物語の概要
■ 作品概要
前世で看護師の記憶を持つ下っ端宮女・雨妹(アメイ)は、後宮(百花宮)での掃除生活に馴染みつつ、独自の視点で「後宮ウォッチング」を続けていた。
物語は、雨妹が庭の茂みで「呪い憑き」として忌避され、極度に痩せ細った友仁(ユジン)皇子と遭遇したことで大きく動き出す。
雨妹は前世の知識を駆使し、皇子が食事のたびに苦悶する原因を、呪いではなく特定の食材による「食物アレルギー」であると推測する。
太子や医官と協力して虐待の現場を制圧し、医学的根拠をもって皇子を救出した後、物語は急展開を見せる。雨妹は「芋虫状態」で何者かに誘拐され、隔離された莉(リ)公主の元へ連行される。
未知の病と恐れられる「水痘」の正体を見抜き、自らは幼少期に感染済みで免疫がある事実を盾に、公主の手当てを開始するまでの過程を記述する。
■ 主要キャラクター
- 雨妹(アメイ): 本作の主人公。下っ端掃除係の宮女。前世は日本の看護師。皇族特有の青い瞳を持つ事実を隠すため、常に頭巾と布マスクを着用している。
- 立彬(リツビン)/ 立勇(リツユウ): 太子付きの宦官として振る舞うが、正体は太子の近衛兵。雨妹の行動を監視・護衛し、実務面での強力なサポートを担う。
- 明賢(メイケン): 崔国の太子。雨妹の利発さと図太さを評価しており、彼女が後宮の闇に踏み込む際に、皇帝への進言などを通じて便宜を図る。
- 友仁(ユジン)皇子: 胡昭儀の息子。特定の食材を摂取すると呼吸困難等の症状を起こすため、皇太后から「呪い憑き」と断じられ、周囲から虐げられていた。
- 莉(リ)公主: 謎の赤い出来物(水痘)を発症し、隔離されていた幼い公主。周囲の大人から忌避され、ネグレクト状態に置かれていた。
- 文若(ブンジャク): 胡昭儀付きの女官。本来は皇帝の妃嬪候補(代わりの駒)であったが、選ばれなかった不満から皇子へ「呪い払い」と称する激しい折檻を行い、アレルギーを承知の上で卵を強要していた。
- 陳(チン): 医局の医官。雨妹と交流を持ち、彼女の知見を信頼している。皮膚テストによる「過敏症」の証明に協力する。
書籍情報
百花宮のお掃除係 2 転生した転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。
著者:黒辺あゆみ 氏
イラスト:しのとうこ 氏
出版社:KADOKAWA(カドカワBOOKS)
発売日:2020年8月7日
ISBN:9784040737560
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あらすじ・内容
子どもの病いは呪いじゃありません! 新米宮女、後宮でまたまた大暴れ!
中華風の異世界に転生し、後宮でのお掃除生活を満喫していた雨妹は、庭でやせ細った子どもと出会う。皇帝の息子にもかかわらず酷い扱いを受ける子に違和感を持ち、その原因を探ることにしたが……
百花宮のお掃除係 2 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。
感想
呪い憑きとされた幼い皇子たち。雨妹が救っていたのは自分の弟と妹だった
今巻で特に印象に残ったのは、後宮の大人たちの無知や都合によって、幼い皇子や公主が「呪い憑き」とされてしまうところである。
食事をすると苦しむ。
身体に発疹が出る。
ただそれだけで原因を調べるより先に「呪い」と決めつけられてしまう。
現代の知識を持つ雨妹からすると、どちらも聞いた瞬間に「病気や体質では?」と考えるような話なのだが、この世界ではそうはいかない。
しかも雨妹が助ける友仁皇子と莉公主は、よく考えれば皇帝の娘である雨妹にとって弟と妹にあたる。
本人は公主として名乗るつもりなど全くないのに、知らないうちに弟妹の世話をしている。
この関係に気付くと、かなり面白い巻だった。
■食事のたびに苦しむ友仁皇子。それを「呪い」で済ませるのか
雨妹が最初に出会うのが、まだ幼い友仁皇子である。
皇子なのだから食事にも生活にも困らないはず。
ところが異様なほど痩せている。
さらに女官を怖がり、茂みの中を通って逃げようとしている。
明らかに何かがおかしい。
事情を聞いてみると、友仁皇子は食事をするたびに激しく咳き込み、呼吸まで苦しくなることがあるという。
それが皇帝や皇太后のいる宴席でも起きた。
毒かと思って調べても、他の人間には何も起きない。
すると皇太后は、
「呪い憑きだ」
と判断してしまう。
いや、そこで呪いになるのか。
分からないなら、もっと調べようとはならないのか。
この世界では病気に関する知識が少ないから仕方ない部分もあるのだろう。
それでも、苦しんでいるのは幼い子供である。
原因不明だから呪い。
呪いだから遠ざける。
これではあまりに可哀想だと感じた。
■雨妹は「何を食べた時に起きるのか」を考える
雨妹の面白いところは、ここで最初から答えを決めつけないことである。
友仁皇子が何を食べられるのか。
何を避けているのか。
宴席にはどんな料理が並んでいたのか。
そうした情報を一つずつ集める。
饅頭は食べられる。
しかし卵を使った糕は食べたがらない。
そこで雨妹が疑ったのが食物アレルギー、作中でいう食物過敏症だった。
本人だけに症状が出る。
毒見役には何も起きない。
食事の後に咳や呼吸困難が起こる。
そして特定の食べ物を本能的に避けている。
確かに筋が通っている。
前巻からそうだったが、雨妹は何かを魔法のように治療しているわけではない。
患者を観察して、
「なぜこうなっているのか」
を考えている。
元看護師という設定が、単なる知識チートではなく観察の仕方にも表れているのが面白い。
■母親は良かれと思って卵を与えていた。その結果、息子を苦しめていた
そして原因として疑われたのが卵だった。
友仁皇子の母である胡昭儀に悪意があったわけではない。
むしろ逆である。
息子が痩せている。
食が細い。
それなら栄養のあるものを食べさせなければ。
そう考えて、卵を使った食事を積極的に与えていた。
ところが、それこそが友仁皇子を苦しめる原因だった。
これは辛い。
良かれと思ってやっていたことが、実は子供を苦しめていた。
原因が分かった時、胡昭儀が自分の無知を悔やみ、友仁皇子へ謝るところは印象に残った。
知らなかった以上、責めるだけではどうにもならない。
重要なのは原因を知った後にどうするかである。
胡昭儀はそこで息子を拒絶するのではなく、今後は食べられるものを用意して健康にすると決める。
親子がようやく「呪い」という言葉から解放されたように感じた。
■皇帝の目の前でアレルギーを証明。これは呪いじゃない
雨妹はさらに、卵と牛乳を使って皮膚への反応を確認する。
牛乳では変化しない。
しかし卵を付けた場所は明らかに赤く腫れる。
皇帝自身もそれを見る。
これで、
「本人だけがおかしくなる怪しい呪い」
ではなく、
「卵に身体が反応してしまう体質」
だと目で確認できるようになった。
皇太后が呪いと言ったとしても、目の前で身体が反応しているのだから話が早い。
皇帝自身も呪いではなかったと認め、友仁皇子へ謝罪する。
ここはかなりスッキリした。
権力のある人が「呪いだ」と言ったから呪いになるのではない。
身体で何が起きているのかを見る。
雨妹が持ち込んだ考え方によって、それまでの常識が少しずつ崩れていくのが面白かった。
■母親は知らなかった。でも女官の文若は知っていた
しかし、ここで終わらない。
友仁皇子は自分が卵を食べると苦しくなることを、経験的には分かっていた。
だから卵の入った食べ物を避けようとする。
それなのに、なぜ宴席で何度も卵を食べて発作を起こしたのか。
雨妹はそこに引っかかる。
そして分かってくるのが、女官の文若の存在である。
彼女は友仁皇子が卵を食べると苦しむことを知っていた。
それでも食べさせていた。
しかも発作を起こした皇子に対して、今度は「呪い払い」と称して木切れで折檻する。
酷すぎる。
知らずに卵を与えてしまった胡昭儀とは、ここが決定的に違う。
知らなかった母親は、自分の行動を悔いる。
知っていた女官は、その症状を利用していた。
雨妹が折檻現場を見た瞬間に、
「幼児虐待犯!」
と突っ込んで飛び蹴りをするのも無理はない。
掃除係なんだけどな、この人。
後宮で一番行動力があるのではないかと思ってしまう。
■突然拉致されたと思ったら「この子の世話をしろ」。何なんだ、この後宮
友仁皇子の一件が終わったと思ったら、今度は雨妹自身が突然拉致される。
袋に詰められて連れて行かれ、
「この子の世話をしろ」
と言われる。
いや、掃除係を何だと思っているんだ。
そして連れて行かれた先にいたのが莉公主である。
身体には大量の発疹。
周囲の人間は気味悪がって近寄らない。
食事もろくに世話されず、幼い公主がほとんど放置されている。
完全にネグレクト状態である。
ところが雨妹は症状を見るなり、水痘、つまり水疱瘡だと気付く。
さらに雨妹自身は子供の頃に罹患しているため、そこまで慌てない。
この温度差が凄い。
周囲は、
「何か恐ろしい病だ」
「呪いではないか」
と怯えている。
雨妹からすれば、
「水疱瘡じゃん」
である。
■太子も水疱瘡を知っている。知らない人間ばかりではなかった
ここで興味深かったのが、雨妹だけが水疱瘡を知っているわけではないことだった。
太子・明賢たちも水痘という病気そのものは知っている。
つまり、この世界に全く知識が存在しないわけではない。
なのに莉公主の周囲にいた人間たちは、それすら知らない。
病人の状態をきちんと見る。
知っている人間に相談する。
医官を呼ぶ。
それだけでも状況はかなり違ったはずである。
しかし実際には、
「気味が悪い」
「自分にうつったら嫌だ」
「見た目が悪い」
という理由で幼い公主を放置する。
医学の未発達だけが問題ではないのだと感じた。
分からないことを調べようとしない。
弱い立場の相手だから放置しても構わないと思ってしまう。
そちらの方が深刻なのである。
■水疱瘡だけではない。アトピーのような皮膚炎まで隠れていた
雨妹が莉公主を看病していくと、水痘以外の問題も見つかる。
水疱瘡とは違う皮膚の赤みや荒れが残っている。
現代でいうアトピー性皮膚炎に近い皮炎である。
これまで莉公主は、そうした肌の状態まで「見苦しいもの」のように扱われていた。
清潔にする。
肌を保湿する。
痒みが強ければ冷やす。
食事をきちんと取らせる。
雨妹がやることは、またしても特別派手ではない。
それでも、それまでまともに世話すらされていなかった莉公主にとっては大きな違いである。
特に印象に残ったのは、雨妹が病気だけを見るのではなく、莉公主自身に普通に接しているところだった。
周囲から気味悪がられ続けていた子供にとって、
「大丈夫、治るよ」
と普通に触れてくれる人がいる。
それだけでも相当救われただろうと思う。
■友仁皇子も莉公主も……雨妹の弟と妹なんだよな
ここで改めて人物関係を考えると面白い。
雨妹は皇帝と張美人の娘である可能性が極めて高い。
太子・明賢は雨妹の異母兄。
そして友仁皇子は異母弟。
莉公主は異母妹。
つまり2巻の雨妹、
知らないうちに弟の食物アレルギーを見つけて助け、
今度は妹の水疱瘡と皮膚炎を看病している。
姉ちゃん、めちゃくちゃ働いてるじゃん。
しかも本人は公主として家族の輪に入っているつもりがない。
あくまで、
「困っている子供がいるから助ける」
という感覚で動いている。
だから余計に良いのだと思う。
相手が皇子や公主だから助けるのではない。
雨妹からすれば、病気で苦しんでいる子供だから助ける。
しかし結果的には、自分の弟妹を救っている。
血縁を強調せずに家族を助けている構図が面白かった。
■皇帝も駄目な父親なのかと思ったら、最後に少し印象が変わった
そして今巻でかなり印象が変わったのが皇帝である。
友仁皇子がここまで追い詰められるまで何をしていたんだ。
莉公主が放置されていることにも気付かなかったのか。
そう考えると、父親としてかなり問題がある。
子供が多い皇帝という立場を考えても、それで済ませていいのかとは思う。
ただ、最後に雨妹の出生について触れる場面がある。
雨妹は自分の名前を、
「雨の日に生まれた女の子だから雨妹」
くらいの適当な名前だと思っていた。
ところが太子が、わざと皇帝へその話を振る。
皇帝は「適当とは、そんなことは」と思わず反応する。
この時点で、雨妹という名前が本当に父親である皇帝によって考えられたものだということが、かなりはっきりしてくる。
雨妹にとって重要だったのは、皇族の身分を手に入れることではない。
自分は望まれて生まれた子供だったのか。
母だけではなく、父も自分を思ってくれていたのか。
そこだったのだと思う。
これまで雨妹は、
「父親なんて別にどうでもいい」
くらいの距離感でいた。
公主になりたいとも思わない。
むしろ掃除係として後宮を見て回って、おやつを食べて暮らしたい。
それでも、自分の名前が適当に付けられたものではなかったと分かった時には、やはり心が動く。
自分はちゃんと愛されていた。
そのことを、本人へ直接名乗ることなく知る。
この距離感がとても良かった。
■病気を治す話というより「子供をちゃんと見ろ」という巻だった
2巻を読んで一番感じたのは、医学知識の凄さ以上に、
「子供をちゃんと見てあげてくれ」
ということだった。
友仁皇子は卵を嫌がっていた。
食べれば苦しんでいた。
痩せていた。
女官を怖がっていた。
莉公主も身体に発疹が出ていた。
まともな食事を与えられていなかった。
一人で放置されていた。
どちらも、きちんと見れば異常なのは分かる。
ところが周囲の大人は、
呪い。
体裁。
皇太后の言葉。
自分の保身。
そんなものを優先してしまう。
雨妹だけが特別なのではなく、本来なら誰か一人くらい、
「この子、大丈夫なの?」
と思うべきだったのだろう。
雨妹は前世の医療知識を使って原因を突き止める。
しかし、その前にあるのは単純な疑問である。
「どうしてこの子は苦しんでいるんだろう?」
そこから考え始める。
この姿勢が、今巻では特に印象に残った。
■雨妹は公主にならない。それでも家族との距離は少しずつ縮まっている
友仁皇子を救う。
莉公主を看病する。
太子は雨妹を守ろうとする。
皇帝は雨妹の存在を気にし始める。
こうして見ると、雨妹本人が公主を名乗らないまま、皇族との関係だけはどんどん深くなっている。
本人だけは、
「私は掃除係でいいです」
なのだが。
むしろそこがこの作品らしい。
権力が欲しいわけではない。
皇族に戻りたいわけでもない。
面倒な仕事もしたくない。
お掃除をして、後宮を見物して、美味しいおやつを食べたい。
それなのに病人を見つけると放っておけない。
その結果、後宮の問題へどんどん深く入り込んでいく。
2巻では特に、雨妹が救った二人が自分の弟と妹だったという事実と、最後に父である皇帝の気持ちを少しだけ知る展開が印象的だった。
病気や虐待を扱うため重い場面も多かったが、最後には雨妹自身も、
「自分はちゃんと望まれていたのかもしれない」
と思える。
子供たちを救う話でありながら、同時に雨妹自身も少しだけ救われた巻だったように感じた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
春の行事である花の宴の準備が進む中、雨妹は自身の出自を隠しながら掃除係としての日常を送っていた。本稿では、幼い皇子を巡る呪いの真相究明から、前世の知見を活かしたアレルギーの立証、さらには新たな感染症への対応に至る一連の経緯を整理して解説する。
友仁皇子との遭遇と違和感
掃除の休憩中、雨妹は茂みから現れた幼い友仁皇子と出会う。皇族の証である青い瞳を持ちながら異常に痩せ細った外見と、付き添いの女官である文若による乱暴な連行を目撃し、雨妹は皇子の置かれた境遇に強い違和感を抱いた。
太子宮での情報収集と症状の把握
立彬の仲介で太子宮を訪れた雨妹は、明賢太子から以下の情報を得る。
- 宴席で特定の食事を口にするたびに皇子が激しくもがき苦しむ。
- その症状を皇太后が呪いと断定し、適切な医療措置が妨げられている。
食事傾向の分析と食物アレルギーの仮説
雨妹は皇子の食事傾向を詳細に分析し、以下の仮説を立てた。
- 皇子が小麦主体の饅頭を好む一方で、卵が使用される糕を明確に避けている事実を特定する。
- 前世の医学知識に基づき、呪いではなく卵や牛乳に対する食物過敏症(アレルギー)であると推測する。
折檻現場への突入と制圧
健康診断という名目を掲げ、雨妹たちは胡昭儀の宮へ乗り込む。煙が充満する不衛生な室内で、上半身裸の皇子を木切れで打ち据える文若による呪い払いと称した折檻の現場を発見した雨妹は、即座に飛び蹴りを放って文若を制圧した。
皮膚テストによる実証と事件の解決
太子の進言により皇帝が臨席する中、雨妹は科学的な検証を実施した。
- 卵と牛乳を水で希釈し、針を用いたスクラッチ・テスト(プリック・テスト)を敢行する。
- 卵に対する劇的な炎症反応が視覚的に確認され、アレルギー反応であることが証明される。
- 文若による意図的な原因物質の摂取強要が白日の下に晒され、文若は失脚して皇子は無事に保護された。
蜂蜜を用いた生活改善と経済支援
友人である鈴鈴の髪の傷みを解決するため、雨妹は蜂蜜を用いた洗髪剤や石鹸を考案する。この取り組みは単なる美容ケアにとどまらず、鈴鈴の貧しい故郷である養蜂の里を救うための商売へと発展し、経済的困窮に対する構造的な解決策となった。
誘拐と莉公主の水痘発症
平穏が戻った直後、雨妹は宦官によって袋詰めにされ誘拐される。連行先には不気味な呪いとして隔離・放置されていた莉公主の姿があった。雨妹はその症状が水痘であると見抜き、自身が過去に感染して免疫を持っていることを根拠に、周囲の恐怖を排して適切な看護ケアを開始した。
迷信や呪術の名のもとで隠蔽されていた虐待や病状に対し、雨妹は前世で培った客観的な医学知識と観察眼を用いて対抗した。皮膚テストによるアレルギーの可視化や水痘の正確な鑑別診断は、呪いの恐怖に支配されていた後宮に科学的合理性をもたらし、弱者の命と尊厳を守る大きな転換点となった。
主要な転換点
本作における主人公・雨妹は、前世の近代医学知識と看護経験を活かし、後宮で起きる数々の事件を解決へと導く。迷信や呪術として片付けられていた事象に対し、科学的アプローチによって真相を究明し、閉鎖的な宮廷社会の力関係を大きく塗り替えていく主な転換点について整理する。
庭園での友仁皇子との遭遇
- 以前の状況:目立たぬよう平穏に過ごすお掃除係の日常を送っていた。
- 出来事:茂みから現れた、痩せ細り怯えた友仁皇子と直接対峙した。
- 変化:オカルト的な呪いの噂が、具体的な児童虐待と病理の疑いへと変容した。
- 次への影響:立彬や太子を巻き込み、皇太后派閥への医学的介入へと発展した。
アレルギー特定と公開実験の決定
- 以前の状況:原因不明の呪いとして医療関係者も匙を投げていた。
- 出来事:饅頭(小麦)は食べ、糕(卵)は食べないという嗜好性の解離を発見した。
- 変化:漠然とした体調不良から、対処可能な食物過敏症へと特定した。
- 次への影響:針を用いたプリック・テストによる、皇帝の面前での実証に繋がった。
皇帝の臨席による虐待現場の現認
- 以前の状況:文若の暴力と皇太后の威光により、外部が介入不可能な閉鎖環境にあった。
- 出来事:雨妹の乱入と同時に、太子の要請を受けた皇帝が折檻の惨状を直接目撃した。
- 変化:現場の権威構造が文若(皇太后)から皇帝へと即座に逆転した。
- 次への影響:皇子の救出成功と、文若の失脚(殺人未遂容疑での連行)が確定した。
芋虫状態での誘拐と莉公主への接触
- 以前の状況:事件解決後の平穏な休息期間を過ごしていた。
- 出来事:不正な宦官により布袋に詰められ強引に連れ去られた。
- 変化:自由な掃除係から、感染症に苦しむ莉公主の隔離介護者へと立場が変容した。
- 次への影響:自らの免疫を根拠とした水痘パニックの沈静化と治療へ直結した。
雨妹の持つ的確な観察眼と近代医学の知識は、後宮の闇に葬られかけた弱者の命を救い、権力者たちの不当な支配を瓦解させる決定打となった。単なる治療にとどまらず、呪いの恐怖に怯える人々に合理的解決策を示した一連の行動は、百花宮における彼女の存在価値を確固たるものへと押し上げた。
主人公を中心とした人物関係の変化
後宮の掃除係として生きる雨妹は、卓越した医学的知見と現場での行動力を通じて、宮廷の重要人物たちとの関係性を大きく変化させた。当初の身分差や警戒心を越えて築かれた各人物との関係の変遷について以下に整理する。
雨妹と立彬の関係
- 当初の状況:太子の命による監視者と、その監視対象という関係であった。
- 変化後の関係:後宮の暗部や事件の真相を暴くため、実務的な連携を取り合いながら秘密を共有する協力体制へと進展した。
雨妹と友仁皇子の関係
- 当初の状況:最下層の掃除係宮女と、身分が遠く離れた皇族という接点のない関係であった。
- 変化後の関係:アレルギーによる体調不良の解明や虐待からの救出を経て、命の恩人として皇子が唯一心を許せる保護対象という関係へと変化した。
雨妹と皇帝の関係
- 当初の状況:宮中に無数に存在する下働きの一人に過ぎなかった。
- 変化後の関係:頭巾とマスクを身につけた異質な風体の記憶を通じ、卓越した専門知識を備えた医官の助手として個別に認知される存在へと変わった。
当初は孤立した立場にあった雨妹であるが、的確な医療判断と誠実な介入を重ねることで、周囲との強固な信頼関係を確立した。護衛役や皇族、さらには国家の最高権力者である皇帝との関係性の深化は、雨妹が今後後宮の困難に立ち向かう上での重要な基盤となっている。
主人公の認識と周囲の評価
雨妹の自己認識と周囲の評価における乖離
後宮の中で特異な存在感を放つ雨妹は、自らの立ち位置に対する認識と周囲から向けられる評価との間に大きな隔たりを抱えている。目立たぬ下働きを装いながらも専門知識を発揮し続ける彼女の自己認識、宮廷関係者からの視線、そしてその認識差が如実に表れた場面について整理する。
雨妹の自己認識
- あくまで外野のウォッチャーであり、一介の掃除係に過ぎないという認識を持ち続けている。
- 自らの皇族としての出自を隠し、平穏な身の安全を確保するための自衛策として、この下働きという立場を頑なに固守している。
周囲からの評価の変遷
- 一般宮女からの視線:当初の「呪いを振りまく変人」という警戒交じりの見方から、事件の現場や各所に神出鬼没に現れる「どこにでも現れる奇妙な宮女」へと変化した。
- 太子および立彬からの評価:「利発で図太い」「小さな嵐のような娘」と評され、行動が予測不能でありながらも極めて有能な協力者として重宝されている。
- 皇帝からの認識:「いつかの掃除係(マスクの娘)」という強い印象を残し、鋭い視点と確かな技術を備えた「医官の助手」として個別に見出されている。
認識の乖離が表れた場面
- 太子宮において高級なお茶と大好物の饅頭を平然と堪能しつつ、周囲を驚かせるほど淡々と命に関わる食物アレルギーの専門講釈を展開した場面に、その落差が象徴されている。
- 本人は気楽な茶飲み話の延長として振る舞っているのに対し、周囲は高度な医学的見地から事件の真相を解き明かす異能の観察者として捉えており、自己評価と他者評価の乖離が鮮明に浮かび上がっている。
まとめ
雨妹は自らを無害な掃除係と位置づけて平穏を望むが、卓越した知識と大胆な言動は否応なく周囲の耳目を集めている。この自己認識と客観的評価の食い違いこそが、彼女が意図せぬまま宮廷の深部へ関与していく原動力となっている。
クライマックス:友仁皇子救出作戦
友仁皇子救出とアレルギー実証事件の経緯
皇子が食事のたびに苦悶する原因を「呪い」と偽り、激しい折檻を加えていた女官・文若の悪行を暴き、科学的な検証によって皇子を救出した一連の経緯を整理する。
事件の発生原因と背景
- 皇子が再び食事を口にして苦悶しているという事態が発生した。
- 文若が「呪い払い」と称して皇子に過酷な折檻を行っている情報がもたらされた。
突入時の現場状況
- 現場となった部屋は窓から煙が充満し、異様な光景となっていた。
- 上半身を露出させられた皇子が、文若によって木切れで打ち据えられている最中であった。
関係者による制圧と保護活動
- 雨妹が部屋の扉を蹴破って突入し、文若に対して飛び蹴りを放ち制圧した。
- 立彬が即座に皇子の身柄を確保して物理的な安全を確保した。
- 現場に同行した陳医官が、傷を負った皇子への応急処置を直ちに開始した。
皇帝の臨席
- 太子の要請を受けた皇帝が現場に到着した。
- 皇帝自身が折檻の惨状を直接目撃したことで、現場の権力構造が一変した。
科学的アプローチによる原因究明
- 雨妹は卵と牛乳を水で薄め、針を用いて皮膚を微細に刺激するスクラッチ・テストを実施した。
- 迷信に基づく診断を排し、近代的な検証手法によって病理の特定を試みた。
事件の決着と真相解明
- 卵を塗布した箇所の皮膚が劇的に腫れ上がり、体調不良の原因が呪いではなく食物過敏症(アレルギー)であることが視覚的に証明された。
- 追い詰められた文若が、皇子に対して意図的にアレルギー物質の摂取を強要していた事実を自白した。
- 文若の身柄が連行され、皇子の安全な保護と環境改善が確定した。
オカルト的な呪術や迷信を盾にした児童虐待に対し、迅速な武力制圧と近代医学に基づく客観的な実証実験を組み合わせることで、最悪の事態を打開した。皇帝の面前で実施された皮膚テストによる可視化は、閉鎖的な宮廷における迷信を打破し、皇子の命と尊厳を守る決定打となった。
巻末時点の状況
雨妹の動向と百花宮の情勢
後宮内で発生した一連の騒動を受け、雨妹の置かれた環境や宮廷内の課題には大きな動きが生じている。友仁皇子を巡る問題の解決から、新たに発生した莉公主の感染症対応に至る現状を整理する。
雨妹の現状
- 不正な宦官により連れ去られ、莉公主の宮に隔離されている。
- 自身は幼少期に感染済みで免疫を獲得しているため、感染の恐怖を排して水痘の治療と衛生管理に着手している。
解決した問題
- 友仁皇子に対する折檻の停止と、体調不良の真因が食物過敏症であることの立証。
- 皇太后派閥が主張していた呪い説の医学的否定。
- 宮女・鈴鈴の貧しい故郷を支援するための蜂蜜石鹸の商用化着手。
継続している課題
- 水痘を発症した莉公主の治療と完全回復。
- 隔離状態にある雨妹自身の解放および自由な身分の回復。
- 百花宮全体における水痘の二次感染および集団感染の防止。
迷信に起因する虐待や冤罪を打破した一方で、宮中には水痘という新たな感染症の脅威が迫っている。自らの免疫を根拠に治療へ踏み切った雨妹の判断が、隔離された空間の中でいかに事態を打開していくかが今後の焦点となる。
前世の医学知識
本作における張雨妹(雨妹)の前世の医学知識は、現代日本で定年まで看護師としてキャリアを全うした経験に裏打ちされたものであり、迷信や呪術、権力闘争によって病が歪められていた後宮に客観的・合理的な科学の光をもたらす決定的な力となっている。作中で発揮される前世の医学知見は多岐にわたり、主に以下の領域に整理される。
救命救急・一次救命処置(CPR)
- 心肺蘇生の実践:流行病の高熱による錯乱で小川に転落し、呼吸や脈拍が停止していた江貴妃に対し、周囲が呪いによる死体と忌避する中で即座に介入した。
- 正確な手順と蘇生後ケア:気道確保(頭部後屈顎先挙上)、胸骨圧迫(心臓マッサージ)、人工呼吸を反復して自発呼吸を再開させた。蘇生後も誤嚥を防ぐために顔を横に向けさせ、低体温症を防ぐために衣服を確保して保温するなど、臨床看護の的確な初動処置を徹底した。
問診・鑑別診断(呪いの科学的解明)
非科学的な呪いや怨霊憑きと片付けられていた数々の症状を、生活習慣や身体所見の観察から正確に鑑別している。
- 周期性四肢運動障害:就寝中に手足を暴れさせて怨霊憑きとして処刑されかけた妃嬪に対し、白牡丹(白茶)によるカフェインの覚醒作用、貧血、心労、妊娠の兆候を指摘し、睡眠障害(周期性四肢運動障害)であることを論理的に解明した。
- 気管支喘息:風邪の悪化や呪いと誤診されていた王美人に対し、鉱山出身(粉塵環境)という既往、夜間から明け方の発作傾向、雨や気圧変化との関連から喘息と診断した。起座呼吸(上半身を起こして顎を上げ、膝を曲げる体位)や背部タッピングによる排痰補助、室内の加湿を指導した。
- 食物過敏症(アレルギー)と皮膚テスト:食事のたびに苦悶し呪い憑きとされて虐待を受けていた友仁皇子について、小麦(饅頭)は食べられるのに卵(糕)を避ける嗜好の解離から、卵アレルギーであることを見抜いた。さらに、水で薄めた卵液と針を用いたスクラッチ・テスト(プリック・テスト)を皇帝の面前で実証し、視覚的な皮膚の炎症反応によってアレルギー体質を証明した。
- 感染症の鑑別(水痘・皮炎):不気味な呪いとして隔離されていた莉公主の発疹について、水痘(水疱瘡)とアトピー性皮膚炎(皮炎)の合併であることを見抜き、清潔、保湿、患部の冷却といった適切な看護方針を導いた。
公衆衛生・感染症対策(防疫体制)
- インフルエンザの看破と衛生管理:後宮で猛威を振るっていた高熱病の正体をインフルエンザと特定し、飛沫感染や空気感染のリスクを把握した。
- アルコール消毒の確立:医局にあった工用酒精(工業用アルコール)と水を7対3の割合で希釈した消毒液を自作し、噴霧器による手指消毒(掌、指先、手の甲、手首、装飾品外し)や取っ手・衣服の除菌を導入した。
- 環境衛生と感染防御:布マスクの着用、室内のこまめな換気、湯を張ることによる湿度管理、お茶に含まれる抗酸化・抗ウイルス作用を利用したうがいなどを徹底させ、後宮内の死亡率を激減させた。
- 免疫の知識:自身が幼少期に水痘に感染済みで免疫を持っていることを理解していたため、感染を恐れる周囲に代わって莉公主の介護にあたった。
水分・電解質管理(経口補水療法)
- 点滴設備が存在しない環境下で、高熱患者(江貴妃や宮女たち)の主要な死因が脱水症であることを見抜いた。
- 水に塩と砂糖を適切な割合で調合した経口補水液(ORS)を自作し、意識レベルに応じた慎重な経口摂取により、誤嚥性肺炎を防ぎつつ脱水症状とミネラルバランスを改善させた。
皮膚科学・毒性学(薬害の防止)
- 基礎化粧品の自作:精製水と砂糖(グリセリンの代用)による化粧水、食用油を加えた乳液、蜜蝋と油による手肌・唇用の保護軟膏を調合し、乾燥や水仕事による肌荒れ(鈴鈴や江貴妃)を皮膚のバリア機能維持という観点から改善した。
- 重金属中毒(鉛害)への警告:当時高級品として使われていた鉛入りの白粉について、使用者の神経毒性のみならず、胎児や子どもへ障害として受け継がれる危険性(先天性鉛中毒)を太子に伝えて注意を促した。
前世の知識を行使する際のスタンス
雨妹自身は、前世での激務や勉強漬けの生活を繰り返したくないため、女医や医官助手への昇進話を頑なに拒否している。あくまで下っ端の掃除係として平穏に過ごし、美味しいおやつ(饅頭や糕)を味わうことを最優先としている。
しかし、治せない病を呪いと決めつけて思考停止し、患者を見捨てるという現場の不合理や道士の横暴を目の当たりにすると、看護師としての職業倫理と義憤が勝り、衝動的に近代医学知識を動員して介入してしまう。その知識の出所については、後宮内で怪しまれないよう辺境を通りかかった博識な旅人から聞いたという建前で押し通している。
雨妹がもたらす前世の医学知見は、単なる知識の披露にとどまらず、迷信に支配された後宮の不条理を打ち破る実践的な力として機能している。掃除係としての平穏を望みながらも、命の危機に直面した際には的確な処置を施す姿勢が、宮廷内の重要人物たちからの絶大な信頼へと繋がり、物語の展開を大きく牽引している。
食物アレルギーの特定
『百花宮のお掃除係 2』における友仁皇子の食物アレルギー(過敏症)の特定は、後宮を支配するオカルト的な呪いの迷信と、その陰に隠された児童虐待を、近代医学の論理的推論と客観的な実証実験によって打ち破る決定的なエピソードである。雨妹が原因を突き止め、宮廷の面前で証明してみせた過程を以下に整理する。
違和感と症状の把握
- 皇子の異様な容貌と境遇:雨妹は庭の茂みで、皇族の証である青い瞳を持ちながら、骨と皮ばかりに痩せ細り怯えきった幼い友仁皇子と遭遇した。
- 宴席での発作と皇太后による呪い認定:太子・劉明賢から事情を聞くと、皇子は宴席で食事を口にするたびに激しくもがき苦しみ、血を吐くほど咳き込んで呼吸困難に陥る症状を繰り返していた。毒見役に変化が出ず毒も検出されないため、皇太后から呪い憑きと断定され、食事のたびに激しい折檻(呪い払い)を受ける虐待に晒されていた。
食事傾向の分析とアレルゲンの絞り込み
雨妹は前世の臨床看護師としての知識から、毒見役に異常がなく本人だけに重篤な症状が出る点に着目し、体質に起因する食物過敏症(アレルギー)であると直感した。
- 嗜好の解離:皇子が小麦主体の饅頭は好んで食べる一方で、卵が使われる糕を絶対に口にしようとしない事実を突き止めた。アレルギーを持つ人間は経験的に原因食材を避けるため、代表的なアレルゲンのうち小麦を除外した。
- 卵と牛乳への特定:残る候補である卵と牛乳は、庶民が滅多に口にできない高級品であり、贅沢好みな皇太后の宴席料理に多用される食材であった。症例が宮廷内で認知されてこなかった背景(食べる人口が極めて少ないこと、都の人間が病気になると医者ではなく道士に頼る風潮)まで見抜き、原因物質をほぼ卵と推定した。
公開実証実験(スクラッチ・テスト)
太子の進言により皇帝自らが臨席する中、雨妹は迷信を信じる者たちを納得させるため、目に見える形で科学的検証を行った。
- 試薬の準備:屋敷の厨房から調達した卵と牛乳を、それぞれ水で希釈した。
- 皮膚テストの実施:皇子の腕の内側に希釈した液を一滴ずつ垂らし、針先で皮膚をごく微細に刺激した。
- 視覚的な実証:牛乳には反応しなかったものの、卵液を垂らした箇所が赤く大きく腫れ上がり、劇的な炎症反応を示した。
この視覚的な炎症反応により、体調不良が怨霊や呪いによるものではなく、重度の卵過敏症(卵アレルギー)という身体の過剰な免疫反応であることが、皇帝や母・胡昭儀の目の前で完全に証明された。
悪意の看破と事件の解決
アレルギーの特定は、同時に隠されていた犯罪の立証へと繋がった。
- 自分で避けるはずの卵を、なぜ宴席で毎回口にすることになったのかを疑問視した雨妹は、世話役の女官・文若が意図的に卵を食べさせていた事実(殺人未遂)を看破した。
- 文若は失脚して投獄され、皇帝自身が皇子に謝罪したことで、呪い憑きの汚名は完全に晴らされた。
本作の食物アレルギー特定劇は、丁寧な問診と生活習慣の観察から仮説を立て、近代の皮膚テストで可視化して迷信を論破するという、雨妹の看護知識と科学的合理主義が発揮されたエピソードである。
後宮の虐待解決
本作における後宮の虐待解決は、オカルト的な呪いや宮廷内の権力構造、女性同士の嫉妬や体裁の陰に隠されていた児童虐待や育児放棄(ネグレクト)に対し、雨妹が前世の臨床看護師としての倫理観と科学的アプローチ、そして果敢な行動力によって風穴を開けていく重要なテーマである。作中における代表的な虐待の構図と、その解決プロセスについて解説する。
友仁皇子に対する身体的虐待と毒親的環境の打破
- 呪い払いと称する激しい折檻:友仁皇子は食事のたびに呼吸困難や激しい咳込みを起こしていたため、皇太后から呪い憑きと断定され忌避されていた。胡昭儀付きの女官・文若は、煙が充満する不衛生な密室で上半身裸にした皇子を木切れで打ち据える凄惨な折檻を日常的に加えていた。
- 悪意に基づくアレルゲンの強制摂取:文若は本来、実家から皇帝の妃嬪候補として送り込まれるはずだったものが、地味な胡昭儀が選ばれて自身は付き人に格下げされたことを深く怨んでいた。そのため、皇子が卵を口にすると発作を起こすと知りながら、失敗の許されない宴席で意図的に卵料理を食べさせ、母子を後宮から失脚させようと虐待を主導していた。
- 母親の無力化:胡昭儀自身も実家における文若の家格の高さや負い目から強く出られず、我が子が折檻されているのを止められない心理的支配下にあった。
- 武力制圧と救出:健康診断の名目で現場に突入した雨妹は、木切れで皇子を打つ文若を目撃するなり幼児虐待犯と叫んで飛び蹴りを放ち、即座に制圧した。立彬が皇子の身柄を確保し、陳医官が背中の傷の手当てを行った。
- 客観的証拠による呪いの完全否定:太子の進言により駆けつけた皇帝の面前で、雨妹は卵と牛乳を用いたスクラッチ・テスト(皮膚テスト)を実施した。卵液に触れた皮膚が劇的に腫れ上がる様子を可視化し、怨霊などではなく重度の食物アレルギーであることを科学的に実証した。
- 加害者の処罰と母子の救済:皇帝が皇子にこれまでの苦痛を詫び、呪い憑きの汚名は完全に払拭された。文若は殺人未遂の容疑で投獄・失脚し、皇子は適切な食事管理と安全な環境を取り戻した。
莉公主に対する育児放棄の是正
- 病気への無知と忌避による完全放置:林昭容の宮において、幼い莉公主に謎の赤い発疹が現れた際、周囲の女官や宮女は呪いや見苦しいと気味悪がり、一切の身の回りの世話を放棄して逃亡した。
- 過酷な隔離生活:莉公主は衝立の奥に隠れさせられ、水や湯も使えず身体は垢と乾燥で荒れ、冷めきって乾いた粥が戸口に放置されて幼い本人が取りに行くという、事実上の放置状態に置かれていた。
- 母・林昭容の歪んだ心理:地味な容姿から親族に笑われて育ち、皇帝の寵愛で昭容に昇進した林昭容は、自分を認めさせるための道具として子を産んだため、病気や皮炎(アトピー性皮膚炎)を持つ莉公主を普通の子ではない、自分を苦しめる存在として拒絶し、愛そうとしなかった。
- 緊急介入と看護の提供:宦官に拉致されて宮に連れ込まれた雨妹は、公主の症状が水痘(水疱瘡)と皮炎の合併であることを見抜いた。自身が幼少期に感染済みで免疫があることを盾に、粥を温め直し、沐浴で清潔を保ち、保湿ケアを施して公主の身体的・精神的苦痛を取り除いた。
- 雨妹の痛烈な直言と親の責任の追及:可愛い子なら愛した、自分を取りなして皇帝に取り入ってくれと言い放つ林昭容に対し、雨妹は子は親の鏡である、子供と一緒にいる幸せを知ろうともしなかった可哀想な人と激しく怒りを露わにして親の資格を問いただした。
- 皇帝による身柄剥奪と環境の刷新:太子宮の女官・秀玲や立彬、陳医官、そして太子の連絡を受けて現れた皇帝が惨状を目の当たりにし、林昭容から莉公主の養育権を剥奪した。皇太后が公主を引き取って保護する方針となり、安全な養育環境へと移送された。
作品全体を通じた虐待解決の構図と意義
- 呪いという免罪符の解体:後宮では都合の悪い病気や異変をすべて呪いと呼ぶことで、大人が治療や看護を放棄し、さらには虐待や排除を正当化する口実としていた。雨妹は近代医学の客観的な診断によって単なる病気や体質であることを証明し、虐待者が隠れ蓑にしていたオカルトの論理を根底から打ち砕いた。
- 弱者の生存権と尊厳の回復:大人の権力闘争や保身の犠牲となっていた皇子や公主に対し、雨妹は直接的介入を辞さない覚悟で臨み、温かい食事、清潔な衣服、適切な治療という当たり前の人権を取り戻させた。
- 私利私欲のない第三者による介入:雨妹自身は出世を望まず平穏な生活を望むスタンスを崩さないため、後宮特有の派閥争いや損得勘定に囚われることなく、医療倫理と義憤のみに基づいて純粋に被害者を救い出すことができた。
雨妹による虐待解決劇は、閉鎖的で陰惨になりがちな後宮の権力闘争の中で、科学の合理性と人としての温かな良識が理不尽な暴力を打ち負かす、爽快で感動的なドラマを形作っている。
水痘の看護
『百花宮のお掃除係 2』において、莉公主が発症した水痘の看護は、後宮にはびこる病への恐怖やオカルト的な呪いの偏見、そしてそれらに起因する育児放棄に対し、近代的な感染症知識と臨床看護ケアによって立ち向かった重要なエピソードである。雨妹が実践した水痘看護の具体的な手順や観察眼、その意義について以下に整理する。
現場の惨状と鑑別診断
- 呪いとしての隔離と放置:林昭容の宮において、幼い莉公主の全身に赤い発疹が出現した際、宮の者たちは不気味な呪い、見苦しいと嫌悪し、世話を放棄して逃亡していた。莉公主は衝立の奥に隠れさせられ、冷え切って乾いた粥を戸口へ自ら取りに行くなど、深刻なネグレクト状態に置かれていた。
- 水痘の看破:袋詰めにされて宮へ拉致された雨妹は、衝立の奥で怯える莉公主の全身の発疹を観察し、即座に水痘(水疱瘡)であると見抜いた。
- 自身の獲得免疫の活用:水痘は非常に感染力が強いウイルス性感染症であるが、雨妹自身は幼少期に罹患済みで終生免疫を持っていたため、感染の恐怖を抱くことなく公主に寄り添い、直接の手当てに踏み切ることができた。
臨床に基づいた看護ケアの実践
- 掻破の防止と冷罨法:水ぶくれ状の発疹には激しい痒みを伴うが、掻き壊すと細菌による二次感染や瘢痕が残るリスクがある。手を顔に持っていこうとする公主の手を優しく制止し、掻いてはならないと諭した。痒いときは綺麗な布を水で濡らして当て、冷やすと痒みが和らぐと教え、冷罨法による対症療法を指導した。爪を短く切る重要性も意識している。
- 沐浴による保清と皮膚の清潔:公主の肌は世話を放棄されていたため垢が浮き、乾燥してカサカサになっていた。雨妹自ら湯を沸かして沐浴させ、皮膚を清潔に保つことで感染リスクと不快感を劇的に軽減させた。汗をかいたら優しく拭き、清潔な衣服へ頻繁に着替えさせるケアを徹底した。
- 病期の観察と精神的ケア:発疹を観察し、水膨れになりかけているものと、すでに枯れ始めているものが混在していることを確認し、病気はすでに治り始めているという見通しを伝えた。大人たちから気味悪がられて怯えていた莉公主に対し、子どものうちに罹ったのは幸運であること、手当てをすれば元の綺麗な肌に戻ることを優しく説明し、絶望していた公主に大きな安心感を与えた。
- 栄養管理と全身管理:病と闘う体力をつけさせるため、戸口に放置されていた冷え切った粥を雨妹自身が温め直して食べさせた。後から駆けつけた太子の乳母・秀玲が持参した温かい豆沙包をともに食べ、消化の良い栄養を摂取させた。
アトピー性皮膚炎の合併発見とスキンケア
- 隠されていた真因の看破:水痘の発疹が落ち着いた後、雨妹は額や腕に水痘とは異なる形状の赤みを発見し、医官・陳とともに皮炎(アトピー性皮膚炎)の合併を突き止めた。
- 世間体による隠蔽の打破:林昭容の宮が莉公主を人前に出さなかった根本的な理由は、この皮炎を見苦しいとして世間体を気にして隠していたためであった。
- 基礎化粧品によるバリア機能の回復:陳が持参した化粧水、乳液、保湿軟膏を全身に塗布し、皮膚のバリア機能を補う近代的なスキンケアを施した。
解決と養育環境の刷新
- 林昭容の育児放棄を告発:普通の子ではないと我が子を拒絶する母・林昭容に対し、雨妹は子は親の鏡である、子供と一緒にいる幸せを知ろうともしなかった可哀想な人と激しく怒りを露わにした。
- 皇帝による保護と皇太后への引き渡し:駆けつけた皇帝・劉志偉がその惨状を目の当たりにし、林昭容から莉公主の養育権を剥奪した。公主の身柄は皇太后へと引き渡され、適切な療養と保護を受けられる環境へと移された。
莉公主の水痘看護は、保清、局所冷却、保湿、栄養管理という近代小児看護の基本を徹底することで、オカルト的な差別とネグレクトから幼い命と尊厳を救い出す、極めて意義深いエピソードである。
科学的合理性
本作『百花宮のお掃除係』において、科学的合理性は単なる主人公の知識チートにとどまらず、迷信やオカルト、閉鎖的な宮廷の悪弊を根本から解体し、人々を救済する物語最大のテーマとして描かれている。前世で近代看護の現場に身を置いていた雨妹が体現する科学的合理性について、具体的な側面を整理して論じる。
「呪い」という思考停止の解体
当時の後宮(百花宮)では、医学の未発達と権力闘争が結びつき、理解できない身体の異変や感染症はすべて怨霊、呪い、邪気と片付けられていた。
- 思考停止と怠慢への批判:道士たちは祈祷で権勢を振るい、宦官や女官は呪いが移ると恐れて病人を放置・虐待していた。これに対し雨妹は、現象には必ず物理的・生理学的な原因があるという前提に立ち、原因究明を放棄して呪いで片付ける宮廷の風潮を医療の怠慢として真っ向から否定する。
- 趙道士への論破:趙道士が消毒液による防疫を「酒臭い水を吹き付けるたわけた真似」と罵倒した際、雨妹は最先端の医術とは予防であり、治せない病を呪いと呼んで見捨てるのはただの怠慢だと公衆の面前で論破した。これは本作の合理主義の精神を最も象徴する場面に位置づけられる。
観察・仮説・検証(実証主義)の徹底
雨妹の問題解決プロセスは、現代の自然科学における観察から仮説立て、鑑別、実証実験というステップを忠実に踏んでいる。
- 既往歴と生活習慣の観察:王美人の喘息においては、鉱山出身という粉塵曝露の既往歴、夜間から明け方にかけて発作が起きる時間帯、雨や気圧変化との連動性を丁寧に拾い上げ、風邪の悪化や呪いではなく気道疾患であると特定した。また、周期性四肢運動障害においては、夜間の異常行動に対し、嗜好品である白牡丹茶によるカフェインの覚醒作用、貧血、心労、妊娠初期症状を複合的に分析し、精神疾患や憑依ではなく睡眠障害の一種と鑑別した。
- 実験による客観的証拠の可視化:友仁皇子の虐待事件では、小麦主体の饅頭は好んで食べるが卵が使われた糕は徹底して拒絶するという本能的行動から、卵過敏症(アレルギー)の仮説を構築した。さらに皇帝の面前で、希釈した卵液を針で皮膚に乗せるテストを実施し、赤く腫れ上がる皮膚という目に見える客観的証拠を提示した。言葉による言い逃れができない物理的証拠を突きつけることで、オカルトによる冤罪を完全に覆す結果となった。
公衆衛生と「予防」のシステム化
雨妹の合理性は、個別の対症療法だけでなく、環境全体を合理化してリスクを最小化する公衆衛生の視点にまで及んでいる。
- 科学的根拠に基づく防疫プロトコル:工業用アルコールを水で7対3に希釈して最も殺菌効果の高い濃度を自作した。単に吹きかけるだけでなく、指先、手の甲、手首の洗浄や装飾品外しを含む手順を徹底させた。さらに、飛沫感染を防ぐ布マスク、換気、湯張りによる湿度管理、抗酸化・抗菌作用を利用したお茶うがいを定着させた。
- 清掃の力学と動線管理:掃除は上から下へ進めるという埃の落下動線に沿った清掃原則や、外からの病原体持ち込みを防ぐ室内土足厳禁など、日々の家事労働を衛生工学的な視点で再構築した。
権力・感情に囚われないプラグマティズム(実利主義)
雨妹自身の行動原理にも、徹底した合理主義と実利主義が貫かれている。
- 出世や権力の徹底拒絶:前世で激務に追われて命をすり減らした反省から、出世すれば責任と政争に巻き込まれて胃を痛めると冷静に損得を勘定し、女医への推薦を断固拒否する。
- 美味しいおやつという合理的報酬:余計な名誉や金銭よりも、身の安全と「美味しいおやつ(糕や饅頭)を食べて平穏に暮らす」という個人的幸福を最大化する道を選び続ける。
- リスクヘッジの徹底:自身の青い瞳や近代知識が露見すると暗殺や政争の標的になるリスクを理解しているため、頭巾とマスクで顔を隠し、知識の出所を「通りすがりの旅人から聞いた雑学」と偽るなど、保身のための立ち回りも極めて現実的に行っている。
本作における科学的合理性とは、単なる超人的な能力ではなく、事実をありのままに観察し、論理的に原因を突き止め、身近な手段で実利的に命を守るための良識として機能している。感情論や権力闘争、オカルト的な恐怖に支配された後宮という不条理な空間において、雨妹が持ち込む科学的合理性は、理不尽に虐げられた弱者を救い出し、停滞した世界を風通しの良いものへと変えていく爽快感の源泉となっている。
登場キャラクター
皇族
劉志偉
崔国の頂点に立つ君主である。皇太后と太子の間で均衡を保とうと配慮する。息子の友仁皇子に対して罪悪感を抱く。雨妹の知識による成果を素直に受け入れる。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果 劉明賢に案内されて胡昭儀の宮を訪れた。雨妹が行った皮膚テストを見学する。友仁皇子への誤解を解き、直接謝罪の言葉を述べた。林昭容の育児放棄を咎めて莉公主の養育権を取り上げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変化はない。友仁皇子への処遇を改めた。蜂蜜石鹸の香りを高く評価する。
劉明賢
崔国の次代を担う皇太子である。理知的で公平な判断を下す。雨妹の類まれな知恵に全幅の信頼を置く。義理の弟である友仁皇子の身を案じる。
・所属組織、地位や役職 崔国・太子。
・物語内での具体的な行動や成果 友仁皇子の不審な発作の調査を雨妹に依頼した。皇帝を現場に呼んで皮膚テストを立ち会わせる。雨妹が提案した洗髪剤の製品化を後援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変動はない。後宮内の不当な処遇を是正した。雨妹の活動を陰から支え続ける。
劉友仁
皇帝の幼い息子である。臆病で内気な性格をしている。虐待を受けて怯えていた。命を救ってくれた雨妹を強く慕う。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇子。
・物語内での具体的な行動や成果 庭の茂みに隠れていたところで雨妹と出会った。文若から日常的に折檻を受けていた。腕の皮膚テストを受けて卵アレルギーを証明される。花の宴で元気な姿を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 呪い憑きの汚名を返上した。皇帝から正式に謝罪を受けた。専属の世話役がつけられて生活環境が改善する。
劉莉
林昭容から生まれた幼い内親王である。素直で我慢強い性格を持つ。全身の発疹に苦しんでいた。雨妹の優しい手当てに心を開く。
・所属組織、地位や役職 崔国・公主。
・物語内での具体的な行動や成果 衝立の奥に隔離されて放置されていた。雨妹から水痘とアトピーの看病を受ける。温かい粥や包子を食べて体力を回復させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 林昭容から養育権が剥奪された。皇太后に引き取られて保護される。
劉大偉
劉明賢の弟である。傲慢で自尊心が高い。身分の低い者や弱者を公然と見下す。劉明賢に対して対抗心を燃やす。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇子。
・物語内での具体的な行動や成果 花の宴の会場で雨妹と劉友仁の前に現れた。劉友仁を呪い憑きと呼んで侮辱する。王立勇に睨まれて威圧された。その場から足早に立ち去る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変動はない。宴の場で醜態を晒した。周囲からの人望を得るには至らない。
皇太后
後宮で最大の権力を握る女性である。迷信深く古い慣習を頑なに重んじる。劉明賢の一派と対立関係にある。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇太后。
・物語内での具体的な行動や成果 春の花の宴を主催した。劉友仁の発作を呪いと断定して遠ざけていた。劉莉を引き取って育てる決定を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 権勢に揺らぎはない。劉友仁の呪いが否定されたことで面目を失った。劉莉の保護者となる。
皇帝の兄弟皇子たち
皇帝と同世代に属する皇族集団である。宮廷の格式に従って行動する。宴席の賑わいを楽しむ。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇族集団。
・物語内での具体的な行動や成果 花の宴に出席した。高台の席で酒を酌み交わす。劉友仁の姿を遠巻きに眺めていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての地位に変化はない。宮廷の儀礼を滞りなく遂行した。
太子の兄弟皇子たち
劉明賢と同世代の若い皇族集団である。互いの出世や序列を意識し合う。宮廷の力関係に敏感に反応する。
・所属組織、地位や役職 崔国・皇族集団。
・物語内での具体的な行動や成果 花の宴の場に集まった。劉大偉の動向に同調して周囲を取り囲む。劉明賢側の護衛に気圧されて沈黙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての変動はない。太子宮の強い発言力を改めて認識した。
太子宮・近衛
王立勇
劉明賢に忠誠を尽くす武官である。後宮内では宦官の立場をとる。冷静沈着で武術に秀でる。雨妹の奇抜な行動に翻弄されつつも護衛を果たす。
・所属組織、地位や役職 太子宮・近衛武官。後宮内では宦官(立彬)。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁を虐待していた文若を取り押さえた。蜂蜜石鹸と洗髪剤の取引を裏で手配する。花の宴で劉大偉を鋭い視線で退散させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変化はない。後宮内での警備と諜報を担う。雨妹の身辺警護を継続する。
秀玲
劉明賢を幼少期から支える年配の女官である。厳格な規律を重んじる。情義に厚く弱者を見捨てない。雨妹の素性に理解を示す。
・所属組織、地位や役職 太子宮・筆頭女官(太子の乳母)。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹の身の安全を配慮して助言を与えた。林昭容の宮へ乗り込んで現場を制圧する。放置されていた劉莉に温かい豆沙包を食べさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職の変更はない。太子宮を取り仕切る重鎮として存在感を示す。林昭容の不当な育児放棄を告発した。
江玉秀
劉明賢の深い寵愛を受ける妃嬪である。温厚で気品ある態度を保つ。自身の髪の手入れに気を配る。雨妹に深い感謝の念を抱く。
・所属組織、地位や役職 太子宮・貴妃(太子の側室)。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹が作った洗髪剤を使用した。花の宴で美しい艶髪を披露する。洗髪剤の効果を他の妃嬪たちに宣伝した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位に変化はない。太子の正室候補として揺るぎない立場を維持する。後宮の流行の発信源となった。
恩小恵
劉明賢に仕える側室の一人である。快活で率直な物言いをする。江玉秀と親密な関係を築く。新しい美容法に強い関心を示す。
・所属組織、地位や役職 太子宮・淑妃(太子の側室)。
・物語内での具体的な行動や成果 花の宴に江玉秀と同席した。洗髪剤の泡立ちの良さを絶賛する。周囲の妃嬪たちに製品の魅力を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職の変動はない。太子宮の側室同士の良好な結束を示した。
鈴鈴
江玉秀に仕える若い宮女である。素直で家族思いな性格をしている。故郷の貧困を憂えている。雨妹と親しい友人関係を結ぶ。
・所属組織、地位や役職 太子宮・江貴妃付き宮女。
・物語内での具体的な行動や成果 故郷の特産品である蜂蜜を雨妹に提供した。石鹸作りの作業を手伝う。洗髪剤の販売を通じて故郷へ送金することに成功した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 宮女としての立場を維持する。故郷の特産品開発に大きく貢献した。自立への足がかりを掴む。
太子宮の女官・宮女たち
劉明賢の身の回りを補佐する使用人集団である。主の命令に素早く従う。規律が整っている。
・所属組織、地位や役職 太子宮・女官および宮女集団。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁の救出作戦を後方から支援した。洗髪剤の評判を聞いて関心を寄せる。宴の準備を滞りなく進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての地位に変更はない。太子宮の円滑な運営を支えている。
後宮(妃嬪・女官・宮女)
張雨妹
前世で看護師を務めた記憶を持つ宮女である。平穏な暮らしとおやつを好む。オカルトや迷信を強く嫌悪する。現代医学の知識を生かして後宮の事件を解決する。
・所属組織、地位や役職 百花宮・掃除係宮女。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁の食物アレルギーを皮膚テストで立証した。文若の虐待を暴いて飛び蹴りで制圧する。蜂蜜を用いた石鹸と洗髪剤を開発した。水痘を患った劉莉を看病して救う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 掃除係の地位に留まる。皇帝や太子から極めて高い評価を受ける。洗髪剤の考案者として利益を得た。
胡昭儀
劉友仁を産んだ妃嬪である。気弱で自己主張が苦手である。実家の家格の低さに引け目を感じていた。息子の苦しみに胸を痛める。
・所属組織、地位や役職 後宮・昭儀(皇帝の妃嬪)。
・物語内での具体的な行動や成果 文若による息子の折檻を止められずにいた。雨妹の皮膚テストを見て息子の無実を知る。皇帝の前で涙を流して感謝した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変動はない。息子を呪い憑きと責める重圧から解放された。文若の支配から脱却した。
文若
胡昭儀に仕える専横な女官である。嫉妬深く残忍な気性を持つ。胡昭儀の実家の出身である。自らが妃嬪になれなかった恨みを抱く。
・所属組織、地位や役職 後宮・胡昭儀付き女官。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁に卵を無理やり食べさせて発作を誘発させた。呪い払いの名目で劉友仁に激しい折檻を加える。突入してきた雨妹に蹴り倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 殺人未遂と幼児虐待の罪で投獄された。すべての地位と権限を剥奪される。
胡昭儀の年配の女官
胡昭儀の宮を取り仕切る年長の女官である。宮内の異常な事態に気づいていた。文若の暴走を止められずに苦悶する。
・所属組織、地位や役職 後宮・胡昭儀付き年配女官。
・物語内での具体的な行動や成果 宮を訪れた楊玉玲と雨妹たちを出迎えた。奥の部屋で起きている折檻の現場へ案内する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職に変化はない。事件の解決に協力した。
胡昭儀付きの女官
胡昭儀の宮で雑務を担う女官である。文若の威圧的な態度に怯えていた。
・所属組織、地位や役職 後宮・胡昭儀付き女官。
・物語内での具体的な行動や成果 掃除の点検に訪れた楊玉玲たちの応対を行った。踏み込んできた近衛たちの姿を見て震え上がる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 立場に変化はない。文若の失脚を見届けた。
胡昭儀付きの宮女
胡昭儀の身の回りを世話する下級宮女である。言いつけられた作業を淡々とこなす。
・所属組織、地位や役職 後宮・胡昭儀付き宮女。
・物語内での具体的な行動や成果 宮の通路で作業をしていた。騒動の発生に驚いて部屋の隅へ退避する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変動はない。宮内の環境改善を静かに受け入れた。
王美人
皇帝の寵愛を受ける下位の妃嬪である。温和で周囲への気遣いを忘れない。雨妹の掃除の丁寧さを信頼する。
・所属組織、地位や役職 後宮・美人(皇帝の妃嬪)。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹が持参した蜂蜜石鹸の香りを気に入った。屋敷を訪れた皇帝に石鹸を紹介する。洗髪剤を日常的に使用した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変化はない。皇帝との良好な関係を保ち続ける。製品の普及に一役買った。
王美人の女官
王美人の身の回りを補佐する側近である。主への忠誠心が厚い。雨妹に対して礼儀正しく接する。
・所属組織、地位や役職 後宮・王美人付き女官。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹から試作の蜂蜜石鹸を受け取った。主の入浴の準備を整える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 立場に変更はない。王美人の健康と生活を支え続けた。
林昭容
劉莉を産んだ皇帝の妃嬪である。見栄っ張りで自己中心的な性格を持つ。容姿に対する劣等感を抱える。子を自己顕示の道具と見なす。
・所属組織、地位や役職 後宮・昭容(皇帝の妃嬪)。
・物語内での具体的な行動や成果 発疹が出た劉莉を見苦しいとして隔離した。世話を放棄して放置する。雨妹から親としての無責任さを厳しく糾弾された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 皇帝の激しい怒りを買った。劉莉の親権と養育権を完全に失う。後宮での立場を大きく失墜させた。
林昭容付きの女官
林昭容の身辺に仕える側近である。主の身勝手な振る舞いに追従する。
・所属組織、地位や役職 後宮・林昭容付き女官。
・物語内での具体的な行動や成果 劉莉の部屋を衝立で隠す作業を手伝った。雨妹を呼びつけて劉莉の世話を押し付けようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職の変化はない。主の失脚に伴って責任を問われることとなった。
林昭容宮の女官・宮女たち
林昭容の宮に勤める使用人集団である。保身を最優先に行動する。怪異や感染を恐れる。
・所属組織、地位や役職 後宮・女官および宮女集団。
・物語内での具体的な行動や成果 劉莉に現れた赤い発疹を呪いと恐れた。劉莉の部屋から逃げ出して介護を放棄する。冷めた食事を戸口に置くだけの対応をとった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての変動はない。無責任な育児放棄を皇帝から厳しく叱責された。
友仁皇子付きの世話役の娘
劉友仁の専属として新たに選ばれた宮女である。優しく誠実な性格をしている。細やかな気配りを得意とする。
・所属組織、地位や役職 後宮・友仁皇子付き宮女。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁の食事から卵を徹底して排除した。花の宴で劉友仁に付き添って歩く。劉友仁が雨妹と会話する様子を温かく見守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新しく皇子付きに抜擢された。劉友仁の安全な生活環境の維持に貢献する。
楊玉玲
後宮の宮女たちを取りまとめる監督役である。職務に厳格で公平な判断を下す。雨妹の実力を高く買っている。
・所属組織、地位や役職 後宮・宮女監督役女官。
・物語内での具体的な行動や成果 定期清掃の巡回を口実に救出隊を組織した。胡昭儀の宮へ雨妹たちを先導する。文若の身柄拘束を冷静に指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職に変更はない。後宮内の治安維持に貢献した。雨妹の頼もしい味方として機能する。
掃除係の宮女たち
後宮の各所の清掃作業を担当する宮女集団である。日々の激務に追われている。
・所属組織、地位や役職 百花宮・掃除係宮女集団。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹とともに回廊や庭の掃除を行った。新しい洗髪剤の噂に興味を示す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位の変化はない。日々の清掃業務をこなす。
噂話をする宮女・女官たち
後宮内で情報交換を好む使用人集団である。他人の醜聞や珍しい出来事に群がる。
・所属組織、地位や役職 後宮・宮女および女官集団。
・物語内での具体的な行動や成果 劉友仁の呪いについて根拠のない噂を広めた。洗髪剤の劇的な効果を宮中に拡散させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団の立場に変化はない。後宮内の流行と情報流通を加速させた。
露店に集まる宮女たち
後宮内の市場に買い物に来た宮女集団である。美への関心が非常に高い。
・所属組織、地位や役職 後宮・宮女集団。
・物語内での具体的な行動や成果 新発売された洗髪剤を求めて露店に殺到した。製品を手に入れるために銀貨を差し出す。互いに使い心地を自慢し合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団の地位に変化はない。洗髪剤の爆発的な販売実績を作り出した。
花の宴の妃嬪たち
皇帝や皇族に仕える女性たちの集団である。豪華な衣装と化粧を競い合う。
・所属組織、地位や役職 後宮・妃嬪集団。
・物語内での具体的な行動や成果 春の花の宴に着飾って参加した。江玉秀たちの艶やかな髪に驚嘆する。洗髪剤の入手方法について盛んに情報交換を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての変動はない。洗髪剤を宮廷の上流階層へ定着させる契機となった。
後宮(厨房)
路芙娜
宮女宿舎の調理場を取り仕切る料理番である。陽気で裏表のない気風を持つ。食べることも作ることも好む。雨妹に手作りのおやつを提供する。
・所属組織、地位や役職 後宮・厨房番宮女。
・物語内での具体的な行動や成果 雨妹の要求に応じて油脂や調理器具を貸し出した。石鹸作りの実験に協力する。出来上がった試作品を使って髪を洗った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地位に変更はない。洗髪剤の開発プロセスを現場から支えた。雨妹との友情を深める。
医局
陳子良
後宮の医局に勤める医官である。医療に真摯で柔軟な思考を持つ。雨妹の卓越した医学知見を信頼する。
・所属組織、地位や役職 後宮・医局医官(宦官)。
・物語内での具体的な行動や成果 胡昭儀の宮へ同行して皮膚テストに立ち会った。虐待された劉友仁の傷の手当てを担当する。劉莉のために保湿軟膏を調合して提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職の変更はない。アレルギー疾患や皮膚炎に対する知識を深めた。雨妹の医療活動を公的に追認する。
宦官
皮膚テストに協力した宦官たち
医局や太子宮に所属する宦官集団である。指示に従って正確に行動する。
・所属組織、地位や役職 後宮・宦官集団。
・物語内での具体的な行動や成果 対照実験のために腕を差し出した。希釈した卵液を塗布される。皮膚に異常が出ないことを示して実験の正確性を証明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団としての変動はない。アレルギーの存在を証明する比較対象としての役割を果たした。
皇帝付きの宦官たち
皇帝の身の回りの雑務や警護を担う宦官集団である。皇帝の意向を察して機敏に動く。
・所属組織、地位や役職 崔国朝廷・皇帝直属宦官集団。
・物語内での具体的な行動や成果 皇帝の宮内行幸に随行した。胡昭儀の宮の周囲を警備する。文若を捕らえて牢へ連行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 役職の変化はない。皇帝の命令を直ちに執行した。
雨妹を誘拐した宦官たち
林昭容に金銭で雇われた宦官集団である。粗暴で倫理観に欠ける。
・所属組織、地位や役職 後宮・宦官集団。
・物語内での具体的な行動や成果 路地で背後から雨妹を襲った。麻袋に雨妹を詰め込んで林昭容の宮へ運び込む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 集団の地位に変化はない。不当な誘拐行為を行った。
民間・商人
露店の商人
後宮の許可を得て物品を納入する商人である。商売熱心で流行に敏感である。
・所属組織、地位や役職 民間商人。
・物語内での具体的な行動や成果 王立勇の仲介で蜂蜜石鹸と洗髪剤を買い取った。後宮の敷地内で露店を開いて販売する。宮女たちに大声で商品を売り捌いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 立場に変更はない。洗髪剤の販売を通じて大きな利益を上げた。地方の特産品を都で流通させる役割を果たした。
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展開まとめ
序章 新人宮女は本日も通常通り
公主の素性を隠す雨妹
百花宮の掃除係・雨妹は、皇族特有の青い瞳と母譲りの髪色を隠して働いていた。彼女は皇帝と亡き張美人の娘らしいが、公主を名乗る気はなく、前世の日本人看護師としての知識を活かしながら、後宮を外側から楽しんでいた。
変人宮女や呪いを振りまく娘と噂されても気にせず、掃除と噂話、おやつを楽しむ毎日を送っていた。
第一章 皇子と呪い
友仁皇子との遭遇
清明節の花の宴を前に大掃除が始まり、雨妹は茂みから逃げてきた幼い友仁皇子と出会った。友仁は異様に痩せ、女官に怯えていた。胡昭儀付きの女官に乱暴に連れ戻された様子から、雨妹は何か事情があると感じた。
友仁は食事のたびに咳や呼吸困難を起こし、皇太后から呪い憑きと見なされていた。雨妹は症状と食生活から食物過敏症を疑い、卵が原因ではないかと考えた。
友仁皇子の救出
皇帝の許可を得て胡昭儀の宮を訪れた雨妹たちは、友仁が呪い払いと称して女官の文若に打たれている場面を発見した。雨妹は友仁を救い出し、陳に治療させた。
皮膚試験の結果、友仁は重度の卵過敏症だと判明した。皇帝は呪い説を退け、今後は卵を避けて療養させることにした。
さらに雨妹は、文若が友仁の体質を知りながら卵を食べさせていたと見抜いた。文若は胡昭儀への恨みから友仁を排除しようとしていたことを認め、殺人未遂で連行された。明賢は雨妹を皇太后から守る決意を新たにした。
第二章 蜂蜜騒動
蜂蜜製品の開発
友仁の一件をきっかけに、後宮では食物過敏症への関心が高まった。一方、雨妹は江貴妃付きの鈴鈴の傷んだ髪を見て、蜂蜜と澡豆を使った洗髪剤を作った。さらに蜂蜜石鹸も考案し、鈴鈴の髪や手荒れを改善させた。
鈴鈴の故郷は養蜂と大豆栽培を営む貧しい山里だった。蜂蜜は運搬費のため高価になり売れず、家族が離散することもあった。雨妹は蜂蜜製品を新商品として売れば里の収入になると提案した。
立彬に商人の紹介を頼み、明賢の協力も得て販売計画が進み始める。雨妹は、助けられる人を見捨てると後悔して食事が美味しくなくなるから助けるのだと語り、自分らしい生き方を貫いた。
第三章 雨妹の災難
莉公主の看病
花の宴の準備中、雨妹は宦官に連れ去られ、上位妃嬪の宮で病気の莉公主を世話するよう命じられた。莉公主の全身には発疹が広がり、十分な食事も看病も受けていなかった。
雨妹は症状を水痘と見抜き、患部を冷やし、身体を清潔に保ち、食事と休養を取らせれば治ると説明した。しかし宮の者たちは病を呪いや過敏症と恐れ、公主を避けていた。
雨妹が戻らないことを知った明賢たちは事情を調べ、太子宮から食事や援助を届けた。雨妹の看病で莉公主は回復し、病気の子供を見捨てていた宮の問題も明らかになった。
第四章 花の宴
宴と再会
春の花の宴を前に後宮には露店が並び、雨妹は買い物を楽しんだ。蜂蜜製品の商談も進み、鈴鈴の故郷に新たな産業が生まれる可能性が広がった。
宴では、卵を避けた食事によって元気を取り戻した友仁皇子と再会し、一緒に料理を味わった。雨妹は立彬に連れられて太子宮も訪れ、回復した江貴妃や明賢たちと食卓を囲んだ。
皇帝と張美人
宴の中で雨妹は、皇帝が今も張美人を忘れず、二人の娘を案じていることを知った。自分が望まれずに生まれたのではなく、両親から愛されていたと悟り、涙を流す。
父と名乗りたい気持ちはあったが、公主だと明かせば後宮を離れなければならない。雨妹は名乗り出ず、心の中で皇帝に感謝し、掃除係として後宮を楽しむ道を選んだ。
終章 清明節
母に供える青団
清明節、雨妹は母の墓へ行けない代わりに、尼寺で教わった青団を作った。母を偲びながら青団を太子宮へ持参し、明賢や立彬たちと食事を囲む。
辺境で過ごした頃とは違い、雨妹には後宮にも親しく食卓を囲める仲間がいた。公主として名乗ることはなくても、母を思い、美味し
百花宮のお掃除係 シリーズ
その他フィクション

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