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<物語>シリーズ西尾維新

小説〈物語〉「偽物語 下 つきひフェニックス 6」感想・ネタバレ

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<物語>偽物語(下)の表紙画像(レビュー記事導入用) <物語>シリーズ

5.偽物語 上 第六話 かれんビー
まとめ
7.猫物語 上 第懇話 つばさタイガー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
          1. それにしても阿良々木暦、自重しなさすぎでは?
          2. この街、まともな人間がいないのか?
          3. 毒のないガハラさんも気になる
          4. 火憐に比べて、月火はやっぱり影が薄い
          5. “偽物”月火の正体が、まさかそんなものだったとは
          6. 兄妹三人、全員怪異に関わっているのは何なんだ
          7. 偽物だと分かった瞬間、それまでの家族まで偽物になるのか?
          8. 偽物が本物より本物らしかったら、それは何なのか
          9. 正義と悪も、本物と偽物も簡単には分けられない
          10. 暦は戦いには負けても、妹を守る
          11. まとめ|月火は影が薄い。でも存在そのものが『偽物語』だった
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:火憐の変貌と「神原駿河」への憧れ
        2. 第2幕:禁断の「歯磨き」勝負
        3. 第3幕:市街地での接触 ─ 影縫余弦と斧乃木余接
        4. 第4幕:影の中の吸血鬼と「ミスタードーナツ」
        5. 第5幕:月火の身体に現れた「異常」
      2. 主要な転換点
        1. 転換点:火憐のポニーテイル切断と神原駿河との対面
        2. 転換点:貝木泥舟との再会と専門家の情報獲得
        3. 転換点:阿良々木家前での月火襲撃と肉体再生
        4. 転換点:月火の正体(不死の怪異)の発覚
        5. 転換点:暦の決意と影縫余弦との死闘
        6. 転換点:影縫余弦の退治断念と日常への復帰
      3. 阿良々木暦を中心とした人物関係の変化
        1. 阿良々木火憐
        2. 阿良々木月火
        3. 忍野忍
        4. 影縫余弦・斧乃木余接
      4. 主人公の認識と周囲の評価
      5. クライマックス(月火の身体的特徴の露呈)
      6. 巻末時点の状況
    1. 阿良々木月火
        1. 人物像と立場
          1. ・家族関係
          2. ・外見と性格の乖離
          3. ・髪型の頻繁な変更
        2. 怪異としての正体
          1. ・しでの鳥の託卵
          2. ・無自覚な偽物の人間
          3. ・驚異的な再生能力
        3. 影縫余弦たちの襲撃と阿良々木暦の決意
          1. ・専門家による標的指定
          2. ・偽物の妹を守る選択
          3. ・日常への帰還
        4. まとめ
    2. 不死身の怪異
        1. 不死身の怪異における定義と特性
          1. ・完全再生の機能
          2. ・該当する個体
        2. 専門の退治屋による介入と襲撃
          1. ・専門家の概要
          2. ・襲撃の実行
        3. 阿良々木月火が宿す偽物の性質
          1. ・無自覚な擬態
          2. ・異質な成長速度
        4. 家族としての決断と偽物の受容
          1. ・専門家への抵抗
          2. ・本物を凌駕する偽物
        5. まとめ
    3. 影縫余弦
        1. 人物像と特徴的な行動
          1. ・外見と語調
          2. ・地面を歩かない制約
          3. ・専門家同士の交友
        2. 街を訪れた目的と標的の選定
          1. ・不死身狩りの専門性
          2. ・阿良々木暦と忍野忍への扱い
          3. ・真の討伐対象
        3. 卓越した戦闘能力と対決の結末
          1. ・圧倒的な体術
          2. ・討伐の中止と去就
        4. まとめ
    4. 偽物と本物
        1. 貝木泥舟が唱える偽物の価値
          1. ・本物を目指す姿勢
          2. ・意思に宿る価値
        2. 阿良々木月火と偽物の妹
          1. ・無自覚な怪異の存在
          2. ・血縁を超越した絆
          3. ・本物を凌駕する愛情
        3. ファイヤーシスターズと偽物の正義
          1. ・模倣からの始動
          2. ・覚悟による価値の獲得
        4. 事実を超える選択と意思の力
          1. ・専門家による討伐の断念
          2. ・物語が導き出した結論
        5. まとめ
    5. 家族の絆
        1. 血のつながりの否定と真実の発覚
          1. ・胎児のすり替わり
          2. ・無自覚な擬態
        2. 記憶と時間の真実性
          1. ・専門家からの宣告
          2. ・共有した歳月の重み
        3. 本物以上に愛するという選択
          1. ・不退転の覚悟
          2. ・実力差への抗戦
        4. 真実を伏せた日常の守護
          1. ・討伐の回避
          2. ・平穏の維持
        5. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 私立直江津高校
      1. 阿良々木暦
      2. 戦場ヶ原ひたぎ
      3. 羽川翼
      4. 神原駿河
    2. 中学校・小学校
      1. 阿良々木月火
      2. 阿良々木火憐
      3. ファイヤーシスターズ
      4. 千石撫子
      5. 八九寺真宵
    3. 専門家・怪異・その他
      1. 忍野メメ
      2. 貝木泥舟
      3. 影縫余弦
      4. ドラマツルギー
      5. 斧乃木余接
      6. 忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)
      7. ギロチンカッター
  7. 展開まとめ
    1. 火憐と神原の対面
    2. 影縫余弦と斧乃木余接
    3. 貝木泥舟との再会
    4. 月火への襲撃
    5. 月火の正体
    6. 妹としての月火
    7. 影縫への挑戦
    8. 偽物の家族
    9. 変わらない日常
  8. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

吸血鬼の残滓を持つ高校生・阿良々木暦と、その妹である火憐・月火の周辺で発生する怪異現象、および外部勢力の接触を記録した物語である。夏休み終盤(8月14日)、暦は妹の火憐から、後輩である神原駿河の紹介を執拗に要求される。暦は妹を保護する名目で、口腔内への過干渉という異常な手段を用いた「歯磨き」の勝負を仕掛けるが、その過程で禁忌的な親密さへと至る。並行して、街には「不死身の怪異の専門家」を自称する影縫余弦と斧乃木余接が流入し、忍野メメの旧拠点を探る。物語の到達地点は、入浴後の月火の身体を確認した際、過去に負った「一生消えないはずの重傷」の痕跡が完全に消失しているという、生命の連続性を否定する異常事態の露呈である。

■ 主要キャラクター

  • 阿良々木 暦:  主人公。私立直江津高校3年生。吸血鬼の性質を一部保持する。妹を正しく更生させるという名目のもと、教育的配慮を超えた干渉を行う。
  • 阿良々木 火憐:  妹。中学3年生。「ファイヤーシスターズ」の実戦担当。目的達成のためには、家の鍵のギザギザを用いて自らポニーテールを切り落とすなど、身体的苦痛を厭わない異常な根性(ドM性)を持つ。
  • 阿良々木 月火:  妹。中学2年生。「ファイヤーシスターズ」の参謀担当。ヒステリックな側面を持ち、その正体に関する重大な矛盾を抱える。
  • 忍野 忍:  暦の影に潜む吸血鬼の成れの果て。外部勢力の接近を感知し、彼らが「不死身の怪異を専門とする不穏な勢力」であることを暦に警告する。
  • 影縫 余弦:  郵便ポストや塀の上に直立する京都弁の女性。不死身の怪異の専門家。独自のルールに基づき、移動中を含め地面に決して降りないという特異な行動動線を持つ。
  • 斧乃木 余接:  影縫の式神。「キメ顔でそう言った」という決め台詞を多用する、付喪神の怪異。
  • 神原 駿河:  暦の後輩。元バスケ部エース。火憐の憧れの対象であるが、暦はその特殊な性癖から妹を遠ざけようと試みる。
  • 羽川 翼:  暦のクラスメイト。電話を通じて、影縫の探す「叡考塾」が忍野らの拠点であった事実を特定し、暦に伝達する。

書籍情報

<物語>偽物語 下 つきひフェニックス
著者:西尾維新 氏
イラスト:VOFAN(ヴォーファン) 氏
出版社:講談社
発売日:2016年7月15日
JDCN:0628370200100011000E

<物語>偽物語(下)の表紙画像(レビュー記事導入用)
<物語>偽物語 下 つきひフェニックス

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あらすじ・内容

ふたりめの妹は、世界の終りを宣告する。 「こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うんだよね、お兄ちゃん」。阿良々木暦の妹・月火が実行する、燃え盛るような正義とは!?『偽物語』堂々完結!

偽物語(下)

感想

阿良々木月火を中心とした「つきひフェニックス」。

……なのだが。

正直、火憐の個性が強すぎて月火の影が薄い。

前巻の火憐は、正義感が強く、行動力があり、身体能力も高い。

そのうえ阿良々木暦との歯磨きという、とんでもない場面まで残していった。

あれだけ強烈な姉の後なので、

「月火の話、大丈夫か?」

と思ってしまった。

ところが読み終えてみると、月火の存在そのものが『偽物語』というタイトルにつながっていた。

正義と悪。

本物と偽物。

一見すると反対に見えるものが、実は簡単には切り離せない。

『偽物語』は最後まで、このテーマを追い続けた物語だったように感じる。

それにしても阿良々木暦、自重しなさすぎでは?

テーマの話をする前に、どうしても言いたい。

阿良々木暦。

お前は何をしているんだ。

妹とキス。

妹と歯磨き。

そして八九寺を見つけたら抱きつく。

これだけやっておいて、

「ロリコンではない」

は無理があるだろう。

何をもってロリコンではないと主張しているのか。

むしろ八九寺とのやり取りを見ていると、

「今回はどんな方法で襲いかかるんだ?」

くらいの感覚になってくる。

完全にこちらの感覚までおかしくなっている。

なんて自重しない男だ、阿良々木暦。

この街、まともな人間がいないのか?

そして今回も濃い人物が増える。

影縫余弦。

斧乃木余接。

再登場する貝木泥舟。

忍野忍もいる。

神原駿河もいる。

八九寺真宵もいる。

戦場ヶ原ひたぎもいる。

阿良々木家にはファイヤーシスターズがいる。

……まともな人間はどこだ?

読み進めるほど、

「この街、普通の人間がほとんどいないのでは?」

という疑問が湧いてくる。

怪異より人間のほうが怖いことすらある。

特に影縫余弦の戦闘能力はおかしい。

怪異を専門にしている人間が、一番怪異じみて見えるのだから困る。

毒のないガハラさんも気になる

そして個人的に気になったのが戦場ヶ原ひたぎである。

以前と比べると、かなり毒が抜けている。

もちろん戦場ヶ原らしさが完全になくなったわけではない。

しかし暦との関係が変わったことで、以前よりも随分柔らかくなったように感じる。

あの攻撃性が強かった戦場ヶ原が、少しずつ普通の女の子らしい表情を見せるようになっている。

これはこれで気になる。

毒々しいガハラさんも好きだが、毒の抜けてきたガハラさんが今後どうなるのか。

怪異だけでなく、こうした人物の変化を追いかけるのも〈物語〉シリーズの面白さなのだと思う。

火憐に比べて、月火はやっぱり影が薄い

今回の主役は月火。

ただ、序盤ではやはり火憐ほどの強烈さを感じなかった。

火憐はとにかく分かりやすい。

正義を掲げて走り回る。

自分が正しいと思えば突っ込む。

身体能力も高い。

兄とのやり取りも強烈。

それに対して月火は、もちろん性格的にはかなり危ないところがあるものの、物語を強引に引っ張っていくタイプではない。

そのため、

「火憐の後だと少し弱いかな」

と思いながら読んでいた。

ところが後半。

その印象が一気に変わる。

月火はキャラクターとして目立つ必要がなかったのかもしれない。

月火は「存在そのもの」が物語の核心だった。

“偽物”月火の正体が、まさかそんなものだったとは

影縫と斧乃木の標的。

それは暦でも忍でもなかった。

月火だった。

そして明かされる事実。

阿良々木月火は、人間ではない。

人間の胎内に入り込み、胎児と入れ替わって生まれてくる不死身の怪異。

つまり阿良々木家の娘として生まれたと思われていた月火は、その存在自体が「偽物」だった。

これは驚いた。

火憐のときは怪異に関わった少女だった。

暦も元人間で、吸血鬼になった結果として怪異側へ踏み込んだ。

しかし月火は違う。

最初から怪異だった。

しかも本人すら知らない。

自分を阿良々木月火だと思っている。

阿良々木家の娘だと思っている。

暦と火憐を家族だと思っている。

その認識には何の嘘もない。

だからこそ、

「じゃあ月火は偽物なのか?」

という問題が一気に難しくなる。

兄妹三人、全員怪異に関わっているのは何なんだ

それにしても阿良々木家。

数奇すぎる。

兄の暦は吸血鬼と関わり、自分自身も半吸血鬼のような存在になる。

火憐は怪異に関わって酷い目に遭う。

そして月火に至っては本人そのものが怪異。

兄妹三人全員が怪異に関係している。

両親からすれば、

「うちの子供たちに何が起きているんだ」

という話である。

もっとも月火については、生まれたときから月火として育っている以上、家族から見れば普通の娘である。

ここが今回の面白いところだった。

偽物だと分かった瞬間、それまでの家族まで偽物になるのか?

月火が怪異だった。

では、これまでの家族関係はどうなるのか。

月火と喧嘩したこと。

一緒に暮らしてきたこと。

笑ったこと。

怒ったこと。

兄妹として過ごしてきた時間。

正体が怪異だと判明した瞬間、それらすべてが「偽物」になるのか。

暦の答えは非常に単純だった。

ならない。

月火が何者だろうと、

自分にとっては妹。

だから守る。

理屈として正しいのかは分からない。

怪異を退治する影縫側から見れば、月火は明確に怪異である。

でも暦から見れば、

「そんなことは知らん。俺の妹だ」

で終わる。

この理屈より感情を優先するところが、ものすごく阿良々木暦らしい。

偽物が本物より本物らしかったら、それは何なのか

『偽物語』ではずっと、

「本物」と「偽物」

について考えさせられる。

偽物は本物より価値が低いのか。

偽物が本物になろうと努力したらどうなるのか。

本人すら偽物だと知らず、本物として生き続けたらどうなるのか。

月火は自分を偽物だと思っていない。

普通に生まれた。

普通に育った。

家族を家族だと思っている。

そして家族からも愛されている。

身体の正体だけを見れば偽物。

でも、

「阿良々木月火という妹」

として考えれば、これ以上ないくらい本物である。

だから暦は受け入れる。

偽物なら、

本物以上に本物として扱えばいい。

この考え方はかなり好きだった。

正義と悪も、本物と偽物も簡単には分けられない

これは前巻の火憐にもつながっている。

火憐は正義を掲げて行動する。

でも、その正義は本当に正しいのか。

正義を名乗れば正義なのか。

悪人を倒せば善人なのか。

今回も同じである。

怪異を退治する影縫は間違っているのか。

人間ではない月火を守る暦が正しいのか。

簡単には決められない。

影縫には影縫の正義がある。

暦には暦の正義がある。

そして月火は、

本物ではない。

でも偽物だから価値がないわけでもない。

正義と悪。

本物と偽物。

反対側にあるように見えて、実際には境界が曖昧である。

『偽物語』という作品は、火憐と月火の二人を通して、この表裏一体の関係を描いていたように感じた。

暦は戦いには負けても、妹を守る

そして影縫との戦い。

暦は強い。

忍の力を借りれば、吸血鬼としての力も使える。

それでも影縫には勝てない。

ボコボコにされる。

それでも立ち上がる。

月火が人間か怪異か。

本物か偽物か。

そんなことは関係ない。

妹だから守る。

この単純さが強い。

影縫を論理で完全に言い負かしたわけでもない。

戦闘で倒したわけでもない。

それでも、

「俺はこいつを妹として扱う」

という一点だけは最後まで変わらない。

結果として影縫は月火の退治を諦める。

暦は戦いには負けた。

でも兄としては負けなかった。

まとめ|月火は影が薄い。でも存在そのものが『偽物語』だった

最初は、

「火憐の個性が強すぎて、月火はちょっと影が薄いな」

と思っていた。

読み終えた今でも、キャラクターとしての勢いなら火憐のほうが強烈だったと思う。

でも物語のテーマを考えると、月火はものすごく重要だった。

火憐では「正義とは何か」。

月火では「本物とは何か」。

その二つを通して、

正義と悪。

本物と偽物。

一見すると反対にあるものが、本当に綺麗に分けられるのかを問いかけてくる。

そして最後に暦が出した答えは、とても単純だった。

偽物でも妹は妹。

だったら本物以上に大切にすればいい。

なんとも阿良々木暦らしい結論だった。

ただし。

妹にキスして。

妹と歯磨きして。

八九寺を見つければ抱きついて。

それでも自分はロリコンではないと言い張る。

そこだけは納得できない。

怪異より何より、

阿良々木暦が一番理解できない。

やっぱりこの街、まともな人間がいないのでは?

最後までお読み頂きありがとうございます。

<物語>偽物語(下)の表紙画像(レビュー記事導入用)
<物語>偽物語 下 つきひフェニックス

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5.偽物語 上 第六話 かれんビー
まとめ
7.猫物語 上 第懇話 つばさタイガー

考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:火憐の変貌と「神原駿河」への憧れ

夏休みの朝、火憐がスカート姿という不似合いな変装で暦の部屋に現れる。その意図は、暦の後輩である神原駿河への紹介依頼であった。暦は、神原の異常な性癖が妹に悪影響を及ぼすことを懸念し、保護の観点からこれを拒絶する。しかし火憐は土下座や鍵による断髪という手段を用いて執拗に食い下がる。

第2幕:禁断の「歯磨き」勝負
  • 原因:  火憐の執拗な紹介依頼を拒絶し、かつ彼女の「根性」を快感によって挫く必要性の発生。
  • 行動:  他者に口腔内を操作されるという心理的・肉体的境界を侵犯する「5分間の歯磨き」の強制。
  • 結果:  両者の理性が崩壊し、禁忌的(インセスト的)な親密さへ変質。その現場を月火に目撃され社会的・家庭的危機を露呈するが、火憐が勝負に耐え抜いた結果、神原宅への同行が決定する。
第3幕:市街地での接触 ─ 影縫余弦と斧乃木余接

神原宅への道中、暦は郵便ポストの上に直立する影縫余弦と遭遇する。影縫は「地面を歩かない」という異質な行動を維持したまま、かつて忍野メメが拠点としていた廃ビル「叡考塾」の場所を尋ねる。暦は羽川に確認して情報を開示するが、影縫と斧乃木の纏う「腕っ節に自信がある者特有の不穏な気配」を察知する。

第4幕:影の中の吸血鬼と「ミスタードーナツ」

帰宅した暦は、影から現れた忍と対話する。忍はドーナツの購入を要求しつつ、影縫らが「不死身の怪異を専門とする不穏な勢力」であることを指摘する。この情報は、後述する月火の「異常な再生能力」と対比される構造的伏線となっている。

第5幕:月火の身体に現れた「異常」

外出直前、風呂上がりの月火と遭遇した暦は、彼女の浴衣の着崩れから、あるべき痕跡の不在を直感する。暦は月火を強引に拘束し、その皮膚を直接確認する。そこには、過去にトラックの幌のフレームが突き刺さり「一生消えない」と宣告されていた凄惨な重傷の痕跡が、欠片も残っていないという事実が発覚する。

主要な転換点

転換点:火憐のポニーテイル切断と神原駿河との対面
  • それ以前の状況:阿良々木暦は、神原駿河のファンである妹の火憐から紹介を頼まれていたが、教えるのを拒んでいた。
  • 出来事:火憐は紹介の条件として自ら鍵のギザギザでポニーテイルを切断し、暦は約束通り火憐を神原に紹介した。
  • 変化:火憐と神原が交流を深める一方、暦はその道中で郵便ポストの上に立つ影縫余弦や斧乃木余接と接触した。
  • 次への影響:暦が街に現れた謎の二人組(陰陽師と式神)の存在を認識するきっかけとなった。
転換点:貝木泥舟との再会と専門家の情報獲得
  • それ以前の状況:暦は出会った二人組(影縫余弦と斧乃木余接)の正体や目的を把握していなかった。
  • 出来事:ミスタードーナツで再会した貝木泥舟に財布を奪われる形で、影縫余弦が「怪異転がし」の陰陽師であり、斧乃木余接はその式神で、二人が「不死身の怪異」専門の退治屋だと知らされた。
  • 変化:暦と忍は、自分たち(半吸血鬼・吸血鬼もどき)が標的である可能性を疑い警戒を強めた。
  • 次への影響:暦が先手を打って二人と交渉を行うため、自宅へ戻る決意をする原因となった。
転換点:阿良々木家前での月火襲撃と肉体再生
  • それ以前の状況:影縫余弦は暦と忍について「問題は解決済みで標的ではない」と告げ、暦は安堵しかけていた。
  • 出来事:インターホンの連打に憤慨して飛び出した月火に対し、斧乃木余接が巨大化させた指で門柱ごと月火の上半身を破壊したが、月火の体は即座に完全再生した。
  • 変化:月火が通常の人間の治癒力を超えた不死の肉体を持っている事実が露わになった。
  • 次への影響:影縫余弦たちの本当の狙いが月火であることが明らかになった。
転換点:月火の正体(不死の怪異)の発覚
  • それ以前の状況:暦は月火を実の妹である人間として疑わずに生活してきた。
  • 出来事:影縫余弦と斧乃木余接により、月火が人間の胎児と入れ替わって生まれた不死身の怪鳥(しでの鳥 / 邪悪なるフェニックス)の怪異であり、本人も無自覚なまま人間として生きていたと明かされた。
  • 変化:月火が血のつながった実の妹ではなく、人間を装う怪異(偽物の妹)であることが確定した。
  • 次への影響:影縫余弦が不死の怪異である月火の退治を宣言し、暦に対処を迫った。
転換点:暦の決意と影縫余弦との死闘
  • それ以前の状況:月火が怪異であることが判明し、影縫余弦に命を狙われる事態となった。
  • 出来事:暦は正体が何であれ月火を妹として守ることを選び、忍から血を吸って吸血鬼の力を取り戻した状態で影縫余弦との戦闘に臨んだ。
  • 変化:暦は影縫余弦の圧倒的な戦闘力により一方的に叩きのめされたが、何度倒されても立ち上がり妹を守る決意を示し続けた。
  • 次への影響:暦の譲らない態度と覚悟が、影縫余弦の判断を変化させる要因となった。
転換点:影縫余弦の退治断念と日常への復帰
  • それ以前の状況:影縫余弦は不死身の怪異である月火を退治しようとしていた。
  • 出来事:月火が自分を人間と信じて人に害を与えず生きている点と、暦が偽物と知った上で本物以上に妹として愛する覚悟を確認した影縫余弦が、退治を断念して町を去った。
  • 変化:月火に対する命の危機が回避され、阿良々木家の生活が保たれた。
  • 次への影響:月火は真相を知らないまま日常へ戻り、暦も彼女を今まで通り妹として扱い続ける決意を固めた。

阿良々木暦を中心とした人物関係の変化

阿良々木火憐
  • 開始時:暦は火憐の「正義の味方ごっこ」に呆れ、互いに反抗的で仲が悪いと自覚しており、火憐からの神原駿河の紹介要求も断っていた。
  • 主な出来事:勝負(歯磨き)を経て少し打ち解け、火憐が鍵で自らのポニーテールを切断したため、約束通り神原駿河のもとへ連れて行き紹介した。
  • 巻末時:以前よりも互いに打ち解け、少しだけ仲良くなった状態となった。
阿良々木月火
  • 開始時:暦は月火を血のつながった実の妹(人間)と信じ、短気で攻撃的な一面を手に負えないと思いながら接していた。
  • 主な出来事:襲撃により月火の上半身が破壊されるも即座に完全再生し、彼女が人間の胎児と入れ替わって生まれた不死身の怪異(しでの鳥 / 邪悪なるフェニックス)である事実が発覚した。暦は正体を知った上で影縫余弦から命がけで月火を守り抜いた。
  • 巻末時:月火が生物学的な実妹ではなく「偽物の妹(怪異)」であることを認識したが、本人には真実を明かさず、本物以上に妹として受け入れ守り続ける決意を固めた。
忍野忍
  • 開始時:忍は暦の影に潜んでだんまりを決め込むことが多く、受動的な主従・共存関係にあった。
  • 主な出来事:忍が自ら「黙るのに飽きた」と会話を始め、ミスタードーナツへの外出を要求するなど積極的に意思疎通を行うようになった。月火の危機に際しては暦に血を吸わせて吸血鬼の力を貸し出し、共に戦った。
  • 巻末時:主従関係でありながら互いに軽口や協力を交わし、「一心同体・一蓮托生」のパートナーとしての絆をより強固にした。
影縫余弦・斧乃木余接
  • 開始時:面識がない状態であった。
  • 主な出来事:街で道を尋ねられた後、貝木泥舟から二人が不死身の怪異専門の退治屋(陰陽師と式神)であると教えられた。自宅前で月火を襲撃した二人に対し暦は戦闘を挑んで圧倒されたが、倒れても譲らない暦の覚悟を見た影縫が退治を断念した。
  • 巻末時:月火の退治を免除(保留)される形で決着し、見逃される関係となった。

主人公の認識と周囲の評価

  • 暦自身の認識:  妹を正しく導き、怪異から守ろうとする「正義の味方の兄」としての自己像を維持。
  • 周囲からの評価:  火憐、月火、羽川からは、一貫して「変態」「鬼畜」と評される。特に妹への過干渉や肉体的拘束を伴う行動は、客観的に犯罪的であると指摘されている。
  • 認識の差が現れた場面:  火憐への歯磨きシーンにおいて、暦は「戦略」と定義しているが、月火は「慈愛の表情での押し倒し」と解釈。また、月火の身体確認のための拘束行為は、本人から明確な拒絶と不審を招いている。

クライマックス(月火の身体的特徴の露呈)

  • 発生原因:  浴衣の着崩れから、暦が月火の左胸付近にあるはずの古傷の所在を疑問視したこと。
  • 行動:  暦は抵抗する月火を廊下に押し倒して拘束し、帯を解いて彼女の肌(胸部周辺)を目視確認した。
  • 衝撃的事実:  かつて屋上から転落し、トラックのフレームが突き刺さったことで「一生消えない」とされていた凄惨な傷跡が完全に消失していた。
  • 結末:  月火は「人間だから治った」と平然と主張するが、暦はそれを生命の連続性を否定する異常な再生と認識。月火が人間ではない「偽物」である可能性を確信するに至る。

巻末時点の状況

  • 阿良々木火憐:  神原駿河の自宅に預けられ、憧れの対象との対面を果たしている。
  • 阿良々木月火:  傷跡のない無垢な皮膚を露呈させながらも、自覚なき日常を継続。
  • 阿良々木暦:  月火の正体に対する深刻な疑念を抱き、影縫ら専門家の真の目的を警戒しつつ、忍と共に外出中。
  • 影縫・斧乃木:  忍野らの旧拠点(叡考塾)に到着し、拠点構築を開始している。

阿良々木月火

偽物語(下)最終話つきひフェニックスにおいて、物語の核心を担う阿良々木月火の人物像、怪異としての真実、そして作中で果たした役割を解説する。

人物像と立場

阿良々木暦の妹であり、阿良々木家の末っ子として日々の生活を送る。

・家族関係

中学二年生の十四歳で、阿良々木暦の妹、阿良々木火憐の妹に位置する。

・ファイヤーシスターズの参謀

姉の火憐とともに地域の中学生の間で知られる正義の味方ユニットを結成し、作戦立案や後方支援を担う参謀役を務める。

・外見と性格の乖離

和服や浴衣を日常的に好み、たれ目の大人しげな容貌を見せる一方、気性は短気かつヒステリックで、ずる賢く攻撃的な一面を併せ持つ。

・髪型の頻繁な変更

ボブやワンレングスなど、短期間で髪型をめまぐるしく変化させる特異な習慣を持つ。

怪異としての正体

外見上はごく普通の人間として生活を営むが、その本質は人外の怪異に属する。

・しでの鳥の託卵

人間の母親の胎内に入り込み、胎児と入れ替わって誕生する不死身の怪鳥に由来する怪異を正体に持つ。

・無自覚な偽物の人間

成長の過程において自身が怪異である認識は一切持たず、家族にも正体を気付かせないまま人間として過ごす。短期間で髪が伸びて生え変わる現象も、この不死鳥の生態に起因する。

・驚異的な再生能力

式神である斧乃木余接の攻撃を受け、建物の門柱や玄関ごと上半身を吹き飛ばされる事態に直面しながらも、傷跡ひとつ残さず瞬時に肉体を完全再生させる。

影縫余弦たちの襲撃と阿良々木暦の決意

専門家の介入によって平穏な生活は脅かされるが、兄の強い覚悟によって事態は収束を迎える。

・専門家による標的指定

不死身の怪異を専門に狩る陰陽師の影縫余弦と式神の斧乃木余接に正体を見抜かれ、討伐対象として命を狙われる。

・偽物の妹を守る選択

阿良々木暦は、月火が生物学的な実妹ではなく人間を装う偽物である事実を突きつけられた後も、共に暮らした時間と家族の絆を真実と確信し、命を賭して専門家たちへ立ち向かう。

・日常への帰還

影縫余弦が討伐を諦めて立ち去った後も本人へ真実は告げず、暦は偽物と知った上で本物以上に妹として愛し続ける方針を選び、月火は何も知らぬまま以前と変わらぬ日常を歩み続ける。

まとめ

阿良々木月火は、自身が不死の怪異である自覚を持たないまま人間として育ち、その存在が発覚したことで大きな危機を迎えた。しかし、血の繋がりを超えて家族としての絆を優先した阿良々木暦の奮闘により救われ、本物と偽物を巡る物語のテーマを象徴する存在として平穏な日常へ踏み留まる結果を残す。

不死身の怪異

不死身の怪異

物語の核心に位置づけられる不死身の怪異は、作品全体の命題である本物と偽物の関係性に深く連動する。肉体の損壊を無効化する規格外の治癒性、作中に登場する該当者、専門家との衝突、そして主人公が下した決断の意味を以下に解説する。

不死身の怪異における定義と特性

肉体が損壊しても永続的に復元を繰り返す特異な性質を指す。

・完全再生の機能

いかに外傷を負い、致命的な破壊を受けようとも、痕跡を残さず瞬時に肉体を完全復元する能力を発揮する。

・該当する個体

忍野忍は、かつて伝説の吸血鬼であり怪異殺しの異名をとった最上位の存在に位置する。

阿良々木暦は、吸血鬼に血を吸われた経験から体内に治癒因子を残す半吸血鬼の肉体を有する。

阿良々木月火は、母胎内の胎児と入れ替わって誕生する不死身の怪鳥、しでの鳥に由来する。

専門の退治屋による介入と襲撃

不死の存在を狩る専門家が排除のために現れる。

・専門家の概要

陰陽師の影縫余弦と式神の斧乃木余接は、不死身の怪異を専門的に狩る本物の退治屋として活動する。

・襲撃の実行

斧乃木余接は固有の術式を用いて、住宅の門柱ごと阿良々木月火の上半身を粉砕する攻撃を加える。しかし標的となった月火は、わずかな時間で無傷の状態へと完全修復を果たす。

阿良々木月火が宿す偽物の性質

人間社会に溶け込みながらも、その本質は怪異に根ざす。

・無自覚な擬態

しでの鳥は人間の胎児と成り代わって成長し、周囲はおろか当人にも怪異としての認識を持たせないまま生涯を終える生態を持つ。ゆえに月火本人にも異形としての自覚は皆無に等しい。

・異質な成長速度

頭髪が極端な速度で伸び、短期間で髪型をめまぐるしく変化させていた現象も、不死性の身体機能に起因する。

家族としての決断と偽物の受容

血統の真偽を超越した絆の証明へと至る。

・専門家への抵抗

妹の正体が怪異である事実を影縫余弦から突きつけられた阿良々木暦は、絶望的な実力差に晒されながらも退治を拒絶し、命を賭して立ち向かう姿勢を貫く。

・本物を凌駕する偽物

生物学的な血縁関係としては偽物であっても、共に過ごした歳月と記憶を確かな真実と捉え、真実を本人へ秘匿したまま、本物以上に妹として愛し守り抜く道を選ぶ。

まとめ

不死身の怪異という概念は、単なる戦闘上の特性にとどまらず、存在の正統性を問う装置として機能する。血の繋がりという客観的事実が破綻した状況において、主観的な記憶と情愛を拠り所に家族関係を再構築する結末は、虚構が真実を凌駕し得るという作品の根底思想を明確に示している。

影縫余弦

物語の終盤に現れる陰陽師の影縫余弦は、怪異転がしの異名を持ち、不死性を備えた怪異のみを専門に狩る退治屋として強い存在感を放つ。特異な行動様式や圧倒的な武力、阿良々木家を訪れた真の狙い、そして主人公との対決を経て下した決断について整理を行う。

人物像と特徴的な行動
・外見と語調

短髪にパンツスーツ姿を基調とした装いの女性であり、京都訛りの言葉遣いを崩さずに会話を進める。

・地面を歩かない制約

地表に足を直接触れさせない特異な行動規範を課しており、移動時は郵便ポストやブロック塀、ガードレール、門扉の上などを卓越した平衡感覚で跳び移る。

・専門家同士の交友

忍野メメや貝木泥舟とは大学時代の同級生にあたり、互いの素性を熟知する同業者として接する。行動を共にする式神として斧乃木余接を従える。

街を訪れた目的と標的の選定
・不死身狩りの専門性

不死の存在を滅ぼす専門家として活動し、永続的な生命力を持つ怪異の殲滅を生業とする。

・阿良々木暦と忍野忍への扱い

半吸血鬼の肉体を持つ阿良々木暦や元吸血鬼の忍野忍については、過去に忍野メメが調停を施した経緯を踏まえ、討伐の対象外として見逃す姿勢を示す。

・真の討伐対象

標的として定めていたのは、阿良々木暦の妹である阿良々木月火の体内に宿る不死の怪鳥、しでの鳥の排除に他ならない。

卓越した戦闘能力と対決の結末
・圧倒的な体術

式神の凶行に激昂して襲いかかった阿良々木暦を、爪先立ちの体勢を維持したまま瞬時に制圧する。吸血鬼の力を引き出した暦との直接交戦においても、高度な肉弾戦技術のみで終始一方的に圧倒する力量を見せつける。

・討伐の中止と去就

対象である月火が人間社会に危害を及ぼさず自己を人間と信じ込んでいる事実、そして血縁の真偽を越えて妹を守り抜く暦の不退転の意志を確認した末、影縫は討伐を諦めて式神と共に街を立ち去る道を選ぶ。

まとめ

冷徹な技術と厳格な信念を併せ持つ影縫余弦の介入は、阿良々木暦に対して家族の定義を深く問い直す過酷な試練となった。常識外れの戦闘力を誇る専門家が示した撤退の判断は、偽物であっても実質的な絆を尊ぶ主人公の覚悟を際立たせる契機となった。

偽物と本物

偽物語、とりわけ下巻に収録されたつきひフェニックスにおいて、偽物と本物を巡る対比は作品全体を貫く中核的な命題を成す。作中で描かれた多角的な側面や登場人物の思想、そして物語の結末について整理を行う。

貝木泥舟が唱える偽物の価値

詐欺師である貝木泥舟の論理は、作品の根底に流れる哲学を形成する。

・本物を目指す姿勢

貝木泥舟は自身を偽物と規定し、影縫余弦らを本物の専門家と位置づける。

・意思に宿る価値

本物になろうとする偽物のほうが本物よりも価値を宿すという論理を展開する。本物に近づこうとする明確な意思が存在する点において、偽物のほうがより本物らしいという逆説的な思想を提示する。

阿良々木月火と偽物の妹

平穏な日常を送っていた妹の正体が明かされたことで、家族の定義が根本から問い直される。

・無自覚な怪異の存在

阿良々木月火の正体は、母胎内の胎児と入れ替わって誕生する不死身の怪鳥、しでの鳥に由来する。当人は自身が怪異である認識を一切持たず、完全に人間として生活を営む。

・血縁を超越した絆

専門家から月火が生物学的な妹ではなく人間を装う偽物である事実を突きつけられた阿良々木暦は、共に暮らした歳月や記憶、妹を慈しむ感情こそを真実と確信し受け入れる。

・本物を凌駕する愛情

偽物の妹と理解した上で、本物以上に妹として愛し守り抜く選択を下し、命を賭して専門家へ立ち向かう行動を示す。

ファイヤーシスターズと偽物の正義

姉妹が掲げる正義の活動もまた、模倣から出発して変質を遂げる。

・模倣からの始動

阿良々木火憐と阿良々木月火による活動は、当初は他者の影響から始まった正義の味方ごっこと呼ぶべき偽物の正義に位置する。

・覚悟による価値の獲得

過酷な試練や苦痛に直面しても屈しない姿勢を通じて、その正義は単なる真似事の枠を脱し、本物以上の影響力を持つ行動へと昇華を果たす。

事実を超える選択と意思の力

本物と偽物の境界は、当事者の覚悟によって再構築される。

・専門家による討伐の断念

本物の陰陽師である影縫余弦は偽物の人間を排除しようと試みるが、月火が人を害さず人間として生きている実態や、暦が示した揺るぎない覚悟を目の当たりにして討伐を放棄し立ち去る。

・物語が導き出した結論

血縁や正体が本物か偽物かという客観的事実よりも、対象を本物として扱おうとする強い意志や愛情、積み重ねた時間の重みこそが真の価値を生み出すという視点に至る。

まとめ

本作における偽物と本物の議論は、客観的な事実のみに囚われる危うさを浮き彫りにする。たとえ始まりが偽りや模倣であったとしても、本物であろうとする不断の意志と相手を想う真摯な選択が伴うとき、それは形式的な本物を超えた確かな実体を獲得する。

家族の絆

偽物語(下)最終話つきひフェニックスにおける家族の絆は、生物学的な血縁関係という客観的事実を超越し、個人の強固な意志と積み重ねた時間によって形成される概念として提示される。血の繋がりを否定された状況下において、主人公が下した決断と家族関係の本質について整理を行う。

血のつながりの否定と真実の発覚
・胎児のすり替わり

阿良々木月火の正体は、母胎内の胎児と入れ替わって誕生する不死身の怪鳥、しでの鳥に由来する。

・無自覚な擬態

月火本人は自身を怪異と認識せず人間として育つものの、生物学的な意味における阿良々木暦の実妹ではない偽物の妹という事実が確定する。

記憶と時間の真実性
・専門家からの宣告

不死身の怪異を専門に狩る影縫余弦から妹の正体を告げられ、退治の標的とされた際に阿良々木暦は動揺を経験する。

・共有した歳月の重み

対象が人外の存在であっても、同じ屋根の下で生活を共にし育んできた記憶や過ごした日々の重みは虚構ではないと確信する。

本物以上に愛するという選択
・不退転の覚悟

影縫余弦に対し、偽物の妹と理解した上で本物以上に妹として愛し守り抜く決意を固め、命を懸けて対峙する。

・実力差への抗戦

圧倒的な戦力差に晒されて幾度も叩きのめされながらも退かず、家族とは血縁という事実ではなく、誰かを家族として慈しみ続ける選択と覚悟によって成立するという思想を体現する。

真実を伏せた日常の守護
・討伐の回避

当事者の覚悟を見届けた影縫余弦が退治を放棄し、危機の回避に成功する。

・平穏の維持

月火本人には自身が怪異である事実を秘匿し、何も知らないまま阿良々木家の娘や妹として平穏な日常を歩める環境を整える。

まとめ

本作が示す家族の絆は、客観的な血縁の有無に依存しない。たとえ生まれや血筋が偽りであったとしても、共に過ごした歳月を肯定し、本物として愛し守り続けようとする主観的な意志と覚悟が存在する限り、その関係性は形式的な血縁を超えた本物としての価値を獲得する。

5.偽物語 上 第六話 かれんビー
まとめ
7.猫物語 上 第懇話 つばさタイガー

登場キャラクター

私立直江津高校

阿良々木暦

私立直江津高校の三年生男子生徒。半吸血鬼の体質を持つ。火憐や月火の兄として彼女たちを見守る。妹が怪異であると知っても家族として守る決意を固めた。

・所属組織、地位や役職  私立直江津高校三年生。半吸血鬼。

・物語内での具体的な行動や成果  火憐の要求に応じて歯磨き勝負を行い、神原駿河を紹介した。ミスドで貝木泥舟から影縫余弦と斧乃木余接が不死身専門の退治屋であることを聞き出す。月火が「しでの鳥」の怪異だと発覚した際、影縫余弦との戦いに挑み、打ちのめされながらも立ち上がり続けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  月火が偽物の妹であると知りつつも、本物以上に妹として愛し守り抜くことを選択した。

戦場ヶ原ひたぎ

私立直江津高校の三年生女子生徒。阿良々木暦の恋人。髪を短く切り、過去の出来事やコンプレックスを克服して成長を遂げた。

・所属組織、地位や役職  私立直江津高校三年生。

・物語内での具体的な行動や成果  お盆の時期に父方の田舎へ里帰りしていたため、本編の画面上には直接登場しない。暦の回想や貝木泥舟との会話の中で状況が語られた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  毒舌や頑なな態度が和らぎ、普通の女子高生として穏やかな生活を送る。

羽川翼

私立直江津高校の三年生女子生徒。クラスの委員長を務める。豊富な知識と察しの良さを持ち、阿良々木暦からの信頼を集める。

・所属組織、地位や役職  私立直江津高校三年生。クラス委員長。

・物語内での具体的な行動や成果  阿良々木暦からの電話に応じ、叡考塾(廃ビル)の名称や情報を伝えた。暦の行動や状況を電話越しに正確に言い当てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  阿良々木暦の相談役として的確な助言を与える。

神原駿河

私立直江津高校の二年生女子生徒。元バスケットボール部のエース。阿良々木暦を先輩として強く慕う。

・所属組織、地位や役職  私立直江津高校二年生。元バスケットボール部エース。

・物語内での具体的な行動や成果  阿良々木暦から妹の火憐を紹介された。自宅で火憐を招き入れて交流を深めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  火憐との間に新たな交友関係を構築する。

中学校・小学校

阿良々木月火

栂の木第二中学校の二年生女子生徒。阿良々木暦の「下の妹」。和服を着用し、内面に短気で攻撃的な性格を秘める。

・所属組織、地位や役職  栂の木第二中学校二年生。ファイヤーシスターズ参謀担当。

・物語内での具体的な行動や成果  自宅前でしつこくインターホンを鳴らす斧乃木余接に立腹して飛び出した。斧乃木余接の攻撃により上半身を破壊されたが、即座に完全再生を果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  胎児と入れ替わって生まれる不死身の怪鳥「しでの鳥」の怪異である事実が明かされた。本人には正体が伏せられたまま、阿良々木家の妹として日常生活へ戻った。

阿良々木火憐

栂の木第二中学校の三年生女子生徒。阿良々木暦の「上の妹」。高い身体能力と強い正義感を持つ。

・所属組織、地位や役職  栂の木第二中学校三年生。ファイヤーシスターズ実戦担当。

・物語内での具体的な行動や成果  神原駿河への紹介を阿良々木暦に頼み、鍵のギザギザで自らのポニーテールを切り落とした。暦と歯磨き勝負を行った後に神原駿河の自宅へ向かい対面を果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  トレードマークだったポニーテールを短い髪型へと変更した。

ファイヤーシスターズ

阿良々木火憐と阿良々木月火による姉妹ユニット。地域の中学生の間で正義の味方として知られる。

・所属組織、地位や役職  栂の木第二中学校の姉妹ユニット。

・物語内での具体的な行動や成果  地域の問題解決や相談に応じる活動を行った。月火が将来的なユニットの進退や解散について思考を巡らせた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  火憐の成長や環境の変化に伴い、ユニットのあり方に変化の兆しが生じた。

千石撫子

栂の木第二中学校の二年生女子生徒。阿良々木月火の友人。阿良々木暦に対して懐く様子を見せる。

・所属組織、地位や役職  栂の木第二中学校二年生。

・物語内での具体的な行動や成果  過去に阿良々木暦へニンテンドーDSを貸し出したエピソードが回想や会話の中で言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  前髪をカチューシャで上げるなど髪型を変更したことが語られた。

八九寺真宵

迷い牛の怪異である小学生の少女。リュックサックを背負った姿で現れる。阿良々木暦と軽妙なやり取りを交わす。

・所属組織、地位や役職  地縛霊(迷い牛の怪異)。

・物語内での具体的な行動や成果  街の曲がり角で阿良々木暦と遭遇した。暦からの過剰なアプローチをかわしつつ言葉遊びを展開した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  怪異ゆえに変化や成長ができない存在として描かれた。

専門家・怪異・その他

忍野メメ

かつて廃学習塾跡(叡考塾)に滞在していた怪異の専門家。阿良々木暦や忍野忍に影響を与えた。

・所属組織、地位や役職  怪異の専門家。

・物語内での具体的な行動や成果  既に街を去っている。かつて暦と忍の関係にバランスを施し、アンタッチャブルな状態を作った事実が影縫余弦から語られた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  現在も専門家たちの間でその影響力や処置が認識されている。

貝木泥舟

黒いスーツを着た壮年の詐欺師。金銭を最優先する価値観を持つ。怪異の存在を認めず道具として利用する。

・所属組織、地位や役職  詐欺師。

・物語内での具体的な行動や成果  ミスタードーナツで阿良々木暦と遭遇した。暦から財布を奪い、影縫余弦と斧乃木余接が「不死身の怪異」専門の退治屋(陰陽師と式神)である情報を売った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  戦場ヶ原ひたぎとの約束に従い、用事を終えた後に街を去る姿勢を示した。

影縫余弦

生粋の京都弁を話す女性陰陽師。「怪異転がし」の異名を持つ。地面を直接歩かずブロック塀や門扉の上を移動する。

・所属組織、地位や役職  陰陽師(不死身の怪異専門の退治屋)。

・物語内での具体的な行動や成果  阿良々木家の前に現れ、不死身の怪異である阿良々木月火の退治を宣言した。襲いかかってきた阿良々木暦を圧倒的な体術で制圧した。暦の強い覚悟を確認し、月火の退治を断念して撤退した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  月火を害のない存在と認め、退治を免除して街を去った。

ドラマツルギー

春休みに阿良々木暦が遭遇した吸血鬼狩りの専門家。大柄な体格を持つ。

・所属組織、地位や役職  元吸血鬼狩り(吸血鬼)。

・物語内での具体的な行動や成果  過去の戦闘において自らの両腕を剣に変形させて戦ったエピソードが阿良々木暦の回想の中で引き合いに出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の事例として言及された。

斧乃木余接

影縫余弦に従う式神の少女。「僕はキメ顔でそう言った」という決まり文句を使用する。

・所属組織、地位や役職  影縫余弦の式神(怪異)。

・物語内での具体的な行動や成果  阿良々木家のインターホンを連打し、飛び出してきた月火の上半身を能力(例外のほうが多い規則)で門柱ごと破壊した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  影縫余弦の指示に従い、月火の退治断念とともに街を去った。

忍野忍(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)

阿良々木暦の影に潜む金髪の少女。元は伝説の吸血鬼。現在は力を失った状態にある。

・所属組織、地位や役職  吸血鬼もどき。

・物語内での具体的な行動や成果  暦とともにミスタードーナツへ出かけた。影縫余弦との戦いにおいて暦に血を吸わせ、吸血鬼の力を貸し出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  暦との主従・協力関係を維持し、影の中で共存を続ける。

ギロチンカッター

春休みに阿良々木暦たちが遭遇した吸血鬼狩りの専門家。

・所属組織、地位や役職  元吸血鬼狩り(新興宗教の大司教)。

・物語内での具体的な行動や成果  吸血鬼専門の専門家としての例え話の中で名前が引き合いに出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の専門家の例として言及された。

<物語>偽物語(下)の表紙画像(レビュー記事導入用)
<物語>偽物語 下 つきひフェニックス

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5.偽物語 上 第六話 かれんビー
まとめ
7.猫物語 上 第懇話 つばさタイガー

展開まとめ

火憐と神原の対面

八月十四日、阿良々木暦は妹の火憐と外出していた。火憐は憧れていた神原駿河を紹介してほしいと暦に頼み、その条件として髪を切ることを受け入れた。暦は火憐の長いポニーテイルを切り、二人で神原の家へ向かった。

神原と対面した火憐は、憧れの人物を前に緊張しながらも交流を深めた。暦は二人を残して帰宅する途中、八九寺真宵と出会った。

影縫余弦と斧乃木余接

八九寺と別れた暦は、道に迷っていた斧乃木余接と出会った。斧乃木は影縫余弦という女性を探しており、暦は道を教えた。その後、暦は神原の祖母の家で影縫とも遭遇した。

二人との出会いに違和感を抱いた暦は帰宅した。すると影から忍野忍が現れ、暦は忍とともにミスタードーナツへ出かけた。

貝木泥舟との再会

店内で暦は、この町を去ったはずの貝木泥舟を発見した。貝木は戦場ヶ原との約束を破るつもりはなく、用事を済ませれば再び町を去ると説明した。

暦が影縫と斧乃木について尋ねると、貝木は代金として暦の財布を受け取り、二人が怪異を専門とする本物の専門家だと明かした。影縫は陰陽師、斧乃木はその式神であり、二人は特に不死身の怪異を専門としていた。

暦は自分と忍が狙われている可能性を考えた。しかし忍は、二人が暦たちだけを目的にしているとは限らないと指摘した。

月火への襲撃

帰宅した暦は、自宅前に影縫と斧乃木がいるのを発見した。暦が二人を問い詰めると、影縫はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードに関する問題はすでに解決しており、暦と忍は標的ではないと告げた。

その最中、斧乃木が押し続けていたインターホンに腹を立て、月火が家から飛び出した。すると斧乃木は巨大化させた指で門柱や玄関ごと月火の上半身を破壊した。

激怒した暦は斧乃木へ襲いかかったが、影縫に一瞬で制圧された。しかし、吹き飛ばされたはずの月火の身体は瞬く間に完全再生していた。

月火の正体

影縫と斧乃木の本当の標的は月火だった。月火は人間の母親から生まれた人間ではなく、不死身の怪鳥に由来する怪異だった。

その怪異は人間の胎内へ入り込み、胎児と入れ替わって生まれてくる性質を持っていた。宿主となった人間の姿で成長し、周囲にも本人にも正体を悟らせないまま一生を送るため、月火自身には自分が怪異だという自覚がなかった。

さらに月火の髪が異常な速度で伸び、髪型を頻繁に変えていたことも、その身体の特殊な性質によるものだった。阿良々木家で生まれ育ち、家族から月火として愛されてきた存在そのものが、人間を装った不死身の怪異だったのである。

妹としての月火

暦は月火の正体を知って動揺した。しかし、これまで一緒に暮らしてきた記憶まで偽物になるわけではなかった。月火が自分を妹と思い、暦も彼女を妹として生きてきた事実は変わらなかった。

影縫は、不死身の怪異を見逃すつもりはなく、月火を退治すると宣言した。暦は月火の正体が何であろうと、自分にとって妹であることに変わりはないとして、影縫たちから守ることを選んだ。

影縫への挑戦

暦は月火を守るため、影縫との戦いに臨んだ。忍も暦に力を貸し、暦は吸血鬼としての力を取り戻した状態で影縫へ挑んだ。

しかし影縫の戦闘能力は圧倒的であり、暦はまともに対抗できなかった。影縫は不死身の怪異を専門に狩るだけの実力を持ち、吸血鬼の力を借りた暦さえ一方的に叩きのめした。

それでも暦は立ち上がり続けた。月火が本物の人間か偽物の妹かという問題ではなく、自分が妹を守るという意思だけは譲らなかった。

偽物の家族

影縫は暦を圧倒した末、その覚悟を確かめた。月火は怪異でありながら、人間を襲って害を与える存在ではなく、自分を人間だと信じて普通に生きていた。暦も正体を知ったうえで、月火をこれまで通り妹として受け入れていた。

影縫は月火の退治を断念し、斧乃木とともに町を去ることにした。暦は戦いには敗れたものの、月火を守り抜いた。

変わらない日常

月火は自分の正体を知らないまま、阿良々木家の娘として日常へ戻った。暦も真実を本人へ伝えず、これまで通り妹として接することを選んだ。

血のつながりや正体がどうであろうと、家族として積み重ねてきた時間は変わらなかった。月火が偽物であるなら、偽物であることを承知したうえで本物以上に妹として扱えばよかったのである。

こうして暦は、不死身の怪異である月火を自分の妹として受け入れ、阿良々木家の日常は続いていった。

5.偽物語 上 第六話 かれんビー
まとめ
7.猫物語 上 第懇話 つばさタイガー

その他フィクション

e9ca32232aa7c4eb96b8bd1ff309e79e 小説「転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す1 」感想・ネタバレ
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