小説「ヘルモード 6 S級ダンジョン「試練の塔」攻略」感想・ネタバレ

小説「ヘルモード 6 S級ダンジョン「試練の塔」攻略」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンル:青年向け異世界転生ダークファンタジー・バトルアクションである。元廃ゲーマーの主人公が“ヘルモード”(ハードすぎる難易度)設定の世界で膨大な経験値とシステム知識を活かし、仲間と共に最凶ダンジョンへ挑む冒険譚である 。
内容紹介
第6巻は、何度もダンジョン攻略を重ねてA級ランクに到達した「廃ゲーマー」パーティーに新たな展開が訪れる。主人公・アレンは“魔力回復リング”を獲得すべく、勇者ヘルミオスが参加する学園の武術大会に出場。決勝では多国の実力者とも激突し、勝利を収めリングを手にする。一方で同巻のクライマックスは、バウキス帝国にてメルルらと共に最強のダンジョン「試練の塔」に挑戦することである。そこではヘルミオス、ゼウ獣王子、ガララ提督とも協力しながら挑んだ夢のレイド戦が展開され、意外な結末を迎える 。

主要キャラクター

  • アレン:元廃ゲーマーで異世界召喚士。召喚獣使いの戦闘スタイルとゲーム攻略思考でパーティを率い、廃設定を攻略軸に行動する。
  • クレナ:パーティの火力兼補助担当。アレンの右腕的存在で、バフや攻撃にも長けた召喚獣使い。5巻から引き続き活躍。
  • セシル = グランヴェル:アレンを“専属従僕”に仕立て上げた気丈な令嬢魔導士。プチメテオ等、爆発魔法による決定力が強み。
  • ドゴラ:パーティの物理アタッカー。大斧を振るう猛者で、狂戦士的キャラ性と仲間への忠誠心を兼ね備えている 。
  • キール=フォン=カルネル:回復兼補助職。貧困出身で金策に詳しく、パーティ支援や聖王の出自を持つ背景もある 。
  • ヘルミオス:ギアムート帝国の勇者で、伝説の武術大会優勝者。パーティと共闘し魔力回復リング取得後も深く関わる 。
  • ガララ提督:バウキス帝国最強のゴーレム使い。アレンたちと共闘するものの、最下層挑戦で苦い結果を迎える 。
  • ゼウ獣王子:獣人国家アルバハルの獣王候補。パーティのレイド戦において貴重な魔導具の分配を行い、後に友人として加わる。

物語の特徴

本作は、“廃ゲーマー症候群”と呼ぶにふさわしいゲーム知識の応用が強みであり、異世界ながらもロールプレイ的戦略とレベル上げの描写が際立っている。高難度A級、そしてS級ダンジョンへの進出は、単なるバトル描写にとどまらず、攻略パズルを多分に含んでおり、ゲームシステムを読み解く快感が読者を惹きつける。他作品との差別化ポイントとして、本巻では複数国家の勇者・英雄との“同盟レイド”が展開されるため、大規模戦闘における戦術構築と心理面の駆け引きも見どころである 。

さらに、ゲームの中毒性を越えて人間関係の描写が深化し、特にアレンとセシルらとの信頼と掛け合い、ヘルミオスら外部英雄との協力体制など、群像劇としてもバランスよく構築されている。武術大会から学園風景への回帰、そして最凶ダンジョンへ向かう流れは、物語全体に緩急を与え、読者の知的好奇心を掻き立てる構成に仕上がっている。

書籍情報

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~6
著者:ハム男 氏
イラスト: 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2022年09月15日
ISBN:9784803016932

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あらすじ・内容

前人未到のS級ダンジョン「試練の塔」攻略を目指し、バウキス帝国へとやってきたアレンたち。再会した仲間のメルルとも合流し、メンバーが揃った「廃ゲーマー」は、試行錯誤しながらダンジョンの各階層を攻略していく。試練の塔には、同じようにダンジョン攻略を目指す各国の実力者たちも活動していた。ギアムート帝国の勇者ヘルミオス率いる「セイクリッド」。バウキス帝国最強のゴーレム使いであるガララ提督率いる「スティンガー」。そして、獣人たちの国であるアルバハル獣王国のゼウ獣王子。ダンジョン攻略の日々の中で、アレンたちは彼らとも交流していく。ある日、アレンたちの成人祝いとして、ヘルミオスやゼウ獣王子とともに宴会をしていると、なにやら外で騒ぎが起きる。そこでアレン達が見たのは、ダンジョン最下層ボスに挑んだガララ提督達の無惨な姿だった……。最凶ダンジョンvs最強パーティー!夢のレイド戦が始まる!!

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~6

感想

今巻を読み終えて、まず心に残ったのは、新たな第一天使となったルプトの苦労である。メルス・メリアンがアレンの召喚獣として、今はのんびりと過ごしている様子を見ると、彼がAランクまで召喚獣をデザインした苦労が偲ばれる。ルプトには、ぜひとも頑張ってほしい。しかし、天界の状況は想像以上にブラックだ。

S級ダンジョン最下層の攻略は、アレンの超絶パワーアップによって進んでいく。ステータス至上主義とも言える展開だが、努力を重ねた結果としてのステータスは、やはり裏切らない。ドゴラから告げられた「力を求めるならば死を覚悟せよ」という不吉な予言も気になるところだ。今後の展開が楽しみである。

S級ダンジョン編は、どこか通過点のような印象を受け、盛り上がりに欠ける部分もあった。しかし、魔王軍との戦いが再び始まる予感がするので、そちらに期待したい。おまけとして収録されているペロムスの物語も、気になる展開を見せている。

少し気になった点としては、メルスやゴーレムのステータスが、やや雑に感じられたことだ。ライトノベルに完璧なバランスを求めるのは難しいかもしれないが、もう少し詳細な設定が欲しかった。また、前の巻あたりから、アレンの一人称が「私」になっている点も、個人的には違和感を覚える。外部の人間と接する際の使い分けなのかもしれないが、いつからそうなったのか、少し気になっている。

今巻では、アレンたちがダンジョン攻略を通して、他国の実力者たちと交流を深める様子が描かれている。ギアムート帝国の勇者ヘルミオスや、アルバハル獣王国のゼウ獣王子など、個性豊かなキャラクターたちが登場し、物語に彩りを添えている。彼らとの交流を通して、アレンたちの人間関係がどのように変化していくのか、今後の展開に注目したい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

第一話 いびつな世界

名工ハバラクの絶望とフレイヤの沈黙

アレンたちは、世界に三人しかいない名工の一人・ハバラクを訪ねたが、彼は火の神フレイヤの怒りによりオリハルコンが鍛えられなくなったと嘆き、泣き崩れた。原因は、ディグラグニを神のように祀り始めたことで、フレイヤの力が失われたとされる。翌日、再訪したアレンたちはハバラクと再会するが、彼は火の力の弱体化と神の声が聞こえなくなった現状を語り、鍛冶を続けることができないと明かした。

信仰の喪失と帝国の思惑

バウキス帝国がディグラグニの信仰を促し、経済的利益を優先して火の神フレイヤへの信仰を失わせたことが、火の力の消失につながったとされる。帝国は戦争の長期化を望み、中央大陸への支援も最小限に抑えていた。他国もまたそれぞれの思惑で動き、名ばかりの五大陸同盟は機能していなかった。

精霊神の介入と神界の異変

ソフィーの肩に乗る小動物として登場した精霊神は、フレイヤがドワーフを見捨てることはないと主張し、真相を探るため神界に向かった。帰還した精霊神は、神界が魔王軍に攻撃されたこと、囮として地上に派遣された部隊が陽動であったことを明かす。本軍はフレイヤ神殿を襲撃し、神器を奪取していた。

神器喪失による神の力の衰退

火の神フレイヤは神器を失ったことで力を失い、やがて石となる運命にあるとされた。これにより、オリハルコンやミスリルを含む金属の加工が不可能になり、戦力の維持が困難になることが予測された。武具の新造も修理もできなくなることから、戦力の質が著しく低下し、人類の存亡が危ぶまれる状況に陥った。

素材活用と世界的連携への動き

アレンは、ローゼンヘイムで得た魔獣素材を武具に加工する計画を立案し、女王や諸侯に協力を依頼した。鎧アリの繁殖による装備の安定供給や、ギアムート帝国の皇帝への働きかけも実行に移され、人類の延命策が進められた。だが、それはあくまで一時しのぎであり、抜本的解決には至らなかった。

神器の本質と神の存在条件

アレンは、神器とは信仰を集める器であり、信仰こそが神を存在させる力であるとの仮説を立てた。フレイヤの力が衰えたのは、ディグラグニに信仰が移ったためであり、神であり続けるためには信仰と神器の両方が必要であるとされた。この理解により、ディグラグニは魔王軍と無関係であり、独立した神の候補として存在していると結論づけられた。

魔王軍の策略と世界滅亡の危機

魔王軍は神の弱体化を待ち、神器を奪うことで確実に神々を滅ぼそうとしていた。戦争の長期化や五大陸同盟の分裂も、魔王軍の長期的な策略の一環である可能性が示唆された。アレンは、神界も含めた「この世界」の滅亡を阻止するため、現実的対策と同時に、神器の奪還に向けた行動を模索し始めた。

新たな展開への兆し

酒場でヘルミオスらと情報を整理するアレンのもとに、怒りに満ちたゼウ獣王子が現れた。その登場は、さらなる事件と展開の始まりを予感させるものであった。

第二話 邪神教の教祖

ゼウ獣王子の怒りと情報交換の始まり

アレンが依頼していた調査により、ゼウ獣王子の怒りが爆発し、獣人たちがアレンたちのテーブルを取り囲んだ。調査対象が連合国であったにもかかわらず、獣王国に関係があることを示唆したアレンに対し、ゼウ獣王子は苛立ちを隠せなかった。ヘルミオスが間に入り、冷静な交渉を提案したことで、ゼウ獣王子はようやく席に着き、話し合いに応じる姿勢を見せた。

フレイヤの神器と魔王軍の策略の共有

アレンは、火の神フレイヤの神器が奪われた経緯や、転職制度が新たに導入される背景を説明した。ゼウ獣王子は、中央大陸の現状や、ギアムート帝国の戦況が今後さらに悪化する可能性について理解を示しつつ、情報を得たことに一定の価値を認めた。

獣王国と邪神教の関係の説明

アレンが本当に知りたかったのは、連合国に存在する邪神教と獣王国との関係であり、シア獣王女が教祖討伐の任務を受けていることを確認するためであった。アルバハル獣王国では、次期獣王を選ぶ試練としてゼウ獣王子にS級ダンジョン攻略、シアには邪神教の教祖討伐が課されていた。邪神教は魔王軍の侵攻を避けると喧伝し、連合国内で信者を増やし、獣王国にも流入していた。

神器と邪神教の関係性の推測と誤算

アレンは、奪われた神器が邪神教に渡り、教祖が信仰を集めて新たな神格を得る可能性を考えたが、ゼウ獣王子は既に教祖が捕らえられ、エルメア教の総本部で裁判にかけられる予定であると語った。この情報により、アレンの推測は外れ、教祖が神器を所持していた可能性は低くなったと判断された。

今後の対応と別れの言葉

話の最後に、奪われた神器がこの世界のどこかで利用される前に対処する必要があるとの共通認識が共有された。別れ際、ゼウ獣王子はアレンに対し、今後シアについて調べる際は自分に直接尋ねるよう念を押し、その言葉から妹を案じる兄の姿が垣間見えた。アレンは、彼の行動の根底にある家族愛を理解し、応じることを約束してその日の会合を終えた。

第三話 拠点での成人祝い

成人祝いと祭りの夜

アレンの誕生日である10月1日、「廃ゲーマー」パーティーの成人祝いが拠点の食堂で開かれた。拠点では、ヘルミオスのパーティー「セイクリッド」や稼ぎの良い冒険者たちも共同生活を送っており、この日は食卓に豪華な料理が並んだ。この日は偶然にも街の「ダンジョン祭」と重なっており、ゼウ獣王子も大樽の酒を持参して突然現れ、祝いに加わった。

試練を終えたシアとゼウ獣王子の決意

アレンは、邪神教の教祖討伐という試練を終えたシア獣王女の件についてゼウ獣王子に問いかけたが、彼は自らに課されたS級ダンジョンの初回攻略の試練がまだ終わっていないとして、帰国を否定した。ゼウ獣王子が攻略を急がない背景には、獣王太子による無理な人選で構成された獣人たちを無事に国へ帰すという、兄とは異なる配慮があった。

英雄たちの過去と語られる逸話

祝宴の中で、セシルがアレンの10歳時の武勇を語り始め、続いてクレナが興味を示したことで、ドベルグが赤竜を倒した自身の過去を語った。幼い頃に友人を救うため赤竜を討伐したドベルグの話は、淡々とした語りながらも皆の心を打った。

緊急事態と提督の帰還

宴の最中、外の騒ぎが悲鳴へと変わり、アレンたちは急行した。神殿前には、片腕と両足を負傷したガララ提督が現れ、ダンジョンの最下層ボスから生還したばかりであった。アレンが「天の恵み」で治療を施し、提督とその仲間を助けた。提督は残された仲間を救うため、さらに霊薬を求めるが、手持ちの薬が尽きていると知らされる。

宴の再開と提督の語り

アレンの招待で提督たちは拠点に迎えられ、祝宴の料理を共にした。提督は戦闘中に失った仲間を悼み、最下層ボスの強さと、逃走の難しさについて語った。そのボス戦は半日以上続き、ビービーやクリムゾンを倒した提督たちですら勝てなかったという。戦いの過酷さを語る提督に、かつての冒険者時代や、軍人としての過去の話が交じる。

提督の引退と新たな覚悟

宴の終盤、提督は自らのパーティーの解散を宣言した。皇帝の命令を無視する形ではあるが、責任は自分が負うと述べた。提督は軍属としてではなく、昔の冒険者に戻ると語り、静かに酒を酌み交わした。この決断により、S級ダンジョンの攻略はアレンたち「廃ゲーマー」のみが担うこととなり、アレンはその重責を静かに受け止めた。

第四話 転職、新たな力

解散後のガララ提督と拠点での静観

最下層ボスとの戦いで仲間を失いパーティーを解散したガララ提督は、翌日からアレンたちの拠点に入り浸り、酒に溺れる日々を送っていた。立派な建物を持ちながら、仲間に顔向けできず出ていったという。元仲間たちはその建物に残り、提督の帰還を待ちながら時折様子を見に訪れ、生活費を支援していた。アレンたちは、彼の心情を尊重し、干渉せずに見守ることを選んだ。

3人の転職と仲間の成長

この日はドゴラ、キール、フォルマールの転職の日であり、精霊神ローゼンの儀式によって新たな職業へと進化を果たした。ドゴラは「破壊王」、キールは「聖王」、フォルマールは「弓王」となり、それぞれ能力が飛躍的に向上した。ドゴラの体力と攻撃力はクレナに迫るほどで、フォルマールも遠距離戦でAランク魔獣を狙える実力に成長していた。なお、ソフィーは転職の機会を1か月後に控えていた。

転職制度の社会的意義と秘匿された神界の危機

転職制度の導入は、世界中で来年から始まる予定であり、神界での異変や神器の喪失といった真相は伏せられたまま、制度の導入背景として簡略に語られることが決まっていた。混乱を避ける目的とされているが、真の意図には疑念も残る。ゼウ獣王子も転職の儀式を見学し、制度の意義を理解した様子であった。

獣王国の十英獣とドゴラの英雄願望

ゼウ獣王子は、アレンたちの戦力を「十英獣」に例えた。これは獣王国の武術大会で部門優勝者に贈られる称号であり、翌年まで保持される名誉でもある。獣王もこの大会の総合優勝者に与えられるが、ドゴラはこの話に強く反応し、英雄に憧れる気持ちをあらわにした。

最下層ボスの恐怖と提督の警告

そのドゴラの高揚に水を差す形で、酒に酔ったガララ提督が最下層ボスの恐ろしさを語り、どれほどの人数や実力者が揃っても到達すらできないと断言した。これにドゴラは激昂し、口論寸前となったが、周囲が宥めて騒ぎは収まった。アレンはこのやり取りの中で、「たどり着くことすらできない」という提督の言葉に注目し、最下層ボス攻略に向けた新たな考察を始めていた。

第五話 先駆者、未知に挑戦した者

精霊との交流と転職者の育成

転職を終えた翌日、アレンたちはS級ダンジョンへ向かう列に並んでいた。ソフィーは新たに懐かせている土の幼精霊「コルボックル」との関係を深めており、精霊神ローゼンはその支援に全力を注いでいた。ローゼンの過剰な助力にアレンは苦笑しつつ、仲間たちの育成と精霊の扱いに気を配っていた。

ガララ提督への見解と「先駆者」の価値

ドゴラとクレナは、飲んだくれるガララ提督への不満を漏らしていたが、アレンは彼を「先駆者」として捉えるよう促した。先駆者とは、未知の強敵に最初に挑み、敗れながらも情報を持ち帰る者のことであり、アレンは前世のゲーム体験からその重要性を理解していた。ガララ提督もその役割を果たした者であり、彼の犠牲があってこそ次の攻略が可能になると説いた。

隠しキューブの発見とデスステージ突入

ダンジョン4階層に到着したアレンたちは、召喚獣の報告により隠しキューブを発見した。転職直後でレベル1の仲間を急成長させるには好機であり、運良くデスステージへ転送される。そこでは複数のサイクロプスが現れ、メルルが操るミスリルゴーレム「タムタム」によって押し返された。その後、次々と現れる巨人たちとの戦闘により、ドゴラたちは一気にレベルをカンストさせ、武具の回収も大成功となった。

冒険者ギルドへの情報提供

翌日、アレンは冒険者ギルドS級ダンジョン支部を訪れ、ダンジョン内で得た装備品を売却し、魔石を収集する傍ら、精密に作成した各種資料を提出した。情報には、階層ごとの隠しキューブや宝箱の位置、クリムゾンが召喚する魔獣の最大数、そしてデスステージの全体地図と構造、転移箇所や管理システムの位置、出現魔獣数などが含まれていた。

情報提供の真意と支部長の疑念

ポポッカ支部長は、これほどの情報を無償で提供するアレンの真意を問いただす。冒険者が利己的な生存を優先する存在である以上、情報を外部に出すなどあり得ないと考えていたからである。アレンは、「ヘルミオスの意志」として、死亡率を下げるための情報提供であることを告げ、2ヵ月後にはその理由が明らかになるとだけ伝えた。

世界を守るための行動

アレンは、人類の存続のため、転職制度の普及と武具の確保を進める必要性を感じていた。火の神フレイヤの力が弱まり武器防具の鍛造が困難となる中、冒険者の生存率を向上させ、彼らに強力な装備を供給するため、情報を共有していた。徹夜で資料を作成するほどの努力を重ねているのは、冒険者の力を少しでも引き上げ、魔王軍と戦える戦力を整えるためであった。

「先駆者」としての存在

支部長はアレンの目的を完全には理解できなかったが、その姿勢と行動に深く感銘を受ける。最後にソフィーがアレンを「先駆者」と呼んだことで、彼が世界を守るために最前線で戦い、道を切り開く存在であることを、支部長もようやく実感するに至った。アレンは仲間とともに、次なる戦いへと歩みを進めていった。

第六話 各階層ボスへの挑戦

情報提供の余波と仲間たちの成長

アレンたちが冒険者ギルドへ提供してきた情報は、ヘルミオスの名義で広まり、多くの冒険者たち、特に獣人やドワーフから感謝されていた。情報により救われた者は数多く、ヘルミオスは酒場などで感謝の言葉と酒の誘いを受け、ついに昨夜はドワーフたちに捕まり、二日酔いとなった。そんな中、アレンたちは2階層の階層ボス「ブラッド=ブラスト=ビートル(ビービー)」への討伐を開始する。

ビービー討伐戦と精霊の力

仲間たちの転職と装備の強化により、ビービー討伐が可能と判断したアレンたちは、事前に得た出現パターンからビービーを発見し、メルルのゴーレム「タムタム」による奇襲を仕掛けた。ギ酸による外骨格の破壊を試みるも致命傷には至らず、最終的にはソフィーがサラマンダーの精霊魔法でとどめを刺した。討伐報酬としてSランクの魔石とブロンズメダルを入手し、アレンたちはその成果を喜び合った。

スカーレットとの再戦と新戦術の投入

続けて挑んだ3階層の階層ボス「スカーレット=サンド=ワーム」は、過去に何度も挑戦しては回復力に阻まれて倒せなかった強敵である。これまでの試行錯誤を経て、仲間たちのステータスとスキルレベルが上昇し、ソフィーの転職も完了していたことから、再挑戦が決定された。

セシルの放つエクストラスキル「小隕石」によってスカーレットの頭部を破壊し、メルルの「超身兵」タムタムが光の剣で胴体を切断。ソフィーが顕現させた大精霊ノームによって砂を硬化し、逃走も封じられた。集中攻撃によりスカーレットを徐々に分断し、ついには再生を上回る火力で撃破に成功した。

新たな階層と更なる強敵への視線

スカーレットの撃破により、アレンたちはついに5階層への進出条件を満たした。報酬としてSランクの魔石とアイアンコインを手に入れ、何度もの挑戦の末に得た勝利の達成感に全員が喜びを噛みしめた。アレンは、試行錯誤と工夫によって不可能を可能にするこの達成感を、前世のゲーム体験と重ねて感じていた。

残るは4階層の階層ボス「クリムゾン」の討伐のみであり、その先に待つ最下層ボスの攻略には、さらに高いスキルレベルと準備が必要と判断していた。アレンは、すでに次の戦いに向けて思考を巡らせていた。

第七話 Aランクの召喚獣開放

スカーレット討伐後の再挑戦と年明けの神託

アレンたちは階層ボス・スカーレットを撃破したのち、残るボスであるクリムゾン=カイザー=シーサーペントに挑戦した。2度の挑戦では倒しきれなかったが、無理をすれば勝てるという手応えを得た。年が明けた1月1日、火の神の力の衰えと転職制度の開始が神託として告知された。まだ制度の詳細が定まっていない様子から、神界でも方針が未確定なのではとアレンは推測した。

召喚レベル8への到達と新スキルの解放

アレンはスキルレベルが上がったことで、召喚レベル8に到達し、新たに「等価交換」スキルと「王化(封)」スキルを獲得した。スキルの検証にあたって、彼は仲間と共に神殿から2階層に転移し、無人地帯で召喚のテストを開始した。等価交換スキルにより、魔石のランクを変換し、より柔軟な召喚が可能となった。

初のAランク召喚獣「オロチ」の出現

Aランクの竜型召喚獣「オロチ」は全長100メートルに達し、5つの首を持つ大蛇の姿で現れた。ステータスは極めて高く、特技は「猛毒の牙」と「超再生」、覚醒スキルは「地獄の業火」である。この召喚獣の出現は、今後の戦力に大きな変化をもたらすとアレンは確信した。

新系統召喚獣「天使A」の出現と衝撃の正体

次に召喚された「天使A」の召喚獣は、十代後半の青年の姿で、光輪と翼を持ち、名を「メルス」と名乗った。当初混乱していた様子のメルスは、やがて第一天使であった過去を明かし、神官グレタや精霊神ローゼンが跪く中、その正体が明らかとなった。

第一天使メルスの過去と召喚獣化の理由

メルスは、神界で火の神フレイヤを守る戦いの中、上位魔神キュベルに討たれた。死の直前、未決定だったAランク召喚獣枠に自身を登録するよう創造神エルメアに願ったという。召喚獣となった今、メルスはエルメアの束縛から自由となり、今後はアレンの戦力として協力を申し出た。

S級ダンジョン階層ボスへの単独挑戦

メルスは召喚獣としての力を確認するため、階層ボスとの戦闘を希望した。結果、2階層のビービー、4階層のクリムゾンを単独で討伐した。ただし、3階層のスカーレットには再生能力の前に敗れた。メルスの力は天使時代の半分以下であり、それでもAランク魔獣に匹敵する力を持っている。

冒険者ギルドへの提案と「ダンジョン情報部」の設立

アレンは冒険者ギルドに対し、「ダンジョン情報部」の設立を提案していた。この組織は、冒険者から情報を有償で集め、精査し、他の冒険者に有償提供するものである。情報提供者には現金ではなく「提供ポイント」で報酬を与える方針を提案し、それにより引退後の人生を支援する仕組みとした。この提案は正式にギルド本部に承認された。

次なる目標へ―5階層への挑戦

提案が実現し、召喚獣の分析も終えたことで、アレンはついにS級ダンジョンの最下層である5階層への挑戦を宣言した。仲間たちは喜びに沸き、次なる戦いへの準備を整え始めた。S級ダンジョン攻略開始から約9ヵ月、アレンたちは新たな戦場へと向かうことになったのである。

第八話 最下層への挑戦

最下層ボスへの第一歩とガララ提督の忠告

アレンは5階層の最下層ボスに「様子見程度で」挑戦する旨をヘルミオスに伝えた。ソフィーのスキル育成が不十分であり、Aランク召喚獣の分析も完了していないため、万一の際には撤退も可能との判断であった。しかし、会話を聞いていたガララ提督は、彼らをあざ笑い、挑戦を無謀だと断言した。ドゴラは激昂するが、アレンは挑発を抑えて拠点を出発した。

5階層突入とメダルの仕組み

アレンたちはSランク階層ボスから得た3種のメダル(ブロンズ、アイアン、ミスリル)を用いて、5階層へと転移した。そこは巨大な魔導具の内部のような構造で、正面のシステムにメダルをはめ込むことで最下層ボスへの道が開く構造となっていた。3つの「間」(銅・鉄・ミスリル)をそれぞれ攻略し、メダルを手に入れる必要があると判明した。

ブロンズゴーレムとの戦いと属性付与の威力

最初に挑んだ銅の間では、身長100メートルのブロンズゴーレムが出現。メルスと竜Aの召喚獣が先行して戦うも、強力なドリル攻撃に苦戦する。天使の輪による属性付与でブロンズゴーレムの弱点を雷属性とし、仲間の武器や魔法を雷に変化させて打撃力を強化した。最終的には、クレナの大剣による一撃でブロンズゴーレムを撃破した。

ゴーレム撃破の成果と今後への備え

討伐後、Sランク魔石と経験値8.6億、ブロンズのメダルを獲得したが、換金価値はない報酬であった。過去のダンジョンと同様、金箱や銀箱の出現確率は低いと予想された。食堂に戻ったアレンたちは、ガララ提督から「アイアンゴーレムは2体出現する」と新たな警告を受ける。

メルスとの対話と神々の思想

アレンはメルスから神々の「調和」思想について説明を受けた。神々は世界の平和よりも「調和」を重視しており、種族間の衝突や滅亡も、その一環と見なすことがあると語った。アレンは、この世界に転生させられた理由が「調和の歪みを正すための混沌」であることを理解し始めた。

鉄の間のアイアンゴーレム戦①:復活する敵

アレンたちは鉄の間に転移し、100メートル級のアイアンゴーレム2体と対峙する。先に槍装備のゴーレムを倒すが、盾装備のゴーレムが蘇生魔法「リペアエナジー」を使用し、槍ゴーレムが復活してしまう。これにより、同時討伐または復活阻止の手段が必要と判断された。

鉄の間のアイアンゴーレム戦②:地形を利用した分断作戦

アレンは通路を活用して2体のゴーレムを引き離す作戦を発案。先に盾ゴーレムを倒すと、蘇生が行われず、成功が確信された。残る槍ゴーレムも、ノームの足止めとタムタムの拘束によって動きを封じられ、連携攻撃で撃破された。

戦利品と戦略的達成感

ゴーレム2体の討伐で得た経験値は合計19.2億。報酬にはSランク魔石とステータス増加装備が含まれていた。アレンは仲間たちの戦力を分析しながら、「これは経験値稼ぎに使える」と確信し、新たなやり込みの一歩を感じていた。仲間たちはその様子に呆れつつも、頼もしさを感じていた。

第九話 故郷での成人祝い

経験値稼ぎによる仲間の疲弊とアレンの孤独

アレンはアイアンゴーレムを利用した「無限経験値稼ぎ」を実行し、1日100体討伐を目標に周回を続けた。しかし仲間たちは、移動も変化もない単調な戦闘に疲れ果て、セシルを中心に反発が起きた。最終的にアレンを除く全員が息抜きとしてダンジョンからの一時撤退を希望し、彼もそれを受け入れた。

新召喚獣・鳥Aによる瞬間転移と帰郷

アレンたちは鳥Aの召喚獣の特技「帰巣本能」を用い、かつて「巣」を作っておいたラターシュ王国グランヴェル領ロダン村へ瞬間移動した。この召喚獣により、今後の長距離移動や連絡手段が飛躍的に向上することが明らかとなった。

白竜ハクとの再会と飼い慣らしの難しさ

ロダン村近郊の白竜山脈に住む白竜ハクと再会。かつて助けた幼竜は体長5メートルまで成長していた。クレナは愛情を持って接するが、ハクが自我を持つことから、魔王のような隷属スキルがなければ完全に飼い慣らすのは困難とメルスは語った。

鎧アリ牧場の構想と村の発展

アレンは鋼鉄よりも硬く軽い鎧アリの外骨格を利用する目的で、繁殖可能か実験を開始。ミスリルに代わる新たな装備素材を確保する必要があった。また、ロダン村は要塞化が進み、ラポルカ要塞に匹敵する村に成長していた。

帰郷と家族との再会、そして成人祝いの準備

ロダン村に到着したアレンたちは家族との再会を果たし、村長宅では盛大な成人祝いの準備が進められていた。鳥Aの特技の検証がきっかけで帰省したアレンに、両親をはじめ仲間の親たち、貴族や王族までが集まる大規模な祝宴が開かれることとなった。

盛大な成人祝いと国境を越えた祝福

成人祝いにはグランヴェル子爵夫妻やトマス、シグール元帥、ルキドラール大将軍らエルフの要人も列席した。料理は村の名物・グレイトボアの肉が振る舞われ、特別な果実酒やエルフ向け料理も用意された。エルフ側からは銀の豆・金の豆への感謝とともに、アレンに対する深い礼が捧げられた。

弟マッシュへの想いと成長の証

アレンは弟マッシュに強化指輪を贈ろうとしたが、マッシュは「自分の力で強くなる」と受け取りを一度拒否した。最終的に非常時のためにと説得され、ポーチごと受け取った彼の姿に、アレンは弟の成長を実感した。

成人式の本質とアレンの決意

参加者が家族と語らう中、アレンは「これが守るべきもの」と心に誓いを立てた。調和を重んじる神々が滅びゆく世界を救わないならば、自分が手段を選ばずに世界を救うと改めて決意する。

ミスリルゴーレムとの戦闘と新戦力の活躍

翌日、アレンたちは拠点に戻り、ミスリルの間に挑戦。高速・遠距離攻撃型のミスリルゴーレムに対し、石Aの召喚獣「ロカネル」の特技「吸収」と「収束砲撃」で見事に一撃粉砕した。「死に戻り」の発動による耐久リセットと吸収強化の連携が勝利を導いた。

最下層ボスへの条件と報酬確認

3種のメダルが揃い、いよいよ最下層ボスに挑戦できる状態となった。挑戦は最大4パーティー・50人まで可能で、報酬は固定の4つ。そのうち1つは初回限定の特別報酬であり、内容はダンジョンマスター・ディグラグニとの交渉次第とされる。

ローゼンヘイムとギアムートへの支援

アレンはローゼンヘイムに続き、銀の豆と金の豆をギアムート帝国にも提供した。これは魔王軍に対する防衛および撤退支援に有効であり、今後の戦局を有利に進める鍵となると考えられた。

次なる決意と仲間への信頼

最下層ボスの転移装置を前に、アレンは情報を精査し、仲間たちと意思を共有する。ソフィーに「頼みごとがある」と切り出し、彼女は即座に受諾することで、アレンへの信頼と協力の意志を示した。最終決戦への準備は着実に進んでいた。

第十話 最下層ボス攻略パーティー

経験値稼ぎによる摩擦と一時帰郷

アレンは「鉄の間」でアイアンゴーレムを周回することで効率的な経験値稼ぎを行っていたが、仲間たちはその単調さに疲弊していた。特にセシルは強く不満を表明し、最終的に全員が一時帰還を主張した。アレンも単独行動は避け、仲間とともに拠点に戻る判断をした。

鳥Aの召喚獣による瞬間移動とその特性

アレンたちはAランク召喚獣である鳥Aの「帰巣本能」を用いて、アレンの実家があるロダン村へ一瞬で移動した。この召喚獣には飛行能力や指定拠点への転移、仲間全員を一括転移できる能力などが備わっており、召喚者であるアレンの意図や過去の戦闘経験を反映した特技が実装されていた。

白竜ハクの成長と新たな世話係の登場

ロダン村近郊の白竜山脈では、アレンたちがかつて救った白竜ハクが大きく成長していた。ハクの世話係として召喚獣の竜Bに代わり、より能力の高い竜Aが任命された。ハクの飼い慣らしは容易ではなく、メルスは自我を持つ魔獣であるがゆえに困難であると語った。

鎧アリ牧場の構想と村の発展状況

ハクの巣の近くでは、外骨格が高品質な素材となる鎧アリの繁殖を目的とした牧場実験が進行していた。ロダン村はアレンの召喚獣と多くの入植者の手によって要塞化が進み、ラポルカ要塞に匹敵する村を目指して発展していた。

家族との再会と成人祝いの準備

アレンたちはロダン村で家族と再会し、広間では急遽準備された成人祝いが開催される運びとなった。召喚獣の能力検証をきっかけに帰省したアレンの行動に触発され、仲間やその親族、貴族やエルフの要人までもが祝宴に参加することとなった。

成人祝いの開催と要人たちの参列

グランヴェル子爵夫妻、トマス、シグール元帥、ルキドラール大将軍らが参列し、村の成人たちとともにアレンたちの成長を祝った。エルフの習慣に配慮した料理も準備され、盛大な宴が開かれた。元帥はアレンが提供した「銀の豆」「金の豆」への深い感謝を表明した。

弟マッシュとの対話と成長の証明

アレンは弟マッシュに強化指輪を渡そうとするが、マッシュは「自力で強くなりたい」と一度拒否した。最終的には非常時用として受け取り、アレンはその成長を実感した。マッシュは学園への進学準備も順調に進めていた。

最下層ボス戦への準備と条件の確認

拠点に戻ったアレンたちは、5階層の「ミスリルの間」でミスリルゴーレムとの戦闘を開始。石Aの召喚獣「ロカネル」の特技「吸収」と覚醒スキル「収束砲撃」により、敵を撃破した。最下層ボスへの挑戦条件として、3種のメダルを1枚ずつ揃えると1パーティーが挑戦でき、最大で4パーティー・50人まで参加可能であることが判明した。

アレンの決断と仲間への信頼

アレンは特別報酬や転移条件についての情報を整理した上で、仲間たちの前で考えを述べる準備を始めた。ソフィーに協力を依頼し、彼女は即座に応じた。最下層ボスへの挑戦が間近に迫る中、アレンは仲間との信頼をより一層深めつつあった。

第十一話 最下層ボスとの戦い①

異種族連合による史上最大の挑戦

この日、S級ダンジョンの1階層神殿前には万を超える冒険者が集まり、ダンジョン攻略という夢を目に焼きつけるために広場を埋め尽くしていた。そこへ、ドワーフ、人族、獣人、エルフの四種族による混成四パーティー、総勢四十数名の一団が出発した。指揮をとるのはゼウ獣王子であり、ヘルミオスやガララ提督もその隊列に加わっていた。

情報操作と政治的配慮による統率体制

本来はアレンたちが収集した情報を基にした作戦であったが、名義上はヘルミオスやゼウ獣王子が主導した形とされていた。特にドゴラはアレンの功績が表に出ないことに不満を抱いていたが、5大陸同盟の結束のため、あくまでゼウ獣王子を立てる構図が採用された。

最下層ボスの間への突入と敵の布陣

四種のゴーレムからなる最下層ボス戦の舞台では、中央にヒヒイロカネ製の超巨大ゴーレム「ゴルディノ」が構え、その両側にブロンズ、アイアン、ミスリルの各ゴーレムが並んでいた。ゴルディノは自らを塔の番人と名乗り、アレンたちの挑戦を受け入れた。

初動戦術とゴーレムによる迎撃戦

アレンの指揮の下、一行は戦闘領域から一旦後退し、ガララ提督率いる15体のゴーレムによる巨大な壁を形成。さらにその中にはヒヒイロカネ製ゴーレム「ゲララバ」も含まれており、敵ゴーレムを押し留めた。

ドワーフたちの「超合体」による形勢逆転

アレンの指示で発動された「超合体」により、3体の150メートル級超合体ゴーレムが出現。ステータスは1万を超え、ガララ提督のゲララバを中心に敵ゴーレムを押し返すことに成功した。

召喚獣による支援と遠距離戦術の発動

敵ミスリルゴーレムの飛行攻撃は、石Aの召喚獣の「吸収」と「収束砲撃」によって一時的に無力化された。しかし、敵にはリペアエナジーによる蘇生能力があり、アイアンゴーレムが仲間を次々と復活させていた。

挟撃による敵後方への突破作戦

メルスの支援によって「帰巣本能」が発動され、1体の超合体ゴーレムとヘルミオスのパーティー「セイクリッド」が敵後方へ転移。盾のアイアンゴーレムを討ち取り、敵の蘇生連鎖を分断した。

キールのヒーラー能力の覚醒

戦線が乱れる中、キールが前衛の動きを予測して回復を予約するという高度な戦術を駆使。フイとサラが後衛を支える中、キールは獣人の暴れ回る前衛を的確に回復させ、プレイヤースキルとしての実力を見せた。

リペアエナジーの切断と敵数の削減

アレンは敵アイアンゴーレム2体の間隔を広げることで、蘇生連鎖を崩壊させる作戦を実行。最後の一体をヘルミオスたちが撃破し、蘇生不能となった敵ゴーレムたちが次々と倒されていった。

最下層ボス・ゴルディノとの直接戦闘へ

残るゴルディノに対して、3体の超合体ゴーレム、十英獣、ヘルミオス、ゼウ獣王子、アレンたちが総攻撃を開始。ゴルディノは怒りに満ちた声で、「集え、我がパーツどもよ!」と叫び、倒されたはずの4体のゴーレムたちを浮かび上がらせたところで幕が閉じた。

第十二話 最下層ボスとの戦い②

超合体ゴルディノの出現

ゴルディノは4体のゴーレムと融合し、超合体形態へと変貌を遂げた。ブロンズとミスリルを肩に、アイアン2体を脚部とした姿は、無数の砲台と巨体を備え、圧倒的な攻撃力と回復能力を誇っていた。その出現に、アレンたちは驚愕しつつも、戦闘の継続を決断する。

砲撃と再生による猛攻

多砲身砲による広範囲攻撃、ドリルパンチによる至近距離破壊、そして敵の超回復により、ガララ提督たちの超合体ゴーレムは圧倒されかけた。アレンは石Aの召喚獣による砲撃妨害や、足元への攻撃指示を出すが、ゴルディノの耐久力と再生能力は、かつて戦ったスカーレット級の脅威であった。

ゼウ獣王子の「獣王化」

アレンの出撃を制止したゼウ獣王子は、獣神ガルムの力を借り、「獣王化」により3メートルを超えるライオンのような巨体へと変貌。その力に呼応し、十英獣らも続々と巨大化し、全員が本能と怒りのままに攻勢を仕掛け、ゴルディノの再生を上回る勢いで破壊を加えていった。

アレンの反撃と底力

アレンはゴルディノに捕まり、一時は踏み潰されるも、仲間たちの回復と補助、数々のバフを受けて生還。手を再生しつつ、攻撃力とクリティカル率を極限まで高め、ゴルディノの脚部を集中攻撃し破壊。ゼウ獣王子たちの攻撃も重なり、ついに超合体ゴルディノは転倒した。

セシルとロゼッタの連携攻撃

止めを刺すべく、セシルが「小隕石」を発動。だが、ロゼッタがその前にエクストラスキル「強奪手」でゴルディノの補助無効スキルを奪取。さらに剣聖ドベルグが連携し、ゴルディノの腕を斬り落とす。一斉攻撃が始まり、精霊神ローゼンの加護によってエクストラスキルが再使用可能となる。

真なるゴルディノの出現と反撃

だが、ゴルディノは真の姿「真ゴルディノ」へと変貌。細身となり浮遊するその姿は、補助スキルをすべて打ち消し、驚異的な速さで攻撃を繰り出した。アレンは仲間を3パーティーに再編成して補助の再展開を指示。ロゼッタのスキル奪取により敵の主力スキルを無効化し、戦況を再び有利へ導いた。

総攻撃と決着の瞬間

風の精霊ゲイルがゴルディノの動きを数秒封じ、その間にアレンが両目を破壊。さらに巨大化した十英獣、ドベルグ、ドゴラ、そしてエクストラスキルを発動したヘルミオスとクレナの連携攻撃によって、ゴルディノはついに崩れ落ちた。アレンの魔導書に「経験値40億」のログが表示され、ついに最下層ボスを打倒したことが確認された。

第十三話 最下層ボス討伐報酬

レイド戦勝利の余韻と仲間たちの反応

ゴルディノを打ち倒したアレンたちは、ギリギリの戦いを制した喜びとともに、仲間たちの様子を確認していた。ゼウ獣王子は父への思いから涙し、十英獣やホバ将軍はその偉業に歓喜した。ガララ提督やゴーレム使いたちは、戦死した仲間を思い黙祷を捧げた。セシルは自らのスキルを使えなかったことに不満を漏らし、ドゴラは自己評価の低さに落ち込んでいたが、アレンは戦いへの貢献を認めつつ、彼に対して奮起を促す言葉をかけた。

最下層ボス討伐報酬の開封と分配

一行は大広間に戻り、銀・金・虹の3種の宝箱を開封した。銀箱からは「収納用魔導具(特大)」、金箱からは「アダマンタイトの本体用石板(足)」、虹箱からは「攻撃力3000上昇のペンダント」が出現した。当初はそれぞれのリーダーが分配を希望するが、ゼウ獣王子とガララ提督は報酬をアレンのパーティーに譲渡。ロゼッタのみは収納魔導具を強奪気味に抱えて死守した。これにより、メルルのゴーレム強化がさらに進むこととなった。

攻略証明と初回討伐報酬の授与

報酬分配が終わると、S級ダンジョン「試練の塔」攻略証明書が発行された。参加者4名それぞれに名刺サイズのカードが配られたのち、初回討伐報酬を持ってダンジョンマスター・ディグラグニが登場。アレンが報酬として「仲間全員のヘルモード化」「2つ目のエクストラスキル付与」を求めるも却下される。代わりに提示した「魔導盤の裏面にスロットを追加し、最大20個の石板を装着可能にする」案は、ディグラグニによって実現された。

魔導盤の拡張と仲間への贈呈

改良された魔導盤はホログラム機能まで備えた高性能な品となり、アレンからメルルへと贈られた。メルルは感激のあまり涙を流し、仲間たちからも祝福を受けた。この一連のやりとりは、アレンが前世の「クエスト」的発想を活かし、「スロット拡張」という形で攻略報酬を最大化した結果であった。

ディグラグニへの挑戦権と未来の布石

アレンはさらに、ダンジョン最下層ボスを倒したことで「ディグラグニへの挑戦権」を得た件について確認。ディグラグニは現在多忙につき受諾はできないとしながらも、将来的な挑戦は認め、勝利した場合には「望みうる最大の報酬」を約束すると宣言した。アレンはディグラグニの胸に埋まる操縦席を見て、彼を召喚獣として取り込む野望を密かに抱く。

攻略報告と祝福の嵐

ディグラグニの力でアレンたちは神殿前に転移され、S級ダンジョン攻略の報が広場に響き渡る。ディグラグニが披露した「カッコいいポーズ」を皮切りに、メルル、ドワーフ、さらには冒険者たちまでがそれを模倣。祝福ムードに包まれた中、ガララ提督は仲間たちに胴上げされ、祝宴へと担がれていった。こうして、試練の塔の攻略は大団円を迎え、1階層の街は歴史的快挙を祝う熱気に包まれたのであった。

第十四話 冒険者ギルドからの誘い

S級ダンジョン攻略後の日常と拠点の再訪

S級ダンジョンを攻略して10日が経過した。アレンたちは3日間のダンジョン探索を終え、2日間の休みに入った。この間、アイアンゴーレム狩りに勤しみ、アレン自身の召喚レベルも上昇していた。特に、メルルの魔導盤が20スロットに拡張されたことで狩りの効率が飛躍的に向上し、報酬で得た装備品も戦闘能力に貢献していた。

ローゼンヘイム要塞の状況とアレンの支援

アレンは北ローゼンヘイム要塞の魔獣残党掃討のため、Aランク召喚獣を多数投入していた。虫Aによる加護の関係で一時削除していた召喚枠も再設定し、エルフたちの帰還と要塞復旧の進展に貢献していた。アレンはこの朗報をソフィーに伝え、彼女は深く感謝した。

バウキス帝国皇帝からの招待とギルドからの来訪者

アレンは、バウキス皇帝ププン3世からの公式招待状が既に届いていたため、来客をそれと勘違いする。だが、実際に来ていたのは冒険者ギルド支部の職員であった。彼はギルド本部長マッカランからの召喚を伝える。アレンは元々ギルドへの訪問予定があったため、翌日に面会を了承する。

マッカラン本部長の登場とSランク認定の話

翌日、アレンたちはギルドでアイテム換金と面会に臨む。そこにはガララ提督、ゼウ獣王子も同席していた。そして、ギアムート帝国からやってきた冒険者ギルド本部長マッカランが登場する。彼は、S級ダンジョン攻略の最大功労者として、当初ゼウ獣王子をSランク冒険者に推薦するが、ゼウ獣王子はそれを辞退し、アレンこそふさわしいと主張する。

アレンへのSランク冒険者認定提案とその意味

一同の証言を受け、マッカラン本部長はアレンにSランク冒険者の肩書を授与する意思を示す。アレンは一度これを辞退しようとするが、マッカランはSランクの特権と責任について説明を始める。それは冒険者ギルド副本部長と同等の権限を持ち、各国で自由かつ影響力のある行動が可能になるというものであった。

Sランクの役割と必要性の理解

マッカランの説明により、Sランクとは常識を超える力を得た者に責任を持たせ、世界との関係性を築かせるための制度であることが明らかになる。アレンは、これが自身の冒険を自由に行うための制度であると認識し、その有用性を理解する。

仲間たちの後押しと決意の承諾

セシルの強い後押しと仲間たちの賛同を受け、アレンはついにSランク冒険者の地位を受け入れる決断を下す。カルロバ支部長が準備していた金色の冒険者証が授与され、その場は拍手と祝福に包まれた。

宴の誘いとアレンのため息

ガララ提督は祝いの宴を提案するが、アレンは騒がしさを予感して辞退する。しかし、提督は強引に彼を引き寄せ、場は和やかに盛り上がる。アレンは「Sランク冒険者」の肩書が、こうした日常の中では無力であることを実感するのであった。

第十五話 バウキス帝国の宮殿

密かな作戦とレベル上げの日々

アレンはSランク冒険者に認定された当日、バウキス帝国の使者と謁見に向かうこととなった。しかしその道中、移動と宮殿での待機期間を有効活用すべく、使者の目を盗みながらS級ダンジョンに通うという密かな作戦を敢行。ヘルミオスの協力も得て、魔導船での旅や宮殿での滞在の合間に転移を繰り返し、レベル上げとアイアンゴーレム狩りを進めていた。

謁見前の対面とゼウ獣王子の帰国決定

皇帝ププン3世との謁見日がようやく訪れ、アレンたちは宮殿の待機室に集結する。ガララ提督は軍服姿で登場し、ゼウ獣王子も王族らしい白を基調とした正装で臨んでいた。ゼウ獣王子は、アレンの尽力により久しぶりの帰国を果たすことになり、帰国後には十英獣の件について獣王と話すことになると語る。また、獣王国への訪問をアレンに持ちかけ、アレンもメルルの転職後に訪れる意思を示した。

バウキス皇帝ププン3世との謁見開始

金色に彩られた豪奢な謁見の間にて、アレンたちは皇帝と対面する。皇帝ププン3世は小太りの温和な男で、ダンジョン攻略者たちにねぎらいの言葉を送るが、その関心は観光案内やアイテムの価格など、やや俗な話題に集中していた。ガララ提督は皇帝の軽率な応対に不満を覚えるが、英雄たちへの労いを引き出すため、話題を切り替えるように仕向ける。

ゼウ獣王子と十英獣に対する評価と緊張感

ゼウ獣王子に対しても皇帝は友好的に接し、十英獣の実力に驚嘆する。しかし、彼らの存在は他の貴族や大臣たちにとって大きな緊張の源であり、かつての迫害の歴史や荒々しい印象もあって、対話中の空気は張り詰めていた。それでもゼウ獣王子は堂々と応じ、皇帝の滞在要請にも快く応じた。

アレンと皇帝の邂逅、広まる噂と懸念

次に呼ばれたアレンが顔を上げると、貴族たちは一斉にざわめいた。年若く見えるその姿と、Sランク冒険者という肩書きが結びつかず、謎と警戒が広がる。これは冒険者ギルドが各国に通達した情報の影響であり、「中堅国家を凌駕する戦力」「争いにギルドは関与せず」との文面が、各国を震撼させていた。結果、ラターシュ王国やローゼンヘイムの反応も注目され、外交上の波紋が広がっていた。

鳥Fの召喚と皇帝の好意的反応

アレンは皇帝の求めに応じて、平和の象徴として鳥Fを召喚し、皇帝の肩に留まらせた。皇帝ププン3世は無邪気に喜び、場の空気は一時的に和んだ。アレンはこれに乗じて、メルルを仲間として得たことに対する感謝を述べたが、この発言がメルルの去就に関わる重大な意味を持つと気づいた宰相が、慌てて会話を止めようとする。

突如もたらされる火急の報

その時、土官姿のドワーフが謁見の間に駆け込み、エルマール教国の首都・教都テオメニアが炎に包まれているとの緊急報告をもたらす。騒然とする場内に、迫り来る新たな戦火の気配が漂い始めるのであった。

特別書き下ろしエピソード①ゼウ獣王子の花花嫁

政略結婚として迎えられた獣王女レナ

アルバハル獣王国とブライセン獣王国の関係悪化を憂慮し、両国の獣王は政略結婚による関係改善を図った。ブライセン側から嫁いだのはレナ獣王女であり、盛大な儀式のもと王都へ到着したレナは、ゼウ獣王子との婚姻を前提として王城へと迎えられた。王城の玉座の間にて、レナは高潔な態度で挨拶を述べたが、ムザ獣王の発言により、レナの視線が不穏なものに変化していった。

玉座への襲撃と過去の因縁

レナは突然、ムザ獣王に対して短剣で襲いかかるが、あっさりと受け止められ、遠くへ投げ飛ばされた。事の発端は3年前の獣王武術大会で、レナの兄がベク獣王太子に殺されたことであった。ブライセン国内ではこの件に対する遺恨が根強く残っており、レナの行動もそれに起因していた。ムザ獣王は、遺恨を断ち切るためにレナとゼウを結婚させたことを明かす。倒れたレナをゼウが抱き上げる中、ムザと獣王妃の過去も語られ、王家における嫁入りの覚悟の重さが浮き彫りとなった。

ゼウの決意とレナの変化

目を覚ましたレナは、自らの短剣がゼウの手にあるのを見て激昂する。復讐に生きてきたレナにとって、兄を殺した相手に情けをかけられることは屈辱であった。だが、ゼウは「獣王になる」と宣言し、誓いを短剣に託してレナに渡す。ゼウの真摯なまなざしに心を揺さぶられたレナは、彼の誠意に初めて笑顔を見せ、「ゼウ獣王子、この誓い、必ず守ってもらうぞ」と応じた。

王子と花嫁のその後と新たな誓い

数年後、レナとゼウは夫婦として平穏な生活を送っていた。ある日、レナはゼウが妹のシアに先んじて王位継承の試練を授かっていないことに激怒し、逆エビ固めで責め立てた。ゼウは苦しみながらも、獣王ムザに直談判し、ついに試練を授かる。その内容は、S級ダンジョンの攻略という前人未踏の課題であった。

命懸けの挑戦と夫婦の絆

S級ダンジョン攻略は、過去に数多くの命が散った絶望的な試練であり、レナはゼウを止めようとする。しかし、ゼウは「余を誰だと思っておる!」と初めて声を荒げ、「誓いを果たし、そなたを美しい獣王妃とする」と改めて誓った。こうしてゼウは、自らの覚悟を示し、獣王としての道を切り拓くため、S級ダンジョンへと向かったのであった。

特別書き下ろしエピソード②ペロムスが始めた物語

商人としての大成と契約の勝利

アレンたちが最下層ボスに挑む頃、ペロムスは「廃課金商会」の経営と商業学校の卒業を両立させ、ついに1つの節目を迎えていた。その日、彼はギアムート帝国の外交官および「不動産王」マルマンと、ラターシュ王国王城にて取引の場に臨んでいた。対するラターシュ側には通商大臣と、ペロムスの想い人フィオナの父であり、名商人チェスターが同席した。

機転を利かせた二重契約

交渉の焦点はローゼンヘイム製武具の輸出だったが、ペロムスはエクストラスキル「天秤」を活用し、両国の需要と価格を精査。大量取引を理由にローゼンヘイムからの仕入れ価格を引き下げ、ギアムート帝国には急ぎの需要を逆手に取って割増価格で売る契約を成立させた。さらにペロムスは、追加の契約として「ギアムート帝都の再開発区域にチェスターの宿の支店を出す」案件を成立させ、チェスターの長年の夢を実現させることにも成功した。

恋と約束と、胸を張れる成果

この一連の契約成立は、ペロムスがかつてチェスターと交わした約束——「立派な商人になったらフィオナとの交際を認める」に応えるものであった。チェスターもそれを認め、ペロムスを称賛。ラターシュ王国随一の豪商人であるチェスターの商会も、「廃課金商会」の系列に組み込まれるに至った。

運命の再会と予期せぬ結末

喜びに満ちた面持ちで、ペロムスは数年ぶりにフィオナとの再会を果たす。しかし彼女は、交際の話を何も聞かされていなかった。父の突然の発表に困惑し、不機嫌を露わにするフィオナに、ペロムスは何とか取りなそうとするが、チェスターはなおもペロムスの商才を語り続けてしまう。

理想のすれ違いと破局

ついにフィオナは怒りを爆発させ、「わたくし、強い殿方でないと嫌なんですの!!」と叫び、部屋を飛び出していった。チェスターも慌てて追いかけるが、ペロムスはその場に膝をつき、呆然とするしかなかった。「終わった」と呟いた彼の心に、確かな失恋の現実が刻まれた。

終わりと始まりの境界線

こうして、ペロムスが始めた1つの物語の章は終わりを迎えた。しかし、それは同時に、新たな物語の章の始まりでもあった。本人はまだそれを知らぬまま、静かに次なる一歩への時を待つのであった。

特別書き下ろしエピソード③うごめく魔王軍

魔王軍の拠点に集う中枢の強者たち

アレンたちがS級ダンジョンに挑む中、魔王軍本部の「魔王城」では、Sランク魔獣および上位魔神たちが白亜の広間に集っていた。彼らは、神界攻略作戦の功労者への褒賞の儀式に立ち会うためであり、その威容と緊張感は、過去の作戦とは一線を画すものだった。

褒賞の儀と新たなる「魔天」誕生

総司令オルドーの号令の下、魔王軍最高幹部たちが登場し、まずは漆黒の翼を持つ魔神シーラが呼び出された。彼女は魔法神イシリスを欺いて「神界の鍵」を奪い、侵攻の経路確保にも貢献した功績から、「上位魔神」および魔王直属親衛隊「魔天」の一員に任命された。これにより、魔王軍における「六大魔天」が成立することとなった。

双子の魔神と「研究対象」への格下げ

フレイヤから神器を奪ったと豪語するラモンとハモンの姉弟は、褒賞対象から外れたことに不満を漏らす。しかしオルドーは、魔造研究用の実験体として調査団に引き渡すよう命じる。彼らが上位魔神への昇格を期待していたのに対し、その立場は著しく下げられる形となり、魔王軍内部の非情さが浮き彫りとなった。

神界攻略の成功と地上侵攻の失敗

神界においては成果が上がったものの、地上3大陸への侵攻は失敗に終わっていた。キュベルは、アレンとヘルミオスによる抵抗で自らの作戦が崩れたと自嘲気味に語り、さらにローゼンヘイムに派遣したレーゼルの件をめぐってオルドーに追及されるが、巧妙に受け流す姿勢を崩さなかった。

次なる戦いと「修羅王」バスクの登場

その場にいた戦闘狂の魔神バスクは、前回の作戦で後方待機に終わったことを不満に思い、キュベルに抗議する。キュベルはその要求を快諾し、次なる作戦への参加を認めた。彼の「修羅王」という異名と凄まじい戦闘欲は、今後の展開に大きな脅威をもたらすことを予感させた。

動き出す魔王軍、迫る次の戦場

キュベルの「次の作戦も面白くなる」との発言と共に、魔王軍は次なる行動へと舵を切った。神器の調整が進む中、より大規模で、より強力な戦力を投入する段階へと移行しつつあり、世界は新たな戦乱の兆しに満ちていた。

特別書き下ろしエピソードメルルの帰る場所

両親との再会に向けて動き出すメルル

アレンたちがS級ダンジョンでのアイアンゴーレム狩りを続ける一方、メルルはバウキス帝都の宮殿に招かれた両親と会うため、アレンの協力でダンジョンから宮殿の客室へと転移した。久々の家族との対話に、彼女は心を躍らせていた。

豪華な歓迎と戸惑いの空気

メルルが訪れた客室では、母カナナが晩餐会出席のためのドレスを試着し、宝飾品の準備が進められていた。父ネネクは役人と家の改築に関する打ち合わせをしており、帝国からの厚遇に戸惑いを隠せない様子だった。メルルはこの盛大なもてなしの背景に疑念を抱き始める。

S級ダンジョンの功績と親の誇り

メルルは、S級ダンジョン攻略の証として授かった魔導盤を見つめながら、自身の成長と仲間たちとの絆を思い返していた。その間、ネネクからは家の新築計画について説明がなされたが、彼は「メルルの帰る場所を守るために、引っ越しはしない」と語り、娘を思う親の気持ちを率直に伝えた。

亡き先輩ペペクの助言と決意の告白

かつての先輩ゴーレム使いペペクの助言を思い出しながら、メルルは両親に自分の真意を伝える決意を固めた。自らの意思で悪と戦っていること、S級ダンジョン攻略は世界を守るための戦いの一環であることを訴えた。

親の覚悟と誤解の解消

ネネクとカナナは、帝国の厚遇を「危険な任務の代償」と捉え拒絶しかけたが、メルルの真剣な説明に心を打たれ、娘の選んだ道を尊重する姿勢を示した。そして彼女の成長を実感し、涙ながらにその覚悟を受け止めた。

家族の絆と未来への約束

メルルは「帰る場所」としての家を大切に思い、新築の間取りを自分が選ぶと宣言。両親もそれに賛同し、三人で楽しげに新居の設計に取り組む姿が描かれた。メルルは胸の魔導盤に手を添え、両親と兄たち、そして世界のために戦い続けることを静かに誓うのだった。

特別書き下ろし。
第一天使ルプトの初任務

兄の跡を継いだ新任第一天使ルプト

神界が魔王軍の侵攻を受け、第一天使メルスが戦死した直後、双子の妹であるルプトが新たな第一天使に任命された。創造神エルメアは、10万年を共にした兄の死にも動じず任務を遂行しなければならないルプトにねぎらいの言葉をかけ、ルプトは気丈に応えた。

膨大な資料と混沌の研究室との遭遇

ルプトは配下となる天使アウラ・レミア・モウラとともに、兄メルスが遺した召喚獣研究室を訪れたが、その惨状に絶句した。廊下には資料や素材が散乱し、部屋も魔導具や記録であふれ、足の踏み場もない状態であった。彼女はすぐさまAランク召喚獣の設定作業に取り掛かるよう指示され、逃れられない運命に直面した。

霊A召喚獣の設定と神々との交渉

急遽召喚士アレンの召喚レベルが上がることを理由に、ルプトは霊A召喚獣の設定作業を任された。だが、特技には魔法神イシリスの協力が必要とされており、裏切り者の影響で機嫌を損ねたイシリスに依頼するのは現実的でなかった。アウラは裏ルートとして、夫である時空神デスペラードに依頼するよう提案した。

アレンの膨大な要望と隠された苦労

ルプトとアウラはデスペラードを訪ね、アレンから寄せられた数百項目以上の膨大な特技要望リストを提示。彼の過剰な要求にルプトは初対面ながら嫌悪感を抱き、アウラが「野郎」と呼ぶ理由を実感した。結果的に「空間を移動し背後から斬る」特技を霊Aに実装することで合意し、調整を進めることとなった。

剣神セスタヴィヌスへのさらなる依頼

時空魔法に連動する剣技の設定には、剣神セスタヴィヌスの協力が不可欠であった。苦手意識を抱きつつも、ルプトは期限の厳しさから観念し、神々の神域を巡って特技設定と召喚獣の外見設計を完成させていった。

Aランク召喚獣の完成と終わらぬ業務

1ヵ月の過酷な作業の末、ルプトはメルスが残したAランクの召喚獣設定をすべて完了。疲労困憊のまま床に倒れ込んだが、その直後、アウラからSランク召喚獣の設定作業が始まることを知らされる。

理不尽な任務と沸き上がる怒り

アウラは、Sランクは新設のため専用の作業室もなく、既存の資料を片付けてから作業に入るよう命じた。さらに、「最高に凝った設定を望む」とのエルメアの指示もあり、ルプトの怒りが爆発寸前に達した。彼女は初めて、理不尽な要求を繰り返す召喚士アレンに向けて、「あの野郎……」と低く呟いた。

第一天使としての自覚と覚悟の芽生え

アウラはその怒りを「その意気」と肯定し、ルプトを正式に第一天使として認めた。こうしてルプトは、兄メルスの残した仕事を引き継ぎ、神界と人間界をつなぐ最前線で、アレンという存在と向き合いながら、職責を果たしていくこととなったのであった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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