小説「フルメタル・パニック! 1 戦うボーイ・ミーツ・ガール」感想・ネタバレ

小説「フルメタル・パニック! 1 戦うボーイ・ミーツ・ガール」感想・ネタバレ

フルメタル・パニック! 1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

フルメタル・パニック! 2巻

物語の概要

本作はSFミリタリーアクション×学園ライトノベルである。世界最強と言われる特殊軍事組織《ミスリル》に所属する兵士 相良宗介 が、幼馴染の少女 千鳥かなめ を護衛する任務を帯びて日本の高校に“転校生”として潜入する。軍事訓練一辺倒の宗介と、普通の高校生活を送るかなめとの日常は、些細な勘違いやミスから大惨事へ転じることが多く、銃撃戦、爆破、機動戦闘が学園生活と混ざり合いながら進行していく。護衛対象であるかなめには《ウィスパード》と呼ばれる特殊能力が宿されており、それを狙う勢力との衝突も物語の重要な軸となっていく。主人公は理屈で世界を守ろうとし、美少女を守るために日々“非常識な戦闘”を繰り広げる。

主要キャラクター

  • 相良宗介:本作の主人公。世界最強の武装組織《ミスリル》に所属するエリート戦士であり、日本の高校に転校して護衛任務を遂行する。戦争訓練一色の価値観で学園生活に挑み、常識外れの行動を繰り返すが、護衛対象への忠誠は絶対的である。
  • 千鳥かなめ:物語のヒロインであり、宗介の護衛対象となる普通の女子高生。《ウィスパード》と呼ばれる特殊能力を内包しており、それを狙う勢力の標的となる。明るく強気な性格で、宗介の戦闘行動にツッコミを入れる存在でもある。
  • テレサ・“テッサ”・テスタロッサ:宗介が所属する《ミスリル》の潜水艦指揮官。冷静な戦術眼と部下への深い思いやりを持ち、宗介を支える存在としてシリーズを通じて登場する。

物語の特徴

本作の魅力は、SFミリタリーアクションと学園コメディの融合にある。相良宗介という「戦場で最強だが生活常識ゼロ」の兵士が、普通の高校生活に無理矢理入り込み、銃火器や軍事用語を日常へ持ち込むギャップが笑いと緊張を同時に生む。

また、“護衛対象の少女に隠された秘密”というミステリアスなSF要素も物語の核であり、単なる戦闘描写に留まらず、国家・組織・個人の価値観まで描く重厚さを備えている。これらが“軍事もの”“ライトノベル”“ラブコメ”という異なるジャンルを同時に満たす稀有な作品となっており、読者の支持を長年集めている。

書籍情報

フルメタル・パニック! 1 戦うボーイ・ミーツ・ガール
Full Metal Panic
著者:賀東 招二 氏
イラスト:四季童子  氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:ファンタジア文庫
発売日:1998年9月18日
ISBN:9784040711164

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あらすじ・内容

誰もが夢に描いた最上級のエンターテイメントがここにある!
楽しい学園生活、美少女を守る最強の男の子、巨大ロボット、次々襲い掛かってくる危機!年代を問わず誰もがワクワクする物語が読みたいならフルメタにお任せ!第1巻を読み終えた時、きっとあなたはフルメタファン!

フルメタル・パニック!戦うボーイ・ミーツ・ガール

感想

『フルメタル・パニック! 戦うボーイ・ミーツ・ガール』は、高い完成度で成立させている作品であり、その時点で一つの才能を感じさせる一冊であった。
読後にまず浮かぶ感想は、まさに「ごった煮」というものであった。
しかし不思議なことに、その雑多さは破綻ではなく、むしろ物語を前へ押し出す推進力として機能している。

物語は、千鳥かなめを護衛するために相良宗介が日本の学校へ潜入する場面から始まるが、この導入からしてすでにズレが楽しい。荷物検査で銃を発見されるという致命的な失敗に始まり、女子ソフトボール部に入部しようとするなど、宗介の「やらかし」は容赦なく連続する。軍人としては極めて有能である一方、日常生活では壊滅的という落差が強烈であり、学園パートのコメディとしての切れ味は非常に高い。

一方で、本作の怖さは、笑っている隙を容赦なく潰しに来る点にある。かなめを狙う敵に対し、巡航ミサイルで施設ごと叩き潰すという解決方法は、学園ラブコメの文脈では明らかに一線を越えている。それでも「ミスリルなら許される」と思わせてしまう説得力があり、読者は気付けば納得させられている。

さらに、修学旅行中の飛行機ハイジャックという大事件が発生し、舞台は一気に異国へと移る。北朝鮮へ連れ去られたかなめと宗介が逃亡生活を送る展開は、学園もの、軍事アクション、政治サスペンスが一冊の中で自然につながっていく異様さを象徴している。この題材を正面から物語に組み込む大胆さは、確かに賀東招二ならではのものだと感じられた。

かなめと宗介の関係性も印象深い。かなめは単に守られる存在ではなく、宗介の異常さを言葉で引き戻す役割を担っている。一方の宗介は、戦場では無敵であるにもかかわらず、人間関係においては未熟そのものである。その不器用さが、逃亡という極限状況の中で徐々に浮かび上がり、「戦うボーイ・ミーツ・ガール」という題名が単なる飾りではないことを強く実感させる。

振り返ると、本作は学園コメディ、ロボット兵器、国際紛争、ラブコメ、逃亡劇と、要素だけを並べれば明らかに過剰である。それでも破綻せず、むしろ勢いと楽しさが勝っている点に、この作品が長く愛され続けてきた理由があるように思われる。

総じて本作は、「こんな話は普通なら成立しないだろう」という無茶を、やり切る強度を持っていた。
ごった煮でありながら完成度は高く、読み終えたときには「確かにこれがフルメタである」と納得させられる。
第一巻にして、シリーズの魅力と方向性をこれ以上なく明確に示した、実に頼もしい幕開けであった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

フルメタル・パニック! 2巻

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登場キャラクター

〈ミスリル〉関係者

相良宗介

秘密組織の隊員であり、護衛を任務として学校に潜入する立場である。
常識のずれが騒動を生む一方、戦闘では合理で動く人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉所属。SRTの隊員である。

・物語内での具体的な行動や成果
 ソビエト領で救出作戦に参加し、対象を確保した。
 高校へ転入し、悟らせない監視を継続した。
 順安基地で単独救出を実行し、ASで突破と戦闘を行った。
 山中で信号を作り、無人機を起動して突破口を作った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 監視役から、作戦の成否を左右する現場の中心へ比重が移った。
 ラムダ・ドライバの運用に踏み込み、対抗手段の担い手になった。

クルツ・ウェーバー

狙撃と支援を担い、軽口で場を動かす立場である。
現場では馴れ合いの運用を選び、任務の形を変える人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉所属。SRTの一員である。

・物語内での具体的な行動や成果
 格納庫で装備の話を交えつつ、任務の経緯を整理した。
 M9で支援に入り、順安基地で救出の一端を担った。
 山中で重傷を負いながらも生存し、衛星の発想を補強した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 負傷により戦力としての自由度が落ち、作戦は賭けに寄った。

メリッサ・マオ

チームのまとめ役であり、現場判断と空気作りを両立する立場である。
任務への責任と個人への情を同時に抱える人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉所属。SRTの小隊長格である。

・物語内での具体的な行動や成果
 潜入準備で物品を集め、生活面の補助を行った。
 救出作戦でM9を運用し、人質誘導と爆弾処理に関与した。
 撤退判断に抗議し、捜索許可を求めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作戦規定と感情の衝突が表面化し、指揮系統の冷酷さが示された。

アンドレイ・カリーニン

作戦の責任者として情報を選別し、命令で動かす立場である。
必要な説明を切り捨て、成果優先で判断する人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉の指揮官。少佐である。

・物語内での具体的な行動や成果
 護衛任務を命じ、学校潜入の条件を確定させた。
 順安の救出作戦を決定し、時間制限の計画を示した。
 無人のARX-7を射出し、回収までの手順を指示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報秘匿を維持したまま、現場の生存を左右する決定を行った。
 「保険」という概念で、任務継続の構図を残した。

テレサ・テスタロッサ

艦の指揮官として作戦全体を動かし、損得で選択する立場である。
人質の安全と対象救出の優先順位に葛藤を持つ人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈トゥアハー・デ・ダナン〉の艦長である。

・物語内での具体的な行動や成果
 研究施設への攻撃を許可し、巡航ミサイルを発射した。
 ハイジャック後は外交と救出の順序を口にし、自己嫌悪を抱えた。
 離脱判断で待機を切り、艦の生存を優先した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 艦長としての決定が、人質の運命と作戦の形を決めた。

リチャード・マデューカス

艦の運用面で規律を担い、会話を引き締める立場である。
指揮系統の安定を優先する人物である。

・所属組織、地位や役職
 〈トゥアハー・デ・ダナン〉の副長である。

・物語内での具体的な行動や成果
 艦橋で艦長の雑談を止め、会議を実務に戻した。
 潜航と離脱の手順を確認し、艦の安全を支えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大局では補佐役として機能し、判断の重さを艦長へ集中させた。

陣代高校関係者

千鳥かなめ

生徒会の一員であり、学校内では指示と交渉で物事を動かす立場である。
転校してきた同級生の行動に反発しつつも、放置できず関係がほどけていく人物である。

・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。生徒会に関わる立場である。

・物語内での具体的な行動や成果
 職員室から用紙を持ち出す陽動の役を担った。
 拉致後の検査と脱出で、同行者に技術の要点を伝えた。
 山中で撤退案を拒み、三人で生きる方針を押し通した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 周囲の保護対象から、脱出と対抗の要となる存在へ比重が移った。
 本人の内側に説明不能な知識が現れ、追跡理由の中心になった。

神楽坂恵里

学校では教師として規律を優先し、問題を現場で処理する立場である。
騒動の矢面に立つ一方、判断を生徒側へ投げる場面もある人物である。

・所属組織、地位や役職
 陣代高校の教員。担任として教室運営に関わる。

・物語内での具体的な行動や成果
 持ち物検査で武器類を押収し、職員室対応へ回した。
 部室突入の事件では拳銃を没収し、拘束状態を確認した。
 機内では連行への抗議を行い、処刑寸前の状況に置かれた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学校内の管理者としての影響が、危機下では限定的になった。

常磐恭子

同級生として日常の会話を担い、感情の変化を見抜く立場である。
同行者の話を受け止めつつ、からかいで距離を調整する人物である。

・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 登校時の愚痴を受け、対象への反応を観察した。
 機内や病室の場面で、周囲の空気を日常側へ寄せた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 危機の当事者ではないが、学校側の「普段」を象徴する役になった。

風間信二

同級生として軽率な行動で騒動を呼び、軍事知識を抱える人物である。
行動の動機が脅しである点が、事態の滑稽さと危うさを同時に示す。

・所属組織、地位や役職
 陣代高校の生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 侵入を試みて制圧され、下着を盗んだ事実が露見した。
 撮影した軍用機の話で、同行者と議論に没頭した。
 空港では落ち込む転校生に声をかけた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 偶発的に軍事情報の端を握り、監視側の緊張を増やした。

敵対勢力と周辺人物

ガウルン

テロリストとして誘拐を実行し、残虐な手段で主導権を取る立場である。
過去の因縁を盾に、対抗者を挑発し続ける人物である。

・所属組織、地位や役職
 特定国家に属さない武装勢力側の実行役である。

・物語内での具体的な行動や成果
 KGB将校を射殺し、標的を指名した。
 航空機を乗っ取り、北朝鮮基地への着陸を強制した。
 銀色のASで追撃し、ラムダ・ドライバを用いて戦闘を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 単なる実行犯から、作戦全体の最大要因として扱われる存在になった。

コー

共犯者として現場に入り、計画逸脱を咎める立場である。
指揮役の暴走を止めきれない人物である。

・所属組織、地位や役職
 ハイジャック側の一員である。

・物語内での具体的な行動や成果
 操縦室に現れ、無差別殺害を問題視した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主導権は握れず、現場の流れを変えられなかった。

KGB大佐

組織側の管理者として研究と誘拐の背景に関わる立場である。
損失の責任を負い、上層の処分へ追い込まれる人物である。

・所属組織、地位や役職
 KGB支局の大佐である。

・物語内での具体的な行動や成果
 研究所壊滅後に作戦中止と支払い拒否を通告した。
 直後に武装兵に連行され、失脚した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 研究の消失で立場を失い、権力の外へ落ちた。

白衣の女

検査を担当し、対象を装置に固定して判定を進める立場である。
目的のためにスタンガンや薬物を用いる人物である。

・所属組織、地位や役職
 基地内の検査担当者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 検査内容を説明し、拒否に対して気絶させた。
 救出時の銃撃で流れ弾を受け、倒れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 検査の手順は示したが、結果は現場の戦闘で断ち切られた。

展開まとめ

プロローグ

生徒会によるコピー用紙奪取作戦
放課後の職員室前で、千鳥かなめは相良宗介に対し、生徒会のためにA4コピー用紙二〇〇〇枚を持ち出す作戦を指示した。写生会用パンフレットの大量ミスプリントは教員側の過失であり、生徒会が補填を求めるのは正当であるという理屈に基づいていた。かなめが教師の注意を引き、その隙に宗介が用紙を運び出すという、単純な陽動作戦が確認された。

職員室での想定外の事態
かなめは社会科教師の狭山と会話し、宗介の行動を隠蔽しようとした。しかしその最中、宗介は発煙弾を使用し、職員室を白煙で満たした。煙は瞬く間に広がり、教師たちは混乱し、スプリンクラーまで作動する事態となった。宗介は目的を達したとして、かなめを連れて現場から脱出した。

作戦失敗と衝突
コピー用紙は水を被って使用不能に近い状態となり、かなめは宗介の極端な判断に激怒した。宗介は工夫の結果だと説明したが、一般常識を欠いた行動として非難され、殴られて床に倒れた。宗介は反論せず、傷ついた様子で沈黙した。

二人の関係性と伏線
宗介は幼少期から紛争地帯で育ち、日本での常識を持たない人物であり、その行動は常に周囲と軋轢を生んでいた。一方で、かなめは彼を完全には拒絶できず、面倒を見続ける理由を自覚していた。宗介が平時とは異なる真の姿を持ち、所属する組織や過去の事件が存在することを、かなめはすでに知っていた。現在の日常は、その出来事の延長線上にあり、すべての始まりは約一カ月前に遡るのであった。

1: 通学任務

逃亡の車内と少女の崩壊
四月一五日二一三七時、ソビエト連邦東部の森と泥濘の道を、軍服姿の中年男がジープで疾走していた。後部座席の少女は極度に衰弱し、爪を噛むことだけに縋るほど精神が壊れていた。男はあと数キロで山岳地帯に入り日本へ帰れると告げたが、少女は捕まって水槽に戻される未来しか思い描けず、殺してほしいという願いに支配されていた。

追撃とジープの破壊
背後からロケット弾と思しき攻撃が迫り、爆炎と衝撃が車体を襲った。フロントガラスは粉砕し、ジープは横滑りして跳ね上がり、炎の中で回転した。少女は車外へ投げ出され、泥雪の地面に転がって停止した。生き延びた少女は痛みも感じないまま残骸へ這い寄り、瀕死の男からCDケースを託され、南へ真っすぐ逃げろと命じられたのち、男の死を見届けた。

攻撃ヘリによる追い込み
少女が命令通りに歩き出すと、灰色の攻撃ヘリが現れ、止まらなければ射殺すると警告した。少女は止まらず、機関砲の威嚇射撃で泥を跳ね上げられ、倒され、着弾の衝撃に弄ばれた。嘲笑混じりの声が続いたが、状況は突然変わり、操縦側がASの存在に気付いたところで、ヘリは巨大な投げナイフに機首を貫かれて制御を失った。

アーム・スレイブの介入と救出
墜落してくるヘリに対し、全高およそ八メートルのアーム・スレイブが割り込み、機体を受け止めて少女から引き離した。アーム・スレイブは残骸を森へ投げ捨て、爆発を背に少女のもとへ戻り、怪我の有無を落ち着いた男声で確認した。近距離だったため対戦車ダガーを用いたこと、散弾砲は威力が過剰で使えなかったことが告げられた。

相良宗介の登場と〈ミスリル〉
胴体ハッチが開き、黒い操縦服姿の若い東洋人兵士が救急セットを持って降り、少女に日本語で痛い場所を問うた。兵士は自分が〈ミスリル〉の人間であり、どの国にも属さない秘密の軍事組織だと説明し、応急手当てを進めた。少女は男の死を伝え、悲しくないのかと尋ねたが、兵士はわからんと答えた。森から同型のアーム・スレイブ二機が現れて周囲を警戒し、少女は輸送ヘリの着陸地点へ運ばれ、海上の母艦へ戻る段取りだけが淡々と示された。

名乗りと意識喪失
意識がぼやける中、少女は兵士の名を乞い、兵士は相良宗介と名乗った。少女はそれを聞いた直後、意識を失った。

四月一五日 一六一一時 日本海・強襲揚陸潜水艦〈トゥアハー・デ・ダナン〉

格納庫での雑談とM9の異常
〈トゥアハー・デ・ダナン〉の格納庫にはアーム・スレイブや輸送ヘリなど主力兵器が並び、任務と報告を終えた相良宗介は整備中のM9〈ガーンズバック〉を眺めていた。そこへクルツ・ウェーバー軍曹が現れ、無遠慮な軽口を叩きながら、宗介が攻撃ヘリを受け止めた荒技と機体の精密検査に触れた。ASという兵器が短期間で実用化され、十数年で戦闘ヘリも近づけない脅威へ進化した背景が示され、彼らの装備が“最新鋭の危険な道具”であることが暗に強調された。

救出した少女の後始末と任務の代償
クルツは、宗介が救出した少女が助かりそうだが重い薬物中毒であり、KGBの研究施設で投与されていた可能性を伝えた。宗介は治癒の見通しを問うたが、回復には時間がかかるとされ、任務の詳細は現場要員に共有されないままだった。死んだ男が〈ミスリル〉情報部のスパイであり、本来は情報だけを持ち出す安全な計画だったが、少女を見捨てられず破綻した結果、CD一枚と少女だけが残った経緯が整理された。

マオの合流とチームの空気
メリッサ・マオ曹長が格納庫に現れ、宗介とクルツに絡みつつ呼び出しを告げた。マオはチームのリーダーで、クルツと罵り合いながらも場を回し、宗介の無表情な実直さを軽く受け止めた。マオは自分は休むと言い残し、宗介とクルツだけが少佐のもとへ向かった。

カリーニン少佐の命令と千鳥かなめ
二人が入室すると、作戦指揮官アンドレイ・カリーニン少佐は前置きなく任務資料を渡した。経歴書に写っていたのは東洋人の少女、千鳥かなめであり、写真は四年前、現在は一六歳とされた。備考欄には黒塗りの重要情報があり、かなめがKGBなど不特定多数の機関に拉致される可能性があると少佐は告げたが、その理由は説明不要として遮断した。

護衛任務の条件と“悟らせない監視”
少佐は宗介とクルツに、マオを含む三人で千鳥かなめの護衛に当たれと命じ、人手は割けないと断言した。さらに任務は秘密裏で、日本政府にも本人にも悟られない監視と護衛が要求された。クルツと宗介は無茶だと反応したが、少佐はやり方次第で可能だと押し切った。

クラスB装備と透明化の前提
装備はクラスBとされ、M9を一機持ち込むこと、武装は最低限、外部コンデンサーを二パック携行することが指示された。ECSによる不可視モードを用いれば都市部でも運用可能であり、可視光まで消せる高性能な電磁迷彩で透明化できるが、戦闘機動時は消費が激しく維持できないという制約も示された。

最年少隊員の投入と転入届の結論
少佐は、かなめが通うのは男女共学の公立高校であり、日中の大半を学校で過ごす点を利用すると述べた。そのうえで、少女と同年代で日本人の“最年少隊員”がいるとして、宗介を指名する流れを作った。宗介が恐る恐る必要書類を問うと、少佐は命令書に署名しながら、必要なのは転入届であると告げ、宗介が学校へ潜入する前提が確定した。

通学任務 事前準備から転入初日まで

証明写真撮影の失敗
第一状況説明室で、相良宗介はカメラのレンズをむっつりにらみ、クルツ・ウェーバーにもっと笑えと指示された。宗介は不器用に笑顔を作ったが、証明写真としては顔面神経痛めいた表情となり、シャッター後すぐに無表情へ戻った。

艦内での“高校生らしさ”収集と常識のズレ
食堂では、メリッサ・マオが艦内から集めた高校生が持っていそうな品々を広げた。宗介はコンドームを見て用途を問われると、ジャングルで水筒を失くした際に水を運べると説明し、マオは呆れた。宗介の生活常識が一般と噛み合っていないことが、準備段階から露呈した。

恋愛ドラマ教材の誤読
第一状況説明室でクルツはビデオを見せ、日本の高校生を覚えろと宗介に叩き込んだ。映像は三角関係の修羅場だったが、宗介は後から来た女子が逃げた理由を、秘密を知ったから口封じで消されると考えたためだと解釈し、クルツを落胆させた。

潜入出発と偽造書類の確認
三浦半島沖で〈デ・ダナン〉が浮上し飛行甲板を展開すると、輸送ヘリにM9と装備一式が積まれた。宗介は座席で偽造住民票を再確認し、マオに本名で良いのかと問われても、戸籍の存在しない自分は名前を変えやすいとして問題なしと断じた。クルツとマオは宗介の適性を心配し、艦長テッサも不安視していることが示されたまま、ヘリは発艦した。

千鳥かなめの日常と持ち物検査への嫌悪
東京郊外で登校中の千鳥かなめは、前日のデート相手が話は多いのに中身がないと常磐恭子へ愚痴り続けた。校門前で持ち物検査が行われているのを見て、かなめは本そのものは問題ではないが、カバンの中身を見られる状況に気が重くなった。校門付近で口論が起き、担任の神楽坂恵里が転校生と押し問答をしている光景に、かなめと恭子は興味本位で近づいた。

転校生・相良宗介の露骨な武装発覚
神楽坂恵里は転校生のカバンを強引に奪って中身を確認し、最下層からオーストリア製マシン・ピストルや複数マガジン、爆薬や起爆装置、眩惑手榴弾などを掘り当てた。恵里はそれをオモチャとして没収し、本人を職員室で待たせると処理した。野次馬の生徒たちは笑って散り、かなめは軍事オタクで気持ち悪いと強い拒否感を示した。

宗介の認識ズレと“学校は武装地帯”仮説
廊下を歩かされる宗介は、所持品検査があるとは想定せず任務失敗を覚悟し、武器没収後は地下室での尋問まで想像したが、これは日常行事らしいと理解して拍子抜けした。銃器を持ち込む生徒が多いのかと疑い、今後の護衛難度を心配する一方、学校裏の雑木林にはクルツのM9が待機しており、腕時計型無線で呼べば一〇秒で来ると整理した。無線で状況を尋ねても、クルツは空腹と酒の愚痴を返した。

教室での紹介と自己紹介の大失態
二年四組で神楽坂恵里が転校生を紹介し、宗介は自己紹介の場で相良宗介軍曹でありますと大声で名乗ってしまい、直後に自分の失態を自覚して青くなった。生徒たちは冗談として受け取り笑い、恵里はふざけるなと制止した。宗介は軍曹は忘れてほしいと訂正し、緊張で汗を浮かべながら沈黙した。

過去の経歴と趣味の暴走
出身を問われた宗介はアフガンやレバノンなど各地を列挙し、教室が静まり返ったため、恵里が外国暮らしで最近までアメリカにいたという体裁で補足した。趣味は釣りと読書と答えたが、読む本を問われると技術書や専門誌を延々語り始め、空気が完全に死んだと悟って忘れてほしいと引っ込めた。さらに好きなミュージシャンを問われ、音楽を聴かない宗介は事前に集めたCDの記憶を頼りに、五木ひろしとSMAPと断言した。

四月二〇日 部室突入と監視側の後処理、そして次の脅威

かなめの違和感と悪口の加速
千鳥かなめは更衣中、相良宗介の言動が支離滅裂で、授業中の挙動も落ち着きがなく、視線も向けてくるとして強い嫌悪を恭子にぶつけた。恭子は、かなめが本人不在の場で執拗に陰口を叩くのは珍しいと見抜き、気にしているのではないかとからかったが、かなめは笑って話を打ち切った。

女子更衣室への突入と“二秒の戦場反射”
着替え終えた一同が出ようとした瞬間、ノック二回の直後に宗介が部室のドアを開け放ち、下着姿の部員たちと鉢合わせした。女子十八名が絶叫する一方、宗介は緊急時の反射で状況を戦闘として処理し、かなめの襟首を掴んで倒し、隠し持っていたリボルバーを抜いて戸口に銃を向け「全員伏せろ」と号令した。脅威は存在せず、代わりに部員たちの殺意だけが部室を満たした。

捕虜扱いの宗介と神楽坂恵里の丸投げ
通報で来た神楽坂恵里は宗介の三八口径リボルバーを没収し、宗介は制服を破られ擦り傷を負い、手錠をかけられてパイプ椅子に拘束されていた。宗介は弾種がホローポイントで危険だと忠告するが、恵里は職員会議を理由に「千鳥さん、後は任せます」と投げて退室し、かなめたちに処分を委ねた。

かなめの尋問と宗介の致命的回答
かなめは覗きと乱暴、銃の騒ぎを責め、宗介をサイコと罵った。宗介は「手荒に扱ったことは謝罪する」と述べつつ、動機は言えない、知る資格がないと突き放し、誠意を自壊させた。さらに宗介は入部希望で来たと平然と言い、ここが女子ソフトボール部で男は入れないと告げられても「性別は重要でない」と主張し、最終的に椅子ごと外へ放り出され階段から蹴り落とされた。

セーフハウス帰還とチームの疲弊
夕刻、マオは監視拠点で「天使(かなめ)が帰宅、尾行なし」と報告しつつ物価の高さに愚痴り、宗介が手錠で椅子を腕につないだまま帰還したため呆然とした。マオはマスターキーで手錠を外し、宗介は駅で切符購入が最難関だったと淡々と報告した。クルツのM9はECS透明化のまま市街地移動で危険行為を連発し、疲労困憊を訴えたため、AS運用の是非が議論されたが、マオは火力とセンサーの価値を優先し、通勤時間帯回避と河川沿い移動で継続する方針を示した。

盗聴で見えた“素のかなめ”と宗介の誤読
マオと宗介はかなめの電話を傍受し、妹との談笑や近況報告、転校生を「おもしろい子」と評する様子を聞いた。マオは家族愛として感想を述べるが、宗介は定時連絡は賢明と評価し、昼間の攻撃性との差を不思議がった。宗介は「嫌われていない」と結論づけ、わずかに満足げな表情を見せた。

艦橋側の評価と“ささやかれた者”
〈トゥアハー・デ・ダナン〉中央発令所で、艦長テレサ・テスタロッサはマオの報告書を読み、宗介の失態の連続を確認した。カリーニン少佐は許容範囲で良い経験だと答え、任務は問題の根元を断つまで数週間続くとした。さらに、千鳥かなめ以外にも〈ささやかれた者〉候補が存在し、当面の安全確保に過ぎないことが示唆された。

ハバロフスク近郊の取引とガウルンの宣告
同時刻、凍った河の橋上でKGB将校と東洋人の男ガウルンが接触した。ガウルンは〈ミスリル〉が介入したと断じ、嘲弄しつつ大尉を射殺して主導権を握った。ファイルには十代の候補者が並び、ガウルンは次の標的として「Tidori Kaname」を指名し、千鳥かなめが次の犠牲者になる危険が明確化した。

2: 水面下の状景

調布駅南口の“爆弾騒ぎ”がただの勘違いに終わる
宗介は調布駅近くのハンバーガー店で、千鳥かなめ一行を尾行しつつ警戒していた。背後席の男が持つアタッシュケースを「武器内蔵型か、置き爆弾か」と疑い、男が店を出てケースを置き去りにした瞬間に確信へ傾いた。宗介は店内を荒らしてケースを奪取し、かなめに「伏せろ」と叫んで人混みへ突進したが、車道に飛び出して軽トラックにはねられた。直後、例の男が現れてケースを回収し「原稿は無事」と言い残して立ち去り、宗介の疑念は完全に空振りとなった。かなめの友人たちは呆れ、宗介は「爆弾だとばかり」と言い残して倒れ込んだ。

セーフハウスでの負傷手当と、宗介の“学園適応不全”
帰宅後、クルツは包帯を巻きながら、敵が出ていないのに宗介が自爆事故を積み上げていると皮肉った。宗介の学校生活は連日の空回りで、公共物破損や授業妨害を繰り返し、階段落ちやガラス破り、美術室の石膏破壊など自業自得の負傷が続いていた。宗介自身もリズム崩壊を自覚し、学校で命を落とす可能性すら感じていた。クルツは翌日の交代を提案し、かなめが本当に狙われているか自体も怪しいと言うが、宗介は希望的観測の危険を説き、クルツから「独り相撲」だと断じられた。

護衛対象の“普通さ”と、上層部への不信
クルツは、かなめも以前救出した少女も「普通の女子高生」に見えるのに、KGBが誘拐し薬漬けにする理由が不明だと疑問を呈した。宗介も理由は知らず、少佐が何かを隠しているとクルツは苛立った。

ハバロフスク側の焦りと、ガウルンの“対ミスリル戦術”
KGB大佐はガウルンに電話で実行の遅れを責め、夜中にさらって車で運ぶだけだと急かした。だがガウルンは、千鳥かなめには監視が付いており、ECS不可視モードのASが張り付いているため単純な手口は読まれていると告げた。KGB側が一掃を命じても、〈ミスリル〉の精鋭とAS相手では返り討ちになると一蹴し、相手が手出しできない方法を準備中だと言って電話を切った。

陣代高校での修学旅行準備と、宗介の“ゴミ係”就任
翌日、かなめは学級委員として修学旅行の係分担を手際よく決め、根回し済みの案を黒板に書き出した。最後に「転入生は無条件でゴミ係」という謎ルールで宗介を指名し、宗介は承諾した覚えがないと言いつつも「了解」と受け入れた。こうして宗介は反対ゼロでゴミ係に就任した。

デ・ダナン中央発令所での新展開と、研究施設への打撃計画
テッサは修学旅行が来週から沖縄だと聞き、現地連絡用の守秘回線開設を許可した。彼女はかつて沖縄で日本の小学校に通ったが敬遠され、基地内学校へ移った過去を漏らし、マデューカス副長が場を引き締めた。続いてカリーニンは〈ウィスパード〉研究に関する新情報として、ハバロフスクで希少薬物が流通している資料を提示した。テッサは施設がハバロフスクだけとは疑わしいとして調査継続を命じ、外部回線から切り離され侵入不能なため、物理的に研究を妨害する方針へ傾いた。テッサは巡航ミサイル攻撃を提案し、G型トマホーク(燃料気化弾頭)での深夜攻撃を許可し、死傷者を抑えるため休日深夜を指定して偵察衛星での事前確認を命じた。

“紙の山”と、宗介報告書のズレ
作戦報告の流れで資料が床に散乱し、副長は紙運用に苛立ちを見せた。拾い集めた中に宗介の報告書が混ざっており、テッサが「ゴミ係・七つの誓い」と読み上げてしまい、カリーニンが穏やかに回収して本題へ戻した。

電車内の対決と、宗介の“偶然”主張が限界突破する
かなめは車内で読書していたが、毎日つきまとってくる宗介への我慢が切れ、東スポを読んでいる宗介に詰め寄った。宗介は一貫して「偶然だ」「自意識過剰だ」と言い張り、かなめは国領駅で降りるフリをしてホームへ飛び出し、宗介を車内に置き去りにして勝ち誇った。だが宗介は、電車が動き出した直後に窓から飛び降り、ホームに転がり落ちて平然と起き上がり「急にこの駅で降りたくなった」「君は関係ない」「偶然だ」と繰り返した。かなめは呆れながらも、宗介の付きまといが不純な動機ではないと感じ始め、決意とひたむきさを見て理由が分からないまま、妙な安心感と温もりを覚えた。彼女は質問を重ね、宗介の「友達とは電話や手紙で連絡するので別れではない」「恋人はいない」「同僚に『恋人になってくれる女など中国奥地にもいない』と言われた」などのズレた回答に笑い、宗介も「君はいい人だ」と真顔で受け取り、かなめは否定して照れながらも関係性が少し柔らいだ。

デ・ダナンのトマホーク発射と、テッサの冷静な指揮
同時刻、〈トゥアハー・デ・ダナン〉は潜望鏡深度で垂直発射管を開き、トマホーク巡航ミサイルを発射した。中央発令所では発射シークエンス完了が報告され、テッサは予定通り深度100へ潜航し南へ転針するよう命じた。マデューカス副長は艦の安全を確認し、テッサはバラスト注水、潜航角10度、速力10ノットへの増速を指示した。ミサイル発射で位置露見のリスクが高まったため、艦は速やかな離脱を優先し、命中確認は偵察衛星〈スティング〉で行う手順となった。副長が休息を勧めても、テッサは「悪い夢を見そう」と拒み、飛行中のミサイルを思って眠れないと示した。彼女は研究所破壊後に護衛を引き揚げるかをカリーニンに問うが、カリーニンは「はい」と答えつつも表情を曇らせ、言いかけた懸念を飲み込んだ。

ハバロフスク研究所壊滅と、KGB大佐の破滅
翌日、ハバロフスクのKGB支局で大佐は「研究所は壊滅」「実験データは完全消失」と悲鳴を上げ、誘拐理由が消えたとしてガウルンへの作戦中止と支払い拒否を通告した。だがガウルンは動じず、別の仕事へ戻ると言い、DVDに入った“魅力的な数字”を示して研究データを確保していたことを匂わせた。大佐は激昂するが、ガウルンは「企業秘密」と嘲り、収容所行きに気を付けろと言い残して通話を切った。直後、党本部の関心を告げる武装兵が大佐の執務室へ踏み込み、無届けの研究と損失の疑いでルビアンカへ連行した。大佐は抵抗できず、厳しい尋問と収容所生活という破滅的な結末へ進むことになった。

監視は平穏、クルツは即・馴れ合い運用へ
日曜の夜、宗介はかなめ宅を監視し続け、動きはほぼゼロだった。そこへ尾行担当のクルツが酒くさく帰還し、恭子たちに「道に迷ったフリ」で接近して仲良くなったと自慢した。宗介は任務中の親睦を問題視するが、クルツは「親しくなれば監視も護衛もしやすい」「危険は肌で感じる」と押し切り、宗介は反論しきれなかった。

覆面侵入者を制圧したら、同級生の下着泥棒であった
監視カメラが、かなめ宅バルコニーへ排水パイプ伝いに登る黒装束の侵入者を捕捉した。宗介は屋上から懸垂降下で無音接近し、侵入者を背後から銃で制圧した。だが武器はなく、財布から出た学生証は同じクラスの風間信二だった。さらに手に握っていたのは布切れ、つまり下着であり、クルツは呆れて通信を切り、マオも嫌そうに撤収した。風間は不良グループに写真のネガを人質に取られ、度胸試しとして盗みに来たと白状した。

オタク会談が成立し、最悪のタイミングでかなめが出てくる
風間のネガは在日米軍や自衛隊のアーム・スレイブ写真で、沖縄のM6まで撮っていた。風間は操縦系や反応装甲、バランス問題まで語る濃さで、宗介も食いつき、二人は下着問題を放り投げて軍事談義に没頭した。そこへ入浴上がりのかなめがバスタオル姿でバルコニーに現れ、下着を手にした宗介と風間を目撃した。宗介は真顔で「千鳥。偶然だな」と言い放ち、かなめは金属バットを取りに引っ込んだ。

制裁のバットと後始末、そして任務終了の通達
その後かなめは本気で殴りかかり、宗介は逃げ切るが腕に大きな痣を負った。風間は逃走中に四階から植え込みへ落下し、桜の木に突っ込んだ。直後、マオから〈デ・ダナン〉との通信内容として「任務終了」が伝えられた。敵がかなめを誘拐する理由となっていた拠点とデータを壊滅させたため、当面の危険は去ったという。三人には一週間の休暇が与えられ、宗介は修学旅行(四泊五日)への参加を命じられ、「これも貴重な経験だ」と受け入れた。

羽田空港での出発と宗介の空虚
修学旅行当日、羽田空港の搭乗者控室で宗介は完全に気力を失っていた。任務から解放されたものの、自由を持て余し、〈トゥアハー・デ・ダナン〉へ戻りたい衝動を抑えられずにいた。かなめからは完全に距離を置かれ、挨拶すら返されない状況である。風間信二だけが気を遣い、空港のベンチで宗介に声をかけていた。

機内に忍び込む不穏な存在
JAL903便は陣代高校の修学旅行生と一般客を乗せて出発した。乗務員は騒がしい高校生への対応に神経をすり減らしていたが、搭乗してきた一人の中年男性との会話に強烈な違和感を覚える。男は冗談めかしながらも「全員を放り出せば静かになる」と大量殺戮を示唆する発言をし、不気味な笑みを残して自席へ向かった。

上空での異変と不自然なアナウンス
離陸後、機体は順調に上昇するが、突如として大きな揺れが発生する。直前に「パンクのような音」を聞いたという証言もあり、乗客の間に不安が広がった。機長は低気圧による揺れだと説明し、「ご安心ください」と繰り返したが、その言い回しはかなめに強い違和感を残す。通常使われるべき「ご了承ください」という表現がなく、過剰な安心の強調が逆に不自然だった。

かなめの疑念と静かな不安
恭子はかなめの元気のなさを宗介の件だと見抜き、過剰な心配から誤解した方向に話を広げてしまうが、かなめ自身は自己嫌悪と割り切れない感情に沈んでいた。その最中に起きた機体の揺れと不可解な機内アナウンスは、彼女の胸中に拭えない不安を残す。すべてが順調に見える状況の裏で、何かが確実に水面下で動いている兆しが、ここではっきりと示された。

3: バッド・トリップ

操縦室の制圧と無差別殺害
JAL903便の操縦室では、機内放送を終えた直後、レーザー照準器付き拳銃を持つ男が機長の背後に立っていた。男はガウルンと名乗り、操縦室の扉を爆薬で破壊して侵入したことを明かした。緊急着陸を求める機長の訴えを嘲笑し、虚偽を理由に機長を射殺した。副機長は恐怖の中で生かされ、操縦を強要される立場に追い込まれた。

内部対立とガウルンの狂気
操縦室には共犯者である大柄な男コーが現れ、作戦逸脱を咎めたが、ガウルンは殺人を楽しむ姿勢を崩さなかった。副機長の毛利に対し、命令に従わなければ別の乗客を殺すと脅迫し、機内には複数の武装仲間が潜んでいると告げた。さらに、清掃係の家族を人質に取り、協力させたことも明かし、抵抗の余地を完全に封じた。

北朝鮮への強制転進
ガウルンは副機長に航路図を示し、目的地が北朝鮮・順安航空基地であると告げた。撃墜の危険を訴える副機長に対し、事前に話は通してあると豪語し、詳細な侵入手順を指示した。九〇三便は那覇FIRから北へ転針し、韓国の大邱FIRへ進入した。

各国政府の混乱と無力
日本の運輸省は事故かハイジャックかの判断に手間取り、対応は大幅に遅れた。その間に韓国空軍が緊急発進し、九〇三便からハイジャックであるとの連絡を受けたが、情報が日本政府に届いたのは二〇分後だった。最終的に内閣安全保障室へ主導権が移された時には、機体はすでに北朝鮮領空に侵入していた。迎撃は行われず、九〇三便は順安航空基地へ着陸した。

沈黙のまま進む事態
犯行声明は一切なく、総理大臣ですら遊説中に事件を知る体たらくだった。警察や特殊部隊は国外での事態に手出しできず、完全に無力化された。一方で、人質となった乗客たちは、自分たちがすでに北朝鮮に着陸したことも知らぬまま、異常な旅の行き着く先を迎えつつあった。

順安到着の違和感と確信
機体は沖縄に向かっているはずなのに、眼下は山続きで、客室乗務員の説明も「天候」「じきに到着」など曖昧な言い逃れに終始した。やがて着陸態勢に入ると、見えた市街地は煤けた工場と黒煙が目立つ閑散とした景観で、乗客の不安が決定的になる。風間信二と相良宗介は、飛行中に韓国空軍のF-16を目撃していたため、ここが日本ですらないと早期に確信していた。

北朝鮮基地の兵器群と「誘拐」の完成形
着陸地点は順安航空基地であり、滑走路周辺にはMiG-21(中国版J-7)やT-34戦車のような旧式兵器が並ぶ一方、Rk-92(サベージ)型のアーム・スレイブも配置されていた。宗介はここが北朝鮮の軍用基地だと断定し、これは単なるハイジャックではなく「千鳥かなめの確実な誘拐手段」だと見抜く。大量の人質を盾にすれば〈ミスリル〉の強行策は封じられ、さらに北朝鮮という着地点が日米韓ソ中の思惑を絡ませ、救出を遅延させる構造になっていた。

犯行放送と機内監禁の宣告
機内放送は機長ではない男の声で始まり、那覇ではなく北朝鮮に「やむをえず」着陸したと告げられる。続けて米韓合同演習へのプロパガンダめいた文言を並べた後、要点として「乗客は人質」であり、逃亡や不穏行動には射殺で応じると宣言した。空港に収容施設がないため解放まで機内待機とされ、乗客は機内に閉じ込められた。

〈トゥアハー・デ・ダナン〉側の分析と冷酷な選択
対馬海峡の〈トゥアハー・デ・ダナン〉では情報が激増し、テッサは完全に出し抜かれたと判断した。研究データは抹殺したはずなのに持ち出しがあり、北朝鮮軍部に強いコネを持つ「別の黒幕」がいる可能性が示される。北朝鮮政府は関与を否定しつつ返還には難色を示し、米韓合同演習を交渉材料にする構えであった。
テッサは「チドリ以外の約400人は、こちらが下手に動かなければ安全かもしれない」と割り切り、まずは外交で人質を戻し、その後に千鳥かなめを救出する方針を口にする。結果として、救出までの間に千鳥かなめがどう扱われるかを理解した上で見守る決断になり、彼女自身の自己嫌悪が滲む。

戦闘待機と“猛毒”の影
艦は潜望鏡深度を維持し、メリダ島基地の輸送機C-11を3機、空中給油機を即応待機に回す。加えてM9六機とFAV-8三機をホット状態にし、〈アーバレスト〉も使用可能に整備するよう指示が出た。カリーニンは「敵は体内に猛毒を抱えている」と述べ、この局面で最悪の不確定要素がガウルンであることを示し、テッサは彼の連絡を待つ姿勢を取った。

機内の“平常運転”と狙い撃ち
順安に降ろされても機内は妙に賑やかで、陣代高校の生徒がカードや人生ゲーム、歌、猥談、ミニ四駆まで持ち出して騒ぎ、一般客だけが不安を抱えて固まっていた。そこへスーツ姿でサブマシンガン持ちの男たちが現れ、放送の声の主であるリーダー格が千鳥かなめを名指しして連行した。神楽坂恵里が強く抗議し、身代わりを申し出ても退けられ、拳銃が恵里の頭に向けられて処刑寸前となった。

宗介の“雑音”で処刑を止める
処刑の引き金が引かれかけた瞬間、相良宗介が食器を床に落とし、金属音で空気を割った。男は宗介を凝視し、宗介は殺気を消して俯き、平静を装ってやり過ごす。男は興を削がれたように銃を引っ込め、かなめだけを連れ去って撤収した。恵里は九死に一生を得た直後に倒れ、宗介は調理室へ退避して自分の衝動を悔いたが、かなめ奪取が現実になった以上、行動開始を決めた。

貨物室での装備回収と“爆弾”の発見
宗介は機内監視が薄いことを利用し、エレベーターシャフト経由で貨物室へ降り、自分のバッグから衛星通信機(暗号化機能付き)、高電圧スタンガン、薬物セット、サバイバルキットを回収する。だが直後、搬入口から武装したテロリスト3名が侵入し、宗介はバッグの山に身を隠して会話を盗み聞く。
彼らは“黄色いコンテナ”内の装置を起動し、30m以内で無線禁止と確認して撤収する。宗介がコンテナを開けると、二液混合式液体炸薬と思われる大型爆弾が作動可能状態で格納されていた。これが爆発すれば機体は粉砕され、数百名の人質は一瞬で全滅する規模であった。宗介は現場装備では解体不可能と判断し、敵の狙いが「帰還の途中で機体を爆破し、千鳥かなめ拉致を“事故死”に偽装すること」だと推測する。

かなめの搬送とウィスパード検査
かなめは基地内のトレーラーへ運ばれ、内部で医療機器と電子機器に囲まれた検査準備を強要される。日本語が堪能な白衣の女は金属類の除去を命じ、PET、MRI、SQUIDによるMEG、NILS反応測定の準備だと説明する。拒むかなめはスタンガンで気絶させられ、ガウルンが現れて乱暴に介入し、女医を脅迫する。女医は〈ウィスパード〉の重要性と〈コダール〉まで持ち込んでいることに言及し、結果は翌朝になると答える。かなめは円筒型の装置に固定され、ヘッドマウントディスプレイに図形や記号を見せられ続け、恐怖がじわじわ現実味を帯びていく。

宗介、ミスリルへ通報し作戦が動き出す
宗介は基地の資材置き場で衛星通信を展開し、〈ミスリル〉経由で〈トゥアハー・デ・ダナン〉に接続する。彼は順安基地の警戒レベル、稼働施設、兵士の士気、機体の位置など偵察結果を報告し、特に貨物室の爆弾の存在で上層部の緊張が跳ね上がる。カリーニンは千鳥かなめの所在を問うが宗介は不明と答え、今後は安全範囲で捜索しつつ陽動任務に就くよう命じられる。宗介はさらに、ハイジャック犯のリーダーがガウルンであると告げ、カリーニンは「死んだはずだ」と沈黙するが、額の傷痕などから生存を受け入れ、警戒を強めるよう指示する。次回連絡時刻を取り決め、宗介が通信機を畳んで移動しようとした瞬間、背後から訛りのある日本語で「動くな」と銃の撃鉄音が響き、宗介は包囲される形で次の局面へ追い込まれた。

テッサ、ガウルンの“正体”を聞く
黄海で潜航中の〈トゥアハー・デ・ダナン〉にて、テッサは作戦会議室へ向かう途中、カリーニンにガウルンの説明を迫った。カリーニンは、ガウルンが九つの国籍を持つと噂される危険なテロリストであり、要人暗殺を三〇件以上、航空機爆破も複数回行ってきたが、西側の対テロ組織ではほとんど知られていない存在だと語った。

過去の因縁と“討ち取ったはず”の男
カリーニンは、ミスリル参加以前に宗介と共にガウルンと交戦した過去を明かした。KGBに雇われたガウルンが、アフガニスタンでイスラムゲリラの村をAS二機で襲撃し、無関係の女子供まで大量に殺したこと、二週間後に待ち伏せし、宗介の狙撃で仕留めたはずだったことを語る。しかし現実には生存しており、テッサは敵の残虐さと大胆さを理解して、外交待ちの甘さを悟り、ガウルンに「高いツケ」を払わせる決意を固めた。

順安基地で宗介が将校を制圧する代償
順安航空基地では、宗介が通信直後に北朝鮮の将校に銃を向けられ詰問される。宗介は通信機を投げつけて隙を作り、間合いを詰めて拳銃を蹴り飛ばし、格闘で相手を転倒させ、スタンガンで痙攣させて無力化した。針金で縛り上げたが、投げた通信機は破損し、〈デ・ダナン〉との連絡手段を失う。宗介は将校の拳銃を回収し、携帯薬品セットからアルコール瓶を取り出すなど、次の行動に備えた。

かなめの“知識”が暴発する検査
かなめはドラム状装置に拘束され続け、映像と音響による検査が継続した。やがて表示が英単語、専門用語、化学式や数式へと加速し、かなめは意味も見たこともないはずの内容を理解し始める。情報が噴火のように流れ込み、彼女の内側に“別の誰か”が囁くような感覚が生じ、知識の濁流が途切れた後も強い疲労と異常な実感だけが残った。女医はそれを「学習ではなく、生まれる前から知っていること」だと断じ、さらに注射器を取り出して検査継続を告げた。

デ・ダナン、救出作戦を強行決定
黄海の〈デ・ダナン〉第一状況説明室では、カリーニンが「迅速に進める」と宣言し、救出作戦の敢行を正式決定した。最新の衛星写真を基に、航空支援(攻撃ヘリ、輸送ヘリ、VTOL)を先行させ、強襲機兵6機をXL-2緊急展開ブースターで射出する秒刻みのタイムテーブルが示される。爆弾はVHF帯遠隔起爆と推定され、テロリストが起爆する前に無力化が必要とされた。

爆弾処理の代償と輸送の賭け
爆弾処理の結果、九〇三便は飛行不能になる前提が共有され、燃料もなく戦闘下給油も不可能なため、人質は別機で輸送する方針となる。メリダ島基地からC-17輸送機2機を飛ばし、作戦直前に空中給油した上で強行着陸し、5分以内に420名超を収容して離陸する計画が提示された。順安基地が平壌近郊の高速道路沿いであり、首都防衛隊の増援が早いことから、交戦回避と時間制限が絶対条件となる。もし輸送機が片方潰れれば、もう片方は空席があっても離陸し、残存人質はヘリで可能な限り回収するが、最終的にAS収容を放棄する場合でも機体は確実に破壊するという冷徹な優先順位が示され、室内は重い沈黙に包まれた。カリーニンは冗長性の低い作戦であることを認めた上で、準備開始を命じ、全員が散っていった。

四月二八日 二二二九時 順安航空基地

宗介、単独でトレーラー救出に踏み切る
宗介は錆びたコンテナの蔭から、駐機場のトレーラー二輛と電源車一台を監視した。捕虜にした将校をアルコールで酔わせて聞き出した情報から、電源ケーブル接続のトレーラー内にかなめがいると判断した。〈デ・ダナン〉との連絡時刻は過ぎており、最善は味方の作戦開始まで待機して合流することだと理性は告げたが、トレーラー内から銃声が響き、宗介は恐怖に近い感覚に突き動かされて飛び出した。任務優先順位を自ら破った瞬間である。

かなめ、怒りで拘束を破り脱出を試みる
トレーラー内で拘束され検査を受け続けたかなめは、恐怖よりも怒りが勝り、暴れてストレスを発散しようとした。ディスプレイがずれ、拘束具の緩みを突いて脱出に成功する。だが女医は拳銃で威嚇発砲し、警備の男二人が突入してかなめを押さえ込む。女医は従順化の薬を投与しようとし、かなめは懇願しても止めてもらえず追い詰められた。

宗介が突入し、テロ側を瞬時に無力化する
注射の直前、かなめを押さえていた男たちが次々倒れ、宗介が現れる。宗介は拳銃とスタンガン、さらにサブマシンガンと予備弾倉を携行し、かなめに負傷がないか確認して背後に下がらせた。女医を制圧し、設備の目的と拉致理由を追及する。女医は、かなめが〈ウィスパード〉かを判定する装置だと吐露し、〈ウィスパード〉がブラックテクノロジーの知識をもたらす存在だと説明し始める。

銃撃戦、女医が流れ弾で倒れる
会話途中で外部から銃撃が入り、宗介はかなめの腕を引いて機材の蔭へ飛び込み、拳銃を出入口へ乱射して応戦した。侵入者の悲鳴が上がり、宗介はサブマシンガンに持ち替えて出口を確認する。女医はうつ伏せに倒れ、血が広がり苦悶の声を漏らしていた。かなめは動揺するが、宗介は手当てする時間も義理もないと切り捨て、脱出を優先する。

脱出直前、かなめの服装問題で口論が爆発する
出口には撃たれた男が倒れており、宗介は容赦なく蹴り倒して排除した。かなめは膝上のガウン一枚で外に出ることを拒み、宗介の視線を痴漢扱いして抵抗する。宗介は状況判断として急がせようとするが、かなめは信用せず罵倒し、押し問答が続く。そこへ再び外から銃撃が入り、宗介はかなめを庇って体当たりのように倒れ込み、かなめはさらに誤解を深めて騒ぎ立てる。敵弾が飛び交う中、二人はトレーラー内で最悪のタイミングの揉み合いを始め、脱出は一気に混乱へ傾いた。

4: 巨人のフィールド

電源車での強行離脱と追撃
かなめは結局、宗介の詰め襟を借りて最低限の格好を整え、宗介は銃撃の合間を縫ってトレーラーの反対側へ飛び出した。宗介はかなめを電源車の助手席へ放り込み、送電ケーブルを引きちぎりながら急発進した。背後から追撃射撃が続き、装甲車まで加わって機関銃弾が車体をかすめた。

宗介の正体告白とかなめの否認
逃走中、宗介はかなめが特殊存在であり、諜報機関が生体実験に使おうとしていたこと、その阻止のため護衛として派遣されたと説明した。宗介は〈ミスリル〉という国家に属さない軍事組織のSRT所属で、偵察・破壊工作・AS操縦が専門だと名乗った。しかしかなめはそれを妄想や錯乱と受け取り、宗介を落ち着かせようとして深呼吸まで勧めた。

格納庫突入とAS起動
宗介は追撃を振り切るため基地北端の格納庫へ電源車ごと突入し、シャッターを破って停止した。格納庫内には三体のアーム・スレイブが並び、宗介はそのうちソ連製K-22〈サベージ〉へ乗り込む。ASは操縦者の微細動作を機体に拡大反映する“マスター・スレイブ”方式であり、宗介は起動手順を省略しつつ強制起動を進めた。

敵ASとの初戦と圧倒
外からの射撃が格納庫を貫き、さらに同型の敵〈サベージ〉がシャッターを引き裂いて侵入した。敵が先に撃とうとした瞬間、宗介機は起動を完了し、身を屈めて回避しながら突進、敵を壁ごと叩き倒した。宗介は敵のライフルを奪って残弾確認後、手足を撃ち抜いて行動不能にし、格納庫外へ出ると装甲車も射撃で沈黙させた。

背面射撃と“本物”の戦士としての姿
さらに背後から現れた別の敵ASに対して、宗介は背を向けたまま肩越しに正確射撃を行い、頭部と両腕を吹き飛ばした。かなめはその戦闘が危なげなく滑らかであることに衝撃を受け、宗介が軍事マニアではなく本物の戦士だと認めざるを得なくなる。現実の匂いと熱、爆発音が、状況が夢ではないことを突きつけた。

新たな脅威の接近
宗介は外部スピーカーでかなめに退避を命じ、滑走路の向こうから戦車二輛が砲塔をこちらへ向けて接近していることが示された。かなめはようやく危険を理解し、退避しながら次の局面を迎えることになった。

四月二八日 二二四六時(日本=北朝鮮標準時)/黄海・西朝鮮湾 海上〈トゥアハー・デ・ダナン〉

艦の浮上と飛行甲板の露出
曇天で星も見えない夜、暗黒の海面から〈トゥアハー・デ・ダナン〉が浮上した。艦は東南東の海岸線へ舳先を向け、前触れなく背部の二重船殻を左右に開いて飛行甲板を露出させた。沿岸からの目撃を避けるため光は最小限に抑えられ、作業員は暗視ゴーグルで作業していた。

航空部隊の先行出撃
短時間の準備ののち、ヘリとVTOL戦闘機が次々と離陸し、救出作戦の前段となる航空支援の展開が完了した。

AS部隊の発艦準備
航空機の出撃後、ブザーとともに格納甲板からASがエレベーターで上昇した。上がってきたのはM9〈ガーンズバック〉で、肩の「101」マーキングからメリッサ・マオ機であることが示された。隣のエレベーターにはクルツ機のM9が並び、マオ機は小隊長機として電子兵装と通信装置が増設されていた。両機は緊急展開ブースターを背負い、ASを単独で作戦地域へ射出する態勢にあった。

軽口の応酬と宗介への意識
発艦前、マオとクルツはBGM談義を口実に軽口を叩き合い、同時に宗介の生存を気にする会話も交わした。マオは縁起の悪い言い方を制しつつ、宗介への信頼と心配をにじませた。

カタパルト射出と戦闘開始
発進管制から「あと三〇秒」の連絡が入り、マオは射出台に機体を固定して点検を完了させた。推力偏向板が立ち上がり、カウントダウンの後、蒸気カタパルトとブースターが作動し、合計一二〇トンの推力で二秒で時速五〇〇キロへ加速、M9は離床して夜空へ上昇した。激しい振動の中、マオは戦闘開始を宣言した。

四月二八日 二二四九時(日本=北朝鮮標準時)/スンアン・順安航空基地

戦闘後の撤退と“手のひら輸送”
宗介は戦車二輛を撃破したのち、かなめを回収するため格納庫へ戻った。怯えるかなめをAS〈サベージ〉の左手に乗せ、基地外へ脱出を図った。揺れと高さにかなめは恐怖するが、宗介は「下を見るな」と指示しつつ強行した。

ミサイル警報と迎撃
フェンスを越えた直後、誘導ミサイルが接近し警報が鳴る。宗介はかなめを胸から引き離して安全距離を取り、頭部バルカンでミサイルを空中爆破した。至近距離での発砲によるマズルフラッシュや鼓膜損傷を避けるための措置であり、かなめは状況も理解できぬまま必死にしがみついた。

囮と狙撃での損壊、かなめ落水
敵の追撃が見えない不気味さの中、川を渡ろうとした宗介たちは、予想外の方向から砲撃とグレネード弾に襲われた。宗介は爆発から庇うため背中を向けたが、実際は不発の囮で、狙撃により右脚を失って転倒、かなめは川へ投げ出された。続く正確な射撃で宗介機は右腕も破損し、制御系と電源が致命傷を受けて大破した。

銀色のAS〈コダール〉とガウルンの再会
未塗装の銀色ASが接近し、操縦者ガウルンが宗介を「カシム」と呼び、過去の因縁を突きつけた。ガウルンはかなめを〈ウィスパード〉として狙い、彼女の頭に「存在しない技術」があると示し、ラムダ・ドライバに言及して宗介を始末しようとする。

救出部隊の突入と撤退命令
上空からクルツのM9〈ガーンズバック〉が自由落下で着水し、敵部隊を大口径射撃で制圧して宗介とかなめを救った。基地ではマオ機が人質誘導と輸送機護衛を担い、爆弾コンテナを切断して投擲爆破し処理を完了させた。だが時間切れが迫り、クルツと宗介の合流は遅延する。敵増援接近により撤退が優先され、カリーニン少佐は捜索を禁じ、残骸のM9を破壊して撤収を命じた。これにより宗介とかなめは取り残される。

山中逃避と宗介の“機械”性、かなめの恐怖
基地を離れた山中で、宗介は脇腹の金属片を自分で抜き、アルコール洗浄と仮止めを淡々と実施した。鎮痛剤を拒否し「眠れば戦えない」と言い切る姿は、かなめに人間味の薄さと恐怖を抱かせる。彼女は距離を取って拒絶するが、宗介は怒るのではなく孤独と諦念を滲ませ、「君を帰すためだけに動いている」「終われば二度と現れない」と約束し、信頼を求めた。

和解と再会の瞬間
かなめは宗介の行動が“敵を知る者の合理性”であり、自分を守るための必死さだと理解し、罪悪感と強い情動に襲われながら「うん」と答えた。再び歩き出した二人は、やがて人の気配を察知し警戒する。ライトに照らされた低木の陰には、泥と血にまみれたAS操縦服のクルツが息も絶えだえで寄りかかっていた。宗介が名を呼ぶと、クルツは軽口を叩いて笑い、力尽きて倒れた。

5: ブラック・テクノロジー

四月二八日 二三三二時(日本=北朝鮮標準時間)/黄海・西朝鮮湾 海上〈トゥアハー・デ・ダナン〉

撤退判断とマオの抗議
帰艦したカリーニンは発令所へ急行し、道中でメリッサ・マオに追いつかれる。マオは「このまま撤退するのか」「宗介も見捨てるのか」と迫り、自分に捜索を許可してほしいと願い出た。カリーニンは、艦と乗員を危険に晒す提案を拒み、見捨てることも「入隊契約の範疇」と切り捨てた。

ECSの弱点と“救出を急いだ理由”
マオは電磁迷彩(ECS)で不可視のまま捜索できると主張するが、カリーニンは気象班の予測として「これから雨が二日続く」と告げる。ECSはオゾン臭を発し、雨など水分が多い環境ではスパークと青白い火花が散り、むしろ目立つ欠点がある。救出作戦を急いだ背景には、この弱点で長居できない事情があった。

発令所での艦長テッサとの応酬
発令所では艦長テレサ・テスタロッサが、カリーニンの意図を先読みして「どれだけ待てるか聞きにきた」と言い当てる。状況は切迫しており、敵の武装哨戒艇3隻が機雷満載で接近、海域も浅く隠れにくい。テッサは「一分たりとも待てない」と判断し、速やかな離脱を優先する。

“助けたい”意志と無理筋の再接近案
それでもテッサは宗介たちを助けたいと明言し、ウェーバー生存の可能性にも触れる。夜明け前に沿岸部で短時間だけ浮上できるなら、どんな手を考えられるかとカリーニンに問う。海図には中国領海近くへ大きく迂回し、警戒線をかすめて戻る強行プランが示され、常識的には無理筋だが、テッサは「普通の潜水艦なら無理」と言い切り、自艦なら可能だと示唆した。カリーニンは艦長を信じる姿勢に傾く。

ブラック・テクノロジーの影:ARX-7〈アーバレスト〉
会話の最後、カリーニンは「ウェーバーのM9撃破」が気になると言い、自分の推測が正しければ“あれ”が必要になるかもしれないと告げる。“あれ”とはARX-7〈アーバレスト〉である。その名を口にした瞬間、艦内のどこかに繋がれた“狂暴な獣”が歓喜したように感じられ、通常兵器ではない“何か”が動き出す気配で場面が締まる。

四月二九日 ○二二六時(日本=北朝鮮標準時)
平安南道・大同郡 山中

攻撃ヘリの通過と三人の潜伏
攻撃ヘリがライトで周囲をなぎ払いつつ頭上を通過したが、宗介たちは低木の根元の窪みに身を潜め、発見を免れた。雨と風の中、静寂が戻ると宗介はクルツを引き出し、状況を確認した。

クルツの重傷と“銀色のAS”の異常
クルツはモルヒネで意識を飛ばしていたが、右腕骨折と深い裂傷を抱えながらも生存していた。目覚めた後、銀色のASとの戦闘を語り、至近距離で五七ミリを撃ち込んだのに、次の瞬間には自機が粉砕されたと述べる。原因は散弾地雷の類ではなく、「見えないハンマーで殴られた」感覚だと表現され、敵機の異質さが強調された。

平野の見通しと“出口なし”の現実
山を越えると、集団農場と水田地帯、軍用車輛の灯りが見える見晴らしの良い地形が広がっていた。クルツの通信機は有効範囲が狭く、海岸まで約二〇キロ、負傷者と疲労困憊の二人を抱えての突破は不可能に近い。宗介は包囲網と体力限界を冷静に整理し、「出口なし」の結論へ至った。

宗介の“置き去り案”と、かなめの拒絶
宗介は自分とクルツが囮になって時間を稼ぎ、かなめだけを西へ走らせる案を提示する。だがかなめは「いやよ」と拒否し、宗介の自己犠牲的な思考を徹底的に叱責した。宗介が「死んでも構わない」と考えていることを“自暴自棄”だと断じ、彼女は「みんなで助かる方法を認めない」と宣言する。

かなめの無茶な計画と、信頼の抱擁
かなめは山火事を起こして混乱に紛れ、車輛や飛行機を奪って脱出するという支離滅裂な案まで口にするが、諦めない意志だけは本物だった。宗介が銃口を向けてまで単独逃走を強要すると、かなめは怯えず、宗介を抱きしめて「もう信じた」と告げる。宗介は“助けたい理由”が任務ではなく、自分自身が「一緒に帰りたい」と強く望んでいるからだと自覚し、内側から新しい力が湧く感覚を得た。

クルツの茶化しと“衛星”という盲点
クルツが咳払いで割って入り、二人をからかう一方、かなめの「宇宙から見てる衛星」の発想が転機になる。宗介とクルツは、出撃前に見た偵察衛星〈スティング〉の撮像周期(約一二時間)を思い出し、ちょうど上空通過の可能性が高いと気付く。地上で“熱源の目印”を作れば、衛星が拾うかもしれないという賭けに切り替わった。

かなめの異変と“ブラック・テクノロジー”の片鱗
宗介が準備に出た後、かなめは頭の重さと浮遊感、トレーラーで見た“夢のような映像”の記憶に揺らぐ。口から「椎間板ダンパー」「パラジウム・リアクター」「ECS不可視モードの弱点」など、軍事技術者しか知らない用語が漏れ、本人も自覚できない。連中が言っていた「生まれる前から知っている」「ブラック・テクノロジー」という言葉が繋がり、かなめは自分の中に“正視できない何か”が潜んでいる感覚に襲われる。

火文字“A67ALIVE”の実行
宗介は集団農場に忍び込み、ガソリンの代わりにトラクターのエンジンオイルを調達する。休耕地にオイルを撒き、過マンガン酸の錠剤とライターで着火し、霧雨の夜でも衛星に見えるよう火文字を作った。内容は『A67ALIVE』で、A=天使(かなめ)、6=ウルズ6(クルツ)、7=ウルズ7(宗介)、三名健在を示す信号である。炎は短時間で消える見込みで、敵に先に気付かれる可能性もあるが、それでも賭けに踏み切ったところで場面が締まる。

四月二九日 〇〇三四五時(日本=北朝鮮標準時)
朝鮮民主主義人民共和国・順安航空基地(スンアン)

不審火の報告とガウルンの即断
集団農場での不審火が基地へ報告され、ガウルンは整備トレーラー前で〈コダール〉修理の監視中に眉をひそめた。火元は基地から西一五キロとされ、彼は「陽動か」を疑うが、単なる不審火が陽動になるとは考えにくいとも判断する。それでも放火したのはカシムだと見なし、その付近に潜伏しているはずだと推測した。

掃討方針の指示と“娘”への執着
部下から捜索網が狭まっている旨が報告されると、ガウルンは男は殺害、娘は殺すなと命じた。手足を折ることや暴行さえ容認し、確保を最優先にする姿勢を明確化する。

〈コダール〉出撃の決定と“見せるな”への反発
ガウルンは自ら出発すると宣言し、移動手段として〈コダール〉を選ぶ。部下が「カネヤマ先生」から現地兵の前での使用を控えるよう言われていると進言すると、ガウルンはそれを一蹴し、禁じられてはいないと強弁した。相手が〈ミスリル〉、特にカリーニンである以上、まだ一騒動起きる可能性があるとして、念のために戦力を持ち出す理屈を立てた。

救出不可能という情報と、それでも残る警戒
海軍からは〈デ・ダナン〉が沿岸を離脱し、中国領海付近まで退避したとの報告が入っている。緊急展開ブースターがあっても救出部隊派遣は不可能なはずだと理解しつつ、ガウルンは「念のため」を繰り返し、最悪の事態を想定して動く姿勢を崩さない。

修理完了と追撃の開始
技術者が整備ハッチを閉じ、〈コダール〉の修理完了を告げる。ガウルンは追撃へ踏み出す段階に入った。

四月二九日 〇三五五時(日本=北朝鮮標準時)平安南道・大同郡 山中

再合流と不穏な静けさ
宗介が戻ると、かなめは安堵して出迎えたが、胸元を不自然に隠していた。クルツは眠っているように見え、かなめは彼の生命力を皮肉交じりに評価した。宗介は火文字作戦が分の悪い賭けだと改めて口にするが、かなめは撤回を拒み、宗介も「指図しない」と折れる。ヘリの音が遠くを流れ、暗い林の閉塞感だけが残った。

別れの予感と追跡の接近
かなめは「無事に帰れたら宗介はどうするのか」と尋ね、宗介は次の任務へ就き学校から消えると告げた。直後、犬と複数の兵の足音が迫り、宗介は即応して軍用犬を射殺するが、発砲で追跡隊に位置を晒す。銃撃戦が始まり、増援が集まり、弾切れが目前となる。三人は失敗を悟り、かなめは後悔しないと告げ、宗介も謝罪する。

“天からの援軍”と無人ASの降下
弾が尽きた瞬間、パラシュート付きカプセルが炸裂し、白いASが降下して着地した。未知の外観を持つ最新鋭機で、しかしコックピットは無人だった。宗介は機体に飛び込み、音声認証と操縦モード設定で起動し、頭部機銃で周囲を制圧して形勢を反転させた。

カリーニンの録音と“回収まで一七分”
スクリーンの指示でデータを再生すると、カリーニン少佐の録音が流れた。偵察衛星〈スティング〉で三人を発見したが距離が遠く、改造した弾道ミサイルで無人のARX-7〈アーバレスト〉を射出したという。〈デ・ダナン〉は無線封鎖で沿岸へ急行し、〇四三〇時から一分間だけ浮上するため、それまでに指定海岸へ到達せよと命じた。宗介は残り時間一七分で二〇キロの強行を決意する。

敵AS五機を五八秒で撃破、そして銀色が現れる
接近した敵〈サベージ〉五機を宗介は超性能で瞬殺し、戻ろうとした矢先に銀色のASが奇襲する。操縦者はガウルンで、両者は異常な撃ち合いを続ける。宗介のショット・キャノン弾は空中で砕け、見えない“壁”のような斥力場で防がれ、逆に〈アーバレスト〉が衝撃で吹き飛ばされる。だが機体は《ダメージ軽微》と表示し、AIが「ラムダ・ドライバ初期化完了」を告げる。

かなめの発作と“ヒント”の伝達
かなめは浮遊感と技術用語に呑まれ錯乱し、頭を打ち付けるなど自傷寸前まで暴走するが、通信機を要求して宗介へ叫ぶ。敵の装置は「攻撃衝動を物理力に変換する」ラムダ・ドライバであり、〈アーバレスト〉にも同じものが載っている、心の瞬間的イメージが力場になると告げた。宗介は疑いながらも、彼女を信じると決める。

“瞬間の集中”で斥力場を貫通、ガウルン撃破
ガウルンはナイフ戦で圧倒し、再度の衝撃波で宗介を翻弄する。かなめは「一瞬に気合いを込める」方法を強引に教え、宗介は怒りと護りたい意志を一点に凝縮して至近距離射撃を行う。衝撃波同士が歪み合い、砲弾が防壁を貫通して命中し、ガウルン機は大破、操縦者は即死と見なされた。

二人を抱えて海岸へ、ヘリ撃墜と強行跳躍
宗介は〈アーバレスト〉でクルツとかなめを両腕に抱え、二〇キロを一〇分で走破する。追撃ヘリには一度かなめを放り投げて片腕を空け、射撃で撃墜し、落下するかなめを拾い直して疾走を続ける。海岸では敵ASが待ち伏せし挟撃されるが、海上からマオのM9が狙撃し、同時に〈トゥアハー・デ・ダナン〉が浮上する。宗介は岬をジャンプ台にして艦へ跳び、マオが受け止めて回収が完了した。

デ・ダナンの離脱と医務室の静寂
艦は最大戦速で離脱し、六五ノット級の異常な航行性能で沿岸を振り切り潜航へ入る。宗介は医務室で処置を受け、格納庫で泥だらけの〈アーバレスト〉を見上げる。そこへカリーニン少佐が現れ、ガウルンの死を確認しつつ、ラムダ・ドライバは同種装備でしか対抗できないため送り込んだと説明する。

“存在しない技術”とウィスパードの影
宗介がラムダ・ドライバの正体を問うと、少佐は「今は知る必要がない」と拒む一方、現代兵器技術が不自然なほど発達しすぎていると語る。AS、ECS、艦の推進などを支える技術体系は“存在しない技術”であり、その出所の鍵として〈ウィスパード〉の存在を示唆する。千鳥かなめについては偽情報で「ウィスパードではなかった」と流し、敵が再び狙うなら何度でも奪い返すと述べる。ただし“保険”が必要だと含みを残し、会話を打ち切って去った。

エピローグ

病室での覚醒と“看護婦”の正体
かなめは落下の感覚の直後、白い枕と点滴スタンド、雨に濡れる桜の見える病院個室で目を覚ました。時刻は五月一日一七三五時で、二日半眠っていたと告げられる。ベッド脇の若い看護婦は制服に不満をこぼしつつ、自分が宗介の仲間であることを匂わせ、かなめに「基地で薬を打たれて意識を失い、次に病院で目覚めた。間のことは何も覚えていない」と徹底するよう助言した。警察の事情聴取を想定し、“なにも覚えていない”で押し通せと釘を刺す。

感謝と別れ、残された余韻
看護婦は握手を求め、かなめが部下二人を救った命の恩人だと礼を述べた。宗介は既に別任務に就いており、伝言もないと言い残して去る。雨の外を思い、かなめは「別れの言葉くらい残してもいいのに」と涙ぐむ。

現実への帰還と“愛されている実感”
本物の医者と看護婦が来て、かなめが健康で近々退院できること、父は仕事でニューヨークへ戻ったことが伝えられる。続いて陣代高校の面々が病室になだれ込み、恭子ら友人、ソフト部、生徒会、校長教頭、神楽坂教諭までが押しかけて、無事を喜びつつ質問攻めにする。かなめはもみくちゃにされながらも、自分が大勢に心配され愛されていることを実感し、帰ってきて良かったと噛みしめた。

“保険”としての再登場
見舞いの声の中、神楽坂教諭の後ろに相良宗介が現れる。周囲は彼の重要性に気付かないが、かなめだけが驚愕する。宗介は見舞いだと言い、博多の辛子明太子を土産に差し出す。そして小声で、自分は「保険」であり「当分の間」そうだと告げる。かなめは飾り気のない態度に腹を立てつつ、その“いつもの腹立たしさ”が妙に心地よく、文句をぶちまけようとして宗介を慌てさせる。雨は夜には上がりそうで、日常への復帰が静かに示された。

フルメタル・パニック! 2巻

同シリーズ

フルメタル・パニック! 1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! 1
フルメタル・パニック! 2巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! 2
フルメタル・パニック! 3巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! 3

外伝

フルメタル・パニック!Family 1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! Family
フルメタル・パニック!Family 2巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! Family 2
フルメタル・パニック!Family 3巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
フルメタル・パニック! Family 3

その他フィクション

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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