物語の概要
本作はライトノベルに属するアクション・ファンタジー作品である。狩場で突如暴走した刃蜂により多くの冒険者が犠牲となる中、ギルド副頭取カークが人為的な犯行の可能性を疑い、傭兵ジグに調査を命じる。ジグは亜人や鍛冶屋、マフィアといった情報網を駆使し真相に迫る。一方、魔女シアーシャもまた独自に行動を開始し、二人の物語は新たな局面へと突入する。
主要キャラクタ
- ジグ:本作の主人公であり傭兵。双刃を操る冷静沈着な戦士で、調査依頼を受け真実へと突き進む。
- シアーシャ:魔女と呼ばれるヒロイン。ジグと行動を共にしながらも、自らの意志で別行動を開始し、物語を動かす鍵を握る。
- カーク:冒険者ギルドの副頭取。刃蜂事件に人為的関与を疑い、ジグへ調査を依頼する。
物語の特徴
本作の魅力は、王道ファンタジーながらも“二大主人公”の視点が交錯する構成にある。ジグの捜査とシアーシャの独立行動という二重構造が緊張感を生み出す。また、亜人やマフィアなど多様な勢力が絡む世界観は、単なる冒険譚ではない奥行きをもたらし、読者を飽きさせない。さらに、ライトノベル大賞などでも高評価を得ており、その完成度とストーリーテリングの巧みさが他作と一線を画す。
書籍情報
魔女と傭兵6上
著者:超法規的かえる
イラスト:叶世べんち
レーベル/出版社:GCN文庫/マイクロマガジン社
発売日:2025年6月20日
ISBN:9784867167762
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あらすじ・内容
双刃、奔る。
歪な二人が交わるとき、物語は始まる
突如発生した狩場での刃蜂の暴走事件。
ジグたち救援部隊の活躍もあり、被害は最小限に抑えられたものの、冒険者に多くの犠牲を出した。
この事件が人為的に引き起こされたギルドへの攻撃ではないかと疑うギルド副頭取・カークは、ジグに事件の調査を依頼する。
亜人に鍛冶屋、マフィアと、これまで積み上げてきた情報網を駆使して情報を集めるジグ。
一方、残されて不満げなシアーシャも何やら行動を開始し……?
感想
読み終えて、まず心を奪われたのは、シアーシャの二面性だった。
普段はジグに甘え、可愛らしい一面を見せる彼女。
しかし、今巻では魔女としての底知れぬ恐ろしさが顔を出し、そのギャップにゾクッとした。
ジグが窮地に陥った時、依頼主であるカークに有無を言わせぬ圧力をかける姿は、まさに圧巻。
彼女の行動は、ジグへの深い執着ゆえなのだろうけれど、その手段を選ばない強引さには、正直、ちょっと引いてしまった。
でも、それこそがシアーシャの魅力なのかもしれない。
物語は、刃蜂の暴走事件という衝撃的な幕開けを迎える。
装備を全損し、重傷を負い入院したジグが、血を補給するためにありえないほどの大食いをして、あっという間に金欠に陥るというコミカルな展開は、シリアスな物語の良い息抜きになる。
しかし、その直後に発生した蜂の巣の大事故は、笑い事では済まされない悲劇を伴う。
必死に女性冒険者を救出し、力尽きた男性冒険者を助けるとはいえ蹴飛ばし救出しようとするジグの姿には苦笑いしながらも感動したけれど、それでも犠牲者が出てしまう展開は、深い悲しみと無力感を突きつけてくれた。
事件の真相を突き止めるため、ジグは情報収集に奔走する。
ところが、彼が情報屋の真似事をした結果、広まっていたのは、彼自身の大食いに関する噂だったというオチには、思わず吹き出してしまった。
そんなドタバタ劇の裏で、物語は徐々に核心へと迫っていく。ギルド副頭取カークからの依頼、そして、ジグを襲う謎の影。
黒幕は一体誰なのか?
事件の裏には、どんな陰謀が隠されているのか?
謎が謎を呼ぶ展開に、ページをめくる手が止まらない。
最後は何処かに飛ばされたジグは何処に飛ばされのたか?
ジグは無事にシアーシャの下に戻れるのか?
続きが気になる。
本作は、戦闘シーンの迫力もさることながら、登場人物たちの人間関係が丁寧に描かれている点も大きな魅力だ。
ジグとシアーシャの歪ながらも強い絆、そして、ギルドの仲間たちとの信頼関係。これらの人間模様が、物語に深みを与えている。特に、今巻ではシアーシャの存在感が際立っており、彼女が物語にどのような影響を与えていくのか、目が離せない。
次巻では、事件の真相が明らかになることを期待しつつ、ジグとシアーシャの活躍を心待ちにしている。
それにしても、シアーシャ、やっぱりちょっと怖い!
でも、そこが良い!
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
ジグ
状況判断と戦闘能力に優れた傭兵であり、孤独ながらも信頼を築く姿勢を持つ。
• 所属や肩書の明記はないが、冒険者登録を行っていない外部協力者として活動している。
• 刃蜂事件ではシアーシャやノートンらと共に人命救助に参加し、三人を同時に担いで走るなど驚異的な体力と判断力を示した。
• 自身の魔術行使は確認されておらず、肉弾戦と双刃剣を主武器とする実戦型の戦士である。
• 魔獣「偃刃豹」「薄刃首狩蟲」などとの戦闘で成果を挙げ、戦術眼と臨機応変な対応力を見せた。
• 暗殺者の襲撃を受けた際は即座に反撃し、重傷を負わせて捕縛するなど、高い戦闘経験を証明した。
• ギルド副頭取カークの依頼で事件調査を請け負い、情報収集・交渉・戦闘を独力で遂行している。
• 最終局面では刺突剣使いスティルツとの戦闘中に転移術を受け、ストリゴへ飛ばされることとなった。
シアーシャ
魔術と知性に優れ、ジグに強い信頼と情感を抱く魔術師である。
• 冒険者として登録されており、ギルドからの強制依頼を受ける立場にある。
• 刃蜂事件では岩槍などの攻撃魔術を駆使して敵を殲滅し、ジグと共に生存者救助に貢献した。
• 魔獣との連携戦闘では素早く対応し、素材の剥ぎ取りにも長けている描写がある。
• カークに対して礼儀正しくも威圧的な交渉を行い、ジグの依頼内容を把握するために独自に動いた。
• 戦闘中にジグへの想いを意識するようになり、その感情の芽生えに戸惑いながらも肯定的に受け入れている。
カーク
ギルド・ハリアン支部の副頭取として、実務と判断を担う中間管理職である。
• ギルドの秩序維持と都市運営に責任を負い、多忙な業務の中で人員不足と依頼滞留に苦悩している。
• ジグに対し外部協力者制度を用いて依頼を提示し、報酬も特例で支給するなど柔軟な采配を行っている。
• 刃蜂事件の背後にある意図を察知し、過去の不正告発の経験からもギルドの機密保持と正義の両立を重視している。
• シアーシャに対しては圧倒されつつも情報を開示し、状況に応じた現実的な対応を取る人物である。
ノートン
シバシクルのクランマスターであり、冷静かつ的確な指揮を行う熟練冒険者である。
• 救助活動において捜索隊の指揮を担当し、刃蜂群の動向に即応した戦術を展開した。
• ジグに対して関心を示し、互いの力量を認め合うことで信頼関係を構築していった。
• 刃蜂襲撃時には仲間の救出を支援し、囮部隊の一員として重責を担った。
• ノーラの詠唱援護や脱出後の報告整理など、指揮者としての冷静さと責任感が強調されている。
ノーラ
高威力の炎魔術を操る女性魔術師であり、詠唱補助を必要とする繊細な性質を持つ。
• 刃蜂との戦闘では火炎魔術の詠唱を完遂し、群れを一掃する決定打を放った。
• 戦闘中に気絶する場面もあったが、ジグの支援を受けて回復し、その後の魔術行使に集中した。
• 帰還後は戦果報告を担い、ジグの貢献を他者に伝える役割を果たしている。
アオイ
ギルドの受付嬢であり、業務の丁寧さと場の空気を読む対応力を併せ持つ職員である。
• 刃蜂事件の発生をジグに伝達し、被害の状況や対応内容を的確に説明した。
• 報酬受け渡しの場面ではジグとノートンのやり取りを見守り、言動を適宜たしなめている。
バルト
亜人パーティー「森の牙」のリーダー格であり、警戒心と公正な判断力を兼ね備えた人物である。
• ジグの来訪に当初は警戒を示したが、態度と実績から誠意を認め、事件当時の状況説明に協力した。
• 食事を共にすることで人間との間に一定の信頼を築き、誤解の緩和に寄与した。
シェスカ
鍛冶屋「エルネスタ工房」に所属し、ジグと旧知の関係を持つ気さくな女性職人である。
• 情報提供にも柔軟に応じ、ジグの訪問を快く受け入れて工房の裏側まで案内した。
• ジグが誤って拷問の話題を持ち出した際には即座にたしなめるなど、対人感覚にも優れている。
ガント
無愛想な性格ながらも高い技術を持つ鍛冶師であり、魔具や武器の解析を担当した。
• ジグの双刃剣や破損魔具の構造分析を行い、製作技術や素材の異常性を明らかにした。
• 薬物混入の事実を怒りを込めて受け止め、製作者の杜撰さを厳しく非難した。
スキラッチ
マフィアに属し、薬物鑑定に通じた知識を持つカティアの部下である。
• 魔具内の薬物を鑑定し、その成分が「魔黄麻」に由来する高品質ドラッグであると断定した。
• ストリゴが供給源であることを明かし、ギルドの調査方針に重要な手がかりを提供した。
カティア
過去にジグと接点を持つマフィア幹部であり、情報と協力の交渉に長けた人物である。
• 魔具から発見された薬物の出所調査を引き受け、ジグの依頼がギルド由来であると知ると態度を軟化させた。
• ストリゴの情報を即座に提供し、部下を率いて襲撃支援にも参加するなど、現場行動にも積極的であった。
シャナイア
ストリゴの教会跡に現れた謎多き少女であり、不穏な雰囲気と鋭い観察眼を持つ存在である。
• 初対面時には敵意を見せたが、ジグの話を受けて態度を軟化させ、信頼に値する人物として握手を交わした。
• 名前以外の素性は明かしていないが、魔力の扱いに長けていることが示唆されている。
展開まとめ
一章 蜂撃乱舞
入院生活と医師ドレアとの対話
ジグは白い病室で目を覚まし、怪我により入院生活を送っていた。担当医ドレアは口うるさくも穏やかな性格であり、ジグの剣術への渇望を抑えつつ診療所での治療を続けていた。ドレアは冒険者の多い街では患者が尽きることはなく、診療所の経営も安定していると語った。ジグ自身は驚異的な回復力を見せ、ドレアとシアーシャもその異常な再生力に驚嘆していた。
魔力の男女差とその仮説
ドレアは、魔力の平均値は女性の方が高いとする研究結果について言及した。彼の私見では、出産能力が魔力生成と関係している可能性があるという。シアーシャはその仮説に興味を示したが、ジグは自身の出自に照らし合わせて懐疑的であった。ただし、現地では女性も戦士として活躍できる環境であることを重要視していた。
剣術鍛錬と自己省察
退院直前、ジグは裏庭で双刃剣を用いた鍛錬に没頭した。彼の剣技は熟達していたが、かつて対峙した免罪官ヤサエルとの戦いを思い返し、なお鍛錬が必要だと痛感していた。力だけでなく、技と速度の総合力が戦場では求められると改めて認識し、今後も研鑽を重ねる決意を新たにした。
退院と経済的困窮
四日間の入院を経て、ジグは無事退院したが、医療費と装備修繕費、さらに回復に伴う暴食のために所持金が尽きてしまった。残った金銭で朝食を買えば、もはや駄賃にもならない状態であり、生活のために急ぎ仕事を探す必要に迫られた。
ギルドでの騒動と緊急依頼の発生
ジグとシアーシャが訪れたギルドは騒然としており、多くの負傷者が運ばれていた。受付嬢アオイから伝えられたのは、強力な魔術が刃蜂の巣に命中し、大群が暴走しているという事態であった。刃蜂は一体の脅威は小さいが、群れになると極めて危険な存在であり、今回は数千匹規模の群れが一斉に襲撃を始めていた。
人命救助依頼の提示と報酬条件
ギルドは事態を重く見て、冒険者たちに救助活動を要請していた。避難できた冒険者は四割程度で、約八十人が森に取り残されていた。シアーシャにはギルドから強制依頼が発動されたが、ジグは冒険者登録がないことを理由に参加を拒否した。そこへ副頭取カークが現れ、ジグに対し外部協力者制度を利用した正式な救助依頼を提示した。
依頼契約と報酬の交渉
ジグは依頼内容と条件を確認し、報酬は年齢によって差が設けられており、三十歳未満の救助で一人四万という歩合制であった。この契約は書面なしの口約束であったが、双方の信頼と利益の一致に基づく重みのある取り決めであった。契約は成立し、ジグとシアーシャは即座に救助活動へ向かうこととなった。
報酬の基準と倫理観の問答
シアーシャは年齢によって報酬に差がある理由を問うたが、カークは命に価格がつくのは当然であると即答した。その態度に不快を示す様子もあったが、カークは動じずに自身の判断を通した。かくして二人は、人命救助という過酷な任務に報酬を得るための行動を開始したのであった。
救助活動の準備と探索範囲の確認
ジグとシアーシャは、冒険者ギルドからの依頼を受け、救助活動に向けて準備を進めた。支給された医薬品や担架を携え、刃蜂の襲撃で逃げ遅れた冒険者たちの捜索を目的として、地図と目撃情報に基づき森の奥への探索計画が立てられた。巣周辺は既に壊滅状態であると推測され、生存者の多くは森の奥に逃げていると判断された。
救助隊の編成と行動開始
ジグたちは冒険者総勢二十五名の救助隊に加わり、搬送隊と捜索隊に分かれて行動することとなった。捜索隊の指揮を執るのはシバシクルのクランマスター・ノートンであり、彼の指示により隊は巣の左右を回りながら生存者を捜索する方針が取られた。ジグとシアーシャは右回りの隊に加わり、前衛・後衛に分かれて進行していった。
ノートンとの接触と信頼関係の構築
道中、ノートンはジグに興味を示し、過去にイサナから聞いた話を引き合いに出して会話を交わした。ノートンはジグの自然な戦闘姿勢と身体能力を観察し、対等以上の実力を認めた。両者は互いらの力量を意識しつつも、現在の任務に集中することを確認し合った。
巣周辺の状況と死体の発見
捜索を進める中で、隊は刃蜂に襲われた痕跡や解体された冒険者の遺体と遭遇した。死体の多くは持ち帰る余裕もなく、冒険者カードのみを回収する対応が取られた。巣周辺での生存者の可能性は限りなく低いと判断され、隊は進行を続けた。
魔獣異変に関するノートンの仮説
隊が反対側の捜索隊を待つ間、ノートンは近頃頻発する魔獣の異変についてジグに語った。幽霊鮫や狂爪蟲、削岩竜などの動向が短期間に集中している点に注目し、背後に何らかの因果関係があるのではないかと推測した。ジグは懐疑的であったが、相手の思考や戦法を念頭に置きつつ情報収集を怠らなかった。
反対側の隊との合流と情報交換
反対側から戻った隊は、生存者六名を発見・救助したと報告した。彼らは足を怪我していたため、魔術で地中に穴を掘って身を隠し、生き延びていた。刃蜂の中には地中作業に適した種類も存在することが判明し、魔獣にも役割分担があることが明らかとなった。
突然の刃蜂の襲来と緊急行動
ノートンが異変に気づいた直後、刃蜂の大群が視界に現れ、捜索隊と搬送隊に襲いかかった。ジグは咄嗟にシアーシャに壁を生成させて搬送隊を隠し、囮となって敵を引き付けた。ジグ・シアーシャ・ノートンのほか、偶然合流した冒険者三名が刃蜂の群れを引き離すため逃走を開始した。
逃走中の魔術展開と仲間の救助
ジグはシアーシャを担ぎ、詠唱の負担を軽減することで魔術による迎撃を継続させた。さらに走行中に力尽きた魔術師ノーラを右肩に、倒れた彼女を抱え上げて二人を担いで走り続けた。ノーラの炎魔術とシアーシャの岩槍によって、刃蜂の群れは徐々に数を減らしていった。
仲間の脱落と非常手段による救助
疲弊した弓使いの冒険者が倒れ、周囲に助けを求める間もなく絶体絶命の状況に陥った。その瞬間、ジグが彼を蹴り飛ばすという非常手段を選び、飛ばされた彼をノートンが受け止めることで命を救った。この過程でジグは三人を抱えた状態で走り、極限の判断と体力を発揮した。
刃蜂の掃討と仲間たちの行動
残された冒険者たちは、ジグたちが刃蜂を引き付けている間に捜索活動を継続した。シバシクルの指揮代理はリーダーを信頼し、動揺を見せることなく職務を遂行した。仲間との信頼関係を土台とした連携により、現場は冷静さを保ち続けていた。
迎撃体制と形勢の反転
刃蜂の群れは炎と土の魔術により大きく削られ、数えられるほどにまで減少した。ノーラが放つ大規模な最終術の詠唱が進む中、チームはその完成を援護し続けた。捜索と迎撃が並行する中、戦場の主導権は徐々にジグたちへと移りつつあった。
ノーラの火炎魔術による刃蜂群の殲滅
ノーラの大規模火炎魔術が完成し、周囲に炎の竜巻を巻き起こして刃蜂の群れを焼き尽くした。威力は強大であり、空間ごと抉るような火力が展開され、残存する敵を一掃するに至った。ジグとノートンの連携による時間稼ぎも成功し、敵の追撃は止んだ。
戦後の処理と負傷者への対応
一行は休憩とともに負傷者への応急手当を行い、ノーラも魔力を消耗して動けなくなったが、軽傷で済んでいた。搬送隊も合流し、負傷者と共に森からの撤退を開始した。ジグとノートンは殿を務め、最後まで警戒を怠らなかった。
ギルドへの帰還と戦果の報告
ギルドへ帰還したジグたちは、救助活動の成果を報告した。合流した生存者たちの証言により、ジグが三人を担いで逃げ切ったことや、仲間の連携による救助が称賛された。特にノーラとノートンが状況を整理して説明したことで、ジグの行動の意義が強調された。
ジグの報酬と登録の申し出
ジグは冒険者登録がないことから、正式な報酬を得る立場にはなかったが、副頭取カークから特例として報酬が支払われた。さらにカークは、ジグに冒険者としての登録を勧めたが、ジグはこれを明確には承諾せず、一定の距離を保ったまま立ち去った。
ノートンとの再会と今後への示唆
ノートンはジグの実力を改めて認め、再び手を組む可能性を仄めかした。ジグもまた、ノートンの冷静な判断力と行動を評価しており、互いの信頼は深まっていた。森での戦いを経て、ジグたちの立場と関係性に新たな変化が兆し始めていた。
カークとの対話と事件調査の依頼
ジグはカークから事件の経緯を聞かされたが、風の術師が容疑者として特定できないという点に意外性を感じた。風属性は証拠が残りにくく、犯罪に用いられる傾向があるため、ギルドでも情報の秘匿や虚偽報告が問題視されていた。カークは三十人分の冒険者リストを提示し、ジグに調査を依頼した。報酬は最低五十万、犯人特定で最大百五十万とされ、依頼は護衛任務と両立可能であるとされた。ジグは正式にこの依頼を引き受けた。
事件の背後にある意図とカークの懸念
カークは、過去にも類似の事件があり、今回も単なる不注意ではなく意図的な行為の可能性を疑っていた。被害の規模が想定より小さかったため、次なる事件の可能性も示唆された。容疑者は確実にリスト内におり、犯人が生存していると見ているカークは、ジグにその捜索を任せた。ジグはこの依頼の背景にあるギルドの方針やリスクを踏まえ、慎重に動くことを決意した。
アオイとのやり取りと報酬の受け取り
ジグはアオイと会話し、報酬金を受け取った。ギルド職員の前でノートンがジグの金銭管理を案じた発言をしたが、すぐにアオイに窘められた。ジグはあくまでギルドには属さない立場を貫く意思を見せた。ノートンとの関係構築も順調であり、調査に有利な環境が整いつつあった。
森の牙への接触と食事の誘い
ジグは容疑者リストの末尾に記された評価の高い亜人パーティー「森の牙」に接触するため、彼らの食事先を探し当てた。食堂の二階にいた彼らは当初警戒を示したが、ジグの態度と名声により対話に応じた。長であるバルトの判断により、事件当時の状況や違和感などの情報が提供された。
シアーシャの行動と場の和らぎ
対話中、シアーシャが若い亜人の尻尾を掴んでしまい騒動になるが、両者の謝罪により場は収まった。ジグは詫びとして食事を共にすることを提案し、バルトも了承した。人間と亜人が同席する形となり、亜人側にも一定の信頼感が芽生えた。
事件調査の本格始動と穏やかなひととき
ジグはシアーシャと共に店で食事を取りながら、今後の調査の方向性を思案した。日々の生活の安定と次なる仕事の確保ができたことで、不安要素は大きく減少した。シアーシャとの軽妙なやり取りの中にも、今の任務と彼女との関係に対する静かな充足が滲んでいた。事件の核心に迫るため、ジグは新たな一歩を踏み出した。
二章 忍び寄る気配
少年時代の鍛錬とヴィクトールとの出会い
夕刻の空き地で、少年ジグは副団長ヴィクトールとの鍛錬に挑んでいた。圧倒的な実力差がある中でも、何度倒されようと剣を構え続ける姿勢がヴィクトールの関心を引いた。剣の才そのものは平凡であったが、努力と根性は人並み以上であり、将来性を感じさせた。最終的に七つの痣を負い鍛錬は終わり、ライエルとともに三人で夕食を取りながら、炊事班から叱責を受けつつ感謝の気持ちで食事を味わった。
過去の回想と早朝の鍛錬再開
ジグは宿で目を覚まし、かつて傭兵団に拾われた当時の夢を見たことを振り返った。自ら選んだ道に後悔はなかったが、過去を思い出すことで少し気が重くなった。その思いを振り払うように、彼は早朝の街を走り鍛錬を再開した。走りながら、装備の重量や負荷について思案しつつ、己の成長を感じ取っていた。
教会での情報収集依頼と裏社会の接触
ジグはかつて戦った澄人教の教会を訪れ、現在そこを取り仕切るマフィアの構成員に接触した。表向きは神父役を演じるその男に、風の魔術を使い森に出入りできる等級の冒険者についての情報提供を依頼した。依頼に応じた男は、裏社会と関係のある冒険者を洗い出すことを了承し、ジグは金を置いて立ち去った。
娼婦とのやり取りと街中での根回し
続いてジグは娼婦のもとを訪れ、情報収集の協力を依頼した。彼女は文句を言いつつも依頼を受け入れた。ジグの平等な接し方や力仕事の手伝いによる信頼は、情報収集における土台として十分であった。こうした地道な根回しは、かつての傭兵団での教育の成果であった。
薄刃首狩蟲の可能性と亜人の証言の信頼性
ジグは亜人バルトからの証言を思い出し、刃蜂事件が意図的なものであった可能性を改めて意識した。音もなく魔術が放たれた方向に戦闘音がなかったことは、偶発的事故とは思えぬ点であった。聴覚に優れる亜人の観察が信頼に値するものであると判断し、ジグは慎重に調査を進める決意を固めた。
偃刃豹との戦闘と素材の剥ぎ取り
ジグとシアーシャは偃刃豹との戦闘に勝利し、素材の剥ぎ取りを行った。この魔獣は隠密性に優れ、刃のような前肢を持つ狩猟型であった。シアーシャの手際よい作業とジグの迅速な対応により、皮や腕刃を得た。偃刃豹の素材は高価だが、森の環境が厳しいため狩る者は少ないとされていた。
魔獣の奇襲と薄刃首狩蟲との激戦
剥ぎ取り作業の最中、ジグは背後からの奇襲に遭い、咄嗟に偃刃豹の腕刃で攻撃を防いだ。現れたのは、薄刃首狩蟲と呼ばれる鎌を武器に持つ高い隠密性を誇る魔獣であった。シアーシャの魔術と連携し、ジグは間一髪で攻撃を凌ぎながらも魔獣と対峙した。鎌の速度とリーチに苦戦を強いられたが、最終的には双刃剣と岩槍の連携により、魔獣の鎌を砕き、頭部を破壊して勝利を収めた。
薄刃首狩蟲の能力と危険性の認識
戦闘の中で、ジグは薄刃首狩蟲の恐るべき身体能力と武器の危険性を把握した。魔術を一切用いずに隠密行動を取り、静かに木を登る様子から、この魔獣の戦術的な厄介さが浮き彫りとなった。ジグとシアーシャは今後の戦いに備え、このような未知の敵に対する警戒をより一層高めることとなった。
薄刃首狩蟲との戦闘後とジグの不用意な一言
シアーシャは不意打ちを受けかけた戦闘を振り返り、魔術を使わない魔獣の隠密性に危機感を覚えた。ジグは彼女を常に警戒して見守っていると口にし、それに驚いたシアーシャとの間に微妙な空気が生じた。ジグはその発言に照れを見せて話を切り上げ、シアーシャの反応から逃げるように先へ歩き出した。
シアーシャの心の変化と感情の芽生え
ジグの背中を見つめながら、シアーシャは自分への気遣いの言葉が心に沁みたことを実感した。感情の名は分からずとも、その心地よさに突き動かされてジグへ駆け寄り、無言でその腕に飛びついた。彼女にとって、それは初めて感じる喜びと安心だった。
ギルドでの素材査定と価値の喪失
ギルドに持ち帰った薄刃首狩蟲の素材は、鎌が砕けていたため価値が著しく低下していた。受付嬢のシアンからも評価は芳しくなく、ナイフ程度としてならば引き取り可能とされた。結局シアーシャが記念として保存することに決め、実質的な収入には繋がらなかったが、二人にとってはそれほど悪い結果でもなかった。
アランたちとの再会と掛け合い
ギルドでの手続きを終えたジグとシアーシャは、冒険者のアランとその妹ミリーナ、仲間のリスティと出会った。仲の良い三人組との会話の中で、シアーシャはジグに自分を指して何かを期待したが、ジグは護衛対象として無視した。シアーシャは拗ねた様子を見せるが、ジグの屈強な体にはその反応も通じなかった。
無茶への指摘と周囲からの評価
森での無茶な行動についてアランたちから窘められたジグは、自らの行為を成り行きとしつつ、今後は控える旨を語った。しかし仲間たちはそれを信用せず、彼が結局無茶をすることを見越していた。最終的には「無茶をしても生きて帰る」と妥協的な発言により一応の納得を得た。別れ際には、拗ねたシアーシャを宥めながらギルドを後にした。
三章 釣りと暗躍〜友情を添えて〜
情報収集と鍛冶屋での聞き込み
ジグは夕暮れの繁華街で聞き込みを開始し、串焼きを食べながら人々の様子を観察していた。情報収集のため、武器の流通に詳しいエルネスタ工房を訪れた彼は、鍛冶師シェスカに出迎えられた。シェスカはジグの訪問を快く受け入れ、店の奥へ案内した。冒険者が見に来るだけで武器を買わない状況を説明しつつも、ジグの高い購買率を評価し、彼を上客として扱った。
ジグの情報開示とシェスカの協力
ジグは市場での不自然な金の動きを探っていたが、個人情報の提供を求めるものではなかったため、シェスカも応じる意志を見せた。ジグがギルドの任務であることをほのめかすと、シェスカはその忠実さを認めて協力を申し出た。ジグがなぜ彼女を情報源として信頼したのかを問われた際、自身でもその無意識を省みることになり、彼の調査姿勢の甘さを自覚するに至った。
市場の異常の有無と不発の推理
得られた情報によると、市場に大きな動きはなく、ジグが期待したような大量購入の兆候は見られなかった。ギルドによる医薬品の大量購入や、診療所に向けた女性の大規模な食料調達といった例外は存在したが、いずれも事件との関連性は薄いと判断された。ジグは自らの推測が素人考えに過ぎなかったことを痛感しつつ、捜査の難しさを改めて認識した。
森の牙への疑念と動機の考察
調査の過程で、ジグは「森の牙」の冒険者たちに対する疑念を抱いた。ギルドの評価では素行が良好とされていたが、内面の不満や私怨による暴走の可能性を否定できず、人間への復讐としての動機を考慮した。証拠のない現時点では妄想にすぎないが、彼はあくまで情報屋ではなく、行動によって突破口を切り開く傭兵であるという自己認識を強めていった。
闇夜の襲撃と第一の敵との交戦
夜道でジグは奇襲を受けた。二人組の襲撃者は連携のとれた挟撃を仕掛けてきたが、ジグは投擲されたナイフを掴んで投げ返し、敵の虚を突いた。至近距離での戦闘で小男の一人を双刃剣で圧倒し、風刃をも弾く剣の威力で敵の頭部を粉砕した。続く長身の男との攻防では、蹴り技を活かした連撃で相手の足を砕き、戦闘不能に追い込んだ。
戦闘の余波と生存者からの情報収集の可能性
長身の男は魔具による防御で命をつないだが、顎を砕かれ重傷を負っていた。ジグは彼の脈を確認し、情報源としての価値を見出した。彼の持ち物を調べたが身元を特定できる物は見つからず、憲兵に引き渡すために縛り上げて連行した。尋問による情報開示は期待できないが、カークに調査の継続を依頼することを決意した。
襲撃者の力量と情報元の特定方針
襲撃者の技能から彼らが一流の暗殺者であることは明白であり、これほどの人材を動員するには資金と人脈が必要であるとジグは推察した。そのため、今後の調査は襲撃者を雇える立場にある者に絞られると考え、カークにその筋の捜査を任せる意向を固めた。
事件の意味と傭兵としての結論
ジグは今回の襲撃が、自身の調査によって危険な事実に迫りつつあることを裏付けるものと解釈した。証拠は乏しいものの、自らの動きに対して組織的な対応がなされたことは、事件に関わる黒幕の存在を示している。彼は過程よりも結果を重視し、強引な手法で真相を暴く傭兵としての役割を果たす覚悟を新たにし、調査の次なる段階へ進むべく闇に消えていった。
ギルドの問題と副頭取の回想
ハリアンの副頭取カークは早朝から業務に取り組み、冒険者不足に起因する依頼の停滞に頭を悩ませていた。中・低級冒険者の死傷により魔獣討伐が滞り、資源供給の問題が発生していたため、彼は消耗品の割引、危険区域の再設定、冒険者募集の制度改革などを検討した。また、有力クランであるワダツミへの根回しも視野に入れていた。カークは十五年前、ベイツとグロウとともに旧ギルドの不正を告発し、街の改革を成し遂げた過去を振り返った。その経験から、彼は現在の秩序を守る責任を自覚していた。
ジグの訪問と調査報告
突如として仕事部屋に現れたジグは、掃除用具室の開いた窓から侵入していた。カークは警備の不備を認識しつつも、ジグの訪問が何らかの進展を意味することを悟る。ジグは昨晩の戦闘の経緯と、暗殺者との遭遇について報告した。
シアーシャの察知と決意
朝、ジグの様子から戦闘を察したシアーシャは、自らも事件に関わることを決意した。彼女はジグの依頼内容を知るため、直接ギルドへと向かい、依頼主と見込んだカークと接触する方針を固めた。
ギルドへの訪問と職員の警戒
シアーシャの来訪はギルド内に緊張をもたらした。新人職員の報告を受けたカークは彼女の名前を聞いた途端、全力で応対を回避しようとしたが既に遅く、扉は破壊され、彼女が現れた。
シアーシャとの応酬と圧力
シアーシャは丁寧かつ礼儀正しく振る舞いながらも、ジグの仕事内容を尋ねてきた。カークはギルド内部情報であるとして回答を拒否したが、彼女はそれがジグの仕事である限り無関係ではないと主張し、友情を盾に圧力をかけた。言葉に笑顔を乗せながらも、魔力を伴う威圧でカークを追い詰めていった。
情報開示の圧迫と屈服
カークはシアーシャの巧妙な心理操作と威圧に対して抵抗を試みたが、机に腰掛けながら迫る彼女の圧に屈し、ついに彼女の要求を受け入れる決意を示した。彼女の「友情パワー」という冗談交じりの言葉すら拒めぬほど、状況は一方的に支配されていた。
壊れた魔具の調査依頼とジグの不向きな拷問技術
ジグはエルネスタ工房を再訪し、先日捕縛した暗殺者の尋問はカークの手配した者に任せた。ジグ自身は拷問の適性に乏しく、細かい加減や話術に向かず、粗雑な手法しか使えなかったため、傭兵時代にも匙を投げられた過去がある。一方、興味本位で魔術による拷問に思いを巡らせていた際、シェスカに声を掛けられ、店頭での発言をたしなめられた。彼は彼女に破損した魔具を見せ、ガントに調査を依頼した。
工房でのやり取りと魔具製作事情の解説
ガントは精密作業中で不機嫌だったが、シェスカに諭されて態度を改めた。ジグの使い込んだ武器を見た彼は満足げにその性能を確認し、軽量化処理なしでの製作がコスト削減に寄与していたと語った。魔術刻印による軽量化の重要性や加工費用について、シェスカが補足し、武器が如何に異例の存在であったかが明かされた。
武器の使用歴とジグの戦闘経歴の振り返り
ジグはこの武器で主に人間を斬ってきたと回顧し、ガントはその用途に落胆した。ジグは武器を道具と割り切っており、その使用結果に製作者が責任を感じるべきではないと述べたが、ガントは功罪含めて受け止めるのが作り手の覚悟だと反論した。二人の価値観の違いは平行線に終わった。
魔具の素材と作り手への怒り
調査対象の魔具は黄銀という高価な金属で作られており、刻まれた術式は二流の出来であった。ジグが破壊した際には障壁を蹴っており、その威力にガントは呆れた表情を見せた。さらに分解した結果、内部から白い粉末状の異物が発見され、それが薬物の一種であると判明した。製作中に摂取していたと思しき作り手の杜撰さに、ガントは怒りを露わにした。
薬物による製作とその是非
ジグは薬物の用途を即座に見抜き、興奮作用によって精密作業をこなしたのだと説明した。シェスカはそれに理解を示しつつも、努力による成長を良しとした。一方、ジグは道具の使い方次第であるという考えを秘めていた。最終的に、出所調査の必要性からマフィア関係者のカティアへ接触を依頼することとなった。
ギルドでの会話と尋問対象の死
場面はカークとシアーシャのもとへ移り、捕らえた暗殺者の一人は既に死亡しており、もう一人を尋問しているとの報告が語られた。ジグに対する依頼が正式なものではなかったことを踏まえ、カークはシアーシャを協力者として誘った。彼女も義憤から協力を申し出るが、対価には抜け目がなかった。
暗殺者殺害の真相と逆手に取った策略
直後に報告が入り、残された暗殺者が殺されたとの知らせが届く。憤慨するシアーシャに対し、カークはこれはジグと仕掛けた罠であったと明かした。尋問の正規手続きによる時間的猶予を設けたことで、敵側に口封じを促し、その追跡によって更なる情報を得ようとしていたのである。シアーシャは怒りを収め、彼の策略を理解した。
今後の追跡と協力の示唆
手がかりを失ったように見えて、実際にはその行動すら利用しようとするカークとジグの戦略的な判断が示された。シアーシャもそれに感嘆し、協力の姿勢を改めて強めることで物語は次の展開へと繋がった。
四章 退路断ち、窮鼠に噛まれる
歓楽街での接触とカティアとの再会
ジグは北部の歓楽街にあるマフィア管理区域に入り、情報提供者を探していた。彼は目当ての人物がいる酒場を訪れたが、そこではマフィアの男たちが一団で居座っていた。ジグは周囲の緊張感に動じず、冷静に目的を告げて封書を手渡すことで対話に成功した。封書の差出人により正体が判明したジグは、以前の抗争でカティアを護衛していた傭兵として認識され、奥の部屋へと通された。
カティアの素顔と情報の交換条件
部屋の主であるカティアは私室でだらしない格好のまま登場したが、ジグの無遠慮な視線にも動じず対応した。ジグは殺し屋の持っていた魔具から発見された薬物の出所を調査するよう依頼し、カティアは見返りとして「貸し一つ」という条件を提示した。ジグはマフィアに借りを作る不利益を嫌い、交渉を即座に打ち切る構えを見せたが、それがギルドの依頼による行動であると示唆すると、カティアは態度を一変させて協力を表明した。
薬物鑑定とスキラッチの分析
カティアの部下であるスキラッチが薬物を鑑定した結果、それは「魔黄麻」を原料とする感覚鋭敏系の高品質ドラッグであることが判明した。この薬物は精密作業に適しているが、使い方を誤れば廃人になる危険も高い。街の協定により、ハリアンでは流通が禁じられていたことから、供給源が外部にあると判明した。
供給元の判明とストリゴの実態
スキラッチの証言により、薬物の出所が「ストリゴ」という西方の街であることが突き止められた。カークとシアーシャはその情報を受け取り、ストリゴの実情について確認した。ストリゴは統治者を持たない無法地帯であり、複数のマフィアが抗争を繰り広げる混沌の街であった。麻薬が蔓延し、弱肉強食が支配するその地では、市民すら支配者に殺される日常が存在していた。
ギルドの迅速な情報収集とジグの評価
ジグの迅速な行動により、ギルドは早期にストリゴとの関連を把握するに至った。カークはジグの人脈と行動力を高く評価し、情報屋顔負けの仕事ぶりに驚愕していた。ジグは依頼の本質を自ら見極め、足で情報を稼ぐ有能な傭兵としての力を発揮していた。
暗殺者の潜伏先と次なる行動
ギルドにより、暗殺者を始末した人物が北区の小商店に潜伏していることが判明し、シアーシャも現地に向かう決意を固めた。カークは彼女の身を案じたが、シアーシャは自らの戦闘経験を踏まえ、敵地への突入に自信を見せた。彼女はただの魔術師ではなく、人間相手の戦闘経験を積んだ“人狩り”としての過去を持っていた。
敵の所在と突入準備
ジグは迅速に敵の居場所を突き止め、カティアと共に風俗街端の空き家を急襲する決断を下した。元は単独で向かう予定であったが、敵地を聞いたカティアが同行を強く望み、彼女が手配した部下たちにより建物周囲は包囲された。敵の戦力が未知であることを警戒しつつ、ジグは自ら突入を開始した。
初撃と突入後の混乱
ジグは扉を開けた瞬間の奇襲を躱し、敵の一人を無力化した。その男は外に放り出され、カティアたちによって袋叩きにされた。続いてジグは壁を破って中の敵を引きずり出し、内部の敵陣を混乱させた。次々に敵を外へ放り出すと、マフィアたちは数の力で敵を制圧していった。
魔術による奇襲とジグの反撃
敵は火と風の魔術を駆使してジグを攻撃したが、ジグはそれを察知し、建物の外壁を利用して爆炎を回避した。そして敵の一人を真上から奇襲し、両断した。残る敵は四名であり、そのうち二人は長剣を持つ雑兵、一人は魔術師、もう一人は刺突剣と短剣を持つ男であった。
暗殺者との交戦開始
刺突剣を持つ男は明確な殺意と練度を備えており、ジグと互角の戦闘を展開した。男の独特な歩法と鋭い刺突は、ジグにとっても脅威であったが、双刃剣のリーチと防御力を活かしてこれに対応した。二人は技巧と力の拮抗した戦いを繰り広げた。
魔術援護によるかく乱とジグの突破
魔術師が放った高出力の炎によって視界が遮られた中、刺突剣の男はその中を突き破って奇襲を仕掛けた。ジグは瞬時の判断でナイフを用いて軌道を逸らし、辛くも攻撃を防いだ。その後も男は風刃や魔力を帯びた短剣を駆使して攻勢を強めたが、ジグは双刃剣の頑強さと反射神経でそれらを防いだ。
ジグの反撃と優位の確保
ジグは援護を頼りにする相手の隙を突き、魔術師の無力さを見抜いて主戦力である刺突剣の男へと攻勢を集中した。突進による斬撃と体当たりを繰り出し、男の防御術を破ってあばらを砕く重傷を与えた。追撃によってとどめを刺そうとしたところ、男は突如として刺突剣を捨ててジグへ突撃してきた。
死兵の執念と魔術の発動
ジグは反応して双刃剣を突き刺したが、男は致命傷を負いながらも魔術の発動準備を終えていた。血を捧げるという言葉と共に、男は命と引き換えに術式を完成させた。ジグの身体が男の血により魔術対象となっていたことに気づいたときには既に遅く、光に包まれて姿を消失した。
ジグの消失と謎の術式
ジグは街の中心で突如として姿を消した。男が死の間際に放った魔術の詳細は不明だが、ジグの衣服に付着した血が発動の鍵となったことから、極めて特殊な術式であったと推察される。ハリアンの街から、傭兵ジグの姿は完全に消え去った。
転移後の初動と状況の確認
ジグは光に包まれて姿を消された直後、自らの敗着と敵の狙いに思い至った。刺突剣使いスティルツの行動は、魔術師を守るための捨て駒の演技であり、彼の死によって魔術師はジグを転移させるという目的を完遂したと考えられた。転移先は見知らぬ荒れた小屋であり、周囲にいた三人の男たちは暴力の気配を漂わせ、ジグを警戒していた。
戦闘開始と敵の制圧
ジグは男たちが敵であると判断すると、詠唱を妨害しつつ肉弾戦により各個撃破していった。壊れた手甲や失った武器に不安を覚えつつも、格闘術と指弾で対処した。最終的に魔術を使用した敵も岩槍を放つ魔具で抵抗したが、ジグは突進によってこれを制圧し、壁ごと吹き飛ばした末に即死させた。
スラム街の惨状と浮浪者たちの襲撃
ジグは外へ出て、自身が到達した場所がハリアンではなく極めて治安の悪いスラム街であることを確信した。生き残りの男は逃走を図ったが、途中で浮浪者たちに追われ、転倒した末に集団によって嬲り殺された。ジグはその惨状を目の当たりにし、情報を得る手段を失ったと判断して干渉を避けた。
無秩序な支配とスラムの掟
ジグは死者を回収しようとする浮浪者に遭遇し、魔具の腕輪だけを要求して立ち去らせた。周囲からの警戒の視線を感じながらも、襲撃されないのは彼が圧倒的に強者であるためであった。応急手当てを済ませたジグは、転移された場所がストリゴであると推察し、今後の行動を模索し始めた。
教会跡の調査と異様な静寂
ジグはスラムの中で場違いな教会跡に興味を抱き、調査を開始した。周囲に浮浪者の気配が消えたことに不自然さを覚えつつ、朽ちた教会の内部へと足を踏み入れた。像は破壊されていたが、特に人が潜んでいる様子はなく、不気味な静けさに警戒心を高めていた。
謎の少女との遭遇と対話
像の上に座っていた少女シャナイアがジグに声をかけた。彼女は異様な雰囲気と美貌を併せ持ち、ジグに敵意を示しつつも観察を始めた。ジグが自らを傭兵と名乗ると、シャナイアは笑いながらも警戒を緩めなかったが、ジグが隠れ家の敵を全員殺したと明かすと状況が一変した。
誤解の解消と関係の構築
シャナイアは自らの誤解を認めて魔力の行使を中断し、ジグに謝罪の意を示した。ジグは警戒を続けながらも彼女の申し出を受け入れ、指弾の硬貨を渡して対話の態勢を整えた。シャナイアはジグを観察した末に信用に値すると判断し、互いに名乗り合った。シャナイアはただのシャナイアと名乗り、握手を交わしてその場に小さな信頼関係が生まれた。
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