャネット

アルウィンの元仲間であり唯一の親友を指す。故国が魔物に襲われた際に死亡した存在となる。

・所属組織、地位や役職  アルウィンの元仲間。

・物語内での具体的な行動や成果  魔物の襲来時にアルウィンの目の前で命を落とす。アルウィンの弱さを理解して寄り添う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  彼女の死がアルウィンの心に深い傷を残す。アルウィンの過去の記憶として影響を及ぼす。

『百万の刃』

デズ

ドワーフの男性として描かれる。非常に高い戦闘力を誇る。頑固で無愛想な性格を示す。マシューの古くからの親友にあたる。

・所属組織、地位や役職  元『百万の刃』メンバー。冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・専属職員(用心棒)。

・物語内での具体的な行動や成果  暴れる冒険者を一撃で倒す。錯乱した職員を速やかに制圧する。マシューの依頼を受けてアストン兄弟を足止めする。ローランドのアジトへ乗り込み敵を全滅させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  かつて「移動要塞」と称される。太陽神の呪いにより手先の器用さを失う。細工職人の夢を絶たれてギルド職員に転身する。

冒険者ギルド『灰色の隣人』支部

エイプリル

ギルドマスターの孫娘にあたる。養護施設で子供たちの世話を行う。心優しく正義感が強い性格を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルドマスターの孫娘。

・物語内での具体的な行動や成果  ギルドで手紙の代筆などを手伝う。マシューに対して素直になれない態度を見せる。傷ついた子供たちに本を読み聞かせる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  祖父の権威に頼らず自発的に活動する。ギルド内でアイドル的な存在として扱われる。

ギルドマスター

冒険者ギルドの最高責任者を務める。厳格で高い威厳を放つ。孫娘のエイプリルを深く愛する。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・ギルドマスター。元七つ星冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  暴れる冒険者たちを一喝して静める。偽金騒動の現場に現れて場を収める。孫娘のために密かに護衛を配置する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  街の表裏双方に強い影響力を保持する。伝説的な冒険者として尊敬を集める。

ヴァネッサ

冒険者ギルドの優秀な鑑定士を指す。卓越した目利きと豊富な知識を有する。情に厚いが男を見る目に欠ける。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・鑑定士。

・物語内での具体的な行動や成果  偽金貨の重量異常を最初に見抜く。スターリングの身辺調査をマシューに頼む。マシューに「仮初めの太陽」を贈呈する。アルウィンの薬物使用を知り説得を試みる。秘密保持のためマシューに口封じで殺害される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  個室を割り当てられる信頼を得る。過去のトラウマから薬物に対して苛烈な態度を取る。火災により死亡したと処理される。

黒髪の元冒険者女性職員

怪我により冒険者を引退した過去を持つ。読み書きができるため職員として雇われる。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・職員。

・物語内での具体的な行動や成果  迷宮病に耐えかねて薬物を使用する。錯乱状態に陥り路上で剣を振り回す。デズの手によって取り押さえられる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  地下の牢屋に収監される。ギルドからの追放が決定する。

冒険者ギルド職員たち(集団)

ギルドの運営を支える集団を指す。事務や保安業務などの役割を担う。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・職員。

・物語内での具体的な行動や成果  危険が及ばないようエイプリルを保護する。抗議する冒険者たちの対応に奔走する。錯乱した職員の捕獲にあたる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  受付には強面の職員が配置される。ギルドマスターの意向を強く意識して動く。

冒険者

ビル

ハゲ頭で体格の良い冒険者を指す。粗暴で高圧的な性格を示す。

・所属組織、地位や役職  四つ星冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  倒した魔物をギルドへ持ち込む。マシューを激しく足蹴にする。デズに投げ飛ばされて天井に刺さる。伏兵としてマシューの襲撃に参加する。マシューの丸太攻撃を受けて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  四つ星冒険者としての地位を保持する。マシューとの因縁の末に命を落とす。

ネイサン

アストン兄弟の長男にあたる。小柄な体駆を特徴とする。

・所属組織、地位や役職  三つ星冒険者。アストン兄弟・長男。

・物語内での具体的な行動や成果  弟と共にマシューを襲撃する。衛兵の介入により捕獲に失敗する。宿屋でマシューに首を絞められて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  三つ星冒険者として活動する。死体は迷宮へ投棄される。

ニール

アストン兄弟の次男を指す。不精ひげを生やした外見を持つ。

・所属組織、地位や役職  三つ星冒険者。アストン兄弟・次男。

・物語内での具体的な行動や成果  短剣を用いてマシューを襲う。部屋に仕掛けられたロープにかかる。太腿を切られて依頼主の名を吐く。ブラッドリーの手で刺殺される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  非合法な依頼に手を染めていた事実が判明する。兄と共に死体屋に処理される。

ナッシュ

アストン兄弟の身内として登場する。大斧を愛用する大男として描かれる。

・所属組織、地位や役職  冒険者。アストン兄弟関係者。

・物語内での具体的な行動や成果  宿で兄たちの痕跡を調べる。ラトヴィッジの誘いに応じる。マシューに襲撃を試みる。マシューに首を跳ねられて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  復讐を果たせず命を散らす。

ノーマン

アストン兄弟の末弟にあたる。残忍な性質を備える。

・所属組織、地位や役職  冒険者。アストン兄弟・末弟。

・物語内での具体的な行動や成果  ローランドの配下として地下室に潜む。捕らえられたマシューに暴行を加える。突入したラルフに斬殺される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  兄弟の最後の一人として死亡する。

アラン

怪我により前線を退いた冒険者を指す。迷宮病に苦しむ姿を見せる。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  黒い斑点を浮かべて路上で錯乱する。用心棒に暴行されて路地に放置される。マシューから脱出の手立てを差し出される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  最終的に死体として搬送される。迷宮病の末路を示す存在となる。

丸坊主の大柄な冒険者

赤ら顔で大柄な冒険者を指す。血気が強く短気な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  デズを囲んで暴言を吐く。割り込んだマシューに暴行を加える。デズの反撃を受けて吹き飛ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ギルドマスターの一喝により撤退する。

伏兵の冒険者たち(集団)

金で雇われた粗野な冒険者たちを指す。

・所属組織、地位や役職  ラトヴィッジに雇われた傭兵集団。

・物語内での具体的な行動や成果  ラトヴィッジの合図で森から現れる。マシューを包囲して襲撃を試みる。丸太による一撃で全滅に至る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  一瞬にして全滅させられる。

運び屋(集団)

獲物の運搬を専門とする集団を指す。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド所属・運び屋。

・物語内での具体的な行動や成果  大型の魔物の死体をギルドへ届ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ギルドの下請けとして活動する。

潜り屋(集団)

迷宮内で商売を行う業者たちを指す。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド所属・潜り屋。

・物語内での具体的な行動や成果  危険地帯で消耗品を売り歩く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  冒険者の生存率を高める役割を担う。

街の冒険者たち(集団)

街に充満する多数の冒険者を指す。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  日常的に酒場で騒動を起こす。マシューに対して差別的な暴力を振るう。偽金への怒りから白猿のアジトを襲撃する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  街の景気を支えると同時に混乱の源となる。

マクタロード王国関係者

ローランド・ウィリアム・マクタロード

マクタロード王国の元侯爵令息を指す。アルウィンの従兄弟にあたる。太陽神に狂信的な忠誠を捧げる。

・所属組織、地位や役職  マクタロード王国・元侯爵令息。太陽神アリオストル・伝道師。

・物語内での具体的な行動や成果  家宝を無断で寄進し勘当される。ポリーらを従えてマシューを誘拐する。大蛇リントヴルムの封印を解く。薬物を摂取して怪物に変化する。廃屋でマシューと死闘を展開する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  太陽神の伝道師として異能を得る。マシューに首を抜かれて消滅に至る。

犯罪組織『三頭蛇』

レジー

『三頭蛇』の幹部を務める。顔に獅子の入れ墨を刻む。

・所属組織、地位や役職  犯罪組織『三頭蛇』・幹部。

・物語内での具体的な行動や成果  子供たちを誘拐して倉庫に集める。マシューを追い詰めて暴行を加える。弱気な手下を容赦なく刺殺する。逃げる馬車に向けて投擲武器を放つ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  アルウィンの介入と衛兵の動員により追い詰められる。組織の壊滅と共に没落する。

のっぽの薄ひげ

『三頭蛇』の下堅めの構成員を指す。背が高く薄ひげを持つ。

・所属組織、地位や役職  犯罪組織『三頭蛇』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューの捕獲に加わる。ギルドとの摩擦を懸念する発言をする。レジーに首を切られて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  身内の非情さにより命を落とす。

三頭蛇の手下たち(集団)

『三頭蛇』の配下たちを指す。

・所属組織、地位や役職  犯罪組織『三頭蛇』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  子供たちの監禁業務にあたる。マシューの光玉で混乱に陥る。マシューを集団で叩きのめす。アルウィンに斬り伏せられる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  組織の解体に伴い潰される。

犯罪組織『白猿』

テリー(「虎手」のテリー)

元冒険者の格闘家を指す。『白猿』の幹部として薬物を管理する。

・所属組織、地位や役職  元冒険者。犯罪組織『白猿』・幹部。

・物語内での具体的な行動や成果  スターリングを脅迫して偽金を作らせる。マシューを単身で急襲する。教会でマシューを追いつめる。日光を得たマシューに四肢を折られる。頭部を叩き割られて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会の武闘派として恐れられる。マシューとの死闘で命を落とす。

白猿の親分

『白猿』のトップを務める。

・所属組織、地位や役職  犯罪組織『白猿』・首領。

・物語内での具体的な行動や成果  組織で偽金作りに着手する。襲撃を受けてアジトから逃げ出す。門の付近で衛兵に捕まる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  逆さ磔の刑に処される。

白猿の構成員たち(集団)

『白猿』の組員たちを指す。

・所属組織、地位や役職  犯罪組織『白猿』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  各種違法取引に従事する。アジトに乗り込んできた冒険者と戦う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  組織の壊滅に伴い散り散りとなる。

街の住民・その他関係者

スターリング

売れない若手画家を指す。ヴァネッサに養われる生活を送る。意志が弱く流されやすい性格を持つ。

・所属組織、地位や役職  画家(自称)。ついばみ屋。

・物語内での具体的な行動や成果  ついばみ屋として獲物を拾う。テリーに言われて偽金の肖像を描く。盗み出した薬物を売り裁く。マシューの手でノミで刺殺される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  愚行の末に命を落とす。死体は迷宮へ投棄される。

ポリー

マシューの元恋人の娼婦を指す。精神的に極めて不安定な状態を示す。

・所属組織、地位や役職  娼婦。

・物語内での具体的な行動や成果  セーラを金で売却する。ローランドの配下となり薬物を投与される。マギー親子を殺害して手首を切断する。バルコニーから転落して死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  薬物により人間性を喪失する。マシューとの決別を経て命を落とす。

マギー(メリンダ)

場末の娼婦として働く。セーラの母親にあたる。

・所属組織、地位や役職  娼婦。

・物語内での具体的な行動や成果  娘の失踪に直面して錯乱する。アルウィンたちに救出を哀願する。ポリーの手にかかり殺害される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  悲劇的な死を遂げる。

セーラ

マギーの幼い娘を指す。エイプリルたちと親しく過ごす。

・所属組織、地位や役職  マギーの娘。

・物語内での具体的な行動や成果  ポリーの罠にかかり連れ去られる。アルウィンらにより一時救出される。ポリーに襲われて殺害される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  残虐な方法で命を奪われる。

シンシア

娼館で働く女性を指す。

・所属組織、地位や役職  娼婦。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューのお相手を務める。アランの境遇をマシューに語る。太陽神のお守りを披露する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューの訪問が途絶える。

オスカー

ヴァネッサの元恋人を指す。薬物の売人として裏で動く。

・所属組織、地位や役職  薬物の売人。

・物語内での具体的な行動や成果  三頭蛇から薬物を横領する。アルウィンを脅して宝飾品を奪う。ヴァネッサの家に薬物を隠匿する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  行方不明となり死亡したと推測される。

ブラッドリー

言葉を発しない死体処理屋を指す。

・所属組織、地位や役職  棺桶職人。死体処理屋。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューの合図で現場にやってくる。アストン兄弟の死体を梱包する。生存していたニールにとどめを刺す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会の死体処理を確実にこなす。

トビー

青犬横町に住む老人にあたる。

・所属組織、地位や役職  街の住民。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューの頼みで中毒者を街から出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューと秘密の裏取引を持つ。

『双子の金羊亭』の亭主

安宿を営む老人を指す。

・所属組織、地位や役職  『双子の金羊亭』・亭主。

・物語内での具体的な行動や成果  店内で常に居眠りをする。ナッシュの尋問を受けて情報を吐く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宿の管理をおろそかにする。

娼館の用心棒たち(集団)

娼館の警備を担う集団を指す。

・所属組織、地位や役職  娼館・用心棒。

・物語内での具体的な行動や成果  暴れるアランを捕らえる。路地裏でアランを叩きのめす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  暴力によって店を守る。

養護施設の子供たち(集団)

施設で生活する孤児たちを指す。

・所属組織、地位や役職  養護施設・入所者。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルから教育を受ける。本の読み聞かせのために集まる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  平穏な保護下で過ごす。

貧民街の物乞いたち(集団)

路上で生活する貧困層を指す。

・所属組織、地位や役職  貧民街・住民。

・物語内での具体的な行動や成果  倒れた者から身ぐるみを剥ぐ。戦闘の気配を感じて散り散りに逃げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過酷な街で身を潜めて暮らす。

衛兵組織

ちょびひげの衛兵

四十代の衛兵を指す。

・所属組織、地位や役職  衛兵隊・衛兵。

・物語内での具体的な行動や成果  呼び笛の音で現場へ急行する。マシューの出たら目を聞き流す。ゴミ山から現れたマシューを問い詰める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  街の巡察業務を怠りつつ続ける。

色黒の衛兵

二十代の若手衛兵にあたる。

・所属組織、地位や役職  衛兵隊・衛兵。

・物語内での具体的な行動や成果  先輩衛生と共に街を見回る。マシューの不審な挙動を追求する。殺害現場の廃屋を捜査する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  治安維持活動に従事する。

衛兵隊(集団)

都市の警備を担う組織を指す。

・所属組織、地位や役職  街の治安維持組織。

・物語内での具体的な行動や成果  街の巡回や犯罪の摘発を行う。犯罪組織のアジトを強制捜査する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  腐敗が進み市民からの信頼は低い。

神格

太陽神アリオストル

世界の創造神の一人にあたる。宮殿に封印された神格となる。

・所属組織、地位や役職  神格。太陽神。

・物語内での具体的な行動や成果  『百万の刃』のメンバーに呪いをかける。マシューの力を日光下に限定させる。信徒に『解放』の製法を伝授する。ローランドに啓示を与えて伝道師にする。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  封印状態から人間に影響を及ぼす。マシューから激しい憎悪を向けられる。

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まとめ
姫ヒモ2レビュー

展開まとめ

第一章 ありふれたヒモの日常

小遣いの交渉と冒険者パーティの見送り

マシューは同居する元王女の冒険者アルウィンから銀貨三枚を渡されたが、付き合いの酒代として足りないと抗議した。マシューは機嫌取りとして彼女の髪を梳いて懐柔を試みたものの、迎えに現れた仲間の戦士ラルフに胸倉を掴まれた。マシューが茶化すと激怒したラルフから暴行を受けたが、元騎士ラトヴィッジの仲裁で場は収まった。マシューはアルウィンに手製の飴玉を勧めつつ体調を気遣う言葉をかけ、密かに金貨を受け取ってパーティの迷宮探索を見送った。

娼館での情事と迷宮病の男

手に入れた金で娼館へ赴いたマシューは、娼婦シンシアと関係を持った。二度目の行為に入ろうとした際、表の通りから奇声が響いた。窓の外を確認すると、かつて羽振りの良かった冒険者アランが迷宮病による恐怖と禁断症状で錯乱し、娼館の用心棒に路地裏へ連行されていた。シンシアから太陽神のネックレスを見せられたマシューは興ざめし、時間を切り上げて店を出た。路地に倒れていたアランに対し、マシューは街を抜け出す手配が書かれた紙とアーモンドを渡して故郷へ帰るよう促した。

貧民街での襲撃と衛兵の介入

帰宅途中の貧民街で殺気を感じたマシューは方向転換を図ったが、待ち伏せしていた二人組の男に前後を挟まれた。マシューは財布を差し出して油断を誘い、襲いかかってきた短剣の連撃を間一髪で回避した。マシューが大声で火事だと叫び立てて周囲を騒がせると、巡回中の衛兵の笛の音が近づいたため、襲撃者たちは逃走した。駆けつけた顔見知りの衛兵を適当な言い訳であしらったマシューは、落とした財布を回収して自宅へと戻った。

未明の虚偽連絡と荷物の確保

自宅の寝室で眠りについていたマシューは、夜明け前に玄関を叩く物音で目を覚ました。冒険者ギルドの使いを名乗る男二人が、アルウィンが迷宮で負傷して呼んでいると告げてきた。窓から確認したマシューは昨夜の襲撃者と同一人物であると見抜き、支度をすると偽って時間を稼いだ。その間にアルウィンの部屋から見られては困る貴重品を麻袋に詰め、勝手口から脱出して姿を隠した。

ギルドでの衝突とドワーフのデズの介入

朝になり自宅が無事であることを確認したマシューは、襲撃者の正体を探るため冒険者ギルドへ向かった。受付近くにいたギルドマスターの孫娘エイプリルから職員のデズの居場所を聞き出そうとしたところ、四つ星冒険者のビルに絡まれた。暴言を吐かれ一方的に踏みつけられたマシューが毒舌で返すと、逆上したビルは剣に手をかけた。その瞬間、現れたデズによってビルは天井へと投げ飛ばされた。

アストン兄弟の特定と宿への侵入

デズの待機室に入ったマシューは、自身を襲った連中が肌の白い荒事慣れした冒険者であると伝えた。デズは非合法な依頼である裏紙に手を出しているアストン兄弟のネイサンとニールであると見立てを語った。公にせず自力で決着をつけると決めたマシューは、兄弟のねぐらである安宿を教えてもらい、デズに片方をギルドで足止めするよう依頼した。宿に忍び込んだマシューは、部屋の梁にロープを渡して罠を仕掛け、待ち伏せを行った。

ニールの尋問とネイサンの処分

宿に戻ってきたニールが床の銀貨に気を取られた隙に、マシューは首にロープを掛けて飛び降り、自重で首を絞め上げた。マシューはナイフでニールの太腿を切りつけて失血させ、依頼主を白状するよう迫った。ベッドに横たわる兄ネイサンの存在を盾に脅すと、ニールは依頼人がアルウィンのパーティにいる聖騎士ラトヴィッジであると白状した。マシューはすでに首を絞めて殺害していたネイサンの死体を晒し、絶望するニールを放置して窓から合図を送り、死体処理屋のブラッドリーを呼び出して二人の遺体を迷宮へ運ばせた。

酒場での確認と酔っ払いの始末

夕暮れ時、酒場から迷宮の出口を監視していたマシューは、帰還したアルウィンのパーティを確認した。子どもから手紙を受け取ったラトヴィッジが顔色を失ったのを見て、マシューは彼が黒幕であると確信した。店を出ようとしたマシューは絡んできた酔っ払いの冒険者に裏路地へと連れ出されたが、アルウィンを侮辱された瞬間に相手の首の骨を折って即死させ、急ぎ帰宅した。

アルウィンの帰宅と入浴の世話

料理の支度を整えていたマシューの元へアルウィンが帰宅した。鎧を脱がせるのを手伝ったマシューは、魔物の群れとの連戦で疲弊したアルウィンのために湯を沸かし、タライを使って髪や体を丁寧に洗い流した。マシューはアルウィンの体を労わりつつ、背中の汚れを拭い取って日頃の労をねぎらった。

森の草原での対決

翌日の昼、マシューは人目のない森の広場で待ち合わせ、完全武装で現れたラトヴィッジと対峙した。ラトヴィッジはアルウィンへの横恋慕からマシューの排除を企てており、雇った冒険者たちを伏兵として呼び出した。その中にはビルや、アストン兄弟の仇討ちを目論む末弟ナッシュもいた。マシューは伐採してあった丸太を怪力で持ち上げて振り回し、伏兵たちを一撃で次々と撲殺した。降参したふりをして煙玉を使おうとした残党も容赦なく叩き伏せ、最後に対峙したラトヴィッジの魔剣を白刃取りで奪い、関節を極めて地面に叩きつけて戦闘不能に追い込んだ。

マデューカスの過去と太陽神の呪い

ラトヴィッジからかつて最強と謳われた七つ星パーティの英雄マデューカスであると見破られたマシューは、正体についてはぐらかした。マシューはラトヴィッジにとどめを刺さず、アルウィンを守り続けるよう命じてその場を立ち去った。森を抜けたマシューは、太陽神の塔を踏破した際に受けた呪いにより、日光が当たらない環境では筋力を奪われて無力化してしまう身体の不自由さに悪態をついた。街への帰路、行き倒れの死体として運ばれるアランの姿を見送ったマシューは、二日後にラトヴィッジが怪我を理由にパーティを離脱したことを知った。マシューは不安を募らせるアルウィンを抱きしめ、二階の寝室へと連れ添った。

第二章 ヒモは朝まで戻れない

鑑定士ヴァネッサからの相談

マシューは冒険者ギルドの個室で、優秀な鑑定士でありながら男運の悪いヴァネッサから相談を受けた。交際中の売れない絵描きスターリングの羽振りが急に良くなり、不審な男が出入りしているため真相を調べてほしいと頼まれた。過去に姿を消した共通の知人ポリーについての会話を交わした後、マシューは借金の返済猶予を引き換えに調査を引き受けた。

スターリングのアトリエと隠された粉末

スターリングの屋根裏部屋を訪れたマシューは、床に拭き取られた血痕と布を被せられた石の箱を発見した。寝ていたスターリングを問い詰めると、血痕は魔物ジュムスの血から作ったインクであり、石は絵の具の原料だと弁解した。さらに金回りの良さを追及したところ、迷宮の死体から金品を漁るついばみ屋や、看板の絵を描いて稼いだと供述した。マシューは不審感を抱きつつ、依頼主の確認を求めた。

偽金事件の発覚とアンディの死

帰宅したマシューは、同行者の怪我で迷宮から早く戻っていたアルウィンと夕食を共にした。アルウィンは、親交のあった若い冒険者アンディが武器屋での口論から衛兵に突き飛ばされて死亡したと語った。原因はアンディの支払いに偽金が混ざっていたことであり、その出所が冒険者ギルドであったため、アルウィンは疑念を抱いていた。

ギルドでの糾弾とデズの窮地

翌朝、スターリングの証言の裏取りを済ませたマシューが冒険者ギルドへ向かうと、偽金の流通に憤慨した冒険者たちが押し寄せていた。手先が器用なドワーフであることから偽金作りの疑いをかけられたデズが丸坊主の男たちに囲まれて詰問されていた。マシューは割って入ってデズの無実を主張したが、丸坊主の怒りを買って激しい暴行を受けた。耐えかねたデズがテーブルを振り回して冒険者たちを吹き飛ばし、現れたギルドマスターの一喝によって騒動は鎮火した。

偽金の調査と鋳型の特徴

デズの部屋に入ったマシューは、ヴァネッサが発見した偽金貨の現物を見せてもらった。本物は肖像画の髭が四本あるのに対し、偽物は三本しかなく、重量も軽かった。鋳型を作る際には絵を反転させる必要があるというデズの言葉から、マシューはスターリングの部屋にあった右向きの王様の絵を思い出した。

スターリングの自白と白猿の壊滅

再びスターリングの部屋に踏み込んだマシューは、右向きの肖像画と髭の数が三本であることを突きつけ、偽金の鋳型彫刻に関与した事実を認めさせた。怯えたスターリングは、犯罪組織「白猿」の幹部である元冒険者テリーに脅されて関与したと白状した。マシューは彼をデズの部屋に匿わせ、裏社会へ偽金の情報を流して冒険者と衛兵を白猿のアジトへ突入させた。白猿は壊滅し首領は処刑されたが、逃亡したテリーだけが行方不明となった。

ギルド職員の暴走とマジックアイテムの受領

事後報告のためギルドを訪れたマシューは、迷宮病から薬物に手を染めて錯乱した黒髪の元冒険者の女性職員をデズが取り押さえる現場に遭遇した。薬物を激しく憎むヴァネッサからスターリング救出の礼として、光を蓄えて頭上を照らすマジックアイテム「仮初めの太陽」を譲り受けた。ヴァネッサは薬物で家庭を失った過去を語り、かつて売人のオスカーと付き合っていた経緯を打ち明けた。外へ出たマシューは、手紙を待ち続けるエイプリルを励ました後、帰宅してアルウィンに事態の終息を伝えた。

テリーの急襲と教会の死闘

数日後、スターリングを連れ出してデズに預けたマシューは、夜の街で単身待ち構えていたテリーの襲撃を受けた。素手の格闘術に長けたテリーから逃れるため教会へ駆け込み、仮初めの太陽を起動しようとしたが、投げナイフで弾き飛ばされて暗闇の鐘塔へ追い詰められた。日光を浴びられないマシューは防戦一方となり激しい打撃を受けたが、夜明けの光が窓から差し込んだ瞬間に怪力を取り戻し、テリーの両腕と両脚を粉砕した。薬物の流通について問い質した後、マシューはテリーの頭部を壁ごと殴り砕いて絶命させた。

ポリーの再会と急襲

教会を出て路地裏に入ったマシューは、物陰から戦棍による不意打ちを受け、地面に倒れ込んだ。見下ろしていたのは、一年前に姿を消し、容姿が変わり果てた元恋人のポリーであった。

第三章 一年前

小遣いの諍いとポリーの自責

一年前、マシューは娼婦のポリーから渡された小銀貨三枚の少なさにため息をついた。付き合いの酒代にも足りないと漏らすと、ポリーは稼ぎが悪い自分のせいだと泣き崩れた。マシューが宥めすかす中、娼館の迎えが現れたため、マシューは外出を控えてすぐに戻ると約束してポリーを送り出した。

酒場での会話と姫騎士の噂

街へ出たマシューはエイプリルをからかった後、酒場でスターリングに絡まれていたところをデズに救われた。デズから売り出し中の「戦女神の盾」のメンバーがギルドで暴れた話を聞かされた。大蛇リントヴルムに仲間を殺されて荒れていたのだという。デズと別れたマシューは、知人の娼婦マギーとその娘セーラに出会い、なけなしの銀貨を渡して親子で過ごすよう促した。

金獅子の遠吠え亭での出会い

高級酒場に入ったマシューは、仲間を失って一人で飲んでいたアルウィンの隣に座った。マシューは仲間を失った苦しみへの共感を示し、後悔という薬に溺れて足を止めてはならないと忠告した。アルウィンが心を開きかけたところへ仲間のラルフが乱入し、マシューを殴り倒してアルウィンを連れ去った。

ポリーの裏切りとセーラの売却

部屋に戻ったマシューは、机の下で震えるポリーを発見した。ポリーは客から大金を受け取り、マギーの娘セーラを誘拐組織に引き渡してしまったと泣きながら告白した。罪悪感から金を使って酒を飲んだと語り、自己憐憫に浸って謝罪を繰り返すポリーに愛想を尽かしたマシューは、道具袋を抱えて部屋を飛び出した。

裏路地での密談と薬物の破棄

セーラの行方を追うマシューは、娼館の裏手でアルウィンがヴァネッサの恋人である売人オスカーから薬物「解放」を受け取り、脅迫されている場面に遭遇した。衛兵の声色を使ってオスカーを追い払ったマシューは、アルウィンの手から薬物を奪い取って排水溝へ流した。逆上して殴りかかってきたアルウィンを宥め、ギルドの個室へ連れて行った。

アルウィンの告白と救出の約束

アルウィンは迷宮病の恐怖から解放に手を出し、引き換えに先祖伝来の翡翠のネックレスまで奪われた過去を打ち明けた。さらに、友人の娼婦メリンダの娘が犯罪組織「三頭蛇」に誘拐され、自身も仲間から孤立している苦境を語った。マシューはメリンダがマギーの源氏名であると気づき、危険を承知で子供の救出に手を貸す決意を固めた。

三頭蛇のアジト襲撃と共闘

三頭蛇の倉庫へ向かったマシューは、自ら囮となって煙玉や爆光玉を使い見張りを撹乱した。裏から潜入したアルウィンがセーラたちを馬車に乗せて脱出させると、マシューは投げられたボーラに飛びついて馬車の逃走を助けた。残されたマシューは激しい集団暴行を受けたが、引き返してきたアルウィンによって救い出された。

ポリーとの決別とアルウィンの提案

自宅に戻ったマシューは、部屋が荒らされ、壁に血文字でメッセージが残されているのを目撃した。錯乱したポリーが姿を消したことを悟ったマシューは捜索を試みたものの見つからず、ヴァネッサからポリーが街を出たらしいと知らされた。その後、街を出るマギーとセーラを見送ったマシューの元へアルウィンが現れた。アルウィンはマシューがマデューカスであることを知った上で、自身のヒモになってほしいと申し出た。マシューはその奇妙な契約を受け入れ、彼女の屋敷に転がり込んだ。

第四章 ヒモは世渡り上手

北の屋敷への監禁と変貌したポリー

意識を失わぬまま捕縛されたマシューは、高級住宅街の屋敷の地下室へ運び込まれた。現れたポリーは短髪にそばかすの姿で、薬物中毒によって別人のように傲慢になっていた。彼女の背後には、マクタロード王国の元侯爵令息ローランドが控えていた。ローランドはアルウィンを陥れて王位を奪うため、マシューを囮として誘拐したと明かした。

三頭蛇の薬物の行方と手首の惨劇

ポリーは三頭蛇が隠していた解放の在処をマシューに問い詰めた。さらにアストン兄弟の末弟ノーマンが現れ、兄たちの仇であるマシューを拷問しようとした。ポリーを説得しようとしたマシューに対し、ポリーはマギーとセーラを殺害して手首を切り落とし、縫い合わせたという証拠を足元に放り投げた。その狂気と残虐性にマシューは深い嫌悪感を抱いた。

アルウィンの突入と乱戦

地下室の扉を破り、アルウィンが単身乗り込んできた。ローランドの素性と勘当された過去を暴いたアルウィンに対し、ポリーはマシューに刃を突きつけて脅迫した。しかしアルウィンは怯まず、完全武装したデズとラルフが突入して形勢は逆転した。乱戦の中、ノーマンがマシューを殺そうとしたがラルフによって斬り伏せられた。

バルコニーの追走とポリーの転落死

混乱に乗じて逃げ出したポリーを追って、マシューは屋敷の屋上バルコニーへ駆け上がった。雲の切れ間から差し込んだ日光を浴びて力を取り戻したマシューは、襲いかかってきたポリーの短剣を素手で粉砕した。マシューは助けを乞うポリーをバルコニーから放り投げ、縁にすがりつく彼女の指先を蹴り落として石畳へ転落死させた。

リントヴルムの出現と討伐

屋敷の地下から、ローランドが巻物の封印を解いた大蛇リントヴルムが出現し、建物を破壊して暴れ出した。かつて仲間を食い殺されたトラウマからアルウィンは竦み上がった。しかし再び日光が差した瞬間、マシューが怪力で魔物の巨体を投げ飛ばし、デズの戦鎚を受け取って急所である顎下を粉砕した。マシューから意地を張るための言葉を教えられたアルウィンは恐怖を振り払い、剣を抜いて魔物に立ち向かった。

第五章 命綱のその先で

迷宮への再出発と養護施設への支援

リントヴルム騒動が収束し、アルウィンのパーティは新たな仲間を迎えて迷宮探索を再開した。マシューはアルウィンに手製の飴玉を渡し、留守中の小遣いとして金貨を受け取った。その金で子供向けの文字の教本を購入したマシューは、セーラの死に落ち込んでいたエイプリルを訪ね、他の子供たちに読み聞かせをさせることで立ち直るきっかけを与えた。

毒沼横町の符牒とスターリングの凶行

酒場でデズから三頭蛇の解放が再び出回っていると聞いたマシューは、取引場所である毒沼横町の壁を調べた。書かれた符牒のインクがジュムスの体液製であると見抜いたマシューは、スターリングの部屋へ踏み込んだ。隠されていた大量の解放を突きつけると、スターリングはヴァネッサの床下から盗み出したと白状した。解放が元は太陽神の啓示で作られた薬物であると知ったマシューは、口封じのために彫刻用のノミでスターリングの喉を突き刺して殺害した。

手紙の発覚とヴァネッサの殺害

薬物を回収するためヴァネッサの自宅へ忍び込んだマシューは、留守のはずのヴァネッサと鉢合わせた。スターリングを救う口実で床下の解放を回収しようとしたが、床下からオスカーがローランドに宛てた手紙とアルウィンの翡翠のネックレスが見つかった。アルウィンの薬物中毒の秘密を知ったヴァネッサが引退と公表を主張したため、マシューは仮初めの太陽を起動して怪力を発揮し、彼女を絞殺した。遺体に油を注いで放火したマシューは、証拠を隠滅して現場を立ち去った。手元に戻った仮初めの太陽には、太陽神の紋章が浮かび上がっていた。

第六章 姫騎士様のヒモ

葬儀と新たな売人の気配

ヴァネッサとスターリングの葬儀が営まれ、参列したマシューはアルウィンと共に墓地を後にした。アルウィンから預かった翡翠のネックレスを見つめながら歩いていたマシューは、雑踏の中で首に黒い斑点のある男を見かけ、アルウィンと別れて尾行を開始した。

太陽神の伝道師ローランド

路地裏で売人たちを斬殺していたのは、生き延びていたローランドであった。ローランドの口を借りて太陽神アリオストルの声が響き、マシューが第二の試練を突破したと告げた。マシューは激怒して拳を振るったが、神の力を得たローランドに軽々と受け止められた。ローランドは街を浄化するためとして解放を飲み干し、鶏のような頭部を持つ巨大な異形の怪物へと変貌を遂げた。

廃屋での死闘と怪物の撃破

マシューは仮初めの太陽を起動して応戦したが、心臓を貫かれても即座に再生するローランドに圧倒され、近くの廃屋へと吹き飛ばされた。激しい攻防の末に仮初めの太陽の効力が切れ、再び呪いによって全身の力を奪われたマシューは窮地に陥った。しかしマシューは魂の意地を振り絞って呪いの重圧を力づくで跳ね除け、怪物の巨体を床に叩きつけると、両手でその首を力任せに引きちぎって討ち取った。首を失った怪物の肉体は黒い灰となって消滅した。

衛兵の尋問とヒモの矜持

ボロボロになったマシューは窓からゴミ捨て場へ飛び降りて脱出したが、駆けつけてきた衛兵のちょびひげに見つかった。カツアゲに遭った哀れな被害者を装ってその場をやり過ごしたマシューは、街の人々から向けられる蔑みの視線を浴びながら帰路についた。己の無力を自覚しながらも、迷宮の闇に挑むアルウィンの命綱であり続ける決意を新たにした。

終章 一年前 その後

ポリーの捜索打ち切りとスターリングの接近

一年前、マシューは酒場でヴァネッサにポリーが見つからないと報告し、肩を落とす彼女を適当な冗談で宥めた。そこへ居合わせたスターリングがヴァネッサに声をかけ、売れない絵描きであることを知ったヴァネッサは興味を示して親交を深め始めた。

アルウィンの契約とヒモの始まり

酒場を出て家賃の工面に頭を悩ませていたマシューの背後に、鎧姿のアルウィンが現れた。アルウィンはマシューがかつての英雄マデューカスであることを知っており、以前の約束を果たす代わりに自分を癒やし慰めるヒモになってほしいと申し出た。波乱の未来を予感しつつも、マシューはその奇妙な提案を受け入れ、彼女の屋敷へ転がり込むことを決めた。

まとめ
姫ヒモ2レビュー

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