小説「魔女と傭兵 6 下 魔女vs魔女」感想・ネタバ

小説「魔女と傭兵 6 下 魔女vs魔女」感想・ネタバ

物語の概要

本作はアクションファンタジーのライトノベルである。無法都市ストリゴへ飛ばされた傭兵・ジグが、新たな魔女・シャナイアと出会い、脱出を図るために共闘を始める。ハリアンに残された別の魔女・シアーシャもジグを追って危険な街に踏み入り、三者の思惑と絆が交錯する緊張感の高い物語が展開される。

主要キャラクター

  • ジグ:本作の主人公であり一流の傭兵、無法都市ストリゴからの脱出を目指し魔女と共闘する。
  • シャナイア:ストリゴで出会う謎多き新魔女。冷静沈着な性格で、ジグとの利害に基づく共闘を始める。
  • シアーシャ:ジグにとって以前からのパートナー的存在の魔女。ジグを追って無法都市に乗り込み、その成長と覚悟を見せる重要人物。

物語の特徴

  • 極限の無法都市での心理戦とバディドラマ:秩序のない街ストリゴを舞台に、人間の本性と信頼関係が揺れ動くリアルな心理描写が光る。
  • 新旧魔女との三角関係:初対面のシャナイアとの緊張した共闘と、信頼で繋がるシアーシャとの再会が絡む心の揺らぎが深いドラマを生む。
  • 戦術と魔術の融合による戦闘描写:剣・魔術・頭脳がぶつかり合う描写が濃密であり、臨場感が高い戦闘シーンが読者を引き込む。
  • 電子版特典イラストと連動要素:上下巻連結イラストを含む電子版の描き下ろしなど、ファン垂涎のビジュアル要素が充実。

書籍情報

魔女と傭兵 6 下
著者:超法規的かえる 氏
イラスト: 叶世べんち 氏
出版社:マイクロマガジン社GC NOVELS
発売日:2025年07月22日
ISBN:9784867167939

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あらすじ・内容

双刃、奔る。
歪な二人が交わるとき、物語は始まる

ジグが飛ばされた、無法の街・ストリゴ。そこで出会ったのは新たな魔女・シャナイアだった。
ハリアンに戻るためにストリゴからの脱出を図るジグに、シャナイアは協力を申し出る。
シアーシャ以外で初めて会った魔女の、思惑の読めない行動に戸惑いながらも、ジグは彼女と行動を共にすることに。
時を同じくして、ハリアンに残されたシアーシャも、ジグを追ってストリゴへ足を踏み入れる。
人の悪意が渦巻く街で、二人の魔女は邂逅を果たす――

魔女と傭兵 6 下

感想

読み終えて、まず感じたのは、物語が新たな局面を迎えたという高揚感であった。
無法の街ストリゴに飛ばされたジグが、新たな魔女シャナイアと出会うという展開は、まさに予想外だった。
シアーシャとはまた異なる魅力を持つシャナイアの登場によって、物語はさらに複雑さを増していく。

シャナイアは、シアーシャよりも年長であるらしく、魔力こそ劣るものの、その技量は遥かに上回るという。そんな彼女がジグに目を付けたことで、シアーシャとの間に緊張感が走る。物騒な台詞が飛び交う二人の魔女の対立に、巻き込まれて生き埋めになるジグには、思わず同情してしまった。どうか強く生きてほしいと、心から願うばかりだ。

ジグはシャナイアから、魔女に執着され、思考を誘導されているらしい。しかし、その真実は一体何なのだろうか。続きが気になって仕方がない。転移魔法によってストリゴに飛ばされたジグが、ハリアンに戻るために脱出を図ろうとする。そんな彼に、シャナイアが協力を申し出るという展開も、興味深い。

もちろん、シアーシャが大人しくしているはずがない。ジグとシアーシャは、お互いがお互いに影響を与え合っているのが、ひしひしと伝わってくる。しかし、シャナイアから伝えられた魔女の秘密には、本当に驚かされた。その秘密を知ったジグの今後が、ますます楽しみになった。

そして、巻末に登場したジグの師匠が、想像を遥かに超える強さだったことにも触れておきたい。魔女相手に「この程度」と言い放つ彼の姿は、まさに圧巻。一体どれほどの力を秘めているのか、想像もつかない。

シアーシャ以外で初めて出会った魔女、シャナイア。彼女の思惑の読めない行動に戸惑いながらも、ジグは行動を共にする。時を同じくして、シアーシャもジグを追い、ストリゴへと足を踏み入れる。シアーシャがジグへの執着を自覚していく一方、ジグを見初めたシャナイアから魔女の業が明かされていく。必然的な二人の激突は、凄まじいものだった。

これから、ジグとシアーシャ、そしてシャナイアの関係がどう変わっていくのか。目が離せない展開が待ち受けているに違いない。次巻が待ち遠しい気持ちでいっぱいだ。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

一章 金の月は紫紺の噂に包まれて

想定外の事態と情報交換

ジグは転移魔術によってストリゴと呼ばれる街へ飛ばされた。そこで出会った魔術師シャナイアと情報交換を行い、転移の仕組みや発動条件について語られた。転移には大量の血を媒介とする方法があり、非常に危険な状況下でのみ使用可能であった。ジグが魔術に詳しくないことをシャナイアは察していたが、彼は嘘を交えながら己の立場を保っていた。

街の治安悪化とジグの足止め

シャナイアによれば、ストリゴは一度は大きな組織によって安定していたが、その組織の失敗により再び混乱状態に戻っていた。街からの脱出は困難であり、身元不明な傭兵は特に疑われやすい状況であった。ジグは護衛任務のため街へ戻る意志を見せるが、現在の状況では出ることすら難しいことを知り、苦慮することとなった。

シアーシャの追跡と苛烈な尋問

一方、ジグの行方を追うシアーシャは、転移魔術に関与したとみられる魔術師を土魔術により捕縛し尋問を開始する。シアーシャは激しい拷問を加えて情報を引き出し、ストリゴという地名を聞き出す。理性的な判断を超えたその拷問は、周囲の人間に恐怖を与え、彼女の異常性が露わとなった。

シャナイアの正体と提案

再び場面がジグに戻ると、彼はシャナイアからハリアンへの帰還を手助けするという申し出を受ける。だがその提案の裏に何らかの意図を感じたジグは、彼女が魔女であると見抜いていた。魔術が通じないジグに対してシャナイアは動揺しつつも、協力の対価を曖昧にしたまま彼を宿へ案内する。

魔女への関心と選択の変化

ジグは普段ならば他人の誘いに乗らないが、魔女という存在に対する情報収集と関心からシャナイアの提案を受け入れた。かつての自分であれば取らなかった選択を行ったことは、彼の変化を象徴していた。彼の興味は単なる戦闘力や仕事ではなく、魔女という存在そのものに向けられていた。

ストリゴという街の実態

シャナイアの案内によってジグはスラムの路地を抜け、ストリゴの中心部へと足を踏み入れた。シャナイアはこの街を最低にして自由な街と表現し、ジグはその言葉の真意をこれから知っていくこととなる。

ストリゴの混沌とジグの対応

ジグはシャナイアの案内で、浮浪者と富裕層が混在する混沌の街ストリゴに足を踏み入れた。街には治安の欠片もなく、子どもでも容赦なく暴力を振るう住人が跋扈していた。ジグは絡んできたゴロツキに一瞥を与えて追い払い、力を行使せずにその場を収めた。やがて二人はボロ宿に到着し、シャナイアの提案でジグが金を支払い部屋を借りる。老婆の警告から、ジグはシャナイアが只者でないことを再認識した。

同室での夜と依頼の内容

ジグは風呂道具を受け取り部屋に入るが、そこでシャナイアの裸を偶然目にする。彼女の肉体は未熟ながらも魅惑的であり、強い支配欲を刺激する存在であった。しかしジグは動揺することなく、互いに裸を見たことに触れても軽く受け流した。彼女は自分の魅力が効かないことに内心不満を抱きつつ、ジグに人探しの依頼を持ちかけた。期限は四日間で、その間に街を出る準備を整えるという条件付きの提案だった。

奇妙な協力関係の始まり

ジグは条件の曖昧さに不満を覚えつつも、準備期間と重なるという点から提案を受諾した。夜が明け、シャナイアはジグの服を乾かしていた。彼女の行動に対し、ジグは感謝を示しながらも柔軟体操を始め、過去の苦い思い出と共に鍛錬の大切さを語った。朝食を求めて屋台街へ向かった二人は、道中でこの街における食の歴史とルールをシャナイアから教わった。

屋台での朝食と襲撃

二人は比較的設備の整った屋台で肉と野菜のパンを購入し食事を始める。街の貧しさを象徴するように、食事の質は悪く、食べている姿を他の者に羨望の眼差しで見られる中、ジグは使用しない魔具を売るための情報を求めた。シャナイアの助言を受けて話が進む中、ジグの食事に目をつけたゴロツキ六人が絡んでくる。丸腰のジグを侮った彼らであったが、一撃で仲間が倒されたことで逃げ出していった。

魔具売却と予定変更

ジグは魔具を売り捌くためシャナイアに店への案内を求める。その際、拳に巻いた布がシャナイアのさらしであったと知り、彼女に新しい服を買うと宣言した。シャナイアは貧しい暮らしをしているにもかかわらず、施しには慣れておらず困惑していた。ジグは彼女の背中越しに、その行動の理由を計りかねながらも、今は深く詮索せず先を急ぐことにした。彼の歩みに、シャナイアも静かに従った。

修道服と魔女の外見

ジグはシャナイアのために古着屋で一式を買い与えた。選んだのは修道服で、意外にも彼女によく似合っていた。清楚さと妖艶さの入り混じるその姿にジグも内心感嘆するが、彼女が冗談めかして誘惑してくると、即座に逆に脅して黙らせた。だがこのやりとりは、背後にいる尾行者を欺くための演技であった。

尾行者の正体と対処

尾行していたのは狐顔の亜人で、彼はファミリアという亜人主体のマフィアに属していた。ジグたちを探っていた理由は、ジグがカララクの構成員を倒したことで、今後の勢力争いにおいて無視できない存在となったためであった。狐亜人はジグとシャナイアの動きに気を取られた隙を突かれ、ジグによって無力化される。

対話と脅迫による情報引き出し

捕らえられた狐亜人、名はレナード。彼はジグの脅迫と交渉の中で、ファミリアの一員として調査に来ていたことを認めた。だがジグは曖昧な情報では満足せず、彼を徹底的に追い詰めてゆく。ジグの無機質で冷徹な言動と、即座に命を奪うような緊迫感はレナードに強烈な恐怖を与え、彼は命乞いと引き換えにボスとの面会を申し出た。

生存の代償としての「証明」

だがジグはそれだけでは信用せず、レナードに「逃げられない証明」として自ら脚を切り落とすよう求めた。恐怖と生存本能の間で揺れたレナードは、逃亡も報復もできないと悟り、己の信頼を得るため片脚を自ら断ち切った。その過程で、彼は生き延びるための究極の選択を強いられた。

信頼と恐怖による掌握

レナードの行動により、ジグは彼を信用に値する存在と判断した。彼を通じてファミリアの内部情報へと踏み込む可能性を得たことで、ジグの行動はさらに拡がりを見せることとなる。シャナイアはその一部始終を冷静に見守りながら、ジグの強さと異質さを改めて認識していた。

二章 血よりも濃い家族

ファミリア本拠地への訪問

ジグは案内人レナードの導きで、マフィア「ファミリア」の本拠地を訪れた。レナードは逃走不能の証として脚を布で拘束されていたが、それが誤解から自ら脚を切断しかけた結果だと知れ渡る。ジグは無関心を装いつつも、傭兵としての矜持から拘束の理由と恩義を言葉で補足した。

交渉の前の対話と主張

屋敷に通されたジグは、ファミリアの事情やこの街の勢力図、そして出立の可能性について思考を巡らせた。シャナイアはジグが去ることに寂しさを見せるが、ジグはあくまで彼女との契約を優先する姿勢を明示する。

ファミリアのボス・クロコスとの接触

やがて現れたファミリアの首領クロコスは、ジグの口から出た種族名「鱗べ」に強い反応を示し、一触即発の空気が漂う。対話の延長で、クロコスは力での証明を求め、配下の狼型亜人バルジとの対決を命じる。傍らではシャナイアが賭けを始め、レナードは怯えながら戦いの行方を見守る。

ジグとバルジの激突

ジグとバルジは互いに無手での肉弾戦に臨み、鍛え上げられた肉体と技術のぶつかり合いを展開する。亜人特有の膂力と爪牙に対して、ジグは体幹・柔軟性・打撃技術で応戦した。格闘の応酬は熾烈を極め、ジグは頭突き・蹴り・肘打ちと連携技を駆使して劣勢を覆す。

決着とジグの勝利

一進一退の攻防の末、バルジの跳び膝蹴りを耐え抜いたジグは、反撃の投げ技で彼を床に叩きつけ、完全に無力化する。その光景を目の当たりにしたファミリアの面々は沈黙し、シャナイアは勝利に笑みを浮かべた。

シアーシャの覚醒とカークの懸念

一方ハリアンでは、シアーシャがジグの消息を知り、ギルド副頭取カークの元を訪れる。彼女はジグを追ってストリゴへ向かう決意を語るが、カークの理詰めの説得とジグの信頼を引き合いに出されたことで一時的に理性を取り戻す。カークは彼女の移動手配を承諾し、まずは事情の説明を求めるのだった。

凶戦の終結と評価の変化

壮絶な戦いの末にジグが狼型亜人バルジを圧倒し、部屋は破壊と静寂に包まれた。クロコスはジグを「客人」として正式に認め、ファミリア構成員たちは敵意を引っ込める。シャナイアは賭け金を巧みに配分して金貨を得、レナードは命乞いとして毛皮の代償に金貨を差し出す。クロコスはジグを雇おうとするが、ジグは先約のシャナイアを理由に断る。

カララクの情報と冒険者の介入

ジグはハリアンでの魔獣事件からカララクの関与を追ってストリゴへ来た経緯を語り、クロコスから情報を引き出す。カララクは冒険者を配下に持ち、勢力を拡大していた。冒険者がマフィアに協力するという異常な状況に、ジグは警戒を強める。

武器の調達と装備の選定

ファミリアの地下倉庫で、ジグはレナードの案内のもと武器選定を行う。値打ちのある三級品を避け、あえて安価な中古の黒曜鋼製の大剣を選択。シャナイアの助言も受け、防具や装備品も調達し、戦闘準備を整える。

澄人教の修道服の誤解と波紋

シャナイアの修道服が「澄人教」すなわち人間至上主義の過激宗教のものであると発覚し、ジグは頭を抱える。クロコスはこれに驚き、最近噂となっていた澄人教支部襲撃と関係がある可能性を示唆。ジグは無言で視線を逸らすことで暗に関与を仄めかす。

ファミリア側の懸念と動向

クロコスはカララクの最近の動向から、謎の女を探していることや、敵対者を執拗に潰す方針を再確認する。また、カララクの配下となった冒険者の背景を探り、もし弱みや人質を握られているならば、切り崩す好機と見る。

澄人教修道服の出所とジグの影

クロコスは部下に澄人教関連の噂の再調査を命じる。ストリゴに流れ着いた修道服の出所がハリアンであるならば、それはジグの過去の行動を裏付けるものとなる。クロコスは「そこには奴がいる」と呟き、恐れと敬意の混ざるような表情を浮かべる。その「奴」とは、かつての戦友か、あるいは名を伏せられた人間の化け物なのか――。

ストリゴの荒廃と麻薬街化の経緯

ストリゴはかつて鉱山資源で栄えた街であったが、資源枯渇後は無謀な観光化政策で財政難に陥り、禁忌とされる麻薬栽培に手を出すことで転落の一途を辿った。結果、犯罪者と薬物中毒者の温床となり、街は弱肉強食の掃き溜めと化した。

シアーシャの潜入と暴走

ジグを探してハリアンからストリゴへ向かったシアーシャ一行は、案内役の冒険者クラン・シバシクルと共に情報収集を開始する。酒場での情報収集を試みた彼女は、ジグから学んだ(と誤解している)手法を用い、相手に酒を浴びせた末に乱闘を引き起こす。暴走した魔術により何人ものマフィアを一方的に叩きのめし、一部は生き埋めにされて消息を絶つ。結果、カララクの構成員に壊滅的被害を与える。

情報と痕跡の広がり

逃げ延びた者から「美しい女と大剣使いの男が関与していた」との情報がもたらされ、カララクの長ウィルダイトはその特定と報復に動き出す。過去の支配者を嘲るように並べた遺影と惨殺譚が示す通り、彼の支配は恐怖と暴力に支えられていた。ウィルダイトはジグとシアーシャを危険因子と判断し、最強戦力を投入する構えを見せる。

街における存在感と食文化の歪み

一方ジグとシャナイアは、武装の効果で襲撃を避けながら街を移動していた。シャナイアは薬物混入による「幸せな食事」の実態を語り、ストリゴの常識の歪みを明かす。ジグはそれに眉を顰め、シャナイアが見つけた別の屋台へと足を運ぶのだった。

三章 天下の槍は血風いて

食事中の対話と疑念

ジグとシャナイアは宿の料理屋で食事を取っていた。味は平凡ながら、ストリゴでは上等に属する料理である。ジグはシャナイアに「強い相手を探す理由」を尋ねる。彼女は「お願いしたいことがある」と答え、「身を固めたい」と笑みを浮かべて打ち明けた。ジグは冗談かと疑いつつも、その意図を読み取れず困惑する。

奇襲と新たな敵の出現

その直後、突如として襲撃が始まる。ジグは反射的に敵を排除しながら、大剣を武器に攻防を繰り広げた。襲撃者の一人である槍使いは、「ジィンスゥ・ヤ」出身のテギネと名乗り、過去にハリアンで四等級冒険者だったと明かす。彼は戦いを楽しむ戦狂いで、ジグに戦意を向ける。

ジグとテギネの一騎討ち

両者は高度な技術と戦術を駆使し、苛烈な一騎討ちを展開する。ジグはテギネの暗器やサーベル、十字槍による変幻自在の攻撃を防ぎつつ、隙を突いて反撃。一度は左腕を負傷するも、経験と勘により流れを引き戻し、テギネの肩を斬ってダメージを与えるに至った。

屋台通りの騒乱とシアーシャの狂気

一方、シアーシャはジグの痕跡を辿って屋台通りへ向かい、血と不快な臭気を嗅ぎ取る。その異様な嗅覚と感情により、彼女の魔力が高まり、周囲の者に本能的恐怖を植え付ける。彼女を警護するノートンたちは状況の異様さに緊張を強いられた。

カララクによる襲撃と返り討ち

シアーシャの気配を察知したカララクのマフィアたちが大挙して襲撃を仕掛ける。しかし、シアーシャは土魔術を操り、首領格の男を一瞬で殺害。圧倒的な力を前にマフィアたちは動けず、戦慄と沈黙が支配する中、彼女は両手を広げて開戦を告げる。

シャナイアの暗躍とテギネ戦の終結

宿屋の裏でカララクの構成員を次々と葬ったシャナイアは、誰にも気づかれずに死体を処理しつつ、ジグとテギネの戦いを見守っていた。殺し合いに酔うように見つめるその眼差しには、血への執着と、戦うジグへの強い興味が滲んでいた。

ジグとテギネは、技術・体力・覚悟を懸けた死闘を繰り広げた。互いに致命傷を負いながらも一歩も引かず、斬撃と突きが交錯する。最後はジグの捨て身の連撃による×字斬りと回転斬りがテギネを切り裂き、戦いは決着を迎えた。致命傷を負ったテギネは、仲間に遺産を渡すようジグに懇願し、静かに息を引き取る。ジグもまた深手を負い、崩れ落ちるように膝をついた。

シャナイアの拘束と告白

戦い直後、シャナイアが現れ、魔術によってジグを拘束し回復術を施す。彼女はこの拘束が捕縛であることを明かし、自身の目的が「強い雄を見つけ、子を成すこと」であると語った。魔女に雄は存在せず、いかなる種族と交わっても必ず魔女の子が生まれる。魔女は強い雄を攫い、何度も交わって子を宿す――その生態を赤裸々に語るシャナイアの言葉は、異様な熱を帯びていた。

さらに魔女の魔力は周囲を侵食し、意志や思考を蝕むという。これにジグは激昂し、自らの過去と誇りに対する否定と受け取り、怒りの咆哮で触手の拘束を破る。怒りと意思の力で魔女の術に抗い、完全な解放を果たしたが、体力の限界からその場で気絶してしまった。

シャナイアの観察と興味

シャナイアは敗北の屈辱と、ジグに対する興味を隠しきれず、その体や荷物を調べる。彼の異様な精神の強さ、深い魔女の侵食を受けながら狂わぬ理性、そして携帯食の中にあった自分のためのジャム入り乾パンに心を揺らす。ジグをただの種馬とは見做せず、その人物像に強く惹かれていく。

突如の襲撃と破壊の魔女の登場

シャナイアがジグを連れ帰ろうとした矢先、突如として宿が襲撃される。一階部分が土の巨大な腕によって一掃され、宿は瓦礫と化す。その中に現れたのは、蒼き瞳と黒髪を持つもう一人の魔女――シアーシャであった。地を抉る破壊の一撃を放った彼女は、涼やかな声音で怒りを帯びた言葉を紡ぎ、シャナイアの行為を咎める。

四章巨星激突

魔女同士の邂逅と敵意の激突

黒い繭を破って姿を現したシャナイアと、宿屋を破壊した張本人であるシアーシャが、魔力と殺意をぶつけ合う。両者の発する魔力は動植物を遠ざけるほどの威圧を放ち、周囲は異常な静寂に包まれた。互いに初対面でありながらも、積年の仇敵のような視線を交わし、その戦端が自然と開かれる。

シャナイアはジグの頭を撫でることでシアーシャを挑発し、シアーシャは「貴様を殺す」と言い放ち魔術を発動。魔女同士による激突は、規格外の破壊と混乱を引き起こした。

正面衝突と圧倒的な破壊の応酬

シアーシャの操る土の巨腕を、シャナイアは黒い帯で迎撃し、両者の魔術が激しく交錯。シアーシャの展開した三枚の土盾が黒い帯を防ぎ、回転で引き千切る。やがて両者は多数の岩槍と闇の錐を撃ち合いながら周囲を破壊し尽くし、街は崩壊寸前の惨状を呈する。

シャナイアは精密な魔力操作を駆使してシアーシャの隙を突き、闇色の巨刃を召喚。シアーシャは土盾を重ねて防御するも押され、絶体絶命の状況に陥る。しかし直後、宿屋と同等のサイズを持つ岩の拳を召喚し、闇刃を押し潰して勝負をひっくり返す。

騙し討ちと逆転劇

勝者と思われたシアーシャがジグの捜索に気を取られた隙を突き、黒い帯が彼女の胸を貫通。シャナイアが死を偽り、闇に紛れて奇襲を仕掛けたのだった。魔力で拘束され、標本のように縫い留められたシアーシャは無言で応じるが、彼女の言葉には死の気配がない。

その真意は、土で作った自身の人形を囮にしていたという事実にあった。本体は地下に潜んでおり、シャナイアの油断を誘って逆転を果たす。シアーシャは黒い繭ごと土塊に包み上げ、圧力で潰しにかかる。力比べではシアーシャに分があり、シャナイアは劣勢へと転じる。

魔女の師への想いと覚醒

シアーシャはジグを「敗北した相手」と語り、その影響で自らの戦闘技術や生存術が磨かれたことを明かす。それは魔女としては異例の「敗北から学ぶ」姿勢であり、シャナイアの価値観を大きく揺さぶるものだった。

驚愕と怒りで暴走するシャナイアは闇の大槍を生成。一方、シアーシャは巨大な漆黒の大剣を構築する。両者の極大魔術が真っ向から衝突し、町はさらなる崩壊を迎える。激突の末、大槍が断たれ、勝敗は決する。

勝利と失意の月夜

敗北したシャナイアは、天に向かって放たれた自らの槍の断片を眺めながら、「いい月夜だねぇ」と呟く。魔女二人による巨星の激突は、文字通り都市の一角を更地に変え、静かに幕を下ろした。

目覚めと戦場の惨状

ジグは微睡の中、かつての戦友ライエルとの日々を回想しながら目を覚ました。目を覚ました先にいたのはシアーシャであり、彼女の膝の上に頭を預けていた。微笑みを浮かべる彼女の姿にわずかな安堵を覚えるジグだったが、即座に戦闘の記憶が蘇り、シャナイアの行方を問う。シアーシャは淡々と「死んだのでは」と告げ、その無関心さがすべてを物語っていた。

周囲を見回したジグは、かつて自分が戦地で見てきた光景以上の破壊と消失を目の当たりにする。何も残っていない爆心地に、彼は魔女の力の異常さを改めて認識した。

魔女の力と支配の疑念

自分がシャナイアに言われた「魔女の魔力による精神侵食」の言葉を思い返し、ジグは自問する。本当に自分の意思で動いているのか、それとも操られているのか。だが最終的には、敵であろうとも手を緩めることはないという自らの信条を再確認し、己を取り戻した。

その上でジグはシアーシャに「逃げるぞ」と告げる。これだけの惨状を前にして無傷の自分たちが残っていれば、当然責任を問われる恐れがあるからである。

飢餓と混乱の街からの脱出

街を抜け出すため、ジグとシアーシャは夜陰に紛れて走る。激戦で栄養を使い果たしたジグは非常食を詰め込み、ようやく動ける体力を回復させていた。その道中で、同行していたはずのノートンの存在をシアーシャが思い出す。カークの計らいで同行していた彼の安否を気にかけるジグたちは、屋台通りへ向かう。

道中、略奪と死体漁りに群がる人々を目にし、ジグは戦争を想起して苦々しく感じる。そこへ、豪奢な装いの男が自らの屋敷が真っ二つになったことに絶叫する光景が広がっていた。

ノートンの登場と真実の暴露

その男の前に、黒鎧の冒険者ノートンが現れる。激昂する男・ウィルダイトの怒号によって、ノートンが刃蜂事件の背後にいたこと、冒険者殺害の主犯であることが明かされてしまう。そしてその場にいたジグたちに声が届いてしまったことから、ノートンは迷いなくウィルダイトを惨殺。異様な冷静さと微笑でそれを済ませた。

ジグの問いに対して、ノートンは堂々と真実を語る。彼は「成長する意志のない冒険者」たちを心底憎み、「理想の冒険者像」にそぐわぬ者は殺して構わないという確信に基づき行動していた。すべては「よりよき冒険者社会」の実現のためという彼の独善だった。

シアーシャの成長と取引の提案

シアーシャはかつて同調していた思考に異を唱え、「多様性」という言葉でノートンを否定する。成長を続ける者だけが価値ある存在ではなく、誰もがそれぞれの努力と目標を持っていいという考えに辿り着いた彼女の姿がそこにあった。

敗北を認めたノートンは、ジグに取引を持ちかける。自らの犯行を黙認する代わりに、シアーシャの異常な力についても口外しないという内容であった。ジグは熟慮の末、その取引に応じる。

転移石板へ向けての出発

ストリゴを脱出するため、ジグたちはノートンと合流し、フュエル岩山の転移石板を目指すことになる。途中の会話で、ジグは改めてシアーシャの尽力と、自身が護衛として役割を果たせなかったことを詫びた。それに対し、シアーシャは微笑み、静かに彼の胸に身を預けた。

戦いの爪痕と真実を背負いながら、彼らは新たな地へ向かって進み始めた。強さとは何か、理想とは何か、それぞれの答えを胸に抱きながら。

番外編 相容れぬ存在

森を焼き尽くす戦いの終焉

深い森を焼け野原に変えるほどの戦いが終結しようとしていた。そこには、紅蓮の魔女と人間――百翼兵団の副長ヴィクトール=クレインと団長ディバルトス=クレインによる激戦の爪痕が残されていた。魔女との戦いは、戦いと呼ぶにはあまりにも理不尽で絶望的な力の差に満ちていたが、それでも二人の傭兵は打ち勝った。

火傷と損傷だらけの体で、ヴィクトールは溶けかけた槍を魔女の胸に突き刺し、「終わりだ」と告げる。人の命を軽く超越する魔女の魔力すらも貫いた彼の決意と実力は、明確にその勝利を示していた。

魔女の最後と届かぬ情愛

紅蓮の魔女は、自らを討ち取った二人に対して、敵意ではなく情愛を示す。彼女は「ついに見つけた」「素晴らしい殿方」と語り、特にヴィクトールに対して深い執着を見せた。頬に手を当てるその仕草は、恋慕にも似た熱情が込められていた。

しかし、ヴィクトールはその想いを冷然と拒絶し、槍を引き抜いて魔女の命を絶つ。血を吐きながら彼女は倒れ、最期の言葉には、孤独の果てに出会えた「愛しい存在」への名残惜しさが滲んでいた。

魔女という存在の本質

倒れた魔女を前に、二人はその異質さに言及する。同じ人の姿をしながらも、言語や思考、価値観までもが根底から異なる存在――それが魔女であった。魔女の本質は、人と交わることができない「絶対的な他者」であり、分かり合うという概念すら成立しない。愛を語るその心さえ、異質にして不可解なものとして二人には映っていた。

傭兵たちの確信と弟子への想い

戦闘を終え、深く消耗した二人は魔女の死を確認しながら火の手から撤退を始める。森は山火事の如き勢いで燃えていたが、魔女の一撃が作り出した「トンネル」によって帰路は確保されていた。

その場で二人が交わすのは、遠くにいるであろう弟子・ジグの話題であった。かつての不肖の弟子がこの程度の魔女に遅れを取るはずがないという確信は、彼らが命を賭して魔女と戦ったからこそ得られた自信に裏打ちされていた。

「奴らの本領が殲滅戦だと分かった」「俺たちにできたなら、ジグにもできる」。そう語る彼らの信頼は、根拠ある事実に基づく確信であり、もはや干渉は不要だという判断へと至っていた。

分かち合えぬ存在との邂逅

本編で描かれた魔女とジグの間に芽生えた奇妙な関係性とは対照的に、この番外編は、魔女という存在が人間と「断絶した存在」であることを端的に描く。情愛さえも異質なものとして映るその在り方に、傭兵たちは理解を放棄することで終止符を打った。

それでも、紅蓮の魔女にとってこの戦いと出会いは、永劫の孤独に対するわずかな救済であり、たとえそれが届かずとも、彼女はその最期に意味を見出していたのかもしれない。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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