小説【第七王子】「転生したら第七王子だったので 8」感想・ネタバレ

小説【第七王子】「転生したら第七王子だったので 8」感想・ネタバレ

物語の概要

異世界転生×魔術ファンタジー。前世の記憶を持つ主人公ロイドが、下級貴族である第七王子としてサルーム王国に転生し、「魔術バカ」として究める日々を送る。本作第8巻では、姉の第四王女サリアと教皇イーシャがロイドに協力を求め、“聖王”歓迎の音楽に魔術で参加する展開に。やがてその“聖王”が怪しく、かつロイドと因縁ある人物であることが示唆され、舞台はさらに深まる。

主要キャラクター

  • ロイド:サルーム王国の第七王子。魔術一筋の“魔術バカ”、圧倒的知識と才能を有する。
  • サリア:第四王女であり、音楽の才能に長けたロイドの姉。聖王歓迎に向けてロイドに手を差し伸べる。
  • イーシャ:教皇。音楽イベントへの協力をロイドに依頼する役割を担う。
  • コニー:ロイドのメイドで、魔王ベアルの宿る存在。魔王からの情報を伝える重要な役回り。

物語の特徴

本作は、異世界転生モノでありつつ、“魔術バカ”な主人公による魔術研究・実験描写に特化している点がユニーク。主人公が実家の資産や膨大な魔導書に囲まれながら、自由気ままに魔術を探求する様は、いわゆる“甘く楽しいスローライフ”としての魅力を発揮しており、その気楽さと魔術描写の本格感のバランスが他の作品とは一線を画す。
さらに第8巻では“聖王”という神秘的な存在と、ロイドとの因縁や過去が徐々に明かされていく構成が読者の興味を引くカギとなっている。

書籍情報

転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます
著者:謙虚なサークル 氏
イラスト: メル。 氏
出版社:講談社ラノベ文庫
発売日:2024年7月2日

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あらすじ・内容

強敵、再登場!?
サルーム王国の第七王子ロイドは魔術バカである。魔術を追究し極めるため、日々を過ごしていた。そんなある日、ロイドの元に類い希な音楽の才能を持つ、第四王女である姉のサリアと教皇イーシャがやってくる。その理由は、聖王という滅多に世俗に現れない尊い方がやってくるのを歓待するための音楽に、ロイドにも参加してほしいから、とのこと。メイドであるコニーの身に宿る魔王ベアルから聖王が強い力を持っている、と聞いていたロイドは、一も二もなく参加することになる。だが、その聖王はなんだか怪しい上に、ともにやってきたのは、過去に大きな因縁を持つあの――!?
漫画アニメと絶好調の大人気魔術ファンタジー第8弾!

転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます8

感想

今作もまた、第七王子ロイドの魔術への愛が溢れていて、読んでいてとても楽しい気持ちになった。毎日毎日、魔術を追究し、研究し続ける彼の姿は、もはや職人技と言っても良いかもしれない。

物語は、ロイドのもとに姉であるサリア王女と教皇イーシャが訪れる場面から始まる。聖王を迎えるための音楽会に、ロイドにも参加してほしいという依頼だ。メイドのコニーに宿る魔王ベアルから、聖王がただならぬ力を持っていると聞いたロイドは、迷うことなく参加を決める。この時のロイドの、キラキラとした瞳が目に浮かぶようだ。

ロイドは、強い相手との出会いを、己の魔術を高めるためのチャンスと捉えているのだろう。彼の飽くなき探求心には、いつも感心させられる。今回の聖王との出会いが、ロイドにどんな影響を与えるのか、今からとても楽しみだ。

また、サリア王女や教皇イーシャとのやり取りも、今作の見どころの一つだと思う。特に、サリア王女の音楽の才能は、ロイドの魔術とはまた違った魅力を持っている。二人の才能がどのように組み合わさり、聖王をもてなす音楽会を盛り上げるのか、想像するだけでワクワクする。

『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』シリーズは、戦闘シーンの迫力はもちろんのこと、登場人物たちの個性的なキャラクターや、彼らの織りなす人間関係も魅力的な作品だ。今回の物語も、きっと私たちを夢中にさせてくれるだろう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

北の果ての魔術戦闘とベアルの過去

ロイド=ディ=サルームは転生によって第七王子となり、魔術に没頭する日々を送っていた。彼は自らの魔力で生成した北方の無人ダンジョンにて、半魔王と化したメイドのコニー(内に魔王ベアルを宿す)と度々魔術戦を繰り広げていた。ベアルは魔界から来た強者を求める戦闘狂であり、かつてロイドに敗北した事実を今なお認めておらず、戦いを挑んでいた。ロイドはこの戦いを魔術実験の場とし、使い魔であるグリモとジリエルを「術装魔力腕」として顕現させ対抗していたが、戦闘の余波でダンジョンが崩壊寸前となり、戦いは中断された。

その後、ベアルは自身の過去、すなわち魔軍を率いて大陸を侵攻した経緯について語り始めた。かつて魔界において敵なしとなったベアルは強者を求めて人界へ進出し、魔術師ウィリアム=ボルドーと死闘を繰り広げた。ウィリアムの戦術と指揮力により、ベアルの軍勢は次第に封じられていった。さらに、ウィリアム以上に厄介な存在として「聖王」の存在が語られたが、その実力ではなく、詳細は語られずに終わった。

王城での朝と姉妹たちの訪問

ロイドは専属メイドのシルファとレンに起こされ、食堂で姉の第四王女サリアと再会した。サリアは音楽の天才でありながら常人とは感性の異なる人物で、朝食中に突如ミートボールをロイドの口に放るなど奔放な行動を見せた。そこへ教皇イーシャが現れ、サリアとともに聖王来訪に際して催される祝賀の場での共演を依頼した。ロイドは聖王に直接会える機会と聞き、これを快諾した。

復活した謎の男と暗躍する青年

一方その頃、棺桶から一人の男が復活を遂げた。彼は謎の青年によって蘇生されたが、その命は自由ではなく、青年の力に逆らえば再び消滅する運命にあった。青年は男の目的を理解した上で、共に動くよう促した。男は不満を抱きつつも、その力の前に屈し、協力を受け入れた。こうして二人は何らかの目的に向けて歩み出したのである。

演奏会に向けた準備と聖王来訪

ロイドは聖王を歓迎する演奏のため、サリアとイーシャと共に厳しい練習を重ねる日々を送っていた。ただし、実際には制御魔術で操る木形代に任せ、自身は読書に没頭していた。迎えた本番当日、街は祭りで盛り上がり、演奏会の舞台となるシンフォニー・ホールには満員の観客が詰めかけた。

聖王との偶然の遭遇と不審な青年

開演前、ロイドは控室を抜け出して聖王の護衛を探すため会場をうろつき、制御魔術で護衛の一人に尿意を催させてトイレへ誘導する。そこで出会ったのは、やたら饒舌で平和主義を自称する普通の青年だった。彼と個室の取り合いになり、言い争う中でロイドは先に用を済ませるが、その青年の奇妙な雰囲気が印象に残る。

開演と異変の兆し

控室に戻ったロイドはサリアとイーシャと共にステージに上がり、演奏が始まる。観客の大半は涙し感動する中、聖王一団のみが無反応であった。そんな中、ロイドのメイドであるコニーの内に宿る魔王ベアルが異様な殺気を放ち始め、ついには特殊結界を展開。空間内にはロイド、ベアル、そして先刻の青年の姿をした聖王が残された。

聖王と魔王の対峙

ベアルは聖王を見て激怒し、過去の因縁を語りながら戦闘を開始する。だが聖王は「戦わない」と宣言し、その「声」や演奏によってベアルを抑え込む。魔曲と呼ばれるその演奏は、精神に直接作用し、ベアルを動けなくするほどの力を持っていた。ロイドの使い魔グリモとジリエルも倒れ、ロイド自身も影響を受けるほどであった。

ギザルムの介入と結界破壊

ロイドが魔曲を遮断しようとしたところ、以前倒したはずの魔族ギザルムが現れ妨害してくる。ギザルムは聖王と手を組んでおり、何らかの目的を抱えている様子であった。ベアルは意識を失い、ロイドは彼を守るため、結界に魔力を集中させて破壊する。結界が崩れ、通常空間へと戻った舞台では、何事もなかったかのように演奏が続いており、聖王は穏やかな表情で拍手を送っていた。

戦後の静養とベアルの衰弱

聖王との戦いの後、聖王一行は姿を消し、魔王ベアルは著しく力を失っていた。宿主であるコニーにもその影響は及び、彼女は体調を崩しベッドで療養していた。ロイドは治癒魔術を施すも根本的な解決には至らず、ベアルの魔力核が弱っている現状では自然回復も困難であった。魔曲によるダメージが強く残り、ベアルは殻に閉じこもるようにして休眠状態に入っていた。

魔曲の解析と回復魔曲の試行

ロイドは聖王の使用した魔曲に強い関心を抱き、その逆効果としての回復魔曲の構築に挑戦した。即興で編み上げた魔曲には確かに魔力体への回復効果があり、ベアルの状態も幾分か安定した。しかし回復には長時間が必要と判断し、より適任であるイーシャとサリアに演奏を任せる方針を立てる。回復以外にも魔曲の応用可能性にロイドは大いに興味を示していた。

イーシャの不調とロードストの料理療法

イーシャのもとを訪れたロイドは、彼女が歌い過ぎで喉を傷めていることを知る。治癒魔術を施そうとした矢先、バビロンたちロードストの仲間が手料理を持って現れ、イーシャはその料理で見事に回復した。ロイドの治癒魔術も影響していたが、仲間たちは料理の効果を信じ、イーシャも感謝の意を表した。

魔曲作曲と周囲の称賛

ロイドはイーシャとサリアのために魔曲の作曲を進めるが、音楽への興味が薄いため完成度に満足できずにいた。そこへ現れたサリアは、ロイドの未完成の演奏に初めて彼らしさを感じたと評価し、感動を表明する。更に家族や仲間たちも集まり、彼の楽曲を絶賛。偶然帰国していたビルギット王女も感銘を受け、大規模な野外音楽フェスの開催を提案する。

音楽フェスの企画と周囲の反応

ビルギットの提案により、「聖王歓迎後夜祭 サルーム野外ライブフェス」の開催が決定する。他国の楽団も招く広域的な催しで、経済効果も見込める計画であった。アルベルトは慎重な姿勢を見せつつも最終的に了承し、周囲の士気も高まっていった。サリアとイーシャの参加も確定し、演奏会に向けた準備が進められるなか、サリアだけが一瞬曇った表情を見せ、ロイドはその違和感を拭いきれずにいた。

ギザルムの復活と聖王の告白

聖王は荒野でギザルムと会話を交わし、自らの魔曲「よびだしのうた」により偶然彼を復活させてしまったことを明かす。意図していなかった魔族の召喚に困惑しつつも、聖王は復活したギザルムの状態に一定の関心を抱く。ギザルムは以前と異なる力や混濁した記憶に困惑し、自身に起きている異変の正体を探ろうとしていた。

サルーム野外ライブフェスの盛り上がり

ビルギットの企画により始まった音楽祭は予想以上の盛り上がりを見せていた。ロイドはメイドたちに連れ出され、街を巡る中で異国の楽団や大道芸、さらには知人であるタオとその祖父チェン、ディアンとゼロフの騒々しい重低音演奏、アルベルトとアリーゼによる動物たちとの協奏曲に触れ、着実にインスピレーションを得ていた。

作曲の完成とベアル復活の準備

街での刺激もあり、ロイドはついに新たな楽曲を完成させる。完成度は高く、仲間たちからも称賛を受けた。目的であったベアルの復活に向け、リハーサルと称して曲を使う準備に入るが、演奏担当であるサリアが姿を見せず、彼女を探すことにする。

サリアの異変と演奏不能の告白

塔の上で物憂げに佇むサリアを見つけたロイドは、彼女が演奏できなくなった事実を知る。彼女は聖王の魔曲「へいわのうた」の影響で闘志を失い、トラウマによって指が動かなくなったと語る。ロイドは魔術による治療も考えたが、精神的問題に手出しするには危険が伴うと判断する。

聖王の登場と責任の表明

突如現れた聖王は、サリアに魔曲の影響を与えたことを認め、謝罪する。しかし直接的な回復は困難であると説明し、代わりにサリアが別のモチベーションを得ることで回復する可能性に言及する。サリアはそれを一蹴し、聖王に責任を取るよう迫る。

フェス代役としての聖王指名

ロイドはフェスの成功と魔曲研究の一石二鳥を狙い、聖王を演奏者として代役に指名する。聖王は戸惑いながらも、サリア本人の了承を得て了承する運びとなる。サリアの本気の怒りと責任感が周囲を動かし、聖王も最終的に折れる形で了承する。

演奏会への布石と次なる展開

サリアの代役として聖王が舞台に立つという異例の事態に向け、ロイドは関係者を集めるべく走り出す。サリアの意志と聖王の力を前に、音楽祭の成功と魔曲のさらなる研究が現実味を帯びてきた。

聖王の代演決定とサリアの苦

サリアの演奏不能を受けて、ロイドは聖王を代役に指名した。皆が疑念を抱く中、聖王はその卓越した演奏技術で周囲を納得させる。一方、サリアは月光の下でピアノと向き合うが、心の壁によって指を動かせず、己の無力に打ちのめされる。そこへ現れた謎の影の男は、「原点」に立ち返ることを助言。サリアは過去を回想し、音楽への情熱の根源が「闘争心」だけでなく、「ロイドの誕生」も一因だったことを思い出すが、気力尽きて倒れてしまう。

サリアの失意と周囲の支え

ロイドは倒れたサリアを部屋に運び、兄姉たちに報告する。皆は心配しながらも、フェスの成功こそがサリアの願いだと理解し、準備に力を注ぐ。聖王も責任を果たすと誓い、演奏に臨む覚悟を示した。

フェス当日の喧騒と準備

フェス当日、ロイドはコニーに起こされ、回復が進んでいるベアルの様子を聞く。街では大勢の人々と演奏で大盛況を呈し、シルファやメイドたちも交通整理に奔走していた。ステージ裏では予選を勝ち抜いたタオが意気揚々と語り、聖王やイーシャも準備を整える。ロイドは新たに編曲した譜面を二人に渡し、自らもカスタネットで参加することを決意する。

ディガーディアとステージ開始

アルベルトの演出で、改造されたゴーレム「ディガーディア」が楽器として登場。イーシャ、聖王、ロイドは即興ながら息の合った演奏を披露し、観客を魅了する。演奏は聖歌のアレンジから始まり、曲を重ねるごとに魔曲の儀式は深化。聖王が意図的にアレンジを加え、イーシャとロイドが応戦することで演奏の質はさらに高まり、壮大な術式が紡がれていった。

サリアの登場

演奏の終盤、ステージにサリアが乱入し、息を切らしながら姿を現す。彼女はかつてのような情熱を取り戻した様子であり、本来この演奏に加わるべき存在として再び舞台へ立とうとしていた。フェスは最高潮を迎え、物語は新たな転機を迎えるのであった。

サリアの覚醒と原点の記憶

サリアはフェスの音に誘われて目覚め、使い魔シロと共に会場へ向かった。演奏を聴きながら、彼女は自らの原点を思い出す。それは、ロイドが生まれた日、空に打ち上げられた爆発魔術の音に心を打たれたことに端を発する強い「闘争心」であった。その記憶に触れたことでサリアは完全に復活し、ステージに乱入して聖王と共にピアノを演奏する。サリアは過去最高の演奏を見せ、ロイドも魔術による演奏で応戦。三者の力が合わさった演奏は極限に達し、観客も演者も力尽きて気を失うほどのものであった。

魔王ベアルの完全復活と無視される現実

演奏の終焉と同時に、雷鳴と共にベアルが復活する。魔曲の力によって完全な状態に戻ったベアルは威勢よく自己紹介を始めるが、周囲の誰も反応しない。観客や関係者は演奏の余韻に圧倒されて意識を失っていたためである。目的であった聖王へのリベンジも果たせず、聖王は既に姿を消していた。

夜の対話と聖王の真意

一方、夜の中でギザルムは聖王に疑問をぶつける。魔王を封じる立場にありながら復活に協力した理由を問うが、聖王は「面白そうだから」とあっけらかんと答える。互いに気まぐれだと語り合いながらも、聖王の内面に秘めた複雑な感情と、神に対する反抗心が仄めかされる。

融合実験とロイドの魔力体の暴走

コニーの部屋にて、ロイドはベアルに融合の提案を受け、自らの魔力体を構築し、融合実験を敢行する。しかし融合後、ロイドの意識は魔力体側に引き寄せられ、身体と魂が入れ替わってしまう。グリモやジリエルも魔力体に吸い寄せられ、ロイド本体は無意識状態となる。

融合の混乱と自己再分離

ロイドは融合した状態から脱出を試み、繋ぎ目を探して自己の魔力構造を解析。最も弱い箇所を切断することで分離を試みた結果、意図せずコニーが外へ弾き出される。このことから融合の解除が極めて困難であることが示され、ロイドは新たな解決策を探る決意を固める。

レンの来訪と即興人格の失敗

そこへメイドのレンが現れ、ロイドは状況を誤魔化すために「ロイドらしい」人格を魔術で再現するが、性格の乖離が激しく、レンとコニーは呆れる。だが、意外にもその性格がシルファには受けそうであるということで、暫定的な対応として受け入れられる。

日常への回帰と聖王の謎

演奏会を経てロイドとベアルの関係は一層複雑になるも、今後の対策と研究に意欲を燃やすロイドは現状を前向きに受け入れる。一方、演奏直後に姿を消した聖王について、その正体と目的には依然として謎が残るままであった。

聖王と神の対立

白き空間にて、神は聖王の行動に対し厳しく追及した。命じたはずの魔王ベアルの討伐をせず、むしろ復活を許したことに怒りをあらわにする神に対し、聖王は冷静に反論を重ねる。
彼は魔族であるベアルを無条件に悪と見なすことに疑問を呈し、「聖王だからこそ、力で押さえつける前に相手の本質を見極める義務がある」と強く主張する。これに神は激しく怒るも、最終的には落胆の言葉と共に聖王を純白の光で消し去った。聖王は神の意向に逆らった代償としてその姿を消すこととなった。

融合解除への試行錯誤

一方、ロイドはベアルとの融合解除に向けてあらゆる方法を試すも、全て失敗に終わった。瞑想・肉体破壊・封印魔術といった手法では融合体を分離するには至らず、自身の魔力の強さが逆に妨げとなっていた。
ロイドたちは海に浮かぶ巨大氷塊で実験を続けたが、何をしても身体はびくともせず、状況は打開されなかった。

魔力の異常さと「天界」の鍵

ベアルによると、過去に「暴食の魔王グラトニー」が天界に攻め入ったという逸話が存在した。グラトニーは融合により最強となった魔王であったが、神に目を付けられたことで逆に天界を襲撃。三日三晩の戦いの末、彼は戻らず、彼に取り込まれていた魔族たちが空から降ってきたという。
この逸話から、天界には「融合を解除する力」があるとロイドは推察する。さらに、ジリエルの言葉によって「唯一神の前ではすべての存在が元の姿に戻る」との伝説も明らかとなり、ロイドは決意を固める。

天界行きを決断

融合解除の唯一の希望として、ロイドは「天界へ向かい神に会う」ことを目標に定めた。融合術の解析と再現という新たな知的好奇心も加わり、彼の中にはかつてないほどの探究心と期待が高まっていた。

次なる舞台は天界。魔術の極致を目指すロイドの旅は、新たな局面を迎えるのであった。

天界への突破と異常事態

ロイドはジリエルの案内で天界への転移を試みるも、次元の扉は閉ざされていた。だがロイドは魔力量に物を言わせ、強引に次元の壁を突破。圧倒的速度で一直線に突き進み、迷うことなく天界へ到達する。そこは雲の上の世界であり、ジリエルは天馬を呼び出し、神の大宮殿へ向かうための移動を開始した。

魔力の圧に怯える天馬とロイドの対処

ロイドの魔力に天馬が恐れを抱き逃走するが、ロイドは治癒魔術を併用することで天馬の身体に直接上下関係を叩き込み、乗馬に成功。さらに身体強化の魔術を応用して天馬の移動速度を劇的に向上させ、神への謁見に向けて空を駆けた。

天界の神将・アルカトラズの襲撃

移動中、突如として飛来した光の矢がロイドを襲撃。その矢を放ったのは、天界64神の一柱・アルカトラズであった。彼はジリエルに「堕天処分」が下されたことを告げ、ロイドの存在を「魔王と融合した危険な者」として断罪しようとする。

圧倒的実力差と無意味な拘束

アルカトラズは神具「監獄神鎖」によってロイドを拘束するが、ロイドはそれを軽々と粉砕。逆にアルカトラズ自身がロイドの尻尾の一撃で吹き飛ばされてしまう。天界神将の力をも凌駕するロイドの実力が明らかとなり、アルカトラズの監視下にある天界の監獄が次なる目的地となった。

聖王の監禁と拷問、そして脱出

天界の牢獄では、神の怒りを買った聖王が拘束され拷問を受けていた。だが聖王はまるで意に介さず、余裕の態度を崩さない。焦った拷問官は聖王の故郷を映し出し、光の矢で破壊しようとするが、その瞬間ギザルムが現れ、拷問官を排除する。

聖王は自力で拘束を破り脱出。神の力を行使できない状況にもかかわらず、神の鎖すら砕いたことに疑念を抱くが、それも「魔曲」という不安定な能力の気まぐれと割り切る。神への皮肉を残しつつ、彼は監獄を後にした。

神との対決への期待

ロイドは神に会うため天界の奥地へと向かい、聖王は牢獄を脱し再び自由の身となった。魔術の極致を目指す者と、神に対して真の意味で向き合う者。二人の歩みが交錯し、いよいよ神との直接対面が迫りつつあるのであった。

天界の監獄へ潜入

ロイドは天界の果てにある監獄へと到達した。黒雲と雷鳴に覆われたその場所は、従来の天界とは一線を画す異質な空間であった。建物は「獄雲母」と呼ばれる特殊な物質でできており、極めて高い硬度を誇るはずだったが、ベアルの一撃であっさり破壊され、さらにロイドの治癒魔術によって簡単に修復された。中に足を踏み入れると、内部では天使と何者かの戦闘が繰り広げられていた。

再会する聖王とその信念

監獄の中で出会ったのは、なんと拷問を受けていたはずの聖王であった。ボロボロの状態ながら天使兵を蹴散らしており、ロイドたちに再会する。ベアルは仇敵として襲いかかろうとするが、ロイドが制止。聖王は、魔王を無条件で殺そうとする神の方針に異を唱えたことから監禁されていたと明かす。彼は魔族であれ何であれ、行き過ぎた行動には否を唱えると語り、ベアルの人間社会での在り方に理解を示していた。

脱獄と道案内

神に意見するため脱獄を目指す聖王は、ロイドたちを近道があると言って導こうとするも道に迷う。しかし、途中で遭遇した老人・リーゴオがかつて神の執事であり、わずかに皿を割っただけで千年以上監獄に繋がれていたという事実が判明。彼の導きで本当の近道を発見する。リーゴオは監獄の奥にある転移装置の存在を明かし、それを起動させた。

神殿への転移準備

転移装置は魔術陣による超高速推進方式で、対象を光のごとき速さで神の宮殿へと運ぶというものだった。魔力体であるロイドは問題ないが、聖王は普通の人間でありそのままでは耐えられない。そこでロイドは超高硬度の魔力障壁と治癒魔術を駆使して聖王を保護。聖王の不安をよそに、無理やり転移装置を作動させ、旅路の次なる段階へと踏み出すのであった。

神の宮殿への到達と再びの邂逅

ロイドたちは転移装置を通じて神の宮殿へと辿り着いた。聖王も無事転移を果たし、神の大広間で姿を現したのは、神を名乗るしわがれた声の主。聖王はあらためて神へ苦言を呈すが、神はこれを戯言と断じ、彼を騙し討ちにかかる。だがベアルが身を挺して防御に入り、致命傷を回避した。神は聖王に失望を告げ、最上階に自らの元へ来るよう挑発する。聖王は説得の意志を見せ、ロイドも神の魔力の波長を辿って空間転移で最深部へ向かった。

神の正体と真の力

到達した空間は最上階ではなく、天界の底にある特異な白の空間。神を名乗る者と対峙したロイドは、その圧倒的な魔力に対して興味を示す。激戦の末、ロイドは神罰の杖を破壊・再現し、火球を放つも、神はほぼ無傷で立ち上がった。戦いは神の「真の力」へと移行する兆しを見せたが、そこに現れたのは聖王だった。64神を説得し倒した彼は空間の異変に巻き込まれ、漆黒の泥に飲まれる。

正体露見と暴食の魔王グラトニー

泥は空間全体を包み、やがて正体を現した神は、暴食の魔王グラトニーであった。かつて神を討ち、その座を乗っ取った彼は、聖王を含めた数々の存在を吸収して力を得ていた。64神も既に配下の魔族であり、聖王制度も融合用の器を得る手段に過ぎなかった。融合を果たしたグラトニーは、その力を全開にしてロイドに挑みかかる。

圧倒的な実力差と冷静な戦術

しかしロイドはその圧倒的な魔力制御と技術でグラトニーを凌駕していく。感情に依る増幅や力押しを多用するグラトニーに対し、ロイドは物理法則と魔術制御を駆使し、冷静かつ合理的に攻撃を叩き込んでいった。魔力糸の張力や遠心力、大槌、気孔牙など多彩な手段によりグラトニーを追い詰め、最上位魔術『焦熱炎牙』で空間すら焼き尽くすが、なおもグラトニーは立ち上がる。

力の差の証明と戦意の喪失

それでも、ロイドの展開した多数の魔術により、グラトニーは完全に戦意を喪失。実は先ほどまでの攻撃が「小手調べ」であり、ロイド自身は全力を出していなかったことを知り、彼は絶望する。ベアルもグラトニーの攻撃が全力であったことを確認し、戦力差は明白となった。ロイドは聖王との対話の方が得るものがあるとまで言い放ち、グラトニーの怒りを買う中、戦いの決着は事実上ついたのであった。

勝敗の決定的差とグラトニーの策謀

ロイドとグラトニーの戦いは、明確な力の差を伴っていた。魔力量ではグラトニーが上であり、聖王の身体を使っているために損傷も抑えられていたが、ロイドの攻撃はそれを上回る質と多様性を誇っていた。グラトニーは術式の工夫で反撃を試みるが、ロイドはそれらをことごとく打ち破り、次々と対応してみせた。

詐術による逆転の試みと失敗

追い詰められたグラトニーは、口八丁によってロイドを騙し、油断を誘って殺す計略に出た。神を演じ、融合解除を持ちかけ、ロイドを無防備にさせようとする。しかしロイドの魔力体はすでに全身に術式が刻まれた超高密度の構造であり、グラトニーの攻撃は一切通じなかった。それどころか、ロイドは攻撃に気づかず無反応なまま立っており、真に力の差を悟ったグラトニーは恐怖に駆られて逃走を始めた。

回想される「主」と真なる変貌

逃げ惑う中でグラトニーは、かつて自分を拾い上げてくれた始祖の魔王「ベルゼヴィート」の記憶を思い出す。その恐怖と憧れに突き動かされた彼は、己の力を最大限に引き出し、主の姿を模した形態へと変貌。魔力は極限にまで高まり、天と地を貫くような圧倒的な連続魔術をロイドに浴びせた。

星すら操る圧倒的な魔術の応酬

しかしロイドは魔術『吸魔』により全てを吸収、同時に術式の解析を進めていた。新たに得た魔術理論により、ついには星そのものを操作し、地形や環境ごとグラトニーを翻弄。火山、海底、密林など次々と過酷な環境へと放り出し、まるで玩具のように扱った。グラトニーはそれらを為す術もなく耐え続けるしかなかった。

グラトニーの回帰と敗北の受容

弄ばれ続ける中で、グラトニーは不思議と安らぎを感じていた。かつての主に玩具として扱われた日々、それは恐怖でありながらも、唯一親愛の情を感じられた時間だった。今、自分はまた同じように扱われている。戦うことが無意味だと悟ったグラトニーは、憑き物が落ちたように穏やかな表情を浮かべ、主の名を呟きながら静かに意識を手放すのだった。

グラトニーの消失と神の再臨

激戦の末、グラトニーの気配は完全に消え去っていた。ロイドが見つけたのは一匹のネズミ。それはかつてのグラトニーであったかもしれないが、詳細は不明のまま消え去った。神の声が再び空から響き、グラトニーが「輪」に還ったと語られた。

神の正体と復位

ロイドが招かれた白き空間には、かつての神であり、今や元執事・リーゴオとして行動していた男がいた。彼こそが本物の神であり、長らくグラトニーに力を奪われ幽閉されていたという。ロイドはその働きを讃えられ、融合解除の願いを叶えられた。

元の身体への帰還

ロイドは無事、元の身体に戻る。魔力体の自由さと膨大な力には未練もなく、自分の身体の方が落ち着くと語る。周囲からの声も少なく、研究に集中しやすくなったことを喜ぶのだった。

聖王の変化とギザルムとの共謀

一方、聖王は神という存在の不完全性を悟り、己が神になろうという決意を抱く。そのために魔王の座を狙うギザルムと手を結ぶ。互いに相手を利用しようとする腹の内を見透かしながらも、共闘の道を選び、それぞれの野望へと歩み出すのだった。

天界事変の終結と地上への回帰

神が座を取り戻し、聖王も職務に戻り、ベアルも封印を免れ、天界事変はひとまずの終焉を迎える。だがギザルムの処遇は明言されず、不穏な影を残すこととなった。

残された課題とロイドの憂鬱

ロイドが目を覚ますと、周囲には彼の復帰を待ち構えていた面々が勢揃いしていた。自動制御人格が対応していた間に積み上がったスケジュールは殺人的な量となっていた。かつての“やる気のない第七王子”というイメージが崩れており、誤魔化しのための分裂魔術すら検討する羽目に陥る。サリアの含み笑いを背に、ロイドは新たな課題に憂鬱な気分で臨むのだった。

以上をもって、『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』第8巻の全編が完結する。次なる探求の舞台は、いよいよ魔界か——。

同シリーズ

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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます
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その他フィクション

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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