小説【つよサガ】「強くてニューサーガ3 武術大会」感想・ネタバレ

小説【つよサガ】「強くてニューサーガ3 武術大会」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は異世界転生דニューゲーム”要素を持つファンタジーライトノベルである。魔法剣士カイルは、前世の記憶を携えて二周目の人生を歩む中、魔族の暗躍を阻止すべく鉱山都市カランへと赴く。そこでガルガン帝国に同行し、カイルの実力証明のため大陸最大の武術大会に挑むが、意外な波乱が次々と巻き起こる展開である。

主要キャラクター

  • カイル:本作の主人公。前世の記憶と経験を活かし、戦術と剣技で最強を目指す魔法剣士。
  • ミレーナ王女:カイルを信頼し、鉱山都市カランへ彼を導いた王女。

物語の特徴

本作の魅力は、「ニューゲーム」術を活かした戦略性の高さにある。前世知識による予測と準備、武術大会という高い競争舞台、そして帝国からの圧力という外的制約が、カイルの成長と葛藤を巧みに描き出す。仲間との信頼構築や意外な展開も相まって、王道異世界ファンタジーの中に緻密な読み応えを与えている点が、他作品との差別化要素となっている。

書籍情報

強くてニューサーガ 3
著者:阿部正行 氏
イラスト:布施龍太 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2014年04月02日
ISBN:978‑4434190421

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あらすじ・内容

“強くてニューゲーム”ファンタジー、激動の第三章!
累計5万部突破! “強くてニューゲーム”ファンタジー、激動の第三章! 鉱山都市カランで魔族の暗躍を阻止したカイル一行は、この恐るべき事件の証人として、ガルガン帝国へと旅立つ。しかし帝国側は、強力な魔族を倒した経緯とカイルの実力を疑問視。その証明として、大陸最大の武術大会で優勝することを求めるのだった。未来で大戦争を生き抜いたカイルならば楽勝――かと思われたが、思わぬ誤算が頻発し、大会は大波乱の様相を呈していく。果たしてカイルは、英雄への大きな一歩を勝ち取ることが出来るのか!?

強くてニューサーガ3

感想

鉱山都市カランでの一件を終え、カイルたちはガルガン帝国へと旅立つ。しかし、待ち受けていたのは、予想外の展開だった。

今回の物語では、武闘大会という舞台が用意され、カイルはそこで実力を証明することを求められる。未来の知識を持つ彼にとって、それは容易いことのはずだった。しかし、現実はそう甘くない。予期せぬ事態が次々と起こり、大会は大波乱の様相を呈していく。このあたり、未来が変わってきている影響が色濃く出ていて、読んでいてハラハラさせられた。

特に印象的だったのは、武闘大会に現れたジョーカーのような存在だ。あれは本当に理不尽で、カイルもさぞかし苦労したことだろう。そして、最後の展開は……カイルにはただただ「強く生きろ」とエールを送りたい気持ちになった。

新たな仲間、諜報活動が得意なミナギが加わったのも大きな変化だろう。彼女がカイルに個人的に雇われることになり、今後の活躍が楽しみである。カイルは、英雄になるために着実に名を広めていっている。その過程を見ていると、応援したくなる気持ちが湧き上がってくる。

武闘会でのセランとの勝負は、もう少しページ数を割いてじっくりと描いてほしかったというのが正直な感想だ。しかし、その短い描写の中にも、セランの強さやカイルの苦悩が凝縮されていたように思う。

また、レイラがメーラ教徒だったという事実も、今後の物語の展開に大きな影響を与えそうだ。彼女の過去や信仰が、カイルたちにどのような影響を与えるのか、目が離せない。

書き下ろしの短編は、過去に戻る前のカイルの話で、魔族の侵攻によって窮地に立たされている人族が、それでも抗おうとする姿を描いている。そこで、一巻で早々と退場したゼントスが登場したのは、ファンとしては嬉しいサプライズだった。彼の生き様は、短いながらも強く心に残った。

全体を通して、『強くてニューサーガ3』は、予測不能な展開と魅力的なキャラクターたちが織りなす、目が離せない物語だった。次巻が待ち遠しい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

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闘技場での初戦と圧勝

カイルは、ガルガン帝国の大陸最大級の闘技場で行われる建国記念「大武術祭」に出場し、本戦第一試合に臨んだ。対戦相手は優勝候補の一人である剣闘士ロッケルトであり、観客の多くが彼を支持していた。カイルはあえて剣を抜かず素手で挑むことで格闘スタイルに合わせ、挑発を繰り返しながらロッケルトを消耗させた後、渾身の一撃で勝利を収めた。これは観客の注目を集めるための戦略でもあり、勝利の裏には緻密な下調べと危険な賭けがあった。

旅の経緯と外交使節団の使命

今回のガルガン帝国訪問は、鍼山都市カランで発生した魔族出現事件の後始末としての意味を持っていた。外交使節団を率いるのはミレーナ王女の側近であるキルレンであり、カイルも魔族討伐の証人として随行することになった。使節団の目的は、ジルグス王国が事件に関与していないことを説明し、帝国との関係悪化を防ぐことにある。

帝都ルオスへの到着と圧倒される面々

カイル一行は、五日間の旅を経て帝都ルオスに到着した。都市の巨大さと熱気は圧倒的で、特に建国祭を間近に控えた街の活気は常軌を逸していた。ルオス大闘技場の前にはセランの養母である「紅髪鬼」レイラの像もあり、セランとカイルは過去の恐怖を思い出してげんなりした様子を見せた。

帝国との会談と魔族の存在証明

会談では、ガルガン帝国第一皇子エルドランドと特級魔導士ベアドーラを中心に、ジルグス側との激しい応酬が繰り広げられた。カイルは魔族の角を証拠として提示し、ベアドーラがそれを真正と認定。これにより帝国側は魔族の存在を認めざるを得なくなる。

政治的駆け引きとオーギスの手腕

ジルグス側の実務を仕切るオーギスは、ガルガン帝国の元工作兵が関与していた事実を突きつけ、帝国側をさらに黙らせた。これによりジルグス王国の責任を最小限に留めることに成功した。一方で、キルレンとの確執も表面化するなど、内外に火種を抱える結果となる。

予想外の乱入者

会議の終盤、場にそぐわない派手な服装の男が乱入する。その男は、ガルガン帝国第三皇子であり、ミレーナ王女の元婚約者であるマイザーであった。彼の登場が今後の展開に波乱を呼ぶ予兆を漂わせつつ、会談の幕が引かれた。

3


無遠慮な皇子、マイザーの登場

外交会談中、ガルガン帝国の第三皇子マイザーが乱入し、無礼な態度でジルグス使節団を挑発した。キルレンに対して下品な言葉を投げかけ、カイルにも軽薄な質問を繰り返す。だがその一方で、彼の言動の中には表面的な軽薄さとは異なる鋭さも見え隠れし、カイルはその本質を懐かしげに受け止めた。マイザーに挑発されつつも、カイルは魔族を倒せる実力を持つことを明言し、あえて強気の姿勢で臨んだ。

帝国内部の不穏な空気と真の評価

会談後、エルドランド皇子はマイザーや側近たちと共に、ジルグスの使節団に関する評価を共有した。特にカイルとその仲間たちの実力を高く評価し、警戒を強めていた。剣士ダリウスはセランの腕前に注目し、宮廷魔導士ベアドーラはシルドニアの正体が不明であることに警戒心を抱いた。これらを受け、エルドランドはすでに密偵を使って彼らの身元調査を進めており、今後の動向を注視する構えであった。

マイザーとエルドランドの真意

マイザーは自身の役割を「帝国への不満の受け皿」と称し、兄エルドランドが自身を処刑して英雄視されるシナリオすら笑いながら語った。だが、エルドランドは弟の能力を高く評価しており、いずれ有効に使うつもりでいた。表面上の放蕩とは裏腹に、マイザーは権謀術数に通じた危険な存在であり、二人の兄弟の間には複雑な信頼と策略が交錯していた。

カイルの語る未来の予兆

その頃、カイルはシルドニアと二人で会話を交わしていた。そこで彼は、近い将来にガルガン帝国を襲う重大な出来事――皇帝と第一皇子の相次ぐ死――について語り始めた。未来を知る者として、カイルはこの帝国が迎える混乱の時代に備えて、自らの行動を慎重に選ばねばならないことを再認識するのだった。

4

前世の帝国の崩壊とマイザーの即位

カイルの前世では、約一年後に皇帝ベネディクスが病に倒れた後、優秀と評されていた第一皇子エルドランドが急死したことで帝国は混乱に陥った。皇帝の遺言により、次期皇帝には第三皇子マイザーが指名される。これにより、帝国は三つの派閥に分裂し、内乱が勃発した。しかしマイザーは圧倒的な手腕で一年足らずで内乱を終結させ、皇帝に即位。その直後に「大侵攻」が始まり、人族の滅亡寸前にまで追い詰められる要因となった。

エルドランドの死因とカイルの判断

カイルはエルドランドの死の真相を知らず、公式には心臓発作とされていたが、多くの憶測が飛び交っていた。マイザーによる暗殺説もある中で、カイルはその可能性を否定しつつ、自らはこの件に介入しないと決断する。マイザーを皇帝に据えた方が、自身の目的である「大侵攻」への対策として都合が良いためである。

シルドニアの助言とカイルの決意

シルドニアは、マイザーを味方につけるためには事前に恩を売るべきだと進言し、カイルもそれに同意する。内乱時に支援することで、マイザーの即位を後押しし、国力の低下も防ぐ狙いである。今夜の晩餐会でマイザーと接触し、関係構築を試みることをカイルは決意した。

晩餐会とカイル達の様子

ジルグス使節団を歓迎する晩餐会が宮殿で開かれた。リーゼとウルザは過去の晩餐会と比べて気楽に楽しみ、他の仲間達も思い思いに行動する。一方、カイルはマイザーの姿を探して会場を見回すが発見できない。キルレンは多くの貴族に囲まれ、オーギスは帝国関係者と内密な会話を交わしていた。

第二皇子との遭遇

マイザーを探す中で、カイルの背後から声がかかる。振り向いた先にいたのは、ガルガン帝国の第二皇子コンラートであった。見知らぬ人物だったが、皇家の象徴である紋章からその身分を見抜いたカイルは、彼に対して冷静に応じた。

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皇族の乱入とアンジェラ皇女の登場

カイルが帝国第二皇子コンラートに話しかけられていたところ、末妹のアンジェラ皇女が割って入る。彼女は強い者への強い執着を見せ、カイルに興味津々の様子を見せた。その目には純粋な好意ではなく、獲物を狙う狩人のような危険な輝きが宿っていた。

皇族三兄妹の騒動

コンラートの話を遮るように第三皇子マイザーも登場。さらにセランが現れ、アンジェラの興味はセランにも向かう。ダリウスが評価した剣の使い手と知ったからである。混乱が頂点に達しようとしたその時、第一皇子エルドランドが登場。強い威厳で場を収め、兄妹たちに叱責を与えた。

アンジェラとの会話と社交

騒動の後、アンジェラはカイルとセランに話を持ちかける。元々カイルはマイザーとの接触が目的だったが、ひとまずアンジェラとの会話に応じた。アンジェラは十五歳で、皇女ながら婚姻相手を自ら選べるほどに兄エルドランドと皇帝から甘やかされていた。晩餐会では貴族たちが遠巻きに様子を窺う中、カイルとセランが特別な存在として注目を浴びる。

武芸談義と波紋

アンジェラは魔族との戦闘について話を聞きたがり、カイルは詳細をぼかしつつ説明。武芸に心得があるアンジェラは鋭い質問を繰り返し、会話は盛り上がる。だが彼女の何気ない一言、「カイル様とセラン様、どちらがお強いんですか?」という問いに、両者が即座に「自分だ」と同時に即答した瞬間、場の空気が一変した。

6


カイル vs セラン、火花散る意地の張り合い

アンジェラの「どちらが強いのか」という質問に、カイルとセランは即答で「自分」と断言。互いに譲らず張り合うも、アンジェラから「模擬戦をしたらどうか」と提案された瞬間、一転して互いを褒め合い、譲り合い始めた。明らかに面倒事を避けたい様子にアンジェラは戸惑うが、カイルはマイザーとの約束を理由に話を切り上げた。

再会:謎の美女、その正体は“ミナギ”

バルコニーで気持ちを落ち着けるカイルの前に現れたのは、美しく着飾った女性ロナ。しかし彼女の正体は、前世でカイルと共に戦った凄腕の暗殺者・ミナギだった。彼女は香水に偽装した催眠効果のある毒をまとい、正体を隠して接近。カイルは極度に警戒しつつ、正体の確認と目的の探りを試みるが、ミナギはマイザーの登場によりその場を退く。

マイザーと初の本格的対話

カイルはマイザーに呼び止められ、初の本格的な会話の機会を得る。マイザーはカイルを見て「何か企んでいるように感じる」と率直に述べ、その直感の鋭さにカイルは内心驚嘆。カイルの目的を問い詰めた末、「英雄になりたい」との答えを聞いたマイザーは、それを妄想ではなく真剣な意志と見抜いた。そして「挫折して生き延びたら、また仕官の話を思い出せ」と冗談めかして立ち去った。

エルドランド兄弟の評価と葛藤

その後、マイザーは兄エルドランドにカイルの印象を伝える。「よくわからないが気になる存在」「一緒に飲めば面白そう」と語り、仕官を拒まれたにもかかわらず一方的な好感を抱いていた。一方で、エルドランドはカイルを警戒し、「早期に始末すべきでは」と提案。しかしマイザーは「今は様子を見るべき」と答え、私情は挟まないと約束する。

アンジェラの「お願い」

カイルが去った後、セランとアンジェラが残る。逃げようとしたセランをアンジェラが引き止め、「お願いがある」と意味深に話しかけてきた。セランは不安を覚えつつも、断れない空気に押されてしまう。

7

ミナギの行方とセランの違和感

マイザーとの会話後、カイルは再び“ミナギ”と思しき女性ロナの姿を探すが、晩餐会場には既にいなかった。彼女が任務目的で潜入しているならば、標的は誰か、自分なのか――様々な懸念がよぎる。そんな中、セランと再会。彼は「誰かから視線を感じる」と警戒を強める。敵意とも殺気とも異なる異様な“気配”に、セランの感覚が反応していた。

ロナの話題とリーゼの誤解

カイルがミナギ(ロナ)の姿について尋ねると、セランは「ナンパしたのか」と誤解。その会話を偶然リーゼが聞いており、カイルは嫉妬を買って連行され、ウルザとシルドニアの前で説教を受ける羽目に。英雄志望でありながら女の尻を追っていてよいのかと、夜遅くまで小言が続いた。

帝国との外交交渉、泥沼化

翌日、ジルグスと帝国の交渉は平行線をたどっていた。ガルガン帝国側は魔族侵入事件の責任をジルグスに押しつけようとし、ジルグス側は一貫して反論。やがて帝国は新たな難癖として、ミレーナ王女との婚約破棄や、カイルによる魔族討伐の真偽にまで言及し始める。

魔族討伐への疑念と大武術祭

帝国重臣らは、カイルが魔族を本当に倒したのかを疑問視。「相討ちの横取りではないか」「実績に証拠がない」と揶揄し、エルドランドまでその意見に乗ってくる。するとオーギスが逆にこの状況を利用し、「では大武術祭に出場して証明すれば良い」と提案。キルレンも賛同し、ジルグス代表としてカイルの推薦を申し出る。

武術祭への出場決定と帝国の条件

帝国側もこの挑発を退けられず、エルドランドはカイルの参加を受け入れた上で、「優勝できなかった場合は責任を負うように」と念押し。こうして、世界最大級の武術大会・大武術祭へ、カイルの出場が決定されることとなる。すべてが決まった後、カイルはようやく状況を理解し「……あれ?」と間抜けな声を漏らすのだった。

8

武術祭出場の裏事情

交渉後、カイルは武術祭出場の件について、ミレーナから事前に一任されていたことをオーギスとキルレンから聞かされる。ガルガン帝国の実力主義的な性質を逆手に取り、実力で黙らせるという策だった。事前の説明もなく既成事実として話を進められていたが、カイルは表向きは快く引き受けた。元々名を上げるために武術祭への出場を検討していたこともあり、結果的には計画が前倒しになった形である。

セラン vs アンジェラ ― 鍛錬の間

皇女アンジェラの願いにより、セランは模擬戦に付き合う。華麗かつ鋭い剣技を持つアンジェラであったが、セランには一太刀も浴びせられず完敗。実力差を認めつつも、彼女は師匠であるダリウスの教えを誇らしげに語る。セランは、精神的に気を使う立ち回りにやや疲れを感じながらも、無事模擬戦を終える。

ダリウスとの対話とカイルの登場

見物していたダリウスはセランの実力を高く評価しつつ、カイルとセランどちらが強いのかを問う。挑発的な口調に空気が張り詰める中、カイルが現れ、緊張を和らげる。アンジェラは三人での手合わせを希望するが、皇帝からの呼び出しでその場を離れる。

ゼントスの件と武術祭への流れ

ダリウスはカイルに、ゼントスを倒したのは本当かと問う。カイルは動揺を隠しながら事実をぼかして答えるが、帝国の情報収集能力の高さを実感。さらにダリウスが武術祭への出場を宣言し、「決勝で君と戦えるようにしてもらう」と興奮気味に語る。ジルグスとガルガンの武術祭は、名実ともに代理戦争の様相を呈し始めていた。

セランの反応と母の影

セランは「おふくろが優勝した武術祭か」と呟き、内に何かを思う素振りを見せるが、「興味はない」と答える。そして、既に出場が決定しているカイルを前に、今回は自分の出番は無いと笑いながらその場を後にした。カイルはセランの背中を何とも言えない思いで見送っていた。

9

カイル一回戦勝利とトーナメントの観戦

カイルは一回戦でロッケルトに勝利し、リーゼやウルザと共に観戦席へ向かう。大会は全32名によるトーナメントで、推薦やサプライズ枠も存在していた。セランの姿は見当たらなかったが、アンジェラ皇女に呼ばれていると聞き、カイルは納得する。出場者にはドワーフやリザードマンなども含まれており、帝国の実力主義的な雰囲気が感じられた。

仮面の剣士「サン・フェルデス」登場

初日最後の試合、サプライズ枠として仮面剣士「サン・フェルデス」が登場。その異様な外見に観客は嘲笑するも、アンジェラ皇女の推薦と知るや一転して注目が集まる。正体はカイル達には明白で、剣と名前からセランであると一目でわかった。案の定、セランは圧倒的な実力で優勝候補のガドフリーを撃破。観客を魅了し、新たなダークホースとして脚光を浴びる。

セラン出場の経緯と真相

仮面剣士の正体であるセランは、アンジェラの政略的な頼みにより強引に出場させられていた。公爵家との政略結婚を回避するため、アンジェラは自らの推薦選手としてセランをぶつけ、ガドフリーを敗北させたのだった。セラン本人は酔わされて承諾させられたらしく、仮面のデザインもアンジェラの趣味である。

今後の試合とカイルの策略

セランは一試合だけのつもりでいたが、カイルは準決勝まで勝ち進んでから棄権してほしいと頼む。これは強敵との戦いを回避し、優勝の確率を高めるための策だった。セランも渋々了承する。

帝国という国と強さの価値

セランは「強い者が正義」というガルガン帝国の風潮を改めて感じ取り、かつて闘技場で無敵を誇った母レイラの過去に思いを馳せる。一方のカイルは、「勝てばすべて許される」という価値観に対して、疑問を抱きながらも黙していた。

10

武術祭初日の余韻と市街の喧騒

武術祭初日の激戦が終わり、カイルたちは宿舎への帰路につく。帝都ルオスは祭りの最中で、露店が並ぶ通りは活気に満ちていた。リーゼとウルザは倹約志向で買い物を控えていたが、シルドニアは食欲全開。魔力補充の効率が上がってきたという名目で、屋台巡りに勤しんでいた。

大聖堂での祈りと不穏な気配

カイルとリーゼはカイリス神を祀る大聖堂に立ち寄る。信仰に厚いリーゼに対し、カイルは神に対して複雑な感情を抱いていた。祈りというより愚痴混じりの言葉を神像に投げかけた直後、強烈な悪寒に襲われる。視界の端に“ミナギ”らしき人物の姿を捉えたカイルは、急ぎ後を追う。

ミナギの現在と尾行の結末

変装しているミナギを尾行したカイルは、彼女の住処である貧しい長屋を突き止める。だが罠にかかり、ミナギに発見されてしまう。殺気に満ちた対峙の末、カイルはソウガの名を出して戦闘を回避。ミナギの警戒心が緩み、室内に招き入れられる。

ミナギの過去と現在の苦境

ミナギは師ソウガの反対を押し切って、大きな暗殺依頼を単独で受け、ガルガン帝国に潜入していた。依頼主はレモナス王で、標的はおそらく皇太子エルドランド。しかし依頼は王の死により中止。前金を使い果たし、現在は借金返済のため複数の職を掛け持ちしている状態だった。

カイルの依頼と再起への助力

ミナギの苦境を察したカイルは、彼女に自分への“賭け”を依頼する。武術祭の全試合にカイルへ賭けることで多額の利益を得られるとし、その儲けの半分を依頼料とする契約を持ちかけた。金貨を提示し、支援の意図を暗に伝えるカイルに、ミナギは感謝の言葉を口にした。

再出発の兆しと優勝への決意

ミナギは依頼を引き受け、カイルにも「他にも頼まれたら何でも言って」と答える。気力を取り戻した彼女の姿は、カイルの知る“強きミナギ”に少し近づいていた。カイルは彼女を支えると同時に、優勝への動機を新たに強める。そして、宿に戻った彼は再びリーゼたちに捕まり、夜遅くまで正座で説教される羽目になった。

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武術祭二日目とセランの母・レイラの話題

二日目は一回戦の後半戦。カイルとセランに試合は無く、ゆっくりと闘技場へ向かう。道中、セランは闘技場前に立つ母・レイラの像を嫌そうに見上げる。レイラはかつて伝説的な人気と実力を誇った剣闘士で、突然の引退はいまだ謎とされていた。セランは母との関係に複雑な感情を抱いていた。

出場者の中で注目すべきはダリウスのみ

試合は順調に進んでいくものの、カイルにとって目立った相手はいない。注目は最後のサプライズ試合、対戦者の一人は帝国最強と呼ばれるダリウスだった。だが、カイルは心の奥でミナギや帝国皇位継承問題にも思いを巡らせていた。

伝説の帰還──レイラ登場

最後の試合開始前、観客の予想を裏切る形で、対戦相手として現れたのは十年前に引退した伝説の剣闘士レイラ。観衆の熱狂は最高潮に達し、カイルもセランも唖然とする。

ダリウス vs レイラ──激突

序盤、レイラの威圧感と駆け引きの上手さにより、ダリウスはじりじりと主導権を奪われていく。ようやく攻撃に転じたダリウスだったが、レイラの大剣による圧倒的な一撃で完全に形勢逆転。追撃の蹴りでダリウスは剣を失い、空中へと吹き飛ばされた末に地面へ激突し、意識を失って動かなくなる。

観客の喝采とカイル達の視点

勝敗は明らかだった。レイラの復活と圧倒的な勝利に、観衆は大歓声で応えた。一方、カイルとセランは、敗れたダリウスにこそ拍手を送る。レイラが捨て身の一撃を放ったことに気付いた二人は、ダリウスの健闘を深く評価していた。

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レイラの再登場とカイル達の困惑

ダリウスとの試合後、レイラは控え室でくつろぎながらカイル達を迎えた。本来ダリウスが使うはずだった最上級の控室を、レイラが実力で奪い取っていた。セランは母の突然の出場に嫌悪感を露わにするが、レイラは悪びれず、弟子と息子の試合が見たくて出場しただけと語る。

武術祭出場の事情とレイラの無慈悲な通達

カイルがジルグスとの国際的な思惑のため、優勝を必要としていることを説明するも、レイラは一切の手心を加えず戦うと宣言。さらにセランが準決勝を放棄するつもりでいたことを見抜き、全力で戦えと命じる。リーゼが顔色を変えるほどの厳命であった。

帝国の大人物・ベアドーラの登場

そこに帝国随一の大魔導士ベアドーラが現れ、レイラと旧知の様子で会話する。彼女はカイルの母・セライアの師匠でもあり、かつてカイルの父ロエールとも面識があった。ベアドーラは、かつての弟子セライアの才能を称えつつも、上昇志向のなさに苦言を呈する。

ベアドーラとレイラの因縁

ベアドーラは、レイラが十年前に帝都から姿を消したのは、皇帝との間にトラブルがあったからだと語る。それが原因でレイラは反逆罪すれすれの状況だったという。今回は弟子と息子の成長を見るために一時的に戻ったに過ぎず、武術祭終了後には再び姿を消すつもりであるとレイラは語る。

ベアドーラによるカイルへの接触

ベアドーラはカイルを呼び出し、彼の「存在の異質さ」に気づく。カイルが過去に遡った存在であることを見抜いたかのように、魂が二つあるようだと指摘。後継者にと勧誘するが、カイルは時間的余裕がないことを理由に辞退。表向きは剣士志望として断るが、将来的な因縁を残すやり取りとなった。

決勝に向けた不安と八百長計画

帰路についたカイル達は、決勝でレイラと戦わねばならないこと、準決勝でセランと戦う必要があることに頭を抱える。セランはレイラ相手に勝てる自信がなく、レイラに気づかれないような「八百長試合」の練習をカイルに持ちかける。カイルも渋々同意し、決勝戦に向けて何とか策を練る決意をする。

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二回戦突破とレイラへの対策

武術祭二回戦が行われ、カイル・セラン・レイラはいずれも順当に勝ち進んだ。準決勝でレイラと戦うことになるカイルは、対策を思案するが有効な策は浮かばない。セランと打ち合わせた八百長計画で準決勝を乗り切る段取りは整えたものの、レイラ戦への苦手意識は強く、勝利のイメージが描けないままだった。

記憶を刺激するリザードマンとの遭遇

練習場で一人残り思考を巡らせていたカイルは、次戦の対戦相手となるリザードマンの剣闘士ゴルダーと遭遇。ゴルダーの祈りの動作に、カイルはかつての仲間を思い出し「アザウル」という神の名を口にしてしまう。これを耳にしたゴルダーは激しく反応するが、説明に納得しカイルを仲間として認める。

神聖な大聖堂での不穏な出会い

その後カイルは、大聖堂で再び祈りを捧げようと立ち寄る。そこには第二皇子コンラートが要人として訪れており、彼はカイルに敵意を見せながらも神官長バーレルに促されてその場を去る。代わって現れたバーレル神官長は、表向きは丁重なもてなしを見せつつも、徐々にその本性を現していく。

神官長バーレルの正体と邪教の気配

表面上は友好的な態度をとるバーレルだったが、カイルの仲間であるウルザに対して「耳長女(エルフ)は排除すべき」と発言。その差別的かつ冷酷な思想に、カイルは怒気を露わにする。さらにバーレルから発せられる強烈な悪意と気配により、彼が「人間以外の人族」を嫌う邪教「メーラ教」の信者であるとカイルは看破する。

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メーラ教の正体と神官長の勧誘

カイルは神官長バーレルが、禁忌とされる邪教「メーラ教」の信者であることを知る。メーラ教は人間至上主義を掲げ、他の人族を差別・迫害する教義を持っていた。バーレルはメーラ教の指導者からの命として、カイルを教団の支柱となる存在として迎え入れたいと告げる。戸惑うカイルに、バーレルは「あなたは必要不可欠な存在」とし、断る選択肢がないかのように話を進めていた。

試験という名の戦闘依頼と狂信者の本性

バーレルはカイルの実力を周囲に示すため、翌日の試合で教団が用意した“奴隷”との戦いを提案する。カイルはその相手がリザードマンのゴルダーである可能性に気付く。さらに、カイルが勧誘を断ると、バーレルはウルザを「耳長女」と侮蔑し、処分の対象にすると公言。激昂したカイルは剣を抜いてバーレルの喉元に突きつけるが、バーレルはまったく怯まず、代わりがいると言い放つ。その様子はまさに狂信者のものだった。

晩餐会の正体と迫る脅威

バーレルは先日の晩餐会にも出席していたことを明かし、あの時カイルやセランが感じた不快な気配の正体であることが判明する。バーレルは今後の試合を楽しみにしているとだけ告げ、大聖堂からカイルを送り出した。

ウルザの危機とカイルの対策

カイルはバーレルの執着からウルザに危険が迫っていると察し、即座に対策を講じようとする。帝国宮殿にいるとはいえ、既に内部にメーラ教徒が潜んでいることを考慮し、安全は保障されないと判断。暗殺を阻止するには、同じく暗殺のプロが必要だと考え、かつて接触した暗殺者ミナギのもとへと急ぐ。

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ミナギへの護衛依頼とメーラ教の脅威

カイルは、エルフであるウルザの命がメーラ教に狙われていることを懸念し、暗殺のプロであるミナギに護衛を依頼する。ミナギは暗殺者の心得として、正体を隠し、事故死に見せかけ、目的達成後に生還する「ソウガの教え」を語り、それと正反対のメーラ教徒の狂信的なやり方を批判する。カイルの依頼を受けたミナギは、今夜からウルザに張り付くと宣言。護衛が始まったことで、カイルは安堵する。

ゴルダー戦と禁断の薬「ブラッドアイ」

三回戦、カイルの対戦相手はリザードマンの剣闘士ゴルダーだった。しかし彼は「ブラッドアイ」と呼ばれる幻獣の血を用いた禁断の秘薬を使用しており、凶暴化した姿で襲いかかってくる。その攻撃は派手で荒々しいが、カイルは冷静に薬の特性と弱点を解説しつつ、音やフェイントを用いてゴルダーを翻弄。戦いの末に腱を正確に断ち、ゴルダーの動きを封じる。

死闘の終焉と悲しみ

最後の手段としてゴルダーは「火噴き」を放つが、カイルはそれすらも知っており、火炎袋を突いて自爆を誘発させる。瀕死の状態で生き延びたゴルダーは、自らの最期を悔いながらもカイルとの戦いに満足して息絶える。かつての戦友アザウルを思い出したカイルは、悲しみと怒りを抱きながら試合を終えた。

バーレルとの再会と内なる怒り

控室への帰り道、カイルは再び神官長バーレルと遭遇する。ゴルダーの死を「名声のための役割」として語るバーレルに、カイルは怒りをこらえながら皮肉な笑みを浮かべて通り過ぎる。あまりの怒りに、逆に笑ってしまうという自嘲を残し、バーレルを斬らなかった自制心だけが空しく残った。

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戦いを終えたカイルの葛藤

三回戦の勝利後、控室に残ったカイルは沈んだ様子を見せていた。ゴルダーとの戦いで相手を死に追いやったことに加え、己の目的や過去の罪についても悩み、精神的な動揺が表面化する。リーゼは、かつての繊細だった頃のカイルが戻ったように感じ、彼の不安定さに胸を痛めていた。

ミナギの護衛と警戒の継続

カイルの依頼でウルザを護衛しているミナギは、張り付き初日の報告として「怪しい動きはなかった」と伝える。警戒は継続されるが、とりあえずウルザの安全は確保されたと判断された。ミナギは攻撃的護衛(暗殺者への先制)も可能と提案するが、カイルは保留を選ぶ。

セランとの再戦と封印された記憶

翌日の準決勝、観客席ではウルザたちが様子を見守る。リーゼは不安を抱えていた。かつて本気で戦った際、カイルはセランを殺しかけ、彼は三日間生死の境を彷徨った過去があるからだ。だが、試合開始と共にセランが本能的に斬りかかり、カイルも応戦。予定していた八百長試合はもろくも崩れ去り、二人の剣戟が火花を散らす。

二人の心の呪縛と解放

本気の戦いが再燃した今、セランはかつて自分のせいでカイルが無気力になったと悔やんでいた。一方カイルも、セランとの戦いを避け続けていたことが心の枷となっていた。両者は互いの過去を受け入れ、「本気の戦いこそが過去を清算し、前に進むための道である」と悟る。

運命の再戦の幕開け

試合前の打ち合わせでは「八百長」を取り決めていたはずが、互いに剣を交えた瞬間、それらは全て吹き飛んだ。過去の後悔、現在の迷い、未来への不安——すべてを打ち消すかのように、カイルとセランは全身全霊で激突する道を選んだ。「じゃあ戦るか」「ああ」と交わされた最後の言葉とともに、運命の再戦が始まった。

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壮絶な準決勝の戦い

カイルとセランの戦いは、互いを知り尽くした者同士による息詰まる死闘となった。技と読み合いの応酬は観客を熱狂させつつも、次第にセランが優勢に立つ。カイルは補助魔法の効果切れや負傷により追い詰められていくが、冷静さを保ち続け、決して投げ出さない。

魔力そのものの放出

追い込まれたカイルは、魔法に変換せず“純粋な魔力”をそのままぶつけるという異常な技を咄嗟に実行。結果、試合場全体を揺るがす大爆発が起こる。セランは奇跡的に生き延びたが、両者は満身創痍に。そこからは剣すら捨てて拳で殴り合う、まさに命を懸けた肉弾戦に突入する。

勝者はカイル

最後の最後に、カイルはわずかに立ち上がる力を残しており、勝利を収める。戦歴によって鍛えられた“立ち上がる意志”が勝敗を分けたのだった。

戦いの余韻と再戦の約束

セランは倒れながらも「次は勝つ」と笑い、カイルも「次も勝つ」と応じる。互いに遺恨はなく、再戦の約束と絆を確かめ合いながら退場する。その姿に、観客はスタンディングオベーションを送り、感動に包まれた。

怒りと涙、そして和解

控室に戻ったカイルは、リーゼとウルザから激しい叱責と涙を受ける。心配をかけたことを痛感し、素直に謝罪。場の雰囲気が和らいだところに、勝ち上がったレイラも合流し、親子のやり取りを交わす。セランの生存は聖剣ランドの加護によるものである可能性が示され、カイルはそれに魔王が執着していたことを思い出す。

明日への決意

レイラとの決勝戦を前に、カイルは迷いや恐れを捨て去り、不敵な笑みで「楽しみにしている」と告げる。レイラも同じように笑い返し、師弟対決への幕が上がろうとしていた。

一人の不安

だが一人、シルドニアだけは浮かぬ顔をしていた。カイルが放った“魔力そのもの”による爆発は、本来は魔族しか使えない“破壊魔法”であり、それをカイルが使えた事実に重大な懸念を抱いていた。

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セランの分析とカイルの精神状態

武術祭決勝当日、会場は熱狂的な観衆で溢れていた。準決勝でセランに勝利したカイルは、精神的にも大きな変化を遂げており、「すべてをぶつける」とセランに語るほど充実した状態で試合に臨もうとしていた。セランもその様子から、勝敗の予測がつかないと語る。

コンラートの忠告と意外な過去

決勝直前、皇子コンラートがカイルを訪ね、メーラ教がカイルに関心を寄せていると警告する。彼は当初、カイルを国外退去させる意図だったが、母セライアへの個人的な恩義と初恋めいた感情から忠告に来たことが明かされる。カイルは礼を述べつつ、すでにメーラ教と関わり始めていることを心中で吐露する。

ミナギによるバーレル暗殺

決勝開幕と同時に、観客席ではミナギがカイルの依頼により、メーラ教の狂信者バーレルを暗殺。使ったのはゴルダーの遺品である剣の破片を加工した毒針。群衆の騒ぎの中で誰にも気づかれずに処理を完遂した。バーレルは「メーラ教徒としての希望」であったカイルに裏切られ、最後に悔しげな表情を残して息絶える。

師弟対決の幕開け

レイラとの決勝戦。カイルは気負いなく最高の精神状態で臨み、開始早々レイラの必殺の一撃を正面から受けきるという暴挙に出る。そして自らも渾身の一撃を繰り出し、レイラにかつてない驚きを与える。互いに全力でぶつかり合う中、レイラはその成長を素直に喜ぶ。

意外な一言で決着

しかし、戦いの最中にレイラが「セライアが妊娠中」と突然告げると、カイルは衝撃と想像から精神的ダメージを受け、その場で気を失ってしまう。結果、決勝戦はこれまでの壮絶な試合と打って変わり、あっけなく幕を下ろした。

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レイラ戦後の反省と動揺

決勝でレイラに敗れたカイルは、敗因となった「母の妊娠発言」に頭を抱えていた。セライアの懐妊が事実である以上、レイラが勝ちを狙って使った奇策であることは理解できるが、そのタイミングと内容には違和感が残る。セランも「レイラらしくない」と分析するが、確かな理由は見いだせなかった。

会議とガルガン帝国の意外な反応

カイルは武術祭の成績をもってジルグス王国の立場を改善しようとしていたが、準優勝に終わったことで落胆していた。しかし、会議の場では予想に反して、ガルガン帝国側がジルグス王国への責任追及を一切しないと宣言。皇子エルドランドとマイザーは、カイルの功績を賞賛し、会議を一方的に友好ムードで終わらせた。

その背景には、メーラ教の動きがあった。コンラートの調査により、教団がカイルに関心を持っていると判明し、帝国はカイルを“泳がせ”て聖下の正体を探る方針に転換していたのだった。

アンジェラの想いとセランの選択

一方、セランは皇女アンジェラから正式に「私付きの騎士」となるよう打診を受けるが、「カイルに勝ちたい」という思いを理由に断る。アンジェラは落胆しながらも諦めず、機を待つ姿勢を見せた。

ミナギとの再契約と暗号の発見

カイルはミナギとの再会を果たし、バーレル暗殺の成功とともに、隠された手紙の束が発見されたことを知らされる。それはメーラ教との連絡に使われていた暗号文であり、情報解読により教団の実態解明が進む可能性が出てきた。

カイルは正式にミナギを護衛として再雇用することで、教団との戦いに備える。ミナギは「仲間ではなく一時的な雇用」と条件を付けつつも、カイルの誠意を感じて承諾する。

そして夜のレイラの正体

その日の夜、レイラは人目を避けた山中で、“聖下”との会話を交わしていた。決勝戦の真の目的はカイルの“試し”であり、意識を奪うための懐妊情報もその一環だった。実はレイラは、メーラ教の聖印を持つ存在、すなわち教団に属する者であり、今回の戦いも教団の命によるものだったと示唆される。

番外編 創世歴二千八百二十七年二の月

アクロリス大要塞への帰還

魔族による「大侵攻」が始まってから九か月、人族側の最前線となったアクロリス大要塞に、カイルが情報収集任務を終えて帰還した。彼を出迎えたのはジルグス王国元近衛第一隊隊長ゼントスである。共に旅したリザードマン・バスケスは、魔族との交戦の末に相討ちで命を落としていた。

絶望的な情勢と帝国の提案

西部諸国連合軍の主要人物が集まる会議で、カイルはタイホン国の陥落と帝国ガルガンの現状を報告する。帝国側は援軍派遣は不可能とする一方、要塞放棄と戦闘員の受け入れを提案したが、非戦闘員は対象外であるとした。その冷徹な提案に議論は紛糾し、決断は先送りとなった。

カイルとゼントスの会話

会議後、ゼントスはジルグス王国時代の誤った判断を悔いる。一方カイルは、ガルガン帝国の持久可能期間を「二か月」と見積もる。その上で「試したいことがある」と示唆し、ゼントスの支えを得て再び希望を見出す。ゼントスはかつて王女ミレーナを守れなかったことに自責の念を抱いていたが、現在は自分の意志で剣を振るうことに充足を感じていた。

ミナギ・ソウガとの邂逅

ミナギは戦闘中に消費された禁断薬「ブラッドアイ」を新たに渡し、使用を制限するよう忠告する。その後ソウガが現れ、ミナギの素質と変化を語る。彼女の冷酷な態度とは裏腹に、戦力としての信頼と成長が認められていた。

ウルザとの再会と新たな目的

カイルは負傷中のウルザと再会し、互いの無事を喜び合う。やがてカイルは、古代王国ザーレスの「魔法王」シルドニアが遺した迷宮の存在を語り、そこへの手がかりとなる古文書が故郷リマーゼにある可能性を示す。ウルザも同行を申し出、二人は目的を共にすることを決意する。

要塞への襲撃と死闘

そこへ魔族の襲撃を告げる警報が鳴り響く。城壁上にて、カイル、ウルザ、ゼントス、ミナギらが迎撃態勢に入る。大型魔族二体の襲来に対し、カイルとゼントスは強引にこれを撃退。続く魔族軍勢に備えてカイルは二本目の「ブラッドアイ」を服用し、命を削ってでも戦い抜く覚悟を決める。

三日三晩の激戦とその成果

激戦は三日三晩続き、人族は甚大な被害を受けながらも、魔族をほぼ撃退することに成功。さらに、魔族の捕虜を得たことで重要な情報も入手できた。

その後カイルたちはリマーゼに赴き、古文書から迷宮の地図を発見。そこから始まる冒険の末、伝説の魔剣シルドニアを手に入れ、魔王軍への反攻のきっかけを掴むに至る。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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