物語の概要
ジャンル:
青年向けラブコメディ・スクールライフである。コスプレを題材にした青春群像劇が読者の共感を誘う一冊である。
内容紹介:
コスプレ衣装制作を通して接近を続ける雛人形師志望の五条新菜と、ギャル系美少女・喜多川海夢は、初めてのコスプレイベントを乗り越えたことで互いへの想いを自覚し始める。原作アニメを観るために海夢の部屋で二人きりになる緊張の一幕や、新たなコスプレイヤー・ジュジュが登場するなど、関係が加速する展開が描かれている。
主要キャラクター
- 五条 新菜(ごじょう わかな):雛人形の頭師を志す高校生。裁縫の腕に秀でるが内向的な性格。海夢とのコスプレ衣装制作を通して心を開いていく。
- 喜多川 海夢(きたがわ まりん):クラスの人気者ギャル。明るくコスプレ好きで、新菜の技術を素直に認めて協力を仰ぐ存在である。
- ジュジュ:新巻から登場する新キャラクター。魅力的なコスプレイヤーであり、新菜の家を訪れることで物語の新たな展開を促す。
物語の特徴
本作は実際のコスプレ衣装づくりに則ったリアルな描写と、内向的な主人公と開放的なヒロインとのコントラストによる心理描写が強みである。他のラブコメと一線を画すのは、趣味(コスプレ)と恋心が自然に結びつく真摯な表現と、登場人物たちの関係が絵作りや導線として機能している点である。美麗なイラストとキャラクターの心情描写が両立されており、読者に甘酸っぱい感情の共鳴を呼び起こす。
書籍情報
その着せ替え人形は恋をする 3
著者:福田晋一 氏
出版社/レーベル スクウェア・エニックス/ヤングガンガンコミックス
発売日 2019年5月25日
ISBN 9784757561380
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あらすじ・内容
GALだけどコスプレしてもいいですか…?
「てかこれ、おうちデートってやつ?」初のコスプレイベントを乗り越え、海夢の心境に変化が…!! そして、次のコスプレの原作アニメを観るため、部屋に二人きりに…!? 一方、新たな美少女コスプレイヤー、ジュジュが新菜の家を訪れて…。 3人の今後は一体!?
感想
今巻は乾姉妹のエピソードが中心に描かれた巻である。
姉のジュジュが、海夢のコスプレ衣装を実際に見て、その出来栄えを確かめようとイベント会場へ足を運ぶ。そして、衣装を作ったのが新菜だと知ると、彼の後をつけ、家を特定してしまう。
雨に降られたジュジュが、新菜にコスプレ衣装の作成を依頼する場面から物語は始まる。新菜の内心の「行動力!」という絶叫には、思わず笑ってしまった。
新菜を訪ねてきたのは、乾紗寿叶(いぬい さじゅな)という女の子。彼女は「ジュジュ」という名前でコスプレイヤーとして活動しており、海夢も憧れる存在だ。
紗寿叶は、女児向けアニメらしい「フラワープリンセス烈!!」に登場する魔法少女のコスプレ衣装を作ってほしいと新菜に依頼する。
しかし、このアニメ、人間関係が複雑すぎて、ただ事ではないらしい。
物語の後半では、紗寿叶がなぜそのキャラクターにこだわるのか、その理由が新菜に明かされる。
その「動機」を知って、私は深く納得した。だからこそ、その後の紗寿叶の言葉に、新菜が思わず行動してしまうのも理解できる。
「将来いい人形作りたいんなら 人形だけ見てちゃ駄目だぞ 色んな事やって 色んなもん見とけよ いつか必ず身になるからよ」
この言葉は、新菜のおじいさんの言葉であり、きっと彼の夢に役立つものになるだろう。色々な経験をすることで、新菜はさらに成長していくに違いない。
新菜に現在彼女がいないと知ってニヤける海夢の姿も印象的だった。しかし、新菜の家に招かれた時の彼女の格好(カラコンをつけていないとか、それ以前の問題)は、あまりにも無防備すぎるのではないかと少し心配になる。もう少し警戒心を持った方が良いかもしれない。
この作品は、コスプレという趣味を通して、登場人物たちが成長していく姿を描いている。
コスプレ衣装作りを通して、新菜は人間関係や感情について学び、コスプレイヤーたちは自分の表現を追求していく。
それぞれのキャラクターが抱える悩みや葛藤が丁寧に描かれており、読んでいるうちに自然と感情移入してしまう。
単なるコスプレ漫画ではなく、人間ドラマとしても楽しめる作品だと感じた。今後の展開も非常に楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第16話
突然の来訪者と祖父の対応
雨の中、見知らぬ女子高生が新菜の家に現れる。祖父は驚きながらも心配し、優しく声をかける。少女は事情を説明し、途中で雨宿りとして訪れたことを明かす。
来訪者の正体と祖父の勘違い
祖父は彼女を新菜の友人と思い込み、気さくに家へ上げ、風邪をひかないよう風呂を勧める。少女は断りきれず、恐縮しつつも厚意に甘える決意をする。
祖父の出かけた隙にすれ違う二人
祖父が外出しようと玄関に行くと、入れ違いで新菜が帰宅。祖父から「友達が来ている」と聞かされて戸惑う。新菜は「喜多川さん以外に友達はいない」と混乱し、泥棒かと疑念を抱きながら家に入る。
衝撃の遭遇と誤解の発端
新菜は浴室で体を拭いていた彼女と鉢合わせしてしまい、完全に固まる。少女も咄嗟に反応し、タオルを体に巻きつけながら怒りの視線を送る。
すれ違いの決定打と恥ずかしさの爆発
新菜が「子供?」と口にしたことで彼女の怒りが爆発。タオルがめくれ、新菜はさらに混乱。彼女は恥ずかしさと怒りの中で硬直しながら、呆然と立ち尽くす新菜を見て「じいちゃん……」と叫ぶ。
回想と伏線的演出
その瞬間、新菜の幼少期の回想が入り、人形制作時の会話が描かれる。未完成の人形を見て「なぜ髪がないの?」と問う子供時代の新菜に、父が「順番だから」と説明する。
オチと羞恥の極致
場面は現在に戻り、少女が座り込みを見ながら「まだつるつるなんだ……」と新菜は内心ぼやき。
少女は赤面しつつ新菜を凝視し、場の空気は最高潮に気まずくなる。
乾紗寿叶の突然の訪問と謝罪
雷雨の中、乾紗寿叶が新菜の家を訪れ、深く頭を下げて謝罪を行った。新菜は事情を把握しきれずに戸惑いながらも、丁寧に対応し、訪問の理由を尋ねた。
衣装制作の確認と新菜の誤解
紗寿叶は、自分が見に来たのは雛人形ではなく、コスプレ衣装であると打ち明ける。彼女は「衣装……あなたが作ってるんでしょ?」と核心に触れた問いを投げかけ、新菜は思わず表情を強ばらせた。祖父の友人ではなく、衣装制作者として新菜に会いに来たことが判明する。
互いの紹介と年齢の差
紗寿叶は「桜ノ宮女子高等学校2年生」と名乗り、自分が年上であることを告げた。それに対し、新菜は「高校1年生」と答えた。彼女の堂々とした態度と年上であることに、新菜は内心驚きを隠せなかった。
工房見学と雛人形への感嘆
新菜は雛人形の工房へと紗寿叶を案内する。衣装の素材や人形の構造について説明する中で、紗寿叶は「キレイ!素敵!」と純粋に感動し、スワロフスキーやレースといった細部へのこだわりにも強い関心を示した。
本題の告白と画像提示
雛人形への賛辞を述べながらも、紗寿叶は突然「私はコスプレ衣装のオーダーをしに来たの!」と本題を切り出す。そして、スマートフォンである画像を新菜に見せる。それは、海夢が「雫」のコスプレをしている写真であった。紗寿叶はその衣装の出来栄えに衝撃を受け、「これ、あなたが作ったんでしょ?」と確信を持って新菜を問い詰める。
第17話
海夢が紹介した“ジュジュさん”の回想
新菜は以前、海夢から「マジ可愛くない!?ジュジュさんってゆーんだけど、ごじょー君見て見てっ!」と、スマホ画面を見せられたことを思い出す。そこには雫の衣装を着たレイヤーの画像が映っており、海夢は「このレイヤーさん、めっちゃ好きなんだよね~っ♥」と興奮気味に語っていた。
現実に戻り、“ジュジュ”との対面
場面は現実に戻り、新菜は自宅に訪ねてきた少女の姿を見て「ジュジュ……?」と呟いた。喜多川が推していたレイヤーとそっくりであり、新菜は「喜多川さんが好きだって言ってたコスプレイヤーの……えっ本物……!?」と戸惑う。そして、あまりにも幼く見える少女に「ずいぶん幼く見えますね……おいくつ位の方なんでしょうか……」「うーん……中学生とか?小学生だったりして」と心の中でつぶやくが、直前に彼女が「高校2年」と名乗っていたことを思い出し、心から「……すみませんでした……」と謝罪した。
ジュジュの行動力と接触理由
新菜は「あのジュジュさんがなぜうちに……どうしてうちが分かったんですか……?」と問う。するとジュジュは、海夢のSNSを通じてコスプレイベントへの参加情報を知り、実際に現地で雫の衣装を確認したと説明する。近くで見た結果、新菜の製作だと確信し、尾行する形でここへ来たのだと明かした。彼女は「跡をつけさせてもらったわ……ごめんなさい……」と素直に謝罪したが、それを聞いた新菜は内心で「行動力……!!」と圧倒されていた。
海夢からの訪問予告と再会
直後、新菜のスマホに海夢からのメッセージが届き、「今からごじょーくんち行く~♥」との連絡が入る。場面は変わり、雨の中訪れた海夢が玄関でジュジュと鉢合わせる。
新菜のうっかり発言と海夢の暴走
新菜は海夢に「乾紗寿叶さんです」と紹介してしまい、本名バレを避けたかったジュジュに注意される。しかし海夢は聞く耳を持たず、「え~~~っ♥♥ジュジュサマ、紗寿叶っていうんですか!?くっそ可愛い~~♥♥」と暴走を始めた。
海夢の過剰なファンアピール
海夢は自己紹介をしながら「わたし喜多川海夢ってゆーんですけど」「あたしガチのガチでジュジュサマめっっちゃ好きなんです!!超ファンです!」と熱弁し、「ナマもガチの美少女なんですね!カワイイ♥」「肌ハンパない!!めっちゃキレイ!!髪ほっそ!!」と大絶叫した。
新菜のひと言がさらなる燃料に
新菜は平然と「乾さんは喜多川さんの写真をご覧になったそうですよ。それでうちに……」と告げたことで、海夢のテンションはさらにヒートアップした。「神レイヤーがあたしの写真を……!?」「ジュジュサマ、あたしの事知っててくれたんですか~っ!?くっそうれしーんですけど!!鬼ヤバ!!照れる~~~っ!!」と抱きつかん勢いで距離を詰める。
ジュジュの目的と海夢の無理解
圧倒されたジュジュは「わっ私はあなたじゃなくて、五条新菜の作った衣装に興味があるの!」と主張したが、海夢は「目デカっ!めっちゃカワイ~~っ♥」と聞く耳を持たなかった。
話題は衣装製作へ移行
海夢はさらに「でっで!?ごじょー君、ジュジュサマに何作るの!?知りた~い!!」と話題を変える。新菜も思い出したように「そうでした。乾さん、なんの衣装を……」と尋ねると、ジュジュは「ごめんなさい、言ってなかったわね……」と語り出そうとする場面で締めくくられた。
ジュジュの依頼内容
乾紗寿叶は新菜に、アニメ『フラワープリンセス烈!!』に登場する「二階堂シオン」のブラックリリィの衣装制作を依頼した。シオンの名前を聞いた海夢は大興奮し、以前写真を見せたことを新菜も思い出した。新菜は作品を知らなかったが、海夢と紗寿叶は同作に詳しく、シオンが主人公のライバルであることなどを熱く語った。
ブラックリリィに込めた思い
紗寿叶は、ブラックリリィの衣装は市販品では調整が難しいため、自身のサイズに合った衣装を新菜に作ってほしいと説明する。ブラックリリィは、紗寿叶が一番好きな魔法少女であり、どんなに辛くても絶対に諦めない芯の強さを持つシオンに心を動かされていた。
コスプレに対するこだわりの違い
海夢は、ブラックリリィのシオンの衣装は「やばすぎるほど見たすぎる」と感動しながらも、自分ではやらないと断言する。理由は、自分は背が高くシオンの華奢なイメージと合わないと感じているからであり、好きだからこそイメージを壊したくないという考えからだった。
意外な本気と告白
海夢の姿勢を見た紗寿叶は、外見から勝手に「衣装が可愛いだけでコスしている」と誤解していたことを自省する。紗寿叶は、自分が一番好きなタイプのレイヤーは海夢であると認めたが、その海夢が本気で作品やキャラを愛していることを知り、圧倒される。そして思わず泣きながら「嫌な女じゃなかった」と謝罪の言葉を繰り返した。
乾紗寿叶の帰宅と連絡先の交換
乾紗寿叶はそろそろ帰ると告げ、新菜は乾いた制服を取りに行くと申し出た。紗寿叶はそのタイミングで「五条新菜、連絡先教えてくれる?」と真剣な面持ちで尋ね、「ブラックリリィの資料と私のサイズ表を送るから」と続けた。そして「誤解しないでよ、あくまで衣装の連絡だから」と予防線を張った。
思わぬ誤解と新菜の否定
新菜が「なんの誤解ですか?」と真面目に尋ねると、紗寿叶は「あなた達、付き合ってるんでしょ?」とストレートに問いかけた。その問いに新菜は大きく動揺し、「ちっ違っ…違いますっ!!」と裏声で否定し、「俺っ…おっ…お付き合いしたことないのでっ!!」と続けた。これに対し紗寿叶は、「私の方が誤解してたわね…ごめんなさい」と冷静に謝罪した。
海夢の反応と紗寿叶の戸惑い
その会話を脇で聞いていた喜多川海夢は、内心「じょー君今彼女いないんだ♡」と歓喜しつつ、実際に「彼女いないの~~?マジで~~?」と満面の笑みで言葉にした。その様子を見た紗寿叶は「そんなに面白いかしら…!?やっぱり嫌な女なの…!?」と、海夢の反応に対して複雑な感情を抱いていた。
合わせ提案と即拒否
そんな中、海夢は「ジュジュサマっ!あの~あたしさっきネオンおねーたまのコスしたいって言ったじゃないですか?あたしがネオンおねーたまのコスするんで~、あたしと“烈!!”合わせしましょ~!」と提案した。しかし、それに対して紗寿叶は間髪入れず「嫌」と食い気味に拒否した。この返答に海夢は「食い気味に拒否られたんだけど!!」と爆笑し、場が少し和らいだ。
第18話
合わせ拒否とその理由
海夢がブラックロベリアのネオンお姉様のコスプレをすることを告げ、紗寿叶に「烈との合わせをしよう」と提案する。しかし紗寿叶は即座に「しない」と拒否する。合わせとは、同じ作品のキャラクターで衣装を揃えることを意味するが、紗寿叶は「他のレイヤーとつるむつもりはない」と明言し、「自分のためだけにコスプレし、良い写真を残したいだけ」と理由を語る。
スタジオ撮影の話題と費用問題
新菜は、制服が乾いたことを知らせつつ、ブラックリリィの撮影にはスタジオを借りるつもりであると伝える。スタジオでは学校、病院、カフェなどさまざまなシチュエーションで撮影できるという説明に、海夢は「一緒に行っていいですか」と食いつくが、紗寿叶は「スタジオ代は割り勘で」と牽制する。
新菜の同行に驚く紗寿叶
新菜が「俺も行きます」と宣言すると、紗寿叶は驚く。「どうしてあなたまで撮影に来るの!?」と問うが、海夢は「メイクもしてもらってるし、ガチ勢」と補足する。それでも紗寿叶は半信半疑で戸惑いを隠せない。
費用節約と合わせ提案再考
紗寿叶は、スタジオ代が1時間15,000円と高額なことを思い出し、「割り勘で浮いた分を衣装に回せる」と内心で計算する。結局、「今回だけなら合わせしてもいい」と特例で海夢の提案を了承し、海夢は大喜びする。
衣装作成のためのアニメ視聴へ
新菜は衣装の質感やキャラ理解のために「そのアニメを観ないと」と言い、全話視聴することを決意。紗寿叶は驚くが納得する。新菜は以前にもアダルトゲームの両ルートをクリアした実績があると語り、紗寿叶はその情熱に驚愕する。
視聴用コンプリートボックスの提供
海夢がアニメ『フラワー・プリンセス烈!!』のコンプリートボックスを所持しており、それを貸すと申し出る。新菜は「本当ですか!? ありがとうございます!」と感謝するが、海夢は「126話しかないから一瞬で観れる」と悪魔のような笑顔で念押しし、新菜は絶望する。
場面が変わり、五条家の祖父が笑顔でその経緯を新菜から聞きコンプリートボックスが重いため海夢の家に取りに行くと言い。
祖父は店のことは気にするなと言って新菜が外出する事を了解する。
祖父との会話と成長の実感
新菜は作業途中の頭部パーツを祖父に見せ、自信のなさを吐露する。祖父は「前より良くなった」「線が柔らかくなった」と評価し、海夢の衣装製作が新菜にとって良い経験になっていると語る。化粧や面相描きのように、集中力を要する経験が人形作りにも活きると説く。そして「人形だけ見てちゃ駄目だ。色んなことを見ろ」と助言し、新菜もそれに深く頷いた。
海夢の家を訪問する新菜
新菜はコンプリートボックスを受け取るため、海夢の家を訪れる。呼び鈴を鳴らすが反応はなく、やがて寝起きの海夢が乱れた部屋着姿で登場する。新菜はその姿に目を奪われ、特に露出した胸元に視線が釘付けとなる。
過去の測定シーンと重なる記憶
新菜の脳裏には、以前に海夢の身体を測った際の記憶、特にバストポイントの位置を測定した場面がフラッシュバックする。それと目の前のリアルな光景が重なり、彼はその場で硬直してしまう。
海夢の無自覚な反応と新菜の困惑
新菜の様子に気づいた海夢は、鏡の前で自分の姿を確認し、「カラコンつけてないっ!」と叫び、顔を赤らめてドアを閉める。これに対して新菜は内心で「…気にするの、そこなんだ…」と冷静にツッコミを入れた。
第19話
海夢の招き入れ
海夢は乱れた格好を整え、「もう大丈夫」と笑顔で新菜を部屋へ招き入れた。新菜は緊張しながらも「お邪魔します」と答え、持参したプリンを渡す。海夢はそれを喜び、自分も以前新菜からもらったことを思い出す。
新菜の緊張と初体験
新菜は、衣装作りのため以外で友人の家に上がるのは初めてだと気づき、心臓が高鳴る。海夢は「せっかく来たから一緒に観ない?」と提案し、自分の部屋へ案内する。新菜は動揺しながらも了承する。
海夢の部屋と新菜の反応
部屋に入った新菜は、壁一面に貼られたポスターやフィギュアの数々に圧倒される。最初は緊張していた新菜だったが、このオタク趣味全開の光景に一瞬で平常心を取り戻し、「喜多川さんの部屋ですね」と冷静にコメントした。
アニメ鑑賞と会話
新菜と海夢はテレビでアニメを観ながら会話を交わしていた。作品内のキャラクターの外見変化や設定について話し合い、新菜は海夢の解説に耳を傾ける。二人は登場人物の関係性や学校制服の類似点などにも触れ、和やかな時間が流れていた。
おうちデートの意識
海夢はふと「これっておうちデートじゃない?」と笑顔で口にし、二人きりで過ごす状況に気づく。彼女はこの時間を心から楽しみ、新菜もその言葉に照れながら反応する。海夢は「永遠に続いてほしい」と心の中で感じていた。
食事の提案
会話の中で、海夢は新菜に軽く食事を作ろうかと提案する。新菜は「喜多川さんの手料理」に強く反応し、自分が作ると言い出すが、最終的に海夢が調理を担当することになる。
海夢の料理開始
海夢はエプロン姿でキッチンに立ち、オムライス作りを開始する。無防備な格好に気づきつつも、レシピを見ながら調理を進め、ケチャップで「LOVE」やハートを描く案を思いつき、顔を赤らめて照れる。
調理の進行と完成
玉ねぎの刺激に涙目になりながらも、炒めた具材は見た目良く仕上がり、味見でも上手くできたと自信を持つ海夢。卵を加えて仕上げ、ついに完成するが、ケチャップで描かれた文字は意図せず「ごめん」となってしまい、新菜とともにその出来栄えを見つめることとなった。
ぎこちない試食
新菜が海夢の作ったオムライスを口にすると、海夢は途中までは順調だったが卵がなくやり直せなかったと説明し、食べないでほしいと慌てて謝った。
味の評価
新菜が味付けに何を使ったのか尋ねると、海夢は鶏ガラスープの素と少量の醤油を加えたと答える。新菜はそれを美味しいと評価し、自分では使ったことがない調味方法だと感心した。
安心する海夢
新菜の言葉に海夢は笑顔を見せ、「あたしも食べよーっ」と箸を取り、二人で食事を始めた。新菜は和食中心の自宅と違う新鮮さを感じ、自分でも作ろうと考える。
食後のやり取り
新菜は海夢が本当に炒飯好きだと感じつつ、再びアニメを視聴。感情移入して涙ぐむ新菜に、海夢は笑いながらティッシュを差し出した。
第20話
図面確認と修正のやり取り
新菜は紗寿叶に送った三面図の確認を依頼する。紗寿叶は修正箇所はないと答えつつ、詳細な書き込みに驚きを示す。新菜は制作費は完成後の支払いで良いかを尋ね、紗寿叶は了承。ウィッグや化粧は自分で行うと説明する。
細部観察と技術説明
新菜は紗寿叶の過去のコスプレ写真を全て見たと伝え、目の形が普段と違う理由を質問する。紗寿叶はコスプレ用テーピングで目の形を変える方法を説明し、用途や効果を具体的に示す。新菜は過去の海夢の化粧にも応用できたと理解し、勉強になったと述べる。
撮影と加工の提案
紗寿叶は「喜多川海夢の写真はカメラではなくスマホで撮ったものだったのね。今回の合わせは私達のカメラで撮ってあげる」と提案。新菜が「達?」と尋ねると、紗寿叶は「私の写真は妹が撮っている」と答える。新菜が妹の撮影技術を褒めると、紗寿叶は「それはレタッチしているから」と説明し、画像修正ソフトで肌の補正や目の色変更、背景合成も可能だと述べ、「あなた達もカメラがあった方がいい」と助言する。
撮影指導の約束
新菜が「妹さんにカメラを教えていただけませんか」と依頼すると、紗寿叶は「いいけど、あの子は中学生で、あなたの家まで行くと帰りが遅くなる」と条件を示す。新菜は「こちらから伺う」と答え、紗寿叶の家近くのファミレスで会う約束を交わす。その後、新菜は海夢にも報告しようとスマホを手に取り、以前行ったコスプレ会場で多くの参加者が立派なカメラを持っていたことを思い出す。
喫茶店への同行と乾心寿との出会い
新菜が紗寿叶の妹・乾心寿にカメラの指導をお願いするために連絡を取ると、海夢も同行を申し出る。海夢は友人の乃羽と別れ、紗寿叶に妹がいることを楽しそうに語る。その後、新菜と海夢は待ち合わせたファミレスで心寿と初対面する。
心寿の意外な容姿と自己紹介
心寿は中学生とは思えない大人びた外見で登場し、新菜と海夢を驚かせる。特に海夢はそのスタイルに衝撃を受け、身長や体型を質問する。心寿は緊張しつつも自己紹介し、海夢から写真の腕前を褒められて感謝する。
姉妹の役割分担と心寿の内向的な性格
紗寿叶は自分は撮影を依頼しているだけで、コスネームやアカウント作成も心寿が行っていると説明する。紗寿叶はせっかく撮影しても誰にも見せないと心寿が不満を語る。
紗寿叶の妹の思いとSNS活動の経緯
心寿はいつも通り紗寿叶の撮影を続ける中、姉の可愛い写真を誰かに見てもらいたいと考え、アカウント作成を相談したと語った。実際にSNSを始めると、多くの「いいね」や称賛コメントが集まり、紗寿叶の評価が高まったと説明する。しかし、紗寿叶本人は自己満足で活動しており、他人の評価には興味がないと述べる。それでも心寿は姉を「可愛い」と思う気持ちを強く持ち、フォロワーや反応が増えたことを嬉しそうに話した。
海夢による心寿の気持ちの指摘
海夢は、心寿が紗寿叶のことをとても大好きだと率直に指摘し、心寿は満面の笑みで「大好きですっ!」と力強く返答する。この真っ直ぐな告白に、紗寿叶は複雑そうな表情を見せる。
海夢と新菜の反応
新菜は心寿の真剣な想いを見て、紗寿叶が嬉しそうにしているのではないかと感じる。海夢も同意し、「ジュジュサマ嬉しそーっ!」とからかい気味に笑うが、紗寿叶は照れ隠しのように「うるさい」と返して場を締めた。
第21話
一眼レフカメラの登場
心寿は父親から一眼レフカメラを借りてきたと説明する。父はカメラマンではなく趣味で鳥や風景を撮影しており、このカメラはレンズ交換不要で便利なタイプであった。
レンズ交換と撮影表現の説明
新菜がレンズ交換について尋ねると、心寿は好みに合わせて交換でき、魚眼・標準・望遠などで異なる表現が可能と説明する。また、一眼レフはスマホより高画質で多様な表現ができると述べる。
背景や被写体のぼかし効果
心寿は例として、背景をぼかして被写体を際立たせたり、手前の花をぼかして柔らかい雰囲気を出したり、シャッタースピード調整で花びらを止めて撮影できる技術を解説する。
撮影の楽しさと向上心
海夢は「楽しそう」と反応し、心寿も理想の表情が撮れる喜びから「もっと可愛く撮りたい」と意欲を見せる。
コスプレの話題
海夢は「撮るのがジュジュ様だから気分が上がる」と言いつつ「心寿ちゃんはコスしないの?」と質問する。
コスプレへの興味の有無
海夢は心寿に対し、人がコスプレをしているのを見ると自分もやりたくならないかと問いかける。心寿は即座に否定し、姉を撮影することが好きなので自分はしないと答える。
カメラ価格の現実
海夢が一眼レフカメラの価格を尋ねると、新菜がスマホで調べ、高額な機種の価格を次々と提示。特にレンズ別売りの価格に二人は驚愕し、その高さに圧倒される。
機材の追加費用
紗寿叶はレンズ以外にもストロボ、三脚、レフ板などの周辺機材が必要になることを説明。新菜はコスプレイベントで多くの参加者が高価な機材を持っていたことを思い出し、その財力に驚く。
当面の方針とロケハンの提案
当面はスマホで撮影することになり、紗寿叶はカメラは価格帯が幅広いため無理のないものを選ぶよう助言。その上で週末にロケハンへ行く提案をし、2人に同行を打診する。
ロケハンの目的と約束
ロケハンでは自然光の入り方や撮影角度、セットの確認などを行うと説明。2人は参加を即答し、新三郷駅での待ち合わせが決定する。
廃病院スタジオへの到着
紗寿叶、心寿、新菜、海夢の4人は「廃病院スタジオ」に到着した。海夢は廃墟のような場所は初めてだと興奮し、心寿も楽しみにしていた。一方、紗寿叶は無言で不安げな様子を見せた。
シーンとの一致
新菜は、ブラックリリィが追手から逃げ込む廃病院のシーンにこの場所がぴったりだと感想を述べる。紗寿叶は暗く重い展開でのシオンの独白シーンが好きだと語り、それをしっかり受け止める新菜を紗寿叶は「全話観ている」と驚かく。海夢は室内の雰囲気に感嘆しながら探索を始めた。
心寿の苦手意識
探索中、紗寿叶は様子が硬く、新菜に「こういう場所が苦手なのでは」と指摘される。紗寿叶は動揺しつつも否定するが、実際は自分で選んだにもかかわらず、思った以上に怖さを感じていた。
撮影環境の確認
心寿はストロボの有用性を語り、外でも使えることを説明する。心寿は逆光撮影のメリットを解説し、光の向きや反射板の活用法を説明。ストロボやレフ板で顔の暗さや影を補正できることも伝えた。
逆光の魅力と撮影場所
逆光はウィッグの透明感や艶を美しく見せるため推奨され、心寿は「映える場所でやってみたい」と話す。海夢が心寿に屋外撮影の場所を尋ねると、自宅の庭と答えた。海夢はその手軽さに感心し、新菜はカメラマンの工夫を改めて理解した。
第22話
雨の中の不安
予報通りの雨が降り出し、二人は廃墟スタジオ内にいた。紗寿叶は壁際で膝を抱えており、新菜が心配して声を掛けるが、彼女は「疲れただけ」と震えながら答える。新菜が入口で待つことを提案するも、紗寿叶は撮影のため中を確認する必要があると主張し、無理を押して進もうとする。
将来の夢の告白
新菜は無理をする理由を尋ね、会話の流れで「将来の夢」を問う。紗寿叶は、自分はかつて魔法少女になりたかったと語り始める。子供の頃、テレビの魔法少女に憧れ、強くて可愛い衣装を着ることを夢見ていたという。
叶わない夢と初めてのコスプレ
しかし成長とともに、それが架空の存在であり叶わない夢だと理解する。中学生の頃、衣装が市販されていると知ってすぐに購入したが、知識不足でウィッグやメイクもせず、サイズも合わないまま着用した。その初めてのコスプレは完成度が低く不格好だったが、紗寿叶にとってはただ純粋に嬉しい体験だったと振り返る。
夢を叶えるためのこだわり
紗寿叶は、たとえ無理をしてでも作り物であっても、自分の夢を叶えるために衣装を完成させたいと語った。新菜は、その衣装がそんなに大切なら、なぜ自分に依頼したのかと尋ねる。自身より上手な制作者は多いとし、今からでも他の人に頼むべきだと説くが、紗寿叶は喜多川海夢の写真を見た時に嫉妬したと打ち明ける。
新菜の衣装への憧れ
嫉妬はみっともないと理解しつつも、「自分もこの人が作った衣装を着たい」という強い思いが芽生えたと述べる。理屈ではなく、写真を見た瞬間に「この人でなければ駄目だ」と感じ、一目惚れのような感情を抱いたのだという。
コスプレへの情熱
紗寿叶は、正直自分でも嫉妬したことに驚いたとし、本当にどうでもいい相手にはそういう感情は抱かないと説明する。そして、自分はそれほどまでにコスプレに情熱を持っているのだと新菜に伝えた。
回想と祖父の教え
新菜は心の中で、幼い頃に祖父から聞いた言葉を思い出していた。祖父は、雛人形作りにおいて「お客さんに一目惚れさせること」が大切だと語り、自分もそういう人形を作りたいと告げた幼い新菜に、努力すればなれると励ました。この記憶が、新菜の胸に深く刻まれていた。
紗寿叶の言葉と感情の爆発
現在、紗寿叶から「あなたの作った衣装に一目惚れした」と告げられた新菜は、その言葉に胸を打たれ、祖父の気持ちを初めて理解する。込み上げる感情に耐えきれず、新菜は突然涙を流し、紗寿叶の手を握って感謝を伝えた。
紗寿叶の戸惑いと気絶
しかし、紗寿叶にとって新菜は突然泣き出し、自分の手を強く握って礼を言う存在にしか見えなかった。男性に慣れていない彼女は、その予期せぬ急接近に顔を赤らめ、混乱と動揺のあまり意識を失ってしまう。
場の混乱
紗寿叶が気絶し、新菜が慌てる中、外から新菜を呼ぶ声が響き、緊張感のあった空気は一気に途切れた。
第23話
試験後の誘い
期末テストが終わり、教室内では生徒たちが疲れや成績の話をしていた。新菜も一息ついていたところ、海夢が突然声をかけ、勢いよく「海行こーぜ!」と誘った。
突然の海行き
新菜は戸惑いながらも、気づけば二人で電車に乗って海辺に到着していた。海夢はコンビニで買ったレジャーシートを広げ、満面の笑みでくつろぐ。新菜は突然の展開に内心驚きを隠せない。
海辺での会話
まだ海開き前で人も少なく、海夢は「貸し切り状態で最高」と景色を満喫する。新菜は撮影のために来たのかと尋ねるが、海夢は期末テストが終わったから夏らしいことをしようと思っただけだと答える。
海夢の行動力
制服姿で海に来ることを「青春っぽくて良い」と語る海夢の行動力に、新菜は圧倒される。海夢は風や景色を楽しみつつ、飲み物を勧めるが、新菜は遠慮した。
海辺でのひととき
海夢は新菜を海へ誘い、「足だけだって!」と笑いながら波打ち際へ駆け出した。はしゃぎながら海藻を見せる海夢に、新菜は照れつつも応じる。やがて新菜も海へ入り、冷たさに驚きながらも波を楽しんだ。
新菜の回想と感慨
新菜は、幼い頃から雛人形作りや祖父の面相描きの真似に熱中し、他の場所へ行く機会が少なかったことを語る。海辺の景色を見ながら「奇麗です」と感想を漏らし、海夢もその言葉を静かに受け止めた。
夏休みの約束
海夢は新菜を夏休みに二人で出かけようと誘い、新菜は笑顔で了承する。嬉しさを隠せない海夢は、その場を離れて一人で照れを爆発させ、「ヤバすぎる!」と心の中で叫びながら赤面していた。
海辺での撮影とハプニング
海夢がスマホで海の景色を撮影し、新菜の姿もカメラに収める。海夢はその写真を見て「めっちゃいいじゃん…」と満足げに呟く。一方、新菜はもっと沖へ行こうとしてワカメに足を取られ、海中で滑って全身びしょ濡れになってしまう。海夢は驚きつつも笑い、帰りをどうしようかと困惑する新菜の姿で場面が締めくくられる。
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