小説「ヘルモード 10 プロスティア帝国(魚人)編」感想・ネタバレ

小説「ヘルモード 10 プロスティア帝国(魚人)編」感想・ネタバレ

ヘルモード10の表紙画像(レビュー記事導入用)

ヘルモード 9巻 レビュー
ヘルモード 全巻 まとめ
ヘルモード 11巻 レビュー

Table of Contents

物語の概要

本作は、ゲーム難易度「ヘルモード」を選んだ元廃ゲーマー・山田健一が、異世界に農奴の少年アレンとして転生し、絶望的な高難度設定を攻略していく異世界ファンタジーである。 攻略本も掲示板も存在しない世界で、アレンは現実のゲーム知識を駆使して召喚士としての実力を磨き、仲間とともに成長を続けてきた。

第10巻では、舞台を「海洋世界」へと移す。 五大陸同盟会議や「ヘビーユーザー島」の開拓が進む中、アレンたちはアルバハル獣王国の内乱や、海底国家プロスティア帝国の陰謀といった大規模な事件に介入することになる。仲間全員を魚人に変身させて挑む潜入ミッション、そして海底で待ち受ける新たな敵と、能力の覚醒が描かれる。

主要キャラクター

  • アレン(山田健一) 本作の主人公であり、元廃ゲーマー。農奴からのスタートという過酷な運命を、召喚士のスキルと徹底的なやり込み精神で覆してきた。未知の海底攻略に向け、新たな召喚獣と戦術を模索する。

物語の特徴

本シリーズ最大の魅力は、タイトル通りの「ヘルモード」な世界観と、それを打破する主人公の「ガチ勢」としての思考法にある。 単なる「俺TUEEE」的な無双ではなく、数値や仕様を検証し、試行錯誤しながら戦力を積み上げていくプロセス(育成の楽しみ)が丁寧に描かれる点が特徴だ。 第10巻では、地上戦とは勝手の違う「水中戦」や、国家間の政治的駆け引きが加わり、冒険のスケールがさらに拡大している。

書籍情報

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~10
著者:ハム男 氏
イラスト: 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2024年9月13日

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あらすじ・内容

次なる舞台は広大な海の世界!!5大陸同盟会議やヘビーユーザー島の開拓を順調にこなすアレンたち。ある日、アルバハル獣王国で内乱が発生、シアの兄であるベク獣王太子が獣王を襲撃し、『獣王の証』を奪い逃走したとの急報が入る。さらにはベクとともに行動していた襲撃者に魚人の姿があったとの報告が入り、アレンたちは海の底にある魚人の国『プロスティア帝国』の関与を疑う。しかし、帝国のある海の底に行くには、水中での呼吸を可能にする特殊な入国証が必要とのことだったが、拒否をされてしまう。アレンは自らと仲間を召喚獣の能力により魚人の姿へと変身させ、プロスティア帝国への入国を試みるのだった。策を講じ、無事入国をしたアレン達だったが、なんと帝国でも政変があり、革命により、ある男に帝位を簒奪されていることが発覚する。陰謀渦巻く海の底にて謎を追って活動する中、ついにアレンの召喚レベルが上がり、新たな能力に覚醒し――。

ヘルモード 10~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~

感想

海洋世界への広がりと「擬態」の楽しさ

本巻は、舞台が海へ移ったことで、世界の広がりとゲーム的な発想の楽しさが一気に前面に出た巻である。 アレンたちが魚人に「擬態」して水中で普通に生活する描写は、単純ながら強い魅力があり、読んでいて素直に「羨ましい」と感じさせた。陸とはまったく異なる環境で、呼吸や移動が当たり前に成立している感覚が新鮮で、異世界ファンタジーとしての醍醐味をしっかり味わえた。

複雑化する情勢と潜入劇

プロスティア帝国編では、獣人ベクが「獣王の証」を奪って失踪した事件を追う形で物語が進むが、期待された手がかりはなかなか掴めず、帝国そのものがすでにイグノマスによって制圧されているという重い状況が描かれる。ただ敵を倒せば解決という単純な構図ではなく、政変や権力構造、さらに裏で糸を引く魔族シノロムの影が絡む点が、シリーズ後半らしい物語の厚みを感じさせた。

魚人に変装したアレンたちが偽名を使い、特命全権大使として慎重に潜入する流れも印象的である。力押しですべてを解決するのではなく、情報収集と立ち回りを重視する姿勢は、まさに「やり込みゲーマー」らしいプレイ感覚がよく出ていた。

キールの決断と親子の絆

人間関係の面では、キールのエピソードが特に心に残った。 五大陸同盟からの恩賞として、力や地位ではなく「両親への恩赦」を求めた選択は、これまで積み重ねてきた葛藤の決着として非常に納得感がある。長年の悩みが一つ解決したことで、アレンの仲間としての立ち位置がより安定したように感じられ、静かながら良い後味を残した。

ゲーム要素の拡張:「聖珠」と新装備

ゲーム要素についても、本巻は情報量が多く充実している。 「属性」や「耳飾り」といった新要素が加わり、ステータス管理の幅が一気に広がった。特に歌姫コンテストの景品や、召喚獣のランクアップ条件として登場した**「聖珠(せいじゅ)」**の存在が大きい。想像以上に多くの聖珠が必要であることが示唆されており、今後の成長余地(やり込み要素)がまだまだ残されていることにワクワクさせられる。 また、物語の端々で「鳥人」などの新キーワードも出てきており、世界設定がさらに拡張され続ける期待感がある。

総評

魚人たちの描写については、ラプソニル皇女や歌姫ロザリナなど綺麗な人物が多い雰囲気があり、もっとイラストで見てみたいという欲が自然と湧いた。海中都市パトランタや巨大な水晶花の情景は文章だけでも魅力的だが、視覚的な補強があればさらに印象が強まるだろう。

総じて本巻は、本編の密度が高く、物語・人間関係・ゲーム的成長のバランスが取れた一冊であった。派手な決着よりも、仕込みと広がりを重視した構成であり、次に何が来るのかを楽しみにさせる力がある。「ヘルモード」という題名どおり、要素が増えて複雑になるほど面白くなるシリーズだと、改めて感じさせられた。

ヘルモード 9巻 レビュー
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最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

アレン一行(潜入・調査側)

アレン(偽名:アレク)

獣王の証奪還とプロスティア帝国の内情調査を主導する実務担当。召喚獣のスキル運用と即興芝居で状況をこじ開けるタイプで、外交も工作も「通れば正義」で押し切る柔軟さを持つ。

  • 所属・地位
    • クレビュール王国の臨時特命全権大使(として潜入)
  • 物語内での行動・成果
    • 擬態スキルによる魚人化で潜入を可能にした。
    • 召喚獣による偵察、転移、虛実織り交ぜた説明で相手を翻弄した。
  • 変化・特筆事項
    • 合成レベル9・召喚レベル9に到達し、成長スキルなどの新能力を解禁した。

カルミン王女

クレビュール王国の王女。外交的な「正当性」をアレンに付与する重要な存在。婚約者の救出が絡むと、普段の公人としての立場以上に当事者としての感情が強く出る。

  • 所属・地位
    • クレビュール王国・王女
  • 物語内での行動・成果
    • 名目上の外交主体として随行のアレンに大使任命を成立させた。
    • 救出された婚約者(ドレスカレイ公爵)やプロスティア皇族の保護を担った。
  • 変化・特筆事項
    • イグノマス殺害の危機を、アレンの機転による離宮送りで回避した。

イワナム騎士団長

護衛として選抜された年長の騎士団長。現場の安全確保と、騎士としての威圧感による揉め事処理を担い、若手が多い一行の防波堤となる。

  • 所属・地位
    • クレビュール王国・騎士団長
  • 物語内での行動・成果
    • 随行護衛として武力抑止や対外折衝の圧力担当を務めた。

シア(偽名:ジョアンナ)

アルバハル獣王国の獣王女であり、ベクの妹。救出・破壊・制圧が速く、潜入任務であっても物理的な解決手段を取りがちである。

  • 所属・地位
    • アルバハル獣王国・獣王女
  • 物語内での行動・成果
    • 兄ベクの行方を追ってアレンの作戦に同行した。
    • ミスリル格子の破壊や鎖の切断など、強行突破で活躍した。

セシル

情勢整理と会話の受け答えを担う実務寄りの人物。離宮側での対話や情報収集にも関与し、冷静な視点で状況を俯瞰する。

  • 所属・地位
    • グランヴェル伯爵家・令嬢(ラターシュ王国)
  • 物語内での行動・成果
    • 世話役として情報整理や聞き取り補助を行った。
    • 授与式で伯爵家への昇爵を受けた。

ソフィー

対外的には世話役の位置にいるが、発言力は強く、確信を持った言葉で場を動かす。歌姫コンテストでの公開討伐案を提示するなど、精神面での押しが強い。

  • 所属・地位
    • ローゼンヘイム・王女(精霊使い)
  • 物語内での行動・成果
    • 「アレンは負けない」という確信でラプソニル皇女の不安を払拭した。
  • 変化・特筆事項
    • 歌姫コンテストでのイグノマス討伐を提案した。

ルーク

魔導具の起動や整備役として動く技術担当。作中では魔導具の試運転が帝都規模の警報連鎖を起こす引き金となった。

  • 所属・地位
    • 魔導具技師(アレンの仲間)
  • 物語内での行動・成果
    • 浄水魔導具の運用と整備を担当した。
    • 「誰かが嘘をついている」と鋭い指摘を行った。

ペロムス

商取引と鑑定・帳簿読みで利益の種を探す実利担当。交渉局面では、スキルを活かして相手の値付けを言い当て、有利な条件を引き出す。

  • 所属・地位
    • 商人(ペロムス商会)
  • 物語内での行動・成果
    • 役人役や商人として交渉を担当した。
    • 店主カサゴマとの価格交渉を主導し、成果を上げた。

フォルマール

潜入時の役割上は船乗り役として振る舞い、同行の体裁を整えるエルフの射手。

  • 所属・地位
    • エルフ(ソフィーの護衛)
  • 物語内での行動・成果
    • 船乗り役として随行し、体裁維持に努めた。

プロスティア帝国(内乱側・宮廷)

イグノマス皇帝

内乱によって帝位に就いた元将軍。宮殿側の意思決定者であり、浄水魔導具を政治的な道具として利用しようとする。自身の正統性に執着する。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・皇帝(自称)
  • 物語内での行動・成果
    • 反乱を起こし、旧皇帝を殺害して即位した。
    • 皇女ラプソニルを利用して血統的正統性を確保しようと画策した。
  • 変化・特筆事項
    • アレンに「3か月で金貨1000万枚」という無理難題を課した。

アジレイ宰相

宮廷の政務を回す立場で、イグノマス側に与している。ドレスカレイ公爵の話題で反応が鈍るなど、後ろ暗い事情を抱えている様子が見られる。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・宰相
  • 物語内での行動・成果
    • イグノマスの意向を補佐し、政務の中枢を担った。

シノロム導師

研究者気質の魔族の老人。イグノマス変質の背後にいる黒幕的存在であり、魔王側とも通じている。

  • 所属・地位
    • 魔族・研究長官
  • 物語内での行動・成果
    • 獣神ガルムの血に関わる贄(ベク)の確保を魔王へ報告した。
    • 騎士の強化や研究に関与している。

タイノメ(入国管理局局長)

港と入国管理を握る実務責任者。アレンの「献上品」芝居とハッタリに振り回され、結果的に滞在権を認めてしまう。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・入国管理局局長
  • 物語内での行動・成果
    • アレンたちの入国審査と港湾管理を担当した。
  • 変化・特筆事項
    • 面子と責任を突かれると弱く、アレンに利用された。

ラプソニル皇女

下半身が魚の姿を持つ皇族。聖魚マクリスの血筋と帝位正統性の象徴であり、離宮に幽閉されながらもアレンたちと対話を行う。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・第一皇女
  • 物語内での行動・成果
    • 離宮で監視されつつ、内情を語る証言者となった。
    • 宗教的構図(マクリスの系譜)や現実的な不安をアレンたちに伝えた。

プロスティア皇后

内乱で夫を殺され、屈辱的に新皇帝の承認を強いられた当事者。救出後は事情確認と警戒を担う。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・皇后(旧体制)
  • 物語内での行動・成果
    • 内乱の経緯やイグノマスの即位の裏側を語った。

ユリウス=ドレスカレイ公爵(ドレスカレイ公爵)

カルミン王女の婚約者。内乱で投獄されていたが救出され、反乱の経緯や帝国軍の状況を説明する役割を果たす。

  • 所属・地位
    • プロスティア帝国・公爵
  • 物語内での行動・成果
    • 旧体制側の中心人物として、イグノマスの血統への執着を非難した。

聖魚マクリス

帝国領を巡る「守護者」として崇められる存在。歌姫コンテストの時期に来訪するとされるが、争いの裁定には介入せず沈黙を貫くと言われている。

  • 所属・地位
    • 聖魚(神の眷属)
  • 物語内での行動・成果
    • 宗教的象徴として語られ、破魔の力の源とされる。

アルバハル獣王国(継承争い・内乱側)

ベク獣王太子

獣王の証を奪って逃走した内乱の中心人物。かつては英雄だったが、思想の急進化と共に孤立し、最終的にはロム(シノロム)の策謀により破滅へと向かう。

  • 所属・地位
    • アルバハル獣王国・獣王太子(後に廃嫡・逃走)
  • 物語内での行動・成果
    • 獣王武術大会で勝利したが、敵国の王を殺害した。
    • 国家強化を掲げた過激な政策で支持を失った。
  • 変化・特筆事項
    • 牢獄で四肢を失い拘束され、邪神への贄とされる。

ゼウ獣王子

正統な獣王候補として名が挙がる存在。S級ダンジョン攻略などの実績を重ね、次期獣王としての地位を固めつつある。

  • 所属・地位
    • アルバハル獣王国・獣王子
  • 物語内での行動・成果
    • 継承候補として正統性を示した。

ムザ獣王

ベク・ゼウ・シアの父であり、現獣王。継承試練を課し、ベクを「器ではない」と痛烈に断罪した。

  • 所属・地位
    • アルバハル獣王国・獣王
  • 物語内での行動・成果
    • ベクとの決闘で圧倒したが、ロムの薬で強化されたベクに敗北した。

アン獣王妃/ミア獣王妃

獣王家の妃たち。王家内の派閥や貴族層の空気を映す存在として描かれる。

  • 所属・地位
    • アルバハル獣王国・獣王妃

ケイ隊長

ベクの側近として行動する私設部隊の長。ロムへの敵意を隠さず、ベクに忠誠を誓っていたが、最後は魔神に殺害された。

  • 所属・地位
    • ベク私設部隊・隊長
  • 物語内での行動・成果
    • 王城突入や親衛隊処理の実働指揮を執った。

ロム(旅の薬師)

根回しと資金工作で貴族を取り込み、ベクを破滅的な道へ誘導した黒幕。正体は魔族の研究長官シノロム。

  • 所属・地位
    • 旅の薬師(偽装)/魔族・研究長官
  • 物語内での行動・成果
    • 恐怖と利権で人を動かし、プロスティア介入を提案・実行させた。
    • 正体を現し、ベクを贄として確保した。

勇者軍・共同演習側(S級ダンジョン周辺)

勇者ヘルミオス

勇者軍を率いる統率者。共同演習では兵の不安を取り除く言葉をかけ、神聖属性の切り札としてもアレンに信頼されている。

  • 所属・地位
    • 勇者(セイクリッド)
  • 物語内での行動・成果
    • 合同演習の指揮を執り、兵の心理をフォローした。

キール

アレン軍の地上側の指揮担当。経験値配分や運用設計を行い、授与式では子爵位と領地返還を受けるが、自身の栄誉より父母への恩赦を求めた。

  • 所属・地位
    • アレン軍・指揮官/カルネル子爵
  • 物語内での行動・成果
    • 訓練の運用指揮を行った。
    • 授与式で父母の恩赦を願い出た。

クレナ/メルル/ドゴラ/ドベルグ/ロゼッタ

共同演習の主要戦力。圧倒的な戦闘力で訓練を「安全に回る形」にし、勇者軍側に力の差を自覚させる役割を果たした。

  • 所属・地位
    • アレンの仲間たち(冒険者)

ロホメット

付与魔法運用の要として扱われる付与魔導王。属性付与の中核を担う。

  • 所属・地位
    • 付与魔導王(アレン軍)
  • 物語内での行動・成果
    • 「エンチャントウインド」等で対ゴーレム戦を支援した。

メルス(元第一天使)

回復薬生成などの後方支援に従事。アレンの「封印」や代価について説明する役割も持つが、酷使され疲弊している。

  • 所属・地位
    • 元第一天使(アレンの召喚獣)
  • 物語内での行動・成果
    • 回復薬生成や知識提供を行った。

魔王軍(邪神復活側)

魔王

侵攻よりも邪神復活を最優先とし、戦力分散を禁じる統率者。

  • 所属・地位
    • 魔王
  • 物語内での行動・成果
    • 邪神復活計画の最終責任者として指令を出した。

キュベル(参謀)

魔王の参謀。計画の進捗確認や方針運用に関与する。

  • 所属・地位
    • 魔王軍・参謀

修羅王バスク/ビルディガ/ラモンハモン

上位魔神。任務から帰還し、アレンたちを警戒しつつも軽視する。バスクは魔剣を得て戦力を強化した。

  • 所属・地位
    • 上位魔神
  • 物語内での行動・成果
    • ラモンハモンはベクの側近ケイを殺害し、ベクを圧倒した。
    • バスクは魔剣オヌバを入手した。

魔剣オヌバ

意思を持つ武器。バスクと応酬し、最終的に彼を主として選んだ。

  • 所属・地位
    • 魔剣
  • 物語内での行動・成果
    • バスクの狂気を増幅させる新たな武器となった。

市井・取引・周辺人物

カサゴマ(魔法屋の店主)

耳飾りや水晶の種などの高級品を扱う商人。足元を見る値付けと煙の演出で圧をかけるが、ペロムスと互角に渡り合う。

  • 所属・地位
    • 魔法屋・店主
  • 物語内での行動・成果
    • 耳飾りの取引でアレン・ペロムスと交渉した。

ロザリナ(歌姫候補)

属州ミネポンタ出身の魚人女性。参加枠廃止により出場できず潜り込んでいたが、アレンと契約し、聖珠を巡る取引の当事者となる。

  • 所属・地位
    • 歌姫候補
  • 物語内での行動・成果
    • アレンの支援を受けてコンテスト参加を目指すことになった。
    • 上位入賞時の聖珠配分を取り決めた。

ハバラク(ドワーフの名工)

造込素材として水晶の種を求める人物として言及される。

  • 所属・地位
    • ドワーフ・鍛冶師
  • 物語内での行動・成果
    • アレンに水晶の種の入手を依頼していた(回想・言及のみ)。

戦闘 一覧

第一話 アレン軍の受け入れ

エルフ二千人の編入式(対面・説明)
  • 戦闘者:アレン vs エルフ兵二千人(覚悟確認)
  • 発生理由:アレン軍への正式編入にあたり、死をも厭わぬ覚悟を問うため。
  • 結果:エルフたちは女王と世界樹を守る決意を示し、アレンの指揮下に入った。
ヘビーユーザー島の開拓(非戦闘・作業)
  • 戦闘者:アレン軍(エルフ・獣人) vs 島の荒野(整地・建築)
  • 発生理由:移住者を受け入れるための拠点整備が必要だったからだ。
  • 結果:精霊魔法と獣人の労働力で町造りが開始された。

第三話 ヘビーユーザー島の住民の受け入れ

ファルネメスの滞在(遭遇)
  • 戦闘者:アレン一行 vs 調停神ファルネメス
  • 発生理由:馬小屋に得体の知れない魔獣がいるとの報告を受け、確認に向かったことによる。
  • 結果:ファルネメスは戦う意思を見せず、クレナとの交流を経て島に居着いた。

第四話 5大陸同盟会議

鑑定の儀(能力測定)
  • 戦闘者:ヘルミオス・ドゴラ・アレンら vs 鑑定板
  • 発生理由:各国の戦力を可視化し、共有するために行われた。
  • 結果:ドゴラの圧倒的な攻撃力やアレンの魔力・知力が露見し、各国に衝撃を与えた。
武器没収の拒否(未遂)
  • 戦闘者:ドゴラ vs 王宮警備兵
  • 発生理由:神器カグツチを手放すことをドゴラが拒んだからだ。
  • 結果:フレイヤの説得によりドゴラが折れ、武器を預けた。

第五話 シアのけじめ、獣王との戦い

シア対ムザ獣王(果たし合い)
  • 戦闘者:シア vs ムザ獣王
  • 発生理由:シアが自身の行動へのけじめをつけるべく、父への果たし合いを申し入れた。
  • 結果:ムザ獣王がシアを一方的に叩き伏せ、完勝した。
ドゴラ対ムザ獣王
  • 戦闘者:ドゴラ vs ムザ獣王
  • 発生理由:敗北したシアを吊り上げるムザの行為にドゴラが激怒し、割って入ったことが発端だ。
  • 結果:ドゴラが数回有効打を与えるも、圧倒的なステータス差により追い込まれた。
アレン対ムザ獣帝
  • 戦闘者:アレン vs ムザ獣王(獣王化→獣帝化)
  • 発生理由:窮地に陥ったドゴラとシアを守るため、アレンが介入した。
  • 結果:アレンが重傷を負いながらも反撃し、メルルのゴーレムとヘルミオスの仲裁により中断された。

第六話 商人ペロムスの告白

ドラゴン討伐条件の受諾(会話上の誓約)
  • 戦闘者:ペロムス vs ドラゴン(仮想)
  • 発生理由:フィオナとの交際条件として、強さの証明を求められたからだ。
  • 結果:ペロムスは一人での討伐を約束した。

第九話 キールの望むもの

キールの激昂(威嚇)
  • 戦闘者:キール vs 王宮騎士
  • 発生理由:弱った父が騎士に手荒く扱われたことに激怒したため。
  • 結果:キールが叫び、周囲を静まらせた後、回復魔法で父を癒した。

第十話 囚われの獣人と魔王の動向

獣王武術大会・三年目決勝(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs ギル獣王
  • 発生理由:領土奪還と因縁の決着をつけるための再戦だった。
  • 結果:ベクが勝利したが、ギルを殺害してしまった。
シノロムの牢獄訪問(尋問)
  • 戦闘者:シノロム vs ベク(拘束状態)
  • 発生理由:ベクの生存確認と、邪神復活計画への利用価値を見極めるため。
  • 結果:ベクは殺害を望んだが、シノロムは放置した。
バスク対魔剣オヌバ
  • 戦闘者:修羅王バスク vs 魔剣オヌバ
  • 発生理由:バスクがより強力な武器を求め、宝物庫で魔剣に挑んだからだ。
  • 結果:魔剣がバスクを認め、所有者となった。
バスク対ゲヘナバンド
  • 戦闘者:修羅王バスク vs 防具ゲヘナバンド
  • 発生理由:防具がバスクを締め上げ、試練を与えたため。
  • 結果:エルメアの加護が発動し、バスクが耐え抜いて装備に成功した。

第十二話 歌姫ロザリナとの邂逅

ロザリナ拘束騒動
  • 戦闘者:ロザリナ vs 魔法屋の警備員
  • 発生理由:参加証不携帯で店員と揉め、警備員に連行されそうになったからだ。
  • 結果:アレンがイワナム騎士団長を呼び込み、騎士の介入で警備員が手を引いた。

特別書き下ろしエピソード① 贄と獣の血③

ベクのSランク魔獣討伐(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs アークスパイダー
  • 発生理由:敗北からの再起と修行のため、単独討伐に挑んだ。
  • 結果:ベクが勝利し、自信を取り戻した。
獣王武術大会決勝・一年目(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs ギル獣王子
  • 発生理由:前回の雪辱戦として行われた。
  • 結果:ギルが圧勝し、その後総合優勝して獣王位に就いた。
獣王武術大会決勝・二年目(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs ギル獣王
  • 発生理由:三度目の正直として挑んだ決戦だった。
  • 結果:追い詰められたベクが禁断の薬を飲み、ギルを圧倒して勝利したが、殺害に至った。
王城突入と親衛隊殺害(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs 近衛騎士
  • 発生理由:謁見の間へ強行突入するため。
  • 結果:ベクが騎士二名を殺害して突破した。
ベク対ムザ獣王(回想)
  • 戦闘者:ベク獣王太子 vs ムザ獣王
  • 発生理由:王位継承と自身の正当性を巡る親子の決闘である。
  • 結果:ムザが圧倒したが、薬を飲んだベクが反撃し、ムザの血を吸って衰弱させた。
ケイの特攻と死(回想)
  • 戦闘者:ケイ隊長 vs 魔神ラモンハモン
  • 発生理由:拘束されたベクを救うため、ケイが魔神に挑んだ。
  • 結果:ラモンハモンに剣ごと粉砕され、ケイは死亡した。
獣神化ベクの敗北(回想)
  • 戦闘者:ベク(獣神化) vs 魔神ラモンハモン
  • 発生理由:ケイを殺された怒りでベクが覚醒し、魔神に挑んだからだ。
  • 結果:ラモンハモンに四肢を引きちぎられ、ベクは無惨に敗北した。

特別書き下ろしエピソード② オルバースの決意と威風凜々①

冒険者一党の捕縛(回想)
  • 戦闘者:ファブラーゼ警備隊 vs 冒険者一党「威風凜々」
  • 発生理由:不老の秘薬を求め、冒険者が里へ侵入したため。
  • 結果:冒険者たちは門前で取り押さえられた。

特別書き下ろしエピソード③ ヘルモード外伝 ~勇者ヘルミオス英雄譚~ ③天稟の才 後編

才能狩りの襲撃(回想)
  • 戦闘者:才能狩り集団 vs 護衛騎士団
  • 発生理由:才能を持つ子供たちを誘拐するため、待ち伏せ攻撃を仕掛けた。
  • 結果:騎士団が応戦したが、ヘルミオスたちの馬車が奪われた。
ヘルミオス対デラケル(回想)
  • 戦闘者:ヘルミオス vs 拳豪デラケル
  • 発生理由:連れ去られた仲間を救出するため、ヘルミオスが立ち向かった。
  • 結果:ヘルミオスが「爆砕拳」を奪取して発動し、デラケルの拳を粉砕して勝利した。

特別書き下ろし。 ヘルモード外伝 4.5話 町外村からやってきた無法者たち

ヘルミオス対自警団
  • 戦闘者:ヘルミオス vs 領都の自警団員二人
  • 発生理由:自警団が移住者の少女に暴力を振るおうとしたのを止めるため。
  • 結果:ヘルミオスが自警団の棒を受け止めてへし折り、圧倒した。

電子書籍特典 オルバースの役割と威風凛々

サンドワーム襲撃(回想)
  • 戦闘者:威風凜々(冒険者一党) vs サンドワーム
  • 発生理由:砂漠移動中に魔獣の襲撃を受けたため。
  • 結果:ゴーレムが損傷したが、撃退した。
マッカラン対ネネビー(喧嘩)
  • 戦闘者:マッカラン vs ネネビー
  • 発生理由:酒場での口論がエスカレートしたことによる。
  • 結果:ネネビーのドロップキックでマッカランが吹き飛ばされたが、場の盛り上げには成功した。

展開まとめ

第一話 特命全権大使の拝命

獣王の証奪還とプロスティア帝国への課題
アルバハル獣王国で起きたベク獣王太子の内乱は鎮圧されたが、彼は獣王家の象徴である獣王の証を奪って逃走していた。逃走先が海中国家プロスティア帝国と推測されたため、アレンはゼウ獣王子またはシア獣王女を正統な獣王に据えるため、奪還を目指すことを決めた。しかしプロスティア帝国は魚人以外の入国を厳しく制限しており、通常の方法では潜入できなかった。

擬態スキルによる突破口
クレビュール王国を訪れたアレンは、召喚獣の覚醒スキル擬態によって魚人へ変身できることを明かした。この能力は外見だけでなく身体構造も変化させ、最大二十四時間維持できるものであった。これにより、クレビュール王国発行の通行証のみで帝国に入れる可能性が生まれた。

特命全権大使の要請
アレンは単なる入国では十分な調査ができないと判断し、クレビュール王国の大使として、さらに全権を委任された特命全権大使としての任命を求めた。突飛な要求に国王は動揺したが、シア獣王女の存在や帝国との外交関係を考慮し、検討に入った。

カルミン王女の同行提案
カルミン王女は、自身が帝国に赴き事情を説明する立場にあることを述べ、その随行としてアレンを特命全権大使に立てる案を示した。これにより外交的な正当性が確保でき、帝国内の動向調査にも資すると判断された。

任命と出航準備
最終的にクレビュール国王は、カルミン王女の随行者としてアレンを臨時の特命全権大使に任命した。護衛には年長のイワナム騎士団長が選ばれ、五日間の準備を経て、一行は大量の上納品を積んだ大型船でプロスティア帝国へ向けて出航した。

第二話 プロスティア帝国への旅路

船室の案内と出航前の整理
アレンは甲板から船内へ入り、豪華な客室に案内された。海に浮かぶ船は初めてで、前世のゲームで船旅中に船内を歩き回りイベントに遭う感覚を思い出していた。窓の外に港が見え、地上に残した部隊は鳥Aの帰巣本能で拠点へ移動したと把握していた。

地上残留組の狙いと共同訓練の構想
アレンは部隊を分けた理由として、アレン軍の強化と、勇者ヘルミオス率いる勇者軍との共同訓練を進める意図を持っていた。転職ダンジョン運用が進み、双方が軍としての運用を見据えた段階に入り、アレンは死傷者を減らすため情報提供も行っていた。指揮面ではドゴラは強いが統率に不向きとして、地上側の中心はキールに置いていた。

ベクの行方と帝国内情勢の確認
出航直前、アレンはシアに状況を整理させ、ベク獣王太子は目立った行動をしておらず行方不明で、アルバハル獣王国が動けないと共有した。プロスティア帝国の関与が疑われ、ベクが獣王の証を根拠に再侵攻する想定も議論されていた。セシルは帝国そのものではなく属国が独自に協力している可能性を示し、アレンは到着後の調査対象に据えた。

潜水開始と船内の海水化
船内放送の後、船は潜水を開始し、客室に海水が流入した。仲間は不安を見せたが、事前に魚人擬態で呼吸できることを確認していたため、最終的に首の穴から水が抜ける感覚を得て落ち着いた。船内を海水で満たすのは帝国の法で、外来種の侵入を防ぐ仕組みであった。暗闇でも視界が確保され、精霊神ローゼンはエビ、精霊王ファーブルはカニに擬態して同行していた。

海底の光景と水中生活への順応
海底では水晶花と呼ばれる発光植物が一面に広がり、魚の群れが舞う幻想的な景色が続いた。航行が数日進むと一行は水中生活に慣れ、ルークは船室内を泳いで浮遊感を楽しんだ。アレンは地上へ転移せず、ゴルディノ討伐より召喚レベル上げを優先し、ペロムスの商会が魔石買い取り網を整えたことも追い風になっていた。

誕生日の朝食と前世の記憶
朝食の席でアレンの十六歳の誕生日が話題になり、仲間が祝った。水中では食事が拡散しやすく、汁物が出ず固形中心で、浄水の魔導具が必需品であることも語られた。アレンは前世の十六歳に城へ呼ばれる話を冗談めかして語り、シアは別世界の事情として興味を示した。会話の流れでアレンは前世の父を思い出し、沈黙に近い真顔を見せ、セシルはその情の源を理解した。

帝都パトランタ到着と港での接触
船内放送で帝都パトランタ到着が告げられ、船は深海へ垂直に潜行した。窓の外には超巨大な水晶花が現れ、その上に都市が築かれていた。港では鎖で係留され、上納品の荷下ろしを指図する赤い魚人の役人が忙しく振る舞っていた。アレンは偽名アレクを名乗り、クレビュール王国の特命全権大使として貢物献上に立ち会うと告げ、役人はその正体を訝しみつつ応対を続けた。

第三話 クレビュール王国からの貢物

港の責任者タイノメとの対面
アレンは「特命全権大使アレク」と偽名を名乗り、カルミン王女の謁見と貢物納入のために港へ入った。港を治める入国管理局局長タイノメは、アレンの若さを疑いながらも、王女の登場とクレビュール王家の書状により形式上は受け入れた。ただしタイノメは、申請を無理に前倒しして入国した一行に強い不満を抱え、早く荷を倉庫へ運べと圧をかけた。

“献上品”を巡る芝居の開始
アレンは倉庫送りにされそうな巨大魔導具を「皇帝への献上品」として強引に止め、運搬役を大声で叱責して騒ぎを起こした。運搬に混じっていたペロムスとフォルマールも、荷崩れの演技で事態を大げさに見せ、魔導具が“壊れたら大惨事”という空気を作った。タイノメは最初いぶかしみつつも、献上品の重要性を察して不安を強めた。

浄水魔導具の異常性能で局長を釣る
アレンは魔導具が「帝都パトランタの10倍を浄水でき、300年稼働する」と説明し、タイノメを圧倒した。さらにバウキス帝国との繋がりや、会議での経緯など“真実と嘘を混ぜた話”で説得力を補強し、局長の警戒心を揺らした。タイノメは半信半疑ながらも、魔導具が国家規模で価値を持つ可能性を認識していく。

試運転が帝都規模の大混乱を引き起こす
ルークが魔導具を起動すると港の水が急速に透明化し、効果が目に見える形で示された。だが水質管理魔導具が“汚染を検知できない異常”として誤作動を起こし、帝都各地で警報と赤い警告光が連鎖した。水晶花全体が真っ赤に染まるほどの騒ぎになり、タイノメは部下に止血ならぬ“止警報”の指示を飛ばして対応に追われた。

停止と“故障偽装”で滞在権をもぎ取る
魔導具は途中で停止し、アレンは慌てたふりをして「献上前に1か月ほど点検が必要」と主張した。さらに「整備役ドワーフの入国が却下された」件を持ち出し、却下したのがタイノメ自身である構図を作って責任を意識させた。最終的にタイノメは宮殿内滞在は拒んだものの、宮殿近くに住まいを用意して滞在を認め、一行は帝都パトランタに足場を確保した。

各人の役割整理
アレンは特命全権大使、シアは王女護衛、セシルとソフィーは世話役、ルークは整備役、ペロムスは役人役、フォルマールは船乗り役として立ち回り、帝都滞在の目的を達成する形を整えた。

第四話 遊泳調査の開始

邸宅への移動と偽名運用の徹底
タイノメ局長の部下に案内され、アレン一行は宮殿近くの庭付き邸宅へ入った。浄水の魔導具が巨大かつ国家予算級の価値を持つため、献上日まで秘匿し、警護騎士も追加される段取りであった。アレンは帝都内での警戒を踏まえ、互いを偽名で呼び合うよう再確認し、ルークやセシルらもそれに合わせて会話を整えた。

魚Dによる宮殿の遊泳偵察と召喚獣の性質整理
アレンは魚Dの召喚獣を召喚し、宮殿周辺の水中環境に紛れさせて内部偵察を開始した。魚Dは強化で知力が上がり会話可能になっており、アレンは召喚獣の会話可否が系統やランクで分かれる傾向(霊・竜・天使は常時会話可、獣や魚は高ランクで会話可など)を把握した。邸宅のリビングで視覚共有を行い、宮殿の規模や内部の魚の往来、厨房や食堂、謁見の間へと侵入経路を選びながら観察した。

謁見の間で判明する内乱と「イグノマス皇帝」
魚D越しに、玉座の魚人(イグノマス皇帝と呼ばれる)と、宰相アジレイ、導師シノロム、そして跪くタイノメ局長の会話を盗み聞いた。浄水魔導具の性能報告に皇帝は疑いを示しつつも、点検期間が「1か月」と聞くと「1か月以内に終えろ」と強く命じ、さらに「時代が俺の都合のいいように動いている」と笑った。会話の流れから、プロスティア帝国内ではイグノマス側による内乱が進行しており、カルミン王女が婚約関係にあるドレスカレイ公爵(ユリウス)が獄中にいることも示唆された。

情報共有と救出方針の決定
アレンは得た情報をカルミン王女とイワナム騎士団長に確認し、イグノマスが元近衛騎士団長兼将軍であること、宰相アジレイが反乱側に与しているらしいことを把握した。カルミン王女はドレスカレイ救出を依頼し、アレンも「聞きたいことがある」として救出を引き受けた。その後、魚Dで宮殿内を探索し続けたが牢獄の特定に手間取り、監視がいる薄暗い淀んだ区画へ調査対象を切り替えた。

牢獄潜入と看守の無力化
牢獄区画では魚Dを壁内移動させ、看守の交代会話を拾った上で、口だけを廊下に出す形で状況を作った。鳥Aの召喚獣で「巣」を生成し、看守に見つかる流れになるが、最終的にアレンは虫Eの特技「鱗粉」を用いて兵士を眠らせる。水中でも特技の発動自体は可能だが、魚系統以外は水の抵抗で動きが鈍い点もここで整理された。

ドレスカレイ発見と皇族一団の救出
鉄格子の小部屋群で、鎖に繋がれたユリウス=ドレスカレイを発見した。格子も鎖もミスリル製であり、拘束対象が才能持ちであることを示していた。シア(偽名ジョアンナ)はミスリル格子を素手で曲げて隙間を作り、鎖も引きちぎって救出する。ドレスカレイは皇后と子供たちの優先救出を求め、アレンは隣室の皇后らを含め、皇帝一族と郎党あわせて約30人を順に解放した。

痕跡工作としての壁破壊と一括転移
アレンは単純転移だけだと疑いがカルミン王女と自分に向くと考え、内部犯行に見せるため痕跡を残す方針を取った。シアがスキル「火薬爆弾!!」で壁に大穴を開け、轟音と衝撃で周囲が揺れる。だが実際の脱出はその穴を使わず、鳥Aの覚醒スキル「帰巣本能」で30人まとめて邸宅リビングへ転移し、草Dの「香味野菜」で失神状態を回復させた。

邸宅での合流と「救出の目的」提示
動揺する皇后にカルミン王女が優しく声をかけ、皇后や子供はカルミンが、男性陣はイワナム騎士団長が案内して着替えなどを手配した。残ったドレスカレイは救出に礼を述べつつ、シアの荒っぽさに苦言も呈した。アレンは救出が純粋な善意だけではなく、「ベクという獣人の行方」を尋ねる目的があると明かし、事情説明へ移った。

第五話 ベクの行方を追って

皇后の介入とアレンの距離感
ドレスカレイ公爵は、アレン一行が魚人ではないという話を半信半疑のまま聞き通し、カルミン王女が同行している点を根拠に大枠は信じる姿勢を見せた。そこへ身を清めた皇后が現れ、アレンたちがクレビュール王国とは別意図で動いているのか、そしてクレビュール側がそれを支援しているのかを問いただした。アレンは丁寧に応対しつつ、礼の申し出にも即答せず距離を保ち、前世の価値観と身分制度の違和感を抱えながらも、世界の在り方を自分から変える気はなく、魔王軍討伐に必要な範囲でのみ介入するという基本姿勢を整理した。

内乱の経緯の具体化と帝国の陥落
皇后の許可のもと、ドレスカレイ公爵は投獄前後の事情を語った。首謀者は近衛騎士団長でもあったイグノマス将軍で、配下の近衛騎士団に宮殿を占拠させ、短期間で制圧し、プロスティア皇帝は討たれた。帝都には近衛騎士団のほか第一帝国軍・第二帝国軍が存在するが、近衛騎士団は人数こそ少なくとも才能と装備で突出しており、宮殿内部で反乱を起こしたことで対応が間に合わなかった。皇族や側近は捕らえられ、ドレスカレイ公爵もその一人となり、父は抵抗の末に殺されたという。

「即位の正当化」と皇族を人質にした支配
投獄後、イグノマスは皇后から勅命を受けて即位したと宣言し、皇后は子供たち、とりわけ第一皇女ラプソニルを盾に取られて屈辱のうちに承認させられたと語られた。皇后はその場面で一瞬だけ表情を落とし、ドレスカレイ公爵は帝国軍も最終的に恭順し「帝国軍に戻った」形になったと説明した。さらに、宮殿の奉仕者が多く生存しており、旧体制側の者が獄中のドレスカレイへ情報を流していたため、彼は情勢の変化にも通じていた。

ベクの手掛かりと「獣人戦力」の抑止
本題のベクについて、ドレスカレイ公爵は本人を知らないと答えたが、シアが割って入り、イグノマスが帝国軍を恭順させる際に「獣人の戦力」をほのめかした報告がある点を提示した。さらにイグノマスは、帝国軍が従えば、その協力勢力と共に地上へ侵攻し、疲弊した五大陸の一角を制圧する構想まで語ったとされ、それが十万規模の軍勢が動けなかった理由だと説明された。アレンはこの話を結びつけ、獣人勢力が宮殿内部か近辺にいて、近衛騎士団と呼応して帝国軍を挟撃できる構えだった可能性を考えた。

イグノマスの素性と血統への執着
ドレスカレイ公爵は、イグノマスが平民出身で「槍王」の才能を授かり、将軍として民にも慕われていたが、今は「分不相応な欲」に溺れたと断じた。特に、ラプソニル皇女を后に迎えて皇帝の血を取り込もうとしている点を強く非難し、アレンも内乱成功後の常道として「血を絶つ」か「血を取り込む」かの二択があると整理し、イグノマスが後者を選んだと見立てた。

矛盾整理と“誰かが嘘をついている”疑念
シアは情報を魔導書に整理させ、
「ベクの内乱に魚人が協力したという話」
「クレビュールは加担していないという主張」
「プロスティアではイグノマスが内乱を成功させつつある事実」
「イグノマスが獣人戦力を背景に持つという話」
の突き合わせで腑に落ちない点が多すぎると指摘した。ルークは「誰かが嘘をついている」と短く結論を投げ、ドレスカレイ公爵は即座に反発したが、ルークは名指ししていないと返した。アレンは、全て真実ならベクはイグノマスの抑止力として宮殿側にいる可能性まで考え、逆にどこかが虚偽ならどの線が崩れるのかを検討し始めた。

ゲーム的停滞感と“未発見の真実”
アレンは、かつて攻略情報が乏しい時代のゲームで詰まった感覚を思い出し、情報不足・フラグ不足・理解ミスのいずれかで核心に届いていないと自覚した。そして「まだ見つけていない真実がある」と呟き、何度も思考を反芻して手掛かりを探す段階へ入った。

第六話 S級ダンジョンでの共同演習

試練の塔と共同訓練の前提
バウキス帝国のS級ダンジョンは外観が巨大な塔で「試練の塔」と呼ばれ、魔導船で直接接岸できないため近隣に発着場が整備されていた。発着場は外来冒険者の乗降だけでなく、ダンジョン産の武具・魔導具の流通や、1階の町で暮らす十万人規模の冒険者の生活物資受け取りも担っていた。そこへ勇者ヘルミオス率いる「セイクリッド」と千人規模の兵が到着し、アレン軍の拠点に近い駐屯地へ移動した夜に歓迎会が行われ、翌朝には合同演習の最終確認が始まった。

開始時期を巡る温度差と出発準備
打ち合わせでは、怪盗王となったロゼッタが歓迎会翌日に即訓練開始する強行日程を懸念したが、クレナやメルルは平然と受け止め、ドゴラと剣王ドベルグも問題なしと断じた。ヘルミオスの同意で訓練実施が決まり、アレン側・勇者側の第一陣と主要メンバーが拠点を出発した。S級ダンジョンへの同時転移上限である146名に合わせて編成され、神殿へ向かった。

神殿での転移仕様とメダル運用
道中、冒険者たちはヘルミオスの外見や装備で即座に気づき、名声の差が際立った。神殿では転移キューブの仕様として、合計146名まで同時転移可能である一方、特定ブロックやデスゾーン関連では同時転移人数が厳密に制限され、半径25メートル以内に集まらないと取り残される危険も示された。転移後、キールは大量のメダルを確認し、アレン軍の兵が訓練を兼ねて2〜4階層を回遊し、メダル回収を進めている運用方針が共有された。

最下層の異物感とメルスの酷使
一行が最下層へ到着すると、魚人に擬態していない「元」第一天使メルスが回復薬生成に従事している姿が現れ、勇者軍の兵が動揺した。メルスは「元」を強調し、天使時代も無茶な命令ばかりだったと疲弊を滲ませ、回復薬を渡すと畑へ向かった。ヘルミオスやキールはその扱いに複雑な感情を抱えつつも、予定通り鉄の間へ進める判断をした。

鉄の間、規格外のアイアンゴーレムと訓練目的
鉄の間では全高100メートル級のアイアンゴーレムが2体出現し、勇者軍は規格外の巨体に息を呑んだ。キールは「今日は練習」と言い、勇者軍兵が転職直後で低レベルである点を踏まえつつも、アダマンタイト武具の無償提供と、ステータスを押し上げる指輪・ネックレスの配布で安全性を担保していることが語られた。さらに、属性付与を安定運用するための「付与使い」部隊が編成され、星4の付与魔導王ロホメットが要となる。

属性付与の成功と前衛の“異常戦力”
ロホメットが「エンチャントウインド」を発動し、アイアンゴーレムが起動したことで訓練が開始された。ドゴラが壁役として前に出て、クレナとメルルが左右に展開する。メルルは「タムタム」を特殊用石板「象」のモードで召喚し、巨大な体当たりから泥を噴射してゴーレムを硬化拘束し、単独で1体の動きを封じた。もう1体もドゴラの攻撃で崩れ、クレナが追撃して圧倒する展開となり、勇者軍側は力の差に不安を覚えた。

経験値配分とヘルミオスの“勇者的フォロー”
キールは倒し切る前に勇者軍兵を戦闘参加させ、槍投擲や付与魔法、回復を担当させて経験値を配分した。ヘルミオスは「試練を超えた」と賞賛し、異常戦力を目の前にした兵の恐怖や不安を言葉で整え、計画へ順応させた。キールはその意図を理解し、勇者としての統率力に感嘆した。

訓練計画の三部制と“付与”の必然性
訓練は朝・昼・夕の三部制でアイアンゴーレム狩りを回し、並行して2〜4階層のメダル狩りも混成で行う計画とされた。付与魔法の有無で討伐効率が激変することが確認され、アレンが「メルス以外にも属性付与要員が必要」と判断した背景として、過去の魔神戦での成功と苦戦が示された。付与は相手知力を上回る知力が必要で、装備による補強で成功率を上げる狙いも共有された。

属性論の整理と“暗黒”への備え
会話は属性の序列へ広がり、神聖と暗黒が最上位であること、暗黒属性の敵には通常の付与魔法で対抗が難しいことが確認された。キールは、暗黒属性の敵が出た場合はヘルミオスの神聖属性エクストラスキル「神切剣」を頼る意図がアレンにあると伝え、ヘルミオスも必要なら協力すると応じた。一方で、光・闇への変更が不可能なら無属性で統一するというアレンの方針も話題に上がり、無属性の“相性がない”利点が整理された。

アレン不在の影と次の火種
アレンの所在は伏せられ、「いつものやつ」として力を求める行動に出ていると匂わされた。戦闘後、ドベルグはキールの連携を評価しつつ、ラターシュ王国から「冒険者ギルドの魔導具で王家に連絡してほしい」という伝言がアレン宛に届いていることをキールへ託した。ヘルミオスは自身のスキル練習へ向かい、ロゼッタは散らばる宝箱回収へ動き、共同演習は“回る形”を作ったまま次へ進んだ。

第七話 召喚レベル9と成長スキル

救出後の潜伏と“厄介な来客”対応
アレンたちはドレスカレイ公爵とプロスティア皇后を救出してから十日を過ごしていた。滞在先にはイグノマス配下の役人が浄水魔導具の修理状況を確認しに来るため、発見リスクを避けて救出翌日に公爵らをヘビーユーザー島へ転移させた。島では不安を紛らわせる目的も兼ね、開拓作業を手伝わせる形で生活基盤を整えさせていた。

カルミン王女への対応とセシルの割り切れなさ
食事の席でカルミン王女が公爵の様子を大げさに尋ね、アレンは内心うんざりしつつ受け答えした。さらにアレンはセシルへ、キールからの申し出に関する確認を行ったが、セシルは父が反対しないなら口出しできないとし、以後ぎくしゃくした空気を抱えたまま黙り込んだ。背景として、共同戦果への褒賞で各家の爵位が上がり、カルネル家の領地返還も決まったことが示された。

帝国内情勢の悪化とアレンの現実逃避気味な焦燥
監視でイグノマスが貴族を招集して忠誠を誓わせ、税制優遇や宝物庫の贈与で懐柔を進めていることが判明した。浄水魔導具の価値も政治的な武器になりつつあり、反イグノマス勢力は縮小していた。アレンは情報不足を理由に泳がせる方針を語りつつも、ベクの動きが掴めない現状に焦りを抱え、スキル上げに没入する姿勢を見せた。

合成レベル9到達と召喚レベル9への到達
昼食中、ついに魔導書のログが更新され、合成経験値が上限に達して合成レベル9となり、同時に召喚レベル9へ到達した。さらに魔導書拡張がレベル8になり、成長スキル獲得と封印されたスキル2つの取得が表示された。アレンは歓喜して食事をかき込み、部屋へ飛び出して詳細確認へ向かった。

封印だらけの新領域と“代価”の説明
呼び出されたメルスは、召喚レベル9でスキルや召喚獣が「封」と表示される状況を確認した。メルスは、アレンが通常の魔王を倒せる域をすでに超えており、それ以上の力には相応の代価が必要だと述べた。今回の魔王や魔神レーゼルが前例のない強さであったことも示され、アレンの星8の才能が指数関数的に強さを押し上げる点が強調された。

天使S合成の条件が“聖珠”であると判明
アレンは封印解除のヒントを得ようとして天使Sの合成を試みたが反応せず、ログで「Sランク召喚獣が必要」かつ「聖珠を一定量収納」が条件だと判明した。必要数がAランク魔石の49個に対応するような規模だと推測され、セシルは入手難度の高さに青ざめた。メルスはカードに戻されることを嫌がり、ようやく休める状態を確保しようとしていた。

聖獣・神獣・獣神の系譜と“神の領域”への釘刺し
アレンは聖珠の由来を問うが、メルスは聖獣を「力を得た獣や人」とだけ簡潔に定義した。神獣は聖獣がさらに変化した姿であり、シアは獣神ガルムが獣→聖獣→神獣→幻獣→獣神へ至った伝承を語った。アレンが神珠などに思考を伸ばすと、メルスは神の領域を侵すとして制止した。

強さランキング作成と拡張レベル上昇
アレンは得た情報を整理し、創造神・暗黒神を頂点とする強さランキング表を更新した。魔導書拡張レベル8により収納枚数が80枚から90枚へ増え、運用できる召喚獣数が大幅に増える利点を確認した。封印スキルの解除条件として「一定数のSランク召喚獣の解放」と「規定レベルまでのレベルアップ」が示され、解除手段が存在すること自体が収穫となった。

成長スキルの効果判明と戦略の爆発
アレンは未封印の成長スキルを試し、虫Hの召喚獣を「成長H」に変化させた。成長後は加護が増加し、同ランク召喚獣の2倍の加護を得る一方、成長にはスキルレベルの上限があり、現時点ではHまでしか成長させられないことも判明した。成長スキルの成長可能ランク、必要経験値、消費魔力の見通しを整理し、低ランクでも特技が有用な召喚獣を高戦力化できる可能性に興奮した。

メルス成長という“禁断の発想”
成長スキルの応用を考える中で、アレンはメルス自身を成長させれば加護倍増とS相当のステータス上昇が狙えるのではないかと発想した。メルスは約束を盾に強い警戒を示したが、アレンは封印解除後の未来まで想像を広げ、さらなるやり込みへの高揚を抱えたまま思考を進めた。

第八話 イグノマスと囚われの人魚姫

成長スキルの追い込みと軍資金の下地
召喚レベル9到達後の5日間、アレンは「成長」スキルの育成を最優先にし、休みを与えたメルスにすら呆れられるほどの徹底ぶりで稼ぎ続けた。魚系召喚獣の「擬態」を24時間ごとに回し、同行者全員を深海帝国プロスティア向けの身体に適応させつつ、成長スキルはレベル7へ到達した。レベル8到達で加護がAランクになれば上昇値が倍化し、最大魔力増加で指輪の回復効率も伸び、経験値稼ぎがさらに加速すると見込んでいた。加えて、アレン軍と勇者軍の活動が安定し、魔石供給と資金流入が強まっている状況を、本人は「自分に都合のいい市場」に整えた成果として受け止めていた。

イグノマス謁見と歌姫コンテストの政治利用
プロスティア滞在16日目、アレンとカルミン王女は皇帝イグノマスへの謁見を許され、側近や護衛とともに宮殿へ通された。イグノマスは儀礼をほぼ無視し、浄水の魔導具の調整が遅いと詰め寄ったが、アレンは「歌姫コンテストで皇帝の名の下に披露する準備」と説明して怒りを鎮めた。アレンは「イグノマス帝国」という呼称を選び、内乱後の新体制を持ち上げて取り入る姿勢も見せた。

腹心入り交渉と“3か月で1000万枚”の無茶振り
イグノマスが下がれと命じても、アレンは敢えて残り、今後も側で仕えたいと申し出た。地上交易で軍資金を稼げると提示し、目利きの才を持つペロムスを売り込み、年1000万枚の金貨を稼ぐと豪語した。イグノマスは即座に「3か月で1000万枚」と条件を吊り上げ、アレンは平然と受諾し、成功すれば腹心に取り立てる約束を引き出した。

ドレスカレイの名が引き金となる殺意と即興劇の発動
カルミン王女が婚約者ドレスカレイ公爵の安否を問うと、イグノマスと宰相アジレイの反応は露骨に歯切れが悪く、口封じの危険が濃くなった。イグノマスが「面倒だからやるか」と殺害へ傾いたため、アレンは計画を前倒しし、王家を裏切った大使を演じる即興劇を開始した。カルミン王女は泣き崩れ、シアやソフィーも役割に合わせて糾弾役を演じ、場の空気を意図的に攪乱した。

離宮送りと男子禁制の分断
アレンは「血で謁見の間を汚す必要はない」と言い、カルミン王女を人質として生かす筋を提示し、イグノマスの殺意を別方向へ逸らした。結果としてカルミン王女、シア、ソフィー、セシルは離宮へ送られ、アレンたち男側は通路の鉄格子で足止めされた。セシルは演技の締めとしてアレンへ蹴りを入れ、離宮側へ引き取られていった。

ラプソニル皇女との接触と“救出”の建前
離宮へ進んだ一行の前に、下半身が魚の姿を持つラプソニル皇女が現れ、事情説明を求めた。追手の女性騎士が迫る中、皇女は表向き「イグノマスの使い」と理解した形にして一行を客室へ導き、監視の目を外した状態で対話の場を作った。ソフィーは擬態が召喚獣の能力であること、地上から来た経緯、ベクの手がかりを追っていることを手短に語り、皇女は静かに受け止めた。

人魚姫の血筋と“神政”の構図
シアが皇女の尾の由来を問うと、皇女は聖魚マクリスの血を受け継ぐことを明かし、伝承に欠けている真相として「マクリスとディアドラの子が人魚の姿で生まれ、帝位を継いだ」系譜を語った。これにより、プロスティア皇帝家には時折人魚の身体を持つ者が生まれると説明され、皇女の存在が宗教的正統性と結びついている構図が浮かび上がった。アレンはこの話から、イグノマスが皇女を殺さず幽閉している理由を「次代の正統性の確保」に結びつけて推測した。

シノロム導師の名と内乱の背後
セシルが皇女へ問いを重ねる形で、イグノマスが変質した兆候を探った結果、皇女はシノロム導師という研究者の名を挙げた。導師は優秀だが独り言が多く、会話が通じないことがあるなど、周囲との齟齬が報告されていたという。導師とイグノマスが「騎士の強化」「帝国の未来」といった曖昧な話題で接近していた点も語られ、アレンは調査対象が増えたと判断した。

マクリス来訪と“沈黙する守護者”
歌姫コンテストは、帝国領を一年かけて遊泳する聖魚マクリスが帝都パトランタへ来訪する時期に合わせた行事であると説明された。しかし皇女は、マクリスは帝国と魚人全体の守護者であり、内乱や争いの裁定には介入せず沈黙を貫いてきたと述べ、神の来訪が直接の解決にならない現実を示した。アレンは、行方不明のベク、シノロム導師、そしてマクリス来訪が同時期に重なっている点を材料に、事態が一本につながる可能性を意識し始めた。

第九話 キールの望むもの

授与式を待つ控え室
ラターシュ王国の王城では、セシルがアレン一行の到着を待ちながら、5大陸同盟からの褒美の授与式に備えていた。褒美は出身国を通じて与えられる決まりで、ラターシュ王国ではセシル、クレナ、ドゴラ、キールが対象となり、家族も参列していた。ロダンは慣れない礼服に落ち着かず、テレシアに褒められてようやく安心する様子を見せた。

アレンの合流と裏事情
遅れてアレンがソフィー、フォルマール、シアと共に駆け込んだ。ペロムスはイグノマスの宮殿に残り、帳簿を調べて利益の種を探していた。アレンは中央大陸北部で召喚獣が押されている状況や、上位魔神バスクの動きに意識を向けつつ、家族と再会し、いずれ魔王の件を両親に話す必要を感じていた。

謁見の間で始まる授与式
一行が謁見の間へ進むと、国王インブエルの入場により式が始まった。エルメア教会からはクリンプトン枢機卿が列席し、キールに関する噂と重圧が会場の緊張を高めた。貴族たちはアレンの存在にも反応し、彼が知られ始めていることが示された。

ロダンの叙爵と家の評価
最初に呼ばれたのはロダンであり、村の発展や献上の功績を理由に士爵が与えられた。国王自ら証を授け、アレンの拍手をきっかけに会場全体の拍手が広がった。ロダンの背中は、家族にとっても象徴的な場面となった。

セシルの昇爵と仲間の叙任
次にセシルが呼ばれ、教都奪還などの報告が読み上げられたうえで、グランヴェル家は伯爵家へ引き上げられた。続いてクレナとドゴラには男爵位が授けられ、寄り親としてグランヴェル伯爵が指名された。ドゴラの神器カグツチは式の只中で赤く光り、注目を集めた。

キールに与えられる領地と、意外な願い
最後にキールが呼ばれ、長い功績の読み上げの末、子爵位とカルネル領の返還が宣言された。貴族たちは十分すぎる待遇にざわめいたが、キールはさらなる爵位や領土ではなく、父母への恩赦を求める願いを口にした。幼少期の困窮、両親への怨み、そして消えない後ろめたさが、彼をその結論へ導いていた。

両親との対面と、怒りが漏れた瞬間
国王の命で連れてこられたカルネル元子爵は痩せ衰え、手枷を付けたままよろめいていた。母も同伴し、キールは十年ぶりの対面で涙をこぼした。元子爵が騎士に引かれて倒れ込んだ瞬間、キールは「私の父に触るな」と叫び、仲間も知らない激しい感情を露わにした。

オールヒールと、恩赦の成立
キールは神秘の首飾りを呼応させてオールヒールを放ち、謁見の間を満たす光で父を回復させた。枢機卿はその光景に涙し、キールが教会の希望であることを確信した。国王は異議を問うたが反対はなく、父母に恩赦が与えられ、一定期間カルネル領から出られない条件も付された。

家族の再会と、次へ進む者たち
控え室に戻ると、ニーナが父に抱きついて再会を喜び、母も涙を流した。キールは父の言葉を受け止めつつ、自分は仲間と共になすべきことがあると告げ、歩みを止めなかった。アレンはその姿を見て、救われたのはキールなのだと理解し、シアもまた王家の者としてベク討伐を果たす決意を静かに口にした。

第十話 囚われの獣人と魔王の動向

ベクという存在への疑問
アレンは、内乱の中心人物であるベクについて、実のところ詳しく知らなかった。そこでシアから、兄であるベクの過去と人物像を聞くことになった。

獣帝王を志す原点
シアは、自身が獣帝王を目指すようになったきっかけはベクだと語った。成人と同時に獣王太子となったベクは、獣王立学院を首席で卒業し、獣神ガルムの加護を受ける獣王家のしきたりに従って冒険者として王城を出たという。

冒険者としての成功
冒険者となったベクは、わずか三年でAランクに到達した。獣人族の中でも群を抜く才能と実績を備えた存在として知られるようになった。

獣王武術大会という舞台
ガルレシア大陸では、各国の腕自慢が集う獣王武術大会が開かれている。この大会は武を競う場であると同時に、領土を賭けた代理戦争の意味を持っていた。

ギルとの二度の敗北
ベクは、ブライセン獣王国の獣王家ギルに二年連続で敗れた。この時点ではギルもまだ獣王位には就いていなかった。

三度目の戦いと国家の命運
三年目の大会では、ギルが獣王に即位した状態での対戦となり、敗北すれば領土を失う状況だった。ベクはこの戦いに勝利し、アルバハル獣王国は歓喜に包まれた。

勝利と引き換えの殺し
しかしその戦いで、ベクはギルを殺してしまった。大会では死者が出ることもあるが、この出来事を境に、ベクは変わったと語られている。

急進化する政治思想
冒険者を引退して国政に入ったベクは、中央大陸の人族への報復を国家方針として掲げ始めた。同族の犠牲も厭わない政策は、次第に支持を失っていった。

内乱への道筋
現獣王が次男ゼウと末子シアに継承試練を課したことで、王位継承問題が表面化した。シアは、この流れが内乱に直結したと考えていた。

囚われの獣人
場面は変わり、薄暗い牢獄で水音を聞いて一人の獣人が目を覚ます。両手足を失い、首輪と鎖で壁に繋がれたその獣人は、獣王太子ベクだった。

シノロムの来訪
白衣を着た魔族の老人シノロムが牢を訪れ、生きているかを確かめる。ベクは殺せと告げるが、シノロムは意に介さなかった。

魔王からの召喚
看守の報告により、シノロムは魔王に呼び出される。転移陣を使い、魔王城へ向かうことになった。

異形との接触
移動の途中、巨大な目玉の魔物ギイちゃんに絡みつかれ、ひとしきり弄ばれた後、シノロムは解放された。

邪神復活の進捗
魔王と参謀キュベルは、邪神復活の準備状況を問い、シノロムは獣神ガルムの血を用いた贄を確保したと報告した。

上位魔神の帰還
修羅王バスク、ビルディガ、ラモンハモンの三体の上位魔神が帰還し、任務の完了を報告した。彼らはアレンの召喚獣を軽視しつつも、成長速度には警戒を示した。

侵攻案の却下
上位魔神はさらなる侵攻を進言したが、魔王は邪神復活を最優先とし、戦力分散を禁じた。

バスクの不満
成果が乏しいとされたバスクは、より強力な武器を求めた。魔王は条件付きで魔剣オヌバの使用を許可した。

宝物庫での邂逅
バスクは宝物庫に入り、意思を持つ魔剣オヌバと対峙する。激しい応酬の末、剣はバスクを選んだ。

ゲヘナバンドの試練
防具ゲヘナバンドはバスクの身体を締め上げたが、エルメアの加護が発動し、魔剣の目論見は外れた。

新たな狂気の誕生
武器と防具を得たバスクは、次の戦いに向けて狂気の笑みを浮かべた。

第十一話 水晶花の底に眠るもの

帝都パトランタへの帰還
ラターシュ王国での授与式を終えたその日のうちに、アレン一行はプロスティア帝国の帝都パトランタへ戻った。イグノマス宮殿への潜入組と、ラプソニル皇女と共に離宮に幽閉されていたセシルたちの双方が、滞在先へ戻らねば不自然さが増すためであった。

離宮の監視体制と「元は平和な場所」
離宮は鉄格子の扉と窓を備え、常にイグノマス配下の騎士に監視されていた。ラプソニル皇女の話では、この幽閉と監視は内乱以降の措置であり、それ以前の離宮は平穏な場であったという。

戦後を見据えた情報収集の狙い
アレンは、内乱鎮圧後もプロスティア帝国と良好な関係を築く必要があると考え、平和だった頃の帝国の情報を引き出すようセシルたちに頼んでいた。行動が制限される離宮では会話が娯楽となり、長く幽閉されていたラプソニル皇女も対話を求めていた。

離宮の女子会と地上訪問の話題
離宮のリビングでは、今日も会話の輪が続いていた。ラプソニル皇女は成人前に地上へ行ったことがあり、風や空気、匂いを上半身で感じた体験が新鮮だったと語った一方、下半身が魚であるため移動は専用の籠に頼ったと説明した。

鳥G越しの観察と皇女の血筋の推測
そのやり取りを、鳥Gの召喚獣と感覚共有していたアレンが聞いていた。ラプソニル皇女が、水の神アクアの眷属である聖魚マクリスの血を濃く引く特別な存在である可能性を、アレンは連想していた。

シアの招待と政治的な計算
シアは、ラプソニル皇女のための籠を用意し、いずれアルバハル獣王国へ招きたいと述べた。カルミンも同行を約し、ラプソニル皇女は礼を述べつつも先行きへの不安をにじませた。

ソフィーの断言と「アレンは負けない」
ソフィーは、イグノマスの時代は長く続かず内乱は失敗に終わると断言した。ラプソニル皇女がイグノマスの強さを恐れると、ソフィーは「あのような者に負けるほどアレン様は弱くありませんわ」と言い切った。

歌姫コンテストでの公開討伐案
ソフィーは、歌姫コンテストの場で、衆目の前でイグノマスを倒す案を提示した。武力衝突で帝国臣民の血が流れる事態を避けるため、監視の前で「彼だけ」を倒す必要があるという理屈が語られ、ラプソニル皇女は民に累が及ばぬなら異論はないと答えた。

皇女の常識的な不安と「金貨1000万枚」の虚構
ラプソニル皇女が気にしていたのは、アレンがイグノマスに「3か月で金貨1000万枚を稼ぐ」と約束した点であった。皇女はアレンの力を知らず、ホラが露見した場合を恐れており、ソフィーの自信を完全には飲み込めずにいた。

水晶花の花柱の発見
セシルが窓の鉄格子の向こうに光る柱状のものを見つけ、問いかけた。ラプソニル皇女は、それが水晶花の花柱であり、さらに大きくなって水晶の種子を漂わせると説明した。

水晶花の役割と破魔の力
水晶花は水の神アクアの神力で造られ、海底に光を与えると同時に、魚人を魔獣から守る破魔の力を持つという。種子は海へ流され、辿り着いた先で守護の力を発揮するよう設計されたと語られた。

輸出品「破魔のお守り」の正体
セシルが思い当たり、船を守る「破魔のお守り」をプロスティア帝国が輸出していた件を口にする。ラプソニル皇女は、それが水晶花の花弁を加工したものであり、帝国には腕の良い魔法具職人がいると明かした。

海の怪物の伝承と「水晶花の底」
セシルは「プロスティア帝国物語」にある海の怪物の話を引き合いに出し、怪物が実在するのかを問うた。ラプソニル皇女は、かつての帝都が怪物に破壊されたこと、聖魚マクリスがこの地で怪物と戦ったと伝わることを語り、怪物の復活阻止のために水晶花を巨大化させた経緯を説明した。

封印と抑止のスケール
巨大な水晶花は海の怪物の封印だけでなく、Bランク以下の魔獣を寄せ付けない力を持つという。ラプソニル皇女は、それを見守ることがプロスティア家の役目だと言い切り、誇りを宿した表情を見せた。

歌姫コンテストの意味と聖魚の来訪
花柱や種子が輝く光景は特別であり、その瞬間を見届けるようにマクリスが帝都へ来訪するとラプソニル皇女は語った。歌姫コンテストは、その来訪に合わせて開かれ、破魔の力を海底に行き渡らせる「奇跡の瞬間」だと位置付けられていた。

水晶の種子を求める行動開始
水晶花の種子を知った後、アレンとペロムスはパトランタ市街へ向かった。表向きは市場で金を稼げるものを調べる説明をし、イワナム騎士団長たちが護衛として同行した。

街の賑わいと花柱の成長
歌姫コンテスト開催が近づき、属州からの来訪者も増え、街は祭りのように賑わっていた。アレンは花柱がさらに大きくなっていると見上げ、将来的に高さ1000メートル級へ成長する見込みや、コンテストが花柱の上で行われる事情を把握していた。

魔法屋への到着と男二人の居心地の悪さ
市場で流行しているという高級な魔法屋に辿り着き、アレンとペロムスは入店した。店内の女性魚人たちの視線が集まり、男二人で来たことへの違和感を感じたアレンは、前世で女性専用車両に紛れ込んだ記憶を連想した。

水晶の種の購入と流通の説明
アレンが水晶の種を求めると、店員は水色に輝く種を二つ持ってきた。価格は一つ金貨100枚であり、花柱から放出された種を採取人が拾い、形の良いものは帝国が買い上げ、残りが市街の店へ卸される仕組みが語られた。

在庫の偏りと宮殿側の影
店主は、当店の在庫は二つのみだと述べ、宮殿関係者かと探りを入れた。アレンは役人めいた態度で会話を進め、昨年は宮殿が買い上げたため市街に出回りにくいのではないかという店主の見立てを引き出した。

造込素材としての水晶の種
アレンが種を求めた理由は、ドワーフの名工ハバラクから、造込素材として水晶の種を望まれていたことを思い出したためであった。造込によりステータス上昇やクリティカル率上昇、クールタイム減少、属性付与などの効果が恒久的に付与できるとされ、アレンは特に属性付与に惹かれていた。

宮殿倉庫に種が無い異常
アレンは宮殿の倉庫や宝物庫を探しても水晶の種が見つからず、帳簿にも痕跡が薄い点を不審に思っていた。貴族への配布や売却の可能性を考えるが、市街の商人の反応から単純な流通ではないと判断した。

耳飾りへの関心と装備拡張の発想
アレンは、魔神バスクが付けていた耳飾りが強力だと聞いており、同種の装備を求めて耳飾りコーナーへ向かった。店頭の耳飾りは攻撃ダメージや魔法攻撃ダメージ、クリティカル率、防御効果などがあり、耳飾りが新たな装備枠として軍全体の強化につながる可能性をアレンは見込んだ。

店主の“上物”と鑑定の牽制
店主は陳列棚下から箱を取り出し、7%上昇級の耳飾り三点を提示した。鑑定持ちであることを察した店主はペロムスを警戒しつつ、値踏みを促すような応対を見せた。

狙いの耳飾り二点と法外な提示額
アレンは「二つあるものを両方見せてほしい」と要求し、店主は奥へ引っ込んだ後、重厚な小箱二つを持ち出した。ペロムスの鑑定で、物理系と魔法系それぞれに10%上昇と追加ステータス上昇が付く耳飾りだと判明し、店主は二つで金貨240万枚からと言い値を出した。

帳簿で知る売却価格と交渉の構え
アレンとペロムスは、宮殿の取引帳簿から、これらが合計金貨60万枚で売却されていたことを把握していた。店主の吹っ掛けを見て、アレンはペロムスに交渉の出番を示し、ペロムスはスキルを用いて買い取り値を言い当てた。

店主の恫喝と煙の演出
店主は若さを諭すような口調で牽制し、棒状の器具で煙のようなものを吐き出し、水中を白く濁らせた。アレンはそれをタバコのようなものだと感じつつ、交渉の続きに備えた。

参加証トラブルの発生
店内では、オレンジ色の髪の女性客が耳飾り購入の際に参加証提示を求められ、提示できずに揉め始めた。警備員が背後に立ち、女性の腕を掴んで奥へ連れて行こうとし、周囲の客は不安をにじませながらも次第に買い物へ戻っていった。

アレンの着目点「参加証はチャンス」
アレンだけはその一連の流れを追い続け、参加証の偽造や確認が増えている状況を「好機」と捉えた。店主も、この時期は参加証絡みの騒ぎが年々増えていると語り、開催期特有の問題として認めた。

第十二話 歌姫ロザリナとの邂逅

価格交渉の舞台
アレンはペロムスとカサゴ面の店主(のちにカサゴマと判明)の価格交渉を眺めていた。店主の提示は金貨240万枚で、半値を期待するも簡単には動かないが、双方とも交渉を楽しむ空気になっていった。ペロムスは事前に「相手を挑発して説教させ、取引を切らせない」作戦を語っており、アレンは任せる腹である。

参加証トラブルとロザリナ拘束
店内で、先ほどアレンが耳飾りを譲ったオレンジ髪の魚人女性が購入しようとするが、歌姫コンテスト参加者は参加証提示が必須と言われ、置き忘れを理由に拒否される。女性が反発すると警備員が現れ、半ば強制的に奥へ連れて行こうとしたため騒ぎになる。

アレンの介入と“アレク”の権威演出
アレンはこの状況を「参加証偽造疑い」という流れに乗せ、鳥Fの「伝達」でイワナム騎士団長を呼び込む。騎士の圧で警備員は手を放し、女性は店外へ移動する形になった。店主はアレンを「アレク」と認識し、戦争準備絡みの貴族だと勝手に勘違いし始め、アレンはそれを利用して曖昧にあしらう。

店主カサゴマの名乗りと交渉への布石
アレンは店主の名を確認し「カサゴマ」と把握する。耳飾りが必要だと露見したことで足元を見られるのを警戒しつつ、今後も協力させる含みを持たせ、ペロムスの交渉が不利にならないよう牽制した。

ロザリナとの対面と取引の入口
店外で女性は自分を「ロザリナ」と名乗り、無実を主張しつつ強気に振る舞う。アレンは「勧めの店で話そう」と誘導し、魚人向けスイーツを頼んで場を整える。最初はロザリナが反発するが、アレンが「宮殿にコネがあるから参加できる例外を作れる」と持ちかけると、話を聞く姿勢に変わる。

目的はマクリスの聖珠
アレンの狙いは、歌姫コンテスト上位入賞の報酬である「聖魚マクリスの聖珠」である。男性が歌姫に依頼料を払い、入賞後に聖珠を譲ってもらう取引慣行があるが、複数依頼は禁止で、優勝候補はすでに契約済みになりがちだった。そこで、参加自体が難しいロザリナは“空き枠”として都合が良い存在になった。

ロザリナの事情
ロザリナは属州ミネポンタ出身で、今年は直前の通達で属州・属国の参加枠が廃止され、出場禁止にされたと語る。それでも港の騒ぎ(魔導具警報の件)の隙に管理を抜け、パトランタに潜り込んで今日まで隠れていたという。資金は盗みではなく、歌の才能で酒場などで稼いだと主張する。

条件交渉の決着
アレンは衣装や装飾品を用意し、優勝を狙わせる方針を示す。ロザリナは「3位以上なら聖珠を1つ自分が取る」条件を出し、アレンは承諾する。5位・4位なら依頼分を渡し、優勝なら追加で1つアレン側へ渡す取り決めになり、ロザリナは参加できる見通しに興奮して店内で大見得を切る。

ペロムスの成果と次の課題
鳥Fの「伝令」で、ペロムスが耳飾り2つを合計金貨120万枚で購入できたことが伝わる。店主カサゴマは予算上限に合わせてくる手強い商人であり、アレンは将来の取引相手候補として魔導書に名前を記録する。話は「次はロザリナを大会に参加させるための工作が必要」という段階へ進んだ。

特別書き下ろしエピソード① 贄と獣の血③

ベクの沈黙の3年と威圧の布告
ベク獣王太子は、宿敵ギル獣王を倒してから3年、総合優勝者の「獣王」称号を放棄し、武術大会に一度も出場しなかった。加えて「他国の獣王がアルバハルの大会に出れば、闘技場の床石を血で染める」と布告し、実際に他国獣王が参戦しない大会が続いた。国民は“守り”の意味を突きつけられる形になった。

才能資産税法の承認と、拍手の空気
獣王都バロッサの謁見の間で、ムザ獣王、二人の獣王妃アンとミア、子のベク・ゼウ・シア、貴族たちが居並ぶ中、ルプ宰相が新法「才能資産税法」の承認を読み上げた。内容は「平民のみ」を対象に、才能の星1つにつき1年の労役を課し、戦闘系はダンジョン攻略や魔獣掃討、非戦闘系は生産や築城などに従事させるというものだった。最初の拍手から一気に全員が追随するが、顔は引きつり、ため息も混じる。

反対の気配と、ミア陣営の沈黙
ムザ獣王は舌打ちの気配を察して立ち上がり、反対があるなら前に出て意見を述べよと迫る。視線の先は左側で、ミア獣王妃と彼女と同意見の貴族がうなだれて沈黙する。アン獣王妃は涼しい顔で、ゼウとシアは困惑を隠せない。そこでベクが「国家を巨大にするため必要だ」と強く押し切り、場は逆らえない空気で固まった。

シアの違和感と、ベクの加速
シアは、富国強兵の意図があっても“負担が平民だけ”なのは歪だと感じる。しかも成立までが異様に早く、急ぐ理由が見えないことが不気味だった。さらにベクはすでに「才能人頭税法」を成立させており、今回の労役まで加われば星の数次第で数年単位の拘束が生まれる。ベクは布告準備を命じたうえで、新たな法案草稿まで手にしており、止まる気配がない。

私室の密談と、ロムの“根回し”の正体
ベクは側近ケイ隊長らと私室へ戻り、そこにいた旅の薬師ロムと合流する。ロムは資金を預かって有力貴族に根回しし、ベク陣営へ取り込んでいた。ベクは反対派としてミア獣王妃一党を挙げるが、表立った反対はもう手遅れだと断じる。ロムは貴族の保身を見透かすように笑い、ベクの“次期獣王”としての立場を利用して人を動かしたことが示される。

魔王軍終結と“次の敵”への焦り
ロムは「魔王軍はいずれ5大陸同盟で滅ぶ」と断言し、勇者ヘルミオスの戦果を語る。バウキス帝国方面で魔王軍を押し返し海上で全滅させたこと、ヘルミオスが自由行動やダンジョンマスター面会まで許されていることが話題になる。ベクは内心で“魔王なき世”にギアムート帝国が力をこちらへ向ける未来を重ね、時間が残されていないと受け止める。

増税と動員へ、法の“拡大”計画
ロムの主張は「才能資産税法だけでは足りない。もっと金が要る」であり、その先として

  • 才能を持つ貴族にも課税(税を納めた事実を根拠に)
  • ゆくゆくは才能の有無に関わらず軍役へ
    という拡大を示す。菓子を食い散らかしながら語るロムに、ケイはベクの立場悪化や反対派の活発化、民衆反発の危険を挙げて怒鳴り、対策を迫る。

ロムの煽動と、ベクの選択
ロムは反対派を軽視しつつ、「3年前の危機」と「未来のギアムート帝国の脅威」を重ね、恐怖で正当化する論を組み立てる。ベクはケイに「国の未来を案じる」と告げ、ケイは謝罪して頭を下げる。ベクは“異なる意見が必要”と両者を取り込み、ロムを将来の宰相候補にまで持ち上げる。

具体策:情報戦と利権で貴族を釣る
ロムは適用範囲拡大の手として、勇者ヘルミオスの戦果を貴族に流し恐怖を煽る案を出す。さらに賛成派には「要塞建設を優先する」と約束し、海岸領の貴族を揺さぶる算段を語る。ベクは情報の正確性を求めてケイに確認を命じ、同時に“殿下の威光”を示す主力部隊の編成も進める方針を固める。ケイは了承するが、ロムへの敵意は消えていない。

適用拡大と“試練の塔”への強制送致
「才能資産税法」は数年のうちに王侯貴族へも拡大され、戦闘向きの才能持ちはバウキス帝国のS級ダンジョン「試練の塔」へ送られる仕組みに変わっていた。反対派が切り崩された背景には、王城で暗躍するロムの工作があった。

ムザの布告で継承争いが現実化
さらに数年後、ムザ獣王が予想外の布告を出す。ゼウにS級ダンジョンへ向かう「試練」を課し、獣王の器を測るというものだった。加えて東のギャリアット大陸へ向かったシアにも動きが出て、ベクは私室でロムと重い空気を共有する。ベクは焦りつつも、心のどこかで“こうなること”に安堵している自分に気づきかける。

シアの試練達成、教会まで動く
ケイが駆け込み、シアが試練を達成したと報告する。エルメア教会のクリンプトン枢機卿からグシャラ逮捕協力への謝意が届き、さらにイスタール大教皇がアルバハルへ来訪するという話まで出る。ロムはつまらなそうな顔で「次期獣王はシア」と断言し、ケイは激高する。

前例の提示と、ベクの“降りる”決意
ベクは「末子が試練を先に達成し、長子が襲撃して内乱、最終的に長子が王位を得るが悪政で第二子に奪われた」例を語る。ロムは“取るべき道は一つ”と示唆し、ケイが反発するが、ベクは驚くほど穏やかに制す。
そしてベクは、自分はシアと争わない、獣王にならなくても国が強くなればいい、器がシアやゼウなら譲ると宣言する。ここでベクの胸の安堵の正体が「継承争いから降りられるかもしれない」という逃げ道だったと示される。

ゼウが“危険な合流”をした噂
ロムは続けて、ゼウがS級ダンジョン攻略で勇者ヘルミオスと合流した噂を持ち出す。場所がバウキス帝国である以上、バウキスとギアムートの密約まで疑える、とロムは煽る。ベクは立ち上がって動揺し、ゼウが人族の勇者に誑かされたのではと疑う。
ロムは「シアもゼウも試練を達成すれば国が2つ、いや3つに割れる」と言い、ベクに“回避”を迫る。

ロムの誘導で、ベクは王位を取りにいく
ロムは「ベクが獣王になれば、後からゼウが試練達成しても無効になりうる」と示し、外堀を埋めて退位を迫る案へ進める。ケイは危険性に怒るが、ロムは受け止めず、次に“金の使い道”として他国同盟を提案する。

海底帝国プロスティアへの介入という飛び道具
ロムの案は、中央大陸侵攻用に集めた資金で、魚人のプロスティア帝国の近衛騎士団長イグノマスを支援し、帝国内の政変を起こさせることだった。新たな同盟と有利な交易条件で、援助金が何倍にもなって戻る。さらにそれが「ベクが獣王になる理由付け」になる。
ベクは「争わない」と言った自分の方針と矛盾しつつも、時間がないと自分を納得させ、ロムに交渉を任せる。ロムは“決断を読んで準備済み”と言い残して海底へ向かう。

一年後の帰還、弟妹の戦果が“格差”を作る
ロムが戻るまでの一年で、ゼウはガララ提督、勇者ヘルミオス、ローゼンヘイム王女ソフィアローネ、さらに「十英獣」と共にS級ダンジョンを攻略する。
シアは「グシャラ聖教」教祖グシャラの騒乱と戦い、邪神の化身なる魔獣の発生に対処しつつ、魚人王国クレビュールを助けながら討伐を成し遂げる。5大陸同盟会議ではムザと衝突し、帰国後ムザが次期獣王を決める会議を招集する。
一方ベクは沈黙し、ロム経由でイグノマスと連絡しつつ、重要部分はケイにも隠して準備していた。

王城の票読みで、ベクは“消えた候補”になる
会議は結論が出ず、ムザは謁見の間を閉じると言い出す。内訳は大臣の7割がゼウ推し、宰相もそこに含まれる。残る3割のうち2割は武闘派将軍の後ろ盾でシア推し。ベクは「自分を覚えているのは1割、しかも風見鶏」と皮肉に笑う。
ケイは「ミアの血を継ぐシアへの不安」も票に影響していると報告する。ここで“実績と対外協調”のゼウが主流になっている構図が固まる。

ロムの“土産”が露骨すぎる援軍
ロムはイグノマスの内乱が概ね成功し、今は皇帝になったと告げる。土産として「2隻の魔導船」と「完全武装の魚人兵3000人」を持ち帰ったと言い、ケイは唖然とする。
ベクは「力を貸すから国を取れ、ということか」と読み取るが、ロムは「彼らは最後の最後の脱出補助、陽動」と言い換える。

ベクの決断:汚名を被ってでも“内側から変える”
ケイは「争わないと言ったのに内乱はおかしい」と訴えるが、ベクは「こうなっては他に手がない。汚名を被るしかない」と腹を括る。ケイは地獄でも付き従うと答え、ベクは痛みを堪えるようにそれを見つめる。
そしてベクはロムに「策を聞かせろ」と告げ、ここから先は“王位を奪う工程表”が動き出す形で章が締まる。

謁見の間への強行突入
ベクは獣王家の紋章入り外套とアダマンタイト装備で謁見の間へ向かい、扉前の近衛騎士二名を殺害して突破した。ムザ獣王は玉座で待ち受けており、ベクが「獣王の証」を身につけていることに周囲は驚いた。

ムザ獣王の断罪と“試練”の理由
ベクが「なぜゼウとシアに試練を与えたのか」と問うと、ムザは咆哮のような笑いで場を制圧し、悲しさを残して答えた。理由は「ベクが愚か者に成り下がったから」であり、ベクが策を弄して時間を浪費し、未来を示して誰かを導く器になっていないと痛烈に断じた。ゼウとシアは試練の中で責務を果たそうと血を流したが、ベクは独りで踊っていただけだと突きつけた。

外乱の報告と、謁見の間の“二人きり”
ベクが「獣王の証」を確認し、時計の魔導具で“時間”を意識した直後、魚人の襲来と、ケイが兵を率いて城門突破し交戦中だという報告が入った。ムザはそれすら見越したように言葉を投げ、宰相らに退避を命じ、ベク相手に全力でかかると宣言した。

親子の決闘と圧倒的な実力差
ベクは先制を狙うが、ムザに腹を打ち抜かれ、蹴りで鎧を破壊されて吹き飛ばされる。ベクはフルビーストモードを発動し、死角からの攻撃や「真・強打」を繰り出すが、ムザも同じくフルビーストモードと「真・強打」で迎撃し、ベクを弾き飛ばす。ムザは差を武具の違いではなく、鍛え上げた“中身”の差として嘲った。

ロムの“丸薬”で反転、そして吸血
追い詰められたベクは、右手首の紐腕輪を引きちぎり、そこに編み込まれたロムの「丸薬」を噛み砕く。直後、ベクの速度と攻撃が激変し、ムザの拳骨を砕きながら連打で体幹を崩し、床に溝が刻まれるほどの猛攻でムザを膝立ちに追い込む。
ムザが「殺せ」と言う一方で「獣王にはなれない」と告げる中、ベクは伸びた犬歯の衝動に従い、ムザの首筋に犬歯を突き立てて血を吸った。ムザの肉体は急速に痩せ、毛が抜け、フルビーストモードも解除されるほど衰弱した。

親衛隊の突入と、ケイの“処理”
獣王親衛隊が現れるが、背後からケイ率いる私設部隊が襲いかかり親衛隊を殺害する。ケイはベクを称え、ムザはまだ息があるまま床へ下ろされる。ケイはムザの装備(ナックル、鎧、聖珠)を外して魔導袋に詰め、ベクらは混乱する王城から脱出した。

魚人の護衛、海底への逃走
発着場では武装魚人が蝟集し、魔導船で海岸の街へ移動する。夜の港から再び出航し、船が潜航すると、ベクらはプロスティア帝国へ向かう段階に入る。そこへロムが現れ、茶を勧める。ベクは薬の効果で力が出たと述べ、「獣王の証」を奪取したと明かす。

“都合が良すぎる”違和感とロムの正体
ベクは、ムザの発言やホバ将軍の不在、ゼウの動きまで含めて「自分に都合が良すぎる」と気づき、ロムの都合ではないかと問い詰める。ロムはニタつき、ベクが茶を飲む様子を執拗に見つめた直後、白煙を噴き出して変身し、魔族の研究長官シノロムとして正体を現した。
シノロムは、ベクが“濃いガルムの血”を継ぐ存在であり、さらにムザの血を取り込んだことで準備が完成したと語り、目的が邪神復活(魔王軍側の企み)だと示した。

ケイの突撃と即死
拘束されたように動けないベクの横で、ケイは「閃光十字剣」を発動して襲いかかる。しかし異形の魔神ラモンハモンが「ブレイクハンズ」を放ち、続く「豪魔爆殺拳」でケイの剣を砕き、頭部を吹き飛ばして殺害した。シノロムは本来ケイを実験体にしたかったと口にし、ラモンハモンは加減できなかったと応じる。

ベクの神技“獣神化”と無惨な敗北
ベクは憤怒し、神技を発動して獣神化し、獣の化身へ変貌する。しかしラモンハモンはそれを「止まって見える」と評し、四腕でベクの四肢を掴んで引きちぎった。部隊長たちも半殺しにされ、シノロムはベクを「邪神に捧げる供物」として生かすよう命じる。
ベクは血の海の中で謝罪を口にし、ケイや部隊の惨状を前に意識を手放して終わる。

特別書き下ろしエピソード② ヘルモード外伝 ~勇者ヘルミオス英雄譚~ ④ハウルデンの街編

薄暗い廊下での迷子
ヘルミオスは記憶にない巨大な石造りの建物の廊下を歩き、教会のような雰囲気から故郷コルタナ村の教会とドロシーの家を連想した。光の漏れる半開きの扉を見つけ、ためらいながら近付くと、中から「早く入れ」と声を掛けられ、勢いよく入室した。

エルメアと第一天使メルスの対面
部屋は白一色で殺風景であり、執務机と長テーブル、ソファーが置かれていた。執務机には亜麻色の髪の若い天使が座り、背には白い巨大な羽、頭上には光輪が浮かんでいた。もう一人は白髪で白いローブの男で、ヘルミオスはその顔が教会の創造神エルメア像に酷似していると気付いた。心中の推測をエルメアに肯定され、天使が第一天使メルスであることも明かされた。

魂だけの招待と現実の身体の映像
メルスはヘルミオスを呼んだ理由として、エルメアから授けられた才能について話すと告げた。鍵盤操作で白く光る壁が現れ、そこにヘルミオスの身体が映し出された。ヘルミオスは馬車でドロシーの膝枕で眠っており、ガッツンとエナが心配していた。メルスは「ここには魂だけで来てもらっている」と説明し、ヘルミオスは才能狩りを倒した後に気絶して搬送中だと理解した。

勇者の才能と魔王の脅威
メルスは、才能狩りのような試練が今後も現れるため慎重さが必要だと諭しつつ、逃げずに向き合った点は認めた。エルメアは、ヘルミオスに世界を救う可能性を持つ「勇者」の才能を授けたと述べ、魔王が魔族を率いて神を信じる種族を滅ぼそうとしていると説明した。ヘルミオスの村も滅び得ると告げられ、両親の危機を知ったヘルミオスは話を聞く覚悟を固めた。

エクストラスキル「天稟の才」と選択の重み
メルスは勇者の才能がエクストラスキル「天稟の才」を持ち、他者のスキル使用を見て習得できると説明した。ヘルミオスは母を助けるために回復魔法を真似てヒールを使えた経験を思い出し、説明と一致すると理解した。一方で取得できるスキルが4つまでであるため「選択」が必要だと告げられ、ルールの説明が始まった。

天稟の才のルール提示と理解不足
メルスは、スキル視認で取得できること、取得直後はレベル1で育成可能なこと、取得枠は4つで5つ目取得時は捨てること、捨てたスキルは再取得できるがレベル1に戻ること、条件でスキル「英雄」を得て強化できること、「天稟の才」は1日1回のみであることなどを示した。ヘルミオスは用語の意味が分からず混乱し、内容が頭を素通りする感覚を覚えた。

鑑定の追加と仮想窓の付与
エルメアは理解を助けるため、「鑑定」を取得可能スキルに追加し、メルスにヘルミオスへ必要な力を与えるよう命じた。メルスの操作で半透明の板「仮想窓」が出現し、念じるだけで出し入れでき、鑑定と紐付けたと説明された。仮想窓は視線に追従し、指が抵抗なく通り抜ける性質を持った。

ステータス表示と幼さの限界
仮想窓にはヘルミオスのステータスが表示され、年齢5、職業は勇者、エクストラに天稟の才、スキル欄に回復や爆砕拳、鑑定などが並んでいた。ヘルミオスは名前以外が読めず、エルメアは学ぶよう促し、仮想窓のメモ機能に天稟の才のルールを記録しておくと告げた。

現実復帰とハウルデン到着
衝撃を受けた直後、メルスは馬車が街に到着したと告げ、ヘルミオスは仰向けに寝かされた状態で目覚めた。視界にはドロシーが映り、ガッツンとエナも声を掛け、ヘルミオスは起き上がる。馬車はハウルデン領の領都の門で停車しており、夕日に染まる街並みが見えた。

才能塾への移送と目的説明
マキシル騎士団長が現れ、ヘルミオスに礼を述べた上で、今日から「才能塾」で暮らすと告げた。才能塾は才能を授かった子供が力の使い方と生きるための知識を学ぶ場所であり、いずれ学園へ進むと説明された。騎士団長は子供たちを集め、才能狩りが帝国内各地に出現するため、家族や村を守る目的で各地の街に才能塾を設置し、子供たちを保護していると説いた。

才能狩りの引き渡しと裏切りの発覚
騎士団長は兵士を呼び、捕らえた才能狩り一味を牢へ移送するよう命じた。引きずり出された中にザイン副騎士団長が混じっており、兵士たちは驚いた。騎士団長はザインが才能狩りと通じて行き先を漏らしていたと説明し、同様の裏切り者がいる可能性にも言及した。

ムハト塾長との引き継ぎ
一行は大きな建物へ向かい、杖をついた高齢のムハト塾長が出迎えた。塾長は無事を喜び、裏切り者の件は騎士団長に任せ、子供たちは自分が預かると告げた。騎士団長と騎士たちは礼を述べて去り、子供たちとムハト塾長だけが残った。

安堵の到着と子供らしい反応
ムハト塾長は中へ案内し、部屋割りは明日、まず休んで夕飯にすると告げた。ガッツンは飯に歓喜し、エナは塾長を怖がってドロシーの背後に隠れたが、塾長は笑って受け流した。ヘルミオスは、ようやく落ち着ける場所に辿り着いたと確信した。

寮の朝と年長者同室の仕組み
才能塾に入って三日目の朝、ヘルミオスはガッツンの豪快ないびきで起こされ、同室の年長者二人も巻き添えになった。ヘルミオスはガッツンを起こそうとして騒がしくしてしまい、年長者に注意され謝罪した。年少の新入りは、生活に慣れた年長者と同室にされ、生活指導とトラブル対応を受ける仕組みであった。

才能塾の施設と朝食の風景
ヘルミオスとガッツンは男子寮を出て中庭を通り、女子寮の前で折れて食堂へ向かった。敷地には食堂、授業用校舎、講堂、さらに牧場と畑があり、街を囲む塀の方まで続いていると教えられていた。食堂では子供たちが三列に並び、トレイと食器を取り、パンとスープを受け取った。スープは刻んだ野菜片が入る程度で質素だったが、ガッツンは多く食べたがり、係に頼んで少し大きいパンに替えてもらって満足した。

ドロシーとエナとの合流
広い食堂でヘルミオスはドロシーとエナを見つけ、手を振られて同じテーブルに座った。ガッツンは朝食抜きにならずに済んだことを誇り、ヘルミオスは硬く乾いたパンをスープに浸して食べる工夫をしていた。エナは嬉しそうに笑い、髪はドロシーの櫛で整えられて艶を保っていた。ヘルミオスは、エナが以前どれほど貧しい暮らしをしていたのかを思い、内心で気に掛けた。

授業開始とムハト塾長の指導
鐘が鳴り、四人は校舎へ向かった。授業は年齢ではなく在籍年数で分けられ、ヘルミオスたちは一年目として基礎知識の学習に入った。ムハト塾長が教壇に立ち、帝国の文字の学習を始めるが、ガッツンが机に突っ伏して寝てしまい叱られ、教室は笑いに包まれた。ヘルミオスは恥ずかしがりつつも、エナが笑っているのを見て安堵した。

休憩時間の努力と覚悟
授業の合間、他の子供が雑談や手洗いに行く中で、ヘルミオスは文字の練習を続けた。エルメアとメルスに交わした約束を思い出し、魔王を倒して両親を守るためには、まず読み書きを身につける必要があると自分に言い聞かせた。

脱線する授業と“来客”の知らせ
次の授業はハウルデン領内の地理の話から始まったが、塾長の思い出話へ逸れ、角ウサギの料理の話で空腹を煽ったところで、ガッツンの腹が鳴り、再び笑いが起きた。その直後、廊下から複数の足音が近づき、扉が開いて初老の男が「ヘルミオス」を探していると告げた。ムハト塾長は相手を「子爵殿の使い」と見抜き、ヘルミオスに行くよう促した。

子爵家の馬車での移動と着替え
廊下には鎧姿の騎士も控えており、ヘルミオスは初老の男に連れられて校舎を出た。そこには馬車が待っており、ヘルミオスは乗り込むとすぐ走り出した。男はハウルデン子爵のもとへ連れて行くと告げ、失礼のないよう服に着替えるよう指示した。服には妙な匂いがあり、後から長期保管のかび臭さが出たため、匂い消しを使っていたと分かった。

異様な人出と街の空気
馬車の窓外では昼前の街が見たことのないほど人で溢れていたが、祭りの活気ではなく、人々は疲れたようにうつらうつらしていた。ある通りを抜けると急に人が減り、庭付きの大きな家が並ぶ士爵家の居住区へ入った。さらに巨大な門が開き、馬車は噴水を回って大きな館に到着した。

館での案内と執事長バートン
ヘルミオスは執事長バートンに迎えられ、吹き抜けの玄関と大階段、使用人の会釈が続く廊下を通って当主のもとへ向かった。ヘルミオスが屋敷の広さを口にすると、バートンは誇らしげに笑い、才能塾での暮らしや困り事を尋ねた。バートンはムハト塾長と宮殿の同部署で働いたことがあると語り、塾長に言いにくいことがあれば自分に相談するよう勧めた。

ハウルデン子爵夫妻との昼食
豪華な扉の先は食堂であり、当主は忙しいため昼食の場で話すと告げた。そこには子爵アーノルド=フォン=ハウルデンと妻シャーナが座っていた。シャーナはヘルミオスを可愛いと評し、当主はヘルミオスが男児か確認し、ヘルミオスは少女に間違われがちだと答えた。

流入民の増加と領内の緊張
子爵は執事長と、村や町を追われて領都へ流れ込む者が増えている状況を話し合い、移動制限の検討まで口にした。シャーナは可哀そうだと反対し、執事長が話を収めた。子爵は詫びとして食事を勧め、給仕が運び込んだ料理はヘルミオスが見たことのないご馳走で、パンも山ほど用意されていた。

「神託の子」と父ルーカスの話
夫妻は辺境伯が語った「神託の子」に触れ、マナー教育や、寄り親であるアークティカ辺境伯に会わせる話をした。さらに子爵は、ヘルミオスの父ルーカスを知っており、一緒に戦った仲だと明かし、ルーカスが腕を失ったのもその戦いだと語った。ヘルミオスは父の話に驚き、メルスが言った「魔王」との戦いかを問い、魂だけ呼ばれてメルスと会ったと説明した。夫妻は動揺し、子爵は神託が真実だったと受け止め、子爵夫人は泣きながら戦争の終わりを願う言葉を漏らした。

マキシル騎士団長の報告と尋問の話
そこへマキシル騎士団長が入り、ザイン副騎士団長が口を割らないことを報告した。子爵は厳しい口調で責めを強める意向を示したが、夫人はザインの命だけは助けてほしいと訴え、子爵も当面は牢で反省させる流れに落ち着いた。

特別書き下ろし。 ヘルモード外伝 4.5話 町外村からやってきた無法者たち

帰路の停滞と街の沈んだ空気
ヘルミオスを乗せた馬車は才能塾へ戻る途中、貴族街を抜けて大通りに出たあたりから、騎士の護衛が付いたせいで逆に進みが遅くなった。商店が並ぶ通りには人が多いのに活気がなく、皆が空を避けるようにうつむいて歩いていた。バートン執事長は送迎と護衛が“気遣いの空回り”になっていることを詫び、ヘルミオスが友人への土産としてパンと果物のバスケットを抱えていることに触れた。

自警団の暴力と「町外村」への敵意
通りから罵声が上がり、ヘルミオスが覗くと、食器店の軒先で自警団の男二人が、ゴザに這いつくばる移住者の家族を怒鳴りつけていた。男たちは相手を「町外村」から来た無法者だと決めつけ、外壁の隙間から侵入したのだろうと責め、外壁を傷つける行為が魔獣侵入につながると脅した。バートンは、移住者増加で治安が悪化し、自警団が結成されたこと、無許可で侵入する者や外壁に穴を開ける者がいると説明した。

娘が掴まれ、ヘルミオスが介入する
年下の娘が自警団員に腕を掴まれ引き寄せられ、泣き声が上がった瞬間、ヘルミオスは迷いを捨てて馬車を飛び出した。人波をかき分けて割って入り「やめてよ」と叫ぶと、年上の娘が走り出して自警団の腕に飛びつき、妹を取り返した。もう一人の自警団員が棒で殴ろうとしたため、ヘルミオスは棒に手を伸ばし、突きを止め、さらに振り下ろしも片手で受け止めて動きを封じた。

棒をへし折る怪力と“貴族の紋章”の効力
自警団員が怒鳴って力任せに棒を振るうが、ヘルミオスは両手で棒をへし折り、片方はつんのめり、片方は尻餅をついた。そこへバートン執事長が武装した騎士を連れて現れ、「そこまでです」と止める。自警団員は執事長の襟のハウルデン家の紋章に気づき、顔色を変えた。バートンは「子爵の客人が手助けした」と体裁よく収め、二人に“別の場所で任務を続けろ”と促し、彼らは謝罪しながら逃げ去った。

許可証の確認と退去命令
バートンは移住者一家に許可証の有無を尋ね、母親が首を振ると、騎士に「街の外へ連れて行け」と命じた。ヘルミオスは「酷いことしないで」と抗議するが、バートンは町の法は多くの住民を守るためにあり、事情だけで法を曲げれば秩序が崩れると静かに言い切った。ヘルミオスは幼さゆえに、法と事情のどちらも切り捨てられず言葉を失った。

執事長の妥協案と教会への導線
ヘルミオスが小さな子の存在を訴えると、バートンはため息の後、許可証発行の手続きを自分が行うと告げた。さらに一家には、許可証が出るまで通りの中央の教会へ行き、移住者を受け入れて人手不足の教会で働くよう指示した。両親は顔を上げて感謝し、姉妹もヘルミオスに礼を言った。

土産の分配と一家の窮状
ヘルミオスは一度馬車へ戻り、持っていたバスケットのパンと果物を「みんなで食べて」と一家に渡した。母親は泣き始め、父は村がゴブリンに襲われ、逃げ延びた後はほとんど飲まず食わずだったと語った。ヘルミオスは父の足が添木で固定されていることに気づき、両親が傷だらけであると初めて理解した。

回復魔法と「奇跡の子」の確信
ヘルミオスは父の足元にかがみ込み、「ヒール」で傷を癒した。バートン執事長はその光景を見つめ、「確かに『奇跡の子』ですね」と呟き、頬の涙を拭った。

電子書籍特典 オルバースの役割と威風凛々

砂漠越えの旅とオルバースの初めて
ダークエルフの里ファブラーゼの王オルバースは、Aランク冒険者パーティー「威風凜々」に加わり、生まれて初めて里の外へ出た。ネネビーがゴーレムを砂漠移動用のキャタピラー形態に変えたことで、昼夜を問わず進軍でき、1週間で砂漠の終端が見え始めるまで北上した。オルバースは砂漠を抜ける瞬間を「1000年で初めて」と自覚し、外の世界の広がりを実感した。

交易拠点の村と入村交渉
川と大橋、巨大な門を備えた大きな村に到着した一行は、ここが大陸間交易の要所だと推察した。グレッサの助言で、オルバースはハイダークエルフの特徴をフードで隠す。橋の番兵は少人数の来訪者に警戒し槍を向けるが、マッカランが冒険者だと説明し、冒険者証を提示したことで通行を許可された。マッカランは番兵と軽口を交わし、酒場や宿の場所を聞き出し、礼として奢ると約束して場を和らげた。

パーティー内の役割分担の輪郭
村に入るとイスタールが即座に役割を振り分け、ヨゼとグレッサを市場での水と食糧調達へ、イスタールとネネビーは薬屋へ向かい、オルバースも同行するよう求めた。オルバースは彼らの動きから、各自が自然に担っている役割があることに気づき、後にそれが作戦指揮、会計、調達、移動や料理などに整理されるのだと知る。

オルバースの“護衛役”と精霊索敵
旅の途中、サンドワームに襲われゴーレムが損傷した出来事があり、以後オルバースは日中に甲板へ出て精霊魔法で周囲を索敵し続けていた。危険を未然に防ぐ役回りを自ら買って出たことで、パーティーの行軍を支え、ネネビーからも労いを受ける。

薬屋での補給と新たな依頼の火種
薬屋では店じまい中の老婆が応対し、魔力回復薬や解毒剤などを購入する。老婆は近隣に猛毒の魔獣マダラキングスネークが出るため、解毒剤を残してほしいと訴え、毎年犠牲者が出ていると語った。イスタールは自分たちなら対処できる可能性があると言い、オルバースが「明日出発」との予定を指摘しても、ネネビーはイスタールが放っておけない性分だと一蹴した。

“食”で動くドワーフとオルバースの提案
宿へ向かう道中、ネネビーはマダラキングスネークの蒲焼が美味いと目を輝かせ、討伐への意欲を見せる。居場所が不明という課題に対し、オルバースは「知っている者を探す」と発想し、闇の粒子と子供の笑い声を伴う能力で探索役を使おうとする。しかしイスタールは「今回は必要ない」と言い、別の手段に自信を見せたことで、オルバースは自分の想像を超える解決法への期待を覚える。

酒場が情報網になる瞬間
酒場に着くと、マッカランが番兵たちと大騒ぎしており、店外にも酔客が溢れていた。マッカランはネネビーをからかい、ネネビーのドロップキックで吹き飛ばされるが、逆に喝采で場はさらに盛り上がる。マッカランは武勇談を語り始め、人々が酒を酌み交わしながら熱心に聞き入る“人を巻き込む力”を見せた。

オルバースが得た役割の手応え
イスタールは、この賑わいの中なら、魔獣の居場所を知る村人を自然に見つけ出せると示し、それが自分の想定していた方法だと明かす。オルバースはマッカランの影響力を認め、イスタールにも導く器があると評する。そこへ物資調達を終えたヨゼとグレッサが合流し、イスタールは酒場内で情報収集を進める方針を固める。オルバースは、自分もこのパーティーの中で“役割”を掴み始めた感覚を得た。

ヘルモード 9巻 レビュー
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ヘルモード 11巻 レビュー

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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