物語の概要
ジャンル:
異世界コメディ・バトルファンタジーである。暗殺の恐怖に怯える王子が、モンスターの肉を食べて生き延びるところから物語は“勘違い”による英雄譚へ展開する。たった一つの勘違いが、驚異的な成り上がりを引き起こす。
内容紹介:
ファルーン王国第一王子マルスは、毒の仕込まれた食事を避けるために城外へ出てモンスターを狩り、その肉で飢えを凌いでいた。マルス不在の間、アレス大陸最大の武力国家・ロンザ帝国が侵攻を開始。ロンザ兵の猛攻に、フラウ、カーミラ、シーラら“ハンドレッド”たちも苦戦を強いられ、その混乱の中でフラウの強制転移魔法によってついに王が帰還する――皇位を巡る王者の帰還を描いた5巻である。
主要キャラクター
- マルス:ファルーン王国の第一王子。暗殺と毒によって危機に晒されながらも、モンスターの肉を食べて生き延び、望まぬまま“最強の王”へと成り上がる主人公である。
- フラウ、カーミラ、シーラ:”ハンドレッド”の戦士たち。マルス不在のファルーンを守るため、ロンザ帝国の侵略に立ち向かい、戦局の鍵を握る存在である 。
物語の特徴
本作の魅力は、「覚悟なき成り上がり」と「豪快なバトル描写」が融合したユニークなギャグファンタジーである点にある。モンスターの肉や転移魔法などの異世界要素に加え、強大な敵に対して無自覚に“王”として立ち振る舞うマルスの姿が、他作品にはない痛快さと軽妙さをもたらす。第5巻では、危機的状況の中での王の帰還というドラマが展開され、エンタメ性の高い構成となっている 。
書籍情報
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件 5
著者:駄犬 氏
イラスト:芝 氏
発売日:2025年07月22日
ISBN:9784867168035
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あらすじ・内容
こちらにおわす御方をどなたと心得る!
マルス不在のファルーンに対し、アレス大陸最大の武力国家であるロンザ帝国が侵略を開始した。
カサンドラの生まれ故郷でもあるロンザ帝国は、ファルーンよりも遥かに長い「モンスター食」の歴史がある。
獰猛にして屈強なロンザ兵たちの猛攻に、さすがのハンドレッドたちも劣勢を強いられていた。
フラウ、カーミラ、シーラも出撃し総力戦の様相を呈する中、フラウの人命軽視な強制転移魔法によりついに王が帰還する
感想
読了し、まず感じたのは、やはりマルスがいないと物語が締まらない、ということであった。大陸最大の武力国家、ロンザ帝国の侵攻という危機的状況において、彼の存在の大きさが際立っていた。
ロンザ帝国は「モンスター食」の文化が根付いているため、その兵士たちは屈強で、ハンドレッドたちも苦戦を強いられる。このあたりは、単なる力押しではない、文化的な背景に基づいた強さの描写が面白く、物語に深みを与えていると感じた。
物語は、マルス不在のファルーンに、ロンザ帝国が侵攻を開始するところから始まる。フラウ、カーミラ、シーラも出撃し、総力戦となるものの、戦況は芳しくない。そんな中、フラウの強引な転移魔法によって、ついにマルスが帰還を果たす。
マルスが帰還してからの活躍は、まさに圧巻の一言である。相変わらずヒロインたちに振り回されながらも、その圧倒的な力で敵をなぎ倒していく姿は、読んでいて爽快感があった。しかし、最強のあの人を相手にしたときは、さすがに分が悪すぎたように思う。
物語の終盤では、マルスとロンザ帝国の王子エゴールとの戦いが繰り広げられる。そこで明らかになるのは、エゴールにモンスターの肉を食わせた人物が、なんとカサンドラだったという衝撃の事実である。全ての元凶がカサンドラだったとは、予想外の展開に驚かされた。
最終的に、エゴールはマルスを兄と呼ぶようになり、一応の決着を迎える。しかし、マルス以外のキャラクターたちは、相変わらずの調子で、彼をいいように解釈している。このあたりは、この作品らしいユーモラスな展開であり、読後感を明るくしてくれる要素だと感じた。
今巻では、イーリス聖王国に第三王子イワノフが、バルカンに王子エゴールがそれぞれ侵攻するという状況も描かれており、物語全体としてスケールが大きくなっている印象を受けた。
全体を通して、戦闘シーンの迫力や、個性豊かなキャラクターたちの人間関係、そして、モンスターの肉を食うという独特な設定など、この作品ならではの魅力が存分に発揮されていたと感じる。特に、マルスの圧倒的な強さと、それを取り巻くヒロインたちの騒動が、物語を盛り上げる大きな要素となっている。次巻では、どのような展開が待ち受けているのか、今から楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
PROLOGUE
戦争とモンスター被害の比較
ファルーンは大陸南部に位置し、北方からの侵略を受けた経験はなく、主な脅威は魔獣の森からのモンスターであった。語り手は、侵略者であるロンザ帝国よりもモンスターの方が被害が甚大であり、スタンピード発生時は甚大な破壊を伴うと考えていた。しかし北方出身のカイランは、人間の侵略の方が事後の対立や混乱を招くため、モンスターより厄介であると主張した。
ファルーン王マルスの悪評
会話はファルーンの現状に及び、カイラン、ベリンダ、ダリオンは現王マルスを「狂王」と評した。彼らは、住民にモンスターの肉を強制的に食べさせる行為や、特異な経歴を持つ妃たちを迎え入れている事実を挙げ、その目的が強い子を作り競わせることで世界制覇を狙っている可能性に言及した。語り手は否定するも、周囲の評価を覆すことはできなかった。
国際的評価と対立構図
会話の中で、ファルーンは毒性のあるモンスター肉の摂取、闘技場での殺し合い、マーヴェ教への挑発など、異常な国と見なされていた。語り手は学術的立場からファルーン擁護を試みるが、周囲はロンザ帝国との戦争で両国が共倒れになることを望む姿勢を見せた。
侵攻の現実化
語り手が旅の中で冷遇される一方、ファルーンは実際にロンザ帝国からの侵攻を受ける事態となっていた。
Chapter.1
FROM THE NORTH
1.イワノフ
アスタナ山脈と南征の背景
アレス大陸北部のロンザ帝国と中央諸国との間にはアスタナ山脈があり、モンスターが多く越境は困難であった。中央諸国は北方の極寒地に興味を示さなかったが、ロンザ帝国は中央の温暖で肥沃な土地を求め、過去に何度も南征を試みてきた。今回の南征は二方面作戦であり、その一つを皇位継承権第三位の皇子イワノフが指揮していた。
魔法使い皇子と戦士たちの確執
イワノフは珍しく魔法使いであり、戦士主体の帝国内では軟弱視されていた。そのため、戦士たちは彼の指揮を快く思わず、剛力の皇子エゴールの下で働くことを望んでいた。イワノフも戦士たちを嫌い、彼らを先頭に置き進軍路を切り開かせることで、魔法使い蔑視への鬱憤を晴らしていた。戦士たちも屈辱を抱えつつ従軍していた。
イーリス聖王国への開戦準備
山脈越え後、イワノフは教皇マリアとの婚姻による和平案を送るも、実際は返答を待たずに攻撃を開始した。イーリス北部の守備隊は抵抗しつつ後退を繰り返し、城塞防衛に戦力を集結させた。疲弊した戦士団に休息を求める将軍に対し、イワノフは誇りを刺激して即時攻撃を命じ、戦士たちは奮起して城塞へ向かった。
ヴォルフ伯の防衛体制
城塞防衛を指揮するヴォルフ伯は旧イーリス三伯の一人で、マリアに救われ重用されていた。旧イーリス軍はファルーンとの戦争で弱体化していたが、ヴォルフは対ファルーン戦で有効だったクロスボウを量産し、防衛戦力とした。彼はロンザ兵の巨躯と山賊を思わせる装備に警戒を強めた。
戦闘開始
ロンザの戦士たちは射程外で停止し、盾や武器を打ち鳴らして足踏みし、獣のような雄叫びを上げて士気を高めた。ヴォルフは以前の戦いで見た狂戦士のような戦いぶりを思い出し、守備兵の士気低下を恐れた。やがて戦士たちが一斉に突撃し、戦闘が始まった。
2.ヴォルフ伯
城塞防衛とクロスボウの威力
ヴォルフの指揮でイーリス軍は弓矢を放つが、ロンザ戦士は盾や武器で容易に防ぎ、魔法攻撃にも高い耐性を示した。帝国本営からの魔法攻撃もあり、ヴォルフは結界を再展開して防御を固めた。接近した敵に対し、アロー・スロットから強化クロスボウを集中射撃させ、多くの戦士を即死させた。この威力に将軍は撤退を命じ、イーリス軍は撃退に成功した。
イワノフの思惑と戦士団の統制
撤退後、将軍はイワノフに叱責されるが、イワノフはむしろ敗北を利用しようと考えていた。戦士団が勝利して魔法使いを侮る事態を避け、敗北によって自らの指揮下に従わせる狙いである。彼は南征を成功させ、第二位継承者エゴールを討ち、全軍を掌握して中央制覇を目論んでいた。
クロスボウ対策の立案
戦死の原因が強力なクロスボウであると判断した魔導士団は、丸太や厚板を盾として進軍する策を提案。イワノフは即座に採用し、戦士団に伐採作業を命じた。一方、ヴォルフも敵の意図を察知し、魔法での焼却は封じられると予測。油を用いて物理的に木製盾を焼き払う計画を立て、次の攻防に備えた。
3.隨落
丸太盾による城門突破
ロンザ軍は丸太を束ねて大型の盾を作り、水で湿らせて防火対策を施し、魔導士団の結界で魔法攻撃を防ぎながら進軍した。クロスボウは効果を発揮できず、ついに城門へ到達。ヴォルフは城の放棄と後方への退却を決断し、必要兵力のみ残して多くの兵を逃がした。
ヴォルフの巨刃と撤退戦
城門が破られると、ヴォルフは剣技『巨刃』で侵入兵を一刀両断し、敵を後退させた。退却路ではクロスボウ兵が追撃を阻止し、ロンザ軍に再び損害を与えることに成功した。イワノフは無理な追撃を避け、城塞確保を優先した。
イワノフの評価と今後の方針
イワノフは中央軍の抵抗力を予想以上と評価し、その背景にファルーンの影響を見た。全軍集結後、物量と自身の開発兵器で勝利を得ると確信していた。
ファルーン援軍との合流
退却したヴォルフは最終防衛拠点でファルーンの援軍と合流。そこには雷帝フラウ率いる魔導士団、モンスター軍団長キーリの率いる千頭超のウォーウルフ、さらにドルセンのカーミラが率いる一万の軍が加わる予定であった。副団長ミカ、魔導士団所属のノーアも同行し、強力な戦力が集結したが、ロンザ帝国の大軍到来を見据え、ヴォルフは重責を痛感していた。
4.聖女の憂鬱
教皇マリアの動かぬ理由
ロンザ帝国の侵攻下、教皇マリアは王都ガーデンから動かず、周囲には民心安定を理由に慰留される形を演出していた。実際には、勝算のない戦場で癒しの力を使って敗北すれば聖女の常勝イメージが損なわれるとの打算があった。ファルーン軍に随行した際は勝利が確実と見て回復魔法を用い、自身の功績として印象付けていたが、今回は不透明な情勢のため出陣を避け、王都陥落時は転移魔法での脱出を計画していた。
ヴォルフへの指揮権移譲
北部に集結する聖王国軍・フラウ率いる魔導士団・カーミラのドルセン軍という布陣に、マリアは更なる戦力を望んでいた。一方、軍議ではフラウ代理のミカが聖王国軍の指揮をヴォルフに任せるよう提案。フラウの基準がハンドレッドであることを指摘され、兵の無謀な運用を避けたいヴォルフはこれを承諾した。
魔導士団の出撃
ミカは敵先遣部隊の殲滅を請け負い、ヴォルフは軍再編に専念することとなった。ファルーンの魔導士団は攻撃主体として行動できる稀有な戦力であり、ヴォルフはその特異性を認識した。出撃準備を終えていたフラウ、ミカ、ノーアは飛行魔法で前線へ向かい、キーリはウォーウルフと合流済みであった。
フラウの内心と競争心
飛行中のフラウは、バルカン戦でシーラの指揮下に置かれ、降伏を促す穏当な戦術に従ったことを思い出していた。強い者が上に立つべきという単純な価値観を持つ彼女は、今シーラがエゴール軍と戦っていることを心強く感じ、自らは別戦線でロンザ軍を打ち破り、どちらが早く勝利するか密かに競争するつもりであった。
5.バルカン戦線1
七星剣の汚名返上の機会
ロンザ帝国の動きが伝わると、シーラの弟ハルト率いる七星剣は、内戦でフラウの魔導士団に後れを取った汚名を晴らす好機と喜んだ。彼らはモンスターの肉で力を得ていたが突出した力はなく、国王派に抑え込まれた過去を持つ。短期間の鍛錬での実力向上は限られていたが、戦力不足のシーラは防衛戦力として北方へ派遣し、守勢と持久戦を厳命した。
エゴール率いる精鋭軍
北方から迫るのは、巨躯と剛力で知られる第二皇子エゴールの軍であった。真紅の鎧をまとい、特別な金属製ウォーハンマーで障害物を粉砕し、自ら先頭に立って突入する豪放な戦士であり、部下から「頭」と呼ばれ尊敬されていた。モンスター肉もパフォーマンスとして食し、部下の称賛を集めていた。
戦況と対峙
エゴール軍は先行部隊のみで千人足らずだったが、後続と合流すれば万規模となる見込みであった。ハルトは少数のうちに撃破を狙い、七星剣の仲間も賛同した。しかしその直後、真紅の鎧をまとった巨漢エゴール本人が単身で進軍し、戦場中央で七星剣を名指しで挑発した。この直接的な挑戦に、ハルトたちは応じる決意を固めた。
6.バルカン戦線2
七星剣とエゴールの対決開始
エゴールの挑発に応じ、七星剣のうちハルトら6人が平原中央に進み、残る飛剣のジーノは遠距離から狙撃を担当した。ジーノの矢はエゴールに届く寸前でウォーハンマーに弾かれ、エゴールは不敵に笑みを浮かべた。ハルトの突撃は蹴りで吹き飛ばされ、他の七星剣もウォーハンマーや体術により次々と制されていった。
圧倒的な戦闘力
エゴールは巨体に似合わぬ俊敏さと全身を武器とする戦法で七星剣を翻弄した。ファビオの炎剣は息吹で打ち消され、イゴールの剛剣は力負けし、セルジュの氷剣も一撃で吹き飛ばされた。アレッシオの風剣は鎧で防がれ接近戦で倒され、ラザルは隠し刃で顔を斬るも、逆に頭突きで地面に叩きつけられた。遠距離からのジーノの援護も石投げで撃破された。
敗北と執念
圧倒的な力に晒されながらも、ハルトは立ち上がり自らの未熟を認め、ファルーンのハンドレッドや姉シーラの存在を語った。特にマルス(ゼロス)ならエゴールを倒せると断言し、その名にエゴールは興味を示し攻撃を中止した。
挑戦の猶予
エゴールはハルトたちを殺さず、「ゼロスを連れて来い」と命じ、自身も後続部隊の到着を待つと告げた。生存を選んだ七星剣は撤退し、バルカン軍もエゴールの咆哮に押されて後退した。数の優位を持ちながら討ち取れなかった現実は、彼らに圧倒的な実力差を痛感させた。
7.バルカン戦線3
敗戦後のシーラの対応
ハルトら七星剣の敗走報告を受け、シーラは不満を表明しつつも、国内の結束を保つため責任追及は避け、軍の再編と監視任務を命じた。その後、ゲートでファルーンに赴き会議へ参加し、バルカンへの援軍としてハンドレッド上位陣や黒・赤の騎士団の派遣が決定。オグマと始まりの5人が同行してバルカンに到着した。
奇妙な対峙と訓練合戦
オグマは帝国軍の実力を認め、増援と兵力集結を優先。待機期間中、ハンドレッドはモンスター狩りと実戦的訓練を繰り返し、その姿勢に感銘を受けた七星剣も参加した。これが軍全体へ波及し、大規模な訓練が展開された。偵察報告を受けたエゴールは即時攻撃を否定し、敵に負けぬ苛烈な訓練を指示。結果、ロンザ軍も武器を持ち本気で同士討ちを行う異様な光景となった。
互いの脳筋指揮官の影響
訓練中のエゴールは自軍兵士を豪快に吹き飛ばし、その迫力にバルカン側も驚嘆。一方でオグマも刺激を受け、味方に死力を尽くす訓練を命令。こうして両軍が互いに対抗して過激さを増す「訓練合戦」が続き、実戦前にもかかわらず双方に甚大な損害が発生した。この不可解な戦況に、報告を受けたシーラは困惑を隠せなかった。
8.バルカン戦線4
疲弊した両軍と援軍の到着
黒の騎士団と赤の騎士団が到着した時、バルカン軍もロンザ帝国軍も過酷な訓練合戦で疲弊しきっていた。元気なのはオグマとエゴールのみで、互いに兵士を引き起こして訓練を続けさせる有様だった。状況を見たクロムとワーレンは困惑し、始まりの5人から事情を聞き出すと、帝国将エゴールの強さと兵の質がファルーンと遜色ないことを知った。
グスタフ将軍の到着と采配
後続部隊を率いたグスタフ将軍は、疲弊し倒れる戦士たちを見てエゴールを叱責し、彼を後方へ下げた。兵力は2万と優勢だったが、主体は一般兵で戦意も低く、山越え直後で疲労が濃かった。グスタフは兵を一晩休ませる方針を取り、食料と水を与えて翌日の戦闘に備えさせた。
黒の騎士団の奇襲計画
敵の休息態勢を遠方から観察していたクロムとワーレンは、エゴール不在で疲弊しきった帝国軍が好機であると判断。兵の士気が低く腹を空かせている状況を見て、夜襲を仕掛ける決意を固めた。ワーレンの号令と共に、ファルーンの騎士たちは戦意を高めた。
9.バルカン戦線5
奇襲と混乱
グスタフ将軍は見張りや守備隊を配置していたが、山越え直後で気の緩んだ帝国兵たちは、赤と黒の騎士団による突撃を想定していなかった。赤の騎士団は槍兵陣を正面から突破し、黒の騎士団は野営地に火を放ち混乱を拡大。帝国兵は寝床を荒らされた怒りから反撃を試みるも、統率を欠き返り討ちに遭った。
将軍と団長の激突
戦況打開のため、グスタフは赤騎士団長ワーレンに挑み、重い偃月刀で圧倒する。息子ゲラシムも黒騎士団長クロムと交戦し、斧の一撃で互角以上に渡り合った。両軍の精鋭同士が馬上で激しく攻防を繰り広げたが、黒騎士団は妨害工作完了の報告を受け撤退を開始した。
撤退と帝国軍の後退
クロムは魔晶石による閃光で敵の視界を奪い、ゲラシムとの勝負を中断。ワーレンもクロムの合流を受けて退却した。グスタフは追撃を控え、野営地の被害と兵士の士気低下から、エゴールのいる城への撤退を決断した。
ハンドレッドの評価
撤退する帝国軍を見送ったクロムとワーレンは、グスタフとゲラシムの力量を認め、ロンザ帝国戦士の強さを実感。カサンドラの言葉通り、モンスター肉で鍛えられた力を侮れないとし、これからの戦いに高揚感を覚えていた。
Chapter.2
DUEL
10.先遣部隊
先遣部隊の進軍と内部対立
イワノフが派遣した先遣部隊は、威力偵察を目的にイーリス聖王国軍が籠もる城塞へ進軍していた。戦士と魔法使いの混成であったが互いに軽蔑し合い、協力関係は希薄だった。魔法使いは情報収集を本務とし戦闘意欲は低く、戦士たちも彼らを守る気はなかった。
ウォーウルフの急襲
城塞目前、森を進む魔法使い部隊は感知魔法を使っていたが、技術不足から感知を阻害され、こげ茶色のウォーウルフの群れに不意を突かれ全滅した。戦士たちは魔法使いの遅れに不満を漏らしつつ待機していたが、彼らの全滅を知らぬままだった。
空からの魔法実験
上空にはファルーン魔導士団が浮遊し、長のフラウが部隊を標的に魔法の威力試験を開始。ミカ、ノーアの順で段階的に威力を増す光球魔法を放ち、ロンザ戦士たちの魔法耐性を確認した。彼らは世代を超えた訓練により耐えたが、弓を使わぬ戦士には空の敵への反撃手段がなかった。
雷帝の一撃と殲滅
最終的にフラウが巨大な光球を放ち、森ごと地面を抉る威力で先遣部隊の戦士たちを全滅させた。その様子は、遠方から使い魔の鳥を通じてイワノフと側近たちが観察していた。
情報収集と戦略判断
イワノフは雷帝フラウの脅威と高い飛行魔法技術を確認し、先遣部隊の犠牲を織り込み済みとして満足を示した。彼はマトウ師対策の兵器を保有しており、雷帝を封じれば兵力差で勝利できると判断。後続軍の集結を背景に、イーリスと援軍ドルセン軍を一挙に征服する意志を示した。
11、スケルトンドラゴン
帝国軍の進軍と奇襲阻止
イワノフは先遣部隊の敗北から学び、視界の開けた街道を選んで進軍した。森はウォーウルフ潜伏防止のため焼き払い、上空監視と物理・魔法の複合結界で防御を固めた。これにより、キーリ率いるウォーウルフ隊も奇襲を断念し、フラウら魔導士団も攻撃を見送った。
防衛戦略会議の不安
城塞側の軍議で、ミカは帝国軍結界の高度さを報告し、魔導士団が攻撃に加われない可能性を示唆した。キーリもウォーウルフは正面戦に不向きで奇襲専用と述べ、ヴォルフはドルセン軍到着までの籠城案を検討したが、兵力差解消は見込めなかった。
帝国軍の攻城戦開始
帝国軍は攻城塔と破城槌を投入し、結界で防護しながら城壁と城門を攻撃した。結界の制御は精密で、攻城設備だけを覆い魔法や弓矢を無効化した。守備側は数の優位を活かすも、攻城塔の接近を阻めず苦戦した。
フラウの召喚―スケルトンドラゴン出現
戦況が悪化する中、城壁前に巨大な魔法陣が出現し、地中からスケルトンドラゴンが召喚された。怪物は攻城塔を一撃で破壊し、破城槌部隊も尾で一掃。呪いの青いブレスで戦士たちを腐敗死させた。過去の正妃決定戦でも使われた術であり、当時はカーミラが傘で討伐していた。
帝国軍の反撃と不死性の顕現
帝国戦士が足を破壊しても即座に再生し、反撃で戦士を惨殺した。魔法攻撃もフラウが頭上で展開した結界により無効化された。続けてフラウは『サンダージャッジメント』を発動し、無数の雷撃で帝国軍を壊滅状態に陥れた。
戦局の一時優位と新手の出現
聖王国軍は敵の壊滅に安堵し、このまま勝利かと思われたが、帝国軍野営地から新たな部隊が進軍を開始し、戦局は次の局面へ移行した。
12、バリスタ
結界師の活躍と攻城戦の優勢
イワノフは水晶球で前線を観察し、結界師たちの働きに満足していた。ファルーン魔導士団も結界に阻まれ手を出せず、このままなら城塞陥落は時間の問題と見込んでいた。城塞が落ちれば王都ガーデンまで障害はないと側近と語り、戦況は順調に進んでいた。
スケルトンドラゴンの出現
しかし、城壁突破目前に巨大なスケルトンドラゴンが突如出現し、帝国の攻城兵器を次々破壊した。指揮官たちはその異様さと危険性に驚愕し、イワノフは操るのが雷帝フラウであると確認した。フラウは悪名高きファルーン王妃で、強大な死霊を使役することが明らかとなった。
バリスタ投入とフラウ狙撃命令
イワノフはバリスタの出撃を命じ、さらにフラウ本人を直接狙うよう指示した。バリスタは大型クロスボウ型の魔道兵器で、矢は魔法追尾と破魔の力を持ち、あらゆる結界を貫通する設計であった。前線に到着したバリスタが矢を放つと、フラウの結界を破り、スケルトンドラゴンの腕を粉砕したが、フラウ本体への命中は阻まれた。
追尾矢と転移による回避
第二射は上空を円弧状に飛び、フラウを追尾したが、フラウは事前に用意した転移魔法で回避に成功。矢は行き場を失い消滅した。イワノフは次は必ず討てると自信を見せた。
聖王国軍内での分析と今後の懸念
その日の防衛戦後、ヴォルフは軍議でミカにバリスタの正体を尋ね、結界貫通の魔道兵器であると確認した。フラウは無事帰還したが、今後も同様に回避できる保証はなく、魔導士団の戦場投入は困難と判断された。ただし、スケルトンドラゴンが攻城兵器を壊滅させたため、帝国軍は攻めあぐねるだろうとの見方もあった。希望はドルセン軍の到着であり、3日持ちこたえれば勝機があると考えられたが、翌日から帝国軍の猛攻が再開された。
13.魔道砲
魔法使いの後退予測と総攻撃の決意
イワノフは、バリスタの威力を見たファルーン魔導士団は戦場に出なくなると判断した。魔法使いは本来臆病で後方支援が役割であり、飛行魔法による安全がなければ戦場に立たないと見ていた。フラウの実力を認めつつも、魔法使いであることが幸いだとし、非魔法系の強者が来る前に城塞を占拠する必要を説き、総攻撃を命じた。ドルセン軍の第二妃カーミラの接近も脅威として意識していた。
城門前での攻防とヴォルフの奮戦
攻城兵器を失った帝国軍は兵力を集中させた城門突破を試みたが、聖王国軍の抵抗に遭った。ヴォルフは城外に出撃し魔法使いを狙撃、二人を討ち取って帝国軍の結界を崩壊させた。狭い城門前での戦闘は数的不利を覆し、聖王国軍に有利に働いたが、結界師の損耗も発生した。
退却と切り札投入の決断
夕刻前にイワノフは退却を決断。城塞の堅牢さと攻城兵器の不足が攻略困難の要因であると悟った。側近から切り札「アレ」の使用を進言され、皇帝にも秘匿する兵器「魔道砲」の投入を決意した。情報漏洩防止のためジャミングを全戦場に展開することも決められた。
魔道砲の出現と構造
翌日、ヴォルフは敵陣に現れた巨大な金属筒を警戒し城内へ撤退。ミカは全域ジャミングを察知し、敵が兵器の存在を秘匿したがっていると推測した。魔道砲は質の悪い魔晶石を利用し、接触時に爆発させる兵器で、対魔法結界と対物理結界の双方を突破可能な威力を持つ。実験では中級ドラゴンを一撃で葬った記録があり、皇帝すら脅かす切り札だった。
城門破壊と帝国軍突入
イワノフは城門を標的に砲撃。第一射で外側の落とし格子を破壊し、破片でヴォルフの隣の騎士を即死させた。第二射で内側の格子も吹き飛ばし、城内への道を開いた。砲身の歪みと弾薬の貴重さから三連射後は冷却を要し、それ以上の使用は控えられた。帝国軍は直ちに突入し、三日目の攻防は白兵戦に移行した。
14.狂乱
ヴォルフの奮戦と劣勢の戦況
ヴォルフは剣技『巨刃』を発動し、城内へ侵入した帝国軍精鋭と交戦した。初撃は防がれたが、二撃目で敵戦士を弾き飛ばし奮戦する。しかし、帝国軍は数で圧倒しており、城門を塞がなければ押し切られる状況であった。ファルーン魔導士団はバリスタを警戒して魔法の使用が制限され、支援は中級雷撃に留まった。油断した魔導士が矢で射抜かれたことで精度は低下し、ヴォルフは撤退や王都への退却も視野に入れざるを得なかった。
狂乱の皇女カーミラの登場
城内が敵兵で埋め尽くされる中、突如バルコニーに現れた紫髪の美女が名乗らずともカーミラと察せられた。帝国兵はその美貌に目を奪われたが、カーミラは『重力の魔眼』で兵士たちを地面に沈め、骨を砕き無力化した。バリスタの必中矢も、視界を阻害する魔法のドレスにより逸らされた。
帝国兵の壊滅と恐怖の拡散
カーミラは城内の帝国兵に風の刃を放ち、戦士たちを瞬時に両断。恐怖した兵士たちは城門から逃走し始めたが、カーミラは外へ出て戦士部隊と対峙した。剣で風刃を消す戦士も、扇子からの衝撃波で吹き飛ばされ、後方の部隊は結界で防御するも接近を躊躇した。
重力の魔眼による大量殺戮
カーミラは再び『重力の魔眼』を発動し、何百もの兵士を一斉に跪かせ圧死させた。悲鳴と断末魔が響く中、カーミラは愉悦の笑みを浮かべた。疲弊し城門へ戻ったヴォルフは、その光景を目にして「これが狂乱か」と呟き、ドルセン国民への同情を深めた。
15.串刺し
イワノフの苦悩と対策会議
帝国軍指揮官イワノフは、カーミラの『魔眼』による部隊壊滅の報告を受けて激しく動揺した。側近の魔法使いは、魔眼は連続使用できず失明や死亡の危険があるため数日は使えないと進言。別の側近は、バリスタの外れは幻術によるものであり、補正を加えて狙えば命中可能と提案した。イワノフはこれらの意見を採用し、翌日の攻勢を決断した。
ドルセン軍到着と衝撃の蛮行
そこへ伝令が現れ、騎兵1000のドルセン軍先行部隊が到着したと報告。さらに、彼らが帝国兵の死体を杭に串刺しにして城前に晒していると告げる。イワノフはこの蛮行に驚愕し、兵士の士気低下を懸念した。カーミラの戦いぶりと合わせ、恐怖が兵士たちに広がっていた。
ヴォルフの抗議とカーミラの正当化
城内ではヴォルフがカーミラに敬意を欠く行為をやめるよう諫言したが、カーミラは意に介さず、侵攻してきた帝国こそが悪であり、罰は当然だと主張。軍議に同席していたフラウも「悪い子には罰を」と賛同し、二人の妃は意気投合した。
魔眼使用不能の告白と五天位の戦力
カーミラは魔眼の使用は寿命を削る行為であり、酷使すれば失明や死に至るため当面は使えないと明かした。串刺しによる威嚇は、その回復時間を稼ぐためでもあった。明日の敵襲については「実力で排除する」と言い切り、ドルセンの五天位の強さに自信を示すと、ジークムンドら四名が不敵な笑みを浮かべた。
16.五天位
カーミラの妨害と帝国軍の士気低下
翌朝、イワノフは兵士たちを鼓舞しようと演説を行い、敵は壊滅状態で残るは少数のドルセン軍のみと強調した。しかし、その最中もカーミラが城塞から衝撃波を繰り返し放ち、結界が弾く不吉な音が陣地に響き続けたため、兵士たちの士気は上がらなかった。イワノフはやむなく嫌がる兵士を無理やり出撃させた。
バリスタ狙撃とジークムンドの防御
城門前には1万のドルセン軍が布陣し、兵力差は5倍あったが怯む様子はなかった。イワノフは幻術対策として補正射撃を命じ、バリスタでカーミラを狙わせた。しかし発射直後、五天位筆頭ジークムンドが大剣で矢を真っ二つに斬り、防いだ。続く第二射も同様に防がれ、ジークムンドは乱戦になれば防御困難になると判断し、カーミラを城内へ退かせた。
五天位の奮戦
ドルセン軍は劣勢ながらも奮戦し、特に五天位の活躍が顕著であった。ジークムンドは大剣で敵兵や騎兵をまとめて斬り伏せ、ミネルバは暁の盗賊団と共に戦槌で敵兵を弾き飛ばした。レイアは炎狐傭兵団を指揮し、秩序だった戦闘を展開。サーシャは城塞内でカーミラを護衛し、侵入した戦士を防ぎ、カーミラの攻撃を援護した。シャーリーはアサシン部隊を率いて敵魔法使いを暗殺し、最終的にバリスタを破壊・炎上させた。
戦況の変化とアレクサンドル出撃
バリスタの破壊を確認したカーミラは再び戦場に戻り、衝撃波で敵部隊を蹴散らしたことでドルセン軍は反撃の勢いを得た。想定外の苦戦に苛立つイワノフだったが、側近から「あれ」の準備完了の報告を受け、腹心アレクサンドルに出撃を命じた。金髪の戦士は精鋭を率いて前線へ向かい、戦いは佳境を迎えた。
17.イワノフの切り札
キーリの奇襲とウォーウルフの狩り
森に潜伏していたキーリは、イワノフ本営から精鋭アレクサンドル部隊が前線へ向かった隙を見逃さず、ウォーウルフをけしかけた。囮部隊が正面から襲撃して注意を引く間に、別働隊が背後から本営へ突撃するという狩猟戦術が展開され、本営は混乱と惨状に包まれた。
大魔法陣の発動と圧倒的魔力
しかしイワノフは動揺せず、あらかじめ設置していた本営全域を覆う大魔法陣を起動。埋設された巨大魔晶石から無限の魔力供給を受け、詠唱不要で強力な魔法を連発可能となった。炎や風刃で次々とウォーウルフを屠り、キーリの退却も阻止しようとしたが、フラウの結界に防がれた。
フラウとの魔法戦とダークネスフレイム
空中から現れたフラウと激しい魔法戦を繰り広げたイワノフは、圧倒的な火力で結界を破壊寸前まで追い詰めた。危機を察したフラウは退避しつつ詠唱を進め、禁域級魔法ダークネスフレイムを放つ。黒炎が本営を呑み込むも、大魔法陣の力でこれを切り裂き、イワノフは無傷で立ち続けた。
フラウの消失とイワノフの推測
イワノフの魔力閃光がフラウを直撃するも、その姿は消失。転移魔法や魔道具の可能性を考えた後、契約紋による命を代償とした転移の禁呪を疑うが、確証は得られなかった。いずれにせよ再出現しても敵ではないと判断し、兵力温存を意識しつつ前線支援に向け、強大な魔力を練り始めた。
18.ノルフリッド平原の戦い
戦況の小休止と出陣準備
クロムとワーレンの強襲により帝国軍は一時撤退し、バルカン戦線は小休止となった。戦力に劣るバルカン・ファルーン側は自ら攻める余裕がなく、帝国側のグスタフも兵の回復を優先していた。戦を待ちきれないエゴールが出撃を迫るが、グスタフはカサンドラとの敗北経験を引き合いに出して制止する。最終的に二日後の出陣が決定し、エゴールは先陣を切ることとなった。
ファルーン側の作戦とルイーダの助言
帝国軍の進軍を察知したクロムは幹部を招集し、バルカン軍が本隊を抑える間にクロムとワーレンがグスタフ・ゲラシムを引き受け、その隙にオグマ率いるハンドレッドがエゴールを討つ作戦を確認した。ルイーダはオグマに「死ぬな」と助言し、マルスがハンドレッドに死者を出していないことを誇りとしていると伝える。これを真に受けたオグマは、生還を誓って戦場へ向かった。
両軍の激突と四天王の出現
平原に進軍したエゴールはオグマを一騎打ちの相手に指名し、直属の戦士団とともに進撃。戦士団の中でも精鋭の四天王はアーロン、バリー、ビル、ブルーノを各個に狙う。ハンドレッド側も応戦の構えを見せ、作戦を変更して正面衝突に臨むこととなった。
ノルフリッド平原の戦いの幕開け
オグマとエゴールが互いに雄叫びを上げて突進し、両軍は盾と武器を打ち鳴らしながら獣の如き勢いで衝突。ハンドレッドと帝国戦士団の精鋭同士による激戦が始まった。この戦いは後に「ノルフリッド平原の戦い」と呼ばれ、ハンドレッドが初めて敗北を喫した戦いとして歴史に刻まれることとなった。
19.戦士たち
帝国戦士たちの蛮勇
オグマを援護しようとジュウザやワンフーらがエゴールに迫ったが、帝国戦士たちが割って入り阻止した。彼らは武器も鎧も統一されていなかったが、盾には竜や獅子などの獣が描かれており、共通して蛮勇を持っていた。相手の間合いに躊躇なく踏み込み、傷を負っても怯まずに攻め続ける姿は、ハンドレッドがイーリス戦で得た狂気を体得したようであり、ファルーン側に恐怖を与えた。
ワンフーの突撃と逆襲
恐怖で勢いを失ったハンドレッドだったが、ワンフーが雄叫びを上げて敵陣に突入。全身に攻撃を浴びながらもブラッディロッドで敵を薙ぎ払い、血煙を舞わせて暴れた。その狂気が仲間たちを奮い立たせ、ファルーンの狂気と帝国の蛮性が正面からぶつかる消耗戦へと発展した。
グスタフ・ゲラシム隊との交戦
左右から介入しようとしたグスタフとゲラシムの部隊は、クロムとワーレンが阻止。ワーレンはゲラシムと激突し、互いの馬が倒れるまで力比べを続けた。一方クロムは技量と経験で勝るグスタフに苦戦し、攻めを抑えて抑え役に徹した。グスタフはクロムを評価し配下に誘ったが、クロムは将来逆に配下にすると強がり返した。
オグマとエゴールの激闘
オグマは必殺技「ストームバースト」を放つも、エゴールは避けずにわずかな傷を負うのみで笑みを浮かべた。以降、剣とウォーハンマーの応酬に加え、蹴りや拳、頭突きまで交えた肉弾戦となり、互いに全身傷だらけになりながらも笑い合い戦い続けた。最終的に、先に膝をついたのはオグマであった。
20.シーラ立つ
オグマの退却と戦線の引き際
エゴールとの死闘で膝をついたオグマは、なお闘志を残していたが肉体が限界に達していた。軽い攻撃で隙を作り、死を避けるため撤退を開始すると、ハンドレッドや黒・赤の騎士団もそれに合わせて退却した。帝国軍本隊を抑えていたバルカン軍も潮時と見て後退を始めたが、その追撃を王都トラキアから駆け付けた騎士団が阻止した。
白銀の女騎士の参戦
先頭には双剣を操る銀髪の女騎士シーラが立ち、出産からわずか三日で戦場に姿を現した。護衛のヤマトらが後衛を固め、シーラは辛さを隠しつつも敵兵を次々と討ち取った。その姿は敵味方を驚かせ、エゴールも興味を示すほどであった。
シーラ出陣の経緯
三日前に男子シモンを出産したシーラは、翌日には出陣を決意。侍女たちの制止にも「子が生まれたからこそ戦場に向かう」と断言し、最悪はファルーンへの避難を指示した。戦力不足が懸念される中、護衛のヤマトが同行を誓った。
騎士団の復帰と結束
翌日、城を出ようとしたシーラの前に、かつて国王派として散っていたバルカンの騎士団が中庭から城外まで集結していた。彼らはシーラの決意に触発され、帝国討伐を誓った。この予期せぬ集結が、バルカン軍の戦力を一気に底上げした。
出陣前の演説と士気高揚
シーラは双剣を掲げ、祖国防衛の誇りと決意を訴える演説を行い、数や力に劣っても心が折れぬ限り勝機はあると鼓舞した。この言葉に騎士たちは「バルカン万歳」と唱和し、死を恐れぬ覚悟で彼女と共に戦うことを誓った。
21.トラキアの戦い
トラキアへの帰還と野戦の決断
シーラの救援で撤退に成功したファルーン・ドルセン軍は王都トラキアへ帰還した。敗北にもかかわらず、シーラが帝国軍の追撃を退けたことで士気は高まり、民衆も防衛の意志を固めた。軍議でシーラは野戦を主張し、籠城では民衆を巻き込む惨事を避けられないと説明した。オグマはエゴールとの再戦に闘志を示し、他の将も最終的に野戦方針に同意した。
戦力再編と団結
炎剣ファビオがバルカン軍の消耗を懸念する中、シーラは自ら率いた元反乱軍の騎士を正規部隊に組み入れる提案を行った。わだかまりを越えて団結すべきという言葉に反論はなく、指揮はシーラが主導し、決戦の準備が整えられた。
両軍の布陣と交戦開始
二日後、トラキア前面で両軍が対峙した。帝国軍はエゴールを先頭に突進し、側近たちは各自の宿敵に向かって散開。城壁上からジーノの弓隊が援護射撃を行うが、帝国戦士には効果が薄く、兵士を狙う戦術に切り替えた。
両翼の戦いと戦況の変化
左翼ではクロムがグスタフに押されていたが、偃月刀の柄を狙い続けて破壊し、形勢を五分に持ち込んだ。右翼ではワーレンとゲラシムが武器を捨て、素手での殴り合いに移行。両軍の部下は手出しを控え、周囲で戦闘を続けた。
決戦への接近
戦場が混沌を極める中、シーラ、オグマ、ヤマトの三人はついにエゴールと直接対峙し、決戦の火蓋が切られようとしていた。
22.エゴール
エゴールの挑発と交戦開始
戦場でエゴールは突然シーラに求婚めいた挑発を行うが、シーラは軽蔑を込めて断り、場の空気は一気に戦闘へと傾いた。ウォーハンマーの横薙ぎによる凄烈な一撃は、シーラたちを後退させるも、その巨体と豪快さにヤマトは感嘆。続く猛攻でオグマは吹き飛ばされ、ヤマトも左手の平手打ちで地面に叩きつけられる。
シーラの反撃と限界
シーラは魔法を纏った双剣で高速の連撃を仕掛け、エゴールの鎧を容易く斬り裂くが、出産後の体力低下から次第に呼吸が乱れ始める。動きの鈍りを見逃さず、エゴールがウォーハンマーで反撃するも、オグマが身を挺して防ぎ、吐血しながらも耐える。
ヤマトの奇襲と失敗
ヤマトは跳躍して首を狙うが、エゴールは剣を口で噛み砕き、心理的衝撃を与えたうえで平手で地面に叩きつける。直後、オグマとの鍔迫り合いで優位に立ち、蹴り飛ばすが、ルイーダの回復魔法によりオグマ・シーラ・ヤマトが再び戦線に復帰する。
ルイーダへの攻撃と激化
エゴールは回復役を許さず、ヤマトを掴んでルイーダへ投げつけ、彼女を失神させる。この行為に激昂したシーラとオグマが同時に斬撃を放つが、エゴールは傷を顧みずに殴り返し、両者の武器を絡め取る。オグマは再び吹き飛ばされ、シーラの双剣は一本が折れ曲がる。エゴールは剛腕でシーラに迫り、彼女を力ずくで屈服させようとする場面で緊迫の度合いが頂点に達した。
Chapter.3
THE RETURN OF THE KING
23.王の帰還1
フラウの危機と転移
マルスはトリノ国での戦闘後、フラウの転移魔法でイーリスの城塞へ到着した。しかし彼は異常な疲労と眩暈に襲われ、原因を問うとフラウは「殺されかけたため契約紋を使い瞬間転移した」と説明した。この契約は愛する者の命を魔力に変える効果を持ち、マルスはその代償で死にかけていた。フラウは彼の魔力量を頼りにし、危機を脱したと告げた。
帝国軍本営への突入
フラウは近くで戦うロンザ帝国軍に因縁を抱き、マルスに抱きかかえられたまま本営へ急行。道中で兵士を魔法で退け、本営中央で魔法を放とうとする男と対峙する。男は大魔法陣の力で無敵を誇るが、フラウの指示でマルスは風魔法を発動しつつ接近、杖で男を殴打して戦闘不能にした。
雷帝の蹂躙と死霊軍団
その後、フラウは雷撃で本営の兵士を一掃。さらに死霊魔術で帝国兵の死体をグールとして蘇らせ、敵前線に送り込んだ。この魔術は噛まれた者を新たなグールに変えるため、戦場は混乱に包まれた。マルスは倫理面から危惧するが、フラウは戦力確保として意に介さなかった。
シーラ救援への転移
本営撃破後、フラウはバルカン側で苦戦するシーラの救援を提案。マルスは黒い鎧を装着し、転移魔法で次の戦場へ向かうこととなった。休む間もなく再び戦場に送られる彼は、フラウの無慈悲な行動に半ば諦めを抱きつつ光に包まれた。
24.アレクサンドル
ミネルバとの遭遇と圧倒的な槍技
イワノフの腹心アレクサンドルは精兵を率いて城塞へ向かう途中、豪快な戦斧さばきで帝国兵を薙ぎ倒すミネルバと遭遇した。彼女を山賊呼ばわりし、槍で圧倒。バランスを崩したミネルバを追い詰めるが、レイアの介入で戦いは中断される。熟練の突きでレイアをも防御一方に追い込み、剣を弾き飛ばす。
シャーリーの乱入と三対一の戦況
必殺の一突きを放つ直前、シャーリーが短刀を投げて妨害。アレクサンドルは怒りを露わにし、シャーリーに迫るが回避され、傷を負わせるに留まる。隙を突いたミネルバの背後からの攻撃も石突で封じ、さらにレイアも落馬させる。三人の五天位を同時に相手取り、戦況を帝国軍優位に傾けた。
ジークムンドとの一騎打ち
空から現れたドルセン最強の男ジークムンドが介入し、ミネルバたちは戦線維持のため離脱。竜殺しの一族の末裔と知ったアレクサンドルは警戒を強め、互いに一騎打ちを開始する。アレクサンドルは必殺技「流星槍」で一時優位に立つが、ジークムンドも笑みを浮かべ応戦する。
戦場の異変と帝国軍の再編
帝国後方でグールが兵士を襲う異変が発生。ドルセン軍は即座に撤退し、ジークムンドも退場する。アレクサンドルは兵を再編成し、密集陣形でグールを撃退し始める。しかし、キーリ率いるウォーウルフ部隊が側面から奇襲を行い、陣形を破壊。さらに噛まれた兵士が次々とグール化し、混乱が拡大した。
主との再会と窮地
混乱の中、アレクサンドルは首の折れたグールがイワノフ本人であることに気づく。一瞬の躊躇が命取りとなり、死者たちが彼に群がった。
25.王の帰還2
劇的な登場と対峙
シーラがエゴールに捕らわれかけた瞬間、激しい爆発が戦場を揺るがし、彼女はその隙に距離を取った。煙が晴れると、黒い鎧を纏ったマルスが片膝をついた姿で現れる。王者の風格を漂わせ立ち上がったマルスに、シーラは驚きと安堵の声を上げた。エゴールもその存在感に警戒を強め、両者は名乗りを交わし対峙する。
初撃と戦況整理
エゴールの巨大なウォーハンマーは地面を砕き、衝撃でクレーターを深めた。遠距離攻撃は一掃され、接近戦を余儀なくされたマルスは、戦場で倒れていたオグマを叩き起こし、戦線を分担させる。オグマとヤマトは周囲の帝国兵に向かい、マルスはエゴールとの一騎打ちに集中した。
シーラの退避と激闘
マルスはシーラに城の防衛を託し退避させる。残された両者は互いの力量を試すように攻防を繰り広げ、マルスはカサンドラ譲りの戦術でエゴールの隙を突き、腹部に蹴撃を命中させる。エゴールは反射的に防御しつつ反撃を続けたが、マルスは軽やかに回避し鎧を刻み続けた。
血統と肉の因縁
エゴールは自らを始祖ロンザ帝の子孫と誇り、敗北を認めず猛攻を続ける。しかし会話の中で、ロンザ帝国ではモンスターの肉は月に一度、法で定められた禁忌食材であることが判明。マルスが「毎食食べている」と告げると、エゴールは驚愕し、その常食こそが短期間での力の源と理解する。
価値観の衝突
エゴールは、毒同然の肉を常食とするマルスたちの生き方に困惑し、「もっと人生を楽しむべきだ」と諭すように告げる。戦いの最中にもかかわらず、両者の間には力の源と生き方を巡る価値観の違いが鮮明に浮かび上がった。
26.魂の絆
モンスター肉常食の理由と過去
マルスはエゴールにモンスター肉を毎食食べる理由を問われ、当初は生きるため、毒入りの食事を避けるためだったと説明した。しかし、振り返るうちに剣聖カサンドラの指導で強制的に食べ続けさせられていたことを思い出す。エゴールはその名に反応し、彼女が自身の姉であると明かした。
カサンドラとの因縁
エゴールは幼少期、姉カサンドラの実験台としてモンスター肉の摂取量を段階的に増やされ、最終的には毎日食べさせられた過去を語る。逃亡しても追跡され、寝込みに生肉を口に押し込まれた経験を持ち、これを「人としての尊厳を奪う行為」と断じる。
価値観の共有と危機感
エゴールは、食事の楽しみを犠牲にしてまで強さを追求する生き方を否定し、マルスに「真の敵は身近にいる」と説く。カサンドラがこのまま権力を握れば、大陸全体がモンスター肉を常食とする力至上主義国家に変貌すると警告した。
共闘の提案
エゴールはマルスに共闘を持ちかけ、今回の戦いの勝利を認めたうえで、自軍をファルーン側に加勢させると約束する。マルスもまた、カサンドラを排除すれば自らを抑える存在が消え、国の安定が図れると考え、提案を受け入れた。
義兄弟の契り
両者は義兄弟として固く握手を交わし、「二人で力を合わせれば恐れるものはない」と確信した。この瞬間、カサンドラ打倒のための同盟が成立した。
27.カサンドラ
ヴォルフの葛藤とグールの停止
城壁上のヴォルフは、グールに襲われ帝国兵が次々と変貌していく惨状を見て葛藤していた。敵である帝国軍を救いたい気持ちと、味方であるグールへの攻撃禁止命令の間で揺れていたが、突如グールたちが動きを止め倒れた。ミカはフラウが魔法を中止したと説明し、帝国兵の死体だけを利用するための慈悲だと語った。ヴォルフは疑念を抱きつつも勝利を認めざるを得なかった。
フラウの判断と転移
フラウはマルスとエゴールの会話を通して、カサンドラが元凶であるとの発言を聞き取り、事態の悪化を察知。死霊魔術を停止し、イーリスでの勝利を確定させた後、転移魔法でカサンドラを連れてファルーンからバルカンへ向かった。
義兄弟の宣言と中断
マルスとエゴールは義兄弟の契りを交わし、カサンドラ討伐を目指す同盟を宣言。戦場にエゴールの降伏が響き渡り、帝国軍とハンドレッドの戦闘が停止した。だがその直後、カサンドラとフラウが白い竜に乗って到着し、場の空気が一変する。
カサンドラとエゴールの再会
カサンドラの姿を見たエゴールは萎縮し、防御姿勢を取って震えた。久しぶりの再会にもかかわらず、姉への恐怖心が強く、マルスは彼の深いトラウマを察する。カサンドラは国を自分のものと主張し、妃として「夫のものは私のもの」と言い切った。
真の敵のすり替えと侵攻決定
カサンドラに詰め寄られたマルスは、咄嗟に「ロンザ帝国の皇帝」を真の敵と偽る。カサンドラはそれを承諾し、実父である皇帝討伐を即決。エゴールも姉の命に従い、全面協力を約束した。帝国兵の反発は、カサンドラの威圧によって瞬時に封じられた。
28.マリア
教皇マリアの奇跡的到来
イーリス聖王国北部での戦闘が終結した直後、教皇マリアが突如城塞に現れた。入城前に祈りを捧げ、「ヒーリングフィールド」による癒しの奇跡を発動し、聖王国軍、ファルーン魔導士団、ドルセン軍、さらには捕虜の帝国兵まで全員を癒した。兵士たちは奇跡の主がマリアであると知るや歓喜し、その姿を一目見ようと城壁や城門前に集まった。
カーミラとの再会と外交合意
マリアはまずドルセン女王カーミラのもとを訪れ、戦闘支援への感謝を述べた。両者は必要以上に深入りせず、ドルセンの救援謝礼を金銭または農作物で処理することで合意した。カーミラはマリアを胡散臭く感じつつも、取り分が守られている限り衝突の意思はなかった。
魔導士団への弔意と祈り
次にマリアはファルーン魔導士団を訪問し、戦死者の名をミカから聞き取り、彼らの名を織り込んだ祈りを捧げた。その美声と荘厳な祈りは魔法使いたちの心を打った。
兵士たちへの演説と舞い
城塞バルコニーにて、マリアは指揮官ヴォルフに謝意を述べ、兵士全員に向けて熱のこもった演説を行った。勇気と使命を称えた後、踊りを伴う祈りを披露し、イーリス兵、ドルセン兵、捕虜の帝国兵までも魅了した。彼女は巧みに視線を配り、全員が自分と目を合わせたと錯覚させる演出で観衆を熱狂させた。
カーミラの評価とマリアの本心
カーミラはその光景を「恐るべき人心掌握術」と評し、側近シャーリーも計算された動きと演出力を称賛した。マリア自身は、登場のタイミングと演出効果に満足し、これで自身の地位が揺らがないと確信。捕虜への癒しを布教の足掛かりとし、ロンザ帝国内にマーヴェ教を浸透させる長期戦略を思案していた。
29.西側諸国
帰還とエゴールの同行
カサンドラの突発的な「ロンザ帝国行軍」発言を抑え込み、マルスらはファルーンへ帰還した。エゴール軍はバルカン北部に残留し、エゴール本人のみがカサンドラの強引な誘いで同行した。部下のグスタフとゲラシムは別れを惜しみつつも、カサンドラの存在を理由にファルーン行きを回避した。ファルーン到着後、エゴールは娘ヒルダの世話を任されるが、引き渡しはカサンドラによる投擲で行われ、ヒルダが顔面に着地するという父にとって衝撃的な場面となった。
戦力消耗と侵攻抑止
今回の戦いにより、バルカン、イーリス両国は大きな損害を受け、ファルーンとドルセンも戦力を消耗していた。マルスはロンザ帝国への侵攻は現状不可能と判断し、カサンドラの派兵要求を抑えるため日々剣の稽古で機嫌を取った。
リゲンの西側侵攻計画
ロンザ帝国皇太子リゲンは、エゴールの捕縛とイワノフの戦死による混乱を好機と捉え、自身の地位強化を確信。ファルーンの強さを認めつつも、疲弊した現状を利用し、西側諸国への南征を独断で開始した。西側はファルーンとの協力関係がなく、対応が遅れると見込んだリゲンは、皇帝に無断で軍を進め、自らの功績と皇位奪取を狙った。
西側救援の是非
急報でロンザの西侵を知ったマルスは、地理的距離と戦力不足から不介入を選択。だが会議でマリアが住民救援を強く主張し、道義的責任を訴えた。これに対しクロムは距離と兵の疲弊、ガマラスは財政負担を理由に反対。マルスは穏健姿勢を見せ、戦争回避とカサンドラの侵攻意欲抑制を狙った。
不意の指名
会議終盤、突如フラウが「マルスが解決する」と発言し、場を驚かせた。マルスの意図とは異なる方向へ議論が動く兆しが見えた。
30.、西のそよ風
帝国軍と連合軍の激突
ラズレ北部のバルシスにおいて、ロンザ帝国軍2万と西側諸国連合軍5万が激突した。数では連合軍が優位であったが、統率・装備に劣り、寄せ集めの民兵に近い戦力であった。一方、帝国軍は南征に備えた訓練を積んだ精鋭であり、戦力差は明白であった。それでも連合軍は高い士気と人海戦術により善戦し、7日間の消耗戦を展開したが、帝国軍は弱小国の部隊を狙って各個撃破し、連合軍は崩壊した。
ハンドレッドの集結
消耗した帝国軍が進軍を控えていたところ、武装も装備も雑多な約1000人の集団が出現した。その先頭はラズレのハンドレッド1位カルロスであり、続いてトリノの1位タイラーをはじめとする各国のハンドレッドが次々と合流した。彼らは「西のそよ風」を名乗り、伝説的存在「そよ風」に導かれたと称して帝国軍に突撃した。
帝国軍の敗北
戦術も陣形もなく見える彼らは、鍛え抜かれた戦士として帝国兵を圧倒した。帝国軍将軍は混乱の中、カルロスと対峙したが、戦況は覆らず、帝国軍は撃退された。
正体発覚と誤解
魔法で戦況を見ていたフラウは、勝利したのが連合軍ではなく「西のそよ風」であると報告。会議の場でガマラスが「そよ風」の正体はマルス王であると暴露し、ニコルも「西側強化のための潜入行動」と解釈して説明した。出席者たちはその説明を賞賛し、マルスは真実を隠したまま受け入れる姿勢を見せたが、内心では罪悪感を抱いていた。
EPILOGUE
西のそよ風との会談
西側諸国がロンザ帝国との戦いで敗北した後、国の求心力は失われ、代わって『西のそよ風』が台頭した。しかし統治能力に乏しい彼らは政治的混乱を招き、治安も限界を迎えつつあった。ガマラスはこれを機に官僚団を送り込み、ファルーン法による統治と治安維持を『西のそよ風』に委ねる構想を立案。マルスはそれを有効策と認めつつも、彼らの反発を懸念した。イーリスからラズレ国へ赴いた一行は、城前でチンピラと衝突。カルロス率いる各国ハンドレッド1位たちと対面し、当初は法治導入を拒否されるが、フラウがマルスに緑のローブと杖を装備させ、ガマラスがマルキスの正体を明かすと、彼らは驚愕と共に忠誠を誓い、ファルーンの下に入ることを承諾した。
ロンザ帝国遠征への決意
その後、マルスはトラキア王城で妻シーラと生まれたばかりの息子シモンと穏やかな時間を過ごす。戦争への出立を渋るマルスに、シーラは「バルカンのために」と遠征を後押し。マルスはその期待を裏切れず、また剣聖赤鬼の介入を避けるためにも出立を決意した。カサンドラの圧とシーラの想いを背負い、マルスは北の地ロンザ帝国へ向けて旅立とうとしていた。
【電子版限定特典SS】 勇者ファルーン
勇者ファルーンの出自と力の秘密
ファルーン国は、古の勇者ファルーンが魔族の中央侵攻を防ぐ盾として建国したものである。彼は卑しい身分に生まれたが、やがて無敗を誇る高名な冒険者となった。その強さの秘密は幼少期から密かに食べ続けてきたモンスターの肉であった。通常の狩猟対象よりも仕留めやすいモンスターを剣で倒し、その肉を食べることで力を得ていたが、当時これは禁忌とされていたため人目を避けて摂取していた。仲間も薄々気付いていたが黙認していた。
魔王討伐と呪われた装備
魔王が台頭し、人間諸国は分断され敗北寸前となる。莫大な報酬と王位を条件に、ファルーンは魔王討伐へ赴き、激戦の末に勝利して魔族を魔獣の森奥へ退けた。彼はその国を自らの名で呼び、仲間を騎士団や魔導団の長に任じた。表向き伝わる「勇者の白銀装備」は後に作らせた偽物で、実際は邪神の加護を受けた漆黒の呪われた鎧と剣を愛用していた。モンスターの肉で毒に耐性を得ていたため使用可能だったが、外聞を憚り、装備は魔獣の森の地下遺跡に隠し、自らの墓もそこに造った。子孫には「肉を喰え」と口伝したが真意は伝わらなかった。
マルスとの邂逅と力の継承
幾星霜を経て、ゼロスとなったばかりのマルスが偶然遺跡を発見し拠点候補として探索する。亡霊となっていたファルーンは当初侵入者を討つつもりだったが、マルスが命を狙われ孤立する境遇や、赤髪の師に強制的にモンスターの肉を食べさせられている話を聞き、同情する。妄執が解けて天へ召される直前、漆黒の鎧と剣をマルスに授けた。鎧の毒で体調を崩すマルスは、呪いが解けるまで外せないと告げられるが、直後にファルーンは消え、彼の存在はマルスの記憶からも失われた。その後、遺跡はハンドレッドの拠点となり、鎧に慣れたマルスは黒い装備を愛用し、その姿はゼロスとして歴史に刻まれることとなった。
同シリーズ
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件





同著者の作品
誰が勇者を殺したか



死霊魔術の容疑者

悪の令嬢と十二の瞳

その他フィクション

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