小説「素材採取家の異世界旅行記 1」感想・ネタバレ・アニメ化

小説「素材採取家の異世界旅行記 1」感想・ネタバレ・アニメ化

物語の概要

ジャンル
異世界ファンタジーかつほのぼの系スローライフ物語である。 転生した元サラリーマンが素材採取を通じて異世界を旅する「素材採取家」として活躍する、癒しと冒険の物語である。
内容紹介
28歳のごく普通のサラリーマン・神城タケルは、“死んだことにされた”のをきっかけに、剣と魔法の世界「マデウス」へ転生する。そこでタケルは“身体能力強化”“莫大な魔力”“価値あるものを見つける探査<サーチ>”などのチート級能力を授かり、素材を採って売る“素材採取家”として、可愛い相棒とともに異世界を気ままに旅する生活を始める。

主要キャラクター

  • 神城 タケル(かみしろ たける):本作の主人公。前世は平凡なサラリーマンであったが、異世界に転生し、チート級の能力を得た無自覚な“異能者”である。素朴かつ落ち着いており、旅と素材採取を心から楽しむ性格である。
  • ビー(ブラック・ノウビー・ヴォルディアス):古代竜・ヴォルディアスの幼生で、タケルが孵化・保護した可愛らしい相棒である。愛嬌ある存在として、タケルの旅に彩りを添える。

物語の特徴

本作の魅力は、“チート能力を持ちつつもマイペースに異世界を楽しむ主人公”と、“素材を採取し交流を重ねるスローライフ感”にある。バトルシーンは控え目でありながら、ユニークな能力との掛け合い、素材探索による日常の発見と癒しが、他作品との明確な差別化ポイントである。また、コミカルな雰囲気と時に混ざるドラマ性によって、読者をじんわり惹きつける点も本シリーズ独自の魅力といえる。

書籍情報

素材採取家の異世界旅行記 1
著者:木乃子増緒 氏
イラスト:海島千本  氏
レーベル/出版社:AlphaPolis(アルファポリス)
発売日:2017年1月31日

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あらすじ・内容

第9回アルファポリスファンタジー小説大賞 大賞・読者賞W受賞!
「第9回アルファポリスファンタジー小説大賞」大賞・読者賞ダブル受賞作! ひょんなことから異世界に転生させられた普通の青年、神城タケル。前世では何の取り柄もなかった彼に付与されたのは、チートな身体能力・魔力、そして何でも見つけられる「探査(サーチ)」と、何でもわかる「調査(スキャン)」という不思議な力だった。それらの能力を駆使し、ヘンテコなレア素材を次々と採取、優秀な「素材採取家」として身を立てていく彼だったが、地底に潜む古代竜と出逢ったことで、その運命は思わぬ方向へ動き出していく――

素材採取家の異世界旅行記 1

感想

読了した。この作品は、「第9回アルファポリスファンタジー小説大賞」で大賞と読者賞をダブル受賞したという触れ込みで、以前から気になっていた作品だった。
異世界に転生した主人公が、特殊な能力を活かして素材を採取し、生活していくというストーリー。

読んでまず印象に残ったのは、主人公のタラバガニに対する異常なまでの執着心だ。
周囲がドン引きするほどの欲求は、読んでいて思わず笑ってしまう。異世界に来ても、食への探求心は変わらないのだな、とどこか親近感を覚える。

また、古代竜の子供であるビーの存在も、この作品の大きな魅力の一つだろう。
普通、ドラゴンといえば恐怖の対象だが、この作品では愛らしいペットとして描かれている。
主人公がビーの描写で「うわ、生臭っ」と言っているシーンは、妙にリアルで、思わずクスッとしてしまった。

この作品は、戦闘シーンだけでなく、日常の描写も丁寧に描かれている。
素材採取の過程や、ビーとの触れ合いなど、読んでいて心が安らぐ場面が多い。主人公の成長や、周囲の人間との関係性も丁寧に描かれており、今後の展開が非常に楽しみだ。

全体として、この作品は、異世界転生ものとしての面白さはもちろんのこと、主人公の個性的なキャラクターや、愛らしいドラゴンの存在など、様々な魅力が詰まっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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世界・用語メモ

  • マデウス:別宇宙の人類居住惑星。魔素と種族多様性が高い世界。
  • ギルド制度:F→SSの階梯。採取・討伐・護衛等の依頼経済が成立している。
  • 貨幣:銅(10)/青銅(100)/銀(1,000)/白銀(1万)/金(10万)/大陸金(100万)レイブ
  • 魔素水:古代竜由来の高純度魔素を含む水。強力だが中毒リスクあり。
  • ミスリル魔鉱石:神器級の触媒兼素材。流通は秘匿が望ましい。
  • イルドラ石:魔力反応性に優れ、加工性と堅牢性を両立する実用鉱である。

登場キャラクター

神城タケル

  • 属性/立場:異世界転移者・素材採取を生業とする冒険者Fである。
  • 能力:世界言語、身体強化、各種耐性、探査・調査、空間収納、結界・加熱等の生活魔法から災厄級出力まで段階可変の術式を有する。
  • 目的/価値観:目立たず穏当に暮らし、身近な人命と生活を守ることを選ぶ現実主義である。
  • 関係:幼竜ビーの保護者兼相棒。ヴォルディアスから信任を受ける。市井ではジェロム、海翁亭、湯屋らと互助関係を築いた。

ビー(ブラック・ノウビー・ヴォルディアス)

  • 属性/立場:古代竜ヴォルディアスの子である幼竜。初期ランクB、将来的にSS相当へ至る存在である。
  • 能力:飛翔、炎・超音波、寒気操作、感知に長け、タケルと意思疎通する。
  • 役割:警戒・機動・制圧・癒し(精神面)を担う旅の相棒である。

ヴォルディアス(通称ボル)

  • 属性/立場:世界を司る四神の一柱である古代竜。
  • 行為:魔素淀みの浄化をタケルに託し、卵の孵化と魔素水の供給契約を授けた。
  • 位置付け:世界秩序の基層存在であり、軽率な干渉の危険を示す“規範”でもある。

ジェロム

  • 属性/立場:トルミ村の雑貨店主である。
  • 役割:商習慣・治安・異能露出リスク等の初期リテラシーを助言した後見役である。

コンフィア(宿「ギャロップ」女将)

  • 属性/立場:宿経営者である。
  • 役割:生活基盤の提供と台所支援。料理・保存・携行食づくりの実地パートナーである。

マーロウ

  • 属性/立場:トルミ村自警団員である。
  • 役割:門番・村防衛の実務。タケル製の結界道具の受領者である。

グリット

  • 属性/立場:ベルカイムのギルド鑑定担当(獣人)である。
  • 役割:正確な査定と信用の橋渡しを行う実務家である。

ロドル

  • 属性/立場:ギルドマスター(巨人族・元A)である。
  • 役割:対外折衝と戦時統率。報酬設計と政治的“見逃し”で場を収める調停者である。

クレイストン(ギルディアス)

  • 属性/立場:リザードマンの戦士→竜人へ進化したA級である。
  • 履歴:王太子護衛で背中に致命傷を負い退転。魔素水と完全治癒で覚醒した。
  • 位置付け:秩序側の抑止力であり、タケルへの倫理的ブレーキ役である。

リブル/グルサス親方

  • 属性/立場:武具工房の弟子と鍛冶親方である。
  • 役割:素材供給断絶(イルドラ石)という産業課題を提示。タケルに実地解決を懇請した。

ベルリア・フェンド家

  • 属性/立場:白骨遺体となった警備隊員の遺族である。
  • 役割:貧困・偽薬被害・療養という都市の矛盾を映す鏡である。タケルの救済行動の受け手である。

展開まとめ

1 はじまり

平凡な日常への満足と微かな非日常願望
語り手は、仕事と趣味に満ちた安定した日々を肯定していたが、心のどこかで「ほんの少しの非日常」を望んでいたのである。

白い霧と川――死後の情景への転位
突然、白い霧に満ちた空間に立ち、彼岸を想起させる川を目にした。そこで正体不明の青年の声を聞き、状況を夢と疑いつつも、異常の只中にある自覚を得たのである。

青年との対話と死の告知
青年は穏やかに応対し、語り手(補城タケル、享年二十八歳)が「心不全で寝たまま死んだ」と告げた。取り乱さぬよう精神に制限が施され、冷静さを保ったまま対話は続いたのである。

『消え人』候補という選別理由
青年は、補城タケルが「消えても社会的混乱が生じにくい『消え人』候補」だったと説明した。退職直後で家族縁者も希薄、友人関係も疎で、一人旅の予定ゆえ不在が問題化しにくいという背景が示されたのである。

青年の正体と介入対象世界「マデウス」
青年は「太陽系の管理者」を自称し、別宇宙の惑星マデウスで文明が滅びやすい問題に対処するため、小さな介入として語り手を送り込む意図を明かした。地球の神話や物語が宇宙のどこかの史実であるという示唆も与えたのである。

転移の決定と選択肢の提示
語り手は転生を即諾できず逡巡したが、「行かねば魂は消滅する」という条件の下、マデウス行きが既定路線として提示された。地上の遺品やデータは処理済みと告げられ、未練の余地は狭められたのである。

授与された異能と装備の仕様
青年は生存と自立のため、次の「ギフト」を与えた。

  • 世界言語の理解・読写(種族間言語にも対応)である。
  • 身体強化と各種耐性(毒・麻痺・病気、恐怖耐性、後遺症防止)である。
  • 探査能力と空間術(素材探索と収納)。鞄型の私物確保機能は本人専用・自動帰還・生体収納不可・食料は包装保存で腐敗防止である。
  • 魔力極限と具現化能力、独学可能な知識理解力である。
  • 動物にある程度好かれる意思疎通資質(凶暴モンスターは除外)である。
  • 「少しの幸運」と第六感である。
    さらに、時期が来れば「可愛いパートナー」に出会う予告がなされたのである。

過剰付与への不安と行動上の留意
青年は付与の「盛りすぎ」を自嘲しつつ、無差別な大量虐殺の回避を求めた。語り手は最強の勇者ではなく、身を守り雑事を退ける程度の力を望んでおり、その希望に概ね沿う形で準備が整えられたのである。

出立の宣言と名の揺れ
別れ際、青年は「神城タケル」と呼びかけ、マデウスを巡る旅を命じた。先の呼称「補城タケル」との表記揺れを残しつつ、語り手は新世界へ向かうこととなった。

2 魔法は地味でした

草原への転移と環境把握
タケルは白い空間から一転、青空と草原が広がる惑星マデウスに到着した。太陽は土星状に見え、空気や陽光は穏やかで、落ち着いて周囲を観察できていたのである。

装備の確認と身体の変化
タケルは金属補強のある軽量ブーツ、伸縮性の高い革パン、上質なローブ、ハイネックシャツ、そしてミスリル銀糸のインナーなど実用的な装備を与えられていた。鞄は外見こそ普通だが内部は空間収納であり、手鏡で確認した容貌は若返り、漆黒の髪と空色の瞳を持つ体躯へと変化していたのである。

空間収納と所持品の中核
鞄は「アイテムボックス」として機能し、内容物を脳内で種別表示できた。野営具や飲食物に加え、「ユグドラシルの枝」と思しき木枝が入っていたが、当面の武器にはならないと判断したのである。

進路選択と移動開始
方角は枝占いと太陽の位置から仮に南を選び、タケルは草原を進んだ。祝福の身体強化により疲労がなく、走行も容易で、やがて街道へ合流して集落の影を視認したのである。

祝福の“やりすぎ”という背景
ナレーションは、タケルに付与された「世界言語」「身体強化」「各種耐性」「恐怖耐性」「探査能力」「魔力極限」などが、この世界の基準では異常域であり、英雄・魔王・災厄級と同列視されかねない過剰性能である事実を示した。タケル本人はなお自覚していなかったのである。

初めての魔法運用—探査と調査
村へ向かう前に収入源確保のため、タケルは「探査」を試用し、視界に現れる色点を手掛かりに対象を特定、「調査(スキャン)」で種類と価値を把握した。

  • 月夜草(ランクB):三日月夜に芽吹く黄色花。蜜は精霊の好物で疲労回復に効き、すり潰せば傷薬。高位回復薬素材で希少である。
  • ハンマーアリクイの糞(ランクC):水溶で強力な接着剤となり建材として重宝。見た目は小石状で、袋に分納した。
  • 鉄鉱石(ランクD):一般的な需要物資。

地味だが有用な魔法という結論
光や音の演出に乏しい探査・調査は外見上“地味”であったが、売却価値のある素材を効率的に抽出できる有用魔法であると理解された。タケルは入手品で当面の食費と宿代を得る目途を立て、まずは村の訪問を決めたのであった。

3 本より高い○○○

トルミ村への入村と門番マーロウ
タケルはトルミ村の簡素な門で自警団員マーロウに出会い、旅の目的を「素材採取と売却」と説明して入村を許された。村には素材屋はなく、雑貨屋ジェロムの店を案内されたのである。

子ども達との交流による警戒心の解消
村内で物珍しげに集まる子ども達に対し、タケルは肩車で懐柔した。これにより大人の警戒も和らぎ、自然に村の中心部へ導かれたのである。

雑貨屋ジェロムでの初取引—糞が高値
ジェロムの店で、タケルはまずハンマーアリクイの糞を提示し、状態の良さから銀貨五枚で買い取られた。続いて鉄鉱石は銀貨三枚と評価され、糞が鉄を上回る価格という意外性が示されたのである。

通貨体系の理解と生活費の目安
宿代は一泊500レイブであり、銅貨一枚=10レイブ、青銅貨一枚=100レイブ、銀貨一枚=1000レイブという換算であると把握した。これにより当面の宿泊費と生活資金の見通しが立ったのである。

希少素材・月夜草の買取と採集地情報
タケルは月夜草(ランクB)を根付きで提示し、ジェロムは希少性と大ぶりな品質に驚嘆した。採集地はベラキア大草原の街道北側であると説明されたのである。

空間術の露見と“異能”の希少性
鞄の内部が漆黒の空間であることを示すと、ジェロムはタケルが空間術の異能持ちであると看破した。異能は生得の祝福で、稀少かつ影響力が大きい存在であり、王都周辺では組織に利用される危険が高いと注意喚起がなされたのである。

異能と魔道具の区別、身元秘匿の助言
空間収納は魔道具(アイテムボックス)にも類似するため、迂闊な自己開示は避けるべきと助言された。タケルは「辺鄙な森の出の旅人」と身の上をぼかし、以後の立ち回りに慎重さを期す決意を固めたのである。

基礎知識の整備——事典の購入
ジェロムは魔道具や用語の基礎を学べる『事典』を提示し、タケルは銀貨二枚で購入した。こうして初日の稼ぎの一部を知識投資に回し、当面の行動指針を整えたのである。

章のオチ——価値観の逆転
結果として「本より糞が高い」という価格逆転が明確となり、マデウスにおける需要と価値の尺度が地球と大きく異なる現実が印象づけられたのである。

4 風呂が、ない!!!

滞在方針と月夜草の扱い
タケルは都心へ出る前に一般常識を学ぶため、トルミ村に当面滞在する方針を示した。ジェロムは月夜草の買い取りを断り、行商やベルカイムで売却するよう助言し、宿「ギャロップ」を紹介して値引きの口利きを約したのである。

宿「ギャロップ」到着と滞在条件
女将コンフィアはジェロムの紹介を受け、通常「素泊まり500レイブ」を「朝食付き500レイブ」に優遇した。タケルは十日分として銀貨五枚を支払い、弁当の手配(初回無料)や食堂兼酒場の賑やかさなど、宿の運用を確認したのである。

部屋・装備の点検と生活インフラの把握
六畳ほどの清潔な部屋に通され、タケルは着替えと装備を整理した。トイレは一階の汲み取り式で、夜間の水分量に注意する必要があると理解したのである。

事典による基礎知識の整理
購入した『事典』から、冒険者=ギルド登録による依頼請負業、旅人=非登録の自由行脚という区分を把握した。ギルドのランクはF・E(初心者)からD・C・B(専門化)・A(尊敬)・S(英雄)・SS(世界に四人)へ続く構造であった。貨幣は銅貨(10)・青銅貨(100)・銀貨(1000)・白銀貨(1万)・金貨(10万)・大陸金貨(100万)レイブで、庶民は主に銅貨・銀貨を用いると理解した。魔道具は魔石を動力とし、空間収納袋は極めて希少かつ高価(大陸金貨数枚~)で、所持鞄の価値を再認識したのである。

湯の提供と入浴文化の現実
宿の少女エリィが湯桶を届け、タケルはチップとして銅貨五枚を渡した。エリィの説明で、トルミに一般家庭の風呂はなく、身体は拭き洗い・頭は井戸で洗う慣習、入浴設備はベルカイムの湯屋頼みである現実を知ったのである。

清潔魔法の発見と暫定運用
入浴代替としてタケルは「清潔」の語を鍵に自己魔法を試行し、淡光に包まれて身体と衣服を瞬時に清潔にした。利便性は高いが入浴体験の満足には及ばず、近いうちに湯屋で風呂に入る決意を固めたのである。

5 素材採取をしてみよう

朝の支度と“生活魔法”
タケルは加熱魔法で桶の水を一度沸かして適温にし、顔を洗って出発準備。生活を楽にする“生活魔法”を自作概念として活用し始める。

宿の朝食と弁当
女将コンフィアの厚意で豪勢な朝食を平らげ、弁当も受け取る。食材は主にトルミ周辺産で、味は上々。

林での初本格採取
村外の林で探査を展開し、光点の色で素材を判別。

  • 緑・白=植物・鉱石(例:エプララの葉E、リオラの葉D、キノコ類E、鉄鉱石など)。
  • 赤=動物・魔物素材(例:ロックバードの羽F、ベオウフル抜け毛D、イツカネズミ抜け歯C、ハンマーアリクイ一式C)。
    探査は眩しいほど反応するが、価値物の位置特定に極めて有用。

“青”の発見—白骨と戦闘痕
奥で“青”の光点=人工物を示す反応を追い、甲冑姿の白骨を発見。周囲には倒木と地面の陥没痕。調査で身元はベルカイム警備隊員ベルリア・フェンド(E)と判明。遺品は黒水晶のペンダントF、鉄の短剣F、「お母さんのお守り」(対象外)、所持金5万3400レイブ、そして希少なミスリル鉱石A。所持金は後々の揉め事を避けて不触、遺骨は場所を記憶して後日報告の方針とし、ミスリル鉱石は活用を決める。

帰村と売買・装備の整え
子ども達へ飴を配りつつジェロムの店へ。採れた薬草・山菜・キノコ・獣素材などを査定にかける一方、タオル、部屋履きサンダル、丈夫な手袋、短剣、袋(うんこ専用袋含む)を購入。

“素材採取専門家”としての評価と依頼
ジェロムはタケルの素材が「どれも状態最良」と激賞し、東の山にあると噂のミスリル鉱石の探索依頼を提示。経費1万レイブ(成果不問で支給)、成功報酬10万レイブ以上(質次第で上乗せ)、ただし周辺にはDランクまでのモンスターありと注意。加えて回復薬を三本提示(一つサービス)。

収支と次の一歩
買い物や諸々差し引き後の買取総額は36万レイブ。タケルは高収益を手にしつつも、白骨遺体の報告と山探索(ミスリル)に向けて準備を進める決意を固めた。

6 いろんな魔法を試します

回復薬の基礎知識と医療事情
『事典』でタケルは回復薬の体系(回復薬F/中位/上位=ハイポーション/完全=エルダーポーション、伝説のリディアル)と、薬師・治癒医・治癒術士の役割分担を整理する。強力な薬や魔法でも死者蘇生は不可である。

宿への礼と初依頼への不安
キノコや山菜、香辛料をコンフィア夫婦に進呈。ジェロムから受けた“ミスリル鉱石探索”の依頼を意識しつつ、林にD~Fのモンスターが出ると知り遅れて冷や汗。動物とモンスターの差は「魔素の取り込み」にあると理解する。

遠征準備と出立
弁当10個、水袋や調味料、鍋、包丁、短剣などを鞄へ。徒歩二日と聞かされた目的地へ向けて出発。探査は絞れば“売れる物”だけが赤白緑で表示され、C以上を意識するとほぼ反応が消えるなど、運用感覚が洗練される。

生活魔法の拡充と“暴発”の危うさ
加熱に続き、乾燥(→強めると竜巻)、指パッチンの小炎(→剛炎→灼熱炎)、光・影・結界・盾・雷・氷などを試行。応用で霧も生成。便利さに高揚しつつも災害級まで出力が上がるため、無闇な使用は避けると自戒する。

野営:魔石と結界の実地運用
魔素を凝縮して“温める魔石”や“結界の魔石”を自作し、四隅に設置して透明なドーム結界を展開。肉と野草のスープ、宿の弁当で夕食をとり、「清潔」魔法で就寝前の身支度。魔法の便利さに甘えすぎないと心に決める。

白樹=古代竜の森へ
翌朝、“白樹の森(白樺の巨木に覆われた薄暗い森)”に到着。地図では東の峡谷近辺にミスリル脈があるというが、別名“古代竜の森”。モンスターが跋扈する危険地帯で、採取家は敬遠しがち——それでもタケルは滾る気持ちを抑えつつ、慎重に採取へ踏み込む決意を固めたのである。

7 地底湖発見

森での探索と緊張の緩和
タケルは灯光で暗い森を照らし、薬草や食用キノコを採取した。モンスターは現れず、探査で遠巻きに存在を感知したが接近してくる様子はなかった。彼は緊張を失い鼻歌を歌いながら進んだ。

黒竜渓谷の到達と鉱石採取
やがて黒竜渓谷に辿り着き、崖沿いの道を降りた。岩壁を叩いて銀鉱石や鉄鉱石を採掘し、僅かにミスリル鉱石も発見した。時折地震のような揺れを感じながらも採掘を続けた。

洞窟の発見と進入
爆炎で岩壁を穿つと、奥へ続く洞窟が現れた。タケルは探査を応用して迷わぬよう進み、時折白骨死体を見つけながらも奥へと進行した。洞窟内は広がりを増し、やがて巨大な空間に到達した。

地底湖の発見と魔素水の正体
空間の底には澄んだ青い地底湖が広がっていた。飛翔で湖畔に降り立ち、調査でその水が「地底の魔素水(ランクSS)」と判明した。古代竜の魔素が溶け込んだ高純度の魔素水であり、飲用すれば疲労回復に効くが魔素中毒の危険を伴うものであった。

古代竜の出現
湖水を持ち帰る方法を考えていたタケルに対し、湖から声が響き、正体を問う言葉が投げかけられた。応答しないまま水を調べ続けていると、地底湖から黒き巨大な竜が姿を現し、爆風と共にタケルを吹き飛ばした。

8 ボルさん

古代竜との遭遇と応対
タケルは地底湖から現れた黒き巨体と対面し、念話での意思疎通により謝意と非侵入の意を示した。相手は古代竜であり、威圧に耐えたタケルの胆力が認められたのである。

タケルの魔力特性の露見
古代竜は、タケルから溢れる強大な魔力が周囲の生物にとって毒となり、モンスターや動物が近寄らない原因であると指摘した。地底の環境は高密度の魔素に満ちるが、タケルは影響を受けない稀有な存在であると判明したのである。

古代竜の素性と名乗り
古代竜は世界を司る四神の一柱ヴォルディアスであると明かし、タケルは呼称としてボルと定めた。タケルは人間として自己を整理しつつ、異質な魔力保持者である自覚を深めたのである。

淀む魔素と孵らぬ卵の事情
ヴォルディアスは数百年前から魔素の流れが淀み、自身の魔素が毒として作用し、仔の卵が覚醒しないままである事態を語った。タケルの純粋な魔力ならば、卵に注ぐことで孵化へ導ける可能性が示されたのである。

ミスリル魔鉱石の顕現
タケルの目的であるミスリルについて、ヴォルディアスは地底湖から高純度の**ミスリル魔鉱石(ランクSS)**を出現させた。神器級素材であったが、タケルは過剰な流通による混乱を避け、通常品の入手を志向したのである。

孵化の試行と魔力供給
タケルは黒い卵を受け取り、魔力付与を試みた。加熱と光を意識して魔力を注ぐと、全身の力が卵に吸われる感覚が強まり、地底空間は震動に包まれた。限界の最中、強烈な光が爆ぜ、孵化の転機を示す閃光に至った。

9 名付け親になりました

幼竜の誕生
タケルが魔力を注いだ卵は砕け、小さな黒竜が孵った。黄金の瞳と翼を持ち、愛嬌たっぷりにタケルへ飛びつく姿は、ヴォルディアスの子であった。長年待ち続けていた命が芽吹いたことに、父竜は深い安堵を示した。

名を授ける役目
ヴォルディアスは幼竜に通り名を与えるようタケルに求めた。タケルは「ブラックのB」を由来に「ビー」と名付けたが、ヴォルディアスは「ブラック・ノウビー・ヴォルディアス」と定めた。意図しない響きになったものの、幼竜はその名を嬉々として受け入れた。

浄化と贈り物
孵化の過程でヴォルディアスの魔素の淀みは浄化され、彼は数千年ぶりに安らぎを取り戻した。タケル自身も倦怠感が消え、全身が軽くなった。感謝の証としてヴォルディアスは巨大なミスリル魔鉱石を差し出した。

魔素水との契約
ヴォルディアスはタケルの鞄を魔素水と繋げ、望めば無限に取り出せる仕組みを与えた。幼竜はその魔素水を糧とし、さらに視覚や感覚を通してヴォルディアスと繋がる存在であることが明かされた。

託された使命
ヴォルディアスは幼竜をタケルに託し、魂の片割れとして共に旅をさせると告げた。幼竜は強く懐き、タケルの頭にまとわりついた。タケルは戸惑いながらも、この縁を受け入れざるを得なかった。

10 可愛いパートナー

古代竜の洞窟での別れ
エンシェントドラゴンが無意識に魔素を吸収したことで洞窟の魔素は浄化され、ボルは魔素に蝕まれることなく笑顔で地底湖へ沈んでいった。タケル・カミシロは竜の子を連れ洞窟を後にした。

竜の子ビーとの出会い
竜の子ビーはタケルの頭に掴まり歌い、清潔の魔法によって鱗が輝きを増し可愛らしい姿となった。ビーは生まれてすぐにランクBの力を持ち、将来的にランクSSに至る存在と判明した。言葉が通じ、食事も魔素水や人間の食べ物を摂れるため旅の仲間として同行することになった。

夜営と絆の深まり
タケルは結界や炎魔石を用いて夜営を整え、肉スープを作って食事をとった。ビーも肉を喜んで食べ、タケルの腹に顔を埋めて甘える姿を見せた。タケルは無茶をしないよう戒めつつ、ビーとの会話に安らぎを覚えた。二人は寄り添って眠りについた。

翌朝の異変
翌朝、周囲の白樺の森が消え鬱蒼とした巨木の森へ変化していた。ビーは空を飛び回り外の世界を楽しみ、タケルは素材採取を行ったが、獰猛なモンスターの気配を察知した。

モンスターとの戦闘
ロックファルコンが襲来し、タケルは氷結魔法で討伐した。続いてサーペントウルフの群れが現れ、身体強化を施したタケルは殴打や蹴りで応戦し次々と討伐した。戦闘後、血の匂いに誘われさらにモンスターが迫る。

ビーの飛翔
ビーはタケルを守るように背後から掴み、翼を広げて持ち上げようとした。軽量魔法をかけることでタケルの体は宙に浮き、ビーは彼を乗せて空へ舞い上がった。タケルは悲鳴を上げつつも、強引に新たな冒険の一歩を踏み出した。

11 旅は道連れ、世は情け

空中飛行の恐怖と救助
タケルはビーに抱えられ、強引に空を飛ばされた。高所での急旋回やアクロバット飛行に耐えきれず意識を失った。目を覚ますと森を抜けた街道におり、ビーに助けられていた。タケルは恐怖を伝え、今後は加減してほしいと説得した。

古代竜の力と移動の成果
移動により大量の魔物との戦闘を避け、トルミ村まで一日の距離に到達していた。ビーの飛行能力は成長すれば更に強大になると理解した。タケルは休息を取りながら弁当を食べ、ミスリル魔鉱石をへそくりにしようと考えた。

ユグドラシルの枝の変化
タケルがユグドラシルの枝を振っていたところ、ビーが生臭い息を吹きかけたことで枝が震え、杖へと変化した。タケルは意味を理解できなかったが、ビーは誇らしげに振る舞った。

馬車との遭遇と同行
ビーが警戒していた方向から馬車が現れ、御者の男が声をかけてきた。家族連れでトルミ村へ向かっており、困っているときは助け合う掟としてタケルを馬車に乗せた。タケルは感謝して同行することとなった。

ビーの存在発覚と交流
馬車の中でビーの鳴き声が聞かれ、子供たちに正体を見せることになった。竜種であることに家族は驚き、子供たちは撫でたり抱きついたりして喜んだ。タケルは卵から孵化させた経緯を説明した。

竜騎士と竜種の話
エリザから竜種は人目に触れることが稀で、国によっては神聖視され保護されていることを聞いた。また竜騎士は竜に認められた者しかなれず、軍事パレードなどで姿を見ることがあると教えられた。タケルは竜種や竜騎士の存在に興味を抱き、ビーを子供たちと交流させながら道中を進んだ。

12 魔鉱石は貴重でした

馬車の道中と野営の安心
馬車は順調に進み、警戒の鈴は鳴らなかった。タケルの結界魔石とビーの警戒により見張りは不要となり、一家は安心して野営した。

家族との交流と振る舞い料理
タケルは空間収納袋から鍋や肉、野草やキノコを取り出しスープを作って振る舞った。一家は大いに喜び、歌や演奏、踊りで夜を楽しみ、タケルも心から笑った。

御者台での体験と再会の約束
翌朝、タケルは御者台で馬の操作を教わり、馬が指示に応じる様子に旦那のポルンは驚いた。一家はトルミ村で店を開く予定を伝え、タケルに来訪を求め、タケルは快諾した。

トルミ村への帰還と子供たちの歓迎
村に到着後、子供たちはタケルとビーに熱烈に懐き、タケルは帰還報告前に相手をしてやった。ビーは村の子供たちとも概ね良好に遊び回った。

ミスリル魔鉱石の鑑定と価値の判明
タケルはジェロムに採取品を並べ、ミスリル鉱石が少ないと詫びてビー球大のミスリル魔鉱石を出した。ジェロムはそれを伝説級の代物と断じ、強力な魔力を込め得るため国全土の魔石に匹敵し得る価値があると説明した。タケルは出所を秘匿し、所持が露見しないよう忠告を受けた。

常識習得の勧めと行き先の提示
ジェロムはタケルの腕を評価しつつも常識不足を指摘し、情報やギルドが集まるベルカイムへ行くことを勧めた。タケルは数日後の出立を決めた。

白骨遺体の報告と手続き
タケルは村近くで見つけた白骨遺体についてジェロムと自警団に報告した。後日現場を案内し、遺体の所属がベルカイムである旨を伝え、所持品の届け出を請け負った。謝礼は辞退し、ミスリル鉱石は遺品扱いとならずジェロムに売却した。

収入の増加と村での受容
ジェロムは採取素材を大量に買い取り、タケルの所持金は80万レイブを超えた。ビーは村人、とりわけ子供たちに受け入れられ、しっかり者の子に叱られつつも仲良く遊んだ。

宿での取引と旅支度
タケルは宿の主人にスープの素のアレンジとロックファルコンの解体を依頼し、野草やキノコ、肉の提供と引き換えに多様なスープの素を得た。米の入手は都心部限定で家畜の餌扱いと知り断念した。こうして数日を過ごし、旅立ちの日を迎えた。

13 ご馳走は蟹です

旅立ちの見送りと別れの挨拶
タケルは旅支度を整えて村の門へ向かい、多くの村人から別れを惜しまれた。子供たちはローブにしがみつき、エリザやポルン、宿屋の面々、ジェロムも涙した。タケルは再訪を誓い、深々と礼を述べて出立した。

結界の魔道具の贈呈
タケルはマーロウに自作の魔道具を手渡した。それはミスリル魔鉱石を用いた結界効果と警戒機能を備える品であり、村を守ってほしいという願いを込めた。村人は感心し、タケルは礼を述べて別れた。

道中の移動と警戒
タケルはトルミ村から歩を進め、三日かけて野や山、森を越えた。ビーは警戒を担い、タケルは探査の応用よりもビーの感知能力を信頼して進んだ。

巨大蟹の出現と戦闘
街道上で大型の蟹が出現した。タケルはユグドラシルの杖を構え、盾展開・調査・防御力低下・雷撃の順に対処した。ビーは超音波振動で敵を行動不能にし、足元を凍結させて好機を作った。タケルは雷撃で仕留め、蟹は五匹が絶命した。

蟹の解体と食味
タケルは硬質化で手を保護しつつ解体し、加熱で赤くなった甲羅を外して白い身を得た。味は蟹そのもので、タケルは歓喜した。デンドラの葉で一食分ずつ包み、携行食として十個を用意した。モンブランクラブは地中性で殻が強固であり、素材にも適すると把握した。

物々交換と食材の補充
道中で行き交う商人と挨拶を交わし、物々交換で食材を入手した。解体に困るサーペントウルフを引き取ってもらうなどして、野営中も豊かな食事を維持した。

調味料と料理の工夫
宿の料理長から受け取った五種類のスープの素や、ジェロムからの塩・砂糖・酒・酢・黒胡椒などを活用した。パンや蕎麦粉の加工が未熟なため、軟化の魔法で食感を調整し、食事を整えた。

旅の同伴者としてのビー
ビーは魔素水だけでなく食事を共にするようになり、タケルは同行者の存在を有難く感じた。生臭さや爪の痛みはありつつも、愛着を持って接した。

ベルカイム到着への期待
翌日にベルカイム到着の見込みを立て、タケルは多様な人種と出会えることを楽しみにしながら、満天の星空の下、ビーの腹を撫でつつ就寝した。

14 入場検査を受けます

ベルカイムの概要把握
タケルは街道の先に高い城壁と巨大な城門を確認し、調査魔法でベルカイムがアルツェリオ王国ルセウヴァッハ領の中堅都市であり、冒険者ギルドが賑わうことや冬の雪像大会が名物であることを認識した。城壁には魔素の流れがあり、結界系の魔道具が展開されていると推測した。

城門前の行列と検査小屋へ
タケルは長蛇の列に並び、順番が来ると検査小屋で荷を改められた。兵士はタケルが素材採取で生計を立てつつ冒険者登録を希望していると知り、入門検査を進めた。

鑑定魔道具による身元確認
兵士は鑑定魔道具でタケルの基本情報を確認し、技能持ちとして歓迎の意を示した。鑑定の過程で異常な反応が検出され、兵士はその理由の説明を求めた。

竜の加護の発覚とビーの提示
タケルはローブの下にいたビーを見せ、竜の加護の反応はビーによるものと示した。警備兵は仔竜の存在に驚きつつも、敵意がなければ問題ないと判断した。

従属の証の提示
兵士は仔竜を従えている証として身の回りの品を装着するよう求めた。タケルは村の子供たちからの餞別の袋から木製の腕輪を選び、ビーの尻尾に嵌めた。ビーは上機嫌となり、兵士たちも落ち着いて受け入れた。

入場許可と今後の対応
兵士はビー同伴の入場を許可し、市長および領主への報告の可能性を伝えた。タケルは冒険者ギルドに登録すれば干渉が減ると助言を受け、礼を述べた。最後に兵士はビーを撫でる許可を求め、検査は和やかに締めくくられた。

15 ギルド登録をいたしましょう

商業都市の熱気と多種族への驚嘆
タケルとビーは城門を抜け、石造りの高層建築が並ぶ活気あるベルカイムの大通りに到達した。人間以外の多様な種族が往来し、タケルは都会の規模と熱気に圧倒された。目立つビーは注目を集めたが、タケルは冒険者ギルドへ向かう目的を優先した。

ギルド来訪と登録開始
タケルはギルド『エウロパ』で受付のウサ耳の女性に新規登録を依頼し、書類に必要事項を記入した。素材採取の腕を示しつつ、冒険者の基本説明は省略された。

討伐実績の提示と場内騒然
戦闘経験の確認を求められたタケルは、携行の空間収納から巨大なモンブランクラブを提示し、場内を驚愕させた。見た目の忌避感に反して可食であると主張し、外装のみ売却の意向を示した。

アイテムボックスと「青」判定の説明
熊の冒険者ウェイドはタケルの収納能力を確認し、鑑定技能でタケルが「青」判定(性格面の問題がなく虚偽が少ない)であることを説明した。受付のアリアンナは手続きを継続し、周囲はタケルの新人としての期待を口にした。

素材売買と追加証明
タケルはサーペントウルフの個体を五匹分取り出して解体を依頼し、肉の引き取りを約した。これにより単独と相棒による討伐能力が認められた。

ビーの公開と小騒動
相棒の存在を示すためタケルはビーを見せ、ギルド内は大騒ぎとなった。女性陣の過度な接触でビーが大声で泣き、窓ガラスが割れる騒動に発展した。タケルはパーティ勧誘を断り、個人行動を選択した。

ランク登録と魔力測定の顛末
規定によりタケルはFランクで登録され、条件達成と試験で上位に昇格可能と告げられた。鑑定水晶で魔力数値を測る段でタケルは魔力を込め、「加熱」の感覚で力を流した結果、水晶を破損させて測定は中断された。

16 遺族訪問

Fランク冒険者に登録
タケルはギルドリング(身分証明兼ランク表示)を受け取り、警備隊の屯所へ。トルミ村で見つけた白骨遺体の報告と遺品引き渡しを行い、関係者から感謝される。遺体は十代の警備隊員ベルリア・フェンドと判明する。

罪悪感と決意
ベルリアの人柄(家族思いの六人兄弟の長男、低賃金を補うため依頼を受注)を知り、タケルは遺族へ直接状況を伝える決意を固める。

貧民街の長屋での訪問
南西部の長屋で家族に対面。タケルは「苦しまなかったはず」と最期を伝える。父エインズは重い呼吸器疾患で衰弱。室内は不衛生で空気も悪い。

環境整備と応急治療
タケルは清潔・修復・抗菌・維持の魔法で部屋と衣服を一新。ビーは風精霊を呼び込んで空気を入れ替える。エインズにはヒールを施し症状を軽減、顔色が回復する。家族全員が栄養不足とわかり、食材(サーペントウルフ肉、薬草、キノコ、スープの素)を提供して消化の良い食事を整える。

偽回復薬の発覚
家族が買っていた回復薬は成分のほとんどが“聖水”だけの紛い物と判明。店名を特定して家族に今後の不買を勧める。

実利的な支援と一夜
翌朝、正規の回復薬と警備隊預かり金(5万3400レイブ+α)を渡し、借金返済と療養資金に充てるよう促す。タケルとビーはその夜、長屋に泊まり、家族は涙と笑顔で感謝を述べ、ベルリアの思い出を語る。

悪徳薬種問屋の顛末
後日、ギルドで当該薬種問屋の採取依頼をタケルが拒否し、偽薬の件を明言。職員が報告し、店主は詐欺罪で逮捕(余罪多数)。

その後と希望
エインズは正規の治癒医師の治療を受け、静養先としてタケルはトルミ村を推薦。家族は数ヶ月後に移住予定となり、再起への道が開けた。

17 ベルカイム滞在

タケルはベルカイムの宿街で中堅クラスの宿「海翁亭」に長期滞在を決め、ギルドリングで手続きを済ませる。相棒ビーの同宿も許可を取り、当面の生活費を賄うため「一日2000レイブ稼ぐ」方針を立てる。

ギルドではFランクの“地味依頼”=採取系を中心に受注。探査・調査の能力と鞄を駆使し、良質素材を的確に集めて高評価を獲得。鑑定担当の獣人グリットと信頼関係を築き、指名依頼や高単価案件も増える。ついでに希少花ネブラリを気前よく贈り、“礼儀正しいタケル”としてギルド内の評価と味方を増やす。

日課は、朝に依頼受注→午後まで採取→報告→図書館や市内見物→夕方は湯屋→海葉亭で夕食→読書して就寝。湯屋は初訪時に清潔魔法で劇的改善し、以後は二日に一度“清潔”を提供する代わりに入浴料無料。ビーも薬湯と風呂を満喫し、ご機嫌で歌う。

図書館では技能と異能の違いを学び、自身の力は“異能寄り”と再確認。ただし多重展開不可の理屈に首をかしげつつ、深掘りは保留。

湯屋ではリザードマンの戦士クレイストンと“裸の付き合い”。志の高い実力者で、タケルの無欲さを茶化しつつも評価してくれる。ギルドからのランクアップ打診も届くが、タケルは「今の暮らしで十分」と当面は見送る構え。目立たず賢く、しかし着実に――タケルとビーの穏やかな都市生活が軌道に乗り始めた。

18 ゴブリンが来るようです

タケルは採取依頼で安定収入を得て評判が上がる一方、ビー連れの目立ち方も相まってギルド内で悪目立ち。グリットは「品も人も信頼できる」と評価し、指名依頼が増えるが、タケルは相変わらずランクアップには消極的。

そんな折、スタヴロウ平野の先に広がるゲレロ樹海から約二百のゴブリンがベルカイムへ進軍との急報。ベルカイム側は警備と冒険者を合わせても百に満たず、上位勢の不在もあって戦力不足。前線はスタヴロウ平野の北と東、カルバ倒木を要所とし、「ザルウェス川を越えさせるな」と作戦が敷かれる。竜騎士の出動は期待薄、王都援軍も最速で四日後。

ギルドマスターのロドル(巨人族・元Aランク)は号令をかけ、Bランクの戦力やクレイストンの名を挙げて招集。討伐報酬は一体800〜1000レイブと発表され、場は熱気に包まれる。雑兵扱いの声も飛ぶ中、ロドルはタケルの市井での評判と実績を挙げて信頼を示し、「守りたいものを守れ」と前線参加を直々に指名。タケルは内心消極的ながらも、グリットに引かれて作戦会議に同席し、ミュゼリ(ネズミ獣人の職員/治癒術使い)の闘志に押される形で参戦の流れに。
平和を望むタケルだが、ベルカイム防衛の大規模戦へ巻き込まれていく。

19 背中の傷

前線の緊張とミュゼリの恐慌
晴天の朝、前線後方の救護テントでミュゼリが恐怖でタケルのローブにしがみつき号泣。タケルは「怖くていい。お前は治癒で支える役だ」と言い聞かせ、恐怖は恥ではないと諭す。ミュゼリは気持ちを立て直し、物資整頓と指示出しに専念。

クレイストンとの会話—“背中の傷”
様子を見ていたクレイストンが現れる。タケルは湯屋で見た肩甲骨下の深い傷に触れ、「逃げ傷と決めつける必要はない、誰かを守って負うこともある」と伝える。タケルの結論はシンプル――「生き残った時点で勝ち。生きていればまた守れるし、再挑戦できる」。クレイストンは苦笑しつつも納得の色。

小休止の準備と非常警報
タケルは腹を空かせつつも簡易スープで皆を温める算段を立てる。ビーは頭上でおとなしく待機。そこへ警笛が鳴り響き、「ロドルの陣が破られた、軍勢が来る!」との急報。後方救護拠点にまで戦端が迫り、タケル・ミュゼリ・クレイストンは即応態勢へ――。

20 守りたいものを守ります

ゴブリン軍勢の襲来
ゴブリンは当初の倍近い数で押し寄せ、最前線を突破していた。個体は弱くとも数の多さと不規則な動きで冒険者たちを翻弄し、爆発音や振動が後方の救護テントまで届いていた。タケルは面倒だと思いながらも腰を上げ、非戦闘員ばかりの場所で負傷者の受け入れを手伝っていた。

クレイストンとミュゼリの決意
状況が悪化するなか、クレイストンは古傷を抱えつつも「守る」と叫んで前線へ走った。ミュゼリも震えながら戦う意志を示すが、タケルは治癒に専念するよう制した。恐怖に立ちすくむ職員たちを前に、タケルは恐怖耐性の恩恵によって冷静さを保っていた。

守る決断
ギルド員から「絶対に守る」と言われたタケルは、自らも「守りたいものを守る」と覚悟を決める。ユグドラシルの枝を杖に変え、テント全体に結界と障壁を展開。内部の非戦闘員を守らせ、自らはクレイストンの後を追った。

タケルとビーの戦闘
戦場でゴブリンと遭遇したタケルは、硬質化と氷結魔法を駆使して応戦。ビーも炎のブレスや超音波で軍勢を焼き払い、氷漬けにした。冒険者数名を矢から遠距離盾で守り、武器を修復して救護テントへ退避させた。仲間を救ったタケルはランクFながらも存在感を示すこととなった。

雷鳴の響き
ゴブリンの群れを退けつつも戦況は混沌を極める。タケルとビーが奮闘する中、戦場には雷鳴が轟き、更なる展開が迫ろうとしていた。

21 魔王降臨

苛烈な戦闘と空腹
タケルは魔法を連発しつつ空腹に苛まれていた。生き残るためにはためらわず殺すと決め、ビーとの連携で炎と風を組み合わせた極大魔法を放ち、ゴブリン軍勢を焼き払った。

クレイストンの苦戦
戦場ではリザードマンの戦士クレイストンが槍を振るい、群れを切り裂いていた。しかし背中の古傷が痛むのか、動きは精彩を欠いていた。タケルは彼を救おうと決意する。

背中の傷の治癒
タケルは魔素水を浴びせ、完全治癒を試みる。すると傷は癒えただけでなく、背中から角が生え、体格も大きく変貌。鱗は鋼のように輝き、クレイストンは別種の存在へと変わった。

覚醒と無双
力を取り戻したクレイストンは片手の一振りで風刃を放ち、ゴブリンを一掃。まるで始祖の竜の血が覚醒したかのような圧倒的力を見せつけた。ゴブリン軍は蹂躙され、戦場は焼け野原と化す。タケルは消火に追われながら、その姿を「魔王」と見まがうほどの存在感と感じた。

クレイストンは涙を流しながら笑って戦い続けていた。

22 進化

戦いの終結と噂
スタヴロウ平野でのゴブリン軍団との戦いは二日で終わり、最短記録となった。黒いモンスターや炎の渦、青い魔王の噂が飛び交ったが、死者は出ず、救護班の尽力で重軽傷者のみで済んだ。冒険者たちは奮闘し、街は安堵した。

根城討伐の提案
ギルドマスターは今こそ根城を叩くべきと提案したが、対象はランクD以上であり、タケルは参加せず、平穏な時間を過ごした。

クレイの訪問と問い質し
三日後、クレイが訪れ、タケルに何をしたか問い質した。タケルは魔素水を用いた完全治癒を施したと説明し、クレイは傷が消え力が溢れることを認めた。魔素水の出所が古代竜であることも明かされた。

転生の告白
タケルは自らが別世界の転生者であることを明かし、前世の知識で治癒術を扱えることを説明した。クレイは驚きつつも受け入れた。

竜人への進化
治癒と魔素水の影響で、クレイはリザードマンから竜人へ進化した。彼は始祖の血を受け継いでいたと自覚し、力が増す一方で暴走の恐れを抱いた。

説教と忠告
クレイはタケルに軽率な行動を戒め、古代竜の尊さを説いた。またビーの力の大きさにも言及し、制御を求めた。さらに自身の傷が王太子を守った証であることを語った。タケルは責任を認め、今後は様子を見守ることにした。

長い説教
クレイは戦いの厳しさや使命感を語り続け、タケルとビーは夜が更けるまで説教を受けた。

幕間 ギルディアス・クレイストンの回顧録

戦場での疲弊と自負
クレイストンは背の痛みを庇いながら槍を振るい、誰より多くゴブリンを斬っていたが、疲労は顕著であった。もっと戦えるはずだという思いを抱きつつ、血飛沫を浴びた真蒼の竜として悔しさを噛みしめていたのである。

出自と栄達
彼は竜人の血を継ぐ高潔な一族の末裔として生まれ、青い鱗と抜群の戦闘能力で将来を嘱望された。王立学院を最短で首席卒業し、御前試合でも頭角を現し、王族の目に留まって王太子の護衛となり、やがて聖竜騎士へと昇ったのである。

王宮の陰謀と退転
平穏な国の騎士団は体面と利得を重んじ、彼は実直さゆえ孤立した。未明の暗殺未遂では第二王子派の策謀と同僚の意図的な失策により王太子が凶刃に晒されたが、彼が身を挺して防いだ。その結果、背中に不名誉とされる深手と後遺症を負い、城を去り、「栄誉の竜王」の二つ名を得て冒険者となったのである。

流転と邂逅
亡国の盟友であるギルドマスターに迎えられ、ランクAとして糧を得て静かに暮らしていた。ある日、湯屋で黒髪の男と出会い、男は強力な魔術で湯屋を清潔にし、対価を求めず自己満足だと語った。掃除屋への配慮に頭を巡らせるその頓珍漢な在り方に、クレイストンは久方ぶりに笑ったのである。

劣勢の戦場と回想
腐臭と死臭の中、傷は激しく痛み、槍を握る力も尽きかけた。彼はあの男の「恥などと思うな」という言葉を思い出し、無様に果てようとも懸命に生きたと認められると考え、なお抵抗を続けたのである。

窮地の救援
更なる軍勢が迫る中、眩い光線が走って退路が開け、ゴブリンの群れが一瞬で消えた。飢えを訴えつつ現れたのは、湯屋のあの男であり、クレイストンは救援の到来を目の当たりにしたのである。

23 討伐の報酬

遺体処理への従事と自省
タケルはスタヴロウ平野に残ったゴブリンの遺体処理に参加し、強烈な臭気に小麦粉を鼻に詰めて作業したためクレイに叱責された。素材の回収や討伐証明は辞退し、大量の死骸を前に自衛の戦いであっても後味は悪いと省みた。

ギルドマスターからの呼び出し
ギルドに赴いたタケルはロドルに呼び出され、事務室でウェイド同席のもと応対した。ロドルはタケルがミュゼリの奮起を促し救護班の指揮に繋げた点を評価した。

正体の確認と不問の決定
ウェイドは鑑定でタケルに悪意や虚偽がないと判断した。タケルは素性を多く語らず、ロドルは深追いを報酬の一部として不問に付す方針を示した。

報酬としての希望と提供
ロドルが望む報酬を問うと、タケルはモンブランクラブの生息地の情報を希望し、承諾を得た。ロドルとウェイドはその嗜好を面白がり、情報提供を約した。

領主からの面会打診
ロドルはベルカイムの領主がビーとの面会を望んでいると伝えた。タケルはビーの身柄を守る意志を明言し、ロドルは領主が強権的に取り上げることはないと説明した。

ランクアップ辞退と現状維持
ロドルはランクアップを勧めたが、タケルは現状の生活に満足しているとしてFランクのままを選択した。討伐の報酬で貯蓄は一千万レイブ超となったが、家や土地の購入や賭博には関心を示さず、節度ある暮らしを続ける姿勢を示した。

24 偏屈親方と、武器鍛冶職人

ランクアップの保留と冒険者の娯楽
ギルドマスターは芳村のランクアップを望んでいたが、本人が希望しないため保留となった。冒険者が名を上げるほどギルドの人気も高まるため不機嫌な態度を見せた。娯楽の乏しい世界において、庶民は冒険者の体験談を楽しみとし、吟遊詩人や旅芸人がそれを題材にした。芳村にとっては宿屋からギルドに行くことすら冒険であり、人気者にはなりたくないと考えていた。

依頼を逃した日と経済状況
この日は依頼を受けられず、芳村はギルドを後にした。Fランクであるため受注可能な依頼は限られていたが、探査能力により素材の品質を高め、報酬を十倍に引き上げていた。貯蓄は一千万を超え、指名依頼では高額な報酬を得ることもあった。生活に困ることはなく、休んでも問題はない状況であった。

商業区への訪問
芳村は町の外に出ず、東の商業区に向かった。そこは職人街とも呼ばれ、特にドワーフ族が多く働いていた。彼は薬草採取に適した専用のハサミを求めて訪れた。今までの裁縫用のハサミは使いづらく、品質の低下を招いていたためである。商業区は怒号や金槌の音で賑やかで、軒先には多種多様な武具が並んでいた。

猫耳の女性との出会い
芳村はある武具店の猫耳の若い女性に声を掛けられた。彼女は採取用のハサミを扱っていないと説明したが、芳村が最近評判の冒険者だと気づいた。彼の指名依頼が三か月先まで埋まっていることも明らかになり、驚いた芳村は新たな依頼の予兆を感じ取った。

親方との口論と依頼の持ちかけ
猫耳の女性は店の奥に駆け込み、親方と呼ばれる鍛冶職人に芳村を紹介した。親方は芳村にイルドラ石を採取させようとする案に強く反対したが、彼女は必死に食い下がった。死の危険が伴う依頼であることから親方は渋ったが、最終的に芳村に話を聞いてもらうことを決めた。猫耳の女性は困惑と期待を込めて彼に依頼を説明し、芳村は話だけでも聞くことを了承した。

25 必死の懇願、新たなる依頼

鍛冶場の熱気とグルサス親方との対面
タケルはリブルに案内され、灼熱と轟音に満ちた鍛冶場を見学しつつ奥の部屋へ進んだ。応接の席でグルサス親方は威圧的に出たが、タケルは腰を低く受け流し、草集めの楽しさと成果を淡々と語った。ビーは騒音に驚いてローブの下に隠れた。

師弟の口論と工房の窮状
リブルは納期逼迫と借金増大を訴え、親方は半端な材料では一流品は造れないと反論した。タケルは持参のそば茶で二人を落ち着かせ、口論の背景に工房の資金難と素材不足があると把握した。

イルドラ石の不足と影響
リブルはリュハイ鉱山で採れるイルドラ石が採掘困難になり、鍛冶場や冒険者に広範な支障が出ていると説明した。イルドラ石は魔力に反応して加工しやすく、硬さはミスリルに匹敵しつつ価格は鉄鉱石並みであった。ゾロワディーン王も原因不明としており、職人街が閑散としていた理由はこの供給難に起因すると示された。

依頼の提示と親方の逡巡
リブルはタケルにリュハイ鉱山での採取を依頼したが、グルサス親方は危険性を理由に強く渋った。親方はタケルの身を案じ、人気のある素材採取者を無謀な依頼で失いたくないと述べた。一方でリブルは王都の品評会まで二ヶ月しかなく、上位入選常連である親方の出品に間に合わせたいと懇願した。

報酬交渉と特注ハサミの提案
タケルは現金を望まないと明言し、代わりに特注の採取用ハサミを報酬に提示した。条件は高い切れ味と頑丈さ、錆びにくさ、手入れ不要に近い持続性、大型の手に適合する設計であった。ギルドを通さない私契約の含意も示し、親方はなお決め手を欠いて逡巡した。

力量の示威と決断の前段
タケルは自作の保温水筒を示して親方の関心を引きつつ、モンブランクラブの巨大な鋏を取り出して自らの実力を示した。対象はCランク相当であり、Bランクでも外装破壊が難しいとされる相手であったが、タケルはこれを討てると断言した。リブルと親方は驚愕し、タケルの力量を前提に依頼受諾が現実味を帯びる段階に至った。

26 いざ行かん、ドワーフの国へ

特注ハサミの約束と出立
グルサス親方は職人の矜持に反せず、生活用品の特注ハサミ製作を快諾した。これを受け、タケルはリュハイ鉱山行きを決め、依頼の遂行と並行して数件の指名依頼を受注したうえで出立した。

馬車旅と各地の異変の噂
ベルカイム北西のドルト街道を馬車で進み、エブイラ村を経由してリュハイ山脈方面へ向かった。道中、冒険者らがロブスリ峠の毒草が花へ変じた件や、白樹の森が一夜でただの森になった件を語り、各地の小規模な異変が話題となっていた。タケルはボルの魔素に起因する可能性を想起しつつ、旅を続けた。

エブイラ宿泊と旅装の整え
エブイラ村には個室宿があり、タケルは清潔の魔法で身支度を整えつつ休息を取った。翌朝は二人分の朝食をとり、旅程に備えた食料や水を確認した。

乗騎の選定と断念
馬貸与・売買の店では大柄な体格に合う乗騎がなく、一角馬は希少種で王都優先と告げられ入手を断念した。ヴォズラオが天馬の産地との情報を得たが、当面は徒歩と採取を両立させる方針に切り替えた。

天馬を求めるエルフとの邂逅
店では白き天馬を所望するエルフが、誤って白い大鴉を手配されたと騒動を起こしていた。店主は天馬ならヴォズラオで扱いがあると助言し、エルフは礼を述べて去った。タケルはこの情報を旅程の参考とした。

採取の進行と旅の合理化
タケルは探査魔法で受注品と良質素材を効率的に採取し、遊歩道から少し外れた自然域で野草や茸を収集した。携行食や保温水筒の装備により、寄り道しつつも旅程を崩さず進行できていた。

行き倒れの救助と甘味の提供
森中で腹の虫を鳴らして倒れているエブイラのエルフを発見し、白湯と自作の大判焼き、胃薬を与えて介抱した。エルフはタケルを冒険者と認識して礼を述べ、会話の中で携行食の不備を指摘されつつも回復した。

報酬設計の内心と波乱の予兆
タケルは特注ハサミにイルドラ石ではなく、手持ちのミスリル魔鉱石と魔素水を少量用いる意図を抱いていた。旅の締めくくりに、タケルは強い体臭のエルフへ清潔の魔法適用を願い出て、ドワーフの国への行軍が新たな波乱を孕んで進行した。

同シリーズ

5b6cba74e0d7c0670042eef3e802413a 小説「素材採取家の異世界旅行記 1」感想・ネタバレ・アニメ化
素材採取家の異世界旅行記
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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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