物語の概要
ジャンル:
時間遡行ファンタジーである。かつて魔王を討伐した英雄カイルは、瀕死の瀕狂の末、魔王が守っていた深紅の宝石「神竜の心臓」に触れたことで、自らの記憶と意識を携えたまま、悲劇の始まる世界に戻された。過去の経験を武器に、人類滅亡を阻止すべく再び立ち上がる「二周目攻略型」英雄譚である。
内容紹介:
第5巻では、前世での仲間や悲劇に抗うため、“大武術祭”への参加を余儀なくされたカイルたちが、大国間の外交摩擦に巻き込まれる。師匠・レイラの突如の参戦により、準決勝では親友セランとの試合、さらにはかつて人族最強とされた師匠との対決という緊張の展開を迎えることとなる佳巻である。
主要キャラクター
- カイル:主人公であり魔法剣士。前世の記憶を活かし、二度目の人生でも仲間を守るため成長し続ける意志の強い存在である。
- レイラ:カイルの師匠であり、“師匠”として尊敬される存在。武術祭に電撃参戦し、カイルにさらなる試練を与える鍵となる人物である。
- セラン:カイルの親友。準決勝で対戦する場面が描かれるほか、友情と信頼が浮き彫りになる重要なキャラクターである。
物語の特徴
本作は、ただ強いだけではなく「戦略的AIのような知恵」を活かしながら戦う“二週目の英雄譚”に特化している点が最大の特徴である。第5巻のように、師匠との対戦や大武術祭、友情のすれ違いなどが絡む展開は「予想できないドラマ」と「キャラクターたちの成長」を巧みに融合させており、他の異世界ファンタジーとは一線を画している。
書籍情報
強くてニューサーガ 4
著者:阿部正行 氏
イラスト:布施龍太 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2015年05月03日
ISBN:978-4-434-23870-3
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あらすじ・内容
“強くてニューゲーム”ファンタジー、衝撃の第五章!
累計11万部突破! “強くてニューゲーム”ファンタジー、衝撃の第五章! 魔族との戦いの準備を次なる段階に進めるべく、カイル一行は伝説の商人クラウスの協力を得ようと都市バヨネへ向かった。だがそこで待ち受けていたある意外な人物から、なんと現魔王がカイルに会いたがっていることを知らされる。その真意を探るため、カイル達はクラウスの手引きで魔族領への密航を敢行。ついに魔王との禁断の交渉にこぎつけるが、そこへ好戦派の魔族達が乱入したことで、事態は思わぬ方向へ展開していく――
感想
今巻では、魔族との戦いの準備をさらに進めるため、カイルたちが伝説の商人クラウスに会いにバヨネへと向かう。そこで意外な人物との再会を果たし、なんと現魔王との会談にまで発展していくという、驚きの展開だった。
物語の中で特に印象的だったのは、魔王との会談だ。不死身である魔王を、過去のカイルが殺したという事実に衝撃を受ける。さらに、その魔王を監禁し、魔族たちの覚悟を決めさせた未来の魔王とは一体何者なのか、という謎が深まるばかりだ。
カイルたちの行動は、正直言ってかなり酷いと感じた。しかし、いかなる手段を用いても良いと言われていたことを考えると、彼らの選択も理解できる。それに対し、三腕は戦闘狂でありながらも、武人としての誇りを持っているように感じられ、とてもかっこよかった。
また、セランが皇女と現魔王という、厄介な立場の人物たちに好かれているのも面白い。彼女の魅力が、物語に深みを与えているように思う。
物語の終盤では、ラスボスらしき人物もちらりと登場し、魔族関連の話は一旦落ち着きを見せる。次巻からは人族同士の戦争がメインになるようで、今後の展開が非常に楽しみだ。
未来の魔王と現代の魔王が出会う時、主人公カイルはどのような行動を取るのだろうか。未来への収束は、すでに始まっているのかもしれない。
今回の戦い方は、確かに姑息と言われても仕方ないだろう。しかし、勝利のためには手段を選ばないという姿勢も、時には必要なのかもしれない。
全体を通して、今巻も目が離せない展開の連続だった。次巻ではどのような物語が繰り広げられるのか、今から待ち遠しい気持ちでいっぱいだ。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
カイル
冷静で計算高い行動を取る人物であり、仲間との連携や交渉で主導的役割を担う。過去の因縁を抱えつつも目的達成のために危険を選ぶ決断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
特定組織には属さず、自身の仲間を率いる立場。
・物語内での具体的な行動や成果
マルニコ商会との交渉、魔族領への同行決断、三腕との決闘で勝利を収める。黒翼の魔族と交戦し生存。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔族領での戦いと勝利により、魔族の最上位クラスからも認められる存在となった。
セラン
戦闘力の高い剣士であり、聖剣ランドの所持者。仲間の支援や交渉場面でも行動する。
・所属組織、地位や役職
特定組織には属さないが、カイルの右腕的存在。
・物語内での具体的な行動や成果
魔王ルイーザとの会話や三腕との決闘で連携し勝利に貢献。アンジェラ皇女との関係構築。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔王から名を覚えられるなど、個人的な認知を受ける。
リーゼ
肉体戦闘に秀で、仲間のために果敢に前線に立つ人物。
・所属組織、地位や役職
カイル一行の戦闘要員。
・物語内での具体的な行動や成果
炎眼戦で接近戦を試み、最終的に三腕戦で渾身の一撃を加えて勝利に導く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘での功績により仲間内での信頼度が高まった。
ウルザ
水の精霊との契約者であり、精霊召喚を駆使して戦う。
・所属組織、地位や役職
カイル一行の魔法戦担当。
・物語内での具体的な行動や成果
炎眼戦でリヴァイアサンを召喚し勝利に大きく貢献。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
召喚時の不調を仲間に懸念されるが、本人は良い兆しと見ている。
ミナギ
忍びとして諜報・潜入を担う。
・所属組織、地位や役職
カイル一行の情報収集役。
・物語内での具体的な行動や成果
商会や監視者の情報収集、炎眼戦での奇襲による勝利補助。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
裏方としての活躍が多く、仲間の戦闘を支えている。
アンジェラ
ガルガン帝国皇帝ベネディクスの末娘で皇女。外交と個人的野心を併せ持つ。
・所属組織、地位や役職
ガルガン帝国・皇女。
・物語内での具体的な行動や成果
マルニコ商会との交渉、魔族領への密航同行、セランへの支援要請。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国内情勢の変化と暗殺未遂を受け、自身の立場強化を模索。
クラウス・マルニコ
マルニコ商会の長であり、商才と交渉術に長けた人物。
・所属組織、地位や役職
マルニコ商会・商会長。
・物語内での具体的な行動や成果
カイルと魔族領行きを取り決め、交易方針を説明。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔族領とも交易関係を築くなど国際的影響力を持つ。
ユーリガ
魔族の女性で、魔王ルイーザの協力者。
・所属組織、地位や役職
魔族領・魔王側近。
・物語内での具体的な行動や成果
カイル達を魔族領に招待し、ゼウルスの脱皮殻加工やターグ情報を提供。炎眼戦を裁定。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人族領での活動が可能な魔族として特異な立場にある。
魔王ルイーザ
魔族領を統治し、人族との友好を掲げる。
・所属組織、地位や役職
魔族領・魔王。
・物語内での具体的な行動や成果
カイル達との謁見、ゼウルスの殻加工を約束、三腕の死を看取る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人族出身の英雄ランドルフと過去に関わりを持ち、その理念を信じ続けている。
三腕
先代魔王の側近で無敗を誇った闘将。尾を第三の腕のように操る。
・所属組織、地位や役職
魔族領・好戦派。
・物語内での具体的な行動や成果
カイルとの決闘で敗北し、ルイーザに看取られ死去。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去にカイルへ屈辱を与えた因縁の相手。
炎眼
魔族領の好戦派で、火炎魔法に長ける。
・所属組織、地位や役職
魔族領・好戦派。
・物語内での具体的な行動や成果
リーゼ達と交戦するも敗北。雷息殺害の嫌疑を巡りカイルと交渉を試みる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルイーザに一時的に従う姿勢を見せる。
雷息
魔族領の好戦派で、広範囲の雷撃を操る。
・所属組織、地位や役職
魔族領・好戦派。
・物語内での具体的な行動や成果
城外で死亡して発見され、物語の緊張を高める原因となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
その死が複数勢力間の疑惑と対立を招いた。
ターグ
魔族で、カイルの追う仇敵の一人。
・所属組織、地位や役職
魔族領内外で活動。
・物語内での具体的な行動や成果
雷息を挑発・殺害し、魔王の力を削ぐ計画を実行。黒翼と行動を共にする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
カイルの仇敵として今後の衝突が予想される。
黒翼の魔族
カイルとウルザの宿敵で圧倒的な力を持つ。
・所属組織、地位や役職
詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
闘技場でカイルの斬撃を無効化し、ターグと共に転移で離脱。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔王の座を手段として過去改変を狙っているとカイルに推測される。
展開まとめ
1
大河チグテス河の船旅
カイル一行は、世界最長の大河チグテス河を巨大な旅客船で遡上していた。船は調教された巨大な亀型の魔獣に引かれ、沿岸には著名なドワーフ彫刻家が生涯をかけて刻んだ石像が並んでいた。鮮やかな水鳥ガーヨの群れと巨大魚の群れが織りなす光景に乗客たちは見入ったが、リーゼとシルドニアは食材としての可能性にも関心を示した。セランの故郷リマーゼの名が出たことで、リーゼは帰郷を勧めたが、カイルは拘束や騒動を避けるため拒否した。また母セライアの出産を理由に帰りづらさを感じており、リーゼはその態度に呆れた。周囲の視線を意識しつつ、目的地バヨネへ到着した。
バヨネでの食事と仲間の話題
バヨネは中州に位置する観光兼商業都市で、水路沿いの高級レストランで食事を取った。料理には東方の島国の刺身や発酵食品など珍しい品が並び、セランは戸惑いを見せた。仲間のミナギは裏方役として別行動中であり、リーゼは共に食事できないことを残念がった。食後のデザートでは女性陣がケーキを堪能し、カイルとセランは今後の予定を確認した。カイルは次に会う人物として、世界最大規模の商会を築いたクラウス・マルニコと面会予定であった。
届いた手紙と近況報告
カイルは配達ギルドで受け取った手紙を確認した。エリナからの手紙には、母ルクテラの快復やダークエルフ一族との関係改善が記されており、ウルザは安堵の表情を見せた。また、魔技師ゴウからはゴーレム復元作業が半分まで進んだとの報告があり、順調だが造形美や美意識を強調する内容にカイルは不安を覚えた。シルドニアは天才には突き抜けた面があるとし、結果を信じるよう助言したが、カイルは懸念を抱えつつも任せる決断をした。
2
水路からマルニコ商会へ向かう道中
カイル一行は水路を利用してマルニコ商会へ向かった。観光都市バヨネの景観や名物を楽しみながら進むが、カイルとセランは途中で自分達を監視する視線に気付く。敵意はないため当面は放置することにし、歩きで目的地へ向かうことを決めた。カイルはこれから会う商会長クラウスとの交渉で『大侵攻』への備えとして物資の確保を目指していた。
ミナギとの接触と情報報告
雑踏の中、巡礼者姿のミナギが接触し、クラウスや商会についての調査結果を報告した。防諜が徹底され、弱みを掴むことはできなかったが、クラウスが極めて用心深い人物であることは判明した。また、監視しているのは商会の配下であると伝えられた。さらに商会内部が慌ただしく混乱しており、予期せぬ事態が発生している可能性が示された。カイルは状況によっては面会が延期されることを覚悟した。
マルニコ商会本店前の異変
北部の商業地区に入ると、歴史的建築から倉庫群に景色が変わり、マルニコ商会本店が見えてきた。船着き場では従業員たちが慌てて荷を片付け、清掃しており、予定外の重要人物を迎える様子が窺えた。そこへ豪華な大型帆船が到着し、ガルガン帝国の紋章が掲げられていた。
皇女アンジェラの到来
船から降り立ったのはガルガン帝国皇帝ベネディクスの末娘アンジェラであった。華やかな存在感を放つ彼女は、以前から気に入っているセランを見つけて満面の笑みで手を振った。女性好きでありながら皇女からの好意を厄介と感じるセランは慌てて隠れるが、カイルにからかわれ、頭を抱えることとなった。
3
アンジェラとの再会と同行
皇女アンジェラは豪華な装いで現れ、半年ぶりの再会となるカイルを熱心に称賛した。彼女はセランにも親しげに接し、バヨネ滞在中は同行する意志を示した。表向きは親善大使として来訪したと語るが、本音ではマルニコ商会をガルガン帝国の支配下に置く意図を隠さなかった。アンジェラはクラウスとの交渉を通じ、失態を交渉材料とするための訪問であることを明言した。
クラウスとの舌戦
マルニコ商会本店でクラウスが出迎え、アンジェラと会談が始まった。アンジェラは伯爵位と領地維持を条件に帝国傘下入りを迫るが、クラウスはバヨネの合議制を理由に拒否した。両者は互いに笑顔を崩さぬまま、裏にある強硬な手段を暗示しつつ言葉を交わす。アンジェラは経済独占による支配を提案するが、クラウスは自由な競争こそ発展の源と主張した。さらにアンジェラは人族統一の先に魔族領征服を見据えていると明かし、クラウスを揺さぶったが、最終的に交渉は平行線のまま終わった。
アンジェラの退席とクラウスの本題
アンジェラは他の有力者との面会予定のため退席し、去り際に譲歩の期限が近いことを警告した。緊張が解けた後、クラウスはカイルとの会談に移り、以前から会うことを望んでいた理由を明かした。それは商売上の得意先からの依頼で、内密にカイルとの面会を求めている人物がいるというものであった。
予想外の再会
クラウスの指示で案内された客は、カイル達の顔見知りである魔族の女性ユーリガだった。額に角を持つその姿に、カイル達は驚きを隠せなかった。
4
魔族との再会と緊張
クラウスが招き入れた客は、かつて共闘経験のある魔族の女性ユーリガであった。カイルは即座に警戒を強めるが、リーゼは旧知のように接し、他の仲間も過度な警戒は示さなかった。ユーリガは魔族が人族領で活動できる背景として、クラウスが魔王の協力者であることを示唆した。クラウスは魔王個人を気に入って協力していると述べ、商売上の利益と人族の将来に資するとする理由を語ったが、カイルにとっては裏切り以外の何物でもなかった。
魔王からの招待と交渉材料
ユーリガは魔王がカイル達に会いたがっており、魔族領への同行を求めた。安全の保証と共に、条件として二つの提案を出す。一つは人族では加工不能な『竜王』ゼウルスの脱皮殻を魔族なら加工可能であること、もう一つはカイルが追っている魔族ターグに関する情報であった。ただし後者の詳細は魔王のみが語れるとし、それを理由に魔族領へ来るよう促した。
決断への過程
カイルは警戒心を抱きつつも、強力な防具の入手と重要な情報獲得の可能性に心が揺れた。クラウスも同行を申し出て安全性を強調した。仲間達はおおむね賛成し、セランはターグとの再戦を望み、シルドニアもゼウルスが認めた魔王に興味を示した。リーゼとウルザは判断をカイルに委ね、最終的にカイルは危険を承知で魔族領への同行を決断した。
5
深夜の出航準備と同行者たち
翌深夜、カイル一行はクラウスの手配による専用船着き場から魔族領への出航準備を整えていた。関係者以外の目を完全に排し、魔道具による動力を備えた大型船で目立たぬ航路を進む計画であった。アンジェラ皇女は既にバヨネを発っており、セランは彼女から解放されたことに安堵していた。カイルは危険を考慮しリーゼとウルザの同行を止めようとするが、二人は一切応じず、ミナギもシノビとしての矜持から同行を選んだ。
アンジェラ皇女の密航
しかし出航から半日足らずで、密航者としてアンジェラ皇女が姿を現した。彼女は水中呼吸と透明化の魔道具を用い、河側から侵入したと説明する。目的はクラウスの密貿易の証拠を掴むことであったが、魔族領行きとユーリガの同行という予想外の情報を得て、クラウスと個人的協力関係を結んだ。アンジェラはこのまま同行すると宣言し、危険性を訴えるカイルに対しても、自らの武勇と覚悟を示して了承を取り付けた。
河竜との遭遇とユーリガの成長
航行中、船は河竜と呼ばれる大型魔獣に襲撃されるが、ユーリガが即座に応戦し、一撃で討ち取った。その戦いぶりからリーゼとウルザは彼女の力量向上を認め、経験不足を補うための鍛錬の成果と見なした。リーゼは友好の証と受け取ったが、ユーリガはあくまで魔王に会う前の安全確保と強調した。
夜の甲板での告白
夜、アンジェラはセランと共に甲板に立ち、自身が焦って功績を求めた背景を語った。皇帝ベネディクスの容態悪化に伴い、長兄エルドランドの主導で国内引き締めが進む中、国外婚姻の話が浮上したこと、さらに直近一か月で二度の暗殺未遂に遭ったことを明かした。身近な者の関与を疑い、帝都を離れるために単独行動を取ったという。アンジェラはセランに助力を乞い、信頼の証として【テレパシー】の魔道具を託した。
カイルとミナギの会話
二人の会話を陰から聞いていたカイルは、アンジェラの行動の真意を理解しつつ、ガルガン帝国内情の変化と内乱の可能性に思考を巡らせた。マスト付近に潜んでいたミナギも、暗殺の背景は特定困難であるとしつつ、内部の手引きの可能性を認めた。カイルは状況把握のため再度帝国訪問の必要性を感じたが、ミナギはリーゼの話から逃げてきたばかりであり、カイルはそれを受け流した。
6
魔族領への到達と文化交易の目的
バヨネを出発して四日、カイル一行は魔族領近くに到達した。船旅は平穏で、カイルはかつて命がけで侵入した魔族領と比較し、その落差に戸惑いを覚える。船倉でクラウスが明かしたのは、魔族側が求める交易品は人族の娯楽や生活雑貨であり、魔王ルイーザが人族文化を魔族に浸透させる方針を持っているという事実だった。ユーリガもその意図を肯定するが、カイルは二年後に迫る「大侵攻」を思い、悠長な計画に賛同できずにいた。
魔王ルイーザとの謁見
湖に浮かぶ小島の別荘に到着した一行は、人間のメイドの出迎えを受ける。メイドは魔族領生まれで、現状に満足しており人族領に戻る意思はなかった。謁見の間で出迎えた魔王ルイーザは、気怠げな態度ながらも人族友好の意志を示し、ターグ捕縛後の面会と『竜王』ゼウルスの抜け殻加工を約束する。そのうえでカイル達に協力者になるよう提案し、さらにセランの聖剣ランドの譲渡を求めるが、セランは拒否。ルイーザは代替案として生涯の庇護と引き換えに死後の剣譲渡を持ちかけるも、これも拒まれた。
好戦派の乱入
そこへ魔族好戦派の炎眼、雷息、そしてカイルの仇敵三腕が現れる。炎眼は挑発的態度を取り、雷息は人族殲滅を主張。三腕は強者との戦いを求め、セランの聖剣に興味を示す。ルイーザは彼らの戦争要求を退け、異議があるなら自分を倒せと告げる。三者三様の不満が漂う中、ルイーザは次の客を迎える。
ドラゴンとの再会と古竜ジュバースの行方
現れたのは、かつてカイルが戦ったドラゴン・グルードと、その仲間イルメラだった。彼らは古竜ジュバースの行方を捜しており、魔王に情報を求めるが、ルイーザも所在を知らない。ただし調査を約束される。グルードはカイルに再戦を挑もうとするも、イルメラに制止される。
混沌の宴の予兆
魔族・人族・ドラゴンの入り混じる中、ルイーザは全員を招いた食事の席を提案。殺意を隠さない雷息、敵意を向けるグルード、面白がる三腕と炎眼。シルドニアは、この短期間で人族・魔族・ドラゴンの首脳級が二度集った事実を「歴史の転換点」と見なし、先行きの不確かさを感じ取っていた。
7
好戦派三人の背景と三腕の脅威
カイル一行は城の客間で休息を取りつつ、先ほどの謁見に現れた好戦派三人について情報を交換した。ユーリガは、雷息は人族への憎悪、炎眼は自己の栄達のために戦いを望むと説明し、いずれもルイーザの大義を理解していないと批判した。三腕については、尾を第三の腕のように用いるとされる闘将であり、先代魔王の側近として無敗を誇った存在だと語った。その姿を見たカイルは動揺を隠せず、過去に三腕との戦闘で仲間三十人を失い、自身はかすり傷を与えた功績を理由に見逃された屈辱の記憶を思い出していた。
雷息の戦術的脅威
ユーリガは雷息の広範囲無差別の雷撃についても説明し、人族相手なら千の兵を屠る力があると警告した。セランはこの相手とは戦闘を想定すべきだとし、奇襲による速攻以外の勝機は薄いと判断した。ユーリガは逆に襲撃されれば粛清の口実になると述べ、カイル達の実力を信頼する姿勢を見せた。
ドラゴンとの情報交換
一方、シルドニアはイルメラとグルードから、古竜ジュバース探索の経緯を聞いた。二人は竜王ゼウルスの命で人族・魔族との交流強化の一環として訪れたが、ジュバースが行方不明であることに驚きを示した。イルメラは自ら人化の術を学び、グルードは罰として強制的に人化させられたと明かす。過去にメーラ教徒に操られたグルードの事例を踏まえ、ジュバースの安否を案じた。
竜殺しの真相とアンジェラの評価
アンジェラはドラゴン達を紹介してほしいと求め、シルドニアはカイルの「竜殺し」が実際にはグルードを殺さず救ったものであると説明した。アンジェラはこの事実を知ってもなおカイル達の実力を高く評価し、さらにメーラ教徒が関与していたことに着目し、帝国での同教団取り締まりの現状を語った。
魔王ルイーザへの違和感
ユーリガが席を外すと、カイルは皆に魔王ルイーザの印象を尋ねた。シルドニアやセランは、彼女が人族友好を掲げながら人族を軽視する矛盾を指摘し、アンジェラも自身を排除せず放置する不可解さに同意した。カイルは、その真意を問いただすべきか逡巡しつつ、今夜の食事の場での探りを検討した。
ウルザの異変
出発前、リーゼはウルザの様子が妙に静かで顔色が悪いことに気付き、カイルも心配する。ウルザは水の精霊の力が強すぎて不快感を覚えていると説明し、不調ではないと告げたうえで、むしろ良い兆しかもしれないと意味深に笑ったが、詳細は語らなかった。
8
ランドルフの絵と晩餐会
ルイーザの城へ案内される途中、セランは大階段上に飾られた人物画に目を留めた。それは先代魔王アドニースと、人族の英雄ランドルフの一騎打ちを描いたものだった。ランドルフの顔が極悪に描かれているのに対し、アドニースは凛々しい表情で描かれており、人族の視点とは真逆の印象だった。晩餐会は人族と魔族が向かい合って着席し、豪華な料理が並ぶ中、雷息だけが参加を拒否。カイルは対面に座る三腕に緊張し、ドラゴンのイルメラとグルードは調理料理に戸惑っていた。炎眼はリーゼに過去の戦いを尋ね、三腕はカイルとセランに人族事情やランドルフ像について質問。しかし、三腕が語ろうとしたアドニース討伐の真相はルイーザに制止された。
三腕との個人的な火花
宴後、三腕はカイルの敵意に気付き問いただす。三腕は三百年人族と関わった覚えがないため理由は知らないが、戦いを歓迎すると告げる。カイルは必要な戦いしかしないとかわすが、三腕は問題を起こしてくれることを期待していると笑った。
魔族像の変化と慎重な撤退方針
部屋に戻った一行は、魔族も人族と大差ない思考を持つと感じたが、歴史的確執や魔王の絶対支配構造の危険性を指摘。カイルは必要な情報と用事を済ませ次第、人族領に戻る方針を確認した。
セランとルイーザの夜の会話
夜の見張り中、セランは大階段で一人佇むルイーザを見つける。彼女はランドルフの絵を前に物思いにふけっていた。セランが聖剣ランドへの執着理由を問うと、ルイーザは感情をあらわにし、理由を踏み込むなと釘を刺す。謝罪するセランに彼女は意外さを見せ、名を覚えると言い残して立ち去った。セランは魔族も人族も変わらないと感じるが、カイルには「魔王を涙目にした」と聞かされ、ユーリガへの露見を恐れて逃亡案を話し合う。
不穏な夜明け
翌朝、状況は一変。魔族の好戦派の一人、雷息の死体が発見されたとの報がもたらされる。
9
雷息の死と疑惑
翌朝、カイル達は雷息が殺されたという衝撃の報を受ける。遺体は城正面に放置されており、傷だらけで頭部も半壊。争った形跡がないことから、別の場所で殺され運ばれたと見られた。ルイーザは謁見の間に全員を集め、炎眼は真っ先にカイル達を犯人扱い。前夜にセランが城を歩き回っていたことまで指摘され、場の空気は険悪化するが、ルイーザは事件の裁定を自ら預かると宣言し、その場を収めた。
ユーリガの提案とグルードの証言
部屋に戻ったカイル達に、ユーリガは無実を証明するのはほぼ不可能だとし、「雷息殺しを認め、魔王の協力者として庇護を受ける」案を提示。真犯人追及よりも生存を優先する策だった。そこへ現れたグルードは、昨夜雷息が自ら城を出ていくのを目撃し、その後ルイーザも一人で外出していたと爆弾発言。カイル達は、炎眼・三腕・ルイーザを含め、全員が怪しい状況に混乱する。
炎眼からの裏取引
ユーリガが席を外すと、炎眼が現れ、魔王ではなく自分の協力者になるよう持ちかける。見返りは、雷息殺しの嫌疑を晴らし城から無事に帰すこと。条件は人族の情報提供だったが、カイルはこれを拒否し、代わりに「魔族情報と引き換えに魔王の情報を渡す」という諜報取引を提案。炎眼は即答せず、考える時間を求めて去った。カイルは炎眼を「性質は悪いが行動が読みやすい」と評し、必要なら先に裏切ればよいと割り切る。
不透明な真犯人像
炎眼の態度から彼女が犯人ではない可能性も浮上し、三腕の線も捨てきれないが確証はない。結局、雷息を殺したのが誰かは依然不明のまま。そこへ険しい表情のユーリガが戻り、ルイーザの呼び出しを告げる。カイル達は嫌な予感を抱きつつも、応じざるを得なかった。
10
ルイーザの提案と三腕の挑戦
ルイーザは頭痛を訴えるような様子でカイルを玉座の間に迎え、雷息殺害の嫌疑が晴れぬままでは魔族としても庇いきれないと告げた。だが、その状況を打開する前に三腕が「雷息の仇討ち」を名目にカイルとの戦いを希望。ルイーザはこれを単なる戦闘欲求だと見抜き、戦わせずに済ませるため即時退去を提案するが、カイルは黒翼の魔族の手掛かりを得る目的から拒否した。
魔族流の無実証明
ルイーザは無実を証明する二つの方法を提示。一つは犯人を確証付きで突き止めること、もう一つは「決闘に勝つ」ことであった。魔族社会では勝者の正当性が絶対とされる文化があり、立会人によって命を守ることも可能と説明。ユーリガは強く反対するが、カイルは三腕への敗北を晴らすため決闘を受ける決意を固めた。
闘技場での対峙と炎眼の離脱
夕刻、カイル一行は闘技場に到着。三腕と炎眼が待ち受け、三腕は複数人での挑戦も認めるが、炎眼は巻き込まれを恐れ別の場所でリーゼ達と戦うことに。ユーリガが見届け役として同行し、闘技場にはカイルとセランのみが残った。
一騎打ちへの固執
セランは二人で挑むつもりだったが、カイルは自らの我がままとして一人で戦うことを選択。三腕との決着こそが前に進むための条件だと語り、セランの制止を振り切る。セランは不満を残しつつも退場し、闘技場中央でカイルと三腕が対峙した。
決戦の幕開け
三腕は豪槍を構え、カイルは剣を抜く。互いに因縁を胸に秘め、「今度こそ勝つ」と誓うカイルに、三腕は愉快そうに応じ、決闘が開始されようとしていた。
11
湖岸での戦闘開始
広い湖岸に到着した炎眼は安堵を見せ、リーゼ達四人は四方から距離を取り包囲した。ユーリガの合図で戦闘が始まり、炎眼は視線だけで対象を燃やす多彩な火炎攻撃を展開した。リーゼ達は動き回り接近を試みるが、炎の壁や高速の火球に阻まれた。ウルザの召喚するウンディーネだけが効果的に防御を行い、四人は辛うじて攻防を維持したが、炎眼は動かず余力を残していた。
接近戦の試みと失敗
度重なる突撃の末、リーゼが捨て身で間合いに入り渾身の拳を放つが、炎眼に容易く止められる。炎眼は接近戦にも対応可能であることを示し、ガントレットを握り潰した。これにより近距離戦での突破も困難となり、リーゼ達は次の策を模索した。
上位精霊召喚の決断
ウルザは水の上位精霊リヴァイアサンの召喚を提案するが、集中中は無防備で成功率も五分と低いと説明した。それでも全員が賛同し、百秒間ウルザを守る作戦に移行した。防御の要が消え三人となったが、士気はむしろ高まった。
炎眼の切り札と召喚成功
炎眼は時間稼ぎを察知し、切り札「肉体炎化」を発動して炎そのものとなった。圧倒的熱量で接近を阻むが、ユーリガの制止に一時気を取られる。その隙にウルザの召喚が成功し、巨大な水塊が炎眼を襲った。炎眼は全力の炎で応戦するも、水との衝突で水蒸気爆発が発生し、戦場は白煙に包まれた。
決着と勝利
爆心地に現れた炎眼は満身創痍ながら戦意を失わず、再び立ち上がる。しかし背後に回っていたミナギが毒針を突き刺し、麻毒により炎眼は倒れた。ユーリガが勝敗を認め、ウルザは精霊召喚の負担で立つのもやっとの状態となる。四人は互いの奮闘を称え、最上位魔族を打ち倒した勝利に笑みを交わした。リーゼは闘技場で戦うカイル達の様子を案じつつ、その方角を見やった。
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死闘の幕開け
闘技場でカイルは三腕の猛攻を紙一重で避けつつ、左側の視界が僅かに甘いという弱点を見抜く。敢えて速度強化魔法【ヘイスト】を温存して死角に回り込むが、尻尾による迎撃で打ち落とされ、戦意を失ったかのように崩れ落ちる。これはセランとの連携による芝居であり、隙を突いて尻尾を切断することに成功した。
三腕の本気と重力操作
策に嵌められた三腕は怒るどころか称賛し、本気を出すことを宣言。奥の手である重力操作【グラビティ】を発動し、自分以外の動きを鈍らせる。格闘戦主体となった三腕は圧倒的な技量と経験を駆使し、カイルとセランを追い詰めていく。それでも二人は重力下での戦闘経験と息の合った連携で互角に食らいついた。
決着への布石
消耗が激しい中、カイルとセランは無言の合図を交わす。観客席から離れていたシルドニアが鷹に変化し、三腕の注意を一瞬だけ逸らす。セランが聖剣ランドで首筋を狙い、三腕に致命的な隙を生むが、反撃を受け重傷で倒れる。
渾身の一撃と意外な援護
カイルは最大限に速度を上げて心臓を狙い突進。左腕を犠牲にされた三腕に刃を止められるが、その時「何人でもかかってこい」という三腕の言葉を逆手に取ったリーゼが乱入。カイルの背中へ渾身の拳を叩き込み、その衝撃で剣は更に押し込まれ、ついに三腕の心臓を貫いた。
勝利の瞬間
崩れ落ちながらも驚愕の言葉を残す三腕に、カイルは背中の激痛を堪えつつ勝利を確信する笑みを見せた。
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勝利と三腕の最期
三腕を倒したカイルは背中に激痛を抱えながらも無事を装う。三腕は致命傷を負いながらも戦いぶりを称賛し、リーゼの乱入のタイミングを問う。実際はセランの【テレパシー】指示による即興作戦で、カイルとセランは互いの思考を読むほどの信頼関係を見せた。敗北を受け入れた三腕は、主ルイーザの手で死を望む。魔王の圧倒的な不死の力を見せつけられた後、三腕は安らかに息を引き取った。
雷息殺害の真相と新たな脅威
雷息殺害の犯人探しで炎眼が事情を語る中、観客席に潜んでいたターグが登場。雷息を挑発して暴走させた末、殺害したのは自分だと軽く告白し、魔王の力を削ぐ計画だったと語る。その最中、カイルだけが闘技場の隅から迫る闇の奇襲に気付き、三腕の尻尾を使って阻止。姿を現したのは、カイルの宿敵でありウルザの仇でもある黒翼の魔族だった。
黒翼との邂逅と逃走
黒翼はカイルの全力の斬撃を指先で止め、軽く投げ飛ばすとターグと共に転移で姿を消す。ルイーザや魔族勢は軽く受け流すが、人族側は圧倒的な存在感に恐怖を覚える。カイルは必ず見つけ出し討つと心に誓う。
ルイーザの問いと過去
ルイーザは「人族にとって信じるとは何か」と問う。カイルは答えようとするが、セランが軽口で「簡単なものだ」と返し、ルイーザは過去を語り始める。かつて人族の英雄ランドルフを愛し、彼を信じて父を討つ手助けをしてしまったこと、その後も憎めなかったこと、そして魔族と人族の共存という彼の夢を信じ続けていることを明かし、涙を流す。
一日の終わり
炎眼は今後しばらくルイーザに逆らわないと明言し、カイルとの情報取引を打ち切る。周囲が賑やかになる中、カイルは星空を見上げ「そろそろ寝たいな」と静かに呟き、一日の幕を閉じた。
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帰還前の見送りと魔王の変化
翌日、カイル達は島の船着き場で帰路に就く準備を整えていた。ルイーザは自ら見送りに現れ、他者には目もくれずセランと会話を交わす。その様子を見たリーゼやウルザは、魔王の恋愛感情をからかうように話題にし、クラウスやシルドニアも興味を示す。そこへアンジェラが現れ、魔王に挑発的な挨拶をし、両者の間に冷たい火花が散った。
今後の協力と別れ
ユーリガはカイル達に今後もターグ関連の情報共有を約束し、竜王の皮の加工品を届ける際にも報告すると述べた。イルメラとグルードも別れを告げ、特にグルードはカイルに再戦を約束させるが、カイルは八十年以内という現実的な期限を提示し、巧みに先送りした。
魂の異変と魔王の指摘
出航直前、カイルは二日前にルイーザからかけられた「何故そこにいる」という言葉の真意を問いただす。ルイーザはカイルの魂が人族のものとは異なり、魔族に近いと感じたと説明し、魂の変質が進めば肉体にも変化が現れる可能性を示唆する。シルドニアもこれを否定せず、感情や闘争心を抑えるよう忠告したが、確証はないと付け加えた。
黒翼の魔族への決意
夕方、カイルは魔族領での出来事を振り返り、黒翼の魔族が魔王の座を手段として過去改変を狙っていると確信する。過去の戦いよりも強さを増していると感じた相手に対抗するため、さらなる力を求める決意を固めた。
人族領への帰還と衝撃の報
帰路は順調で、半月ぶりにバヨネへ到着した一行は安堵の表情を見せる。今後の行動を考える中、クラウスに緊急の報が入り、第一皇子エルドランド暗殺の知らせがもたらされる。この事件が後に人族領全体を巻き込む大騒乱の火種となった。
番外編 巨人殺し
ザイスの町の危機
人口二千ほどの小国ワイコブの町ザイスに、山奥からサイクロプス襲来の報が入る。しかも十年前より倍近い巨体。国の援軍は間に合わず、町の自警団も五十名程度で歯が立たない。町長ラゲーニンは滞在中の冒険者メルディオ一行に討伐を依頼しようとするが、その場にカイル達が現れる。
竜殺しの申し出
『竜殺し』の名を持つカイルは無報酬で討伐を引き受け、メルディオ達には自分達が失敗した場合の保険として待機を依頼。早速現場へ向かい、シルドニアの案でウルザが巨大な落とし穴を設置する。
二体のサイクロプス
予定では一体を落とし穴に誘導するはずが、現れたのは二体。先頭は容易く落ち穴に嵌まり、リーゼ達が遠距離攻撃で仕留める。後続はカイルとセランが正面から迎撃し、連携で眼を貫き撃破。
裏の黒幕
戦闘中に感じた視線を辿ると、隠れていたメルディオ達を発見。カイルは彼らが精神操作魔法でサイクロプスを町にけしかけ、討伐して名声と報酬を得るつもりだったと看破する。尋問の末、メーラ教との関係は否定されたため命を見逃すと告げるが、背後から襲いかかったメルディオはミナギの苦無で即死。
悲運の英雄譚
翌日町に戻ったカイルは、メルディオ達がもう一体を引き受け全滅したと偽り、町人達に「巨人殺し」の称号を彼らに贈るよう勧める。死者は競争相手にならず、自身も良い印象で語られるという計算だった。宴の誘いも断り、「忘れないでほしい」という言葉を残して町を去る。
次なる舞台へ
冊子で今後の予定を確認しながら、カイルは次の人助けと名声獲得の舞台を探しつつ仲間のもとへ向かった。
同シリーズ





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