小説【マジエク】「マジカル★エクスプローラー 12 【最新刊】」感想・ネタバレ

小説【マジエク】「マジカル★エクスプローラー 12 【最新刊】」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンル
異世界転生・学園ファンタジーである。元々美少女ゲームを下敷きとした世界で「友人キャラ」に転生した主人公が、ゲーム知識と隠された才能を駆使して自由に生きる姿を描く作品である。 
内容紹介
スサノオ武術学園から獣王リオンらが来校し、ツクヨミ魔法学園は武術大会へ招待される。交流が進む中、獣王リオンと学園内の生徒・伊織との間で早くも対立が生じ、予期せぬ前哨戦が勃発する。実力差を見せつけられた中、主人公・瀧音は新たな力を得るため、雪音たちとともに試練の洞窟へと挑む。各人が過去と向き合い、心の強さを問われていく中、瀧音はついに“転生者としての真実”をヒロインたちに語る時を迎える。

主要キャラクター

  • 瀧音 幸助(たきおと こうすけ):本作の主人公である。もともと美少女ゲームの“友人キャラ”に転生したが、ゲーム知識と魔法適性を活かし、自らの道を切り拓こうとする。 
  • 雪音:瀧音と行動をともにするヒロインの一人。能力や背負う過去を持ち、試練において彼女自身が変化を迎える存在である。

物語の特徴

本巻の魅力は、ゲーム知識×魔法能力という二重の強みを持つ主人公が、学園舞台という限られた空間で敵・味方との駆け引きを通じて成長していく点である。また、武術大会というイベント形式を通じて、キャラクター同士の実力差・信頼関係・過去の因縁が一気にあらわになる構成が効果的である。さらに、瀧音の“転生者としての秘密”が核心に近づく伏線と、それをヒロインたちに語る展開が読者の関心を強く引く。敵とのぶつかり合いだけでなく、内面の葛藤や仲間との信頼関係の描写が物語に厚みを与える作品である。

書籍情報

マジカル★エクスプローラー  エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる12
(英語名:Magical Explorer
著者:#入栖
イラスト:#神奈月昇
出版社/レーベル:KADOKAWA/角川スニーカー文庫
発売日:2025年10月1日
ISBN:9784041166390

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あらすじ・内容

獣王襲来! 武術大会に向けヒロイン強化イベントを攻略せよ!!
 スサノオ武術学園から獣王リオンたちが来校、ツクヨミ魔法学園の一同は武術大会へ招待される。交流が進む中、好戦的な獣王と伊織が早くも対立……予期せぬ前哨戦が勃発してしまう!
 戦いを経て圧倒的な実力を見せつけた獣王リオンに対抗すべく、瀧音は新たな力を求め雪音たちと試練の洞窟へ挑むことに。各々の過去と向き合い心の強さを試される中、瀧音は転生者としての真実をヒロインたちに語る時が来たようで――。
「幸助、教えてほしい。私たちに話していない秘密があるよな」
「……俺は今後起こりうるいくつかの未来を知っています」
 新たな力を得るため皆を救う覚悟を示せ――武術大会編開幕!

マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる12

感想

今巻では、獣王リオンがスサノオ武術学園からやってきて、武術大会に向けてヒロインたちを強化するイベントが繰り広げられる。
あらすじを読んだ時は、どんな展開になるのかとわくわくした。
今次ダンジョン攻略戦は、従来と比較して、顕著にエロティックな描写が散見されたと認識する。
過去の描写が変化球に過ぎた、あるいは、些かばかり特異な傾向を有していた可能性も否定できない。
今巻においては、より直接的に、読者の琴線に触れるような、そうしたエロティシズムが表現されていたと評価できる。
しかしながら、率直に申し上げて、獣王襲来という標題の割には、リオンの印象がやや希薄であった点は否めない。最終局面において登場した武蔵坊弁慶と源義経の存在感が際立っていたため、相対的に埋没してしまったものと推察される。弁慶と義経の登場は、歴史愛好家としては看過できない出来事であった。

物語は、瀧音が新たな力を求めて、雪音らと共に試練の洞窟に挑むという展開を迎える。そこで、瀧音は転生者としての真実をヒロインたちに告白する決意を固める。この告白が、今後の物語に如何なる影響を及ぼすのか、注視する必要がある。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

瀧音幸助

冷静で計画的な思考を持つ。仲間の成長を促しながら自らも最強を目指す立場である。雪音や伊織と相互に刺激し合う関係である。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・一年。式部会。
・物語内での具体的な行動や成果
 大会情報の整理を行った。獣王の暴走を止めるために介入した。遮那王の試練で義経を「弐式瞬改 風月」で撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 周囲の成長を加速させる影響源である。義経から刀を託され、技と意思の継承を示した。

雪音

自他に厳しく、誇りを重んじる。幸助への信頼と関心が強く、並び立つ意思を固めている。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・上級生。風紀会に関与。
・物語内での具体的な行動や成果
 滝での修練を継続した。遮那王の試練で弁慶に対し水属性を乗せた「頂」を放ち撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 劣等感を克服する契機を得た。幸助の目標に歩調を合わせる決意を示した。

モニカ

合理的で判断が速い。対外折衝と統率で学内を導く立場である。幸助の動機に関心を寄せている。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 武術大会の説明と招待対応を指揮した。獣王戦の場を訓練場へ移し、混乱を抑えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 前年の優勝者である。願いにより今年の優勝者とのエキシビションを確定させた。

フラン

努力家で自省が深い。才能ある後輩に触れ、自己の弱さと向き合っている。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・生徒会副会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 大会の来訪対応を担った。星の試練で過去の劣等感と対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自己受容を進め、成長への覚悟を固めた。

聖伊織

真面目で責任感が強い。結花を守る意思が強く、幸助と競い合う関係である。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・一年。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣王への決闘を受けた。敗北後に再挑戦を誓い大会出場を決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 敗北を糧として精神的成長を示した。

聖結花

冷静で観察力が高い。挑発に動じず、周囲と連携を取る立場である。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・一年。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣王の挑発を受けた場で状況把握に努めた。保健室で伊織を支えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 代表候補として評価を受ける素地を示した。

リオン(獣王)

自尊心が強く、力を至上視する。無軌道に見えて戦術眼を持つ。
・所属組織、地位や役職
 スサノオ武術学園・上位ランカー。通称「獣王」。
・物語内での具体的な行動や成果
 来訪時に毬乃へ奇襲を試みた。伊織との決闘で獣化を用い圧倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学園内の頂点として恐れられている。混乱の火種となる存在である。

タマラ

温厚で実務的である。制止と調整に長け、場の収拾を担う。
・所属組織、地位や役職
 スサノオ武術学園・二年。ランキング二位。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣王を制止し謝罪を行った。大会ルールの説明を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「不動」の二つ名を持つ。獣王を抑止できる希少な戦力である。

ヒルダ

内向的で慎重である。状況に圧されやすいが責務を果たす。
・所属組織、地位や役職
 スサノオ武術学園・一年。
・物語内での具体的な行動や成果
 来訪団の一員として手続きに従事した。帰路の謝罪同行を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 花邑家との縁が示され、背景の厚みが示唆された。

紫苑

理知的で観察重視である。過去の傷と向き合い、静かな闘志を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・上級生。式部会。
・物語内での具体的な行動や成果
 星の試練で父との記憶と対峙した。月の試練で状況分析を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 心的外傷への受容を進め、次段の成長基盤を得た。

ななみ

柔軟で機転が利く。雰囲気を和らげ、作戦面で貢献する。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・一年。式部会。
・物語内での具体的な行動や成果
 隠し扉の仕組みを解明した。待機時に石版パズルを解読した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報処理と支援で存在感を高めた。幸助の秘密を共有した。

花邑毬乃

沈着で実力が高い。対外対応で学園の顔を務める。
・所属組織、地位や役職
 ツクヨミ魔法学園・学園長。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣王の奇襲を結界で阻止した。大会内定の伝達を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 強大な権限と戦力を併せ持つ。学内秩序の要である。

源義経

静謐で厳格である。剣にすべてを込める存在である。
・所属組織、地位や役職
 遮那王の試練・守護者。
・物語内での具体的な行動や成果
 京八流の剣で幸助と対峙した。最後に刀を手渡し消滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 導き手として技を遺した。試練の意味を示す役割を担った。

武蔵坊弁慶

剛直で忠義に厚い。圧倒的な膂力と耐久を持つ。
・所属組織、地位や役職
 遮那王の試練・守護者。
・物語内での具体的な行動や成果
 京八流の「頂」を放ち雪音を圧した。九頭龍の累積後に雪音の「頂」で撃破された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後まで直立のまま消滅した。忠義と矜持を体現した。

展開まとめ

一章 プロローグ

滝の前での雪音との対話

滝の涼やかな空間で、瀧音幸助と雪音は汗ばみながらも語り合っていた。ななみから渡されたタオルには幸助のデフォルメ絵と「ご主人様LOVE」の文字があり、それを雪音が使っていた。アイヴィから「タッキーラブに改変されたのでは」と聞かれた話題を通じて、雪音は幸助との出会いで自身が変わったと肯定的に語った。

戦い続きの夏と休息の必要性

雪音はリュディや伊織たちとの過去改変の件を思い返し、幸助の経験が深まっていることを認識していた。幸助はダンジョン攻略に専念するつもりだったが、雪音は戦いが続いた彼を心配し、少しは休むよう促した。幸助はそれに対して、自分の行動にはまだ目的があり、これからも努力しなければならないと述べた。

最強を目指す理由と焦り

雪音が「最強になるためか」と問いかけると、幸助は肯定し、自分にはまだ倒せない相手がいると語った。彼は現状の順調さを自覚しつつも、今後訪れるであろう重要なイベントに備えてさらなる成長が必要だと感じていた。特に年内に多くの山場を越えなければならず、時間が限られていることを意識していた。

雪音の内省と成長への焦り

雪音視点に切り替わると、彼女は花邑家にてリュディと会い、最近の訓練状況や伊織と結花の行動について知る。皆が過去の体験を通じて目覚ましく成長しており、自分だけが取り残されているのではないかと焦燥感を抱いていた。学園の風紀会室でも一人、過去を振り返りながら自分の成長の停滞を痛感していた。

モニカ会長の問いと疑念

そこへモニカ会長とハンゾウが現れ、瀧音幸助について尋ねてくる。モニカは彼から教えられたダンジョンで自分だけが不自然に成長できることに疑念を抱き、その意図を雪音に問うた。雪音は皆が幸助の助言によって強くなっている事実を語りつつも、彼の本心や目的は知らないと答えた。

最強という目標の真意

モニカは、幸助がライバルとなる自分たちを強くする理由が理解できず、その動機に疑念を抱いていた。雪音もまた、彼がなぜ皆を強くしようとするのか、その理由を明確に知らずにいた。過去に彼へ問いかけた際、幸助は「待て」としか答えなかったことを思い出し、彼の真意が見えないことに不安と関心を募らせていた。

ななみに尋ねても得られなかった答え

雪音は帰宅後、ななみにも幸助の意図を尋ねたが、ななみも理由を知らなかった。この出来事を通して、雪音は改めて自分が幸助のことを何も知らないと痛感し、彼の存在がますます気になるようになっていった。最強になるならば他者を強くする必要はないはずだと考え、彼の真意を知りたいと強く思うようになった。

二章 スサノオ武術大会

武術大会の知らせと会長の関心

フランがモニカ会長にスサノオ武術学園からの招待について報告すると、会長は過去の大会を思い出しながらも関心を示さなかった。獣王の実力はさらに高まっており、一位を保持し続けているという情報があったが、会長はそれよりも伊織や瀧音幸助といった一年生たちの急成長に興味を抱いていた。

異質な存在としての瀧音幸助

会長は雪音との会話を振り返り、瀧音幸助と接した者が皆成長している事実に言及した。彼の影響力は極めて大きく、雪音、紫苑、アイヴィ、果ては伊織までもが変わりつつあった。会長は彼らの可能性について、最強の自分にさえ敗北をもたらすのではないかと口にし、その考えにフランも同意した。

結婚条件に関する疑問と羨望

フランは会長が敗北した場合、帝国での有名な「実力で結婚相手を決める」という宣言にどう対応するかを尋ねた。会長は求められれば受けるが、相手が望むかは疑問だと答えた。フランは会長の美貌と才能を羨ましく感じつつも、自分の趣味や性格に対する劣等感を抱いていた。会長は彼女を肯定したが、フランは自分を変えられないと感じていた。

大会の詳細と特別枠の存在

会長とフランは大会の詳細について再確認した。モニカ会長は特別枠での出場が決まっており、正式な説明は来訪時に行われる予定だった。予選の段階から獣王や華が出場する可能性があり、波乱の展開が予感されていた。

一年生への大会説明と反応

モニカ会長は一年の三会メンバーを月宮殿に集め、大会の概要を説明した。伊織は大会を知らなかったが、フランや結花、幸助が説明を補った。大会では優勝者に「願いを一つ叶える権利」が与えられ、副賞には伝説級アイテムも含まれるなど非常に豪華であることが判明した。

ランキングと学内評価の重要性

スサノオ武術学園では順位や階位が学内での評価や就職に大きく影響するため、大会は非常に重要な機会とされていた。他校からの招待枠もあり、入賞すれば名声や推薦を得られることも多い。学園間の非公式な評価にも直結しており、生徒たちの士気も高かった。

瀧音の視点とゲーム知識の活用

瀧音はゲーム知識を活かし、大会の仕組みや優勝賞品、副賞の仕組みを把握していた。実際の世界でも情報は一致しており、スサノオダンジョンの利用権などの恩恵に期待していた。ななみが持ってきた情報から、今年はスポンサーも多く賞品が豪華になる見込みであった。

過去の波乱と前回の優勝者の正体

前年度の大会では、優勝・準優勝が共に最高学年ではなく、スサノオ武術学園以外の生徒だったことが大きな波乱を呼んだ。準優勝はアマテラス女学園の華、優勝はモニカ会長であったことが伊織にも伝えられ、彼は驚愕した。

出迎え任務と式部会の役割

会長は、招待のために来訪するスサノオ武術学園の使者を出迎える任務を一年生たちに課した。対応を通じて経験を積ませる目的もあり、式部会の役割が外部対応に強いことも説明された。招待者の案内や大会説明の立ち会いが求められた。

大会参加への決意と将来展望

大会は貴族や企業、騎士団が注目しており、将来に向けて参加する意義は大きかった。伊織は自身の進路を踏まえ、出場を前向きに考え始めていた。昨年の波乱を知り、今年も何かが起こるのではという予感をフランや会長は抱いていた。

期待と予感の中で

会長は今年の大会が波乱含みであると直感しており、その予感は嬉々とした笑顔とともに語られた。その姿を見たフランは、会長がプロポーズされないはずがないと確信しつつも、自分たちもまた変化と成長のただ中にあることを実感していた。

大会後の会話と疑問

大会に関する会議が終わった後も、瀧音幸助たちは月宮殿の一室に留まっていた。リュディとカトリナは用事で退席し、その場には生徒会と式部会の一年生が残っていた。スサノオ武術大会の存在を知らなかった伊織に対して、ギャビーや結花が反応を示し、他校生徒を招く理由について瀧音が説明を加えた。それは切磋琢磨を促すための伝統行事であり、スポンサー企業へのアピールの意図もあるとされた。

モニカ会長の願いと大会出場の是非

モニカ会長が昨年の優勝賞品として願ったのは「来年も大会に参加したい」「優勝者と戦いたい」という内容であり、今年の参加も確実となった。瀧音は伊織に出場の意志を尋ね、伊織は興味はあるものの、絶対に出場するとは限らないと答えた。騎士団への志望が揺らぎ、進路を多角的に考えるようになっていたからである。

参加枠と選抜方式の確認

ギャビーは、スサノオ武術学園からの招待には人数制限があり、各学年から成績などを考慮して二名が選ばれること、候補が多い場合は模擬戦で選抜が行われることを説明した。瀧音や伊織は出場に前向きで、ギャビーも意欲的だったが、結花は興味を示さなかった。リュディやカトリナも同様に乗り気ではない様子だった。

獣王の強さと出場リスク

出場枠を得ても、抽選によっては初戦から獣王のような強敵と当たる可能性があると結花が指摘した。伊織はその強さや人物像に関心を寄せたが、結花やギャビーは彼について「力が全て」「気分屋」「暴君」など、あまり良い印象を抱いていない様子だった。式部会の冗談のような振る舞いとは異なり、彼はそれを本気で実践しているという点が強調された。

不安の予兆

伊織は大会の雰囲気や獣王の存在に不安を抱いたが、瀧音はその様子を内心で肯定していた。大会では何かしらの問題が発生するのが当然であり、平穏無事に終わることはまずないと考えていた。これから始まる戦いへの緊張感と、それに伴う覚悟がその場の空気に漂い始めていた。

三章 獣王

来訪準備と獣王の登場

スサノオ武術大会の案内を終えた日、ツクヨミ魔法学園の月宮殿にて、毬乃学園長と生徒会・式部会の一年生たちが来訪者を出迎える準備を整えていた。フラン副会長たちによる施設案内を経て、スサノオ武術学園の生徒たちが姿を現した。その一行の中には、威圧的な存在感を放つ大柄な獣人――通称「獣王」の姿があった。

毬乃学園長への奇襲と対応

来訪の挨拶が始まる直前、獣王は突如毬乃学園長に拳を叩き込もうとした。しかし毬乃は即座に魔法障壁でそれを受け止め、平然と応じた。この無謀な行動に、その場にいた者たちは驚愕したが、毬乃は終始冷静であった。伊織は驚きのあまり口を開け、雪音は即座に薙刀を手に取ろうとするも、毬乃に制止された。

謝罪と会長たちの反応

獣王の不意打ちに対し、同行していた羊族のタマラが平謝りし、モニカ会長は呆れたようにため息をついた。獣王ことリオンは、自身の攻撃が通じなかったことに悔しさを滲ませながらも毬乃の実力を素直に認めた。彼の行動理由は後に語られ、毬乃との手合わせを望んでいたこと、周囲の反応を試したかったこと、そして「やるな」と言われたことに反発した結果であることが明かされた。

獣王の性質と能力の片鱗

リオンは野蛮な行動に反して戦闘においては非常に戦略的であり、勘と知性を併せ持つ厄介なタイプであった。高い回避力と持久力を兼ね備え、戦闘中には狡猾な動きを見せるため、対処が難しい人物である。付き添いのヒルダは怯え気味で、タマラは怒り疲れた様子を見せていた。

自己紹介と関係構築の始まり

毬乃が場を整え、モニカ会長の進行で自己紹介が行われた。ツクヨミ側の生徒たちが名乗った後、スサノオ側も順に自己紹介を行った。リオンが獣王として名乗りを上げ、タマラは二年生として謝罪を重ね、ヒルダは一年生であると控えめに名乗った。

毬乃の退出と今後への移行

挨拶が一通り終わると、毬乃は別件のため場を離れ、スサノオ武術学園の教師とともに転移魔法陣へと姿を消した。モニカ会長はその場を引き継ぎ、皆を案内して次の段階へ進めるよう促した。獣王との波乱含みの出会いは、この大会の異様な緊張感と今後の展開を象徴していた。

大会概要の説明と特別ルールの追加

月宮殿の応接室で、スサノオ武術学園側のタマラが大会の概要を説明した。ルールは例年通り、スサノオ生は予選から、本戦には他校生徒が招待される形式であったが、今回はモニカ会長の願いにより特別ルールが追加された。すなわち、優勝者はモニカ会長とのエキシビションマッチを行うというものであった。説明後は質疑応答が交わされ、会議は和やかに終わった。

獣王の挑発と瀧音の応酬

会議終了後、獣王は伊織と瀧音を見下すような態度を取り、特に伊織を「ひょろひょろのガキ」と嘲笑した。結花に対しても過去の因縁を持ち出し、彼女を侮辱する言動を繰り返した。これに対して瀧音は挑発を逆手に取り、アマテラスやモニカ会長と比較してスサノオの程度を貶すなどして獣王に口撃を加えた。

伊織の怒りと決闘の発端

結花が獣王の爪攻撃で傷つけられると、伊織が激怒し、獣王に謝罪を要求した。伊織は初めて明確な敵意を露わにし、身体強化と共に威圧的な魔力を放った。その様子に獣王も興味を示し、挑戦を受け入れた。モニカ会長の一言で訓練場での決闘が正式に成立した。

伊織と獣王の激闘の始まり

観客が集まる中、伊織と獣王の戦闘が始まった。伊織は突きと盾術、光魔法を組み合わせてスピードと手数で攻め立てたが、獣王はパワーと耐久力でそれを受け切っていた。伊織は隙をついて一撃を入れることに成功したが、獣王は直後に「獣化」を発動し、姿と力を劇的に変化させた。

圧倒的な力の差と瀧音の介入

獣化した獣王は一気に伊織を吹き飛ばし、彼が倒れたまま動かないことを確認すると、追撃を加えようとした。これに対し瀧音が即座に介入し、拳を防いで伊織を守った。獣王はさらに攻撃を仕掛けるも、瀧音とその仲間たち――アイヴィ、ななみによって包囲され、戦闘を制止された。

タマラの制止と力量の示威

タマラが割って入り、強引に獣王を引き離したことで戦闘は終息した。瀧音が魔力を放出して名乗ると、獣王は彼の名と家系を認識し、興味を示す。タマラは獣王を押さえ込みながら彼を連行しようとするが、その力は獣王に劣らぬものであり、実力の高さが浮き彫りになった。

タマラの実力とスサノオの序列

タマラの力に驚いたななみが瀧音に確認すると、彼は「タマラはスサノオ武術学園で獣王に次ぐランキング2位の実力者であり、サブヒロインでもある」と説明した。彼女は獣王を抑えることができる数少ない存在であり、その戦力は学院内でも一目置かれるものであった。

戦後の見送りと謝罪

伊織と獣王の戦闘が終わり、瀧音幸助とモニカ会長、フラン副会長、ななみは、校門でスサノオ武術学園一行を見送っていた。謝罪に訪れたのはタマラとヒルダ、そして教師のみで、獣王は既に帰っていた。モニカ会長は特に被害もなく終わったことを評価し、形式的な注意を述べて別れの言葉を告げた。

タマラの問いと瀧音への興味

帰り際、タマラは瀧音に対し、獣王の攻撃に反応できたのがモニカ会長と瀧音の二人だけであると告げた。彼女はその動きに興味を抱いており、以前から関心を持っていたことも明かした。ヒルダも花邑家出身であることを補足した上で、彼の行動に注目していた様子だった。

不動の二位と呼ばれるタマラの本心

瀧音は、タマラが「不動のタマラ」と呼ばれていることについて言及し、その二つ名が攻防能力だけでなく、獣王を越えられないという順位的な意味も含まれていることを指摘した。これにタマラは静かに反応し、瀧音に大会への出場を促した。

挑発の理由とフラン副会長の疑問

見送りが終わるとフラン副会長は瀧音に対し、なぜタマラを挑発したのかと問いかけた。モニカ会長も冗談めかして口説くと思っていたと述べたが、瀧音は「彼女はもっと早く獣王を止めることができたはず」と不満を吐露した。伊織が傷つくまで動かなかった彼女に対する苛立ちが、挑発の動機であった。

周囲からの評価と瀧音の立ち位置

瀧音の回答に、モニカ会長は感心しつつ「あなたは色んな人に好かれる」と評した。それが好敵手としてか好戦的な意味合いであることは問わなかったが、彼女の笑顔には意味深な含みがあった。瀧音はその真意を測りかねつつも、騒動の余韻と共に思考を巡らせていた。

保健室での再会と伊織の悔恨

獣王との戦いを終えた伊織を見舞うため、瀧音幸助はななみと共に保健室を訪れた。そこには結花と伊織のみが残っており、他の仲間たちは彼の無事を確認した後、彼の言葉に従って帰宅していた。伊織は自らの敗北に対して恥じらいを見せながらも、悔しさと情けなさを吐露し、結花に謝罪した。

守れなかった後悔と決意

伊織は過去に結花が攫われた事件を引き合いに出し、自分が変わったと思っていたが、結局守り切れなかったと涙ながらに語った。それに対して瀧音は、伊織が確実に強くなっていると断言し、励ました。伊織はその言葉を胸に刻み、武術大会への出場と、獣王へのリベンジを誓った。

ライバルとしての宣言

伊織の決意を聞いた瀧音は、自らも大会に出場する意志を示し、優勝の座を狙うと宣言した。互いにライバルであることを認め合い、どちらが先に獣王を倒すかを競うようなやり取りを交わした。

結花からの感謝と激励

保健室を出た瀧音に対し、結花は感謝の言葉を伝えるために追いかけてきた。彼女は獣王に言い返してくれたこと、自分を庇ってくれたことへの礼を述べた。瀧音は冗談交じりに応じつつも、大会に出場する動機の一部が結花を貶された怒りによるものであることを認めた。

獣王への評価と覚悟

結花は大会で代表に選ばれる可能性は高いと述べたが、瀧音は現時点では獣王に勝つことは不可能であると率直に語った。しかしそれでも彼は、勝てるようになるまで鍛える覚悟を示した。結花は彼の言葉に笑みを浮かべ、小さな応援を約束してその場を後にした。

未来への一歩

再び笑い合った二人の姿には、これから始まる大会に向けた希望と緊張が入り混じっていた。瀧音は静かにその決意を胸に刻み、これからの戦いに臨む覚悟を新たにしていた。

四章 試練の洞窟
―月の試練―

雪音と紫苑の会話:幸助の成長と日常への疑問

雪音と紫苑はソファに腰掛けながら、遅れているフランの話をしつつ、幸助の日常と成長速度について語り合った。紫苑は幸助の著しい成長を「映画のような日常」と評し、命の危険すら伴う日々を送る理由を問いかける。雪音はそれが「目的のため」であると推測するが、二人とも真意は分からなかった。

フランの焦燥と焦り:伊織や瀧音との力量差

フランは獣王や伊織、瀧音らの実力を目の当たりにし、自分との差に危機感を抱いていた。特に伊織と瀧音が同年代にもかかわらず急激に力をつけていることに対し、「二年のうちに追いつかれる可能性がある」と語った。紫苑もまた、同様の思いを抱いていた。

月の試練開始:不気味な街並みと偽物の登場

試練の舞台は西洋風の石造りの町で、人影がなく不気味な雰囲気が漂っていた。参加者たちは探偵風の衣装に身を包み、ターゲットの気配を探知する。その後、幸助に酷似した男性(偽物の幸助)が現れ、一行は彼を尾行することとなった。

隠し通路の発見と追跡:ななみの活躍

偽物の幸助は町外れの洞窟へ向かい、壁に触れることで隠し通路を出現させた。ななみがその仕組みを解明し、魔力を用いて再び扉を開くことに成功する。一行はその先へと慎重に進んでいく。

羞恥と混乱:偽幸助の不可解な行動

尾行中、偽物の幸助が突然ズボンを下ろし、小便を始めるという異常行動をとる。これに幸助本人は激昂し、周囲に制止される騒ぎとなった。さらに偽物は服を脱ぎ出し、洞窟内でくつろぎ始める。これらの行動に仲間たちは驚きと困惑を隠せなかった。

動物の鳴き声による誤魔化し作戦

偽物が気配に気づき始めたため、一行は動物の鳴き真似で気配をごまかす作戦に出る。犬、狐、ウサギ、さらには「野生のメイド」といった奇妙な鳴き声が飛び交い、偽物はあっさりと誤魔化された。幸助はこの状況に耐えかね、怒りと羞恥で限界を迎えるが、何とか踏みとどまった。

試練の終幕と転移魔法陣の発見

偽物が進んだ先には転移魔法陣が存在し、それが試練のゴールであると判明した。一行は戦闘がなかったことに安堵しつつも、精神的に極めて厳しい試練であったと振り返った。追跡という形式の中で、肉体的な戦闘ではなく、羞恥と忍耐を試される内容であったことが明らかとなった。

五章 試練の洞窟
―星の試練―

星の試練の開始とスキルの授与

星の試練の魔法陣に到着した一行は、石像から放たれた白い光がそれぞれの身体へ吸収される現象を体験した。それはスキルの授与を意味しており、幸助は自身の速度が上昇するスキルを得たことを確認した。疲労も少ないことから、彼らは休まず次の試練へと進む決断を下す。

星の試練の概要と個別挑戦の予感

星の試練は各参加者ごとに異なるギミックが用意されており、それぞれが単独でフロアを攻略しなければならない形式であった。幸助は、試練の内容がトラウマや精神的負荷に関連することを説明し、紫苑が最も過酷な試練に直面するだろうと予想していた。

紫苑の回想と和国の屋敷

魔法陣により転移された紫苑は、和国様式の屋敷に辿り着いた。そこはかつての自室であり、彼女の忌まわしい過去と向き合う場所であった。父の怒号が響き、魔法の訓練に対する叱責が蘇る。紫苑は体が硬直し、すぐには部屋に入ることができなかった。

鏡に映る自分と血の繋がりの否定

ようやく部屋へ入った紫苑は、かつての思い出が染みついたその空間を物色するが、出口の手がかりはなかった。鏡に映る自分の顔を見て、父と異なる容姿に安堵する。彼女は父から受け継いだ魔法の才能を皮肉に思い、自分に課せられた運命と向き合おうとする。

中庭で出会う過去の自分と華姉様

声を聞きつけ中庭に向かった紫苑は、幼少期の自分と、かつて慕っていた女性・華姉様が戯れている姿を目にする。そこには父の声とともに、華姉様の父との政治的な対立が浮かび上がる。紫苑はその光景を悲しみとともに見つめ、幼い自分と華姉様が黒い靄に包まれて消える様を見届けた。

家と誇りの板挟みと父への怒り

紫苑は、家の名誉と政治的野望を優先する父の姿を思い出す。華姉様との友情を踏みにじるような態度に怒りを覚えつつも、当時何もできなかった自分の無力さに苦悩する。試練の導きに従い、最も忌避していた父の部屋へと足を踏み入れる決意を固めた。

父との対話と存在の否定

父の部屋では、幼少期の紫苑と父が言い争う過去が再生される。父は九条家の取り込みを画策し、娘の情を否定し廃嫡をちらつかせる発言を繰り返した。その姿に現在の紫苑は怒りを覚え、過去と訣別する思いで二人が消えるのを見届けた。

精神的な地獄としての試練

最奥に現れた転移魔法陣により脱出の道が開けるも、紫苑は「地獄のような試練であった」と語る。それは精神的外傷と真正面から向き合い、受け入れることを強いられるものであった。幸助の言葉通り、「結構辛いどころではない」試練であることを彼女は痛感していた。

フラン、過去の記憶に向き合う試練へ

転移魔法によって飛ばされたフランは、かつて通っていた夜の学校に辿り着いた。聞こえてきた声「自分の弱さを見つめ、正しい道を進め」が試練の条件であると察した彼女は、自分の記憶を頼りに教室を巡ることにした。ループする廊下、過去の教室、そして再現された過去の場面が彼女の前に現れた。

幼き日の劣等感と“キラキラ”への憧れ

教室では、過去の自分とかつての親友が再現されていた。魔法や勉強の努力を重ねてきたフランは、努力せずとも成果を出す彼女に対し強い劣等感を抱いていた。純粋な称賛すら皮肉に聞こえ、それを嫌悪する自分自身に嫌悪感を抱いた。これが、フランが自分を嫌いになったきっかけであり、今なお心に残るトラウマとなっていた。

天才たちとの比較と自己否定

やがて学園の昇降口に出た彼女は、そこが生徒会の拠点・月宮殿へと繋がっていることに驚いた。そこには後輩の天才たち――聖伊織、聖結花、ガブリエッラ、リュディヴィーヌ、ななみ、瀧音幸助らの姿があり、談笑する彼らの中に自分の存在はなかった。凡人である自分と才能ある彼らとの間に広がる溝に、フランは強い無力感を覚えていた。

瀧音幸助と再会し、心を通わせる

再び転移された先でフランは瀧音幸助と合流した。彼と共に花邑家の滝へ向かい、軽い訓練の後、フランは幸助の真の目的を尋ねた。彼は未来を知っており、仲間を守るために「最強」を目指しているのだと告白した。その裏には、世界や学園が破壊される可能性すらある最悪の未来があるという。

フラン、自身の成長を決意する

フランは幸助の孤独と責任の重さを理解し、自らもその願いに共に歩む決意を固めた。彼女は自身の弱さやコンプレックスを乗り越え、成長するための危険な道も厭わない覚悟を示した。二人の心が通じ合った瞬間、足元に転移魔法陣が現れ、次なるステージへと導かれることとなった。

六章 試練の洞窟
―太陽の試練―

仲間たちの決意と太陽の試練への突入

星の試練を終えた一行は、太陽の試練へ進むか否かの判断を迫られた。瀧音、雪音、ななみの三名は初めから挑戦する意志を持っていたが、紫苑とフラン副会長にとっては過酷な戦闘と薄い恩恵が予想された。だが両者は仲間としての誇りを示し、共に挑むことを選んだ。

紅葉と鳥居、和の風景が彩る危険な道

太陽の試練は紅葉に彩られた幻想的な広葉樹林で始まった。鳥居の先に続く落ち葉の小道を進むと、ななみが敵の接近を察知。山伏に擬態した侍や忍、陰陽師たちの奇襲を受けた一行は、手強い敵を連携と実力で撃破した。敵は雑魚扱いであったが、バランスの取れた強敵揃いであり、戦術と判断力が試された。

烏天狗との邂逅と実力の見極め

山伏たちを撃破した先で一行は神社と烏天狗に遭遇した。強力な剣技と風魔法、さらには縮地を駆使する烏天狗に翻弄されながらも、瀧音と仲間たちは協力して耐えた。しかし烏天狗は満足したように天へ飛び去り、代わりに転移魔法陣を残す。これは勝敗ではなく、彼の実力審査だった。烏天狗はボスの師匠格にあたる隠しボスであり、現段階での撃破は不可能と瀧音は理解していた。

美しい海と封じられた船の謎

転移した次の層では海を見下ろす丘に出た。絶景に一同は心癒されるも、海に浮かぶ壊れた船とその前の結界が謎を示していた。進行不能なこの船は、今後のボス戦に関連する伏線であると瀧音は察していた。一行はそのまま戦闘をこなしながら進み、最終的に九階層のボス手前に到達した。

天狗に選ばれし者と、試練の分岐

ボス部屋の直前、フラン副会長・紫苑・ななみの三名は転移魔法陣に入れなかった。天狗の面を冠した鳥居を通過できたのは瀧音と雪音の二名のみであった。これは天狗に「認められた者」のみが進める試練であり、ゲーム版と異なり物語的な意味づけが強調されていた。

仲間たちは彼らに期待と激励を送り、瀧音と雪音は次の試練へと進んでいった。

七章 遮那王

雪国の異変と遮那王の登場
転移先のダンジョンは一面の雪景色であった。鳥居が立つその風景に、幸助と雪音先輩は厳かな気配を感じ取る。そこで耳にしたのは、どこか寂しげな笛の音だった。その旋律の主は、このダンジョンのボスである源義経。鳥居をくぐった二人は、大きな足跡を見つけ、義経と武蔵坊弁慶を発見する。

弁慶の圧倒的な力
大木のような体躯の弁慶は、怪力無双の名に違わぬ一撃で先制する。その一薙刀で吹き荒れる風に、幸助たちは即座に彼の異常な強さを悟った。雪音先輩は薙刀で応戦するが、力でねじ伏せられ、幸助の補助攻撃も通じない。二人が本気で挑む中、弁慶は魔力で防御しながら九頭龍すらも耐え抜き、逆に膂力を増していった。

義経の異質さと圧倒的な剣技
一方の義経は動かず、弁慶を静止させて観戦する。やがて彼が動き出すと、まるで幻覚のように揺らぎながら接近してきた。幸助は義経と一騎打ちとなり、同時に抜刀するが、あっさりと敗北する。義経の剣技は京八流のものだった。雪音先輩が挑んでも九頭龍をすべて受け流され、逆に鞘による反撃を受けてしまう。

九頭龍の格の差と剣の在り方の違い
義経の九頭龍は、雪音先輩のそれよりも無駄がなく、ただ斬るためだけに最適化された技だった。幸助はその洗練を認めつつも、義経の動きを模倣するのではなく、自分自身の流派を見出す必要性を感じ取る。雪音先輩も義経の動きは義経にしかできないものと理解し、対抗の意思を新たにする。

成長のための戦いの選択
幸助は義経との戦いを志願し、雪音先輩は弁慶を引き受けることを承諾する。二人は義経と弁慶を分断する策を講じ、各々の戦いへと向かっていった。これは、幸助が自分の剣を見出すため、そして京八流の核心に迫るための戦いの始まりであった。

弁慶との圧倒的な力の差

雪音は弁慶と対峙し、彼の放つ京八流薙刀術「―頂―」の一撃を辛うじて防いだものの、吹き飛ばされ背中を強打した。彼の攻撃には土属性魔力が融合され、斬撃に加えて衝撃波をも生む複合技であった。魔法と武術が融合した技に、雪音は自身の修行不足を痛感した。

絶望の中の光と、立ち上がる決意

義経と戦う幸助が、実力差に怯まず戦い続ける姿を見て、雪音は己を省みた。幸助の志を支えるに値する存在になるため、自らの弱さを克服すべく立ち上がる。彼の隣に立ちたいという願いが、彼女の動きを支える原動力となった。

京八流奥義「―頂―」への挑戦

雪音は弁慶の使った「―頂―」を、自身の属性魔法と融合させて再現する覚悟を決める。水属性を薙刀にまとわせ、全身全霊の力を込めて渾身の一撃を放つ。それはまさに魂を削る技であり、発動と同時に雪音の体には大きな負担がかかった。

決着、そして称賛の消滅

雪音の放った「―頂―」は、弁慶の巨体を貫き、爆発のような衝撃と共に大きな傷跡を残した。九頭龍での累積ダメージもあり、弁慶はその場で魔素に変わって消えていった。ただし彼は、最後まで立ったまま消滅しており、忠義を貫いた姿勢を雪音に深く印象づけた。

弁慶の圧倒的な力と京八流の技

雪音は、九頭龍と幸助の連撃で弁慶との距離を取ることに成功したが、その力強さと堅牢さに苦戦を強いられた。弁慶はただの暴力的な戦士ではなく、京八流薙刀術に基づいた技を用い、技術と戦術を両立させていた。特に「―頂―」と呼ばれる斬撃と衝撃波を合わせた技により、雪音は大きく吹き飛ばされてしまう。その一撃には土属性魔力が付与されており、雪音の防御を上回る破壊力を持っていた。

雪音の覚醒と頂の返し技

雪音は、自らの未熟を痛感しつつも、幸助の不屈の姿勢から勇気を得る。彼の横に立ちたいという思いが、恐怖や迷いを打ち消し、弁慶の「頂」を逆に模倣する決意を固めた。彼女は水属性を込めた「頂」を全力で放ち、弁慶に大ダメージを与えることに成功する。弁慶はその攻撃を受け立ったまま魔素に変わっていき、雪音はその姿に畏敬の念を抱いた。

義経との交戦と「瞬」の模倣

瀧音は義経との戦闘において、自らの力では到底及ばぬと悟るも、技術や構えの真似を試みる。義経は八艘飛びを駆使し、高速で接近して斬撃を繰り出してきた。瀧音は第三の手やストールを駆使して反撃するが、技量差は明白であり、あくまで耐える戦いを強いられた。しかしゲームでの攻撃パターンが実際に再現されていることに気づき、義経の瞬の構造を観察するようになる。

風属性のエンチャントと「瞬改」への昇華

義経の「瞬」には風属性魔力が一瞬だけ付与されていることを見抜いた瀧音は、自らも風属性を刀にまとわせて技を再構成する決意を固める。集中力を極限まで高めた彼は、「弐式瞬改 風月」を発動し、義経の瞬を上回る一撃を放つ。その威力は地面を抉るほどであり、義経の体を魔素へと変えていった。

託された刀と義経の想い

義経は魔素へと変化しながらも、飛ばされた刀を拾い、鞘に収めたうえで瀧音に手渡した。それは敵意ではなく、技と意思の継承のようであった。最後に弁慶の消えた場所を見た義経は、まるで「共に逝く」と語るように静かに魔素となり消えていった。

義経の教えとこれからの決意

結界が消え、駆け寄ってきた雪音の回復を受けながら、瀧音は義経の行動がただの戦闘ではなく、導きであったことに気づく。義経はかつて自らが守れなかった人々への後悔から、同じ過ちを繰り返させまいと、技と刀を託したのではないかと考える。雪音の温かい回復に包まれながら、瀧音は義経から渡された刀を強く握り、これから守るべき人々のためにさらに強くなる決意を新たにするのだった。

八章 ある意味一番つらい心の試練

誤って発動された“アホエロダンジョン”の試練

義経たちとの戦いを終え、休憩していた瀧音たちに先輩が尋ねたのは、“例のダンジョン”の有無であった。幸助は「謎解きが必要で普通は発動しない」と返答したが、直後、先に入口に戻っていたななみ、紫苑、フラン副会長が石板を解読してしまい、試練が発動。脱出経路は結界で封鎖され、「最後の試練」が開始されてしまった。

責任の押し付け合いと、ななみの機転

突如閉じ込められた状況に、三人は互いに責任を押し付け合うが、ななみは機転を利かせて冗談混じりに紫苑を責めることで、最も落ち込んでいたフラン副会長を慰めた。最終的には皆が協力して進むことを決意するが、幸助と先輩は試練内容の深刻さを予感し、ため息をついた。

舞台は無人島、心を解き放つ試練の始まり

幸助が目覚めたのは南国の無人島であった。ルールブックによると、試練の内容は、催眠にかかり解放的になったヒロインたちを発見・正気に戻し、5人全員揃えて中心の魔法陣で脱出するというもの。道中ではエロ毒蛇やエロ毒虫といった謎の生物が存在し、それらによる“被害”も覚悟する必要があった。

雪音の変貌と釘バットの攻防

浜辺を探索していた幸助は、先輩・雪音を発見する。彼女は原始的な毛皮姿で、ヤシの実を貪るように食べた後、無言で釘バットを蹴飛ばし、幸助を拘束する。その瞳は妖艶に染まり、正気ではないことは明白であった。

おへそペロリで正気回復

拘束された幸助のへそを見つめ、なぜかそこを“ほじり”、舐めた雪音は、突然正気を取り戻す。幸助だと気づいた途端、羞恥と混乱に包まれ、馬乗り姿と服装に気づいた雪音は、真っ赤になって謝罪する。記憶が残っていることも明らかになり、幸助は彼女の心のダメージを懸念する。

攻略方針と別行動の決断

事態を把握した雪音は冷静さを取り戻し、他のメンバーの救出も急務であると判断。幸助と別れて捜索を始めることに決める。別行動を取ることで救出効率を高め、精神的ダメージを最小限にするためでもあった。

先輩に似たエロ本と、ばつの悪い処理

別れ際、雪音は幸助のズボンに挟まれた「自分によく似たエロ本」に気づく。気まずい空気が流れる中、幸助は無言でその本を砂浜に捨てるしかなかった。

フラン副会長の救出と“正気の釘バット”

林で幸助が発見したフラン副会長は、野性的な衣装で倒れていた。彼女は操られていたが、幸助が所持する“正気の釘バット”によって正気を取り戻す。しかし彼女は“ハートマークの蛇”に脇の下を噛まれており、体温上昇と性的興奮を促す毒の影響下にあった。毒の性質上、解毒薬や回復魔法は無効であり、患部から毒を吸い出す以外に方法はなかった。

葛藤と覚悟、そして毒吸引

フラン副会長は羞恥に震えながらも、幸助に毒の吸引を依頼する。幸助はためらいつつも、仲間としての責任感から脇に口を近づけ、毒を吸い出した。副会長は解毒後も深く落ち込み、幸助もまた不用意な言葉選びで墓穴を掘るが、やがて両者は気まずさを振り切って行動を再開する。

紫苑の危機と“服が脱げるビーム”の脅威

仲間を集めていく中で、最後の一人・紫苑は巨大な透過型ウツボカズラに捕らえられていた。ウツボカズラは服を溶かす液体と、**「服を脱ぎたくなるビーム」**を乱射しており、彼女の尊厳を大いに危機にさらしていた。幸助たちは“エロ本”を盾にするなど奇抜な手段で応戦し、紫苑を救出する作戦を立てる。

触手ビームと自己犠牲、そして新たな毒被害者

作戦中、フラン副会長を庇った幸助が触手ビームを避けるため草むらに飛び込む。そこで現れたのは、股間ではなく尻を狙うタイプの毒蛇であった。幸助は見事に尻を噛まれてしまい、自らの毒吸引問題が発生する。

尻の毒吸引者を巡る混乱と混迷

仲間たちは毒吸引の必要性を理解しつつも、“誰が吸うか”で紛糾する。雪音、ななみ、紫苑、フラン副会長の間で責任の押し付け合いと譲り合いが続いた末、ジャンケンによりフラン副会長が再度選出される。彼女は自身の責任を受け止め、吸引を行う決意を見せた。

無人島中央部での脱出成功

波乱の展開を乗り越え、全員が無事に再集合を果たす。幸助たちは無人島の中心部にある魔法陣へ向かい、“心の試練”ダンジョンからの脱出に成功した。

九章 エピローグ

静かな帰還と新たな秘密の共有

無人島からの脱出後、幸助たちは状態異常耐性のスキルを得たが、過酷な試練の疲労で喜びを実感できなかった。帰宅後、幸助は先輩に続いて、ななみにも自分の秘密――この世界の情報を知っていること――を明かした。ななみは予想していたようで冷静に受け止め、花邑毬乃や桜についての認識を互いに確認した。

情報の開示と影響への慎重な判断

幸助は、花邑毬乃に自分の知識や未来予知のような力を伝えるべきかをななみに相談する。過去に情報を与えたことで予期せぬ事件が発生したこともあり、慎重な判断が必要だと考えていた。ななみは「話しても話さなくてもよい」と柔軟な立場を示し、最終的には幸助が責任を持って行動すべきだと結論付けた。

花邑毬乃との再会と新たな予定の通達

その後、幸助は花邑毬乃のもとを訪ね、彼女から武術大会の内定情報を聞く。さらに驚くべきことに、九条華とのお見合いの予定が正式に決まったと知らされ、幸助は言葉を失った。毬乃はやや茶目っ気のある態度でそれを伝えたが、明らかに重要なイベントの始まりを告げるものだった。

日常の継続と揺るがぬ覚悟

翌朝、雪音と幸助は滝での修行をいつも通りに行っていた。変わらぬ日常の中にあって、雪音は幸助の決意に改めて向き合い、共に歩むことを誓う。彼女は悲しい未来を回避するため、最強を目指す彼の横に並び立つ覚悟を新たにした

電子書籍特典 書き下ろし短編 『太陽の試練 待機組の裏話』

試練を終えた待機組の帰還

天狗に認められず、試練に参加できなかった紫苑・フラン・ななみは、幸助と雪音を残してダンジョンから離脱した。転移魔法陣を通じて帰還した彼女たちは、暇を持て余し、ななみの提案でトランプや麻雀といった娯楽で過ごそうとした。紫苑は呆れながらも、時間つぶしには良いと納得した。

謎の石版の出現と試練の兆し

突如として地面から石版が現れ、古代語のような文字と数字が浮かび上がった。ななみはその意味を読み解き、それが「数字パズル」であり、解くことで新たな試練が解放されると推測した。やる気を出したななみは「褒められたい」という動機からパズルを解こうとし、フランも協力を申し出た。

謎の会話と冗談混じりのやり取り

ななみは冗談交じりに「褒めてもらうために瀧音ななこの姿で撫でられる」や「ご主人様(幸助)になでられる・足を舐めてもらえる」などの過激な発言を展開し、紫苑は困惑する。フランもコスプレを交えた提案をするなど、3人の掛け合いは漫才のような様相を呈していた。

ななみの主観による幸助像と信頼の共有

話は次第に真面目な方向へ転じ、ななみは紫苑とフランに対して、幸助の人間性について尋ねた。紫苑は「トラブルメーカーだが憎めず世話を焼きたくなる存在」とし、フランは「不思議な人物」と評した。一方ななみは「崇拝する神」とまで言い切り、幸助がいかに優しく人のために命を賭けられる人物であるかを語った。

パズル解読と地獄の新試練

雑談の合間もパズルは継続され、フランがかつて見たアニメの記憶を頼りに解法をひらめいた。ななみもそれに追随し、共同作業の末に石版の謎は見事に解かれた。しかしそれによって新たな試練が始動し、15分後には3人は「地獄のような試練」に突入する羽目となった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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