小説【楠木邸】「神の庭付き楠木邸10」千年ぶりのケサランパサラン 感想・ネタバレ

小説【楠木邸】「神の庭付き楠木邸10」千年ぶりのケサランパサラン 感想・ネタバレ

楠木邸 9巻レビュー
楠木邸 全巻まとめ
楠木邸 11巻レビュー

物語の概要

ファンタジー×スローライフ系ライトノベルである。本作は、主人公・楠木湊が管理人を務める「庭付き一軒家」に、個性豊かな神々(山神をはじめ隣神たち)が集う世界を舞台とし、日常の中に神秘や異文化交流をほのぼのと描く。第10巻では、秋の山里を舞台に、山神の新たな権能である“ケサランパサラン”を使って幸運を呼び込もうとする展開や、神々が飛行機・小舟などで神界へ旅するエピソードが中心となっている。

主要キャラクター

  • 楠木湊:本作の主人公。悪霊一掃の特異な祓い(はらい)の力により、庭付き一軒家の管理人として神々を引き寄せる。
  • 山神:湊の隣に住まう神々のひとり。ケサランパサランの生成に励みながら、ロボット掃除機に乗るなど自由気ままな性格。

物語の特徴

本作は、神と日常が自然に交差する「賑やかスローライフ」が醍醐味である。第10巻では「神界ツアー」と題される遠出要素が加わり、前巻までの日常から一歩踏み出した冒険性がある一方、山神の“ケサランパサラン”や神々の微笑ましいやりとりによって、癒しの要素も失っていない点が魅力的だ。ロボット掃除機に乗る山神、乗り物を駆使する神々の描写に独自性があり、読者に新鮮な驚きと安らぎを提供する。

書籍情報

神の庭付き楠木邸10
著者:えんじゅ 氏
イラスト:ox  氏
出版社:KADOKAWA電撃の新文芸
発売日:2025年07月17日
ISBN:9784049164282

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あらすじ・内容

隣神との賑やかスローライフ第十弾! 神界ツアーへご案内!

 秋の気配が濃くなってきた今日この頃。実は山の神の権能だというケサランパサラン作りに励んでます! しかし超強力な幸運パワーを秘めたそれは、思いがけず方丈町を賑やかしてしまい……!?
 セリたち眷属の自由すぎる神域を飛行機で飛び回ったり、小舟で神界に足を踏み入れたり、山神さんは相変わらずロボット掃除機に乗ってたり……。
 隣神との賑やかスローライフ第十弾! 今回は乗り物が多いかも!?

神の庭付き楠木邸10

感想

『神の庭付き楠木邸10』は、隣神との賑やかなスローライフを描いたシリーズの第十弾。
今回は、秋の気配が濃くなる中、山の神の権能であるケサランパサラン作りから始まる、方丈町を巻き込んだ騒動が描かれていた。
セリたち眷属が神域を飛び回り、湊が神界へと足を踏み入れるなど、乗り物が多く登場すると感じた。
読み終えてまず感じたのは、四聖獣たちの旅立ちに対する寂しさである。特に、麒麟はこれまでも頻繁に旅に出ていたため、それほど気にならなかったのだが、朱雀がいなくなるのはやはり寂しい。
朱雀の存在は、楠木邸の癒やしだと思っていた。
物語の中で、湊が自身の中いる風神の力を使うコツを掴み、注文されて作成した船の試乗として、山の神と共に神界へ赴く場面は、湊の生命の危機と紙一重で手に汗握る展開だった。
鬼との戦闘では想像以上に危険な行為だと感じさせられた。
それでも、湊は自身の成長のために、そして山の神との絆を深めるために、危険を顧みず挑戦する。
その姿に、湊の器の大きさを感じてしまう。

今作では、ケサランパサラン作りや神界への旅など、これまで以上にファンタジー要素が強くなっているように感じた。

しかし、それらの要素も、方丈町の人々との交流や、セリたち眷属との日常といった、この作品ならではの温かい雰囲気に包まれている。
『神の庭付き楠木邸』シリーズは、日常と非日常が織り交ざった、独特の世界観が魅力的である。
今回の第十弾も、その魅力を存分に味わうことができた。今後の展開にも、期待が高まるばかりであった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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楠木邸 9巻レビュー
楠木邸 全巻まとめ
楠木邸 11巻レビュー

展開まとめ

第1章 【速報】約千年ぶりに山神がやる気に

秋の庭での井戸端会議

秋の気配が濃くなる中、湊の庭には山神である大狼とその眷属たち、ツムギやメノウなど多くの神格存在が集い、井戸端会議を繰り広げていた。人型は湊一人であったが、違和感はなかった。湊はツムギの持参した茶菓子を楽しみ、膝にいるメノウにおかきを分け与えた。メノウは初めての悪霊祓いを果たし、誇らしげに語っていた。

山神の評価と突然の宣言

山神は甘酒饅頭の味を評価し、十三代目の職人に最上級の賛辞を与えた。それにより、周囲は彼の免許皆伝を喜んだ。山神の加護により快復した十二代目の話題も交わされた後、山神は唐突に「人間に幸運を与える」と宣言した。かつて山神が地域情報誌を見て突然神気を放った出来事も回想された。

千年ぶりのケサランパサラン作成

山神はかつてのようにケサランパサランを作ると宣言し、金色の光を放って毛玉の放出を始めた。大量の毛玉に囲まれた湊やメノウは歓喜し、ツムギは遊びすぎを咎めるが山神は寛大であった。湊がその毛玉に違和感を覚えると、山神は「中身が未挿入である」と説明し、幸運の素となる光の塊を生み出した。

幸運の素の生成と分類

山神は「五穀豊穣」「勝負運」などの御言葉を珠に与え、それらをケサランパサランの核に詰めて幸運を与える存在へと仕上げていった。眷属たちはそれぞれの珠を割り当てられた役目に従って使用し、複数のご利益を一体に詰め込むことも行った。

人間の願いの選定

山神は湊に「人間が望む幸運」について意見を求めた。湊は「健康」を挙げたが、眷属たちの意見を受けて、「除災招福」「金運向上」「心願成就」など定番の願いに落ち着いた。山神はそれらを順に珠へと与えていった。

ツムギとメノウによる独自の作成

メノウがケサランパサランを作ってみたいと望んだため、ツムギは自身の毛をガワに用いて作成を開始し、中身として金運向上の素を注いだ。メノウがこねることで三十人分の効果を持つケサランパサランが完成した。

山神の眷属の対抗心と強化

その強力さに対抗心を燃やしたウツギが、自作のケサランパサランに自身のヒゲを刺して強化した。セリやトリカも加勢し、結果的に神気のこもった毛玉が完成したが、山神は特に制止しなかった。

完成と配布

庭には大量のケサランパサランが積み上がり、白と黒の強化型が中心に並んだ。湊の呼びかけで一斉に浮かんだ毛玉たちは屋根を越えられず湊に集中したが、彼が風の力で送り出すと、風の精たちが四方へ運んでいった。

四霊の加護と湊の決意

加護の力を誇る四霊たちが姿を現し、湊に集まったケサランパサランを自分たちの力の証と称えた。湊はこれ以上の幸運は不要と感じ、風の精にすべてを託して祈りを込めて送り出した。最終的に白と黒のケサランパサランも空高く舞い上がっていった。

第2章 山神さんちでお泊まり会

山道での道中と祠の様子

湊はウツギやカエンと共に、山神の元へ向かって山道を登っていた。カズラ橋を渡る際には、慎重な足取りで風景を楽しみつつ進んだ。道中、登山客である青年二人とすれ違い、カエンの視線が敏感な彼らに刺さる場面もあったが、大事には至らなかった。やがて祠に立ち寄った湊たちは、そこが雑草すら生えず清潔に保たれていることに感心し、参拝者が雑草を持ち帰るという噂を話題にした。供物が豪華であることや、祠の後ろに小石を置いて返事を受け取ると信じている者もいることが語られた。

妖怪・たぬ蔵の幻術と人間の反応

祠周辺で濃い妖気を察知した湊は、不審に思い現場に赴いた。そこでは三人の男たちが幻術にかかり、木の実を豪華な料理と錯覚して夢中で食べていた。幻術をかけていたのは妖怪のたぬ蔵であり、彼らがオカルトを好むことを知って幻術でもてなしていたという。たぬ蔵によると、彼らは祠に酒を供えに来た者であり、湊はその行動を微妙に感じつつも、大きな問題とはしなかった。幻術の影響を受けなかった湊に対し、神との親和性や神力の存在が理由として説明された。

山奥への移動と動物たちの歓迎

術が解けた三人を見送った後、湊たちは山奥へと進んだ。たぬ蔵も同行し、宴会を期待していた。道中では、野生の狸、狐、イタチ、アナグマ、さらには蛇までが集まり、異様なほどの歓迎を見せた。動物たちの警戒心の薄さに戸惑いながらも、湊は神域近くでの宿泊に一抹の不安を感じるようになった。神聖な磐座に宿泊することへの懸念と、他者に誤解されることへの配慮が頭をよぎった。

神域への移動の決断

野生動物たちに囲まれて過ごすことに不安を覚えた湊は、ウツギの提案に即答で応じ、神域での宿泊を選んだ。神域がどのような場所かは不明であったが、山神の眷属が案内する場所であれば安心であろうと判断した。ウツギが開いた神域の入口へと、一行は進んでいくこととなった。

第3章 かの植物の育ち具合はいかに

神域での果樹園探訪と異質な果実

湊はウツギに誘われて神域に入り、広大な果樹園に案内された。そこには銀色に光るリンゴや蛍光色の梨など、異様な果実が整然と実っていた。ヒサメの神域のような強烈な香りはなく、ウツギ曰く、不老不死の効果は一切つけていないとのことであった。しかし実際には、果実には人体に影響を与える効果が付与されており、霊道近くで魂が抜けかけた中年男性が若返るほどの変化を経験していた。湊はその影響を懸念し、人間の流入増加を危惧したが、ウツギは気にする様子を見せなかった。

マンドラゴラの育成と麒麟の訪問

本来の目的であるマンドラゴラの様子を見るため、耕地へ移動した湊たちは、芽吹いたばかりの若葉を確認した。そこへ神域を訪れた麒麟が登場し、果実の調査を目的にやってきたことが明かされた。麒麟は異色の果実を試食し、味や効果を即座に見抜いた。特にマンドラゴラに関しては大いに驚き、非常に珍しい存在であると断言した。

マンドラゴラの自立的行動とその成長

湊がクスノキに施す方法と同様に、水を霧状にして与えると、マンドラゴラは葉を揺らして喜びの反応を示し、笑顔を浮かべた。そして急成長を始め、自らの居場所を掘り広げて整えるという自立的な行動を見せた。その様子を見た麒麟は、神域を渡り歩いてきた中でも類を見ない珍妙な存在であると評価した。

マンドラゴラの効果と神の関与

成長したマンドラゴラは非常に強い香りを放ち、魅惑的な効果を持つことが麒麟によって明かされた。それは人間にはトリップ効果を与える可能性があるが、神や幻獣には影響がないとのことであった。このマンドラゴラの由来は偶然の産物であり、神が意図的にそうした効果を求めてつくったものではないとされた。むしろ、幻獣たちがこのようなモノに魅了されやすいことが指摘され、幻獣収集家である白澤も関心を持つ可能性が示唆された。

第4章 いよいよ眷属たちの神域へ

新たに創られた神域の探索

麒麟が去ったのち、湊たちはウツギの案内で新設された神域に入った。浮島から見下ろすと、異なる空と山を持つ四つの島が配置されており、それぞれが異なる季節の環境となっていた。この神域は湊のために作られたもので、野生動物の接触を避けるために四霊の加護が発動しない仕様となっていた。湊は過去に加護をはがされたことで大きな不安を感じていたが、眷属たちの説明により安心感を得た。

空の旅と浮島からの降下

神の力で設計された鳥型飛行機に乗り、湊たちは春の山島を目指した。操縦はカエンが担当し、予想外にも安定した飛行を披露したが、調子に乗ったウツギが翼を踏み台にして跳ねた際、飛行機に弾かれ、空中から落下してしまう。下にはモササウルスが待ち構えていたが、機体の急降下により湊が間一髪でウツギを救出し、地上への着地に成功した。

神域での釣りと収穫

島では本格的な釣りが行われた。釣り竿などの用具は山神による手製で、それぞれの者に合うものが用意されていた。生き餌を用いて釣りを開始するも、当初は釣果に恵まれなかった。しかし湊が小魚を海にまいたことで魚の活性が上がり、次々と釣果が出る。湊自身も高級魚クエを釣り上げ、大いに盛り上がった。

富士山再現エリアでのきのこ狩り

次に一行は、えびす神とコノハナサクヤヒメの協力により再現された富士山もどきへと向かった。そこではきのこ狩りが目的となり、セリやトリカの指導を受けながら湊が採取を行った。きのこに関してはセリとトリカが毒性の有無を即座に見抜き、湊は安全に活動できた。一方でカエンは毒きのこを平然と食べ、神の耐性を見せつけた。

恐竜出現による騒動

その最中、三つ頭のティラノサウルスが出現し、森をなぎ倒しながら暴走した。原因はウツギがマンドラゴラを食べさせたことで、恐竜がそれを求めて暴走したためであった。危機に瀕した湊は、山神の投げた丸太により救われた。山神は眷属たちの無責任な行動を叱責し、以後の安全管理の徹底を命じた。

焚火と夕食の時間

夕暮れ、湊は山神と共に焚火を囲んだ。山神一家が整えた環境により、山頂でも温かく快適な食事が楽しめた。夕飯には釣った魚や採ったきのこを使った料理が並び、神の道具を用いて調理も順調に進んだ。たぬ蔵もいつの間にか加わり、祠への悩み相談が増えているという現状について語られた。

星降る夜の宴

食事の締めくくりにたぬ蔵が踊りを披露し、谷属たちも笑顔を見せた。湊は満腹と満足のなか、夜空に広がる天の川を見上げた。満ち足りた思いと共に、神々との交流が深まる一夜となった。

第5章 播磨とクロの日常

テラス席での穏やかな朝

ケサランパサランの解放から約一週間後、播磨はクロとともに街角のカフェで朝を過ごしていた。クロは膝の間でサンドイッチを頬張っており、播磨はきちんとしつけを守らせつつ、目立たぬように配慮していた。感情が高ぶると姿が見えてしまうクロは、注意を受けてすぐに隠れるなど成長を見せていた。

クロの日常と成長

クロはチョウチンアンコウのぬいぐるみで遊ぶようになって以来、家具の破壊行為もなくなり、飲食も行うようになっていた。大食漢でありながらもマナーを守るようになっており、播磨の体調管理にも配慮するような行動をとる。休憩を促し、時にはスマホの電源を切るなどして仕事を制限しようとする姿勢は、祖神の教えを強く反映していた。

死霊との遭遇とクロの役割

カフェでの穏やかな時間の中、突然、死霊の女性が現れ、播磨に救いを求めてきた。クロは即座にそれを察知し、撃退した。播磨はその行動に感謝しつつも、死霊に頼られる現状に困惑していた。神の血を引く者には死霊が自然と寄ってくるため、過去には悪霊化を防ぐために奔走したことも多かった。

神祖と先祖の因縁

かつて祖神が与えた武器を用い、播磨の先祖たちは陰陽寮に加わり人々を助けたが、それが祖神の不興を買い、以降武器は与えられなくなった。クロは例外的に祖神が作った守護者であり、播磨にとっては支えであり、時に保護者のような存在でもある。互いに保護者であるという意識を持ちつつ、絆を深めていた。

仕事再開へのせめぎ合い

休憩中の播磨に対し、クロはスマホの通知にも即座に反応し、仕事を再開させようとする連絡を阻もうとする。一方で播磨は自らの役割と責任からその行為を制止しようとし、両者の間で静かな攻防が繰り広げられた。最終的にスマホを手にした播磨は、葛木からの連絡に目を通すのだった。

第6章 播磨、伝説のブツと遭遇す

廃ホテルでの悪霊祓い

播磨はクロを伴い、海に面した廃ホテルで悪霊祓いに従事していた。対象は芋虫型の巨体を持つ悪霊で、分裂しながら逃走を試みたが、播磨は真言を唱えて撃退。クロは戦闘こそ行わないが、霊力の供給源として大きな役割を果たしていた。悪霊を一掃したあとは、感傷的な気持ちで壁画に目をやった。

昼食への移動とクロの対人スキル

任務を終えた播磨は、葛木の誘いで繁華街へ移動した。店先では葛木の式神・ペンギンとクロが対面し、クロは力を抑えて接していた。その振る舞いは播磨の教育の賜物であり、クロは言葉こそ話さないが、複雑な意図を読み取り行動できるほどに成長していた。

路地での騒動と神気の発見

突如、男子高校生二人が神気を持つ何かを奪い合い、次いで作業服の男たちが異様な執念で仲間を追い回す場面に遭遇した。播磨は即座に暴力を制圧。葛木と共に観察する中、これらの人々が「幸運をもたらす毛玉=ケサランパサラン」を追っていたことが明らかになった。

ケサランパサランの実態と暴走する噂

街中でケサランパサランを目撃した者たちがその力に取り憑かれ、暴力沙汰を起こすという異常事態が多発していた。ケサランパサランは本来一度に一人へしか幸運を授けず、非常に希少な存在である。だが今回は、二つの強い神気を持つ個体が連続して現れていた。

クロによる神気の調整

クロは自身の神器であるチョウチンアンコウを用い、ケサランパサランの神気を吸収・弱体化させることに成功した。提灯に神気が灯り、幸運の力は一人分程度に縮小された。これにより、再び世に放たれても混乱を生まないと判断された。

ケサランパサランの帰還と一件の終息

調整された白と黒のケサランパサランは、葛木と播磨に見守られながら方丈山へと帰っていった。その様子は神々しく、街に静けさをもたらした。一方、葛木の式神・サメがクロの神器に噛みつき、クロが激昂するという騒動で幕を閉じた。

第7章 鳥遣いさんウォッチング

鳥遣い氏と町の人々

町には鳥を引き連れ歩く青年がいた。通称「鳥遣いさん」として親しまれる彼は、数多の鳥や動物に懐かれ、町の名物的存在であった。庭師・信濃や工務店の親方・日向をはじめ、多くの住民が彼と交流し、その不思議な魅力に惹かれていた。

信濃は過去に彼の住む家での作業中に不調を患ったが、その家を離れると体調が回復した経験をもつ。日向もまた身体の不調が改善されたことをきっかけに鳥に好かれるようになり、庭に鳥のための水場や巣を整えるまでになっていた。

甲斐の観察とケサランパサラン出現

ケーキ屋の娘・甲斐は鳥遣いさんに密かな想いを寄せていた。友人と共に隠れて観察していたところ、神秘的な白い毛玉──ケサランパサランが出現。友人と甲斐は慌ててそれを追うも捕まえられず、願望成就を期待して争いになるほどであった。

ケサランパサランと楠木の関係

楠木(=鳥遣いさん)は自転車泥棒を動物たちと共に捕まえた直後、偶然再会した裏島岳と会話を交わした。岳の姉・千早が現れた際、彼女の頭にケサランパサランが無自覚に付着しており、それに気づいた楠木が優しく誘導しバッグへ収めた。楠木はケサランパサランの管理にも熟知しており、騒動の原因と鎮静の手段を理解していた。

越後屋の事情と景虎の想い

和菓子屋「越後屋」では、祖父が病から奇跡的に回復し、店を継ぐ決意を固めた孫・景虎が修業に励んでいた。祖父の再発を恐れ、焦る景虎は祖父を支えようと躍起になっていたが、現在は祖父の健康がむしろ増進している様子に安心しつつあった。

その後、景虎の彼女である越前氏の孫娘が盗まれた自転車を楠木に返され、感激して涙を浮かべる場面に遭遇。景虎は内心嫉妬するも冷静を保ち、楠木の行動に感謝の念を抱いた。

鳥遣いさんの日常と町の変化

楠木はサル吉を連れて町を巡り、住民に温かく迎えられていた。ケサランパサランにまつわる幸運話も町中に広がっており、町の活気に貢献していた。楠木の行動は、神の加護を感じさせつつも日常の一部として町に溶け込んでいた。

第8章 秋のための庭づくり

ダンボールとアヒル大将の再会

管理人業務を終えた湊は、実家から届いた荷物を開封した。中には地元産の調味料のほか、座敷わらしからの贈り物として「アヒル大将」と呼ばれるラバーダックが同梱されていた。このアヒルは宿のグッズとして湊の家族に親しまれており、今回は特別に葉と木桶を装備した“くすのきの宿”オリジナル仕様であった。

秋仕様の庭造りの提案

湊のもとに現れた山神は、秋にふさわしい庭を作ろうと意欲を見せた。その発言により庭の精霊や幻獣たちは動揺し、とりわけ主木であるクスノキは過去の立ち退きの記憶から激しい抵抗を見せた。湊はクスノキの移動をしないよう山神に懇願し、了承を得たことで一同は安心して改装の見学に移った。

秋景色の模索と試行錯誤

山神は庭に秋の情緒を取り込むべく、様々な黄葉樹を試していった。最初に候補となったのは紅葉の定番・モミジや、赤く色づくコキアであったが、いずれも却下された。その後、イチョウが採用され、池の上にイチョウ並木が出現。山神は落葉の処理も吸収によって無効化する仕様にし、現実的な問題も解決された。

黄葉へのこだわりと庭の完成

黄一色の景観を目指す山神は、さらにクロモジ、シロモジ、カツラ、ブナなどの木々を次々と試し、最終的にクロモジに落ち着いた。改装の過程では植物が何度も変化し、麒麟から「現実であれば莫大な費用がかかる」と皮肉られる場面もあったが、神域ゆえに自由であった。クスノキの威厳は保たれ、庭は秋らしさを備えつつ落ち着いた姿に整えられた。

庭の完成と日常への回帰

庭の改装を終えた山神は満足げに尻尾を振り、湊は安心して日課の護符作成へと戻っていった。激しい改変もなく、全員の心が穏やかに満たされる結果となった。

第9章 山神、とくと湊を観察する

カエンの神域と風鈴の記憶

庭の改装後、四霊たちは思い思いに過ごしていたが、カエンは自らの神域にこもっていた。神域はようやく固定され、金物の製作に勤しむ姿は職業神としての性分を物語っていた。一方、山神は風鈴の過去を回想した。風鈴は遺品整理で捨てられた存在だったが、山神により湊のもとへ導かれた。以来、湊の手厚い扱いに満足し、軒先で共に過ごしている。

湊の護符作りと過去の記憶

湊は護符の文様を和菓子の名前から図形へ変えようと考え、道教由来の鎮宅霊符に挑戦した。大口真神の護符に影響を受けたことが動機であった。山神は当初、護符変更に否定的であったが、湊の強い関心を察し静観した。湊の霊力は独特であり、悪霊を祓うことに特化している。これは転生を繰り返す中で陰陽師であった記憶が、魂に刻まれているためであった。

今生の湊と山神の観察

湊の今生は本来、穏やかで厄介事のないものとなるはずだったが、山神の意志により神域に囲われ、多くの異変に巻き込まれることとなった。それでも湊は、護符を販売したり他者を利用するような意図は持たず、あくまで誠実に生きようとしていた。山神はその魂の変化を観察しつつ、人としての生涯を全うさせるつもりであった。

クスノキと葉っぱの攻防

護符の図案としてクスノキの葉を思いついた湊に対し、山神はイチョウの葉を風で滑り込ませ、他の選択肢を示した。すると、クスノキが大量の葉を降らせて対抗し、嫉妬心を露わにした。山神はそれを「見苦しい」とたしなめたが、クスノキは舌っ足らずな口調で反論し、幼木ながらも強い自己主張を見せた。クスノキは癒しの力を持ちながら、性格は好戦的で、米の神ククノチに似ていると山神は評した。

第10章 豪華メンバーのお見送り付き神界弾丸ツアー

木彫り舟の完成と神々の来訪

湊はスクナヒコナから依頼された木彫りの舟を完成させた。イチョウ並木が色づき始めた庭で舟の出来栄えを確認していると、神の気配が現れ、えびす神と大黒天が登場した。二神は酔った状態で池に現れ、騒々しく振る舞うが、湊がつくった舟を見て称賛する。舟を試すよう促され、湊は自ら乗って性能を確かめることに決めた。

神々の支援と小人化

大黒天の打ち出の小槌の力で湊は小人サイズにされ、舟に乗り込む。神々にとって人間を小さくすることは仕置きの一環でもあるという。舟の完成度を確かめるため、湊は視点の変化を楽しみつつ舟に乗り、試運転を始めた。そこへ豪華な見送り役として、弁財天も登場し、琵琶の演奏で場を華やかに彩る。

神界行きの危機と山神の介入

舟を神界へ送り出そうとした神々は、湊が生身の人間であることを忘れ、魂が抜ける危機を招いてしまう。山神が小人化し、自身の神力で作り出した簡易神域で湊を守ることで、無事に神界へ向かうことが可能となる。舟は水の橋を渡り、光の穴を抜けて神界へと突入した。

神界での試乗と神々との出会い

神界の穏やかな川に到達した湊は、舟の操作に苦戦しつつも徐々に慣れていく。途中、宗像三女神の一柱イチキシマヒメらと出会い、舟の感想を得る。さらに山神の主導により、急流での本格試験が行われ、舟の性能が厳しく試される。途中、鬼たちが神界を襲撃しており、湊と山神は桃神オオカムヅミと共に戦い、窯を破壊して撃退に成功した。

竜宮城の上空遊覧と帰還

鬼退治の後、湊と山神は竜宮城上空を高速で通過しながら見学する。島に建つその城は町のように広大で、スサノオとその妻たちの姿も確認できた。しかし、小人化の時間制限が迫り、山神は湊を急いで現世へと連れ戻す。楠木邸の庭へ帰還すると、えびす神と大黒天が酔いながら再び出迎え、湊は改めて神々の自由さを痛感するのだった。

第11章 相続人の思惑

売れない屋敷と繰り返される失敗

榊は自身の執務室で、秘書から相続した屋敷の内見希望者たちに関する報告を受けていた。過去の見学者はいずれも霧に迷わされたり、恐怖で屋敷に入れなかったりと、まともに到達すらできていなかった。屋敷は榊の伯父が建てたもので、山と庭を愛した伯父のこだわりが詰まっていたが、立地には異様な気配が漂っており、榊自身も訪問時に人が立ち入るべき場所ではないと直感していた。

湊への信頼と期待

榊はその異様な家に湊を管理人として派遣していた。湊は伴侶の実家である温泉宿の家系の一員であり、宿には悪霊を祓うという噂があった。実際、湊の手によって家の空気は明るくなり、手製のキーホルダーはよく売れていたことからも、悪霊祓いの力があったと推察された。榊は、湊に任せた判断が正しかったと認めつつも、彼に恩義だけでなく、別の目的も持っていた。

湊への譲渡を巡る思惑

榊は湊が将来的に屋敷を買ってくれることを密かに期待しており、秘書にその気があるかを確認した。派遣している部下からの報告によれば、湊には購入の意思は全くないという。榊は残念がるが、それでもいずれ湊のものになるだろうと述べた。冷静な秘書は、湊への強引な働きかけを控えるよう忠告した。

忘れ地から変質した家の存在

榊は屋敷が“忘れ地”から別の何かに変わったと考えていた。訪れる者が軒並み拒絶される現象は、何らかの意志が働いているとしか思えなかった。次に訪れる者が購入できる可能性に一縷の望みを抱き、榊は内見希望者の募集を継続すると答えた。誰が買うかは問題ではなく、とにかく手放したいというのが本音であった。

第12章 いやでも行くしかない

庭の整備と風の修行

湊は庭の掃除をしつつ、風の力を自在に操る訓練に励んでいた。過去、風神から授けられた力を呼び出す方法を模索する中で、胸の奥にある熱の流れを意識し、手のひらに力を通すことで風を出すことに成功していた。山神の観察と助言もあり、次第に風の強弱や方向を調整できるようになり、日常使いにも活用できるまでに成長していた。

風の精たちの来訪と異変の知らせ

風と戯れていると、風鈴が突如「敵襲」と叫び、異常な風の動きが庭を襲った。屋根の上に風の精が並び、ダウンバーストのような強風を放っていた。風の精たちは戯れ好きで、湊に商店街での噂話を届けたりもしたが、やがて南風と北風と名付けられた二体が異変を伝えに現れた。彼らは神々の戦いの音を模倣し、風神と正体不明の神獣との戦闘が現世で起きていることを知らせた。

強制連行と戦場への到着

南風と北風は、湊を大布で包んで空へ連れ出し、神々の戦う現場まで運んだ。湊が到着したのは渦巻く厚雲と荒れる海の中空であり、眼下には群島が広がっていた。そこでは、風神が九つの眼を持つ神獣・白澤と交戦中であった。白澤はかつて吉兆の象徴とされる存在だが、実際は好戦的であり、風神に襲いかかっていた。

雷神の登場と雷鼓の託宣

戦いの激化により、白澤の蹴りが雷神の寝床である黒雲に命中し、雷神が激怒して覚醒した。雷神は普段は女言葉を使うが、その本性は威圧的で、目覚めると怒気をはらんだ姿を見せた。疲労のため戦いたくない雷神は、湊に「でんでん太鼓」状の雷鼓を渡し、白澤へ一発だけ雷撃を命じた。渋々ながらも湊は狙いを定め、雷鼓を鳴らすと雷撃が白澤に直撃し、神獣は落下した。

戦いの終結と帰還

風神と雷神は満足げに礼を述べ、雷神は再び眠りについた。湊は呆然としながらも、風の精たちによって再び布で包まれ、神々の戦場から庭へと戻された。庭には変わらぬ風鈴の音が響き、クスノキも静かに佇んでいた。湊が自らの意志でこの戦いに臨んだことを物語っていた。

第13章 長らくお世話になりました

旅立ちの決意と恩返しの議論

麒麟、応龍、鳳凰は神界の果ての氷河地帯に集結していた。三体は、湊への恩返しのため神宝を手に入れようとしていた。きっかけは麒麟の発言であり、竜宮城での宴の席にて楠木邸を去る意向を述べたことに始まる。鳳凰も同じく旅立ちを決め、応龍は青龍のもとへ帰ると語った。湊への感謝の印として贈り物を決める話し合いでは、麒麟が日用品として洗剤の詰め合わせを提案するも反対され、神宝を贈る案が七福神とのやり取りを経て浮上した。

神宝を求めて氷河地帯へ

神宝の在処とされる氷河にたどり着いた三体は、氷を砕こうと渾身の力で攻撃を繰り返すが、氷は神力をも跳ね返す。ようやく氷に亀裂が入るも、その直後に崩落が始まり、三体は危機に陥った。そこへ白虎と青龍が出現し、神力で氷を融かして三体を救った。白虎と青龍は神宝を破壊ではなく、「願い」によって得るべき存在であると諭し、三体は改めて神宝に願いを伝えることとなった。

湊への別れと贈り物

翌朝、麒麟、応龍、鳳凰は楠木邸を訪れ、湊に別れを告げた。三体は湊への感謝として、神宝であるひょうたんを贈呈した。ひょうたんは持ち主が初めに注いだ液体を無限に出すことができる神具であり、湊のためにその姿となった。湊は当初、洗剤を注ぐことで実用的に使う予定であることに恐縮するも、三体の真心を受け止め、大切に使うと応じた。

三体の旅立ちと見送り

鳳凰は南へ、応龍は東へ、麒麟は北へとそれぞれの方向へ旅立っていった。湊は彼らの姿が見えなくなるまで庭で見送っていた。その傍らには、山神が静かに寄り添っていた。

第14章 密な近所(?)付き合い

神域から解放された男

ある朝、かつて山神の神域で養生していた中年男性が、魂の定着を理由に祠の前へ戻された。彼はその地を高天原と思い込んでいたが、現実を突きつけられ、帰還を余儀なくされる。神域での生活で心身ともに若返り、人間的にも成長していた彼は名残惜しげに山を去った。セリ、トリカ、ウツギの眷属たちはその様子を見届けた後、湊のもとへと向かい、解放の報告と山栗を手土産として届けた。

カエンの鍛冶と成長

鍛治の神であるカエンは、自ら泥だらけになりながら炉を築き、神域に鉄製品を揃えるまでに成長していた。その所作や熱量から、湊も「一端の神様」と評した。室内の整理整頓は不得手であったが、鍛治にかける情熱は本物であり、その姿に周囲も感心していた。

神々の宴と十五夜の団欒

その夜、楠木邸では十五夜の月見が催され、山神と伊吹神が将棋を囲む傍らで、セリたちやカエン、ヒサメらが団子や秋の味覚を楽しんでいた。伊吹は山神に将棋で連敗しており、痴話喧嘩のような言い合いを繰り返していた。湊も月見団子や山かけそばを口にしながら、心安らぐひと時を過ごした。

コノハナサクヤヒメからの贈り物

石笛の音により到来が告げられたのは、コノハナサクヤヒメからの贈り物であった。桜の花びらに包まれて届いた籠には、富士山産の様々なきのこが詰まっており、ツガタケやホウキタケといった食材は炊き込みご飯や天ぷらなど、多様な料理に使えるものであった。

大口真神の乱入とにぎやかな宴

宴の最中、ツートンカラーの狼・大口真神が眷属を連れて登場した。彼は他の山々にも勝手に出入りする自由な神であり、山神や伊吹にとってはやや煙たい存在であった。だが、やがてクスノキのもとは動物姿の神々と眷属で溢れ、秋の味覚を楽しむ光景は非常ににぎやかなものとなった。湊はその騒がしさの中に幸せを感じ、満月を見上げながら微笑みを浮かべた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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