どんな本？
役立たずとされた生産系魔術の適性を持つ少年・ヴァンが、前世の知識と魔術を駆使して無名の村を発展させ、領地を守るファンタジーである。本巻では、イェリネッタ王国と同盟を結ぶシェルビア連合国の動きを察知したヴァンが、陥落寸前の要塞センテナを救うため奔走する姿が描かれる。生産系魔術による要塞防衛や、二足飛竜（ワイバーン）との戦い、さらには反攻作戦の提案など、領地運営と軍事戦術の両面で活躍する物語となっている。
主要キャラクター
• ヴァン・ネイ・フェルティオ：生産系魔術の適性を持つ少年領主。前世の知識を活かし、領地防衛と発展に尽力する。
• エスパーダ：元フェルティオ侯爵家の筆頭執事であり、優れた魔術師。ヴァンの支援に尽力する。
• ディー：フェルティオ侯爵家騎士団の副団長。剛剣を操り、ヴァンの護衛を務める。
• パナメラ：ヴァンに同行する仲間の一人。反攻作戦を提案するなど、積極的な行動力を見せる。
• ジャルパ・フェルティオ：ヴァンの父であり、要塞センテナの防衛を指揮する侯爵。
物語の特徴
本作は、生産系魔術という地味な能力を活かして村や要塞を発展・防衛する戦略的な展開が特徴である。主人公が単なる戦闘力に頼らず、知識と創意工夫で困難を乗り越える点が大きな魅力となっている。また、少年領主ながら周囲を巻き込み、強固な組織を築き上げる成長物語でもあり、他の異世界ファンタジー作品と一線を画している。
出版情報
• 出版社：オーバーラップ（オーバーラップノベルス）
• 著者：赤池 宗
• イラスト：転
• 発売日：2024年3月25日
読んだ本のタイトル
お気楽領主の楽しい領地防衛 6 ～生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に～
著者:赤池宗 氏
イラスト: 転 氏
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あらすじ・内容
ハズレ適性の生産魔術で、父侯爵の窮地に最強の救援を!!
“役立たず”の生産系魔術適性により、侯爵家を追放された少年・ヴァンは、前世の知識と生産系魔術を活用し、村を大きく発展させていた。
イェリネッタ王国と同盟関係にあるシェルビア連合国。商人からもたらされた情報で、そんなシェルビア連合国の怪しい動きを察知したヴァンは、国境にある要塞センテナへと向かう。
そこでは、侯爵である父・ジャルパの率いる軍がシェルビア連合国軍相手に熾烈な防衛戦を繰り広げていたものの、要塞は陥落寸前の状況に陥っていた。
窮地に駆け付けたヴァンたちは、ハズレ適性の生産系魔術で要塞センテナの守りを確かなものとし、アルテの一対の銀騎士（アヴェンタドール）で二足飛竜（ワイバーン）を討ち――。
しかし、同行していたパナメラはそれだけでは飽き足らず、反攻作戦を提案してきて――!?
追放された幼い転生貴族による、お気楽領地運営ファンタジー、第６幕！
感想
ヴァンが自身の領地を守るため、敵国に逆侵攻を仕掛けた展開は、ただただ痛快であった。
今回、敵の橋頭堡となっていた砦を奪い取り、見事に要塞化してしまうあたり、ヴァンらしさ全開であった。
帰還したあとも、休む間もなく別の国境から迫る大軍を察知し、即座に動いた判断力には舌を巻くしかない。
とくに印象に残ったのは、父ジャルパ・フェルティオ侯爵の負傷というシリアスな展開であった。
重傷を負った父のため、ヴァンが命を懸けて戦場に飛び込む姿には胸が熱くなった。
崩れかけた要塞を、一夜にして空襲対応型ドームへと改造してしまう発想力と実行力には、ただ驚くばかりであった。
兄ムルシアを一城の主に任じる場面や、戦争中のイェリネッタ王国相手に分からせをかます場面も見応えがあった。
もはや領主どころか一国の宰相並みの活躍ぶりである。
イェリネッタ王国とシェルビア連合国が連携してくるという大局の中で、ヴァンは冷静に情勢を分析し、父への疑惑も自ら確かめに赴く。
その真摯な姿勢に、幼いながらも領主としての自覚の深まりを感じた。
本巻では、近代兵器の登場による軍略の変化も描かれた。
敵将が感じるノスタルジーがまた良い味を出しており、単なる戦記ものに終わらない奥行きを生んでいた。
黒色玉、大砲、さらには飛竜による空爆と、次々に襲いかかる脅威に対し、ヴァンたちは工夫を凝らして対抗していく。
その手に汗握る攻防は、読者を夢中にさせるに十分であった。
今回特筆すべきは、ヴァン自身が絶体絶命のピンチに陥る場面である。
これまで無双気味だった彼が、敵の暗殺者に追い詰められる描写には新鮮な緊張感があった。
助けに駆けつけたカムシンの活躍も光り、脇役たちの成長と絆の強さを感じさせる名場面であった。
物語の終盤では、ヴァンの異母兄たるヤルドとセストの姿も描かれ、次巻への期待を高める余韻を残した。
彼らが今後どのように動くのか、ヴァンとの関係がどう変化していくのか、ますます目が離せない。
戦い、日常、家族、仲間――多彩な要素が絶妙に絡み合った第６巻は、読みごたえたっぷりでありながらも、しっかりと心に温かさを残す作品であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
序章 戦争の行方
シェルビア連合国とイェリネッタ王国の動向
アポロからの急報とイェリネッタ王国の策略
アポロは急ぎヴァンのもとを訪れ、イェリネッタ王国が直接侵攻ではなく、シェルビア連合国を利用して動いていることを報告した。シェルビア連合国は東西に文化が分かれ、東側がイェリネッタと、西側がスクーデリア王国と旧来の同盟関係を持っていたため、内部分裂の兆しが見え始めていた。
情報戦とフェルティオ侯爵家の疑惑
シェルビア連合国の東側がイェリネッタに協力し、西側がフェルティオ侯爵家を通じてスクーデリアに情報を流している可能性が指摘された。しかし、フェルティオ侯爵家から国王への情報提供が滞っていることが問題視され、ジャルパ侯爵が裏切ったのではないかという疑惑が浮上した。
ヴァンによる情勢整理と予測
ヴァンはシェルビア連合国の動きやフェルティオ侯爵家の行動を整理し、ジャルパ侯爵が自らの失態を恐れ、慎重に動いている可能性を推測した。また、フェルティオ領の端に位置するセアト村が今後の動向の鍵を握ると分析し、偵察に赴く決意を固めた。
ムルシア視点での防衛戦と脅威の分析
一方、ムルシアは城塞都市防衛の指揮を任され、イェリネッタ王国軍の大砲による攻撃に苦しんでいた。戦局の中で、大砲の量産やシェルビア連合国との同盟による多方面侵攻の可能性が議論され、国王はヴァンに事態の打開を託す方針を固めた。
戦局に対する提案とパナメラ・ムルシアの成長
パナメラはイェリネッタ王国の時間稼ぎの意図を読み、多方面侵攻や同盟軍形成の可能性を提言した。ムルシアもシェルビア連合国の脅威を指摘し、ヴァンをフェルティオ侯爵領に派遣する案を出し、国王に認められた。これにより、ムルシアは指揮官としての成長を示した。
第一章 出発
フェルティオ侯爵領への旅と準備
高級馬車『カリナン』の制作
ヴァンは長旅を快適にするため、超高級観光列車『シチセイ』をモデルに豪華な馬車『カリナン』を制作した。外装は黒塗りに金細工を施し、内装には高級木材と魔獣革を使用して王族級の豪華さを演出した。この完成度に、商業ギルド所属のアポロも驚嘆した。
出発準備と少人数編成の不安
ロウが用意した保存食や調味料の確保により、長旅の準備は整った。しかし、ディーやエスパーダが村に残るため、ヴァンは精鋭のみを連れて少数で移動することとなり、不安を抱いた。
アプカルル族とドワーフ達との交流
旅立ち前、アプカルル族から希少なオリハルコン鉱石を授与された。ドワーフ達もオリハルコンに興奮し、ヴァンに鎧製作を懇願した。ヴァンはミスリル製鎧の完成を条件に製作を許可し、ドワーフ達は意気揚々と鍛冶場に戻った。
仲間たちの装備と戦力整備
カムシン、ティル、アルテ、ロウらはそれぞれ万全の装備を整え、機械弓部隊とともに旅の準備を完了させた。ヴァンは彼らの頼もしさに安心感を覚えた。
パナメラ子爵の合流と旅の安全確保
出発直前にパナメラ子爵がセアト村に到着し、騎士団とともに同行することを申し出た。ヴァンは彼女の申し出を喜び、旅の安全が確保されたことに安堵した。
豪華馬車の影響とパナメラの評価
道中、ヴァンの制作した高級馬車が話題となり、パナメラはその贅沢さに呆れながらも、貴族社会での影響力を高める有効な手段であると評価した。
領都到着と住民たちの歓迎
フェルティオ侯爵領の領都に到着したヴァン一行は、住民たちから熱烈な歓迎を受けた。ヴァンは旧知の住民たちと再会し、感慨に浸りながらもセアト村への移住を宣伝した。
フェルティオ侯爵家との緊張と物資補給
領主である父ジャルパ侯爵は出立して不在であり、ヴァンは街の協力を得て物資補給を迅速に完了させた。街の人々の厚意に感謝しつつ、再出発の準備を整えた。
ティルとの過去の絆と旅の続行
ティルがヴァンに付いてきた経緯を語り、かつての激戦を振り返る場面があった。パナメラはそれを微笑ましく受け止め、ヴァン一行は平和で充実した旅を続けた。
第二章 センテナの状況
要塞センテナ攻防戦
要塞センテナの到着と状況確認
ジャルパ・フェルティオ侯爵は要塞センテナに到着し、その堅牢な構造に安堵した。ストラダーレ団長に偵察を命じ、センテナ内部に進入した。センテナの守備隊長タルガと合流し、敵情を確認した結果、イェリネッタ王国がシェルビア連合国を利用してスクーデリア王国軍を分散させようとしていると見抜いた。
イェリネッタ王国の策略と防衛方針の決定
タルガと情報を共有し、イェリネッタ王国が黒色玉と大砲という新兵器を使用していることを確認した。ジャルパは敵の策略を逆手に取り、スクーデリア王国軍の戦力分散を避けるべく、センテナでの防衛戦を指揮することを決意した。
シェルビア連合国軍の侵攻とセンテナ防衛戦開始
シェルビア連合国軍は圧倒的な兵力と新兵器を駆使し、センテナ要塞を攻撃し始めた。ジャルパは迅速に指揮を執り、ストラダーレを中心に防衛陣形を整備した。兵士たちに対し、従来の防衛戦術とは異なる柔軟な対応を指示し、大砲による攻撃を警戒させた。
敵の奇襲とワイバーンによる空襲
センテナは崖上からの大砲攻撃に晒され、さらに飛竜ワイバーンが黒色玉を投下する空襲も加わった。ジャルパは迅速に魔術を行使し、崖上を焼き払って敵を排除しようと試みた。タルガと連携し、要塞内部からの反撃を開始した。
ジャルパの奮闘と魔術による反撃
ジャルパは強力な火炎魔術を駆使してワイバーンを撃退し、センテナ防衛の時間を稼いだ。彼の魔力と指揮能力は、兵士たちに希望を与え、戦意を高めた。しかし、敵の攻撃は激しさを増し、籠城戦の限界が近づいていた。
シェルビア連合国軍の認識と戦局の推移
シェルビア連合国軍の指揮官タウンカー・ピラーズ伯爵は、センテナの陥落を確信していたが、ジャルパの圧倒的な魔力により戦況が膠着することを認識した。伯爵は、新たな戦術を考慮しつつも、魔術師の存在が戦局を左右することを再認識し、時代の変化に複雑な感情を抱いた。
第三章 防衛
要塞センテナ防衛戦とヴァン一行の活躍
センテナ陥落危機と打開策の模索
フェルティオ侯爵の魔術によりセンテナの防衛は一時的に持ち直したが、援軍を期待できない状況で内部では議論が停滞していた。タルガとフェルティオ侯爵は合理的に考え、起死回生の突撃作戦を検討し、侯爵は後方支援を担うこととなった。
ヴァン一行のセンテナ救援計画
要塞の危機を察知したヴァンは、セアト村騎士団とパナメラ子爵騎士団を指揮してセンテナ救援に向かった。超連射式機械弓と装甲馬車を用意し、アルテの操る強化人形を先行させて城門突破を試みた。
センテナ内部への進入と状況確認
ヴァンたちは瓦礫だらけのセンテナ内部に侵入し、生存していた騎士たちと合流した。城壁の隙間から戦場を確認すると、焦土と化した街道と無数の死体が目に映り、センテナが絶望的状況に陥っていることを理解した。
ワイバーン掃討作戦の開始
敵の空襲を担うワイバーンを排除するため、アルテの操る強化人形が出撃した。人形たちは驚異的な運動性能と高威力のミスリル大剣でワイバーンを次々と撃墜し、センテナへの空爆の脅威を排除することに成功した。
ヴァンの存在と騎士たちの反応
ヴァンが名乗ると、センテナ騎士団は彼の存在に歓喜し、希望を見出した。彼の若さと実力、そして指揮能力に対する期待が高まる中、ヴァンは冷静にワイバーン討伐とセンテナ防衛強化の方針を打ち出した。
アルテと傀儡魔術の驚異
アルテの操る人形たちの異常な強さにパナメラをはじめ騎士たちは驚愕した。本来傀儡魔術では不可能とされる精密な戦闘行動を、アルテは難なく実現し、ヴァンの作った高性能武具との相乗効果で圧倒的な戦力となった。
第四章 恐るべき事態
ジャルパ・フェルティオ侯爵の撤退戦とヴァン一行の救援
ジャルパ侯爵の苦戦と撤退決断
ジャルパ・フェルティオ侯爵は、センテナ防衛戦において敵の挟撃と成竜の出現に直面した。狭い街道での奇襲と大量歩兵による波状攻撃に追い込まれ、退却を決断した。魔術による足止めを試みるも、大砲と黒色玉による攻撃で騎馬隊は壊滅的被害を受け、自身も重傷を負った。
タルガの奮闘と侯爵救出
騎士団副団長タルガは侯爵を支え、退却の指揮を執った。地竜の接近に対して土壁や魔術で時間を稼ぎつつ、黒色玉と敵騎兵の追撃を受けながらも、負傷した侯爵をセンテナへ運ぼうと奮闘した。
ストラダーレの到着と防衛支援
危機的状況の中、ストラダーレが騎馬で駆けつけ、敵騎兵を斬り伏せながら支援に入った。タルガと共に地竜の進軍を食い止めるため連携し、黒色玉や魔術を駆使して時間を稼いだ。
地竜との死闘と騎士たちの苦戦
地竜に対しタルガとストラダーレは全力で応戦したが、圧倒的な力の前に苦戦を強いられた。地竜のブレスや突進を受けながらも、一時的に退却の隙を作ることに成功したが、タルガは右腕の負傷により限界に近づいた。
ヴァン一行の救援と地竜撃破
突如現れたヴァン・ネイ・フェルティオ男爵率いる一団が、機械弓と重武装馬車を用いて援護を開始した。人外の動きで地竜に挑んだ二人の騎士が、驚異的な剣技で地竜の前脚と顎を切断、さらに馬車に搭載された巨大弩により地竜の急所を貫き、撃破に成功した。
タルガとヴァン一行の合流
タルガはヴァンの指示に従い、重傷を負いながらもストラダーレと共にヴァンの用意した馬車に避難した。馬車内ではヴァン、パナメラ、カムシンらと対面し、改めてヴァン一行の実力と頼もしさを認識した。
第五章 最強の援軍
要塞センテナ防衛とヴァンの奮闘
ストラダーレとの再会と忠誠の誓い
ヴァンはストラダーレと再会し、彼の忠誠と感謝の言葉を受けた。ストラダーレはヴァンの護衛を自ら申し出て、馬車の周囲警護にあたった。
タルガ団長との交流と戦局の確認
馬車内で国境騎士団団長タルガと対面したヴァンは、彼の壮絶な戦歴を目の当たりにした。タルガの報告からセンテナの危機的状況を把握し、再編と反撃のための準備に入った。
アルテとパナメラによる後衛支援
ヴァンの指示でアルテとパナメラが後衛支援を実施した。アルテの傀儡魔術とパナメラの魔術が敵軍の進撃を食い止め、タルガは二人の実力に驚愕した。
防衛体制の再編と城内への退避
センテナへ退却したヴァン一行は、騎士団と協力して中庭へ馬車を停めた。ヴァンは城壁の損害や騎士団の疲弊を確認し、今後の作戦を模索した。
ジャルパ侯爵の重傷と緊急治療
ヴァンは父ジャルパの重傷を知り、深く動揺した。パナメラの提案により、焼灼止血を施して命を繋ぐ賭けに出た。治療は成功し、ジャルパは辛うじて一命を取り留めた。
パナメラへの感謝と戦線復帰準備
ヴァンはパナメラに深く感謝し、周囲の騎士たちも敬意を表した。パナメラは感情を隠しつつ作戦会議へ向かい、ヴァンも心を切り替えて防衛戦の再建に着手した。
作戦会議と新戦術の提案
ヴァンはセンテナ国境騎士団とパナメラ子爵騎士団を交えた作戦会議に参加し、籠城と出撃の両立による戦術を提案した。これにより、現有戦力で防衛を継続する方針が固まった。
砦の強化作業と戦場の準備
ヴァンは土の魔術師たちと連携し、バリスタと城壁の改修作業を進めた。強化された防衛設備により、センテナは再び守りの拠点として機能し始めた。
敵軍の接近と戦闘準備の完了
シェルビア連合国軍が陣形を整えて進軍してきたが、ヴァンは迅速に対応し、バリスタによる迎撃準備を整えた。敵の大砲による砲撃にも即座に対応し、城壁の破損個所を修復して守備体制を整えた。
センテナ防衛戦における混乱とヴァンの奮闘
イスタナ王子の進言と却下
イスタナ・イェリネッタ王子はセンテナ攻防戦における敗北を予感し、兄コスワースに退却を進言した。しかしコスワースは楽観的な見通しを示し、イスタナの意見を怒りと共に退けた。
コスワースの作戦変更と飛竜投入
コスワースはセンテナの城壁修復力に驚愕しつつ、戦局打開のため飛竜部隊による空爆を命じた。また、最後の地竜を投入し、自らも戦闘に加わる決意を固めた。
センテナからの奇襲と敵陣崩壊
センテナから現れた二体の銀騎士により、シェルビア連合軍の陣形は崩壊した。コスワースはこの急襲に動揺しつつも、騎士団に土魔術と火砲で対抗するよう命じた。
ヴァンとアルテの人形作戦
ヴァンは城壁上に防護壁を設置し、アルテに操らせた二体の銀騎士型人形を敵陣に突入させた。人形たちは驚異的な速度と威力で敵騎士団を蹴散らし、戦場に混乱をもたらした。
飛竜部隊の来襲とパナメラの迎撃
飛竜部隊が出現したため、ヴァンはパナメラに迎撃を依頼した。パナメラはフェルティオ侯爵に匹敵する魔力で空を焼き払い、飛竜を撃退した。ヴァンはバリスタ隊にパナメラの護衛を命じた。
敵奇襲兵によるヴァン襲撃
混乱の中、ヴァンは四人の黒装束の奇襲兵に狙われた。ヴァンはオリハルコン製の剣で必死に応戦したが、数の差に追い詰められた。
カムシンの救援と敵撃退
カムシンが必死に戦い、ヴァンを救出した。ヴァンも敵の剣を弾きながら抵抗し、カムシンの援護によって間一髪のところで命を繋いだ。
第六章 カムシンの魔術
センテナ防衛戦後の休息と再起
暗殺者襲撃とカムシンの奮闘
ヴァンとカムシンは暗殺者たちの襲撃を受けたが、カムシンの奮闘により危機を脱した。オリハルコンの剣を用いたヴァンの支援と、カムシンの機転で暗殺者を退けたが、背後から氷の魔術による攻撃を受け、二人は地面に倒れ込みながらも回避に成功した。
ストラダーレ騎士団の救援と暗殺者撤退
ストラダーレ率いる騎士団が到着し、暗殺者たちは撤退を余儀なくされた。ヴァンとカムシンは救助され、ヴァンはロウが護衛を離れた理由を説明し、ストラダーレの叱責を受ける形となった。
カムシンへの騎士としての称賛
カムシンの活躍を認めたストラダーレは、彼を正式な騎士と認める発言を行った。カムシンは深く感激し、ヴァンもそれを祝福した。ストラダーレはカムシンへの褒章をフェルティオ侯爵および国王に進言する意向を示した。
センテナ防衛戦の勝利とヴァンの静養
センテナを巡る戦いは、イェリネッタ王国とシェルビア連合国の撤退によって勝利に終わった。ヴァンは疲労困憊のまま部屋に戻り、ティルやアルテの看病を受けながら静養に努めた。
カムシンの魔術適性と自己肯定
休養中、ヴァンはカムシンが「盗みの魔術」で敵の剣を奪ったことを知った。カムシンは自らの魔術に自信を持てずにいたが、ヴァンの励ましにより少しずつ自己肯定感を取り戻していった。
フェルティオ侯爵の容態と回復
重傷を負っていたフェルティオ侯爵ジャルパが意識を取り戻した。ヴァンは面会し、ジャルパからセンテナを難攻不落の要塞にするよう命じられた。ヴァンはその期待に応える決意を固めた。
新たなセンテナ要塞の完成
ヴァンは改修作業を進め、センテナ要塞を全面的に強化した。城壁は厚みを増し、居住空間や浴場、食堂を完備し、バリスタも大量に設置した。防衛力と生活環境を両立させた要塞は、タルガやパナメラをはじめとする仲間たちを驚かせた。
要塞内部の特徴と戦闘設備
要塞内には複雑な構造の城壁、急な階段、防衛用の小型バリスタなどが配備された。屋上には飛竜への対策として可動域の広いバリスタが設置され、全体で三十台を超える防衛兵器が整備された。
ヴァンの決意と仲間たちの信頼
ヴァンは新たなセンテナ要塞を背に、防衛への強い決意を固めた。ティル、アルテ、カムシン、ロウら仲間たちも彼を支える意志を新たにし、スクーデリア王国の防衛に臨むこととなった。
第七章 イェリネッタ王国の思惑
センテナ防衛後の反撃とシェルビア連合国軍の混乱
コスワース本営での焦燥と戦術議論
センテナを陥落させるための会議は紛糾していた。イェリネッタ王国とシェルビア連合国の指揮官たちは互いに非難し合い、城壁の強固さと謎の騎士による防衛力に対する不安を隠しきれなかった。タウンカーはシェルビア連合国の撤退を表明し、コスワースはそれに対し脅しをかけたが、状況は悪化する一方であった。
センテナの急変と伝令報告
センテナ要塞が一日で異様な形状に変化しているとの報告を受け、指揮官たちは困惑した。伝令によれば、要塞は生き物のように変化し続け、丸い形状へと移行していた。対応を協議する中、敵軍二千五百が進軍中との急報が入り、会議は更なる混乱に陥った。
パナメラの策と出撃準備
センテナ側ではパナメラが主導し、イェリネッタ王国とシェルビア連合国への反撃を提案した。ヴァンから装甲馬車と機械弓部隊を借り受け、ストラダーレやタルガと共に反撃部隊を編成した。ヴァンは不安を抱きながらも後方支援を担当することを決意した。
センテナからの出撃と部隊編成
センテナの新たな城門が開かれ、パナメラ率いる二千を超える騎士団が行軍を開始した。ヴァンも装甲馬車に乗り、自軍の行動を監督した。タルガは機械弓部隊を率い、城壁上からの援護を担当することとなった。
シェルビア連合国軍の迎撃準備
シェルビア連合国軍はコスワースの指示で迎撃体勢を整えた。タウンカーやイスタナも不安を覚えながら防衛体制を固め、火砲による一斉射撃を準備した。敵の進軍を牽制するため、早期の砲撃を実施したが、スクーデリア王国軍は怯まず前進を続けた。
火攻めと敵斥候の壊滅
ヴァンたちは山間部に火を放ち、敵の斥候部隊を混乱させた。炎と煙による混乱の中、スクーデリア王国軍は整然と行軍を続け、敵に対する心理的優位を築き上げた。
パナメラの挑発と突撃
パナメラは自ら騎兵を率い、火砲の爆撃を受けながらも堂々と前進した。金髪をなびかせ、戦乙女の如き姿で敵軍の士気を乱した。シェルビア連合国軍はその姿に圧倒されつつ、火砲による迎撃を続けたが、パナメラは巧みに突破してみせた。
第八章 パナメラの作戦
パナメラによる奇襲とセンテナ軍の突撃
パナメラの単騎突撃と火の魔術
パナメラは大爆発と炎上の中、馬を駆って敵陣へと単騎で突撃した。炎の中で巧みに馬を操り、敵を翻弄しながら火の魔術を放ち、敵城壁を燃え上がらせた。その勇猛さにより、味方騎士団は士気を高め、一斉に突撃を開始した。
弓矢の雨とパナメラの防御魔術
敵城壁から大量の弓矢が放たれたが、パナメラは「炎鎖網」による広範囲防御魔術を発動し、多くの矢を焼き払った。これにより味方騎士団は致命的な被害を免れたが、一部右翼では犠牲者が出た。
ストラダーレの卓越した技量
右翼の騎兵の中にはストラダーレも含まれていたが、彼は冷静に剣で矢を弾きながら馬を走らせ、無傷で進軍を続けた。彼の技量は敵味方を問わず驚嘆させた。
装甲馬車によるバリスタ展開と攻撃
パナメラの合図で、装甲馬車から移動式バリスタが組み立てられた。バリスタ隊は素早く準備を完了し、城門や櫓を正確に破壊した。これにより、敵の防衛体制は大きく揺らいだ。
アルテと銀騎士の投入
ヴァンの指示により、アルテが操る銀騎士二体が戦場に投入された。人形たちは圧倒的な速さで進軍し、敵陣に混乱をもたらしたが、敵の集中砲火は主にバリスタに向けられた。
黒色玉と油壺による反撃
イェリネッタ王国側は、黒色玉と油壺を用いた大規模な爆発攻撃を仕掛けた。城壁前で炎と爆風が発生し、スクーデリア王国軍に大きな衝撃を与えた。
ヴァンの指揮とアルテの奮闘
ヴァンは迅速に軍を後退させ、態勢を立て直した。アルテは動揺しながらも命令に従い、人形を使って崩れた城門を突破した。これにより、味方軍は一気に城塞都市へ突入することに成功した。
パナメラとストラダーレの突入と城壁制圧
パナメラは再び炎の魔術を放ち、敵の弓矢を無力化しつつ突撃を指揮した。ストラダーレと共に城壁を奪取し、敵の火砲を制圧することに成功した。
シェルビア連合国軍の降伏と交渉
城門を突破したスクーデリア王国軍は、シェルビア連合国軍を降伏させた。伯爵タウンカーは降伏を申し出、スクーデリア王国との同盟を希望した。パナメラは厳しい態度を取りつつも交渉を受け入れた。
アルテの落胆とヴァンの慰め
戦闘後、アルテは人形が損傷したことを深く悔やみ、ヴァンに謝罪した。ヴァンは修理を約束し、アルテを励ました。
イスタナ王子の絶望と撤退
イェリネッタ王国のイスタナ王子は、連敗とコスワースの無謀な指揮により敗北を悟り、王都への撤退を決意した。彼は国の存続のため、王に和平交渉を提言する覚悟を固めた。
センテナ防衛とヴァンの帰還決意
戦後、ヴァンはセアト村への帰還を望んだが、センテナの防衛を依頼される。ヴァンは移動式バリスタの提供を約束し、自身は帰還を決意した。
ジャルパ侯爵との対話と別れ
ジャルパ侯爵は弱りながらもヴァンに進軍を促したが、ヴァンは中央大陸への進出を目標に掲げ、帰還の意志を曲げなかった。ジャルパはそれを認め、ヴァンの独立を正式に受け入れた。
最終章 帰宅
セアト村への帰還と新たな日常
センテナ防衛成功とセアト村への帰還
ヴァンはセンテナ要塞を守り抜き、シェルビア連合国とも有利な同盟を結ぶことに成功した。戦局がスクーデリア王国優位に進んだことで安心し、疲労困憊の中、セアト村への帰還を果たした。
セアト村での歓迎と仲間たちとの再会
セアト村に戻ったヴァンは、エスパーダや騎士団の面々、住民たちから盛大な歓迎を受けた。ティル、ロウ、カムシン、アルテたちも無事であり、村には日常が戻っていた。
バーベキュー大会の開催と村人たちの盛り上がり
ヴァンはアルテを元気づけるため、バーベキュー大会の開催を提案した。ティルやエスパーダたちの協力により準備が進み、村中で大規模な宴が催された。住民たちは歓声を上げ、肉や酒を楽しみながら賑わいを見せた。
アルテの人形劇と住民たちの感動
ヴァンの提案により、アルテは魔術で人形を操って踊らせた。子供たちや住民たちはその美しい動きに魅了され、アルテも徐々に笑顔を取り戻していった。ヴァンはアルテの回復を静かに見守った。
住宅建設とセアト村拡張計画
セアト村には新たに多くの移民と奴隷が加わっていたため、住居不足が深刻化していた。エスパーダと相談したヴァンは、城壁沿いに通りを作り、三階建てのアパートを建設する計画を立てた。アルテや騎士団たちも資材運びに協力し、建築作業が開始された。
バーベキュー大会での交流と祝賀
バーベキュー大会では、若者たちの活気と大人たちの酒宴が広がった。ヴァンはルールとして飲酒は二十歳からと定め、村の秩序を保ちながら宴を楽しんだ。ティルやアルテと会話を交わしながら、村の平和な空気を噛みしめた。
イェリネッタ王国降伏の報せ
入浴中、カムシンが急報を持って訪れた。イェリネッタ王国がスクーデリア王国に降伏し、戦争が終結したことが伝えられた。ヴァンはこの知らせに安堵し、正式な報告を受けるため準備を整えた。
意外な来客との再会
来賓として訪れたのはヴァンの兄ヤルドとセストであった。彼らの登場にヴァンは驚き、久方ぶりの再会を迎えた。
番外編 過去のディーとストラダーレ
訓練場での剣術修練とヴァンの成長
少年兵たちとの訓練とヴァンの健闘
陽光の下、フェルティオ侯爵家の騎士団は剣術訓練に励んでいた。その中でヴァン・ネイ・フェルティオは、体格に勝る少年兵たちと剣を交え、工夫を凝らした戦い方で次第に勝利を収めるようになっていた。特にヴァンは、力や間合いに劣る相手に対して、実戦的な剣術で対応していた。
ディーによる訓練指導とストラダーレの訪問
ディーの指導のもと、ヴァンは長時間の訓練をこなしていた。そこへ新たに騎士団長となったストラダーレが訪れ、ヴァンの実力に興味を示した。ディーはヴァンの成長を誇り、ストラダーレに試合の観戦を勧めた。
ミラーとの模擬戦とヴァンの戦術
ヴァンは十四歳の大柄な少年兵ミラーと試合を行うことになった。体格差にもかかわらず、ヴァンは間合いの管理と柔軟な戦術で健闘し、ミラーのバランスを崩して一時優勢に立った。しかし最終的には体格差を覆しきれず、地面に倒れた。
ヴァンの精神的成長と周囲の評価
敗北したヴァンは悔しさを見せたが、ミラーを気遣う姿勢を見せ、周囲の騎士たちからも称賛された。ストラダーレはヴァンの冷静さと将来性に驚き、指揮官としての資質にも注目した。
ディーとストラダーレによる模擬戦の提案
ヴァンのさらなる成長を促すため、ディーとストラダーレは五十人対五十人の模擬戦を行うことを決定した。ヴァンは城壁の上からその戦いを観戦することになった。
模擬戦開始と戦術展開
模擬戦では、ディーが正面突破を狙い突撃を敢行したのに対し、ストラダーレは二手に分かれて挟撃を狙った。ディーは誘いに乗る形で一方の部隊に突撃し、素早い動きでストラダーレの作戦を翻弄した。
ディーの柔軟な指揮とストラダーレの苦戦
ディーは状況に応じて指示を変え、柔軟に部隊を動かしてストラダーレを包囲した。一方、ストラダーレは防御に徹しつつ反撃の機会を窺ったが、次第に劣勢に追い込まれていった。
ディーの勝利と指揮官としての助言
最終的にストラダーレは降参を宣言し、模擬戦はディーの勝利に終わった。ディーはストラダーレに対し、より大規模な戦いを見据えた指揮を意識するよう助言した。ストラダーレもそれを素直に受け入れ、互いに笑い合った。
ヴァンの感想と騎士団への信頼
模擬戦を見届けたヴァンは、騎士団の結束と実力に感銘を受け、フェルティオ侯爵家の将来に希望を抱いた。
番外編 過去のティルとエスパーダ
ヴァン追放の噂と従者たちの決意
ヴァン追放の噂とエスパーダの対応
ヴァンが城を追放されるという噂が広まる中、執事長エスパーダは噂の中心である厨房を訪れ、業務中の雑談を控えるよう注意を促した。若いメイドであるティルは、ヴァンの追放理由について質問し、エスパーダは正式な理由は不明としながらも、魔術適性の欠如が原因である可能性を示唆した。
ティルの決意と従者会議の提案
ティルはヴァンを案じ、緊急従者会議の開催を提案した。若さゆえの無謀とも取れる提案にエスパーダが同意し、正式に従者会議が開かれることとなった。
従者会議の開催とエスパーダの発言
その夜、従者たちは集まり、エスパーダの口からヴァンの追放について議題が提示された。多くの従者たちはヴァンを慕い、城を出ることに強く反対した。ティルはヴァンの従者として共に行きたいと訴え、他にも数名が同意した。
忠誠を誓う従者選抜の開始
エスパーダはヴァンのための従者を一人推挙することを決定し、希望者の中から選出するため、ヴァンに関するクイズ大会を提案した。ティルはヴァンへの深い理解を示し、クイズで圧倒的な正答率を記録した。
従者スキル対決とティルの奮闘
クイズ大会の後、従者としての実技試験が行われた。お茶淹れや衣服管理など、従者に求められるスキルが競われ、ティルは善戦したものの、順位は中位に留まった。
最終試験とティルの勝利
最後に、野営技術や旅路の知識を競う試験が実施された。城内育ちが多い従者の中で、ティルはヴァンから教わった知識を武器に圧倒的な実力を見せ、最終的に選抜試験で勝利した。
エスパーダの懸念と覚悟
ティルの勝利を認めつつも、エスパーダは彼女の未熟さと旅路の過酷さに不安を覚え、自らもヴァンに同行すべきか内心で思案していた。
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