物語の概要
ジャンル:
青春ラブコメディである。学園のカースト制度に属する“超リア充”男子が、夏の青春に再び挑む群像劇である。青春の熱や葛藤が真摯に描かれる一冊である。
内容紹介:
インターハイ予選を終えた7月のある日、青海陽がバスケ部の新キャプテンに就任する。朔はその眩しい姿に心を揺さぶられながら、自らが決別した過去と向き合うことになる。そんな折、休部していた野球部のエース・江崎が現れ、朔にかつての“チームのため”の再加入を求める。自分で止まっていた時計にもう一度音を立たせるような、挫折と再起の“熱い夏”が描かれる。
主要キャラクター
- 千歳 朔(ちとせ さく):本作の主人公。リア充カーストの頂点に立つ男子でありながら、過去の挫折を抱え、自らを再定義することに葛藤を抱えている青春像である。
- 青海 陽(あおみ よう):バスケ部のエースにして、新たにキャプテンとなった少女。朔の心を揺さぶる、ときに照らし、ときに癒す存在である。
- 江崎(えざき):かつて朔が所属していた野球部のエース。朔に対し「戻ってきてほしい」と突然の要請をすることで、朔の“心の時計”を再び動かすきっかけを与える人物である。
物語の特徴
本作の魅力は、主人公がただモテるだけでなく、誰よりも強いリア充でありながら「かつての自分と向き合い、再起を決意する姿」が描かれている点にある。スポーツを軸とした青春と、心の葛藤が丁寧に重なり合い、読者にリアルな共感と感動をもたらす。人間としての弱さと強さを同時に追う青春譚は、類型とは違った深みを宿している。
書籍情報
千歳くんはラムネ瓶のなか 4
著者:裕夢 氏
イラスト:raemz 氏
レーベル/出版社:ガガガ文庫/小学館
発売開始:2020年9月18日
ISBN:9784094518665
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あらすじ・内容
あの夏の、忘れ物を拾いにいこう。
インハイ予選を終えた7月。陽はチームの新キャプテンになった。
仲間とぶつかり合いながら切磋琢磨し、ともに高みを目指す日々。その姿はやけに眩しく、俺の心を揺さぶった。
そんなとき、野球部のエース、江崎が現れる。
「朔……頼む、野球部に戻ってくれ。どうしても、お前の力が必要なんだ」
――あの暑い夏の日。自分で止めた時計が、もう一度音を立てて動き出した。
これは、挫折と葛藤、そしていまだ胸にうずく“熱”の物語。
あの夏を終わらせて、もう一度、夏を始めるための物語。
感想
読み終えて、胸の奥にじんわりと熱いものが込み上げてきた。表紙を飾る陽が、バスケ部の部長としてチームを引っ張っていく姿は、頼もしいけれどどこか危うさも感じさせた。
物語の中で、陽がチームメイトとの間に軋轢を生んでしまう展開は、読んでいて心が痛んだ。それは、かつて野球を辞めた千歳のエピソードと重なり、一層心を揺さぶられた。どれだけ努力しても、才能のある人には追いつけない。そして、才能のある人は、できない人の気持ちを理解できない。そんな言葉が、陽と千歳を深く傷つけているのが伝わってくる。
特に印象的だったのは、野球部から去った千歳に、チームメイトたちが戻ってきてほしいと懇願するシーンだ。それに対して、千歳が怒りをあらわにする場面は、彼の抱える葛藤や苦悩が爆発した瞬間であった。
この作品は、単なる青春物語ではなく。挫折や葛藤、そして過去の傷と向き合いながら、もう一度立ち上がろうとする人々の姿を描いていた。あの夏、自分で止めてしまった時計の針を、もう一度動かそうとする千歳の姿は、読んでいる私にも勇気を与えてくれた。
誰にだって、過去にやり残したことや、後悔していることがあるだろう。この物語は、そんな忘れ物を取りにいく勇気をくれた。そして、過去の夏を終わらせ、新しい夏を始めるための物語がは始まったと感じた。
『千歳くんはラムネ瓶のなか 4』は、熱い展開と人間ドラマが詰まった、読み応えのある一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
プロローグ 探した夜空
敗北と劣等感の自覚
走っても跳んでも届かず、負けることに慣れ、劣等感と共に歩んできた過去が語られていた。何度壁にぶつかっても前進を続け、与えられた名にふさわしい存在であろうと信じていたのである。
孤独と不安の影
進む先に自分のような存在はいないと感じ、ひとりぼっちに怯える夜があった。努力してもどうにもならない現実や、空回りに囚われる恐怖を抱えていた。
炎を失うことへの恐れ
もっとも恐れたのは、心の中の情熱が小さなきっかけで消えてしまい、薄い笑顔のまま足を止めてしまうことであった。その不安が心を支配していた。
後悔しない今への問いかけ
十年後、二十年後に振り返って誇れる今を生きているのか、情熱が他者の心に届いているのかと自問していた。全力で駆け抜けることの意味を問い続けていた。
情熱の証明と探し求める存在
小さな身体で情熱を証明し、泥臭く努力する姿が格好悪いものではないことを示そうとした。間違わず見失わず、自分を諦めないために、心の情熱を受け止めてくれる大きな月を探し続けていたのである。
一章 放課後プールに裸足のポニーテール
夏の気配と体育館の練習
季節の移ろいを感じながら体育館を訪れると、青海陽や七瀬悠月らが率いる女子バスケットボール部の練習が行われていた。試合形式の練習では、陽がノールックパスやシュートを決め、七瀬も得点を重ねていた。練習後、陽は仲間たちに厳しく指摘を与え、キャプテンとしての責任感を示した。副キャプテンの七瀬は罰走を指示し、チームを鼓舞していた。
部活動と環境の制約
藤志高校は進学校であり、授業時間や部活動制限が厳しいため、強豪校に比べ練習時間は短かった。そのため陽は質を高める必要性を説き、チームを引き締めていた。新キャプテンとしての姿勢がはっきりと示されていた。
キャッチボールと成長の実感
放課後、陽と千歳は近くの公園でキャッチボールを行った。陽は運動神経の良さと努力の積み重ねにより、動作の理解と修正が早かった。千歳はその姿に、積み重ねた時間の大切さを感じていた。七瀬が合流し、三人でアイスを分け合いながら和やかな時間を過ごした。
敗戦の記憶と東堂舞の存在
会話の中でインターハイ予選の敗北が話題となった。芦葉高校のエース・東堂舞は圧倒的な存在感を示し、陽や七瀬でさえもかすむほどの選手であった。小柄な陽にとって大きな壁であり、彼女は次こそ打倒芦高を誓っていた。
仲間との軽口と火花
七瀬と陽は互いの実力や女子力を巡って言い争いを始め、やがて1対1の勝負へと発展した。千歳は審判役を押しつけられ、日が暮れるまで得点を記録し続けることになった。青春の熱気と仲間同士の火花が交錯する夏の始まりが描かれていた。
壮行会と複雑な思い
全校生徒が体育館に集まり、インターハイ出場部や甲子園予選を控える野球部の壮行会が行われた。壇上には野球部や個人種目の代表者が並んでいた。青海陽は緊張や敗北の実感を口にし、千歳は自身の過去を思い出していた。ステージ上の野球部には旧チームメイトの江崎祐介の姿があり、キャプテンとなった彼が決意を述べる様子に視線を向けていた。
綾瀬なずなとの対話
放課後、千歳は教室でひとり窓辺に座る綾瀬なずなと出会った。彼女は中学時代にバスケで県ベスト8の経験を持ち、七瀬のプレーに憧れていた過去を語った。七瀬や陽に敗れた経験から、自身の限界を悟ったことを打ち明ける。その素直な心情は、亜十夢の境遇と重なる部分があることを示唆した。さらに、彼女は決勝で青海に勝った東堂舞の存在にも触れた。
購買での優空とのやりとり
翌日の昼休み、千歳は陽と七瀬の頼みで購買へ向かい、偶然優空と出会った。彼女が弁当を忘れて困っていたため、千歳はパンを分け与えた。優空は感謝を口にし、ふたりは連れ立って体育館へ向かった。そこで練習中の女子バスケ部を見守りながら、部活動の在り方や自分たちの立ち位置について語り合った。優空は競争が苦手で、音楽を楽しむ姿勢を大切にしていると明かした。
約束と揺れる感情
千歳は優空にいつかサックスを聴かせてほしいと頼み、彼女は「そのときは隣にいる」と答えた。その直後、陽と七瀬がフリースローで互いに競い合い、練習を締めくくった。熱気の中で千歳は優空の横顔を見つめ、彼女の言葉の意味を測りかねていた。
綿谷教師との遭遇
練習後、綿谷という体育教師が現れ、昼練に疑義を呈した。七瀬が冷静に許可を得ていることを説明し、場を収めた。しかしその後、綿谷は千歳を見つけて「見られたもんじゃない」と吐き捨てた。千歳もまた「カントク」と呼び返し、緊張した対峙が生まれた。重苦しい空気を陽が茶化して和らげ、事態は収束した。千歳は陽の行動に照れ隠しをしつつも感謝を述べ、優空もまた礼を告げた。陽は拗ねながらもビスケットを頬張り、空気が和んでいった。
昼休みの騒動と居眠り
教室に戻った千歳たちは、陽と優空のやりとりを中心に仲間たちと賑やかに過ごした。和希や健太も加わり、軽口を交わす中で授業が始まった。五限目の現代文では、疲れ切った陽が熟睡し、千歳はその寝顔に女の子としての魅力を意識してしまった。思わず髪を払った際に名前を呼ばれて動揺するが、その直後に蔵センに叩かれ、ふたり揃って居眠りを咎められた。結局ペナルティとして、翌日の放課後にプール掃除を命じられることとなった。
夜の素振りと明日姉との再会
その夜、千歳は川辺で木製バットの素振りを行っていた。野球を辞めても続けてしまう習慣に、自らの迷いや未練を重ねていた。そこに明日姉が現れ、意外な再会を果たす。彼女は千歳の練習を見守り、辞めた理由を問うが、千歳は核心を語れずにいた。互いに軽口を交わしながらも、野球や過去の思い出に触れる中で、変わらぬ絆と複雑な感情が交錯した。素振りを終えた千歳は明日姉を送り届け、彼女の「素敵な夏になるといいね」という言葉を胸に刻んだ。
プール掃除の決定
翌日、千歳と陽は職員室で蔵センから掃除道具を受け取り、美咲先生にも声をかけられた。美咲は陽に対し「キャプテンだからこそ部活を休み、手本を示せ」と告げ、練習への参加を許さなかった。陽は不満を抱きつつも従うしかなく、千歳とともにプール掃除に臨むこととなった。これが新たな出来事の始まりを予感させていた。
祐介の勧誘と千歳の拒絶
陽とともにプール掃除へ向かう途中、千歳は旧相棒である祐介に呼び止められた。祐介は野球部の名簿を示し、監督が千歳を選手登録し続けていた事実を告げて「戻ってきてほしい」と懇願する。しかし千歳は過去のしこりと怒りを爆発させ、壁を殴ろうとしたところを陽に必死に止められる。彼女の真っ直ぐな言葉に心を救われ、千歳は祐介にきっぱりと「二度と野球部のためにバットは振らない」と宣言し、決別のけじめをつけた。
プール掃除とふたりの距離
夕暮れ、千歳と陽はプールを磨き上げていく。陽は無邪気にホースで千歳に水を浴びせ、やがて水遊びに発展する。バケツの水をぶちまけられてずぶ濡れになった陽は、恥じらいながらも「千歳にならいい」と呟き、女の子としての一面をのぞかせた。千歳は動揺しながらも冗談を交わし、互いに水を掛け合ううちに緊張は和らいだ。やがてふたりは疲れ果ててプールの底に寝転び、赤く染まる空を眺めながら静かな時間を共有した。
陽の告白めいた言葉
横に並んで夜空を見上げる中、陽は去年の夏に千歳の試合を観に行ったことを語り、「あんただけが甲子園に行けると本気で信じていた」と打ち明けた。その言葉に千歳は胸を衝かれ、照れ隠しのように彼女の肩に軽くぶつける。沈黙の中、ふたりの距離はわずかに近づき、夕暮れから夜へ移り変わる時間が二人だけの特別な思い出となっていった。
二章 ぷんぷん織り姫としくしく彦星
野球に魅せられた過去
千歳は夢の中で、自身の野球人生をなぞっていた。小学校では遊び感覚で始めた野球にのめり込み、中学では理不尽な上級生に耐えながら仲間と力を合わせ県大会優勝を果たす。やがて強豪校から誘いを受けるも「一から這い上がる方が面白い」と進学先を選び、高校では祐介ら実力者たちと運命的に出会い甲子園を目指す。しかし現実では夢破れ、野球を失った喪失感と、未練を抱えたままの日々が続いていた。
夕湖とのデートと揺れる関係
休日、千歳は約束を忘れて寝過ごし、夕湖との待ち合わせに大遅刻する。怒る夕湖をなだめながらデートを楽しむが、話題は自然と野球に及ぶ。千歳が「戻らない」と断言すると、夕湖は「特別を失うのは怖い」と本音を漏らす。そして「朔が私の特別」と真っ直ぐに伝えるが、なずなと亜十夢が合流したことで空気は一変。なずなは「この関係は曖昧すぎていつか壊れる」と切り込み、夕湖は「雑に扱ってくれたから特別になりたい」と反論する。二人の激しいやり取りの裏で、千歳と亜十夢は過去の因縁を語り合い、互いに心の中に野球への未練を抱えたままであることを意識させられた。
東堂舞との邂逅
週明け、藤志高女バスの練習に芦高の顧問・冨永とエースの東堂舞が現れる。陽は勢いで東堂に1on1を挑むが、美咲先生と冨永から「小柄なお前と勝負しても意味がない」と現実を突きつけられる。傷つきながらも必死に食い下がる陽に対し、東堂舞は「やろう」と即答。冨永の制止を振り切り、陽の挑戦を受け入れる。その瞬間、陽は強がりを込めて「藤志高スモールフォワード青海陽」と名乗り、まるで誇示するかのように笑った。その姿を、七瀬は複雑な表情で見守っていた。
――陽の挑戦が、彼女自身の存在意義を証明する戦いの幕開けを告げていた。
東堂舞との対戦
東堂舞と陽の1on1は、チームメイトや七瀬の注視の中で始まった。東堂は外からの得点力を封じるルールを自ら課し、先攻を譲るという余裕を見せる。序盤こそ陽のスピードと低いドリブルが冴え、連続得点に成功するが、やがて東堂は戦い方を変え、シュートコースを潰す堅実なディフェンスで陽を封じた。長身ゆえの高さと滞空力の差は歴然であり、陽の工夫したシュートも容易にブロックされてしまう。結局、陽はその後一度も得点を奪えず、完敗を喫した。
残酷な現実と陽の動揺
観客となった部員たちは「二十センチの差」がすべてを決めたと口々に語り、陽の小柄さを限界として指摘した。陽自身もその現実に打ちのめされ、姿を消してしまう。美咲先生は「もっと先を見ている」と信じつつ、千歳に彼女を迎えに行くよう命じる。藤棚の下にいた陽は、涙を見せる代わりに強がり混じりで笑っていたが、名前を覚えられていなかったことに深く傷ついていた。
千歳との対話
千歳は彼女を気遣いながらも真摯に語りかけた。舞もプレーを記憶していたはずだと伝えると、陽は少しだけ救われた表情を見せる。やがて陽は問いかける。「努力は必ず報われると思う?」――その切実な疑問に、千歳は「努力は必ずしも夢を叶える保証ではないが、自分の成長という意味なら必ず報われる」と答えた。そして「答えを知りたければ自分で確かめろ」と背中を押す。陽はその言葉に奮い立ち、挑戦的な笑みで「愛してる」と冗談めかして返した。
未来への決意
陽は「私も戦う。千歳も逃げるな」と言い残し、再び体育館へ戻っていった。その直後、野球部の練習から放たれた特大ファールボールが飛来し、千歳は反射的にそれをキャッチして力強く投げ返した。陽と千歳、それぞれが己の道を見つめ直し、夏の戦いに向けて新たな決意を固める瞬間であった。
蛸九での昼食と恋の話題
千歳、和希、海人、健太、陽の五人は、昼休みにこっそり抜け出して「蛸九」で名物の学生ジャンボ焼きそばを食べていた。和やかな雰囲気の中で、海人が健太に「好きな子はいるのか」と切り出し、恋の話題が広がる。健太は「友達と好きな人が重なったらどうするか」と問いかけ、場は一瞬重苦しくなるが、海人や陽がそれぞれの考えを語り合い、笑いに変わっていった。陽は「譲りたくない、自分の役目としてそばにいたい」と真剣に口にし、彼女らしい強さを示した。
綿谷の異変と監督の影
店内に現れたのは、規律に厳しいことで知られる監督・綿谷だった。叱責を覚悟した千歳たちだったが、彼が漏らしたのは「ざまあないと思ってるんだろうな」という弱々しい言葉だった。監督のそんな姿は初めてで、千歳の心には祐介の選手登録を残し続けていた理由と重なり、不穏な予感がよぎる。さらに店主からは「監督はずっと塞ぎ込んでいた」と告げられ、千歳は複雑な思いを抱えた。
野球部員たちの来訪
放課後、千歳の前に祐介を除く野球部員八人が現れる。代表して平野が「祐介が練習試合で足首を負傷し、初戦に間に合わない」と告げ、頭を下げて「戻ってきてほしい」と頼み込んだ。相手は強豪・越前高校。投手戦必至の展開で、祐介を欠いた打線では勝ち目が薄いという。千歳は突き放しつつも、試合の攻略法を伝える。しかし胸の奥には「祐介が自分にだけは伝えるなと言った」という平野の言葉が刺さり続けていた。
陽の怒りと千歳の決意
説得の場で黙っていた陽が突如怒りを爆発させ、平野に掴みかかる。「なぜ千歳が辞めるときに止めなかった」と迫り、当時の仲間の在り方を激しく非難した。だが千歳は陽を制し、「自分の気持ちは変わらない」と言い切る。仲間たちは悔しさを抱えつつも去っていき、千歳は去り際に平野へ投球プランを助言した。最後に陽は千歳の手に自分の手を重ね、「今日はひとりで帰っちゃ駄目。連れて行きたい場所がある」と告げ、彼を支え続ける決意を示した。
――祐介の怪我、監督の苦悩、仲間たちの懇願。それらが千歳の心を揺さぶり、夏の行方を大きく変えていく気配を孕んでいた。
足羽山での対話
陽に連れられて千歳が訪れたのは、福井の足羽山の展望スポットであった。夜景を前に並んで腰を下ろし、陽は「ここは凹んだときに叫ぶ場所」と語る。悔しさや迷いを吐き出し、それでも仲間と共に戦うために心を立て直してきたのだと。彼女の真っ直ぐな言葉に、千歳の心は少しずつほどけていった。
秘密の告白と過去の真実
陽はかつての賭けを持ち出し、「いまここで弱音を吐け」と千歳に迫る。千歳は、野球部を辞めるまでの経緯を語り出した。監督・綿谷の理不尽な指導、祐介への不当な処遇、そして自らもペナルティとして徹底的に外されていった日々。最後に耳にしてしまった仲間たちの心ない会話と、祐介の「持っている人間に持たない者の苦悩はわからない」という言葉が決定打となり、退部届を出した過去を明かす。語り終えた千歳の心には惨めさだけが残った。
陽の叱責と涙の抱擁
沈黙を破ったのは陽だった。彼女は怒りを露わにし、「人生全部をかけていた野球をなぜ捨てたのか」と千歳を糾弾する。インターハイで敗北し絶望した自分を救ったのは、千歳が絶望的な状況でも笑い、仲間を鼓舞し、ホームランを放った姿だったと涙ながらに訴える。そして「そんなあんたがださい退場をしてんじゃねぇ」と胸を殴り、魂ごと揺さぶった。千歳はついに嗚咽を漏らし、陽の胸に抱きしめられて泣き崩れる。ずっと望んでいたのは慰めではなく、「逃げ出した弱い自分を叱ってほしかった」のだと悟った。
再び歩き出す決意
涙を流し切ったあと、ふたりは手をつなぎ、星空の下で静かに語り合った。千歳は「戻る気持ちは揺れている」と正直に打ち明け、祐介や平野のために力を貸したい想いと、自分の中でまだ割り切れない迷いがあることを吐露する。陽はそれを否定せず、「あと少しだけ考えればいい」と支えた。七夕の夜、ふたりは互いの願いを口にし、織り姫と彦星の冗談を交わしながら心を重ねる。最後に陽は「キスしよっか」と言い、千歳は「そういうあんたは嫌い」と返す。それでも陽は笑い、「そういうあんたを愛してるよ」と告げた。
――その言葉は、千歳にとって胸の空白を埋めるあたたかな光となり、再び夢を見つめ直す力を与えていた。
三章 ハートに火を点けて
陽の倒 collapse
足羽山での夜を過ごした翌日、千歳は筋肉痛を抱えつつ学校へ。昼休み、女バスの練習を見学していた最中、熱を帯びた陽が指示を飛ばしていたが、突然膝から崩れ落ちて倒れる。千歳が抱えて保健室へ運び込むと、原因は貧血か脱水症と診断される。意識を取り戻した陽は気丈に振る舞おうとしたが、千歳にからかわれつつも、疲労と無理が積み重なっていたことを打ち明けた。
孤立するキャプテン
保健室を離れた千歳は、体育館で耳にしたチームの本音に衝撃を受ける。インターハイを目指す気持ちはあるものの、「そこまで必死になりたくはない」という生徒たちの声。陽の厳しい姿勢は「暴走」と受け止められ、孤立を深めていた。千歳は七瀬に問いかけ、「キャプテンになってからずっとだ」と告げられる。
七瀬の告白
その夜、千歳の家を訪れた七瀬は、夕食を共にしたあとで真実を語った。インターハイ予選敗退後、新チームの目標は「頂点」だった。しかし陽は「仲間に火を点ける」ため、自ら鬼となる道を選んでいた。本気になるのを恐れる部員たちに、自らの背中で「熱さは恥ずかしくない」と示そうとしていたのだ。そして七瀬には副キャプテンとして「裏での支え役」を託していた。だが、陽の熱意は空回りし、チームは分裂寸前だった。
千歳への託し
七瀬は涙をにじませながら「ウミをお願いだよ」と千歳に託す。陽は誰にも弱音を吐かず、むしろ千歳の弱さを受け止めていた。千歳は、彼女が孤立の中でも必死に戦っていたことを悟る。
決裂の予兆
翌日の放課後、体育館でついに衝突が表面化する。「もっと粘れるはず」と陽に言われ続けた部員の一人、センが声を荒げて反発した瞬間、チームの緊張は一気に臨界点へと達した。七瀬の懸念通り、女バスは割れる危機を迎えようとしていた。
——「ハートに火を点ける」ために鬼となった陽の挑戦は、仲間に届くのか、それとも…。
陽と仲間の対立
女バスの練習中、陽は部員たちに本気を求め続けたが、センやヨウは「才能があるから言える」「身長を言い訳にできる」と反発し、ついにボールを叩きつけて体育館を去ってしまう。残ったのは陽ひとり。七瀬が「ウミをお願い」と千歳に託し、千歳は立ち尽くす陽の背に手を置いた。陽は仲間を失った孤独に震え、「不完全な自分には仲間がいなければ飛べない」と涙をこらえながら吐露した。
屋上での弱音と誓い
千歳は陽を屋上に連れ出し、サイダーを手渡す。陽は「自分のやり方は間違っているのか」「本気の加減とはどこにあるのか」と迷いを吐き出す。千歳は答えを持たないままも、「結末は自分で見届けろ」と支え、「俺ももう一度バットを振る」と告げた。互いに背中を預け合い、今年の夏を迎える決意を固めた。
野球部への復帰
その夜、千歳は監督に「一回戦だけの助っ人」として復帰を申し出る。祐介や平野たちは千歳の説得を試みていたが、彼は「自分のために去年の夏を終わらせたい」と告げた。監督は「外部助っ人」としての参加を了承。条件としてチーム練習には加わらず、独自に調整することを選んだ。祐介、平野らと握手を交わし、「勝とうぜ」と改めて約束する。
陽との共有と支え合い
校門で待っていた陽に千歳は「俺のおかげで戻る」と笑いかけ、ふたりで「カツ丼」を合言葉に自分たちらしさを確認する。七瀬との電話では「努力できるのも才能」と嘲る部員たちへの怒りを分かち合い、陽がキャプテンとして背負っている想いを話すかどうか議論する。千歳は「芦高との試合まで待ってくれ」と告げ、「陽なら答えを見せられる」と信じる姿勢を示した。
再びバットを握る
翌日、千歳は陽を連れて硬式打席のあるバッティングセンターへ。最初は空振りばかりで「三球三振」とからかわれるが、徐々に勘を取り戻し、鋭い打球を飛ばすまでに感覚を戻す。木製バット特有の「しなり」に苦戦しながらも、意地として金属に頼らず挑もうと決意を固めた。
再会と挑戦への準備
練習を終えた帰り、千歳と陽は軽口を交わし、祐介や亜十夢とのやりとりを経て再び「戦う舞台」に心を定める。陽は不安を抱きつつも千歳の隣で笑顔を見せ、千歳は胸の奥から込み上げる昂揚感を抑えられず、再び夏の試合へ歩みを進めるのだった。
――仲間に拒絶されてもなお「本気」を信じる陽と、去年の夏を終わらせるために再びバットを握った千歳。二人の熱が交錯する夏の舞台が、目前に迫っていた。
亜十夢との実戦練習
土曜の昼、千歳と陽は亜十夢と合流し、グラウンドで特訓を始めた。亜十夢は百球を二杯分投げ込む苛烈な練習を課し、千歳は木製バットで応じた。陽は外野で球拾いを手伝いながら、二人の限界に迫る勝負を見守る。二百球を超えても互いにやめず、汗と怒号にまみれながら実戦感覚を取り戻していった。
仲間たちの登場
消耗しきった頃、夕湖、なずな、優空、七瀬、和希、海人、健太、さらには明日姉まで、千歳を支える仲間がグラウンドに集結した。外野守備や水分補給を手伝い、声援や冗談を飛ばしながら練習を盛り上げた。かつての後悔が繋いだ縁の中で、千歳は「この今こそ大切にすべき時間だ」と確信する。
亜十夢の過去の告白
金曜の最終調整を終えた夕暮れ、千歳は亜十夢に「なぜ野球をやめたのか」と問う。亜十夢は中学県大会決勝での出来事を語る。最終回、千歳との勝負を恐れ、監督から「好きにしろ」と任された場面で敬遠を選んだ。しかし直後に崩れて敗北。「本物の天才は千歳で、自分は噛ませ犬だ」と痛感し、上を目指せないと悟って野球を去ったのだと打ち明ける。
未完の勝負の再戦
亜十夢の告白を受け、千歳は「じゃあやろうぜ、あんときできなかった勝負」と挑む。互いに最後の一球と一振りを賭け、夕暮れのグラウンドで対峙する。亜十夢は全身全霊のストレートを放ち、千歳は木製バットを振り抜いた。その一瞬に、二人が積み重ねてきた時間と未練がぶつかり合う。
――夏の始まりを告げるような勝負の後、去っていく亜十夢の背中は、無邪気に笑っているかのように見えた。
一週間の振り返り
練習を終えた千歳と陽は河川敷に腰を下ろし、パピコを分け合った。千歳が「一週間あっというまだった」と言うと、陽は「泣けるぐらい長くもあった」と答える。仲間たちとは未だ距離があり、根本的な解決には至っていないことを互いに理解しつつも、陽は「千歳と上村を見ていて掴めそうな気がする」と前を向こうとしていた。
拳の誓いと絆
陽は胸の前で拳を握り、千歳に突き出した。千歳も応じ、二人は拳をこすり合わせた。それは互いに「熱を取り戻した証」として確かめ合う行為だった。やがて陽は「千歳、目ぇつむって」と促し、そっと手を重ね、頬に触れ、儚い仕草を残して千歳に群青色のリストバンドを渡す。女バスのチームカラーでもあるそれは、彼女自身の想いが込められたお守りだった。
軽口と追いかけっこ
千歳が「けつ叩かれてる気分になる」と軽口を叩くと、陽は怒って追いかける。二人は転げ合い、群青色の夜空を見上げて笑った。身体は限界まで酷使されていたが、千歳の心は透き通る青空のように澄み渡り、熱く沸き立つ情熱で満たされていた。
未来への誓い
夜空を見上げながら、千歳は「十年先も、二十年先も忘れられない明日にしよう」と呟く。群青の月に手を重ね、陽と共に迎える夏への決意を強く刻み込んだ。
四章 太陽の笑顔
試合前の朝
千歳は特有の「試合の朝の気配」を感じながら整然と準備を整え、尻ポケットに陽からもらった群青色のリストバンドを忍ばせて球場へ向かった。一方、陽もまた戦闘モードで目覚め、特別な日のために青いワンピースを身につけて応援に向かう決意を固めていた。
球場での再会
藤志高のシートノック中、千歳は背面キャッチで場内を沸かせた。監督は叱責しつつも「ナイスプレー」と呟き、彼の流儀を認める。観客席では陽が上村と並んで観戦し、千歳の姿に複雑な想いを抱く。
初回の勝負
三番バッターとして打席に立った千歳は、越前高校のエースとの対峙で木製バットを振り抜き、放物線を描いた打球を場外へ叩き込む。場内は大歓声に包まれ、千歳は群青のリストバンドを掲げて陽へとガッツポーズを送る。陽は感情を抑えきれず、「愛してるよダーリンッ!!!」と叫び、観客席をざわつかせた。
中盤の投手戦
試合は投手戦の様相を呈し、藤志高は初回の一点以降沈黙。四回に千歳のツーベースで好機を作るも得点に結びつけられず、六回にはフォアボールで出塁するも後続が倒れる。逆に越前高校は隙を突いて二点を奪い、七回表を迎えて2対1と逆転される。
危機の場面
七回表、一アウト一・二塁の場面でサード前に転がったバントを焦って送球ミス。ボールはファーストの頭を越え、ホームを狙う走者が出た。千歳はライトからカバーに入り、ノーバウンドの好返球で三塁走者をストップさせたが、結果は一アウト満塁。続く打者は三番、タッチアップひとつで追加点を許しかねない緊迫した場面に突入するのだった。
揺らぐ士気と千歳の孤軍奮闘
七回、藤志高の守備はミスも重なり、一気に崩壊しかけた。観客席で陽と上村は選手たちの心が折れていく様を見抜き、「負けを受け入れる準備を始めている」と感じ取る。唯一必死に声を出し全力で走る千歳の姿は孤立して映り、上村は「才能のあるやつはいいな」と嫉妬を滲ませるが、陽はその言葉を否定し「努力を続けてきた証だ」と千歳を信じる。
フェンス際の決死のプレー
平野の球威が落ち、三番打者に大飛球を浴びた瞬間、千歳は「一点も許せない」と右中間へ全力で突っ込み、フェンスへ激突しながらもスーパーキャッチを成功させる。激痛に襲われつつもボールを平野へ中継し、失点を防いだ。観客と仲間はその闘志に奮い立ち、平野は四番を三振に仕留めてピンチを脱する。だが千歳の左手首は深刻な負傷を負っていた。
監督との和解
ベンチ裏で氷水に手を沈める千歳のもとに監督が現れる。監督は「天才を天狗にさせないため」と厳しく当たった過去を悔い、「すまなかった」と頭を下げる。千歳は陽の言葉を思い出し「俺もまた間違っていた」と応じ、「もう夏に落とし物をしたくない」とプレー続行を懇願。監督は静かに了承した。
最終回の攻撃と決意
九回裏、千歳に打席が回る。左手首の痛みでバットをまともに振れない状態ながら「今をあがけないやつに次はない」と自らに言い聞かせて打席に立つ。祐介が止めようとするも「お前に繋ぐ」と笑い飛ばし、真っ向から勝負を挑む。
陽の回想と覚醒
観客席の陽は千歳との出会いから芦葉高校・東堂舞との敗北を思い返す。自分は「才能に届かない」とひび割れかけていた心を、千歳の泥臭い姿勢と熱に救われてきたのだと悟る。汗と土埃にまみれながら「最後まで諦めない」姿を見て、陽の胸に再び炎が灯る。
声援と打球
「打てー、千歳ーッ!!」
陽の全力の叫びに応えるように、千歳のバットが火花を散らし、打球は高々と青空に舞い上がった。真昼の空に浮かぶ月のように美しい軌跡を描きながら――試合の行方を決する一打が飛んでいくのだった。
千歳の執念の打席
九回裏、追い込まれながらも千歳は何度もファールで粘り続けた。観客や他校の選手からは嘲笑や批判が飛んだが、それでも膝をつきながら立ち上がり、バットを振り続ける。陽は「辛気くさい顔すんな」と声を張り上げ、千歳はその声に応えるように笑みを浮かべ、陽から贈られたリストバンドを左手首に装着して再び打席に立った。
運命を変える一打と仲間の奮起
千歳は痛みを押し殺し、渾身のスイングでセンターへの大飛球を放つ。ホームランには届かなかったがフェンス直撃で二塁打に。走者が三塁へ進み、逆転の可能性を繋ぐ。次打者・平野が強気の打撃で千歳を本塁へ還すと宣言し、レフト前ヒットで同点のランナーを背負わせる。さらに代打で登場した祐介が「道は作る、壁は壊す」の掛け声と共に全員を鼓舞し、力強い一打で逆転のホームランを放つ。藤志高は歓喜に包まれ、チームはついに一年前の夏を超える勝利を掴んだ。
監督との和解と夏の終わり
試合後、千歳は祐介や平野と固いハイタッチを交わし、「これでやっと去年の夏が終わった」と仲間に告げた。監督とも言葉を交わし、過去の確執を超えて互いの想いを認め合う。千歳はリストバンドを掲げ、仲間と観客、そして野球そのものに感謝を叫んだ。
陽の新たな挑戦
翌日、陽は女バスの仲間たちと芦葉高校との練習試合に臨む。舞やナナ、セン、ヨウとの間にまだわだかまりは残っていたが、千歳の姿に火を点けられた陽は「背中で見せる」覚悟を胸にコートに立つ。ナナもまた自らのプレーで仲間に気づきを与えようとし、二人は舞に挑む。相手の圧倒的な力に押されながらも、陽はスピードと体を張ったプレーで道を切り開き、ナナと連携して反撃を開始する。
炎を引き継ぐ者たち
千歳の情熱は野球部だけでなく、陽や女バスの仲間たちにも伝わり、再び「諦めない心」を呼び起こしていた。
球場と体育館、舞台は違えど、その熱は確かに次の世代へと引き継がれていく。
陽と仲間たちの覚醒
芦葉高校との練習試合、残り時間五分で十点差。限界を迎えつつあった陽とナナの奮闘に、センとヨウは涙を流しながら奮起した。陽は「私に足りない二十センチを埋めて」と訴え、仲間はそれに応える。センは体を張ってディフェンスに入り、ヨウは強靭な体幹でリバウンドを制し、ナナは的確なスリーポイントを放った。藤志高は再び「チーム」として機能し始め、会場の空気を一変させた。
東堂舞との真っ向勝負
陽は舞と一対一で激突する。千歳がスタンドから「ぶち抜け、ウミッ!!」と声を飛ばすと、陽のプレーはさらに冴え渡った。リズムを緩急で操るドリブル、研ぎ澄まされた切り返し、そして仲間のサポートを背に放った一撃が舞を超え、得点を決める。陽は自分の成長と仲間の力を実感し、「あんたからもらった熱、私が頂点まで持っていく」と心に誓った。
試合の結末
藤志高は最後まで芦高を追い詰め、終盤には同点にまで迫った。しかし残り三十秒、東堂舞のスリーポイントが決まり、惜しくも三点差で敗北する。それでも観客に鮮烈な印象を残す戦いとなり、陽は「私、ちゃんと東堂舞をぶち抜いたんだよね?」と千歳に問いかける。千歳は「これ以上ないぐらい鮮やかにな」と答え、その挑戦を称えた。
ラムネの告白
試合後、陽は仲間に泣きながら囲まれ、舞にまでからかわれながらも千歳と「一緒に帰りたい」と堂々と宣言する。夕暮れの河川敷で、陽は冷やしていたラムネを取り出し、千歳に「手伝ってあげる」とビー玉を押し込む。その瞬間、陽は背伸びして千歳の喉元に小さなキスを落とし、「愛してるよ、千歳」と笑顔で告げた。
新しい夏へ
走り去る陽の背中を見送りながら、千歳は胸の熱を押さえきれず、ラムネを飲み干して群青色の空を仰ぐ。手のひらに残ったビー玉を掲げ、陽の「太陽の笑顔」を思い返す。終わった夏の先に、新しい夏が始まろうとしていた。
エピローグ 見つけた青空
陽の心情の告白
エピローグは、陽の内面の独白として描かれている。走り続け、飛び続けて、ようやく「千歳に触れられた」と実感する陽は、自分の告白「愛してる」に込めた熱を改めて言葉にする。去年の夏、千歳の背中を蹴飛ばし、彼の中に眠っていた炎を再び燃やそうとしたこと。それは「大きな月」に憧れるような感覚だったが、実際に彼を突き動かしたのは彼自身の情熱であると気づく。
千歳への理解と再定義
陽は、千歳の再起を「自分のおかげ」と思わせたくもありつつ、実際は仲間のため、そして何より自分のために立ち上がったのだと認める。彼は「きれいな月」ではなく、誰よりも熱く燃える「真っ赤な太陽」だと再定義する。そして、自分もその隣に立つために、負けないように走り続けなければならないと誓う。
未来への誓い
陽は「このハートに火を点けて離さない」と決意し、千歳に向けて手を伸ばす。それは恋愛感情だけでなく、互いに全力で生き抜く者同士として歩みを共にする誓いでもあった。
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