小説「ヘルモード 9 ヘビーユーザー島編」感想・ネタバレ

小説「ヘルモード 9 ヘビーユーザー島編」感想・ネタバレ

『ヘルモード』第9巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

ヘルモード 8巻 レビュー
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ヘルモード 10巻 レビュー

Table of Contents

物語の概要

本作は、最高難易度「ヘルモード」を選択した結果、能力値最弱の“農奴”として異世界へ転生した少年アレンが、召喚士として仲間と共に成長し、世界規模の脅威へ立ち向かう戦記ファンタジーである。
第9巻では、神々の加護を受けた強敵との戦いが激化し、アレンを中心とする仲間たちが“世界の命運を賭けた戦局”へと深く巻き込まれていく。前巻から続く大規模軍事戦闘の結末、アレンの新たな力の開花、そして“運命に抗う者たち”の選択が大きな焦点となる巻である。

主要キャラクター

  • アレン
    地球時代の記憶を持つやり込みゲーマー。召喚士として進化を続け、多数の召喚獣や仲間を駆使した“多層戦術”を展開する。第9巻では、より高度な指揮と戦略構築能力が問われ、戦争全体の流れに関わる存在へと成長する。

物語の特徴

本シリーズ最大の特徴は「最弱スタート×やり込み思考」という設定を徹底している点にある。アレンはチート能力ではなく“ゲーム的最適化”によって強さを獲得しており、召喚獣の運用、スキルの組み合わせ、仲間のロール構築など、MMO的な戦術が異世界戦争に落とし込まれている。

第9巻は特に次の点で際立っている。

  • 国家レベルを超えた“世界戦争”の本格化
  • アレンの役割が個人戦から戦局全体の司令塔へ拡大
  • 新たな敵勢力による神話クラスの脅威の登場
  • 極限状況での仲間の成長と分岐

ただの“無双”ではなく、綿密な戦略とキャラ成長の積み重ねが読者を引き込む構造となっている。

書籍情報

ヘルモード~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~9
著者:ハム男 氏
イラスト: 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2024年4月17日

ブックライブで購入 BOOK☆WALKERで購入

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あらすじ・内容

アレン、ついに軍を編成!?

アレン、ついに軍を編成!?グシャラとバスクを退け、邪神教との戦いに勝利したアレンたち。そこで手にした空に浮かぶ島を「ヘビーユーザー島」と名付け、新たな拠点とするべく開発を進めていく。元邪神教信者の難民を住民として受け入れ、町を整備。さらにはアレンたちに同調する各国の兵士たちも島へと移住し、「アレン軍」として軍を編成する。さらにはアレンが農奴だったころからの友人で、「廃課金商会」を率いる商人として活躍しているペロムスとも合流し、ヘビーユーザー島はどんどん賑やかになっていった。島の開発が順調に進む中、アレンは5大陸同盟の会議に参加することとなり、ギアムート帝国へと向かう。アレンの大胆な発言に、各国のトップ達の反応は――。さらにはシアが獣王国の長である獣王ムザと決闘をすることになり……!?クラフト要素も廃ゲーマー流最効率で進行中!

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~9

感想

ヘビーユーザー島とアレン軍編成の面白さ

本巻は、魔王軍との決戦そのものよりも、「その前に戦力と土台をどう整えるか」に焦点が当たった巻である。
空に浮かぶヘビーユーザー島を拠点とし、獣人・エルフ・ダークエルフ・人間・魚人・ドワーフまで飲み込んだ多種族都市を作り上げていく過程が、典型的な「RPGの拠点づくり」をフルスケールでやっているようで非常に印象的である。

アレンが掲げるのは、志の完全な一致ではなく「魔王軍を倒すことだけ共有できれば良い」という現実的な方針である。その上で、転職ダンジョン利用権や装備支給、給金制度まで込みで「この軍に所属する経済的メリット」を具体的に提示していく姿は、ゲーム脳というより、もはや企業経営者か国家運営者のそれである。
ヘビーユーザー島が単なる隠れ家ではなく、信仰・産業・防衛・治安維持まで整えた“準国家”として立ち上がっていくところに、本シリーズのスケール拡大がはっきりと見えてくる巻である。

ゲーム的世界観の深化と転職ダンジョンの「危険さ」

転職ダンジョンの三つの課題を、アレン視点で徹底的に分解していくパートも興味深い。
職業クイズやギミックだらけの迷宮構造は、一見すると「ゲームらしいお遊び」に見えるが、才能を持たない一般人だけで挑んだ場合の死亡リスクを冷静に試算し、「これはかなりの確率で全滅する」と結論づけるあたりに、本作の残酷なリアリティがにじむ。

アレンが「情報をギルドに提供し、リスクを理解した上で転職に挑むべき」と考える姿勢は、単なる攻略勢ではなく、世界全体の難易度設計を見ている管理者側の視点に近い。
さらに、最下層ボス・ゴルディノの周回が日課になり、報酬の期待値まで含めて「効率が微妙」と評価していくくだりには、廃ゲーマーらしい冷徹さと笑いが同居している。

五大陸同盟会議とシア父娘のドラマ

ギアムート帝国での五大陸同盟会議は、本巻の政治的なハイライトである。
転職ダンジョンを巡るギルドと同盟側の対立、鑑定の儀で数値化される各国戦力、アレン軍のステータスが公的に露出することで、アレンが各国から「強力な召喚士」ではなく「一個の独立軍事勢力の総帥」として認識されていく構図が丁寧に描かれている。

その中でも、アルバハル獣王ムザとシアの対立は、親子の情と国家の事情が真っ向からぶつかる重いエピソードである。
娘を国から手放したくない不器用な父と、仲間と共に前線に立つ道を選んだシア。そこに、シアを庇って殴り合いに割り込むドゴラの存在が絡むことで、「獣王の血筋が持つ潜在力」と同時に、「個人としての覚悟」が強く印象づけられる。
最終的にアレン軍は遊軍として同盟と協力する立場を得るが、その裏でシアの家族関係は完全に元には戻らない形で変質しており、単なる熱いバトルを越えた後味を残している。

ペロムスの恋とクエスト化する「愛」の条件

一方で、ペロムスの恋愛エピソードは、本巻の軽妙さと“ヘルモードらしさ”を象徴するパートである。
「一人でドラゴンを倒す」「聖魚マクリスの涙を、誰の手も介さず直接もらってこい」という、もはやイベントボス+レアドロップ縛りのような無茶苦茶な条件が、そのまま物語の次の大目標に組み込まれていく構成は見事である。

ペロムス個人の恋路が、プロスティア帝国行きや聖珠集めと自然に接続されていき、「個人的な願い」と「世界規模のクエスト」が同じテーブルに乗る。このスケール感のねじれが、本作独特のテンションを生み出していると感じられる。

王族・指導者たちの「悩み」を掘り下げる外伝群

本巻は、本編だけでなく外伝・特典エピソードの厚みも大きい。
ベク視点の特別書き下ろしでは、単なる噛ませ犬ではない、敗北と劣等感と責務に押し潰されかけた「次期獣王候補」の苦悩が描かれ、違法薬に手を伸ばすかどうかという葛藤まで含めて、ベクという人物への見方を揺さぶってくる。

オルバースの過去と「威風凜々」との出会いは、ダークエルフの里に閉じ込められた王が、外へ出て伴侶を探しに行くという、静かな決意の物語である。幼少期に砂漠で置き去りにされたトラウマが、仲間の足跡が増える夢へと少しずつ書き換えられていく描写は、短いながらも印象深い。

ヘルミオス外伝と、創造神エルメア&メルスの掛け合いは、スキル「天稟の才」や魔導書システムの裏側を神様目線で説明するメタ的な一編であり、シリーズ全体のゲーム的世界観にさらに一段階、厚みを与えている。

総評:準備と布石の巻だが、キャラクターの“立ち位置”が大きく定まる

総じて本巻は、大きな戦争や決定的な決着よりも、「拠点の完成」「軍の編成」「政治的なポジション取り」「各キャラクターの覚悟と立場の確定」といった、長期戦に向けた準備と布石に重きを置いた一冊である。

ヘビーユーザー島という多種族拠点、アレン軍総帥という肩書き、シアの獣王候補としての位置づけ、ペロムスの恋とプロスティア行きのフラグ、ベクの内乱と「獣王の証」奪取など、今後の大きな展開に直結しそうな要素が次々と積み上がる構成である。
バトルの爽快さより、組織運営・政治・人間関係のドラマを楽しむ巻であり、シリーズの「土台づくりのターニングポイント」として非常に重要な一冊であると言える。

最後までお読み頂きありがとうございます。

ヘルモード 8巻 レビュー
ヘルモード 全巻 まとめ
ヘルモード 10巻 レビュー

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登場キャラクター

アレン

ヘビーユーザー島を拠点とする軍の総帥であり、各種族を束ねて魔王軍と戦う指揮役である。合理的な思考と準備を重んじ、政治交渉や資源配分にも積極的に関わる立場である。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍総帥。五大陸同盟から独立した遊軍的勢力の指導者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 エルフやダークエルフ、獣人をアレン軍に編入し、ヘビーユーザー島の開拓と軍備増強を進めた。S級ダンジョン最下層ボス・ゴルディノの周回討伐を日課とし、装備と魔導コア、指輪などを大量に確保した。五大陸同盟会議でアレン軍の独立方針と高位魔獣討伐事業を示し、各国との協力関係を築いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 五大陸同盟から正式に「総帥」として認知され、遊軍として世界規模の魔獣討伐を任される立場となった。ヘビーユーザー島の通信網と転移拠点、魔導具研究を掌握し、各国に対して軍事と経済の両面で大きな影響力を持つ存在となった。

シア

アルバハル獣王国の王女であり、肉体戦に秀でた戦士である。父ムザ獣王との対立を経て、アレン軍に身を置きつつも獣王位を目指す決意を固めた。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍前衛隊大将軍。アルバハル獣王国の王族であり、獣王候補である。

・物語内での具体的な行動や成果
 五大陸同盟会議で父ムザに対し「けじめ」として果し合いを申し入れた。闘技場で一度打ちのめされるが、ドゴラの助力を受けてなお意思を貫いた。S級ダンジョンでは前衛として戦い続け、ゴルディノ戦でも主力の一人として戦果を上げた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ムザとの死闘と獣王候補としての実績により、ゼウやベクと並ぶ次期獣王候補として認められた。アレン軍内では前衛隊の大将軍に任じられ、将来的に「獣王の証」を得ることで戦力面でも象徴的存在となる可能性が示された。

ドゴラ

火の神フレイヤの加護を受けた重戦士であり、仲間を庇う戦い方を好む戦力である。粗野に見えながらも仲間思いで、特にシアを気遣う姿が描かれている。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍の主力戦士。ヘビーユーザー島神殿の使徒としてフレイヤへの信仰を担う立場である。

・物語内での具体的な行動や成果
 獣王ムザとの闘技場戦では、シアを守るために乱入し、素手の殴り合いで何度も腹に有効打を通した。ゴルディノ戦では神器カグツチとオリハルコン斧を振るい、火属性弱点となった真ゴルディノに決定打を与える役割を果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フレイヤの加護が強化されたことで、火属性攻撃を吸収して力に変える特性を得た。アレン軍内では火力と耐久力を兼ね備えた象徴的戦力となり、フレイヤ神殿側からも重視される存在となっている。

セシル

ラターシュ王国の王女であり、アレンの側で共に行動する魔法使いである。政治交渉や情報整理にも関わりつつ、戦場では強力な攻撃魔法を扱う。

・所属組織、地位や役職
 アレンのパーティーメンバー。ヘビーユーザー島の運営補佐であり、外交や情報面でも役割を持つ。

・物語内での具体的な行動や成果
 マクリスの聖珠の所持者として、フィオナとの会談で「聖魚マクリスの涙」という条件を引き出すきっかけを作った。転職ダンジョンではパーティーの攻略を支え、ゴルディノ戦では火属性魔法を放ち、ドゴラの強化源としても機能した。日常場面ではルークの悪戯の標的となり、拠点の賑やかな空気を作る一因となった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ラターシュ王国王女としての立場に加え、ヘビーユーザー島と各国を結ぶ情報と人脈の要として機能している。プロスティア帝国や聖魚マクリスに関する知識も豊富で、今後の海底方面の行動計画に影響を与える存在である。

ソフィー

ローゼンヘイムのエルフ王女であり、アレン軍の軍師として全体方針を支える役割を担う。冷静な判断と種族間の調整役として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍軍師。ローゼンヘイム王家の一員であり、エルフたちの代表的立場である。

・物語内での具体的な行動や成果
 エルフ二千人のアレン軍編入を見届け、ローゼンヘイム女王との交渉を担った。ヘビーユーザー島への移送後は、エルフとダークエルフ、獣人たちの育成方針を種族ごとに整理し、A級やS級ダンジョンへの挑戦計画を立てた。転職ダンジョンではメンバーの転職結果を踏まえて役割分担を助言した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレン軍内で正式に軍師として位置付けられ、前衛・後衛隊やゴーレム軍を含む全体戦略に影響を与える立場となった。エルフとダークエルフ双方から信頼される存在として、種族間の橋渡し役にもなっている。

ルークトッド

ダークエルフの王子であり、見た目は幼いが強い才能を秘めた黒魔導士である。やんちゃな性格と、学びの場面では集中力に欠ける一面が描かれている。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍後衛隊大将軍候補。ファブラーゼの王子であり、オルバース王の子である。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヘビーユーザー島への移住時にダークエルフ千人と共に参加し、精霊王ファーブルに励まされながらアレン軍入りを決めた。転職ダンジョンで黒魔導士の才能を得て、S級ダンジョンでデバフスキルの習得と強化に励んだ。日常ではセシルへの悪戯で騒動を起こし、拠点の雰囲気を和らげる役割も果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「星一つ」の黒魔導士として精霊王との組み合わせによる成長が期待され、アレンから将来の大将軍格として見なされている。王族としてだけでなく、アレン軍の中核戦力候補として周囲から注目される存在となった。

ペロムス

廃課金商会の代表であり、ヘビーユーザー島の市長を務める商人である。金銭感覚と交渉力に優れ、軍と町の運営を支える役目を担う。

・所属組織、地位や役職
 廃課金商会代表。ヘビーユーザー島市長。島における商業と行政の責任者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 商会と傭兵団を島へ移転させ、四つの町の統合的運営と貿易拠点化を進めた。アレン軍五千人の給金制度を設計し、基本給と才能・役職手当、ダンジョン収益分配の仕組みを整えた。フィオナへの二度目の告白では、「ドラゴン討伐」と「聖魚マクリスの涙」を条件として受け入れ、プロスティア帝国行きの動機を得た。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 年商金貨百八十万枚規模の商会を率いる立場から、更に島全体の市長という公的役割を兼ねるようになった。アレン軍の財政と島の経済基盤を握ることで、軍事行動にも大きな影響を与える経済的キーマンとなっている。

レイラーナ姫

ラターシュ王国の王女であり、勝ち気で遠慮のない性格の持ち主である。トマスに対して主導的に関わり、周囲を振り回す存在として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 ラターシュ王国の王女。アレン軍とは友好関係を持つ王家の一員である。

・物語内での具体的な行動や成果
 学園都市でアレンたちと合流し、王城勤務を一年休ませてトマスをダンジョン修行に送り出す手配をした。転職ダンジョンではトマスの転職に立ち会い、才能結果に対して強い感情を示した。転職後の祝宴を二人きりで行う流れを作り、トマスとの関係を深める場を用意した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレン軍との接点を通じて、ラターシュ王国の同盟内での立場にも関与するようになった。王女としての地位と行動力から、今後のラターシュとアレン軍の関係に影響を及ぼす可能性がある存在である。

トマス

グランヴェル家の跡取りであり、真面目で責任感の強い青年である。戦闘面では補助役としての適性を持つことが明らかになった。

・所属組織、地位や役職
 グランヴェル家の嫡男。アレン軍と行動を共にする冒険者候補である。

・物語内での具体的な行動や成果
 レイラーナ姫の取り計らいで一年間王城勤務を離れ、ダンジョン修行に専念することになった。転職ダンジョンでは後衛職を選択し、サイコロ判定の結果「楽士」の才能を授かった。アレンからは回復や支援を兼ねる役割を期待され、エルフ部隊と共に育成される方針が示された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 望んでいた僧侶ではなく楽士となったが、重ね掛け可能な支援職としてパーティー内での重要度が高まった。王家や貴族との人脈を持つ者としても、将来的に政治面での役割を担う可能性がある。

ハバラク

名工として知られるドワーフの鍛冶師であり、オリハルコンや神器の加工を任される技術者である。職人気質で要求も多いが、確実な成果を出す存在である。

・所属組織、地位や役職
 ヘビーユーザー島鍛冶拠点の主任。ドワーフ職人たちの棟梁である。

・物語内での具体的な行動や成果
 神器カグツチの変化から返還を察し、事情を聞いたうえで工房ごと島へ移住した。オリハルコン二塊のうち一つ半を使い、ドゴラ用の大斧を完成させた。残り半分でアレン用の剣の鍛造を準備し、島の需要に合わせて多くの武具製作計画を立てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヘビーユーザー島における鍛冶職人地区の核となり、オリハルコン加工と高級装備供給の要として位置付けられた。名工としての技術はアレン軍全体の戦力向上に直結し、戦略面でも欠かせない存在となっている。

ララッパ

バウキス帝国から派遣された魔導技師の指揮官であり、魔導具研究所の責任者である。好奇心と技術への執着が強い人物である。

・所属組織、地位や役職
 バウキス帝国魔導技師団長。ヘビーユーザー島魔導具研究所の所長である。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヘビーユーザー島のクーレ建設で「水生成の魔導具(大)」や「浄化の魔導具(大)」を設置し、水質管理と生活基盤整備に貢献した。S級ダンジョンから持ち帰られた立方体を「魔導コア」と見抜き、価値と用途を説明した。転移装置や島移動の研究構想を受け入れ、古代魔導具の再現に取り組むことを約束した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレン軍とバウキス帝国を結ぶ技術面の窓口となり、魔導コアを用いた大型魔導具計画の中心人物となった。研究成果は島の移動や転移装置の実現に直結し、今後の戦略機動力に大きく影響する立場である。

ザウレレ

バウキス帝国出身のゴーレム使いであり、戦闘用ゴーレム部隊を率いる指揮官である。実務的で、前線運用に長けた人物として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 バウキス帝国ゴーレム隊隊長。ヘビーユーザー島所属ゴーレム部隊の指揮官である。

・物語内での具体的な行動や成果
 クーレの水質管理のため、ララッパと共に浄化用魔導具の設置と調整を行った。アレン軍出発式ではゴーレム隊の代表として紹介され、ダークエルフや獣人、エルフ部隊と連携してアイアンゴーレム狩りを担当する役割を与えられた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレン軍内ではゴーレム戦力の責任者として位置付けられ、大量討伐による資金確保と戦力慣熟の両面で重要な役割を担うようになった。バウキス帝国の顔としても機能し、帝国と島の信頼関係の一端を担っている。

ムザ獣王

アルバハル獣王国の現獣王であり、シアやゼウ、ベクの父である。頑固で不器用な性格だが、家族と国を思う感情は強い。

・所属組織、地位や役職
 アルバハル獣王国の獣王。国家の最高権力者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 五大陸同盟会議に参加し、シアのアレン軍参加に強く反発した。闘技場でシアの果し合いを受け、さらに乱入したドゴラやアレンとも戦い、獣王化と獣帝化で圧倒的な力を見せた。獣王継承を巡る会議では、大臣やテミと協議しながらゼウとシアのどちらを次期獣王にするか悩んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 獣王位は維持しているが、内心では退位と次世代への継承を意識し始めていることが示された。ベクの内乱と「獣王の証」奪取により、権威と象徴の一部を失い、アルバハル獣王国の行方にも不安を残す立場となった。

ベク獣王太子

アルバハル獣王国の第一王子であり、本来の獣王継承者である。誇り高く、努力を重ねる一方で、追い詰められた末に過激な選択を取る人物として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 アルバハル獣王国の獣王太子。正式な継承順位第一位である。

・物語内での具体的な行動や成果
 特別エピソードではアークスパイダー単独討伐や獣王武術大会でのギルとの再戦に挑み、「才能人頭税倍化法」を提案するなど、王国の在り方に自分なりの答えを示した。本編では獣王継承会議の混乱の中で内乱を起こし、「獣王の証」を奪って魔導船で王都から脱出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王太子から反乱側の中心人物となり、正統と反逆の両面を併せ持つ存在となった。「獣王の証」を持ち出したことで、象徴の面では新たな獣王候補ともなり得るが、同時にアルバハル内外から追われる立場となった。

ルド将軍

アレン軍側と各国との連絡役として動く軍人であり、冷静に情報を運ぶ実務担当である。

・所属組織、地位や役職
 アレン軍の将軍。通信と外部交渉を担う立場である。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルバハル獣王国での獣王継承会議の結果を、冒険者ギルドの通信魔導具を通じて確認した。ベクによる内乱とムザ負傷、「獣王の証」奪取などの情報を急ぎアレンたちに伝え、クレビュール王国訪問とプロスティア帝国潜入方針決定のきっかけを作った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大きな昇進や称号の変化は記されていないが、アレン軍における情報伝達と外交判断の起点として重要な役割を果たしている。報告の速さと正確さが、今後の海底方面の行動計画にも影響する立場である。

オルバース

ダークエルフの里ファブラーゼの王であり、祈りの巫覡として長く里を守ってきた人物である。責任感が強い一方で、自身の在り方に葛藤を抱えている。

・所属組織、地位や役職
 ファブラーゼの王。祈りの巫覡であり、ダークエルフ一族の長である。

・物語内での具体的な行動や成果
 特別エピソードでは幼少期に砂漠で父に置き去りにされた記憶を抱えつつ、長老会で各国情勢を聞き続ける日々を送っていた。不老の秘薬の噂や五大陸同盟への加盟要請に頭を悩ませる中、夜襲で侵入したAランク冒険者一党「威風凜々」を捕縛し、本来なら処刑すべきところを自ら同行して外界に出るという異例の提案をした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 里から出られない王から、自ら外界へ旅立つ決意を固めたことで、ファブラーゼの未来に新たな道を開こうとする存在となった。ルークをアレン軍に託した判断と合わせて、ダークエルフの進路に大きな影響を与える立場である。

ヘルミオス

勇者の才能を持つ青年であり、ギアムート帝国の切り札的存在である。明るい性格で周囲を引っ張る気質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ギアムート帝国所属の勇者。後に五大陸同盟でも重視される戦力である。

・物語内での具体的な行動や成果
 五大陸同盟会議の鑑定の儀では、桁外れのステータスと多くのスキルを示し、各国代表を驚かせた。特別エピソードでは、才能持ちの子供たちを集める旅に出され、ガッツンやドロシー、エナたちと共に各村を巡った。山道では「才能狩り」の待ち伏せを受けるなど、才能制度の現実と危険を身をもって知ることになった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 鑑定の儀を通じて、名実ともに「英雄王級」の戦力として五大陸同盟に認識された。アレンからも必要に応じて助力を求める対象として扱われており、今後の魔王軍との戦いでも重要な役割を担うことが示唆されている。

ファルネメス

調停神と呼ばれる神性存在であり、現在は力を落としてヘビーユーザー島で静養している。人間や竜と距離の近い在り方が描かれている。

・所属組織、地位や役職
 調停神。神界から人間界へ移った神である。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヘビーユーザー島の馬小屋に突然現れ、クレナ不在を確認してから眠りについた。その後は馬小屋に住みつき、クレナや白竜ハクと餌を介して交流する日々を送った。精霊神からは、神界で恐れられて居場所を失い、力も落ちていることが説明された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神界での畏怖の対象から、島で見守られる存在へと立場を変えた。表立った戦闘や政策には関わっていないが、クレナとハク、精霊神との関係を通じて、神々とアレン軍の橋渡し的存在となる可能性を持っている。

フレイヤ

火の神であり、神器カグツチを司る神性存在である。ドゴラを通じて人の世の戦いに関わる立場として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 火の神。神器カグツチの主であり、ドゴラに加護を与える神である。

・物語内での具体的な行動や成果
 カグツチ返還後も炉の炎を通じてハバラクと繋がり、神器が無事戻ったことを示した。五大陸同盟会議前には、ドゴラに人の世の決まりに従うよう諭し、武器没収に応じて会議に出席するよう促した。ゴルディノ戦では、加護を通じてドゴラの火属性耐性と攻撃力を大きく高めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 表舞台には直接現れていないが、加護の強化によってアレン軍の戦力バランスに大きな影響を与える存在となった。ヘビーユーザー島では信仰対象として神殿が置かれ、信者の祈りによって神力が増す仕組みが意識されている。

白竜ハク

ヘビーユーザー島に住む白い竜であり、クレナに懐いた大型戦力である。以前よりさらに成長した姿が描かれている。

・所属組織、地位や役職
 ヘビーユーザー島の守護的存在。アレン軍の協力戦力である。

・物語内での具体的な行動や成果
 アレンがハバラクと山を下る途中で姿を現し、兵たちの前で巨大な体を見せた。クレナに頭を差し出して甘え、ルークにも撫でさせることで、島の仲間としての信頼を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 成長によって存在感が増し、島の象徴的な戦力かつ住民から親しまれる存在になった。今後の海や空での機動戦においても、重要な移動と戦闘の手段になり得る立場である。

レイブン

元傭兵の戦士であり、現在はヘビーユーザー島の自警団長として治安維持を担う人物である。実務能力と現場感覚に優れる。

・所属組織、地位や役職
 ヘビーユーザー島自警団団長。廃課金商会傭兵団の出身である。

・物語内での具体的な行動や成果
 島の町に牢屋を整備し、自警団として治安維持にあたった。転職ダンジョンを攻略して戦闘系の才能を得ており、島とアレン軍の安全を直接支える戦力となった。出発式では装備支給の場を取り仕切り、武具と指輪の配布を指揮した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 商会傭兵から島全体の治安責任者となり、住民と兵の双方から信頼される位置に就いた。アレン軍の給金制度により報酬面でも安定し、今後も長期的に治安と秩序を支える存在として期待されている。

戦闘 一覧

第五話 シアのけじめ、獣王との戦い

シア対ムザ獣王(果たし合い)
  • 戦闘者:シア vs ムザ獣王
  • 発生理由:シアが自身の勝手な行動にけじめをつけるべく、父への果たし合いを申し入れた。
  • 結果:ムザ獣王がシアを一方的に叩き伏せ、完勝した。
ドゴラ対ムザ獣王
  • 戦闘者:ドゴラ vs ムザ獣王
  • 発生理由:敗北したシアを吊り上げるムザの行為にドゴラが激怒し、割って入ったことが発端だ。
  • 結果:ドゴラが数回有効打を与えるも、圧倒的なステータス差により追い込まれた。
アレン対ムザ獣帝
  • 戦闘者:アレン vs ムザ獣王(獣王化→獣帝化)
  • 発生理由:窮地に陥ったドゴラとシアを守るため、アレンが介入した。
  • 結果:アレンが重傷を負いながらも反撃し、メルルのゴーレムとヘルミオスの仲裁により中断された。

第九話 オリハルコンと魔導キューブ

アークスパイダー討伐戦(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs アークスパイダー
  • 発生理由:ベクが修行の一環として、単独での討伐に挑んだことによる。
  • 結果:ベクが勝利を収めた。
獣王武術大会準決勝(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs 疾風のボウ
  • 発生理由:大会準決勝の試合として行われた。
  • 結果:ベクがボウの手甲鉤ごと粉砕し、勝利した。
獣王武術大会決勝(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs ギル獣王子
  • 発生理由:大会決勝の舞台で、因縁に決着をつけるため戦った。
  • 結果:ギルがベクを一方的に蹂躙し、優勝を果たした。
獣王武術大会決勝・二年目(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子(薬物強化) vs ギル獣王
  • 発生理由:前年の雪辱を晴らすべく、ベクが再戦に臨んだ。
  • 結果:ベクが禁断の薬を飲み、ギルの腕と胸当てを粉砕して反撃に転じた(結末は未記載)。

第十話 S級ダンジョン最下層ボス周回への挑戦

最下層ボス討伐戦(周回)
  • 戦闘者:アレン一行(10名) vs ゴルディノ・配下ゴーレム群
  • 発生理由:報酬の独占と、効率的な周回体制の確立を目的とした。
  • 結果:石Aの収束砲撃とセシルのプチメテオにより撃破し、周回に成功した。

第十三話 アルバハル獣王国の動乱

アルバハル内乱
  • 戦闘者:ベク派の反乱軍・魚人兵 vs 獣王親衛隊
  • 発生理由:王位継承を確実にするため、ベク獣王太子が武装蜂起した。
  • 結果:内乱は鎮圧され反乱軍は捕縛されたが、ムザ獣王は負傷し、ベクは「獣王の証」を奪って逃走した。

特別書き下ろしエピソード② オルバースの決意と威風凜々①

冒険者一党の捕縛
  • 戦闘者:ファブラーゼの警備隊 vs 冒険者一党「威風凜々」
  • 発生理由:不老の秘薬を求め、冒険者が里へ不法侵入したからだ。
  • 結果:冒険者たちは門前で拘束された。

特別書き下ろしエピソード③ ヘルモード外伝 ~勇者ヘルミオス英雄譚~ ③天稟の才 後編

才能狩りの襲撃
  • 戦闘者:才能狩り集団 vs 護衛騎士団
  • 発生理由:才能を持つ子供たちを誘拐する目的で、待ち伏せ攻撃を仕掛けた。
  • 結果:騎士団が反撃したが、混乱の中でヘルミオスたちの馬車が奪われた。
ヘルミオス対デラケル
  • 戦闘者:ヘルミオス vs 拳豪デラケル
  • 発生理由:連れ去られた仲間を救出するため、ヘルミオスが立ち向かった。
  • 結果:ヘルミオスが「爆砕拳」を奪取して発動し、デラケルの拳を粉砕して勝利した。
才能狩り殲滅戦
  • 戦闘者:騎士団(増援) vs 才能狩り集団
  • 発生理由:ヘルミオスたちを救出し、賊を制圧するために行われた。
  • 結果:騎士団が賊を制圧し、子供たちを救出した。

電子書籍特典『愛の噴水』

フレイヤの炎撃
  • 戦闘者:火の神フレイヤ vs ドゴラ(の尻)
  • 発生理由:クレナがアクアを褒めたことにフレイヤが嫉妬し、ドゴラとの口論に発展したからだ。
  • 結果:フレイヤが炎を噴き上げ、ドゴラの尻と椅子を燃やした。

展開まとめ

第一話 アレン軍の受け入れ

エルフ二千人の編入と女王の動揺

アレンはローゼンヘイム首都フォルテニアで、エルフ二千人をアレン軍に編入する着任式に臨んでいた。女王は精霊神の預言が正しかったとしてアレンを「闇を払う光の者」と再認識し、才能ある兵を無期限で預け、その運用もアレンに一任した。アレンはエルフたちの覚悟を確認するが、彼らは世界樹と女王を守るためなら死も厭わない価値観を語った。式の途中、女王はセシルとクレナの腕の聖珠に気付き、ソフィーの腕にそれが無いことに衝撃を受けて動揺するが、詳細は式後にソフィーと話し合うことになった。

ヘビーユーザー島への移送と開拓開始

アレンは覚醒スキルでエルフと役人を空に浮かぶヘビーユーザー島へ転移させた。島は草一本ない死の大地で、エルフたちは天上の園という説明との落差に驚く。アレンはここに元邪神教信者一万五千人を受け入れ、ドゴラへの信仰を通じて火の神フレイヤの神力を高める構想を持っていた。既に獣人二千人とシアが駐屯しており、エルフの精霊魔導士たちが土・木・水の精霊魔法で整地と植林を進め、獣人たちが建材となる丸太を加工して町造りを始めた。アレンは魔力の種で全体の魔力を回復させつつ、島を十日程度で居住可能にする目算を立てた。

ダークエルフ千人とルークの合流

ソフィーが母である女王との話を終えて島に戻ると、アレンと共にダークエルフの里ファブラーゼを訪れた。そこでは若いダークエルフ千人がアレン軍参加者として待機しており、生活物資も山積みされていた。彼らはレベルがカンストしていない世代であり、オルバース王は里の守りと、長年対立してきたエルフとの共生を両立させるため、あえて柔軟な若者を選んだと示唆される。オルバースの子ルークトッドも友として同行し、精霊王ファーブルに励まされつつ島への移住を決意した。

軍強化方針と廃ゲーマークラン結成

ヘビーユーザー島に獣人、エルフ、ダークエルフ計五千人が揃うと、アレンは隊長級を集めて方針説明を行った。各種族はそれぞれ別の目的で参加していると認めたうえで、志の統一までは求めず、共同して魔王軍を倒すことだけを共通目標とする方針を示した。その背景には、魔王軍と戦う勢力が優先的に転職ダンジョンを利用できるという国際的な枠組みがあり、アレンは各方面への根回しで獣人とダークエルフにも利用権を広げようとしていた。アレンは島の開拓、軍の強化、S級ダンジョン攻略の三課題を掲げ、レベルとスキルを上げたうえで転職させ、全員に能力上昇の指輪を二つ装備させる一年計画を提示した。そのために種族ごとに冒険者パーティーを編成し、「廃ゲーマー」を筆頭にエルフ、獣人、ダークエルフの三パーティーを束ねた「廃ゲーマークラン」を結成した。ルークの才能が星一つの黒魔術師であることも判明し、アレンは精霊王ファーブルと組み合わせた成長方針を考えた。

ハバラク勧誘と鍛冶拠点の島ごと転移

翌日、アレン一行は名工ハバラクの工房を訪ね、フレイヤの神器カグツチを取り戻したことを伝えた。ハバラクは炉の炎の変化から神器返還を察しており、事情を聞いたうえでヘビーユーザー島への移住を承諾した。アレンたちはオリハルコン加工と島の開拓を支える鍛冶拠点が必要であると説明し、ハバラクは弟子や職人たちも連れていくことを条件に受け入れた。アレンたちは工房の基礎ごと掘り起こし、鳥Aの覚醒スキルで工房丸ごと島の神殿近くへ転移させ、鍛冶職人地区の核とした。ハバラクは必要な素材や設備を次々と要求し、アレンはそれを魔導書に記録したうえで、オリハルコンの大斧二本をドゴラ用に、剣を自分用に、残りでシアやクレナ用の装備を作る優先順を伝えた。こうして島に名工を迎えたことで、アレン軍の装備強化とオリハルコン加工の道筋が整ったのである。

第二話 レイラーナ姫とトマスと転職ダンジョン

種族ごとの育成方針と転職準備

名工ハバラク訪問後、アレン軍は種族ごとの課題に合わせて育成を進めていた。獣人は既にダンジョン攻略経験があり転職ダンジョン解放後に順次転職させる方針であった。一方、エルフは経験値はあるがダンジョン未経験、ダークエルフはレベルも低く、まずA級ダンジョン踏破や基礎育成が必要と判明した。経験値効率より攻略重視とし、斥候を含む大人数編成でダンジョンに挑ませる方針が決まった。

学園都市拠点の確保とトマス・レイラーナ姫

アレンはメルルらと学園都市を訪れ、転職ダンジョン目当ての人波が増えている様子を確認したうえで、軍の活動拠点として家六軒分の一画を購入した。そこへグランヴェル家のトマスとラターシュ王国王女レイラーナが合流し、新拠点で今後について話し合うことになった。レイラーナは付き人と共に遠慮なく建物を見回り、セシルと軽い火花を散らしつつ場をかき回した。

トマスの修行計画と王女への貸し

レイラーナの口利きにより、トマスは王城勤務を一年休む許可を得てダンジョン修行に専念できることになった。アレンはトマスをエルフ部隊に組み込んでレベル六十とA級ダンジョン踏破を目標とし、将来の転職を見据えて回復役にする方針を説明した。レイラーナと付き人も週二日ほど同行することになり、アレンは将来ラターシュ王国と問題が起きた際の「貸し」として利用するつもりであった。

転職ダンジョン三つの課題

アレン一行は転職ダンジョンへ向かい、Sランク冒険者として門番を驚かせつつ入場条件や荷物制限を確認した。魔導昇降機で案内された一つ目の課題は職業知識クイズであり、選択した扉に応じてCからAランクまでの魔獣が出現し、正解のみ無戦闘で通過できる仕組みであった。二つ目の課題は広大な地形を進みつつ転移用キューブを探すもので、レバー操作や岩の配置、水路、宝箱型魔獣ミミックやアビスボックスなどの仕掛けが散りばめられていた。さらに「はずれ」のキューブに触れるとAランク魔獣の群れが出現し、短時間での対応が要求された。三つ目の課題は四方向に分岐する迷宮で、正面の短いルートにはドラゴン級のAランク魔獣が立ち塞がり、他のルートも距離と敵の質が変化する構成であった。

転職制度の危険性への認識

アレンは三つの課題を検証し、才能を持たない者だけで挑む場合、強敵の出現や「はずれ」転移によって全滅する危険が高く、三課題を突破できる確率はかなり低いと判断した。この見解と宝箱の危険性などの情報を、冒険者ギルド情報部に提供するつもりで魔導書にまとめ、転職を望む者がリスクを理解した上で挑むべきだと考えた。

メルルの転職とヒヒイロカネ・タムタム

全課題を終えると転職用空間に移され、条件を満たしたのはメルルのみであると告げられた。メルルは魔岩将から魔岩王へ転職し、これまでの力の半分を引き継いだ新たなステータスを得た。確認のためヒヒイロカネゴーレム「タムタム」を降臨させると、全長百メートル級の巨体に極めて高い能力値が付与された姿が現れ、アレンはS級ダンジョン最下層ボス周回への道が開けたと判断した。メルルは再びアイアンゴーレム狩りの日々に戻ることになり、アレンはさらなる装備強化と軍全体の成長を見据えて展望を描いた。

第三話 ヘビーユーザー島の住民の受け入れ

各種族のレベル上げとバウキス帝国への入国

メルルは転職後にS級ダンジョンで魔岩王のレベルをカンストさせ、シアも獣人と共にダンジョン攻略とスキル上げを進めていた。ルークは低レベルからC級ダンジョン攻略を始め、獣人と召喚獣の支援を受けて成長していた。ダークエルフの入国許可は渋られたが、アレンたちが供給する希少なゴーレム石板を条件に、バウキス帝国への入国が事実上フリーパスとなった。

ヘビーユーザー島への移住とエールの町

ヘビーユーザー島には数万人が住む計画が立てられ、三階建て中心の町並みや商業施設併設の建物が整備された。エルマール教国からの移住者五千人は、事前のくじで住居を割り当てられ、地図と掲示で各自の家へ向かった。アレンは町長たちを集め、島の構造、フレイヤ神殿や白竜ハクの存在、祈りの習慣など生活ルールを説明し、職人ハバラクらドワーフが神殿運営と鍛冶を担うことを告げた。

ペロムス市長と島・軍の運営構想

商会代表ペロムスが四町を束ねる市長に任じられ、自身の廃課金商会と傭兵団を島に移転させると説明した。ペロムスは創業から貿易と宿泊業で急成長し、年商金貨百八十万枚規模の商会に育て上げた経緯を語り、今後は島を貿易拠点として発展させる意向を示した。レイブンらは自警団として治安維持を担うことになり、牢屋も整備された。アレンは四町を出身地ごとに分け、十日ごとに各国からの移住者を受け入れる方針を示した。

調停神ファルネメスの滞在とクレナとの交流

エールの町で馬小屋に得体の知れない魔獣が現れたとの報告を受け、アレンたちが確認すると、そこには調停神ファルネメスが座っていた。ファルネメスはクレナ不在を確かめると眠りに入り、その後は馬小屋に居着く形となった。クレナは転移の頻度が増えたことで頻繁に島へ戻り、ハクとファルネメスに餌を与えて交流を続けた。精霊神は、神界で調停神が恐れられて居場所を失い、力も落ちたため、この島で休ませてほしいとアレンに頼んだ。

転職・受け入れの進行と島の拡大

十日間でペロムスは転職ダンジョンを攻略して豪商の才能を得て、レイブンとリタも新たな戦闘系才能を取得し、ミルシーは聖者となった。アレンは島の指示と移住者対応を一段落させてS級ダンジョン通いを再開し、全兵に高性能装備と指輪を行き渡らせることを目標にした。エールに続き、砂漠文化を反映したムーハの町に避難民二千人が受け入れられ、続いてカルロネア、クレビュールからも住民を迎える準備が進んだ。

アレン軍の給金制度と五大陸同盟会議への出発

ペロムスはアレン軍五千人に支払う給金を試算し、全員への基本給に才能・役職ごとの加算と、ダンジョン収益の三割を参加兵に分配する仕組みを提案した。残りの収益は島の開拓や非戦闘員の維持費に充てられることになり、兵の給金は出身国ではなく島とアレン側が負担する方針が示された。その後、アレンたちはS級ダンジョン拠点から転移で魔導船に乗り込み、シアやルークと共にギアムート帝国帝都ベルティアスで開かれる五大陸同盟会議へ向かった。

第四話 5大陸同盟会議

王宮到着と武器没収、フレイヤの助言

アレンたちはギアムート帝国王宮に到着し、会議前に武器の持ち込み禁止を告げられた。神器カグツチを離れたくないドゴラは参加を渋ったが、フレイヤが人の世の決まりに従い世界に顔を売れと促し、ドゴラは武器を預けて会議に向かった。

会議場の構成とこれまでの経緯

一行は新帝都ベルティアスの会議室に通され、五大陸同盟の盟主や各国代表が円卓と周囲の席に並ぶ様子を目にした。アレンは前日の議事を鳥Gで盗み聞きしており、邪神教被害やギャリアット復興、S級ダンジョン攻略、転職ダンジョン運営などが順に議題となってきたことを把握していた。

転職ダンジョンを巡るギルドと同盟の対立

会議では冒険者ギルド本部長マッカランが、転職ダンジョンを広く冒険者に開放した判断について一時間以上責め立てられていた。ギルドは冒険者全体の強化と生産性向上を重視しており、戦後処理で告知が遅れた五大陸同盟と利害のずれを抱えていることが浮き彫りになった。

鑑定の儀と各勢力の戦力把握

その後、拡声魔導具と巨大な鑑定板を使った鑑定の儀が始まり、まずヘルミオスが英雄王として桁外れのステータスと多数のスキルを示し、各国代表を沸かせた。続いてドベルグやセイクリッドの面々、シア、メルルらが鑑定され、高い才能と加護を示す結果に驚きの声が上がる一方、獣王はシアの値を不満げに貶した。

ドゴラとアレンの鑑定結果がもたらした衝撃

ドゴラの鑑定では、火の神フレイヤの加護と破壊王としてのスキル群により、攻撃力を中心とした凄まじい数値が表示され、会議室は光と騒然で包まれた。続くアレンの鑑定は、戦闘値よりも魔力と知力が極端に高く、多数の召喚系スキルを持つことが明らかになり、各国代表はアレンを強力な仲間を率いる知略の中心と見做した。

ラターシュ王国への追及とレイラーナ姫の存在

アレン軍の力が示されたことで、ギアムート皇帝の怒りは、これまで十分な報告をしてこなかったラターシュ国王インブエルに向かった。さらにアレンが、レイラーナ姫と教育係がアレン軍拠点に住みダンジョン攻略に参加していると口にしたことで、皇帝の追及は一層激しくなり、ラターシュ王国の思惑が疑われた。

アレン軍の独立宣言と魔獣討伐方針の提示

アレンは、ラターシュ王国とは友好関係にあるが従属しておらず、五大陸同盟の下部組織でもない独立した軍であると明言した。その上で、同盟の作戦指揮には従わず、自らの判断で魔王軍と戦う方針を示しつつ、各国が抱える凶悪な魔獣の討伐を安価に請け負い、その素材でアレン軍を強化しつつ産出国へも優先的に還元するという活動方針を説明した。

バウキス帝国との取引と同盟内での影響拡大

バウキス皇帝ププンはヒヒイロカネゴーレムの石板提供の約束を喜び、ガララ提督用セットの受領と共に、ゴーレム使いと魔導具使いを多数派遣すると表明した。このやり取りにより、バウキス帝国を含む複数の盟主国がアレン軍に協力的であることが会場に示され、ギアムート皇帝は同盟内でアレンの影響力が増している現実を悟った。

シアの意思とアルバハル獣王との対立

最後にアルバハル獣王が、獣人が人族に貸し出されることはあり得ないと断じ、シアに帰国を命じた。これに対しシアは、自らの意思でアレン軍に参加すると主張し、アレンの言葉足らずを補おうとしたが、獣王は娘が自分に逆らい国を離れることを許さない姿勢を鮮明にし、会議の場で親子と勢力の対立が表面化したのであった。

第五話 シアのけじめ、獣王との戦い

シアの「けじめ」と果たし合いの申し入れ

シアは成人として自らの行動に責任を負うと宣言し、ムザ獣王に対して自らけじめをつける手段として果たし合いを申し入れた。会議室の誰もが獣王に逆らえない中、ギアムート皇帝が慌てるのをよそに話は即座に闘技場での決闘へと移り、各国代表とアレン一行も獣王国の将来と同盟の行方を案じつつ闘技場へ向かった。

父に挑んだシアの惨敗

闘技台に上がったムザ獣王は素の肉体だけで構え、シアも装備を外して拳のみで挑んだ。シアは腹への一撃を通したものの、すぐさま反撃の蹴りと足払い、連打を浴びて一方的に叩き伏せられた。ゼウ獣王子は思わず許しを乞うが、ムザは獣王を目指す者が許しを求めることを激しく叱責し、ゼウにも次の挑戦者となる覚悟を迫った。

過去への怒りと父子の決裂

戦いの中でムザはシアの母ミアの名を口にし、親衛隊を動員してミアを死なせたという経緯が示唆された。シアは母の名を出した父を激しく憎み、騎士ごっこ扱いされてきた過去を否定しようと拳を振るうが、冒険で積み上げた戦姫としての実績をもってしても父には届かず、満身創痍に追い込まれていった。

シアを庇うドゴラと獣王との殴り合い

ゼウが参戦を決意しかけた瞬間、シアを吊り上げるムザの行為に耐えかねたドゴラが闘技台へ飛び上がり、父が娘を殴るなと真正面から噛みついた。シアを抱き下ろしたドゴラは装備を外して殴り合いに臨み、受け続けて隙を突くカウンターという重戦士としての戦い方を発揮して、ムザの腹に幾度か有効打を通した。だがムザも拳術の技量と格上のステータスで対応し、次第にドゴラの体力を削っていった。

獣王化・獣帝化とアレンの乱入

ムザはシアを行かせまいと叫び、まず獣王化、さらに獣帝化へと変身して金色の巨大な獅子と化した。強化された爪と跳躍でアレンをも圧倒し、各種加護と装備で攻撃と防御を盛ったアレンですら激しいダメージを受けて闘技台に叩き落とされた。それでもアレンは空中戦と死角からの斬撃で反撃し、闘技場と観客席を大きく破壊するほどの殺し合い同然の攻防が続いた末、メルルのゴーレムとヘルミオスが割って入り、ようやく戦闘は中断された。

ムザの不器用な愛情とシアの旅立ち

変身を解いたムザは縮んだ人型に戻り、シアからマントを受け取りながらミアとシアを手放したくない心情を漏らした。シアは獣皇帝を目指しアレンたちと歩むと告げ、ムザはアレンたちをほとんど見ようともせず闘技場の瓦礫を後にした。アレンはこの一件を通じ、ムザ家の血が持つ潜在力とシアを獣王にした際の戦力価値を確信した。

五大陸同盟との協力と「総帥」誕生

会議室に戻ると、ローゼンヘイム女王らはアレン軍を魔王軍との戦いにおける遊軍として扱う案を支持し、各国もおおむね同意した。アルバハル獣王国も沈黙で結果を受け入れ、アレン軍と五大陸同盟の協力関係が正式に確認された。呼称について問われたアレンは、ローゼンヘイム女王の提案を受けて「アレン軍総帥」を名乗ることになり、初参加の同盟会議は獣王との死闘と新たな肩書きを得る結末で幕を閉じたのであった。

第六話 商人ペロムスの告白

グランヴェル訪問と二度目の告白計画

5大陸同盟会議から五日後、アレンとセシルとペロムスは、グランヴェル家の館から馬車でチェスターの高級宿へ向かい、ペロムスが以前振られたフィオナに再度告白する段取りを整えていた。ペロムスは「強い男」でないことが原因で一度断られており、転職とダンジョン攻略で力を付けた今こそ再挑戦の機会と考えていたが、緊張から終始及び腰であった。

応接室での対面とペロムスの玉砕

高級宿の応接室でチェスター親子と再会した一行は、チェスターからペロムスの商人としての実績を高く評価されるが、フィオナの関心はもっぱらアレンに向かい、セシルと舌戦を始めて場が脱線した。アレンに促されたペロムスが勇気を振り絞って交際を申し込むと、フィオナは「強い殿方」が好みだとして、前回同様きっぱりと拒絶し、しつこく迫るなら気持ちを無視しているとまで言い切った。

ドラゴン討伐条件と聖魚マクリスの涙

チェスターはペロムスの商才を説いて娘を説得しようとするが、フィオナはむしろ頑なになり、セシルとの口論の中で「強さ」の条件が「一人でドラゴンを倒す」レベルにまで釣り上がる。アレンの後押しを受けたペロムスがこの無茶な条件を受諾すると、フィオナは渋々「それなら考えてもよい」と譲歩するが、セシルが腕にはめたマクリスの聖珠を見た途端、今度は「誰も触れていない聖魚マクリスの涙が欲しい」と絵本由来のさらに厳しい条件を追加した。ペロムスはそれでも諦めず、自ら聖魚から涙を得てフィオナを娶ると宣言し、フィオナもその覚悟を受けて結婚を約束する代わりに達成を強く求めた。

拠点帰還後の整理とプロスティア帝国行き

一行がS級ダンジョンの拠点へ転移してからは、セシルが『プロスティア帝国物語』周辺の逸話として、恋人への証として聖魚マクリスの涙を直接得に行く物語がいくつも語られていること、実際に成功した例は聞かないことを説明した。アレンはそれを「購入不可でドロップ限定のクエスト」のようなものと捉え、元々進めていた聖珠集めと利害が一致すると判断する。そこで、シアを通じてクレビュール王国に交渉し、プロスティア帝国への入国許可を取り付ける方針を固め、ペロムスの恋の条件達成とパーティー強化を同時に進めることにしたのである。

第六話 商人ペロムスの告白

グランヴェル訪問と告白の再挑戦

5大陸同盟会議から五日後、アレン、セシル、ペロムスはグランヴェル家の館を出発し、豪商チェスターの高級宿へ向かった。ペロムスは以前、フィオナに告白して振られており、転職とダンジョンで鍛え直した今、二度目の告白に臨むことになった。セシルはフィオナをよく知る者として、自分が口添えすると言い張り、アレンもその関係性を踏まえて同行した。

チェスター邸での再会と玉砕

高級宿に着いた一行は、支配人の案内でチェスターの部屋に通され、久々にフィオナと再会した。席に着くと、チェスターはペロムスの商才を高く評価し、廃課金商会が自らの高級宿群を次々と買収していった経緯を踏まえ、将来有望な商人として扱った。しかし、肝心のフィオナの関心はアレンとセシルとのやり取りに傾き、二人は昔からの張り合いを再開した。やがてアレンに促されたペロムスが勇気を振り絞って交際を願い出ると、フィオナは強い殿方が好みであると改めて告げ、気持ちを無視するのなら一生好きにならないと断言し、ペロムスの気持ちはいったん打ち砕かれた。

ドラゴン討伐と聖魚マクリスの涙という条件

チェスターがなおもペロムスの商人としての価値を説いて取りなすが、フィオナは態度を硬化させる。セシルが強さの具体例として、ペロムスが一人でドラゴンを倒したらどうかと半ば挑発的に口にすると、アレンはそれを面白がって条件として確認し、ペロムスも逡巡しながら受け入れた。フィオナはそれなら考えるとしつつ、セシルが誇らしげに見せたマクリスの聖珠を目にすると、自分は「聖魚マクリスの涙」が欲しいと言い出した。さらに、誰の手にも渡っていないもの、つまり聖魚本人から直接授かるものに限ると条件を上乗せし、それが叶えばペロムスの妻になってもよいと約束した。ペロムスはその約定を受け入れ、必ず手に入れると誓った。

拠点での整理とプロスティア帝国への方針

高級宿を辞した後、一行は鳥Aの召喚獣の覚醒スキルでS級ダンジョンの拠点へ転移した。セシルは『プロスティア帝国物語』において、聖魚マクリスの涙を愛の証として求める逸話や続編が多く語られていることを説明し、実際に直接手に入れた例は聞いたことがないと述べた。アレンはそれを、購入不可でドロップ限定のクエストのようなものと捉えつつ、いずれにせよ聖珠集めはパーティー強化に必要であり、プロスティア帝国と接触する計画も元々立てていたことから、シアを通じてクレビュール王国に仲介を頼み、入国許可を狙う方針を固めたのである。

第七話 ヘビーユーザー島の町の完成

獣王継承問題とアレンの思惑

ヘビーユーザー島の東に集まったアレンたちは、クーレ完成の式典を待つ間に近況を語り合っていた。シアは転職後も順調にS級ダンジョンを攻略し、ゼウやベクと並ぶ次期獣王候補として試練を終えた状況を説明した。アレンはシアが獣王となることがパーティー強化に直結すると考え、貴族や大臣の買収すら視野に入れてペロムス廃課金商会の力を利用しようとしており、シアはその徹底ぶりに呆れつつも学ぶところがあると感じた。

プロスティア帝国への入国証を巡る交渉

話題はフィオナとの約束を果たすためのマクリスの聖珠集めに移り、シアはクレビュール王国を通じてプロスティア帝国への入国許可を交渉している現状を説明した。クレビュール王国が発行できる入国証は魚人専用であり、全種族に有効な入国証は水の神アクアの加護を持つプロスティア帝国発行のものだけであることが明かされる。だが、「邪神教」騒動でクレビュール王国は叱責を受けており、強硬な交渉は関係悪化を招くとシアは判断し、時間をかけて進める方針を示した。アレンは自分たちの分の入国証確保が容易でないと知りつつも、聖珠はパーティー強化に必要であると考え続けた。

クーレ建設と魔導具の稼働開始

やがてドワーフたちが準備完了を告げ、アレン総帥としての立場で放水式を開始した。巨大な窪地であるクーレには、高床式の建物がすでに築かれており、ドワーフのララッパ団長の操作で「水生成の魔導具(大)」が起動され、水が勢いよく流れ込んだ。続いてザウレレ将軍らゴーレム使いたちが「浄化の魔導具(大)」を設置し、殺菌と防腐を担う水質管理体制を整えた。これらの魔導具はAランク魔石一つで一年稼働する性質を持っていた。

魚人たちの移住と四つの町の完成

水が満ち始めた窪地に、魚人の子供たちが歓声を上げて飛び込み、町長に就任した魚人の老人は感涙しながら様子を見守った。約三千人の魚人たちが割り当てられた住居へと移動を開始し、アレンは水中でも自由に呼吸して動き回る彼らの姿を眺めながら、これで四つの町がすべて完成し、ヘビーユーザー島の受け入れ体制が整ったと実感したのである。

第八話 アレン軍の出発式

神殿での全軍集結とアレンの演説

アレン軍は島の開拓とダンジョン攻略を始めてから約二か月後、ヘビーユーザー島中央の山の神殿で初めて全軍集会を開いた。火の神フレイヤへの配慮から祭壇階ではなく一つ下の階層を会場とし、五千人超の戦士が整列して着席する中、アレンは拡声の魔導具を用いて総帥として挨拶し、五大陸同盟から正式に認知された立場と、世界各地の高位魔獣討伐のため通信魔導具網を整備する方針を説明した。友好的な国とは連携し、理解を示さない国には迎撃で応じればよいと示しつつ、横暴にならぬよう将軍たちに指導を求めた。

ドワーフ部隊の紹介と今後の戦力運用

続いてバウキス帝国から参加したララッパ率いる魔導技師団とザウレレ率いるゴーレム隊を全軍に紹介し、それぞれが自己紹介を行った。アレンはダークエルフ、獣人、エルフら三種族とゴーレム隊に、連携訓練ののちアイアンゴーレム狩りを担当させ、魔神に近い強敵への慣熟とアレン軍の活動資金確保を両立させる計画であると説明した。

廃ゲーマーパーティーの役職決定

次にアレンは、自身のパーティーがアレン軍を動かす場面を見据え、内部の役職を全軍に公表した。アレンが総帥、ソフィーが軍師、フォルマールが軍師補佐、シアとルークが前衛隊・後衛隊の大将軍、メルルがゴーレム軍の指揮、クレナが特攻隊長を務めることになり、ヘビーユーザー島の統治はペロムスが市長、セシルが補佐、神殿はドゴラが使徒、キールが管理を担うと定めた。これらは各人の適性に基づく配置であると説明され、将軍や兵たちは拍手で受け入れた。

武具と指輪の授与とアレンの方針

式の後半では、自警団団長レイブンの指揮で、全戦士の前に荷物が運び込まれた。アイアンゴーレムを大量に討伐して得た宝箱から集めた高級武器や防具、ステータス上昇の指輪、ゴーレム用の石板が将軍から平兵に至るまで行き渡る形で並べられ、ルキドラールらは貸与品だと考えたが、アレンはこれは全員への支給品であり基本的に各自の所有物だと明言した。その理由として、命が危機にある場面で、高価な貸与武具ゆえにエクストラスキルで投げ捨てることをためらうような状況を避けたいと語り、武具は消耗品であり、仲間の命に比べればガラクタであると言い切った。ラス隊長はその覚悟を理解し、装備に恥じぬ働きを誓い、将軍を含む全戦士が頭を下げた。

式の締めくくりと名工ハバラクの報せ

アレンは本来は命を大事にしてほしいと思いながらも、この流れを打ち切らず授与式を終了させた。夜には四つの町で完成記念の祭りが開かれる予定であり、兵たちは新しい装備を抱えて神殿を後にした。式後、名工ハバラクがアレンの元を訪れて頼まれていた特別な品が一つ完成したと告げ、金では買えない何かが出来上がったことにアレンは胸を高鳴らせたのである。

第九話 オリハルコンと魔導キューブ

白竜ハクとの再会と山を下る一行

アレンは出発式を終え、ハバラクと共に神殿から山を下りていった。道中、巨大に成長した白竜ハクが兵たちの前に現れ、クレナに頭を差し出して甘える姿を見せた。クレナに誘われたルークもおそるおそる触れ、ダンジョン攻略を経て落ち着いた口調になったルークの精神年齢が、幼い外見とようやく釣り合ってきたことが示された。

ハバラク工房とオリハルコン製斧

アレン一行は山麓のハバラク工房へ向かい、島の人口増加に伴い鍛冶屋の弟子が増えている様子を確認した。工房の側面にはオリハルコン製の大斧が立てかけられており、ドゴラが試し振りをすると、背の神器カグツチが不満げに声をかけた。斧は貴重なオリハルコン塊二つのうち一つ半を使って完成したものであり、残り半分はアレンの剣の鍛造用として確保されていることが語られた。

獣王継承争いとシアの野望

アレンはシア用のオリハルコン装備を一旦保留し、獣王になれば「獣王の証」と呼ばれるオリハルコン製ナックルと防具が得られるため、そちらを優先すると説明した。アルバハル獣王国では、ゼウ、シア、ベクの三人がムザ獣王から授けられた試練を越え、王位継承権を争う段階にあり、シアは獣人帝国建設のため自らが獣王となる決意を新たにした。アレンはベクのような厄災をもたらす者が獣王になるなら阻止するが、それ以外は利害が一致する範囲で協力するだけだと考えており、シアが獣王になった場合はゼウの身を案じて耐久力上昇の指輪を贈る算段まで立てていた。

魔導具研究所と魔導コアの正体

続いて一行は新設されたララッパ団長の魔導具研究所を訪れ、S級ダンジョンから持ち帰った立方体の物体を見せた。ララッパはそれを「魔導コア」と即座に見抜き、ダンジョンコアになり損ねた存在であり、超大型魔導船をも動かせる魔導具の核になると説明した。価値は一つにつき金貨百万枚と判明しており、ララッパは三個もあることに歓喜した。

転移装置構想と魔王軍討伐方針

アレンは魔導コアを用いて、島と地上や海中を結ぶ移動装置、さらに転移装置の製作が可能かを問いかけた。ララッパは古代には転移装置が存在したと語り、同等の魔導具には十個ほどの魔導コアが必要だと試算した。セシルは暗黒界への侵入を疑ったが、アレンは魔王軍の本拠地強襲など実戦での利便性を狙っていると明かした。ララッパは島の移動研究と併せて古代秘術の再現に取り組むことを約し、アレンは魔王軍討伐のためなら莫大な財貨に匹敵する武具を惜しげなく配り、オリハルコンや聖珠、魔導具を総動員するという自らの方針を貫く姿勢を示した。それを見たシアは、自身の野望にも通じるやり方だと評価したのである。

第九話 オリハルコンと魔導キューブ

白竜ハクとの再会とルークの変化

アレンはハバラクと共に神殿から山を下っていき、その途上で白竜ハクが兵士たちの前に現れた。クレナが駆け寄って撫でると、ハクは嬉しそうに甘え、クレナに促されたルークもおそるおそる触れた。ダンジョン攻略を経て、ルークは言動が落ち着き、幼い外見と精神年齢が釣り合ってきたことが示された。

ハバラク工房とオリハルコン斧の完成

一行は人口増加で弟子や見習いが増えたハバラクの工房に入り、外壁に立てかけられたオリハルコン製の大斧を目にした。ドゴラが斧を軽々と振るうと、背負った神器カグツチから不満げな声が上がり、フレイヤの嫉妬が仄めかされた。この斧はこれまでに得たオリハルコン二塊のうち一つ半を使って完成しており、残り半分はアレンの剣用として確保されていた。

シアの獣王位と「獣王の証」の目論見

アレンは次のオリハルコン装備としてナックルと防具を予定しつつも、シアの分は保留にすると告げた。アイアンゴーレムを二万八千体倒してもオリハルコンは一塊しか得られなかったため、資源は極端に不足していたからである。一方シアには、獣王になればオリハルコン製のナックルと防具から成る「獣王の証」と聖珠が与えられる見込みがあり、ガルレシア大陸の大半を支配するアルバハル獣王国の王位継承戦が進行していた。シアは自らが獣王となり獣人帝国を築く決意を固め、アレンはベクのような有害な継承者だけを阻止し、それ以外は利害の一致に応じて協力するという距離感を保っていた。

魔導具研究所と魔導コアの正体

ハバラク工房を後にした一行は、山麓に新設されたララッパ団長の魔導具研究所を訪れた。アレンはS級ダンジョンで入手した立方体の物体を取り出し、ララッパに鑑定を求めたところ、それが「魔導コア」であり、ダンジョンコアになり損ねた存在であると判明した。魔導コアは魔導具の核として何にでも転用可能で、超大型魔導船さえ動かせると説明され、ララッパは三個もあることに歓喜した。

転移装置構想と魔王軍討伐の方針

アレンは魔導コアから新たな魔導具を造れるかを確認し、島と地上・海中を結ぶ移動装置や転移装置の製作を提案した。ララッパは古代に転移装置が存在したと語り、それに匹敵する魔導具には十個ほどの魔導コアが必要だと試算した。セシルは暗黒界に行くつもりかと疑ったが、アレンは魔王軍の本拠地への強襲など戦略的用途を想定していると説明した。アレンは島の移動研究と魔導コアを用いた魔導具開発の優先順位を研究所に委ねつつ、魔王軍討伐のためなら国家予算級の武具を配り、オリハルコンや聖珠、貴重な魔導具を戦略的に投入する方針を示した。シアはその徹底したやり方を自らの野望に重ね、肯定的に評価したのである。

第十話 S級ダンジョン最下層ボス周回への挑戦

少人数編成でのゴルディノ再戦

アレンたちはアレン軍出発式の翌日にS級ダンジョン最下層へ赴き、10人だけで最下層ボス・ゴルディノと配下のゴーレム群に挑むことにした。最下層ボス討伐報酬を独占するためであり、脱出キューブ前に「巣」を設置して撤退手段も確保していた。セシルは戦力不足を不安視したが、アレンは必要ならヘルミオスを呼ぶと述べ、作戦を開始した。

配下ゴーレムの分断と時短戦術

王化したメルスがアイアンゴーレムを竜Aの待つ遠方へ転移させ、シアとドゴラ、メルルのタムタム、さらに獣A・霊A・魚Aの召喚獣がそれぞれゴーレムを足止めした。魚Aは煙幕や複数の命で粘り、石Aはミスリルゴーレムの砲撃を吸収し続けた。キールとソフィーの回復により持久戦能力が上がり、アレンは「時短」を意識して効率よく敵戦力を削っていった。

収束砲撃と超合体ゴルディノへの移行

石Aが砲撃を蓄積したのち覚醒スキル「収束砲撃」を放ち、ゴルディノに大ダメージを与えて巨体を吹き飛ばした。しかしゴルディノは配下ゴーレムを吸収して超合体形態に変化し、ミスリル砲台の攻撃を石Aが引き続き吸収する展開となった。アレンは合体自体は回避不能だと判断しつつ、ブロンズやミスリルを個別に倒す手間を省けたと受け止めた。

火属性弱点化とドゴラの一撃

メルスが特技で弱点属性を火に変更し、ドゴラは神器カグツチとオリハルコン斧を自在に振るって超合体ゴルディノを大きく怯ませた。火の神フレイヤの加護が強化された結果、ドゴラは火攻撃を吸収しつつ大きく能力を底上げされており、セシルの火球さえ回復源に変えていた。アレンは加護の有用性を分析し、信仰を広げて加護をさらに強め、他の仲間にも神の加護を得させたいと考えた。

真ゴルディノ撃破と戦果の検証

超合体ゴルディノから現れた真ゴルディノに対し、メルスが「裁きの雷」で拘束し、セシルが覚醒スキル「プチメテオ」でとどめを刺した。精霊王の祝福なしでも撃破できたため、アレンは今後は祝福を温存して戦う方針を固めた。報酬は銀箱3個と金箱1個で、アダマンタイト武器やヒヒイロカネの石板、能力上昇の指輪、魔導コアが手に入ったが、アレンは自分たちの直接強化にはつながりにくいと感じ、評価は「ぼちぼち」であった。

周回計画とルークの悪戯

セシルは一度帰還を提案したが、アレンは最下層ボス討伐後も日課としてアイアンゴーレム300体狩りを続行すると宣言し、セシルは絶句した。場面は変わり、昼食の席ではルークが勉強をさぼって食堂に現れ、講師に叱られながらも昼食後にやると答えていた。アレンがそれを見ていたところで突風が起こり、セシルのスカートが捲れたため、ルークの悪戯だと察したセシルが激怒し、ルークを追い回す騒ぎとなったのである。

第十一話 トマスの転職、新たな才能

ゴルディノ周回と島の発展

アレンたちは最下層ボス・ゴルディノを日課に組み込み、三か月で約九十体を討伐し、多数の報酬から装備強化を進めた。同時にヘビーユーザー島の道路や畑が整備され、精霊の力で年三回の収穫が可能となり、通信の魔導具も整えられて各国との連絡体制が構築された。

トマスの転職と楽士の才能獲得

休日となった日、アレンとセシルは転職ダンジョンの転職の間で、トマスとレイラーナ姫らの転職に立ち会った。トマスは後衛を選び、キューブの指示に従って多面体のサイコロを投げた結果、望んでいた僧侶ではなく楽士の才能を授かった。レイラーナ姫は不満を爆発させたが、アレンは楽士が楽器によるバフ系の才能であり、他の補助と重ねがけできる有用な存在であると説明し、トマスの新たな役割に期待を抱いた。

レイラーナ姫のお祝いと二人の退席

レイラーナ姫はトマスの才能獲得を二人で祝うつもりでアレンたちに視線を送ったが、アレンは予定があると丁重に断り、祝宴は二人に任せることにした。セシルはトマスに対し、妙な事態にならないよう念を押し、アレンと共に転職ダンジョンを後にしてS級ダンジョン拠点へと転移した。

拠点改築と稽古の日常

拠点では区画をまとめて改築し、訓練場や広場を整備していた。廃ゲーマー会議の結果、兵たちに気分転換のための作業日を与える方針となり、建物の増築や広場造成が進んだ。広場ではクレナとドゴラが毎日のように稽古を重ね、ドゴラはレベル三十五に達して両手斧術を磨き、クレナも本気で斬りかかれる相手としてその成長を喜んでいた。シアは稽古を終えて二人を呼びに来て、昼食の時間を告げた。

食堂の賑わいと獣王継承会議の行方

拠点の食堂では、島から雇われた住民たちが高給の雑務要員として調理と配膳を担い、兵たちと共に大人数での食事が日常となっていた。アレンは幹部だけでなく全員で食卓を囲む方針を貫き、クレナは山盛りの肉にかぶりつき、周囲もそれに慣れていた。アレンがルド将軍の不在をシアに尋ねると、アルバハル獣王国と通信し、ベク獣王太子、ゼウ獣王子、シアの三名から次期獣王が決まる会議の速報を待っていると説明された。

ルークの登場とセシルの怒り

そこへ勉強をさぼりがちなルークが昼食目当てに現れ、後ろから講師のダークエルフが小言を続けていた。ルークが昼食後に勉強すると答えた直後、アレンがセシルの肩越しに彼を見ると、突風でセシルのスカートが大きく捲れ上がった。セシルは状況とルークのニヤついた表情から悪戯だと即座に察し、エロガキと罵って追いかけ始め、食堂は一気に騒がしい空気に包まれたのであった。

第十二話 王家が悩むこと

ルークの悪戯と食堂の騒動

食堂でルークがセシルのスカートを捲り、セシルが怒り狂って追い回す騒動が起きた。混み合う室内とルークの素早さのせいで捕獲は難航したが、最終的に二人は埃まみれで戻り、セシルはルークを叩きつけるように席に放り出した。講師役のダークエルフは頭を抱えて去り、アレンは総帥として叱れと迫るセシルを受け流しつつ、ルークの行動から各女性の意外な一面が見えたと振り返った。

ダークエルフ王家とルークの出生

アレンは、行儀知らずなルークを見て、長くダークエルフを率いてきたオルバース王が、やっと授かった子を甘やかして育てた経緯を想像した。ダークエルフがエルフとの戦いに敗れて移住し、人口回復に努めてきた歴史や、子を授かりにくい血筋である事情を踏まえ、王家に生まれた者が背負う期待と悩みを思索した。また、精霊王ファーブルがルークに懐いている事実から、オルバース王がルークをアレンたちに託した理由を考えた。

王族の品格とそれぞれの成長

食事をがっつくルークを精霊王がたしなめる様子や、ソフィーが冷ややかにそれを見つめる姿を通じて、アレンは王族に求められる品格としつけの厳しさに思いを巡らせた。前世の記憶と照らし合わせ、ソフィーやシア、ルークといった各国王族が、血筋ゆえの期待と制約に晒されていると理解した。

シアとドゴラの関係と日常の変化

昼食時、シアは肉ばかり食べるドゴラにパンや野菜を勧め、ドゴラは戸惑いながらも口にした。これは、過去にドゴラがムザ獣王との果たし合いでシアを庇って戦ったことへの強い感謝と、それ以上の感情の表れであると周囲に受け止められていた。シアはダンジョン攻略でも常にドゴラ側のパーティーに入り、世話を焼き続けていた。ルークは黒魔導士へ転職し、S級ダンジョンでスキル上げに励んでいたが、デバフがゴーレムには効かない状況であった。

獣王継承会議の遅延と緊急の報せ

この日はアルバハル獣王国で次期獣王を決める会議が行われる予定であり、結果は正午過ぎに発表されるはずであった。アレンたちは拠点の食堂に集まり、ルド将軍が冒険者ギルドの通信魔導具の前で速報を待っていると聞かされていたが、時間が過ぎても戻らないため、セシルは遅さを不審に感じた。アレンが、シアが獣王に選ばれなかった結果をルド将軍が受け入れられないのではないかと考えていたところ、食堂の扉が勢いよく開き、ルド将軍が血相を変えて飛び込んできた。彼はベク獣王太子が内乱を起こし、現獣王が襲撃されたと報告し、シアは真偽を問いただしながら立ち上がり、アルバハル獣王国で新たな騒乱が発生したことが明らかになったのである。

第十三話 アルバハル獣王国の動乱

次期獣王決定の場で判明した内乱

次期獣王が決まるはずの日、結果確認のため冒険者ギルドに向かったルド将軍から、アルバハル獣王国で内乱が発生したとの報告がもたらされた。シアは父ムザ獣王の安否を慌てて問い、ムザが負傷しつつも親衛隊の手で回復し、内乱自体も鎮圧済みであることが知らされた。一行は詳細確認のため会議室に移動した。

試練制度と継承を巡る議論の迷走

ルドは、五大陸同盟会議後にムザ獣王が大臣とテミを集め、ゼウとシアのどちらを次期獣王にするか決め、自らは退位すると表明した経緯を語った。獣王位は本来長子ベクに与えられるが、獣王が与える試練を越えた子にも継承権が認められる制度であり、ゼウとシアが同時に達成したことが前例のない混乱を生んだ。宰相と内務大臣は対外関係を重視してゼウを推したが、テミは占いの結果が出ないとして反対し、議論は平行線のまま貴族層にも波及し、「今は決めるべきでない」という空気が広がっていた。それでもムザは期日までに必ず決めると宣言し、指定日の朝に大臣たちを閉じ込めて結論を出そうとした。

ベクの挙兵と「獣王の証」の強奪

その会議の最中、ベクに仕える兵たちが武装蜂起し内乱を起こした。獣王親衛隊との戦闘の結果、ムザは深手を負いながらも一命を取り留め、ベク側の兵の大半は捕縛されたが、ベク自身は「獣王の証」を奪って魔導船で脱出した。「獣王の証」は獣王の象徴たるオリハルコン製の武具と聖鳥クワトロの聖珠から成る三点であり、アレンはそれを取り返す行為が新たな獣王を示す決定的な根拠になり得ると考えた。

魚人勢力の関与疑惑と黒幕の推定

内乱の現場では多数の魚人兵が目撃されており、シアはクレビュール王国の関与を疑ったが、ルドが通信で確認したところ、クレビュール側も状況を把握できていない様子であった。アレンは魚人勢力の背後に別の国家がいると推理し、シアも同じくプロスティア帝国の関与を直感した。一行は真相確認と今後の行動のためヘビーユーザー島経由でクレビュール王国へ向かった。

クレビュール王国での情報と制約

クレビュール王宮で国王夫妻とカルミン王女らに謁見したアレンは、ベクの内乱に魚人が加担した件への関与を問い質した。国王は関与を否定しつつ、最近プロスティア軍部に不穏な動きがあるとの噂を明かした。さらに、プロスティア帝国発行の入国証はすでに発行を拒否されていると告げられた一方で、クレビュール発行の魚人用入国証なら発行可能であることが確認された。人族やエルフは海底では活動できないという制約がある中で、アレンは別の手段を示唆した。

擬態による潜入作戦とプロスティア行きの決定

アレンはゲームの経験に重ね、直接の入国拒否を回避する「王道の方法」として、魚Aの召喚獣タコスに覚醒スキル「擬態」を使わせ、自身だけ魚人の姿に変化した。巨大なタコの口から生じた泡がアレンを包み、白い煙が晴れると魚人となったアレンが現れ、周囲を驚愕させた。クレビュール発行の入国証と擬態を組み合わせることで、プロスティア帝国への潜入を実現すると宣言し、ベクが奪った「獣王の証」を取り戻しに、海底の大帝国プロスティアへ向かう方針を固めたのである。

特別書き下ろしエピソード 贄と獣の血②

ベクの修行とアークスパイダー討伐
獣王武術大会でギルに惨敗したベクは、失意の引きこもりから立ち直り、雪辱と誇りの回復を目標に修行を開始したのである。修行の区切りとして密林に棲むSランク魔獣アークスパイダー討伐に挑み、薬師ロムの滋養強壮薬の力も借りてこれを単独で撃破した。戦いで負った傷もロムの丸薬により急速に癒え、周囲はベクの成長と「獣神ガルムの試練」を越えた証として讃えたのである。

ロムの薬と周囲の期待
ロムは始祖アルバハルの血を濃く継ぐベクを「神に近き獣」と持ち上げ、ギルに負ける道理はないと吹き込んだ。ベクに従う騎士たちもその言葉に同調し、主君の復活を熱を込めて歓迎したが、ベクはブライセンの守護獣神ギランを貶める発言を咎め、ロムと騎士たちを戒めた。討伐隊はケイの指揮で魔獣素材を回収し、ベクを次期獣王と見る貴族の子弟たちはますます忠誠を深めていったのである。

謁見の間での決意と才能人頭税草案
ベクはアークスパイダーの大顎と魔石を土産にムザ獣王の謁見を受け、次の獣王武術大会でギルを倒し雪辱を果たすと宣言した。そこで示された書状により、ギルが次大会で総合優勝すればブライセンで獣王位を継ぐこと、さらにアルバハルが再び負ければ領土を割譲せねばならぬ状況が明らかになったのである。同時にベクは「才能人頭税倍化法」を提案し、才能を授かった者ほど重い課税を行うことで怠惰な有才者を責務へ駆り立てるべきだと主張した。ムザ獣王はその理屈を認めつつ、ベク自身も最も重い責務を負う者であると釘を刺し、議論を大臣らに委ねた。

一年目大会での敗北と修行の旅
翌年の大会でベクは予選から無双に近い戦いぶりを見せたが、決勝でギルと再び激突し、激闘の末に一方的な蹂躙を受けて敗北した。ギルはその勢いのまま各部門代表を撃破し、10年連続獣王ホバ将軍さえ打ち倒して「獣王」の座を奪い、予告どおりアルバハルから領土を得たのである。その後ギルは翌年もアルバハル大会への参加と領土奪還の宣言を行い、一方のベクは国政の多くを手放して武者修行の旅に出て、各地でAランクやSランク魔獣との命懸けの戦いを重ねていった。

二年目大会前夜の守り紐と禁じられた丸薬
一年後、ベクはぎりぎりに王都へ戻り、再び予選を勝ち抜いて爪・ナックル部門優勝を決めた。決勝前夜、妹シアと弟ゼウは絶体絶命の一撃を肩代わりする「獣神の守り紐」を兄に託そうとするが、ベクは勝機を削る守りの魔法具を拒み、その想いだけを受け取ると述べた。ロムは大会規定に検出されない違法な強化丸薬の使用を勧めたが、ベクは「守るべきものを失う」としてこれを拒絶し、ロムの過激な進言を叱責しつつも情を汲んで一度は許したのである。

決勝戦開幕と再戦の行方
決勝当日、闘技場はベクの名を叫ぶ民衆で埋まり、ベクはアルバハル全土の期待を背負ってギルと対峙した。両者は開始直後から獣王化と真強打をぶつけ合う激烈な殴り合いに入り、幾度も衝撃波が闘技場を揺らしたが、攻撃力と速さで勝るギルが次第に優勢に立った。ギルの蹴りと拳によりベクは防具を砕かれ骨も砕かれ、観客や実況の声援もむなしく、ついには地に伏して立ち上がれないほど追い込まれたのである。

絶体絶命と民の声援、禁断の選択
倒れたベクの胸からは真紅の丸薬が転がり落ち、ロムが装備の手入れを装って忍ばせていた違法薬の存在が明らかとなった。勝てば誇りを汚し、飲まなければ誇りある死を迎えるという二択に心を引き裂かれたベクは、一時は丸薬を握り潰そうとしたが、僻地の民をはじめ各地で救った人々の感謝と「負けないでほしい」という叫びを聞き、守るべきものの重さを思い知らされた。やがてベクは「守らねばならぬ」と覚悟を定めて丸薬を飲み下し、折れた骨すら軋ませる異形の変身で立ち上がる。ギルはそれを見てロムの計画の成就に歓喜し、ベクは常識外れの力でギルの腕をへし折り胸当てを砕き、戦いは新たな段階へ突入していったのである。

特別書き下ろしエピソード② オルバースの決意と威風凜々①

砂漠で置き去りにされた記憶と父の失踪

幼いオルバースは夜の砂漠で父レーゼルを探し迷子になり、ひとり泣きながら凍死寸前で救出されたのである。父はそのまま姿を消し、オルバースは千年近く経った今もその夜の悪夢を見続けていた。

里に縛られた王としての日常と会議

レーゼルの血を継ぐ唯一の者として、オルバースは幼くしてファブラーゼの王と祈りの巫覡となり、里から出られぬまま長老会で世界情勢の報告を受け続けていた。ローゼンヘイムが盟主に名を連ねる五大陸同盟への加盟要請に対し、彼は断り切れず「検討する」と先送りし、自らの閉塞した在り方を内心で皮肉っていた。

キングアルバヘロンと「不老の秘薬」の噂

近隣でキングアルバヘロンが狩られたとの報を受け、オルバースは警備強化を命じた。また、ダークエルフの長命が「不老の秘薬」によるという根拠のない噂が商人や各地の都市で流れていることが報告され、彼は辟易しつつも里外への関与を長老に制されていた。

夜襲と冒険者一党「威風凜々」の捕縛

その夜、里に賊が侵入し、オルバースの指示で女や子供の保護が優先される中、門前で賊五人が拘束された。調べると彼らはAランク冒険者一党「威風凜々」であり、キングアルバヘロンを討伐した者たちで、ダークエルフの不老の秘薬を求めて密かに侵入したことが口論混じりに露見した。

不老の秘薬の否定と異例の「勧誘」

オルバースは不老の秘薬の存在をきっぱり否定し、本来なら掟に従い処刑すべきところを、冒険者ギルドやアルバハル獣王国との関係を踏まえつつ扱いに悩んだ。自らの里外への渇望と、里の将来への責任の板挟みに苦しんだ末、彼は「自分が彼らの仲間となり、共にアルバヘロンレジェンドの卵を求めて旅に出る」と提案し、それを里のための花嫁探しと位置付けたのである。

花嫁探しの旅への合意と夢の変化

長老たちが動揺する中、オルバースは父探しではないと否定し、里の未来を支える伴侶を外の世界から迎える必要性を語った。その突飛だが真剣な決意に、威風凜々の面々は王の同行を受け入れ、友として共に旅立つことを約した。その後、オルバースの見る悪夢では、夜の砂漠を歩く幼い自分の背後に五人分の足跡が並ぶようになり、彼の孤独は少しずつ変化し始めていた。

特別書き下ろしエピソード③ ヘルモード外伝 ~勇者ヘルミオス英雄譚~ ③天稟の才 後編

才能持ちの四人と強行軍の始まり

ギアムート帝国が魔王軍との戦乱で荒れる中、勇者の才能を授かったヘルミオスは、鑑定の儀の当日にガッツン、ドロシー、農奴出身の少女エナと共に故郷コルタナ村を急ぎ出立させられたのである。騎士団に護衛され各村を巡りながら才能持ちの子供を集める旅が続き、その道中でヘルミオスが会話を主導し、ガッツンの騒がしさとドロシーのツッコミが相まって、緊張していたエナも徐々に打ち解けていったのである。

ゾゾノエ村での不穏な警戒と才能選別の現実

一行はゾゾノエ村に到着し、騎士団は夜番を二部隊体制に増強するなど、近年の物騒な事件を理由に厳重な警戒を敷いていた。村長宅での粗末ながらも食事と宿泊が用意される中、ヘルミオスたちは一部屋で雑魚寝を強いられ、エナは夜になると母を恋しがりすすり泣いていた。翌朝以降も各村を回り、才能持ちの子供だけが馬車に乗せられる一方で、裁縫の才能を持つ子供は街に連れて行けないと告げられる場面をヘルミオスが目撃し、才能による選別の厳しさを知ることになったのである。

山道での待ち伏せと才能狩りの襲撃

ゴラッソ村を出発した一行が山の南側を抜ける近道へ進路を変えたところで、副騎士団長ザインの誘導に不審な点が生じた直後、馬の首を射抜く矢を合図に「才能狩り」と呼ばれる集団の待ち伏せが始まった。騎士団は挟み撃ちを受けたが、事前に山側に伏せていた部隊が警笛と共に突入し、形勢は一時的に逆転した。しかし混乱の中でヘルミオスたちの乗る馬車が才能狩りに奪われて走り出し、騎士団長はヘルミオスを守るためとして馬車を捨て置く判断を下したのである。

馬車からの転落と断崖での決死の追走

ヘルミオスは逃走する馬車から飛び降りるよう仲間に呼びかけたが、ガッツンとドロシーは恐怖で動けず、エナが踏み出した拍子に馬車の揺れでヘルミオスが外へ弾き出された。受け身で致命傷を避けたヘルミオスは、友人たちを救うため騎士たちの制止を振り切り、落ちていた剣を拾って才能狩りの包囲をすり抜けて追走したのである。逃走経路の先には谷を渡る吊り橋があり、才能狩りは馬車を通した後に支えのロープを斧で切断したが、ヘルミオスは崩れ落ちる橋の丸太の切り口を駆け上がり、断崖から断崖へと15メートルほどの距離を跳び越えて単身で対岸へ到達したのである。

ナックル使いとの激闘と天稟の才の覚醒

橋を回り込めない騎士団が背後から追撃する中、ヘルミオスは逃走する才能狩りを次々と蹴り落として馬に追いつき、やがてナックルを装備した拳豪デラケルと対峙した。ヘルミオスはその一撃を剣で受け止めるも、あまりの威力に吹き飛ばされ、自らが劣勢であることを悟る。さらにエナたちが拘束され、頭目がエナたちを殺してヘルミオスだけを売ると命じたことで、エナの背に剣が当てられ、今にも刺し貫かれようとする状況になったのである。

爆砕拳の奪取と才能狩りの瓦解

重傷を負いながらもエナを救おうと立ち上がったヘルミオスの視界に、天稟の才の発現を告げる光る枠が現れ、相手のスキル「爆砕拳」を得るかと問いかけた。ヘルミオスがそれを望むと、彼の体に力が満ち、デラケルの拳に見えた一点を狙って爆砕拳を叩き込んだのである。一撃でデラケルの拳とナックルは砕け散り、才能狩りの間に動揺が走った。そこへ分かれ道から回り込んできた騎士団が突入し、騎士団長の号令のもと才能狩りは次々に制圧され、ガッツン、ドロシー、エナも解放されたのである。

救出の安堵とヘルミオスの崩れ落ちる姿

ガッツンたちは互いの無事を確かめ合い、その前に血だらけのヘルミオスが歩み寄ってきた。ヘルミオスはガッツン、ドロシー、エナの顔を順に見て安堵の笑みを浮かべたが、そのまま前のめりに倒れ込んだ。ガッツンが慌てて抱きとめた時、ヘルミオスは静かな呼吸を続けて眠るように意識を失っており、こうして才覚を示した幼い勇者の激闘はひとまず幕を閉じたのである。

ヘルモード外伝 3.5話 魔導書と探求心

天稟の才の検証と「格」への不満

創造神エルメアは、第一天使メルスと共にスクリーンに映るヘルミオスたちの戦いの結末を眺め、手元の魔導書を確認したうえで、エクストラスキル「天稟の才」が効果としては設定どおりであることを認めていた。しかし、エルメアはメルスの報告を即座に否定し、問題はスキルそのものではなく、その使い方の伝え方にあり、神々の「格」を認識させる演出として不十分であったと断じたのである。

仮想窓の否定と魔導書という解決策

メルスは、魔法神イシリスが試作した「仮想窓」を用いて中空に文字を表示したと説明したが、エルメアは中空に浮かぶ文字を神託と認めず不機嫌さを隠さなかった。代案としてメルスは光る石板の案を口にしたが、表情から却下されると察して引っ込める。そこでエルメアはテーブル上の本に着目し、本という形こそが言葉と情報を格式高く伝える媒体であり、仮想窓よりもはるかに「格」があると語り、メッセージを本の形、すなわち魔導書で伝える方針を示したのである。

無茶な指示と積み上がる案件

メルスは、本という新要素を導入すれば既存設定との齟齬を避けるために年単位の調整が必要になると説明したが、エルメアはこのプロジェクトに妥協は許されないと一蹴し、メルスに対してヘルミオスのエクストラスキルの調整を続けつつ、並行してイシリスに魔導書の製作を始めさせるよう命じた。メルスは表向きは従順に了承しつつ、実行しきれない指示をいったん受けては先送りにするという処世術でやり過ごそうとしており、その類の指示がすでに三桁に達していることを内心で苦々しく思っていた。

探求心に欠けるヘルミオスへの評価

エルメアは、ヘルミオスが日頃からもっと探求心を持っていればここまで気を揉まずに済んだはずだと嘆いた。メルスもまた、ヘルミオスが剣術や回復魔法を常人離れした速度で習得しても、それを不思議がることなく、ひたすら誰かの役に立つかどうかだけを考えていると理解していた。ヘルミオスは心優しく謙虚で、自身の異常さを検証する視点に欠けており、その無自覚さがスクリーンに映る満足そうな寝顔にもにじんでいるとして、エルメアは不満げに眺めていたのである。

魂の召喚という直接指導の決断

エルメアは、マイペースな性格では困ると述べたうえで、ヘルミオスが「天稟の才」をうまく使いこなせると思うかとメルスに問い、メルスは設定どおりにしたとだけ答えた。するとエルメアは、自らヘルミオスの魂をこの場に呼び出し、眠っている今こそ直接説明すると決断し、人類の希望としてしっかり育てる必要があると宣言して立ち上がった。こうして、ヘルミオスの知らぬところで、魔導書による導きの構想が水面下で進められていくことになったのである。

電子書籍特典『愛の噴水』

前夜祭のもてなしと火の神フレイヤの乱入

アレンたちはクレビュール王国で、アクア神殿復興を祝う前夜祭に招かれ、国王一家から英雄として豪勢なもてなしを受けていた。クレナの屈託ない賛辞に王妃は笑みで応じたが、アクアを「広い心」と称えた言葉に火の神フレイヤが神器カグツチ越しに噛みつき、ドゴラと言い合いになった末、炎を噴き上げて椅子とドゴラの尻を燃やし、場が凍りつきかけた。

アクアの噴水と「愛の泉」の特別ルール

空気を変えるため、カルミン王女がアクアの噴水への案内を提案し、国王夫妻もそれに賛同した。噴水は金貨を背面投げで30メートル先から入れれば願いが叶うとされるものだった。アレンは前世の噴水を連想しつつも、神剣など物騒な願いは否定され、翌日に皆で挑戦することになった。同夜、カルミン王女はセシルの部屋を訪れ、アクアが「愛の神」とも呼ばれること、噴水には金貨を二人同時に投げ、同じ願いを口にすれば必ず愛が成就するという「愛の泉」の特別ルールがあると打ち明け、セシルに意味ありげに勧めた。

噴水への挑戦とそれぞれの願い

翌日、一行は神殿脇の小さな噴水へ向かい、半径三十メートルの印から順に背面投げに挑戦した。メルルは届かず、ドゴラとシアは投げ過ぎて外し、他の仲間も失敗する中、クレナとキールだけが成功し、クレナは美味しい物、キールは世界平和を願った。ルークは正面投げでルール違反となり、最後にアレンとセシルが残った。

アレンとセシルの共同投げとすれ違う感情

アレンとセシルは並んで背面投げを行い、二枚の金貨は同時に噴水へ落ちた。カルミン王女が期待を込めて促すと、アレンはキールが世界を願ったのに対し、自分は仲間のために「仲間たちが無事でいられますように」と願いを告げた。セシルはカルミン王女の助言を意識しながらも、動揺を隠しきれず「仲間たちの安寧を願う」と同じ言葉に寄せる形で誤魔化し、涙目になったところをアレンに指摘されると、照れ隠しの怒りで裏拳と優しい連打を浴びせたのであった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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