- キスショット誕生の悲劇、忍の過保護な山登り、そして羽川翼まで吸血鬼に?
- 「あせろらボナペティ」|美しすぎるせいで国が滅びる姫
- 外見ではなく心を見てほしい。その願いが悲劇を生む
- スーサイドマスター登場。姫を食べたいのに食べられない
- 美しすぎるなら、悪女になればいい?
- アセロラ姫が吸血鬼になった理由が、想像以上に重い
- 「かれんオウガ」|火憐ちゃん、山籠もりを甘く見すぎでは?
- 金髪の少女が次々登場。いや、忍がついてきているだろう
- 「自分自身に向き合う」とは、何をすればいいのか
- 最後に火憐を助けたのは誰だったのか?
- 「つばさスリーピング」|羽川翼、忍野メメを探して世界を放浪する
- ドラマツルギー再登場。羽川が吸血鬼事件の囮になる
- 人間の命を遊びに使う双子の吸血鬼が恐ろしい
- 羽川様、まさかの吸血鬼化? どこまで規格外なのか
- 羽川翼は、阿良々木暦のためにどこまで行くのか
- 忍野メメを見つけても、羽川の旅の全貌はまだわからない
- 『業物語』の三編を読んで感じたこと
- まとめ|キスショットの過去を知ると、忍野忍の見え方まで変わる
物語の概要
■ 作品概要
「第一話 あせろらボナペティ」「第零話 かれんオウガ」「第零話 つばさスリーピング」の3編で構成される短編集。
「第一話 あせろらボナペティ」では、600年前、美しさゆえに周囲の人間が次々に命を捧げて国を滅ぼした「うつくし姫(アセロラ姫)」の過去と、吸血鬼誕生の経緯が描かれる。自分が殺した人間しか食べない主義を持つ吸血鬼デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターは、アセロラ姫を食べようとするが、害意が自己破壊の衝動として跳ね返る現象に阻まれる。
姫を「死体城」へ連れ帰り、言葉遣いや振る舞いを崩す指導を試みる中、主人のために姫を排除しようとした眷属トロピカレスクが返り討ちに遭って死亡する。アセロラ姫は捧げられた命を受け止めるため自ら吸血鬼化を望み、スーサイドマスターから血を与えられて「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」として新たな旅へ踏み出す。
「第零話 かれんオウガ」では、高校1年の夏休みに空手の師匠から「自分自身に向き合え」と山籠もりを命じられた阿良々木火憐が、逢我三山での縦走と逢我滝での滝行に挑む。
熊の群れとの遭遇や滑落の危機、食料の喪失や濃霧・オオスズメバチの恐怖に見舞われながらも、影に潜んで同行していた忍野忍の助言や道具の手助けに支えられて逢我滝へ到達し、滝行をやり遂げる。
「第零話 つばさスリーピング」では、阿良々木暦を救うため忍野メメを探して世界中を放浪する羽川翼が、南極でメメを発見し、交渉の対価としてドイツでの体験談を語る。
羽川はドイツで吸血鬼ハンターのドラマツルギーと出会い、若い旅行者を連れ去る双子の吸血鬼「ハイウエスト」と「ローライズ」の捜査に協力して囮となる。古城の地下牢へ監禁された後、ドラマツルギーから渡された「茨の棘」を噛みしめて一時的に吸血鬼化し、双子を返り討ちにして事件を解決する。
■ 主要キャラクター
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター
- 立場・所属:決死にして必死にして万死の吸血鬼。
- 主人公との関係:「あせろらボナペティ」の主人公・語り手。キスショットの生みの親(吸血主)・名付け親。
- この巻での主な役割:自分が殺した人間しか食べない信条を持つ。餓死から蘇生後、国を滅ぼした「うつくし姫」(アセロラ姫)を食べようとするが、害意が自己破壊となって跳ね返り何度も死亡する。姫を「死体城」へ招待し、害意を減らすための指導を行う。
- この巻で起きた重要な変化や行動:アセロラ姫への愛着を自覚し、命を落とした眷属トロピカレスクの亡骸を食す。自分を救いたいというアセロラ姫の意思を受け入れて彼女から血を吸い、吸血鬼「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」として覚醒させる。
アセロラ姫(うつくし姫 / キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
- 立場・所属:かつての王国の姫(ローラ姫)。
- 主人公との関係:スーサイドマスターの食材候補であり、後に眷属・弟子となる。
- この巻での主な役割:内面の美しさが可視化されたことで、触れた人々が次々に命や大切なものを捧げて国が滅び、流浪の旅をしていた。自分を害しようとする者に自死・自傷を行わせる効果を持つ。
- この巻で起きた重要な変化や行動:スーサイドマスターの城で一人称を「儂」に変え、下品な振る舞いの練習を行う。トロピカレスクの死を経て、捧げられる命を受け止める贖罪のため自ら吸血鬼化を志願し、吸血鬼となる。
トロピカレスク・ホームアウェイヴ・ドッグストリングス
- 立場・所属:スーサイドマスターの第一にして唯一の眷属(元人間)。
- 主人公との関係:スーサイドマスターの従僕。
- この巻での主な役割:死体城の管理や情報収集を行う。主人がアセロラ姫に執着し、食べずに世話を焼き続ける様子に反発する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:主人のために独断でアセロラ姫を排除しようと襲いかかるが、攻撃の反動で全身を粉砕されて死亡し、スーサイドマスターに食される。
阿良々木火憐
- 立場・所属:私立栂の木高校1年生(ファイヤーシスターズ)。
- 主人公との関係:「かれんオウガ」の主人公。阿良々木暦の妹。
- この巻での主な役割:空手の師匠から「お前に教えることは何もない。自分自身に向き合え」と言われ、免許皆伝と山籠もりを命じられる。
- この巻で起きた重要な変化や行動:逢我三山での縦走を開始し、熊の群れへの遭遇、ロッククライミングでの滑落の危機、食料失亡、濃霧とスズメバチの恐怖を乗り越え、逢我滝に到達して滝行をやり遂げる。
忍野忍
- 立場・所属:阿良々木暦の影に潜む吸血鬼(元キスショット)。
- 主人公との関係:暦のパートナー。「かれんオウガ」における火憐の陰の協力者。
- この巻での主な役割:暦の依頼を受け、重りとなりながら火憐の山籠もりに影から密かに同行する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:金髪ポニーテール、金髪シニョン、金髪おかっぱ、金髪ツインテールなど様々な姿に変身して火憐の前に現れ、地図、クマ避けの鈴、日本刀、手袋、野草の知識などを提供してサポートする。
羽川翼
- 立場・所属:私立直江津高校3年生(元委員長)。
- 主人公との関係:「つばさスリーピング」の主人公・語り手。阿良々木暦の友人。
- この巻での主な役割:阿良々木暦を救うため忍野メメを探して世界中を放浪し、南極大陸でメメを発見してドイツでの出来事を回想する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ドイツでドラマツルギーと出会い、若い旅行者を連れ去る双子の吸血鬼の囮となって潜入する。古城の地下牢に監禁された後、奥歯に仕込んだ「茨の棘」を噛みしめて一時的に吸血鬼化し、双子を退治する。
ドラマツルギー
- 立場・所属:吸血鬼退治の専門家(元吸血鬼)。
- 主人公との関係:かつて暦と戦った敵。羽川翼の協力者。
- この巻での主な役割:ドイツで旅行者を連れ去る双子の吸血鬼「ハイウエスト」と「ローライズ」を捜査中、羽川翼を囮として起用する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:生き残りの子供たちを救出したことで背後を突かれ、羽川と共に地下牢へ監禁される。羽川に自決用の「茨の棘」を渡す。
ハイウエスト & ローライズ
- 立場・所属:ドイツの架空の城塞都市を拠点とする双子の吸血鬼。
- 主人公との関係:羽川翼とドラマツルギーの敵。
- この巻での主な役割:十代の若い旅行者を連れ去り、食料としてではなく「棒倒し(人間を順に削ぎ落とす遊び)」の道具として弄んでいた。
- この巻で起きた重要な変化や行動:羽川翼を遊技台に縛り付けるが、吸血鬼化した羽川に圧倒され、遊びを拒絶されたことで互いに噛み合い・食べ合って消滅する。
忍野メメ
- 立場・所属:怪異の専門家。
- 主人公との関係:羽川翼や暦の知人。
- この巻での主な役割:南極大陸で羽川翼に発見されるが、即座の帰国を拒み、対価として羽川の旅の怪異譚を聴く。
書籍情報
<物語>業物語
著者:西尾維新 氏
イラスト:VOFAN(ヴォーファン) 氏
出版社:講談社
発売日:2016年8月19日
JDCN:0628389200100011000Q

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あらすじ・内容
“キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードってぇ名前は、俺様が付けてやったんだ――”
今から六百年ほど前、今はもう滅びた国に『うつくし姫』と呼ばれる女の子がいました。その美しさに誰もが命をささげ、彼女が歩く道は死体の山となりました……。
これぞ伝説の怪異! 怪異! 怪異!
青春は、童話のように残酷だ。
感想
キスショット誕生の悲劇、忍の過保護な山登り、そして羽川翼まで吸血鬼に?
今回は、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの誕生秘話、阿良々木火憐の山籠もり、そして忍野メメを探して世界中を旅する羽川翼の話である。
この三つを並べると、ずいぶん内容が違う。
600年前の吸血鬼誕生の物語。
高校生が夏休みに挑む山岳修行。
そして、世界を放浪する女子高生の吸血鬼事件。
本当に同じ一冊に収録されているのかと思うほど、話の方向性が違っている。
ただ、読んでいて共通していると感じたのは、誰かに与えられた役割から離れ、自分がどう生きるのかを考える話だということだ。
アセロラ姫は、美しすぎるがゆえに周囲の人間を死なせてしまう。
火憐は、正義の味方として活動してきた自分から離れ、一人の人間として山に向き合う。
羽川は、阿良々木暦を救うため、普通の女子高生では考えられない旅を続けている。
それぞれの事情は違うが、簡単には引き返せないところまで進んでいる。
そして今回、特に驚いたのが羽川翼である。
えっ、羽川様。
あなた、吸血鬼にまでなれるのですか?
いや、一時的な現象らしいのだが、もはや何でもありではないか。
※以下、『業物語』のネタバレを含む。
「あせろらボナペティ」|美しすぎるせいで国が滅びる姫
最初は、600年前の物語。
後にキスショットと呼ばれることになる、アセロラ姫の過去が描かれる。
彼女は、もともと人間だった。
しかも、誰もが見惚れるほど美しい姫である。
ここまでなら、童話によくある設定だ。
しかし、この姫の美しさは、普通ではない。
美しすぎるあまり、周囲の人間が次々と命を捧げてしまうのだ。
いや、どういうことなのか。
美しい人を見て、憧れたり、恋をしたりすることはあるだろう。
しかし、命まで捧げてしまうとなると、話が違う。
しかも、一人や二人ではない。
国が滅びるほどの人間が死んでしまう。
本人が何かを命令したわけではない。
誰かを殺そうとしたわけでもない。
ただ、そこにいるだけで人が死ぬ。
これほど理不尽な話もないだろう。
外見ではなく心を見てほしい。その願いが悲劇を生む
アセロラ姫が望んだのは、自分の内面を見てもらうことだった。
周囲の人々は、彼女の外見ばかりを褒める。
しかし、姫自身は、それを寂しく感じていた。
自分がどんな人間なのか。
何を考え、何を感じているのか。
そうした部分を誰にも見てもらえない。
そこで魔女の力によって、心の美しさまで誰の目にも見えるようになる。
ところが、それが悲劇の始まりだった。
外見だけでも十分に美しかった姫は、内面まで美しい。
その結果、人々は彼女のために命を捧げ始める。
何とも皮肉である。
外見だけで判断されたくない。
自分の中身を見てほしい。
そんな願いが、周囲の人間を死なせる原因になってしまう。
しかも、姫はその犠牲を悲しんでいる。
悲しんでいるのに、止められない。
自分が何も悪いことをしていないのに、人が死んでいく。
読んでいて、これは相当つらいだろうと感じた。
美しさという、本来なら祝福されるはずのものが、完全に呪いになっている。
スーサイドマスター登場。姫を食べたいのに食べられない
そんなアセロラ姫の前に現れるのが、吸血鬼デストピアヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターである。
名前が長い。
キスショットも相当長い名前だが、こちらも負けていない。
スーサイドマスターは、自分が殺した人間を食べるという信条を持つ吸血鬼だ。
ところが、アセロラ姫の美しさによって国の人間が死に絶えてしまい、食料がなくなる。
吸血鬼なのに餓死してしまうという、なかなか情けない事態に陥る。
その後、復活したスーサイドマスターは、国を滅ぼした原因である姫に興味を持つ。
そして、彼女を食べようとする。
しかし、食べられない。
アセロラ姫に危害を加えようとすると、その行動が自分自身に跳ね返ってしまうのだ。
姫を殺そうとしたはずが、自分の身体を破壊してしまう。
吸血鬼なので再生できるとはいえ、何度やっても同じ結果になる。
食べたいのに、食べられない。
殺そうとするほど、自分が傷つく。
これもまた、ずいぶん奇妙な関係である。
しかし、そんなやり取りを続けるうちに、スーサイドマスターは姫を世話するようになっていく。
最初は食料として見ていたはずなのに、いつの間にか放っておけない存在になっている。
この変化が興味深かった。
美しすぎるなら、悪女になればいい?
スーサイドマスターが考えた対策は、アセロラ姫を悪女にすることだった。
美しさが問題なら、言葉遣いや振る舞いを悪くすればいい。
確かに、考え方としてはわからなくもない。
ただ、姫は根本的に善良な人物である。
急に乱暴な言葉を使ったり、下品な態度を取ったりしても、簡単には変われない。
むしろ、一生懸命に悪女になろうとする姿が、余計に健気に見えてしまう。
これでは逆効果ではないか。
姫自身も、自分の美しさをどうにかしようと必死なのだ。
そこまでしなければ、周囲の人間が死んでしまう。
美しいことが問題になるというのも不思議だが、本人にとっては笑い事ではない。
そして、この関係に不満を抱くのが、スーサイドマスターの眷属トロピカレスクである。
彼は、主人がアセロラ姫に執着するようになったことを快く思わない。
その結果、姫を排除しようとして命を落とす。
またしても、姫のために命が失われる。
アセロラ姫が何とかしようとしても、犠牲は止まらない。
この繰り返しが、何とも残酷だった。
アセロラ姫が吸血鬼になった理由が、想像以上に重い
やがてアセロラ姫は、スーサイドマスターに自分を吸血鬼にしてほしいと願う。
人間のままでは、周囲の人々が死に続ける。
だから、人間であることをやめる。
その選択には、少し驚いた。
吸血鬼になるといえば、不老不死や強大な力を求めるイメージがある。
しかし、アセロラ姫の場合は違う。
自分が生きているせいで人が死ぬ。
その状況を変えるために、人間をやめようとするのだ。
しかも、スーサイドマスターは、吸血鬼になれば元の生活には戻れないと警告する。
それでも姫は決意を変えない。
こうして彼女は吸血鬼となり、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという名前を与えられる。
あのキスショットに、こんな過去があったのか。
『傷物語』で登場したときの彼女は、圧倒的な力を持つ伝説の吸血鬼だった。
しかし、もともとは周囲の人間を救いたいと願う姫だったのである。
そう考えると、キスショットという人物の見え方が少し変わる。
最強の吸血鬼になったことが、必ずしも幸福だったわけではない。
むしろ、そこへ至るまでに多くの命が失われている。
彼女の長い人生には、想像以上に重い過去があるのだと感じた。
「かれんオウガ」|火憐ちゃん、山籠もりを甘く見すぎでは?
次は阿良々木火憐の話。
高校一年生の夏休み、火憐は空手の師匠から山籠もりを命じられる。
目的は、自分自身に向き合うこと。
空手の腕前を磨くだけではなく、自分が何者なのかを考える修行である。
火憐は逢我三山を越え、逢我滝で滝行をするために山へ入る。
しかし、どうも準備が足りない。
食料も装備も十分ではなく、山の厳しさを甘く見ている。
いや、火憐ちゃん。
いくら体力に自信があるからといって、山をなめてはいけない。
空手が強いことと、山の中で生き延びられることは別問題だ。
実際、熊に遭遇したり、危険な岩場で転落しかけたり、食料不足に苦しんだりする。
どれも一歩間違えれば命に関わる。
正義の味方として活躍してきた火憐だが、自然を相手にすると、腕力だけではどうにもならない。
そのあたりが、今回の修行の面白いところだった。
金髪の少女が次々登場。いや、忍がついてきているだろう
山中で苦労する火憐の前に、不思議な金髪の少女が現れる。
熊に遭遇したときには、少女が助けてくれる。
別の場所では、おかっぱ頭の少女が現れる。
さらに、ツインテールの少女まで登場する。
いや、待ってほしい。
金髪の少女が、そんなに都合よく山の中にいるものだろうか。
しかも、毎回ちょうど火憐が困っているところへ現れる。
これはもう、忍ではないのか。
読んでいる側からすれば、そう考えずにはいられない。
火憐本人は、なかなか気づかない。
そのやり取りが面白かった。
後に、少女たちが姿を変えた忍野忍だったことが明らかになる。
やっぱり忍か。
しかし、そうなると別の疑問も浮かぶ。
一人で山籠もりをして、自分自身に向き合う修行ではなかったのか。
これでは、忍が付き添っているようなものである。
しかも、危険な場面でしっかり助けている。
もちろん、命に関わる事態を放置するわけにもいかない。
それでも、修行として成立しているのかは少し疑問だ。
何とも過保護な山籠もりである。
「自分自身に向き合う」とは、何をすればいいのか
火憐は、これまで正義の味方として行動してきた。
妹の月火と一緒に、ファイヤーシスターズとして活動している。
しかし、正義の味方という肩書きを外したとき、自分には何が残るのか。
今回の修行では、そこを考えることになる。
これは、意外と難しい問題だと思う。
人は普段、何かしらの役割を持って生活している。
学生である。
仕事をしている。
誰かの家族である。
何かの活動を続けている。
しかし、そうした役割をすべて取り払ったとき、自分をどう説明すればいいのだろうか。
火憐の場合は、空手が強く、正義感があり、行動力もある。
しかし、それだけが彼女のすべてではないはずだ。
山の中では、正義の味方という肩書きは役に立たない。
熊に正義を説いても仕方がない。
食料がなくなれば腹が減る。
足を滑らせれば転落する。
そうした状況で、自分の弱さを知ることになる。
このあたりは、単なる山岳冒険ではなく、火憐の成長を描いた話なのだと感じた。
最後に火憐を助けたのは誰だったのか?
火憐は、濃霧の中で進む道を見失い、恐怖に襲われる。
そこでも、何者かに支えられる。
そして最後には、自分の意思で前へ進み、逢我滝へ到着する。
ここで面白いのは、最後に火憐を支えた存在について、忍にも心当たりがないことだ。
それまでの金髪の少女たちは忍だった。
だから、最後も忍なのだろうと思っていた。
ところが、そうではないらしい。
では、誰だったのか。
少し気になる終わり方である。
火憐は無事に滝行を終えるが、すべての謎が解決したわけではない。
ただ、修行を通して自分の弱さを知ったことには意味があったと思う。
火憐は強い。
しかし、強いからといって、何でも一人でできるわけではない。
それを実感できたのなら、今回の山籠もりは無駄ではなかったのだろう。
それにしても、忍が何度も姿を変えて助けていたのには笑ってしまった。
火憐本人が気づかないところも含めて、何とも〈物語〉シリーズらしい話だった。
「つばさスリーピング」|羽川翼、忍野メメを探して世界を放浪する
最後は羽川翼の話。
こちらは『終物語(下)』につながる出来事である。
羽川は、阿良々木暦を救うために、行方不明となった忍野メメを探して世界中を旅している。
そして、ついに南極で忍野メメを発見する。
南極である。
いや、どこまで探しに行っているのか。
普通の女子高生が、友人を助けるために世界中を移動する。
それだけでも十分にすごい。
しかも、相手は居場所のわからない忍野メメである。
どうやって見つけたのかと思っていたが、今回、その旅の一端が明らかになる。
羽川は忍野メメに協力を求める。
しかし、忍野は簡単には動かない。
そこで、羽川が旅の途中で経験した出来事を語ることになる。
その一つが、ドイツで遭遇した吸血鬼事件だった。
ドラマツルギー再登場。羽川が吸血鬼事件の囮になる
ドイツで羽川が出会うのは、吸血鬼ハンターのドラマツルギーである。
『傷物語』に登場した、あのドラマツルギーだ。
久しぶりの登場である。
彼は、ハイウエストとローライズという双子の吸血鬼を調べていた。
双子は、旅行者の失踪事件に関わっている疑いがある。
そこで羽川は、忍野メメの情報を得るため、ドラマツルギーの捜査に協力する。
しかも、囮になる。
いや、羽川様。
いくら阿良々木を助けたいからといって、危険すぎないだろうか。
相手は吸血鬼である。
普通の人間が簡単に対抗できる存在ではない。
しかし、羽川は危険を承知で行動する。
そして案の定、双子に捕まってしまう。
ドラマツルギーまで一緒に監禁されるのだから、状況はかなり悪い。
それでも羽川は、簡単には諦めない。
ここが、いかにも羽川らしい。
人間の命を遊びに使う双子の吸血鬼が恐ろしい
双子の吸血鬼がやっていたのは、人間を使った残酷な遊びだった。
捕まえた人間の身体を少しずつ削り、命を弄ぶ。
食料として人間を襲うのではない。
娯楽のために人間を傷つけている。
ここが、非常に不気味だった。
吸血鬼が人間の血を吸うのは、まだ理解できる。
人間にとって危険な存在ではあるが、生きるための行動とも考えられる。
しかし、双子の場合は違う。
人間の命を、退屈しのぎの道具として扱っている。
長く生きる吸血鬼にとって、退屈は大きな問題なのかもしれない。
しかし、だからといって他人の命を遊びに使っていいわけではない。
羽川が怒るのも当然だろう。
そして、ここから予想外の展開になる。
羽川様、まさかの吸血鬼化? どこまで規格外なのか
双子に追い詰められた羽川の身体に、異変が起こる。
以前、キスショットの血を取り込んだ影響が残っていたのだ。
その力が刺激され、一時的に吸血鬼に近い状態になる。
えっ。
羽川様、吸血鬼にもなれるのですか?
猫の怪異に関わったり、虎の怪異を生み出したり、これまでもいろいろあった。
しかし、今度は吸血鬼である。
もう、普通の女子高生という説明には無理があるのではないか。
本人は、自分は日本の女子高生だと答える。
いや、そうなのだが。
そうなのだが、普通の女子高生はそんなことにならない。
ただ、羽川が自分から吸血鬼になろうとしたわけではない。
過去に取り込んだ血の影響が、極限状態で表に出てきたということらしい。
それでも、羽川の身体にそんな力が残っていたことには驚いた。
〈物語〉シリーズでは、過去に関わった怪異の影響が、思わぬ形で再び現れる。
今回も、まさにその一例である。
一度終わったと思っていた出来事が、完全には終わっていなかった。
その怖さを感じた。
羽川翼は、阿良々木暦のためにどこまで行くのか
今回の羽川を見ていて、改めて思った。
彼女は、阿良々木暦を助けるためなら、本当にどこまでも行くのだろう。
忍野メメを探して世界を旅する。
吸血鬼ハンターと協力する。
危険な吸血鬼事件の囮になる。
監禁されても諦めない。
普通なら、途中で引き返してもおかしくない。
しかし、羽川は目的を見失わない。
その行動力には驚かされる。
ただ、少し心配にもなる。
羽川は、誰かのために自分を犠牲にしてしまうところがある。
これまでの物語でも、そうした姿が描かれてきた。
今回は、阿良々木を助けるという目的がある。
そのために、自分の命まで危険にさらしている。
もちろん、彼女自身が考えて選んだ行動なのだろう。
それでも、どこか無理をしているようにも感じられた。
『終物語(下)』では、羽川が忍野メメを連れて戻ってきたことが大きな意味を持っていた。
しかし、その裏側では、こんな危険な出来事が起きていたのか。
そう考えると、あの場面の印象も変わる。
羽川が連れてきたのは、単に忍野メメという人物だけではない。
世界中を探し回り、危険を乗り越えてきた結果でもあったのだ。
忍野メメを見つけても、羽川の旅の全貌はまだわからない
羽川は、南極で忍野メメを見つけることに成功した。
しかし、ドイツでの事件だけで、すべてが説明されたわけではない。
羽川はその後も、さまざまな場所を旅している。
忍野メメが興味を示したのも、その旅で何が起きたのかということだった。
特に、羽川が一時的に発揮した吸血鬼の力が、再会した時点では残っていないことが気になる。
その力は、どこで消えたのか。
ほかの国でも、何かあったのだろうか。
羽川は、どれほど危険な目に遭ってきたのか。
今回の話を読んでも、まだわからない部分が残っている。
それにしても、羽川の世界旅行は規模が大きすぎる。
高校生が海外へ行くだけでも大変なのに、吸血鬼事件に巻き込まれながら忍野メメを探している。
どれだけの行動力なのか。
そして、どれだけ阿良々木暦を助けたいのか。
改めて、羽川という人物のすごさを感じた。
『業物語』の三編を読んで感じたこと
今回の三編は、それぞれ違う種類の面白さがあった。
「あせろらボナペティ」は、残酷な童話のような物語である。
美しすぎるために人を死なせてしまう姫。
その姫を食べようとして、結局は世話をするようになる吸血鬼。
そして、人間を救うために人間であることをやめるという選択。
キスショットの過去が、想像以上に重かった。
「かれんオウガ」は、火憐の山岳修行である。
空手が強くても、自然の中では思いどおりにいかない。
自分の弱さと向き合いながら進む火憐の姿が印象に残った。
もっとも、忍が何度も姿を変えて助けているので、完全な一人旅だったのかは疑問である。
そして「つばさスリーピング」。
羽川が忍野メメを探す旅の途中で、吸血鬼事件に巻き込まれる。
しかも、一時的に吸血鬼の力まで発揮する。
今回、一番驚いたのはこの話だった。
羽川は、どこまで規格外なのだろう。
ただ、どの話にも共通していたのは、自分の意思で進もうとする姿だったと思う。
アセロラ姫は、人間であることをやめる。
火憐は、自分自身を知るために山へ入る。
羽川は、阿良々木暦を助けるために世界を旅する。
どれも簡単な選択ではない。
しかし、誰かに言われたから仕方なく動いているわけでもない。
それぞれが自分なりの理由を持って行動している。
そこが、今回の一冊で印象に残った部分である。
まとめ|キスショットの過去を知ると、忍野忍の見え方まで変わる
『業物語』を読み終えて、最も印象に残ったのは、やはりアセロラ姫の過去だった。
あのキスショットが、もともとは人間だった。
しかも、周囲の人々を死なせないために、吸血鬼になることを選んだ。
その事実を知ると、これまでのキスショットや忍野忍の姿が少し違って見えてくる。
強大な力を持つ伝説の吸血鬼。
ドーナツが大好きな金髪の少女。
阿良々木暦と軽口を交わす相棒。
そのどれもが彼女の一面なのだろう。
しかし、600年前には、ただ人を救いたいと願っていた姫がいた。
そう考えると、忍が長い年月を生きてきたことの重さを感じる。
一方、火憐の山籠もりは、少し気楽に読める話だった。
本人は必死なのだが、忍が何度も姿を変えて助けに現れるところが面白い。
ただ、最後に助けた人物が誰なのかは気になる。
そして羽川翼。
忍野メメを探すために世界中を旅しているだけでも驚きなのに、吸血鬼事件に巻き込まれ、一時的に吸血鬼の力まで発揮する。
羽川様、あなたは本当に何者なのか。
『終物語(下)』で忍野メメを連れて現れた羽川を見たときは、よく見つけたものだと思った。
しかし、その裏にこんな出来事があったと知ると、単純に「よかった」で済ませられない。
どれだけ危険な旅をしてきたのだろう。
どれだけ無理をしてきたのだろう。
そう考えさせられた。
今回の『業物語』は、過去の出来事と、その裏側で起きていた出来事を知ることで、これまでの物語の印象が変わる一冊だった。
それにしても、最後に一つだけ言いたい。
キスショットの誕生秘話も衝撃的だったが、羽川翼の吸血鬼化には本当に驚いた。
もう、普通の女子高生という言葉を、そのまま信じてはいけない気がする。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:うつくし姫の悲劇と吸血鬼の遭遇(残酷童話
うつくし姫 / あせろらボナペティ前半) 600年前、容姿や内面の美しさゆえに触れた人間が次々に命を捧げ、国を滅ぼしてしまった「うつくし姫(アセロラ姫)」は、魔女の遺言に従い誰とも寄り添わない流浪の旅に出ていた。自分で殺した人間しか食べない主義を持つ吸血鬼デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターは、飢餓から蘇生後、噂を聞いてアセロラ姫を探し出し、食料として襲いかかる。しかし、姫を傷つけようとする害意はすべて自分自身への致命的な自傷・自害衝動となって跳ね返り、スーサイドマスターは何度も死亡と再生を繰り返す。
第2幕:死体城での下拵えと眷属の不憫な死(あせろらボナペティ後半)
スーサイドマスターはアセロラ姫を自身の「死体城」へ連れ帰り、害意を減らして食べられるようにするため、一人称を「儂」に変えさせたり、手づかみで食事をさせたりする「悪ぶらせる指導(粉飾計画)」を開始する。しかし、主人が姫の世話に執着し始めたことに危機感を抱いた第一の眷属トロピカレスクは、命令に背いて独断でアセロラ姫を排除しようと攻撃を仕掛ける。攻撃の跳ね返りによりトロピカレスクは全身を木っ端微塵に粉砕されて死亡し、スーサイドマスターは信条に従ってその亡骸を食らい尽くす。
第3幕:アセロラ姫の志願と吸血鬼キスショットの誕生(あせろらボナペティ幕結)
トロピカレスクの死に深く心を痛めたアセロラ姫は、自分が人間のままでいれば他人が死に続ける運命から逃れられないと悟り、捧げられる命を食して受け止めるため、スーサイドマスターに自らを吸血鬼にするよう懇願する。害意ではなく「相手を救うため・愛するため」の吸血行動であれば跳ね返らないという仮説のもと、スーサイドマスターはアセロラ姫に牙を立てる。吸血は成功し、アセロラ姫は「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」という名を与えられ、最強の吸血鬼として旅立つ。
第4幕:火憐の山籠もりと逢我三山への挑み(かれんオウガ前半)
高校1年の夏休み、阿良々木火憐は空手の師匠から「お前に教えることは何もない。自分自身に向き合え」と免許皆伝を言い渡され、逢我三山での1週間の縦走と逢我滝での滝行を命じられる。火憐は登山口で金髪ポニーテールの少女(忍野忍の変身)から地図とチョコを受け取り、鬼会山へ足を踏み入れる。途中で熊の親子と遭遇してパニックになるが、突如現れた金髪シニョンの女性(忍)に助けられ、クマ避けの鈴とストック代わりの日本刀を授けられる。
第5幕:難関の連続と逢我滝での達成(かれんオウガ後半)
続く岩山・千針岳でのロッククライミング中、火憐は高熱の岩肌に手をついて滑落しかけるが、金髪おかっぱの幼女(忍)に手を掴まれて救われ、脱臼を癒やされる。第三の山・カチカチ山では米を喪失し、金髪ツインテールの少女(忍)から食べられる野草を教えてもらって空腹をしのぐ。直後に視界を奪う濃霧とオオスズメバチの警告音の恐怖に押し潰されそうになるが、背後から現れた者に背中を押されて恐怖を克服し、逢我滝へと到達して激流の中で滝行を成し遂げる。
第6幕:羽川翼の放浪とドイツでの囮作戦(つばさスリーピング前編)
阿良々木暦を救うため忍野メメを探して世界中を巡っていた羽川翼は、南極大陸でついに忍野メメを発見する。メメから即座の帰国を拒否され、対価として旅の体験談を求められた羽川は、ドイツでの出来事を語り始める。羽川はドイツで吸血鬼ハンターのドラマツルギーと遭遇し、若い旅行者を連続で連れ去る双子の吸血鬼「ハイウエスト」と「ローライズ」の捜査に協力するため、自ら囮となって夜道を歩き、双子に誘拐される。
第7幕:地下牢での監禁と双子の退治(つばさスリーピング後編)
羽川翼は結界に包まれた架空の城塞都市の古城へと運ばれ、地下牢へ繋がれる。追跡してきたドラマツルギーも捕らわれて同室に監禁され、羽川は彼から自決用の「茨の棘」を受け取る。未明に遊技室へ連れ出された羽川は、双子が人間を食料ではなく「棒倒し」の道具として弄んでいる実態を知り、激しい怒りを覚える。羽川が奥歯に仕込んだ「茨の棘」を噛みしめると、体内に潜伏していたキスショットの血が目覚めて一時的に吸血鬼化し、双子を圧倒する。遊びを阻まれた双子は互いに噛み合い・食べ合って消滅し、羽川は脱出して再び旅を継続する。
主要な転換点
1:アセロラ姫からの吸血鬼化の志願とキスショットの誕生
- それ以前の状況:アセロラ姫は自分が生きているだけで周囲の人間が命を捧げて死んでいく呪いに苦しみ、スーサイドマスターの城で下品な振る舞いを練習していた。
- 出来事:トロピカレスクの死を目の当たりにしたアセロラ姫が、捧げられる命を食して受け止めるため、自らを吸血鬼にするようスーサイドマスターに志願した。
- 変化:スーサイドマスターが「姫を救うため」という意図で吸血を行い、アセロラ姫は最強の吸血鬼「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」へと変貌した。
- 次への影響:キスショットが600年にわたる吸血鬼としての伝説を歩み始めることとなった。
2:トロピカレスクの独断専行と爆破死
- それ以前の状況:トロピカレスクは死体城の管理を行いながら、スーサイドマスターがアセロラ姫を食べずに世話を焼き続ける様子を不満に思っていた。
- 出来事:トロピカレスクが主人のために命令を破ってアセロラ姫を排除しようと襲いかかったが、害意の反動により全身が粉砕されて死亡した。
- 変化:スーサイドマスターが眷属の亡骸を食して生命を繋ぎ、アセロラ姫が吸血鬼化を決意する最大のきっかけとなった。
- 次への影響:スーサイドマスターがアセロラ姫を吸血鬼化させる決断を下した。
3:阿良々木火憐の山籠もりと忍野忍の影からの随伴
- それ以前の状況:火憐は空手の師匠から「自分自身に向き合え」と山籠もりを命じられ、単独で逢我三山へ向かった。
- 出来事:暦の依頼を受けた忍野忍が火憐の影に潜んで同行し、様々な姿に変身して道具や知識を提供した。
- 変化:火憐は単独行と思い込みながらも、危機に瀕するたびに忍の手助けを得て前進することができた。
- 次への影響:火憐が幾多の試練を乗り越えて逢我滝に到達し、滝行を完了させる結果に繋がった。
4:羽川翼による囮作戦の実行と地下牢への監禁
- それ以前の状況:羽川翼はドイツで出会ったドラマツルギーから、若い旅行者を連れ去る双子の吸血鬼の情報を得ていた。
- 出来事:羽川翼が自ら囮となって夜道を歩き、双子の吸血鬼「ハイウエスト」と「ローライズ」にさらわれて架空の城塞都市の地下牢へ監禁された。
- 変化:ドラマツルギーも捕らわれたが、羽川翼が双子のアジト内部に侵入することに成功した。
- 次への影響:地下牢でドラマツルギーから「茨の棘」を受け取り、決戦の場となる遊技室へ引き出された。
5:奥歯の「茨の棘」の咀嚼と羽川翼の一時的吸血鬼化
- それ以前の状況:羽川翼は遊技室のビリヤード台に縛り付けられ、双子から人間を道具にした「棒倒し」のゲームルールを言い渡されていた。
- 出来事:人命を玩具にする双子の暴挙に激怒した羽川翼が、奥歯に仕込んだ「茨の棘」を噛みしめた。
- 変化:体内に潜伏していたキスショットの血が刺激されて一時的に吸血鬼化し、驚異的な力で双子を返り討ちにしてみせた。
- 次への影響:遊びを阻まれた双子が自虐的に互いを食べ合って消滅し、羽川翼が脱出して旅を続けることとなった。
主人公を中心とした人物関係の変化
スーサイドマスター ⇔ アセロラ姫(キスショット)
- 開始時:捕食者と食材候補の関係であり、殺して食べようとするたびに反動でスーサイドマスターが死亡していた関係。
- 主な出来事:死体城での共同生活を経て下品な振る舞いを教え込み、トロピカレスクの死後に姫の志願を受けて吸血を行った。
- 巻末時:血を分け与えた吸血主と眷属(師弟・名付け親)となり、互いに認め合ってそれぞれの道へ旅立つ関係となった。
阿良々木火憐 ⇔ 忍野忍
- 開始時:火憐側は存在を認識しておらず、山で出会う親切な「海外の金髪登山者ご一行」だと思い込んでいた関係。
- 主な出来事:忍が暦の依頼で火憐の影に潜み、数々のピンチで姿を変えて手助けを行った。
- 巻末時:火憐自身は最後まで忍の正体に気づかないままであったが、忍と暦の間では妹を見守り切った達成感を共有する関係となった。
羽川翼 ⇔ ドラマツルギー
- 開始時:かつて阿良々木暦と殺し合った敵であり、ドイツで人違いで訪ねてきた異国の少女と専門家の関係。
- 主な出来事:双子の吸血鬼退治において囮と捜査役として協力し、共に捕らわれて地下牢で「茨の棘」を託し合った。
- 巻末時:互いのプロ意識や意志を認め合い、事件解決後にそれぞれの目的(情報の伝達とさらなる任務)へ進む関係となった。
主人公の認識と周囲の評価
【あせろらボナペティ:スーサイドマスター】
- 主人公自身の認識:自分を「自分で殺した人間しか食べない不変のルールを持つ、クールでハードな最強の吸血鬼」と捉えている。
- 周囲からの評価:トロピカレスクからは「絶対的なご主人様」と敬われつつも、アセロラ姫に甘く執着する姿に呆れられる。アセロラ姫からは「自分を殺そうとしながらも可哀想で親切な存在」と見られる。
- 認識の差が現れた場面:自分は姫を「効率よく食べるための下拵え」としてお世話しているつもりであったが、トロピカレスクから「愛着が芽生えて飼い続けているだけだ」と本質を突かれて返す言葉を失う場面に顕著な差が現れている。
【かれんオウガ:阿良々木火憐】
- 主人公自身の認識:自分を「正義の味方であり、体力と腕力に自信があるが、自分自身という中身が空っぽな人間」と捉えている。
- 周囲からの評価:師匠からは「十分に強過ぎるが、勝ち負けの尺度でしか物事を見られない未熟者」と評される。忍野忍からは「重りを背負わされても突き進むタフな巨大娘」と見られる。
- 認識の差が現れた場面:自分は一人きりで過酷な山を制覇しているつもりであったが、実際には影に潜んだ忍野忍が大きな負荷となりつつも陰で絶大なサポートを行っていた場面に差が現れている。
【つばさスリーピング:羽川翼】
- 主人公自身の認識:自分を「阿良々木くんへの恩返しのために右往左往し、不安と欠落を抱えながら旅をする普通の女子高生」と捉えている。
- 周囲からの評価:忍野メメからは「他人のために世界中を駆け回り、自分の欲求のために囮になるヒロイックで手厳しい元委員長」と評される。
- 認識の差が現れた場面:自分は無力で必死に足掻いているつもりであったが、怒りに応じて体内の吸血鬼の血を覚醒させ、双子の吸血鬼をあっさり返り討ちにしてしまう場面に差が現れている。
クライマックス
【あせろらボナペティのクライマックス】
- 発生原因:アセロラ姫がトロピカレスクの死をきっかけに、捧げられる命を食して受け止めるため、自らを吸血鬼にするようスーサイドマスターに懇願したこと。
- 当初の状況:死体城の部屋にて、アセロラ姫が胸をはだけて首筋を差し出し、スーサイドマスターと対峙していた。
- 登場人物それぞれの行動:
- アセロラ姫:自らの意思で吸血を受け入れる覚悟を決めた。
- スーサイドマスター:「姫を救う・愛する」という純粋な意図をもって、アセロラ姫の首筋に牙を突き立てた。
- 予定外の出来事:害意が一切含まれていなかったため、攻撃の跳ね返り現象が発生せず、正常に吸血が完了したこと。
- 危機:一歩間違えればスーサイドマスターが再び爆破自害するか、アセロラ姫がただの死体やゾンビと化す危険があった。
- 対応:スーサイドマスターが姫に「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」という新たな名を授けた。
- 決着:アセロラ姫が完璧な吸血鬼として覚醒し、スーサイドマスターの生命も救われた。
- その直後の結果:キスショットは新たな流浪の旅へ出発し、スーサイドマスターも死体城を離れて別々に歩み始めた。
【かれんオウガのクライマックス】
- 発生原因:火憐がカチカチ山の難所で米を失い、濃霧とオオスズメバチの警告音の恐怖によりパニックに陥ったこと。
- 当初の状況:視界が完全に遮られた濃霧の中、火憐が恐怖で足がすくんで動けなくなっていた。
- 登場人物それぞれの行動:
- 阿良々木火憐:恐怖から沢へ飛び込もうとしたが、背後から何者かに肩を掴まれた。
- 背後の何者か(忍/導き):火憐の肩を掴んで「こんな濃霧でハチが飛ぶか。前に進め」と背中を押した。
- 予定外の出来事:火憐を背中から押した存在について、後に忍野忍自身も「自分は野草を教えて以降は手を貸していない」と否定したこと(正体不明の介入)。
- 危機:パニックのまま滑落するか極度の疲疲労でハンガーノックとなる危機。
- 対応:火憐が自らの意思を取り戻し、真っ直ぐに前へ足を進めた。
- 決着:濃霧を抜けた先に逢我滝が現れ、火憐は冷たい水流の中に飛び込んで滝行を完了させた。
- その直後の結果:火憐は達成感を得て無事に山を下り、忍野忍も暦の元へ帰還して事の顛末を報告した。
【つばさスリーピングのクライマックス】
- 発生原因:双子の吸血鬼「ハイウエスト」と「ローライズ」が、連れ去った羽川翼を遊技室のビリヤード台に縛り付け、「棒倒し」の道具として弄ぼうとしたこと。
- 当初の状況:羽川翼が台の上に固定され、双子が両側から命をもぎ取ろうと手を伸ばしていた。
- 登場人物それぞれの行動:
- ハイウエスト & ローライズ:ゲームの先攻として羽川の身体に手をかけた。
- 羽川翼:人命を弄ぶ不条理な悪行に激怒し、奥歯に仕込んでいたドラマツルギーの「茨の棘」を強烈に噛みしめた。
- 予定外の出来事:茨の刺激によって羽川の体内に潜伏していたキスショットの血が覚醒し、羽川が一時的に凄まじい吸血鬼の力を発揮したこと。
- 危機:拘束を破った羽川が圧倒的な力で双子を叩きのめした。
- 対応:遊びを奪われて生きる意味を失った双子が、互いに相手の身体へ噛みついた。
- 決着:双子が互いに血と肉を食らい合って完全に消滅し、事件が解決した。
- その直後の結果:羽川翼とドラマツルギーは無事に脱出し、羽川は忍野メメへ次の旅の話を語り続けた。
登場キャラクター
私立直江津高校
阿良々木暦
私立直江津高校の3年生を務める。吸血鬼との関わりを持ちながら高校生活を送る。妹の阿良々木火憐の山籠もりに際して忍野忍へ保護を依頼する。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校・3年生。
・物語内での具体的な行動や成果 阿良々木火憐の危険を察知して忍野忍へ山での見守りを頼む。忍野忍を通じて妹の修行の無事を確認する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 直接の山登りには同行せず陰から妹の安全を確保する。忍野忍との主従関係を活用して事態に対応する。
羽川翼
私立直江津高校の3年生で委員長を務める。阿良々木暦を救うため忍野メメを探して世界中を旅行する。卓越した洞察力と行動力を発揮する。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校・3年生(元委員長)。
・物語内での具体的な行動や成果 忍野メメの追跡中にドイツで吸血鬼の事件に関与する。自ら囮となって双子の吸血鬼のアジトへ潜入を果たす。茨の棘を噛んで一時的に吸血鬼化して敵を撃退する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 南極大陸にて忍野メメの発見に成功する。事件の体験談を語ることで忍野メメとの交渉を継続する。
私立栂の木高校
阿良々木火憐
私立栂の木高校の1年生。阿良々木暦の妹であり空手に励む。己の精神と肉体を鍛える目的で過酷な山籠もりに挑む。
・所属組織、地位や役職 私立栂の木高校・1年生。ファイヤーシスターズ。
・物語内での具体的な行動や成果 空手の師匠の助言を受けて逢我三山の縦走を開始する。熊の遭遇や滑落の危機を乗り越えて前進を続ける。逢我滝に到着して激流の中で滝行を完遂する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 助けを受けながらも自力で山を走破する。試練を達成して自身の足立ちへ繋げる。
怪異の専門家
忍野メメ
怪異の専門家。放浪の旅を続けて世界各地を転々とする。独自の価値観を持ち「人は一人で勝手に助かる」という持論を語る。
・所属組織、地位や役職 怪異の専門家。
・物語内での具体的な行動や成果 南極大陸で羽川翼からの接触を受ける。即座の日本帰国を拒否して旅の怪異譚を聴く条件を出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 羽川翼の追跡によって居場所を特定される。帰国の交渉に応じる姿勢を見せる。
ドラマツルギー
吸血鬼退治を行う専門家。元は吸血鬼の身であり高い戦闘力を保有する。ドイツで連続失踪事件の捜査を実施する。
・所属組織、地位や役職 怪異の専門家(元吸血鬼)。
・物語内での具体的な行動や成果 ドイツで羽川翼と遭遇して協力関係を結ぶ。羽川翼を囮にして双子の吸血鬼のアジトを突き止める。捕らわれた地下牢で羽川翼に自決用の茨の棘を手渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 背後を突かれて敵の捕虜となる。羽川翼の覚醒によって生還を果たす。
吸血鬼・怪異
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(アセロラ姫)
かつて王国の姫であった吸血鬼。外見と内面の美しさゆえに命を捧げられる呪いを抱えていた。他人の自死を止める目的で吸血鬼となる道を選ぶ。
・所属組織、地位や役職 元王国の姫(ローラ姫)。吸血鬼。
・物語内での具体的な行動や成果 スーサイドマスターの死体城で下品な振る舞いの指導を受ける。眷属トロピカレスクの死を目撃して吸血鬼化を志願する。スーサイドマスターから血を与えられて最強の吸血鬼へ変化する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 人間の姫から吸血鬼へ種族を転換する。新たな名を与えられて放浪の旅へ出る。
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター
決死にして必死にして万死の異名を持つ吸血鬼。自身で殺した人間しか食さない厳格なルールを守る。アセロラ姫を食べる目的で城へ連れていく。
・所属組織、地位や役職 吸血鬼(スーサイドマスター)。
・物語内での具体的な行動や成果 アセロラ姫を攻撃するたびに害意の反動で死亡と再生を繰りかえす。アセロラ姫に下品な態度を教え込む計画を実行する。アセロラ姫の願望を聞き入れて血を吸い吸血鬼へ変化させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 トロピカレスクの亡骸を食して生命を維持する。キスショットの生みの親として関係を確立する。
トロピカレスク・ホームアウェイヴ・ドッグストリングス
スーサイドマスターの第一にして唯一の眷属。主に忠実な従僕として死体城の管理を担当する。
・所属組織、地位や役職 スーサイドマスターの眷属(従僕)。
・物語内での具体的な行動や成果 アセロラ姫に執着する主人の姿に危機感を抱く。主人のために命令を破ってアセロラ姫へ攻撃を仕掛ける。攻撃の跳ね返りにより体が全砕して死亡する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 独断の行動により命を落とす。亡骸はスーサイドマスターに食される。
忍野忍
阿良々木暦の影に潜む怪異。かつては最強の吸血鬼キスショットとして君臨した。暦の依頼を受けて火憐の山籠もりを密かに支援する。
・所属組織、地位や役職 怪異(元吸血鬼)。阿良々木暦の眷属。
・物語内での具体的な行動や成果 様々な容姿に変身して火憐の前に姿を現す。地図やクマ避けの鈴や日本刀を渡して手助けを行う。山中の難所で野草の知識を授ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 正体を隠したまま火憐の完走を後押しする。阿良々木暦へ事態の報告を行う。
ハイウエスト
ドイツの古城を拠点とする双子の吸血鬼の片割れ。溶暗ドレスを着用した少女の姿を取る。
・所属組織、地位や役職 吸血鬼(双子の片割れ)。
・物語内での具体的な行動や成果 若い旅行者を連れ去って古城へ監禁する。人間を棒倒しの道具として扱うゲームを行う。吸血鬼化した羽川翼に圧倒される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 遊びを拒絶されて生きる意欲を失う。ローライズと互いを食らい合って消滅する。
ローライズ
ドイツの古城を拠点とする双子の吸血鬼の片割れ。白光タキシードを着用した少年の姿を取る。
・所属組織、地位や役職 吸血鬼(双子の片割れ)。
・物語内での具体的な行動や成果 ハイウエストと共に旅行者の拉致を繰り返す。羽川翼をビリヤード台に縛り付けてゲームを開始する。覚醒した羽川翼の力に屈する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ゲームの失敗により存在理由を喪失する。ハイウエストと共に互いを食し合って消滅に至る。

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展開まとめ
残酷童話 うつくし姫
美しすぎる姫の孤独
ある国に、誰もが見惚れるほど美しい姫がいた。芸術家たちは姫の美貌を作品に残そうとしたが、姫自身は外見ばかりを称賛され、誰にも内面を見てもらえないことを悲しんでいた。
魔女は姫の願いを聞き入れ、心の美しさが誰の目にも見えるようにした。しかし、その心に触れた人々は姫のために命を捧げ始めた。姫が涙を流すほど犠牲者は増え、国中が死体で埋め尽くされた。
老婆の遺言と姫の旅立ち
姫を育てた老婆も、自分の知識を捧げようと首を差し出した。悲しみに暮れる姫の涙によって一瞬だけ蘇った老婆は、いつか人々を救えるようになるまで、誰とも寄り添わず旅を続けるよう言い残した。
姫はその言葉に従い、人々から離れて生きる道を選んだ。
第一話あせろらボナペティ
スーサイドマスターとアセロラ姫
吸血鬼デストピアヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターは、自分で殺した人間だけを食べるという信条を持っていた。しかし、ある王国では人間が全滅し、食料を失った彼女は餓死してしまった。
蘇生したスーサイドマスターは、忠実な眷属トロピカレスクから、国を滅ぼした原因が美しさによって人々を死へ追いやる「うつくし姫」だと聞いた。興味を抱いた彼女は姫を探し、死体に囲まれた城で出会った。
姫は「うつくし姫」という呼び名を捨て、アセロラと名乗っていた。
食べられない姫
スーサイドマスターはアセロラ姫を殺して食べようとした。しかし、姫に害を加えようとするたびに、その衝動が自分自身へ向けられ、身体を破壊してしまった。
首をもぎ、心臓をえぐり、身体を砕いても、吸血鬼である彼女は再生した。アセロラ姫は自分を食べようとする相手さえ心配し、スーサイドマスターの食欲をさらに刺激した。
姫の美しさは外見だけでなく、内面の善良さが目に見える形になったものであり、他人が姫のために死のうとする現象は本人の意思では止められなかった。
悪女になるための修行
スーサイドマスターは、アセロラ姫の心を変えずに外見や振る舞いを悪くすれば、人々が死ぬ現象を抑えられるのではないかと考えた。姫を自分の城へ連れ帰り、乱暴な言葉遣いや下品な態度を教え始めた。
アセロラ姫は懸命に努力し、自分の片目を傷つけて海賊のような迫力を出そうとするほどだった。スーサイドマスターはその行為を止め、姫が自分を傷つける必要はないと伝えた。
一方、トロピカレスクは、スーサイドマスターが姫を食べることよりも、姫の世話をすることに執着し始めたのではないかと疑った。
トロピカレスクの死
スーサイドマスターがアセロラ姫への愛着を自覚し始めた頃、トロピカレスクが姿を消した。やがて彼は、姫を排除しようとする行動に出たが、その害意は自分へ跳ね返った。
スーサイドマスターは眷属を失い、アセロラ姫も再び自分のために命が失われたことを深く悲しんだ。
スーサイドマスターはトロピカレスクの死を無駄にしないため、その亡骸を食べた。食べることによって命をつなぐという、自分の信条に従ったのである。
吸血鬼への転生
アセロラ姫は、人間のままでは誰かを死なせ続けてしまうと考え、吸血鬼にしてほしいとスーサイドマスターに願った。
スーサイドマスターは、人間でなくなれば二度と元の生活には戻れないと警告した。それでも姫の決意は変わらなかった。
姫は、自分のためを思って行われた行動は害意として跳ね返らないのではないかと考え、スーサイドマスターに身を委ねた。こうしてアセロラ姫は吸血鬼となり、スーサイドマスターからキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという名を与えられた。
六百年後の噂
それから長い年月が過ぎ、スーサイドマスターはキスショットと別々に暮らしていた。六百年後、彼女はかつての眷属が死んだという噂を耳にした。
噂を信じきれないスーサイドマスターは、久しぶりにキスショットへ会いに行こうと考えた。
第零話かれんオウガ
師匠からの山籠もり
高校一年生の阿良々木火憐は、空手の師匠から、自分自身を理解するため一人で山に籠もるよう命じられた。
火憐は夏休みを利用し、鬼会山、千針岳、カチカチ山を越えて逢我滝へ向かう旅に出た。山での生活を甘く考えていた火憐は、食料や装備の不足に苦しみ、自分の力だけで生きる難しさに直面した。
山中の熊と金髪の少女
鬼会山では熊の親子に遭遇し、火憐は空手の腕前だけでは野生動物に対抗できないと悟った。
そこへ金髪の少女が現れ、熊を追い払った。少女は火憐に助言し、日本刀まで渡して去った。火憐はその正体を知らないまま、山道を進んだ。
千針岳での転落危機
千針岳では危険な岩場を登ることになり、火憐は足を滑らせて転落しかけた。しかし、金髪のおかっぱ頭の少女に助けられた。
少女は先に出会った人物の親戚だと名乗り、火憐に手袋を渡した。火憐は不思議な一族との偶然の出会いに戸惑いながらも、助けを受け入れた。
カチカチ山の試練
食料を失い、身体も傷ついた火憐は、カチカチ山でさらに苦境に陥った。そこへ金髪のツインテールの少女が現れ、火憐を助けた。
少女との会話を通じ、火憐は自分が何者なのかという師匠の問いを考え続けた。しかし、家族や空手から切り離された自分の姿を、簡単には理解できなかった。
濃霧と蜂の恐怖
山中でオオスズメバチの脅威にさらされた火憐は、濃霧の中で恐怖に押し潰されそうになった。進むべき道を見失い、身体も動かなくなったが、背後から現れた何者かに支えられた。
その声に励まされた火憐は、最後には自分の意思で前へ進み、霧を抜けた。
逢我滝への到着
火憐はついに逢我滝へ到着し、念願の滝行に挑んだ。過酷な山道を越えたことで、当初の自信とは異なる、自分の弱さを含めた経験を得た。
一方、阿良々木暦と忍野忍の会話から、道中で火憐を助けた金髪の少女たちは、姿を変えた忍だったことが明らかになった。ただし、最後に濃霧の中で火憐を支えた者については、忍にも心当たりがなかった。
第零話つばさスリーピング
忍野メメとの再会
羽川翼は阿良々木暦を救い、忍野扇に対抗するため、世界中を旅して行方不明の忍野メメを探していた。
苦労の末に忍野を発見した羽川だったが、忍野は他人を直接救うつもりはないと告げた。そのうえで、羽川が自分を探し当てるまでに経験した出来事に興味を示した。
羽川はドイツで遭遇した事件から語り始めた。
ドラマツルギーとの協力
羽川はドイツで、かつてキスショットを狙った吸血鬼ハンター、ドラマツルギーと出会った。彼はハイウエストとローライズという双子の吸血鬼を調査していた。
双子は以前は人間社会と折り合いをつけていたが、若い旅行者の失踪事件に関与している疑いがあった。
羽川は忍野の居場所を教えてもらう条件で、ドラマツルギーの捜査に協力した。旅行者を装って双子の前に現れ、囮となったのである。
双子の吸血鬼による監禁
羽川は双子に誘拐され、結界に隠された城塞都市へ連れ込まれた。ドラマツルギーも追跡に成功したが、結局は羽川とともに地下牢へ閉じ込められた。
ドラマツルギーは脱出を諦め、羽川にも覚悟を促した。しかし羽川は、阿良々木を助ける目的を果たすため、最後まで脱出の方法を探そうとした。
命を使った棒倒し
双子の目的は、さらった人間を食べることではなかった。彼らは人間を使って遊んでいた。
羽川は、身体を少しずつ削り取り、先に死なせた側が負けになるという残酷な棒倒しの遊びに使われた。人間の命を娯楽として扱う双子に、羽川は激しい怒りを抱いた。
羽川に眠る吸血鬼の血
羽川の身体には、以前キスショットの血を取り込んだ影響が残っていた。双子による攻撃でその力が刺激され、羽川の身体に異変が生じた。
双子は羽川の正体を疑ったが、羽川は自分は日本の女子高生だと答えた。やがて双子は互いに噛みつき合い、自滅した。
羽川は命を弄ぶ双子を止めたものの、吸血鬼にとって退屈がどれほど深刻な問題なのかを考え、自分の行動にも複雑な思いを抱いた。
終わらない世界旅行
忍野は、羽川がキスショットの血に由来する力を一時的に発揮したことに興味を示した。しかし再会した時点の羽川には、その力の痕跡が残っていなかった。
忍野は、羽川が旅の途中でさらに多くの経験を重ね、眠っていた力を使い切ったのではないかと考えた。
羽川はドラマツルギーから得た情報を頼りに次の国へ向かったことを語り始めた。忍野を探す旅には、まだ続きがあった。
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