8.猫物語(白)第懇話 つばさタイガー
まとめ
10.花物語 第変話 するがデビル
物語の概要
■ 作品概要
高校3年生の阿良々木暦は、夏休み最終日である8月20日、自室に重いリュックサックを置き忘れていった幽霊の少女・八九寺真宵を探す過程で、受験勉強に集中するあまり夏休みの宿題に一切手を付けていない事実に気づく。
翌8月21日の始業式による信用失墜や高校卒業の危機を回避するため、暦は自身の影に潜む吸血鬼・忍野忍の提案を受け入れる。
8月21日午前0時、二人は北白蛇神社に滞留する霊的エネルギーを熱エネルギーへとコンバートし、1日前である8月19日へのタイムワープを決行する。
しかし、到達した先は1日前ではなく、西暦で11年前の5月13日正午であった。
二人は18歳の姿のまま同時代に過去の自分が存在するタイプAの時間移動であることを確認する。
その直後、翌日の5月14日(母の日)が生前の八九寺真宵(当時小学5年生)が母親の家へ向かう途中で交通事故死した命日であることを思い出した暦は、本来の目的であった宿題の処理を撤回し、過去の世界で生前の真宵を事故死の運命から救出し、10年以上に及ぶ霊的漂流(怪異化)を防ぐことを決意して行動を開始する。
■ 主要キャラクター
阿良々木 暦(あららぎ こよみ)
- 立場・所属: 高校3年生(18歳)。半吸血鬼。
- 役割・行動: 受験勉強に専念していたため宿題の未完了に直前まで気づかず、忍とともに1日前への時間跳躍を試みるが、11年前の5月13日へ到達する。同時代に7歳の自分が存在する「タイプA」の時間旅行であることを把握後、翌5月14日が八九寺真宵の命日(母の日)であることを想起する。真宵の交通事故死を回避させるため、忍に血を提供して吸血鬼能力を補強し、半吸血鬼の身体能力(100mを5秒未満で走る脚力)を発揮して11年前の町を疾走する。
忍野 忍(おしの しのぶ)
- 立場・所属: 暦の影に潜む吸血鬼(元キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)。正確な年齢は598歳11ヶ月。
- 役割・行動: 北白蛇神社に蓄積された霊的エネルギーを熱エネルギーに変換し、時間跳躍のゲートを発生させる。到着目標を外し11年前へ跳んでしまうが、暦に血を吸わせてもらうことで内的エネルギーを回復させ、3年ごとの段階的ジャンプにより現代へ帰還できる論理を説明する。真宵救出作戦では、暦の血を吸って能力を調整し、直江津中学校の制服・三つ編み・眼鏡姿(かつての羽川翼を模した姿)に変身して張り込みや移動に同行する。
八九寺 真宵(はちくじ まよい)
- 立場・所属: 幽霊の少女(生前は小学5年生、11歳)。
- 役割・行動: 現代(8月20日)において暦の部屋のベッドで眠り、重いリュックサックを忘れていく。11年前の世界では、両親の離婚により離れて暮らす母親(綱手)の家へ向かうため、5月14日(母の日)朝5時に家出の書き置きを残して一人で出発し、途中の交差点で交通事故死する運命にある生前の人間として登場する。
斧乃木 余接(おののき よつぎ)
- 立場・所属: 影縫余弦に使役される式神(死体の憑藻神)。
- 役割・行動: かつて死後に陰陽師・影縫余弦の反魂の術によって生き返った(生まれ変わった)存在。語尾の「僕はキメ顔でそう言った」を黒歴史として封印している。8月20日の交差点で暦と遭遇し、アイスクリーム(ハーゲンダッツ)や煎餅をおごらせながら、「死なずに生き続ける(暦・忍)」「死んで生まれ変わる(余接)」「死に続けている(真宵)」という怪異の死生観を比較し、幽霊として死に続けている真宵の幸福について暦に問いを投げかける。
忍野 扇(おしの おうぎ)
- 立場・所属: 神原駿河から紹介された暦の新しい後輩(高校1年生、15歳)。
- 役割・行動: 物語冒頭(冬の時期)に暦と対話を行う。「交差点の全信号が赤になる3秒間の空白こそが安全であり、安全を示す青信号こそが危険である」という論理を展開する。また、「夢は叶えるものではなく見るもの(妄想する方が効率的に幸せになれる)」という主張を述べ、青信号の横断歩道で事故死した真宵の記憶と結びつく伏線として暦の記憶に刻まれる。
書籍情報
<物語>傾物語
著者:西尾維新 氏
イラスト:VOFAN(ヴォーファン) 氏
出版社:講談社
発売日:2016年7月22日
JDCN:0628376700100011000A

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あらすじ・内容
100パーセント修羅で書かれた小説です……。――西尾維新
“変わらないものなどないというのなら――運命にも変わってもらうとしよう”
迷子の小学生・八九寺真宵(はちくじまよい)。阿良々木暦(あららぎこよみ)が彼女のために犯す、取り返しのつかない過ちとは――!?
<物語>史上最強の2人組(ツーマンセル)が“運命”という名の戦場に挑む!
これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
君の影、探してまよう帰り道。
感想
『傾物語』のサブタイトルは「まよいキョンシー」。
八九寺真宵の名前が入っている。
当然、八九寺が大活躍する物語だと思うではないか。
ところが読んでみると、
「あれ? これ暦と忍の話では?」
となった。
もちろん八九寺は物語の中心にいる。
そもそもの始まりは、死ぬ前の八九寺を助けようとしたことだった。
しかし実際に物語を動かしているのは阿良々木暦と忍野忍である。
二人で過去へ飛び。
八九寺を助け。
現代へ帰ってきたら世界が滅んでいて。
さらに世界を救うために行動する。
これまでの怪異モノとは随分と雰囲気が違う。
もはやSFでは?
そんなことを思いながら読んでいた。
八九寺を助けるため、11年前へ
今回の始まりは夏休みの宿題だった。
宿題が終わらない。
だったら過去に戻って、昨日からやり直せばいい。
発想が完全にダメな高校生である。
しかし忍の力で時間移動を試した結果、暦と忍は昨日どころか11年前まで飛んでしまう。
そして暦は思いつく。
ここまで戻ってきたのなら、交通事故で亡くなる前の八九寺を助けられるのではないか。
こうして八九寺救出作戦が始まる。
宿題から始まったはずなのに、話が大きくなりすぎである。
過去の八九寺を見つけた! そしてスカートをめくる
暦と忍は、まだ生きている八九寺を探す。
そしてついに発見。
ここから感動的な救出劇が始まる。
……と思ったら。
阿良々木暦。
なぜスカートをめくる。
11年前まで来て何をやっているんだ。
未来からやってきた高校生が、小学生の女の子を見つけてスカートをめくる。
字面だけ見ると、とんでもない。
御両親!
警官である御両親!
息子さんです!
もっとも、暦は迫ってきたトラックから八九寺を救い、無事に母親のもとへ送り届ける。
本来なら交通事故で亡くなるはずだった八九寺。
その運命を変えることに成功した。
これで一件落着。
……のはずだった。
現代へ帰ったら人類が滅亡していた
八九寺を救い、暦と忍は現代へ戻る。
しかし、誰もいない。
街には人の姿がなく、完全なゴーストタウンになっている。
人類がほぼ滅亡していた。
ここで一気に、
「何の物語を読んでいるんだ?」
となった。
怪異と出会い、その怪異にまつわる問題を解決する。
これまでの〈物語〉シリーズには、そんな印象があった。
ところが今回は違う。
過去へ飛ぶ。
歴史に介入する。
現代へ帰ったら人類が滅亡している。
別の世界。
別の歴史。
タイムパラドックス。
完全にSFである。
『傾物語』というタイトルから、こんな壮大な話になるとは思わなかった。
八九寺を助けたから世界が滅んだ……わけではなかった
最初は、
「八九寺を助けてしまったから歴史が変わって世界が滅亡したのか?」
と思った。
しかし話はそれほど単純ではない。
忍による時間移動は、単純に同じ世界の過去を書き換えるものではなかった。
暦と忍が移動したのは別のルート。
つまりパラレルワールドである。
八九寺を助けた世界と、暦たちがもともと暮らしていた世界は別に存在している。
このあたりから本格的にSF色が強くなっていく。
「怪異ってそんなことまでできるの?」
と思う一方で、世界から世界へ移動するという設定はかなり面白かった。
世界が滅びても暦と忍は一緒
そして今回、八九寺以上に印象に残ったのが忍だった。
暦と忍の距離がものすごく近い。
会話して。
喧嘩して。
ふざけて。
それでも最後には互いを信頼している。
世界が滅びていても、この二人は一緒にいる。
以前の忍と暦の関係を考えると、かなり大きな変化だと思う。
最初から仲の良い二人だったわけではない。
むしろお互いに最悪の状態から始まった関係である。
それが今では、世界を飛び回る相棒になっている。
だから読んでいて、
「八九寺の物語というより、暦と忍のいちゃいちゃを見せられているのでは?」
という気分になった。
滅びた世界だからこそ見えてくる二人の関係
普段は登場人物が多い〈物語〉シリーズだが、今回は暦と忍だけで行動する時間が長い。
だからこそ二人の関係がよく見える。
世界が滅んだ。
自分たちの行動が原因かもしれない。
帰れる保証もない。
普通なら絶望してもおかしくない。
それでも二人で動く。
暦が無茶をすれば忍がいる。
忍がいれば暦も動ける。
もはや主人と従者というより、本当に一心同体に近い。
『傷物語』から考えると、ここまで来たのかと少し感慨深かった。
タイトルは「まよいキョンシー」なのに、八九寺がほとんどいない
それにしても面白い。
「まよいキョンシー」というタイトルなのに、いつもの八九寺がほとんど登場しない。
八九寺は物語の原因であり、世界を分岐させる重要人物ではある。
しかし物語の中心で冒険しているわけではない。
暦と忍が、
「八九寺を助けたらどうなるのか」
を体験する物語になっている。
八九寺本人ではなく、
「八九寺が生きていた世界」
を見ることで、逆に彼女の存在の大きさが分かる。
一人の少女が生きているか死んでいるか。
それだけで世界は違う方向へ進んでいく。
この構造は興味深かった。
それにしても八九寺を部屋に連れ込んだ件が気になる
壮大なSFの話をしている場合ではない。
どうしても気になることがある。
八九寺。
暦の部屋に行っている。
しかもリュックを忘れている。
……阿良々木くん?
何をした?
いや、本当に何もしていないんだよな?
犯罪行為、してませんよね?
これまでの行動を見ていると、素直に信用できない。
何しろ過去へ行ってまで小学生の八九寺のスカートをめくる男である。
『偽物語』でも散々だった。
妹とキス。
妹と歯磨き。
八九寺には抱きつく。
そして『傾物語』では時空を超えて八九寺にちょっかいを出す。
もう時間も世界も関係ない。
阿良々木暦は、どの時代でも阿良々木暦だった。
最後に八九寺と再会して安心……できない
いろいろあった末に元の世界へ帰還する暦と忍。
そして八九寺と再会する。
「帰ってきた!」
と安心する場面である。
八九寺とのいつもの掛け合いも戻ってくる。
しかし暦も八九寺も相変わらずである。
普通に再会できないのか、この二人は。
世界が滅亡しかけるような大冒険を経験してきた直後なのに、八九寺が出てきた瞬間、いつもの空気に戻る。
ある意味では、
「ああ、本当に元の世界へ帰ってきたんだな」
と実感できる場面でもあった。
しかし同時に思う。
御両親!
コイツです!
『傾物語』は怪異モノというよりSF冒険だった
今回、一番驚いたのは物語のスケールだった。
八九寺を助ける。
それだけなら、これまでの怪異譚に近い。
しかしそこから、
過去への移動。
歴史への介入。
滅亡した世界。
パラレルワールド。
人類を巻き込んだ危機。
一気に話が広がっていく。
「〈物語〉シリーズってこんなことまでやるのか」
と驚いた。
今まで積み上げてきた怪異モノの枠を、一度ぶち壊したような印象すらある。
それでも最後は八九寺とのくだらないやり取りに戻ってくる。
壮大なのか。
くだらないのか。
真面目なのか。
ふざけているのか。
その全部が同居しているのが、このシリーズらしい。
まとめ|八九寺の話だと思ったら、暦と忍の物語だった
『傾物語』を読む前は、八九寺が中心になって活躍する話だと思っていた。
実際にはかなり違った。
八九寺を救うことから始まるが、物語の中心にいるのは暦と忍である。
二人で過去へ行き。
八九寺を救い。
滅びた世界へ戻り。
世界の真相を知り。
元いた場所へ帰る。
怪異譚というより、暦と忍によるSF冒険ものだった。
そして同時に、二人の関係がここまで深くなっていたことにも驚いた。
世界がどうなろうと一緒にいる。
そんな暦と忍の関係が強く印象に残った一冊である。
ただ、それ以上に心配なのが阿良々木暦だ。
八九寺を部屋に連れ込む。
過去の八九寺のスカートをめくる。
再会すれば、いつもの調子で絡む。
世界線が変わろうが、過去へ行こうが、まったく自重しない。
怪異やタイムパラドックスより先に、
阿良々木暦を一度ご両親に取り締まってもらったほうがいいのではないだろうか。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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8.猫物語(白)第懇話 つばさタイガー
まとめ
10.花物語 第変話 するがデビル
考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:夏休みの最終日と突如持ち上がった時間移動
・夏休みの最終日である8月20日、阿良々木暦は八九寺真宵が自室に置き忘れた大きなリュックサックを届けるため、街を歩いていた。
・交差点で式神の童女である斧乃木余接と遭遇し、怪異の存在理由や死を巡る対話を行った。
・八九寺真宵を発見できぬまま帰宅した阿良々木暦は、影から現れた忍野忍から夏休みの宿題を一つも終えていない事実を指摘され、残り2時間で解決する手段がない現実に打ちのめされた。
・ミスタードーナツの提供を条件として忍野忍から前日へ戻る時間移動の提案を受けた阿良々木暦は、その提案に同意した。
・二人は霊的エネルギーが集まる北白蛇神社へ足を運び、忍野忍の呪文によって鳥居に生じた黒い門の中へ手を繋いで飛び込んだ。
第2幕:11年前の過去世界への誤着と八九寺真宵の救出決意
・時間跳躍の衝撃で石段を転げ落ちて意識を取り戻した二人は、携帯電話の非表示や女子中学生への確認を通じ、移動先が前日ではなく11年前の5月13日である事実を把握した。
・自宅周辺を調べた阿良々木暦は、新築の状態を保つ建物の中で7歳当時の自分自身を目撃した。
・阿良々木暦は、翌日の5月14日が八九寺真宵の実母を訪ねる途中で交通事故死した命日である事実に思い至った。
・忍野忍の霊力を充当すれば現代へ帰還できる見通しを得た阿良々木暦は、八九寺真宵の事故死を回避させて怪異化を防ぎ、実母の元へ無事に届ける行動を企図した。
第3幕:八九寺真宵の追跡とトラックからの間一髪の救出
・八九寺真宵の父方の実家と母方の実家の所在地を特定すべく、二人は捜索を開始した。
・道中で出会った幼少期の羽川翼から案内された交番へ赴き、警察官から双方の住居に関する詳細な位置を聞き出した。
・翌朝の5月14日、中学生の姿へ外見を変えさせた忍野忍とともに八九寺家の前で張り込みを行ったものの、父親の証言により本人が早朝5時に家を出ていた事実が判明した。
・浪白公園へ急行した阿良々木暦は、案内板の前で道に迷っていた幼い八九寺真宵を発見した。
・接触を試みた際に驚いた八九寺真宵が赤信号の横断歩道へ駆け出し、大型車両が接近したため、阿良々木暦は吸血鬼の身体能力を駆使して飛び込み、彼女を突き飛ばして命を拾い上げた。
・そのまま実母の住まいまで案内して親子の再会を見届けた二人は、北白蛇神社から11年後の現代へと戻った。
第4幕:人類が消滅した滅びた世界への帰還
・現代へと帰着した二人を待っていたのは、走行する車両が一台も存在せず、人影が完全に絶えた静まり返る街であった。
・阿良々木家へ足を踏み入れると、新聞の配達記録や学習帳の記述が6月14日を境に途切れており、ライフラインの停止からも約2か月前に人類が消失した実態が浮き彫りとなった。
・家族や友人の姿も皆無であり、二人は過去において八九寺真宵を死から救った歴史改変が世界の滅亡を招いたと判断した。
・異変の原因を突き止めて歴史を正常化するため、二人は北白蛇神社の霊力を再度用いて過去へ跳ぶ方針を定めた。
第5幕:吸血鬼の群れと忍野メメからの手紙
・北白蛇神社を訪れたものの、霊力は異なる歴史の忍野メメが施した黒い札によって封鎖されていた。
・夜の訪れとともに肉体が崩壊した大量の吸血鬼の死骸群が出現して二人を取り囲んだが、忍野忍の跳躍力で空中へ避難し、世界規模で人類が吸血鬼化して自滅した惨禍を目撃した。
・数日後の昼、生存者の有無を確かめる目的で浪白公園から花火を打ち上げた二人は、米粒を散布して死骸群を遠ざける大人の女性と遭遇した。
・その人物は、11年前に事故を回避して生き延び、22歳へと成長を遂げた八九寺真宵であった。
・成長した八九寺真宵の手から、専門家である忍野メメが残した一通の書状が手渡された。
第6幕:明かされる真実ともう一つの時間軸
・忍野メメの書状を通じ、今回の時間跳躍は同一世界の過去改変ではなく、並行世界間を遷移した結果であり、この時間軸は八九寺真宵を救出したことで分岐した世界である事実が判明した。
・この時間軸では、6月14日に忍野忍が家出した局面において、阿良々木暦が八九寺真宵と出会わなかったため彼女の所在を突き止められず、障り猫によって命を落としていた。
・主を喪失した忍野忍は全盛期の力を取り戻して世界規模で人類を吸血鬼化させ、自らも陽光による焼身を図ったものの死にきれず生存していた。
・書状には、全盛期の力を保持したまま死に損なっている吸血鬼を討ち滅ぼせば、暴走した死骸群は沈静化して世界は救済される旨が記されていた。
・二人は成人した八九寺真宵に別れを告げ、事態の決着を図るべく決戦の場となる北白蛇神社へ向かった。
第7幕:吸血鬼の王との対峙と本来の世界への帰還
・極限まで吸血鬼の力を引き出し、二振りの怪異殺しを構えた二人は、深夜の境内で待ち受難の時を過ごした。
・全身が焼けただれた姿で全盛期の吸血鬼が姿を現し、互いに寄り添う阿良々木暦と忍野忍の姿を目にして落涙した。
・その怪異は自らの命を忍野忍へ捧げて吸血させ、元の世界へと跳躍するための霊力を供給して現世から消滅した。
・これによって並行世界の人類は救われ、二人は本来の世界の8月21日朝へと無事に帰着を果たした。
・境内で目を覚ました阿良々木暦は忍野忍との強固な結びつきを再認識し、参道を下りた場所で荷物を回収しに来た八九寺真宵と再会して、いつもの日常へと戻っていった。
主要な転換点
転換点1:夏休みの宿題未完了に伴う時間跳躍の決行
・それ以前の状況 8月20日の夏休み最終日、阿良々木暦は八九寺真宵の忘れ物であるリュックサックを届けるため街を歩き、普段通りの平穏な時間を過ごしていた。
・出来事 忍野忍から宿題を一切終えていない事実を指摘され、残り2時間では到底終わらないと悟った阿良々木暦は、菓子類を報酬とする忍野忍の提案に応じ、前日となる8月19日への時間跳躍を実行した。
・変化 北白蛇神社の空間を越えて過去を目指したものの、術式の誤りによって目的の前日ではなく、11年前の5月13日という遠い過去の世界へ漂着した。
・次への影響 過去の世界において、翌日となる5月14日が八九寺真宵の交通事故死した命日に該当すると思い至り、彼女の事故死を防ぐ救出活動へと方針を転換した。
転換点2:11年前の過去世界における八九寺真宵の救出
・それ以前の状況 本来の歴史において、八九寺真宵は11年前の5月14日に母親へ会いに行く道中で交通事故に遭い、浮遊霊の怪異となる運命を辿っていた。
・出来事 家出を決行した幼い八九寺真宵を公園で発見した阿良々木暦は、車道へ飛び出して大型車両に跳ねられそうになった彼女を突き飛ばして救い、そのまま実母の住まいへ送り届けた。
・変化 八九寺真宵が生存を果たした結果、彼女が怪異化しない別の歴史の道筋が形成された。
・次への影響 役目を果たして現代の8月21日へ戻ったところ、人類が死滅した崩壊後の並行世界へと帰着した。
転換点3:人類が消滅した滅びた世界への帰還と状況判明
・それ以前の状況 阿良々木暦と忍野忍は、少女を救って現代へ戻れば残りの宿題を片付けて平穏な日常へ復帰できると考えていた。
・出来事 現代へ戻った二人は、走行車両や住人の姿が一切消え失せた街の様子を目撃し、約2か月前の6月14日を境に人類が完全に消滅していた事実を突き止めた。
・変化 自らの歴史介入が世界規模の破滅をもたらしたと受け止め、事態の解明と歴史の修復を図る必要性に直面した。
・次への影響 霊力を遮断された北白蛇神社で夜間に吸血鬼の死骸群に包囲され、信号弾として打ち上げた花火を機に、22歳へ成長した大人の八九寺真宵と巡り合った。
転換点4:忍野メメの手紙の発見と並行世界の真実の発覚
・それ以前の状況 二人は、自らの時間跳躍そのものが直接的に世界を破滅へと追いやったと推測していた。
・出来事 大人の姿となった八九寺真宵から怪異の専門家である忍野メメの書状を受け取り、そこに記された真実を確認した。
・変化 時間移動は同一世界の過去改変ではなく並行世界の移動を意味し、この世界では阿良々木暦が八九寺真宵と出会わなかった影響で家出した忍野忍を探し出せず、障り猫に殺害されていた結末を把握した。
・次への影響 主を失って暴走した吸血鬼の成れの果てが世界を滅ぼした末、自死できずに生き永らえている事実を知り、その怪異を討伐して世界を救うための決戦へと向かった。
転換点5:全盛期キスショットの自己犠牲によるエネルギー譲渡
・それ以前の状況 並行世界に君臨する全盛期の怪異は世界を壊滅させた後に自決を試みたものの、不死性の高さゆえに焼け爛れた肉体のまま神社に留まり続けていた。
・出来事 武器を構えて対峙した阿良々木暦と忍野忍に対し、その怪異は良好な関係を保ち続ける二人の姿を見て落涙し、自らの命となる霊力を忍野忍へ差し出して吸血させた。
・変化 強大な怪異が消滅を受け入れたことで吸血鬼化した人々は元の人間へ復元され、忍野忍は元の世界へ帰還するための莫大な活力を手中に収めた。
・次への影響 阿良々木暦と忍野忍は本来の時間軸における8月21日朝へと帰還を果たし、リュックサックを取りに来た八九寺真宵と再会して日常へ戻った。
阿良々木暦を中心とした人物関係の変化
忍野忍
- 開始時 阿良々木暦の影の中に潜み、菓子の要求や軽口を交わしつつ主従関係および一心同体の存在として日常を共有していた。
- 主な出来事 宿題を片付けるための時間移動の失敗を機に、十一年前の世界で八九寺真宵の事故死を回避させた。しかし、帰還した並行世界では阿良々木暦の死亡を契機に忍野忍が世界を壊滅させていた事実を突き止め、北白蛇神社での対峙を経て元の世界へ帰還した。
- 巻末時 並行世界における凄惨な結末と互いの存在の重みを痛感した結果、影の中に身を寄せる相棒としての結びつきをより強固な段階へと昇華させた。
八九寺真宵
- 開始時 自室に忘れられた荷物を届けるため街中を捜し回るなど、不条理かつ軽妙な掛け合いを交わす友人関係を保っていた。
- 主な出来事 十一年前の過去において、大型車両に轢かれかけた幼い八九寺真宵を身を挺して救出し、実母の住まいへ送り届けた。怪異化を回避した結果として人類が消失した並行世界へ迷い込み、二十二歳に成長した彼女と遭遇を果たした。
- 巻末時 歴史を本来の時間軸へと修正して生還したことで、怪異としての八九寺真宵と再会を遂げ、以前と変わらぬ軽快なやり取りを交わす日常へ復帰した。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(並行世界)
- 開始時 異なる歴史を辿った世界の存在に位置づけられ、事前の面識や直接的な関係性は皆無の状況にあった。
- 主な出来事 阿良々木暦を失った絶望から人類を吸血鬼化させて自決しきれずにいた全盛期の吸血鬼と、神社にて相対した。良好な主従関係を維持する二人の姿を目にした相手は落涙し、自らの命を忍野忍へと差し出して吸収させた。
- 巻末時 その自己犠牲によって並行世界の人類は元へと戻り、阿良々木暦と忍野忍が本来の時間軸へ跳躍するための不可欠な活力として機能した。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
- 夏休みの宿題を最終日まで放置して途方に暮れるなど、自らを意志の弱い不完全な高校生と規定する。
- 春休みの事件以降に残る吸血鬼の痕跡についても、人外と人間の中間に留まる中途半端な特性と受け止めている。
- 過去において八九寺真宵の事故死を回避させた行動を自己満足や単なる思いつきとみなし、個人の行いが世界規模の破滅を導くはずがないという安易な予測にとどまっていた。
- 人類が消滅した並行世界の光景を目の当たりにした局面では、自身の軽率な介入が取り返しのつかない破局を生み出したと捉え、強い自己嫌悪と無力感に苛まれた。
周囲からの評価
忍野忍
過剰なほど他者に首を突っ込む性質を呆れ半分に見つめつつ、かつて命がけで自身を救い上げた存在として絶対的な信頼を寄せる。生と死を共にする相棒として認識し、影の中で分かち難い絆を保ち続ける。
忍野メメ(書状)
人と人との結びつきを成立させる稀有な存在として高く評価する。良好な主従関係を維持して生き残った主人公の存在を、並行世界の暴走を収束させるための確固たる勝算と位置づけ、事態の打開を委ねる姿勢を示した。
忍野扇
機転の早さを皮肉混じりに認めつつ、善良さゆえに周囲の危険を顧みず自らを損ないかねない危うさを指摘する。
斧乃木余接
相手が人外であっても関わりを深めようとするお人好しな気質を把握し、過去の対決で見せた覚悟の強さを記憶に留める。
幼少期の羽川翼
過去の世界で接触した際、不審な言動や異様な風貌を警戒し、危険人物と判断して交番へと誘導する対応をとった。
認識の差が現れた場面
- 大人の八九寺真宵から専門家の書状を受け取り、その内容を読み解く局面において両者の視座の隔たりが浮き彫りとなった。
- 主人公自身は自らの浅慮な過去改変が世界を滅亡へ追いやった元凶であると思い込み、自責の念に深く沈み込んでいた。
- これに対し書状において専門家は、少女の命を拾い上げた事実を非難することなく一つの成果として受け止め、主人公と相棒との結びつきこそが崩壊した世界を再生へ導く唯一の鍵であると位置づけた。
- 自身を無力な失敗者とみなす主人公の自己評価と、破局を打開する要として信頼を寄せる外部評価の乖離が鮮明に示された。
クライマックス
発生原因
- 十一年前の過去において八九寺真宵の事故死を回避させた結果、帰還先の並行世界では阿良々木暦の死亡を契機に忍野忍が全盛期の吸血鬼へ復帰し、世界中の人間を吸血鬼化させる壊滅的事態を招いた。
- 大人へと成長した八九寺真宵から託された忍野メメの書状を通じ、全盛期の吸血鬼を討滅すれば世界が正常化することを知った二人は、危機の打開と元の世界への帰還を目指して決戦の地へ向かった。
当初の状況
- 深夜の北白蛇神社において、阿良々木暦と忍野忍は吸血鬼の力を極限まで高め、複製された二振りの妖刀を構えて待機した。
- 上空へ放たれた合図に呼応し、全身が焼け爛れ異臭を漂わせる全盛期の吸血鬼が足を引き摺りながら鳥居をくぐって姿を現した。
登場人物それぞれの行動
阿良々木暦
- 手にした二振りの妖刀を握りしめ、圧倒的な威容を放つ怪異を前にして強い警戒態勢を維持した。
忍野忍
- 自死に失敗して無残な姿を晒すもう一人の自分を見つめ、複雑な感慨を抱きながら武器を構えて正面から対峙した。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(並行世界)
- 自らの惨めな境遇を嘲笑しつつ、互いに寄り添い良好な関係を保ち続ける阿良々木暦と忍野忍の姿を目の当たりにした。
予定外の出来事
- 圧倒的な武力による猛攻が予想されたものの、怪異は敵対行動を一切取らず、その場に崩れ落ちて落涙した。
- 阿良々木暦と良好な主従関係を築き共存し得る可能性が存在した事実を認識し、深い感銘を受けた。
危機
- 二人の実力では全盛期の怪異を正面からねじ伏せる術はなく、このままでは並行世界の救済も本来の世界へ跳躍するための霊力確保も望めない窮地に立たされた。
対応
- 怪異は阿良々木暦へ頭部を撫でる行為を求め、阿良々木暦はその求めに応じて穏やかに手を添えた。
- 穏やかな表情を浮かべた怪異は、自らの命に相当する莫大な霊力を忍野忍へ差し出し、首元へ牙を立てさせて吸血を受け入れた。
決着
- 忍野忍がすべての霊力を吸い尽くしたことにより、全盛期の怪異は現世から消滅した。
- 主が消失した結果、街や世界に溢れていた不完全な眷属群は元の人間へと復元され、並行世界における人類絶滅の危機は回避された。
その直後の結果
- 忍野忍は元の世界へ跳躍するための十分な霊力を手中に収めた。
- 鳥居に生じた空間の門へ飛び込んだ二人は、本来の時間軸における八月二十一日朝への帰還を達成した。
- 境内で目覚めた阿良々木暦は影の中に潜む相棒との絆を再確認し、参道を下りた地点で荷物を回収しに現れた八九寺真宵と再会して、平穏な日常へと復帰した。
巻末時点の状況
主人公の所在
- 本来の時間軸における北白蛇神社の境内から参道 並行世界での決戦を終えて時間跳躍を遂行し、八月二十一日朝の神社境内にて意識を取り戻した。
その後、忘れ物を届けるために参道の坂道へと歩みを進めた。
主人公の立場
- 通常の日常へ復帰した男子高校生 未曾有の破滅的事態を収束させ、吸血鬼化の後遺症を抱えながらも元の高校生活および日常の平穏を取り戻した。
主要人物との関係性
- 忍野忍 影の中に身を寄せる不可分の主従関係を維持する。
崩壊した並行世界の惨禍を目の当たりにした経験を通じ、互いの存在の絶対性と相棒としての結びつきをより強固なものへと高めた。 - 八九寺真宵 迷い牛の怪異としての彼女と再会を果たした。預かっていた荷物を無事に返還し、軽妙な掛け合いを交わす従前の交流へと戻った。
- 忍野扇 直江津高校へ転入してきた女子生徒としての関係性を保ち続ける。
解決に至った問題
- 並行世界における破滅の回避 全盛期の怪異が自らの霊力を差し出して消滅を選んだ結果、吸血鬼化していた並行世界の人類は元へと戻り、世界の崩壊が食い止められた。
- 本来の時間軸への帰着 獲得した強大な霊力を利用し、主人公と忍野忍は八月二十一日朝の本来の時間軸への生還を達成した。
- 忘れ物の返還 発端となっていた八九寺真宵の置き忘れたリュックサックを、本人の手へ直接手渡す目的を遂行した。
未解決の課題
- 夏休みの宿題の未消化 時間跳躍を試みる直接の動機となった宿題は一切片付いておらず、提出期日を迎えた朝の時点で白紙のまま残された。
- 不完全な吸血鬼としての主従関係 主人公と忍野忍との間に結ばれた中途半端な共存状態は、根本的な解消を見ないまま継続する。
今後の展開へ連なる要素
- 八九寺真宵が怪異として存続する現実 事故死を避ける歴史を放棄して本来の歴史を選択した結果、彼女が迷い牛の霊として街を彷徨い続ける状態が確定した。
- 忍野扇が残した問いの余波 物語の端緒において投げかけられたルールの遵守に関する言葉や、彼女自身の正体にまつわる不穏な気配が消えずに漂う。
忍野扇の回想
忍野扇との対話は、物語全体を貫く主題をあらかじめ提示する重大な前触れとして位置づけられる。夏休み終盤に交わされた奇妙なやり取りは、阿良々木暦が直後に引き起こす行動の危うさを鋭く浮き彫りにする。
忍野扇の素性と佇まい
・直江津高校へ転校してきた一年生の女子生徒として現れる。
・かつて怪異の事態を収拾した専門家である忍野メメの姪を自称する。
・底知れない異様さを漂わせ、暦に対して超然とした視座から数々の問いを投げかける。
対話における主要な論点
・赤信号の遵守に関する比喩
自身がどれほど優れた人間であろうと、赤信号という社会の規範を無視して前進してはならない旨を語る。自らを特別と見なして道理を外れれば、取り返しのつかない破滅を招くという戒めを示す。
・願望成就に伴う危うさ
人間が軽はずみに自らの望みを実現させようとする行為や、己の都合で運命そのものを捻じ曲げようとする姿勢に潜む落とし穴について言及する。
物語構造における機能と暗示
・安易な過去改変への警鐘
この直後に暦は夏休みの宿題を理由に過去へ跳躍し、善意から八九寺真宵を事故死から救い出すという大規模な歴史改変に手を染める。
・破局的な未来への予兆
個人の独善的な正義感で世界の道理を破った結果、全人類が吸血鬼化して文明が瓦解するという最悪の分岐世界を招く結末を先回りして批判する。
まとめ
忍野扇が投げかけた言葉は、暦の軽率な選択がもたらす悲劇的な結末を事前に照射する枠組みとして機能する。信号を守るという一見して平易な例え話の中に、秩序を逸脱した善意が引き起こす破滅の本質が集約される。
八九寺真宵の捜索
『傾物語 第閑話 まよいキョンシー』において、阿良々木暦と忍野忍が11年前の過去世界で行った八九寺真宵の捜索は、物語全体の動機と展開を形作る極めて重大な出来事に位置づけられる。過去へ跳躍した二人が辿った捜索の目的、道中の経過、そして歴史改変へと至る結末の全貌を以下に整理する。
捜索の目的と開始
・事故死の回避
8月20日深夜に11年前の5月13日へ時間跳躍した阿良々木暦と忍野忍は、翌5月14日に八九寺真宵が交通事故で命を落とす運命を阻止すべく捜索を開始する。
・自宅前での張り込み
暦と忍は5月13日の夜から八九寺真宵の自宅前へ向かい、夜を徹して張り込みを敢行する。
捜索の経過と予期せぬトラブル
・父親からの情報入手
5月14日の早朝、自宅から姿を現した真宵の父親と遭遇し、真宵が早朝5時に家出したという事実を知らされる。
・街中での探索と移動予測
離別した母親の家がある浪白公園付近を目指していると推測した二人は、通学路をはじめとする街中の捜索へ移行する。
・幼少期の羽川翼との遭遇
捜索の最中、暦は当時6歳の羽川翼と遭遇する。不審な態度を見せた暦に対し、幼い羽川翼は警戒心を強めて偽の道順を教え、暦を交番へ誘導する想定外の事態が生じる。
発見と救出の結末
・交差点での発見
交番の警官から身を隠しつつ追跡を継続した暦は、浪白公園近くの交差点においてついに八九寺真宵の姿を捉える。
・事故からの救出と歴史改変
真宵へトラックが衝突する寸前、暦が間一髪で飛び込んで突き飛ばし、無事に救出を果たす。この介入によって八九寺真宵が11年前に死亡するはずの歴史は改変を迎える。
まとめ
八九寺真宵を死の運命から救い出すために行われた過去世界での捜索は、予期せぬトラブルに見舞われながらも無事に救出という形で幕を閉じる。しかし、善意によって成し遂げられたこの歴史改変こそが、後に訪れる世界の崩壊や新たな異変を引き起こす発端となる。
十一年前への時間跳躍
夏休みの終盤に敢行された過去への跳躍は、平穏な日常を一変させ、世界規模の破滅をもたらす契機を形作る。些細な動機から始まった試みが想定外の事態を招き、未曾有の危機へと発展していく経緯を以下に整理する。
時間跳躍の動機
・宿題の未完了
八月二十日の深夜、阿良々木暦は夏休みの宿題に一切手を着けていない現実に直面する。
・安易な解決策の模索
暦は影に潜む忍野忍へ相談を持ちかけ、時間を前日の朝へ巻き戻せないか頼み込む。
時間跳躍の実行と予期せぬ失敗
・神社に宿る力の行使
忍野忍は、かつて自身が神として祀られていた北白蛇神社の鳥居に溜まる霊エネルギーを開放し、時間跳躍の術を発動する。
・十一年前への過剰跳躍
久方ぶりの大技ゆえに魔力の加減を誤り、予定していた一日前を大幅に超過し、十一年前の五月十三日へ漂着する。
過去世界での決断と歴史改変
・命日直前の把握
到着した過去の日時が、八九寺真宵が交通事故に遭って他界する前日と判明する。
・事故現場での介入
宿題への懸念を後回しにした暦は、翌十四日の朝、浪白公園付近の交差点でトラックに轢かれそうになった真宵を間一髪で突き飛ばして救出する。
現代への帰還と世界の崩壊
・並行世界への到達
真宵を救った後、忍の霊力回復を待って元の現代へ帰還するものの、人類が死滅して吸血鬼の成れの果てと化した破滅世界が広がる。
・歴史改変に伴う過大な代償
個人的な怠惰から逃れるために手を染めた時間遡行と過去の改変が、地球規模の崩壊を招く最悪の事態へと結実する。
まとめ
宿題の回避という軽率な理由から始まった時間跳躍は、善意に基づく過去改変を経て、文明そのものが瓦解した平行世界への到達という破局を迎える。一人の少女の運命を捻じ曲げた結果が世界の命運を狂わせる展開は、因果の重さと過去改変の恐ろしさを克明に物語る。
八九寺真宵の救出
阿良々木暦が十一年前の過去世界で実行した八九寺真宵の救出劇は、物語の核心を成す重大な転換点として位置づけられる。目の前の悲劇を回避しようとした純粋な善意が、やがて予想もしない巨大な因果の連鎖を呼び起こし、世界規模の異変へと発展していく一連の推移を以下に整理する。
交差点における救出の瞬間
・事故寸前の介入
十一年前の五月十四日、母親の家を目指して家出した八九寺真宵は、浪白公園付近の交差点で横断歩道を渡り始める。その前方から巨大なトラックが迫り、本来の歴史であれば命を落とすはずの衝突の瞬間を迎える。
・間一髪の突き飛ばし
横断歩道上へ身を投げ出した阿良々木暦は、真宵の身体をトラックの進行方向から力任せに突き飛ばし、命の危機から救い出すことに成功する。
救出直後のやり取り
・安堵と反動の行動
無事に救出を果たした暦は、過度の安堵と興奮から即座に普段通りの悪ふざけや過剰な接触に及ぶ。
・真宵からの拒絶反応
助けられたはずの真宵は、見知らぬ青年からの不審な行動に激しく動揺し、強い警戒心とともに暦を突き飛ばして距離を取る。
歴史改変が引き起こした世界崩壊
・怪異としての存在消失
交通事故を回避して生存を継続した結果、八九寺真宵が死後に怪異である迷い牛へ変貌を遂げる未来そのものが消滅を迎える。
・本来の守護者の不在
迷い牛が存在しなくなった分岐世界において、暦はブラック羽川との対峙に際して必要な助力を得られず、命を落とす結末を辿る。
・吸血鬼の暴走と人類の死滅
暦を喪失した絶望から全盛期の吸血鬼が正気を失い、地球上の全人類を吸血鬼の成れの果てへと変貌させ、文明の崩壊を招く。
善意がもたらした過酷な結末
・皮肉な因果律の顕在化
一人の幼い少女を救いたいという純真な親切心が、巡り巡って自身の死因を形成し、地球規模の破滅世界を成立させるという極めて過酷な逆転現象を突きつける。
・ルールの逸脱に対する代償
個人の感情に任せて過去の因果を捻じ曲げる行為が、どれほど壊滅的な結末を招くかという物語の主題を象徴する出来事として完結する。
まとめ
八九寺真宵の救出劇は、正義感に基づく行動が必ずしも幸福な結末を約束しないという冷徹な現実を浮き彫りにする。善意による過去の改変がもたらした世界の変容は、因果の重みと歴史を操作することの恐ろしさを鮮烈に刻み込む。
滅びた世界の帰還
過去の改変により行き着いた破滅的な時間軸からの脱出は、物語の結末を決定づける最重要局面として描かれる。善意による介入が引き起こした凄惨な現実を受け止め、本来の時系列を回復させるまでの足取りを以下に整理する。
崩壊した世界の状況
・人類の死滅と吸血鬼化
八九寺真宵を事故死から救った結果として到達した八月二十一日の世界では、全人類が吸血鬼化して理性を失い、文明が壊滅状態へ陥る。
・守護者の喪失と怪異の暴走
怪異化しなかった八九寺真宵の助けを得られず阿良々木暦が落命したため、主を失って正気を失った全盛期の吸血鬼が全世界を巻き込んで暴走を遂げる。
帰還に向けた障壁
・時間跳躍に必要な魔力の枯渇
元の時間軸へ回帰するには過去へ再度跳躍する必要が生じるものの、暦に同行する幼少化した吸血鬼には空間を越える余力が残されない。
・孤立無援の窮地
無数の異形に包囲される中、脱出の手段を断たれて立ち往生を余儀なくされる。
全盛期の吸血鬼との対峙と献身
・北白蛇神社での接触
敵性存在の群れに迫られた神社境内において、生存していた異世界の全盛期たる吸血鬼本体が姿を現す。
・命と力の譲渡
強い絆で結ばれた別世界の主従関係を目の当たりにした怪異の真祖は落涙し、自らの命と膨大な霊力を同行側の吸血鬼へ吸収させる道を選ぶ。
因果の修正と平穏への帰着
・十一年前への再跳躍
譲り受けた莫大な力を発動させ、二人は再び十一年前の同一時点へと時空を遡る。
・本来の歴史の受容
八九寺真宵を人為的に救済した行為を白紙へと戻し、彼女が落命して迷い牛へと転じる悲劇の因果を甘受する。
・元の時間軸への生還
修正を終えた暦と忍は本来の八月二十一日へと無事生還を果たし、公園において怪異としての少女と再会を果たす。
まとめ
破滅した世界からの帰還劇は、一度歪めた運命を元通りに修復することの過酷さと、あるべき日常の尊さを痛切に描き出す。自己犠牲の上に成立した歴史の再構築を経て、二人は宿題と怪異が待つ本来の生活へと足を踏み戻す。
8.猫物語(白)第懇話 つばさタイガー
まとめ
10.花物語 第変話 するがデビル
登場キャラクター
私立直江津高校
阿良々木暦
私立直江津高校の三年生男子生徒。半吸血鬼の体質を持つ。夏休みの宿題が終わらず忍野忍と過去世界へ跳躍した。
・所属組織、地位や役職
私立直江津高校三年生。
・物語内での具体的な行動や成果
過去世界で交通事故に遭う直前の八九寺真宵を救出した。帰還した現代で人類消滅の危機に直面し、並行世界(ルートX)の全盛期キスショットと対峙する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元の世界(ルートA)へ無事帰還を果たし、日常の生活へ復帰した。
忍野扇
直江津高校へ転校してきた女子生徒。不気味な雰囲気を漂わせ、阿良々木暦に信号やルールの遵守について問いかける。
・所属組織、地位や役職
私立直江津高校転校生。
・物語内での具体的な行動や成果
阿良々木暦に対し「夢を叶える危険性」や「信号を守る重要性」についての哲学的な問いを投げかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
阿良々木暦に対して謎めいた印象を残す。
中学校・小学校
羽川翼
過去世界(11年前)において下校途中に阿良々木暦と遭遇した6歳の少女。
・所属組織、地位や役職
6歳の女子小学生。
・物語内での具体的な行動や成果
不審な言動を取る阿良々木暦に対し、嘘の道順を教えて交番へ誘導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
阿良々木暦の正体を知らないまま交番へ向かわせる。
八九寺真宵
11年前の事故死を回避して大人に成長した22歳の女性、および元の世界で怪異として存在する小学生の少女。
・所属組織、地位や役職
小学生(ルートAでは迷い牛の怪異)。ルートXでは22歳の成人女性。
・物語内での具体的な行動や成果
過去世界で阿良々木暦にトラックから救出された。ルートXでは成長した姿で登場し、暦と忍に忍野メメからの手紙を手渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルートAへの帰還後、怪異として阿良々木暦と再会を果たした。
専門家・怪異・その他
斧乃木余接
影縫余弦に従う式神の童女。無表情で淡々と阿良々木暦と対話を行う。
・所属組織、地位や役職
式神(怪異)。
・物語内での具体的な行動や成果
交差点で阿良々木暦と出会い、アイスクリームを食べながら怪異の死や幽霊の幸せについて会話を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
阿良々木暦に「幽霊になって幸せか」という問いを八九寺へ確認するよう託す。
忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
阿良々木暦の影に潜む金髪の少女。元は伝説の吸血鬼であり、暦と一心同体の主従関係を結ぶ。
・所属組織、地位や役職
吸血鬼。
・物語内での具体的な行動や成果
阿良々木暦の提案に応じて鳥居の霊的エネルギーを開放し、11年前の過去へ時間跳躍した。ルートXの全盛期キスショットから霊的エネルギーを吸い取り、元の世界への帰還を成功させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
阿良々木暦との強い絆を再確認し、影の中での共存を継続した。
八九寺の父親
11年前の過去世界における八九寺真宵の実父。
・所属組織、地位や役職
八九寺真宵の父親。
・物語内での具体的な行動や成果
自宅前にて張り込みを行っていた阿良々木暦と忍野忍に対し、八九寺真宵が朝5時に家出した事実を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
真宵の家出情報を阿良々木暦へもたらす。
ゾンビ(吸血鬼の成れの果て)
ルートXにおいて、全盛期の力を取り戻したキスショットにより世界中の人間が吸血鬼化・肉体崩壊させられた姿。
・所属組織、地位や役職
吸血鬼の成れの果て。
・物語内での具体的な行動や成果
夜間の北白蛇神社において、生存者である阿良々木暦と忍野忍を取り囲んで襲撃を図った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルートXのキスショット消滅に伴い、元の人間へと戻された。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(ルートX)
阿良々木暦が死亡した並行世界(ルートX)で全盛期の力を取り戻した伝説の吸血鬼。世界を吸血鬼化させた後に身を焼いたが死にきれず生き残った。
・所属組織、地位や役職
伝説の吸血鬼。
・物語内での具体的な行動や成果
成功した主従関係を築いている阿良々木暦と忍野忍の姿を見て涙を流した。自らの意思で命とエネルギーを忍野忍に吸わせて消滅する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自らの命を差し出すことで、ルートXの人類を救い、暦たちの帰還を可能にした。

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8.猫物語(白)第懇話 つばさタイガー
まとめ
10.花物語 第変話 するがデビル
展開まとめ
第閑話 まよいキョンシー
忍野扇についての想起
阿良々木暦は八九寺真宵をめぐる出来事を語るにあたり、冬に出会った後輩である忍野扇の存在を思い出した。彼女は交差点の信号機が同時に赤になる三秒間の空白時間や、安全と危険のパラドックス、夢を叶えることの無意味さについて語りかける人物であった。阿良々木暦は彼女の屁理屈を思い返しながら、迷子の少女と過ごしたひと夏の出来事を振り返った。
斧乃木余接との遭遇
夏休みの最終日、阿良々木暦は交差点で式神の童女である斧乃木余接と再会した。影縫余弦の同行がないことを確認した阿良々木暦は、斧乃木余接にアイスクリームをおごり、自身が背負っていた八九寺真宵の忘れ物であるリュックサックについて話した。二人は元人間である怪異の存在理由や死について語り合い、斧乃木余接は八九寺真宵に幽霊になって幸せかどうか尋ねるよう頼んで立ち去った。
八九寺真宵の捜索と忍野忍との対話
八九寺真宵を見つけられなかった阿良々木暦は、夜になって自室で影の中にいた忍野忍と会話を交わした。八九寺真宵への接し方や怪異としてのあり方に悩む阿良々木暦に対し、忍野忍は深く考えるべきではないと告げた。さらに忍野忍は、阿良々木暦が夏休みの宿題を一切やっていない事実を指摘した。
宿題の山と過去への移動の提案
残された二時間で膨大な宿題を終わらせる手段がないと悟った阿良々木暦は途方に暮れた。友人に写させてもらうこともできず絶望する阿良々木暦に対し、忍野忍は時間を巻き戻すことを持ちかけた。阿良々木暦はその提案を受け入れ、二人で時間移動を試みることにした。
北白蛇神社での時間跳躍
二人は怪異のエネルギーが溜まる北白蛇神社へ向かい、鳥居をくぐることで過去へ跳ぶ準備を整えた。忍野忍が呪文を唱えると鳥居の内側が黒い壁へと変化した。阿良々木暦は半信半疑のまま忍野忍と手を繋ぎ、昨日の世界を目指して黒い空間へと飛び込んだ。
十一年前への転落
跳躍の衝撃で意識を失っていた阿良々木暦は、目を覚ますと山の中腹に倒れていた。周囲の景色や停止した携帯電話、下校中の女子中学生への聞き込みにより、到着した日時が前日ではなく十一年前の五月十三日であることが判明した。予定を大幅に超過した時間移動に阿良々木暦は愕然とした。
過去の町と阿良々木家の確認
阿良々木暦と忍野忍は変化した町並みを歩き、新築同然の阿良々木家で七歳当時の幼い阿良々木暦の姿を目撃した。忍野忍は自身のエネルギーを使えば未来へ帰還できると説明し、二人は歴史の修正力により大筋の運命は変わらないという前提のもとで行動を開始した。
八九寺真宵の救出計画
翌日の母の日が八九寺真宵の命日であることに気づいた阿良々木暦は、彼女を交通事故から救う決意を固めた。生前に母親の元へ向かおうとしていた八九寺真宵を助ければ、怪異にならずに済むと考えた阿良々木暦は、忍野忍の協力を取り付けて母親の家を探すことにした。
幼少期の羽川翼との接触
手がかりを求めて歩いていた阿良々木暦は、本を読みながら歩く六歳の羽川翼に遭遇した。不審者として警戒されつつも道を尋ねたところ、案内された先は交番であった。交番の警察官から事情を聞き出した阿良々木暦は、八九寺家と母親である綱手家の所在地を特定した。
待ち伏せ作戦の立案
八九寺家を見張って尾行する計画を立てた二人は、夜を明かす場所を探した。学習塾跡がまだ存在しない更地であることを確認した阿良々木暦は、近くの公園の土管の中で忍野忍とともに翌朝を待った。
八九寺家の前での張り込み
翌朝、怪しまれないよう中学生の姿に変化させた忍野忍を連れ、阿良々木暦は八九寺家の前で張り込みを開始した。しかし昼前になっても八九寺真宵は現れず、家から飛び出してきた父親の言動から、彼女が朝早くに家出していたことが判明した。
浪白公園での発見と暴走
慌てて母親の家へと走った阿良々木暦は、浪白公園で地図を見つめて迷子になっている八九寺真宵を発見した。接触を図るべく背後から近づいた阿良々木暦だったが、勢い余って彼女のスカートをめくってしまい、驚いた八九寺真宵は道路へと逃走した。
交差点での激突と救出
赤信号の横断歩道に飛び出した八九寺真宵に向かってトラックが突進してきた。吸血鬼の力を発揮した阿良々木暦は道路へ飛び込み、八九寺真宵を突き飛ばしてトラックの衝突から救い出した。無事を確認した阿良々木暦は、母親の家へ行こうとしていた八九寺真宵を目的地まで案内した。
別れと現代への帰還
綱手家の前に到着した八九寺真宵を見届けた阿良々木暦は、親子が再会したことを確認してその場を去った。役目を終えた二人は北白蛇神社へと戻り、境内のエネルギーを使って開いたゲートから十一年後の現代へと飛び込んだ。
滅びた世界への帰還
現代へ戻った阿良々木暦と忍野忍を出迎えたのは、人影が完全に消失したゴーストタウンであった。電気や水道は止まり、車道には一台の車も走っておらず、町全体が長期間放置された廃墟のように荒廃していた。
六月十四日の痕跡
自宅を調べた阿良々木暦は、新聞や学習ドリルが六月十四日を最後に途切れていることを突き止めた。約二ヶ月前に突如として人類が消滅した事実を把握した二人は、八九寺真宵を救った過去の改変が何らかの破滅的な結果を引き起こしたと推測した。
再度の時間跳躍の決意
世界が滅びた原因を突き止めて歴史を修復するため、阿良々木暦は再び北白蛇神社から過去へ跳ぶことを提案した。六月十四日の直前を目指し、何度失敗しても歴史を見守り修正する覚悟を決めた阿良々木暦は、忍野忍とともに事態の収拾へ向けて動き出した。
8.猫物語(白)第懇話 つばさタイガー
まとめ
10.花物語 第変話 するがデビル
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