物語の概要
■ 作品概要
本作は、VRMMORPG《ソードアート・オンライン》(SAO)の世界を舞台に、主人公キリトとヒロインのアスナの新婚生活を描いたファンタジー小説である。
《アインクラッド》七十五層の攻略が始まった頃、互いの気持ちを確かめ合ってシステム的にも結婚した二人は、第二十二層のログハウスで穏やかな暮らしを送り始める。
前半では、二人が隠し設定である「倫理コード解除」を有効にしたことで、全装備解除時のリアルな皮膚感覚を体感しながらお風呂や親密な触れ合いを楽しむ様子が綴られる。
後半では、アスナの「揺り椅子をオーダーメイドしたい」という願いを叶えるため、第三層の腕利き木工職人マホークルのもとを訪れたことで、本来SAOには存在しないはずの兵器「バリスタ(弩砲)」をめぐる秘密や、クリティカルヒットを追求する「会心道」の暗躍に巻き込まれていく。
■ 主要キャラクター
- キリト(桐ヶ谷和人):本作の主人公であり、片手剣使いの少年。
レベル99に達しており、ユニークスキル《二刀流》を保持している。
最前線の攻略から一時離脱し、第二十二層のログハウスでアスナとの甘い結婚生活を始める。
アスナの希望に応えるため、不要となった両手剣スキルを削除して釣りスキルを修業する。 - アスナ(結城明日奈):本作のヒロインであり、《閃光》の異名を持つ細剣使いの少女。
料理スキルを完全習得しており、キリトに素晴らしい新婚料理を振る舞う。
コラルの家具屋で見かけたマホークル製のテーブルに目を奪われ、彼女に二人用の揺り椅子を注文する。 - マホークル:第三層ズムフトにアトリエを構える、木工細工スキルを完全習得した小柄な女性職人。
木工に加えて裁縫や長柄武器作成スキルも極めて高い。3つの特定生産スキルの複合効果により、本来ゲームに存在しない巨大石弓「バリスタ(弩砲)」のレシピを発見した。
その正体は、真クリティカルを追求する「会心道」の頭目(リーダー)であり、ユニークスキルのアンロックを目指して、動かないボスであるインドレント・トレントをバリスタで射撃し続けている。 - エギル:第五十層アルゲードで何でも屋を経営する巨漢の商人であり、両手斧使いの攻略組プレイヤー。
かつて最前線での戦いに迷いを感じて木こりをしていた頃、マホークルと知り合って「相棒」となり、彼女の依頼で各地の森からレア木材を集めていた。マホークルからウッドシャフトの優秀な両手斧を贈られており、現在も大切に保管している。 - クライン:ギルド《風林火山》のリーダーを務めるカタナ使い。
キリトに呼び出されて第二十二層のコラルを訪れ、二人の結婚を知って絶叫する。
最前線の攻略状況を伝えるとともに、かつてエギルが夜な夜な各地の森を回って丸太を集めていたという思い出話を披露し、キリトたちにマホークルとの接点をもたらす。 - タイコク:真クリティカルを追求する「会心道」のメンバーであり、鉢巻きを締めた大柄な両手棍使いの男。
完全習得した追跡と鑑定スキルの複合Mod《物品追跡》を用いて、キリトたちのログハウスにあるマホークル製のテーブルを特定し、突然前庭に座り込んでいた。
偽の鹿児島弁(薩摩弁)を操り、ユニークスキル《二刀流》の取得条件とマホークルの行方を賭けて、高性能な木剣を報酬にキリトに初撃決着のデュエルを申し込む。
■ 物語の特徴
- 甘い新婚生活と「倫理コード解除」の描写: 本作の前半は、デスゲームの最前線から離れた二十二層のログハウスで繰り広げられる、キリトとアスナの極めて甘いイチャイチャした日常が徹底して描かれる。
特に、メニューの奥深くにある「倫理コード解除設定」をオンにすることで、装備をすべて解除した際の皮膚感覚リミッターが緩和され、お風呂の水圧や濡れる感触、お互いの手の温もりが現実の肉体以上にリアルに体感できるようになるという、SAO独自の知られざる感覚拡張システムにスポットが当てられている。 - ゲーム仕様の裏を突く「コンポジション」と「バリスタ」: 魔法や弓矢といった長射程の飛び道具が「奇跡の喪失(フォルフィチュア)」の設定によって完全に排除されているアインクラッドにおいて、特定の生産スキルを高レベルで組み合わせることで、固定式の超巨大石弓「バリスタ(弩砲)」が製造可能になるという、システム的な盲点と技術的ロマンが描かれている。
- 真クリティカルとユニークスキルへの執念、そして管理システム: モンスター相手に「真クリティカルヒット」を一万回出すことで、新たなユニークスキルが解放されると信じる「会心道」の求道的な執念が物語の裏の軸となっている。
また、ゲームに存在しないはずのバリスタによる「アウトレンジ(射程外)からの安全なボス攻撃」が繰り返された結果、システム(カーディナル)がリアルタイムに対処してフィールドボスの行動や能力を理不尽に超絶強化(自走化)させてくるという、仮想世界の冷厳な管理ロジックが暴かれる展開も魅力である。
書籍情報
ソードアート・オンライン マテリアル 1 シュガーリィ・デイズ
著者:川原礫 氏
イラスト:abec 氏
出版社:KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2026年8月7日
ISBN:9784049524376
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あらすじ・内容
キリトとアスナの新婚生活を描く『SAO』史上最甘エピソードが解禁!
《アインクラッド》七十五層の攻略が始まった頃。キリトとアスナは、互いの気持ちを確かめ合い、ついに結婚した。
「……したいことして、いいんだよ……キリトくんだけの、わたしなんだから」
キリトとアスナの新婚生活を描く『SAO』史上最甘のエピソードが、ついに白日の下に晒される――!
だが、物語はそれだけでは終わらない。
「あのね……揺り椅子をオーダーメイドしたいなーって」
若奥様アスナの願いを叶えるべく、腕利きの木工職人プレイヤー・マホークルのもとを訪れたキリトたちだが、それは二人を思わぬ事態へと導いていき……。
ソードアート・オンライン マテリアル 1 シュガーリィ・デイズ
感想
尊い表紙からして、もう内容はだいたい想像できる。
結婚したばかりのキリトとアスナ。
二十二層のログハウス。
誰にも邪魔されない新婚生活。
実際、前半はその期待をまったく裏切らない。
むしろ想像以上に甘い。
砂糖を吐きそうになるくらい、キリトとアスナがずっとイチャイチャしている。
しかし後半になると雰囲気が一変する。
アスナが気に入った一枚板のテーブルをきっかけに、木工職人マホークル、謎の弩砲、そして真クリティカルを追い求める《会心道》へと話が広がっていく。
ただの新婚短編集なのかと思っていたら、思った以上にSAOらしい謎と戦闘が詰め込まれていた。
とにかく甘い。新婚二人の距離が近すぎる
物語は、キリトがアスナへ正式な《マリッジ申請》を送るところから始まる。
すでに言葉ではプロポーズを済ませている。
それでもシステム上の結婚ボタンを押す瞬間には緊張する。
そしてアスナが承諾し、二人は正式な夫婦になる。
ここからがすごい。
朝起きればアスナが朝食を作っている。
一緒に買い物へ行く。
ログハウスで寄り添う。
お風呂にも一緒に入る。
二人で心臓の音を聞き合う。
倫理コード解除による触覚の変化まで話題になる。
これでもかというほど新婚生活を見せつけられる。
正直、
「はいはい、ごちそうさまです」
と言いたくなる。
だが、それが嫌ではない。
むしろSAO本編では、二人が結婚してから最前線へ戻るまでの穏やかな時間は、意外と細かく描かれていなかった。
だからこそ、こうして二十二層で本当に夫婦として生活している姿を読めるのが面白かった。
戦闘や攻略ではない。
朝ごはんを食べる。
家具を選ぶ。
風呂に入る。
一緒に座る椅子を欲しがる。
そんな普通の生活を二人が楽しんでいる。
デスゲームの中だからこそ、この何でもない日常がものすごく贅沢に感じられた。
幸せな時間だからこそ、いつか終わることが見えてしまう
ただし、甘いだけではない。
キリトもアスナも、この生活が永遠に続くとは思っていない。
自分たちは攻略組を一時的に離れているだけである。
七十五層の攻略が進めば、再び最前線へ戻ることになるかもしれない。
そして、もしSAOがクリアされれば、このアインクラッド自体が消える。
二人で暮らすログハウスも。
家具も。
空も。
この仮想の身体も。
その不安を口にするキリトに対して、アスナが話す「架空線」の話が印象に残った。
仮想世界そのものは実在しない。
しかし、現実世界に眠る二人の脳から発せられた信号は、確かにネットワークを通って相手へ届いている。
だから二人の繋がりまで架空なわけではない。
この考え方がよかった。
ゲーム世界での出来事だから偽物なのではない。
そこで感じたことや、一緒に過ごした時間まで消えるわけではない。
新婚イチャイチャの中に、こういう少し切ない話が混ざっているところが『シュガーリィ・デイズ』の魅力だと感じた。
アスナが気に入ったテーブルから話が変わる
後半の始まりは、家具選びである。
コラルの家具屋でアスナが見つけた、ウォルナットの一枚板テーブル。
値段は七十万コル。
キリトは値段を見てひっくり返りそうになる。
ところがアスナは、
「現実なら一千万円くらいする」
と普通に受け止めている。
この金銭感覚の違いも少し面白かった。
最終的には別の手頃なテーブルを買うものの、アスナはその高級テーブルを作ったプレイヤー《マホークル》に興味を持つ。
そして、
「二人で並んで座れるロッキングチェアを作ってもらいたい」
と言い出す。
ここまでは完全に新婚家具選びである。
ところがマホークルを探し出したところから、話が急に怪しくなる。
彼女は高レベルの木工職人。
さらに《木工》《裁縫》《長柄武器作成》という三つの生産スキルを組み合わせることで、誰も知らなかった新しいコンポジションを発見していた。
作れるのは、
《バリスタ》。
巨大な弩砲である。
家具職人を探しに行ったはずなのに、突然攻城兵器が出てくる。
この落差には笑ってしまった。
第四層で急にプログレッシブの記憶が蘇る
マホークルに頼まれた素材を集めるため、キリトとアスナは第四層へ向かう。
ここで、
「あれ、これ読んだことがあるぞ」
という感覚が出てきた。
水の都ロービア。
二人が使っていたゴンドラ《ティルネル号》。
火吹き熊マグナテリウム。
そしてエルフ戦争キャンペーン。
完全に『ソードアート・オンライン プログレッシブ』の世界である。
特にキズメルの存在は大きい。
二人が過去の冒険を思い出し、揃いの指輪を通して彼女との記憶に触れる場面は、プログレッシブを知っているかどうかで感じ方がかなり違うと思う。
自分も読みながら、
「これ、プログレッシブで読んだ記憶があるな」
となった。
SAO本編1巻、2巻だけでも話そのものは分かる。
しかし、二人が低層でどんな冒険をしてきたのか。
キズメルとの関係。
ティルネル号への思い入れ。
そうした部分まで楽しもうとすると、プログレッシブも読んでおいた方が圧倒的に面白い。
むしろ読み終わったあと、
「プログレッシブ、もう一度読み直そうかな」
という気持ちになった。
マホークルと《会心道》の秘密
後半でさらに面白くなるのが、マホークルの正体である。
キリトとアスナが購入したテーブル。
そのテーブルを手掛かりに、六尺棒を持ったタイコクという男がログハウスまでやってくる。
彼が所属しているのが、
《会心道》。
真クリティカルを極めようとする者たちの集団である。
しかもマホークルこそ、その頭目だった。
ここから、
「なぜ家具職人がバリスタを作ったのか」
という疑問がつながっていく。
マホークルは真クリティカルを九千四百五十二回も成功させていた。
そして一万回達成すれば、何か新しいユニークスキルが解放されるのではないかと信じている。
そのために使おうとしたのがバリスタだった。
動かないフィールドボスを安全な距離から攻撃し続け、真クリティカルを稼ぐ。
かなり執念深い。
しかし、この発想が生まれた理由の一つが《二刀流》の存在なのが面白い。
ヒースクリフの《神聖剣》だけではない。
キリトに《二刀流》があるなら、自分にもまだ誰も発見していないユニークスキルがあるかもしれない。
その可能性に賭けているのである。
ゲームシステムの裏を突いたら、ゲーム側がキレた
そして個人的に面白かったのが、そのバリスタを実際に使った結果である。
動かないはずのフィールドボス《インドレント・トレント》を、射程外から延々と撃つ。
完全な安全地帯から攻撃できる。
これなら真クリティカルを好きなだけ狙える。
……と思ったら、ゲームシステム側が対応する。
動かないはずのボスが根っこを引き抜いて歩き始める。
しかも大幅に強化される。
攻略法の穴を突いたら、ゲーム側がその穴を塞いできたように見えて面白かった。
最終的にはキリト、アスナ、マホークルの三人で戦うことになる。
新婚生活の家具探しから始まったはずなのに、最後は強化フィールドボスとの戦闘。
実にSAOらしい流れである。
読後の感想
『シュガーリィ・デイズ』は、最初の印象と後半の展開がかなり違う作品だった。
前半は、
とにかくキリトとアスナが甘い。
結婚。
朝食。
お風呂。
家具選び。
抱き合う。
キスする。
また抱き合う。
砂糖を吐きそうになる。
ところが後半になると、アスナが気に入った一枚のテーブルから、
木工職人。
バリスタ。
真クリティカル。
《会心道》。
ユニークスキル。
強化フィールドボス。
と、一気にSAOらしいゲーム攻略の話へ変わっていく。
この組み合わせが意外と面白かった。
そして何より、本作を読んで強く感じたのは、
「これはプログレッシブも読んでおかないと駄目だな」
ということだった。
本編1、2巻だけでは拾いきれない思い出がかなりある。
キズメル。
ティルネル号。
第四層。
低層時代のキリトとアスナ。
今の二人が夫婦になっているからこそ、昔の冒険がより重く感じられる。
プログレッシブで読んだ記憶がところどころ蘇ってきた。
ただ、細かい部分はもうかなり忘れている。
これは読み直した方がよさそうだ。
新婚生活を読んでいたはずなのに、最後には過去作を再読したくなる。
そういう意味でも、シリーズを長く追ってきた人ほど楽しめる一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
キリトとアスナの結婚
キリトとアスナの結婚と軌跡の全貌
『ソードアート・オンライン』において、キリトとアスナの結婚は、死と隣り合わせのデスゲームの中で二人が掴み取った、最も温かくかけがえのない絆の証である。アインクラッド第二十二層のログハウスを舞台に、システム的にも、そしてお互いの気持ちの上でも夫婦となった二人の軌跡について解説する。
2024年10月24日午後5時19分:システム上のマリッジ申請
キリトとアスナが正式に夫婦となったのは、2024年10月24日の午後5時19分のことである。
・夕暮れ時のマリッジ申請:第二十二層の外周部近くにあるログハウスの前で、キリトは自身のメインメニューの【OFFER】タブの最下部にあるMARRIAGEボタンを、緊張で震える指先で押した。この申請は相互フレンド登録をしている相手にしか送れず、その時キリトの周囲にいたプレイヤーはアスナただ一人であった。
・言葉でのプロポーズ:実のところ、言葉によるプロポーズは前日の夜にすでに済ませており、アスナからも承諾の返事を得ていた。それでもキリトは、現実世界の病院のベッドに横たわっているであろう自らの本物の肉体の心臓が、通常の倍の速さで激しく脈打つのを感じていた。
・受諾の瞬間:アスナの前に表示されたYES/NOのウインドウの上で、白革の長手袋をはめた彼女の人差し指がゆっくりとYESのボタンに触れた。そのはしばみ色の瞳に宝石のような涙を浮かべ、穏やかに微笑むアスナの表情を見たキリトは、彼女が申請を受け入れたことを瞬時に理解した。
防具越しの抱擁と重なる鼓動
ウインドウが自動消去されると、二人はどちらからともなく歩み寄り、距離をゼロにしてお互いを引き寄せ合った。
・シンクロする鼓動:直前までクエストの戦闘を繰り広げていたため、キリトは胸に小型のチェスト・ガードを、アスナも白銀のプレスト・プレートを装備したままであった。しかしアバターの接触点を通じて、二人の激しく脈打つ鼓動は確かに重なり合い、シンクロしながら緩やかにテンポを落としていった。
・生身の感覚のフィードバック:SAO内の仮想体が受け取る感覚はナーヴギアが生成した疑似信号であるが、心拍と呼吸だけは現実の生身の肉体からフィードバックされている本物の体内感覚である。夜が更けた静かなログハウスの寝室で、アスナがキリトの胸に耳を当てて本物の心臓が立ててる音に耳を澄まし、お互いの心音を確かめ合ったシーンは、仮想世界において二人の存在が確かに現実と繋がっていることを実感させる極めて象徴的な場面である。
結婚式を挙げなかった理由と「100層攻略後」の約束
二人はログハウスのリビングでハーブティーを飲みながら、結婚式について言葉を交わした。
・攻略組への配慮とためらい:アスナは、裁縫職人のアシュレイがウェディングドレスを作ってくれるという約束もあり、女の子として結婚式への憧れは少なからず抱いていた。しかし、自分たちが私的な理由でギルドを脱退したばかりであること、そしてクラインやエギルなどの攻略組の仲間たちが今も最前線の七十五層突破を目指して命懸けで戦っていることを思い、みんなに申し訳ないと式を挙げることを辞退した。
・百層攻略後の結婚式の約束:キリトはそんなアスナを気遣い、百層の攻略が終わって、もう戦わなくてよくなってから、もっといっぱい人を呼んで結婚式をやろう、と提案した。アスナもその時は血盟騎士団の団長にスピーチを頼もうと笑い合った。
・切ない暗黙の了解:しかし二人は、ゲームが完全にクリアされればプレイヤーは一斉にログアウトし、このアインクラッドという世界そのものが失われて二度とここを訪れることはできないという事実、すなわち百層攻略後の結婚式はシステム上実現しないであろうことを、言葉にせずともお互いの心の奥底で予感していた。
陽だまりのような新婚生活とキリトの焦燥
結婚を経て、キリトはこれまで自分を支え、励まし続けてくれたアスナのあらゆる望みを、今後は自分が全力を尽くして叶えるという決意を胸に刻んだ。
・同時にキリトは、二十二層での甘く静かな新婚生活が、過酷なデスゲームの中でほんのいっとき与えられた小さな陽だまりに過ぎないことも痛烈に感じていた。
・いつかは最前線に戻り、再び剣を手に取って戦いの日々に身を投じなければならないという焦燥感を喉元に覚えながらも、キリトは腕の中の愛しいアスナの存在を全身で抱き締め、夫婦としての時間を全力で慈しんだ。
まとめ
キリトとアスナの結婚と軌跡を巡る一連の全貌は、2024年10月24日のシステム上でのマリッジ申請から始まり、防具越しに確かめ合った生身の鼓動のシンクロ、攻略組への配慮による結婚式の見送りと百層攻略後の切ない約束、そして小さな陽だまりの新婚生活と最前線復帰への決意に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
デスゲームの脅威や不可逆な仮想世界の不条理という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、極限状態における絆と愛の成立の記録である。
出会いから、愛の告白、マリッジ手続き、束の間の平穏獲得、そして未来への不退転の誓いへと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
二十二層の新婚生活
キリトとアスナの新婚生活と日々の全貌
アインクラッド第二十二層でのキリトとアスナの新婚生活について、結婚の瞬間と心音の同期、倫理コード解除がもたらすリアルな皮膚感覚、アルゲードの夜型生活からの劇的な変化、贅沢な総檜風呂とお湯の中での濃密な時間、ウッドデッキの揺り椅子と架空線のエピソード、コラルでの家具選びとお揃いの指輪、および刺身のための釣り師への転身と去りゆく時間への焦燥の各点から解説する。
結婚の瞬間と「心音」の同期
二人がシステム的、そして精神的にも正式な夫婦となったのは、二十二層のログハウスの前、夕暮れ時であった。
・キリトが緊張のなかで送信したマリッジ申請をアスナが受け入れ、二人の距離がゼロになった瞬間、防具越しにお互いの心臓が重なり合ってシンクロしていくのを確かに感知した。
・SAO世界において五感のほとんどはナーヴギアによる疑似信号であるが、心拍と呼吸だけは現実世界の病院のベッドに横たわる生身の肉体からフィードバックされている本物の感覚である。
・夜のベッドルームで、アスナがキリトの胸に耳を当てて本物の心臓が立てている音に耳を澄まし、日付が変わる頃にはキリトもまた、アスナの素肌から伝わる少し速い鼓動に意識を集中させ、これまでにない深い安らぎを共有した。
「倫理コード解除」がもたらすリアルな皮膚感覚
新婚生活を語るうえで避けて通れないのが、システム的な隠し設定である倫理コード解除のトグルスイッチである。
・デフォルト状態のSAOでは、衣服やインナーが肌に擦れる感じ、空気の温度などの受動的な皮膚感覚はデータ量削減のために簡略化されている。
・しかし、このリミッターを解除し、かつ衣服をすべて解除した状態にすることで、感覚の再現データ帯域が劇的に引き上げられる。
・お互いの素肌のしっとりとした触れ心地や温もり、そしてお風呂に入った際の水圧、浮遊感、水滴が肌を伝うリアルな感覚は、この隠し設定をオンにし続けていたからこそ得られたものであった。
アルゲードの夜型生活からの劇的な変化と「若奥様」の朝食
それまでのキリトは、誰もいない深夜に効率よくレベル上げを行うため、午前10時に起床し、午前4時まで戦って朝5時に泥のように眠る本格的な夜型生活を送っていた。
・しかし、結婚した翌朝、キリトを揺り起こしたのは、けたたましい電子アラームではなく、コトコトという優しい鍋の蓋の音と、香ばしく甘いクリームスープの匂いであった。
・エプロン姿のアスナが用意してくれた、新鮮なグリーンサラダ、焼きたての丸パン、ポタージュ、そして絶妙な焼き加減の目目焼きという朝食を、長い時間をかけて楽しむ日常がそこにはあった。
・また、SAOならではの家事の描写として、蛇口から流れる水に一回くぐらせるだけで、食器の汚れエフェクトが完璧に消滅し、一瞬で水気が切れるお皿洗いにキリトが驚愕する微笑ましいシーンも描かれている。
贅沢な総檜風呂と、お湯の中での濃密な時間
新婚生活のログハウスを選ぶにあたり、二人が重視した条件は、プレイヤーがうろつかない場所、周囲にアクティブモンスターがポップしない、お風呂がデカイことの三つであった。
・その甲斐あって、ログハウスのバスルームには、長さ2メートル、容量五百リットルもある総檜造りのバスタブが備わっており、源泉掛け流しでお湯が常に満ちていた。
・朝にアスナが入れた、対毒ボーナスのバフ効果を持つハーブの入浴剤によってお湯は白濁しており、そこで倫理コード解除によるリアルなお湯に濡れる感覚を体感した二人は、二人の間の距離をゼロにする濃密な時間を過ごすこととなった。
ウッドデッキの揺り椅子と「架空線(電線)」のエピソード
3日目の午後、ログハウスのウッドデッキに置かれたロッキングチェアに並んで座り、木漏れ日を浴びるなかで、キリトはすべてが架空であるこの穏やかな夢がいつか醒めてしまうことへの不安をアスナに吐露した。
・そこでアスナが語ったのが、現実世界での電線(架空線)の思い出であった。
・アスナは、空に引かれた電線のなかを無数の人々が送ったメールや写真が混ざり合うことなく駆け抜けていくのを奇跡のように感じていたと語る。
・そして、この仮想世界や自分たちのアバターがシステム上の架空のものであったとしても、いまお互いの存在を感じているこの信号だけは、現実の長いケーブルを通って確かに存在している本物の光なのだとキリトを優しく抱き締め、彼の不安を溶かした。
・この対話を経て、キリトはいつか現実世界に戻ったら、自分の部屋の窓からもう一度電線を見たいと強く願うようになった。
コラルでの家具選びと「お揃いの指輪」
新婚生活を彩る家具を揃えるため、主街区コラルへと出かけた二人は、職人プレイヤーであるマホークルが製作した七十万コルの一枚板テーブルに遭遇し、その驚愕の値段にキリトが腰を抜かしかけた。
・最終的にはお手頃でお洒落なオーク材のテーブルや椅子、飾り棚を購入し、二人の共有ストレージにしまって手ぶらでログハウスへと持ち帰った。
・また、この新婚生活において、二人の薬指で静かに光っているのは、新しく買った結婚指輪ではない。
・それは、一年と十ヶ月も前にアインクラッド第三層から始まったキャンペーンクエストのなかで、黒エルフの女王から下賜された揃いの指輪であった。
・ストレージの奥に眠らせていたその指輪を再び嵌めることで、二人は、あの忘れられない旅路の中で命を落としたNPCの友人キズメルに、自分たちの結婚を報告したかったのである。
刺身のための「釣り師」への転身と、去りゆく時間への焦燥
ある夜の食卓で、アスナ謹製の醤油を使って刺身を食べたいという話題になるが、アスナは冷蔵庫のないゲーム世界で魚屋の常温の棚に置かれた魚を生で食べるのは抵抗があると渋った。
・これを聞いたキリトは、両手剣スキルを削除し、新鮮な魚を自ら釣り上げるために釣りスキルをスロットに導入し、釣り師になる修業を始めることを決意した。
・このように、穏やかで幸福に満ちた新婚生活の描写が丁寧に綴られる一方で、キリトの胸の奥には常に、この二十二層での時間は一時的な陽だまりに過ぎず、いつかは再び最前線の地獄へと戻り、剣を握って戦わねばならないという切ない焦燥感が浮かび上がり続けていた。
・だからこそ、彼らは、まだ一日しか経っていない、今日ももっと、いろんなことをしよう、と言葉を交わし合い、過ぎ去りゆく一日一日を全力で愛おしみ、お互いの存在をその胸に深く刻みつけようとしていた。
まとめ
アインクラッド第二十二層でのキリトとアスナの新婚生活を巡る一連の全貌は、マリッジ申請とリアルな心音の同期から始まり、倫理コード解除による皮膚感覚の再現、夜型生活から規則正しい生活への変化、総檜風呂での濃密な時間、電線(架空線)の対話による絆の再確認、想い出の指輪の再装着、そして釣りスキル導入と最前線復帰への焦燥に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
デスゲームの脅威や仮想世界という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、極限下の愛と生活感の確立の記録である。
結婚の成立から、五感の共有、日常生活の構築、絆の再確認、そして未来への不退転の覚悟へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
木工職人マホークル
木工職人マホークル(Mahokl)の全貌と物語の深層
『ソードアート・オンライン』の「シュガーリィ・デイズ」編に登場する木工職人マホークル(Mahokl)について、職人の街に潜むグランドマスター、三つの生産スキルが生んだレシピ、集団《会心道》の頭目としての顔、斧商人エギルとの過去、およびトレント戦での共闘と旅立ちの各点から解説する。
職人の街に潜む小柄なグランドマスター
アインクラッド第三層の主街区「ズムフト」にある巨大バオバブのビル内にアトリエを構えている。
・アトリエと容姿:アバターの容姿は、おさげのブラウン髪、生成りのシャツにデニムのエプロン、そして渦巻きのテクスチャが施された丸メガネという職人らしい出で立ちをしている。身長は情報屋アルゴよりもさらに数センチ低く子供のような姿をしているが、自分よりも遥かに大きな丸太を両手剣のような超大型ノコギリで見事に切り分ける高い技量を持っている。
・アインクラッド五大銘木を扱う腕前:アインクラッドにわずか5人しかいないとされる木工細工スキルの完全習得者(グランドマスター)のひとりである。アインクラッド五大銘木のひとつであるウォルナットの巨大な古木を加工して作った一枚板のテーブルは、22層の家具店に70万コルという破格の値段で委託されており、そのあまりの美しさと重厚感でアスナの心を奪った。
三つの生産スキルが生んだ「禁忌のレシピ」
マホークルは木工細工の完全習得にとどまらず、複数の生産スキルを極めて高いレベルまで鍛え上げていた。
・規格外の複合コンポジション:ソファやベッドを造るための裁縫スキル(熟練度900)、武器を卸すための長柄武器作成スキル(熟練度800)という、別系統の生産スキルをも鍛え上げている。
・巨大兵器《バリスタ(弩砲)》の発見:この3つのスキルの組み合わせ効果(コンポジション)に世界で唯一到達した結果、本来SAOには存在しないはずの、固定式の超巨大石弓兵器《バリスタ(弩砲)》のレシピを発見した。
・工房引き払いと隠遁の理由:飛び道具が排除されているSAO世界において、この強力な兵器の存在が知られれば、攻略組の大ギルドや軍、最悪の場合はプレイヤーキラーに目を付けられて無理やり兵器を作らされることになる。マホークルはそれを嫌い、自身の委託商品を全て引き上げて3層に雲隠れしていた。
クリティカル原理主義集団《会心道》の頭目
実は彼女は、真クリティカルの極致を追い求める、アインクラッド屈指のミステリアスな求道者集団《会心道》のリーダーでもある。
・真クリティカル・ヒットの一万回アンロック説:モンスター相手に真クリティカルを一万回出すことで、未知のユニークスキルがアンロックされると固く信じていた。すでに9400回以上の真クリティカルを自身のデータとして記録している。
・バリスタを求めた理由と二刀流の影:元々は神聖剣だけがユニークスキルだと思っていたが、キリトの持つ二刀流の出現によって他にもユニークスキルが存在すると確信し、スキルアンロックへの強い焦燥に駆られた。しかし格下相手では真クリティカルが発生しにくいため、3層の動かないフィールドボス「インドレント・トレント」を安全な射程外から一方的にバリスタで撃ち続け、効率的に真クリティカル回数を稼ぐという計画を実行に移した。
斧商人エギルとの「昔の相棒」としての過去
かつて、エギルが最前線での戦いに迷いを感じて木こりをしていた頃、マホークルと知り合って相棒となった。
・各地を回った木こり時代の思い出:エギルは彼女の依頼により、同じ木を二度伐らないためのツリーハウス用の大釘を刺して目印にしながら、各地の森からレア木材を収集して回った。22層のウォルナットの一枚板も、エギルが伐採してその場でマホークルが加工したものである。
・木柄の斧に込められた愛着:マホークルはエギルへの報酬として、最高級のレア木材を用いたウッドシャフトの両手斧を製作して贈った。エギルはこの斧をピンチの時に不思議とクリティカルが出て何度も助けられた名品として、商人になった今でも非常に大切にチェストへ保管している。
トレント戦での共闘と旅立ち
キリトとアスナが届けた素材によってマホークルはバリスタを完成させ、ボスの試射を開始した。
・システム(カーディナル)の牙:弓が存在しないはずのSAOにおいてアウトレンジから一方的に安全攻撃される状況に対し、ゲームシステムがリアルタイムで対処を行った。動かないはずのボスの根が引き抜かれて自走化し、50層級の戦闘能力へと超絶強化されてしまう。
・三人での共闘:設置に1分かかるバリスタはボスの伸長した枝によって一瞬で破壊され、マホークルは窮地に陥る。キリトとアスナは逃げずに討伐を決め、マホークルも自分が招いた事態だとして、エギルに集めさせたレア木材で作った最高級のクォータースタッフ(六尺棒)を取り出して共闘した。ボスは通常打撃が通りにくい高い防御力を持っていたが、キリトが譲り受けた木剣に持ち替え、真クリティカル狙いに徹したことで見事に撃破された。
・バリスタの封印と、ロッキングチェアの贈り物:ボスの大暴れを目の当たりにしたマホークルはバリスタはもう造らないと約束し、仲間たちが待つ道場へと帰っていった。その去り際、姿を消していた間に、以前からアスナが欲しがっていたメイプル製の二脚目のロッキングチェアを急ぎ製作し、アスナへ内緒で手渡すという職人としての優しさを見せた。
まとめ
木工職人マホークル(Mahokl)の全貌と物語の深層を巡る一連の全貌は、グランドマスターとしての卓越した木工技術から始まり、複合スキルによる禁忌のレシピ《バリスタ》の発見、《会心道》頭目としてのユニークスキル獲得への執念、エギルとの昔の相棒関係、そして試射時のボスの自走化と共闘、秘められたロッキングチェアの寄贈に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
デスゲームの制約やシステムの不条理という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、卓越した職人技と人間性の記録である。
アトリエでの隠遁から、兵器の開発、旧友との連携、ボスの討伐、そして温かな贈り物へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
弩砲の製作と謎
弩砲(バリスタ)の製作とシステム上の謎
『ソードアート・オンライン』の「シュガーリィ・デイズ」編における《弩砲(バリスタ)》の製作と、そこに秘められたシステム上・ストーリー上の謎について、製作システムと5つの素材、世界観設定との矛盾、カーディナルシステムの自動ハックとボスの自走化、およびマホークルの執念と二刀流の影響の各点から解説する。
弩砲(バリスタ)の製作システムと「5つの素材」
バリスタは、アインクラッドにおいて本来は存在しないはずの固定式の超巨大な石弓である。これを製作するためには、システム上の盲点とも言える極めて過酷な条件をクリアしなければならなかった。
・前人未到のスリースキル複合コンポジション:これを可能にしたのは、アインクラッドに5人しかいない木工細工スキルの完全習得者であるマホークルである。彼女はさらに、裁縫スキルを熟練度900、長柄武器作成スキルを熟練度800という、全く別系統の生産スキルを極限まで鍛え上げていた。この3つの超高レベルスキルが重なった瞬間、生産ウィンドウに新レシピが出現した。
・マホークルが要求した5つのレア素材:マホークルがキリトとアスナに収集を依頼したのが、以下のバリスタの材料である。
・ソリダイト・インゴット30個(希少金属)
・アキュタイト・インゴット20個(希少金属)
・エイジドチークの丸太10本(レア木材)
・グレートロック・ドラゴンの腱8個(洞窟のドラゴン素材)
・幻の熊脂8個(第四層の巨大熊マグナテリウムがドロップする造船素材)
世界観を揺るがすシステム上の「謎」と「矛盾」
このバリスタの出現と実戦投入は、SAOの根本的なゲームシステムや世界設定において、いくつかの決定的な矛盾を浮き彫りにした。
・謎その一:世界観設定《フォルフィチュア(奇跡の喪失)》との矛盾:アインクラッドの世界には、かつて大地が切り抜かれて浮遊城となった際、すべての魔法が失われ、弓から放たれる矢も決してまっすぐに飛ばなくなったという歴史設定が存在する。そのため、SAOには弓矢作成や弓術のスキル自体が存在しない。しかし、バリスタから発射された太いスピアは、この法則を無視してまっすぐに飛び、百発百中で標的に命中していた。
・謎その二:対応武器スキルの不在:通常、SAOでは対応する武器スキルを習得していない武器を使用すると、威力は微々たるものになり、まっすぐ飛ばすことすらできない。しかし、弓や弩砲のスキルが存在しないこのゲームにおいて、なぜマホークルの放つバリスタは、完璧な精度と高い威力を維持できたのか、システム的な謎が残る。
システム(カーディナル)の自動ハックとボスの自走化
射程外からフィールドボスをノーリスクで一方的に攻撃できるというバリスタの異常な仕様に対し、ゲームの自律制御システム(カーディナル)は冷酷なリアルタイム対処を実行した。
・マホークルが第三層の谷で、全く動かないはずのフィールドボス《インドレント・トレント(怠惰な樹)》にバリスタを試射し続けた結果、システムが自動的にボスの行動AIとステータスを書き換えた。
・ボスは怠惰という名をかなぐり捨てて根を地面から引き抜き、自走を開始した。
・さらに、バリスタの貫通力に対抗するために防御力が大幅に引き上げられ、攻撃力・感知射程ともに五十層級にまで超絶強化されてしまった。
・結果、設置・回収に60秒かかるバリスタは、ボスの伸びた枝の一撃によって一瞬で破壊されてしまった。
マホークルの執念と「二刀流」がもたらした影響
マホークルは、かつて大ギルドや軍にこの強力な兵器を無理やり作らされることを恐れて工房を隠したはずであった。それにもかかわらず、彼女が自ら進んでバリスタを製作し、リスクを冒してボスの試射を行った動機には、キリトの存在が深く関わっていた。
・一万回の真クリティカルというオカルトへの挑戦:マホークルは、モンスター相手に真クリティカルを一万回発生させることで、未知のユニークスキルがアンロックされると盲信していた。しかし格下のモンスター相手では真クリティカルが出にくいため、動かないボスを射程外から安全かつ高速に撃ち続けられるバリスタを、回数稼ぎのハックツールとして利用したのである。彼女はすでに九千四百五十一回まで回数を積み上げていた。
・キリトの二刀流が引いた引き金:もともとマホークルは、神聖剣だけが唯一無二のエクストラスキルだと思っていた。しかし、キリトの持つ二刀流の噂が世間を賑わせたことで、条件を満たせばアンロックされるユニークスキルが他にも隠されていると確信し、これが彼女のスキルアンロックへの焦燥と執念を決定的なものにした。
まとめ
弩砲(バリスタ)の製作とシステム上の謎を巡る一連の全貌は、前人未到の複合スキル習得と5つのレア素材による製作から始まり、奇跡の喪失設定や武器スキル不在とのシステム的矛盾の露呈、カーディナルシステムによるボスの自走化および五十層級への強化ハック、そして二刀流の存在に触発されたマホークルの真クリティカル一万回達成への執念に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
デスゲームの制約やシステムの不条理という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、求道的な執念とシステムの防御反応の記録である。
禁忌のレシピ発見から、素材収集、矛盾の露呈、システムの強制改変、そして執念の証明へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
強化ボスの討伐
強化ボス(インドレント・トレント改)討伐の全貌と死闘の真相
『ソードアート・オンライン』の「シュガーリィ・デイズ」編のクライマックスで描かれる強化ボス(インドレント・トレント改)の討伐について、ボスが超絶強化された理由、破壊された弩砲と逃げ場なき討伐の決意、五十層級ボスとの泥臭き死闘、タイコクの木剣と真クリティカルによる勝利、および弩砲の封印と遺された種の各点から解説する。
牙を剥いたシステム:ボスが「超絶強化」された理由
第三層のフィールドボスである《インドレント・トレント(怠惰な樹)》は、その名の通り戦闘が始まっても窪地の中央から一切移動しないというおとなしい行動特性を持つボスであった。
・木工職人マホークルが巨大兵器《バリスタ(弩砲)》を使用し、安全な射程外から一方的にボスのHPを削り続けるハック的な行為に及んだ。
・この一方的なノーリスク攻撃という異常事態を検知したカーディナル・システムは、ゲームバランスを維持するため、ボスのAIとステータスをリアルタイムで強制的に書き換えた。
・その結果、ボスは地面からすべての根を引き抜いて自走を開始し、攻撃力や感知射程がアインクラッドの五十層級にまで超絶強化されるという変貌を遂げた。
破壊された弩砲と、逃げ場なき討伐の決意
接近するボスに対し、マホークルは最高級のスピアを装填して討伐を試みたが、超強化されたボスにはろくにダメージが通らなかった。
・バリスタは設置と回収に六十秒かかるという仕様制限があったため、急なボスの接近に対して退避が間に合わなかった。
・ボスが右の枝を30メートル以上も急激に伸ばして振り下ろすと、たった一撃で高価なバリスタは粉々にへし折られ、一瞬で完全破壊された。
・キリトはマホークルを抱えて間一髪でバックジャンプし、攻撃を回避した。
・50層級に強化されたボスは逃げようと思えば逃げられる相手であったが、このまま放置すれば近隣にいる低レベルプレイヤーたちが遭遇し、凄惨な事故が起こることは目に見えていた。
・キリトとアスナはここで倒すしかないと逃げずに立ち向かう決意を固めた。
・マホークルもまた自身が招いた事態だと責任を感じ、最高級のクォータースタッフを取り出してキリトのパーティーに加わり共闘することを選んだ。
五十層級ボスとの泥臭き死闘
三人で窪地へと飛び込んで始まった決戦は、極めて過酷な長期戦となった。
・圧倒的な攻撃力:ボスの左の枝が空中で伸びて襲いかかった際、キリトは剣を横にして防いだものの、全身を貫く衝撃は昏倒しそうになるほどであった。
・理不尽な防御バフ:バリスタに対抗するためにシステムから与えられたボスの防御力は異常に高く、アスナの《ランベントライト》による精密な刺突や、キリトの《エリュシデータ》《ダークリパルサー》による重い斬撃すら、ボスの分厚い樹皮がクッションのようにすべて吸収してしまい、ろくにHPを削ることができなかった。
勝利の鍵:タイコクの「木剣」と「真クリティカル」
絶望的な耐久力を誇るボスであったが、戦闘の中で意外な弱点が判明した。
・樹木系モンスターの特性なのか、真クリティカル・ヒットの打撃だけはボスの防御を貫通して異常に効くという仕様が存在した。
・これに気づいたキリトは、前夜に会心道の棒使いタイコクとのデュエルに勝利した報酬として譲り受けていた、片手剣で最高のクリティカル・ボーナスを誇る茶褐色の《木剣》を実戦投入した。
・キリトはエリュシデータからこの木剣に持ち替え、手数の多いアスナやマホークルと連携しながら、ひたすら真クリティカルを狙う打撃攻撃に徹した。
・狙い通りに鈍い木剣の打撃が何度も真クリティカルとして炸裂し、ボスのHPは着実に削られていった。
・約二十分におよぶ死闘の末、ついに五十層級のバグボスを撃破することに成功した。
まとめ
強化ボス(インドレント・トレント改)討伐の全貌と死闘の真相を巡る一連の全貌は、システムの隙を突いた安全攻撃に対するカーディナルシステムの強制改変から始まり、バリスタの破壊と他プレイヤー被害防止のための戦いへの突入、五十層級レベルの攻撃力と防御バフによる苦戦、タイコクの木剣と真クリティカルを併用した特攻、そして約二十分間の激闘の末の討伐とバリスタの封印に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
システムの冷酷な修正反応や死の危険という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、ゲームシステムの裏側に挑んだ凄惨な討伐戦の記録である。
ハック行為の検知から、ボスの超絶強化、兵器の全壊、弱点への洞察、そして不屈の連携による勝利へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
登場キャラクター
血盟騎士団
アスナ
血盟騎士団の副団長を務める細剣使いの少女である。
彼女は生真面目で凛々しい性格だ。
キリトとは当初はコンビを組んでいた。
しかし、二人はやがて惹かれ合いシステム的にも結婚した。
・所属組織、地位や役職
血盟騎士団・副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
アインクラッド二十二層のログハウスでキリトとの新婚生活を始める。
かつて出会ったキズメルから貰った指輪を再び嵌めた。
キリトとともに第四層を訪れ、愛船ティルネル号に乗る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
料理スキルを完全習得している。
戦闘だけでなく日常や家事の面でもキリトを支える。
ヒースクリフ
血盟騎士団のリーダーを務める男である。
神聖剣の二つ名を持ち、圧倒的な防御力で知られている。
キリトと一対一でデュエルを行った。
その正体はゲーム開発者の茅場晶彦だ。
・所属組織、地位や役職
血盟騎士団・団長。
・物語内での具体的な行動や成果
七十五層のフィールドボス攻略戦に参加した。
キリトからその正体を見破られ、デュエルを申し込む。
自身の不死属性を解除してキリトと一対一で対決した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゲームの最終ボスとして最上層でプレイヤーを待ち受ける予定であった。
クラディール
血盟騎士団の構成員である。
アスナの護衛を務めていたが、執拗で異常な言動を見せる。
キリトに対して激しい憎悪を抱く。
・所属組織、地位や役職
血盟騎士団・護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
アスナを連れ戻そうとしてキリトにデュエルを申し込んだ。
大剣による上段突進技「アバランシュ」を放つ。
キリトのカウンターによって武器を破壊され敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
デュエルでの敗北後、アスナから護衛役を解任され、本部待機を命じられた。
風林火山
クライン
風林火山のリーダーを務めるカタナ使いである。
義理堅く人好きのする性格だ。
キリトの数少ない友人である。
ゲーム開始初日にキリトから戦闘の手ほどきを受けた。
・所属組織、地位や役職
風林火山・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
コラルの村でキリトからアスナとの結婚報告を受け、驚愕した。
エギルがかつて夜間に丸太を集めていた情報をキリトたちに提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
希少なエクストラスキルである「カタナ」を習得している。
ツーハンデッド・ビルダーズ
エギル
五十層アルゲードで何でも屋を経営する両手斧使いである。
厳つい容姿に反して、温厚で仲間思いな性格をしている。
かつては「ツーハンデッド・ビルダーズ」のリーダーを務めていた。
・所属組織、地位や役職
何でも屋店主。元ツーハンデッド・ビルダーズ・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
かつて攻略に迷いを感じていた頃、夜間に森で木こりをして丸太を集めた。
木工職人マホークルから依頼を受け、レア木材を収集して彼女と相棒になる。
キリトに頼まれ、マホークルが指定したバリスタの素材を調達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マホークルから報酬として贈られた木柄の両手斧を、現在も大切に保管している。
会心道
マホークル
会心道のリーダーを務める小柄な女性プレイヤーである。
職人らしい丸メガネとエプロン姿が特徴だ。
木工細工スキルの完全習得者であり、並外れた職人技術を持つ。
・所属組織、地位や役職
会心道・頭目。木工細工師。
・物語内での具体的な行動や成果
木工、裁縫、長柄武器作成の3つの生産スキルを極め、巨大兵器「バリスタ(弩砲)」のレシピを発見した。
キリトたちに素材調達を依頼し、バリスタを完成させる。
完成したバリスタを三層のボスであるインドレント・トレントに試射した。
ボスの超強化によりピンチに陥るが、キリトたちと共闘してボスを撃破する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
真クリティカルを一万回出すことでユニークスキルが解放されると信じていた。
ボス撃破後はバリスタをもう作らないと約束した。
タイコク
会心道に所属する大柄なプレイヤーである。
偽の薩摩弁を話す。
真クリティカルヒットの極致を追求している。
全身から金属装備を排除した。
・所属組織、地位や役職
会心道・メンバー。両手棍使い。
・物語内での具体的な行動や成果
物品追跡の技術を用いてキリトたちのログハウスを突き止めた。
庭に座り込み、キリトにデュエルを申し込む。
体術スキル「鋼練」などを駆使して戦った。
キリトの機転により敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
敗北の報酬として、高いクリティカル・ボーナスを持つ「木剣」をキリトに譲渡した。
無所属・その他
キリト
本作の主人公であり、黒いコートを身にまとう片手剣使いである。
ソロでの攻略に徹する利己主義者を自認している。
しかし、その本質は極めて優しい。
アスナと結婚し、二十二層での穏やかな生活を大切にした。
・所属組織、地位や役職
ソロプレイヤー。元月夜の黒猫団メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
アスナにプロポーズし、システム上でも結婚した。
アスナの揺り椅子の注文のためにマホークルの工房を訪れる。
マホークルのバリスタの素材集めを引き受けた。
タイコクとのデュエルに勝利し、木剣を獲得する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ユニークスキル「二刀流」の保持者である。
両手剣スキルを削除し、新たに釣りスキルを習得した。
リズベット
四十八層リンダースで武具店を営む少女である。
ベビーピンクの髪とエプロンドレスが特徴だ。
明るく勝気な性格をしている。
しかし、自分の気持ちに素直になれない一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
リズベット武具店・店主。鍛冶屋。
・物語内での具体的な行動や成果
アスナからレイピア「ランベントライト」の研磨を依頼された。
アスナから好きな人の話を聞き、応援する姿勢を見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
武器作製スキルを高レベルまで鍛え上げている。
シリカ
小竜の使い魔を従える短剣使いの少女である。
健気で素直な性格をしている。
中層プレイヤーの間ではアイドルとして人気を博した。
・所属組織、地位や役職
ビーストテイマー。短剣使い。
・物語内での具体的な行動や成果
三十五層の森でドランクエイプに襲われ、使い魔のピナを失った。
キリトに救われ、彼の提案でピナを蘇生するための情報を得る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
テイマーの証である使い魔を失ったが、キリトから譲り受けた装備で戦闘力を底上げされた。
アルゴ
情報屋を営む女性プレイヤーである。
「鼠」の異名を持ち、高い情報収集能力を持つ。
顔に施した三本のヒゲのペイントが特徴だ。
・所属組織、地位や役職
情報屋。
・物語内での具体的な行動や成果
マホークルの新しい工房の場所を突き止めた。
その情報をキリトとアスナに提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
独自の新聞を発行しており、ゲーム内の様々な噂やニュースを流通させている。
茅場晶彦
SAOの開発ディレクターであり、ナーヴギアの基礎設計者である。
天才的な量子物理学者だ。
絶対的なゲームの支配者として君臨する。
システムを統制し、一万人のプレイヤーを閉じ込めた張本人だ。
・所属組織、地位や役職
SAO開発ディレクター。
・物語内での具体的な行動や成果
ゲーム開始初日にプレイヤー全員を広場へ強制移動させた。
ログアウト不能と、HP減少による現実世界の脳破壊というルールを宣言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
現実世界の肉体はすでに死亡しており、自身の意識をネットワーク上に残した。
集団
攻略組
デスゲームをクリアし、現実世界への生還を目指して最前線で戦い続けるプレイヤーたちの総称である。
常に高い戦闘能力と最新の情報が要求される。
命の危険を伴う過酷な立場だ。
・所属組織、地位や役職
最前線攻略プレイヤー集団。
・物語内での具体的な行動や成果
アインクラッドの各層の迷宮区を開拓した。
ボスを撃破して上の層への道を切り開き続けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
全プレイヤーの数パーセントに過ぎない少数精鋭であり、多大な影響力を持つ。
血盟騎士団
ヒースクリフが率いるアインクラッド最強のプレイヤーギルドである。
白と赤を基調としたユニフォームが特徴だ。
優秀なメンバーを多数抱える。
統制の取れた組織力を持つ。
・所属組織、地位や役職
アインクラッド最強ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果
最前線の攻略で常に中心的な役割を担った。
メンバーであるクラディールやゴドフリーが所属している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アインクラッドにおいて崇拝に近い敬意を集めており、強い影響力を持つ。
風林火山
クラインが率いる攻略ギルドである。
和風の装備を好むメンバーで構成されている。
メンバー同士の強い連帯感を持つ。
フットワークの軽さを強みとした。
・所属組織、地位や役職
攻略ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果
最前線で他ギルドと協力しながら攻略を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
SAO以前からの馴染みのメンバーで構成されており、脱落者を出すことなく攻略組に登りつめた。
ツーハンデッド・ビルダーズ
かつてエギルが率いていた攻略ギルドである。
メンバーの大半が筋肉質な両手斧使いだ。
エギルの離脱により活動に影響が出た。
・所属組織、地位や役職
元攻略ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果
最前線の攻略に参加していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エギルが攻略に迷いを感じて一時離脱したことで、活動に影響が出た。
会心道
真クリティカルヒットの極致を追求する求道的なプレイヤー集団である。
システム上のギルドは結成していない。
独自の道場で修行を続けている。
その秘密主義ぶりは極めて高い。
・所属組織、地位や役職
求道者集団。
・物語内での具体的な行動や成果
マホークルをリーダーとして活動していた。
マホークルの失踪後、彼女の行方とバリスタの情報を求めて捜索を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
攻略組には参加せず、独自の戦闘技術を磨くことに特化している。
ラフィン・コフィン
アインクラッドに存在する悪名高い殺人ギルドである。
他プレイヤーの殺害を平然と行う冷酷な集団だ。
リーダーはPoHが務める。
・所属組織、地位や役職
殺人(PK)ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果
数ヶ月前の討伐作戦によって壊滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
壊滅後も一部の残党が各地に潜伏しており、生存者たちに警戒されている。
聖竜連合
血盟騎士団と並ぶ規模と実力を持つ、アインクラッドの二大ギルドのひとつである。
非常に統制された組織力を誇る。
攻略のためなら手段を選ばない効率主義的な一面を持った。
・所属組織、地位や役職
大ギルド。二大ギルドのひとつ。
・物語内での具体的な行動や成果
最前線の攻略に常に参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多大な影響力を持ち、攻略組の中心として活動している。
軍
はじまりの街の黒鉄宮を拠点とする巨大組織である。
共同管理による安全なサバイバルを理念としている。
治安維持を主な目的とした。
・所属組織、地位や役職
巨大組織。
・物語内での具体的な行動や成果
はじまりの街での治安維持活動を行った。
不当な「税」の徴収などを行い、住民と対立する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
巨大化に伴い、組織内部での対立が激化している。
アニキ軍団
エギルが率いていた「ツーハンデッド・ビルダーズ」の俗称である。
非常に筋肉質なメンバーで構成されている。
エギルとともに戦闘に参加した。
・所属組織、地位や役職
エギルのギルドの俗称。
・物語内での具体的な行動や成果
エギルとともに戦闘に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
メンバーが男性ばかりであることが特徴である。
展開まとめ
結婚申請
キリトはメインメニューから結婚申請を開き、唯一表示されたアスナの名前を選択した。前夜にすでに言葉で求婚し、アスナから承諾を得ていたものの、正式な申請を送る瞬間には激しく緊張していた。
夕暮れのアスナ
アインクラッド第二十二層のログハウス前で、アスナはキリトから届いた結婚申請を受け取った。夕陽に照らされたアスナは、YESとNOの選択肢を前にキリトを見つめ、静かに名前を呼んだ。その瞳には涙が浮かんでいた。
二人の答え
アスナが申請を受諾すると、キリトはその表情だけで答えを理解した。二人は同時に歩み寄り、互いを抱き寄せた。戦闘用の防具越しでありながら、キリトは重なった二人の鼓動を感じ、激しかった心拍が次第に落ち着いていくのを感じていた。
キリトとアスナの結婚
二〇二四年十月二十四日午後五時十九分、片手剣使いキリトと細剣使いアスナは、SAOのシステム上でも互いの気持ちの上でも結婚し、新たな結びつきを得た。
1
結婚式の約束
キリトは結婚式を挙げなくてよかったのかとアスナに尋ねた。アスナは憧れはあったものの、攻略組が七十五層突破を目指して戦う中で、自分たちだけ祝うことにはためらいがあると答えた。その一方で、ログハウスでキリトと暮らせるだけで十分に幸せだと告げた。
キリトは百層攻略後、戦いが終わってから仲間を大勢招いて結婚式をしようと提案し、アスナもヒースクリフにスピーチを頼もうと笑った。二人ともゲームがクリアされればアインクラッド自体が失われる可能性を理解していたが、その未来を口にして笑い合った。
二十二層での新婚生活
キリトは、これまで支えてくれたアスナの望みを今後は自分が叶えたいと考えていた。一方で、二十二層での穏やかな暮らしが一時的なものであり、いつか最前線へ戻らなければならないことにも焦燥を覚えていた。
二人は互いを強く抱き締め、夫婦となったことを確かめるように寝室へ移った。互いに緊張しながらも距離を縮め、二人だけの時間を過ごした。
重なる心臓の音
夜が更けたあと、アスナはキリトの胸に耳を当て、仮想体の鼓動が現実の肉体の心拍と同期していることに思いを巡らせた。キリトもアスナの心音を聞こうとし、二人は照れながら互いの鼓動を確かめ合った。
日付が十月二十五日に変わっても、静かなログハウスの中で二人は寄り添っていた。キリトは、現実の肉体から伝わる呼吸と心拍だけは本物だと考え、アスナの少し速い鼓動を感じながら、これまでにない安らぎを覚えていた。
2
夜型生活からの変化
アルゲードで暮らしていた頃のキリトは、深夜の狩りを中心に一日十二時間ほど戦闘へ費やす生活を続けていた。かつては精神を削るほどレベル上げに没頭した時期もあったが、周囲の人々に支えられ、生きるための自分なりの攻略ペースを築いていた。
結婚翌朝、キリトはアラームより二時間近く早く、鍋の音とクリームスープの香りで目を覚ました。アスナはすでに朝食を用意しており、目玉焼きやサラダ、パン、スープが並ぶ食卓を前に、キリトは新婚生活の幸福を実感した。
若奥様との朝食
キリトが冷水で顔を洗って戻ると、朝風呂を済ませたアスナとの会話から、一緒に入浴する話になった。キリトの一言で照れたアスナは目玉焼きを焼き過ぎてしまったが、二人は軽口を交わしながら朝食を楽しんだ。
食後、キリトはアスナに家事を任せきりにしていたことに気づき、現実世界へ戻れたら家事を手伝おうと考えた。皿洗いを申し出たものの、SAOでは水に通すだけで食器がきれいになると知り、自分がこれまで外食中心だったこともアスナに明かした。
二人で入る風呂
午前十時、キリトは約束どおりアスナと広い浴槽に入った。すると二人は、これまでより水圧や濡れる感覚が自然になっていることに気づいた。アスナが入れた入浴剤が原因ではなく、朝の入浴時から同じ変化があったため、二人は理由を考え始めた。
キリトは湯の中でアスナと触れ合ううちに、皮膚感覚そのものが通常より鮮明になっていることを改めて感じた。二人はそのまま親密な時間を過ごした。
倫理コード解除の効果
入浴後、キリトは感覚が変化した理由に思い至った。二人は以前から隠し設定である倫理コード解除を有効にしており、それによって全装備解除時の皮膚感覚に関する制限が緩和され、通常より多くの感覚情報が再現されているのではないかと考えた。
キリトは戦闘時の負荷を考えて設定を戻す必要もあると思ったが、普段は特に感覚の変化を感じないことから、全装備解除時だけ効果が現れる可能性に気づいた。アスナも設定をまだ解除していないと明かし、二人は照れながら新婚生活を続けていた。
3
架空世界への不安
ログハウスのウッドデッキでアスナと寄り添っていたキリトは、仮想世界も自分たちの身体も架空の存在であり、いつかこの穏やかな生活が終わることへの不安を漏らした。一方で、このまま二十二層に留まり、誰かがゲームを攻略するまで戦いから離れていたいという願いも抱いていた。
空を走る電線
アスナは幼い頃、電線の中を多くの人の言葉や写真が行き交い、それぞれの相手へ届いていくことを不思議に感じていたと話した。そして仮想世界やアバターが実在しなくても、現実世界で離れた二人を結ぶ信号そのものは確かに存在すると伝えた。キリトはその言葉から、アスナとの繋がりだけは架空ではないと感じ、二人は互いの存在を強く確かめ合った。
コラルでの家具選び
午後、二人は二十二層の主街区コラルへ家具を買いに向かった。アスナは高価な一枚板のテーブルに目を輝かせたが、キリトは七十万コルという値段に驚愕した。最終的には手頃なオーク材のテーブルや椅子、飾り棚などを選び、大量の食料品とともに購入した。
それぞれの生き方
帰り道、アスナは高価なテーブルがプレイヤーの手作りだったことから、攻略組だけでなく職人や商人など多くの人々が、それぞれの目標に向かって努力していることに改めて気づいた。キリトも、たとえアインクラッドがいつか消えても、そこで積み重ねた努力や記憶まで架空になるわけではないと考えた。
架空線と帰る場所
アスナは、空中に張られた電線を架空線と呼ぶことを明かした。実在しないという意味の架空と、実際に空へ架けられた線が同じ言葉で表されることに、キリトは二人の世界との共通点を感じた。
キリトは、現実世界へ戻ったら自室の窓からもう一度電線を眺めたいと思えるようになったとアスナに伝えた。アスナはその言葉を喜び、キリトも強い愛しさから彼女を抱き締めた。二人は夕暮れの道で触れ合ったあと、もうすぐ着くログハウスへ一緒に帰ろうと歩き出した。
4
結婚一日目
アスナは結婚からちょうど二十四時間が経ったことを数え、キリトと一周日を祝った。キリトは満ち足りた一日を喜ぶ一方、二人が攻略組を離れて過ごせる時間には限りがあり、七十五層の攻略次第では最前線への復帰を求められるかもしれないと焦りを抱いた。アスナはまだ一日だと励まし、残された時間を一緒に楽しもうと寄り添った。
新鮮な魚と釣りスキル
夕食で魚料理を味わったキリトは、アスナが作った醤油で刺身を食べたいと考えた。しかしアスナは、冷蔵庫のない世界で店頭の魚を生食することに抵抗を感じていた。そこでキリトは自分で新鮮な魚を釣ることを思いつき、ほとんど使っていなかった両手剣スキルを削除して釣りスキルを習得することにした。アスナも賛成し、釣り師としての修業を応援した。
二人用の揺り椅子
アスナは昼間コラルで見た高級テーブルを作った木工職人マホークルに、二人で並んで座れる大きな揺り椅子を注文したいと言い出した。情報屋アルゴに居場所の調査を依頼し、キリトも釣り竿を作ってもらえるかもしれないと期待した。キリトは過ぎた時間を惜しむより、一日ごとにやりたいことを楽しむべきだと考え、両手剣スキルを手放した。
マホークルの工房
翌日、キリトとアスナは第三層の主街区ズムフトを訪れ、アルゴが突き止めたマホークルの工房へ向かった。そこでは小柄な女性プレイヤーのマホークルが巨大なノコギリを操り、丸太を板材へ加工していた。アスナがコラルで見たテーブルを気に入り、揺り椅子を注文したいと伝えると、マホークルは二人を客として迎えた。
姿を隠した木工職人
工房の家具や香木製のマグカップから、マホークルが高い木工技術を持つことが分かった。しかし彼女は以前の委託商品を回収し、現在は身を隠すように活動していた。理由を尋ねられたマホークルは、木工、裁縫、長柄武器作成という三つの生産スキルを高めた結果、これまで知られていなかった新たなコンポジションを発見したためだと明かした。
新発見の弩砲
木工を完全習得し、裁縫を九百、長柄武器作成を八百まで高めたマホークルだけが、その三技能による複合効果へ到達していた。キリトとアスナが何を作れるのか尋ねると、マホークルはバリスタ、日本語では弩砲だと答えた。家具職人が固定式の巨大な石弓を製作できるという予想外の事実に、二人は揃って驚愕した。
5
マホークルの交換条件
キリトとアスナはマホークルを連れてコラルの家具屋を訪れ、一年前に彼女が製作した七十万コルのテーブルを確認した。マホークルが販売を終えようとすると、キリトはアスナが気に入っていたことから惜しんだ。するとマホークルは、指定した素材をすべて集めることを条件に、テーブルを九割引きにし、注文された揺り椅子も製作すると持ちかけた。
バリスタの素材
マホークルから渡されたメモには、希少な金属や木材、ドラゴンの素材、第四層で入手できる幻の熊脂など五種類が記されていた。キリトとアスナは、それらがマホークルの発見したバリスタを作るための材料だと考えた。二人は理由を測りかねながら、ひとまずログハウスへ戻った。
二人の家
帰宅した二人は、まだ結婚から二日も経っていないにもかかわらず、ログハウスを自分たちの家として強く意識していた。朝に一緒に出かけ、様々な場所を巡り、同じ家へ帰るという暮らしに安らぎと幸福を感じ、互いに好意を伝え合った。
バリスタへの疑念
昼食後、二人は改めて素材集めについて話し合った。マホークルはバリスタを作らされることを恐れて工房を移し、身を隠していたにもかかわらず、自らその存在を明かして材料集めを依頼していた。飛び道具がほとんど存在しないSAOでバリスタが実用化されれば、フィールドボス攻略などを大きく変える可能性があり、攻略組や軍がマホークルを放置しないと二人は考えた。
素材集めへの出発
矛盾を考えた末、キリトはマホークルにも何らかの意図があると考え、危険だと分かれば途中で止める前提で依頼を引き受けることにした。アスナも同意して騎士服へ着替え、二人は素材集めの準備を始めた。
6
第四層ロービアへの再訪
キリトとアスナは、マホークルに指定された幻の熊脂を集めるため、第四層の水の都ロービアを訪れた。かつて観光客で賑わった街は閑散としており、素材を扱う露店も姿を消していたため、二人は自力で火吹き熊マグナテリウムを狩ることにした。
ティルネル号と過去の記憶
西の桟橋には、二人がかつて素材を集めて造ったゴンドラ、ティルネル号が残されていた。その姿を見たアスナは、エルフ戦争キャンペーンで共に過ごした日々と、最後に抱えることになった後悔を思い出して涙を流した。キリトも同じ痛みを抱えながら、最前線へ戻った後は再びゲームクリアのために全力を尽くそうと語り、二人はキズメルから授かった揃いの指輪を通して過去との繋がりを確かめた。
火吹き熊に追われる二人
ティルネル号で森林地帯へ向かったキリトとアスナは、マグナテリウムに追われる男女二人のプレイヤーを発見した。キリトが火炎ブレスを防ぎ、アスナが四連撃で熊を倒して二人を救った。救われた二人は、始まりの街で一年以上暮らした後、軍への加入を避けるため外へ出て、強くなることを目指してエルフ戦争キャンペーンを進めていると話した。
それぞれの戦い
二人が今さらクエストに挑むことを気にすると、アスナは時期や動機は関係なく、何かを目指して努力することこそ大切だと励ました。戦闘する者だけでなく、生産スキルを磨く者や圏内で日々を生きる者も、皆がSAOと戦うプレイヤーなのだと語った。
幻の熊脂の入手
アスナが倒した熊から幻の熊脂が六個得られたため、二人は造船クエストに必要な四個を救助した男女へ譲った。その後、再出現したマグナテリウムをキリトが倒し、必要な八個を確保した。
新たなエルフ戦争
ロービアへ戻る途中、アスナは救助した二人が最初の黒エルフ騎士を救えたのか気に掛けた。キリトは通常なら不可能だと知っていたが、かつて自分たちだけに起きた例外を思い、可能性を否定しなかった。二人は顔を見合わせて笑い、身元を隠すためフード付きマントを被ると、次の目的地であるアルゲードへ転移した。
7
アルゲードでの素材調達
キリトとアスナは顔を隠して第五十層アルゲードを訪れ、エギルからマホークルに指定された四種類の素材を購入した。エギルは用途を不思議がったが、キリトはバリスタの情報が漏れることを避け、詳しい事情を伏せたまま取引を終えた。
マホークルへの納品
二人はズムフトの工房へ戻り、自力で集めた幻の熊脂を含む全素材をマホークルへ渡した。キリトは素材の用途を教えてもらえると思っていたが、約束はウォルナット製テーブルの九割引きとロッキングチェアの製作であった。マホークルはアスナの細かな注文どおりに椅子を仕上げ、二人はテーブルと合わせて購入した。
ウォルナットを伐った相棒
テーブルについて話す中で、マホークルは天板がS級木材のウォルナットであり、巨大な古木を高い技量を持つ斧使いに伐採してもらったことを明かした。その人物について昔の相棒とだけ口にし、それ以上は語らなかった。
新しい家具と残された疑問
ログハウスに戻った二人は、大きなテーブルをリビングに置き、いつか仲間を招いてパーティーを開こうと話した。ロッキングチェアも二人で座るために作られた大きさで、アスナはキリトの上に身を預けながらくつろいだ。一方で、二人にはマホークルがバリスタを造りたくないため身を隠したにもかかわらず、その材料と思われる品を集めさせた理由が分からず、疑問が残った。
マホークルとエギルの接点
アスナは、ウォルナットの古木を伐った昔の相棒なら、マホークルが素材を集めた理由や工房を移した事情を知っているのではないかと考えた。高い伐採能力を持つ斧使いという条件から、二人はその人物がエギルではないかと疑い始めた。しかしマホークルの名を本人に直接出すことは避けるべきだと判断し、キリトは事情を知っていそうな別の人物に会うことを決めた。
8
クラインへの結婚報告
十月二十七日、キリトとアスナはコラルにクラインを呼び出した。アスナから三日前に結婚したと聞かされたクラインは絶叫するほど驚いたが、後には二人を祝福した。
七十五層の攻略状況
クラインによれば、七十五層の攻略開始から一週間が経っても、ようやく最後のフィールドボスを倒した段階であり、迷宮区への到達にも時間がかかる見込みであった。敵の強化も明らかで、アスナは攻略の遅れを気に掛けた。さらにヒースクリフが序盤から攻略に参加していると知り、キリトとアスナは驚いた。アスナはフロアボス戦への協力を求められれば、休暇中でも参加すると決めていた。
エギルの木こり
キリトは本題に入り、エギルが本格的な商人になった時期についてクラインに尋ねた。明確な転機は分からなかったが、クラインは当時のエギルが昼間の攻略後、一人で各地の森を回って様々な丸太を集めていたことを思い出した。エギル自身はスキル上げと開店資金集めだと説明していた。
各地の森を回った理由
キリトとアスナは、資金稼ぎだけなら高品質な木材を効率良く伐採できる場所に腰を据えるはずであり、エギルが各地の森を回っていたことに違和感を抱いた。その行動には別の目的があった可能性が高いと考え、マホークルとの関係を探る手掛かりを得た。
クラインの祝福
事情を明かせない二人にクラインは不満を見せたが、アスナから自分たちもまだ真相を把握していないと説明されて引き下がった。最後には改めて結婚を祝福し、七十五層攻略後に予定される祝いのパーティーにも参加すると約束した。
9
マホークルへの懸念
キリトとアスナは、マホークルとエギルの過去をこれ以上探るべきか迷っていた。しかし、弩砲を造りたくないため身を隠したはずのマホークルが、その材料と思われる品を二人に集めさせた矛盾は残っていた。自分たちが素材集めに協力した以上、彼女が危険なことをしようとしているなら見過ごせないと考え、最終的には本人に真意を確かめる必要があると結論づけた。
ウォルナットの古木
マホークルがテーブルの材料となるウォルナットを二十二層で伐採したと聞いていたことから、キリトはその木を探せば手掛かりが得られると考えた。アスナを肩車して周囲を見渡すと、彼女は針葉樹の森に混じる黄色い葉を見つけた。二人が森を進むと、周囲のトウヒより低いものの、太い幹を持つ巨大なブラックウォルナットへ辿り着いた。
古木のそばの大釘
キリトは古木の周囲を調べ、近くのトウヒに巨大な釘が刺さっているのを発見した。それはツリーハウス作成用の釘であり、木に刺さっている限り耐久度が減らない性質を持っていた。キリトは、かつてこのウォルナットを伐採した者が、再び同じ木を伐らないための目印として残したのだと考えた。
プレイヤーメイドの手掛かり
ツリーハウス用の釘を作るには高い木工スキルが必要で、市販品ではないことにアスナは気づいた。つまり釘には製作者が存在し、その情報を辿れば、ウォルナットを伐採した斧戦士へ近づける可能性があった。二人は新たな手掛かりを得て、次に向かう場所を定めた。
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大釘の鑑定
キリトとアスナは、二十二層で見つけた《ツリーハウスの根釘》を持ってエギルの店を訪れた。鑑定したエギルは釘を見た途端に驚き、それを一年以上前に自分が二十二層の森へ打ち込んだものだと認めた。
エギルと木工細工師
エギルは攻略組として戦うことに迷っていた頃、夜ごと各地の森で木を伐っていた。その木材を買っていた木工細工師から、希少な木を種類を問わず集めてほしいと頼まれ、同じ木を再び伐らないための目印として大釘を渡されていた。二十二層では巨大なウォルナットも見つけ、細工師がそれを大きなテーブルへ加工してNPC家具店に委託していた。
思い出の両手斧
木材集めを終えたエギルは、報酬とは別に木工細工師から木柄の両手斧を受け取っていた。その斧はボス戦でも長く使われ、危機的な場面で何度も助けられたという。エギルは武器には性能だけでなく、使い手の思い入れや愛着に応えるものがあると語り、現在もその斧を大切に保管していた。
マホークルの名前
アスナが以前エギルに集めてもらった素材は弩砲の材料であり、依頼主がマホークルだったと明かすと、エギルもかつて木材を集め、両手斧を作ってもらった相手がマホークルだったと認めた。ただし二人は恋愛関係ではなく、エギルには現実世界に妻がいることも明かされた。
弩砲への懸念
キリトは、マホークルが誰かに脅されて弩砲を造ろうとしている可能性を伝えた。しかしエギルは即座に否定し、マホークルが木工細工師になった事情を知れば理由が分かると示唆した。ただし本人の個人的な事情を勝手に話すことは拒み、二人なら直接尋ねれば応じてもらえるはずだと告げた。
クリティカル
なおも手掛かりを求めるキリトに対し、エギルは最後にヒントとしてクリティカルという言葉だけを与えた。
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アルゲードでの寄り道
エギルの店を出たキリトは、物思いに沈むアスナの気分転換に食事へ誘った。アルゲード軒を提案すると、料理や店主の正体まで曖昧で悩みが増えると強く拒まれたため、二人は果物のケーキを食べてから二十二層へ戻った。
ログハウスでの涙
ログハウスへ帰った二人は、マホークル製の揺り椅子で寄り添い、まだ三日しか経っていない新婚生活が急速に過ぎていくことを惜しんだ。百層攻略後に結婚式を開く約束を思い浮かべながらも、ゲームがクリアされればアインクラッドそのものから離れることになるため、キリトは複雑な思いを抱いた。アスナも現実世界のことを考えて涙を流したが、二人は本名や連絡先すら知らないまま、必ず生き残って現実で再会しようという思いを抱いて互いを強く抱き締めた。
クリティカルの謎
夕食後、二人はエギルから得た情報を整理した。マホークルがバリスタのために身を隠した一方、制作材料を自ら集めていることや、エギルが残したクリティカルというヒントは依然として謎だった。二人が真クリティカルにまつわる噂について話していると、キリトは庭から忍び足の気配を察知した。
庭のタイコク
武装して庭を確認した二人は、六尺棒を抱えて座る大柄な男タイコクと遭遇した。彼は偽の薩摩弁を操り、《黒の剣士》に訊きたいことがあるとしてデュエルを要求した。さらに自らをクリティカル原理主義者の《会心道》に属する者だと明かし、勝てば《二刀流》の取得条件と、会心道の頭目であるマホークルの行方を教えてほしいと告げた。アスナが条件の不公平さを指摘すると、タイコクは高いクリティカル性能を持つ木剣を賭けた。
タイコクとのデュエル
キリトは初撃決着のデュエルを受けた。タイコクは体術スキル《鋼練》でキリトの初撃を耐え、六尺棒と怪力を駆使して激しく攻めた。キリトも棒を掴む戦法や《弦月》で対抗し、最後は自ら剣を投げて《鋼練》を発動した。タイコクの真クリティカル攻撃を九・五パーセントの損失で耐えると、落下してきたエリュシデータを掴み、その肩を斬って初撃決着に必要なダメージを与え、勝利した。
会心道とマホークル
敗北を認めたタイコクは、木剣をキリトに渡し、追跡と鑑定を完全習得した者が使える《物品追跡》によって、マホークル製のダイニングテーブルを追ってログハウスを発見したと説明した。そして、マホークルが会心道の頭目であり、姿を消したため仲間たちが捜していることを明かした。会心道の者たちは彼女の身を案じる一方、バリスタを使って効率よく成長したいという思惑も抱えていた。さらにマホークルの様子がおかしくなった時期が《二刀流》の出現と重なっていたため、タイコクはその取得条件にも関心を持っていた。
マホークルへの再訪
タイコクを見送った後、キリトとアスナは、マホークルが会心道を離れた原因となったバリスタをなぜ今になって造ろうとしているのかだけが残された謎だと整理した。二刀流との関係も判然としなかったため、翌日もう一度ズムフトの工房を訪れ、本人から事情を聞くことに決めた。
二人が重ねた時間
眠りにつく前、キリトとアスナは低層でコンビを組んでいた頃に気持ちを伝えていたらどうなっていたかを語り合った。二人とも当時なら素直に受け入れられなかったかもしれないと笑い、長い時間を経て今こうして一緒にいることを奇跡のように感じた。互いに好きだと伝え、長い口づけを交わした後、アスナはキリトの腕の中で眠りについた。
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消えたマホークルの工房
十月二十八日の朝、キリトとアスナはマホークルに事情を聞くため三層ズムフトの工房を訪れた。しかし看板は消え、室内も完全に片付けられ、部屋はすでに売りに出されていた。二人は、マホークルが前夜から朝までの間に自ら工房を引き払い、再び姿を消したと考えた。
バリスタの実戦投入
アスナは、会心道から隠れていたマホークルがあえて看板を掲げて工房を構えていたことに疑問を抱いた。キリトは、マホークル自身が情報屋アルゴに条件付きで居場所を伝え、戦闘能力を持つ特定の相手だけを呼び込んでいた可能性を考えた。そこから二人は、マホークルが最初からバリスタを実戦で使うつもりだったと推測し、据え置き武器を安全に撃てる標的として三層の動かないフィールドボスを思い出した。
インドレント・トレント
二人は三層を駆け抜け、山脈の谷にある《The Indolent Treant》の生息地へ向かった。窪地の入口では、マホークルが完成させたバリスタからショートスピアを撃ち、動かないトレントを射程外から一方的に攻撃していた。キリトとアスナが姿を現すと、マホークルは二人が攻略組であることを知った。
九千四百五十二回の真クリティカル
アスナは、バリスタも木工細工もマホークルにとって真クリティカルを極めるための手段ではないかと指摘した。マホークルは攻撃を続けながら、これまで真クリティカルを九千四百五十二回記録したと明かした。さらに、一万回の真クリティカルを達成すれば新たなユニークスキルが解放されると信じており、格下相手では発生しにくいため、動かないボスを射程外から延々と攻撃できるバリスタを利用していたのである。
ユニークスキルへの執念
マホークルは《神聖剣》だけが唯一のユニークスキルだと思っていたが、《二刀流》の出現によって他にも隠されたスキルが存在すると確信していた。キリトは自分の存在が彼女をバリスタ製作へ駆り立てた一因だったと理解し、差し入れを渡したうえで、目的のユニークスキルを得たらバリスタとともに攻略組へ参加してほしいと頼んだ。さらに《瞑想》スキルを熟練度五百まで上げるよう助言したことで、マホークルはキリト自身が《二刀流》の使い手ではないかと察しかけた。
バリスタへの疑問
帰路についたキリトとアスナは、バリスタを扱うための対応武器スキルが存在しないことに気付いた。弓も弩砲も本来SAOには存在しないため、バリスタが開発途中で削除されるはずだった仕様なら、システムがその異常に対処する可能性があった。二人が不安を覚えた直後、谷の奥からインドレント・トレントの異様な咆哮が響いた。
動き始めた怠惰な樹
窪地へ戻ると、インドレント・トレントは根を地面から引き抜き、《怠惰な》という名に反して自ら移動を始めていた。さらに耐久力も大幅に強化され、マホークルが高級スピアを撃ち込んでもほとんどダメージを与えられなかった。キリトは、バリスタによる射程外攻撃への対策としてシステムがボスの行動や能力を変化させた可能性を考えた。
三人での迎撃
バリスタは回収に六十秒必要だったため退避が間に合わず、トレントは伸長した枝の一撃でバリスタを破壊した。続く攻撃を受けたキリトは、敵が五十層級まで強化されていると判断した。近くの低レベルプレイヤーへの危険を避けるため、キリトとアスナは逃げずに討伐を決意した。マホークルも、自分が招いた事態だとして高性能のクォータースタッフを取り出し、二人のパーティーに加わった。三人は武器を構え、強化されたインドレント・トレントへ向かって窪地を駆け下りた。
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会心道への誘い
強化されたインドレント・トレントは防御力が高かったが、真クリティカルには弱かった。キリトはタイコクから受け取った木剣に持ち替え、マホークルやアスナと協力して約二十分で撃破した。マホークルはキリトに感謝し、会心道へ誘ったが、キリトは辞退した。マホークルは会心道の道場へ戻ることになり、キリトは彼女がいつか新たなユニークスキルを得ることを期待した。
アスナの内緒
ズムフトへ戻った後、アスナとマホークルは十五分ほど二人だけで姿を消した。帰路でもアスナは理由を明かさず、上機嫌なままだったため、キリトは会心道への勧誘を受けたのではないかと考えた。
二脚目のロッキングチェア
ログハウスへ戻ると、アスナはウッドデッキに新しいロッキングチェアを取り出した。姿を消していた間に、以前から欲しがっていた二脚目をマホークルに作ってもらっていたのである。家具を増やしすぎたかもしれないと気にするアスナに、キリトは興味がないわけではないと答え、彼女を抱き上げて新しい椅子に座った。
続いてほしい日々
二人はロッキングチェアではしゃぎながら言葉を交わし、キリトはアスナに口づけた。愛するアスナを抱き締めながら、キリトは二十二層で過ごす穏やかな日々が少しでも長く続くことを願った。
同シリーズ






























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