どんな本?
本作は、異世界から現代日本へ戻るために大魔法を発動した少女が、誤って戦国時代へ転移してしまう物語である。彼女は斎藤道三の娘・帰蝶と誤認され、織田信長の妻としての運命を歩むこととなる。魔法と歴史が交錯する戦国ファンタジーが展開される。
主要キャラクター
• 帰蝶:異世界から転移してきた少女。魔法の使い手でありながら、斎藤道三の娘・帰蝶と誤認される。
• 織田信長:帰蝶の夫となる若き武将。帰蝶との出会いをきっかけに、天下統一の志を抱く。
• 斎藤道三:美濃のマムシと称される策略家。帰蝶を実の娘として愛情を注ぐ。
• 明智光秀:帰蝶に救われたことから彼女の家臣となる。魔法の適性を持ち、帰蝶から教えを受ける。
• プリちゃん:帰蝶に付き従う人工妖精。彼女の行動にツッコミを入れる役割を担う。
物語の特徴
本作は、異世界転移と戦国時代を融合させたユニークな設定が特徴である。主人公の帰蝶は、魔法の力を活かして戦国時代の内政や医療に貢献し、歴史上の人物たちとの関係を築いていく。また、彼女のポンコツな一面と、それに対する周囲の反応がコミカルに描かれており、読者に笑いと感動を提供する。
出版情報
• 出版社:アース・スター エンターテイメント(アース・スターノベル)
• 発売日:2024年11月15日
• 定価:1,430円(税込)
• ISBN:978-4-8030-2035-1
本作は、第5回アース・スターノベル大賞にて入選を果たし、書籍化された作品である。
読んだ本のタイトル
信長の嫁、はじめました1 ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~
著者:九條葉月 氏
イラスト:久賀フーナ 氏
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あらすじ・内容
あの、旦那様……
歴史の表舞台に立たせようとするのやめてもらえませんか?
帰蝶。
織田信長の妻として知られ、その死や行方は今も議論の的。
そして、とある異世界。
魔法を極めた一人の少女は現代日本へ帰るため大魔法を発動――するが
ついうっかり戦国時代へと転移してしまった。
少女は付近を探索していると、大所帯を率いる精悍な男に出会う。
「……き、帰蝶なのか?」
少女の返事にその男――斎藤道三は涙した。
たしかに銀髪赤目だし、魔法も使える私は貴重だけど……
私が信長の奥さんになる人?
人違いなんですけど……どうしてこうなった?
時は戦国時代。だけど魔法あり、恋愛あり。
異世界帰りの魔女が繰り広げる勘違いだらけの戦国ファンタジー、ここに開幕!
感想
本作は、異世界から日本へ戻るべく術式を完成させた魔女が、意図せず戦国時代へと転移してしまうという奇想天外な物語である。帰蝶と誤認された主人公が、異国の知識と魔法を武器に、懸命にこの乱世を生き抜こうとする姿は、コメディタッチで描かれながらも、温かさと芯の強さを感じさせた。
道三との絆と光秀との信頼、そして運命の邂逅
最初に出会った斎藤道三にすんなり受け入れられた帰蝶は、歴史好きにはたまらない人物たち──明智光秀や織田信長との交流を自然に深めていく。特に、光秀を側近に迎え、信長と初めて対面した場面では、主人公が「超好みの顔だった」と心中で絶賛する様子に、読者も思わず微笑んでしまった。さらに、一緒に転移してきた人工妖精プリニウスが実はショタだったという設定も、物語に独特のユーモアを加えていた。
史実への敬意と自由な再構築の絶妙なバランス
本作の最大の魅力は、基本コメディでありながら、史実や文化背景へのリスペクトがしっかりと込められている点にある。異世界転生ものにありがちな、無制限な改変ではなく、史実とのずれも伏線として丁寧に織り込まれており、歴史好きな読者にも十分な満足感を与えてくれる。登場人物たちの生き様が、時にコミカルで、時に真摯に描かれることで、物語に厚みと奥行きが生まれていた。
勘違いと優しさが織り成す、心温まる群像劇
主人公は「人違いだから」と何度も心で呟きながらも、道三や光秀、そして信長たちに支えられ、次第に「帰蝶」として生きる覚悟を決めていく。その姿は、決して派手ではないが、読後に温かな余韻を残すものであった。また、戦いや医療改革、商業振興など、細かな行動一つ一つに彼女なりの想いが込められており、単なるギャグ作品ではない確かな芯が感じられた。
まとめ──戦国の世に咲いた、ちょっとドジな救世主
「信長の嫁、はじめました1」は、歴史と異世界ファンタジーの魅力を絶妙に融合させた作品である。コミカルながらも愛情深い登場人物たち、史実とファンタジーの狭間を巧みに渡る展開、そして何より帰蝶の奮闘する姿が、読む者の心にじんわりと染み入った。今後、彼女がどのように戦国時代を彩っていくのか、続巻への期待が高まるばかりである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ 失敗しちゃいました
異世界転移術式の完成
巫国リーシュラルトの「魔女の森」にて、主人公は異世界転移の術式を完成させた。人工妖精プリニウス(通称プリちゃん)を相手に、自身の術式の完璧さを誇示し、転移先として日本を選択した動機を語った。日本への転移が無謀とされるなか、主人公はなおも強い決意を示していた。
異世界転移の動機
主人公が日本へ戻ろうと決意した理由は、懐かしの味──味噌・醬油・白米をもう一度味わいたいという、極めて私的で情熱的な欲求であった。この告白に対し、プリちゃんは呆れながらも受け止め、親友として共に転移する意思を固めた。
出発の準備と別れの情感
主人公は転移に向けて魔法陣を描き、発動の準備を整えた。プリちゃんとの軽妙なやりとりを交えつつも、内心ではこの世界との別れに寂しさを感じていた。使い古された家具や実験器具に囲まれた空間に、思い出と名残を抱いていた。
転移の失敗と蝶の予兆
魔法陣が起動し、主人公の体が光に包まれる中、部屋に舞い込んだ美しい蝶に視線を奪われた。紫と黒の羽に白と黄色の模様が施されたその蝶に、彼女は理由もなく懐かしさを覚えた。そして意識が蝶に引き寄せられた瞬間、術式が発動。だが、転移の最中に彼女は一言つぶやいた──「あ、やべ、ミスった」。彼女は本来の目的地とは異なる場所へと飛ばされてしまったのである。
1 戦国時代へ
誤った転移と戦国時代の到来
主人公は異世界転移術式により、予期せぬ場所へと転移し、森の中で目を覚ました。自身の状態を確認し、人工妖精プリニウスと会話を交わしつつ、目的地の日本には着いたが、時代が1548年、戦国時代であることを知る。転移時に魔力制御を誤ったことが原因で、時空座標がずれたと推察された。
魔力スポットと無人の小屋の探索
山道を進んだ先で主人公は魔力スポットを発見し、その付近にある小屋と二つの無縁墓を見つけた。彼女は墓の手入れを行い、魔法がこの時代でも使用可能であることを確認する。小屋には高度な保存魔法が施された薬草やガラス瓶が存在し、この時代にそぐわぬ技術が使われていることから、かつて魔法使いがいた可能性が示唆された。
騎馬の武将との出会いと勘違い
突如として足軽と騎馬武将一行が現れ、小屋を囲む。彼らの中心人物は初老の武将で、主人公を「帰蝶」だと勘違いする。その人物は斎藤道三であり、娘である帰蝶の幼少期の失踪を信じていた。主人公の銀髪赤目の容貌が帰蝶のアルビノ説と重なり、誤認されたものと考えられる。
足軽たちの反乱と道三の庇護
道三の家臣を名乗る足軽たちは謀反を起こし、彼と主人公を囲んで攻撃を試みる。道三は主人公を庇い前に出たことで、彼女に父性を感じさせた。過去に実父に裏切られてきた主人公にとって、それは心を揺さぶる出来事であった。主人公は風魔法と土魔法を駆使し、反乱者を撃退した。
明智光秀との邂逅と救命
襲撃の中で重傷を負った青年が明智光秀である可能性が浮上する。主人公は彼を回復魔法で治療し、その命を救った。光秀の生存は歴史に大きな影響を与えるとプリニウスは語り、主人公もそれを認識したうえで行動した。
異質な力と時代の断絶
魔法という異質な力を見せたことで、主人公は道三と光秀に正体を問われる立場となった。彼女の持つ力はこの世界の常識を逸脱しており、今後の行動次第ではさらなる混乱を招く可能性を孕んでいた。主人公は静かに空を見上げ、想定外の展開に頭を抱えるのであった。
2 帰蝶
偽りの帰蝶としての出発
帰蝶は、戦国時代の美濃国にて斎藤道三に保護された。彼の「行方不明の娘・帰蝶」と誤認されたことを利用し、帰蝶は即興で異世界から帰還したという嘘を作り上げた。罪悪感を抱きつつも、道三の涙ながらの再会に言い出せず、そのまま「帰蝶」として振る舞うこととなった。
道三の庇護と稲葉山城への同行
帰蝶は、斎藤道三や明智光秀と共に母の墓参りを終えた後、稲葉山城へ同行することになった。道中では、魔法が妖術ではなく理論に基づく技術であると説き、道三と光秀に対して実演を交えて説明を行った。
魔法適性の検査と教導方針の決定
帰蝶は鑑定眼を使って道三と光秀の魔法適性を調べた。その結果、道三には才能がなかったが、光秀には魔法適性があり、将来的に魔術師になれる可能性を秘めていた。帰蝶は光秀への基礎的な教導を引き受けることとした。
稲葉山城での歓迎と洗礼
稲葉山城に到着した帰蝶は、女中たちの歓迎を受けた。見知らぬ女性に涙で迎えられたり、高価な着物や化粧の準備が整えられる中、お歯黒や眉剃りといった風習には拒否の姿勢を貫いた。史実とは異なる自身の立場に混乱しながらも、「帰蝶」としての役割を受け入れていった。
道三との対話と出生の真相
帰蝶は、道三から母との出会いや本当の帰蝶が誘拐された経緯を聞かされた。自身の異国的な外見が違和感なく受け入れられた理由が、道三の語る南蛮人の母の存在によって説明された。帰蝶はそれを聞きつつ、さらに自身の正体についての葛藤を抱いた。
治癒術と医療改革の提案
帰蝶は、光秀を救った回復魔法を活用し、治癒術士の育成と通常医療の導入を提案した。道三はこれを支持し、家臣や庶民を含む広い範囲への教育を許可した。帰蝶は医療水準の改善とともに、魔法に頼りすぎない社会の構築を目指し、ポーションの大規模使用は控える方針を固めた。
光秀夫妻との交流とポーションの使用
明智光秀の妻・煕子が来訪し、帰蝶は彼女の左頬に残る疱瘡の痕を診察した。ナノマシンによるポーションを使って治療を行い、煕子の顔から痕を完全に取り除いた。深い愛情に包まれる光秀夫妻の姿に帰蝶は心を打たれつつも、羨望の感情を抱くこととなった。
今後の展望と課題
帰蝶は治癒術士の育成に向けて人材の発掘と教育施設の準備を進めた。魔法と医術の併用による社会構築を意識し、ポーションの使用は最低限に抑える方針を採った。また、民間医療の普及を視野に入れ、消毒技術や薬草知識の導入を計画し始めた。治癒術の継承と体系化により、戦国時代の医療を変革すべく動き出したのである。
3 異世界の魔女、行動開始
回復魔法適性者の選定と訓練の開始
帰蝶は稲葉山城内を光秀と共に巡り、回復魔法の適性者を調査した。その結果、女中の千代と台所の下働きである権兵衛の二人に加え、光秀自身の適性も確認された。帰蝶はこの三名に治癒術の伝授を開始することにした。なお、彼女は治癒術の由来を「熊野の秘術」と偽り、信憑性を高めるために即興で設定を構築した。
治癒術の実演と初歩の指導
帰蝶はまず権兵衛の手にできた切り傷を治癒術で癒し、その効果を示した。続けて、三人に魔力同調と魔素の取り込み、魔力への変換、そして手のひらからの放出という一連の流れを教示した。プリニウスの補助もあって、最終的に三名とも回復魔法を習得するに至った。特に千代は高い適性を示した。
実践指導と応急処置の導入
帰蝶はさらなる実践として、自ら手の甲を傷つけ、それを三名に回復させることで練習とした。魔力の消費を考慮し、応急処置の指導も並行して実施した。医学的知識を徐々に浸透させる意図もあり、将来的には本格的な医療教育へと発展させる構えを見せていた。
稲葉山城での日常と父・道三との対話
帰蝶は日々、姫としての儀礼や勉学に励みつつも、魔法教育に時間を割いていた。やがて斎藤道三から、治癒術の指導は構わないが、帰蝶の部屋に男を招くことを禁じられた。これを受けて帰蝶は、訓練用の施設を城下町に設置することを提案し、道三を説得した。道三は内心の寂しさを隠しつつも了承し、屋敷の取得を急がせることとなった。
新施設の設置と生駒家宗との邂逅
道三が取得した屋敷は元々商人・生駒家宗の所有であり、治癒術の訓練所として提供された。帰蝶はこの屋敷を訪れ、生駒と対面した。屋敷の広さと構造から、当初の「小屋」とはかけ離れていたが、使用には問題がないと判断された。
金貨の両替と価値評価の交渉
帰蝶は元の世界の金貨を生駒に提示し、両替を依頼した。生駒とその「爺」は金貨の美しさと純度から高値での買い取りを申し出たが、帰蝶は価値以上の価格で売ることに罪悪感を抱き、適正な価格での取引を希望した。その代わりとして、生駒に火縄銃と弾薬の調達を依頼した。
商業観察と歴史的考察
町の様子や人々の生活環境、食文化に触れた帰蝶は、衛生観念や栄養の欠如を問題視し、それらを改善すべき対象と認識した。また、肉食に関する歴史や宗教観に関してプリニウスと対話し、日本の文化的背景を学ぶ場面もあった。
未来への布石と父娘の確執
道三の過保護ぶりと親バカな一面に対し、帰蝶は若干の呆れを抱きつつも、今後の布石としてその性格を活用することを考えていた。将来、道三が政略結婚すら阻むのではないかという懸念も抱きながら、帰蝶は治癒術の普及と医療改革に向けた歩みを進める決意を新たにした。
鶴山城における義龍の密会
鶴山城では斎藤義龍が家臣数名を集め、帰蝶の真贋を巡って極秘会議を開いていた。義龍は帰蝶の特徴的な容貌から本人と認めつつも、真偽よりも彼女を政略に活用する利点を重視した。尾張の織田信秀が病に伏し、信長の後継問題も不安定な中で、帰蝶を政略結婚の駒とする可能性を検討した。
帰蝶に対する噂と義龍の静観方針
家臣たちは帰蝶に関する誤った噂を次々と報告した。彼らは回復魔法や治癒術の訓練を「妖術」や「殺し合い」と誤解し、また火縄銃購入も浪費と見なした。義龍は噂の真偽を問わず、帰蝶の行動をしばらく静観し、いずれ彼女自身が問題を起こすなら利用する方針を固めた。
道三の親バカぶりと光秀への命令
同時刻、道三は光秀を私室に呼び出し、帰蝶を守るよう命じた。さらに、帰蝶に近づく男は斬るか半殺しにするよう指示した。光秀は道三の過剰な命令に内心呆れつつも、逆らえず従うしかなかった。
帰蝶の火縄銃購入と新たな屋敷の獲得
帰蝶は生駒家宗から屋敷の引き渡しを受け、稲葉山城下に新たな拠点を得た。屋敷は想定よりも広く、立派なものであり、治癒術の教室や将来的な治療院、薬局設立も視野に入れることとなった。
生活環境の改善計画と木綿布団の導入
帰蝶は稲葉山城下の生活環境を改善すべく、水洗トイレや寝具改革を考案した。特に木綿を用いた布団に着目し、生駒家宗と協力して生産と販売を進めることに成功した。この布団は高級品と位置づけられ、道三や織田信秀への贈答品にも使用された。
薬局設立と薬草調達の開始
帰蝶は治癒術だけに頼らず、薬草を用いた医療品の開発にも着手した。生駒家宗を通じて薬草を入手し、風魔法による乾燥処理で生薬を作成した。初期には風邪薬、下痢止め、胃腸薬、湿布代わりの軟膏を開発し、実地販売への布石を打った。
抗生物質開発に対する慎重な姿勢
抗生物質の開発可能性についても考慮したが、耐性菌の問題を憂慮し、拙速な導入を避ける方針を定めた。まずは基礎医療の普及を目指し、将来的にはパスツール研究所のような医療研究機関の設立を目標とした。
生駒家宗の商才と尾張進出
生駒家宗は帰蝶考案の布団を用い、尾張の織田信秀にも贈答した。信秀は病身ながらも強大な威厳を保ち、帰蝶の関与を知りつつも寛容な態度を示した。これにより帰蝶の名は尾張にも広まり、織田家中では帰蝶に対する関心が高まった。
若き織田信長の興味と動向
末森城では織田信秀の嫡男、織田三郎(後の織田信長)が布団の柔らかさに感動し、帰蝶への興味を抱いた。彼は「山姥」か「絶世の美女」かという噂に興味を持ち、密かに帰蝶に会いたいという意志を固めた。信長と帰蝶の運命的な邂逅への伏線がここに敷かれたのである。
4 町歩き
城下散策と秘密の外出準備
帰蝶は治癒術の授業と称し、稲葉山城を出て城下町を散策していた。護衛の光秀らが付き従う中、自由な一人歩きを求め、薬草の製造を口実に人払いをした上で、身代わりのゴーレムを製作して出かけた。
城下町での薬探しと茶屋での出会い
帰蝶は城下町で薬屋を探したが見つけられず、目立つ存在であったため人々の注目を集めてしまった。その後、偶然見つけた茶屋で店主の津やと出会い、庶民に紛れて食事を楽しんだ。庶民の食事である湯漬けの質素さに落胆し、改めて白米や味噌への渇望を再認識した。
帰蝶への噂と津やとの交流
津やとの雑談で、帰蝶が城下で様々な噂に包まれていることが判明した。道三が山姥を連れてきたという話から、医術の達人、密教の奇跡使い、金払いの良い「鴨」など多様な評価がされていた。
店での緊急事態と治癒魔法の発揮
茶屋で津やの夫が脳梗塞と思われる症状で倒れたため、帰蝶は即座に治癒魔法を用いて彼を治療した。人々の前で奇跡的な治癒を成し遂げ、津やから深く感謝された。
道三による帰蝶の調査と確信
稲葉山城では道三が帰蝶に関する調査を饗談(忍者)に命じていた。帰蝶の特徴を再確認した結果、道三は彼女が本物の娘であると確信した。また、暗殺未遂事件の黒幕が土岐頼芸であることを突き止め、大義名分を得て粛清の準備を進めることにした。
再び茶屋での出来事と戦傷者との出会い
日課となった茶屋訪問の中、帰蝶は片足を失った戦傷者・太助と出会った。太助の困窮を見た帰蝶は、彼を雇い屋敷の管理人兼警備員として迎え入れることを決意した。光秀はこの行為に慎重な態度を示したが、帰蝶は「縁」を重んじて行動を貫いた。
義足製作の計画と職人たちの協力
太助の生活を支援するため、帰蝶は義足の製作に取り組むことを決めた。鎧作りの職人にソケット部分を、竹細工の職人に義足本体を依頼し、失われた足の機能を補う道具を作り出す計画を進めた。帰蝶は現代知識を活かし、少しずつ城下町の生活改善にも影響を与え始めたのである。
戦傷者の救済と金策への着手
帰蝶は自らの屋敷に集まった戦傷者たちを養うことを決意し、彼らに薬作りを手伝わせる計画を立てた。必要な資金を得るため、帰蝶は手持ちの金貨を換金し、さらに安定した収入源の確保を模索することとなった。
堺からの来訪者と薬取引の拡大
生駒家宗の紹介で、小西隆佐と今井宗久が帰蝶を訪ねた。小西隆佐は薬種問屋の跡取りであり、帰蝶の製造した薬の取引を希望した。帰蝶は薬を高額で売るよりも庶民に手が届く価格を重視し、商談をまとめた。また、隆佐に対して、病を患う彼の父のためにポーションを提供した。
今井宗久との火縄銃取引と帰蝶の軍事拡充
今井宗久からは、装飾性の高い火縄銃が贈られた。帰蝶はこれを受け取りつつ、実用品の火縄銃十挺の購入を依頼した。宗久は帰蝶の武器への理解と愛情を認め、積極的に協力する意志を示した。
小西隆佐と今井宗久の帰蝶評と縁の拡大
小西隆佐と今井宗久は帰蝶の人物像に感銘を受け、堺の商人社会でも彼女を高く評価する流れが生まれた。生駒家宗も帰蝶との縁に深く感謝し、帰蝶の存在が商圏を広げる鍵になると確信した。
薬品量産体制と戦傷者の雇用推進
帰蝶は戦傷者たちに適切な役割を与え、薬草の加工から薬作りまでの工程を分業化した。不慣れな彼らも四日間で一定水準の製品を作り出せるようになり、帰蝶の指導力と組織力が浮き彫りとなった。これにより、薬品量産体制が整えられた。
小西弥左衛門の奇跡的回復と阿伽陀伝説の拡大
帰蝶から渡されたポーションを飲んだ小西弥左衛門は、半身麻痺から劇的に回復した。この奇跡は小西一族に衝撃を与え、帰蝶は「薬師瑠璃光如来の遣い」として崇められる存在となった。堺を中心に帰蝶の名声はさらに高まった。
火縄銃贈与による本能寺フラグ回避策
帰蝶は贈られた火縄銃のうち一挺を父・道三に、もう一挺を光秀に贈った。光秀はその銃を大切にし、帰蝶への忠誠をさらに深めた。この行動により、帰蝶は光秀の忠誠心を確保し、本能寺フラグ回避の布石を打った。
硝石生産への関心と今後の展望
帰蝶は今井宗久の飛驒出張を契機に、硝石の国産化に興味を抱いた。火薬自給体制の確立を視野に入れ、将来的な火薬生産に取り組む意欲を見せた。
明智光秀の決意と帰蝶への忠誠宣言
光秀は帰蝶の行動に感銘を受け、正式に彼女への忠誠を誓うことを決意した。煕子の理解を得た上で、道三に仕官願いを申し出た。道三は光秀の覚悟を認め、酒を交わしつつ承諾した。光秀は今後、帰蝶に忠誠を尽くす決意を新たにした。
5 運命の出会い
光秀の仕官と給金の設定
光秀は帰蝶の家臣となる決意を固め、正式に帰蝶に仕えることを申し出た。帰蝶は光秀に対して永楽銭で給料を支払うこととし、大学卒業相当の初任給として月収二貫(約二十万円)を設定した。光秀はその金額に戸惑いを見せたが、帰蝶の説得により受け入れた。
資金不足と銀行設立の構想
帰蝶は薬の製造と販売が順調に進んでいるものの、売上金がすぐに手元に戻らない問題に直面した。そこで、美濃と堺に銀行機能を持たせ、即座に資金を引き出せる体制を作る構想を思いついた。
火縄銃購入に伴う財政危機
帰蝶は勢いで火縄銃十挺を購入したものの、価格確認を怠っていたため、三千万円近い支払いが必要となる事態に陥った。この出費を補うため、迅速な資金調達が急務となった。
養生院設立と治癒術による資金調達
帰蝶は光秀、権兵衛、千代に命じ、城下町の屋敷に「養生院」を開設させた。表向きは治癒術の実地訓練所であり、裏では治癒術による収益獲得を狙った。診察料は軽症者には一文と設定し、口コミによる利用者増加を目指した。
永楽銭偽鋳造の試み
資金不足を解消するため、帰蝶は鋳型を自作し、青銅を用いて永楽銭を鋳造することを試みた。光秀は違法性を危惧したが、帰蝶は永楽銭は日本製ではないため私鋳には当たらないと説得し、鋳造を開始した。
鋳造技術の意義と市場への影響
帰蝶は、精銭不足による貨幣経済の停滞を防ぐためにも高品質な永楽銭を市場に供給する必要があると説明した。これにより、光秀も鋳造行為の重要性を理解し、協力を受けることとなった。
堺商人たちとの鋳造交渉
生駒家宗、小西隆佐、今井宗久は帰蝶が作成した永楽銭に強い興味を示し、量産を依頼した。帰蝶は空間収納と転移魔法を駆使して堺へ銅鉱石を運び、効率的な鋳造を行う計画を提示した。
薬の増産と人材確保
帰蝶は薬の増産を進めるとともに、新たに集まってきた戦傷者たちを薬作りに従事させた。薬の売れ行き次第では労働力過剰になることを見越し、将来的には養蚕や木綿栽培への展開も視野に入れた。
灰吹法による銀精製の開始
帰蝶は粗銅から銀を抽出する灰吹法の導入に踏み切った。空間収納に保管していた鉱石を利用し、火魔法と風魔法を併用して粗銅から銀を精製し、資金源の拡充を図った。これにより、粗銅から得られる副産物である精銅も有効活用する方針を定めた。
砲金製造と軍事技術への応用
帰蝶は粗銅から得た精銅と錫を用いて砲金を製造し、将来的な青銅砲の生産も視野に入れた。これにより、軍事技術の向上と防衛力強化を目指す意志を明らかにした。
城下での人々との交流
帰蝶は城下町で顔見知りを増やしながら、治癒術による施術や薬の提供を続けていた。津やとその夫・平助との気軽なやり取りを交え、庶民としての振る舞いを心がけていたが、銀髪赤目という特徴から庶民になりきれない現実も感じていた。
養生院の繁盛と千代の成長
帰蝶が開設した養生院は順調に発展していた。町中から治癒術の適性者をスカウトし、育成を進めた結果、診察数も増え、貯金も順調に増えていった。元女中の千代は短期間で驚異的な成長を遂げ、独り立ちできるほどの腕前に達していた。
戦傷者たちの栄養改善計画
帰蝶は戦傷者たちの栄養改善のため、肉食導入を検討した。現地の食事情を調査した結果、山で狩猟した肉を食べる文化が存在することを知り、山へ狩猟に出ることを決意した。
狩猟中の出会いと信長との邂逅
山中で狩猟を行っていた帰蝶は、ツキノワグマに襲われそうになっていた少年たちと遭遇した。雷魔法と植物魔法を駆使してクマを制圧し、少年たちを救助した。その中にいた一人、リーダー格の少年は異彩を放っていた。
少年たちとの交流と正体の発覚
救助した少年たちの中でリーダー格だった少年は、帰蝶を「山姥」と呼び、失言を咎められた後に彼女の美貌を称賛した。帰蝶は彼の奇抜な服装や態度から違和感を覚え、鑑定眼を使ったところ、その少年が織田信長であると判明した。
信長との食事と親交の深まり
帰蝶は狩ったクマを使い、現地で鍋料理を振る舞った。信長はその味に感激し、温かい手料理に強く惹かれた。信長は帰蝶への親近感を深め、素直な感情を表に出すようになった。二人の距離は急速に縮まり、親しみを込めた呼び名で呼び合うようになった。
信長と別れと使い魔による連絡手段
信長は帰蝶と別れ、尾張へ帰還することとなった。帰蝶は使い魔の小鳥を信長に託し、今後の連絡手段とした。信長もまた帰蝶への想いを強め、交流を続ける意志を示した。
森可成の観察と帰蝶への期待
信長の腹心である森可成は、信長が帰蝶に対して素直な姿を見せる様子を目の当たりにした。可成は、帰蝶こそが信長をより理解されやすい人物に導く存在だと確信し、彼女に大きな期待を寄せた。
織田家と帰蝶の未来への伏線
帰蝶と信長の交流は、信長の人格形成だけでなく、将来的な織田家の安定にも関わる重要なものとなる可能性が示唆された。二人の婚約が成立するのは、もう少し先のことであるが、すでに運命の糸は結ばれ始めていた。
6 未来の夫婦は交流する
信長の初めての手紙と可成の助言
信長は帰蝶への手紙を書くことに悩み、森可成に相談した。可成は普段の日常を書くことを提案し、信長はそれを受け入れて筆を走らせた。信長が他人に素直に助言を求めたことに、可成は成長を感じていた。
帰蝶とプリニウスによる手紙の受領
帰蝶は信長から届いた手紙を受け取り、プリニウスと軽妙なやり取りを交わしながら読んだ。信長の初陣や祭りでの女装、相撲大会の話題に触れ、帰蝶は彼に対する親しみをさらに深めた。
帰蝶の近況と日常の記述
帰蝶は信長への返事として、自身の日常──治癒魔法の指導、戦傷者の雇用、火縄銃の大量購入、光秀の家臣化、鉱石受け取りのための堺訪問などを記した。さらに尾張に立ち寄る可能性についても言及した。
道三とのクマ肉騒動と栄養改善提案
帰蝶はクマ肉を焼き、道三にふるまった。しかし食べ過ぎた道三は腹を壊し、顔色を悪くして退席した。その後、帰蝶は食生活の改善が民や兵の健康に重要であることを提案し、道三もこれに同意した。
害獣対策と畜産導入の提案
帰蝶は畜産による食料確保を提案し、牛や鶏の飼育の有用性を説いた。しかし、当時の信仰や文化的な壁に直面し、特に鶏の扱いについては慎重な姿勢を見せた。最終的には老牛を食用とする考えを受け入れた。
堺からの使者とポーション量産交渉
小西隆佐、今井宗久、そして小西弥左衛門が帰蝶を訪ねた。弥左衛門は帰蝶のポーション「阿伽陀」によって救われたことに感謝し、阿伽陀の取り扱いを願い出た。帰蝶は通常医療の衰退を懸念しつつも、高値での取引を条件に了承した。
火縄銃大量購入と優秀な鍛冶師との出会い
帰蝶は今井宗久から注文した火縄銃十挺を受け取ったが、一本だけ高品質な葛巻き銃が含まれていた。それを作った鍛冶師の技量に驚いた帰蝶は、彼を美濃に招いて火縄銃の量産を依頼する計画を立てた。
火縄銃の量産と買い占め契約の成立
帰蝶は火縄銃を年間二百挺のペースで量産し、それをすべて買い取る契約を宗久と結んだ。これにより将来的な三千挺の火縄銃確保を目指す体制が整えられた。帰蝶は光秀の呆れた視線を受けつつも、野心的な軍事拡充計画を推し進めたのである。
堺への出発と父道三・光秀の反応
帰蝶は銅鉱石を受け取るため堺へ向かう意志を父・道三と光秀に告げた。道三は鉄砲量産に関する話と誤認しつつも、帰蝶の覚悟を認め、鍛冶場の整備を約束した。一方、光秀には「帰蝶の失敗を隠蔽する役目」を課し、心労を押しつけた。
堺行きの準備と常識破壊
帰蝶は生駒家宗たち商人と共に堺へ向かう準備を進めた。通常、守護代の娘が商人と同行するなどあり得ないことであり、周囲は驚愕したが、帰蝶は常識を無視して行動した。移動手段には川舟を使い、最初は墨俣まで陸路で向かう計画を立てた。
移動手段の確保と馬車の使用
徒歩も馬も駕籠も不便だったため、帰蝶は空間収納から貴族用の四輪馬車を取り出し、馬車移動に切り替えた。馬車には板バネを仕込んでおり、揺れが少ない快適な乗り心地を実現していた。商人たちは馬車の構造に感嘆し、興味を示した。
道中での小西隆佐との対話
堺へ向かう道中、御者を務めた帰蝶は、小西隆佐から「御仏は戦乱の世をどう考えているか」という問いを受けた。帰蝶は、神は人間とは異なる存在であり、自力救済が必要であると説いた。この現実的な回答に、隆佐は深い衝撃を受けた。
仏僧・伴天連への失望と自力救済の決意
帰蝶は、当時の仏僧や西洋の宗教団体にも腐敗が蔓延している現状を説明した。仏教もキリスト教も理想とはかけ離れていることを知った隆佐は、宗教に頼らず、自ら行動することの重要性を痛感し、帰蝶を信じる決意を固めた。
帰蝶の影響と隆佐の覚醒
隆佐は帰蝶が障害者を雇用し、自立を支援する姿を目の当たりにして、深く感動した。仏僧も伴天連も信じられぬならば、帰蝶だけを信じようと心に誓い、戦乱の世に差す一筋の光として彼女を仰ぐようになった。
7 堺へ
堺への出発と父道三・光秀の反応
帰蝶は銅鉱石を受け取るため堺へ向かう意志を父・道三と光秀に告げた。道三は鉄砲量産に関する話と誤認しつつも、帰蝶の覚悟を認め、鍛冶場の整備を約束した。一方、光秀には「帰蝶の失敗を隠蔽する役目」を課し、心労を押しつけた。
堺行きの準備と常識破壊
帰蝶は生駒家宗たち商人と共に堺へ向かう準備を進めた。通常、守護代の娘が商人と同行するなどあり得ないことであり、周囲は驚愕したが、帰蝶は常識を無視して行動した。移動手段には川舟を使い、最初は墨俣まで陸路で向かう計画を立てた。
移動手段の確保と馬車の使用
徒歩も馬も駕籠も不便だったため、帰蝶は空間収納から貴族用の四輪馬車を取り出し、馬車移動に切り替えた。馬車には板バネを仕込んでおり、揺れが少ない快適な乗り心地を実現していた。商人たちは馬車の構造に感嘆し、興味を示した。
道中での小西隆佐との対話
堺へ向かう道中、御者を務めた帰蝶は、小西隆佐から「御仏は戦乱の世をどう考えているか」という問いを受けた。帰蝶は、神は人間とは異なる存在であり、自力救済が必要であると説いた。この現実的な回答に、隆佐は深い衝撃を受けた。
仏僧・伴天連への失望と自力救済の決意
帰蝶は、当時の仏僧や西洋の宗教団体にも腐敗が蔓延している現状を説明した。仏教もキリスト教も理想とはかけ離れていることを知った隆佐は、宗教に頼らず、自ら行動することの重要性を痛感し、帰蝶を信じる決意を固めた。
帰蝶の影響と隆佐の覚醒
隆佐は帰蝶が障害者を雇用し、自立を支援する姿を目の当たりにして、深く感動した。仏僧も伴天連も信じられぬならば、帰蝶だけを信じようと心に誓い、戦乱の世に差す一筋の光として彼女を仰ぐようになった。
堺旅行の準備と信長との会話
帰蝶は銅鉱石、錫、鉛、硝石の確保のため堺への旅を計画し、信長(三ちゃん)と旅の目的について語り合った。火縄銃の重要性を理解していた信長との会話は、未来知識を持つ帰蝶にとって驚きの連続であった。
信長と光秀の牽制と逆ハーレム状態
信長は光秀に対して帰蝶との親しさに嫉妬を示し、光秀もまた信長に対抗するような態度を取った。帰蝶はこれを逆ハーレムの兆しと受け取りつつ、内心で戸惑いを覚えた。
帰蝶と信長の結婚の噂
帰蝶と信長の婚姻が自然な流れであるという噂が三ちゃんたちの間でささやかれた。帰蝶はそれに期待を膨らませたが、プリニウスからは冷静な指摘を受けた。
堺へ向かう旅路の仲間たち
旅には森可成、前田利家(犬千代)、池田恒興(勝三郎)、毛利新介(新介)、津田盛月(左馬允)ら信長の側近たちも同行した。彼らの来歴についてはプリニウスから解説を受けた。
若者たちの育成計画と兵農分離への想い
信長は農家の次男三男を集め、兵士として育成しようと考えていた。帰蝶もまた、美濃に常備軍を持つ夢を抱き、軍事力の確保を見据えた計画に思いを馳せた。
川下りと犬千代との絆形成
舟で港へ向かう途中、犬千代は帰蝶に感服し、「姐御」と呼び慕いたいと申し出た。帰蝶は悪ノリしながらも彼を弟分として認め、犬千代との絆を深めた。
港での出発と安宅船への憧れ
堺行きの大型船に乗り換える際、帰蝶は大型軍船である安宅船への憧れを抱いた。見つけられなかったことに落胆しつつも、将来的に自ら建造する夢を抱いた。
超加速航海と三ちゃんの奮闘
堺への到着を急ぐため、帰蝶は魔法で暴風を起こし、船を加速させた。三ちゃんは舳先で風を受けながら何度も転がりつつも立ち上がる姿を見せ、帰蝶たちを感動させた。
海賊との遭遇と港への停泊
途中、通行料を徴収する海賊と遭遇したが、今井宗久との縁で無事に港へ停泊することができた。海賊たちは意外にも礼儀正しく、帰蝶たちを手厚くもてなした。
回復魔法による船酔い治療と演出
帰蝶は船酔いで苦しむ仲間たちを回復魔法「エリアヒール」で一気に治療した。さらに、演出として魔法陣と風による演出を加え、神々しい存在感を周囲に印象付けた。
謎の少年との出会い
港で美少年と出会った帰蝶は、彼に興味を抱き後を追うことにした。その一方で、船上では三ちゃんや光秀たちが海賊と相撲を取るという奇妙な光景が展開されていた。
8 火起請
少年との出会いと集落訪問
帰蝶は少年に導かれ、農村の集落に辿り着いた。そこでは、少年の父が重病に倒れており、母と祖父が看病を続けていた。帰蝶は病状を診察し、百日咳と判断した。
病人への治療と集落の驚き
帰蝶は持参していた「阿伽陀」のポーションを病人に無理やり飲ませ、短時間で症状を劇的に改善させた。これにより、集落の人々は帰蝶を薬師如来の化身として崇め始めた。
少年・市助との絆の深化
市助は帰蝶に「ねぇね」と呼び親しみを見せた。帰蝶はこれに大きな感動を覚え、彼を弟のように可愛がりたいと考えた。また、市助がプリニウスの存在を認識できたことで、特別な資質を持つことが示唆された。
信長(=三ちゃん)との再会と説教
信長は市助を連れ帰ろうとする帰蝶を咎めたが、内心では市助を弟分として可愛がり始めた。帰蝶は市助の家を浄化し、再発防止のために追加のポーションを渡した。
逆ハーレム疑惑と信長の不機嫌
信長は帰蝶の周囲に集まる男たちに嫉妬心を覗かせたが、市助から「ねぇねの夫?」と問われ、素直に喜んでいた。帰蝶はこの反応に密かに満足し、信長攻略の順調さを確信した。
ワインの振る舞いと宴会の開催
帰蝶は戦での功労を称え、光秀にワインを贈呈した。珍しい酒に皆が興味を示し、大宴会へと発展した。信長もワインを気に入り、定期的に入手することを希望した。
ワイン栽培計画と甲斐国への興味
帰蝶はワイン原料確保のため甲斐国でのブドウ栽培を提案し、冗談交じりに武田信玄討伐を三ちゃんと語り合った。プリニウスからは現実的な助言がなされた。
境界争いと火起請騒動
宴の最中、隣郷との境界争いが発生し、坊主が火起請を提案した。市助が火起請に名乗りを上げたが、信長が代わりに引き受け、帰蝶の魔法支援を受けて無傷で勝利した。
火起請の裏切りと中郷の陰謀発覚
敗北した中郷は、火起請に参加した青年を殺そうとしたが、帰蝶が雷魔法で阻止した。さらに、青年が中郷によって人質に取られていたことが暴かれた。
青年救出と新たな家臣の誓い
青年・鳥居半四郎は、助けられた恩義から帰蝶に忠誠を誓い、仕えることを申し出た。帰蝶はこれを受け入れるかどうかを迷いながら、三ちゃんや仲間たちとともに次の行動を見据えた。
9 天下に武を布く
半四郎の登用と常備軍構想
帰蝶は半四郎を戦力として見込み、武田信玄来襲時には狙撃手として運用する意志を固めた。さらに、タダ飯を与える趣味はないとし、常備兵団の設立を検討するに至った。
十ヶ郷での祭りと帰蝶への信仰拡大
帰蝶たちが十ヶ郷へ戻ると、市助の父の快気祝いと境界争いの勝利、加えて薬師如来に扮した帰蝶を称える祭りが開かれていた。帰蝶は自らを祭りのダシに使われたことに半ば呆れながらも、住民たちの盛り上がりを受け止めた。
射撃大会の開催と光秀・市助の参戦
十ヶ郷では賭火縄(射撃大会)が始まり、光秀や市助が参加することとなった。光秀は正しい射撃姿勢を学び、見事に的の中心を射抜いて観衆を沸かせた。
市助の神業的射撃と帰蝶の魔法披露
幼い市助も独自の腰だめ撃ちで的を射抜き、技術の高さを見せた。続いて帰蝶は、火縄銃ではなく指鉄砲から攻撃魔法を発動し、的を完全消滅させてしまい、周囲を驚愕させた。
射撃大会後の表彰と賞品授与
射撃大会終了後、帰蝶は光秀に清酒の樽、市助には装飾された火縄銃を贈呈した。市助は純粋な喜びを全身で表し、帰蝶に満面の笑顔を向けた。
ワインの苗の即席生成と三ちゃんとの交流
帰蝶は空間収納のワイン樽を使って葡萄を逆生成し、即座に苗木を育成するという離れ業を披露した。これにより、三ちゃんと甘い交流のひとときを過ごした。
祭りの盛況と戦国時代への洞察
祭りは中郷や他の集落も巻き込んで盛大に続いた。三ちゃんは争いが絶えない理由に疑問を抱き、帰蝶は争いの起因と惣無事令の概念を語った。理想を語るだけではなく、最終的には力を持って秩序を確立する必要性も示唆した。
三ちゃんの天下布武宣言
帰蝶の助言に触発された三ちゃんは、群衆を前に「天下に武を布く」と高らかに宣言した。この発言は周囲から喝采を受け、信長としての道を歩み出す大きな一歩となった。
帰蝶と三ちゃんの絆の深化
三ちゃんは、帰蝶と共にいると飽きることがないとつぶやき、帰蝶も同様に彼との縁に感謝しつつ、新たな未来へと歩み出したのである。
エピローグ 見届けんとする者
平手政秀の絶望と信長への期待
平手政秀は、織田信長の傅役を任じられた当初、自らと家の未来に希望を抱いていた。しかし、信長は勉学を嫌い、礼節を学ばず、町を奇抜な格好で練り歩くなど「うつけ」と評される振る舞いを続けたため、平手は絶望を深めた。信長の弟・信勝への家督移譲を危惧し、信長を更生させようと努めたが、状況は悪化する一方であった。
信長の急変と沢彦宗恩への弟子入り
絶望の中、信長は突如として臨済宗の僧侶・沢彦宗恩を自ら呼び、今までの無礼を詫び、改めて教えを請うことを申し出た。信長の僧侶嫌いを知っていた平手も沢彦も、その急変に驚愕した。
帰蝶との出会いによる信長の成長
信長の変化は、帰蝶との出会いによるものであったと平手は後に理解した。信長は器を大きく変え、単なるうつけではなく、平手の想像を超える存在となっていた。
天下布武の宣言と平手の覚醒
信長は民衆を前にして「天下に武を布く」と宣言した。平手はその言葉に感動し、武の七徳を思い起こした。信長の目指す「天下布武」とは、単なる武力支配ではなく、戦を鎮め、民を安心させ、国を豊かにする理想であると解釈した。
真なる忠誠の誓い
平手は、もはや命じられた傅役ではなく、一個の武士として信長に仕えることを決意し、その場で正座して深く頭を下げた。この瞬間、彼は真に仕えるべき主君を得たのである。
信長の本心と平手の誤解
もっとも、信長の「天下布武」の宣言は、単に「言うことを聞かぬ者は武力でねじ伏せろ」という程度のものであり、深い思想に基づくものではなかった。しかし、平手がその真意に気付くことは生涯なく、すべては結果オーライで収束した。全ての因果は、帰蝶の影響に起因していたのである。
番外編 1 信長と、沢彦
信長の改心と沢彦宗恩の驚き
臨済宗の僧であり信長の教育係であった沢彦宗恩は、うつけとして知られていた信長が突然勉学に励むため自ら教えを請いに来たことに驚愕した。信長はこれまでの無礼を詫び、沢彦の下で一から学び直す覚悟を示した。武家の嫡男が僧に頭を下げるという異例の事態に、沢彦は信長の改心が本物であることを確信した。
信長の資質と立派な当主への道
信長は本来頭脳明晰であり、民と共に過ごせる情も備えていたため、教養を身につければ立派な当主になれると沢彦は考えた。信長の学びは遅れを取り戻す必要があったが、それでも将来性には大きな期待を抱かせた。
信長の問いと民への共感
ある日、信長は沢彦に「戦乱の世はいつ終わるのか」と問いかけた。信長は町を徘徊し、飢えで命を絶つ家族や盗賊に襲われる商人たちの惨状を自らの目で見ていたため、民の苦しみを真に理解していた。他の跡継ぎたちとは異なり、信長は現実を直視していたのである。
沢彦の教えと信長の覚悟
沢彦は信長に、戦国の世を終わらせたいならまず「力」を得るべきだと教えた。武力、知識、信じる者を見抜く目、悪を断つ勇気、これらを備えなければ理想を語ることすら叶わないと諭した。信長はその言葉を受け止め、力の必要性を自らの中に深く刻み込んだ。
信長の変化と沢彦の希望
信長は変わったのではなく、もともと抱いていた夢を隠すことなく表に出すようになったと沢彦は理解した。信長には、民を思い、民のために行動するという、戦国の世ではあり得ないはずの夢を実現している人物との出会いがあったと察した。
未来への希望と帰蝶への感謝
沢彦は、信長に影響を与えたその御方──すなわち帰蝶に、いつか直接会ってみたいとささやかな夢を抱いた。信長を変えた奇跡を目の当たりにし、彼は新たな時代への希望を確信したのである。
番外編 2 加納口の戦い
加納口の戦いの経緯と道三の説明
帰蝶は父・斎藤道三に「加納口の戦い」の詳細を尋ねた。道三は、天文16年(1547年)、自身と織田信秀との間に起こった戦いについて語り始めた。信秀は土岐頼芸支援を大義名分に美濃へ侵攻し、斯波義統も越前奪還を夢見て参戦したため、尾張勢は総勢二万から三万に膨れ上がっていた。一方、道三が用意できた兵力はわずか四千にすぎなかった。
尾張勢の進軍と道三の策謀
道三は稲葉山城に籠り、尾張勢の進軍を静観した。長井道利から敵軍の動向を報告されるも、道三は動じなかった。彼は、織田伊勢守や織田因幡守といった織田家の諸将が信秀への不満を抱いていることに着目し、事前に離反工作を進めていた。
尾張軍の瓦解と美濃勢の反撃
道三の思惑通り、織田伊勢守らは信秀に従わず、夕刻には尾張軍からの離脱が始まった。信秀は怒りを爆発させたが、事態を収拾できなかった。その隙を突き、道三は美濃勢に総攻撃を命じ、尾張勢を混乱に陥れた。
木曽川での悲劇と尾張軍の壊滅
退却を試みた尾張軍は、増水した木曽川を渡ろうとしたが、多くが流され死亡した。織田因幡守は川に飲まれ、信秀の弟・織田信康もまた殿を務めるため戦死を選んだ。信康は死の間際に、信長こそが弾正忠家を継ぐべき大器であると確信していた。
信秀の敗走と怒り
信秀は辛くも生還したが、織田家中の大損害と弟の死に憤りを覚えながら退却した。道三は、信秀に美濃を譲ってもよいとかつて思っていたほど彼の才を認めていたが、病に伏した信秀の姿に、世の無常を感じた。
戦後処理と和睦への道
この大敗により、織田信秀は和睦を余儀なくされ、道三の娘を信秀の嫡男・信長に嫁がせる交渉が始まった。帰蝶は、父・道三の意外な真面目な語り口に驚きつつ、その武略の見事さに感嘆したのである。
特別書き下ろし 信長公記を作ろう
信長公記作成への意欲とプリニウスとの掛け合い
帰蝶は、自身と信長(三ちゃん)の関係を記録するために「信長公記」作成に着手しようと考えた。プリニウスは、帰蝶が自称嫁であり、未成年に言い寄る犯罪者予備軍ではないかと冷静に突っ込んだ。帰蝶は涙ながらに否定し、自らの清廉さを主張した。
太田牛一の確保と記録内容の懸念
帰蝶は、将来的に太田牛一が信長に仕官することを見越して、彼を確保しておこうと画策した。しかしプリニウスは、帰蝶の存在によって「ポンコツ魔女の戦国破壊伝」になりかねないと指摘し、信長がモブキャラになる可能性を危惧した。
自己認識とプリニウスによる現実指摘
帰蝶は自分を清楚な存在と主張したが、プリニウスは冷静に彼女のキャラの濃さを指摘し、上杉謙信が常識人に見えるレベルであると辛辣に評した。帰蝶は抗議しつつも反論しきれず、現実を受け入れるしかなかった。
影を薄める策と歴史改変の危惧
帰蝶は、自らの存在感を薄めて信長公記への影響を抑えようと提案した。だがプリニウスは、帰蝶の行動が斎藤道三を聖人に仕立て上げ、美濃の歴史そのものを歪める危険性を指摘した。帰蝶は半ば開き直り、歴史が脆いから悪いのだと主張した。
表紙絵の発注と現代技術の導入
帰蝶は現代に発注していたイラストを受け取り、満足げにプリニウスに見せた。久賀フーナによる美麗な銀髪美少女の表紙絵に、プリニウスはモデルが帰蝶本人であることを疑った。帰蝶は自画自賛したが、プリニウスは外見と中身のギャップを冷静に指摘した。
イメージ戦略と実態との乖離
帰蝶は魔法美少女のイメージを演出するために杖を持たせたと説明したが、プリニウスは実態とかけ離れたイメージ戦略に苦言を呈した。帰蝶は抗議を続けたものの、実際にはイメージと現実の大きな乖離が否めなかったのである。
その他フィクション

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