物語の概要
■ 作品概要
主人公の魔女ロゼは、庵の強盗被害予防のため、騎士ハリージュのアズム邸に夜間の食客として移住を開始する。辻馬車で自ら向かった屋敷で、使用人ターラから新人メイドと誤認される事態を経ながらも、屋敷での生活を定着させていく。
日常の交流や言語的誤解の解消を経て二人の精神的距離は接近する。
一時はハリージュの発言の一部を聞き咎めて不誠実な企てと誤解し揺れ動くが、迎えに来たハリージュから真意と直接の好意(「好いている」)を告げられ、互いに想いを通わせて求婚に応じる。
その後、行商人ティエンの手配による黒いウェディングドレスの選定や、嵐の夜の庵での対話を通じて「結婚とは同じ目的地に向かって共に歩むこと」という認識を共有し、挙式準備を進める。
貴族間で発生する「偽の魔女の惚れ薬」による卒倒事件の影や「誓いの口付け」への困惑を抱えつつも、ハリージュの軽口に対する「嘘をつけない」魔女の特性に伴う沈黙から、ロゼが5年前から彼を好きだった事実が判明。
互いの信頼を確固たるものとし、大聖堂での挙式日程と準備を確定させる。
■ 主要キャラクター
- ロゼ
- 立場・所属 : 「湖の善き魔女」を継いだ魔女。
- 主人公としての役割・変化 : 庵の強盗被害予防のためハリージュのアズム邸に食客として移住する。ハリージュからの想いを受け入れ、結婚に同意して式の準備を進める。
- ハリージュ・アズム
- 立場・所属 : アズム邸の主人。騎士。ハイズラーン伯爵家の三男。
- 主人公との関係 : ロゼに求婚し、彼女を屋敷に招いた婚約者。
- この巻での役割・変化 : ロゼを自邸に迎え、彼女の意向やペースを尊重しながら求婚の真意を伝え、結婚に向けた手続きや準備を進める。
- ターラ
- 立場・所属 : アズム邸の使用人(調理担当の年嵩の女性)。
- 主人公との関係・役割 : ロゼを新人メイドと勘違いして玄関掃除等を命じるが、誤解解明後もお嬢様として親身に接し、食事や身の回りを世話する。
- モナ
- 立場・所属 : アズム邸に新しく雇われた住み込みのメイド。
- 主人公との関係・役割 : ロゼ付きの侍女として配置される。当初は魔女であるロゼに怯えていたが、髪の編み込みや身の回りの世話を行う。
- ヤシュム
- 立場・所属 : マルジャン国第二王子。ハリージュの護衛対象であり友人。
- 主人公との関係・役割 : ロゼに対して不躾な態度や嫌味をとるが、ハリージュがロゼを選ぶ決意を確認する。貴族卒倒事件の調査を行う。
- ティエン・コン
- 立場・所属 : 各国を巡る行商人。ロゼの保護者的存在。
- 主人公との関係・役割 : 大魔女(ロゼの生前の祖母)からの預かり金でロゼの花嫁道具やウェディングドレスの生地・調度品を搬入し、ドレス選びを手伝う。
書籍情報
どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。 2
著者:六つ花えいこ 氏
イラスト: Vient (ヴィエント) 氏
出版社:双葉社(Mノベルスf)
発売日:2019年10月18日
ISBN:9784575242171
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あらすじ・内容
片思い相手だった王宮騎士のハリージュに、惚れ薬を依頼されたことで、彼と心を通わせることができた魔女ロゼ。それだけでも嬉しいのに、ハリージュの婚約者として彼と一緒に住むことに!?毎日会うハリージュにときめきの止まらないロゼだが、そんな彼女の元に、『魔女の弟子になりたい』という少女がやってきて…?引きこもりだった魔女と、真面目で上から目線な騎士の、惚れ薬から始まった恋のおはなし。
感想
1巻で、長い片思いに一応の決着がついたロゼ。
好きだったハリージュと両想いになり、今度は婚約者として彼の屋敷で一緒に暮らすことになる。
ここまで来れば、あとは幸せな恋人生活が始まる。
……はずなのだが。
この二人、本当に両想いなんだよな?
そう確認したくなるくらい恋愛に不器用である。
好きなのに素直になれない。
相手のことを大切に思っているのに、少し言葉が足りないだけですれ違う。
それでも少しずつ距離が縮まっていく。
読んでいるこちらとしては、
「もういい! 分かった! 二人とも相手のこと大好きなんだろ!」
と言いたくなる。
砂糖を吐く。
そんな2巻だった。
婚約者としてハリージュの屋敷へ
2巻は、ロゼがハリージュの婚約者として彼の屋敷で暮らし始めるところから始まる。
1巻では、ハリージュに片思いしながら惚れ薬を作るという、とんでもなく切ない状況だったロゼ。
それが今では婚約者である。
ものすごい進歩だ。
ところがロゼ本人は、まったく恋人生活に慣れていない。
ハリージュもハリージュで不器用。
両想いになったのだから一気に距離が縮まるのかと思ったら、そうでもない。
一歩進む。
照れる。
勘違いする。
また少し近づく。
そんなじれったい関係が続いていく。
だが、それがいい。
1巻で告白して終わりではなく、「両想いになった後」の二人をじっくり描いているところが面白かった。
ロゼ、嘘をつけないのが可愛すぎる
特に印象に残ったのが、ロゼは魔女だから嘘をつけないという設定である。
これが恋愛になると、とんでもない破壊力を発揮する。
普段のロゼは感情を隠そうとする。
恥ずかしい。
好きだと知られたくない。
できるだけ平静を装いたい。
ところが嘘はつけない。
だから油断した瞬間、本音が漏れる。
これが可愛い。
ものすごく可愛い。
普段は一生懸命隠しているだけに、ポロッと出てしまった本音の威力が高すぎる。
ハリージュでなくても耐えられない。
そして5年前のアレがバレる
中でも破壊力が高かったのが、二人がいつ出会ったのかという話になった場面である。
出会ったのは5年前。
そこでハリージュが冗談として、
その時にロゼが自分に惚れたのだろう。
そんなことを言う。
当然、ハリージュとしてはロゼが否定すると思っている。
ところが。
ロゼは魔女である。
嘘がつけない。
否定できない。
……あ。
バレた。
5年前から好きだったことがバレた。
これはダメだ。
砂糖を吐く。
ハリージュ自身、ロゼが自分を好きになったのは最近だと思っていた。
それなのに実際には5年前からずっと好きだった。
しかも本人の口から格好良く告白したわけではない。
嘘をつけないせいで、事故のようにバレる。
ロゼらしすぎる。
この場面は2巻の中でも特に好きだった。
両想いなのに、まだまだ片思いみたいな二人
1巻で恋は実った。
しかし2巻を読んでいて感じたのは、この二人は両想いになってからが本番なのだということだった。
ロゼは長い間、片思いをしていた。
そのため、
「ハリージュが自分を好きでいる」
という状況そのものに慣れていない。
一方のハリージュも、ロゼの考えていることを全部理解できるわけではない。
だから些細なことで不安になる。
すれ違う。
勘違いする。
それでも最後には話をする。
少しだけ相手のことを知る。
その繰り返しである。
恋人になった瞬間に完成するのではなく、恋人になってから二人で関係を作っていく。
このじれったさが本作の魅力だと感じた。
魔女の弟子になりたい少女まで現れる
そんな甘い同居生活の一方で、ロゼのもとには「魔女の弟子になりたい」という少女がやってくる。
最初のロゼは弟子入りを断る。
魔女は血統によって受け継がれるものだからだ。
ところが、この少女が後になって物語の重要な部分へつながってくる。
彼女の正体は第四王女ルゥルゥ。
しかも魔女の力につながる素質まで持っていた。
さらには独学で惚れ薬まで作ってしまう。
いや、才能ありすぎでは?
最初は単なる弟子志望の少女だと思っていたので、この展開は意外だった。
最終的にロゼがルゥルゥを弟子として迎えることで、ロゼ自身の立場も少し変わっていく。
ハリージュとの恋愛だけではなく、「魔女としてどう生きていくのか」という部分まで広がっているのが興味深かった。
偽物の惚れ薬事件でロゼが疑われる
後半では「魔女の惚れ薬」が原因と思われる事件まで発生する。
そして当然のように疑われるロゼ。
魔女である。
惚れ薬を作れる。
しかも実際に本物を作ったことがある。
疑われる条件だけなら揃いすぎている。
しかしロゼ自身は事件に関与していない。
そんなロゼをハリージュが信じる場面も印象に残った。
ロゼは嘘をつけない。
これまで、それは彼女にとって不便な性質でもあった。
本当のことしか言えないからこそ、遠回しな言い方をしなければならない。
その結果、逆に人間から胡散臭く見られることもある。
ところがハリージュは違う。
ロゼが「自分はやっていない」と言えば信じる。
嘘をつけないという性質が、ここでは二人の信頼につながっている。
恋愛の甘さだけではなく、
「この人なら自分を信じてくれる」
という安心感まで生まれているのが良かった。
1巻よりも「一緒に生きる」話になっている
1巻は片思いの話だった。
好きな相手から惚れ薬を頼まれる。
しかも、その薬を別の女性に使うのだと思っている。
かなり切ない状況から始まった。
2巻では、その恋が叶った後が描かれる。
同じ家で暮らす。
結婚について考える。
相手の立場を考える。
周囲との関係も変わる。
そして互いを信じる。
ただ「好き」というだけでは終わらない。
一緒に生きていくために、少しずつ関係を作っていく話になっていた。
だから派手な恋愛展開というより、じわじわ甘い。
砂糖を一気に口へ突っ込まれるというより、延々と砂糖を供給され続ける感じである。
結果。
糖尿病になりそう。
まとめ|もう分かったから結婚してくれ。いや婚約していた
『どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。2』は、1巻で結ばれたロゼとハリージュの「その後」を楽しむ一冊だった。
婚約者として一緒に暮らし始めても、二人は相変わらず不器用である。
本当に両想いなのか心配になるほどすれ違う。
しかし、そのたびに少しずつ相手を知っていく。
特にロゼが可愛い。
嘘をつけない。
だから本音を隠しきれない。
そして5年前からハリージュを好きだったことまでバレる。
あの場面は反則である。
砂糖を吐く。
さらに弟子となるルゥルゥの登場や、偽物の惚れ薬を巡る事件によって、ロゼの世界そのものも少しずつ広がっていく。
1巻で恋が成就したから終わりではない。
むしろ両想いになってから、ようやく二人の恋愛が始まったように感じた。
じれったい。
不器用。
でも、お互いのことが大好きなのは嫌というほど伝わってくる。
もう分かった。
二人とも好きなんだろ。
早く結婚してくれ。
……と思ったところで気づいた。
そういえば、もう婚約していた。
砂糖を吐く。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:アズム邸への移住と勘違いによる出だし
- 原因 : 庵での強盗被害発生を懸念したハリージュの提案を受け入れ、ロゼは夜間のみアズム邸に身を寄せる食客として移住することを決意する。
- 行動 : サフィーナの迎えを待たず自力で辻馬車に乗りアズム邸に到着したロゼだったが、年嵩の使用人ターラに遅刻した新人メイドと誤認される。拒否することなく言われるがままお仕着せを着せられたロゼは、タワシで玄関を磨く掃除を命じられる。
- 結果 : そこへ本物の新人メイドであるモナ、ハリージュ、サフィーナが到着したことで誤解が判明する。ロゼが重要な客人「魔女ロゼ」であることが明かされ、彼女のためにハリージュが大急ぎで手配した豪華な客室へと案内される。
- 次の展開 : ロゼは昼間を森の庵や調薬作業に充て、朝晩をアズム邸で過ごす新たな生活を開始する。
第2幕:屋敷での生活とミミズの小瓶事件
- 原因 : アズム邸での生活が定着する中、ロゼは慣れない貴族の服の扱いに困惑し、ハリージュにドレスの後ろボタンを留めてもらうなど日常的な接近が増加する。
- 行動 : ロゼは鶏のおやつ用に採集した傷つきミミズの入った小瓶を屋敷に持ち込み、鶏小屋前でハリージュと会話中に足をつんのませる。ハリージュは転倒を防ぐため彼女を支え、小瓶を見ながら「今はあんた一人じゃないんだぞ(小瓶を割れば泥とミミズまみれになるという意味)」と発言する。
- 結果 : これを目撃したターラは「一人の体ではない(=妊娠)」と誤聴し、使用人間の「生理(月の障り)がない」という噂と結びつけ、ハリージュが未婚のロゼを手籠めにして妊娠させたと思い込んで激しく詰め寄る。ロゼが小瓶の中身(ミミズ)を提示したことで誤解は解ける。
- 次の展開 : ハリージュは深夜、自室とロゼの部屋を繋ぐ扉越しに気配を確認するなど、互いに意識を強めていく。
第3幕:謎の少女との遭遇とすれ違いの解消
- 原因 : 森で作業中のロゼは落とし穴に落ちていた貴族風の少女を救出する。少女は弟子入りを熱望するが、魔女は血統で継ぐものであるため断る(少女は後日「R」名義の熱烈なポエム手紙を送る)。
- 行動 : 屋敷にヤシュム王子が訪問しロゼに無礼な態度をとる。その後、ロゼはハリージュとヤシュムの「結婚さえしてしまえば、後は好きになってもらうのを待つだけだ」という会話を途中の「後は好きに—」までで盗み聞きし、結婚後の冷遇や不倫を意味すると誤解して強いショックを受ける。
- 結果 : 動転して調薬に失敗したロゼの元へ、非番のハリージュが迎えに来る。ハリージュは発言の真意が好意の成熟を待つ意味であったと釈明し、直接「好いている」と告白する。ロゼも気持ちを返し、二人の思いが通じ合う。
- 次の展開 : 二人は具体的な結婚式の手続きや準備を進める段階へと移行する。
第4幕:結婚の準備と自身の思いの自覚
- 原因 : 結婚の合意を受け、行商人のティエンが大魔女からの預かり金を資金に、大荷物を伴ってアズム邸を訪問する。
- 行動 : カタログから衣装選びが行われ、ロゼは着慣れた「黒のウェディングドレス」を選択する。自身がドレスを着る条件として、ロゼはハリージュが騎士服を着ることを要求し承諾される。その後、ハリージュはロゼの亡き祖母の埋葬地(樫の木)への訪問に同行し、二人でサンドウィッチを食べる。
- 結果 : 帰路の雨で嵐となり、ロゼの庵で一晩を過ごす。ブランデーを飲みながら対話し、ロゼは「結婚とは同じ目的地に向かって共に歩むこと」という定義を伝える。ハリージュもロゼの価値観やペースを尊重して歩む決意を固め、絆を強める。
- 次の展開 : 式の準備が進む一方で、貴族社会で不穏な事件の影が広がり始める。
第5幕:不穏な噂と誓いの口付けへの苦悩
- 原因 : 貴族たちの間でワイン等を飲んだ直後に原因不明の卒倒を起こす現象が多発し、ヤシュムとハリージュが水面下で調査を開始する。
- 行動 : ヤシュムがアズム邸を訪れ、ハリージュの立場を案じてロゼを問いただすが、ロゼはハリージュの判断を信頼していると突っぱねる。ティエンが持ち込んだ怪しい「魔女の惚れ薬」の話題にメイドのモナが過敏な反応を示す。さらに、元王女ビッラウラからの手紙により、式中に「誓いの口付け」の作法があることを知ったロゼは過剰に困惑する。
- 結果 : ハリージュの私室に駆け込んで相談したロゼは彼に宥められ、式の作法を受け入れて準備を進める覚悟を固める。
- 次の展開 : 結婚式前の最終調整と、ハリージュに対するロゼの長年の好意の判明へと至る。
第6幕:過去の好意の発覚と式の合意完了
- 原因 : 嵐の夜の帰路、馬車内でハリージュから「5年前に惚れていた男」について問われ、ロゼは回答を避け沈黙したため不機嫌な空気となる。
- 行動 : 後日サロンにて、ヤシュムから出会いについて問われたハリージュは冗談で「5年前だ。街で出会ってその時ロゼが俺に惚れた」と語る。しかし「魔女は嘘をつけない」という特性上、否定すべきロゼが赤面・沈黙したため、5年前に街で惚れた相手がハリージュ本人であった事実が暴露される。
- 結果 : ハリージュは長年の相思相愛を知って深い歓喜を覚え、ロゼは極度の羞恥から叫んで逃走する。式の日程(一番寒い冬の日から5日後の正午、大聖堂にて)や衣装、出席者(75名)が定まり、偽惚れ薬事件の不穏さを背景としつつも、揺るぎない信頼関係のもと式を待つ状態となる。
主要な転換点
転換点1:アズム邸への移住と新人使用人との誤認
- 以前の状況 : 泥棒被害のあった庵で一人で暮らし、人との交流が乏しかった。
- 出来事 : 避難のためハリージュの屋敷に移住した際、ターラに新人メイドと間違えられ掃除等を行わされる。
- 変化 : 屋敷の使用人たちに新人と誤認されたことでかえって親しみを持って受け入れられ、ロゼ自身も人との交流に対する心理的ハードルが下がる。
- 次への影響 : 食客としての生活が定着し、ハリージュとの日常的な接触が増加する。
転換点2:ハリージュとヤシュムの会話の誤解
- 以前の状況 : ハリージュからの求婚を受け入れつつも、彼の真意や将来に対する確信を持てずにいた。
- 出来事 : 「結婚さえしてしまえば、後は好きになってもらうのを待つだけだ」という発言の途切れ(「後は好きに—」)を盗み聞きし、不誠実な意味だと勘違いする。
- 変化 : 動転して調薬に失敗し、ハリージュに対する不審と不安を募らせる。
- 次への影響 : 迎えに来たハリージュから「好きになってもらうのを待つ」という真意と直接の告白(「好いている」)を引き出し、互いの愛を明確に確認し合うこととなる。
転換点3:結婚の意味に関する対話(嵐の庵での一夜)
- 以前の状況 : 魔女としての世俗からの疎遠さから、人間の「結婚」という制度や手続きに対して無知・戸惑いがあった。
- 出来事 : 嵐により庵に閉じ込められた夜、ブランデーを飲みながら結婚や夫婦の意味について真剣に話し合う。
- 変化 : ロゼは結婚を「同じ目的地に向かって共に歩むこと」と捉え、ハリージュもロゼを力や常識で導くのではなく彼女の意思を尊重して歩む姿勢を固める。
- 次への影響 : 式に向けた準備や将来に対するロゼの迷いが消え、確固たる婚約関係が築かれる。
転換点4:ビッラウラの手紙と「誓いの口付け」の覚悟
- 以前の状況 : 式の準備を他人事のように進めていた。
- 出来事 : ビッラウラからの手紙により、式中に人前で「誓いの口付け」をする作法があることを知る。
- 変化 : 極度の羞恥と動転を覚えるが、ハリージュとの対話を通じて受け入れざるを得ない現実として認識する。
- 次への影響 : 式への臨戦態勢(覚悟)とハリージュとの親密さの最終調整へと繋がる。
主人公を中心とした人物関係の変化
ハリージュ・アズム
- 開始時 : 求婚されたものの、急すぎる展開に戸惑い、食客として夜だけ部屋を借りる微妙な距離感。
- 主な出来事 : 屋敷での生活、ミミズの誤解解明、言葉の誤解とその後の愛の告白、嵐の夜の対話、「嘘をつけない」特性に伴う5年前からの好意の発覚。
- 巻末時 : 互いに「好き」と気持ちを伝え合い、互いのペースや価値観を尊重して結婚式へ向かう確固たる婚約者同士。
ターラ
- 開始時 : 新人メイドと客人という誤認から始まる関係。
- 主な出来事 : 玄関掃除の手ほどき、妊娠の誤解と真相判明、朝食や昼食(サンドウィッチ等)の用意を通じた交流。
- 巻末時 : ロゼを温かく見守り、食事や身の回りを世話する良好な関係。
モナ
- 開始時 : 魔女であるロゼを恐れ、青ざめて怯える関係。
- 主な出来事 : 身の回りの世話(ドレスの着用や髪のリボン編み込み)、ロゼからの礼の言葉、惚れ薬の話題への過敏な反応。
- 巻末時 : 怯えは残るものの、ロゼの髪や服の支度を任される専属侍女のような役割を果たす関係。
ヤシュム
- 開始時 : 初対面で滑って泥・糞まみれになり、魔女に対して蔑称・不躾な態度をとる関係。
- 主な出来事 : ロゼへの嫌味、ハリージュの選択に対する問い詰めとロゼの返答、ロゼの5年間の片思いの発覚。
- 巻末時 : 口論や警戒は残るものの、ハリージュに対するロゼの決意を認めざるを得なくなった関係。
主人公の認識と周囲の評価
主人公(ロゼ)自身の認識
- 自分は世間知らずで引きこもりの不器用な魔女であり、容姿もお洒落とは無縁で細身・貧相であると思っている。
- 人前で着飾ったり、好意を明確に口にしたりすることを酷く恥ずかしく感じている。
- 嘘をつけないという魔女の特性上、無表情でいることが身を守る術だと考えている。
周囲からの評価
- ハリージュ : 非常に愛しく可愛い存在。自分の前で感情が見え隠れする様子や一挙一動を深く愛している。
- ターラ : ちんちくりんだが素直で愛らしく、大切に扱うべきお嬢様。
- ヤシュム : 不気味な魔女と思っていたが、自分の意志と決意をしっかり持った侮れない存在。
- R(落とし穴の少女) : ロゼを「常闇を照らす光、雨風を遮る天の傘、揺れる慈愛の海原、まろやかな春の氷」「光り輝く月」と過剰な比喩表現(ポエム)で崇拝・讃える崇高で憧れの存在。
- 認識の差が現れた場面
- モナやターラにリボンを編み込まれ、夏用のベージュのドレスを着た際、ロゼ自身は「色づいた魔女」「背中が出て頼りない」と恐縮していたが、ハリージュは「まぶしい」「とても可愛い」と絶賛し過剰に反応した場面。
- 落とし穴から救助した少女に対し、ロゼは「薄汚れた魔女」として嫌われたと思っていたが、少女からは狂熱的な賛美の手紙(ポエム)が届いた場面。
クライマックス
- 発生原因 : 雨が強まり嵐となったため、ハリージュが迎えの馬車を断り、ロゼの庵に足止めされる。
- 当初の状況 : 薄暗い庵の中で、食べ物も乏しいためブランデーを飲みながら、ロゼが調べた「結婚」の定義や屋敷の人々(モナ、サフィーナ、ターラ)に聞いた結婚の観念について話し始める。
- 登場人物それぞれの行動 :
- ロゼは「結婚とは二人で同じ方向へ歩むこと」という自論を伝え、ハリージュに対する好意と信頼を言葉にする。
- ハリージュはロゼの深い愛と覚悟を感じ取り、これまで以上に愛おしさを募らせ、式を早く挙げたいと抱きしめる。
- 予定外の出来事・展開 : 雨が上がった後、アズム邸へ戻る馬車の中で、ハリージュが自身の過去の傲慢さを省み、「ロゼの考えや歩み方を尊重したい」と伝える。
- 危機(心理的動揺) : 馬車内でハリージュから「5年前は誰かに惚れていたのか」と問われ、ロゼは話題選びを失敗したと焦る。
- 対応・決着 : ハリージュの問いに対し、ロゼは「魔女は嘘をつけない」ため沈黙する。ハリージュは自分以外の男に惚れていたと勘違いして嫉妬し重苦しい空気を作るが、後日サロンにてヤシュムから出会いについて問われた際、ハリージュが冗談で「5年前に街でロゼが俺に惚れた」と言ったところ、否定すべきロゼが否定できずに沈黙・赤面したことで「5年前から惚れていた相手=ハリージュ本人」であった事実が判明する。
- 直後の結果 : ハリージュはロゼの長年の好意を知って喜びを噛み締め、ロゼは極度の羞恥から「干しナメクジてんこ盛りうんこデラックス!!!」と叫んで逃走する。
巻末時点の状況
- 主人公の居場所・立場 : アズム邸の食客(事実上の婚約者)として滞在を続けつつ、昼は森の庵で調薬や畑仕事を行う生活。
- 主要人物との関係 : ハリージュとは相思相愛の婚約者。屋敷の使用人たち(ターラ、サフィーナ、モナ等)からは「お嬢様」として受け入れられている。
- 解決した問題 :
- 互いの好意の確認と結婚に対する認識の共有。
- ウェディングドレス(黒のドレス)や調度品、式の日程決定(一番寒い冬の日から5日後の正午、大聖堂にて)。
- 継続している問題 :
- 式での「誓いの口付け」に対するロゼの過度な緊張と羞恥。
- 貴族たちの間で発生している「偽の魔女の惚れ薬」による卒倒・体調不良事件の真相解明(ヤシュムとハリージュが調査中)。
- 今後につながる要素 :
- ハリージュが約束した「騎士服姿」の披露。
- モナが「魔女の惚れ薬」に反応した背景および貴族事件の影。
登場キャラクター
湖の魔女と関係者
ロゼ
湖の小島にある庵で暮らす魔女とされる。魔法を使う代償として、嘘をつけない制約を持つ。王宮騎士のハリージュと心を通わせ、彼の屋敷で過ごす。
・所属組織、地位や役職 魔女。アズム邸の食客。
・物語内での具体的な行動や成果 ハリージュの屋敷で過ごしながら、結婚への理解を深めた。落とし穴から救ったルゥルゥ王女の才能を見抜き、弟子として受け入れる。偽の惚れ薬騒動で疑いをかけられたが、無実を証明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王宮の舞踏会へ招かれ、魔女としての存在を容認される。大聖堂にてハリージュと結婚式を挙げた。
ティエン・コン
ロゼの親代わりとして世話を焼く行商人とされる。各国を旅して珍しい品や情報を扱う。ロゼの結婚を心から喜び、支援を行う。
・所属組織、地位や役職 行商人。
・物語内での具体的な行動や成果 婚礼用のドレスや宝飾品をアズム邸へ持ち込み、仕立ての手配を進めた。巷で流れる偽の惚れ薬の情報をロゼに伝えた。彼女の幼少期からの思い出を語り、祝福を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 結婚式に参列し、感極まって涙を流した。
ロゼの祖母
ロゼに魔女の調薬や生き方を教えた師とされる。五年前に他界した。生前にロゼのための資金をティエンに託していた。
・所属組織、地位や役職 魔女。
・物語内での具体的な行動や成果 ロゼの将来を案じ、花嫁道具のための資金を残していた。森の樫の木の下に埋葬されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 本編開始前に死亡している。
ロゼの母
ロゼが幼い頃に他界した魔女とされる。
・所属組織、地位や役職 魔女。
・物語内での具体的な行動や成果 紅茶の淹れ方を伝える歌を、幼いロゼに歌って聞かせていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 本編開始前に死亡している。
アズム家
ハリージュ・アズム
王宮の近衛騎士を務める貴族とされる。ロゼを深く愛し、彼女を保護するために自邸へ招いた。周囲の偏見からロゼを守り、彼女の意思を尊重する。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・王宮近衛騎士。アズム伯爵家三男。
・物語内での具体的な行動や成果 ロゼを自邸の食客として迎え入れ、生活を支援した。冤罪で塔に幽閉されたロゼを救うため、壁を登力して突入した。舞踏会でロゼをエスコートし、彼女への愛情を公言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 大聖堂にてロゼと結婚式を挙げた。
サフィーナ
アズム家に長く仕える執事とされる。ハリージュとロゼの関係を温かく見守る。屋敷の管理や使用人の統括を行う。
・所属組織、地位や役職 アズム家・執事。
・物語内での具体的な行動や成果 ロゼの世話役としてメイドのモナを採用した。夜間に雨が上がった際、ランタンを持って森へ迎えに向かう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
ターラ
アズム家で家政婦や料理人を務める年配の女性とされる。威勢が良く面倒見が強い。ロゼを新しいメイドと誤解したが、後に打ち解けた。
・所属組織、地位や役職 アズム家・家政婦、料理人。
・物語内での具体的な行動や成果 初日にロゼを使用人と間違えて掃除を指示した。ロゼとハリージュの会話を誤解し、ハリージュを激しく叱責する。ロゼのために毎朝パンや食事を用意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
モナ
アズム家に新しく採用された若きメイドとされる。過去の経験から魔女を恐れていた。ロゼの優しさに触れて恐怖を克服する。
・所属組織、地位や役職 アズム家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果 遅刻して到着し、ターラの誤解を解くきっかけとなった。ロゼの髪を結い、ドレスの着付けを助けた。かつて仕えた屋敷で偽の惚れ薬が使われた過去をロゼに明かす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ロゼへの恐怖心を克服し、忠実な侍女として仕えるようになった。
アズム邸の使用人たち
アズム家に仕える下僕や使用人たちとされる。ロゼを温かく受け入れている。
・所属組織、地位や役職 アズム家・下僕、使用人。
・物語内での具体的な行動や成果 初日にやってきたロゼと気安く挨拶を交わした。ロゼの靴の試着を手伝い、転ばないよう支える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
マルジャン国
ヤシュム(マルジャン国第二王子)
マルジャン国の第二王子とされる。ハリージュの幼馴染みであり上司にあたる。妹のルゥルゥを深く心配している。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果 貴族の昏倒騒動を追う中で、ロゼを犯人と疑い塔へ閉じ込めた。真犯人が妹のルゥルゥだと知り、自らの判断の誤りを認めた。舞踏会でロゼに踊りを申し込み、ハリージュと踊る羽目になる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ロゼからお仕置きとして惚れ薬入りのワインを飲まされた。
ルゥルゥ(マルジャン国第四王女)
マルジャン国の第四王女とされる。十一歳になったばかりの少女で、魔女に強い憧れを持つ。独学で魔法を再現する才能を秘めている。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・第四王女。
・物語内での具体的な行動や成果 森で落とし穴に落ち、ロゼに助けられた。独学で「魔女の惚れ薬」を作り、友人に配った。薬の不成立による貴族の昏倒騒動を引き起こす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 才能を認められ、ロゼの弟子として受け入れられた。
ビッラウラ(ラウー)
ニフリート国へ嫁いだマルジャン国の第一王女とされる。ロゼの元依頼人であり手紙で交流を続ける。ハリージュやルゥルゥから姉のように慕われる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・第一王女。ニフリート国・王妃。
・物語内での具体的な行動や成果 ロゼに手紙を送り、交友を維持した。結婚式での「誓いの口づけ」についてロゼに助言を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 手紙にてニフリート王の子を懐妊したことを報告した。
ゲオネス
ヤシュムの近衛騎士を務める男性とされる。ハリージュの同僚であり友人にあたる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・近衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 ヤシュムの護衛として動いた。ヤシュムの命により、庵にいたロゼを拘束して塔へ運ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
マルジャン国王
マルジャン国の統治者とされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果 物語本編で直接行動する描写はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
マルジャン王妃
マルジャン国の王妃であり、ヤシュムやルゥルゥの母とされる。王妃直轄の森や塔を所有する。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・王妃。
・物語内での具体的な行動や成果 珍しく「魔女の塔」を開放した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
ルゥルゥのばあや
ルゥルゥに付き従う老年の侍女とされる。膝を痛めている。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・第四王女の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果 ルゥルゥの朝の外出に付き添えずにいた。塔で落ち込むルゥルゥに寄り添い、背を擦る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
王宮の衛兵たち
王宮や舞踏会の会場を警備する兵士たちとされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・王宮警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果 舞踏会に現れた魔女ロゼに恐れおののき、制止を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
王宮の楽団
舞踏会で演奏を担当する楽団とされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・王宮楽団。
・物語内での具体的な行動や成果 舞踏会の会場で楽曲を演奏した。ハリージュとヤシュムが踊る際、終焉の楽曲を奏でた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
貴族・街の人々・その他
ワハーシュ卿
マルジャン国の貴族とされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果 自邸で晩餐会を開き、ヤシュムや護衛を招いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
ワハーシュ卿の奥方
ワハーシュ卿の妻とされる。
・所属組織、地位や役職 貴族夫人。
・物語内での具体的な行動や成果 晩餐会の夜、ヤシュムのあてがわれたベッドに忍び込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
体調を崩した貴族たち
原因不明の不調で倒れた貴族たちとされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果 ルゥルゥの作った偽の惚れ薬を口にし、一時的に倒れた。半日ほどで回復した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
舞踏会の参加者たち
王宮の舞踏会に集まった貴族たちとされる。
・所属組織、地位や役職 マルジャン国・貴族、参加者。
・物語内での具体的な行動や成果 会場に現れた魔女ロゼに悲鳴を上げた。ロゼとハリージュの様子に驚き、噂話をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
裁縫師
ティエンが連れてきた腕利きの職人とされる。
・所属組織、地位や役職 裁縫師。
・物語内での具体的な行動や成果 ロゼの体型に合わせて黒いウェディングドレスを縫い上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
司祭
大聖堂で誓いの儀式を執り行う聖職者とされる。
・所属組織、地位や役職 大聖堂・司祭。
・物語内での具体的な行動や成果 ハリージュとロゼの誓いの問いかけを行った。ロゼが神ではなくハリージュに誓いを立てたことを受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 文書内に地位の変化や昇進の記載はない。
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展開まとめ
プロローグ 魔女の旅立ち
アズム邸への到着
ロゼは住み慣れた庵を離れ、夜の間だけ世話になることになったハリージュの屋敷へ一人で向かった。無事に到着したロゼは、想像以上に壮大な屋敷や庭の厩、鶏小屋を目にして圧倒された。
使用人との誤認
屋敷から出てきた家政婦のターラは、ロゼを新しく雇う予定の使用人と勘違いし、遅刻を咎めながら屋敷の中へ案内した。ロゼは言われるがままにお仕着せを渡され、自身も納得して屋敷の雑用を引き受けることになった。
ハリージュの帰宅と誤解の解消
玄関を磨いていたロゼのもとに、外出先から戻ったハリージュと執事のサフィーナが現れた。遅れて本物の新入りメイドであるモナが駆けつけたことで、ターラはロゼが客人である魔女本人だと気づき、非礼を深く詫びた。
用意された部屋での対話
ハリージュはロゼを広大で上品な客室へと案内し、出迎えの掃除を自ら行っていた理由を尋ねた。ロゼがターラに亡き祖母の面影を感じて懐かしかったと打ち明けると、ハリージュは屋敷の者たちが信頼できると告げ、改めてロゼを迎え入れた。
第一章 戸惑いの魔女
着替えの苦戦とハリージュの助力
アズム邸での生活に慣れ始めたロゼは、ハリージュから贈られた新しいドレスを身につけたものの、背中のボタンが留められず困惑した。廊下でロゼに怯えるモナを見送った直後、在宅していたハリージュがロゼの服の乱れに気づき、リネン室で慎重にボタンを留め直した。
朝の食堂でのひととき
台所でターラから温かいミルクティーを振る舞われていたロゼのもとへ、ハリージュが合流した。二人は食堂へ移動し、照れ隠しの軽口を交わしながら穏やかな朝の時間を共にした。
鶏小屋での遭遇とミミズの小瓶
庵での仕事を終えて帰宅したロゼは、鶏へのおやつにするため森で採取した大量のミミズを瓶に入れて鶏小屋へ向かった。そこで帰宅したハリージュに見つかり、ミミズが苦手な彼をからかいながらも、屋敷への持ち込みについて相談した。
ターラの誤解と騒動
玄関で転んだロゼをハリージュが気遣った際、二人の会話を耳にしたターラは、ハリージュが未婚のロゼに不義を働いて子供ができたのだと激怒した。必死に弁明するハリージュをよそに、ロゼが小瓶の中のミミズを差し出したことで、ターラの壮大な勘違いはようやく解けた。
真夜中の逢瀬とハリージュの気遣い
深夜に物音で目覚めたロゼは、自室と繋がる施錠された扉の前に座り込んでいたハリージュを発見した。出勤前にロゼの気配を確かめていただけだと明かしたハリージュは、ロゼの肩にキルトを掛け、無防備な彼女を気遣って静かに自室へと戻っていった。
第二章 魔女と謎の訪問者
落とし穴の少女
森で薬草を採取していたロゼは、古い落とし穴に落ちて助けを求めていた見知らぬ少女を発見した。持っていたローブを差し出して這い上がらせたものの、泥まみれになった少女は大切にしていた手土産や薬を穴の中に落としたことを嘆いた。
弟子入りの志願
ロゼが湖の魔女だと知った少女は激しく感動し、自身を弟子にしてほしいと大声で懇願した。魔女は血統で受け継がれるものであるためロゼはその場で断り、少女を森の入り口で待つ付き添いのもとへ帰るよう促して立ち去った。
城への帰還とヤシュムの失態
王城の中庭で、第二王子のヤシュムは二日酔いと前夜の晩餐会での災難に苦しみ、近衛隊のハリージュとゲオネスに愚痴をこぼしていた。ハリージュが最近きっちり休暇を取っている理由を問い詰めたヤシュムは、彼が魔女と同居しているという噂の真相を知って驚愕した。
第四王女ルゥルゥの登場
回廊の柱に隠れていた第四王女ルゥルゥを見咎めたヤシュムは、早朝の不審な外出を問い詰めて監視を強めることを言い渡した。ルゥルゥはハリージュに祝いの言葉を述べ、魔女の惚れ薬を話題に出して兄妹でハリージュをからかった。
第三章 透き通った湖と薄とスキヤキと魔女との隙間
結婚の話とすれ違い
夕食後の歓談中、ハリージュから結婚の手続きを進めたいと切り出されたロゼは激しく動揺した。ロゼが素直に喜べず曖昧な態度を取ったため、ハリージュは煮え切らない思いを抱えた。
ヤシュムの来訪と不穏な会話
翌朝、鶏小屋の前でロゼは突然現れたヤシュムと遭遇し、泥のついた足元を汚らしいと咎められた。その後、客間からハリージュとヤシュムが話す声が漏れ聞こえ、結婚後の自由を語る断片的な言葉を耳にしたロゼは、ハリージュが不倫を企んでいると激しい誤解を抱いた。
湖畔での告白と本心
重い気持ちのまま庵で調合に失敗したロゼのもとへ、仕事を終えたハリージュが迎えにやってきた。ロゼの沈黙から不安を察したハリージュは真剣に愛を告白し、ロゼもまた戸惑いながら彼への好意を認めたことで、二人はようやく互いの深い想いを通じ合わせた。
第四章 マネキンになった魔女
朝の逃走劇
想いが通じ合って以降、スキンシップを深めようとするハリージュに耐えきれなくなったロゼは、早朝の屋敷を全力で逃走した。しかしすぐに捕まり、部屋へ連れ戻されて強引に迫られる事態となった。
ティエンの急襲
突然の来訪者の気配に気づいたハリージュが身を引いたことで、ロゼは辛うじて窮地を脱した。玄関には、ロゼの親代わりである行商人のティエンが、婚礼用の衣装や大量の荷物を携えて現れていた。
サロンでの衣装選び
サロンに広げられた大量の反物やデザイン帳を前に、ロゼはマネキンのように立たされて衣装選びに付き合わされた。ティエンとハリージュの勧めにより、ロゼは着慣れた黒い生地のウェディングドレスを仕立てることを決めた。
騎士服の約束と見送り
露出度の高いドレスを人前で着ることを恥ずかしがるロゼに対し、ハリージュは交換条件として何でも望みを聞くと約束した。ロゼが彼の騎士服姿を見たいと願い出るとハリージュは快諾し、出勤する彼をロゼは玄関で見送った。
流行り病の噂とモナの怯え
残されたロゼはティエンとお茶を楽しみながら、最近上流階級の間でワインなどを飲んだ者が突然倒れる奇妙な不調が頻発しているという話を聞いた。給仕をしていたモナはその話題に激しく動揺し、皿を落として立ち去った。
謎の手紙
ティエンが去ってひと月後、ロゼの庵のポストに頭文字がRとだけ記された手紙が届いた。そこには以前落とし穴から救った少女による、ロゼを崇拝する熱烈な詩が何枚にもわたって綴られていた。
幕間 魔女の魂が眠る場所
寝坊と特別な身支度
ある朝、大幅に寝坊して慌てるロゼに対し、モナは庵の畑の世話はすでに手配済みであると告げた。モナはハリージュの意向を汲んでロゼに上品な夏のドレスを着せ、髪にリボンを編み込んで綺麗に整えた。
祖母の眠る場所への案内
ハリージュと共に森へ出かけたロゼは、奥深くにある大きな樫の木の下へと彼を案内した。そこは五年前に亡くなったロゼの祖母が眠る場所であり、ハリージュは持参した花束を供えて静かに祈りを捧げた。
切り株での昼食
祖母への墓参りを終えた二人は、木漏れ日の中の切り株に腰を下ろしてターラ特製のサンドウィッチを広げた。ハリージュから注がれる温かな愛情を実感したロゼは、幸福感に包まれながら食事を楽しんだ。
第五章 水たまりに浮かぶ魔女の庵
庵での休息と雨の気配
数日ぶりに庵を訪れたハリージュは、手土産のパイをロゼと共に楽しんだ。多忙を極めるハリージュが椅子に座ったまま眠り込んでしまうと、ロゼは彼を起こさぬよう静かに本を読みながら寄り添い続けた。
大雨と結婚の定義
激しい土砂降りの雨で湖を渡れなくなった二人は、薄暗い庵の中で足止めを食らった。ロゼは本で調べた知識や屋敷の使用人たちから聞いた意見をもとに、互いに歩む道が違っても向かう先が同じであることが自分たちにとっての結婚なのだと語り、ハリージュを深く感動させた。
帰還の馬車での会話
雨が上がり、サフィーナの迎えで馬車に乗り込んだロゼは、ハリージュに眠気覚ましの薬を手渡した。ハリージュはロゼの判断や生き方を尊重する大切さを語り、二人は穏やかな空気の中で絆を深めた。
ビッラウラからの手紙
数日後、庵のポストに他国へ嫁いだ元依頼人のビッラウラから手紙が届いた。そこには結婚式において誓いの口づけを交わす作戦が記されており、身体的接触を伴う儀式が存在することを知ったロゼは激しい衝撃を受けた。
誓いのキスの免除と約束の確認
屋敷に戻ったロゼは、ターラやモナに確認した上でハリージュの私室へ駆け込み、儀式でのキスなど到底不可能だと泣きついた。ハリージュがキスの免除を認めると、ロゼは以前約束した騎士服を着る機会を必ず設けるよう念を押した。
深夜の密談
深夜の城の政務室で、ヤシュムとハリージュは貴族たちが原因不明で倒れている事件について密かに情報交換を行っていた。被害者の多くが特定の飲み物を口にした直後に倒れているものの、決定的な証拠はいまだ掴めずにいた。
第六章 在りし日の小さな魔女
ヤシュムの忠告
秋の夕暮れ、アズム邸のサロンで待っていたヤシュムは、ハリージュが魔女と結婚することで失うものの大きさを説き、身を引くべきではないかとロゼに問いかけた。ロゼはハリージュの判断を信頼していると静かに返し、ヤシュムの不器用な気遣いを受け流した。
五年前の真実の露見
戻ってきたハリージュは、二人が最初に出会った五年前の出来事を冗談交じりに語り、その時にロゼが惚れたのだろうと口にした。嘘をつけないロゼが沈黙して肯定を示してしまったため、長年片思いされていた事実を知ったハリージュは耳まで赤くして喜んだ。
偽の惚れ薬の出現
結婚式用の黒いドレスの最終試着を終えたロゼのもとへ、ティエンが巷で流行しているという魔女の惚れ薬が入った小瓶を持ち込んできた。その薬が貴族たちの昏倒騒動の原因と目されていると知ったモナは激しく動揺し、菓子を床に落としてしまった。
モナの告白
深夜、窓辺で割ってしまったカップの破片を片付けるロゼを手伝いながら、モナはかつて仕えていた屋敷で令嬢の指示によりその薬を男性に飲ませ、相手が倒れて解雇された過去を涙ながらに打ち明けた。粗悪な偽薬を自身が作ったと思われることを嫌うロゼは、打ち明けてくれたモナの誠意に深く感謝した。
第七章 魔女の惚れ薬
塔への幽閉
庵で家事用の薬を作っていたロゼは、やってきたヤシュムとゲオネスによって拘束され、王妃直轄の森にある高い塔の最上階に閉じ込められた。ヤシュムは巷で貴族たちを昏倒させている魔女の惚れ薬の製造主がロゼであると疑い、白状するよう迫った。
ハリージュの突入
ロゼが無実を訴えながらも孤独に涙を流していたところ、塔の壁をよじ登ってきたハリージュが窓から乱入してきた。職務を投げ打って駆けつけたハリージュはロゼを強く抱きしめ、彼女の潔白を全面的に信じると断言した。
小瓶の鑑定と王女の乱入
ヤシュムから証拠の小瓶を受け取ったロゼは、その薬が以前自分が作った本物の秘薬と極めて酷似した調合であることに気づいた。そこへ突然、第四王女のルゥルゥが扉をノックして現れたため、ハリージュはロゼを抱えて窓からロープで飛び降り、間一髪で脱出した。
真相の発覚と弟子入り
塔の下でルゥルゥと対面したロゼは、彼女が以前森の落とし穴で救った少女本人であると知った。ルゥルゥは姉のビッラウラに見せてもらった魔女の秘薬に憧れ、独学で完璧な惚れ薬を作り出していたことが判明し、彼女に魔女の先祖返りの才能を見出したロゼは、その場でルゥルゥを弟子に取ることを決めた。
第八章 お城の舞踏会へ行く魔女
舞踏会への入場
王宮の舞踏会に招かれたロゼは、重厚な刺繍が施された豪奢なローブを身に纏い、ハリージュと共に会場へ足を踏み入れた。魔女の登場に周囲の貴族たちが恐れおののく中、ハリージュは堂々とロゼをエスコートした。
会場での牽制
ハリージュの婚約者が魔女であることに陰口を叩く貴族の女性たちに対し、ロゼは薬の正しい用法を説いて毅然と釘を刺した。そこへハリージュが自ら惚れ薬を飲まされる前からロゼを愛していたと公然と言い放ち、周囲を圧倒的な沈黙で包み込んだ。
ヤシュムの真意とダンスの代償
近づいてきたヤシュムはロゼの存在を王家として公認する姿勢を示し、手打ちの証としてロゼにダンスを申し込んだ。人と踊ったことのないロゼは即座に拒絶し、結婚式での誓いのキスを受け入れることと引き換えにハリージュを差し出し、男性二人で踊らせることでその場を乗り切った。
最後のお仕置き
踊り終えて戻ってきたヤシュムに対し、ロゼは仕返しとしてこっそり惚れ薬を混ぜたワインを手渡した。一気に飲み干して不審がるヤシュムの耳元で、ロゼはそれが魔女の惚れ薬であると囁き、密かな復讐を果たした。
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