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小説「後宮の検屍女官2」感想・ネタバレ

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後宮の検屍女官2の表紙画像(レビュー記事導入用) 未分類

検屍女官 1レビュー
まとめ
検屍女官 3レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

前作「死王」事件から約一か月半が過ぎた頃であった。
美貌の宦官・孫延明は、後宮の管理と司法を担う「掖庭令」に就任したのである。
ところが就任直後、掖庭獄で大規模な火災が発生した。

鎮火後、宦官・金剛の変死体が見つかっただけでなく、延焼した「玉堂」において元寵妃・馮充依と宦官・大海の焼死体が発見されたのである。
金剛の死には他殺の疑いがかけられており、玉堂の二人については無理心中とみられていた。
真相を追う延明は、織室で働く女官・桃花に検屍を依頼したのである。

普段は「老猫」と呼ばれるほど怠け者の桃花であったが、ひとたび現場に立つと態度は一変した。
残された痕跡や遺体の状態を、冷静かつ論理的に読み解いていったのである。
卓越した検屍術で無理心中や他殺に見せかけた偽装を見抜き、事件の背後に渦巻く後宮の権力闘争と謎の第三者の存在を暴いていった。

■ 主要キャラクター

  • 桃花(とうか):織室に仕える女官。検屍術に精通し、遺体を前にすると鋭い洞察力を発揮する検屍官でもある。延明の依頼を受け、法医学的な視点から事件に潜む不審点や矛盾を見抜いた。
  • 孫延明(そん えんめい):新任の掖廷令。かつて名家の嫡男だったが、冤罪により腐刑を受けた過去を持つ。その過酷な経験から、公正な裁きと冤罪の防止を信条としている。桃花の卓越した能力を、組織の運営に欠かせないものとして高く評価している。
  • 華允(か いん):延明に拾われた少年宦官。読み書きの才能を見込まれ、延明が桃花と行う検屍調査では筆記係を務める。調査で明らかになった事実を詳細に記録し、保管する役目を担っている。
  • 甘甘(かんかん):前掖廷令。火災の責任を問われて収監されたが、金剛の事件に不審な点があることに気づき、後任の延明に調査を託した。
  • 金剛(こんごう):第一の事件の被害者。借金を抱えていた宦官で、首を吊った状態で発見された。
  • 如来(にょらい):金剛の同僚。強面で高利貸しをしていたことから、金剛殺害の有力な容疑者として投獄され、激しい拷問を受けた。
  • 馮充依(ふう じゅうい):玉堂で発見された元寵妃。降格後も、宦官との不貞を噂されていた。
  • 大海(だいかい):馮充依とともに発見された宦官。小海の義兄にあたる人物。

書籍情報

後宮の検屍女官 2
著者:小野はるか 氏
イラスト:夏目レモン  氏
出版社:KADOKAWA角川文庫
発売日:2021年11月20日
ISBN:9784041117767

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

後宮にうずまく疑惑と謎を検屍術で解き明かす中華後宮検屍ミステリ第2弾!
後宮を揺るがした死王の事件からひと月半。解決に一役買った美貌の宦官・延明(えんめい)は、後宮内の要職である掖廷令(えきていれい)に任ぜられる。
だがその矢先、掖廷獄で大火災が発生。さらに延焼した玉堂の中から首を吊ったとみられる妃嬪と、刃物をつき立てられた宦官の遺体が見つかった。
宦官に恋慕した妃嬪による無理心中と思われたが――?
延明は、検屍となると唯一覚醒するぐうたら女官・桃花(とうか)と再び事件に向かう。

発売直後から大反響&重版続々!
話題沸騰の中華後宮×検屍ミステリ、待望の第2弾!!

後宮の検屍女官2

感想

『後宮の検屍女官2』感想|無理心中だと思ったら加害者と被害者が逆!?後宮、何でもありだな……

火事。

焼死体。

無理心中。

ここまでは分かる。

ところが調べてみれば、

刺されたと思っていた方が首を吊っていて。

首を吊ったと思っていた方が刺されていて。

さらにその死体を入れ替えたのが、死んだ男の契弟。

しかも、その契弟まで殺される。

……おう。

完全についていくのがやっとだった。

後宮、何でもありだな。

前巻でも死体を前にすると急にキリッとする桃花が面白かったが、今回は事件そのものがさらにややこしい。

誰が誰を殺したのか。

誰が死体を動かしたのか。

誰が嘘を流したのか。

そこへ宦官同士の関係や来世への願いまで絡む。

恋愛という言葉だけでは片付けにくい、かなり濃い話だった。

焼死体が出たと思ったら、そもそも火事の前に二人とも死んでいた

始まりは掖廷獄の大火災。

新しく掖廷令になった延明は、着任早々から大混乱に巻き込まれる。

その中で見つかるのが、元寵妃の馮充依と宦官・大海の遺体。

馮充依は首を吊り。

大海は胸に刃物。

しかも二人とも、火災が起こる前に死んでいた。

これだけ見れば、

馮充依が大海を刺して、自分も首を吊った無理心中。

となる。

馮充依は過去にも宦官との密通で問題を起こしており、大海にも執着していた。

そりゃそう判断するよな。

ところが検屍を進めるとおかしい。

大海の胸の傷には、生きている時についたはずの出血がない。

つまり、

死んだあとで刺された。

さらに桃花が玉堂を調べると、大海が倒れていた場所には血痕がなく、逆に馮充依が倒れていた場所から血の跡が見つかる。

え?

じゃあ刺されたの、

馮充依?

しかも梁には大海がいた位置にも縄を掛けた痕がある。

つまり本当は、

馮充依が刺され。

大海が首を吊っていた。

発見された状態とは逆。

何でそんな面倒なことを?

ここから一気に訳が分からなくなる。

死体を入れ替えたのは小海。兄の来世と妹を守るためだった

遺体を入れ替えた人物は、

大海の契弟・小海。

火事の夜、小海は行方不明の大海を探して玉堂へ入る。

そこで見つけたのが、

刺されて死んだ馮充依。

そして首を吊った大海。

小海は、

兄が馮充依を殺して自害した。

そう思ってしまう。

このままでは大海は殺人者になる。

さらに大海には妹がいる。

罪が連座すれば、その妹まで巻き込まれる。

そして宦官である大海にとっては、

来世で人として生まれ変われるか。

という問題まである。

だから小海は、

馮充依を首吊り死体にする。

大海には死後、刃物を刺す。

加害者と被害者を逆にした。

普通に考えれば、

死体を弄るなよ。

となる。

でも小海の側から見ると、

兄を守りたい。

妹も守りたい。

兄の来世まで守りたい。

それしかなかったんだろうな。

しかも二人は血のつながった兄弟ではない。

それでも苦しい宮中で支え合って、契を結び、兄弟として生きてきた。

だからこそ、そこまでやった。

悲しいな。

ただし、

ここで終わらない。

この死体入れ替えすら、まだ本当の真相ではない。

小海まで殺されて、真犯人は懿炎。愛が重すぎるどころではない

小海は死体を入れ替えた罪で処罰を受ける。

そしてその後、

自害。

……と思ったら、

これも他殺。

桃花が検屍すると、口の中には水場の中央では入りにくい礫や陸上の草。

背中には押さえつけられた痕。

後頭部には爪痕。

小海は自分から深い場所へ入ったのではなく、

浅瀬で押さえ込まれて溺死させられていた。

もう一人死んだぞ。

誰だよ。

ここで浮かび上がるのが懿炎。

こいつが、

馮充依。

大海。

小海。

三人とも殺していた。

何でそこまで?

原因は、

馮充依への愛。

懿炎もかつて馮充依から愛情を向けられた一人だった。

ただ、それは本物ではなかった。

馮充依は寂しさを埋めるように宦官たちへ愛を与え、飽きれば捨てていた。

懿炎もその一人。

自分への愛が偽物でも、

皆にとって偽物なら耐えられた。

ところが大海だけは違った。

馮充依が本気で愛した。

それが許せなかった。

……愛が重い。

重いとかいうレベルじゃない。

懿炎は馮充依を刺し、大海を殺し、さらに口封じのため小海まで殺す。

全部、

自分の中に残っている「愛された記憶」を守るため。

そこまでいくのか。

宦官には「無い」。だから来世や愛への執着が余計に重く見えてしまった

今回ずっと感じたのが、

宦官という立場の重さだった。

作中でも彼らは、

家族を持てない。

普通の意味で子孫を残せない。

肉体の一部を失っている。

だから現世だけではなく、

来世で人として生まれ変われるか。

ということを強く気にしている。

大海の「宝」をどうするのか。

正しく埋葬できるのか。

それだけでも本人たちにとっては人生の重大事になる。

だから小海が死体を入れ替えた理由も、

単なる証拠隠滅ではない。

兄の来世まで守ろうとしている。

懿炎もまた、

現世で得られなかった愛に異様なほど執着した。

もちろん、

宦官だからこうなる。

と単純に言える話ではない。

でも、

普通なら得られるはずだった人生を切り取られた人たちが集まる場所。

そう考えると、愛や来世への執着が妙に重くなるのも分かる気がした。

そしてその重さを、

普段はぐうたらしている桃花が死体から淡々と解いていく。

やっぱり死体の前だけ別人だな。

一方の延明も、桃花の前では少しずつ仮面を外すようになっている。

冤罪で腐刑を受けた過去。

朝廷へ戻ろうとしても、

「刑余の者」

として見られる現実。

それでも進もうとする延明に対して、桃花は無理に強がらなくていいと話す。

事件はドロドロ。

人間関係もドロドロ。

なのに最後は白梅と月。

少し静かな余韻が残る。

ただし。

火事そのものには、

まだ裏がありそう。

首吊り自殺したはずの金剛が、火災直前に掖廷付近で目撃されていた。

え?

まだ終わってないの?

後宮、

本当に何でもありだな……。
眠くなって来た。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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検屍女官 1レビュー
まとめ
検屍女官 3レビュー

考察・解説

主要な転換点

後宮で起きた火災と不可解な変死事件の捜査では、法医学の知見と現場検証によって、当初の見立てが次々に覆されていった。ここでは、物語を大きく動かした主な転換点を整理する。
金剛の首の掻き傷の発見

  • 当初の見立て:借金を苦にした自死と考えられていた。
  • 発見:遺体を調べた結果、首に生前についた搔き傷が確認された。
  • 変化:他殺の嫌疑が生じ、容疑者特定に向けた司法手続きと捜査が開始された。

桃花による縊死の再定義

  • 発見:桃花は、足が完全には地につかない状態で首を吊った場合、激しい苦痛から自ら首を搔く生前反応が現れることを指摘した。
  • 転換:他殺の証拠と見られていた傷は、苦痛を伴う自死を示す痕跡だったと判明した。容疑者として拘束されていた如来は釈放され、延明と桃花の信頼関係も深まった。

玉堂からの二遺体発見

  • 発見:無人のはずだった玉堂で、元寵妃の馮充依と宦官の大海の焼死体が見つかった。
  • 転換:事件は単なる火災事故ではなく、後宮全体を揺るがす不祥事へと発展した。政治的な思惑も絡み、再調査が始まる。

米酢による血液反応の実験

  • 出来事:桃花が米酢を用い、刺殺体とされた大海の位置に血痕がなく、馮充依の倒れていた場所に多量の出血があることを可視化した。
  • 転換:公式発表の無理心中説には決定的な矛盾があると示され、死後に遺体を入れ替えた第三者の存在が確実視された。

表面的な状況証拠にとらわれず、遺体に残された客観的な痕跡を丁寧に読み解くことで、隠されていた真実が次々に明らかになった。これらの転換点は事件の解決にとどまらず、後宮の権力構造や登場人物たちの関係性を大きく動かすきっかけにもなった。

人物関係の変化

物語が進むにつれ、主人公・桃花を中心とする人間関係は深まり、彼女の個性的な性格や能力に対する周囲の理解も少しずつ明らかになっていく。ここでは、主要人物との関係の変化と、桃花自身の自己認識、そして周囲からの評価を整理する。

主人公を中心とした人物関係の変化

桃花と孫延明

開始時:前事件の解決後、それぞれ織室と掖廷令の執務室という本来の職場に帰属していた。延明は桃花を検屍のときのみ覚醒する稀有な人材として高く評価していたのである。

巻末時:延明が職権を使い、不定期に桃花を呼び出して協力を求める関係が定着していた。桃花は彼の強引な呼び出しにうんざりしながらも、冤罪を憎み、公平に裁こうとする姿勢には深い敬意を抱くようになっていた。

孫延明と華允

開始時:華允は、虐待を受けた末に師父から捨てられた少年であり、延明はその境遇を見かねて彼を引き取った上司だった。

巻末時:華允は、検屍現場で必要な物品を用意し、調査結果を正確に記録する筆記係としての実力を示していた。延明の調査を実務面から支える、欠かせない存在へと成長している。

主人公の認識と周囲の評価

桃花自身の認識

自分では、老猫のようにいつも眠たく、怠け者だと思っている。

身だしなみより睡眠を優先する一方で、検屍の際には死者と公平に向き合うための時間を何より大切にしている。

周囲からの評価

延明は、普段の無頓着な姿とは対照的に、検屍の場で見せる清廉で凛とした桃花の姿を深く信頼していた。

織室の友人である才里や紅子は、桃花を身だしなみに無頓着な友人として接しつつも、有力な後ろ盾を持つ謎多き女官として一目置いていた。

このように、死者の尊厳を守るという過酷な検屍の仕事を通じて、登場人物たちは互いの能力や信念を認め合うようになっていく。普段は怠け者に見える一方で、検屍官として卓越した専門性を発揮する桃花は、延明をはじめ周囲の人々を惹きつけ、物語を動かす中心的な存在となっている。

クライマックス

玉堂で起きた元寵妃と宦官の変死事件は、政治的な思惑から無理心中として処理されかけていた。しかし、科学的知見に基づく綿密な現場検証によって、その偽装は暴かれる。本稿では、物語が最高潮を迎える場面と、第2巻の結末時点での状況を整理する。
玉堂での遺体偽装は、現場に残された痕跡を科学的かつ論理的に検証することで見破られた。

  • 発端:母が自害したとは信じられない公主の訴えを受け、河西の名士が太子に働きかけたことで、延明に再調査が命じられた。
  • 当初の判断:馮充依が大海を刺殺したのち、自ら首を吊った無理心中として、公式に処理されていた。
  • 桃花の検証:桃花は石鹸莢、酒粕、米酢、火鉢、鶏冠などの検屍道具を使い、現場を調べた。米酢で床の血痕を確かめたところ、刺殺されたとされた大海の位置には出血がなく、馮充依が倒れていた場所には大量の出血があった。さらに梯子で梁を調べ、大海の頭上にあたる位置にも縄が擦れた痕が残っていることを突き止めた。
  • 真相:実際に刺されたのは馮充依で、首を吊られていたのは大海だった。桃花たちは、遺体の状況が意図的に入れ替えられていたことを論理的に見抜いた。
  • 直後の結論:何者かが死後の遺体に刃物を刺し、遺体まで移動させて無理心中に見せかけた可能性が浮かび上がった。周到な隠蔽工作の存在が明らかになった。

巻末時点の状況
事件の偽装は暴かれたが、その動機や背後にいる人物については、なお深い謎が残されている。

  • 主人公たちの状況:延明は、「なぜ死後にわざわざ刃物を刺し直したのか」という偽装工作の不自然さを追っている。一方の桃花は織室での仕事に戻るものの、これからも延明に何度も呼び出される日々になりそうだと感じている。
  • 解決した問題:如来の冤罪は晴れ、金剛は縊死によって自害したと判明した。
  • 残された問題:玉堂で起きた馮充依と大海の死亡事件について、真犯人の特定と、遺体を入れ替えて心中に見せかけた本当の目的は、まだ明らかになっていない。
  • 今後の焦点:梅氏と許氏による後宮内の勢力争いが激しさを増すこと、そして新たな側室の入内をめぐる動きである。

現場に残された客観的な証拠を的確に読み解く無冤術によって、権力闘争の陰に埋もれかけていた偽装工作は白日の下にさらされた。だが、遺体を入れ替えてまで真相を隠そうとした犯人の狙いと、激しさを増す後宮の権力争いは、新たな波乱の始まりを予感させる。

掖廷獄の大火

後宮の検屍女官2において発生する掖廷獄の大火は、単なる不慮の失火事故ではない。後宮の勢力図を激変させ、複数の事件の引き金となった、第2巻全体のプロットを貫く極めて重要な大事件である。この大火について、火災の状況と直接的な被害、もたらされた人事・政治的影響、そして大火の真相と陰謀の三つの視点から解説する。
掖廷獄の大火の発生と直接的な被害
火災は深夜、後宮の司法・管理権限を持つ掖廷の獄舎から発生した。

  • 出火原因と延焼:出火元は掖廷獄の内部であり、囚人用の藁が積まれていたあたりが最も激しく燃えていた。激しい風にあおられて火は瞬く間に広がり、掖廷の獄舎、官舎、死体検案室のある慰安舎がすべて燃え落ちて炭と化した。
  • 囚人たちの悲劇:大火によって多くの囚人が逃げ遅れ、命を落とした。そこには、前の事件の首謀者として収監され、処刑を待っていた司馬両春や、連座して捕らえられた呂美人とその女官たちも含まれていた。
  • 玉堂への延焼:火の手は皇后の住まう中宮の一部にとどまらず、普段は使われず無人のはずだった玉堂にも及んだ。焼け跡からは元寵妃・馮充依と宦官・大海の焼死体が見つかり、無理心中に見せかけた事件の幕が開くことになる。

もたらされた人事・政治的影響
この大火は、主人公たちを取り巻く状況を決定的に変えることになった。

  • 甘甘の失脚と延明の掖廷令就任:前任の掖廷令であり延明の恩人でもある甘甘は、管理責任を問われて一転して若盧獄へ収監された。これに伴い、外朝への進出を阻まれていた孫延明の掖廷令への着任が急遽前倒しされることとなった。
  • 許皇后の優位と梅婕妤派への牽制:中宮の一部が焼失したため、許皇后は一時的に皇帝の寝所である燕寝へ移り住むことになる。この出来事は、皇帝の寵愛を独占してきた梅婕妤を強く苛立たせ、後宮の権力争いに大きな波紋を広げた。

結末で明かされる大火の真相と金剛の影
物語の終盤、真犯人である懿炎が逮捕された後、この大火が偶発的な事故ではなかったことを裏づける事実が明らかになる。

  • 油のにおいがする不審者:懿炎の自白によれば、馮充依らを殺害して玉堂から逃げる際、人目を避けて歩く不審な人物とすれ違っていたという。その人物からは、強い油のにおいが漂っていた。
  • 自死した金剛の正体:懿炎が目撃したその油臭い男は、掖廷獄の方向から後宮へと戻ってきていた。その顔は、第2巻の冒頭で借金苦のために首を吊って自殺したと判断されていた八区の宦官・金剛であった。
  • 大火の裏に潜む黒幕:金剛は深夜に掖廷獄へ忍び込んで油を撒き、大火災を引き起こした直後に自ら首を吊って命を絶ったという時間的符号が一致する。

掖廷獄の大火は、司馬両春や呂美人といった前作の事件関係者の口を物理的に封じただけでなく、何者かが金剛という捨て駒を操り、意図的に後宮の司法中枢を焼き払わせたという巨大で根深い闇の存在を証明する事件であった。この大火の真相、そして金剛を操った黒幕の正体を暴くため、延明と桃花はさらなる後宮の陰謀へと立ち向かっていくこととなるのである。

剛の不審死

『後宮の検屍女官2』の冒頭で描かれる金剛の不審死は、借金苦による自殺と見られていたものが、他殺の可能性を疑わせる事件へと発展していく。だが、姫桃花による緻密な検屍によって、最終的には自死だったことが論理的に明らかになる法医学ミステリーである。さらに物語の終盤では、この死が後宮を揺るがす大火の真相と深く結びついていたことも判明する。ここでは、他殺の疑いと如来の冤罪、桃花が導き出した自死の証明、そして大火につながる真相という、三層にわたる事実を解説する。

事件の発生と他殺の疑い

  • 遺体の発見:後宮八区の塵を捨てる土坑の近くに立つ大きな樟の木で、宦官の金剛が首を吊って死亡しているのが見つかった。彼には深刻な賭博癖と借金苦があったため、当初は自殺と考えられていた。
  • 他殺を疑わせた首の搔き傷:遺体の首には指の爪で激しく搔きむしった縦走の傷が残されていた。検屍官はこれを背後から首を絞められた際に生じた抵抗痕と判断し、首吊りに見せかけた巧妙な他殺事件と初期判断した。
  • 如来の逮捕と拷問:金剛に多額の金を貸し、生前に命で払えと脅していた大柄な同僚の如来が犯人として捕らえられ、過酷な拷問にかけられた。さらに金剛の宝が紛失していたため、如来がそれを奪って売り飛ばしたのではないかという嫌疑も重なった。

桃花の検屍が暴いた自死の激しい苦痛

新任の掖廷令である孫延明は、如来が自らの隠し財産を埋めた木の下に被害者を吊るすとは考えにくい点に着目した。如来の冤罪を疑った延明は桃花に再検屍を依頼し、桃花は遺体と現場に残された物理的・法医学的な痕跡から、如来への容疑を完全に覆してみせた。

  • 顔面のうっ血とつま先の汚れ:足が届かない高所で完全に宙吊りになれば、血流はすぐに遮断され、顔色は青白くなる。しかし金剛の顔は赤黒く腫れ上がるほど鬱血しており、履物のつま先も土でひどく汚れていた。これらの痕跡から、彼は足先を地面につけたまま、もがいていたことが分かる。
  • 手製の縄の伸びと枝のしなり:古着を縒って作られた手製の縄は、金剛の体重を支えきれずに伸びていた。加えて樟の古い枝もしなったため、つま先が地面に届くほどの高さになっていた。
  • 搔き傷の正体と生前の生活反応:足先がついたことで即死できず、苦しさの中で金剛はのたうち回り、生存本能から自分の手で首の縄を搔きむしった。他殺の証拠とされた首の傷は、ゆっくりと窒息していく苦痛に耐えかねて自らつけてしまった生前の傷であることが証明された。

この見立てにより、金剛の死は自縊によるものと結論づけられ、如来の冤罪は晴れて釈放された。

物語終盤に明かされる金剛の死のさらなる闇

借金苦による自死と結論づけられたこの事件は、物語の結末でさらにおぞましい陰謀へとつながっていく。

  • 油のにおいを漂わせる死者:玉堂で起きた事件の犯人・懿炎は、掖廷獄の大火があった夜、人目を忍んで歩く不審な男とすれ違ったと自白する。その男からは濃い油のにおいが漂っており、その正体こそ、翌朝に首吊り死体として発見された金剛だった。
  • 大火の実行犯としての金剛:借金に追い詰められた金剛は、何者かに唆されたのか、掖廷獄に油を撒いて放火するという大罪に手を染めた。そしてその直後、樟の木で自死を遂げたことが真相だった。金剛の宝が紛失していた点も、この裏取引や逃走資金に関わっていた可能性が高い。

金剛の不審死は、単なる宦官の借金苦による自殺ではなかった。後宮の司法中枢を焼き払う事件に関わった人物の口を封じるため、巨大な黒幕の陰謀のなかで捨て駒として利用された悲劇だったのである。桃花と延明は、金剛の足取りと彼を操った黒幕の正体を追うなかで、後宮に渦巻くさらに深い闇へと踏み込んでいく。

連続殺人事件

『後宮の検屍女官』第1巻・第2巻で描かれる連続殺人および連続不審死は、閉ざされた後宮という階級社会の闇を映し出す、重層的で痛ましい事件である。本稿では、桃花が解き明かした二つの連続殺人事件を、動機の対比、偽装工作の巧妙さ、そして事件が残した社会的・政治的影響という観点から比較・分析する。

保身の泥縄と狂信的な執着:動機の対比

両巻で描かれる連続殺人は、犯人の殺意が向かう先が対照的である。

  • 第1巻:司馬両春による保身と口封じの連続殺人。不貞の発覚を恐れて李美人を殺害したことを発端に、その事実を材料に脅してきた共犯者の病児、さらに精神的に不安定になり、秘密を漏らしかねない高莉莉を次々と始末していく。これは、自らの罪を隠すために障害となる者を排除していく、現実的かつ場当たり的な口封じの連鎖であり、まさに泥縄式の殺人といえる。
  • 第2巻:懿炎による心中偽装と入れ替えの連続殺人。玉堂の焼け跡から元寵妃・馮充依と宦官・大海の心中遺体が見つかるが、実際には馮充依は刺殺され、大海は首を吊らされていた。懿炎は、かつて愛した馮充依への歪んだ執着と、彼女から真の愛を得た大海への激しい嫉妬から、二人を殺害して心中劇を仕立て上げた。さらに、真相に気づいた小海も溺死させ、自らの歪んだ感情と記憶を守るために凶行を重ねた。これは、周到に演出された劇場型の殺人である。

オカルトや悲劇の利用と偽装工作の看破

どちらの事件でも、犯人たちは後宮に広まる怪談や悲劇の噂を隠れ蓑にして、自害や病死に見せかけようとした。しかし、その偽装は桃花の検屍術によって、物理的な証拠から見破られていく。

  • 第1巻における看破。犯人は「死王の呪い」という幽鬼への恐怖を利用し、他殺を呪殺に見せかけようとした。桃花は、李美人の髪に隠された焼け釘や、薬草であぶり出した手足の生前の拘束痕を発見する。さらに、病児の打撲痕が樒柳の皮によって偽装されていたことも見抜いた。
  • 第2巻における看破。犯人は悲恋の無理心中に見せかけることで、外部の目を欺こうとした。桃花は米酢を用いた現場検証によって、大海の位置には出血がなく、馮充依の位置には大量の出血があることを特定した。さらに、梁に残された縄の擦れ跡から、遺体の役割が入れ替えられていた事実を論理的に証明した。

事件の背後に潜む巨大な政治的陰謀への連鎖

第1巻と第2巻の連続殺人事件は、解決後に生じる余波によって、物語のスケールを大きく広げる役割を果たしている。

  • 第1巻の連続殺人は、不貞の隠蔽という個人的な動機から生じた、閉じた悲劇だった。
  • 首謀者である司馬両春が収監されていた掖廷獄が2巻冒頭で不審な大火に見舞われ、関係者が焼死したことで、事件は後宮の覇権をめぐる巨大な政治的陰謀へと変貌した。
  • 金剛に放火を指示し、後宮の司法中枢を焼き払わせた黒幕の存在が浮かび上がる。桃花と延明の前には、特権階級の勢力争いと、暗躍する謎の勢力という大きな影が立ちはだかることになった。

まとめ

『後宮の検屍女官』における連続殺人事件は、単なる謎解きにとどまらない。死者の声に寄り添う桃花の検屍術は、生者の保身や狂気によって作り上げられた虚構を、一枚ずつ剥ぎ取っていく鮮やかな救済のドラマでもある。個人の愛憎から始まった事件は、巻を追うごとに後宮全体を揺るがす権力闘争と結びつき、より深遠な物語構造を形づくっている。

検屍による真相究明

『後宮の検屍女官』シリーズで姫桃花が行う検屍による真相究明は、単に死因を特定する法医学的な調査にとどまらない。物言わぬ遺体に残された痕跡を正確に読み解くことで、生きている無実の人々を冤罪から救い、人間の尊厳を取り戻すための営みとして描かれている。本稿では、作品を貫く思想、桃花が劇中で用いる具体的な検屍技術、そしてそれが登場人物たちに及ぼす影響を解説する。

真相究明を支える「無冤術」の思想

桃花が祖父から受け継いだ検屍の心得は、「無冤術」と呼ばれる。

  • 当時、遺体に触れることは穢れを伴う行為とされ、広く忌避されていた。
  • それでも桃花の祖父は、買収や圧力に屈することなく、死者の声に耳を傾け続けた。
  • 検屍術とは、冤罪をなくし、死者の声を聞いて罪なき囚人を救うための術である――。この祖父の信念は、桃花自身の行動原理となっている。
  • 先入観を排し、ひたすら遺体と向き合う姿勢こそが、桃花の揺るぎない強さの源である。

怪異を退ける科学的・論理的な視点

真相究明の第一歩は、後宮の人々を恐怖に陥れていた幽鬼の呪いや怪談を、冷静な科学的事実によって解き明かすことだった。

  • 棺内分娩による死産怪談の否定:妊娠中に亡くなった妃嬪・李美人の棺から赤子が見つかった事件について、桃花は、死後に体内へ充満した腐敗ガスの圧力が子宮を圧迫し、胎児を体外へ押し出した現象だと論理的に説明した。これにより、呪いの流言を完全に打ち消した。
  • 碧林の破傷風死の看破:後弓反張の姿勢と引きつった笑みを浮かべて亡くなった宮女・碧林を検屍し、右手小指の小さな傷から感染した破傷風が死因だと突き止めた。さらに、その傷が人の噛み傷であることを見抜き、門番・小少との密通という人為的な真相を明らかにした。

巧妙な偽装を暴き、冤罪を晴らす技術

犯人たちが自害、病死、あるいは無理心中に見せかけようとした巧妙な偽装を、桃花は鋭い観察眼と法医学的知識によって、一つずつ暴いていく。

  • 病児の事件における偽の打撲痕と毒の特定:遺体の打撲痕を指で押し、皮下出血による凝固がないことから、生前の殴打傷ではないと見抜いた。それは南方で用いられる樺柳の皮を貼り付けて作られた偽装だった。さらに米団子を用いた動物実験により、銀の簪には反応しない劇毒・冶葛による服毒死であると証明し、甘甘の冤罪を晴らした。
  • 高麗麗の事件における「完璧な自害」の矛盾:自ら喉を突いたように偽装された死について、致命傷が硬いのど仏を完全に貫通し、首の骨にまで達しているという物理的な不自然さを指摘した。また、仰向けに倒れているにもかかわらず、血痕が首の周囲に集中しているという流血状況の矛盾も見抜いた。さらに、香炉の灰が不自然なほど平らにならされていたことから、女官の習慣を知らない男が現場を片付けた痕跡だと看破した。
  • 金剛の事件における掻き傷の再定義:一見すると他殺とみられた首吊り遺体を再検屍した際、顔面のうっ血と爪先の土汚れに着目した。手製の縄が伸びて足先が地面に届いてしまったため即死できず、激しい窒息の苦痛のなかで自ら首の縄を掻きむしった生前反応であることを証明した。こうして、他殺の証拠とされた傷を自死の証明へと反転させた。
  • 玉堂における血痕の可視化と配役入れ替えの看破:焼失した現場の床に米酢を振りかけ、大海の遺体があった場所には出血がなく、馮充依がいた場所には大量の血痕があることを可視化した。梁に残された縄の痕跡とあわせて調べ、馮充依が刺殺され、大海が首を吊ったとする死後の配役入れ替え工作を暴いた。
  • 小海の他殺証明:入水自殺とされた遺体の口腔から、深い池の中央には存在し得ない大きさの礫や陸上の雑草を発見した。背中の膝による圧迫痕と後頭部の擦過傷から、浅瀬で顔を水底へ押し付けられて溺死させられた後、深みへ運ばれた他殺だと突き止めた。

止まっていた生者の時間を動かす真相究明
桃花による妥協のない真相究明は、死者だけでなく、生きている孫延明の心をも決定的に救うことになる。

  • 延明はかつて無実の罪を着せられ、死罪を免れる代わりに腐刑を受け、宦官へと落とされた凄惨な冤罪の当事者だった。
  • 罪が晴れた後も、失われた肉体と尊厳は戻らない。彼は「妖狐の微笑み」という仮面をかぶり、心を閉ざして生きていた。
  • 穢れを恐れず遺体に触れ、科学的な論理で無実の者を救う桃花の姿は、延明にとって、自身の消えない傷を肯定してくれる唯一の救いとなった。
  • 「男児膝下有黄金」という言葉とともに延明を一人の人間として尊厳をもって扱った桃花の存在により、彼は検屍制度を正しく整え、冤罪で処罰される者をなくすという明確な人生の目的を見いだす。そして再び政治の表舞台へ踏み出す覚悟を決めた。
    『後宮の検屍女官』における検屍による真相究明とは、科学の力で虚構を剥ぎ取り、物言わぬ死者には客観的な真実を、理不尽に虐げられた生者には明日を生きるための尊厳を取り戻すための救済の営みである。死者が残した微細な痕跡を忠実に読み解く無冤術の精神は、閉ざされた後宮の闇を照らし、関わる者たちの運命を大きく動かす原動力となっている。

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まとめ
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登場キャラクター

掖廷署(えきていしょ)

孫延明(孫利伯)

理性的で公平な司法を重んじる性格である。妖狐に例えられる美貌を持ち、常に柔らかな微笑みを浮かべる。過去の冤罪により腐刑を受けた深い心の傷を抱えている。桃花の検屍能力に全幅の信頼を置いている。
・所属組織、地位や役職
大夫(東宮所属)から掖廷令に就任した。
・物語内での具体的な行動や成果
掖廷獄の火災後に事後処理を指揮した。桃花に依頼して金剛の縊死と如来の無実を証明した。玉堂の遺体検証を行い、馮充依と大海の死に偽装があったことを突き止めた。小海殺害事件において懿炎を真犯人として特定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇帝の詔により掖廷令に任命された。太子と連携して後宮の権力闘争に対処している。

甘甘

誠実で部下思いな元長官である。孫延明の過去の恩人である。
・所属組織、地位や役職
前掖廷令から織室令へ異動した。
・物語内での具体的な行動や成果
掖廷獄の失火責任を問われて一時若盧獄に収監された。金剛の事件に不審感を抱き「未完」の朱を入れて延明に調査を託した。織室令に着任後、桃花に後宮への絹糸運搬を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
延明が贖罪金を納めたことにより釈放された。

華允

警戒心が強いが聡明で向上心を持つ少年である。文字の読み書きができる。
・所属組織、地位や役職
掖廷令の筆記係兼雑用係。
・物語内での具体的な行動や成果
焼けた枝で孔子の書の一文を書き延明に仕官を直訴した。金剛の現場で隠し金の壺を掘り出した。検屍現場で桃花や延明の指示に従い記録や道具の準備を担当した。亮から養父・燕年の遺骨を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
師父から生爪を剥がされる虐待を受け捨てられた過去を持つ。延明に拾われて身辺に置かれた。

如来

強面で大柄な体格をしている。金銭への執着が強い。
・所属組織、地位や役職
後宮八区の宦官。高利貸しの元締め。
・物語内での具体的な行動や成果
金剛に多額の金を貸し付けていた。金剛殺害の容疑者として捕らえられ若盧獄で拷問を受けた。金剛が吊られた木の下に財産を埋めていたことを延明に明かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
桃花の再検屍によって冤罪が晴れ釈放された。延明の命により利息を返還して回った。

金剛

生来の賭博癖により多額の借金を抱えていた。
・所属組織、地位や役職
後宮八区の宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
手製の縄を用いて八区の樟樹で自ら首を吊って死亡した。苦痛から首元を爪で激しく掻きむしった。火災の夜に掖廷方面から油の臭いをさせて戻る姿を目撃されていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宮中での自害により罪人扱いとなり遺体は放置された。何者かによって遺体が持ち去られた。

大海

無口で美しい声を持つ落ち着いた雰囲気の宦官である。小海の契兄にあたる。
・所属組織、地位や役職
後宮の輿の管理係。
・物語内での具体的な行動や成果
馮充依に迫られて玉堂で密会を重ねていた。小海が捕らわれたと騙されて玉堂に誘い出された。懿炎によって背後から縄で絞殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
閩の出身であり幼少期に特異な浄身を受けている。死後に小海によって胸に刃物を刺され偽装された。

掖廷官たち

延明の指示に従い後宮の管理と火災の収束に努める官吏たちである。
・所属組織、地位や役職
掖廷署の官吏たち。
・物語内での具体的な行動や成果
火災現場の可燃物撤去や延焼防止の作業に従事した。金剛の遺体回収や関係者の聞き込み調査を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

獄吏たち

若盧獄の警備と囚人の管理を担当している。
・所属組織、地位や役職
若盧獄の獄吏。
・物語内での具体的な行動や成果
収監された如来に拷問を加えた。刑期を終えた小海を連れ出して延明に引き渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

奴僕たち

力仕事や雑務を担当する下級の労働者である。
・所属組織、地位や役職
掖廷署などの奴僕。
・物語内での具体的な行動や成果
火災現場で仮埋めされていた棺の掘り起こしを行った。検屍用の水や手洗い用の盥を準備した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

織室(しょくしつ)

姫桃花

普段は眠気と戦う無欲な女官である。遺体を前にすると鋭い洞察力を発揮する。祖父から受け継いだ検屍術を冤罪をなくす無冤術として重んじる。
・所属組織、地位や役職
織室の女官。検屍官「桃李」として活動する。
・物語内での具体的な行動や成果
金剛の遺体を検屍し足が着く高さでの縊死による苦痛の掻き傷だと解明した。玉堂で米酢を用いて血液反応を調べ遺体の役割が入れ替えられていたことを見抜いた。小海の遺体から砂礫や膝の圧迫痕を発見して他殺と断定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
梅婕妤の侍女から織室の労働者へ降格された。延明から検屍の対価として金子の預かりを受けている。

才里

噂話と色恋沙汰が大好きな性格である。手先が器用で機織りの腕が立つ。
・所属組織、地位や役職
織室の女官。
・物語内での具体的な行動や成果
桃花の身だしなみや乱れた衣服を整えた。後宮内の火災や人間関係の噂話を桃花に伝えた。織室内に流れていた誤った心中情報の出所を調べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
梅婕妤の侍女から織室の労働者へ降格された。

紅子

三白眼が特徴の気風が良い女官である。現実的で面倒見が良い。
・所属組織、地位や役職
織室の女官。
・物語内での具体的な行動や成果
染色用の糸束を房へ運び込んだ。小海の出自や義兄弟の契りについての情報を才里らに教えた。延明の配下宦官を桃花の恋相手だと誤認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元は李美人に仕えていた女官である。

小海

気弱で優しい性格の宦官である。大海の契弟にあたる。
・所属組織、地位や役職
織室丞から下水処理係へ降格された。
・物語内での具体的な行動や成果
玉堂で首を吊った大海と刺殺された馮充依を発見した。大海の来世と妹を守るため二人の死因と立場を逆転させて偽装した。懿炎に誘い出されて池の浅瀬で溺殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死体偽装の罪により杖刑を受けた。

目つきが鋭く強面だが情に脆い面を持つ。身だしなみに厳しい。
・所属組織、地位や役職
織室の下級宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
荷車を牽いて桃花とともに後宮各所へ糸を運搬した。かつて馮充依と関係を持った後に捨てられた。大海のために玉堂付近へ酒徳利を供えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
亡き友・燕年の遺骨を貝の帯飾りに納めて所持していた。

懿炎

物静かで陰のある雰囲気を持つ宦官である。独占欲と激しい嫉妬心を内に秘めている。
・所属組織、地位や役職
織室の下級宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
馮充依を玉堂へ誘い出して刺殺した。大海を背後から絞殺して梁から吊り上げた。小海を池の浅瀬で水底に押しつけて溺死させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
馮充依、大海、小海の三人を殺害した罪で死罪が確定した。

中宮(ちゅうぐう)・皇后派

許皇后

感情を表に出さない威厳ある正妃である。
・所属組織、地位や役職
大光帝国の皇后。
・物語内での具体的な行動や成果
中宮の火災に伴い一時的に住まいを燕寝へ移した。夏至の儀式で火鑽り臼を用いて新しい火を起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の統括者としての地位を保っている。

点青

青い瞳を持つ異民族出身の宦官である。軽妙な口調で延明と情報を共有する。
・所属組織、地位や役職
皇后付きの宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮内の妃嬪たちの動向情報を延明に届けた。田寧寧が皇帝の寵幸を受けた事実を延明に伝えた。懿炎が金剛を目撃したという新たな供述を延明に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇后から深い信任を得ている。

田寧寧

真面目な働きぶりを評価されていた若い女官である。
・所属組織、地位や役職
許皇后の侍女から皇帝の側室へ昇格した。
・物語内での具体的な行動や成果
燕寝に滞在中の皇帝から見初められた。皇帝の寵幸を受け階級を上げられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十九歳で皇帝の寵愛を得た。

東宮(とうぐう)

劉贇

書物を好み臣下を重んじる青年である。延明を友として信頼している。
・所属組織、地位や役職
大光帝国の皇太子(太子)。
・物語内での具体的な行動や成果
河西の名士らを招いて東宮で酒宴を催した。延明に掖廷令への就任辞令を伝えた。河西の名士からの要請を受けて延明に馮充依の再調査を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
延明を将来の朝廷の側近として登用する構想を持っている。

後宮(こうきゅう)の妃嬪・関係者

梅婕妤

皇帝の寵愛を独占してきた最高位の妃嬪である。極度の怖がりで気性が激しい。
・所属組織、地位や役職
後宮の最高位妃嬪(婕妤)。
・物語内での具体的な行動や成果
新たな側室の入内や中宮の動向に苛立ちを募らせた。中宮修繕のための機織り作業への参加を拒否した。夜中に物音を立てた侍女らを処罰して獄へ送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実家の三公府を通じて朝廷に強い影響力を持つ。

馮充依

かつて皇帝の寵愛を受けた元上級妃である。孤独感から若い宦官を誘惑する悪癖を持っていた。
・所属組織、地位や役職
後宮の妃嬪(充依)。
・物語内での具体的な行動や成果
玉堂の鍵を所持して宦官たちと密会を重ねていた。大海に本気で執着し側付きにしようと賄賂を動かした。懿炎によって玉堂で胸を刺されて殺害された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去に宦官との密通により婕妤から充依へ降格された。死後に小海によって梁から吊るされ縊死に偽装された。

呂美人

かつて後宮で暮らしていた若い妃嬪である。
・所属組織、地位や役職
後宮の元妃嬪(美人)。
・物語内での具体的な行動や成果
物語本編では過去の事件の連座者として言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宮刑を受けた後に掖廷獄の火災に巻き込まれて焼死した。

馮充依の奶婆

長年馮充依の世話をしてきた老侍女である。
・所属組織、地位や役職
馮充依の侍女長兼奶婆。
・物語内での具体的な行動や成果
馮充依の死後に織室の地下仮設牢へ収監された。染色液作りの作業中に熱中症で倒れ桃花に救護された。馮充依の宦官遊びの実態と大海への執着を桃花に語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
馮充依の不祥事に伴い罪人として拘束された。

馮充依の女官たち

馮充依の身の回りの世話を担当していた侍女たちである。
・所属組織、地位や役職
馮充依付きの女官たち。
・物語内での具体的な行動や成果
馮充依の失踪を火災の混乱に乗じて隠蔽しようとした。馮充依の死後に連座で捕らえられ織室で過酷な染色作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

その他・外部関係者

皇帝

大光帝国の最高統治者である。
・所属組織、地位や役職
大光帝国の皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
孫延明を掖廷令に任命する詔を出した。側室の新規入内を取りやめ寵愛を分散させる方針を採った。許皇后の侍女・田寧寧に手を付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏至の大祀を執り行った。

司馬両春

かつて後宮内で罪を犯した元関係者である。
・所属組織、地位や役職
掖廷獄の囚人。
・物語内での具体的な行動や成果
獄内で赤子の泣き声に怯えていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
掖廷獄の火災によって獄舎内で焼死した。

河西の名士

辺境の河西出身で朝廷に重きをなす人物である。宦官に対して強い差別意識を持つ。
・所属組織、地位や役職
河西の有力儒者・名士。
・物語内での具体的な行動や成果
東宮の酒宴に参加した。教え子の妻である公主の訴えを受け、太子を通じて延明に馮充依の再調査を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

燕年

書家として優れた才能を持っていた宦官である。華允を実子のように慈しんで育てた。
・所属組織、地位や役職
馮充依の元所属宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
物語本編では過去の人物として語られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
八年前に馮充依との密通が発覚し腰斬刑により処刑された。

刑辟官たち

宮中の司法執行と罪人の遺体管理を担当する役人たちである。
・所属組織、地位や役職
刑辟をつかさどる官吏たち。
・物語内での具体的な行動や成果
玉堂から回収された馮充依と大海の焼死体を引き取った。市に遺体を晒すための手続きを進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。

囚人たち

掖廷獄に収監されていた罪人たちである。
・所属組織、地位や役職
掖廷獄の囚徒たち。
・物語内での具体的な行動や成果
大火災の際に獄舎内に取り残された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
火災により多数の死者を出した。

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検屍女官 1レビュー
まとめ
検屍女官 3レビュー

展開まとめ

第一章 掻き傷

掖廷令となった延明

孫延明は太子に仕える大夫となっていたが、腐刑への偏見と梅氏の妨害で外朝での任官が進まず、皇帝から後宮を管理する掖廷令に任じられた。着任直前には掖廷獄で大火が起こり、司馬両春ら多数が死亡したため、延明は火災原因の調査と混乱した掖廷の立て直しに取りかかった。

華允との出会い

焼けた掖廷で延明は、師父から虐待され、生爪を剝がされた十六歳の小宦官・華允と出会った。読み書きができ、働くことを望んだ華允を放置できず、延明は筆記係として側に置いた。

金剛の首吊り

後宮八区では宦官の金剛が首を吊って死亡し、首の搔き傷から他殺が疑われた。高利貸しの如来が容疑者となったが、自らの財産を隠した木の真上に死体を吊るす不自然さから、延明は再調査を始めた。

桃花は再検屍によって、縄が伸びて金剛のつま先が地面についたため死ぬまで長く苦しみ、自ら縄を搔きむしったと見抜いた。金剛は自害しており、如来は釈放された。

孫利伯への言葉

事件後、延明は桃花と再会した。外朝へ戻れず苦しむ延明に、桃花は深く傷ついても生きている以上、孫利伯は死んでいないと語り、その生き方を尊敬していると伝えた。延明も今後、桃花の検屍の知識を頼ることとなった。

第二章 玉堂

玉堂の二遺体

妃嬪の馮充依と宦官の大海が失踪し、焼けた玉堂から二人の遺体が発見された。馮充依は首吊り、大海は胸を刺された状態だったため、馮充依が大海を殺して自害した無理心中と考えられた。

しかし大海の刺創には出血がなく、刃物は死後に刺されていた。さらに桃花が現場を調べると、馮充依の位置に血痕、大海の位置に縄を掛けた痕が残っており、本来は馮充依が刺され、大海が吊られていたと判明した。

小海の死体偽装

大海の契弟・小海は、火災の夜に首を吊った大海と刺された馮充依を発見していた。大海が馮充依を殺したと思い込み、兄の妹への連座を防ぎ、大海の来世を守るため、二人の死に方を逆転させていた。愛する大海を守るための行為だったが、小海は死体を偽装した罪で杖刑を受けた。

延明と桃花

外朝へ進めず内廷へ戻ったことに安堵した自分を責める延明に、桃花は他人と不幸を比べて自分の痛みを否定する必要はないと伝えた。延明は桃花の前では少しずつ本心を見せるようになった。

第三章 愛のため

小海の死

杖刑を終えた小海は、大海の遺体を偽装したことを悔み、翌日、遺書を残して池へ入水自殺したとされた。しかし延明は大海の首吊りに関する小海の証言から、そもそも大海の縊死も偽装だった可能性に気づいた。

桃花が小海を再検屍すると、口内の礫や雑草、背中の圧迫痕、後頭部の爪痕から、浅瀬で押さえ込まれて溺死させられた後、池の中央へ運ばれた他殺だと判明した。

懿炎への疑い

小海が殺された夜に外出していた華允も疑われたが、生爪を剝がされた傷が残る彼には犯行が困難だった。一方、織室の懿炎には新しい搔き傷があり、さらに馮充依と大海の関係について、本来知り得ないはずの情報を含む噂が織室で流れていた。

桃花たちは傷や噂の出所、犯行に必要な力などから懿炎を追及し、彼は馮充依、大海、小海の三人を殺したことを認めた。

懿炎の三人殺し

懿炎もかつて馮充依に愛され、その後捨てられた宦官だった。自分への愛が偽物でも、誰に対しても同じなら耐えられたが、大海だけが馮充依の本物の愛を得たことを許せなかった。

懿炎は馮充依を玉堂へ誘い出して刺殺し、小海が捕らわれたと騙して大海を呼び出すと、絞殺して吊り上げ、無理心中に偽装した。さらに真相に近づく可能性のあった小海を池で溺死させ、遺書と酒徳利を使って自殺に見せかけた。懿炎は、自分の幸福だった記憶を守るため、すべては愛のためだったと語った。

白梅と月

事件後、桃花と延明は小海の亡くなった池を訪れ、亮と華允が死者を弔う姿を見た。帰り道、桃花は延明を朔月にたとえ、見えなくても孫利伯は消えておらず、再び姿を現そうとしていると語った。延明は桃花を白梅に重ね、二人は夜光杯で酒を酌み交わした。

金剛と大火

その後、懿炎が火災の夜に掖廷方面から戻る油臭い金剛を目撃していたことが判明した。自害したはずの金剛が掖廷獄の火災直前に現場付近にいたため、延明は金剛が放火に関わった可能性と、その背後に別の人物がいる可能性を疑い始めた。

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後宮の検屍女官 シリーズ

その他フィクション

e9ca32232aa7c4eb96b8bd1ff309e79e 小説「とある魔術の禁書目録(2)」感想・ネタバレ
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