小説【公女殿下】「公女殿下の家庭教師 7 先導の聖女と北方決戦 」感想・ネタバレ

小説【公女殿下】「公女殿下の家庭教師 7 先導の聖女と北方決戦 」感想・ネタバレ

6巻 8巻

物語の概要

本作はファンタジー戦記ライトノベルである。帝国との決戦が迫る北都を舞台に、主人公アレンの教え子たちが、それぞれの戦場で奮闘し成長する姿が描かれる。特に、迷いを抱いていた聖女ステラが自らの役割を見出すストーリーがメインとなっている

主要キャラクター

  • アレン:規格外の家庭教師。教え子たちを導き、戦況と将来を託される存在。囚われながらも教え子への影響力を保つ。
  • ステラ:聖女見習い。自信を失っていたが、本巻で自分の“すべきこと”を理解し成長する 。
  • ティナ/エリー:アレンの他の教え子たち。北都にて帝国軍に対し、自らの力で立ち向かい奮闘する。
  • カレン:アレンの妹。北都ではなく西都で兄を救うために奔走している 。

物語の特徴

分散する戦線と多視点展開:北都・南都・西都と各地で異なる教え子たちの戦いが並行し、群像劇として迫力ある展開が描かれる。
成長の物語:とりわけステラが、自らの役割に目覚め、聖女としての覚悟を示す描写に本巻最大のテーマがある 。
師弟の絆:囚われのアレンと遠く離れた教え子たちが、信念と絆で結ばれている構成が感動を呼ぶ。また、アレンが謎の存在アトラと出会うシーンも効果的に挿入されている 。

書籍情報

公女殿下の家庭教師 7 先導の聖女と北方決戦
著者:七野りく 氏
イラスト:cura
レーベル:富士見ファンタジア文庫KADOKAWA
発売日:2020年11月20日
ISBN9784040738529

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あらすじ・内容

今度は、私が貴方を助けに行きます。待っていてください――
帝国との決戦が近づく北都。アレンの教えを胸に、教え子たちは決戦に向けて奮闘し続けていた。その中で、自信を失くしていたステラも自分の“すべきこと”を理解していき――! 王国動乱編、終息に向けて加速!

公女殿下の家庭教師7 先導の聖女と北方決戦

感想

長く続いてきた王国動乱編もいよいよ佳境を迎え、各地で奮闘する教え子たちの姿が胸を打つ一冊だ。今回は北都を舞台にハワード家の面々が中心となって物語が展開し、前巻でのリンスター家中心の描写との対比も興味深い。

何より印象的なのは、教え子たちがそれぞれの立場で「今、自分にできること」を懸命に模索し、行動に移していく姿だ。なかでもステラの成長ぶりは目覚ましく、かつて闇堕ち寸前だった少女が、今では北都の要として輝いている。その一方で、リディヤの変貌ぶりは心を締め付ける。かつての誇り高い剣姫が失われた今、彼女自身の苦しみもさることながら、それを見守る周囲の哀しみがひしひしと伝わってくる。一刻も早く彼女が救われることを願うばかりだ。

囚われの身となったアレンと出会う幼い少女との交流は、戦乱の中にあっても温もりを忘れない本作の持ち味を象徴している。切迫する戦況の緊張感と並行して、心がほどけていくような場面であり、読者としても安らぎを覚えた。しかし、またしても「幼女たらし」の異名が頭をよぎったことは否定できない(笑)。

各地での戦いもまた、個性が際立っている。北都ではティナの天候予測、エリーの事務能力、シェリーの統制力といった役割分担が見事で、ステラとイーディスの対決、アリスの加勢による雪中戦『清浄雪光』など、熱い展開が目白押しだ。東都ではアンナたちが侵入を果たし、西都へ向かうカレンの旅立ちには涙が止まらなかった。

中でも心を揺さぶられたのは、「古き誓約」を履行する場面だ。兄を救うため、カレンが自らの意思で一歩を踏み出すその姿には、感動とともに希望が重なる。そして、その決意に呼応するかのように登場する純白のグリフォン・ルーチェ、そして“流星”との約束――まるで神話の一幕を見るようだった。

また、アンナが語るリディヤの過去や想いにも深く心を打たれた。かつての仲間を想うその言葉は、彼女自身が今も剣姫を信じている証であり、読者の胸にも強く響く。リディヤが元の姿を取り戻すことを願わずにはいられない。アンナがリディアについて語るシーンや、古き誓約を履行するシーンは、特に心に残った場面だ。彼女たちの過去や想いが交錯し、涙なしには読めなかった。

そして、エピローグではそれぞれの戦いの果てに見えてくる未来が垣間見え、熱く胸を揺さぶられた。アレンがいかに多くの者たちに慕われているか、その事実が各所に描かれ、思わず涙腺を刺激された読者も多かったことだろう。アレンの人間としての大きさを改めて感じさせられた。

戦いの緊張感、教え子たちの成長、アレンの存在感――それらが絡み合い、今巻もまた一気に読み終えてしまった。第二部完結となる次巻を前に、期待はますます高まるばかりだ。次はリディヤとステラ、そしてアレンがどのような選択をするのか。その結末を見届ける日が、今から待ち遠しい。魔王軍が動かないのも気になる点だ。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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6巻 8巻

登場キャラクター

展開まとめ

プロローグ

クーデター後の戦況分析と内部会議

グラント・オルグレン公爵は、兄弟であるグレック、グレゴリー、そして側近レーモン・ディスペンサーと共に、東都郊外の隠し部屋にて義挙後の戦況報告を受けていた。グレックの報告によれば、王都および中央地域は制圧済みであり、王ジェラルドは傀儡として拘束下に置かれていた。一方、南北ではリンスターとハワード両公爵家が連合軍と帝国軍との戦闘に突入し、リンスターは緒戦に敗れたと伝えられていた。

しかし、グレゴリーは三点の懸念を示した。

王族の捕縛失敗と西方勢力の健在

 ジェラルド王以外の王族の捕獲に失敗しており、西方にはルブフェーラ公爵家および王国騎士団主力が健在である。これにより、西方が動く可能性や魔王の再侵攻の危険が生じている。

戦況情報の伝達速度の不自然さ

 リンスターおよびハワード両家が開戦したという情報が、寸断された通信網を通じて王都へ過剰に早く届いている点に不自然さがある。情報操作や罠の可能性が排除できない。

東都大樹の制圧遅延

 義挙から十日を経てもなお、東都の大樹周辺では近衛騎士団と獣人勢力が頑強に抵抗しており、戦略拠点の完全制圧に至っていない。聖霊教との約定を履行できなければ、戦後の関係に亀裂が生じる恐れがある。

これらにより、グラントは東都への戦力再配置を決断し、紫備えを投入して近衛の殲滅と聖霊教との約定履行に動くこととした。

末弟ギルと謀略の陰

グラントは末弟ギル・オルグレンに対し、当初は義挙への関与を避けさせていたが、結果としてギルは重要戦力と化し、獣擬きとの戦闘で成果を挙げた。グレゴリーの提案によりギルを獣擬きへ差し向けたことが明かされると、グラントはギルを「光盾」の短剣と共に飼い殺しにするよう命じた。

さらに、グレゴリーはディスペンサー伯に兵站の状況を確認し、鉄道による兵站維持が計画通りかを探った。ディスペンサーは問題ないと答えたが、グレゴリーはなおも疑問を呈し、最後に「獣擬きの回収」を自ら行うと申し出た。グラントとグレックはこの提案を些事として却下したが、グレゴリーは「実験」に使用すると含みを持たせた。

兵站崩壊の兆候と反乱軍の脆弱性

会議後、グレゴリーと行動を共にする者「イト」は、兵站情報を含む資料を主である坊ちゃま──すなわちグレゴリー──に提出した。資料によれば、鉄道による兵站網は機能不全に陥っており、食料配分は失敗していた。王都の軍と市民への物資供給は不可能な状況に陥りつつあり、偵察部隊の未帰還や破壊工作も頻発していた。グレゴリーは、この反乱が想定より早く瓦解する可能性を示唆した。

彼は、剣姫の頭脳が封印された「炎魔」の鍵として既に利用されたこと、大樹も紫備えの投入により陥落可能であること、ギルも素材として利用可能であることなどを冷静に分析した上で、最終的には自身の魔法士としての到達を目指していた。

魔族と古き誓約の残響

一方、イトはかつての魔族の出身であり、グレゴリーの視線の及ばぬところで静かに警告をつぶやいた。単なる叛乱であれば西方は動かぬが、「流星」や「古き誓約」を覚えている者たち──ルブフェーラ、そして魔族──が未だ存在していると。グレゴリーはその言葉に反応を見せず、沈思に沈んでいた。彼の冷徹さと幼さを併せ持つ姿は、かつての彼と変わらぬままであった。

第 1章

アレンの行方不明と衝撃

王国北都郊外、ハワード公爵邸において、ティナ・ハワードはアレンの帰還不能という報に感情を爆発させた。妹の動揺はエリー・ウォーカーにも波及し、ステラ・ハワードは冷静を装いつつも心中は激しく揺れていた。報告に訪れたケレリアン・ケイノス近衛騎士の口から、東都でのアレン捜索の詳細と行動経緯が語られ、アレンが最後まで殿を務めたことが明らかとなる。ティナへ遺された白のハンカチと蒼のリボン、そして魔法の抑制による紋章の発現により、アレンの遺志が示された。

ティナとエリーの決意と参戦

ティナは本営への参加を直訴し、大魔法「氷雪狼」の未熟さを認めつつも、戦域の天候予測や兵站支援への貢献を申し出た。農業研究の知識を活かす姿勢に父や教授も驚きを見せ、エリーも後を追って志願する。結果、ティナとエリーの本営入りが許可される一方、ステラは住民の慰撫と支援という任務を命じられ、前線には立つことを許されなかった。

雨の中の思索と住民との交流

ガロア南部に赴いたステラは、住民への支援活動を行う中で、自身の無力感に苛まれていた。かつての戦地であるリニエ河畔では、避難民への食事配布や治療に従事しつつ、アレンとの思い出に心を締め付けられていた。ミナ・ウォーカーらメイド達の励ましを受け、住民からの感謝の声にも触れ、少しずつ心の重さが和らいでいった。

教授からの報せと自問

ステラのもとを訪れた教授は、古都オーインの陥落を告げ、帝国軍の急進を分析した。ハワード公爵軍は住民保護を優先しつつ後退を続けており、ロストレイへの布陣も進んでいると明かされた。ステラは自分が前線に立てぬ理由を問い、教授は彼女の年齢や性格を挙げつつも、アレンと似た性質を見出す。魔法士としての努力を認め、将来の可能性に言及したことで、ステラの心に再び光が差し込んでいった。

新たな決意と再始動

教授は、ティナやリディヤの急成長、カレンの才能、フェリシアの強さなどと比較しながらも、ステラの歩みを肯定した。アレンのように「決して立ち止まらない姿勢」が評価され、研究室入りの希望も表明される。教授は最終的にアレンの生存を信じていることを示し、魔法の言葉を授けて去った。「アレンなら、こういう時、どうするだろうか?」という言葉がステラの新たな道標となった。さらに、執事ロランの任解任と、ミナの正式護衛就任も告げられ、新体制が整えられていく中、ステラは己の使命を見据え、前を向く覚悟を固めた。

本営の緊迫とティナ・エリーの活躍

北都郊外のハワード公爵家本邸では、本営としての大広間が戦場さながらの緊張に包まれていた。ステラの帰還に際し、北方の名将エクトル侯とブラウナー侯も姿を見せ、戦況図と兵站の精密な管理体制に驚愕した。中心に立つシェリー・ウォーカーは臨時兵站総監として指揮を執り、ティナは天候予報と車両管理、エリーは圧倒的な事務処理能力でこれを支えた。ティナは過去の膨大な気象データを元に予報を的確に行い、エリーはアレンから学んだ多属性魔法の応用で業務を同時並行的に遂行し、周囲を驚かせた。

戦略の洞察とステラの覚悟

ステラは本営の戦況図や兵站の配置から、父ハワード公爵の意図を読み解いた。物資と車両がゼーセアへ集中し、ロストレイ方面の天候予測が特に重視されていることから、戦略はガロア全域を縦深防衛とし、敵をロストレイへ誘導した上での決戦にあると見抜いた。この洞察により、彼女は歴戦の侯爵たちから軍神の系譜を継ぐ者と称されるに至った。ティナやエリーとの連携を改めて誇りに思い、自らも次期ハワード公爵として戦場に立つ覚悟を固めた。

南方戦線での奇襲作戦

リンスター公爵家においては、ベイゼル侯国の港湾都市フォロエにて空中からの奇襲作戦が展開されていた。リィネと従姉のリリーを含むメイド隊はグリフォンを駆使し、敵の重要施設を次々と破壊。リリーは地上戦を禁じられながらも大剣を振るい、敵部隊を圧倒した。リィネも炎属性極致魔法『火焰鳥』を用いて倉庫群を焼き払い、作戦を成功に導いた。

剣姫リディヤの覚醒

その最奥では、リディヤ・リンスターが単騎で敵百名を前に立ちはだかっていた。紅のリボンを手に、彼女はかつて発動した禁忌魔法『炎魔殲剣』の余燼を纏い、圧倒的な力で敵を無力化した。敵の挑発に対して感情を抑えられず、黒紅の八翼を持つ『火焰鳥』を顕現させ、敵を恐慌に陥れた。戦いの中で彼女はアレンの安否を案じ、その感情が制御を超えた魔法発動へと繋がった。

傷つく想いと歪む力

戦場を後にしたリディヤは、炎に焼けた紅のリボンを手に、己の力の禍々しさとアレン不在の現実に苦悩していた。リィネとリリーはその姿に言葉を失いながらも彼女を見守り、リリーはアレンが今のリディヤを見れば悲しむだろうと静かに告げた。空を覆う黒煙の中、彼女たちは希望を見失わぬよう、残された者として前を向く決意を固めていた。

屋敷への帰還と変化した日常

フォロエへの空襲作戦を終えたリィネらは、南都リンスター公爵邸へと帰還した。迎えに出たメイドたちとの再会を通じて、戦闘の疲労と安堵が交錯する様子が描かれた。リディヤは入浴も食事も拒否し、自室に篭ることを告げ、マーヤの出迎えを受けて姿を消す。リィネは姉の変化に胸を痛めつつ、屋敷の様子を確認するため大会議室へと向かう。

総本営の混乱とフェリシアの奮闘

大会議室は、戦争の後方支援と兵站に関する混乱で騒然としていた。リィネは祖父リーン・リンスターと対面し、フェリシアと再会するが、彼女は戦域図に埋もれるほど多忙を極めていた。サーシャと共にメイド服姿で業務を行っていたフェリシアは、アレンの後任として極めて重要な経済戦略を担っていた。彼女は魔法暗号の解読や物資の流通統制を成功させ、敵侯国内部に混乱を誘発する策を主導していた。

経済戦争と交渉戦略

フェリシアの指揮により、敵対侯国内の小麦市場を標的とした経済戦が進行していた。価格差を用いた分断工作や、グリフォンによる物流拠点の選択的攻撃など、徹底した戦略が展開された。彼女の提案により、ベイゼル侯国との和平交渉では空路独占の使用許可が条件として示される。これにより、侯国連合内での輸送路の支配を企図した布石が打たれた。

推挙と休息の命令

祖父リーンはフェリシアを「剣姫の頭脳」として推挙し、彼女の名を皆に覚えさせるよう命じた。その直後、エマとサリーによって疲労困憊のフェリシアとサーシャは強制的に休息へと連れ出された。リィネは、フェリシアの内に秘めた強さを認識し、自らもまた姉を支える覚悟を新たにする。

会議と作戦決定

その後リィネは祖父と共に執務室を訪れ、両親──リサとリアム──および祖母リンジー、叔父リュカらと合流する。会議では王都への進軍が決定され、軍を二分する作戦が採用された。一方で、侯国連合への対応は祖父母とリュカに委ねられ、フェリシアとサーシャもその任に加わることとなった。

姉リディヤへの不安と決意

リィネは姉リディヤの今後について両親に問いかける。両親は彼女の危うさを認識しつつも、リディヤの意思を尊重し、共に戦地へ連れて行くことを決断する。リィネとリリーは、アレン不在の間、リディヤの「鞘」として支える役割を命じられ、その責務を受け入れる。だが、リィネは姉の内にある狂気に恐れを抱いていた。

微笑みの裏の決意

その後、リィネとリリーは執務室を後にし、軽妙なやりとりを交わすが、リィネの心には不安が残り続けていた。最後に、母リサが「万が一、リディヤが」と呟いた言葉が、リィネの心に重くのしかかる。彼女は必死にそれを聞き間違いだと思い込もうとするが、胸中には深い動揺と恐れが残された。

第 2章

治療班の奮闘と族長会議の停滞

東都・大樹の第一層では、獣人族の族長会議が四日間停滞していた。カレンはダグから情報を受け取るが、進展はなかった。カヤとココと共に下層で負傷者の治療に当たり、兄アレンの不在に胸を痛めながらも懸命に支援を続けた。自警団長ロロが重傷を負って運び込まれると、エリンとカレンの連携により命を繋ぎ止めたが、戦線復帰は絶望的であった。ロロは自らの過ちと責任を口にし、涙ながらに謝罪した。カレンは母の手を握り、アレンの生存を信じる決意を新たにした。

ギルの怒りと告白

一方、東都オルグレン邸では幽閉されていたギルがコノハからフェリシアの行方不明を知らされ、怒りを爆発させた。コノハは呪詛を恐れ口を閉ざしていたが、ギルは接吻により呪いを引き受け、情報開示を迫った。コノハは監視と情報収集の任を受けてギルに接近していた事実、グラントとグレゴリー双方の密偵であることを明かし、アレンの行方が東北にある四英海の遺構と推定されることを伝えた。

老将たちとの対話と戦況の誤算

ギルは老将ヘイデンとザウルからの報告を受け、大樹攻略が目前であること、物流混乱によって叛乱軍の作戦計画が破綻している現状を知る。両者はギルのアレン戦を勝利と評価したが、ギルは激昂し、それは完敗であったと否定した。アレンは最後まで全力を出さず、降伏すら認め、ギルを気遣う言葉を残して戦線を離れたことを明かした。

各公爵家の脅威と戦力認識の欠如

ギルは、オルグレン家と東方諸家がリンスター・ハワード・ルブフェーラ各家に戦端を開いた愚かさを糾弾した。三家はいずれも歴戦の武家であり、特に『剣姫』はアレンを傷つけたことを決して許さず、激しい報復が予想されると断言した。ギルは『剣姫』が炎姫と化す恐怖を語り、王都・東都が灰燼に帰す可能性を覚悟するよう迫った。

信頼崩壊と老将たちの後悔

老将らは獣人族との融和が不可能になったことを認め、その責任を背負う覚悟を示した。ギルは剣を捧げるべき相手を信じ切れず、アレンに剣を向けた自責に苦しみ、オルグレン家が誇りとする名誉の失墜を語った。そして父ギド・オルグレンの真意を問いただし、馬鹿げたものであれば自らの手で引導を渡すと宣言した。

ギルの決意とコノハの忠誠

老将から父の目的を聞かされたギルは、それを後始末として押し付けられたことに激怒した。彼はコノハに対し、姉を救出した後で戻るのであれば傍にいてもよいと告げた。コノハは救ってくれたギルへの恩義と愛情を胸に、彼を守る決意を新たにした。ギルは自らを「オルグレン」としての責務を最後まで果たす覚悟を固めた。

カレンの探究心と知識の深まり

戦傷者の治療の合間に、カレンはアレンが遺した書庫に没頭していた。彼女は兄の蔵書にあった古代獣人族の神話や伝承、古文書から現在の戦争の背景や真実を読み解こうとしていた。カレンは〈闇の時代〉において人間と獣人が平等な友好関係にあったこと、そして『五帝』と呼ばれる五柱の神格存在が盟約を結んだ経緯に着目した。中でも〈暁の神子〉にまつわる記述が、兄の行動と符合していることに気づき始める。

獣人族の不信と正当性の主張

一方、族長会議では、人間に対する不信が根深く、交渉は難航していた。族長たちは、戦争の発端が人間側の一方的な侵略であるとし、大樹側の正当防衛を強調していた。また、王都や東都の諸侯が獣人を使い捨ての傭兵として扱ってきた過去も記憶に深く、南方戦線における獣人兵の消耗や損耗が、再びその事実を裏付ける証左として受け取られていた。

情報操作と工作の影響

大樹の長老たちは、ギド・オルグレンが大樹内に浸透させた諜報網の存在を認識しており、族長たちもそれによる情報攪乱を警戒していた。また、東都に潜伏する獣人勢力の内部でも意見が分かれ、和平派と強硬派が衝突していた。これにより会議の結論は出ず、停滞を続ける中で、フェリシアやアレンの働きかけが如何に大樹と人間の溝を埋めてきたかが、逆説的に浮き彫りとなっていた。

カレンの変化と覚悟

カレンは書物の内容を通じて、兄が歴史と伝承、神話的存在までもを踏まえた上で動いていたことを悟った。その気づきは、彼女の中にある「兄を待つだけの少女」から、「兄の足跡を追い、己の意志で動く者」への成長を促していた。カヤやココは、そんなカレンの変化に気づき、密かに彼女を支える決意を固める。

希望と再起の兆し

章の終盤、東都の空に黒き飛竜が飛来した。アレンの乗っていたはずの魔導飛行獣であり、その姿により「アレンは生きている」という希望が確かなものとなった。カレンはこの一報を耳にし、顔を上げ、兄の帰還を信じて立ち上がる覚悟を新たにした。すべてが動き出す予兆の中で、彼女の目には強い光が宿っていた。

メイド長アンナと三人の精鋭

グリフォンで降下したアンナに続き、三人の異能を持つメイドが登場した。紅髪で黒大鎌を操るケレニッサ、水属性の上級魔法を構築するニコ、銀髪で強化魔法を纏い双剣を振るうジーンがそれぞれ武装していた。ザニ伯爵が魔法による一斉攻撃を命じるも、アンナの手によって敵軍の魔法は無効化され、戦列は混乱に陥った。

魔法妨害と戦意崩壊

アンナは自身がユースティン帝国の元“死神”であったことを明かし、魔法を分解・無効化する驚異的な技で敵軍の士気を打ち砕いた。彼女の手による不可視の“線”は兵器や障壁を切断し、敵に甚大な被害を与えた。これにより敵軍は大橋の中央まで後退を余儀なくされる。

三人のメイドによる圧倒的制圧

アンナの号令で三人のメイドが突撃を開始。ケレニッサの風刃の大鎌、ニコの大量の水獅子召喚、ジーンの双剣による肉弾戦が戦列を次々と切り崩し、敵兵はなすすべなく倒れていった。アンナは王国の防衛を担うには程遠いと敵軍を嘲笑した。

感情を暴露するメイド長と怒りの覚醒

アンナはアレンとリディヤの絆、リンスター家の過去、リディヤの涙と笑顔の重みを語り、アレンの身に危害が及んだ場合は報復を辞さないと宣言。リディヤの変化を語ることで敵軍の罪の深さを糾弾し、怒りを漆黒の殺気として顕現させた。

大騎士の抵抗と『双翼』の再臨

大騎士ヘイデンは怯まず対峙しようとするが、その直前にもう一人の“オルグレンの双翼”ハークレイが登場し、二人で合流。風属性魔法による連携攻撃で反撃を試みた。これに対し、カレンが雷神化し参戦。試製魔法『迅雷牙槍』を八重に展開し、アンナやメイド達と共に敵を圧倒した。

グリフォンとの共鳴と“流星”の記憶

突如、グリフォンの群れが戦場を包囲し、純白の老グリフォンがカレンの前に降り立った。接触を通じて、カレンはかつての戦場と兄アレンの姿を幻視し、その犠牲と覚悟を知る。雷槍による八連撃で敵軍を一掃し、大橋は跡形もなく崩壊した。

戦後処理と今後の決意

負傷者の治療が開始され、リチャードの指揮下で部隊は再編された。シマら自警団も感謝を表し、メイド達はそれぞれの任務へ移行。アンナはエリン夫人への伝言を携え、リチャードとカレンは族長との面会へ向かう。リチャードは玉砕を否定し、アレンの意志を継ぐ決意を表明した。

“流星”の教えと生の継承

リチャードは血河で生き残った人々が抱いた心情を想い返し、「死すら許されぬ戦い」の重さを語る。彼にとってアレンは困った男でありながら、確かな指針であり続けていた。その存在が今なお、彼らの行動と生き方を導いていた。

大会議室への突入と族長達の沈黙

リチャードとカレンらは獺族のダグとデグに導かれ、大樹の最上層にある大会議室に到達した。扉は蔦と魔法障壁で封じられていたが、ケレニッサがすべてを切断して突入した。会議室には現役の族長達とオウギがいたが、猿族と鼠族の族長の姿はなかった。リチャードはルブフェーラへの「古き誓約」の履行を求めるが、族長達は難色を示し、非協力的な態度を取った。

公子の怒りと族長達の責任

リチャードは族長達の無為と無責任を激しく糾弾し、彼らの怠慢と保身を怒りの言葉で非難した。会議に籠もっていた彼らが戦場の実情を顧みず、指導力を発揮しなかったことが明らかとなった。族長達は言葉を失い、沈黙した。

アンナの告発と過去の罪

アンナは、族長達の父祖がかつて魔王戦争において「流星」を見殺しにした過去を暴露した。会戦への遅参や魔族側への離反、そして今また同じ過ちを繰り返しつつあることを非難した。その上で、猿族のニシキと鼠族のヨノが内通し、古書を持ち去った事実が明かされた。さらにトネリを含む族長子息達が偽情報を流していたことも判明し、会議室は絶望と沈痛に包まれた。

決意と子供達の訴え

狐族のロッタと二人の孤児が現れ、オウギに向けてアレンを救ってほしいと懇願した。子供達の純粋な訴えが族長達の心を打ち、オウギは誓約の履行を決断する。族長達も次々と同意を示し、古の誓約に則り西都ルブフェーラ公爵家へ援軍要請を行うことが決まった。

黒布の継承者と任務の託宣

誓約の証である黒布の運搬者にはカレンが指名された。トネリが志願するも、リチャードは彼の覚悟と能力の欠如を指摘し、拒絶した。誓約に従い、オウギはルブフェーラに対して希望を託す内容を語り、それに皆が驚愕する中、カレンに任務が正式に託された。

旅立ちの決意と家族との別れ

カレンはアレンの懐中時計に黒布を収め、西都へ旅立つ決意を固めた。両親や友人たちが別れを惜しみつつ見送る中、グリフォンの背に乗り、大樹を後にした。人々はその姿を見守り、敬礼と声援を送った。

希望の光と新たな風

カレンは多くのグリフォンと共に空を翔け、西都へと向かった。その背に未来の命運を背負い、アレン救出と獣人族の再興を期して旅立った。彼女の覚悟と行動が、かつての過ちを乗り越える一歩となった。

第 3章

地下牢での苦境と回想

アレンは地下牢で重傷を負い、魔力を封じられた状態で意識を保ちつつ這い進んでいた。仲間たち──リディヤ、ティナ、リィネ、ステラ、フェリシア、カレン──の存在を思い出し、自らを奮い立たせた。魔法を封じる腕輪が炎蛇によって破壊され、光神治癒によって負傷が軽減されたが、手首には死に至る呪詛の紋章が残っていた。

白狐との邂逅と戦闘

アレンは炎蛇に導かれて古い扉の奥へと進み、魔力灯の連なる広間で禍々しい鎖に繋がれた巨大な白狐と対峙する。白狐の雷魔法に晒されつつも接近し、魔法式に干渉して鎖の一部を解除した。激痛と引き換えに白狐の信頼の兆しを得たが、魔力と体力を使い果たして意識を失った。

白狐の変化と鎖の解放

目を覚ましたアレンは、獣人の幼女に姿を変えた白狐に抱きつかれる。彼女は言葉を話せずとも感情表現が豊かで、かつての妹カレンやアトラの面影を感じさせた。アレンはその手足に嵌められた鎖を断ち切り、治癒魔法で応急処置を施した。幼女は感涙しながらアレンに懐き、共に脱出を目指すこととなった。

遺構の正体と出現した大穴

二人は遺構の奥へ進み、漆黒の大穴と対峙する。幼女はためらいなく飛び込み、アレンも後を追って足を踏み入れる。そこには不可視の階段が存在し、星のような光が舞う幻想的な空間が広がっていた。魔法技術の高度さに驚嘆しつつも、アレンは幼女と手を繋ぎながら更なる深層へ降りていった。

回復と語らい、そして再出発

途中で休憩を取りながら、アレンはこれまでの出来事を思い返した。ヘイデン老騎士や老魔法士による称賛、リディヤたち仲間への懸念、四英海への拉致の経緯、そして獣人幼女が囚われていた謎。対話を通じて、幼女が白狐である確信を得たアレンは、改めて地上への帰還を誓い、幼女を背負って再び階段を降り始めた。

リナリアとの邂逅と魔力の脅威

アレンは若い女性の声に導かれ、転移魔法により最初の部屋へ戻された。そこには透けた姿の少女が現れ、彼女がかつての『炎魔』──リナリア・エーテルハートであることが判明した。彼女はアレンが自身の残した封印を解いたことに驚愕と憤怒を露わにし、凄まじい魔力と技術で威圧した。アレンは彼女の圧倒的な魔力に疑問を抱きながらも、アトラの呪印について問いを重ねた。

呪印の正体とリナリアの絶望

アレンは自身の左手に刻まれた呪印を示し、アトラの解呪を求めたが、リナリアはそれが『エーテルハート』を殺すために作られたもので、生前の自分でも解けなかったと述べた。さらに彼女は、かつて黒扉の七つ目までを解いた者が去ったこと、アレンが“欠けた鍵”であることに対する葛藤を語った。アレンは出口と真実を求めるが、リナリアはそれを懸けた戦いを提案する。

決闘の開始とリナリアの告白

リナリアは圧倒的な剣技で襲いかかり、アレンはリディヤとの修練で身に付けた反射と魔法で応戦した。彼女は残された時間が半日ほどしかないことを告げ、アレンがアトラを解放したことへの謝意と共に、二年前にアトラが鎖に繋がれ、蒼竜の遺骨が奪われたことを明かした。リナリアは過去に裏切られ続け、人間不信となりながらも、かつて自らが捕らえた大精霊たちと心を通わせた過去を語った。

精霊『雷狐』の正体と遺託

アトラが『八大精霊』の一柱『雷狐』であること、リナリアがかつて『炎麟』『石蛇』『雷狐』の三柱を戦争利用のために捕らえたが、最終的には二柱を信頼できる人間に託し、アトラだけを逃す前に殺されたことが語られた。彼女は死後も封印を施し、アトラを守るために存在し続けていたが、再び裏切られたと述べた。

リナリアの最後の願いと決意の戦い

リナリアは己の最終魔法『火焰鳥』を発動し、アレンに最後の戦いを挑んだ。彼女は名乗りを上げ、自身が史上唯一の【天騎士】にして【天魔士】であることを明かし、アレンに全力で挑むよう求めた。彼女の願いはただ一つ、アレンが信じるに足る者であることを示し、アトラを託せると証明してほしいというものであった。

第 4章

ステラの覚悟と軍服の着用

ステラは母ローザの軍服をもとに新調された白と蒼の軍装を身に纏い、ハワード家本営に姿を現した。妹ティナとエリーは彼女の凛々しい姿に感激するも、戦場への同行を望む二人に対しステラは断固として拒否した。彼女は後方に留まる妹たちの存在の重要性を説き、軍の士気を高めるため自らが前線に立つことを決意していた。

ユニー副公爵との軍略会議

ハワード公爵家副公爵でありガロア統治者であるユニーが本営に現れ、ステラたちへ戦況報告を行った。帝国軍がガロアの大半を制圧する中、ハワード公爵軍は敵を領内奥深くへ誘導し、ロストレイにて決戦を準備していた。ステラは敵先鋒と本隊の分断を見抜き、敵先鋒後方への包囲案を提案し、高く評価された。

帝国軍先鋒部隊への奇襲

メーア平原では、王国軍が帝国南方方面軍先鋒部隊に対し、奇襲によって圧倒的勝利を収めた。ワルター公爵は教授と共に戦況を見守り、事前に糧食庫を囮として利用し敵を誘引していた。信号弾により蒼備え部隊が出撃し、潰走中の帝国軍を決定的に崩壊させた。

偽情報の活用と情報戦

ワルター公爵は教授および執事長グラハムと共に、帝国内部への偽情報流布による情報戦を展開していた。帝国軍の損害を隠し、王国側の被害を誇張することで、帝国世論と指導部を追い込む策が取られていた。皇太子が総司令官である以上、敗北を認める選択肢はなく、決戦を避けられない状況に陥っていた。

勇者アリスの不在と西方の動静

グラハムは、帝都に勇者アリスの姿がないことを報告し、今後の展開に一抹の不安を残した。ワルターは西方ルブフェーラ公爵家の動向に注目しつつ、現時点での戦略的静観を見定めていた。

ステラの行動とワルターの決意

グラハムからステラの出陣の報が届き、彼女がユニーと共にロストレイへ向かったことが伝えられた。ワルターはその成長を喜びつつも、厳しくも愛情ある態度を崩さず、決戦に向けて各家当主への指示を下した。

ロストレイでの決戦へ

教授は帝都へ向かい老皇帝と交渉を試みることとなり、ワルターは過去の発言──自らでハワードの武門を終えるとの言葉を省みながらも、娘ステラの成長に可能性を見出していた。最終的にワルターは、帝国との決戦を百年前と同じロストレイに定め、勝利の方法にこだわる覚悟を固めた。

戦略的な撤退と新極致魔法の発動

ロストレイ中央に位置する重要拠点『不倒の丘』を父ハワード公爵が自ら放棄したとの報を受け、ステラはその真意を読み取ろうとする。帝国軍十万に対し、王国軍は七万と劣勢ながら、濃霧を利用した配置により敵の不意を突く構えを取っていた。ステラはアレンのノートに記された言葉を想起し、戦局を俯瞰して分析し始める。彼女は新極致魔法『氷光鷹』の使用を決意し、父へ伝令を送った。

会戦の開始と奇襲への備え

帝国軍が右翼へ攻勢を仕掛けるも、野戦築城と増援によって阻まれる。その裏で、ステラの父は帝国軍の増援部隊が右翼へ移動するのを待ち構えており、陽動に成功。丘の背後に展開していた北方諸侯の精鋭部隊とともにステラは霧を払い、極致魔法『氷光鷹』を発動、ハワード公爵も『氷雪狼』を繰り出して突撃を開始した。全軍がこれに続き、敵軍を中央から突破、戦線を瓦解させた。

戦場への奇襲と認識阻害の敵

勝利目前の中、森林地帯から認識阻害を伴った小規模の敵部隊が本営に奇襲を仕掛ける。副メイド長ミナの拳による竜巻で敵が顕現し、指揮官ヤナ・ユースティンとフス・サックスが名乗りを上げる。ステラは戦闘を回避し退却を勧めるが、そこに新たな存在「イーディス」が現れた。彼女は聖女より授かった「聖なる盾」に守られ、魔法を受けつけない強大な障壁を有していた。

極致魔法と秘伝の発動

イーディスの攻撃に対抗すべく、ステラは極致魔法『氷光鷹』に加え、ハワード家秘伝の『蒼剣』と『蒼楯』を重ねて展開。二重発動により、イーディスの防御を突破し一矢を報いるも、イーディスは尚も余裕を見せていた。彼女は小瓶を用いて禁呪級の召喚魔法を発動し、魔法障壁を纏った巨大な骨竜を出現させた。

骨竜との死闘と決死の抵抗

骨竜の息吹による攻撃が放たれる中、ステラは仲間を守るため退避を拒否し、『蒼楯』を二重展開してこれを防いだ。その意志と魔力により骨竜の障壁を突破し、本体を一時的に凍結させたが、致命打には至らなかった。ステラは再び立ち上がり戦意を示すも、骨竜は再び息吹を放とうとする。

骨竜撃破の兆しと少女の登場

骨竜の一撃が放たれる寸前、突如現れた少女が小さな手で骨竜の顔を打ち抜き、地面へと叩き落とした。イーディスが驚愕し地上に着地する中、少女の姿が明らかになることで、局面が大きく転換していく兆しを見せて終幕となった。

アリスの登場と骨竜との交戦

絶体絶命の場面にて、『勇者』アリス・アルヴァーンが突如として姿を現し、ステラを守った。イーディスの召喚した骨竜を一撃で打ち倒し、アリスはその強大な力をもって圧倒的な戦闘力を見せた。骨竜は少女に鼻先を掴まれて空中に投げられたのち、一閃により両断され、魔力障壁とともに粉砕された。

禁忌魔法『故骨亡夢』の発動

劣勢に追い込まれたイーディスは、禁忌魔法『故骨亡夢』を発動。南方古戦場に眠る数万の死者を呼び覚まし、死兵の大軍を形成した。イーディスはこの禁忌魔法を「聖女の実験の副産物」と称し、蘇生の完全復元を目的とする思想を語った。彼女はアレンを『欠陥品の鍵』と呼び、『炎魔の塔』に幽閉されたと述べた。

アリスの宣言と『千雷』による一掃

アリスはイーディスの理想を明確に否定し、人は死ぬからこそ想いを託すと説いた。そして『千雷』を発動し、数万の死兵を一撃で殲滅。イーディスは逃亡し、結界も消失。ステラは戦後の地を浄化する決意を固め、アリスと共に浄化魔法『清浄雪光』を発動した。

奇跡の浄化と将兵たちの反応

浄化魔法によってロストレイの地は清められ、周囲にいた味方・敵将兵達はその光景を奇跡と受け取り、ステラを「聖女」と讃えた。アリスはステラの行動を称賛しつつ、自身の目的──迷子となった「紅い泣き虫毛虫」すなわちリディヤ・リンスターの捜索へ同行を願った。

アリスの使命と休息

アリスは古い約束のため王都、そして東都へ向かう決意を明かし、そのままステラの腕の中で眠りに就いた。その間に父とミナが到着し、ステラは静かに彼らを迎え入れた。

西都への転移と新たな兆し

場面は王国西方・西都へ移り、辺境伯ゾルンホーヘェンの屋敷にて、先々代ルブフェーラ公爵レティシアが旧交を温めていた。そこへ傷ついた蒼翠グリフォンが少女を背に運び現れた。少女は気絶していたが、かつての伝説的存在ルーチェの血を引くと思われる魔力を纏っていた。

古き約束の再始動

グリフォンに乗っていた少女は狼族であり、短剣は重要な何かを示す証であった。レティシアはこの出会いに因縁を感じ取り、何かが再び動き出したことを確信するのであった。

カレンの目覚めと短剣の確認

カレンは西都の屋敷の一室で目覚め、見知らぬ寝間着を着せられていた。最初に確認したのは兄アレンの懐中時計と短剣であり、それらが無事であることに安堵した。兄の魔力を感じ取り、使命を思い出した彼女は涙を堪え、行動を開始した。

エルフ女性との邂逅と正体の推察

部屋に現れたエルフ女性はメイドがカレンを着替えさせたと説明し、蒼翠グリフォンも無事だと告げた。女性はカレンの制服と短剣に注目し、その素性を問いただそうとしたが、そこに赤茶髪のエルフ男性が現れ、女性を「副長」と呼びつつ会議への出席を促した。女性が「レティ」と呼ばれ、男性がゾルンホーヘェン辺境伯であることが示唆された。

『古き誓約』の提示と激しい感情の発露

カレンは魔封を解いた懐中時計とともに、『古き誓約』の証である黒布を差し出し、ルブフェーラ家の先々代当主レティシアへの引き合わせを願い出た。レティシアはその布を見て涙を溢れさせ、長きにわたる待望の再会に感極まった。彼女はアレンの名を呼び、二百年に及ぶ想いを爆発させた。

レティシアの過去と誓いの意味

涙を流しつつ、レティシアは自身の過去──「忌み子」としての境遇とアレンによる救済を語り、あの日から続く生の意味がこの瞬間にあったと断言した。感情の昂ぶりは部屋の空気を震わせ、ゾルンホーヘェン辺境伯も涙しながら出陣の準備へと向かった。

『流星旅団』の副長としての覚悟

レティシアは正式に『流星旅団』副長としての名を明かし、誓いを確かに受け取ったと宣言した。そして、カレンに着替えを促し、共に本邸へ向かうことを決定した。その途中、アレンがかつて受け継いだ短剣の確認を求め、カレンの持つそれが『双天』より授けられた由緒あるものであることを示唆した。

エピローグ

西方会議への到着と波乱

カレンは王立学校の制服に身を包み、レティシア・ルブフェーラと共に西方ルブフェーラ公爵家の屋敷へ赴いた。館では、西方の有力家や王族が叛乱への対応を協議していた。騎士たちに不審者扱いされるも、レティシアの魔力顕現により通過を許され、会議場へ入室した。

会議への乱入と名乗り

会議では西方の派兵拒否が決定されようとしていたが、レティシアと共に現れたカレンにより空気が一変する。彼女は神狼と夜猫に守られながら、獣人族の名において「古き誓約」の履行を求めた。懐中時計と黒布を掲げた彼女の姿に、列席者たちは動揺し、誓約の本物であることが明かされる。

各部族の覚醒と出陣決意

レオ・ルブフェーラ公爵は誓約の履行を即座に宣言。ドワーフの長・レイグ、巨人の長・ドルムル、竜人の長・イーゴン、半妖精族の長・チセらも、かつて救われた恩人『流星』への報恩として、各氏族の出陣を決意した。彼らはカレンの願い──アレン一人の救出──を尊重し、それぞれの言葉で誓いを立て退場していった。

演習場での集結と決起

翌夜、カレンとレティシアは臨時演習場へ向かい、そこには数百名の歴戦の将兵が集結していた。レティシアは指揮台に立ち、誓いの対象は王都でも東都でもなく、アレン一人であることを宣言。彼が「流星」に倣い囚われた今こそ、誓いを果たす時であると訴えた。将兵たちは歓喜と感涙の中、大合唱をもって出陣の気勢を上げた。

護衛の決定と同志の登場

演説後、王立学校長ロッド卿は、カレンの勇気を称え、彼女に護衛をつけると告げた。護衛はアレンの後輩である魔法士や剣士たちで構成され、彼女の安全を誓った。カレンは兄の人望と遺志を改めて感じ取った。

魔王軍との通信と後顧の解消

数日後、学校長より魔王軍との発光信号の内容が明かされた。ルブフェーラからは誓約履行の宣言が、魔王軍からは黙認と報告の要請が送られていた。これにより西方の背後を脅かす要因は消え、三大公爵家の一斉反撃が可能となった。

決意と出陣

西のルブフェーラ、南のリンスター、北のハワードが動き出し、アレン奪還を目指す一大反攻作戦が開始されることとなった。カレンは兄を救う決意を新たにし、グリフォンに跨り、戦地へと向かった。

6巻 8巻

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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