小説「フルメタル・パニック!短編集1 放っておけない一匹狼?」感想・ネタバレ

小説「フルメタル・パニック!短編集1 放っておけない一匹狼?」感想・ネタバレ

フルメタル・パニック!1 放っておけない一匹狼?巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

物語の概要

本作はSFミリタリー×学園ライトノベルシリーズ『フルメタル・パニック!』の短編集である。主人公の《ミスリル》所属兵士・相良宗介が、“戦争ボケ”した軍人気質を高校生活へ持ち込み、日常的な学園生活の中でも常に戦闘的発想で行動する様を描く。校舎内外での銃撃戦や爆発、狙撃行為といった“非常識な日常”が、戦争の現実と青春の日常という相反する状況をユーモラスに描写している。ラブレターや怪事件、狂騒的な戦闘行動が混在し、宗介の普通ではない高校生活が展開される。これらは本編の延長線上にあるが、短編形式ならではの軽快さが特徴である。

主要キャラクター

  • 相良宗介
    本シリーズの主人公であり、《ミスリル》に所属する特殊兵士。戦闘技能と戦術目線を日常へ持ち込み、学園生活のささいな場面にさえ過剰な対応をする“戦争ボケ兵士”である。不器用だが使命感は厚く、護衛対象や周囲を守ろうとする一面も強い。
  • 千鳥かなめ
    宗介の護衛対象として登場するヒロイン。平凡な高校生活を送りたがる普通の少女であり、宗介の不器用さと非常識さに振り回されつつも共に行動することが多い。

物語の特徴

本作の魅力は、“軍事的常識 × 日常高校生活”という矛盾した設定をユーモアと戦闘描写で昇華している点である。通常の「戦闘無双」や「異世界冒険」といったジャンルとは異なり、主人公が“普通の日常”に自分のリアルな軍事価値観をぶつけてしまうため、その斜め上な展開が笑いと緊張を同時に生む。校舎での狙撃、ラブレターを巡る陰謀、日常の騒動が非日常へ変容する過程は、シリーズ本編のシリアスな軍事戦記と対をなす魅力を持つ。

書籍情報

フルメタル・パニック! 放っておけない一匹狼?
Full Metal Panic
著者:賀東 招二 氏
イラスト:四季童子  氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:ファンタジア文庫
発売日:1998年12月17日
ISBN:9784829128572

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あらすじ・内容

今日も元気だ狙撃がキマル。校舎に轟く爆発音。他人の迷惑なんのその――。戦争ボケ高校生相良宗介の、日常的な1日である。だが、そんな彼にひとつの転機が訪れた。なんと宗介の下駄箱に一通のラブレターが置かれていたのだ! 差出人はいったい? うまくいったら戦争バカも社会復帰か? そんな微かな希望をあざ笑うように、狂戦士・相良宗介はラブレターの影に潜む陰謀を打ち砕かんと動き始めた!! 危うし差出人! 危うし学校! 宗介の無謀な作戦を、誰が止められるのか!?(『南から来た男』より) 前代未聞のバイオレンス(笑)学園ラブコメ! 彩り豊かな5本の傑作に、書き下ろしを加えた衝撃の短編集!!

フルメタル・パニック! 放っておけない一匹狼?

感想

本編の張り詰めた空気を知っているほど笑えてしまう、危険な短編集である。戦場の論理を一切疑わない相良宗介を、平和な日本の学園に放り込むとどうなるか。その実験結果を、容赦なくギャグとして叩きつけてくる一冊であった。

まず衝撃的なのは、ラブレターに対する反応である。爆破するという発想は、普通の感性では絶対に出てこない。しかし紛争地帯で育った戦争バカにとっては、「正体不明の紙片=危険物」という判断は極めて合理的であり、本人は終始大真面目である。その真剣さがそのままギャグになる構造は、本作の笑いの核であり、読んでいて腹立たしいほど完成度が高い。

本編とのギャップも強烈である。世界の命運や軍事バランスを巡る物語の裏側で、同じ人物が学園でドタバタラブコメをやっている。この落差が成立してしまうのが、フルメタル・パニック!という作品の異常な強度である。シリアスを知っているからこそ、コメディがより刺さるという、なかなか意地の悪い構成であった。

個人的に特に印象に残ったのは「恋人はスペシャリスト」である。ロシアの民謡を歌い出し、プリクラを拳銃に貼り付けるという行動の数々は、徹底してズレている。それでも宗介本人は一切ボケているつもりがなく、文化の違いを全力で消化しようとしているだけなのが恐ろしい。この「本人は正解を選んでいるつもりなのに、結果だけが間違っている」様子は、『テルマエ・ロマエ』のルシウスにも通じる可笑しさがあった。

また、本作が後にアニメ『フルメタル・パニック?ふもっふ』へとつながる原作である点にも納得がいく。コメディとしての切れ味、テンポ、ネタの積み重ね方は非常に洗練されており、本編とは別方向で完成している。シリアスとギャグという二面性を、どちらも中途半端にしない姿勢は見事である。

時代を感じさせるネタも味わい深い。PC-FXという単語に一瞬首をかしげつつ、発行日が平成10年だと知って納得するあたり、読者の年齢を静かに選別してくるのもこの短編集らしい。「シンデレラパニック」の「この魔法は○時を過ぎると自動的に消滅する」というネタも、今では通じる層がかなり限られているだろうが、それすら含めて時代の空気として楽しめた。

総じて本作は、相良宗介というキャラクターの異常性を、最も分かりやすく、最も容赦なく描いた短編集である。本編の重さに疲れた時に読むと腹筋を破壊されるが、同時に「だからこそ本編が成立するのだ」と再確認させられる。シリアスとギャグ、その両極端を行き来できる作品はやはり強い。笑いながら、つい感心してしまう一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

南から来た男

校長室での問題視と黙認
教頭は、相良宗介の転入以降に発生した器物破損の請求書を校長へ突きつけ、被害が先週分だけで高額に達していると訴えた。校長は相良宗介を紛争地帯育ちの戦争被害者として扱い、学校側が受け入れて癒すべきだとして、教頭の追及を強引に打ち切った。

登校直後の靴箱騒動と爆破処理
千鳥かなめは登校中、玄関の靴箱付近で騒ぎを見つけ、相良宗介が自分の靴箱に爆弾があると警戒している場面に遭遇した。宗介は細工の痕跡を理由に爆発物を疑い、周囲の反対を押し切ってプラスチック爆薬で靴箱を爆破したが、爆弾は存在せず玄関を破損させる結果となった。

生徒会での処理と手紙の誤読
事件後、千鳥かなめと宗介は生徒会室へ呼び出され、林水敦信が事情説明を求めた。宗介は爆破処理を合理的手段として報告し、林水もそれを肯定して教職員への対応を引き受けた。宗介は爆破で焼け残った紙片から自分宛ての手紙だと判断し、内容を脅迫状だと決めつけて放課後の体育館裏へ向かう準備を始めた。

体育館裏の待ちぼうけと不良の襲撃
放課後、千鳥かなめは常盤恭子に誘われ、体育館裏で待つ佐伯恵那の存在を目撃した。宗介は現れず時間だけが過ぎ、やがて恭子は帰るが、かなめは佐伯恵那を気にかけて残った。そこへ不良グループが現れて佐伯恵那に絡み始め、かなめは止めに入ったが逆に取り押さえられ、危険な状況へ追い込まれた。

宗介の待ち伏せ救援と恋文の破綻
不良たちはゴムボール弾で次々と撃退され、茂みから迷彩と偽装網に身を包んだ宗介が現れた。宗介は五時限目から待ち伏せしていたと明かし、佐伯恵那に銃口を向ける想定までしていたため、かなめは激怒した。佐伯恵那は恋文の返事を求めるが、宗介は脅迫状と誤認し、手紙は爆破で失われたと告げたため、佐伯恵那は泣いて去った。

翌朝の弁当と関係の変化
翌朝、宗介は再び靴箱の不審物を疑い爆破しようとするが、千鳥かなめが止めて開閉を実演し、恐怖を押し切って確認させた。靴箱には新品の上ばきと風呂敷包みの弁当、そして助けた礼と食生活を気遣うメモが入っており、宗介はそれを大切に抱えて教室へ向かった。

相良宗介

陣代高校に転入した男子生徒であり、危険を前提に考える立場で動く者である。千鳥かなめとは同じ学年の関係であり、彼女から強く止められながらも独自の判断を押し通す場面が多い。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 自分の靴箱に不審物があると考え、立入禁止のテープを張って調べた。
 不審物の処理として爆薬で靴箱を爆破し、玄関ホールを騒動にした。
 体育館裏で迷彩の姿で待ち伏せし、不良生徒らをゴム弾で倒して千鳥を助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 転入後から校内の破損や修理の請求が増えた原因として扱われた。
 授業より安全を優先し、欠席して準備に動く判断を取った。

千鳥かなめ

陣代高校の女子生徒であり、言い方は強いが状況を見て動く者である。相良宗介とは同級生であり、彼の行動を止めたり後始末に関わったりする関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。生徒会の副会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 玄関ホールで宗介を止めようとし、結果の爆破に怒って殴った。
 生徒会室で事情説明を求められ、宗介の説明に巻き込まれた。
 体育館裏で佐伯恵那を助けるため、不良生徒に立ち向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 副会長の立場として、宗介の騒動の説明役に指名された。
 翌朝は宗介の爆破を止め、靴箱を開閉して安全を示した。

佐伯恵那

陣代高校の女子生徒であり、相良宗介に手紙を書いた当人である。待ち合わせに来て待ち続ける立場であり、千鳥かなめに助けられる側にもなった。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 放課後に体育館裏で宗介を待ち、長時間その場に残った。
 不良生徒に囲まれて抵抗し、千鳥の介入で場が動いた。
 宗介の態度と手紙の扱いを知り、泣きながら走り去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学園祭のミス陣高で二位になったと語られた。
 学年末の成績が上位であると話題にされた。

常盤恭子

千鳥かなめのクラスメートであり、彼女と一緒に登校し行動する者である。噂話にも強く、かなめをからかいながら様子見に誘う関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 朝にかなめと会話し、玄関ホールの騒ぎに向かった。
 宗介の手紙の話を聞き、かなめに様子見を提案した。
 体育館裏で待ち合わせ場所を見に行き、先に帰った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 とくに変化は書かれていない。

生徒会

林水敦信

生徒会長であり、落ち着いた態度で場を仕切る者である。千鳥かなめを副会長として使い、相良宗介の行動を受け止めて処理を進める関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会室にかなめと宗介を呼び、事情説明を求めた。
 宗介の爆破処理を「確実」と認め、教職員側を言いくるめる方針を示した。
 かなめに「様子を見て来い」と伝えたとかなめが述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 発言が校内対応に影響し、宗介の問題がその場で収まった。

教職員

校長

陣代高校の校長であり、宗介を受け入れる方針を取る者である。教頭とは対立気味であり、話を切って指示で終わらせる関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の校長。
・物語内での具体的な行動や成果
 修理費の請求書を見て、金額と期間を確認した。
 宗介を戦争の被害者として扱い、指導の必要を述べた。
 寄付金の話題を否定し、教頭に退出を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校内方針として、宗介の問題をある程度は見過ごす空気を作った。

教頭

陣代高校の教頭であり、宗介を重大な問題として扱う者である。校長に請求書を突きつけ、強い口調で対応を求める関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の教頭。
・物語内での具体的な行動や成果
 修理費の請求書を示し、被害の大きさを訴えた。
 宗介の身上書を出し、名前を明言して問題視した。
 宗介の行動例として、窓ガラス破損や誤認の話を挙げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校長に押し切られ、最終的に退出を命じられた。

不良生徒

タカちゃん

不良生徒の集団の中で中心に立つ者である。千鳥かなめに殴られたことで場の空気が変わり、仲間が一斉に暴力へ動くきっかけになった。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。不良生徒の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
 佐伯恵那を取り囲む集団の先頭に立ち、かなめにも近づいた。
 かなめに鼻を殴られ、出血した。
 仲間に呼ばれ、かなめへの攻撃の流れが強まった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その後、宗介のゴム弾の攻撃で集団が倒され、場が収束した。

愛憎のプロパガンダ

朝の対比と“同じ日常”
千鳥かなめはベランダの物音で目覚め、猫を見て拍子抜けしつつ、身支度と持ち物点検を“普通の高校生”として整えて登校した。一方、相良宗介も同じく物音で起きたが、彼の“普通”は拳銃と戦闘装備の点検であり、戦場の常識のまま通学へ向かった。同じ朝でも、二人の世界の基準が噛み合っていないことが示された。

白井の口説きと宗介の過剰防衛
駅で白井がかなめに交際を迫り、拒否されても乱暴に食い下がったため、宗介が背後からナイフで制圧した。かなめは白井を「ただの民間人」と断じて収めたが、宗介は脅し文句まで戦地仕様で、かなめは呆れつつも礼を言って登校を急いだ。

トイレ落書きによる中傷と“噂の拡散装置”
昼休み、生徒会長の林水敦信が、トイレの壁に書かれた赤字の誹謗中傷をポラロイドで提示した。内容は援助交際・薬物・性的噂など悪質で、かなめは怒りつつも「犯人探しは不要」と突っぱねて教室を出た。宗介は逆に「弱みを握られている」と疑い、平和な学校に戦時の論理を持ち込んでいく。

“善意”が地獄になる午後と宗介の暴走
放課後、噂を信じた風間信二が金を持って“恥ずかしい写真”の取引を持ちかけ、かなめは激怒して撃退した。さらに宗介が白井を拳銃で拉致して男子トイレで尋問を始め、かなめと恭子が止めに入る騒動へ発展した。林水は宗介に「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」として委任状まで渡し、状況は完全にコントみたいにエスカレートした。

真犯人は稲葉瑞樹、動機は嫉妬
白井の彼女である稲葉瑞樹が乱入し、かなめを悪者扱いして責め立てたが、宗介は“男子トイレの落書きを見た”という発言の矛盾から瑞樹を容疑者として追い詰めた。落書きは授業中に書かれた可能性が高く、瑞樹は白井が駅でかなめを口説いていたのを見て嫉妬し、噂を書き散らしたと認めた。

かなめの選択と、噂の“反転”
宗介は見せしめの処罰を主張したが、かなめは「何もしない」と決め、瑞樹の感情も理解して手を引いた。翌日、落書きには「それはウソだった。噂を信じるな」という追記が入っており、噂が“中傷”から“教訓”へ反転した。かなめは皮肉ではなく穏やかに笑い、「情けは人のためならず」と受け止めて物語は終わった。

鋼鉄のサマー・イリュージョン

真夏の砂浜と、いつものズレた日常
千鳥かなめはクラスメート一同の買い出し係として、スイカ三つを抱えて砂浜をよたよた歩き、置き去りの荷物が積まれたビーチパラソルへ戻った。常磐恭子らは既に泳いで遊び、宗介は「防犯」のつもりで荷物に手榴弾トラップを仕込んでいた。かなめは呆れつつもスイカ割りの準備に付き合うが、恭子たちの悪ノリで目隠しされた宗介がパラソル方向へ進み、ショットガンでスイカを撃って爆散させ、かなめが全身スイカまみれになる。宗介は悪気なく追い打ちの失言まで重ね、かなめはバットで宗介を殴って怒り、ひとり防波堤へ退避した。

謎の金持ち邸宅と、病弱少年の暴走ロマンス
防波堤で鬱々としていたかなめは、黒スーツの「謎の東洋人」に半強制で邸宅へ案内される。そこにいたのは病弱で繊細な少年、日向柾民であり、かなめに一目惚れして招いたのだと判明した。柾民は紅茶でもてなし、かなめも気の毒さと暇つぶしで応じるが、宗介が正門に現れると、かなめは意地と勢いで宗介を「凶悪な変態ストーカー」と嘘で説明し、柾民は召使い兼ボディーガードの鷲尾・鮫島・豹堂を差し向けて排除を命じてしまう。

救出と称した侵入作戦、そして屋敷は戦場になる
宗介はかなめが誘拐監禁されたと解釈し、装備を整え邸宅へ侵入する。豹堂のボウガン、鮫島のナイフ、鷲尾のヌンチャクと次々に襲撃されるが、宗介は容赦なく制圧し、途中で実弾のグレネードを誤って使うなど危なっかしい突破を続ける。邸内が静まり返り、柾民は最後の手段として折り畳みナイフを取り出して対抗しようとするが、そこへ宗介が踏み込み、柾民は一瞬で武器を弾かれる。

嘘の後始末と、かなめの本音が刺さる
宗介は「助けに来た」と主張するが、かなめは謝罪もなく中学生を脅す態度に激怒し、拳で宗介を殴る。柾民はかなめが宗介と友人だと知って裏切られたと感じ、傷つきながら糾弾するが、宗介は「騙される方が悪い」と戦場基準の説教を浴びせ、かなめを連れて強引に脱出を決行する。

断崖ダイブと、ぎこちない和解
宗介はかなめを抱えて断崖から飛び降り、巨大なバルーンにぶら下がって降下するという無茶で逃走した。柾民は宗介の言葉を妙に納得して「気迫が必要」と受け止め、かなめは後悔して詫びの手紙を出すべきだと考える。降下中、宗介はかなめを心配して助けに来たことを認め、かなめも謝り、宗介は「無事ならいい」と返し、かなめは宗介の肩に頬を寄せて微笑んだ。

千鳥かなめ

陣代高校の生徒会副会長である。普段は現実的で、相手の言動が度を越すと強く制止する。相良宗介とは同級生で、彼の過剰な警戒心に振り回される関係である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会副会長。二年四組。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅のホームで白井に絡まれ、相良の介入を受ける。校内トイレの落書き写真を示され、誹謗中傷の拡散により教室を離れる。男子トイレでの相良の尋問を止め、白井が無関係であると主張する。稲葉瑞樹の挑発に反応し、腕時計への侮辱だけは拒絶する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 副会長という地位が「要人」扱いの根拠として利用される。騒動後、各トイレの落書きに「噂は嘘だった」と追記され、風向きが変化する。

相良宗介

陣代高校への転校生である。戦場経験に基づく判断を優先し、学校内でも治安対応の発想で動く。千鳥かなめを要人とみなし、白井や稲葉を脅迫犯候補として扱う。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会長補佐官。安全保障問題担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅で白井を拘束し、コンバットナイフで威嚇する。落書き内容を読み、千鳥を疑う。林水の委任状を根拠に、白井を男子トイレへ連行して尋問する。張り紙の下の新しい落書きを発見し、稲葉が授業中に男子トイレへ入った矛盾を突く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 委任状により「この問題に限り」強い権限を持つ立場となる。校内で拳銃・手錠を用い、状況を暴力的に進める。

林水敦信

陣代高校の生徒会長である。状況を整理し、噂が生む影響を冷静に見積もる。相良宗介に調査権限を付与し、事件処理の枠組みを作る立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 トイレの落書きを部下に撮影させ、写真を千鳥へ提示する。落書きは張り紙で隠したと説明する。千鳥の醜聞調査について、相良に「あらゆる権限」を与える委任状を出す。常盤恭子に金銭を渡し、放課後のケアを指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 校内で影響力を持ち、教師や生徒から一定の敬意を受ける。権限付与により、相良の独走を制度面で可能にする。

白井

千鳥かなめに交際を迫る男子生徒である。強引な接触が相良宗介の警戒を招く。稲葉瑞樹の恋人であり、騒動の中心に巻き込まれる。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。二組。
・物語内での具体的な行動や成果
 泉川駅で千鳥を呼び止め、手首を掴む。相良に拘束され、男子トイレで尋問を受ける。稲葉の自白により、落書きの犯人ではないと判明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 事件の容疑者として扱われるが、最終的に無関係と確認される。相良から「感謝状が送られる」と告げられる。

常盤恭子

千鳥かなめの同級生である。周囲を見ながら現実的に動き、千鳥に付き添う役割を担う。相良宗介の言動にあきれつつも、情報を伝える立場になる。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。千鳥と同じクラスの生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 昼休みに千鳥の相談相手となり、状況を聞く。林水から金銭を渡され、放課後の同行を指示される。翌日、女子トイレの落書きの追記を千鳥に見せ、変化を共有する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 立場の変化はないが、騒動の経過を千鳥に伝える媒介となる。

風間信二

千鳥かなめの同級生である。落書きの噂を信じ、金銭を持ち出して接触する。千鳥により即座に制止される。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校。千鳥と同じクラスの生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 千鳥に茶封筒を渡し、金銭と引き換えの撮影を持ちかける。千鳥に鞄で殴られ、要求を拒絶される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 立場の変化はないが、噂の実害が現実化した例として描かれる。

稲葉瑞樹

白井の恋人である女子生徒である。白井を守る目的で介入し、千鳥を攻撃する。落書きを書いた当事者として追及される。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。名字は稲葉。
・物語内での具体的な行動や成果
 男子トイレに飛び込み、白井に抱きついて介入する。千鳥を「汚い女」などと罵り、噂を半分は真実だと決めつける。相良により、授業中に男子トイレで落書きを見たという矛盾を示される。白井への嫉妬を理由に、落書きを書いたと叫ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 真犯人として露見するが、千鳥は報復や処分を求めず「放置」を選ぶ。騒動後に各トイレへ擁護の追記が出る。

恋人はスペシャリスト

稲葉瑞樹の失恋と“後始末”
稲葉瑞樹は白井悟に振られた直後、涙を流しながら一人で部屋に倒れ込み、衝動のまま大量の出前を注文した。さらに隣家から死臭がすると通報まで行い、別れの悔しさを「白井」へ叩きつける形で気持ちに区切りを付けた。

生徒会室での“恋愛学習”と代役依頼
陰気な雨の放課後、生徒会室で千鳥かなめは相良宗介の奇妙な言動に付き合っていた。宗介は恋愛シミュレーションゲームを「治安対策の学習」として真顔で進めており、恋愛を合理的に理解しようとしていた。そこへ瑞樹が現れ、翌日の友人への紹介に備えて「白井の代役としてデートしてほしい」と宗介へ依頼し、宗介は実戦訓練の一環として即答で引き受けた。

“白井らしさ”の詰め込みとかなめの複雑さ
瑞樹は宗介に服のブランドや特技などを叩き込み、かなめの家で深夜まで“恋人ごっこ”の特訓を続けた。宗介の受け答えは要領を得ないはずだったが、「好きだ、瑞樹」と繰り返す声だけは妙に穏やかで、かなめは理由の分からない疎外感と落ち着かなさを覚えた。

吉祥寺デートと友人たちの違和感
翌日、瑞樹の中学時代の友人三人と合流し、六人で食事やカラオケ、映画、ゲームセンターを回った。宗介は席の安全性を語り、ロシア語で民謡を歌い、戦争映画を戦術面から酷評し、心理ゲームでは「爆破する」と答えるなど、どう取り繕っても“普通の彼氏”からは逸脱していた。友人たちは笑いながらも徐々に不信と困惑を強め、瑞樹も焦りを募らせていった。

本物の白井悟の登場と宗介の強引な処理
口論が激化したところへ本物の白井悟が現れ、瑞樹の仕返しを責め立てた。状況を読んだ宗介は白井を「精神異常者」と断じて嘘で押し切ろうとし、かなめも咄嗟に白井を叩いて場を制した。さらに宗介は実弾で威嚇射撃まで行い、友人たちの不安は決定的になった。

“証明”としてのキスと瑞樹の崩壊
友人たちは疑いを晴らす条件として「キス」を要求し、宗介は迷いなく瑞樹を抱き寄せて唇を奪った。瑞樹は衝撃で硬直したのちに激怒し、宗介を殴って池へ突き落とし、そのまま泣きながら逃走した。友人たちは瑞樹の内面を理解して追いかけ、かなめだけが取り残される形になった。

人工呼吸とキスの混同、かなめの揺れ
池から上がった宗介は自分の非を理解できず、かなめの追及に対して「これまで様々な男たちとキスをしてきた」と語り、人工呼吸とキスの区別が曖昧であることを露呈した。かなめは怒りながらも宗介の頬を拭き、近すぎる距離に一瞬心が揺れたが、誤魔化すように歩き出した。宗介は心配を口にし、二人は噛み合わない言い合いを続けながら暗い公園を後にした。

千鳥かなめ

陣代高校の生徒である。相良宗介の危険な発想を止める立場である。常磐恭子とは友人関係である。日向柾民には招かれた側である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 浜辺で西瓜の買い出しを担った。手荷物の放置を問題視した。手榴弾の罠に怒った。散弾銃の発砲で西瓜の破片を浴びた。相良宗介を金属バットで殴打した。防波堤で男の誘いを拒否した。鷲尾に屋敷へ案内されて入った。相良宗介を「凶悪な変態」と言って追い払いを依頼した。日向柾民の前で嘘を認めて謝罪した。相良宗介を拳で殴打した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷側の判断を動かす発言をした。相良宗介の行動目的になった。

相良宗介

陣代高校の転校生である。軍事的な判断を日常へ持ち込む人物である。千鳥かなめを優先して行動する立場である。常磐恭子に状況を指摘された。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 手荷物の山に手榴弾の罠を仕掛けた。安全ピンを目印として置いた。西瓜割りで散弾銃を使って西瓜を撃った。千鳥かなめを探すため屋敷へ向かった。塀と監視設備を確認した。戦闘装備を整えて救出を宣言した。崖側から侵入した。豹堂のボウガン攻撃を訓練弾で無力化した。鮫島を訓練弾で無力化した。鷲尾と交戦した。実弾の誤使用で爆発を起こした。日向柾民の刃物を一閃で弾いた。日向柾民を背負い投げした。千鳥かなめを抱えて断崖から離脱した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。武器の使用で周囲の行動を左右した。救出の主導権を握った。

常磐恭子

陣代高校の生徒である。場を動かす役回りである。千鳥かなめを「カナちゃん」と呼ぶ関係である。相良宗介の言動を指摘する立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 浜辺で千鳥かなめに声をかけた。西瓜割りを提案した。相良宗介を目隠しして回転させた。千鳥かなめの不在を気にした。相良宗介へ「怒っている」と説明した。相良宗介の想像を問いただした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。相良宗介の行動選択に影響した。集団の空気を作った。

日向柾民

屋敷の主である。千鳥かなめに会いたいと望む立場である。鷲尾を部下として使う。千鳥かなめへ好意を示す。
・所属組織、地位や役職
 別荘の主である。
・物語内での具体的な行動や成果
 望遠鏡で浜辺を見た。千鳥かなめを屋敷へ招いた。外出を止められていると述べた。自分の名を名乗った。病気を自律神経失調症と説明した。従姉妹の話をした。相良宗介を追い払う指示を出した。侵入者の報告を受けた。鮫島と豹堂を呼び出した。侵入者の排除を命じた。折りたたみ式の刃物を出した。相良宗介に制圧された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷側の警備運用を指示した。千鳥かなめの発言を根拠に判断した。

鷲尾

日向柾民の召使いである。案内役として動く立場である。屋敷の警備にも関与する。柾民の命令に従う。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。運転手である。
・物語内での具体的な行動や成果
 バルコニーで柾民に応答した。屋敷の奥へ下がった。千鳥かなめを屋敷へ案内した。インタフォンで応答した。崖側の侵入者反応を報告した。終盤に三階のリビングへ入った。柾民の無事を確認した。海上の黒い風船を目視した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。屋敷の判断伝達を担った。警備情報の連絡役になった。

鮫島

日向柾民の召使いである。警護役を兼ねる立場である。刃物の使い手として紹介された。相良宗介の侵入を止める側である。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。コックである。
・物語内での具体的な行動や成果
 柾民の呼び出しで現れた。侵入者の排除命令を受けた。松林で相良宗介の前に立った。ナイフを二本構えた。相良宗介の訓練弾を受けて倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。侵入阻止は失敗した。相良宗介の進行を止められなかった。

豹堂

日向柾民の召使いである。警護役を兼ねる立場である。ボウガンの使用者として紹介された。崖側の迎撃を担う。
・所属組織、地位や役職
 日向家の召使いである。庭師である。
・物語内での具体的な行動や成果
 柾民の呼び出しで現れた。侵入者の排除命令を受けた。崖の上でボウガンを構えた。矢を放った。相良宗介の訓練弾で転落した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位の変化は記されていない。迎撃は失敗した。警備網の一部が突破された。

砂浜で声をかけた男

防波堤で千鳥かなめに声をかけた人物である。遊びの誘いを口にした。千鳥かなめの拒絶で退いた。
・所属組織、地位や役職
 不明である。
・物語内での具体的な行動や成果
 千鳥かなめへ誘いをかけた。千鳥かなめの命令で立ち去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 記載はない。物語への影響は小さい。

芸術のハンバーガーヒル

写生会の開始と「テーマ」崩壊
陣代高校の写生会で、担任の神楽坂恵里が二年四組を含む大量の生徒を集め、節度ある行動を呼びかけた。特に問題児の相良宗介には念押ししたが、宗介は軍人めいた返答で「武力行使は最低限に」とズレた宣誓をした。続いて美術科の水星教諭が「自然と人間」をテーマに掲げるが、例のごとく誰にも理解できない長講釈を延々と続け、結局“具体的に何を描くか”は一切明確にならないまま解散となった。

モデル選出と宗介の致命的な勘違い
二年四組は「風景とモデルを一緒に描く」方針で進め、嫌がる者ばかりの中から宗介がモデル役に決まった。ところが宗介は、モデルなのに絵を描けないことに納得がいかず、水星に相談した結果「自然と一体化し、画家の目を欺く実存になれ」という詩的暴走指示を真に受けた。宗介は“目に見えない存在になる”ことを任務だと解釈し、クラスがポーズを決める頃には姿を消していた。

捜索作戦とトラップ地獄の開幕
宗介不在で困ったかなめたちは連絡を取るが、宗介は電話口で「自分はここにいる、見えないだけだ」と主張し戻らない。さらに水星が「モデル変更は認めない、描けなければ全員Cマイナー」と脅迫し、四組は宗介の捜索に踏み切った。宗介は逆に“任務妨害者に教訓を与える”と判断し、落とし穴や振り子丸太など本気の罠を山道に仕掛け、探索班を次々行動不能にしていった。

粘着地雷と「死にかけ告白」コント
体育会系の小野寺(オノD)班が宗介に迫るが、山腹で爆音が響き、粘着地雷によってウレタン樹脂まみれで木に接着される。小野寺は電話越しに瀕死を演出してかなめに告白し、かなめは一瞬うろたえるが「却下」と即答して切り捨てた。実際は非致死性の粘着兵器で、宗介は「もっと持ってくればよかった」と反省するなど、倫理観が戦場側に寄り過ぎていた。

かなめの突撃号令とハンバーガーヒル
時間切れと単位危機に追い詰められたかなめは、残存兵力をまとめて“総員突撃”を敢行した。仲間が次々罠にかかって脱落していく中、かなめだけは執念で突破し、最終トラップの吊り天井(ウレタン塗布)すら耐えて山頂付近で宗介を追い詰めた。ボロボロの制服姿で現れた四組の生徒たちの殺気に、宗介は「俺は殺される」と直感し、脱兎のごとく逃走した。

水星宅での大惨事と宗介の確保
一方その頃、教師陣は水星の自宅の縁側で優雅にお茶をしていた。そこへ宗介が垣根を飛び越えて逃げ込んできて、かなめたちも猛牛のように突入し、襖や畳や家具を破壊して家中を蹂躙した。宗介は追い詰められて水星の母親を盾にナイフを突きつけるが、かなめが湯呑みを投げつけて阻止し、宗介は生徒たちにねじ伏せられ連行された。かなめは教師陣に「夕方までに描き終える」と妙に攻撃的な誓約を残して撤収した。

展示作品のオチと芸術的報復
一週間後、代表作品展示で校長は各クラスの水彩画を称賛するが、二年四組の三点だけは異様だった。明るい自然風景の中で、モデルの宗介が荒縄で縛られ逆さ吊りにされて描かれていたためである。水星は「前衛的」「虚無感」などと適当な解説で取り繕い、作品タイトルは『狩りの成果』『因果応報』『馬鹿の末路』となっていた。要するに四組は、単位のために描き切りつつ、モデルへ最大級の社会的報復も同時に完了した。

稲葉瑞樹

強気で押しが強い生徒であり、体面を優先して行動を組み立てる性格である。千鳥かなめと相良宗介とは過去の事件で面識があり、白井悟とは交際関係にあった。

・所属組織、地位や役職
 二組の女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 白井悟と別れた直後に、友人へ彼氏を紹介する約束を守るため、相良宗介を替え玉としてデートに同行させた。
 相良宗介に服装や受け答えを暗記させ、当日の場を取り繕おうとした。
 終盤、相良宗介の強引なキスに反発し、平手と掌底で制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 友人関係の維持が目的であり、立場の変化は描写されない。

千鳥かなめ

状況を観察して場を整える立場に回りやすい生徒である。相良宗介とは生徒会室で日常的に会話し、稲葉瑞樹とは一連の出来事で行動を共にした。

・所属組織、地位や役職
 生徒会室に出入りする生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 稲葉瑞樹の依頼に流される相良宗介を見守り、食事の場を用意した。
 白井悟が現れた場面で、衝突の拡大を止めるために打撃で制止した。
 三人娘に対して、相良宗介が白井姓を名乗る理由を即興で説明した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 同席者の間を取り持つ役割が目立つが、役職の更新は示されない。

相良宗介

規律と実用を優先する思考を持ち、一般的な高校生の感覚を理解しにくい人物である。千鳥かなめを会長格として扱い、稲葉瑞樹の依頼を「学習機会」として受け入れた。

・所属組織、地位や役職
 生徒会室で「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」に就任した生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 恋愛シミュレーションを使い、恋愛行動を治安対策の学習対象として扱った。
 稲葉瑞樹の替え玉として白井悟を名乗り、友人三人との外出に同行した。
 場面終盤、相手の足下へ実弾を撃ち込み、集団を退避させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 就任直後であり、役職名そのものが特筆事項である。
 父の姓が「相良」であり、母方の姓として「白井」を名乗った経緯が語られる。

白井悟

容姿と人気を持つ男子生徒として語られ、稲葉瑞樹の元交際相手である。終盤に本人が現れ、稲葉瑞樹へ直接抗議した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹と同じクラスの生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 別れ話の中で、価値観の不一致を理由に関係を終わらせた。
 稲葉瑞樹宅への大量注文と通報について、当人へ問い詰めた。
 相良宗介の発砲を受け、連れの男女とともに退避した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「本物の白井悟」であることが、替え玉騒動の決定要因となった。

赤城真奈美

稲葉瑞樹の友人の一人であり、状況の違和感を言語化して確認に動く人物である。終盤、瑞樹を追う判断を最初に示した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介の言動に不自然さを感じ、瑞樹へ直接確認した。
 瑞樹が走り去った後、追いかける行動を選んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 集団の空気を変える発言が多いが、立場の変化はない。

黄楊まどか

稲葉瑞樹の友人の一人であり、軽い調子の会話を担う人物である。相良宗介の危険な言動に対して、怖さを言葉にした。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介へ景品獲得を頼み、失敗後の行動を止める側に回った。
 宗介の発言内容を不安材料として指摘し、瑞樹へ共有した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 役割は友人としての同席に限られ、変化は示されない。

碧川祥子

稲葉瑞樹の友人の一人であり、落ち着いた観察を行う人物である。心理ゲームの意図を説明し、宗介の回答を引き出した。

・所属組織、地位や役職
 稲葉瑞樹の旧友である女子生徒である。

・物語内での具体的な行動や成果
 三択心理ゲームの設問意図を千鳥かなめへ説明した。
 宗介へ回答を促し、「爆破する」という返答を引き出した。
 終盤、真奈美へ促しを入れて瑞樹追走へ移った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 場の理解を助ける説明役として機能するが、立場の更新はない。

クルツ

相良宗介が衣服を入手する手段として名前が出る人物である。宗介の装いを成立させる裏方として扱われる。

・所属組織、地位や役職
 所属や肩書は本文内で明示されない。

・物語内での具体的な行動や成果
 相良宗介の依頼により、物々交換で衣類の調達に関与した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 登場は間接的であり、詳細情報は示されない。

大隅先生

相良宗介が「中学時代の担任」として挙げた教師である。過去の襲撃被害の例として引用される。

・所属組織、地位や役職
 陣代中学の教師である。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去に食事中の襲撃を受けた人物として語られた。
 右肩に九ミリ弾の傷跡があると説明された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現時点の動向は不明であり、過去情報のみが示される。

シンデレラ・パニック!

継母一家による支配とシンデレラへの虐待
裕福な屋敷で育った美しい娘は、母の死と父の再婚をきっかけに転落した。継母ミズキと三人娘マナミ・マドカ・ショーコは嫉妬から執拗ないやがらせと暴力を繰り返し、父の急死後は屋根裏に押し込めて労働力として搾取した。舞踏会の日も、継母は侮辱的な命令で支配を誇示し、参加を願う彼女を一斉に拒絶した。

舞踏会への憧れと、軍人魔法使いの乱入
屋根裏で孤独と惨めさに沈む娘の前に、魔法使いを名乗るサガラ・ソースケ軍曹が現れた。神秘性より火薬臭のする男であったが、舞踏会へ行かせると断言し、カボチャとネズミとトカゲを用意させたうえで、対戦車ロケットを「魔法」と称してぶっ放した。爆炎の後、娘は華麗なドレス姿へ、カボチャは馬車へ、ネズミは馬へ、トカゲは御者へ変わり、偽造招待状まで渡されて城へ向かった。

城の舞踏会と、王子の一目惚れ
城では王ハヤシミズが理屈と思想審査を並べ、舞踏会の目的を台無しにしていたが、娘の登場で空気が一変した。キョーコ王子は彼女の美しさに心を奪われ、名を取り違えながらも踊り続けた。音楽はワルツからあらゆるジャンルへ暴走し、二人は夢中で踊り抜いたが、鐘が鳴り始めたことで娘は魔法の制限を思い出し、苦しい言い訳を残して脱出を図った。

脱出戦と魔法解除、残されたガラスの靴
逃走を阻む衛兵に追い詰められた娘を、軍曹がショットガンで制圧して救出した。門の閉鎖には手榴弾で穴を開け、馬車は煙と破片を突っ切って脱出したが、直後に魔法が解けて娘は投げ出された。軍曹は身を挺して受け止め、川へ落下して追っ手をやり過ごした。娘は元のぼろ服に戻り、夢の終わりと現実の辛さに打ちのめされた。

敗北主義への説教と、娘の反撃計画
娘が「夢など見ない方がいい」とこぼすと、軍曹は戦場の理屈で反論し、他人に頼る生き方を戒めた。去り際に「頭を使え。工夫しろ」と言い残した言葉は娘に刺さり、彼女は屋敷の所有と理不尽を再確認して怒りを燃やした。やがて娘は家財一切を売り払って資金を確保し、継母一家の生活基盤を根こそぎ奪って姿を消した。

王子の捜索失敗と、二人の旅立ち
キョーコ王子はガラスの靴を手がかりに大規模な捜索を命じたが、該当者は見つからなかった。継母一家は拘留の末に戻るも屋敷は空っぽで、泣き叫びながら靴合わせに敗れた。一方、軍曹が西へ歩く途中、旅装束と馬車を整えた娘が現れ、同じく西へ行くと告げて同乗を促した。娘は「灰かぶり」の名を捨てる決意を滲ませ、二人は夕日に向かって進んだ。

後日談としての王子の成長
花嫁探しが実らず王子は落胆したが、仕事と学びに追われるうちに立ち直った。手に入らないものの存在を学んだ経験は王子を鍛え、のちに名君として名を残す結末へつながった。

シンデレラ

屋敷でこき使われる立場に置かれた娘である。反発心は残しつつも、状況に合わせて耐える面がある。サガラ・ソースケ軍曹の介入で舞踏会に参加し、その後は自分の判断で行動を変えた人物である。
・所属組織、地位や役職
 特定の所属は示されない。屋敷では下働きの立場である。
・物語内での具体的な行動や成果
 継母の嫌がらせを受けつつ家事を続けた。舞踏会に出てキョーコ王子と踊った。魔法解除の直前に逃走し、最終的に自力で旅支度を整えて西へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「灰かぶり」と呼ばれる状態から離れようとした。屋敷の財産を売り払い、継母側を困窮させた。以後は旅人として移動する立場になった。

サガラ・ソースケ軍曹

無愛想で命令口調の若い魔法使いである。〈ミスリル〉から派遣されたと名乗り、任務として支援を行う立場である。シンデレラに現実的な助言を与えた人物である。
・所属組織、地位や役職
 極秘の魔法使い協会〈ミスリル〉の派遣員である。階級は軍曹である。
・物語内での具体的な行動や成果
 カボチャなどを用意させ、ロケット弾の「魔法」で変身を成立させた。偽造の招待状を渡し、舞踏会の現場でも護衛として介入した。脱出時に衛兵を制圧し、門を爆破して突破させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 任務として「アフターケア」まで行った。シンデレラに「頭を使え」と方針を示した。最後は同乗者として同行を受け入れた。

ミズキ

シンデレラの継母であり、屋敷の支配者として振る舞う人物である。見栄と欲を優先し、娘たちと一緒に支配を固めた立場である。舞踏会後は生活基盤を失う側に回った人物である。
・所属組織、地位や役職
 屋敷の女主人を自称する。作中では未亡人と呼ばれる。
・物語内での具体的な行動や成果
 シンデレラに暴力を振るい、家事を強要した。娘たちを舞踏会へ連れて行き、権力に近づこうとした。舞踏会の騒動で拘留され、帰宅後に屋敷の家財を失った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内での支配力を持っていた。舞踏会後は財産を失い、疲弊した様子になった。シンデレラへの支配は維持できなくなった。

マナミ

ミズキの娘の一人である。母に同調し、シンデレラへの加害に加わる立場である。舞踏会の情報を語る役割も担った人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 母の呼びかけに応じてシンデレラを叩いた。舞踏会が開かれる事実を説明した。舞踏会では城の兵士に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内では強者側として振る舞った。舞踏会後は拘留の影響で落ち込んだ状態になった。家財喪失で生活が傾いた。

マドカ

ミズキの娘の一人である。母の方針に従い、シンデレラを見下す立場である。舞踏会の目的を言葉にする役を持つ人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 母の命令でシンデレラへの暴力に加わった。舞踏会が「花嫁選び」である点を説明した。舞踏会では騒動の末に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内の優位を前提に行動した。舞踏会後は拘留と損失で勢いを失った。家財喪失で立場が弱まった。

ショーコ

ミズキの娘の一人である。母と姉妹に合わせて動く立場である。舞踏会の招待範囲を語る役割も担った人物である。
・所属組織、地位や役職
 ミズキの娘である。屋敷内では母側の一員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 シンデレラへの暴力に参加した。舞踏会に国中の若い娘が招待される点を話した。舞踏会では城の兵士に連行された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 屋敷内での優位に依存していた。舞踏会後は拘留と損失で弱体化した。以後は沈んだ様子で描写された。

王宮関係者

キョーコ王子

花嫁を選ぶ立場にある王子である。素直に相手へ惹かれやすい面がある。シンデレラと踊り、強く執着する人物である。
・所属組織、地位や役職
 王宮の王子である。舞踏会の主役である。
・物語内での具体的な行動や成果
 舞踏会でシンデレラに強く惹かれた。彼女を追って衛兵に停止を命じた。靴の複製品を大量に作らせ、探索隊を編成した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 探索は成果を得られなかった。父王から仕事と勉強を課され、日常へ戻った。後世に名君として名を残したと語られた。

ハヤシミズ王

理屈を重んじる王である。国政への影響を警戒し、花嫁選定にも条件を付ける立場である。王子と情報室に指示を出す統治者である。
・所属組織、地位や役職
 一国の王である。王宮の最高権力者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 舞踏会の条件として思想傾向などを列挙した。慣習を理由に舞踏会を実施した。側近にシンデレラの身元調査と尾行を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 舞踏会の運用方針を決める影響力を持つ。王子の探索に情報を与えない姿勢を示した。統治者としての警戒心が強調された。

王立情報室長

王の側近として動く人物である。舞踏会の場で調査と尾行を命じられる立場である。具体名は示されない。
・所属組織、地位や役職
 王立情報室の室長である。王の側近である。
・物語内での具体的な行動や成果
 王から「経歴と背後関係の調査」を指示された。王から「尾行」を指示された。実際の調査結果は本文にない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王命で動く立場が明示された。情報収集が職務である点が示された。成果の有無は記述されない。

探索の使者

カザマ卿

王子の命令で動く家来の一人である。靴を持って民家を回る実務担当の立場である。ミズキの家を訪ねた人物である。
・所属組織、地位や役職
 王子の家来である。貴族として「卿」の称号を持つ。
・物語内での具体的な行動や成果
 靴を持って屋敷の扉を叩いた。屋敷の荒廃を見て事情を聞いた。ミズキたちに靴を試させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 探索隊の末端として行動した。屋敷側の没落を目撃した。探索自体は不成立で終わった。

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その他フィクション

e9ca32232aa7c4eb96b8bd1ff309e79e 小説「フルメタル・パニック! Family3」感想・ネタバレ
フィクション(novel)あいうえお順

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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