物語の概要
本作は異世界転生×高難易度ライトノベルである。前世をゲームに捧げたプレイヤー・アレンは、“ヘルモード”と呼ばれる異世界よりも厳しい難易度設定で転生する。第4巻では、魔獣に囚われた仲間セシルの救出に成功するも、最強追跡者ダグラハと再戦へ。その逃避行の果て、過去に相対した魔獣マーダーガルシュとの因縁のリベンジマッチへと突入する。
主要キャラクター
- アレン:主人公で元廃ゲーマー。召喚士として転生し、難易度“ヘルモード”の条件下で仲間と共に成長と戦闘を繰り返す。
物語の特徴
第4巻の特徴は、激しい追跡劇とリベンジバトルの緊張感にある。アレンとセシルの逃避行は、死亡率の高い難易度世界のリアルさと死線を越える覚悟を描写する。また、魔獣との再戦を通じて主人公がどれだけ成長したかを示す構成は、高難易度異世界譚として他作品と一線を画す。設定とバトルが融合し、読者を飽きさせない構成となっている。
書籍情報
ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 4
著者:ハム男 氏
イラスト:藻 氏
出版社:アース・スターノベル
発売日:2021年09月15日
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あらすじ・内容
ローゼンヘイム戦争編、突入!エルフの女王が治める国、ローゼンヘイムは、魔王軍の進行を受けて滅亡寸前となっていた。アレン達は、王国の要請と学友であるローゼンヘイムの王女、ソフィアローネの願いにより、国を救うために戦うことを選ぶ。首都が陥落し、負傷者で溢れるローゼンヘイムへと到着したアレン達。300万もの魔王軍の軍勢が相手では、明日にでも滅亡するだろうと語る女王に対し、アレン達は街の周囲を囲む魔物を一掃することで、希望を与えるのだった。これまでの召喚獣と成長した仲間の力を総動員して、魔王軍との戦況を次々とひっくり返していくアレン。しかし、魔王軍にいるのはただの魔物だけではない。魔族達が占拠した拠点を取り戻すため、エルフの協力も得ながら策を講じていく。さらに、ローゼンヘイムを攻める魔王軍の将は、かの勇者ヘルミオスすら敗北したことのあるという「魔神」だということが発覚する。これまでの敵とはレベルの違う相手に対し、アレンに勝算はあるのか……!?300万の軍勢VS召喚獣軍団勝つのはどっちだ!?
感想
学園での生活から一転、今まさに滅亡の危機に瀕しているエルフの国へ。
アレンたちがエルフの国、ローゼンヘイムを舞台に、魔王軍の侵略から国を救うために奔走する姿が描かれている。
ローゼンヘイムはまさに滅亡寸前。
そんな絶望的な状況に、アレンたちが現れて、状況を覆していく展開は、読んでいて非常に爽快だ。
特に印象的だったのは、アレンの圧倒的な力だ。召喚士である彼は、百万規模の魔獣軍団を相手に、配下のモンスターたちを駆使して、次々と殲滅していく。
その強さのインフレ具合には、正直驚かされた。まさに「無双」という言葉がふさわしい。
ただ、物語が進むにつれて、仲間たちのレベルが早々にカンストしてしまうという問題も浮上してくる。
これ以上どうやって強くなるのだろうか、と少し不安になったのだが、そこで導入されたのが転職システムだ。レベルは1に戻るものの、ステータスは据え置き。
これはむしろ強化と言えるのではないだろうか。この転職システムが、今後の展開にどう影響していくのか、非常に楽しみだ。
魔王軍の強さも尋常ではないため、ゲームバランス的には、人類全体にこの転職システムが導入されるのが理想的だろう。
しかし、これは主人公のパーティー限定になるのだろうか?
その辺りのバランス調整が、今後の見どころの一つになりそうだ。
ローゼンヘイムを攻める魔王軍の将が、勇者ヘルミオスすら打ち破った「魔神」であるという事実も明らかになり、物語はますます盛り上がりを見せている。
これまでの敵とはレベルの違う強敵に対し、アレンは一体どんな戦略で立ち向かうのだろうか。
次巻が待ち遠しい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第一話ローゼンヘイムへ
ローゼンヘイム派遣の決断
学長からローゼンヘイムの王都が既に陥落しており、国家存続の危機にあると知らされたアレンは、救援要請を受けて現地への派遣を決断した。ソフィーはこれを喜び、セシルは中央大陸の防衛との両立を懸念したが、学長は中央大陸は勇者ヘルミオスに任せると説明した。アレンは現状を分析し、ローゼンヘイムの支援が世界を救う第一歩であると判断した。
魔王軍の侵攻と各国の対応
魔王軍の兵力は、ローゼンヘイムに300万、中央大陸に200万、バウキス帝国に100万、予備軍が400万と判明した。バウキス帝国はゴーレム部隊により上陸を防いでいるが、例年の2倍の兵力に対し援軍を要請していた。ドワーフであるメルルには帰還命令が出され、同様に各国のエルフとドワーフにも帰還命令が伝えられていた。
魔王軍の戦略と回復薬の準備
アレンは、魔王軍の目的はローゼンヘイムの回復部隊を引き揚げさせ、中央大陸の戦力を削ぐことにあると推察した。ローゼンヘイムがエルフを帰還させたことで5大陸同盟に亀裂が生じる可能性があり、今後の侵攻対象はギアムート帝国、最後にバウキス帝国となると分析した。回復役の不足を補うため、アレンは自ら生成した命の葉60万枚を中央大陸に供給することを提案した。
回復薬の効力と使用計画
命の葉は広範囲にわたり多数の兵を同時に回復させる力を持ち、戦況の維持に大きく貢献する。アレンは使用場所を絞ることで、2カ月間の持続的支援を見込んだ。回復薬は「エルフの霊薬」として提供され、同盟維持の意図を込めたものであると説明された。ソフィーはこれに賛同し、学長もこの案を受け入れた。
帝国の対応とアレンの秘策
ギアムート帝国は非常事態宣言を発令し、全階層から兵士を徴兵して戦力を補強していた。アレンは召喚士としての力を隠しつつ、命の葉をエルフの霊薬と偽って提供することで、戦況を覆す策を講じた。また、メルルには戦地で役立つよう魔力の種を与え、バウキス帝国への帰還を支援した。
出発前の別れと新たな準備
アレンたちは出発前に使用人や知人との別れを済ませ、キールは妹ニーナをハミルトン伯爵家に託す手続きを整えた。アレンは学園都市を後にする心構えを固め、新たに召喚可能となったBランク召喚獣の確認を行い、中央大陸北部へ派遣した。これにより敵の情報収集と戦闘支援を図った。
出発と戦場への覚悟
アレンたちはローゼンヘイム最南端の港町ネストを目指し、高速魔導船に搭乗した。各自が覚悟を決め、ドゴラは最前線で戦う決意を示した。こうしてアレン一行は、戦火の只中にあるローゼンヘイムへと旅立った。
第二話ラターシュ王国王城での情報収集
グランヴェル子爵による王城での情報収集
アレンは鳥Gの召喚獣を通じて、グランヴェル子爵に戦況の確認を依頼していた。子爵は王都で国王への謁見に成功し、ローゼンヘイムの危機に対応すべくアレンらの派遣が命令されたことを確認する。また、魔王軍は1か月前からローゼンヘイムへの侵攻を本格化させ、北部要塞の陥落、続く砦の崩壊によって首都が既に陥落済みであることも明かされた。
魔王軍による戦力配分と戦略
これまで魔王軍は中央大陸への侵攻を主軸としていたが、勇者の出現によってその優先順位が変化。兵力の少ないローゼンヘイムが新たな主戦場とされた。長命でありながら排他的政策を取ってきたエルフの国は、今や最も脆弱な存在と化していた。現地では南部の要所ネストなどで遅滞戦術を取っており、エルフたちは奮戦を続けていた。
ネスト到着と惨状の確認
魔導船に乗ったアレンたちは、ローゼンヘイム最南端のネストに到着。発着場は焼け焦げた積み荷や避難民で溢れ、街中にも負傷者と避難者が多数いた。クレナは黙っていられず、ドゴラ・キールと共に負傷者の救護にあたる。アレンは情報収集と状況分析を進めながら、戦力の立て直しを目指した。
長老会との対面と女王の行方
長老会との面会では、女王が最前線の街ティアモに留まっていると知らされる。これに対しソフィーは激怒し、アレンも女王と街の救出に向かう決意を示す。重傷を負った将軍ルキドラールには、草Bの覚醒スキル「天の恵み」を用いて片腕を再生させ、これが「エルフの霊薬」として周囲に知らされる。アレンはこの霊薬を3000個保有しており、ネスト全体の回復を実現可能とした。
軍議への代理出席とティアモへの出発
アレンは霊Bの召喚獣を代理として軍議に参加させ、ルキドラール将軍には回復済みの兵を動員して怪我人の救護に当たるよう指示を出す。そして、自身は鳥Bおよびグリフォン型の召喚獣に仲間と共に騎乗し、急ぎティアモの街へと向かうこととなる。クレナたちも回収され、アレンは全員を率いて火の手の上がる最前線へと飛び立った。
街を包囲し始めた魔王軍の影が迫る中、アレンたちは女王救出と戦況打開のため、決死の進軍を開始するのだった。
第三話ティアモの街
夜間飛行と街の偵察
アレンたちはティアモの街を目指し、召喚獣で空中移動を続けていた。街は魔王軍に包囲され、各所から火の手が上がっていたが、アレンの召喚獣の覚醒スキル「白夜」により、街はまだ陥落していないことが確認された。魔王軍は攻め込む気配を見せず、エルフたちは火消しと救護に奔走していた。アレンは街の中心にある建物を目指し、一行は一気に降下を開始した。
女王との対面と戦力の再構築
街の中心では、女王と将軍たちが撤退すべきか否かを巡って議論していた。そこにソフィーと共にアレンたちが現れ、女王と面会する。女王は、精霊王の予言により「救世主」として知られていたアレンの到来を歓迎する。アレンはすぐさま戦力の確認を行い、負傷兵14万、戦闘可能兵6万との情報を得ると、自らが用意した霊薬「天の恵み」を1000個提供し、戦力の回復を命じた。
夜襲決行と精霊との誤認
アレンは軍議の時間を惜しみ、すぐに夜襲を決断する。回復薬の使用中に時間を稼ぐため、アレンたちは魔王軍本陣13万を急襲する計画を立てた。アレンは霊Bの召喚獣を軍議の代理として残し、魔王軍の空中偵察を行う眼球状の魔獣を排除することで、夜襲の準備を整えた。エルフたちは召喚獣を精霊と誤認し、アレンの能力に驚きを隠せなかった。
夜襲開始と「小隕石」の猛威
アレンたちはティアモ北方に展開する魔王軍の本陣に到達し、セシルがエクストラスキル「小隕石」を発動。巨大な火球が敵陣に直撃し、1万以上の魔獣を一撃で消滅させた。この爆撃を合図に、クレナたちが召喚獣と共に突撃し、獣系の魔獣を撃破していく。アレンとセシルは、回復魔法を使うネクロマンサーらを優先して排除し、魔王軍の戦線維持能力を破壊していった。
魔王軍の反応と回復の遅延
敵の本陣が壊滅的被害を受けたことで、北門側に控えていた3万の軍勢が動き出し、クレナたちを挟撃しようとする。アレンは召喚獣のスキル「伝令」で状況を仲間に伝え、撤退を指示する。全員が無事に合流したが、ネストとティアモにいる負傷者の回復がまだ追いついていないことが判明した。アレンは即座に判断を下し、南に配置されている5万の魔王軍に対しても夜襲を仕掛ける決断を下す。
アレンたちは夜の闇を縫って、ティアモを取り囲む魔王軍の戦力を削るべく、果敢に次の戦場へと飛び立っていった。戦況を覆すため、アレンの急襲作戦は続く。
第四話 精霊王ローゼン
奇襲の成功と魔王軍の混乱
アレンたちは明け方まで北と南の二方面に奇襲をかけ、魔王軍を4万体以上撃破した。敵の偵察魔獣を初手で排除したことにより、情報が遮断され、北門での襲撃の情報が南側に届かなかったことが功を奏した。これにより、ティアモへの総攻撃は中止され、魔王軍は陣形の再編に追われることとなった。
各都市への支援と女王の所在秘匿
霊Bの召喚獣を通じて軍議の情報を得ていたアレンは、他の三都市も同時に攻撃を受けていることを知る。ティアモを含めた4都市が女王の行方を隠すためにあえて同緯度で同時に戦闘を継続していたことも判明し、アレンはティアモの将軍3名を同行させて各地へ回復薬を届けつつ支援に向かった。これにより、各地の兵士10万以上が戦線に復帰した。
精霊王ローゼンとの謁見と交渉
ティアモに戻ったアレンは女王に謁見し、精霊王ローゼンとの面会を願い出る。驚くべきことに、女王の肩に乗るモモンガこそが精霊王であった。アレンは、仲間たちを「ヘルモード」に移行させる願いを申し出たが、創造神エルメアによって却下された。
代案として、仲間たちを上位職へ転職させることを願う。精霊王は「対価」として、これまでの経験と成長を全て放棄しレベル1に戻ることを条件とし、1ランク上の職業(星4まで)への転職を許可した。また、妹ミュラに才能を与えるという申し出も、精霊王によって受け入れられた。
転職の意義とアレンの真実
翌朝、アレンは仲間たちに精霊王との交渉内容を説明し、ついに自身が異世界から来た存在であることを明かす。仲間たちは驚きつつも、これまでのアレンの行動に納得を示す。精霊王との交渉により、上位職への転職という希望が生まれたことが、戦い続きのパーティーに新たな目標と士気をもたらした。
アレンは「魔王は全狩りが常識」と豪語し、仲間たちを奮い立たせる。魔王軍との戦いは、ただの戦争ではなく転職クエストでもある。アレンたちはこの新たな目的を胸に、ティアモ攻防戦に向け再び動き出すのであった。
第五話ティアモの街防衛戦
街に迫る魔王軍と住民の絶望
ティアモの外壁から約1キロの地点に、魔王軍の総勢20万体以上が展開し、四方からじわじわと進軍していた。エルフの兵たちは、自らの街に女王がいることは知らぬまま、精霊王の加護と命令を信じて死力を尽くす覚悟を固めていた。負傷者のいない完全戦力20万のエルフ軍は、恐怖を抱きつつも奇跡を目にした記憶を糧に士気を高めていた。
奇跡と呼ばれるバフの正体
戦闘が始まると、兵たちはかつてない粘りと命中率、耐久力を発揮した。これはアレンが事前に魚系統の召喚獣3体──魚D「飛び散る」、魚C「サメ油」、魚B「タートルシールド」──の特技によるバフをエルフ全員にかけていたためである。これにより、被弾率・被ダメージは激減し、クリティカルも多発するようになった。
ドラゴンの出現と回復薬の投入
戦線に現れた巨大なドラゴンがブレスを吐き、外壁の上を炎で焦がしたが、将軍の一人がアレンから渡された「天の恵み」を使用したことで、範囲内の兵たちは即座に全快し、魔力も完全回復された。奇跡とも呼ばれる効果により、兵士たちは一層士気を高め、ついにはドラゴンを矢の雨で撃墜した。
魔王軍の第2波とアレンの奇襲作戦
南の魔王軍予備隊4万が動き出し、南壁への総攻撃が始まる。これに対しアレンたちは、事前に配っていた天の恵みによって兵の戦力を維持しつつ、召喚獣を使って後方奇襲を仕掛けた。虫B「アリポン」の産卵スキルで、合計3000体の子アリポン(5m級蟻型召喚獣)を召喚。さらに竜Bの範囲ブレスで敵陣を焼き払い、虫Bのギ酸による耐久低下効果を利用して、後方から魔獣軍団を崩壊に導いた。
殲滅と魔石回収作戦
魔獣軍の退却を阻むため、子アリポンたちは逃走中の魔獣を追撃・殲滅。これは、回復薬生成に必要なBランク魔石の補充も目的であった。南側の掃討後、召喚獣の一部を東西へ移動させ、魔獣の残党を殲滅。さらに北部の魔王軍もエルフ軍との戦闘で消耗しており、東西の部隊が迫ると北へ逃走を開始。最終的に魔王軍はティアモから全面撤退する。
ティアモの街防衛戦は、アレンと召喚獣の奇襲戦術、そしてエルフ軍の連携により、完全勝利という形で終結した。戦いを終えたアレンたちは、魔石の確保と仲間たちの転職という目的も見据えつつ、さらに広がる戦局に備えて再び動き出す。
第六話 軍事会議にて①
四都市の勝利と戦果報告
ティアモを含む4つの都市はすべて防衛戦に勝利した。従来は守勢一辺倒で魔王軍を退けるのが精一杯だったが、今回は各地で数万単位の魔獣を討伐する戦果を上げた。中でもティアモの討伐数は10万体を超え、女王や将軍たちも深夜の軍事会議で興奮を隠せなかった。死者数は約3000名に留まり、これまでと比較して被害は極めて軽微であった。
エルフの士気と女王の決意
女王は危険を省みずティアモに残る決意を示し、最強の精霊使いガトルーガの避難進言を退けた。さらに、魔導船運用の要である魔石の回収が見込まれ、戦略的な選択肢も広がる。アレンの提供した「天の恵み」の威力は依然として絶大であり、魔石との交換で今後も供給可能であることが示された。
攻勢への転換と進軍準備
ティアモ以外に避難していた10万の負傷兵が前線復帰する見通しとなり、エルフ軍は64万規模に回復する。魔王軍は各都市からの撤退を開始しており、アレンはこれを好機と見て、追撃による奪還作戦を提案。最終目標は首都フォルテニアの奪還と定められた。軍事会議においてエルフたちの表情には明るさが戻り、守りから攻めへの大転換が始まった。
ギアムート帝国の支援と戦局の広がり
ギアムート帝国からネストへの支援物資と食糧の提供が明らかになった。皇帝はエルフの霊薬の価値に注目し、政治的な恩を売る意図があるとアレンは見抜く。同時に、ギアムート北部の要塞へ向け魔王軍200万が進軍中であり、支援には自国の防衛戦略も絡んでいた。世界規模の戦局の裏に各国の思惑が交錯していることが浮き彫りとなった。
魔王軍への追撃と各個撃破作戦
翌日、アレンたちは空から魔王軍の退却隊列を追跡。進軍の末尾に向けてセシルの「プチメテオ」が炸裂し、魔王軍は前後に分断された。アレンはこれを好機と見て、遅れた部隊2万体を後方から襲撃する。虫Bの召喚獣アリポンは既に5500体に増えており、さらにバフと補助魔法で強化された大軍がトロル・オーガを取り囲む。
次なる局面への布石
アレンの作戦により、分断された魔獣部隊は空からのブレス攻撃と地上からの包囲によって一網打尽にされる見込みである。経験値と魔石の回収という目的も果たせるこの作戦は、守勢から一歩踏み出す象徴的な一手となった。精密な戦術と召喚獣の力を駆使したアレンたちの反撃は、ついに本格的な反攻の幕開けを告げたのであった。
第七話 100万の軍勢
魔王軍の集結と迫りくる危機
アレンたちによる3日間の追撃にもかかわらず、魔王軍は他の戦域から部隊を集結させ、北からの増援と合わせて総勢100万体の大軍勢となった。彼らは女王がいると見られるティアモの街へと南下を開始し、最北の砦の再現を危惧する緊迫の事態となる。アレンは女王に戦う覚悟を問うと、女王は避難せず最後まで戦うと宣言し、アレンも作戦を提示する。
遅滞戦術と魔石補給作戦
アレンが提案したのは、100万の魔獣の進軍を1日遅らせる「遅滞戦術」であった。斥候部隊3000人を借り受け、特に素早さを上げるスキル持ちの100人を運搬役に指定。アレンたちは進行方向に出没し続け、3日間で魔獣約40万体を撃破、その死体から魔石を大量回収させた。エルフたちは魔導船再稼働の準備、避難民の移送、外壁の三重構築に尽力し、迎撃の布陣を整えていった。
開戦と外壁の崩壊
魔王軍がティアモへ到達すると、三重の石積み防壁を次々に突破。エルフ兵たちは外壁に退いて必死に応戦するが、圧倒的な物量の前に後退を余儀なくされる。絶望が広がる中、空から現れたアレンが竜Bや虫Bなどの召喚獣を率いて反撃を開始。すでに40万体近くの魔獣を撃破しており、勝機はまだ残されていた。
魔石補給と火力強化
戦場に現れた斥候たちが袋いっぱいに詰めた魔石をアレンに届け、魔石の在庫は30万個を超える。アレンは虫Bを減らし、竜Bに特化した布陣を再構築。竜Bの覚醒スキル「怒りの業火」を使い、次々と魔獣の大群を焼き払っていく。1回の再召喚で580個もの魔石を消費する高コスト作戦であったが、殲滅速度はついに魔王軍の進軍速度を上回り、前線を押し返すことに成功する。
北門の防衛と戦局の逆転
エルフの精霊使いガトルーガも北壁東側で奮戦。アレンは戦況を見極めつつ、西側の増援へと向かい、北門付近の魔王軍を完全に殲滅。精霊魔法、弓隊、召喚獣、斥候部隊の連携が結実し、100万の大軍勢はついに壊滅した。外壁の兵たちはアレンたちの強さに恐れすら抱きつつ、勝利を実感する。
ローゼンヘイム最大の危機は、アレンの計画と召喚獣、そしてエルフたちの団結により乗り越えられた。100万の魔王軍との戦いは終結し、次なる戦局への準備が静かに始まろうとしていた。
第八話 軍事会議にて②
ティアモ防衛戦の勝利と魔石の収支
アレンは100万体の魔王軍を撃退し、うち80万体を討伐した。その結果、20万体の魔獣は戦意を失って逃走した。戦果は大きく、使用したBランク魔石は20万個に及んだ。魔石の分配として、アレンが40万個、ローゼンヘイムが20万個を受け取った。さらに、竜Bのブレスによって灰になったものは20万個分に相当した。ネストを含む各地には勝利の報が伝えられ、エルフの間では歓喜が沸き起こった。
再侵攻への備えと作戦構想
アレンは今後の再侵攻を警戒し、首都防衛の要である「ラポルカ要塞」の奪還を進言した。女王とシグール元帥はこれを了承し、5日後に30万の大軍で出陣することが決まった。アレンは出発までの時間を用いて、逃げ延びた魔王軍残党の掃討と、ラポルカ要塞の攻略情報の収集に当てると宣言した。
天の恵みの生成とアレンの心情
アレンはセシルとともに、草Bの召喚獣を使い天の恵みを生産していた。これは今後の進軍戦に備え、兵士の回復能力を高めるためである。セシルとの会話の中で、アレンの損得勘定ではなく「必要だからやる」という姿勢が改めて描かれた。
ラポルカ要塞の偵察と内部潜入
霊Bの召喚獣を中心とする別働隊がラポルカ要塞に潜入し、内部の観察を開始した。魔獣たちは霊Bを敵と認識しておらず、召喚獣である霊Bは違和感なく内部を移動できた。やがて彼らは、要塞中枢の会議室にたどり着き、そこにいた3人の魔族の会話を傍受する。
魔族たちの正体と次の作戦
会議室にいたのは、リーダー格の「グラスター」、その補佐と思しき「ネフティラ」、獣面の大男「ヤゴフ」の3名の魔族であった。彼らの会話から、魔王軍の新たな作戦として、北と海洋からの挟撃によるネスト侵攻が決定していることが明らかになった。これは避難民200万人を狙った兵站の確保と殲滅戦を意図したものであり、緻密な戦略のもとに動いていた。
魔族の知能と召喚獣の潜入成功
霊Bの召喚獣は、厨房の豚顔コックに話を合わせ、会議室に「お茶係」として潜入。魔族らの会話を引き出し、アレンに有益な戦略情報をもたらすことに成功した。魔獣と召喚獣の識別困難性を利用した潜入工作は、アレンの戦略眼の高さを示すものであった。
クレナへの指導と覚醒への期待
戦闘後、クレナは自らのエクストラスキルをうまく扱えなかったことに落ち込んでいた。アレンはクレナに可能性を信じるよう説得し、特訓を約束した。クレナの潜在力は勇者ヘルミオスと同等であり、スキルの適正発揮が鍵となる。仲間たちもクレナの覚醒を見守る中、戦いの準備は着々と進行していた。
次なる戦いへ
アレンは、次の戦に備え、魔王軍残党の掃討とラポルカ要塞の情報収集に専念する。魔神レーゼルの存在や、軍勢の再編といった脅威を前に、彼の戦略と仲間たちの団結が、ローゼンヘイムの命運を左右する鍵となっていった。
第九話ラポルカ要塞攻略戦
進軍準備と兵力の再編成
アレンは、霊Bの召喚獣による潜入情報をもとに、魔王軍が400万体規模で南北から挟撃を仕掛けてくることを察知した。急を要する中、ティアモからラポルカ要塞までの進軍を陸路から魔導船に切り替え、兵5万での急襲を提案した。アレンたちは逃げた魔獣の掃討で道を確保し、エルフ軍は魔導船で進軍、わずか3日で要塞近傍に到達した。
要塞前哨戦と偵察
フォルマールの長距離射撃と、鳥Eによる広域偵察により安全な降下地点を確保。アレンたちはさらに前方の魔獣配置を確認し、各部隊に掃討を指示した。また、アレンは獣Gの召喚獣を使い、要塞内部へと繋がる秘密の坑道を掘り進めた。道中で彼は仲間たちに「理と伸びしろ」の重要性を説き、クレナやドゴラの成長を促した。
坑道からの奇襲と要塞突入
翌朝、計画どおり坑道を通ってアレン率いる5000の兵が要塞内部に侵入。外壁占拠部隊と南門奪取部隊に分かれ、召喚獣の全面支援のもと速攻を開始した。外壁内ではBランクの魔獣たちが迎撃を開始するが、計画に基づき12時の合図とともに外からエルフ兵たちのエクストラスキルが一斉発動され、内外から魔王軍を挟撃する形となった。
南門の開放と本軍突入
クレナ、ドゴラ、召喚獣らの活躍により門番を撃破、南門は開放される。ここから本軍の4万5千が突入し、陣形を構築しながら要塞内に展開。アレンは鳥系召喚獣の能力を活用し、常に戦況情報を全軍に共有する体制を維持。ガトルーガも外壁占拠部隊を率いて正面から魔王軍を押し返した。
結末と次への布石
作戦は予想通りに進行し、ラポルカ要塞の南門奪還は成功した。残された課題は、内部の完全掌握と迫り来る300万の北部魔王軍、100万の南部海洋侵攻軍への備えである。アレンは仲間たちと共に、次の戦いへ向けた準備に入っていくのであった。
第十話魔族との戦い
南門制圧の成功と次の戦術展開
ラポルカ要塞の南門奪取が成功し、アレンとルキドラール大将軍は勝利を確認し合った。エルフ軍の攻撃系エクストラスキルを集中投入したことで、魔王軍30万のうち半数を撃破するに至った。アレンは新たに5,000人の兵を指揮下に置き、東側階段から北の外壁奪取へと行軍を開始した。
魔族三体との邂逅と開戦
外壁の戦局が進む中、魔族グラスター・ネフティラ・ヤゴフの三体が姿を現し、アレンに敵意を向けた。挑発に乗った魔族たちとアレンたちは一対一の形式で交戦を開始。だが、クレナとドゴラの力では単独撃破は難しく、アレンは即座にパーティーの連携による撃破戦術に切り替えた。
ヤゴフ撃破と魔族のエクストラスキル
ヤゴフが「エクストラの門」を開き、強化攻撃を仕掛けたが、アレンの石B召喚獣による全反射で打ち返され、大ダメージを受けた。続けざまに召喚獣の覚醒スキルを集中投入され、ヤゴフは撃破された。この戦闘で魔族にもエクストラスキルがあること、彼らがそれを「エクストラの門」と称していることが明らかとなった。
ネフティラの逃走とグラスターの最期
ネフティラはグラスターの指示で撤退を開始。アレンたちは止めようとするが、グラスターが立ちはだかる。クレナが限界突破を発動して対抗するが、ネフティラは逃げ切り、フォルテニアへと向かった。残ったグラスターは奮戦するも、ついに討ち取られた。最期に「魔神レーゼルには勝てぬ」と言い残し、灰と化した。
ラポルカ要塞奪還と「指揮化」の解放
グラスター撃破により、アレンは新たに「指揮化」のスキル封印を解除した。残る魔獣は混乱し、エルフ軍とアレンたちは要塞内の掃討戦を短時間で終結させた。こうしてラポルカ要塞は完全に奪還された。
逃亡ネフティラと霊Bの潜入
フォルテニアへ逃げるネフティラを、要塞の給仕係を装っていた霊Bが追跡し、「同行」を申し出る。ネフティラはこの申し出を受け入れ、アレンの手の者である霊Bを不覚にも側に置いたまま、魔神レーゼルの元へと向かった。
第十一話祈りが満ちて
要塞奪還の報せとエルフたちの祈り
ラポルカ要塞の奪還という大戦果は、霊Bの召喚獣を通じてエルフ全土に伝わり、民たちは精霊王と女王へ感謝と安寧を祈った。一方、死霊系の魔獣の潜伏を警戒し、召喚獣と捜索部隊が掃討を続行。アレンたちはティアモに戻り、次なる方針を話し合うべく女王との会見に向かった。
クレナとの会話とネフティラの逃亡の意義
移動中、アレンはクレナと二人きりで話す機会を得た。クレナはネフティラを逃したことを悔いていたが、アレンはむしろそれにより霊Bを魔神レーゼルの元に送り込めたと励ました。逃げることも戦術であると諭す中、夜のうちにティアモへ到着。一行は束の間の休息を得た。
指揮方針と今後の防衛戦略
翌朝、女王との会談が行われた。アレンはラポルカ要塞以南の制圧と、エルフ軍本部の要塞移転を提言し、北の300万・南の100万の魔王軍に対し防衛線を再編成する計画を示した。これにより、ティアモとネストにも戦力を分散する形となる。女王は苦悩しつつも了承し、改めて感謝の意を示した。
精霊王の覚醒と「精霊神」への昇華
アレンの問いにより、精霊王が突然覚醒。「祈りが満ちた」と語り、自らが精霊神へと進化しようとしていることを宣言した。感極まったエルフたちが涙する中、アレンは混乱しながらも「開放者」という言葉の意味を再び意識した。
指揮化スキルの解明と実地検証
アレンは新たに解放された「指揮化」スキルの検証に着手。召喚獣を将軍化(全ステ2倍)し、同系統の召喚獣を兵化(1.5倍)する効果があると突き止めた。特定条件下でしか発動できず、兵化は将軍の近くでないと無効化される制限もあった。アレンはこのスキルが予備軍100万との戦いに有効だと確信した。
霊Bの潜入と魔神レーゼルの登場
霊Bを連れたネフティラは首都フォルテニアへ到着。玉座に座す魔神レーゼルに敗戦を報告した。霊Bの正体が即座に見抜かれ、「アレンの配下」と名乗ったことで魔神の怒りを買い、光弾により消滅させられた。霊Bの言葉に激昂したレーゼルは、逆に「開放者」の出現に歓喜し、哄笑する。ここに、アレンの存在が魔王軍中枢に知られることとなった。
第十二話光と影の歴史
会議前の報告とアレンの決断
アレンたちは魔王軍残党を掃討しつつ、ティアモへ戻り女王へ戦果を報告した。精霊王は依然眠り続け、アレンは敵軍の進行が加速していることを警告した上で、自身は海洋側の100万の魔王軍と単独で戦うことを宣言した。仲間は北から迫る300万の魔王軍と共に要塞を防衛する役割を担うとし、全員がその決断を静かに支持した。
名付けと歴史の違和感
アレンはエルフの名に共通する長音の傾向に疑問を呈し、それをきっかけに古代から築かれていたラポルカ要塞の由来に話を進めた。そして、魔神レーゼルの名前や姿から、彼がエルフの可能性があること、すなわちローゼンヘイムと同族の争いではないかと指摘した。
ダークエルフと精霊王の伝承
アレンの問いに、女王はローゼンヘイムの秘された歴史を語った。かつてこの地にはエルフとダークエルフが存在し、共存を望んだエルフに対し、攻撃魔法に長けたダークエルフが世界間の独占を狙って戦争を仕掛けたという。絶滅の危機に瀕したエルフたちは祈りを捧げ、その祈りに応えた精霊の幼体・ローゼンと契約した「祈りの巫女」により、戦局は逆転。ダークエルフはネスト付近へ追いやられ、最終的に大陸から追放された。
アレンの誓いと女王の懇願
ダークエルフの歴史に加担することへの迷いを見せたアレンに対し、女王は玉座を降り頭を下げてまで協力を懇願。アレンはこれを受け入れ、共に魔王軍との戦いに挑む姿勢を貫いた。
ドゴラへの激励と召喚獣の配備
出発前、アレンはドゴラにエクストラスキルへの期待を告げ激励した。仲間たちと別れ、ラポルカ要塞に召喚獣を配置した後、単独で海洋侵攻軍の迎撃に向かった。
勇者ヘルミオスとの接触
霊Bの召喚獣を通じてアレンはヘルミオスと会談し、ローゼンヘイムの現況や中央大陸への支援内容を説明した。天の恵み1000個を送り、さらに10日後に追加供給することを伝えた。魔神レーゼルへの対策について尋ねたところ、ヘルミオスは「魔神は戦場に出ず、強力無比で、アレンでは勝てない」と忠告。彼自身は対魔神用のスキル〈神切剣〉で2体を討ったが、仲間を何人も失っていた。
第十三話 海上での戦い
海上での迎撃開始
アレンは召喚獣と共に海へ到達し、迫り来る魔王軍に対峙した。敵は大型の海棲魔獣に魔獣を多数載せて進軍しており、総勢は約400万と推定された。アレンは徹底殲滅の方針を掲げ、霊B・竜B・魚系統の召喚獣を中心に布陣。霊Bの特技「グラビティ」により海棲魔獣を次々に沈め、上空から迫る飛行部隊にはブラックホールで迎撃した。特技や覚醒スキルの連携によって敵を一掃しつつ、違和感を覚え始めていた。
夜間戦闘と敵の作戦変更
これまでの魔王軍は日中のみ活動していたが、今回は夜間も休まず交代制で襲撃を継続。アレンは自らが誘引されたことを悟り、敵の作戦変更と魔神レーゼルの関与を確信した。魔王軍は完全に包囲体制を敷いており、アレンは殲滅を決意しつつ、仮眠を取りながら継戦を続ける方針を固めた。
ラポルカ要塞への新たな脅威
ラポルカ要塞ではアレンの仲間たちとエルフ将軍が状況を共有していた。海上の戦闘とは別に、魔王軍は陸路の軍勢を200万・100万・100万の3つに分け、要塞を東西南北の四方から包囲する作戦に切り替えていた。特に東西は切り立った山岳地帯であったが、虫系魔獣による山越えが確認された。
要塞防衛のための配備と作戦
アレンは霊Bを通して、要塞におけるエルフ軍と召喚獣の理想的な配置を提示。北にアレンの仲間+ガトルーガ+エルフ軍9万、南には石B部隊、東西には竜B・虫B部隊をそれぞれ6万で配置するよう指示した。また、精霊魔導士や弓豪は南をやや厚めに、他は均等配置とされた。
作戦の核心と支援物資
ラポルカ防衛の作戦は「5日間の防衛」であり、それまでにアレンが到着して戦局を反転させるという構想であった。翌日にはグリフにより霊薬2000個と「ある物資」が届けられることも伝えられ、これこそが真の作戦の鍵であった。将軍たちはその内容に半信半疑ながらも、アレンの戦績を信じ、計画実行を決意した。
第十四話ラポルカ要塞防衛戦
要塞四方を囲む魔王軍の攻撃開始
ラポルカ要塞に対する本格的な防衛戦が始まり、魔王軍は東西南北の四方から進軍を開始した。特に守りの薄い東西側が懸念されたが、アレンが事前に展開した指揮化・兵化した召喚獣が各所で戦線を支えていた。東では竜Bの炎による迎撃、西では虫Bと子アリポンの波状戦術によって要塞防衛が機能していた。
三交代制の導入と回復支援体制の確立
アレンは魔王軍の連続攻撃を想定し、エルフ兵を10万人単位で三交代制に組織し、天の恵みと回復魔法の循環運用を実施した。さらに草Fの覚醒スキル「ハーブ」によって、魔力回復と安眠効果を持つ木を休憩所に配置し、兵士の士気維持と回復を図った。
各方位の戦況と召喚獣の戦果
西では虫Bの召喚獣と子アリポンが戦線を構築し、子アリポンの増殖速度が敵の撃破数を上回る状況が続いた。南では耐久に特化した石Bの召喚獣が粘り強く防御し、Aランクの魔獣の攻撃も反射によって返すなど善戦を見せた。一方、北では最も多くの魔獣が集結しており、後の本格戦闘が予期された。
戦況の中で仲間たちの奮戦とソフィーの活躍
要塞上空ではアレンの仲間たちが鳥Bの召喚獣に乗って支援戦闘を展開。Aランクのドラゴン3体が突進してくる中、ソフィーがエクストラスキル「大精霊顕現」により火の大精霊イフリートを召喚し、敵を一掃した。仲間たちは戦線を保ち、外壁の死守に尽力していた。
アレンの帰還と戦局の主導権奪還
アレンは海上での戦闘を終えて要塞に帰還し、竜Bの追加召喚で南北の防衛を強化した。魔王軍が12時間交代制で運用していることに目をつけたアレンは、交代直後の疲弊した魔獣を狙って攻勢をかける作戦を提示し、仲間たちと共に士気高く戦線に復帰した。
第十五話代価と引き換えに
魔王軍壊滅とエルフたちの勝利
アレンの合流により、ラポルカ要塞での魔獣討伐速度が劇的に上昇した。連日疲弊した部隊を狙う作戦を遂行した結果、13日間にわたる攻防の末、魔王軍400万体を殲滅するに至った。勝利を得たエルフたちは、戦友の遺骸に涙を流しつつ弔いの言葉を捧げた。
屍骸処理と静かな別れ
戦いの後、アレンとエルフ兵たちは魔獣の屍骸処理にあたった。虫Bや竜Bの召喚獣が、解体や焼却を分担して支援した。仲間の死を思いながらも、アレンは黙々と処理に従事し、戦争の現実と向き合っていた。
女王への報告と異例の「勇者召喚」
ティアモに帰還したアレンたちは女王に勝利を報告し、感謝の言葉を受けた。戦いが落ち着いた今、アレンは中央大陸から「勇者ヘルミオス」を招聘していた事実を明かす。ヘルミオスの協力は、アレンが天の恵みを贈り、女王を通じてギアムート皇帝に働きかけた結果であり、霊薬1000個との「物々交換」となった。
ヘルミオスの戦歴とパーティー編成の実情
ヘルミオスは魔神討伐の経験を持ち、10人程度の精鋭パーティーで上位魔族を撃破していた。ギアムート帝国では戦闘要員の育成・供給体制が確立されており、星3つの職業者が中核を担っていた。ヘルミオスの話から、アレンたちも帝国の戦略を理解し、連携の重要性を認識する。
勇者とアレンによる魔神戦の準備
アレンはヘルミオスと共に魔神レーゼル討伐に向けた作戦会議を開いた。戦闘力の確認を兼ねた実戦訓練では、ドゴラが勇者に挑むも歯が立たず、エクストラスキル未覚醒の限界を痛感させられる。勇者の言によれば、魔力系職業ほど覚醒が早い傾向があり、斧使いのドゴラは習得が遅れやすいとされた。
最終出発と女王の了承
アレンたちは魔神レーゼルとの決戦に向け、女王に別れを告げる。フォルテニアが戦闘で破壊される可能性もあるが、女王はローゼンヘイムを守るための犠牲として了承した。精霊王ローゼンは依然として進化の眠りの中にあった。
フォルテニアへの接近と魔神との対峙
ヘルミオスは先行し、アレンたちは鳥Bに乗ってフォルテニアに突入した。廃墟と化した都には魔獣の姿もなく、神殿には赤い瞳の異形──魔神レーゼルが玉座に待ち構えていた。アレンは恐怖を見せず挑戦を宣言し、ついに魔神との対決の火蓋が切って落とされた。
第十六話魔神レーゼルとの戦い
魔神レーゼルの正体と戦闘の始まり
アレン一行は、正体を現した魔神レーゼルと対峙する。レーゼルは「開放者」という謎の言葉を発し、世界間は本来ダークエルフのものであると語る。アレンは挑発と観察を交えつつ戦闘を開始し、まず竜Bの召喚獣による奇襲でネフティラを一撃で倒すが、レーゼルには通じなかった。
仲間たちの奮戦と圧倒的な力の差
クレナやドゴラが前衛として応戦するも、魔神レーゼルの強さは圧倒的で、エクストラスキル「限界突破」でさえ通用しない。フォルマールの「光の矢」で心臓を射抜く連携も決定打とならず、レーゼルは3つの心臓のうち1つを失うも健在であった。
ヘルミオスの登場と最初の勝機
アレンの作戦によって、隠れていた勇者ヘルミオスが登場。エクストラスキル「神切剣」でレーゼルの心臓の2つ目を破壊する。レーゼルは初めて動揺を見せるも、完全には倒れず、魔神の姿へと変貌を遂げる。
反撃とドゴラの犠牲
変貌したレーゼルはさらなる力を得て、ヘルミオスをも一撃で吹き飛ばす。アレンは仲間を守るために命を懸ける覚悟を決めるが、代わってドゴラが突撃し、エクストラスキル「全身全霊」で3つ目の心臓を破壊するも、致命傷を負い意識を失う。
精霊王ローゼンの顕現と逆転の兆し
窮地に追い込まれた中で、ついにソフィーの呼びかけに応じて精霊王ローゼンが顕現。「精霊王の祝福」により全員のステータスが3割上昇し、エクストラスキルのクールタイムが1度だけ無効化される。クレナが「豪雷剣」を発動し、ヘルミオスとの連携でレーゼルの最後の腕を破壊する。
最後の攻防と決着
レーゼルは空中へ退避し、大規模魔法を発動しようとする。アレンの判断でセシルが「小隕石」を落とし、魔神の動きを封じる。その隙に、ヘルミオスが再び「神切剣」を放ち、最後の心臓を貫通。レーゼルは魔力を失い、自らの魔法と小隕石によって地に押し潰され、完全に敗北した。
第十七話世界の下で
ドゴラの蘇生と仲間の安堵
激闘の末に倒れたドゴラは、一時は死んだと思われたが、キールのエクストラスキル「神の雫」により2回目で蘇生に成功していた。精霊王の祝福による知力上昇が成功確率を引き上げたとアレンは推測する。ドゴラは蘇生直後からアレンの発言に拗ねていたことが明かされ、場が和む。
魔神レーゼルの最期
アレンたちは崩壊したフォルテニアの街の一部で、重傷のまま横たわる魔神レーゼルを発見する。レーゼルは既に体が崩壊しつつあり、最後に世界樹を見ながら静かに灰となって消滅した。アレンたちは勝利を確認し、レベルアップのログと共に魔神の強さと意味を再認識する。
精霊神の覚醒と上位魔神の出現
レーゼル消滅後、精霊王ローゼンが精霊神へと神化する。そこへ上位魔神キュベルが現れ、今回の作戦失敗を視察に来たと告げる。アレンは自らの正体を偽るも、キュベルにはすぐに見抜かれた。キュベルは撤退するが、今後の脅威を予感させる発言を残す。
ローゼンヘイムの勝利と転職儀式
戦いから3日後、女王の謁見によりアレンたちは改めて感謝を受ける。精霊神の恩赦により、アレンの仲間6名は星4つの新職業へと転職を果たす。さらに、1人に限り星5つへ転職できると聞き、アレンはクレナを推薦する。
- クレナ:剣王(星5)
- セシル:大魔導士
- ドゴラ:狂戦士
- キール:聖者
- ソフィー:精霊魔導士
- フォルマール:弓豪
加えて、創造神エルメアの意志により、ヘルミオスも「英雄王」へと昇格する。
中央大陸への帰還準備と新たな冒険
バウキス帝国の戦況は優位に進んでおり、エルフの霊薬の追加提供が求められる。アレンはこれを交渉材料とし、S級ダンジョン攻略の足がかりとする。戦争の終結とともに、アレン一行は新たな冒険へと動き出すのであった。
特別書き下ろしエピソード①レーゼルの過去
ダークエルフの歴史的経緯と長老会議
舞台は1000年前の、ローゼンヘイム南の大陸に位置するダークエルフの里であった。過酷な砂漠の中に存在するこの里では、大木を中心に緑地と畑が守られていた。ダークエルフの王と長老たちは、突如届けられたエルフ女王からの国交回復の親書を巡り会議を行っていた。エルフとダークエルフはかつて敵対し、ダークエルフは敗北の末に島流しを選んだ歴史がある。長老たちはエルフへの強い憎しみを抱いており、国交回復には断固反対の姿勢を示していた。
条件付き国交とレーゼルの提案
長老たちが一様に反対する中、若きハイダークエルフのレーゼルは、「世界間の下に終の住処を作る」という条件付きでの国交受諾を提案した。しかしこの柔軟な態度は、かつて徹底抗戦を唱えていたレーゼルへの裏切りとして強く非難された。傍らには、彼の幼い息子オルバースの姿もあり、レーゼルは動揺しつつも冷静さを保とうとしていた。
キュベルとの接触と契約
会議後、レーゼルの私室に現れたのは上位魔神キュベルであった。キュベルは魔王軍の参謀として、レーゼルに魔神の力を授ける提案をしていた。レーゼルは長老会議の無力さに失望しており、エルフとの力の差を埋めるため、その提案を受け入れる。オルバースの顔が脳裏をよぎるも、家族との別れの言葉は交わさず、彼は里を後にした。
魔神化の儀と人格の崩壊
砂漠の星空の下、キュベルが取り出した「魔神石」をレーゼルの胸に突き刺すことで、魔神への変化が始まった。心臓は3つに分裂し、肉体は異形へと変容を遂げた。苦痛とともに、父としての自我や情愛が失われ、理性も崩れ落ちていく。キュベルはこの過程を冷静に観察し、「魔王誕生の準備が整いつつある」と告げて踊り出した。
このエピソードは、魔神レーゼルがかつてどのような人物であり、いかなる事情で魔神となったのかを描いたものである。彼の過去には家族への愛と葛藤があり、魔神化とはそれら全てを捨てる行為であったことが強調されている。
特別書き下ろしエピソード②精霊の宴
エルフたちの勝利の宴とアレンの挨拶
魔神レーゼルを討伐したアレンたちは、ローゼンヘイムの首都フォルテニアに滞在を続けていた。本来であればすぐにバウキス帝国へ向かう予定だったが、エルフたちからの要請により、「世界間」の下で神事としての勝利の宴が開かれることとなった。女王の挨拶に続き、アレンもフォルテニア復興への協力を誓い、感謝の意を伝えた。
精霊たちの出現とアレンの関心
宴が始まり、空に浮かぶ多数の精霊たちが世界間の周囲を飛び交う光景が現れる。これはエルフたちの喜びに呼応して集まった精霊たちによる「精霊の宴」であった。アレンはこの機会に精霊の観察と接触を試みることを決め、仲間と共にその場を離れ世界間の木へ向かった。
契約の準備と精霊への接近
アレンは将来的にソフィーが精霊使いに転職することを見越し、精霊との接触準備を進める。世界間の実が精霊の好物であることに気づき、実を採取して精霊への接近手段とした。しかし、ローゼンヘイムでは世界の実の採取は重罪とされており、事後的にソフィーから警告を受ける。
世界の実騒動と誤魔化し
誤って世界の実を食べたクレナを救うべく、仲間たちは一体となって残りの実を全てクレナの口に押し込む。証拠隠滅は成功し、ソフィーはガトルーガを呼び出し、精霊との契約について助言を得ることに成功する。契約には精霊との心の交流が必要であり、幼精霊との接触が第一歩であると説明される。
ドゴラと火の精霊の騒動
ガトルーガの助言を受けて接触した火の幼精霊サラマンダーは、ドゴラの無遠慮な捕獲行動によって怒り、自身を炎と化して反撃する。ドゴラは火だるまになるが、水の精霊によって消火される。アレンは元気な精霊の目星をつけられたことに満足し、精霊との交流に手応えを得た。
特別書き下ろし。
メルルの戦い
帰還命令と戦艦への配属
メルルはラターシュ王国でアレンと別れた後、バウキス帝国からの命令に従い帝都へ帰還した。学園の同級生や他国の学生たちと共に、魔導船に乗って戦艦へと向かうこととなった。メルルが配属されたのは、全軍を指揮する後方の戦艦である。乗船直後、父と再会するも、命がけの戦場に立つことへの不安と現実が二人を支配していた。
能力測定と規格外の才能
艦上で実施された能力測定にて、メルルは自らが魔岩将であり、Aランクの冒険者であることを申告した。留学中に5つのダンジョンを制覇した実績と共に、水晶を通じた測定では成長限界に達した驚異的な数値を示し、上官たちを驚愕させた。その異例の才能により、メルルは選抜会議に招かれ、バウキス帝国の精鋭と共に前線配備の候補とされる。
提督ガララとの対面
会議室では、バウキス帝国海軍を統べる英雄、提督ガララが登場し、選抜された生徒たちと対面した。ガララは威圧的な態度で選抜の意図を語るが、メルルの資料に目を留め、口を挟んだ彼女を叱責する。しかし、メルルは臆せず手を挙げ、二点の申告を行う。一つは、ローゼンヘイムの王女から預かった「エルフの霊薬」の提供であり、もう一つは「最前線で戦いたい」という願いであった。
精霊薬と決意表明
メルルは神の試練を超えた者に有効な「エルフの霊薬」を帝国に渡す意思を明確にし、実戦的な回復効果の範囲も説明した。さらに、アレンたちと同様に自らも戦いたいという強い意志を示した。ローゼンヘイムを救いたいという気持ちと、父が働く船を守りたいという責任感から出た発言であり、その覚悟の強さにガララ提督も一目置く様子を見せた。
電子書籍特典ローゼンヘイム最強の男との問答
ガトルーガの疑念とフォルマールの呼び出し
勝利の宴が終わった深夜、フォルマールはローゼンヘイム最強の男と称されるガトルーガに呼び出された。アレンが精霊の宴で精霊を「捕まえよう」とした言動に疑念を抱いたガトルーガは、アレンの本質を問うため、フォルマールに詰問する。
守護する者としての覚悟と対話
フォルマールとガトルーガは「守護する者」の一族に生まれ、女王やその継承者を守る宿命を背負っていた。ガトルーガはアレンが女王にとって益か害かを見極めるため、祈りの巫女との比較まで持ち出し、激昂する。しかし、フォルマールはアレンを「理解するものではなく慣れるもの」と評し、脅威ではないと明言した。
アレンの真意とソフィーへの期待
フォルマールは、アレンが祈りの巫女以上の存在にソフィーを育てようとしていることを伝える。アレンは仲間との会話の中で精霊使いとしてのソフィーの可能性を語っており、フォルマールはそれがアレンの本質を理解する手がかりであると示唆した。
思考停止ではなく“慣れ”による理解
ガトルーガは理解不能なアレンの行動に困惑するが、フォルマールは「アレンは思いつきで動く。付き合うには慣れるしかない」と忠告する。翌日から精霊に関する質問攻めに遭う可能性を予告し、フォルマールは眠気と共にその場を去った。
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