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守雨手札が多めのビクトリア

小説「手札が多めのビクトリア 2」感想・ネタバレ

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手札が多めのビクトリア 2の表紙画像(レビュー記事導入用) 守雨

手札が多めのビクトリア1レビュー
手札が多めのビクトリアまとめ
手札が多めのビクトリア3レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. シェン国からの帰国
    2. 冒険小説の暗号解読
    3. 失われた王冠と金鉱
    4. ノンナの成長と武術
    5. 偽造詐欺事件の解決
  6. 登場キャラクター
    1. アッシャー家
      1. アンナ・ビクトリア・アッシャー(ビクトリア)
      2. ジェフリー・アッシャー
      3. ノンナ
      4. リード
      5. バーサ
      6. 料理人
      7. 掃除担当の若い侍女
      8. 護衛役の男たち
    2. アシュベリー王国 王城・騎士団
      1. エドワード・アッシャー
      2. マイク
      3. チェスター
      4. デール
      5. 警備隊
      6. 第二騎士団員たち
      7. 第三騎士団員たち
    3. アシュベリー王国 貴族とその関係者
      1. ヨラナ・ヘインズ
      2. スーザン
      3. バーナード・フィッチャー
      4. 通いのハウスメイド
      5. クラーク・アンダーソン
      6. エバ・アンダーソン
      7. エリザベス・マグレイ
      8. プライズ
      9. コートニー
      10. ヘンドリッジ
      11. お茶会の参加者たち
    4. アシュベリー王国 市井の人々・その他
      1. イライザ
      2. 南区修道院の修道女たち
      3. 南区修道院に身を寄せる女性たち
      4. 契約書詐欺の被害者の老婦人
      5. サンドル古書店の店主
      6. ウィル・ザカリー
      7. 詐欺集団の男たち
      8. ザハーロ
      9. 黒ツグミの客たち
      10. シビルの町のホテルの使用人
      11. シビル林業組合の組合長
      12. マック
      13. 赤花菱草を栽培する男たち
      14. 井戸掘り職人たち
      15. 牧場の作業員たち
    5. スバルツ王国
      1. オーリ
    6. 百年前の人々
      1. エルマー・アーチボルト
      2. カロライナ第五王女(バイオレット)
      3. ジャック
      4. ジャックの妻
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ * シェン国にて 
    2. 第一章 帰国と再会 
    3. 第二章 冒険小説『失われた王冠』 
    4. 幕 間 * エドワード・アッシャーの勘 
    5. 第三章 * それぞれの心の奥底 
    6. 第四章 * シビルの森へ 
    7. 第五章 * ペットのシビー 
    8. 幕 間 * エドワードの親心 
    9. 第六章 修道院院長イライザと古書店 
    10. 第七章 * 叙爵式とお茶会 
    11. 第八章 古い契約書 
    12. 第九章 美しい古書 
    13. 第十章 ★ ヨラナ様と訪問者 
    14. エピローグ *アッシャー子爵家のパーティー 
    15. 番外編 * 少年と母親 
    16. 番外編 * リードの日常 
  8. 同シリーズ
    1. 手札が多めのビクトリア
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、裏社会から足抜けした凄腕の元工作員が、愛する家族とともに平穏で幸せな人生を歩んでいくファンタジー・人生修復物語の第二弾である。シェン国での五年間を終え、アシュベリー王国へと帰国したビクトリア(アンナ)一家は、懐かしい人々との再会を喜ぶ。ある日、歴史学者から贈られた百年前の冒険小説『失われた王冠』に暗号が隠されていることに気づいたビクトリアは、持ち前の才能でそれを難なく解読してしまう。王国の歴史的秘密に迫るその暗号に導かれ、理解ある夫ジェフリーと逞しく成長した娘ノンナとともに、一家はシビルの森へ宝探しの冒険に出発する。道中でのスバルツ王国からの逃亡少女の保護や、王都で発生した偽造契約書詐欺事件への遭遇など、様々なトラブルを家族の絆と圧倒的な「手札」で乗り越えていく姿が描かれる。

■ 主要キャラクター

  • ビクトリア(アンナ):主人公。ハグル王国の元エース工作員。現在はジェフリーの妻、ノンナの母としてアシュベリー王国で暮らす。卓越した体術や暗号解読能力などの多彩な「手札」を持ち、家族を守るためならいかなる困難にも立ち向かう。
  • ノンナ:ビクトリアとジェフリーの養女。12歳。シェン国で高度な武術を身につけ、母に負けず劣らずの圧倒的な戦闘力を持つまでに成長した。母を守りたいという強い覚悟を抱いており、社交界にも足を踏み入れ始める。
  • ジェフリー・アッシャー:ビクトリアの夫であり、元第二騎士団長。金鉱脈発見などの功績により新たに子爵となる。妻と娘を深く愛し、彼女たちの自由を尊重して温かく見守る完璧な理解者である。
  • クラーク・アンダーソン:アンダーソン家の令息で、現在は外国語を扱う文官(18歳)。王冠探しの記録係として一家の冒険に同行する。幼馴染みであるノンナに対して特別な感情を抱き、彼女の「番犬」のように振る舞う。
  • バーナード・フィッチャー:高名な歴史学者。ビクトリアに冒険小説『失われた王冠』を結婚祝いとして贈り、今回の冒険のきっかけを作る。
  • エドワード・アッシャー:ジェフリーの兄で、王城の資料管理部などを兼任する伯爵。ビクトリアの類まれな才能を高く評価しており、弟一家を陰ながら支援する。
  • オーリ:スバルツ王国での過酷な扱いから逃亡してきた16歳の少女。シビルの森でアンナたちに保護されるが、後に恩を仇で返し、詐欺集団に加担してアッシャー家を襲撃する。

■ 物語の特徴

本作の魅力は、元工作員としての圧倒的なスキル(手札)による痛快なアクションや暗号解読といったサスペンス要素と、家族の深い愛情を描くハートフルなドラマが見事に融合している点である。特に2巻では、愛らしい少女から凄腕の武術家へと成長したノンナの活躍が目を引き、過保護ながらも妻の自由を尊重するジェフリーの愛妻家ぶりも際立っている。また、百年前の工作員(エルマー)が残した暗号を通じて、過去の切ない愛の物語が現在のビクトリアたちの人生と交差し、深い感動と歴史ロマンを味わうことができる構成となっている。

書籍情報

手札が多めのビクトリア 2
著者:守雨 氏
イラスト:藤実なんな 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2022年12月23日
ISBN:9784046819291

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あらすじ・内容

凄腕元工作員、家族と楽しい宝探しに出かけます♪
凄腕元工作員のビクトリアが、可憐な少女ノンナを保護し、本当の人生を取り戻してから5年後。
シェン国での研究を終えたビクトリア一家は、アシュベリー王国に帰国して懐かしい人々と再会する。そして平穏な日々を送るビクトリアだったが、彼女はある日希少な冒険小説『失われた王冠』に隠された謎の暗号を持ち前の才能で難なく解読してしまう。
その暗号は宝のありかを示しており、小説の舞台とされる地域へ行きたい気持ちに駆られるビクトリアだが、自分の立場を考えて葛藤する。
「君は強くて賢くて優しくて、なによりも自由な人だ。行こうよ、君が行きたい場所へ」
「私がお母さんを守るから」
理解のある夫ジェフリーと心強く育ったノンナの支えで、自分らしく生きることにしたビクトリアは、アシュベリー王国の秘密に迫る大冒険へ出発するが――?
最強の家族とともに、更なる幸せをつかむ人生修復物語第二弾、開幕!

手札が多めのビクトリア2

感想

物語は前巻の緊迫した逃亡生活から一転し、ビクトリアたちがシェン国で五年間暮らした後から始まる。

前巻の終盤では、ビクトリア、ジェフリー、ノンナの三人が新しい家族となり、遠いシェン国へ旅立った。

そのため、異国でどのような生活を送り、三人がどのように家族として関係を深めたのかが詳しく描かれると思っていた。

しかし、シェン国での五年間は回想や帰国後の会話を通して語られる程度であり、物語は早々にアシュベリー王国へ戻っていく。

この大胆な時間経過には少し驚かされた。

もっとシェン国での生活を見てみたかった気持ちはある。

一方で、帰国したビクトリアが結婚祝いとして受け取った古い冒険小説から暗号を発見し、歴史から消えた王女と作家の秘密へ迫っていく展開は非常に面白かった。

元工作員の暗号解読能力。

ジェフリーの戦闘力と包容力。

シェン国で規格外の成長を遂げたノンナ。

三人がそれぞれの手札を使い、家族旅行という名目で危険な森へ踏み込んでいく。

前巻が「逃げることで家族を守る物語」だったとすれば、本巻は「自由になった家族が、自分たちの意思で冒険へ向かう物語」である。

過去に追われていたビクトリアが、今度は自分の好奇心に従って未知の場所へ進む。

その変化が何よりも嬉しい一冊であった。

五年後から始まる新しい物語

本巻は、ビクトリアたちがシェン国から帰国する場面から始まる。

シェン国での生活は穏やかだったようで、三人は現地の言葉を身につけ、薬の製造や輸出に関する仕事も成し遂げていた。

ノンナも大きく成長している。

帰国の荷造りでノンナが選んだのは、友人からもらった翡翠の獅子、武術の鍛錬着、シェン国語の本だけだった。

持ち帰れない景色や人との思い出こそが大切であり、何より母親と一緒に暮らせれば十分だと語る。

物に執着せず、人とのつながりを大切にするノンナらしい言葉である。

前巻で広場に置き去りにされ、何も持たなかった少女が、今では自分にとって大切なものをはっきり理解している。

その成長に温かい気持ちになった。

シェン国での細かな出来事は省略されているものの、三人が幸せに暮らしていたことは伝わってくる。

特にノンナは、屋敷の護衛たちからシェン国武術を教わり、工作員であるマイクを倒せるほどの実力を身につけていた。

母親が凄腕の元工作員で、父親が元騎士団長。

その二人から日常的に鍛えられ、さらに異国の武術まで吸収する。

将来どこまで強くなるのか、少し恐ろしくなるほどである。

五年ぶりに戻ったアシュベリー王国

帰国したビクトリアたちは、以前暮らしていた人々と再会する。

ヨラナ夫人、スーザン、歴史学者のバーナード。

前巻で置き手紙だけを残して姿を消したビクトリアは、申し訳なさを抱えながら彼らのもとを訪れる。

しかし、ヨラナ夫人は事情があったのだから気にしなくてよいとビクトリアを抱きしめる。

バーナードも杖を投げ出す勢いで二人を迎え、帰国を心から喜んでくれる。

この再会が温かかった。

ビクトリアは以前、人と深く関われば別れがつらくなると考えていた。

だから危険が迫った時には、自分からすべての縁を切って逃げた。

しかし、彼女がいなくなっても、王都の人々は忘れていなかった。

怒るのではなく、無事に帰ってきたことを喜んでくれる。

ビクトリアが王都で築いた関係が、一時的な偽装ではなく、本物のつながりだったことが分かる場面である。

前巻では帰る場所を持たなかった女性が、今では「帰ってきた」と言える場所を持っている。

その事実だけでも胸が温かくなった。

結婚祝いに贈られた『失われた王冠』

物語が大きく動き始めるのは、バーナードから結婚祝いとして古い本を贈られてからである。

その本は、約百年前に書かれた有名な冒険小説『失われた王冠』の著者直筆原書だった。

大昔に盗まれた王冠を探すため、主人公が各地を旅する物語である。

主人公は最後に王冠を発見するものの、守る者たちから襲われ、手に入れることを断念する。

その後、心優しい女性に看病され、穏やかに人生を終える。

一見すれば普通の冒険小説である。

しかし、原書には不自然な綴り間違いがいくつもあった。

難しい単語は正確に書かれているのに、子供でも間違えないような短い単語だけが間違っている。

バーナードは長年、その誤字に何らかの意味があると考え、暗号の解読へ挑戦していた。

ところが、二十年かけても答えにはたどり着けなかった。

そこで、元工作員として暗号解読の経験を持つビクトリアへ本を託す。

高価な歴史的資料でありながら、家に置いておくよりビクトリアとノンナに読んでもらいたいと贈るバーナードの気持ちが嬉しい。

本の金銭的な価値よりも、二人を家族のように思っていることが伝わってきた。

誤字ではなく挿絵に隠された暗号

ビクトリアは誤字の位置や間隔を書き出し、知っている暗号法を次々と試していく。

しかし、どの方法を使っても規則性が見つからない。

やがて彼女は、各ページの左上に描かれた挿絵へ注目する。

小鳥や魚、木の実などが描かれているが、その中には周囲とは異なる方向を向いたものが混ざっていた。

向きの違うものの数だけ文章を飛ばし、次の文の頭文字を拾う。

すると、意味のある言葉が浮かび上がる。

誤字は暗号の本体ではなく、読み手の注意を別の場所へ向けるための罠だったのである。

長年誰にも解けなかった暗号を、ビクトリアが数日で読み解く展開は痛快だった。

派手な戦闘ではない。

細かな違和感を見逃さず、情報を整理し、複数の可能性を試す。

工作員として身につけた観察力と暗号解読能力が発揮される。

『手札が多めのビクトリア』という作品名にふさわしい活躍である。

戦闘や変装だけではなく、知識や集中力も彼女の大切な手札なのだと改めて感じた。

歴史から消えた第五王女カロライナ

暗号を読み進めると、著者エルマー・アーチボルトが実際に「失われた王冠」を発見していたことが分かる。

しかし、仲間から裏切られて負傷し、アシュベリー王国の心優しい王女に助けられた。

その恩に報いるため、王冠に関する情報をアシュベリーの民へ残したという。

さらに調査を進めると、約百年前の王家の記録から突然名前が消えたカロライナ第五王女の存在が浮かび上がる。

十五歳までは記録が残っているのに、その翌年から系統図から消えている。

死亡したという記録もない。

著者を助けた王女は、このカロライナではないか。

小説だと思われていた物語の奥から、歴史上の未解決事件が姿を現す。

冒険小説の暗号と、記録から消えた王女。

この二つがつながる展開には胸が躍った。

単なる宝探しではない。

誰にも知られないまま消えた人物の人生を、百年後の人間が文章から拾い上げていく。

長年、歴史資料を研究してきたバーナードが夢中になるのもよく分かる。

子爵夫人になったビクトリアの葛藤

暗号の先には、シビルの森へ続く道標が記されていた。

ビクトリアは当然、その場所へ行ってみたいと思う。

工作員時代から暗号解読を好み、未知の情報へたどり着くことに喜びを感じていた。

目の前に百年前の謎があり、自分なら解けるかもしれない。

興味を持たないはずがない。

しかし、今の彼女は以前とは違う。

ジェフリーの妻であり、ノンナの母親であり、間もなく子爵夫人になる。

かつてのように、自分一人の判断で危険な場所へ向かうことはできない。

自分が危険な目に遭えば、家族を悲しませる。

貴族の妻としての立場もある。

だから、行きたいという気持ちを抑え込もうとする。

この葛藤は非常に現実的だった。

幸せな家庭を手に入れたからこそ、以前のような自由な行動はできなくなる。

誰かと暮らすということは、守られるだけではなく、自分の選択が相手の人生にも影響するということだ。

ビクトリアはそれを理解している。

一方で、家族のために自分の好奇心や楽しみをすべて諦めれば、本当に幸せと言えるのか。

本巻では、妻や母親になった女性が、自分自身の時間や望みを持ってよいのかというテーマも丁寧に描かれていた。

「君が行きたい場所へ行こう」と言うジェフリー

ビクトリアが本心を隠していることを、ジェフリーはすぐに見抜く。

そして、家族三人でシビルの森へ行こうと提案する。

子爵夫人だから。

妻だから。

母親だから。

そんな理由で自分を小さくまとめなくてよい。

ジェフリーは、自由に羽ばたくビクトリアを見ていたいと伝える。

この言葉が非常に良かった。

ジェフリーはビクトリアを守りたいと考えている。

元工作員として危険な行動をする彼女へ不安を感じることもある。

それでも、自分の不安を理由に妻の行動を制限しようとはしない。

自分が惹かれたのは、強く、賢く、優しく、自由に生きるビクトリアだった。

だから、その翼を折りたくない。

「君が行きたい場所へ行こう」と背中を押す。

単に何でも許す優しい夫というだけではない。

ジェフリー自身は、幼い頃に父親から家族を支配され、暴力を受けて育った。

そのため、自分も父親と同じように、家族を支配する男になるのではないかと恐れている。

愛する相手を守ることと、自由を奪うことは違う。

その境界を何度も考えながら、ビクトリアを尊重しようとする。

この不器用な誠実さがジェフリーの魅力だと感じた。

妻でも母でもない自分に戻れる時間

ビクトリアが一人で酒場「黒ツグミ」へ行きたいと悩む場面も印象的だった。

黒ツグミで強い酒を二、三杯飲んでいる時だけは、妻でも母でも子爵夫人でもない。

ただのビクトリアとして座っていられる。

背中で折り畳まれていた羽が、ゆっくり伸びていくような気持ちになるという。

今の生活に不満があるわけではない。

ジェフリーとノンナを愛しており、家族との暮らしに満たされている。

それでも、家族の役割から一時的に離れ、一人の人間として過ごす時間が欲しい。

この感覚は、とても自然なものだと思う。

家庭を持ったからといって、個人としての感情や楽しみが消えるわけではない。

しかしビクトリアは、自分だけが楽しむことへ罪悪感を抱いてしまう。

そんな彼女へ、ヨラナ夫人が自分の経験を語る。

妻、嫁、母として完璧であろうと頑張りすぎた結果、心身を消耗し、家族を恨みそうになった。

だから時には家族へ嘘をついてでも、友人とカード遊びを楽しむ時間を作った。

誰にも頼まれていないのに自分を追い詰め、その犠牲の上に家庭を成り立たせても、最後には誰も幸せになれない。

ヨラナ夫人の言葉は重かった。

自分を楽しませることは、家族を裏切る行為ではない。

自分が笑顔でいることが家族の笑顔につながるなら、それも大切な役割である。

ビクトリアが黒ツグミへ行き、ザハーロへ結婚を報告し、一人で酒を楽しむ場面には、ささやかな解放感があった。

彼女は遠くへ逃げるために羽を伸ばすのではない。

また家族のもとへ帰るために、少しだけ自分を休ませているのである。

家族旅行という名の宝探し

こうしてビクトリア、ジェフリー、ノンナは、失われた王冠を探す旅へ出る。

表向きは、五年間ほとんど休まず働いた一家の家族旅行である。

しかし目的地は、人もほとんど入らない深い森。

手掛かりは百年前の冒険小説に隠された暗号。

普通の家族旅行とは大きく異なる。

しかも、歴史的な発見の記録係として、成長したクラークまで同行する。

馬係のリードも加わり、一行はシビルの森へ向かう。

この家族の決断力と行動力が痛快だった。

普通なら、行くかどうかを何週間も話し合い、準備にも長い時間をかけそうな話である。

ところが三人は、暗号を解読するとすぐに旅の準備を始める。

危険を避けるための道具を用意し、森での野営にも対応できる装備を整える。

ビクトリアとジェフリーにとっては、未知の森への探索さえ、家族で楽しむ旅行になってしまう。

ノンナも森で眠れると聞いて怖がるどころか、目を輝かせる。

アグレッシブすぎる一家である。

気の毒すぎる馬係のリード

そんな規格外の一家へ同行することになった馬係のリードは、非常に気の毒だった。

主人であるジェフリーが元騎士団長として強いことは知っていただろう。

しかし、上品な子爵夫人に見えるビクトリアが凄腕の元工作員であり、可憐な令嬢に見えるノンナが本職の工作員を倒すほどの武術を身につけているとは思わない。

旅の途中、家族三人は運動不足を解消するため、突然本格的な鍛錬を始める。

ノンナは高速で拳と蹴りを繰り出し、ビクトリアは木の枝を短剣のように扱って受け流す。

ジェフリーもクラークへ剣を教える。

リードから見れば、仕えている一家が突然、人間離れした戦闘集団へ変わったようなものである。

さらに森では、怪しい男たちの気配をビクトリアとジェフリーだけが即座に察知し、襲ってきた大男たちを短時間で制圧してしまう。

主人一家の秘密を次々と見せつけられながら、深く追及することもできない。

彼には心の中で「強く生きろ」と声をかけずにはいられなかった。

このような常識的な人物が一人混ざることで、ビクトリア一家の規格外ぶりがさらに際立っている。

シェン国武術で成長したノンナ

ノンナの成長も本巻の大きな見どころである。

前巻でも、ビクトリアから木登りや投石、体術を教えられ、普通の少女とは思えない動きを見せていた。

本巻ではシェン国武術を習得し、さらに規格外の存在になっている。

高く跳び、壁を駆け、相手の頭上から攻撃する。

高い持久力を生かし、相手が疲れるまで動き続ける。

工作員のマイクを相手に勝利し、悪漢たちを短時間で倒してしまう。

可憐な金髪の少女という外見との落差が面白い。

一方で、単に強くなっただけではない。

武術の先生から、自分より弱い者へ技を使えば破門だと教えられており、その言葉を大切にしている。

ビクトリアからも、自分の手札をむやみに見せてはいけないと教えられる。

強い力を持つほど、使う場面を考えなければならない。

ノンナはその責任も少しずつ学んでいる。

母親を守るために強くなりたいという気持ちも印象的だった。

前巻ではビクトリアに守られていた少女が、今度は自分も母親の力になろうとしている。

互いに守りたいと思っている親子の関係が温かかった。

森の奥で始まる本物の冒険

暗号に記された白い石碑を見つけた一行は、さらに森の奥へ進む。

整備された道は消え、馬車を置き、馬へ乗り換え、最後には歩いて山を登る。

やがて石造りの空き家を発見し、そこを探索の拠点にする。

焚き火を囲み、肉を焼き、腸詰めのスープを作る場面は楽しそうだった。

クラークやノンナにとって、森の中で食べる料理は初めての経験である。

危険な探索の途中でありながら、家族旅行らしい楽しさもある。

しかし、食事の最中には男たちから襲撃される。

ビクトリアとジェフリーは、相手が姿を現す前から人数や体格を察知し、子供たちを家の中へ避難させる。

そして、鉈を持って襲ってきた大男たちを二人だけで制圧する。

夫婦で並んで戦う場面が格好良かった。

ビクトリアが素早さと急所への攻撃で相手を無力化し、ジェフリーが体格と技術で正面から制圧する。

戦い方は異なるが、互いの判断を信頼している。

長く一緒に戦ってきた相棒のような連携である。

結婚後の二人が、日常だけでなく戦闘でも相性の良さを見せる展開に胸が熱くなった。

屋根裏から発見された未発表の物語

石造りの家を調べたビクトリアは、天井の形に違和感を覚える。

外から見た屋根の傾斜と、室内の天井が一致していない。

そこでノンナに屋根裏を調べてもらうと、蝋で密封された青銅の壺が見つかる。

壺の中には、未発表の小説と思われる大量の羊皮紙と、新しい暗号が残されていた。

ささいな建物の違和感から隠し場所を発見するビクトリアの観察力が見事である。

普通なら古い空き家として見過ごしてしまう。

しかし、彼女は見たものを無意識に整理し、矛盾へ気づく。

戦闘力だけでなく、注意力や記憶力も高い。

そして新たな暗号は、現地でしか答えを得られない仕組みになっている。

滝へ向かい、風を見て勇気を持て。

冒険小説のような指示に従い、一行はさらに奥へ進んでいく。

ここからは本当に、物語の登場人物たちが冒険小説の中へ入ったような展開になる。

失われた王冠の正体

滝の近くで風の流れを読み、蔦に覆われた石壁を発見する。

その奥には狭い裂け目があり、さらに進むと巨大な火口へ出る。

そこには人の手がほとんど入っていない自然が残されていた。

最初は目立った宝物が見つからない。

しかし、ノンナが拾ってペットのように扱っていた白い石に、大量の金が含まれていることが分かる。

火口一帯に広がっていたのは、巨大な金鉱脈だった。

「失われた王冠」とは、本物の王冠ではない。

国の運命を変えるほどの金を生み出す鉱脈だったのである。

ノンナが何気なく拾った石をシビーと名づけ、ペットとして大切にしていたことには笑ってしまった。

莫大な価値を持つ金鉱石であっても、ノンナにとってはかわいい拾い物でしかない。

この金鉱が発見されれば、多くの富を生む。

一方で、国同士の争いや人々の欲望を引き寄せる危険もある。

「王冠」という名前には、財産だけでなく権力や争いを生むものという意味も込められていたのかもしれない。

有名作家と消えた王女の逃避行

さらに羊皮紙の暗号を解読すると、著者エルマーとカロライナ王女の真実が明らかになる。

エルマーは、アシュベリー王国へ潜入していた他国の工作員だった。

カロライナ王女は、暴力的だと噂される他国の王子との結婚を恐れていた。

そこでエルマーは王女を王城から逃がし、二人はシビルの森の奥で夫婦として暮らし始める。

工作員と王女。

本来なら敵対する立場にある二人が、すべての地位や名前を捨て、森の中で生活していた。

巨大な金鉱脈を発見しながら、その金には頼らず、自分たちで働いて暮らしていたという。

この真実は切なくもロマンチックだった。

歴史上では、カロライナ王女は突然消えた人物である。

国を捨てた身勝手な王女と思われていた可能性もある。

しかし実際には、自分の人生を守るために逃げ、愛する人と静かな家庭を築いていた。

エルマーも工作員としての任務より、カロライナとの生活を選んだ。

この二人の姿は、ビクトリアとジェフリーにも重なる。

工作員として組織を逃げたビクトリア。

過去の地位を捨てても彼女と共に生きることを選んだジェフリー。

百年前の夫婦が残した物語を、似た境遇を持つ二人が読み解く。

偶然とは思えないつながりを感じた。

歴史の真実をすべて公表しない選択

エルマーは、組織の人間に金鉱の存在を知られ、場所を教えるよう迫られる。

彼は五人を火口へ案内した後に殺されかけるが、返り討ちにする。

自分も重傷を負ったものの、カロライナの看病によって生き延びた。

その経験をもとに書かれたのが『失われた王冠』だった。

カロライナは死の間際、国への償いとして金鉱の存在を王家へ知らせてほしいと望む。

しかしエルマーは、彼女を危険な結婚へ送り出そうとした王家を信用しなかった。

そのため、暗号を解き、自力で金鉱へたどり着いた者へ判断を託す。

ビクトリアたちは真実へ到達したが、すべてを公表することは選ばない。

カロライナが他国の工作員と逃げた事実が明らかになれば、暗号を解いたビクトリアの素性まで調べられる危険がある。

せっかく自由になった彼女が、再び過去へ引き戻されるかもしれない。

そこで金鉱脈の発見は報告するが、エルマーとカロライナの詳しい真実は伏せる。

歴史的な事実だからといって、すべてを明らかにすることが正しいとは限らない。

今を生きる人間を危険にさらしてまで、公表する必要があるのか。

真実を知った者が、何を残し、何を守るのかを考える展開が興味深かった。

助けた少女オーリとのすれ違い

森の探索中、一行は食料を盗んだ少女オーリと出会う。

オーリは他国の政策によって年上の雇い主との結婚を強制され、逃げ出したと語る。

森で一人、獣を避けながら暮らしており、衰弱していた。

ビクトリアたちは王冠探しを中断し、少女を助けることを優先する。

食事と服を与え、王都まで連れ帰り、自分たちの屋敷へ迎える。

前巻のノンナと同じように、困っている少女を見捨てることができなかったのである。

しかし、オーリとの関係はうまくいかない。

言葉が通じない中で唯一会話できるクラークへ強く依存し、ビクトリアやノンナには敵意を向ける。

特にノンナへ「大嫌い」と告げ、屋敷から姿を消してしまう。

良かれと思って保護した相手から拒絶される。

この展開は現実的で、少しほろ苦かった。

助ければ感謝されるとは限らない。

自分の善意が、相手にとって望んでいるものとは限らない。

ノンナは友人になりたいと思っていたため、強い悪意を向けられて傷つく。

ビクトリアは、世の中には自分より恵まれているように見える相手を攻撃し、自分の心を守ろうとする人もいると教える。

相手の事情を理解しようとすることは大切である。

しかし、理解することと、傷つけられるまま我慢することは違う。

悪意へ対抗するための手札も必要になる。

この教えは、貴族社会へ入っていくノンナにとって重要なものだったと思う。

善意だけでは人を救えない

後にオーリは、偽造契約書を使った詐欺集団へ加わっていたことが判明する。

ビクトリアたちが保護した後、自分の意思で屋敷を離れ、犯罪へ関わっていた。

ノンナは、彼女が騙されていただけではないかと考えようとする。

しかしビクトリアは、どのような事情があっても、自分で悪事を選んだ以上は責任を負わなければならないと伝える。

ジェフリーも、もしノンナが犯罪を犯したなら、泣きながらでも騎士団へ引き渡すと語る。

親としての愛情は、何をしても守り続けることではない。

間違ったことをしたなら、責任を取らせることも必要になる。

この考え方は厳しい。

それでも、子供を自分の所有物ではなく、一人の人間として見ているからこその言葉だと感じた。

助けた相手が望んだ通りに成長するとは限らない。

善意を受け入れるかどうかも、その後どの道を選ぶかも本人次第である。

他者を完全に救うことはできない。

それでも、目の前で困っている人へ手を伸ばすことをやめない。

ビクトリアはオーリに裏切られても、今後も困っている人を見捨てないと決める。

傷つく可能性を知ったうえで、それでも手を伸ばす姿に強さを感じた。

貴族令嬢として成長するノンナ

本巻では、ノンナが武術だけでなく、人間関係の面でも成長していく。

貴族令嬢のお茶会では、平民出身であることを馬鹿にされる。

しかし、ヨラナ夫人から事前に教わった相手の家系情報を使い、遠回しに反撃する。

母親譲りの手札の使い方である。

ただし、相手を言い負かしても気分は晴れない。

仕返しには後味の悪さが残ると知り、自分は意地悪な人間にはなりたくないと考える。

強さとは、相手を倒すことだけではない。

反撃できる力を持ちながら、どこまで使うのかを判断することでもある。

その後、最初は対立していたエリザベスと、冒険小説をきっかけに友人になる。

互いに本が好きだと分かれば、身分や最初の印象を越えて距離を縮めてしまう。

ノンナの素直さと行動力が良かった。

武術、語学、貴族社会での会話。

ノンナもまた、母親のように多くの手札を持つ女性へ成長している。

それでも、どの手札をどう使うかは、これから自分で学んでいかなければならない。

親のもとを離れる未来が少しずつ近づいていることを、ビクトリアも感じ始めている。

娘の成長を喜びながら、いつか離れていくことを寂しく思う。

その複雑な母親の感情も丁寧に描かれていた。

悪漢を二十秒で倒すノンナ

終盤では、偽造文書を作っていた古書店主ザカリーが、ビクトリアを罠へ誘い込む。

ビクトリアは最初に古書店を訪れた時から、店に並ぶ本へ不自然さを感じていた。

紙や薬品の匂いから贋作を見抜き、貸金商会の事件とつながっている可能性を考えていた。

そこで、あえて古書店へ通い続け、自分へ接触させようとする。

危険を承知したうえで、相手から罠を仕掛けさせる。

元工作員らしい捜査方法である。

しかし、計画を知らされていなかったジェフリーにとっては、妻が一人で危険へ飛び込んだことになる。

自由を尊重したい。

それでも、大切な人が何も言わず命を危険にさらすのはつらい。

ビクトリアは、今後は必ず相談すると約束する。

家族を持つということは、何もかも一人で解決しないことでもある。

前巻では一人で判断し、危険が迫れば姿を消していたビクトリアが、少しずつ夫へ頼ることを学んでいる。

そして、逃げたと思われたノンナが天井から現れ、冒険小説の登場人物をまねて名乗りを上げる場面は爽快だった。

シェン国武術を使い、悪漢たちをわずかな時間で制圧する。

あまりにも強い。

母親を助けるために身につけた力を、ここぞという場面で使う。

まさに「手札は見せる時まで隠しておく」という教えを実践している。

格好良い場面であると同時に、母親に似てきたノンナの将来が少し心配になる場面でもあった。

愛妻家ジェフリーの深い愛情

本巻のジェフリーは、前巻以上に愛妻家である。

ビクトリアが助手の仕事を再開したいと相談すれば、快く認める。

酒場へ一人で行きたいと頼めば、馬車を使ってゆっくりしてくるよう送り出す。

宝探しへ行きたい気持ちを隠していれば、自分から家族旅行を提案する。

危険な場面ではビクトリアの力を信頼し、並んで戦う。

何でも無条件に肯定しているわけではない。

心配も嫉妬もする。

しかし、自分の感情を理由にビクトリアの自由を奪うことはしない。

妻を守る対象としてだけではなく、自分の意思と能力を持つ一人の人間として尊重している。

ビクトリアも、ジェフリーにすべてを任せて守られるだけではない。

自分が彼とノンナを守ると本気で考えている。

一般的な夫婦の役割とは少し違うかもしれない。

それでも、二人にとって自然な形で支え合っている。

ジェフリーがビクトリアへ「君が行きたい場所へ行こう」と言い、ビクトリアが「帰る場所はあなたの隣だ」と答える。

互いを縛らず、帰ってくる場所だけは共有している。

この関係がとても良かった。

過去の痛みを楽しい記憶で上書きする

シビルの森へ向かう途中、ジェフリーはかつて戦争が行われた場所で馬車を止める。

そこは、多くの兵士が命を落とし、ジェフリーの婚約者が心を壊す原因となった土地でもある。

彼は亡くなった者たちへ酒を捧げ、祈りをささげる。

そして、戦争の記憶は今では古い傷であり、もう痛みはないと語る。

過去を消すことはできない。

婚約者を救えなかった後悔も、家族から受けた傷も残っている。

しかし、新しい家族と同じ場所を訪れ、以前とは違う思い出を作ることはできる。

かつて死と後悔に結びついていた土地へ、今度は愛する妻と娘と一緒に冒険旅行として向かう。

痛みの記憶が、少しずつ楽しい記憶によって包まれていく。

ビクトリアも同じである。

工作員時代に身につけた暗号解読や体術は、かつては命令と生存のために使うものだった。

今では家族との冒険を楽しみ、人を助け、歴史の謎を解くために使っている。

過去の能力や記憶を捨てるのではなく、使い方を変える。

本作の人生修復は、過去をなかったことにするのではない。

痛みを抱えたまま、新しい意味を与え直す物語なのだと感じた。

自由になった家族の人生修復物語

『手札が多めのビクトリア 2』は、暗号解読、宝探し、戦闘、歴史の謎など、多くの要素が詰まった一冊である。

有名冒険小説に隠された暗号。

歴史から消えた第五王女。

工作員と王女の逃避行。

森の奥に眠る金鉱脈。

偽造契約書を使った詐欺事件。

それぞれの出来事を、ビクトリアが多彩な手札によって解決していく展開は痛快だった。

しかし、本巻で最も心に残ったのは、ビクトリアが自由に生きることを家族から認められている点である。

前巻の彼女は、自由になるためにすべてを捨てて逃げた。

誰かとつながれば危険に巻き込む。

信じれば裏切られる。

そう考え、いつでも一人で消えられるように生きていた。

本巻の彼女には、帰る家がある。

酒場へ一人で出かけても、冒険へ旅立っても、帰れば明かりのついた家と家族が待っている。

自由とは、誰とも関わらず一人で生きることではなかった。

好きな場所へ行き、やりたいことへ挑戦し、それでも帰りたいと思える場所を持つことだった。

ジェフリーはビクトリアの翼を折らない。

ノンナは母親と並んで飛べるほど強く成長している。

三人は互いを守りながら、それぞれの自由も大切にしている。

圧倒的な手札と家族の絆を使い、自分たちらしい未来を切り開いていく。

そんな家族の姿に、読後は清々しい満足感を覚えた。

前巻で手に入れた家族が、本巻では一つのチームとして冒険へ進む。

過去の呪縛から解き放たれたビクトリアたちの人生修復物語を、これからも楽しく見守っていきたいと思える一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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手札が多めのビクトリア1レビュー
手札が多めのビクトリアまとめ
手札が多めのビクトリア3レビュー

考察・解説

シェン国からの帰国

シェン国からの帰国と真の平穏への到達の全貌

『手札が多めのビクトリア 2』における「シェン国からの帰国」は、アンナ(ビクトリア)一家が工作員としての逃亡生活に真の終わりを告げ、アシュベリー王国で愛する家族と共に「真の平穏」な生活をスタートさせる重要な節目として描かれている。シェン国での五年間とノンナの成長、新しい身分の確立、規格外の強さを見せるノンナと両親の覚悟、懐かしい人々との再会、および過去の傷の受容と真の平穏への実感についての解説は以下の通りである。

シェン国での滞在と12歳となったノンナの成長

アンナ、ジェフリー、ノンナの三人は、シェン国での五年にわたる滞在を終えてアシュベリー王国へ帰国した。

・この五年間の最大の変化は、12歳になったノンナの目覚ましい成長である。

・ノンナは現地のシェン国武術の鍛錬にのめり込み、アンナの体術とはまた異なる高度な武術を身につけた。

・帰国前には、ノンナがこっそり見つけた抜け穴を通って現地の屋台街の味を楽しむなど、家族が異国での生活を十分に楽しんだ様子も描かれている。

巧妙に設定されたミドルネームと公式な新身分

雨のアシュベリー王国に到着した一家を、王国の工作員であるマイクが出迎えた。

・公式には「ハグル王国から逃亡してきたビクトリアは死亡した」ことになっている。

・今後の生活では本名と夫の姓を合わせたアンナ・アッシャーを名乗ることが確認された。

・かつての知人に不審がられないよう、ミドルネームとしてビクトリアを残し、知人たちの前では今まで通りビクトリアを名乗るという巧妙な設定がなされた。

武術習得の優先と特務隊員を凌駕する才能

アンナとジェフリーは、ノンナに淑女教育よりも身を守るための武術習得を優先させるという夫婦の結論を出していた。

・王都へ向かう道中で行われた手合わせでは、ノンナは助走なしの跳躍や無尽蔵の持久力を発揮した。

・本職の特務隊員であるマイクを打ち負かしてしまった。

・アンナは娘の規格外の才能に驚きつつも、自分の身を守る術を持たせるという決意を新たにしている。

東区の屋敷での新生活と温かな再会

一家は、ジェフリーの兄エドワードが手配してくれた東区の立派な屋敷で新生活を開始した。

・アンナとノンナはすぐにかつての恩人であるヨラナや、歴史学者のバーナードを訪問し、再会を喜び合った。

・バーナードからは再び助手の仕事を頼まれ、アンナは家族の同意を得てそれを引き受けた。

・翌日にはアンダーソン家を訪れ、エバや、18歳の立派な青年に成長したクラークとも再会し、以前と変わらぬ温かい人間関係を築き直した。

身体に残された過去の代償と満たされた日常

アンナは、過酷な工作員時代に強いられた無理な減量などが原因で、新しく子供を授かるのは難しいかもしれないとシェン国の医師から告げられていた。

・彼女はそれを悲観することはなかった。

・周囲の人々がそのことに触れない優しさに感謝した。

・ジェフリーからの惜しみない愛情と、健やかに育つノンナがいる現在の生活に十分に満たされていると心から実感している。

まとめ

シェン国からの帰国を巡る一連の全貌は、五年の滞在を経た帰国から始まり、アンナ・ビクトリア・アッシャーとしての新身分の獲得、ノンナの武術の飛翔、旧友たちとの再開、そして過去の代償の受容と現在の幸福の実感に至るまで、主人公が逃亡者から真の家族の一員へと人生を修復させた軌跡を明瞭に示している。過去の工作員時代の呪縛や身体に残された傷という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を互いを心から愛する家族との絆と穏やかな日常によって完璧に確立するに至る、人生修復の完了と平穏の記録である。帰国の瞬間から、身分の確立、人間関係の再構築、そして心の満たしへと繋げたプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

冒険小説の暗号解読

冒険小説の暗号解読と歴史の真実の全貌

『手札が多めのビクトリア 2』において、「冒険小説の暗号解読」は物語を大きく動かし、百年前の歴史の真実と莫大な富へと主人公一家を導く重要な要素として描かれている。著者直筆本に仕掛けられた誤字の罠、元工作員アンナの手札と真の鍵の発見、解読された最初のメッセージと解かれなかった理由、森の奥で発見された第二の暗号、および暗号が明かした歴史の真実についての解説は以下の通りである。

著者直筆本に仕掛けられた誤字の罠

物語の鍵となるのは、百年前に出版された有名な冒険小説『失われた王冠』(著者:エルマー・アーチボルト)である。

・歴史学者のバーナードは、著者の直筆本に難しい単語は正しく書かれているのに簡単な単語の綴り間違いが定期的にあることに気づいた。

・そこに暗号が隠されていると直感していた。

・彼は20年間解読に取り組んだものの叶わず、アンナへの結婚祝いとしてこの本を贈った。

元工作員アンナの着眼点と真の解読手順

工作員時代に暗号解読を得意としていたアンナは、当初、誤字の規則性や古い暗号法を試したが、3日間取り組んでも全く解けなかった。

・彼女は誤字が読み手をそちらに誘導するための罠であることに気づいた。

・真の鍵は、見開きの左上に描かれている美しい挿絵にあった。

・向きが違う生き物や木の実の数だけ文章を飛ばし、次の文章の頭文字を拾っていくという仕組みであった。

・工作員の養成所で習う最初の暗号法よりも易しい手法であった。

解読されたメッセージと百年間封印された理由

暗号には、失われた宝を見つけたが裏切りに遭い怪我をし、アシュベリー王国の心優しい王女に看病されて回復したため王冠の情報をアシュベリーの人に向けて残すという旨が記されていた。

・王冠に至る最初の道標がシビルの森にあることが示された。

・簡単な暗号が百年もの間解読されなかった理由は、手書きの羊皮紙の本が非常に高価であったためである。

・数少ない裕福な収集家の間でひっそりと死蔵され、暗号の存在を疑う人も解読しようとする人もいなかったためであった。

シビルの森での壺の発見とハグル式暗号

暗号の道標に従ってシビルの森を進んだアンナたちは、石造りの空き家の屋根裏から青銅の壺を発見した。

・中にはエルマーの未発表小説『長い旅の終わり』らしき羊皮紙の束と、意味不明な文章が書かれた一枚の羊皮紙が入っていた。

・一枚の羊皮紙は、ハグル王国の天才工作員が作り出した、数字の組み合わせを鍵とする高度な暗号であった。

・アンナは「カロライナ王女」の名前を鍵として使うことで解読に成功した。

暗号が明かした百年前の工作員夫婦の愛

高度な暗号を解読した結果、衝撃的な歴史の真実が明らかになった。

・著者エルマーは、アンナと同じハグル王国の潜入工作員であった。

・過酷な結婚を恐れたアシュベリーの第五王女カロライナを城から逃がし、シビルの森で夫婦として暮らした。

・火口で金鉱石を発見したものの、組織の追っ手に見つかり、彼らを返り討ちにして身を隠した。

・カロライナの、国へのせめてものお詫びに金鉱の存在を王家に伝えてほしいという最後の願いを叶えるため、小説の中に暗号を仕込んだ。

・未発表作『長い旅の終わり』にもハグル式の暗号が織り込まれており、記憶を失っていく妻カロライナを最期まで深く愛し介護し続けたエルマーの切ない晩年の想いが記録されていた。

まとめ

冒険小説の暗号解読を巡る一連の全貌は、直筆本に隠された誤字の罠の打破から始まり、挿絵を利用した解読の成功、シビルの森での第二の暗号発見、高度なハグル式暗号の解析、そして百年前の工作員夫婦の真実と深い愛の露呈に至るまで、暗号の裏に隠された歴史と物語の結末を明瞭に示している。組織の制約や秘められた歴史という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権をアンナの高度な解読技術と先人たちの想いの受容によって完璧に確立するに至る、歴史の解明と愛の結実の記録である。暗号の発見から、解読アプローチの転換、第二の試練の突破、そして秘められた愛の証明へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

失われた王冠と金鉱

失われた王冠と金鉱がもたらした真実の全貌

『手札が多めのビクトリア 2』において、「失われた王冠」と「金鉱」は、百年前の切ない愛の真実を明らかにし、同時に主人公一家に莫大な富と新たな未来をもたらす物語の最大の鍵として描かれている。失われた王冠の正体、金鉱が暗号として残された理由、ビクトリア一家による金鉱の発見、真実の隠蔽と報奨金の授与、および金鉱がもたらした未来についての解説は以下の通りである。

金鉱脈の比喩と最愛の妻を示す真の定義

有名な冒険小説『失われた王冠』の中で、主人公が探し求めた宝物である王冠の正体は、シビルの森の奥深くにある火口に眠る金鉱脈の比喩であった。

・暗号を解き明かすための鍵となる言葉が「私の王冠」であった。

・著者である元ハグルの工作員エルマーにとっての真の王冠は、生涯愛し抜いた妻・カロライナ王女そのものであったことも示されている。

王家への葛藤と暗号に託された遺言

百年前、エルマーとカロライナはシビルの森の火口で金鉱石を発見したが、人目を引くことを恐れて金には頼らずに生活していた。

・ハグルの追っ手に金鉱の場所と引き換えに見逃すよう要求され、火口へ案内した帰りに殺されそうになったが、エルマーは彼らを返り討ちにして生き延びた。

・天寿を全うしようとするカロライナは、死の間際に国のためになにもできなかったせめてものお詫びに金鉱の存在をアシュベリー王家に伝えてほしいと願った。

・エルマーはその願いを叶えようとしたが、妻を政略結婚の犠牲にしようとした王家を信用しきれなかった。

・暗号を解読して王冠に到達した者にそれを託すという形で、小説の中に暗号として書き残すこととなった。

シビルの森での調査と莫大な金鉱脈の特定

暗号を解読したビクトリア(アンナ)たちは、指示に従ってシビルの森を進み、滝の近くで風が吹き出す石積みの壁を発見した。

・骸骨が転がる裂け目を抜けて火口へ到達した。

・そこでノンナが金がたっぷり混ざった白い石を拾い、シビーと名付けてペットにした。

・その石を見たジェフリーはそれが金鉱石であることに気づき、火口一帯に大規模な金鉱脈が眠っていることを突き止めた。

存在の偽装と国家からの莫大な報奨金

ジェフリーは、金鉱石が国有地で発見されたため国へ報告することを決めた。

・エルマーの遺言まで公表すれば、暗号を解読したビクトリアの経歴や正体まで調査される危険があった。

・エルマーの遺言は伏せられ、エドワードの計らいによって「歴史学者のバーナードが暗号を解読し、ジェフリーが金鉱脈を発見した」という形で国に報告された。

・国王から功績が公表され、火口の金鉱脈は露天掘りで大量の金が採掘できることが判明した。

・これによりジェフリーは子爵に叙され、バーナードと共に一生困らないほどの莫大な報奨金を授与された。

夢の実現と社会的自立への資金活用

莫大な大金を手にしたビクトリアとジェフリーであったが、自分たちの贅沢のためにそれを使うことはしなかった。

・ジェフリーは城壁の外に広大な土地を買い、ビクトリアが長年思い描いていた羊牧場を作って毛糸を紡いで暮らすという夢を叶えるための牧場建設を開始した。

・ビクトリアは、過去を捨てて逃げ込んできた女性たちが暮らす南区修道院の建物を修繕した。

・彼女たちが賃金を得て自立できるよう、軟膏工房や羊毛加工の仕事場を設立する資金として報奨金を提供した。

まとめ

失われた王冠と金鉱を巡る一連の全貌は、冒険小説に隠された二重の意味から始まり、百年前の夫婦の葛藤と遺言、シビルの森での金鉱脈の発見、正体隠蔽のための報告工作、そして現代の元工作員による羊牧場建設や女性たちの自立支援への活用に至るまで、莫大な富がもたらした希望の軌跡を明瞭に示している。暗い過去の呪縛や社会的な貧困という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を百年前の遺志の継承と未来を開く事業資金への昇華によって完璧に確立するに至る、富の継承と救済の記録である。暗号の開露から、金鉱の特定、功績の受容、そして生きたお金としての還元へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ノンナの成長と武術

娘ノンナの成長と武術の全貌

『手札が多めのビクトリア 2』において、娘ノンナの「成長と武術」は、単なる戦闘能力の向上としてだけでなく、彼女が自立し、「愛する母を守る」という強い覚悟を持った一人の人間として育っていく過程として描かれている。シェン国での5年間とシェン国武術の習得、音を消す歩法と実戦思考、悪党を圧倒するデル・ドルガー、武術を学ぶ真の動機、および淑女としての顔とのギャップについての解説は以下の通りである。

シェン国での鍛錬と規格外の身体能力

アンナ一家がシェン国で過ごした5年間で、ノンナは12歳の背が高く引き締まった少女へと成長した。

・彼女はこの異国で「シェン国武術」の鍛錬にのめり込んだ。

・アンナの体術とは異なる高度な技術であり、助走なしで高く跳躍し、半円を描くように壁を駆け上がり、無尽蔵の持久力で動き続けるという身体能力を身につけた。

・帰国道中では、現役の特務隊員であるマイクとの手合わせで彼を圧倒し、勝利を収めるほどの実力に達した。

気配を断つ歩法と実戦的な脱出技術

ノンナはシェン武術のカン先生から「体重を移動するときに風を想像する」という教えを受け、音も気配も立てずに移動する歩法を習得した。

・元エース工作員のアンナでさえ背後に立たれるまで気づかず、逆に教えを乞うほどの精度であった。

・拘束された時の脱出用として、ペットの子猫に衣服に縫い付けたポケットから糸鋸の刃を運ばせるよう仕込むなど、サバイバルおよび実戦思考を備えていた。

成人男性5人を瞬時に制圧する圧倒的武力

その武術の実力が最も発揮されたのが、王都の空き家でアンナがザカリー率いる偽造集団5人に囲まれた場面である。

・ノンナは天井から飛び降り、愛読する冒険活劇小説の主人公になりきって「地獄からの使者、デル・ドルガー!ぽいやつ参上!」と名乗りを上げた。

・猛烈な速さの正拳突きや手刀、回し蹴りを繰り出した。

・わずか20秒足らずで成人男性5人を全員制圧し、縛り上げてしまった。

母を守るための強い覚悟と成長の理由

ノンナがここまで武術にのめり込み、強さを求めた最大の理由は「私がお母さんを守る」という強い覚悟であった。

・かつて孤独だった自分を拾い、家族にしてくれたアンナを守るため、彼女は己を鍛え上げていた。

・幼なじみのクラークとの子供時代の結婚の約束を無効にしようとした理由も「お嫁に行ったらお母さんを守れなくなるから」であった。

・常に自分が守る側だと思っていたアンナは、娘のこの深い愛情と覚悟を知って激しく動揺し、同時にその成長に胸を打たれた。

美少女としての外見と精神的な逞しさ

圧倒的な武力を誇るノンナであるが、一方で外見は金髪に青灰色の瞳を持つ完璧な貴族の美少女である。

・武術の師の「自分より弱い者に技を使ったらその瞬間に破門」という教えを守り、日常や貴族の茶会では武術の腕を隠して完璧な「淑女」として振る舞う。

・裏では飛んできたコガネムシを鋭い手刀で叩き落としたりもしている。

・意地悪な令嬢にも手を出さず、ヨラナ様から教わった知識を使って言葉と知恵で対抗するなど、武力だけでなく精神的にも賢く逞しい女性へと成長している。

まとめ

娘ノンナの成長と武術を巡る一連の全貌は、シェン国での鍛錬による圧倒的な武術の習得から始まり、実戦思考の開花、悪党相手の無双、母を守るための覚悟、そして淑女としての品位と知恵の獲得に至るまで、少女が真の強さと愛を獲得するまでの軌跡を明瞭に示している。孤児としての過酷な起点や暴力という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの武勇と大切な母を守る純粋な意志によって完璧に確立するに至る、能力の昇華と愛の記録である。武術の習得から、実戦での証明、真動機の開露、そして品性と知性の獲得へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

偽造詐欺事件の解決

偽造詐欺事件の解決と完全決着の全貌

『手札が多めのビクトリア 2』における「偽造詐欺事件の解決」は、アンナ(ビクトリア)が元工作員としての手札である偽造の知識や体術と、夫ジェフリーの手配、そして娘ノンナの圧倒的な武力などを結集させ、悪辣な詐欺集団を壊滅させる痛快な展開として描かれている。事件の発端から偽造契約書の看破、拠点への踏み込み、主犯ザカリーの罠とノンナの活躍、執念の屋敷襲撃と完全決着、および解決がもたらした影響についての解説は以下の通りである。

南区修道院での異変と偽造文書の即座の看破

アンナは、南区修道院の院長から「四十年前の借金が複利で膨れ上がったとして、突然家を手放す人が相次いでいる」という話を聞き、不審を抱いた。

・被害者の老婦人から契約書を見せてもらったアンナは、紙からごくわずかに杉のおがくずと紅茶の匂いがすることに気づいた。

・工作員時代に文書偽造の知識を持っていたアンナは、それが新しい羊皮紙を古く見せる経年加工を施された偽造文書であると看破した。

専門家による鑑定と貸金商会への踏み込み

ジェフリーは王城の資料管理部から鑑定士を呼び、偽造であることを証明させた。

・第二騎士団が詐欺の拠点である「グッドウィン貸金商会」へ踏み込んだ。

・商会の人間は次々と連行され、その中には詐欺集団に加担していた少女オーリの姿もあった。

・主犯である古書店の店主ウィル・ザカリーは野次馬に紛れて難を逃れていた。

空き家での誘い出しとノンナの電撃的無双

アンナは以前から「ザカリー古書店」に不自然な経年加工の偽装古書があることに気づいており、ザカリーを疑っていた。

・ザカリーも商会摘発の黒幕がアンナであると気づき、彼女を「別の建物に古書がある」と騙して空き家へ誘い込み、仲間と共に殺害しようとした。

・アンナに同行していたノンナが、愛読する冒険活劇の主人公デル・ドルガーを名乗って天井から登場した。

・ノンナはシェン武術を駆使し、わずか20秒足らずで男たち全員を制圧した。

・ノンナの合図で王国の工作員マイクが駆けつけ、ザカリーたちは捕縛され強制労働刑となった。

脱獄とアッシャー家襲撃に対する返り討ち

事件は終わったかと思われたが、ザカリーは収容所で火事を起こして脱走した。

・オーリや仲間の男を連れてアッシャー家へ侵入し、侍女のバーサを人質にとってアンナへの復讐を企てた。

・アンナは元エース工作員としての圧倒的な体術を発揮し、ナイフ投げや拳、肘打ちで瞬く間にザカリーやオーリたちを返り討ちにして制圧した。

・再び彼らを第二騎士団に引き渡し、事件は真の決着を迎えた。

市民への損害回復と古書店の再開

この事件の解決により、グッドウィン貸金商会に家を取り上げられそうになっていた平民や下級貴族たちの損害は、極力取り返されることとなった。

・親の借金を理由に店を奪われ絶望していた本来の古書店の持ち主にも店が返還され、「サンドル古書店」として再開された。

・店主はアンナたちに深く感謝し、ノンナに大好きな『デル・ドルガー』の全巻を贈った。

まとめ

偽造詐欺事件の解決を巡る一連の全貌は、偽造契約書の匂いによる異変の察知から始まり、騎士団との連携による拠点の摘発、主犯の罠に対するノンナの電撃的な無双、脱獄後の屋敷襲撃に対する完全な返り討ち、そして被害を受けた人々の生活再建に至るまで、一家の知性と武勇が社会の害悪を打ち払う軌跡を明瞭に示している。悪徳詐欺や暴力的な復讐という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権をアンナとノンナの圧倒的な武力と正義の実行によって完璧に確立するに至る、詐欺壊滅と秩序回復の記録である。偽造の看破から、拠点摘発、罠の破砕、返り討ち、そして平和の還元へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

手札が多めのビクトリア1レビュー
手札が多めのビクトリアまとめ
手札が多めのビクトリア3レビュー

登場キャラクター

アッシャー家

アンナ・ビクトリア・アッシャー(ビクトリア)

家族を深く愛し、夫や娘を守ろうとする。暗号解読や体術に優れている。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵夫人。元ハグル王国エース工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
 『失われた王冠』の暗号を解読し、シビルの森で金鉱脈を発見する。ザカリー古書店の詐欺事件を暴き、屋敷を襲撃した一味を返り討ちにする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シェン国から帰国し、アッシャー子爵夫人として貴族社会に関わり始める。報奨金で羊牧場の設立や修道院の支援を行う。

ジェフリー・アッシャー

妻のアンナと娘のノンナを深く愛し、二人の自由を尊重する。元第二騎士団長の体格と実力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵。第二騎士団の相談役。
・物語内での具体的な行動や成果
 家族旅行でシビルの森へ同行し、襲撃者を撃退する。金鉱脈の発見を国へ報告する。偽造契約書詐欺の摘発を主導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シェン国産薬の輸入と金鉱脈発見の功績により、子爵に叙される。

ノンナ

明るく活発であり、母親を守るために強くなろうと努力する。石や猫を好む。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 シェン国で高度な武術を習得する。シビルの森で金鉱石(シビー)を拾う。屋敷で詐欺集団の男たちを武術で制圧する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 十二歳に成長し、貴族の茶会に参加して令嬢たちと交流を始める。

リード

真面目な働き者である。不思議な一家の行動に驚きつつも仕える。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の馬係。御者。
・物語内での具体的な行動や成果
 シビルの森への家族旅行に同行する。休日にマイクと食事へ行き、一家の武勇伝を話す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 商会から解雇された後、マイクの紹介でアッシャー家に雇われる。

バーサ

気が利き、主人の事情に配慮して動く。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 アシュベリーに帰国した一家を出迎える。オーリの世話や修道院への薬の評判を報告する。屋敷が襲撃された際は人質になる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エドワードの手配で雇われた。

料理人

料理の腕が確かである。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷が襲撃された際、厨房に入ってきた賊と戦って制圧する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

掃除担当の若い侍女

詳細な性格の描写はない。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋敷の襲撃時に縛られて洗濯場に放置される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

護衛役の男たち

職務に忠実である。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー子爵家の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナとノンナが外出する際に同行を申し出る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷の襲撃事件後、防犯のために雇われる。

アシュベリー王国 王城・騎士団

エドワード・アッシャー

頭脳明晰で洞察力が鋭い。家族を守るため密かに情報や人員を手配する。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の伯爵。資料管理部、諸制度維持管理部、修繕部の部長。第三騎士団の長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェフリーたちの帰国に合わせて屋敷や使用人を手配する。金鉱脈発見の報奨金を受け取らせるため、バーナードに協力を頼む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 複数の暇な部署を兼任している。

マイク

実務に長け、聞き上手である。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の文官。第三騎士団の工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
 帰国したアンナ一家を迎え、道中で武術の手合わせをする。リードから情報を集める。詐欺集団の捕縛を偽装する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アンナに関する情報の管理を任される。

チェスター

軍人風の外見を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヨラナの裏隣の家に住み、アンナからマイクへの連絡を仲介する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マイルズの後任として配置される。

デール

生真面目な雰囲気を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王城の資料管理部に所属する偽造書類の鑑定士。
・物語内での具体的な行動や成果
 グッドウィン貸金商会の契約書を鑑定し、経年加工の偽造であると断定する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

警備隊

職務を遂行する。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の警備隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 シビルの森で赤花菱草の畑を焼き払い、栽培していた男たちを連行する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

第二騎士団員たち

任務を的確にこなす。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の第二騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 グッドウィン貸金商会へ踏み込み、詐欺集団の男女を捕縛する。屋敷を襲撃したザカリーたちを連行する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

第三騎士団員たち

高度な暗号解読能力や情報網を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の裏の工作組織。
・物語内での具体的な行動や成果
 バーナードから渡されたハグル式の暗号文書を解読する。エルマーの子孫を調査する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

アシュベリー王国 貴族とその関係者

ヨラナ・ヘインズ

気が強く優しい。アンナやノンナを気遣う。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の前伯爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナの無事な帰国を喜ぶ。自身の過去の経験を話し、アンナに自由に行動するよう助言する。ノンナへ社交界の注意点を指導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

スーザン

感情豊かでノンナを可愛がる。

・所属組織、地位や役職
 ヨラナに仕える侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 帰国したノンナと再会して涙を流し、編み物やボビンレースの話で交流する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

バーナード・フィッチャー

学問に熱心であり、アンナやノンナを家族のように思っている。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の歴史学者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナの結婚祝いに冒険小説『失われた王冠』を贈る。金鉱脈発見の経緯を学会で発表するため、第一発見者の名義を引き受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 報奨金を辞退し、すべてジェフリーに譲る。

通いのハウスメイド

職務を果たす。

・所属組織、地位や役職
 バーナードの家で働くメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 バーナードの家の掃除や食事の用意を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

クラーク・アンダーソン

知的で真面目である。ノンナに好意を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 アンダーソン伯爵家の令息。外国語を扱う文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 記録係としてシビルの森への旅に同行し、スバルツ語の通訳を務める。ノンナの茶会に付き添い、他の令息を牽制する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 子供時代のノンナとの結婚の約束を一度保留にする。

エバ・アンダーソン

世話好きで華やかである。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の伯爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 帰国したアンナたちを涙と笑顔で出迎え、結婚を祝福する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

エリザベス・マグレイ

気位が高いが、客観的で聡明な面を持つ。

・所属組織、地位や役職
 マグレイ伯爵家の令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
 茶会でノンナの身分を問いただすが、反撃されて以降は親しくなる。ノンナを自宅に招き、様々な茶会へ誘う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 友人としてノンナの大茶会の計画を手伝う。

プライズ

甲斐甲斐しく夫を支える。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー伯爵夫人。エドワードの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナの事後報告による謝罪を快く許す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

コートニー

心を病んでおり、記憶が混濁することがある。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー伯爵家の前当主夫人。ジェフリーとエドワードの母。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナからの挨拶を受け入れ、過去のジェフリーについて涙を流す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

ヘンドリッジ

素直な性格である。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の令息。
・物語内での具体的な行動や成果
 茶会でノンナを遠乗りに誘うが、エリザベスとクラークに阻まれて謝罪する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

お茶会の参加者たち

貴族社会の噂や力関係に敏感である。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の令息や令嬢たち。
・物語内での具体的な行動や成果
 ノンナを囲んで話しかける。クラークの将来の野心について噂を交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

アシュベリー王国 市井の人々・その他

イライザ

誠実で責任感があり、貧しい人々を救おうとする。

・所属組織、地位や役職
 南区修道院の院長。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナの軟膏の販売を依頼し、利益を受け取る。偽造契約書詐欺の被害者である老婦人をアンナたちに紹介する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寄付や修繕支援を受け、修道院の環境を改善する。

南区修道院の修道女たち

質素に暮らす。

・所属組織、地位や役職
 南区修道院の修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
 身を寄せる女性たちと同じ簡素な部屋を使用する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

南区修道院に身を寄せる女性たち

過去に過酷な経験を持つ者が多い。

・所属組織、地位や役職
 南区修道院で暮らす女性たち。
・物語内での具体的な行動や成果
 日雇いの仕事や院内の作業に従事する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軟膏作りや羊毛加工の仕事に就く予定となる。

契約書詐欺の被害者の老婦人

父親の残した借金に困惑している。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国南区の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 修道院へ別れの挨拶に訪れる。アンナたちに古い契約書を見せ、事情を説明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 詐欺集団の摘発により、家を取り返せる見込みとなる。

サンドル古書店の店主

物静かな老人である。

・所属組織、地位や役職
 王都の古書店の店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 親の借金を理由に店を奪われていたが、返還された店でアンナに感謝を伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 店を取り戻し、ノンナに本を贈る。

ウィル・ザカリー

狡猾で冷酷である。人を騙して利益を得る。

・所属組織、地位や役職
 ザカリー古書店の店主。文書偽造詐欺集団の主犯。
・物語内での具体的な行動や成果
 偽造契約書で平民や貴族から家を奪う。アンナを空き家で殺害しようとするが返り討ちに遭う。収容所から脱走し、アンナの屋敷を襲う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 捕縛され、長期の強制労働刑に処される。

詐欺集団の男たち

暴力で物事を解決しようとする。

・所属組織、地位や役職
 ザカリーの手下たち。
・物語内での具体的な行動や成果
 空き家でアンナを襲うがノンナに倒される。ザカリーと共にアッシャー家を襲撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 騎士団に連行される。

ザハーロ

無口だが面倒見が良い。情報収集に長けている。

・所属組織、地位や役職
 酒場「黒ツグミ」の店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンナの帰還と結婚を祝う。ザカリー古書店やオーリの情報をアンナへ提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

黒ツグミの客たち

穏やかに酒を楽しむ。

・所属組織、地位や役職
 酒場「黒ツグミ」の客。
・物語内での具体的な行動や成果
 店の隅で仲睦まじく会話を交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

シビルの町のホテルの使用人

客の問いに答える。

・所属組織、地位や役職
 シビルの町のホテルの従業員。
・物語内での具体的な行動や成果
 白い石碑について知らないと答え、林業組合へ行くよう助言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

シビル林業組合の組合長

地域の事情に詳しい。

・所属組織、地位や役職
 シビル林業組合の長。
・物語内での具体的な行動や成果
 森の奥の状況をアンナたちへ説明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

マック

仲間を気遣い、口を滑らせる傾向がある。

・所属組織、地位や役職
 赤花菱草を栽培する男たちの一人。
・物語内での具体的な行動や成果
 畑を守るためにアンナたちを襲うが捕まり、命乞いをして事情を話す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 警備隊に引き渡される。

赤花菱草を栽培する男たち

違法な手段で利益を得ようとする。

・所属組織、地位や役職
 林業組合などに属する男たち。
・物語内での具体的な行動や成果
 違法植物の畑を隠すため、アンナたちを鉈で襲撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 畑を焼却され、警備隊に連行される。

井戸掘り職人たち

職務に誇りを持つ。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アッシャー家が購入した荒れ地で井戸を掘り、水が出ることを請け負う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

牧場の作業員たち

労働に従事する。

・所属組織、地位や役職
 アッシャー家の牧場建設に携わる人々。
・物語内での具体的な行動や成果
 羊舎や工房の建設、柵作り、牧草の種播きを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

スバルツ王国

オーリ

過酷な環境に傷つき、他者へ敵意や不信感を抱く。安易な利益へ流されやすい。

・所属組織、地位や役職
 スバルツ王国出身の少女。後に詐欺集団の一味。
・物語内での具体的な行動や成果
 強制結婚から逃れて森に潜伏し、保護される。アッシャー家を逃げ出して詐欺集団に加わり、逮捕される。脱走して屋敷を襲撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 禁固刑に処され、アシュベリー王国で服役する。

百年前の人々

エルマー・アーチボルト

妻を深く愛し、彼女との平穏な暮らしを守り抜いた。

・所属組織、地位や役職
 元ハグル王国の潜入工作員。小説家。雑貨店店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 カロライナ王女を逃がし、シビルの森で夫婦として暮らす。金鉱石を発見し、組織の追っ手を返り討ちにする。小説や遺言に暗号を残す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 工作員を辞めて平民として天寿を全うする。

カロライナ第五王女(バイオレット)

不慣れな生活にも弱音を吐かず、夫を愛した。

・所属組織、地位や役職
 アシュベリー王国の第五王女。後にエルマーの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランダル王子との結婚を恐れてエルマーと出奔する。晩年は記憶を失い、少女へ退行して亡くなる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 公式記録から姿を消し、平民の妻として生涯を終える。

ジャック

広い世界に憧れを持つ。

・所属組織、地位や役職
 エルマーとバイオレットの息子。
・物語内での具体的な行動や成果
 両親の正体を知らぬまま育ち、結婚して王都へ旅立つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 両親の過去に関わらず、自身の人生を生きる。

ジャックの妻

義父母を慕い、仲の良い夫婦になろうと願う。

・所属組織、地位や役職
 ジャックの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジャックと共に王都へ向かう馬車で、手作りの弁当を食べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特に地位の変化はない。

手札が多めのビクトリア1レビュー
手札が多めのビクトリアまとめ
手札が多めのビクトリア3レビュー

展開まとめ

プロローグ * シェン国にて 

帰国前の荷造り

シェン国での五年間を終えたアンナは、帰国に備えて離れの荷物を整理した。ノンナが持ち帰ることを選んだのは、イルからもらった翡翠の獅子、武術の鍛錬着、シェン国語の本だけだった。大切なのは思い出や人々とのつながりであり、何よりアンナと一緒に暮らせれば十分だと語った。

シェン国の五年間

アンナとノンナは、世話になった屋敷の庭を最後に見て回った。ノンナはシェン国で武術を学べたことが最も楽しかったと振り返った。五年間で背も伸び、乳歯もほとんど大人の歯に生え替わっていた。

裏庭の抜け穴

ノンナは最後に秘密を明かし、物置の裏に隠された抜け穴へアンナを案内した。抜け穴は通りの向かいにある空き家の裏庭へ続いており、ノンナはイルと何度もそこを通って屋敷の外へ出ていた。二人は近所で菓子や串焼きを買い、密かに楽しんでいた。

屋台街の味

アンナもノンナと抜け穴を通り、地元の人々が集まる屋台街を訪れた。香辛料入りの肉饅頭や串焼き、糸のような飴、海老を板状に焼いた料理など、安くて美味しい庶民の料理を味わった。アンナは帰国直前までこの場所を知らなかったことを惜しみ、ジェフリーの分も全種類買い求めた。

家族で囲む土産

ジェフリーは持ち帰った料理を喜び、ノンナとイルの抜け穴探検を羨ましがった。アンナは高級店とは異なる庶民の味に魅了され、再びシェン国を訪れることがあれば屋台街へ通いたいと考えた。翌日、三人は五年間暮らしたシェン国を離れ、アシュベリー王国へ帰国する予定となった。

第一章 帰国と再会 

五年ぶりの帰国

アンナたちは五年ぶりに雨のアシュベリー王国へ戻った。船着き場ではマイクが出迎え、王都までの道中で新しい身分について説明した。アンナは今後、アンナ・ビクトリア・アッシャーを名乗り、かつての知人には従来どおりビクトリアと呼ばせることになった。

成長したノンナ

十五歳になったノンナは背が伸び、シェン国武術を高い水準まで身につけていた。アンナとジェフリーは淑女教育も気にしていたが、シェンでしか学べない武術を優先させていた。ノンナ自身も、弱い相手には技を使わないという師の教えを守ると約束した。

マイクとの手合わせ

王都へ向かう途中、マイクはアンナとノンナの鍛錬に加わった。アンナは視線で攻撃先を誤認させ、鞘に入れた短剣でマイクの利き腕を制した。続いてノンナも高い跳躍力と持久力で翻弄し、本職のマイクから勝利を収めた。

アッシャー子爵家

王都ではエドワードが用意した東区の屋敷が三人を待っていた。屋敷と土地は領地の代わりとして与えられ、最低限の使用人も揃えられていた。ノンナは新しい部屋を喜び、ジェフリーは早速書斎で仕事を始めた。

ヨラナとの再会

アンナとノンナは帰国後すぐにヨラナの屋敷を訪れた。スーザンは二人を見るなり涙を流し、ヨラナもアンナを強く抱きしめた。置き手紙だけで去ったことを謝るアンナに、ヨラナは事情を聞いているから無事に戻っただけで十分だと答えた。

バーナードの抱擁

ヨラナの家にはバーナードも訪れていた。杖を放り出して二人を抱きしめ、帰国とノンナの成長を喜んだ。アンナたちはシェン国の香炉と香を贈り、五年間の暮らしについて語り合った。

助手への復帰

バーナードは、子爵夫人となったアンナに再び助手を頼めるか遠慮がちに尋ねた。アンナは家族を持つ身としてジェフリーへ相談すると答えた。帰宅後に話すと、ジェフリーは親戚となったバーナードを支えてくれるなら自分も助かると快く承諾した。

アッシャー家への挨拶

三人はエドワードの屋敷を訪れたが、本人は不在だった。アンナはコートニーとプライズへ、結婚前の挨拶もなく五年間シェン国へ渡ったことを謝罪した。二人は、ジェフリーが望んで選んだことだから気に病む必要はないと受け入れた。

再会への期待

翌日は家族全員でアンダーソン家を訪れることになった。ノンナは十八歳になったクラークとの再会を心待ちにし、眠れずに部屋でシェン国武術の型を練習した。アンナは技をむやみに見せたり使ったりしないよう念を押した。

満たされた暮らし

アンナは、シェン国の医師から過去の無理な減量が身体に影響した可能性を指摘され、子供を授かれないことを受け入れていた。周囲の人々がそのことに触れずにいてくれる優しさへ感謝し、ノンナとジェフリーがいる現在の暮らしで十分に満たされていると感じた。

ジェフリーの腕の中

帰国初日の夜、アンナはこれまで再会した人々を思い返した。ノンナが眠れず鍛錬していたことをジェフリーへ伝えると、彼は安心して眠るよう促した。アンナは愛する夫の腕の中で、ようやく戻った平穏を感じながら眠りについた。

第二章 冒険小説『失われた王冠』 

アンダーソン家との再会

アンナたちはアンダーソン家を訪れ、エバから結婚と帰国を祝福された。十八歳になったクラークは外国語を扱う文官となり、アンナの授業で語学への苦手意識を克服したと感謝した。ノンナは大人びたクラークに期待していた反応を得られず、少し落胆した。

失われた王冠

バーナードの家で、ノンナは百年前に書かれた冒険小説『失われた王冠』を読み始めた。著者直筆の本には不自然な綴り間違いがあり、バーナードは何らかの意味が隠されていると長年考えていた。彼は結婚祝いとして、その高価な本をアンナへ贈った。

暗号への挑戦

暗号解読を得意としていたアンナは、誤字の位置や間隔を調べ、古い暗号法を試した。しかし規則性は見つからず、誤字自体が暗号ではない可能性を考え始めた。やがて挿絵に描かれた小鳥や魚の向きと数に注目し、それを鍵として文章の頭文字を拾う方法へたどり着いた。

隠された伝言

解読された文章には、著者が失われた王冠を発見したものの裏切られて負傷し、アシュベリー王国の心優しい王女に救われたため、王冠の情報をこの国の民へ残すと記されていた。誤字は読み手を惑わせるための罠であり、本当の鍵は挿絵だった。

カロライナ第五王女

アンナとバーナード、記録係のノンナは毎日少しずつ解読を進めた。その結果、小説の舞台はアシュベリー西部のシビルの森であり、王冠への道は現地で続きを探す仕組みだと判明した。さらに百年前に記録から姿を消したカロライナ第五王女が、著者を看病した王女である可能性が浮かんだ。

家族としての許可

アンナは再びバーナードの助手を務めることについてジェフリーへ相談し、快く認められた。アンナは以前のように自分一人で判断するのではなく、家族を守るため夫と話し合うことを大切にしていた。

黒ツグミへの未練

暗号を解いた興奮の中、アンナは一人で酒場「黒ツグミ」へ行きたい気持ちを抱いた。そこでは母でも妻でもなく、ただのビクトリアとして過ごせたからだった。しかし子爵夫人が夜に家族を残して酒場へ行くことをためらい、自分の望みを抑えようとした。

自由に生きる翼

ジェフリーは、アンナが本当は王冠を探しに行きたいのではないかと見抜いた。子爵夫人や妻という立場に縛られず、自由に羽ばたいて笑うアンナを見たいと語り、家族三人でシビルの森へ行くことを提案した。アンナはその思いに感動しながらも、王冠探しについては慎重に考えると答えた。

行きたかった場所

ジェフリーは、アンナが強く賢く優しいだけでなく、自由な人だから惹かれたのだと伝えた。自由に生きてよいという言葉を受けたアンナは、まず近いうちに行きたい場所があると告げた。ジェフリーは、それがシェン国へ渡る前に通っていた酒場だと察していた。

幕 間 * エドワード・アッシャーの勘 

バーナードの高揚

バーナードは『失われた王冠』の暗号が解かれた喜びを、亡き妻ヘレンの肖像画へ語りかけた。高価な古書を購入したことで妻を怒らせた過去を懐かしみながら、自分は本をビクトリアへ届ける役目だったのだと考え、この謎の結末を見届けるためにもう少し生きたいと願った。

エドワードへの報告

訪ねてきたエドワードに、バーナードは本を結婚祝いとしてビクトリアへ贈り、彼女が数日で暗号を解読したと明かした。暗号には王冠の発見と裏切り、負傷した著者を救った王女の存在が記されており、カロライナ第五王女が関わっている可能性も伝えた。

第五王女の資料

エドワードは帰宅せず王城北棟へ戻り、第五王女失踪事件の古い資料を調べた。彼は、ビクトリアが失われた王冠を探しに行き、その過程で百年前の王女失踪事件まで解決するかもしれないと予感した。しかし公務に私情を挟んで彼女を守っている立場から、マイクにも詳しい計画は明かさなかった。

ビクトリアの稀有な才能

エドワードは、自身を守る戦闘力、暗号解読能力、高価な直筆本を得る幸運のすべてを持つビクトリアなら、本当に歴史的な発見へたどり着くと考えた。同時に、強い才能と魅力を持つ妻を失うまいとするジェフリーの苦労を思い、同行しても警戒されず、記録係として役立つ人物を探し始めた。

母の揺れる記憶

帰宅したエドワードは、ジェフリーがまだ独身だと思い込んでいた母コートニーへ、弟はすでに結婚し、妻も良い人物だと説明した。コートニーは過去にジェフリーを守れなかったことを悔やんで涙を流し、エドワードは時間を行き来する母の記憶に寄り添った。

プライズとの家庭

自室では妻プライズがいつものようにエドワードを迎えた。暴力に満ちた家庭で育った彼にとって、愛されて育った妻が自然に築く穏やかな家庭は、経験したことのない理想の暮らしであった。エドワードは妻への感謝を伝え、その幸せを噛み締めた。

記録係クラーク

家庭でくつろぐ中、エドワードは文官となったクラークなら、王冠探索の記録係に適していると思いついた。その直後、ジェフリーから、五年間ほとんど休まなかったため家族旅行へ出るという手紙が届いた。エドワードはビクトリアが王冠を探しに向かうという自分の予感が当たったと確信し、微笑んだ。

第三章 * それぞれの心の奥底 

旅の準備

『失われた王冠』の暗号を追ってシビルの森へ向かうことが決まり、アンナたちは出発の準備を進めた。アンナは留守を任せるバーサへ、シェン国で製法を学んだ塗り薬や飲み薬を渡した。ノンナは旅行を喜び、早々に荷造りを終えていた。

記録係クラーク

エドワードの指示を受けたクラークが訪れ、資料管理部の記録係として同行したいと申し出た。ジェフリーは発見した事実の記録は認める一方、家族の私生活については報告しないよう求めた。クラークが約束したため、翌朝から旅に加わることになった。

隠すべき手札

クラークの同行を喜んだノンナは、バーサの前で思わず正拳突きの型を披露した。アンナは護衛の鍛錬を見て覚えたのだと取り繕った後、自分の能力は使う時までむやみに見せないよう注意した。自身にも同じ失敗があるため、二人で気をつけようと笑い合った。

黒ツグミへの帰還

アンナはジェフリーの許しを得て、かつて通っていた酒場『黒ツグミ』を一人で訪ねた。ザハーロは五年間姿を消していた彼女の無事を喜び、結婚を祝った。アンナはシェン国で作った手荒れ用の薬を贈り、昔好んでいた蒸留酒を二杯だけ飲んだ。

ただの自分の時間

強い酒を味わうと、アンナは妻でも母でもない一人の自分へ戻り、折り畳んでいた羽が伸びるような解放感を覚えた。ザハーロへ別れを告げて馬車で帰ると、明かりのついた我が家と、玄関で迎えるジェフリーが待っていた。

ジェフリーの嫉妬

ノンナからアンナの外出先を尋ねていたと聞き、アンナはジェフリーが心配していたことを知った。寝室で酒場へ行った理由を説明すると、ジェフリーは報告の義務はないとしながらも、少し嫉妬したと認めた。アンナは心配させるなら行くのをやめると答えた。

支配への恐れ

ジェフリーはアンナの自由を奪うつもりはなく、好きな時に酒場へ行けばよいと告げた。父親と同じように家族を支配する人間になることを恐れていたのである。アンナは酒場に行くのは遠くへ飛び去るためではなく、羽を伸ばした後に必ずジェフリーの隣へ帰るためだと伝えた。

ヨラナの息抜き

旅を決める前、アンナは一人で酒場へ行くことへの罪悪感をヨラナへ相談していた。ヨラナは若い頃、厳格な義母に隠れて友人たちとカード遊びを楽しんでいたと明かした。妻や母として完璧であろうと自分を追い詰めれば、やがて家族を恨むことになると気づいたためだった。

家族の笑顔

ヨラナは、結婚した女性の正しい生き方に一つの答えはなく、家族が笑顔でいられることへつながるなら、自分の楽しみを大切にしてよいと伝えた。アンナは時には羽を伸ばし、その後また家族と笑って暮らせばよいのだと納得した。

シビルの森への報告

迷いが晴れたアンナとノンナはバーナードを訪ね、家族でシビルの森へ向かうと報告した。バーナードは行動の早さに驚きながらも、無理をせず旅を楽しみ、森の景色を聞かせてほしいと送り出した。ノンナはバーナードへ何かを拾って持ち帰ると約束し、二人は晴れやかな気持ちで帰宅した。

第四章 * シビルの森へ 

シビルの森への出発

アンナたちは四頭立ての馬車で出発し、記録係のクラークと馬係のリードも同行した。道中、アンナは暗号に記された白い石碑と、その先に続く道標を探す旅だと説明した。ノンナは森での野営を喜び、ジェフリーも家族との初めての旅行を楽しんでいた。

旅先での鍛錬

長い馬車移動で身体を動かせずにいたノンナのため、三人は毎日鍛錬を始めた。ジェフリーはクラークとリードにも、アンナとノンナがシェン国で武術を学んだと明かした。クラークも見ているだけでは悔しいと感じ、ジェフリーから剣の指導を受けるようになった。

古戦場への祈り

シビルの町へ向かう途中、ジェフリーはかつて多くの命が失われた戦場で馬車を止めた。彼は亡くなった者たちへ酒を捧げ、アンナたちも祈りを捧げた。ジェフリーは戦争の記憶はすでに古い傷となり、今は痛みを感じていないと伝えた。

白い石碑

シビルの町で情報を集めたが、白い石碑を知る者はいなかった。馬車で進めない森へ入ると、アンナたちは馬に乗り換え、距離と方角を頼りに山を登った。やがてノンナが白い岩を見つけ、刻まれていた北へ十キロという指示に従った。

石造りの空き家

日暮れ前、道標の距離に石造りの空き家を発見した。アンナたちはそこを拠点とし、焚き火で肉やスープを作って野外での夕食を楽しんだ。しかし食事の途中、アンナとジェフリーは周囲に複数の大柄な男が潜んでいることに気づいた。

赤花菱草の栽培者

アンナとジェフリーはクラークたちを家へ避難させ、鉈を持って襲ってきた男たちを制圧した。男たちは禁止されている赤花菱草を栽培しており、アンナたちを調査に来た役人だと誤解して襲撃したのであった。翌日、警備隊が畑を焼き払い、男たちを連行した。

屋根裏の羊皮紙

アンナは家の天井の傾斜に違和感を覚え、ノンナに屋根裏を調べさせた。そこから蝋で密封された青銅の壺が見つかり、中には未発表の小説らしい大量の羊皮紙が収められていた。さらに滝まで北へ進み、風を見て勇気を持てという新たな指示と、意味不明な文章が残されていた。

クラークの悩み

襲撃の際に何もできなかったクラークは、年下のノンナに守られた自分を情けなく感じていた。アンナは、男は強く女は慎ましくあるべきという考えは他人が作った普通にすぎず、自分の得意なことや幸せを大切にすればよいと励ました。クラークは心を軽くし、ノンナを可愛いと思っていることを思わず口にした。

滝への道

アンナたちは青銅の壺を別の場所へ埋め直し、滝を目指して山を登った。馬で進めなくなるとリードを残し、四人で徒歩を続けた。数時間後、豊かな水量の滝へ到着したが、滝壺には人を沈め続ける危険な流れがあり、アンナはノンナへ絶対に近づかないよう警告した。

風の通る石壁

道標が見つからないまま夜を迎えたが、アンナは焚き火の煙が一か所だけ強く流されることに気づいた。ジェフリーが崖を覆う蔦を切ると、その奥に人の手で積まれた石壁と、冷たい風が吹き出す隙間が現れた。二人は翌朝、明るくなってから壁を開くことにした。

裂け目の骸骨

石を取り除くと、胸を斬られた二体の骸骨が現れ、その奥にも三体の遺骨が残されていた。五人の服装は周辺の民族のものではなく、近隣諸国の人間に見えた。アンナたちは狭い裂け目を進み、長い上り坂を抜けた末に、崖に囲まれた巨大な火口の内部へ出た。

火口の探索

火口には低木や湧き水があり、人が入った痕跡はほとんどなかった。アンナたちは王冠という名の宝を探して歩き回ったが、目立った発見はなかった。ノンナは母を守るために鍛錬してきたのだと語り、クラークも力になると約束した。

新たな暗号

アンナは壺から持ち出した意味不明な羊皮紙をジェフリーへ見せ、自分で解読したいと伝えた。ジェフリーは発見したアンナに所有権があり、好きに研究すればよいと認めた。さらに、暗号へ向き合うアンナの姿も含めて愛していると語り、アンナも生涯彼の隣にいたいと感じた。

消えた食料

裂け目を戻ると、残していた荷物が荒らされ、食料がすべて盗まれていた。痕跡を追うことになり、スバルツ語を話せるクラークも通訳として同行した。クラークは、アンナたちとの再会を願って近隣諸国の言葉を学び続けていたのである。

逃亡したオーリ

森の小屋では、十六歳の少女オーリが盗んだ食料を抱えて眠っていた。彼女はスバルツ王国の政策によって雇い主との結婚を強要され、逃げ出して三週間も森で暮らしていた。獣を避けるため身体に熊の糞を塗っており、クラークの通訳で事情を説明した。

オーリの保護

アンナとジェフリーは王冠探しより少女の命を優先し、オーリを保護すると決めた。滝で身体を洗い、食事と服を与えた後、探索を中断して山を下りることにした。クラークが他国の少女を連れ帰る問題を心配すると、アンナは言葉の通じない迷子を国内で保護しただけだと説明し、クラークもその意図を理解した。

第五章 * ペットのシビー 

森の民への強制婚

石造りの家へ戻ったアンナたちは、リードからスバルツ王国が西の森の民を自国民へ取り込むため、結婚を強制しているという話を聞いた。結婚相手は森の民を無給の使用人として酷使し、逃げれば連れ戻していた。アンナは眠るオーリを見ながら、彼女が寝袋さえ恐れるほど傷ついていると考えた。

ノンナのペット

ノンナは火口で拾った白い石をシビーと名づけ、ペットとして大切にしていた。アンナが石を見ると、表面には大量の金が含まれていた。それが金鉱石だと気づいたジェフリーは、火口に大規模な金鉱脈があればスバルツ王国との争いを招きかねないと警戒した。

失われた王冠の正体

翌日、アンナたちは再び火口へ入り、同じ金鉱石が数多く転がっていることを確認した。王冠という名の宝物は、火口に眠る金鉱脈だったのである。ジェフリーは国有地で発見した以上、文官であるクラークへ知らせる必要があると判断した。

カロライナの暗号鍵

アンナは羊皮紙の暗号に苦戦したが、カロライナ王女の名前を数字へ変換し、ハグルで使われていた方式を当てはめた。すると意味不明だった文章から、エルマー・アーチボルトの遺言が浮かび上がった。

エルマーとカロライナ

エルマーはアシュベリーへ潜入していた工作員であり、暴力を振るうと噂されたランダル王子との結婚を恐れたカロライナ第五王女を王城から逃がしていた。二人はシビルの森で夫婦として暮らし、火口で金鉱石を発見したが、金には頼らず働いて生活していた。

工作員との戦い

エルマーは組織の者に発見され、金鉱の場所を教えるよう迫られた。五人を火口へ案内した帰りに殺されかけたが、返り討ちにし、自身も重傷を負った。カロライナの看病で回復した後、その経験をもとに『失われた王冠』を書いた。

エルマーの遺言

カロライナは死の間際、国への償いとして金鉱の存在を王家へ知らせてほしいと願った。しかしエルマーは、危険な結婚へ送り出そうとした王家を信用できず、暗号を解き王冠へ到達した者へ金鉱を託した。子供には正体も金鉱も知らせず、平穏な人生を残していた。

伏せられた真実

ジェフリーは、カロライナが他国の工作員と生涯を共にした事実を公表すれば、暗号を解読したアンナの正体まで調べられる危険があると考えた。二人は遺言の内容をクラークへ知らせず、金鉱発見までを国へ報告してもらうことにした。

オーリとの帰還

一行はオーリを連れて王都へ戻った。オーリはクラークだけを頼り、ノンナが身振りで話しかけても応じなかった。アンナは言葉が通じない迷子を保護しただけという形を取り、オーリを客人として屋敷へ迎えた。

スバルツ語の学習

アンナとノンナはオーリと会話するため、高価なスバルツ語の辞書を購入して学び始めた。質問を重ねると、オーリは農家で働いており、四十五歳の主人との結婚を強いられ、ほとんど賃金も得られなかったと説明した。今後の希望を尋ねると、クラークに会いたいとだけ答えた。

オーリの敵意

呼び出されたクラークへオーリは抱きつき、アンナが引き離そうとすると敵意を向けた。オーリの訴えを聞いたクラークは嫌悪を示し、彼女は信用できず、屋敷から移した方がよいと告げて帰った。オーリは心配するノンナにも大嫌いと言い残した。

傷ついたノンナ

初めて強い悪意を向けられたノンナは、自分が何をしたのかと涙を流した。アンナは、オーリが恵まれたノンナを羨んだ可能性を伝え、世の中には相手を貶めて心を保とうとする者もいると教えた。

悪意への手札

アンナは、今後貴族社会で平民出身を侮る者に出会う可能性を説明した。泣いて周囲へ知らせる方法、無視する方法、その場で相手が怯む言葉を返す方法を教え、自身は事前に相手の情報を集めて反撃していたと明かした。ノンナは手札を増やし、強く生きることを選んだ。

いつかの巣立ち

ノンナはアンナとずっと一緒にいたいと願ったが、アンナは成長した子供はいつか親元を離れるものだと伝えた。別れを想像して胸を痛めながらも、広場でノンナへ声をかけた過去の自分を誇りに思い、二人は互いに出会えた幸せを確かめ合った。

オーリの失踪

その夜、オーリは屋敷から姿を消した。ジェフリーは警備隊と第二騎士団へ捜索を依頼し、アンナもザハーロへ情報収集を頼んだが、行方はつかめなかった。

オーリの虚言

後日、クラークはオーリがノンナにいじめられ、アンナから眠る暇もないほど働かされていると訴えていたことを明かした。アンナは、森で語った境遇もどこまで真実かわからないと考えた。助けようとした好意を裏切られた悲しみを抱えながらも、オーリにもいつか穏やかな日々が訪れるよう願った。

幕 間 * エドワードの親心 

金鉱脈の報告書

エドワードはクラークの報告書から、アンナたちがシビルの森で金鉱脈を発見したと知った。しかし報告書には一家の名前が一切なく、偶然同行した家族と発見した形になっていた。エドワードは功労者を隠せばかえって注目を集めると考え、報奨金を受け取らせる方法を探した。

欠けた情報

エドワードは、報告書から五体の骸骨が死に至った経緯が抜けていることにも気づいた。エルマーが金鉱への道を暗号で残しながら、遺体について何も記さなかったとは考えにくかったためである。現地調査をマイクに命じる一方、バーナードから情報を引き出そうとした。

バーナードへの依頼

エドワードはバーナードを訪ね、彼が『失われた王冠』の暗号を解き、ジェフリーが金鉱脈を発見したことにしてほしいと頼んだ。バーナードはアンナの手柄を奪うことを拒んだが、アンナたちが注目を避けたい事情と、ジェフリーやノンナの将来のために報奨金が必要だと説得された。

兄としての思惑

エドワードは、子爵となるジェフリーには家格を保つ費用がかかり、領地もないため、報奨金を受け取らせたいと考えていた。ジェフリーが騎士の地位を捨てた事情にはアンナが関わっていたため、義兄として将来の負担を軽くしてやりたかったのである。

発見者の名義

バーナードに呼び出されたアンナとジェフリーは、暗号を解いたのはバーナード、金鉱脈を発見したのはジェフリーという形で公表する案を聞いた。バーナードは自分の報奨金もジェフリーへ渡し、小説に隠された発見を学会で発表したいと語った。

バーナードの願い

アンナは自分の名が公に出ず、安全が守られるなら構わないと考えた。年老いたバーナードが学者として真実を世に残したいと願っていることも受け入れ、ジェフリーへ提案を承諾するよう促した。

骸骨の謎

バーナードは発表を不自然にしないため、五体の骸骨についてエルマーが何か書き残していたのではないかと尋ねた。核心を突かれたアンナとジェフリーは一瞬動揺したが、意味不明な羊皮紙をまだ解読していないように装い、後日届けると答えた。

歴史学者の洞察

屋敷を出たアンナは、隠した情報の欠落を見抜いたバーナードの洞察に驚き、歴史学者は恐ろしいとつぶやいた。ジェフリーはこらえきれずに笑い、アンナもつられて笑った。

第六章 修道院院長イライザと古書店 

暗号文書の譲渡

アンナとジェフリーは、意味不明な羊皮紙を未解読の書き損じとしてバーナードへ渡し、その後の扱いを歴史学者に任せることにした。翌日、リードが文書を届けた。

南区修道院の依頼

南区修道院の院長イライザが訪れ、アンナの塗り薬が重いかぶれに効いたため、修道院で販売させてほしいと申し出た。アンナはすぐに承諾せず、修道院の実情を確かめるため現地を訪れた。

女性たちの居場所

修道院は貧しく身寄りのない女性へ清潔な住まいを提供し、院長自身も質素な部屋で暮らしていた。アンナはイライザを信用できると判断したが、そこにもオーリの姿はなかった。周辺には薬店がなく、貧しい住民は高価な薬を買えないことも知った。

ザカリー古書店

開店前の黒ツグミを諦めたアンナは、古書店兼貸本屋のザカリー古書店へ入った。店内で初版本と説明された『西方磁器の歴史』を手に取ると、過剰な経年加工と薬品の匂いから贋作だと見抜いた。しかし偽造を見抜ける理由を疑われることを避け、店主には告げずに店を出た。

古い羊皮紙の再現

アンナは新品の羊皮紙を古く見せるため、杉のおがくずを煮出して染色液を作った。作業中、ノンナが音も気配もなくバルコニーから現れ、アンナを驚かせた。ノンナはシェン武術の教えから、風のように音を立てず移動する方法を身につけていた。

ノンナ先生

アンナはノンナの技量に驚き、自分にも教えてほしいと頼んだ。二人は教え合うことを約束し、アンナは高度な武術や語学を悪い目的に使わないよう念を押した。さらに偽物を見抜くには作り方を知り、本物を多く見ることが重要だと教えた。

修道院での軟膏販売

ジェフリーの了承を得たアンナは、修道院で軟膏を販売する契約を結んだ。価格はアンナが決め、利益の一部を販売手数料として修道院へ渡すことになった。院長は貧しい人々の苦痛を和らげられると喜び、アンナも学んだ薬の知識が役立つことを嬉しく思った。

子爵家の社交

ジェフリーの叙爵式が翌月初めに決まり、式には彼だけが出席することになった。アンナは茶会などへの参加を自分で選んでよいと告げられたが、ノンナには貴族の集まりへ参加する必要があると考えた。ノンナは不満そうだったが、避け続けることはできなかった。

解けない文書

アンナとノンナは週三回ほどバーナードの翻訳を手伝った。バーナードは渡された暗号文書を写し取り、毎日のように解読へ挑んでいた。すでに真相を知るアンナは後ろめたさを抱えながらも口を出せず、料理を作って彼を支えた。

消息不明のオーリ

アンナはオーリが安全に暮らしているかを案じ続けたが、第二騎士団からもザハーロからも情報は届かなかった。簡単に話を信じて連れ帰ったことを悔やみながらも、その行方を気にかけていた。シビル山の金鉱脈がその後どう扱われたかも、アンナたちには知らされなかった。

第七章 * 叙爵式とお茶会 

ジェフリーの叙爵

ジェフリーは金鉱脈の発見とシェン国産薬の輸入体制を整えた功績によって子爵に叙された。貴族社会へ入ることに不安を抱いていたが、アンナは苦労とは思わず、これからも共に生きると伝えた。

オーリの消息

薬草を買いに出たアンナは黒ツグミへ立ち寄り、ザハーロからオーリが裏社会の男と親しくなり、その仲間たちを従えて元気に暮らしていると聞いた。アンナは騙された痛みを抱えながらも、今後も困っている人を見捨てず、それを過去への償いとして続けると語った。

二つの功績

叙爵式では国王からジェフリーの二つの功績が公表され、金鉱脈は露天掘りで大量に採掘できることも明らかになった。ジェフリーとバーナードには、子爵家が生涯困らないほどの報奨金が与えられることになった。

淑女の準備

相次ぐ茶会や夜会への招待に備え、アンナはノンナへ日常から淑女の振る舞いを実践させた。ノンナはヨラナから密かに指導を受けており、貴族社会へ出る準備は整っていると自信を見せた。

善意の限界

オーリを助けに行きたいと訴えるノンナに、アンナとジェフリーは、本人が望まない善意は押しつけになると説明した。ノンナは友人になりたかった思いを明かし、オーリからは裕福で幸せな令嬢に見えたのかもしれないと理解した。そして今後は外見だけで人を判断しないと決めた。

初めてのお茶会

ノンナはクラークに付き添われ、初めて貴族令嬢の茶会へ参加した。伯爵令嬢エリザベスから平民だった過去を侮られたが、ヨラナから教わった相手の家系の情報を示し、同じく平民出身の祖母を持つことを遠回しに指摘して黙らせた。

仕返しの後味

帰宅したノンナは、言い返して勝ったものの気分は晴れず、仕返しは後味が悪いと感じた。淑女として生きる面倒さを知りながらも、意地悪な人間にはならず、アンナのようになりたいと語った。アンナは成長する娘を守り続けられないことに寂しさを抱き、その痛みを代わってやりたいと願った。

修道院の古い契約

修道院を訪れたアンナは、薬がかぶれや湿疹にも効果を上げていると知った。一方、四十年前の借金が複利で膨れ上がり、家を失う住民が続いていると聞いた。古い契約が急に相次いで持ち出されたことに、アンナは不自然さを感じた。

二箱の金貨

金鉱脈発見の報奨金として、金貨が詰まった箱がジェフリーへ届けられた。さらにバーナードも、自分の功績ではないとして報奨金をすべて譲り、ノンナの将来のために残すよう求めた。アンナとジェフリーは、使い切れないほどの財産を前に戸惑った。

第三騎士団への文書

バーナードは解読できなかった暗号文書を宰相へ渡し、第三騎士団に解析を依頼した。自分はエルマーの未発表作を世に出す仕事へ専念すると語り、日々の充実を喜んだ。アンナも、苦戦するバーナードを見続ける後ろめたさから解放され、第三騎士団なら古いハグル式暗号を解けるだろうと考えた。

第八章 古い契約書 

偽造契約書の疑い

アンナは修道院で相次いだ古い借金契約と、古書店で見た贋作から、王都に文書偽造の一味がいると考えた。ジェフリーへ相談すると、彼はアンナの能力を生かしながら第二騎士団にも手柄を立てさせる方針を認め、二人で捜査の計画を立てた。

老婦人の契約書

アンナとジェフリーは院長と共に、家を失いかけている老婦人を訪ねた。契約書には父親の署名があったが、アンナは紙から杉と紅茶の匂いを感じ、新しい紙を古く見せた偽造文書だと疑った。ジェフリーは契約書を預かり、王城へ鑑定を依頼した。

グッドウィン貸金商会

資料管理部の鑑定士デールは、契約書に経年加工が施されていると断定した。エドワードの手配で第二騎士団が同行し、グッドウィン貸金商会へ踏み込んだ。商会からは十人の男女が拘束され、その中には派手な姿に変わったオーリもいた。

オーリの選択

アンナはノンナへ、オーリが詐欺集団に加わっていたことを伝えた。ノンナは知らずに巻き込まれた可能性を訴えたが、アンナはオーリが自分の意思で屋敷を離れ、悪事へ関わった以上、責任を負わなければならないと説明した。

親としての責任

ジェフリーは、もしノンナが犯罪に手を染めたなら、泣きながらでも騎士団へ引き渡すことが親としての愛情と責任だと語った。アンナも同意し、二人はノンナが正しい選択をできるよう育て、その後の人生は本人に委ねるしかないと考えた。

ノンナの答え

翌朝、ノンナは前夜の態度を八つ当たりだったと謝った。自分が罪を犯せば両親は警備隊へ突き出し、本人以上に泣くだろうと理解していた。アンナは、育児の難しさと同時に、娘の成長を見られる幸せを感じた。

偽造詐欺の摘発

エドワードは、商会の屋根裏から作りかけの偽造契約書が大量に見つかり、下級貴族まで標的にされていたと報告した。第二騎士団は被害者の家や財産を可能な限り取り戻す方針を決め、アンナの薬から始まった縁が事件の解決につながった。

オーリとの面会

オーリは初犯で主犯ではなかったため、二年の禁固刑となった。アンナとノンナは差し入れを持って何度も面会を求めたが、オーリは受け取るだけで二人には会わなかった。ノンナは彼女が騙されていたと信じようとしたが、アンナはそれが裏切られた事実を認めたくない気持ちではないかと問いかけた。

デル・ドルガー

帰りに立ち寄ったザカリー古書店で、ノンナは冒険活劇小説『地獄からの使者デル・ドルガー』を三冊買ってもらった。彼女は物語に夢中になり、アンナは自身も訓練生時代に小説の登場人物へ憧れていたことを密かに思い出した。

エリザベスの謝罪

数日後、エリザベスがアッシャー家を訪れ、茶会で平民出身を侮ったことを謝罪した。ノンナが彼女の祖母の出自を皆の前で明かさなかったことに恩を感じ、今後は力になると申し出たが、ノンナは必要ないと即座に断った。

冒険小説の友情

険悪になりかけた二人だったが、エリザベスの家に『デル・ドルガー』全巻があると知ると、ノンナの態度は一変した。ノンナはエリザベスに友達がいないことまで率直に指摘し、自分は家来にはならないが友達ならなってもよいと告げた。

新しい友人

エリザベスはノンナを自宅へ招き、二人は一緒に本と菓子を楽しんだ。ノンナは大量の菓子を土産に機嫌よく帰宅した。アンナは二人の関係を心配したが、バーサはノンナが気位の高いエリザベスとの距離を自然に縮めたことを高く評価した。

第九章 美しい古書 

ノンナとエリザベスの友情

ノンナとエリザベスは互いの家を頻繁に行き来し、共に茶会へ参加するほど親しくなった。女友達ができたノンナは貴族令嬢としての振る舞いも身につけ、目立った騒ぎを起こさず社交をこなしていた。

クラークの心配

クラークは、茶会で多くの令息がノンナを取り囲んでいたことを気にしていた。アンナからノンナは令息たちに関心がなく、エリザベスとの交流を楽しんでいると聞くと安心した。次の休日に遊びに来ると約束し、ノンナも再会を喜んだ。

ザカリー古書店の誘い

軟膏を修道院へ納めたアンナは、ザカリー古書店で高価な『装飾の歴史』を見せられた。購入を迷っていると、店主のザカリーから別の建物に保管している手頃な古書を見に来ないかと誘われ、翌日ノンナと訪れることにした。

不審な案内

ザカリーはアンナとノンナを南区の外れまで連れ出したが、目的地にはなかなか着かなかった。危険を察したアンナは、シビーの散歩を口実にノンナを先に帰した。ザカリーは冷たい本性を現し、アンナを殺すつもりだと告げて空き家へ連れ込んだ。

偽造集団の襲撃

空き家には四人の男が待ち構えており、ザカリーはグッドウィン貸金商会の摘発にアンナが関わったと見抜いていた。五人はアンナを殺そうとしたが、彼女は肘打ちや蹴りで応戦し、男たちを次々と倒した。

デル・ドルガーの登場

逃げたと思われたノンナは天井から飛び降り、冒険小説の人物をまねて名乗りを上げた。シェン武術を使って二十秒足らずで男たち全員を制圧し、アンナと共に衣服を裂いた布で縛り上げた。

赤い煙の合図

ノンナはマイクから褒美にもらった発煙具を屋根で作動させており、赤い煙を見たマイクが駆けつけた。ザカリーたちは第二騎士団へ引き渡され、表向きはマイクが捕縛したことになった。

仕掛けられた罠

アンナは、初めて古書店を訪れた時からザカリーを疑っていた。価値と保管方法が不自然な古書や、偽造品を並べる店の様子から警戒し、貸金商会摘発後も意図的に通って自分へ接触させようとしていた。ザカリーが窓ガラス越しに彼女の行動を監視していることにも気づいていた。

ジェフリーの不安

計画を知らされていなかったジェフリーは、アンナが一人で危険に身をさらしたことに落ち込んだ。アンナは事件を解決するには自分が無防備に見える必要があったと説明し、今後は必ず相談すると約束した。

事件の主犯

マイクは、ザカリーが偽造契約書事件の主犯であり、グッドウィン商会の者たちにも正体を隠して指示を出していたと明かした。ザカリーたちは多数の詐欺と貴族への被害によって、長期の強制労働刑を受ける見込みとなった。

解読された遺言

第三騎士団は、バーナードから渡された文書が古いハグル式暗号だと見抜き、エルマーの遺言を解読した。マイクはエルマーとアンナが、組織を離れて愛する相手と穏やかな人生を得た点で似ていると語った。

ノンナの子猫

ノンナは事件後、自分がアンナを守るとジェフリーへ宣言し、ペットを飼いたいと頼んだ。近所で生まれた子猫二匹を選び、アシュとベリーと名づけた。二匹はノンナにだけ懐き、彼女はエリザベスに奪われまいと張り合っていた。

賑やかな茶会

エリザベスとクラークが同席した茶会では、クラークがノンナに他の令息を近づけない番犬のようだと指摘された。ノンナはクラークを兄のような存在だと語ったが、クラークは複雑な表情を見せた。

第二騎士団の相談役

ジェフリーは第二騎士団の相談役となり、剣の指導や必要時の助力を担うことになった。商会の運営を国へ引き継いだため仕事は少なく、しばらくは家族との時間を過ごしながら新しい役目を探すことにした。

子猫の脱出訓練

ノンナは衣服の内側に糸鋸の刃を隠し、アシュとベリーにそれを取り出して運ぶ芸を教えた。拘束された際の脱出用だと説明すると、アンナも自力で縄を解く方法を披露した。親子は互いの案を真剣に検討し、ジェフリーを呆れさせた。

長い旅の終わり

アンナはエルマーの未発表作『長い旅の終わり』に、さらに暗号が隠されていると考えていた。秘密を抱えたエルマーが、誰かに本心を知ってほしくて残した可能性を感じたためである。しかし何が書かれているかを恐れ、読むことができずにいた。

オーリの真実

オーリはスバルツ王国で雇い主の金品を盗み、現場を見られて逃亡していたことが判明した。身柄の引き渡しは求められず、アシュベリー王国で服役することになった。アンナは彼女を忘れられない苦い記憶として受け入れ、人生は思いどおりにならないという教官の言葉を思い返した。

第十章 ★ ヨラナ様と訪問者 

エルマーの最後の暗号

アンナは『長い旅の終わり』を読むべきか迷い、ヨラナへ相談した。ヨラナは、つらい内容なら一緒に苦しみを分け合えばよいと励えた。帰宅したアンナは、屋敷に侵入したザカリーとオーリたちに遭遇した。

屋敷への襲撃

ザカリーたちは使用人を人質に取り、アンナへの報復を企てていた。アンナはザカリーへナイフを投げ、オーリと仲間の男も素早く制圧した。料理人も別の侵入者を倒しており、拘束されていた侍女も無事に救出された。

オーリとの決別

第二騎士団が到着し、ザカリーとオーリたちは再び連行された。ジェフリーは事情聴取へ立ち会い、アンナの正体が漏れないよう処理した。アンナはオーリを救った判断を後悔はしなかったが、今後に備えて腕の立つ護衛を雇うことを受け入れた。

カロライナの晩年

アンナはついに『長い旅の終わり』の暗号を解読した。そこには、記憶を失っていくカロライナを四年間介護したエルマーの苦悩が記されていた。少女時代へ戻ったカロライナは城へ帰りたいと願い、エルマーを使用人だと思うようになっていた。

王城を望む最期

エルマーはカロライナを王城が見える丘へ連れていった。彼女は舞踏会や王子との出会いを夢見ながら、エルマーの腕の中で息を引き取った。エルマーはその土地を買い、妻を埋葬し、自分の墓石も隣に用意していた。

二人の墓

アンナはマイクへ墓の場所を知らせ、二人で丘を訪れた。火口の白い石で作られた墓石には、エルマーとカロライナの名が刻まれていた。暗号の鍵は私の王冠であり、エルマーにとって真の王冠はカロライナだった。

夫婦の愛の記録

アンナから話を聞いたバーナードは、エルマーを悲惨な男ではなく、最後まで妻を愛し抜けた幸せな男だと評した。死は老人にとって愛する伴侶と再会できる安息でもあると語り、カロライナの人生を知れたことを心から喜んだ。

墓を守る王家

第三騎士団はエルマーの子孫を探したが、行方はわからなかった。王家はカロライナの件を公表せず、二人の墓がある丘を私有地として管理することにした。アンナは墓が守られるだけで十分だと受け入れた。

羊牧場の夢

ジェフリーは報奨金で土地を買い、アンナが望んでいた羊牧場を作ることを提案した。アンナは叶わないと思っていた夢を覚えていてくれたことに感動した。羊舎や工房の建設、井戸掘りや牧草の準備が始まり、将来はそこで毛糸を紡いで暮らすことを夢見た。

修道院への支援

アンナは報奨金を使い、身寄りのない女性たちが暮らす修道院を修繕した。さらに軟膏工房と羊毛を加工する仕事場を作り、女性たちが賃金を得て自立できる仕組みを提案した。ジェフリーも賛同し、具体的な準備を進めた。

ノンナの結婚の約束

ノンナは幼い頃、クラークから結婚を申し込まれ、承諾していたことを明かした。しかし今はアンナを守るために嫁へ行かず、約束をなかったことにしたいと考えていた。アンナは娘が自分を守る覚悟で生きていたことを知り、激しく動揺した。

守られるアンナ

ジェフリーは、ノンナが本気で誰かを守ろうとする姿はアンナに似ていると語った。戦い守ることを自分の価値だと思ってきたアンナは、ジェフリーとノンナから、そこにいるだけで幸せだと言われ、自分が深く愛されていることを実感した。

サンドル古書店

偽造事件で奪われていた古書店は本来の店主へ返され、サンドル古書店として再開した。店主はアンナへ感謝し、ノンナに『地獄からの使者デル・ドルガー』全巻を贈った。ノンナは思わぬ贈り物を大喜びで受け取った。

約束の解消

ノンナは訪れたクラークへ、幼い頃の結婚の約束を無効にしたいと直接伝えた。クラークは想定していたと穏やかに受け入れ、歌劇へ行く約束だけを確認して帰った。ジェフリーは、クラークは諦めたのではなく、今は無理に動かないと判断しただけだろうと考えた。

輝く王冠

アンナは、年老いたジェフリーが自分を忘れることがあっても、最後の一秒まで幸せな夫でいさせると決めた。羊牧場で共に年を重ねる未来を思い描きながら、ジェフリーこそ自分の輝く王冠だと伝え、生涯愛し続けることを誓った。

エピローグ *アッシャー子爵家のパーティー 

大茶会の準備

アンナは、ノンナが招かれた家の令嬢たちを一度に招く大規模な茶会を開くことにした。エリザベスが記録していた詳細な茶会の手帳を借りると、ノンナが参加した会は二十八件に及び、招待客は友人を含めて三十八人となった。アンナたちはヨラナやプライズにも相談し、料理や会場を整えた。

クラークの贈り物

茶会当日、クラークは誰よりも早く訪れ、以前ノンナが食べたいと話していた菓子を贈った。ノンナは覚えていてくれたことを喜び、無意識にクラークの手を包んで礼を述べたため、クラークは顔を赤らめた。

盛大な茶会

ノンナは淑女らしい挨拶で茶会を始め、使用人たちも大勢の客を滞りなくもてなした。準備は大がかりであったが、終盤まで問題は起こらず、ノンナも主催者として会を楽しんでいた。

遠乗りの誘い

ある令息がノンナを遠乗りへ誘うと、エリザベスは彼女が平民出身であることを理由に配慮が足りないと遮った。ノンナは乗馬ができると説明しようとしたが、今度はクラークが自分とすでに遠乗りの約束をしていると強い口調で告げ、令息を退かせた。

ノンナの番犬

周囲の令息たちは、クラークが以前からノンナへ近づく者を牽制しており、彼女の番犬のようだと囁き合った。婚約すればよいという声も上がり、アンナはクラークが着実に周囲を固めていることを知った。

クラークの野心

令息たちは、各国語に通じ、法律や歴史にも詳しいクラークが、将来は外務大臣ではなく宰相を目指しているのではないかと推測した。粘り強い性格なら長年努力を続けるだろうと考え、彼とは敵対したくないと語り合った。

ノンナの気遣い

茶会後、ノンナはクラークと遠乗りの約束などしていなかったと明かした。しかしその場で否定すれば彼が気まずい思いをすると考え、黙っていたのである。ジェフリーは相手の心へ配慮できるようになった娘の成長を喜んだ。

隠された乗馬術

ノンナは過去の牧場生活でアンナから乗馬を鍛えられ、馬を全速力で走らせ、障害物や溝を飛び越え、並走する馬へ移ることまでできた。アンナは、ノンナが遠乗りでその腕前をクラークへ見せるのか、必要な時まで隠すのかを楽しみにしながら、クラークを応援した。

番外編 * 少年と母親 

仲睦まじい両親

開拓地で小さな店を営むエルマーとバイオレットは、息子ジャックと穏やかに暮らしていた。二人は過去や王都について尋ねられても詳しく語らなかったが、互いを深く愛し、周囲から新婚夫婦のようだとからかわれるほど仲が良かった。

自由な人生

王都や広い世界に憧れるジャックが、両親を残して旅立つことを心配すると、バイオレットは行きたい場所へ行き、愛する人と家庭を築いて自由に生きるよう勧めた。夫婦のどちらが先に亡くなっても、神の庭で必ず再会するから心配はいらないと語った。

ジャックの旅立ち

十年後、二十二歳になったジャックは結婚し、妻と共に集落を離れて王都へ向かった。エルマーは故郷へ戻ることを考えず、自分の家族を守って人生へ全力で挑むよう告げた。バイオレットは鹿肉や卵、白パンを詰めた豪華な弁当を持たせた。

受け継がれた夫婦像

ジャックと妻は、エルマーとバイオレットのように、年月を重ねても仲の良い夫婦になろうと誓った。その後、ジャックは毎年両親へ手紙を送ったが、エルマーは自分たちを心配せず、家族と仲良く暮らすよう繰り返し返事を送った。

番外編 * リードの日常 

アッシャー家への就職

馬具商会の閉鎖で職を失ったリードは、マイクから新たに子爵となるジェフリーの家で働かないかと誘われた。王都に人脈がなく再就職に苦労していたリードは申し出を受け、アッシャー家の馬係となった。

恵まれた職場

リードは四頭の馬と馬小屋を管理し、外出時には御者を務めた。ジェフリー、ビクトリア、ノンナはいずれも平民の使用人へ優しく、馬の扱いにも慣れていたため、リードは良い勤め先を得たと喜んだ。

家族旅行の驚き

家族旅行に同行したリードは、ビクトリアとノンナが軍人のような動きで武術の鍛錬をする姿に驚いた。ジェフリーからシェン国で学んだと説明されたが、わずか五年で身につく技量とは思えず、職を失わないため余計な詮索は避けた。

襲撃者との戦い

旅の途中、武器を持った大柄な男たちが一行を襲った。ジェフリーは姿を見る前から人数や体格を察知し、ビクトリアは自分よりはるかに大きな男たちを容易に制圧した。ノンナも避難先から肉を食べながら戦いを見物し、まったく恐れていなかった。

不思議な一家への慣れ

リードはアッシャー家の正体を疑い、当初は恐ろしさを感じた。しかし一家は変わらず優しく接してくれたため、旅を続けるうちに異常な強さにも次第に驚かなくなった。

マイクとの食事

王都へ戻ると、リードは休日のたびにマイクから食事へ誘われるようになった。マイクは酒や料理を振る舞いながら、馬係の仕事やアッシャー家での生活を興味深そうに聞いた。リードは主人の情報を話すことをためらったが、酒と称賛に気をよくして旅の出来事を語り始めた。

漏れ出した武勇伝

リードは、ビクトリアとノンナの武術、林業組合の男たちを夫婦が倒したこと、禁止植物の畑を焼却させたことを話した。さらに屋敷へ賊が侵入した際も、ビクトリアがひそかに倒したに違いないと推測し、自慢の主人だと熱心に語った。

黒ツグミへの案内

ビクトリアが週に一度、庶民的な酒場へ一人で通っていると知ったマイクは、その店へ興味を示した。リードは行きつけの黒ツグミへ案内し、二人は酒と手作りのベーコンを楽しんだ。

マイクの監視

マイクは、エドワードから危険人物がアッシャー家へ近づいていないか穏やかに見守るよう頼まれていた。リードとの交流も情報収集の一環であり、元工作員であるビクトリアの暮らしを気にかけていた。

酒場の主人への疑念

黒ツグミを気に入ったマイクは、ビクトリアが一人で通うことや、ジェフリーがそれを認めていることを不思議に思った。さらに無口な店主ザハーロが普通の酒場の主人ではないと感じ、いずれ調べようと考えた。

手札が多めのビクトリア1レビュー
手札が多めのビクトリアまとめ
手札が多めのビクトリア3レビュー

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手札が多めのビクトリア

手札が多めのビクトリア 1の表紙画像(レビュー記事導入用)
手札が多めのビクトリア 1
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手札が多めのビクトリア 2
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手札が多めのビクトリア 3

その他フィクション

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