小説「ふつつかな悪女ではございますが: 9 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」感想・ネタバレ

小説「ふつつかな悪女ではございますが: 9 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」感想・ネタバレ

ふつつかな 悪女で はございますが 9巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

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どんな本?

『ふつつかな悪女ではございますが: 9 雛宮蝶鼠とりかえ伝』は、後宮を舞台に繰り広げられる複雑な策略と陰謀、そして友情がテーマの歴史ファンタジー作品である。
この巻は、シリーズ全体の重要な転換点となり、登場人物たちの運命が大きく動き始める。

物語の中心となるのは、詠国(えいこく)後宮に生きるヒロインたちの生存競争である。
特に玲琳(れいりん)と朱慧月(しゅけいげつ)の二人が、入れ替わりの術という禁忌の道術を使い、様々な陰謀に巻き込まれながらも、困難な状況に立ち向かっていく。
彼女たちは、国の最高権力者である皇帝・弦耀(げんよう)と対峙し、過去の因縁に挑むことになる。

この巻では、二十五年前の悲劇が明かされ、弦耀が兄である護明(ごめい)を失った背景や、その復讐に燃える姿が描かれる。
また、玲琳と慧月は皇帝に自分たちの存在を認めさせるために、命がけで策を講じる。
その過程で、友情や信頼が深まり、彼女たちはさらに成長していく。

この物語の魅力は、緻密に描かれたキャラクターたちの心理描写や、巧妙に張り巡らされた陰謀、そして意外な展開にある。
主人公たちが力を合わせて困難を乗り越える姿には、読者も共感を覚えるだろう。特に、慧月の成長や玲琳との絆は、読者の心に深く響くものである。

『ふつつかな悪女ではございますが』シリーズをまだ読んでいない人にも、宮廷を舞台にした緊張感あふれるドラマや、女性たちの友情と決断の物語が詰まったこの作品をぜひおすすめしたい。

読んだ本のタイトル

ふつつかな悪女ではございますが : 9 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~
著者:中村颯希 氏
イラスト:ゆき哉  氏

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あらすじ・内容

大逆転後宮とりかえ伝、第五幕「道術我慢の鎮魂祭」堂々決着! 『慈粥礼』を執り行うため、入れ替わった姿のまま国境沿いの地・丹關までやってきた玲琳たち。アキムの凶行もはねのけ形勢を逆転させた一行はこれまで隠されていた皇帝・弦耀の情報を得て、ついに反撃の狼煙を打ち上げる! 問題解決の鍵は、『入れ替わりの術』、そして『二十五年前の因縁』。国の最高権力者である弦耀に、禁忌とされてきた道術を、そして慧月自身を認めさせるため玲琳は壮大な計画を実行する――! 「わたくしの大好きなほうき星は、国を滅ぼす凶兆などではなく、人々に幸福を授ける瑞兆です」絆と信念を守る第9巻。 

ふつつかな悪女ではございますが: 9 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~

感想

本巻は、詠国後宮での複雑な権力闘争と復讐劇が大きな転換点を迎える巻であった。

玲琳たちは入れ替わりの術を駆使し、国境の地・丹関で皇帝弦耀との対決に挑んだが、、。

皇帝弦耀は長らく兄護明の死を悔い、彼の魂を奪った術師への復讐に燃えていたが、その裏には深い愛情と苦しみがあった。

弦耀の過去や兄、護明との絆、そして朱慧月と玲琳が力を合わせて挑む壮大な計画を中心に物語は展開し、ついにその因縁に決着がついたのであった。

この巻では、物語の核心が描かれ、登場人物たちの人間関係が一層深まったことが印象的であり。

特に、皇帝弦耀が抱える苦悩と、兄、護明への思いが物語の大きな軸だと感じた、その永年の葛藤が胸を打つ。
彼の冷徹な表情の裏にある深い悲しみが描かれ、新たな視点を与えてくれた。
また、朱慧月と玲琳の絆もさらに強固になり、彼女たちが互いに助け合いながら前に進んでいく姿が感動的であった。
って、お互いに友達だと言ってなかったのかよ。
奥ゆかし過ぎるw

エピローグで、玲琳が倒れる場面は、彼女の身体の状態への不安を抱かせ、次巻への期待を高める一方で、物語全体に不穏さを残している。

彼女の運命がどのように描かれるのか、非常に気になるところであった。

この巻で大きな節目を迎えたことから、次の新展開への期待がますます膨らむ9巻であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察

弦耀の復讐

『ふつつかな悪女ではございますが』の第8巻から第9巻にかけて描かれる皇帝・弦耀(げんよう)の「復讐」は、彼の冷酷さの根源であり、25年間という途方もない時間をかけて追い求め続けた悲願である。

その復讐の背景から結末までの全貌を解説する。

1. 復讐の背景:最愛の兄・護明の死(25年前の悲劇)

弦耀の復讐の目的は、帝位を巡る権力闘争ではなく、最愛の兄である皇太子・護明(ごめい)の無念を晴らし、彼の「体」を取り戻すことであった。

  • 幼少期、周囲から孤立していた弦耀に唯一優しく接し、幾度も彼を救ったのが護明であった。しかし、護明は弦耀をかばって毒矢を受け、視力を失ってしまう。
  • 25年前の「十星奪嫡」の最中、日蝕の日に、父帝にけしかけられた術師・董(とう)によって、禁忌の術「入れ替わり」が行われる。護明の体は術師に乗っ取られ、護明の魂は術師の体に入れられたまま、最期に朝の光景を見つめながら命を落とした。
  • 弦耀は偶然その現場に遭遇し、兄の理不尽な死に激しく嘆き悲しみ、体を奪って逃亡した術師への復讐を誓ったのである。

2. 25年にわたる執念と「術師・董」の追跡

護明の体を奪った術師・董は、人々の生気を吸い取って干からびた死体を残しながら、25年間逃亡を続けていた。

  • 弦耀はこの痕跡を追い、術師を捕らえて処刑することに異常なまでの執念を燃やし続けてきた。
  • 第8巻の「慈粥礼」で雛女たちを過酷な環境に送ったのも、この術師(董)を誘い出し、捕らえるための冷酷な罠であった。

3. 玲琳たちとの共闘と「極陰日」の決戦

弦耀は自らの力だけで復讐を果たそうとしていたが、彼に入れ替わりの秘密を見破られた黄玲琳と朱慧月が、彼に協力を申し出る。

  • 弦耀は初めこそ彼女たちを疑っていたが、玲琳の「復讐ではなく協力を通じて状況を改善できる」という説得を受け入れ、共に術師を捕らえる策を練ることになる。
  • 極陰日(日蝕の日)、術師の董は自らの崩壊しつつある体を捨て、新たな雛女の体を奪おうと行動を起こす。
  • 隠密頭領のアキムが董を誘導し、玲琳が囮となって彼を凍った湖の上へと誘い込んだ。

4. 復讐の成就と「最も残酷な罰」

湖の中央に董をおびき寄せたところで、仕掛けられていた爆弾が作動し、氷が砕けて董は水中に沈められる。

  • 董は日蝕に乗じて魂を抜け出し新たな体を奪おうとするが、玲琳が住民たちに教え込んでいた「鎮魂歌」によって魂が体に戻されてしまう。さらに、あらかじめ血を練り込んで作られていた「腕紐」の罠により、董の魂は完全に封じ込められた。
  • こうして、25年の時を経て護明の体は無事に引き上げられる。弦耀は冷え切った兄の体に膝をつき、遅れたことを詫びながら涙を流し、兄が望んでいた陽楽丘へと彼を密かに埋葬して祈りを捧げた。
  • 一方、護明の体を奪い続けた術師・董の魂は「痰壺」に封じ込められ、地下牢の最奥に繋がれた。弦耀によって夜な夜な甚振られるという、死よりも過酷で屈辱的な末路を迎えることになる(ただし、その後密かに皇后・絹秀の手によって別の痰壺とすり替えられるという、さらなる皮肉な結末が描かれている)。

まとめ

弦耀の復讐は、国を巻き込むほどの冷酷な執念であったが、最終的には玲琳たちの機転と協力によって果たされ、彼自身の心にもようやく「晴れやかな朝」が訪れることとなったのである。

護明皇子の悲劇

『ふつつかな悪女ではございますが』における「護明(ごめい)皇子の悲劇」は、現在の皇帝である弦耀(げんよう)の冷酷な人格と復讐心の根源となった、25年前の痛ましい事件である。

護明皇子の人物像と彼が見舞われた悲劇の全貌を解説する。

1. 護明皇子という人物と弦耀との絆

護明皇子は、幼少期から聡明でありながら、周囲から孤立し「木彫り皇子」と揶揄されていた弟の弦耀を唯一気にかけ、優しく接していた人物であった。

  • 弦耀が14歳の時、他の皇子(第九皇子・矢勇)が差し向けた刺客に襲われた際、護明は身を挺して弦耀を庇い、毒矢を受けて視力のほとんどを失ってしまう。
  • この事件を機に、弦耀は自らの仮面を脱ぎ捨て、生涯をかけて兄を支えようと決意した。

2. 失明後の孤立と父帝の裏切り

視力を失った護明は廃嫡こそ免れ、黄家の黄麒宮で穏やかに暮らしながら陽楽丘で笛を奏でる日々を送っていた。しかし、弦耀は兄が本当に望んでいたのは、ただ日差しを楽しむことではなく「治めるべき国の光景」を見ることであったと気付いていた。

  • 護明が失明してから5年が経過すると、他の皇子たちは彼を排除しようと牙を剥き始める。
  • 彼らは護明を悪者に仕立て上げて父帝に讒言を吹き込み、ついには父帝自身もその言葉を信じ込むようになってしまった。

3. 日蝕の日の悲劇(25年前の「十星奪嫡」)

そして鎮魂祭の当日(日蝕の日)、最大の悲劇が起こる。

  • 父帝は、兄皇子たちの言葉を信じ、術師(董)の術が本物か試すという名目で、あろうことか実の息子である護明の暗殺を命じた。
  • 陽楽丘で術師に襲われ、脚を切られて苦しんでいた護明のもとへ弦耀が駆けつけ、怒りに任せて術師を斬り伏せる。しかし、倒れた術師が発した言葉により、弦耀は信じがたい現実に直面する。
  • 禁忌の道術「入れ替わりの術」によって、術師と護明の魂はすでに入れ替わっていたのである。護明の健康な体は術師に乗っ取られ、護明自身の魂は術師の崩れゆく体に入れられたまま、最期に朝の光景を見つめて息絶えた。

4. 25年越しの救済と安息

この理不尽で残酷な死を目の当たりにした弦耀は、兄の体を奪い逃亡した術師への狂気とも言える復讐心を燃やし、25年間追い続けることになる。

  • そして第9巻の極陰日、玲琳や慧月たちの協力による決死の作戦の末、氷の湖に仕掛けられた爆薬と鎮魂歌、そして「腕紐」の罠によって術師・董の魂は完全に封じ込められた。
  • 25年の時を経て、護明の体はようやく引き上げられる。弦耀は冷え切った兄の体に膝をつき、遅れたことを詫びながら涙を流した。
  • その後、護明の遺体は彼が生前に望んでいた通り、光に満ちた「陽楽丘」へと密かに埋葬され、弦耀から鎮魂の笛の音が捧げられた。

護明皇子の悲劇は、権力闘争の醜さと道術の恐ろしさを象徴する出来事であったが、長い時を経てようやくその魂と体は安息を得ることとなったのである。

術師董の封印

『ふつつかな悪女ではございますが』の第9巻における最大のクライマックスである「術師・董(とう)の封印」は、皇帝・弦耀(げんよう)の25年にわたる復讐が成就し、玲琳たちの知略が光る重要なエピソードである。

その背景と、封印に至るまでの詳細な流れを解説する。

術師・董と皇帝・弦耀の因縁(背景)

術師・董は、25年前の日蝕の日に行われた次期皇帝争い「十星奪嫡」において、禁忌の道術「入れ替わりの術」を用い、弦耀の最愛の兄である皇太子・護明(ごめい)の体を奪って逃亡した張本人である。

  • 弦耀は、兄の体を奪い、人々の生気を吸い取って生き延びてきたこの術師に対し、25年間異常なまでの復讐心を燃やし、その行方を追い続けていた。

極陰日の決戦(罠への誘導と爆破)

極陰日(日蝕の日)、逃亡生活によって体が限界を迎えていた董は、自らの崩壊しつつある体を捨て、新たな雛女の体を奪うことを決意し行動を起こす。

  • 罠の展開: しかし、玲琳や慧月、そして皇帝の隠密たちはすでに周到な罠を張っていた。隠密頭領のアキムが董を誘導し、玲琳が囮となって彼を凍った湖の上へと誘い込む。
  • 爆破: 董は湖を渡る途中で罠にかかったことに気づき逃げようとするが、その瞬間、川の氷を砕くためにあらかじめ仕掛けられていた爆弾が作動し、氷が激しく砕け散って董は水中に沈められた。

「鎮魂歌」と「腕紐」による魂の封印

水中に沈んだ董は、日蝕の力に乗じて自らの魂を抜け出させ、新たな体を奪おうと最後の悪あがきに出る。

  • 鎮魂歌: しかし、玲琳が事前に地元の住人たちに教え込んでいた「鎮魂歌」が一斉に歌い上げられたことで、董の魂は強制的に体へと引き戻される現象が起きた。
  • 腕紐の罠: さらに董は、あらかじめ血を練り込んで作られていた「腕紐」を身に付けた雛女の体を狙っていたが、これが決定的な罠となり、彼の魂は完全に封じ込められることになる。
  • 結末: これにより、25年間奪われていた護明の体はようやく無事に引き上げられ、弦耀の元へと戻った。

封印された魂の末路と「痰壺のすり替え」(まとめ)

完全に封じ込められた術師・董の魂は、なんと「痰壺」の中に納められ、地下牢の最奥に厳重に鎖で縛られることになる。彼はそこで、長年の恨みを晴らす皇帝・弦耀によって夜な夜な甚振られるという、死よりも過酷で屈辱的な罰を受ける末路を迎えた。

しかし物語のエピローグでは、詠国皇后・黄絹秀が密かに地下牢を訪れ、董の魂が入った痰壺を用意していた同じ形の別の痰壺とすり替えて持ち去るという、さらなる皮肉で不穏な展開が描かれている。

このように「術師・董の封印」は、25年にわたる皇帝の執念が結実した劇的な瞬間であると同時に、後宮の闇の深さと新たな波乱を予感させる、本作屈指のクライマックスとなっている。

キャラクター紹介

絹秀

詠国の皇后である。皇帝に対して複雑な感情を抱く。

・所属組織、地位や役職

 詠国の皇后。

・物語内での具体的な行動や成果

 霊廟でふて寝をしていた。皇帝と皇太子の不在時に政務を代行した。地下牢に忍び込み、術師の魂が納められた痰壺をすり替えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 皇帝から玉璽を託されている。

和玉

皇后に仕える女官である。職務に忠実な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職

 女官。

・物語内での具体的な行動や成果

 霊廟で寝ていた絹秀を起こした。絹秀が政務を逃れていることを咎めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

朱慧月

朱家の雛女である。玲琳を心配して怒りをぶつけることがある。

・所属組織、地位や役職

 朱家の雛女。

・物語内での具体的な行動や成果

 アキムから皇帝の事情を聞き出した。玲琳と和解して術師を捕らえる策を練った。村人に鎮魂歌を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 黄玲琳と体が入れ替わっていたが、終盤に元の体に戻る。

アキム

隠密の頭領である。皇帝の弦耀と行動を共にする。

・所属組織、地位や役職

 隠密の頭領。

・物語内での具体的な行動や成果

 慧月たちに護明皇子と術師の過去を語った。安基に扮して董を湖に誘導した。陽楽丘で笛を埋めるのを手伝った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 弦耀と友人関係を築く。

護明

弦耀の兄である。かつて皇太子であった。

・所属組織、地位や役職

 皇子、元皇太子。

・物語内での具体的な行動や成果

 幼少期の弦耀を何度も助けた。暗殺未遂事件で視力を失った。術師に体を奪われて死亡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 遺体は陽楽丘に埋葬された。

黄玲琳

黄家の雛女である。慧月との友情を大切にしている。

・所属組織、地位や役職

 黄家の雛女。

・物語内での具体的な行動や成果

 朱慧月を演じて弦耀の剣を受け止めた。弦耀に術師を捕らえる策を提案した。元の体に戻った後、突然体調を崩して倒れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 朱慧月と体が入れ替わっていたが、後に元の体に戻る。

冬雪

女官である。玲琳と慧月の関係を好ましく思っている。

・所属組織、地位や役職

 女官。

・物語内での具体的な行動や成果

 崖下に落ちた駕籠から薪や藁を回収した。景行から怪我の治療薬を受け取った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

黄景行

武官である。冬雪を手助けする。

・所属組織、地位や役職

 武官。

・物語内での具体的な行動や成果

 冬雪の薪集めを手伝った。川の氷を爆破した。アキムや辰宇と合流して洞穴を監視した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

弦耀

詠国の皇帝である。兄の護明を奪った術師に復讐を誓う。

・所属組織、地位や役職

 詠国の皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果

 術師の捜索を指揮した。護明の遺体を陽楽丘に埋葬した。アキムと友人になることを約束した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

霜婉

弦耀の母である。権力を強く求める。

・所属組織、地位や役職

 記載なし。

・物語内での具体的な行動や成果

 弦耀を皇帝にするために教育した。暗殺未遂事件の後、矢勇を切り捨てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

矢勇

第九皇子である。弦耀と敵対する。

・所属組織、地位や役職

 第九皇子。

・物語内での具体的な行動や成果

 弦耀の暗殺を企てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 処刑された。

術師である。他人の体を奪う禁忌の術を使う。

・所属組織、地位や役職

 術師。

・物語内での具体的な行動や成果

 護明の体を奪って逃亡生活を送った。日蝕に乗じて雛女の体を奪おうと試みた。湖の罠にはまり、魂を封じ込められた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 魂を痰壺に封印され、皇帝に甚振られる。

黄景彰

玲琳の兄のような立場にある男である。慧月の感情を受け止める。

・所属組織、地位や役職

 記載なし。

・物語内での具体的な行動や成果

 怒る慧月に玲琳の過去を語った。尭明とともに策を練り直した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

尭明

皇太子である。玲琳と慧月の関係を気に掛ける。

・所属組織、地位や役職

 皇太子。

・物語内での具体的な行動や成果

 雛女たちに皇帝の復讐について説明した。玲琳に説教をして本心を引き出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

リアン

集落の住人である。雛女たちに心を動かされる。

・所属組織、地位や役職

 村人。

・物語内での具体的な行動や成果

 川の氷が砕かれたのを確認した。雛女たちから鎮魂歌を教わり、共に歌を覚えようと決意した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

辰宇

武官のような立場にある男である。状況を的確に観察する。

・所属組織、地位や役職

 記載なし。

・物語内での具体的な行動や成果

 凍った湖面の足跡と洞穴を発見した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

金清佳

金家の雛女である。雛宮で慧月とやり取りをする。

・所属組織、地位や役職

 金家の雛女。

・物語内での具体的な行動や成果

 雛宮で慧月と軽い口論を起こした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

藍芳春

藍家の雛女である。物事を冷ややかに観察する。

・所属組織、地位や役職

 藍家の雛女。

・物語内での具体的な行動や成果

 慧月と清佳の口論をめんどくさいと発言した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項

 記載なし。

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ふつつかな悪女10巻

備忘録

プロローグ

詠国の皇后・絹秀は、霊廟で昼寝をしているところを、女官の和玉に起こされた。彼女は最近、皇帝と皇太子が都を離れ、政務を押し付けられていたため、後宮外れの霊廟に逃げ込み、ふて寝をしていたのである。和玉は、皇后が政務を逃れていることを咎めたが、彼女は気にせず、和玉に毛皮を取り上げられながらも冷たい霊廟の中で体を震わせていた。

鎮魂祭が近づく中、皇帝は姿を消し、皇太子も都を去っていたため、絹秀は政務の代行を務めざるを得なかった。彼女は、皇帝から玉璽を託されたことで、すべての権力と政務を押し付けられていたが、皇帝が国政に無関心であると感じていた。彼女は、柱に刻まれた幼い頃のいたずら書きを見つめながら、「たった一人のことしか頭にない」と呟き、皇帝に対する複雑な感情を抱いていた。

その後、和玉に急かされ、絹秀は霊廟を後にしたが、皇帝への思いを拭いきれず、香袋を抱きしめていた。彼女は、皇帝がただ一人の本懐を遂げようとしていることに対し、寂しさと悔しさを感じていたのである。

1.玲琳、ひらめく

山中での焚き火の中、一同は炎を囲んでくつろいでいたが、朱慧月は危機的な状況にあることに焦りを感じていた。彼女はアキムが皇帝の事情を知っていると察し、彼から情報を聞き出そうとした。アキムは、かつて護明皇子が刺客に襲われ、失明した後に廃嫡された経緯や、皇帝が術師に復讐を誓っていることを語った。護明皇子は実際に術師によって体を奪われており、彼の魂は未だにその体に囚われていたのである。

慧月たちはその事実に驚愕し、皇帝が復讐を誓う背景を理解し始めた。しかし、慧月は自分が皇帝に疑われている可能性に不安を抱きつつも、玲琳と協力して道を模索することを決意した。玲琳は慧月の術が多くの人々を救ってきたと称賛し、皇帝に対する立場を見直すべきだと提案した。そして最終的に、玲琳は慧月に、皇帝に自分たちの立場を理解させる方法を思いついたかもしれないと告げた。

冬雪は、焚き火を囲んで議論を続ける雛女たちから離れ、崖下に落ちた駕籠から薪や藁を回収しようとした。そこに景行が現れ、彼女を手伝うことになった。彼は駕籠を見て軽口を叩きながらも、冬雪の任務を手助けした。

二人は薪を集めながら話をし、冬雪は慧月と玲琳の間にあったすれ違いが解消されたことを報告した。慧月が必死に玲琳を救おうと駆けつけたことが、二人の友情を一層深めたと信じていた冬雪は、それを景行に語った。しかし、景行はその解釈に疑問を呈し、助けられたことで問題が解決したかはわからないと軽く指摘した。

その後、景行は冬雪が怪我をしていることに気づき、彼女に血止めと毒消しの軟膏を渡した。彼のさりげない気遣いに冬雪は戸惑いつつも感謝の言葉を述べたが、彼女は相変わらず景行の粗野な態度に苛立ちを感じていた。

最後に、二人は駕籠の中から薪を回収し、景行が誤って痰壺を酒だと思い込む場面があったが、冬雪は軽く溜め息をつきながらも薪を取り戻し、再び焚き火へと戻っていった。

2.玲琳、追る

雲梯園の東の窓から朝日が差し込み始めた。宿営地とは思えぬ豪華な調度品が照らされ、新しい一日の訪れを示していたが、弦耀は寝台に腰掛けたまま苦悶の声を漏らした。鎮魂祭まで二日、つまり極陰日まで二日であった。弦耀は、兄皇子・護明の体を奪った術師がこの地に潜んでいると確信し、その捜索に焦りを感じていた。

術師が姿を現す場所には干からびた死体が残る。過去二十五年間、術師が干からびた死体を増やしながらも潜伏していたが、最近ではその数が増え、弦耀はその行動を追跡していた。特にこの丹關は今年最も陰の気が高まる極陰地であり、術師が現れる可能性が高いと考えていた。

その時、隠密の頭領である丹、別名アキムが現れ、朱慧月が道術を使用した現場を押さえたと報告した。弦耀は彼に入れ替わりの術が使われた痕跡について問いただしたが、アキムは術師が白状しなかったと報告し、弦耀の怒りを招いた。弦耀は冷たい水を浴びせ、事実を話すよう迫った。アキムは朱慧月と黄玲琳が入れ替わっていたことを明かし、入れ替わりは解消されたと説明した。

弦耀は朱慧月から情報を聞き出すことに集中しており、他の捕縛された人物にはほとんど興味を示さなかった。彼はアキムに案内させ、朱慧月の元へ向かうことを決意した。

弦耀たちは、雲梯園の裏手にある森に向かい、朱慧月が杭に繋がれているのを目にした。彼女は寒さに震えながら道術使いであることを認めたが、野心はなく忠実な雛女であると懇願した。弦耀は彼女に入れ替わりの術を使った術師について知っているか尋ねたが、朱慧月はその術師のことを知らないと答えたため、弦耀は彼女を処刑しようとした。

しかし、その瞬間、朱慧月が腕に隠していた金属製の簪で弦耀の剣を受け止め、実は彼女が黄玲琳であったことが明らかになった。彼女は入れ替わりを解消したふりをしていたと告白し、弦耀の入れ替わりを見抜けない弱点を突いた。

黄玲琳は、弦耀がかつて護明皇子を刺客だと思い込んで殺してしまったのではないかと推測し、それが彼の罪悪感の原因であると指摘した。彼女は、復讐ではなく協力を通じて状況を改善できると説得し、最終的に朱慧月を演じて弦耀に立ち向かうことを決意した。

慧月は弦耀が斬った縄の残骸を見下ろし、冷や汗をかきながら、黄玲琳の無謀な策を思い返していた。玲琳は弦耀に対し、入れ替わりの術が簡単に見極められるものではなく、同じ過ちを繰り返してしまうと警告し、協力を申し出た。彼女は弦耀の手を取り、道術の力で皇帝を助けられると訴えた。

アキムも玲琳の主張を支持し、術師の魂を護明皇子の体から抜くことができるかもしれないと提案した。弦耀は長い沈黙の後、振りほどくこともなく、少し自嘲気味に微笑んでから、長い話をすることを示唆しつつ場を去った。

3.玲琳、話を聞く

霜婉は、幼い弦耀に「弦」は偉大な武器の弦であり、将来玉座を射止めることを望むと言い聞かせていた。彼女は権力を強く求め、愛情ではなく、自身の権力を完全なものにするために弦耀を皇帝に押し上げようとしていた。弦耀は聡明であり、幼少期から母親の野心や残虐さを理解し、次第に世界や母に対して冷淡で無関心な態度を取るようになった。

弦耀は十一歳の頃、兄弟たちから「木彫り皇子」と呼ばれ、嫌がらせを受けていた。ある日、皇太子護明が弦耀を助けたが、彼の助けには無垢な親切心だけでなく、弦耀の隠された才能への興味があった。護明は弦耀が演奏していた琴の腕前を称賛したが、それが弦耀の意図する「木彫り皇子」の仮面に亀裂を入れるものであった。弦耀は護明に対して、微妙な苛立ちと羞恥、そして反発の感情を抱き、彼の後ろ姿を不快に見つめた。

十二歳の弦耀は、父帝の愛馬に毒を盛った濡れ衣を着せられ、牢に閉じ込められていた。これには、他の皇子たちが弦耀を排除しようと画策したことが背景にあった。弦耀は母親の愛を失い、孤立していたが、護明は彼を気にかけ続けていた。

護明は弦耀が投獄された理由を明らかにし、彼を救出したが、弦耀は護明が自分に構うことで、さらなる困難に巻き込まれていると感じていた。護明の行為を「自己演出」と捉え、距離を置くよう要求したが、護明は彼を気にかけ続け、次の危機に遭遇した際も救いに駆けつけると誓った。

それから二年後、弦耀は十四歳となり、後宮から追放されることが決まった。だが、別邸に移る途中、第九皇子・矢勇による暗殺未遂事件に巻き込まれる。弦耀は危機に瀕したが、再び護明が彼を救出し、彼の信頼できる存在であることを証明した。しかし、護明は毒矢に倒れ、弦耀は兄の命を救おうと必死に叫んだ。

護明は高熱から回復したが、視力のほとんどを失った。事件の首謀者である矢勇は処刑され、霜婉は迅速に彼を切り捨てた。彼の襲撃は皇太子ではなく弦耀を狙ったものであるとされ、玄端宮は謝意を表明し、黄麒宮に対して一定の支援を行うことを約束した。

護明は視力を失っても廃嫡されることはなく、黄麒宮で穏やかに暮らし続けた。弦耀は彼のもとを訪れ、自身の過ちを詫びたが、護明は「黄麒宮の者には手を出さないこと」を約束させるだけで、寛大な態度を示した。弦耀はこの出来事を通じて、自分の仮面を脱ぎ捨て、護明を支えようと決意し、鍛錬を積み重ねた。

護明は失明後も明るく振る舞い、陽楽丘で笛を奏でながら日差しを楽しんだ。しかし、弦耀は護明が本当に望んでいたのは、日差しではなく、治めるべき国の光景だったと気づいていた。護明は自身の死後、陽楽丘に埋めてほしいと望んだが、彼の即位は困難であった。

視力を失った護明に対して、他の皇子たちは次第に牙を剥き、廃嫡を企んだ。彼らは護明を悪者に仕立て上げ、父帝に讒言を吹き込み、ついには皇帝がその言葉を信じ始める状況に陥った。皇后もこれを黙認し、護明を守るふりをしながら、弟皇子たちが権力を奪う機会を待っていた。そして、失明から五年後、鎮魂祭の当日に、ついに大事件が発生した。

弦耀は、日蝕が起こる日の護明を探し回っていた。前夜、兄皇子たちが護明の悪評を父帝に吹き込み、宴席で術師をけしかけたと聞いたからである。父帝は、術師に護明の暗殺を命じ、術が本物か試すつもりでいた。

弦耀は護明を探し、陽楽丘で彼が術師に襲われる現場に遭遇した。護明は脚を切られ苦しんでいたが、弦耀は怒りで術師に立ち向かい、剣で彼を倒した。だが、術師が発した言葉が弦耀の記憶を刺激し、驚きと恐怖を覚えた。倒れた術師の魂が護明のものであることに気づいた弦耀は、信じがたい現実に直面した。

術師と護明は禁忌の術「入れ替わり」で魂が入れ替わっており、護明は最期に朝の光景を見ながら命を落とした。弦耀はその光景に打ちのめされ、兄の死に激しく嘆き悲しんだ。

弦耀は護明の暗殺に関わった者たちを処罰するため、1年かけて復讐を遂げたが、兄の体を奪った術師を捕まえることができなかった。護明の体を取り戻すために、道士から情報を集め、術師を追い続けた。彼の焦燥が見える中、慧月が術師に関する疑念を抱き、視力や足の機能を補うために術師が気を大量に必要としている可能性を指摘した。

その後、炎術を用いた景行との通信で、烈丹峰で干からびた死体が見つかったことが明かされた。これは術師が生気を奪った結果だと推測された。玲琳は過去の出来事を思い出し、護明の体を奪った術師が董という男であると気づき、ついにその名を口にした。

4.慧月、怒鳴る

弦耀は、術師董が護明の体を奪ったと確信し、烈丹峰へ向かう準備をしていた。
しかし慧月は、弦耀が放つ強い気が術師に察知される恐れがあるため、直接行くのは危険だと進言した。
慧月の提案を受けて、弦耀は捜索を部下に任せ、自らは動かないことを決断した。
彼は隠密たちに董の捜索を命じ、黄景行と辰宇に烈丹峰全体の包囲を強化するよう指示した。
弦耀は慧月と玲琳に対して、正午までに術師を確実に捕らえる策を提出するよう命じ、できなければ処罰すると告げた。

慧月は、皇帝に堂々と意見を述べた自分に驚き、緊張の中で息をついた。
しかし、隣の玲琳はその姿を賞賛し、慧月を励ました。慧月は、自分が禁じられた道術を使い、皇帝に口答えしたことで不安を抱いていたが、周囲の励ましに少し和らいだ。

その後、雛女たちも心配して見守っていたが、尭明が彼女たちに状況を簡潔に説明し、復讐が皇帝の目的であることを伝えた。
玲琳や慧月も、彼の宿願を果たすために協力していることを説明した。
雛女たちは安心したが、慧月は玲琳の自己犠牲的な態度に苛立ち、玲琳が危険な策を取るたびに不安を抱くようになった。

最終的に、慧月は玲琳に対して怒りを爆発させ、彼女の行動に対する苛立ちをぶつけ、感情を露わにした。
その後、尭明が玲琳に説教を始めると告げ、二人の関係はさらに深まる予感を残していた。

慧月は「黄玲琳」の部屋に向かうため、長い回廊を走り抜けていた。涙を流しながら無礼を顧みずに走る姿は、周囲の人々を驚かせたが、慧月自身は感情を抑えられず、怒りや無力感、自己嫌悪に苛まれていた。玲琳への怒りを抱え、部屋に着くと怒りに任せて物を投げつけていたが、そこに黄景彰が現れた。

景彰は冷静に慧月の怒りを受け止め、彼女が玲琳を心配していることを認めつつ、玲琳が心配を受け止めきれないことを伝えた。玲琳が幼少時から死を受け入れてきた過去を語り、彼女の無茶な行動は覚悟ではなく、むしろ周囲が彼女の恐怖を無視していた結果であることを指摘した。

景彰は、慧月が玲琳に対して唯一感情をぶつけられる存在であり、彼女の心に変化をもたらしたと告げた。慧月は、自分の怒りが相手にどれだけ影響を与えていたかを反省し、次に玲琳と向き合うときは、冷静に自分の気持ちを伝えようと決意した。

その後、女官たちから伝言が届き、慧月はこれから玲琳に謝りに行くつもりでいたが、その伝言の内容に驚き、景彰に教えを請うように視線を向けた。

5.玲琳、さらけ出す

慧月と女官たちが去った後、居室では尭明と玲琳の問答が続いた。尭明は玲琳に、命を懸ける覚悟があることや、慧月を大切に思っていることを確認したが、玲琳は自分が傷ついていることを認められず、尭明は彼女の内心を引き出そうと説教を始めた。玲琳は、自分が朱慧月に恩返しをしたいという気持ちから無茶な策を取っていたことを語り、時間が限られていることも明かした。

尭明は玲琳に、朱慧月が彼女を大切に思っていることを理解させようとしたが、玲琳は自分が慧月にとって特別な友人であることに自信を持てず、寂しさと焦燥感を抱いていた。彼女は、慧月が他の友人を作る姿を見て、自分の存在が必要でなくなると感じていた。最終的に、玲琳は尭明の説得を受け、無茶な行動をやめて他の策を考える決意をした。

慧月が居室に戻り、玲琳と再び話し合う場面では、二人はお互いの気持ちを素直に伝え合い、和解した。玲琳は自分の不安や焦りを打ち明け、慧月もまた彼女を特別な友人として大切に思っていることを告げた。最終的に、玲琳は危険な策を避け、別の方法で術師を捕らえる計画を立てた。

慧月と玲琳が仲直りした後、室外では尭明と景彰がその様子を聞いていた。景彰は尭明に、なぜ未来の妻同士の仲を取り持っているのかと問いかけたが、尭明は疲れた声で仕方がない様子を見せた。その後、二人は皇帝に集中するために策を練り直す決意を固めた。

室内から玲琳と慧月が出てきたとき、玲琳は術師を捕まえるための新しい策があると告げた。男たちは半ば冗談めかして爆破や破壊行為を想像したが、玲琳は「雛女らしく歌を頑張る」と言い、慧月と話し合った作戦を説明した。男たちはその意外な発案に感心し、特に景彰は玲琳の成長に喜びを感じた。

その後、皆で策を練り直し、皇帝が笛を吹いている四阿へと向かった。尭明が皇帝に挨拶し、玲琳は皇帝に対して術師を捕らえる策を自信を持って提案した。玲琳は冷たい皇帝の視線を受け止めながらも、はっきりとした声で策を述べた。

6.玲琳、仕込む

リアンたちは、武官の黄景行が川の氷を爆破したことに驚いた。彼らは武官の言葉を半信半疑で受け止め、実際に川に行って確かめたが、氷は砕かれていた。この爆破は水害を防ぐために行われたものであり、村人たちはこの効果を目の当たりにした。リアンは、これまで自分たちが無力だと思っていたが、雛女たちが自分たちに奇跡をもたらしてくれたことを認めた。

その後、集落に戻ると、朱慧月と他の雛女たちが再び訪れていた。彼女たちは鎮魂歌を教えるために来たと告げ、住人たちは驚きつつも興味を示した。雛女たちは、住人たちに鎮魂歌を覚えさせることを目的としており、それが極陰日の厄災を防ぐための手段だと説明した。リアンたちは、この特別な教えに心を動かされ、共に歌を覚えようとする決意を新たにした。

夜も更けた頃、朱家の雛女である玲琳は、冷え込む中、納屋で他家の雛女たちに寝具を届けた。雛女たちは長い移動と歌の指導で疲れ果て、皆すでに眠りに落ちていた。玲琳は友人たちが眠る中、寂しさを感じながらも、彼女たちに感謝の気持ちを抱き、休息を整えた。

玲琳は外に出て、冷えた空気に心を落ち着けながら、翌日の策を思案していた。その時、月光の下に立つ皇帝・弦耀の姿に気付き、彼のもとへと向かった。二人は短い言葉を交わしたが、弦耀はその場で玲琳の言葉を受け流し、彼女もまた、心の中で彼に対する複雑な感情を抱いていた。

弦耀は自身の過去と向き合いながら、苦しみを口にし、玲琳は彼の苦痛を感じ取った。玲琳は静かに鎮魂歌の一節を呟き、弦耀もまた、その歌詞を味わうように耳を傾けた。

玲琳は夜の冷え込む中、雛女たちのために寝具を用意し、彼女たちが疲れ果てて眠っている様子を見て感謝の気持ちを抱いていた。外に出た玲琳は、月光の下に立つ皇帝・弦耀を見つけ、彼に言葉を掛けた。玲琳は、失明した護明皇子が残した詩について話し、その詩が実は弦耀自身に向けられたものであったことを伝えた。弦耀は、護明が自分の光を見ていたことに驚き、深い感動を覚えた。

玲琳は、昨日自分が弦耀に対して非道な行いをしたことを認め、静かに詫びた。弦耀は感情を抑えながら休むことを告げ、二人は策を遂行する準備を進めていた。突然、鳩が飛来し、術師の居場所が発見されたことを知らせた。二人は顔を見合わせ、決戦に向けて準備を進めることを確認した。

7.玲琳、封じる

玲琳たちに鳩が届く少し前のこと、アキムは烈丹峰で董を探索していたが、術師はまだ見つかっていなかった。アキムは、険しい山を何度も探索させられた疲れから愚痴を漏らしていたが、同じく術師を探していた景行と辰宇と合流した。辰宇は、湖面の凍った足跡と洞穴を発見し、術師がそこに潜んでいると推測したが、警戒を避けるために追跡はしなかった。

景行とアキムは協力して洞穴に接近し、鳩を使って術師の存在を確認した。彼らは翌日、極陰日の作戦時に董を捕らえるため、慎重に監視を続けることを決めた。アキムは、術師が逃亡する前に完全に捕らえるための準備が整いつつあることを実感し、復讐の時が近づいていることを確信した。

董は、洞穴で目覚めたが、全身に穢れた気が巡っており、体調が悪かった。過去に行った行為への後悔と、それに対する言い訳が繰り返される中、彼は王都から追われている恐怖に再び囚われた。特に、かつての襲撃によって皇帝弦耀に深い憎しみを抱かれているという記憶が、彼の心を苛んでいた。

董は、術師としての道を歩む中で、多くの困難に直面し、逃亡生活を送っていた。彼は人々から生気を吸い取ることで生き延びてきたが、その代償として体は不安定な状態に陥っていた。極陰日が近づく中、彼は自分の体を捨て、新たな体を奪おうと決意していた。

董は、近くに集まる人々の中に、かつて自身が血を練り込んだ腕紐を見つけ、それを身に付けた雛女の体を狙うことを決めた。しかし、逃亡するか、入れ替わるかという選択に悩む中、麓から迫る強烈な龍気を感じ、動揺した。彼は最終的に、雛女と体を入れ替えるために洞穴を出ようと決意したが、その瞬間、彼の隣から男の声が響き、驚いた。

日蝕が迫り、董は洞穴の入り口に向かって行動を開始した。その様子を見たアキムは、安基に扮し、董に声を掛けた。董は初め驚いたが、すぐに応じ、二人は会話を交わしながら対岸の雛女たちがいる場所へ向かうことになった。董は雛女に会うため、湖を渡ることを決意し、アキムの先導に従って歩き始めた。

一方、玲琳と慧月は対岸で董の動きを監視していた。慧月は董が策に気づくのではないかと心配していたが、玲琳は囮の役割を果たすため、すでに準備を整えていた。董は湖を渡りながら、景行に声を掛けていたが、その実、相手は声色を変えた黄景彰であることには全く気づいていなかった。

董は罠にかけられたとも知らず、策に引き込まれようとしていたのである。

董は新たな体を得るため、氷の湖を渡りながら心を躍らせていた。彼は相手の気配を探りながら、自らの計画が成功することを確信しつつあった。しかし、住人たちの奇妙な気配に気付き、不安が広がり始めた。特に、過去に自分に斬りかかった末皇子の強い気配を感じた瞬間、董は罠にかかったことを悟った。

彼は急いで引き返そうとしたが、森から龍気が近付いてきていることを察知し、逃げ場を失った。さらに、荷持ちに扮したアキムから巧妙な質問を投げかけられ、董の焦りは増すばかりだった。

その直後、突然の爆発が起こり、氷が激しく砕け散った。董は抵抗する間もなく、氷の湖に沈んでいったのである。

董は湖の上で道術を駆使して相手の体を奪おうとしたが、巧妙に仕掛けられた爆弾が同時に爆発し、氷が砕けて水中に沈められた。住人たちは董の正体に気付き、彼から距離を取った。董は日蝕に乗じて魂を抜け出し、新たな体を奪おうとしたが、住人たちが鎮魂歌を歌い始め、魂が体に戻される現象が起きた。

董は自身の魂を「腕紐」に導かれ、新たな体を奪おうと試みたが、逆に罠にはまり、魂を封じ込められた。護明の体は無事に引き上げられ、皇帝や皇太子たちによって事態は収束した。日蝕も終わり、太陽が再び光を取り戻し、住人たちは安心して歓声を上げた。

太陽が半月の形を過ぎるほどに戻った頃、弦耀は凍った湖面へとたどり着いた。息を乱しながら氷の上に足を踏み出し、二十五年ぶりに対面した兄・護明の冷え切った体に膝をついた。震える手で護明の瞼を撫で、彼に遅れたことを謝罪し、陽楽丘へ連れていくと誓った。冷たくなった兄の手に触れながら、弦耀は護明の穏やかな死に際の声を思い出し、太陽の光が護明の頬に差し込むのを見て、涙を流した。暗闇が終わり、ついに国に朝が訪れたことを、何度も護明に囁き続けていた。

エピローグ

護明の埋葬は、弦耀たちが王都に帰還した後、陽楽丘で密かに執り行われた。弦耀は兄の遺体を光に満ちた場所に埋め、長く祈りを捧げた。彼が何を胸に秘めていたのか、周囲の者にはわからなかったが、皆がその思いを感じ取っていた。埋葬を終えた弦耀は、慧月と玲琳に対して、入れ替わりの術を解いてもよいと告げ、二人はそれに従い、元の体に戻った。術の解除には炎が天に立ち上り、周囲に熱を放ったが、無事に完了した。

弦耀は慧月に対し、今回の事件での助力に感謝を示し、彼女を当代一の道術使いだと称えた。この賛辞に慧月は感涙し、玲琳も友人の努力を讃える様子を見せた。弦耀はさらに、玲琳に対して軽口を交わしながらも、彼女を「悪女」と呼び、慧月にその影響を受けないようにと諭したが、慧月は玲琳のそばで幸せだと感じていた。

太陽が再び輝きを取り戻す中、父子の間に軽口が交わされ、彼らの関係にも新たな交流が生まれたようであった。丘の上に立つ彼らには、光が降り注ぎ、穏やかな時間が流れていた。

弦耀は陽楽丘で長く佇み、護明の遺体を埋めた場所に笛を捧げ、鎮魂の曲を奏でた。その場にいたアキムは、笛をきちんと埋めるために手伝い、かつての契約書を破って風に流した。二人は長い間黙っていたが、アキムは復讐と幸せについて語り、報復だけではなく自分も幸せになることが重要だと述べた。弦耀も同意し、二人は友人になることを提案し合った。

アキムは冗談交じりに友達としての新しい関係を始める提案をし、弦耀は「今日は晴れた」という言葉で応じた。二人はぎこちないながらも笑い合い、肩を並べて丘を下りて行った。彼らは復讐を終え、新しい関係を築きながら未来へ進む決意を固めたのであった。

雛宮で五家の雛女たちが集まり、玲琳は明前茶を淹れながら感謝の言葉を述べた。
鎮魂祭の協力や入れ替わりを隠してくれたことに対する感謝であった。雛女たちは形式ばらずに寛ぎ、玲琳もそれを喜んだ。
しかし、慧月と清佳の間では軽い口論が起こり、玲琳は二人のやり取りを眺めつつ、内心では慧月との友情を独占したいという欲が膨らんでいることに気付いていた。

芳春はこの口論をめんどくさいと冷ややかに評し、玲琳はその発言に感動し、芳春を素敵な人物だと称賛した。
この発言に対し、芳春や慧月は驚き、室内に玲琳の喜びが響き渡った。

玲琳は雛宮での楽しい時間を終え、満足した気持ちで帰路についた。
雛女たちと初めて家事情を忘れて語らい、心から楽しんだ経験は彼女にとって新鮮であった。彼女は今後、さらに楽しいことを計画し、誰かと過ごす時間に胸を膨らませていた。
近頃の自分は健康で、病弱だった頃と違い、発熱や嘔吐もなく、元気であることに感謝していた。
しかし、夕陽を浴びながら、自分が本当に健康になったのではないかという期待を抱いた瞬間、突然体調が悪化した。玲琳は体の力を失い、嘔吐感に襲われながら倒れ込んでしまった。
苦しみの中で、彼女は何かにすがる言葉を思い出そうと必死に考えていたが、そのまま意識を失いかけた。

濡れた地下牢に響くのは、女の硬質な足音であった。
詠国皇后・黄絹秀が麻袋を手に、厳重に封じられた最奥の一角に踏み込んだ。
そこには、術師の魂を納めた痰壺が紫檀の台に鎖で縛られて置かれていた。
かつて黄家皇子の体を奪い、逃亡を続けたこの術師の魂は、皇帝・弦耀によって捕えられ、夜な夜な甚振られているようであった。黄絹秀は、その壺を手に取り、中の気配を感じ取りながら、静かに決意を固めた。
彼女は麻袋から用意していた同じ形の痰壺とすり替え、元通り鎖で封じた後、自身の行為を少しおどけて弁解しながら、牢を去って行った。

ふつつかな悪女8巻
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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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