ゲート 自衛隊 〈3〉動乱編〈下〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
ゲート 自衛隊 〈4〉総撃編〈下〉レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、現代の自衛隊が異世界に派遣される姿を描いたミリタリー・ファンタジー小説の文庫版第4巻(上巻)である。 東京の銀座に突如出現した異世界への「門(ゲート)」を通じて、自衛隊が「特地」と呼ばれる異世界へと進出し、現地の人々や国家と交流・衝突を繰り広げる物語である。本作「総撃編〈上〉」では、皇太子ゾルザル率いる帝国軍との泥沼のゲリラ戦が続く中、主人公のオタク自衛官・伊丹耀司が異変の実態を探るために特地の深奥部へと向かう。そこで伊丹たちは、全ての生物に死をもたらす虚無の霧「アポクリフ」に遭遇する。門が維持され続けていることが、地球と特地の双方の世界に深刻な歪みと惨禍をもたらしているという事実が判明し、世界の存亡を懸けた謎に迫る展開となっている。
■ 主要キャラクター
伊丹耀司(いたみ ようじ): 陸上自衛隊の二等陸尉。趣味を最優先する筋金入りのオタクであるが、数々の修羅場をくぐり抜けてきた部隊長である。本作では自衛隊本隊の「総撃」任務とは別行動をとり、門の影響による世界規模の異変を調査するため、美少女たちと共に特地の深奥部を探索する。
レレイ・ラ・レレーナ: 魔法使いの少女であり、伊丹の旅に同行するヒロインの一人。優れた知力と魔法の才能を持ち、門の存在が世界に与える影響や、それを閉じるための理論的な謎解きにおいて重要な役割を果たす。
ゾルザル・エル・カエサル: 帝国の皇太子であり、日本との徹底抗戦を掲げる主戦派のリーダーである。自衛隊の圧倒的な近代兵器に対し、謀略やゲリラ戦法を用いて泥沼の戦いを仕掛け、物語の主要な敵対者として立ちはだかる。
■ 物語の特徴
本作の特徴は、自衛隊と帝国軍の軍事的な衝突を描く戦記・ポリティカル・フィクションの要素と、ファンタジー世界における世界の理(ことわり)に迫るSF的な要素が融合している点である。 特に本巻では、これまで物語の大前提であった「門(ゲート)の存在」そのものが、双方の世界を滅亡へと導く危険性を孕んでいるという衝撃的な事実が明かされる。単純な武力による国家間の問題解決から、「いかにして世界を救うか」という根源的なテーマへと物語のスケールが拡大しており、世界の謎に迫る展開が他作品にはない興味深いポイントとなっている。また、シリアスな危機が迫る一方で、日本人と異世界の住人たちの間で生じる異文化交流や恋愛模様がユーモアを交えて描かれている点も魅力である。
書籍情報
ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 〈4〉 総撃編〈上〉
著者:柳内たくみ 氏
イラスト:黒獅子 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2013年9月26日
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あらすじ・内容
累計95万部の超人気シリーズ、待望の文庫化第4弾!
累計95万部突破!超人気の自衛隊×異世界ファンタジー、文庫化第四弾・前編! 皇太子ゾルザル率いる軍勢と日本自衛隊との戦いは、ゾルザル軍の謀略により、泥沼の様相を呈していた。そんななか、オタク自衛官伊丹耀司は、『門』の影響で発生した異変の実態を探るため、美少女達と『特地』の深奥部へ向かう。そこで一行が目にしたのは、全ての生物に死をもたらす虚無の霧・アポクリフ。日本と異世界とを繋ぐ『門』は、恐るべき惨禍を生み出していた――
感想
ゾルザルが帝都を捨ててからの一連は、「正面の戦いで勝てない側が、政治工作と情報戦で局面を作ろうとしている」巻であり、読後感がかなり悪い方向に振れるのが特徴だと整理できる。
ゾルザルの”卑劣さ”が構造として効いている
自衛隊の装いで周辺集落を襲わせ、被害を”自衛隊のせい”に見せるのは、軍事的というより統治と世論の破壊である。数で押すだけではなく、信頼そのものを崩す狙いがあった。
治安崩壊と「正統政府」路線の必然
崩壊した大軍と盗賊化、怪異・黒い犬の群れなど、”戦争後”ではなく”戦争中の社会崩壊”になっていた。ここでイタリカに講和派=正統政府を立て、背後を自衛隊が支える構図になるのは、現場を鎮めるための現実解として理解できる。一方でピニャがボロボロでも立たされるのは、正統性の看板が必要だからで、本人の適性とは別問題になっていた。
アポクリフと「門を閉じる」問題が、全てを重くする
黒い霧=アポクリフ、世界の歪み、閉じないと世界規模で崩れるという提示は、政治・軍事の選択肢を一気に縛った。門を閉じれば特地の住民と難民、講和派の基盤が崩れる。閉じなければ世界が歪む。ここが巻全体の”詰み感”を作っていた。
倉田の移住話は、甘さの自覚と伊丹の現実論がテーマ
「内政チートで何でもできる」は通用しない、という伊丹の説教は、この作品が時々やる現実主義の釘刺しである。同時に、伊丹本人も”残る/残らない”を考えざるを得ない位置に追い込まれており、部下に説教しながら自分の問題を炙り出される構造になっていた。
ゾルザル側は”追い詰められて雑になる”のが見どころ
テルタ遷都、諸侯への書簡、ゲリラ戦の効果低下、情報漏洩疑惑。ここで古田とテューレの接近が入るのが上手く、甘い会話を挟みつつ、実態は骨伝導イヤホンと集音で「全部筒抜け」という冷たさに繋がった。
タンスカの罠は「止められない作戦」を作るための舞台
人質が本物である以上、罠と分かっても救出は中止できなかった。そこに報道が絡み、伊丹隊が寄り道で巻き込まれ、戦闘前の熱量が上がっていく。ラストが「ここから突入」という切り方になるのも納得で、次巻への引きとして強い。
ゲート 自衛隊 〈3〉動乱編〈下〉レビュー
ゲート 自衛隊 全巻まとめ
ゲート 自衛隊 〈4〉総撃編〈下〉レビュー
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登場キャラクター
伊丹耀司(いたみ ようじ)
陸上自衛隊の二等陸尉である。趣味を最優先する性格であるが、銀座事件での功績により昇進した。特地深奥部の調査部隊を指揮する立場にある。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊・二等陸尉(第三偵察隊指揮官)。
・物語内での具体的な行動や成果
冥王ハーディから世界の歪みを調査するよう命じられた。その見返りとして刺客を排除する取引を受諾している。帰路では拉致被害者を救出するための作戦へ部隊を向かわせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
銀座事件での功績で防衛大臣から賞詞を受け、二等陸尉へ昇進している。特地で築いた人間関係について部下から責任を問われ、逃げられない状況にあることを指摘された。
レレイ・ラ・レレーナ
賢者カトーの弟子であるルルドの少女である。門の開閉や空間の歪みについて高度な知識を持つ。伊丹を信頼し、彼と行動を共にする。
・所属組織、地位や役職
カトー老師の弟子。魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルナーゴ神殿で冥王ハーディに身体を乗っ取られた。チヌーク機内では学者たちに魔法の原理や多世界について説明を行っている。門の閉鎖に備え、伊丹を拘束して交渉材料にする強硬案を提示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ハーディの髪を触媒として受け取った。これにより世界を渡る穴を開ける能力を得ている。炎龍討伐に関与したことで、皇帝から高く評価された。
ピニャ・コ・ラーダ
帝国の皇帝モルトの三女である。政争から逃れるため、伊丹たちの調査に同行した。伊丹に対して謝罪と忠誠を強要する姿を見せた。
・所属組織、地位や役職
帝国正統政府・皇女(皇太女)。騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
チヌークに搭乗して初めての空の旅を経験している。雲の上の景色に歓声を上げ、スカイダイビングの提案に期待を膨らませた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
周囲から皇太女として扱われている。本人はその立場に不満を抱いており、政争から逃れたがっている。
ロゥリィ・マーキュリー
暗黒の神エムロイの十二使徒の一人である。戦闘を好む傾向があり、巨大なハルバートを振るう。他者と関わることを肯定的に捉えている。
・所属組織、地位や役職
暗黒の神エムロイの使徒。
・物語内での具体的な行動や成果
ハーディによるレレイの身体の乗っ取りに抗議した。門を開け直す手段としてレレイがハーディの眷属になることへ反発を見せている。悪所街では客の男からミザリィを助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レレイの身体に傷がないか強引に確認した。その際に体型をからかい、レレイにダイエットを決意させている。
ゾルザル・エル・カエサル
帝国の皇太子である。講和派に対抗し、主戦論を掲げている。自衛隊とのゲリラ戦を指揮する立場にある。
・所属組織、地位や役職
帝国皇太子。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都を放棄し、テルタに皇太子府を移して統治を継続した。古田が作った食事に感嘆して暴食している。拉致被害者を囮に使う作戦を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地方勢力へ書簡を送り、講和派へ味方しないよう圧力をかけた。疲労と不眠に悩まされている。
シェリー・テュエリ
テュエリ家の令嬢である。講和派の会議で日本の情勢を報告する役割を持つ。日本の官僚である菅原を将来の夫と見定めて接近している。
・所属組織、地位や役職
テュエリ家令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
元老院議員たちに日本の政変の仕組みを説明した。日本の民衆が村落襲撃の知らせに激怒している事実を伝えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の報告により、議員たちは日本の政治が正統政府に与える影響を理解した。
テューレ
ゾルザルの側近である。古田に対して複雑な感情を抱いている。自身の秘密を握られる不安を感じていた。
・所属組織、地位や役職
ゾルザルの側近。
・物語内での具体的な行動や成果
ゾルザルの口述を文書化した。ボウロから拉致被害者の移送完了報告を受ける。古田に相互拘束の材料となる弱みを執拗に求めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
古田からスパイであると告白された。その結果、会話を日本側に盗聴されることとなる。(※対象文書内にフルネームの記載なし)
古田(ふるた)
日本側の潜入工作員である。料理人としてゾルザルの陣営に潜り込んでいる。テューレの追及を受け流した。
・所属組織、地位や役職
潜入工作員(料理人)。
・物語内での具体的な行動や成果
ゾルザルに食事を提供した。テューレに対して自身がスパイであると囁いている。その会話をマイクで日本側の柳田へ送信した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
敵の中枢に潜入したまま、情報を日本側に提供し続けている。(※対象文書内にフルネームの記載なし)
富田(とみた)
陸上自衛隊の隊員である。第一小隊に所属している。栗林と共に炎上する集落の掃討任務へ向かった。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊・二等陸曹。第一小隊。
・物語内での具体的な行動や成果
集落で襲撃者を捕縛し、クーシを救出した。チヌーク機内では怪異化したクーシの顔面を拳銃で連射して撃退している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
不用意な発言をしたため、周囲の隊員から危険視されている。(※対象文書内にフルネームの記載なし)
栗林(くりばやし)
陸上自衛隊の隊員である。富田と同じ部隊で行動している。小柄ながら格闘戦を得意とする。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊・二等陸曹。第一小隊。
・物語内での具体的な行動や成果
チヌーク機内で怪異化したクーシと近接戦を行った。ナイフで怪異の神経部位を刺して腕を機能不全にする。怪異と共に機外へ転落しかけたが、富田たちに救助されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘後に富田へ交際を持ちかけている。(※対象文書内にフルネームの記載なし。ジャーナリストの栗林とは別人)
柳田(やなぎだ)
日本側の派遣部隊関係者である。情報収集や作戦立案を行っている。デリラと連携して行動する場面が多い。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊・二等陸尉(日本派遣部隊)。
・物語内での具体的な行動や成果
マミーナが投げたナイフが発信器であることを説明した。古田からの通信を受け、罠と承知の上で拉致被害者の救出作戦を決断している。空撮の依頼や航空機の手配を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
潜入網の摘発や救出作戦の指揮において重要な役割を担っている。(※対象文書内にフルネームの記載なし)
冥王ハーディ
冥府を司る神である。特地において大きな影響力を持っている。世界を引っかき回す側面がある。
・所属組織、地位や役職
神(冥王)。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルナーゴ神殿でレレイの身体に憑依して顕現した。世界の歪みを解決するため、伊丹たちに現地調査を命じる。酒杯を投げて隠れていた刺客を叩き落としている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自らの髪を切り落とし、聖術の触媒としてレレイに与えている。
出来事一覧
01
炎上する集落での掃討戦
- 当事者: 自衛隊(第一小隊・富田ら) vs ゾルザル派部隊(商人・農民に偽装)
- 発生理由: ゾルザル派が村落を襲撃し、それを自衛隊が掃討・追撃するため。
- 結果: 自衛隊が威嚇射撃と通行証の照合で偽装を見破り、襲撃してきた男たちを制圧して捕縛した。
小屋での籠城戦と怪異の襲撃
- 当事者: 自衛隊(富田・栗林ら)/取材班(古村崎ら) vs 帝国軍(怪異の混成群)
- 発生理由: 撤収を拒んだ取材班が怪異の大群に包囲されたため。
- 結果: 小屋の屋根を破壊してチヌークで順次吊り上げ救出し、残弾射撃とナパーム投下で怪異を撃退して離脱に成功した。
チヌーク機内での怪異(クーシ)討伐
- 当事者: 栗林・富田ら(自衛隊) vs 怪異化したクーシ
- 発生理由: 救出された少女クーシが機内で大型怪異に変貌し、カメラマンや隊員を襲撃したため。
- 結果: 栗林が近接戦で怪異の腕の神経を断ち、揉み合いの末に後部ハッチから転落しかけるが、仲間の援護と富田の拳銃射撃により怪異のみを機外へ落下させて排除した。
アウレアによる密偵捕食事件
- 当事者: アウレア(メデュサ種メイド) vs 侵入者(ボウロ配下の密偵)
- 発生理由: ボウロ配下の密偵が食料庫に毒を混入しようと侵入したため。
- 結果: アウレアが侵入者を捕らえ、精気を吸い尽くしてミイラ化させて排除した。
宴席での密偵摘発とノッラの逃走
- 当事者: マミーナ(亜人メイド)/ヤナギダら vs ノッラ(密偵)
- 発生理由: イタリカの宴席に「ニーガス」と偽証して潜入した密偵を、顔認証システムで特定したため。
- 結果: マミーナが短剣で制圧しようとしたが、密偵(ノッラ)は男装を解いて窓から逃走した。マミーナが投げた発信器付きナイフが命中し、追跡網が敷かれた。
02
ピニャの「惨めな想像」要求と謝罪強要
- 当事者: ピニャ vs 伊丹
- 発生理由: ピニャが政争のストレスから逃れるためチヌークへの同行を強行し、伊丹が自分を邪険にしていると拗ねたため。
- 結果: ピニャが伊丹に「ずぶ濡れの惨めな姿を想像して謝罪と忠誠を誓え」と強要し、伊丹は部下の指揮を理由に逃げようとしたが失敗した(口論・威嚇)。
ロゥリィとヤオのハーディへの刃傷未遂
- 当事者: ロゥリィ/ヤオ vs 冥王ハーディ(レレイに憑依)
- 発生理由: レレイの身体を強制的に乗っ取ったことや、過去の炎龍騒動の原因がハーディにあると判明し、さらに「嫁になれ」と挑発されたため。
- 結果: ロゥリィが抗議し、激怒したヤオが剣を向けたが、伊丹が「身体はレレイだ」と制止し、物理的な衝突は回避された(未遂)。
ハーディと伊丹の取引(刺客の排除)
- 当事者: 冥王ハーディ vs 伊丹(および刺客)
- 発生理由: ハーディが伊丹に特地深奥部の調査を命じ、その報酬としてレレイを狙う刺客を排除すると提示したため。
- 結果: ハーディが酒杯を投げて潜んでいた刺客を叩き落として実力を示し、伊丹は調査要請を受諾した。
03
ヤオの護符喪失パニックと翼竜からの墜落危機
- 当事者: ヤオ vs 伊丹(巻き込まれ)
- 発生理由: 翼竜での移動中、ヤオの護符(五円玉)が落下し、錯乱したヤオが手綱を放り投げたため。
- 結果: 伊丹が巻き込まれて翼竜から逆さにぶら下がる事態となり、両名とも極度の疲労と恐怖を味わって目的地へ到着した。
レレイの耀司拘束計画(宣言)
- 当事者: レレイ vs ロゥリィ/テュカ/ヤオ(意見の対立)
- 発生理由: 門の閉鎖と再開に関する議論の中で、日本政府が反対した場合の強硬手段として、レレイが伊丹(耀司)を人質に取る案を提示したため。
- 結果: レレイが「耀司を拘束し、門の再開を条件に引き渡させる」と冷徹に宣言し、その覚悟の重さに周囲は沈黙した(威嚇・計画の提示のみ)。
ロゥリィのセクハラまがいの身体確認
- 当事者: ロゥリィ vs レレイ
- 発生理由: 門を開け直す力について、ロゥリィがレレイの身体に何か物理的な細工(傷や穴)があるのではないかと疑ったため。
- 結果: ロゥリィが強引にレレイのTシャツを捲って確認したが傷はなく、代わりに体型をからかってレレイにダイエットを決意させた。
ミザリィ(悪所街の娼婦)への迷惑行為と撃退
- 当事者: ロゥリィ vs 客の男
- 発生理由: 悪所街で男がミザリィにしつこく言い寄り、腕を掴んで離さなかったため。
- 結果: ロゥリィがハルバートを男の喉元に突きつけて撃退した。
04
テューレの「弱み」要求と古田のスパイ告白
- 当事者: テューレ vs 古田
- 発生理由: テューレが自らの不安を解消するため、古田に相互拘束の材料となる「弱み」を執拗に求めたため。
- 結果: 古田が自身を「間諜(スパイ)」だと囁いてテューレを動揺させ、その会話を日本の派遣部隊へ盗聴・送信することに成功した(心理戦・言葉による葛藤)。
ゲート 自衛隊 〈3〉動乱編〈下〉レビュー
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展開まとめ
01
炎上する集落への進入
富田二等陸曹を乗せたチヌーク編隊は、黒煙を上げる集落上空へ進入した。眼下では家屋が燃え、人々が倒れていた。富田と栗林二等陸曹は任務の偏りを愚痴りつつも、先任陸曹長の命令を受け、ゾルザル派掃討に向けて装備を整えた。隊員達は弾倉を確認し六四式小銃を装填し、戦闘態勢に入った。
降下と地上展開
二機のチヌークは広場上空で静止し、隊員達はファストロープで降下した。報道スタッフは着陸を要求したが、安全確認が優先され、ヘリは上空待機となった。地上に降りた第一小隊は即座に四散し、銃を構えて警戒を開始した。
生存者捜索と装備の限界
隊員達は倒れた住民の中に生存者や潜伏者がいないか捜索した。赤外線感知装置も使用されたが、炎と遺体の熱により効果は限定的であった。結局、各自の観察力に頼るしかなく、緊張の中で慎重な探索が続いた。
発砲と追撃
突如発砲音が響き、南方へ逃走する敵の報告が入った。分隊は指示を受けて展開し、敵の進路を塞ぐ形で追撃に移った。敵は農民と見分けがつかぬ服装であったため、武器を持つ者を敵として警戒せざるを得なかった。隊員達は狂気と理性の狭間に立ちながら、掃討任務を遂行しようとしていた。
商人の制止と識別の葛藤
隊員達は荷馬車の商人達を発見し、銃口を向けて停止を命じた。商人達は強行突破を図り、分隊長は威嚇射撃で馬車を止めさせた。隊員達は頭部や胸部を外されやすい相手への対処として下腹部に照準を合わせ、商人達の身元と行動理由を問いただした。
通行証の照合と偽装の露見
商人達は通行許可証を提示し、表面上は本物に見えた。分隊長は書類末尾のバーコードから登録情報を照合し、表示された顔写真が目の前の男と一致しないことで偽物と断定した。直後、商人に扮した男達は武器を抜いて襲いかかったが、隊員達は距離を取っていたため制圧に成功し、ひげ面の男を捕縛した。
略奪品の発見と報道の介入
荷台からは略奪品や帝国軍の紋章付きの剣、迷彩に似せた衣服が見つかり、襲撃者である状況証拠が揃った。古村崎は現場に来ると民間人虐殺を疑い、映像化と批判的な言説を優先した。分隊長は証拠を示しつつ荷物を開けさせ、箱の中からクーシと名乗る猫系の幼い少女を救出した。
黒妖犬出現と取材班の暴走
集落西側で黒妖犬の群れが発見され、さらにジャイアントオーガー等の混成群も確認された。富田は取材班の撤収を促したが、古村崎は危険を軽視して地上取材を強行した。栗林はクーシと捕虜をヘリに収容し、富田は取材班を連れ戻すため地上に残った。
籠城と負傷者テュワルの発見
取材班は半壊した小屋に立て籠もり、古村崎の指示で即席バリケードを構築した。外では砲撃と航空支援が続き、怪異の群れが迫った。富田達は倒れていた鳥人女性テュワルを発見し、生存反応を確認して救出を決断したが、古村崎は安全を理由に反対した。
屋根抜き救出とエクストラクション離脱
富田は屋根に穴を開けて吊り上げ収容する案を示し、チヌークが上空で滞空した。怪異は小屋へ殺到し、壁の隙間から侵入を試みたため、富田達は着剣と射撃で撃退した。取材班を順次吊り上げ、最後は仁科の判断で富田・東・仁科を一括吊り上げ離脱した。吊り上げ中も残弾射撃と手榴弾投下で追撃を阻み、ナパーム投下により戦場は劫火に包まれた。上空からは第四〇三中隊の前進と、さらに先に帝国軍の隊旗を掲げる一隊が確認された。
帝国軍の撤退判断とヘルムの足止め策
帝国軍は作戦の失敗を悟り、商人や村民に偽装して自衛隊を攪乱し、さらに怪異の大群を差し向ける手口で逃走を図った。だが通用したのは序盤のみで、対応されて本隊を捕捉されかけた。総指揮のヘルムは分散逃亡を抑えつつ森へ退くよう命じ、足止めのため懐の音の出ない笛を吹き、埋伏していた毒をここで使う決断を下した。
チヌーク機内での異変とクーシの怪異化
富田はチヌーク機内で古村崎に勝ち誇ったが、直後にカメラマン福島が口から血を溢れさせて倒れた。背後に現れた大型怪異が福島を爪で貫き、さらに巨大化した。その正体は、先ほど救出された童女クーシが怪異化した姿であり、機内天井に頭がつかえるほどの大きさへ変貌していた。コクピット方向にいるため銃撃が難しく、怪異は剛腕で松崎を機外へ吹き飛ばし、次に古村崎へ襲いかかった。
栗林の迎撃と機内戦闘の激化
栗林は逆手のナイフで怪異の爪を弾き、古村崎とテュワルの護衛を富田達に指示した。仁科は機長に着陸を要求しつつ、栗林は血を流しながらも近接戦に入った。栗林は回避と刺突・斬撃を繰り返して怪異を傷つけたが、叩きつけられて倒れた。東・戸津・富田が銃剣で割って入り、怪異の侵攻を止めて栗林を救った。
神経狙いの一撃と投げ落とし作戦
栗林は肘の神経部位を狙ってナイフを突き立て、怪異の片腕を機能不全に近い状態へ追い込んだ。栗林は機体を後方へ傾けて放り出すよう機長へ要求し、皆に落下防止の指示が出た。栗林は一本背負いで後部ハッチへ投げ落とそうとしたが、逆に押し潰され、噛みつきに迫られた。鼻先への頭突きで怯ませ、背後から締め上げて落下へ誘導した結果、クーシも栗林も機外へ転がり落ちかけた。
救助の連鎖とクーシの排除
富田が栗林に飛びつき、東と戸津も連結して辛うじて弾帯を掴み、栗林の落下を防いだ。クーシはハッチ端に爪をかけてよじ登ろうとしたため、蹴り落としが試みられ、最後は富田が九ミリ拳銃で顔面を連射し、クーシは叫びながら落下した。栗林は意識を取り戻したが朦朧としており、仲間の声かけで状況を思い出した。
富田の発言と「禁句」騒動
栗林が冗談めかして交際を持ちかけると、富田は戦争が終わったら結婚すると答えた。仁科達はその言葉を危険視し、栗林も軽率さに慄然として動転した。栗林は迷信で片付ける富田を急かし、伊丹隊長なら何とかできるはずだとして、隊長の元へ向かう必要を強く訴えた。
正統政府の成立とイタリカの軍事拠点化
フォルマル伯爵家の城館は、皇帝と皇女がゾルザルの支配下から脱出し、イタリカで「正統政府」樹立を宣言したことで、元老院議員とその家族が集結し、かつてない賑わいとなった。正統政府は帝都奪還のため軍編制を急ぐが、講和派貴族の私兵だけでは兵力が足りず、諸侯・諸外国への支援要請に加え、従来軽視していた亜人部族にも地位向上を約束して兵の供出を求めた。イタリカは仮皇城かつ作戦拠点となり、城外に宿営地が造成され、市街の飲食店は多種族の兵で溢れた。
メイド総動員とアウレアの「捕食」事件
高級将校の接待が必要となり、伯爵家のメイドは限界稼働となる。ヒト種メイドだけでは回らず、猫耳眼鏡メイドのペルシア、ヴォーリアバニーのマミーナ、メデュサ種のアウレアら亜人メイドも表舞台へ総動員された。厨房ではアウレアが「ネズミ」と称する侵入者を捕らえ、精気を吸い尽くしてミイラ化させて持ち込む。獲物は快楽で抵抗心を失い、記憶まで覗かれる。侵入者はボウロ配下で、食料へ毒を混ぜる企図があったと判明し、メイド長はボウロ本人の確保が必要だと認識した。
皇帝の呼び出しと菅原の宿泊問題
メイド長はモームとアウレアを伴い、病臥中のモルト皇帝のもとへ急行した。皇帝は日本の外交官・菅原の滞在手配を命じるが、館は既に満員で、市内の屋敷や民家まで借り上げている状況である。菅原が倉庫の一角を借りて宿泊すると述べたため、メイド長は安堵してため息を漏らしてしまう。内務相マルクス伯爵は、日本側が商人と結びつきを築いている点を嫌味混じりに警戒するが、皇帝は「今更」とたしなめた。
フォルマル家の対日協力と影なる戦いの報告
メイド長は、フォルマル家が日本と協力関係を築いたのは、デリラによる日本人殺害未遂事件で潔白を示し地下組織摘発に協力せざるを得なかったためだと説明し、結果として日本の影響下にあるとのマルクスの不満も「致し方なし」に落ち着く。戦況は、返還捕虜五千を中核に軍の体裁は整えたが、ゾルザル派正規軍と要害線のため進撃が停滞し、第二軍を編制中という楽観的報告に皇帝は冷笑した。さらに皇帝は「影なる戦い」を問い、メイド長は館内・市街での妨害や侵入が累計五十件規模に達し、宴席にも間者が紛れ、食料庫への毒混入もアウレアが排除したと報告した。
宴席の密偵摘発と顔認証の罠
マミーナは「名簿にない顔」を包囲し、男はニーガスと名乗りモントレー男爵家の家令だと偽装する。だが天井の多数カメラ映像と名簿・顔写真を照合する日本式の監視により、声で「顔が違う」と即座に否定される。マミーナは甘い誘いの体裁で距離を詰め、短剣で制圧し、連れ出して尋問する段取りに入った。口を割らない密偵は、強制労働か、アウレアの餌として快楽の末に干からびる運命が示される。
ノッラの変装脱出と発信器付き投げナイフ
廊下で男は「マルクス伯の配下」と名乗り、声が女に変わる違和感の瞬間を突いて突破する。男の身体から女が飛び出す形で変装を解き、亜人の高い身体能力で逃走した。マミーナが投げナイフ(ダーク)を投擲し数本を命中させるが、女は窓から脱出する。直後、ヤナギダが投げナイフの尖端部が体内に残る仕掛け=発信器だと説明し、逃走先(アジト)への追跡を引き受ける。庭からは遠隔操縦観測のラジコンヘリが離陸し、無線越しにヤナギダとデリラの連携が示され、潜入網の芋蔓摘発が始まる。
議場を戦場とする元老院の討論
館内では密偵摘発の暗闘が進む一方、講和派の元老院議員たちは宴席で帝国の将来を巡る協議を続けていた。彼らにとっては口舌が武器であり、討論こそが戦闘であるという自負が共有されていた。
亜人メイドへの違和感と評価の転換
キケロは猫耳眼鏡メイドのペルシアから飲み物を受け取りつつ、亜人を雇うことへの違和感を漏らす。友人は「無礼だ」と嗜め、キケロも自らの偏見を認め、作法や気遣いはヒト種と遜色なく、むしろ優れている面すらあると評価を改めた。耳の良さによる即応性など、喧噪下での給仕能力も具体的に語られ、帝国軍が亜人抜きでは成り立たない現実が共有された。
シェリー報告会の開始と「日本の政変」説明
議員たちは日本から戻ったテュエリ家のシェリーに報告を求め、まず「近々起こる政変」について説明させた。シェリーは臆せず、ニホンでは元老院が宰相を選び、宰相が閣僚を組むこと、そして元老院議員が市民の選挙で入れ替わり得るため、ある日を境に政策が大きく変わる可能性があると述べた。議員たちは自分たちの立場と重ねて苦い表情となり、日本の政変が正統政府の運命を左右し得る点を理解した。
帝国統治の要諦と制度論争の再燃
キケロは帝国の統治制度を講義調で問う。シェリーは、皇帝が外交・国家方針を担い、内政は地方長官が担うこと、自治都市の存在、異民族混住地などは封土として能力ある者に与えることで中央集権と封土制が併存する理屈を整理した。さらに封土制導入の背景として、任期制長官が私腹を肥やし内乱の原因となったため、土地を「自分の財産」とする動機付けで統治の責任を持たせる狙いを挙げ、皇帝コーラスの判断として説明した。
その流れで、カーゼル侯爵は「共和制も一概に時代遅れではない」とし、帝政にも後継者問題があると指摘する。キケロは「完璧を求めるのは幼さ」と退けつつ、最終的には制度の欠陥を運用で補うべきだという整理に収束していった。
ゾルザル台頭の責任と「代価はまだ終わっていない」
聴衆から「ゾルザルを防げなかったのは制度欠陥では」と問われると、キケロは失敗の転嫁を拒み、後継者鑑定という義務を怠った自分たちの責任だと断じた。さらに「代価は血と苦痛で払った」では足りず、帝国を取り戻し正常化して初めて支払いが完了すると述べ、議員たちに奮起を促した。
帝都奪還の困難と掃除夫の恐怖
議論は「どうやって取り戻すか」に移り、ゾルザルは帝都を放棄しても政権と国軍を掌握し続け、廃嫡宣言後も将兵が従っている現実が確認された。反対派は、ゾルザルが各部隊に「掃除夫」(帝権擁護委員=反対者摘発・処刑の政治将校)を配置し、将軍から兵まで監視しているため、逆らえば殺されると警告する。戦線が膠着しているのも、日本が牽制しているからだという認識が共有され、場は紛糾寸前となった。
諸外国が日和見する理由と「勝ち筋の提示」
シェリーは「外国や諸侯は支援しないのか」と問い、キケロは援軍要請はしているが態度保留ばかりで日和見だと答えた。続けてシェリーは、皇帝がいる正統政府側が明らかに正しいのに支援されない理由を問う。キケロは、どちらに与しても負ければ破滅するため慎重になるのが当然であり、味方を得るには勝つ見込みを示さねばならないと説明した。加えて、日本を敵に回すリスクを恐れる一方で、ゾルザルが「日本打倒」に拘っている点が諸国を二の足にさせ、結果として「どちらにも味方しない」状況を生んでいると整理した。
日本世論と偽装襲撃の疑惑、国家崩壊への懸念
シェリーは、日本の民衆がゾルザル配下の村落襲撃や無辜の虐待を知って激怒していると報告した。これに対し「自衛隊が虐殺したというゾルザルの反論」や「まだら緑の衣服の兵が襲ったという噂」が話題となるが、アルヌスの関係者は、盗賊や亜人を嗾ける手口など複数証言からゾルザル側の仕業と見ている、とシェリーは述べた。
キケロは、実力差がある側が敵を煩わせるために手段を選ばないのは戦術として誤りではないと認めつつ、行為を他者に擦り付けるやり方は人心を疑心暗鬼にし、勝っても統治が困難になると論じた。嘘を正当化するために嘘を重ね、言論統制を強め、外敵責任を妄信させる方向へ進む危険を示し、帝国の荒廃を憂えた。
ピニャ離脱の報告と「緑の人」
シェリーがピニャの所在を問うと、議員たちは沈鬱になり、ピニャは政治に失望し「兄と殺し合えと言うのか」と言ってイタリカを出たと語った。皇帝は「しばらくそっとしておけ」と命じており、現在ピニャは「緑の人」と行動を共にしているはずだとされ、シェリーはその正体に首を傾げた。
02
雨天のアルヌスとクナップヌイ行きの準備
粒の雨が降る悪天候の中、伊丹はアルヌスのヘリポートでCH-47JAチヌークの出発準備を進めていた。資源探査任務は継続しており、今回は「学識経験者を現地へ案内する」という形でクナップヌイ(イタリカ北西約千キロ)へ向かうことになった。予算が潤沢な資源探査名目の範囲でチヌーク利用が可能となり、随伴は桑原曹長以下、倉田・勝本・笹川・黒川の計五名が付いた。
現地協力者の同行とピニャの参加
現地協力者として、ロゥリィ、レレイ、テュカ、ヤオの四名が同行する。さらに帝国正統政府からの視察員として、皇太女ピニャ・コ・ラーダと供回りの女性騎士が加わる流れとなる。ピニャはビニール傘を差しながら、冥王ハーディの「お告げ」が気になるとして同行を強く望んだ。伊丹は命令だから動く立場だが、上層部が本気で重要視しているわけではなく「無視できないので一応見に行かせる」程度ではないかと内心で推測していた。
政争から逃げたいピニャと伊丹への執着
ピニャは、政に関わった結果を責め苛まれる状況に疲れ、父の傍にいれば再び政争に巻き込まれると語る。一方で伊丹は、皇帝の健康不安や代理の必要性を理由に「留守はまずい」と指摘するが、ピニャは「皇太女は勝手にそう言われているだけ」と不満を示し、伊丹が自分を邪険にしていると拗ねる。さらに、伊丹に救い出された時の心情を過剰な言葉で告白し、周囲(ロゥリィ、テュカ、ヤオ)に波紋を広げた。
“惨めな想像”要求と伊丹の逃走失敗
ピニャは「自分の悔しさを想像しろ」と伊丹に要求し、豪雨・泥濘・ずぶ濡れの惨めな姿を条件付きで指定する。伊丹は想像を進めるが、方向性が逸れたため修正され、最終的にピニャは「非を認めて謝罪し、忠誠を誓え」と結論づける。伊丹は部下の指揮へ逃げようとするが、部下たちは既に自律的に積載や点検を進めており逃げ場にならなかった。
ハミルトンの恐怖とレレイの“操縦席観察”
ピニャ付きの女性騎士ハミルトンは、チヌーク機内で「鉄の塊が空に浮かぶ」ことが信じられず、悲鳴を上げて固まっていた。周囲は極力関わらないよう背を向けがちになる。一方レレイは、離陸前点検を行うパイロットの手順に強い関心を示し、操縦席付近で“子犬のように”見学する。高機動車やオートバイ、ブルドーザーに続き、飛行の原理を魔法へ応用できないか考えており、「魔法で空も飛べるようになる」と言い、隊員からは「魔法少女」と評された。箒に跨る発想は、レレイから強烈に拒絶され、その後誰も勧めなくなった。
狭間の紹介と学識経験者・取材班の合流
桑原曹長の号令で隊員が整列し、伊丹は狭間陸将に出発準備完了を報告する。狭間は同行者として、京都の大学の漆畑教授、国立天文台の白位博士、東大の養鳴教授、そして取材チームの栗林菜々美を紹介した。伊丹はマスコミ同行を知らされておらず難色を示すが、養鳴は「注目されないはずがない」と怒鳴り、特地への学術研究者の立ち入りが初である点が示される。
三者三様の“学者”と狭間の自信のなさ
養鳴は紹介順に文句をつけるが、狭間が「先輩は身内なので最後」と取り成すと機嫌を直し、奇行気味に動き回ってハミルトンをさらに怯えさせる。漆畑は特地の風景やテュカ・ヤオを研究対象として観察し、「持ち帰ってよいか」とまで言い出して狭間に止められる。白位は望遠鏡や赤道儀など天体観測機材を抱え、星空撮影を楽しみに写真を撮り続ける。伊丹が「これが大学の先生方か」と問うと、狭間は「そうだ……そのはずだ。多分」と自信なさげに答えた。
刺客回避の放浪と「棒倒し」による進路決定
伊丹はレレイを狙う刺客から逃れるため、ロンデル周辺を気まぐれに移動していた。追跡を困難にする工夫として、倒した棒の方角へ進む方法で進路を決め、目を閉じて一周するなど恣意性を排した手順まで設けていた。だが棒は繰り返し北北西を指し、ベルナーゴ神殿へ導かれている疑いが濃くなった。伊丹は抵抗しようとしたが、突風まで介入するように結果が固定され、一行は警戒しつつベルナーゴへ向かった。
ベルナーゴ神殿都市の世俗的な賑わい
ベルナーゴは冥府の神ハーディを祀る神殿都市であり、参拝客で道が埋まるほど混雑していた。門前には露店や土産物が並び、厳粛一辺倒ではなく世俗的な活気があった。鉱石や原石が土産として多く扱われていたのは、地中の富がハーディの管轄と見なされ、鉱山の街が神殿へ貢ぐ慣習があるためであった。
招待状の効力と神殿深部への案内
伊丹が持つ黒い招待状は強い権威を持ち、神官たちは即座にひれ伏して一行を特別扱いで奥へ通した。神殿は巨大な逆ピラミッド状の縦穴構造で、上層の祭壇のさらに奥に、地底へ続く階段と「真の祭壇」があることが示された。地下を苦手とするロゥリィは不安を隠せず、伊丹が先頭に立って降下を始めた。
ハーディ降臨と伊丹の思考漏れ
地下の大空間で儀式が整うと、光の砂が集まりハーディが女性の姿で顕現した。ハーディは気さくに挨拶し、伊丹は見とれつつも「容姿は任意ではないか」と疑念を抱いた。するとハーディは傷ついた反応を示し、伊丹は思考を読まれていると悟った。ロゥリィは通訳に消極的で、意思疎通が不完全なまま場が進んだ。
憑依先の選別とレレイへの強制憑依
神官たちはハーディの依代となる名誉を求めたが、魂魄の格差ゆえ多くは耐えられず自滅しかねない危険な行為であった。ハーディは適任を見つけられず視線を泳がせ、最終的にレレイへ飛び込む形で憑依した。倒れたレレイは光に包まれた後に起き上がり、レレイの身体と声で「わたくしがハーディです」と名乗った。
食事への強制同行と「嫁」要求の露骨化
ハーディは伊丹の腕を引き「まずは食欲を満たす」と宣言し、門前町の豪華な食堂に一行と神官団を引き連れた。料理は過剰な量で、ハーディはレレイの身体のまま猛烈な勢いで食べ続けた。ハーディは神であるがゆえに無感動へ傾くことを恐れ、歓びとしての食欲や悦楽を求めていると語り、ロゥリィに「嫁になれ」と迫った。
ロゥリィの拒絶とヤオの怒りの爆発
ロゥリィは刃を突きつけて抗議し、他者の身体を乗っ取る無礼を断罪したが、ハーディは霊格の高い器が必要だったと正当化した。テュカとヤオにも相手を求めたが、両者は明確に拒絶した。とくにヤオは、同胞が炎龍の餌にされた経緯からハーディへの不信と憎悪を抑えきれず、ついに剣を向けた。伊丹は「鉢はレレイだ」として羽交い締めで制止し、ロゥリィにも介入を求めて場の破綻を防いだ。
「門」が引き起こす世界規模の歪み
伊丹が本題を促すと、ハーディは一行を呼んだ理由として「見て来て欲しい場所がある」と告げた。説明の前提として、世界同士は時空の流れの中で近づく瞬間があり、その接触点に軽い力を加えると「門」が開くと述べた。本来は不安定で消えるはずの小さな穴であったが、帝国の魔導師が魔法建築で固定化し、二つの世界を無理矢理つなぎ止めた結果、世界全体が撓み、歪み、ねじれる「無理」が蓄積しているとした。
異変の兆候と「直に見て考えろ」という命令
ハーディはまず地揺れが兆候として起きたと指摘し、他の影響については明言を避けた。そして「何が起きているのか直に見て確かめ、どうすべきか考えなさい」と突き放す形で課題を渡した。今すぐではなくてもよいが先延ばしに限界がある、と警告して会話を締めた。これにより、後の「特地深奥部の調査」に学者帯同が必要となる流れが形作られた。
03
ロゥリィの追及とハーディの本音
ハーディと伊丹の話が一段落すると、ロゥリィは改めて「狙いは何か」と問い質した。ハーディは「世界をより美しくする」と言いつつ、実態は「引っかき回す」ことも認めた。さらに「門」を開けた場所が不適切だと責められると、偶然だと答えつつ、異世界由来の文物が帝国を揺さぶり、多種族が台頭して地位を得ていく変化を「面白い」と評した。
炎龍騒動の真相と「門」を閉じる動機
ロゥリィが「今の動き」の意図を問うと、ハーディは冥王としてアルヌスの魔法装置を破壊し「門」を閉じるつもりだったと明言した。そのためにはアルヌスを占領し、門を守る異世界の軍隊を排除する必要があるが、ジゼルだけでは勝ちにくく、ロゥリィも協力しないので手駒が必要だった。そこで炎龍を目覚めさせ、戦力として利用したのだと説明した。ヤオは「最初から言えば協力の道もあった」と反発するが、ハーディは「言えば分かるのか」と疑い、ヤオ自身の過去(助けを求めても誰も動かなかった)を突きつけて沈黙させた。
責任転嫁としての「現地確認」とジゼル合流指示
ハーディは「邪魔をしたのだから責任を取れ」として、門を放置した場合の帰結を現地で見て、どうするか決め、行動せよと命じた。報告は不要で、現地にはジゼルを行かせているから合流せよと指示した。伊丹が「専門家ではない」と渋ると、ハーディは「分かる人間を連れて行け」と返し、学者帯同の必然がここで確定した。
褒賞の提示と刺客の存在証明
伊丹の納得が弱いと見ると、ハーディは「やる気になる褒賞」を提示し、酒杯を投げてカーテンの陰に潜んでいた刺客を叩き落として見せた。グレイとシャンディーは、追随不能な移動をしてきたはずなのに刺客が追いついていた事実に戦慄した。ハーディは、刺客に夢でお告げを与えてベルナーゴへ誘導しており、来た者は片づけてやるが、来ない者もいるため全ては解決しないと言い切った。最も厄介な相手は、伊丹たち自身の力で解決すべき「試練」と位置づけられた。
伊丹の受諾と「逃げ続ける」姿勢
伊丹は、刺客の大部分が減るだけでもレレイの学会出席が容易になるとして取引を受け入れた。さらに伊丹は「ぎりぎりまで逃げ回る」と平然と言い、ハーディは呆れ、ロゥリィは「それがヨウジだから」と容認した。ハーディは「問題は逃げるほど帰るべき場所で待ち構える」と説き、伊丹もそれを理解していると認めた上で、それでも痛みや面倒を避けたいと述べた。
伊丹評の齟齬と覚悟の強制
ハーディは、ジゼルから伊丹を「見敵必戦の戦闘狂」「一撃で広範囲を掘り返す怪物」と誇張して聞かされており、実像との落差に驚いた。ロゥリィは伊丹を「すぐ逃げる」と揶揄しつつ、譲れない線では怖がりながらも前に出る点は見てきたと補足し、テュカとヤオも同意した。ハーディは、これから先の試練は避けられず、敵はそこで待っていると告げ、レレイを学会発表に出す決断から逃げれば犠牲が増え、敵はアルヌスへ向かい、最後には大切な者を巻き込むと断言した。伊丹はそれを「やっぱり」と受け止め、舌打ちして眉間に皺を刻み、逃げの限界を自覚した。
ハーディの髪という触媒
薄暗いチヌークの機内で、レレイは手の中の白銀の三つ編みを見つめていた。それはハーディの憑依によって異様に伸びた自分の髪を、襟元で切り落として束ねたものであり、神性を帯びた透明感のある輝きを放っていた。ハーディはこれを触媒として聖術の使用を許可し、用途は一度決めれば他に転用できないと釘を刺して去っていった。
ベルナーゴ神殿の神官たちの欲と「聖遺物」化
テュカは、髪を見たベルナーゴ神殿の神官たちが露骨に物欲しげだったと語った。神官たちにとってそれは主神の躰に等しく、本来は聖遺物として安置すべきものだったが、ハーディの褒美である以上、取り上げれば神意への背反となる。彼女らは切れ端を掻き集め、白絹と縒り合わせて「聖なる布」として祀ろうとしていた。
学会騒動と残された約束
レレイはベルナーゴを後にし、伊丹らに護られてロンデルへ戻り学会に臨んだ。刺客の多くは神殿に集まり僧兵に捕らえられたが、笛吹男だけは残り、シャンディーが奸計に嵌って学会で騒動が起きた。事態収拾のため伊丹らは帝都の皇城へ乗り込み、ゾルザルと直談判して解決へ至ったが、レレイにはハーディとの約束が残り、クナップヌイへ向かう負い目が重くのしかかった。
機内の空気と管制交信の小騒動
出発に際し、テュカとロゥリィは「貸し借り」の煩わしさこそ他者と関わる証だとレレイを支えた。離陸前、管制英語の発音が原因で副操縦士が落ち込み、管制から「日本語でOK」と言われる事態が起きたが、レレイが流暢な日本語で気象データを書き取り、さらに管制英語にも対応した。伊丹は励ますつもりの言葉で逆に傷口を広げ、機長の土浦一尉にたしなめられつつも、飛べばよいと割り切った。
星の配列のずれと「門」由来の異常
学者たちは報告書を手がかりに、星の配列のずれという現象を論じた。日本側でも同様の兆候が疑われているが、天文学者が機材異常の可能性を否定しきれない段階で公表できないという事情が語られた。地震については日本は元々多発地帯であり、有意な異常と断定しにくいという見解に落ち着き、「門」を挟んで両側で同じ異常が起きている可能性が意識された。
雲海の上と「空の散歩」騒動
離陸後、初めて航空機に乗るピニャやハミルトンは狼狽し、やがて雲の上へ抜けると雲海と陽光の幻想的な光景に歓声を上げた。ピニャとハミルトンは雲の上を歩きたいと言い出し、伊丹は雲の正体を説明しつつ、落下の恐怖を具体的に語って黙らせた。さらに伊丹は次に日本へ来た折のスカイダイビングを提案し、彼女たちは一転して無邪気に期待を膨らませ、ロゥリィやテュカ、レレイまで同行を望む流れになった。
クナップヌイ接近と黒い霧の出現
降下を始めると機体は雲中で不安定となり、視界のない未知の地での降下はパイロットにとって恐怖そのものだった。雲を突き破ると峻険な地形が現れ、谷間には白ではなく、墨汁を流した水のような黒い霧が広がっていた。予定地への着陸を断念し、機長は計器と感覚のずれ、磁場の異常を疑って地点変更を決断し、黒い霧から少し離れた山頂の棚状地形に着陸した。
ジゼル猊下との再会と緊張の解け方
着陸地は無人と思われたが、冥王ハーディの使徒で亜神のジゼル猊下が翼を広げて現れ、周囲には無数の翼竜が集っていたため、伊丹らは一斉に銃を構えた。ジゼルは伊丹を見て怯え、虚勢を張るが、ロゥリィに叱られると急にしおらしくなり、べらんめい調を抑えて敬語を使おうと苦闘した。その姿があまりに情けなく、隊員たちは次第に銃を下ろし、翼竜まで「やれやれ」と言いたげな空気に変わっていった。
翼竜への騎乗と伊丹・ヤオ組の災難
黒い霧の近くへ行くため、ジゼルは翼竜での移動を提案し、一頭二人までの条件で組み合わせが決まった。ヤオはジャンケンに勝って伊丹と組むことになり、伊丹は高所が苦手で翼竜が怖いと打ち明け、手綱をヤオに託した。伊丹がヤオの腰にしがみつく姿を見てテュカとロゥリィは嫉妬を露わにし、ヤオは妙な自信を得たが、護符の五円玉が精霊魔法で切られて落下すると錯乱した。ヤオは護符に飛びつこうとして手綱を放り、伊丹も巻き込まれて翼竜から逆さにぶら下がる事態となり、呼吸困難と暴れで極限まで追い詰められた末、二人は到着後に疲労困憊で放り出された。
黒い霧の正体と「生の停止」
到着地点で一同が目撃したのは、高原の山裾や谷が黒い霧に覆い尽くされ、緑のまま枯死した植物群が広がる光景であった。テュカは昆虫の死骸が腐敗せず新鮮に見えることを確かめ、腐敗菌すら死んでいる可能性を示唆した。学者たちは放射線やガスを疑ったが、ガイガー計数計もガス検知器も異常を示さず、ジゼルは一か月前より霧が急速に拡大していると証言した。
アポクリフという終末の霧
ロゥリィは黒い霧をアポクリフと呼び、神々が去り人々も消え、世界が虚無へ還る果てに現れるはずの霧だと呻いた。今この時代に現れるはずがないという認識が、ロゥリィを打ちのめした。さらにジゼルは、霧に深く突っ込むと指がなくなると警告し、枝先を浸すと葉が脆く砕ける現象を示して危険性を裏づけた。
「物質ではない影」仮説と学者たちの暴走
漆畑はレジ袋で霧をすくう実験を行い、袋の中には確かに侵入するのに、持ち上げても何も溜まらないことを確認した。気体でも液体でもなく、物質とも断じがたい性質から、養鳴は余剰次元からの「影」ではないかと推測し、菜々美の取材に乗って説明を膨らませた。菜々美が「わかりません」と断言すると養鳴は苛立ち、しかし漆畑が「今思いついた」とさらりと認め、学者としての危うさと勢いが同居した。
夜のチヌークと予算・政治の話
調査後は雨が上がり星空となったが地面はぬかるみ、チヌーク機内が食堂代わりになった。戦闘糧食のカレーをジゼルが豪快に平らげ、ヤオは伊丹の視線だけで動いておかわりや珈琲の支度を始め、テュカは皮肉を放った。学者たちは「門」とアポクリフの因果を断定できないまま、危険が疑われる以上は政治判断として早急な対処が必要だと語り、調査予算の掻き集めを伊丹に迫った。
重力のたとえ話とレレイの核心
養鳴はゴムシートを空間に見立て、手榴弾の重さで撓む凹みを「引力」と説明し、さらに下から摘むことで質量なしに歪みを作れると示して「重力に似た現象」を語った。レレイはこの説明を踏まえ、物が落ちる法則に縛られる三次元の外側に、エテルやセテルなどの方向軸が重なって存在し、魔法はそこへ働きかける技法だと述べた。レレイはロープを浮かせて実演し、現理を切り離して虚理側へ作用させるという説明で、学者たちに「理解は難しいが現象は確かだ」と納得させた。
「門」と多世界の結び目
養鳴が想定していた可能性軸やパラレルワールドの話題は、レレイのナゥルテル観に接続された。世界は一本の紐ではなく根源から無数に分岐し、異なる紐が接触した瞬間に「門」が生じ、通常は一瞬で消えるが、開き続ける状態は二つの世界を無理に束ねることだと整理された。白位はその束ねが張力を高めて世界を歪ませる可能性を語り、学者たちは興奮のまま理解を進めた。
空間の歪みの確認方法
菜々美が「どう確認したのか」と問うと、漆畑は映像を示し、黒い霞に覆われた地面で二点間距離を測った巻き尺が、真っ直ぐ張ったはずなのに緩い弧を描いて見える場面を提示した。レレイは、二点間最短距離は直線であるべきなのに、計測索がたわむのは異常だと即答し、学者たちはそれを空間の歪みの兆候として受け止めた。
天幕での休息と疲労
レレイは割り当てられた天幕に入り、ローブと翼竜鱗の鎧を外して簡易ベッドに腰を下ろした。熱気を吐き出し、消耗と悔しさを抱えたまま沈黙した。
「門」閉鎖をめぐる前提と対立
ロゥリィは「アポクリフが世界を覆う前に門を閉じるべき」と主張しつつ、人間全員が同じ結論に至らない点を問題視した。テュカも利害で反対する勢力が出ると見立て、ヤオは見た以上決断は明白だと断じた。
レレイの提示した代替案
レレイは「門を閉じても再度開くことは可能」と述べ、冥王から授かった触媒(髪の束)で世界を渡る穴を穿てると示した。これにテュカとヤオは身を乗り出して反応した。
ロゥリィの拒否感とレレイの合理主義
ロゥリィは、触媒を使えばレレイがハーディの眷属になると強く反発した。だがレレイは「それの何が問題」と切り返し、信徒化や敵対を強制される筋合いはないと整理した。ロゥリィの抵抗は主に感情と世間体の問題だと位置づけられた。
アポクリフ再発懸念への反論
テュカは「門を開け直したらまたアポクリフが出るのでは」と懸念した。レレイは原因は「開けっぱなし」であり、適時の開閉なら歪みの蓄積が少なく問題は小さいと一蹴した。
現実的な障害の列挙
レレイは、ニホンのある世界を特定できないこと、門を閉じた際に歪み解消でナゥルテルが荒れること、落ち着くまでの時間が不明なこと、さらに時間流差で「翌日開いたつもりが向こうで一年」などが起こり得ることを挙げた。ロゥリィ達はこの不確実性に強く反応した。
ジゼルの補足と「神が結論を突きつける」観点
ジゼルは、主上が「人間には決められない」と言っていたこと、欲得と世界の行く末が衝突して結論を出せないから神が災禍で迫るのだと述べた。ロゥリィは悔しげに呻いた。
レレイの強硬案:耀司の拘束と独占管理
レレイは「耀司は問題にならない」として、門を閉じる際には耀司を拘束し、再開を条件に日本政府から引き渡させればよいと提案した。さらに「開閉できるのは当面私だけ」と既成事実化し、協力は当然得られるはずだと宣言した。無表情の笑みが周囲に寒気を与え、ロゥリィ達は反射的に黙った。
鎧の裏地の穴と裁縫
レレイは鎧の裏地に“ボタン穴のような線の穴”を見つけ、鱗の隙間を貫いていることに気づいた。アルヌスの子供達の手作りで隙間も出やすい作りだと納得しつつ、裁縫セットで繕い始めた。
ピニャの危惧と政治的しがらみ
ピニャは、レレイが門の鍵になることで帝国や日本を巡る思惑に巻き込まれ、ゾルザルに知られれば再び狙われると警告した。レレイは秘密は不可能で、再開可能性がなければ日本政府もアルヌスも門閉鎖を受け容れないと述べた。
ハミルトンの説明:正統政府が門閉鎖に反対する理由
ハミルトンは、イタリカ正統政府にとってアルヌスの日本軍事力が生存のために必要であり、門閉鎖で軍事空白が生じるなら受け入れられないと説明した。ゾルザルを倒しても次はモルト皇帝や後継が同様にレレイを狙う、という構造も示された。
レレイの「信頼」と周囲の反応
レレイは「耀司が守ってくれる」と言い切り、テュカはそれを揶揄した。レレイは否定せず、助けないなら理由があるはずだと確信し、「妻として黙って死ぬ」とまで言ったため、ロゥリィ達はその重さに驚いた。
ロゥリィの確認騒動とダイエット誤解
ロゥリィは「穴を塞いでいる」と聞いてレレイの身体の傷を疑い、Tシャツを捲って確認する蛮行に出た。傷がないと分かると今度は体型の変化をからかい、レレイは「重い=体重のことかもしれない」と誤解して、密かにダイエットを決意した。
アポクリフの影響と自衛官たちの戸惑い
アポクリフの発生は、伊丹率いる自衛官たちにも重い影を落としていた。対策は「門を閉じること」だと示されても、特地で築いてきた信頼関係を思えば、簡単に受け入れられる話ではなかった。
倉田の告白――特地に残りたい理由
倉田は突如、「門を閉じるなら特地に住んでもいいか」と言い出す。理由はイタリカのペルシアとの関係であった。任務のたびに会い、手紙を書き続けた末の確信だという。周囲は囃し立てるが、桑原曹長は生活基盤の現実を問う。
内政幻想への伊丹の否定
倉田はフォルマル家に雇われ、日本の知識で活躍できると語る。しかし伊丹は、それがいかに困難かを説明する。開墾や水路整備ひとつでも、地元の合意形成に膨大な時間と労力が要る。ネット小説的な「内政無双」は現実では通用しない。自らも調べ、門外漢では無理だと悟ったと明かす。
組合成功の実態
アルヌスの組合が成功したのは、特権と商売の基本に則ったからであり、意識改革を迫らなかったためだと伊丹は整理する。特地は遅れているから何でもできる、という思い上がりは危険だと釘を刺す。
伊丹自身の葛藤
倉田は、伊丹も特地に残るのではと探る。黒ゴス、エルフ、魔法少女、皇女といった面々との関係を持ち出し、「逃げられると思っているのか」と迫る。部下たちは全員一致で「無理」と断じた。
伊丹の自己評価と部下の反論
伊丹は「何もしていない」「手を出していない」と弁明するが、部下たちは「相手を本気にさせた責任がある」と指摘する。無過失責任だとまで言われ、伊丹は困惑する。
各ヒロインへの伊丹の理屈
テュカは父親代わりの投影、ヤオは主従のケジメ、レレイは気の迷い、ロゥリィは法的に問題――と、伊丹はそれぞれに距離を取る理由を並べる。しかし部下たちは「素直になれ」「四人全員と付き合う覚悟を」と茶化す。
最前線送りの冗談と審議
倉田は「自分たちが口説いたらどうする」と挑発する。伊丹は第四戦闘団送りと応じるが、部下たちは「審議中」と勝手に議論を始め、最終的に伊丹の態度こそ問題だと結論づける。
黒川の一言
不寝番交代に来た黒川に、伊丹は「門の件で大変だ」と誤魔化す。しかし黒川は淡々と告げる。「あなたに考えるなんてことが、本気で許されると思ってらっしゃるんですか」と。
門の行方だけでなく、伊丹自身の選択もまた、もはや逃げられない局面に差し掛かっていた。
04
テルタを拠点にした「正統」宣言と書簡外交
ゾルザルは帝都を放棄し、帝国第二の都市テルタに皇太子府を移して統治を継続していた。彼はモルト皇帝が自分の下で療養中であり、イタリカに逃れた・廃嫡された・ピニャが皇太女になった等の噂は全て講和派の流言だと断じ、自分こそ正統な皇太子だとする文言を各地に流すよう命じた。テューレがその口述を美しい筆致で文書化する一方、ゾルザルの署名は粗雑で芸術性を台無しにする描写が添えられ、体裁と中身の落差が示された。
地方への圧力と統治の不安定さ
ゾルザルはエルベ藩王国の国王デュランへ書簡を送り、講和派に付かせないことを狙った。次期法務官アブサンは地方が従うかを懸念するが、ゾルザルは「味方しなくても講和派に付かなければよい」と楽観する。続いて属州カルポ総督には、兵と怪異の派遣が遅れていることを理由に催促するが、アブサンは困窮を露呈しすぎると離反を招くと反対し、「帝権擁護委員が働いているか」といった形で警告を滲ませる案を出す。ゾルザルは助言に従うが、両手で顔を覆い、アルヌスとイタリカの二正面対応を嘆くなど、内情の逼迫が浮き彫りとなった。
ゲリラ戦の失速と「内通者」疑惑
イタリカに講和派が盤踞して以降、ヘルム将軍の戦術(難民を利用して日本軍を縛り、隙を突く・潜入破壊工作など)は効果が落ち始めた。講和派は流民の被害を気にせず前進し、帝都奪取を狙うため、ゾルザル側は帝都とイタリカの間に要害拠点を置かざるを得なくなる。しかし拠点化はゲリラの利点を失わせ、さらに怪異の大軍投入も損耗ばかりで成果が出ず、拠点の新設と失陥が拮抗する横ばいに陥る。ゾルザルは「情報漏洩」を疑い、イタリカへの密偵投入の成否をテューレに問うが、フォルマル家に入ると見破られ、拠点も潰されて成果が上がらないと報告される。
拉致被害者を囮にする計画と古田の立ち位置
古田が弁当を運びに来た場面で、ゾルザルは「日本から攫ってきた者を囮に使う」計画の進捗を確認し、アブサンはタンスカに一個軍団を配置済みと答える。ゾルザルは疲労と不眠、食欲低下の兆候を見せるが、古田が骨髄スープと畜乳で煮詰めたポリッジを供し、ゾルザルは味に感嘆して暴食する。冗談で「死刑」と言って周囲を凍らせ、権力者ゆえ誰も顔色や体調に触れない現実も示された。
テューレの依存と「弱み」を求める駆け引き
テューレは古田に鍋運びを同行し、互いの視線を巡って不器用な応酬を交わす。過去に移動中、テューレが古田に愚痴を吐き出した経緯があり、それ以来テューレは警戒・確認・依存が混ざった感情で古田にまとわりつく。彼女は「あなたの話をしなさい」と迫り、従業員(女将)にどんな女性を置くかを執拗に問う。古田は「テューレみたいな方が理想」と、店の演出上の理由で答えるが、テューレは別の意味に受け取り動揺する。さらにテューレは「相手に頼み込め」「攫って逃げる気概を見せろ」など恋愛・結婚の文脈へ暴走し、古田は終始マイペースで受け流す。
「スパイ告白」と盗聴の成立
執務室前でテューレは核心として「あなたの弱みが欲しい」と迫る。自分の秘密を握られている不安を消すため、相互拘束になる情報が必要だと告白したのである。古田はテューレの兎耳に口を寄せ、「僕がスパイ(間諜)だと言ったらどうします?」と囁く。テューレは動揺し否定するが、このやりとりは古田が仕込んだ集音マイクによって記録され、会話は中継されてイタリカの派遣部隊事務所へ送られていた。
ボウロとの接触と待ち伏せの確定
古田が去った後、テューレはボウロと会話する。ボウロは「マツイフユキの移送完了」を報告し、情報が漏れた可能性を示す。テューレは「それなら作戦はこのまま執り行う」と決め、捕虜確保も必要だと語る。ボウロは、テューレにとって古田が敵の間諜である方が面白いのではと挑発しつつ、成功の重要性を確認して去る。
柳田の判断――罠でも突っ込む作戦へ
古田は骨伝導イヤホンとマイクで柳田と通信し、テューレとボウロの繋がりを報告する。柳田は、拉致犠牲者救出は止められないとして、古田に潜入継続とテューレ観察を命じる。敵が待ち伏せを準備している以上、陸路脱出は塞がれている前提で、航空機による離脱が必要だと柳田は考え直す。チヌークの運行予定を精査し、空白のある機体がクナップヌイで待機していることを発見し、帰路の成算を立てる。また空自にファントムでの空撮を急ぎ依頼し、状況把握と作戦修正に動き出した。
デリラの登場――罠と知って踏み込む覚悟の共有
柳田の背後にデリラが現れ、介抱めいた接触をしつつ情報源の戦い(ノッラとの戦闘)を語る。柳田は「敵の罠だった」と告げるが、「囮が本物なのは確かだから、罠を承知で手を突っ込む」と方針を明言する。デリラは出番を求め、柳田は厳しい任務になるとしながらも参加を認め、最後に狭間陸将へ連絡を取る段階へ進んだ。
三日間調査の終了とタンスカへの寄り道
三日間と定められた調査を終えた伊丹達は、宿営地を撤収し、チヌークでクナップヌイを離陸した。来訪時と違い空は雲一つない青空であり、黒い霧と重苦しさに満ちた地から高度を上げていく感覚は強い解放感を伴っていた。その機内で伊丹は、帰路の予定が変更され「寄り道」を行うと関係者へ告げた。
寄り道の目的と救出作戦の概要共有
伊丹は寄り道先がタンスカであり、作戦行動中の部隊を「拾え」という指示だと説明した。桑原や倉田は戦闘の可能性に動揺し、「聞いてない」と言いたげに身を乗り出す。伊丹は、以前から懸案であった拉致犠牲者救出作戦が進行中であり、このチヌークは実行部隊を乗せてアルヌスへ帰還する役割を担うのだと補足した。
報道陣の色めき立ちと機内の役割分担
救出作戦と聞いた菜々美とカメラマンは、大スクープになり得ると興奮し、報道局長賞級だと騒ぎ立てた。黒川は輸液セットを取り出し、機内各所に設置する準備を始めつつ、その期待に一定の同調を示した。黒川はピニャとハミルトンに手伝いを求め、ピニャは相手がゾルザル派である可能性を踏まえて協力を引き受けた。伊丹は全体を取りまとめ、教授陣にも寄り道への協力を丁寧に要請した。
養鳴教授の張り切りと武装準備の連鎖
養鳴は救出作戦なら仕方ないとして協力を表明し、「知的な戦い方」を見せると意気込むが、伊丹は「戦わなくていい」と釘を刺して応じる。そのやりとりの最中も、テュカはコンパウンドボウを取り出して戦闘準備に入り、ヤオも弓の弦を張って備えを進めた。さらにレレイは真鍮色の漏斗の束を取り出し、呪文を唱えて宙に浮かべ、自身の周囲に舞わせて運用する構えを見せた。
漏斗の危険な呼称を止める伊丹と周囲の反応
倉田は漏斗の用途に困惑し、思わず英訳の連想に至りかけるが、伊丹は即座に遮り「決して英訳するな」と強く止めた。養鳴や漆畑は、宙に浮く漏斗群を目の当たりにして純粋に感嘆し、魔法の実在を改めて実感する反応を示した。
ロゥリィの挑発とジゼルの自制
ロゥリィは、なぜか同乗していた冥王ハーディの使徒ジゼルに対し、いじめっ子のような表情で「戦闘よ、羨ましいでしょう、参加したい?」と挑発した。戦神の使徒らしくロゥリィは戦闘をパーティのように楽しみにしていたが、ジゼルはその空気を読み、参加はせず見学に留めると丁重に頭を下げて応じた。
タンスカ城塞の地理と構造的欠陥
タンスカとは、セス湖に流れ込む大河の河口付近の名称である。この河は上流に向かうにつれメッセ、さらにグエラと呼称が変わる。河口にはエメラ、ミューゼ、テウィン、ネッキという四つの中洲が存在し、吊り橋で連絡されている。浅瀬には丸太を打ち込んだ木柵が組まれ、水陸両面からの侵入を阻む水上城塞の様相を呈していた。
だがその構造は本来の帝国式城塞とは異なり、主要な柱こそ石積みであるものの、壁面は木造という変則的な造りであった。本来は石造の恒久的城塞として建設される予定であったが、地盤沈下によって建物が自重で沈み込み、工事は頓挫する。最終的には屋根と柱のみが残り、木造補強を施した半端な構造へと転じた。にもかかわらず、責任回避の論理によって「城塞」の呼称が維持されたのである。
ゴダセンと帝権擁護委員ダーレスの到着
タンスカ周辺を統治するゴダセンのもとへ、皇太子ゾルザルの訓令を携えた帝権擁護委員ダーレスが到着した。作戦内容は、日本側の影戦組織を囮で誘い出し、捕縛あるいは殲滅することで敵戦力を削減し、組織の実態を暴くというものであった。
ゴダセンはこの計画に懐疑的であり、日本人を甘く見るなと警告する。だが命令である以上、遂行せざるを得なかった。
囮の日本人と中央広場への晒し
囮として拘束された日本人は当初地下に隠される予定であったが、敵を確実に誘き出すため、最終的にミューゼ中央広場へと晒されることとなる。ゴダセンは、この男がここにいると知れば日本側が激怒して襲撃してくると予測していた。
爆轟魔法と戦争観の相違
ダーレスは、ヘルム将軍の戦術指導や新たな爆轟魔法の登場によって戦局は有利になると楽観する。爆轟魔法は炎龍撃破の実績を持ち、強力な破壊力を誇るが、扱いは難しい。ゴダセンはその危険性を理解し、魔導師が戦場に立つ時代は終わったと語る。
戦争観を巡る議論では、ダーレスが「失敗は意欲不足」と断じる一方、ゴダセンは作戦そのものや巡り合わせ、運といった要素を挙げ、戦場の不確実性を示唆する。だが最終的な責任は常に現場に帰するという帝権擁護委員の立場が明確にされる。
全方位警戒態勢の構築
ゴダセンは全軍を警戒態勢に入れ、河川巡回、空中警戒、さらには地中への警戒まで命じた。兵士達は地面に耳を当て、鳴子を河に張り巡らせ、空・水・地の全方向に備える。反対を唱えていたゴダセンも、任務となれば徹底的に備える姿勢を見せる。
伊丹隊の寄り道と戦闘準備
一方、三日間の調査を終えた伊丹達は、チヌークでクナップヌイを離脱する。だが帰路でタンスカへ寄り道し、拉致犠牲者救出部隊を収容する任務が加わる。戦闘の可能性に緊張が走る中、テュカとヤオは弓を整え、レレイは漏斗を浮遊させて魔法準備に入る。
ロゥリィは戦闘を楽しみにし、冥王ハーディの使徒ジゼルを挑発するが、ジゼルは参加を辞退する。こうして、帝国側が罠を張るタンスカへと、伊丹達の部隊は向かうこととなった。
罠を承知で踏み込む日本側と、迎え撃つ帝国側。両者の思惑が交錯する中、戦いの火蓋が切られようとしていた。
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ゲート外伝 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり

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