物語の概要
本作は、ブラック企業を勢いで辞めた24歳の無職・田中ハルトが、生活費を稼ぐためにダンジョン探索者となり、ソロで迷宮に挑む異世界ファンタジーである。ギルドにも所属せず、パーティも組まない「野良探索者」として活動するハルトは、次第にその実力を周囲に知られるようになり、本人の自覚とは裏腹に伝説的な存在となっていく。物語の舞台は、第二次世界大戦後に日本各地に出現したダンジョンであり、ハルトは中部地区の迷宮を主な活動拠点としている。
主要キャラクター
• 田中ハルト:本作の主人公。元ブラック企業の社員で、現在は無職の24歳。生活費を稼ぐために探索者となり、ソロでダンジョンに挑む。ギルドやパーティに属さない「野良探索者」として活動し、次第にその実力が周囲に知られるようになる。
• 日野トウヤ:高校生の探索者。ハルトからは「ハーレムパーティの主」と認識されている。ハルトの強さに憧れる主人公気質の少年である。
物語の特徴
本作の魅力は、主人公ハルトの「無自覚無双」にある。彼は自身の強さを自覚せず、あくまで生活のためにダンジョンに潜るが、その実力はパーティで挑んでも半数が命を落とすとされる19階層をソロで攻略するほどである。また、ギルドやパーティに属さない「野良探索者」として活動する点も特徴的であり、従来の冒険者像とは一線を画している。さらに、ダンジョンでの戦闘やスキル獲得の描写がリアルであり、読者に臨場感を与える。物語は、ハルトが自覚のないまま伝説的な存在となっていく過程を描いており、ユーモアとシリアスが絶妙に融合した作品である。
書籍情報
無職は今日も今日とて迷宮に潜る 1 ~LV.チートな最強野良探索者の攻略記~
著者:ハマ 氏
イラスト:fixro2n 氏
出版社:オーバーラップ
レーベル:オーバーラップノベルス
発売日:2024年11月25日
ISBN:978-4-8240-0995-1
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あらすじ・内容
ノリで辞表を叩きつけてブラック企業を退職した「新米無職(24歳)」のハルト。
彼は、日銭を稼ぐため最近人気の職業【探索者】となりダンジョンに挑戦する——
パーティを組まず、ギルドに登録もしない、謎の野良探索者として!
「あの人、ソロで19階まで攻略しているって言ってたけど、さすがに嘘だよね……?」
「19階って、パーティで挑んでも半分が死ぬ魔境だぞ?そんなバカな……」
結果、モンスターと泥臭い戦闘を繰り広げ満身創痍な日々を送ることになったハルトは界隈で密かな話題に!
しかし周囲の視線もなんのその、彼の目的はホワイト企業に再就職すること!
だが、転職活動はまるで進まず。
それとは裏腹に驚異的速度で力をつけたハルトはボスゴブリン制圧、幻の素材獲得に人助け……本人は自覚のないまま伝説の存在に——!?
無自覚無双の野良探索者が人知れず陰謀に巻き込まれ偉業を達成したりしなかったり(!?)する異色の冒険譚、開幕!
感想
本作の田中ハルトという主人公は、ブラック企業の社長に辞表を叩き付けて退職した瞬間から、既に只者ではなかった。
その行動力のままに探索者としての道を選び、登録料の高さに反発して野良で活動する姿勢は、ルールを嫌う者というより、無謀なアホに映った。
彼がダンジョンで体験する戦闘は、緻密な戦術や戦力差を計算したものではなく。
毎階層で待ち構える圧倒的な数のモンスターに対し、ハルトはただ無骨に、時には滑稽なほど泥臭く対応していく。
ゴブリンの死体に転び、スライムの酸で装備が溶け、女王アリの蜜を食べすぎて太る――普通の冒険譚ではカットされるような情けなさこそが、彼の戦いのリアルでありコミカルであった。
それでいて、彼の行動は他者の目から見るとハードボイルドであり、何気ない選択や態度に説得力を持たせていたのが笑えた。
助けたつもりがない人命救助や、偶然の出会いからの縁と騒動。
そのすべてがコメディでありながら、根底にはどこか乾いた孤独を孕んでいた。
本作の魅力は、そのバランス感覚にある。
戦闘シーンの迫力と、日常パートのコミカルさが矛盾なく共存し、緊張と緩和を与えてくれた。
例えば、ボスゴブリンとの死闘に見せる冷静さと覚悟。
その後に描かれる、女王アリの蜜を食べて太ってしまうというユーモアのセンスには脱帽であった。
探索者協会への未登録という設定もまた、自由と孤立の象徴であった。
彼は誰かに認められることを望んではいないが、気づけば周囲が彼を話題にしている。
本人の自覚なきままに「伝説」の輪郭を帯びていくさまは、英雄譚にありがちな自己顕示欲と対照的であった。
本作を読み終えたあと、笑えるシーンの数々が記憶に残る一方で、ハルトという人物が選んできた不器用な道筋にも静かな敬意を抱かされた。
自分の信じた道を、太ろうが警察に捕まろうが、黙々と突き進んでいくその姿勢こそが、現代の「戦う者」の一つの形であると感じさせられた。
真似は絶対にしたくないがw
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
田中ハルト
本作の主人公であり、かつてブラック企業に勤めていた元会社員である。会社を辞めた後、生活のために無登録のままダンジョン探索者となり、幾多の戦闘を通じて力をつけていった。
・所属組織:無所属探索者(登録拒否)
・物語内での行動:地下十階までを単独で踏破し、ユニークモンスターを含む多数の敵を撃破した
・特筆事項:レベル14に到達し、多数のスキルを取得。戦闘時の判断力と継戦能力に優れる
本田愛
ホント株式会社の副社長であり、本田実の従姉妹でもある。田中ハルトの力を信頼し、会社再建と社長の治療を依頼した。
・所属組織:ホント株式会社(社長)
・物語内での行動:父の治癒と企業改革を主導した
・特筆事項:後に社長に就任し、企業の未来を託された
日野トウヤ
ハーレムパーティの前衛担当であり、戦闘では勇敢な行動を見せた少年である。仲間思いであり、命を賭して囮役を務めた。
・所属組織:トウヤのハーレムパーティ
・物語内での行動:ロックワームとの戦闘で致命傷を負うが、決定打を放つ役割を担った
・特筆事項:新たに「空間魔法」を獲得し、今後の成長が期待される
桃山悠美
トウヤのハーレムパーティの一員であり、田中ハルトに保護された少女である。ダンジョンでの行動力と社交性を持ち合わせていた。
・所属組織:トウヤのハーレムパーティ
・物語内での行動:探索中に負傷し、ハルトに救助された
・特筆事項:仲間への思いやりが強く、謝礼などにも積極的であった
九重加奈子
トウヤのハーレムパーティの一員であり、氷属性魔法を扱う前衛担当である。冷静かつ判断力に優れていた。
・所属組織:トウヤのハーレムパーティ
・物語内での行動:ダンジョンでの戦闘において要所を担った
・特筆事項:報酬分配などの交渉も担当し、常識的な思考を持つ
三森巫世
トウヤのハーレムパーティの中核的存在であり、バフによる付与魔法を得意とする支援担当である。装備の購入にも自己投資を惜しまない性格であった。
・所属組織:トウヤのハーレムパーティ
・物語内での行動:バフで仲間を強化し、戦況の安定化に貢献した
・特筆事項:戦術的中核として機能しており、仲間からの信頼も厚い
神庭由香
トウヤのハーレムパーティの前衛であり、盾役として仲間を守る役割を担っていた。冷静かつ的確な判断力を持つ。
・所属組織:トウヤのハーレムパーティ
・物語内での行動:戦闘中に最前線で敵を引きつけた
・特筆事項:交渉や提案などでも理性的に対応していた
黒一福路
探索者監督署に所属する監査官であり、表と裏の両世界に精通する監視者である。表向きには秩序を守る立場にあるが、個人的な快楽や関心を重視する一面を持つ。探索者・本田実を長期にわたって観察し続け、精神的な破綻と絶望を「興味深い対象」として追い詰めた。善悪の観念には関心がなく、自らの信条に従い行動する冷静かつ非情な存在である。
・所属組織:探索者監督署(監察担当)
・物語内での行動:本田実を違法行為の末に破滅へ追い込み、間接的にモンスターを使役して処分した
・特筆事項:高い戦闘能力と情報掌握力を持つ。次なる監視対象として、協会未登録の野良探索者・田中ハルトに注目し始めた
本田源一郎
ホント株式会社の会長であり、元探索者でもある。長らく病床にあったが、田中ハルトの治癒魔法によって回復した。
・所属組織:ホント株式会社(会長)
・物語内での行動:会社の実権を娘の愛に託すことを決意した
・特筆事項:探索者時代に深層の経験を持つ人物であり、判断力と影響力に優れる
本田実
ホント株式会社の社長の息子であり、呪詛スキルを用いる探索者であった。過去の犯罪歴と精神的な脆さにより破滅の道を歩んだ。
・所属組織:無所属探索者(元企業関係者)
・物語内での行動:呪詛を用いて企業乗っ取りを試みるも、ハルトに敗北
・特筆事項:カルマ値を感知する能力を持つが、最終的に自滅した
古森蓮
大学の探索者サークルに所属する若手探索者であり、火属性魔法を扱う実力者である。仲間を守るため奮戦し、精神的にも成長を遂げていた。
・所属組織:大学探索者サークル
・物語内での行動:地下十一階での危機において仲間を守るために戦った
・特筆事項:レベル14、スキル拡散と火属性魔法を駆使し、攻撃力に優れる
速水
古森蓮の後輩であり、仲間を守るため無謀な行動に出た探索者である。精神的には未熟な部分も見せたが、協力姿勢は示していた。
・所属組織:大学探索者サークル
・物語内での行動:仲間のためにビックアントに立ち向かうも、劣勢となった
・特筆事項:戦闘よりは支援的な立場であったと推察される
彦坂新吉
探索者協会の副会長であり、探索者界でも名の知れた元実力者である。若手育成とダンジョン管理に尽力していた。
・所属組織:探索者協会(副会長)
・物語内での行動:クイーンビックアント討伐会議を主導し、生命蜜の分配を約束した
・特筆事項:かつて地下五十階到達の経験を持つが、自身の限界を悟り後進に道を譲った
千里
探索者協会の登録済み探索者であり、ギルドの売店で田中ハルトに情報を与えた女性である。彼にツノ兎対策の網を教えるなど、間接的に彼の成長を助けた。
・所属組織:探索者協会
・物語内での行動:売店にて装備選定の助言を行った
・特筆事項:具体的な実力は描写されていないが、経験豊富な様子がうかがえる
探索者協会の受付嬢
探索者協会に勤務する女性職員であり、田中ハルトの無登録行動に対して複雑な感情を抱いていた。彼を密かに応援していた描写がある。
・所属組織:探索者協会
・物語内での行動:ハルトの買い取り評価に便宜を図った
・特筆事項:公私混同を自戒しつつも、彼を特別視していた節がある
展開まとめ
プロローグ
黒き大剣と探索者の戦闘
田中ハルトは、薄暗い洞窟内で黒い片刃の大剣を振るい、次々とゴブリンを両断していった。彼の鍛え上げられた膂力と俊敏な動きは、熟練の戦士を思わせた。やがて現れた酸を吐くビックアントにも動じず、魔法【クレイニードル】で敵を串刺しにし、戦闘を制した。
モンスター素材の回収と生活苦
モンスターの掃討後、ハルトはゴブリンの武器とビックアントの外皮を回収し始めた。素材の売却がダンジョン探索者の主な収入源であり、他に販路のない新人であるハルトにとっては重要な作業であった。酸の噴出で装備を失いかけた彼は、金欠を嘆きつつ作業を終えた。
転倒と孤独な内省
素材を【収納空間】に収め、探索を再開しようとしたところで足を滑らせ、ゴブリンの死体に躓き転びかけた。天井を見上げたハルトは、自嘲気味に溜息をつき、自身の境遇に思いを馳せた。
ダンジョンの出現と探索者の歴史
ダンジョンは八十年前、戦後の混乱期に突如として現れた。初期の探索者は命を落としたが、無限に採れる資源の発見により、人々はこぞって探索者となった。やがて「ダンジョン」の名が定着し、それに挑む者を「探索者」と呼ぶようになった。
探索者の衰退と現状
経済成長と共に安定した職業が増え、汚く危険な探索者という職業は敬遠されるようになった。多くの者が引退し、新規参入者は減少、命を落とす者だけが増えていった。そうした中で、田中ハルトは現在も探索者として活動していた。
過去の生活と現実の落差
かつてのハルトはブラック企業で働く普通の会社員であった。過酷ではあったが収入は安定しており、危険な迷宮探索とは無縁の生活を送っていた。現在はその安定を捨て、命懸けで大剣を振るう日々を過ごしていた。
戦いの継続と心の声
己の現状に疑問を抱きながらも、ハルトは現れた新たなモンスターに向かって剣を構えた。探索者としての現実を受け入れながら、彼は黙々と戦いを続けていった。
第一章 ダンジョンデビュー
衝動的な退職と探索者への転身
主人公・田中ハルトは、社内恋愛の発覚と上司への怒りをきっかけに会社を辞職した。清々しさと不安を抱えたまま、生活費を稼ぐため探索者としての道を選んだ。彼は装備を整え、ダンジョン探索のために協会(ギルド)に向かうが、登録料の高さに断念し、無登録のまま挑戦することにした。
初めてのダンジョンと戦闘経験
ダンジョンの地下一階では、無害なダンゴムシを無視しながら進んだが、地下二階への階段前で大量のダンゴムシに阻まれ、戦闘を余儀なくされた。数の暴力に棍棒が折れ、疲労困憊となるも、辛うじて突破に成功した。初めての魔法も体力の限界をもたらしたが、地属性魔法スキルを習得していた。
ツノ兎との対峙と成長
翌日、再び挑んだ地下二階では、攻撃的なツノ兎と遭遇した。盾を貫かれつつも冷静に対処し、戦利品としてツノを回収したが、報酬の低さに落胆した。ツノ兎攻略には地属性魔法も使用し始めたが、魔力の少なさによりすぐ疲弊してしまった。
情報収集と大量討伐の準備
ツノ兎の群れを前に敗走したハルトは、ギルド売店で対策を探し、女性探索者・千里から糸製の網の存在を教わる。網の購入に踏み切った彼は、意を決して再挑戦し、網で多数のツノ兎を拘束したのち、少数の生き残りを地道に討伐していった。
苦戦とスキルの限界
魔法の連発により再び体力を消耗し、作業は苦行となった。魔力の成長は感じられたが、連続使用には未だ耐えられなかった。それでも網中のツノ兎を一羽ずつ倒し、回収作業を終えて帰路に就いた。夜にはビールと唐揚げで自らを慰めた。
地下三階と新たな出費の問題
三階ではツノ兎に加えてスライムが登場したが、酸性体質により装備が劣化。武器屋で酸対策のメッキ武器を探すが高額で断念した。代替策として中和剤を購入し、スライムを倒していったが、素材の売却価格が低く、収支は赤字であった。
剣への憧れと新スキルの獲得
武器屋で剣を見ていたハルトは、試しに触れたことで「トレース」スキルを獲得した。しかしこのスキルは戦闘向きではなく、魔法で模倣を試みても魔力が尽きてしまった。
地下四階のスライム掃討と苦闘
大量のスライムとの戦闘では、繰り返し転倒し服を汚しながらも、棍棒に中和剤を染み込ませて討伐を進めた。透明なガラス玉の幻覚を再び見たが、正体は不明であった。帰宅後、汚れた姿で電車に乗り、駅員に追われる騒動となった。
探索者生活の現実と新モンスター
探索者となって一週間が経過し、収入よりも支出が上回る事実に直面した。中和剤などの消耗品費が収益を圧迫していた。地下四階では新たにヘッドバットが出現し、物理的には弱かったが、特定の動きに対して弱点を見抜くことで効率よく討伐可能であった。
大群との遭遇と次なる挑戦
順調に階層を進む中、地下五階への階段前で再び百羽を超えるヘッドバットの群れと対峙した。絶望を前にしたハルトは、それでも棍棒と盾を構えて戦う覚悟を決めた。
ヘッドバットとの激戦と治癒魔法の覚醒
地下五階でヘッドバットの大群と交戦したハルトは、全身打撲に加え、装備の破損という甚大な被害を受けた。回復アイテムの購入を渋っていたことを悔やんでいたが、突如として身体が光に包まれ、自動的に傷が治癒された。ステータスを確認すると、新たに「治癒魔法」と「空間把握」のスキルを取得しており、レベルも6に上昇していた。
高額装備への投資と新たな戦術
装備が脆弱であることが出費を招いていたと気付いたハルトは、鉄製の棍棒・盾・胸当てを新たに購入した。これにより二十万円を費やし、即日稼がなければならない状況に追い込まれた。
カミツキガメとの持久戦と深刻な負傷
地下五階では新たに出現したカミツキガメと対峙し、首を狙って倒す戦術で時間を掛けて百体以上を討伐した。しかし、油断した隙に瀕死のカミツキガメに嚙まれ、ふくらはぎに深刻な損傷を負う。必死に治癒魔法を用いて応急処置を行い、意識を失いながらも一命を取り留めた。
モンスター増加階層での苦戦と宝箱の出現
翌日、地下六階では出現モンスターの種類と数が増え、空間把握スキルの助けを借りつつ、困難な戦闘を繰り返して階段を発見した。その際、初めて宝箱を発見し、中には「俊敏の腕輪」が収められていた。直後、罠が発動し、複数のモンスターとの強制戦闘が発生したが、俊敏性の向上に助けられ、何とか生還した。
俊敏の腕輪の高値査定と再評価
ギルドでの鑑定の結果、腕輪は「俊敏の腕輪」と判明し、二百万円での買い取り提示を受けた。だが戦闘での有用性を考慮し、当面のあいだ所持を続けることとした。
ジャンボフロッグとの連戦と過剰火力
地下七階では、舌による攻撃を仕掛けるジャンボフロッグが登場した。初戦では魔法で串刺しにした後、火炎による焼却戦術を採用し、多数を一網打尽にした。しかし、その炎の熱により天井から落下した幼生体と新たな戦闘が発生し、スライム状の粘膜に悩まされながらもなんとか撃退に成功した。
粘膜まみれによる不運と警察沙汰
幼生体の粘膜で全身を汚した状態で帰路に就いたハルトは、駅で不審者として通報され、警察署に連行された。留置所で一夜を明かし、翌朝には無事解放された。
痺れ蛾の登場とジャンボフロッグの習性
地下八階では、新モンスターの痺れ蛾が登場した。鱗粉による麻痺が厄介だったが、ジャンボフロッグが痺れ蛾を捕食して自滅する習性を発見し、これを利用して階層を突破した。
ゴブリンとの遭遇と鱗粉作戦の実行
地下九階では、ついに人型モンスターのゴブリンが登場した。痺れ蛾と併用されることで敵の麻痺が誘発され、戦闘難易度が大きく下がった。事前に痺れ蛾の鱗粉を袋詰めしておいたハルトは、それを使って大量のゴブリンを無力化し、一体一体止めを刺していった。
ゴブリン上位種との死闘と覚悟
麻痺が解ける直前に叫び声を上げたゴブリンが仲間を呼び、大型の上位ゴブリンが出現した。身長180cmの筋骨隆々の敵に対し、ハルトは全スキルを活用して死闘を繰り広げた。トレースと空間把握を併用しながら身体強化も駆使し、致命傷を避けつつ反撃を試みる。戦闘中、トレースにより敵の心臓が魔力の中心であると感知し、攻略の糸口を掴むに至った。
大人のゴブリンとの死闘と勝利の一撃
田中ハルトは、大人のゴブリンとの死闘において、空間把握とトレースを駆使して攻撃をかわし、反撃の機会を探っていた。剣技の観察と筋肉の動きの理解により、次第にゴブリンの動きに対応できるようになった。土の棘による攻撃で敵の動きを封じ、遺体を盾にしながら突撃、コンバットナイフで心臓を貫いて撃破した。
戦闘後の回復とトレースの意外な活用
ゴブリンは最後の力で拳を振るい、ハルトは視界が歪むほどの一撃を受けたが、ゴブリンはすでに致命傷を負っていた。ハルトは回復魔法で傷を癒し、彼の死を確認して敬意を示した。戦闘でトレーススキルが重要な役割を果たしたことを自覚し、これまでのスキルを総動員した戦いを振り返った。
武器回収と大剣の継承
武器の回収中、ハルトは大人のゴブリンの大剣を引き継いだような感覚を覚えた。さらに、ガラス玉を拾うと、二つが融合して黄色に変化し、掌で消失した。探索の成果として、魔力で切れ味が増すナイフを売却し六万円の収入を得た。また、新たに購入した防具と盾を装備した。
新スキル「収納空間」の獲得と実践
レベルが10に到達し、スキル「収納空間」が加わったことで、大量の素材や装備を持ち運ぶことが可能となった。これにより、これまで持ち帰れなかった素材の全回収が可能となり、収入の増加が見込まれるようになった。
地下十階での成長と魔法・剣技の融合
地下十階では新モンスターは登場しなかったが、敵の数が増加していた。ハルトは毒耐性スキルにより痺れ蛾の鱗粉にも動じず、大剣での薙ぎ払いと魔法を組み合わせた戦術を展開した。魔法の即時発動や新たな魔法「土の弾丸」の習得により、戦闘の効率と楽しさが増していた。
十階ボス戦と圧倒的な勝利
ダンジョン十階のボス部屋では、完全武装のゴブリン三体と魔法使いタイプの一体が出現した。ハルトは俊敏性と火力で相手を圧倒し、あっさりと全てを殲滅した。戦闘後、宝箱から木製の杖とガラス玉を入手したが、ボスの実力の低さに肩透かしを感じた。
ポータルの起動とステータスの更新
ボス部屋の先にはポータルが設置されており、魔力を流すことで一階への転移が可能となった。これにより、以降の探索では時短が可能となった。ステータス確認ではレベルが11に到達し、新たに「見切り」スキルが加わっていた。また、装備品として「不屈の大剣」「木の楯」「鉄の胸当て」「俊敏の腕輪」を所持していた。
閑話 どこかのギルドの受付嬢
探索者協会の受付嬢の戸惑い
探索者協会の受付嬢は、探索者たちの帰還を見守る中で、いつもなら戻ってくるはずの一人の無所属探索者――田中ハルトの姿を探していた。だが、姿は見えず、つい目元の力が抜けてしまった。同僚に指摘されてはぐらかすも、地雷男と揶揄されてムキになり、彼を否定し擁護する態度を見せてしまった。
登録を拒む男と受付嬢の複雑な想い
同僚からは「なぜ登録しないのか」との問いが投げかけられた。登録すれば、ベテラン探索者が地下十階まで引率してくれる制度があり、安全かつ効率的に報酬を得ることができるからである。彼の装備からは資金がないとは思えず、地下十一階での採掘に移れば早期に回収も可能であるにも関わらず、彼は話も聞かずに協会を去っていた。
特別視ではない支援と応援の気持ち
受付嬢は「応援しているだけ」と自分に言い聞かせ、買い取り額に若干の色を付けたことを規定内の処置だと納得していた。それは探索者協会でも認められた励ましの手段であり、特別扱いではないと自分に言い聞かせていた。同僚には「ダメンズ好き」と茶化されたが、彼の不器用ながら懸命に頑張る姿を否定できなかった。
高校生パーティとの対照と小さな願い
そこへ高校生のハーレムパーティが来訪し、彼らは礼儀正しく手続きにも応じた。受付嬢は、彼らと田中ハルトとのあまりの差に苦笑しつつも、彼にももう少しだけ話を聞いてほしいと思っていた。だが彼はその日、ついに協会には現れなかった。
不穏な知らせと一日の終わり
その代わりに、地下十一階に強力なモンスターが出現したとの報告が入り、協会内は騒然となった。田中ハルトの姿が見えぬまま、受付嬢の一日は混乱と不安の中で幕を閉じたのである。
第二章 生命蜜と呪いと(前編)
ボス撃破後の報酬と初心者ワンドの失望
田中ハルトは、地下十階のボスを倒して得た報酬がわずか二万円であったことに落胆した。そのうち一万円は魔法使い用の初心者ワンドによるものであったが、自身の魔力と相性が悪く実用性は低かった。結局、ワンドは最低価格で買取られ、宝箱の価値に見合わない報酬となった。
採掘装備の購入と地下十一階への突入
地下十一階では鉱石の採掘が可能であると知ったハルトは、ピッケルと予備のポーションを購入して準備を整えた。ポータルを使って現地に到着すると、初めて多数の探索者と遭遇し、彼らがチームを組んで採掘や護衛を行っている様子を目撃した。
護衛組の女性探索者との衝突
採掘者の観察をしていたハルトは、護衛役の女性探索者から「気味が悪い」として追い払われる結果となった。初の交流は失敗に終わり、彼は黙ってその場を去ることとなった。
地下十一階のモンスターと順調な進行
ビックアントとゴブリンを相手にしたハルトは、これまでの経験を活かして難なく撃破していった。特にビックアントは動きが直線的で攻撃の見切りが容易であり、大剣を用いて一撃で仕留めることができた。
階段前の静寂と異変の予兆
地下十二階への階段前では、これまで必ず出現していたモンスターの姿が消えており、ハルトは安堵しつつも違和感を覚えた。しかしその直後、地鳴りと共に悲鳴が響き、二人の探索者がビックアントの大群を引き連れて現れた。
予期せぬ再会と大群からの逃走劇
その探索者たちは先ほどハルトを追い払った護衛組の二人であり、仲間がビックアントを挑発してしまった結果として大群に追われていた。ハルトは彼らを見送ろうとしたが、結果的に鉢合わせし、共に逃走を余儀なくされた。
想定外の標的と理不尽な追跡
ハルトはT字路で進路を分ける計画を立てたが、何故か全てのビックアントが自分の方へと殺到した。彼は怒りと困惑を抱きながらも必死に逃げ、酸の攻撃をかわしつつ戦闘を繰り返した。
行き止まりでの死闘と女王蟻の出現
行き止まりに追い詰められたハルトは、土の棘や大剣を駆使して応戦したが、酸による装備の損傷と体力の消耗により極限状態に陥った。そんな中、ビックアントの大群が割れ、その中心に女王蟻が現れたことから、群れの目的が巣の移動であると察知した。
女王蟻への特攻と群れの撤退
ハルトは最後の力を振り絞り、女王蟻への突撃を敢行して首を落とした。これによりビックアントの群れは活動を停止し、その場を撤退した。戦いの終息を確認したハルトは、力尽きてその場に腰を下ろした。
酸による被害と女王蟻の体内調査
戦闘で得た成果を確かめるべく、ハルトは女王蟻の体を調査した。外皮は防具に適さず役立たなかったが、腹部からは芳醇な香りの琥珀色の液体が流れ出た。試しに口にしたところ、強烈な快感に襲われ意識を失った。
蟻蜜の採取と帰還
再び意識を取り戻したハルトは、女王蟻の腹に顔を突っ込んで蟻蜜を吸っていた。危険な中毒性を感じつつも、すべての蟻蜜を容器に詰めて回収した。満足した彼は鼻歌まじりで帰路に就いた。
地上での会話と軽口
地上に戻ったハルトは、ビックアントの外皮を売却するために買取所を訪れた。そこでは探索者が遭難しているとの噂が広まっており、彼が軽口を叩いたことで、受付の女性から冷たい視線を受ける場面で締めくくられた。
閑話 古森蓮
ゲーム漬けの青年、探索者サークルに入会
古森蓮は自己評価の低い平凡な大学生であったが、自身の将来に不安を抱いた末、大学の探索者サークルへ入会した。体力や人間関係の不安もあったが、サークルの雰囲気は予想より柔らかく、努力を重ねて順応していった。
スキルガチャで火属性魔法を獲得
初めてのスキルガチャで古森が手に入れたのは、強力な火属性魔法であった。このスキルはサークル内で五年ぶりの快挙であり、伝説的な存在である“炎姫”と同じスキルを得たことで一躍注目を集めた。
魔法の習得と成長、指導者としての自覚
注目のプレッシャーに晒されながらも努力を続けた古森は、一年でレベル14に到達し、魔法の腕を着実に磨いていった。二年生となった彼は、後輩を教える立場となり、採掘現場での指導にも精を出していた。
採掘現場でのビックアントとの遭遇
地下十一階での採掘中、壁が崩れ大群のビックアントが出現した。新人の悲鳴を契機に、一人の男子が攻撃を加えてしまい、敵意を持たれたビックアントが暴走を開始した。
速水の無謀な行動と古森の決断
仲間を守るため速水が攻撃を仕掛けたことで、標的は彼女に移り、状況は更に悪化した。速水では群れを捌ききれないと判断した古森は、自ら火属性魔法とスキル【拡散】を使って攻撃を行い、標的を自分へ移した。
炎の壁と体力の限界
ファイアバレットとファイアウォールを連発するも、ビックアントの数には抗しきれず、魔力が枯渇して戦闘不能に陥った。マジックポーションも取り落としてしまい、絶望的な状況に追い込まれた。
速水の帰還と再出発
その場に戻ってきた速水がポーションを手渡し、古森は復活を果たした。二人は再び逃走を開始するが、敵の数と距離の問題で突破は困難を極めた。速水の咄嗟の激励も、古森に恋愛感情は既に存在しておらず、効果は薄かった。
再会と身代わりの英雄
逃走中、速水に罵倒された探索者の男性と再会した。彼は状況を理解すると、すぐに古森たちを安全な方向へ誘導し、自らが囮となって大群を引きつけて右へと進んだ。古森は彼の行動に深く感謝しながらも、逃げ延びることで精一杯であった。
クイーンビックアントの出現と恐怖
逃走の途中、古森は巨大なビックアント――クイーンビックアントと遭遇した。その威容と魔力に圧倒され、探索者界隈でも最強クラスと噂されるその存在に恐怖で立ちすくんだ。
ギルドでの報告と絶望感
古森と速水はなんとかギルドに帰還したが、救援を求めたにもかかわらず、現場に残った男性の生存は絶望的であると考えた。古森は彼の遺品を遺族に届けるために再び現場に戻る決意を固めた。
生還者の登場と否認
その直後、買取所で不謹慎な言葉を発する男を見かけ、速水は救援に向かった探索者ではないかと疑ったが、古森は太っていたことを理由に否定した。視線の先では、まさしく外皮を持ち帰っていた男が立っていたのである。
閑話 彦坂新吉
彦坂副会長、異常事態の報告を受ける
探索者協会副会長である彦坂新吉は、執務中に地下十一階でビックアントの大群とクイーンビックアントが目撃されたとの緊急報告を受けた。現場では一名の探索者が仲間を救うため殿を買って出たが、生存は極めて厳しいと判断された。
クイーンビックアント出現の異常性と危険性
本来クイーンビックアントは地下三十一階以降で稀に出現するモンスターであり、深層の実力者でさえ倒すのが困難な存在である。その存在が低階層に現れたことで、即時の討伐もしくは自然な撤退を待つ対応が必要とされた。
生命蜜の価値と彦坂の意図
彦坂はクイーンビックアントの体内に存在する「生命蜜」の存在に思いを巡らせた。それは飲めば若返り、病を治癒し、能力を飛躍的に高める霊薬であり、極めて高価かつ希少な物質である。彦坂自身は私的利用を望まず、深層へ挑む後進の育成資源として使用する意向を抱いていた。
地下五十階突破の限界と後進への願い
彦坂はかつて地下五十階の突破に成功したが、それ以降は仲間の喪失と戦力不足により前進を断念していた。自らの限界を認識した彦坂は、自分が見られなかった景色を誰かに見てほしいという想いから、若手育成へ注力するようになっていた。
討伐会議と探索者たちの招集
協会最大の会議室に集められた精鋭たちに向けて、彦坂はクイーンビックアント討伐作戦を告げた。加えて、仲間を守って残った探索者の遺品があれば、それも回収してほしいと依頼した。ただし生存は考慮されず、救出によって他の探索者の命を危険に晒すことは避ける方針であった。
生命蜜の分配と士気の高揚
探索者の一人からの質問に対し、彦坂は生命蜜を手に入れた場合、全員に分配することを明言した。この発言により、集まった探索者たちは一様に士気を高め、討伐への意志を強固にした。
作戦の実施と探索の結果
索敵班と討伐班に分かれて行動する二日間の作戦が始まり、地下十一階への立ち入りは全面的に制限された。だが、最終的に発見されたのは無数のビックアントの亡骸と、生命蜜の存在しないクイーンビックアントの遺骸のみであった。
生命蜜と呪いと(後編)
怪異の発端と不可解な体重増加
田中ハルトはアパートに帰宅後、鏡越しに自分そっくりの肥満体と遭遇した。自身であると気付くまで混乱し、体重計に乗ると一夜で43㎏増加し111㎏となっていた。服は破れ、シャワー後に着替えられる衣類もなく、翌朝ジャージ姿で外出する羽目となった。
服の購入とダイエット目的の探索再開
笑われながらも服と下着を購入したハルトは、金銭不足と体型改善を理由に再びダンジョンへ向かった。地下十一階への立入はイレギュラーモンスターの出現により制限され、仕方なく地下十階で探索を行い、軽快な動きと身体強化でモンスターを圧倒していった。
面接の準備とホント株式会社での敗退
履歴書を作成し、ホント株式会社で面接を受けたハルトは、証明写真と現在の容姿の違いを理由に「虚偽」と見なされ不合格となった。写真は太る前のものであり、説明も通じなかった。面接官に対して怒りを抑えきれず、ダンジョンへ向かって鬱憤を晴らした。
ダンジョンでの暴走と副社長との再会
地下十二階でロックワームやゴブリンと戦い、暴言を吐きながら暴れ回ったハルトは、ロックワームに噛まれ意識を失った女性探索者を発見し、治癒魔法と心肺蘇生で救助した。その女性はホント株式会社副社長の本田愛であり、名刺と感謝の言葉を残して去って行った。
副社長からの招待と警備員による誤認逮捕
後日、愛の招待で再び会社を訪れたハルトは、受付嬢に不審者と誤解され警備員に取り押さえられたが、名刺の確認により誤解が解けた。副社長室で礼としてお菓子とコーヒーを受け取り、その場で満足して帰ろうとするも、愛に呼び止められた。
社内抗争と救援要請の申し出
愛は、会社内で社長派と副社長派の権力争いが発生していること、そして彼女が病に倒れた現会長の娘であることを語った。社長は息子を後継者に据えようとしており、彼の過去には反社会的勢力との関係があると説明された。愛は会長の命を救うため、ハルトに治癒魔法の協力を依頼した。
申し出の拒否と再びの探索
ハルトは、以前自分を侮辱した会社に協力する義理はないと考え、申し出を即座に拒否した。その後、地下十二階で採掘に励む中で新たな採掘技術を編み出したが、壁内部に潜んでいた小型ロックワームに手を貫かれる被害を受けた。
採掘とトレース技術の応用
地属性魔法とトレースを組み合わせた採掘は効率が良く、魔力消費も抑えられる利点があったが、モンスターの潜伏リスクも伴った。最終的には、魔鉱石や鉄鉱石を多数回収することに成功した。
受付での警報と不運な対応
再びホント株式会社を訪れた際、受付嬢に警報を鳴らされ警備員に拘束されるも、名刺の提示によって無実が証明された。謝罪の言葉もなく解放されたことに不満を抱きつつも、愛の元へと案内されることとなった。
魔法実験と地下十三階の探索
田中ハルトは地属性魔法の応用として散弾やスナイパーライフル型の弾丸を試し、その威力や射程に限界があることを確認した。魔力量が性能に比例することを実験により把握した後、地下十三階の階段を発見した。
本田愛の強引な再接触と依頼
翌朝、ハルトは副社長・本田愛によって高級車で拉致され、会長宅へと案内された。謝礼として一千万円、成功報酬としてさらに一千万円を提示されたことで、治癒の依頼を受け入れることとなった。
見た目と病状のギャップに困惑
案内された会長は、重篤な病人であるはずがベッドの上で腹筋をしていた。外見と行動の不一致に戸惑いながらも、ハルトは治癒魔法による施術を開始した。
治癒魔法による全力治療と異物の排除
体内に感じた異物の正体を探るため、ハルトは自らの身体をモデルに治療を行い、最終的に黒い霧のような呪詛を拳で打ち払った。これにより会長の治療は完了した。
予想外の報酬とダンジョンでの鬱憤晴らし
帰宅後、報酬として二千万円が振り込まれていることを知ったハルトは歓喜した。一方、ホント株式会社からの着信には出ず、再接触を避ける姿勢を取った。
焼肉と自己肯定感の復活
ビールと焼肉で豪勢な食事を楽しんだハルトは、自らの肥満体を肯定しながらも、探索によって消費されるカロリーを根拠に日々の行動を正当化した。
ロックウルフとの大規模戦闘と異常な行動
ダンジョン地下十三階ではロックウルフの大群と交戦。連携を取らず突撃してくる異常なモンスター群を、剣と魔法を駆使して殲滅した。異常行動の背景に操作者の存在を疑ったが、手がかりは得られなかった。
探索者の義務感と蟻蜜の生活化
帰宅後も女王蟻の蜜を嗜む習慣が定着し、収納空間による劣化の防止が役立っていた。一方で、無職をダンジョンで鍛える法案を妄想し、現実の厳しさを年長の探索者から一蹴された。
実の暗躍とおじさんパーティの襲撃
ハルトは再会したおじさん探索者たちから襲撃を受ける。彼らのリーダー格である「実」は、ホント株式会社の社長の息子であり、企業乗っ取りの計画を邪魔されたとしてハルトを狙っていた。
対人戦での圧勝と呪いへの耐性
先制で敵の足を封じ、魔法攻撃も回避し、圧倒的な戦力差で反撃。呪いの霧にも動じず反撃したことで敵の戦意を喪失させ、慰謝料代わりに全装備を剥ぎ取って見逃した。
地下十四階の発見と直後の惨劇
意気揚々と探索を続けたハルトは地下十四階の階段を発見した。帰路で再びおじさん達の様子を確認しようとしたが、彼らはすでにモンスターに襲われ全滅していた。武器を奪った自身の行為を悔いながら、仇討ちとして怒りのままにモンスターへ襲い掛かった。
閑話 本田実
幼少期の家庭崩壊と最初の挫折
本田実は、母の不貞を目撃し、それを止めようとしたが逆に暴力を受けた。この体験から「優しかった母は二人いた」と錯覚し、心を閉ざしていった。母の妊娠と離婚により家族は崩壊し、実は守りたかった家庭を失った。その喪失感が実の心を深く傷つけ、最初の挫折を味わった。
優等生の仮面と裏の顔
父の献身により表面上は立ち直り、優秀な成績を収めたが、裏では非行に走り、大学では反社会的勢力と関係を持った。卒業を前に足を洗おうとするも、かつての仲間に脅され、会社の金を横領し始めた。自殺寸前まで追い詰められていたが、従姉妹・本田愛に誘われたダンジョン探索が転機となる。
呪詛スキルとの出会いと初の殺人
地下十階のボスを倒し呪詛のスキルを獲得した実は、それを用いて脅迫者を自殺に追い込み、横領の罪で逮捕される。出所後、社会復帰できず、ホームレス同然の男とダンジョン探索を始める。この出会いが新たな人生の転機となった。
パーティの結成と成長、そして堕落の始まり
実は呪詛の副次効果で他人の「カルマ値」を感じ取る能力を得ていた。それを用いて信頼できる仲間を選び、探索を続けていたが、酒場でスキルを聞きつけた黒スーツの男と出会ったことで運命が狂い始める。
闇の仕事と呪術による支配
男から殺しの依頼を受けた実は最初こそ拒否したが、「一日眠らせるだけ」の軽微な依頼を皮切りに犯罪に加担するようになり、徐々に心を蝕まれていった。気づけば自らも術中に嵌り、逆に呪詛をかけられ支配されていた。
失敗と仲間の喪失、絶望の日々
地下三十階への挑戦前、ユニークモンスターに遭遇し、パーティは壊滅的打撃を受ける。収入源を失った実は男の仕事に依存するようになり、心身共に疲弊していった。五年間、淡々と犯罪を重ねる日々が続いた。
父との再会と企業乗っ取りの決意
仲間の将来を案じた実は、かつて絶縁された父に連絡し、仲間たちを雇用してもらうよう懇願するが拒絶された。それを受けて実は父に呪詛をかけ、さらに会長である伯父にも術を仕掛けて病を悪化させ、自らの復権と企業掌握を狙った。
本田愛への罠と太った探索者の介入
従姉妹・愛をダンジョンで事故に見せかけて排除しようとしたが、偶然現れた治癒魔法の使い手により失敗する。実はその探索者の存在を危険視し、彼を標的と定めた。
再三の暗殺未遂と化物との邂逅
呪詛と「蠱毒の香」を用いた複数の暗殺を仕掛けるも失敗に終わり、最終的に直接対決を挑んだが、圧倒的な実力差で敗北した。すべてを暴露され、装備も奪われたことで、精神的にも肉体的にも崩壊寸前となる。
黒スーツの男の復活と呪詛の真実
黒スーツの男が再び現れ、実が殺したはずの相手が別人であった事実を突きつけられた。さらに、呪詛スキルをモンスター以外に使用した代償として実の寿命が削られていたことが明かされる。自らのカルマ値の高さが術にかかりやすい体質を生み出していた。
仲間の絶望と死の宣告
男が呼び出したモンスターの群れが仲間たちを襲い、実のスキルは封じられ、抵抗も叶わなかった。男の語る「リスク回避」の名のもとに、全ては無慈悲に終わらされた。
最期の抵抗と哀れな末路
激しい憎悪で再び呪詛を放つも、男が解き放った魔物に全て打ち消され、逆に顔面を蹴られて頸椎を折られた実は、動けぬまま意識を保ちつつ、近づいてくるゴブリンに喰われる瞬間を迎えた。最後に思い浮かべたのは、許されることのない父の顔であった。
閑話の閑話 ハルト、趣味を考える
大金の入金と舞い上がる気分
田中ハルトは久々に銀行を訪れ、通帳記帳によって二千万円の入金を確認した。喜びのあまりATM前で踊ってしまい、警備員に注意されたが反省する素振りもなく、帰宅後は通帳を見ながら満面の笑みを浮かべた。鏡に映った自分の姿が醜く太って見えたことに不快感を覚え、鏡を拳で殴り割った。
金と現実の落差、探索者引退の決意
通帳のページを繰るうちに、以前あった残高が大幅に減少していることに気付いた。探索者として働いていたはずなのに、貯金が増えるどころか減っていた事実に愕然とし、ハルトは探索者の引退を決意した。大金がある今が辞め時であると結論づけ、通帳を肴にビールで祝おうと考えた。
コンビニでの買い出しと突発的な思索
コンビニへの道中、上機嫌なあまり通りで踊ってしまい、通行中のトラック運転手に怒鳴られたが軽く流した。店内ではビールとつまみを購入する中で「趣味」の本が目に入り、自分に趣味と呼べるものがないことに気付いた。学生時代はゲームをしていたが、社会人になってからやめていた。
新たな趣味探しと過去の挫折
帰宅後、ネットで「趣味」「オススメ」と検索し、多くの候補を閲覧した。アウトドア系・インドア系・創作系の中で過去に体験したものも思い出されたが、いずれも挫折や苦い思い出と結び付いていた。ボルダリングでは落下して怪我をし、ゴルフでは空振り動画が拡散された。釣りは退屈で興味が持てず、他の候補も心が動かなかった。
条件整理とたどり着いた結論
自分にとっての理想的な趣味の条件を整理した結果、運動要素があり、自由な時間を使えて、可能であれば金になるものが望ましいという結論に至った。そして、これら全てを満たすものとして、再び「ダンジョン探索」しかないという結論に達した。こうしてハルトは探索者としての再出発を決意した。
閑話 本田愛
社長の異変と実への疑念
ホント株式会社の社長が突然倒れたという報を受け、副社長の愛と会長・源一郎は緊急対策を協議した。直前に社長は前科持ちの息子・実に会っており、以降は性格が一変し、実を次期社長に指名するなど不可解な言動を始めた。実による干渉の疑いが強まり、源一郎は自らの力で事態の解明に向かう決意を固めた。
愛の回想と治癒魔法の秘密
源一郎は治癒魔法により病から奇跡的に回復していたが、その力の持ち主である田中ハルトの存在は秘匿されていた。治癒魔法は希少かつ高い価値を持ち、もし力の詳細が知れ渡ればハルトは一生監禁される可能性すらあった。そのため、振込も偽装され、情報は徹底して隠蔽されていた。
愛の回想と実の人間像
愛は実の幼少期を思い出し、当時の実は教科書を読みふける内向的な子供であったと語る。だが、それ以上の深い関係はなく、親戚という距離感を超えることはなかった。曖昧な記憶しかないことに自嘲しつつ、実の暴走の理由を理解しきれずにいた。
実の母の死と警察からの連絡
警察からの呼び出しにより、愛は遺体安置所で実の母の遺体と対面する。激しく殴打され、強い恨みをもって殺害された様子から、警察は実を重要参考人と見なしていた。愛は納得できないながらも、実が事件に関与している可能性を否定しきれずにいた。
社長の目覚めと記憶の欠落
公衆電話からの連絡を受けた愛は病院に駆けつけ、目覚めた社長と対面した。社長は実と会った記憶の断片はあるが、後継指名の件などの一連の出来事は一切記憶になかった。愛と源一郎はこれまでの出来事を順に説明し、社長は混乱と絶望の中で事実を受け入れることとなった。
実の死と拠点の発見
後日、実とその仲間の遺品が探索者協会から届けられた。同時に、実たちが拠点としていた場所も発見されたが、あたかも誰かに隠されていたような不可解さが残された。愛は実の母の死を受けてか、社長が引退を表明したことを源一郎に伝えた。
社長の引退と愛への事業継承
連続する不幸と精神的疲弊により、社長は会社の運営から退く意向を示し、愛に後継を託した。愛はこの任務を本意とは思わなかったが、代替の人材が存在しない現実を前に受け入れざるを得なかった。こうして愛は、社長としてホント株式会社を率いることとなった。
生命蜜と呪いと(エピローグ)
愛の訪問と不意の対面
早朝、田中ハルトの自宅に副社長・本田愛が突如訪れた。寝ぼけていたハルトは無意識に玄関を開けてしまい、彼女を部屋へ招き入れる形となった。愛の目的は数日前に発生した事件についての聞き取りであり、電話を避けて直接訪ねてきたのは、ハルトが彼女の番号を着信拒否していたためであった。
実の遺品と謝礼の封筒
愛はハルトが届けた本田実の遺品について礼を述べ、心付けとして封筒を手渡した。中身の多額の金額を確認したハルトは驚きつつも、丁寧に淹れ直したお茶を出すなど態度を改めた。愛は探索者協会の職員から「太った探索者」が遺品を届けたと聞いており、その情報からハルトを特定したという。
太った探索者は唯一無二の存在
愛によれば、太った探索者はハルトしか存在せず、他は皆高い身体能力により自然と体が絞れていくとのことだった。これを聞いたハルトは、いずれ自分も痩せていくかもしれないと少し安堵した。
遺品発見の経緯と事実の告白
愛から遺品発見の経緯を問われたハルトは、最初は嘘をつくことも考えたが、結局は襲撃された事実と生還までの流れを語った。ただし、装備を奪ったことは伏せた。説明は歯切れが悪くなり、逃げ延びて助かった印象を与えてしまったが、結果としては正当防衛の範疇とされた。
臨時謝礼の申し出と拒絶未遂
愛は改めて謝罪と謝礼の意志を伝えたが、ハルトは人が死んだことを理由に躊躇した。しかし、断り切れずに「どうしてもというなら受け取る」と半ば折れる形で話を終えた。その際、着信拒否の解除も頼まれ、ハルトは渋々了承した。
愛の観察と身体の変化への違和感
会話の最中、愛はハルトの容姿に違和感を覚え、以前より幼くなったようだと述べた。本人は気づいていなかったが、見た目に何らかの変化が生じている可能性が示唆された。
祝辞とホント株式会社との縁
雑談の末、愛がホント株式会社の新社長に就任したことが伝えられ、ハルトは軽く祝意を述べた。これにより、当初関わりたくなかったホント社との縁が、奇妙な形で続いてしまうこととなった。
現在のステータス
ハルトの現ステータスは以下の通りである:
- レベル:13
- スキル:地属性魔法、トレース、治癒魔法、空間把握、頑丈、魔力操作、身体強化、毒耐性、収納空間、見切り
- 装備:不屈の大剣、木の楯、鉄の胸当て、俊敏の腕輪
- 状態:デブ(各能力増強)
第三章 ハーレムパーティとロックワームと
地下十四階の探索とポイズンスライム
田中ハルトは転職活動の合間、再びダンジョン地下十四階の探索を再開した。新たに出現したモンスターはポイズンスライムであり、毒性のある煙を放つため対策が不可欠であったが、彼は毒耐性スキルによって問題なく対処できた。戦闘を進める中で、道中にはロックウルフやゴブリンも出現していた。
桃山悠美との遭遇と拒絶
探索中、行き倒れていた少女・桃山悠美と出会ったが、以前に面倒を見た本田愛の件を思い出し、関わりを避けて立ち去ろうとした。だが、桃山は突然背後からしがみついてきて懇願し、結果的に彼女を引き離すこともできず、同行を許すこととなった。
パーティ合流とモンスター戦
道中で桃山の仲間である少女二人と合流したが、モンスターの襲撃を受けていた彼女たちをハルトが単独で救出した。桃山は彼の戦闘力に感動し、ハルトはしぶしぶながら仲間探しに協力することとなった。
パーティ再編と追加救出
その後、さらに離れた場所で新たな戦闘音を聞きつけ、重傷を負った少年・トウヤと魔力切れの少女・巫世を発見。ハルトは即座に介入し、モンスターを殲滅して二人を救助した。こっそりと治癒魔法を使って彼らを癒したうえで、少女達にポーションを渡し、事なきを得た。
感謝と依頼、そして帰還
戦闘後、九重加奈子から感謝を告げられたハルトはその場を立ち去ろうとしたが、トウヤを連れて帰ってほしいとの依頼を受け、渋々ながら了承した。門限という理由もあり、パーティ全員でダンジョンからの脱出を図った。
地上への帰還と別れの言葉
地上に戻ったハルトは桃山から改めて感謝の言葉と共に「お礼をさせてほしい」と告げられたが、即座に「二度と関わるな」と言い残し、その場を去った。
謝礼の振込と満足感
帰宅後、ホント株式会社からの謝礼金の振込連絡を受けたハルトは、経済的に余裕のある生活を実感し、大きな満足感を覚えた。一方で、ダンジョン探索の習慣が身に染みついており、引退する気配はなかった。
再会と感謝の品
翌日、探索者協会の売店で桃山と再会したハルトは、彼女から前日のポーションのお礼として品物を受け取りそうになるが、仲間の許可を得ていないとして一旦は断った。すると、桃山はすぐさま仲間の元へ向かい、許可を取ろうと行動した。
神庭との再遭遇と気まずい対面
売店から離れた場所でハルトは神庭由香に再び遭遇した。彼女の計らいによって桃山たちと再会することになり、昨日の件を改めて感謝される。トウヤからも丁寧な謝辞を受け、ハルトは居心地の悪さを感じつつも、場を移す提案をしてその場を離れた。
食堂での会話と親交の深化
田中ハルトはダンジョンで出会った少女たちとともに食堂を訪れ、互いの素性や経緯を語り合った。三森巫世の自己紹介に始まり、探索で得た杖の贈呈が行われたが、ハルトの魔力では使用できず、最終的にポーションのみを受け取って別れようとした。だが、パーティ側からの提案により、彼は一度だけ同行することに同意した。
ダンジョンでの初共闘と三森の能力
探索が開始されると、パーティの戦闘は一方的な勝利であった。トウヤと神庭の前衛が敵を引きつけ、後衛が着実に殲滅していた。特に三森のバフによる能力強化が鍵となっており、彼女が実質的な中核であるとハルトは見抜いた。
素材採取と収納空間スキルの価値
ハルトが戦闘後に素材を回収すると、他のメンバーから収納スキルの有無を問われた。パーティはその有用性に驚き、報酬配分の話になった際、神庭の提案で七対三の割合に落ち着いた。
会話の応酬とパーティとの距離の縮小
探索中、ハルトは各メンバーと会話を交わし、トウヤの無自覚なハーレム形成や三森の苦労、神庭の事情などを知った。特に三森が全財産をつぎ込んで装備を揃えていた話には同情を寄せた。
トラップの発動と緊張の瞬間
探索終盤、桃山悠美がトラップを踏んでしまい、パーティは一斉に身を寄せ合って危険を避けようとした。様々な案が飛び交う中で、ハルトは桃山の足を切り落とす案を提示するも、全員から激しく否定され、トウヤが別案で事態を解決した。
謎の転移と巨大ロックワームとの遭遇
トラップの二重作動により、ハルトたちは異空間へ転移され、そこで巨大なロックワーム二体と遭遇した。ハルトは単独で一体と交戦し、見切りや地属性魔法で攻撃するが、装甲の硬さに苦戦を強いられた。
パーティの苦戦と連携の限界
一方、トウヤたちももう一体と交戦していたが、後衛の攻撃が通じず、三森のバフによって持ち堪えている状態であった。消耗が激しく、戦線維持が限界に達していた。
危機の連続とトウヤの一撃
ハルトが敵の口腔を攻撃し、跳ね上げられた際には致命的なダメージを負ったが、トウヤの一撃がロックワームを倒して彼を救った。その後、九重の魔法により落下を和らげられ、回復に成功した。
モンスターの再来と再戦への決意
回復したハルトは再び戦線に復帰。だが、ロックワームはすでに傷を回復させており、戦況は振り出しに戻った。ハルトは仲間に突破口の発見を託し、自らが前線を引き受ける決意を示した。
強大な魔法と単独の攻勢
ロックワームが放つ強力な魔法を回避したハルトは、反撃のために突撃を開始した。敵が魔法に不慣れであると見抜いた彼は、再詠唱を許さぬよう攻勢に転じた。
ハルトの孤独な戦闘とパーティの葛藤
ハルトは巨大なロックワームと単身で戦っていた。攻撃を巧みに躱しつつ反撃を加えていたが、モンスターの装甲は硬く、致命打には至らなかった。一方、彼の奮戦に見惚れるパーティの面々は、状況の深刻さに改めて気づき、打開策を模索し始めた。
トウヤの決意と命懸けの陽動
絶望的状況の中、トウヤが囮となる決意を固めた。三森の付与術によって強化された彼は、力溜めスキルによる一撃を放ち、ハルトとロックワームの間に割って入る形で交代を果たした。その後、二体目のロックワームと交戦するも重傷を負い、意識を失った。
ハルトの逆襲とロックワーム討伐
ハルトはすぐにトウヤを回収し、全力の治癒魔法で治療した。その後、三森の付与術によって強化された状態で反撃に転じ、片刃の大剣で二体のロックワームを一刀のもとに切り裂いた。モンスターの巨体が沈黙し、戦闘は一旦の終息を迎えた。
第三のロックワームと奇襲の失敗
しかし安堵も束の間、地中から三体目のロックワームが出現。再生した個体と入れ替わって潜んでいたものであった。ハルトは桃山をかばって再度戦闘に入るも、両足を失い意識を喪失。桃山もまた重傷を負って倒れた。
謎の覚醒と奇跡の再生
瀕死の状態でハルトは突然目覚め、失ったはずの足が再生されていた。彼は無言のまま桃山を治癒し、最後のロックワームに向かって歩を進めた。魔力を込めた大剣で一閃し、白銀の光と共に魔法と敵本体を一刀両断にして討伐を完遂した。
謎の転送とハルトの失念
その後、ハルトは気を失いながらも地上へ戻り、パーティ全員を保護した。回復後も戦闘の記憶は曖昧で、自身が行った奇跡的な行動の記憶は残っていなかった。唯一の痕跡は、その場に残されたガラス玉であり、触れると自然に消失していった。
ハルトの自立とパーティへの拒絶
ハルトは全員を回収し、地上で目覚めた仲間たちと別れを告げた。彼は報酬分配の不公平さを理由に、パーティの正式な加入を拒否した。ダンジョン探索はあくまで生活費のためと割り切り、情ではなく実利を優先した。
ギルドへの報告と報酬の授与
一方、ハーレムパーティはユニークモンスター討伐の報告を行い、正式に功績が認定された。その結果、報奨金三百万円と技能講習優待チケットが支給されたが、ハルトの連絡先が不明だったため、恩返しの機会は先送りとなった。
戦いの余韻とそれぞれの覚悟
パーティは、ハルトの強さと生き様に強く影響を受け、各自が成長を誓った。トウヤは新たなスキル・空間魔法を獲得し、一歩ずつ理想に近づいていくことを決意した。神庭は冷静に状況を受け止め、今後の指針を確認した。
ハルトの静かな日常と次なる一歩
戦闘の成果も素材も失い、金銭的には赤字であったが、ハルトの心に後悔はなかった。愛からの振込で生活には余裕が生まれ、蟻蜜を味わいながら彼は次の探索を見据えた。命の危険を承知でありながらも、彼は再び迷宮へと足を運ぶ覚悟を固めていた。
エピローグ
常連となった武器屋での一幕
田中ハルトはダンジョン探索の度に装備を失っており、武器屋の店主から呆れられていた。戦闘による損壊が原因であり、彼はロックウルフの攻撃は避けられると豪語しつつも、ゴブリンやロックワームとの戦闘によって装備を失っていた。
ステータス確認とスキルの成長
店主の要望でステータスチェッカーを使用したハルトは、レベル14に到達し、新たに「闘志」のスキルが加わっていることを確認した。また、状態表示には「デブ」と明記され、能力上昇効果付きであることが示されていた。
ユニークモンスター討伐の疑惑と登録問題
武器屋店主は、協会で話題になっていたユニークモンスター討伐の当事者がハルトではないかと疑ったが、本人は記憶が曖昧で曖昧に否定した。さらに、ハルトが探索者登録を行っていないことが判明し、店主は驚愕した。登録料の高さを理由に未登録で活動していたが、生活資金が潤っている現在は必要性を感じていなかった。
高額装備の購入と防御力の強化
謝礼金が振り込まれたことを受け、ハルトはこれまでより高性能な装備を求めた。予算は五十万円と定めていたが、実際には予算を大幅に超える百二十万円のアマダンの小楯と百八十万円のミスリルの胸当てを購入した。
アマダンの小楯はアダマンタイトを含んだ頑丈な盾であり、ミスリルの胸当ては重要部位に希少金属ミスリル鋼を使用した耐久性の高い装備であった。試着した姿を鏡で確認したハルトは、若干腹が守られていない点に不安を感じつつも、満足して購入を決断した。
早速の損耗と高額装備の消失
武器屋を出たその日に、ハルトは再びダンジョンで新装備を失うという結果に至った。数十万円を超える高額装備であっても、例外なくダンジョンの厳しさには耐えられなかった。
異界の幻想的な少女の登場
場面は変わり、巨大な大樹の根元に広がる幻想的な世界が描写された。エメラルド色の髪を持つ少女が光る苔と小川のある空間で舞っていた。彼女は万年単位で生きてきた存在であり、長い時間の果てに「現れる存在」を待ち続けていた。
少女は目的の存在をついに感知したが、時期尚早としてその場での接触を見送った。力を蓄えるまで待つという決意とともに、姿を消した。彼女の動向は、ハルトと交差する運命の前兆であるかのようであった。
現時点での田中ハルトのステータス
- 【名前】田中ハルト(24)
- 【レベル】14
- 【スキル】地属性魔法、トレース、治癒魔法、空間把握、頑丈、魔力操作、身体強化、毒耐性、収納空間、見切り、闘志
- 【装備】不屈の大剣、アマダンの小楯、ミスリルの胸当て、俊敏の腕輪
- 【状態】デブ(各能力上昇)
番外編 黒一福路
通勤列車での介入と少女の救済
高校生の少女は、通勤電車内で不快な接触を受けかけたが、突然現れた黒スーツ姿の男性・黒一福路により状況は収束した。黒一は相手の腕を抑えて制止し、少女を保護してその場を去った。少女にとってこの出来事は、忘れられない安心の記憶となった。
黒一の関心と観察対象
黒一にとって、その介入は些細な行動にすぎず、真の関心は別にあった。彼が執着していたのは、かつての探索者・本田実という人物であり、挫折と苦悩の過程を観察し続けていた。実がどこまで折れずに歩み続けるかに、黒一は興味を抱いていた。
黒一の所属と不干渉の境界
黒一は「探索者監督署」に所属する人物であり、許可を得た上で調査と介入を行っていた。彼は違法スキルの使用が疑われた実に対し、間接的な監視を継続していた。状況が悪化した際には介入も視野に入れていたが、直接手を下すことは避けていた。
古い知人との接触と探り合い
事件の後、黒一は静かなバーを訪れ、旧知の探索者であり企業経営者でもある本田源一郎と再会した。二人は互いの立場を明かさずに言葉を交わし、実の過去や現在について探り合った。源一郎は実の死に関して黒一の関与を疑っていたが、明確な証拠はなく、対話は平行線のまま終わった。
新たな調査対象の指定
黒一は別の情報提供者・ゴコウに接触し、新たに特定の人物の調査を依頼した。その対象は協会未登録の野良探索者であり、若年層と思われる太った男性であった。黒一はこの人物が異例の存在であることに興味を示し、調査期限として数日間の猶予を提示した。
静かなる脅威の台頭
黒一は常に人間の内面と変化を観察しており、特定の対象が予想外の行動や進化を見せた時にのみ、介入を検討していた。善悪にとらわれず、ただ個としての興味によって動くその姿勢は、周囲の人間にとっては不気味な脅威となり得た。そして今、彼の関心は新たな探索者に向けられつつあった。
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