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2027年 冬姫騎士様のヒモ未分類白金透

小説「姫騎士様のヒモ 5」感想・ネタバレ

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姫騎士様のヒモ5の表紙画像(レビュー記事導入用) 2027年 冬

姫ヒモ4レビュー
まとめ
姫ヒモ6レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
        1. マシュー
        2. アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
        3. ナタリー
        4. エイプリル
        5. グレゴリー
        6. サマンサ(サム)
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
      1. 英雄の影で罪を重ねるマシュー。旧友ナタリーの裏切りと太陽神の思惑
        1. アルウィンの名声が上がるほど、マシューは疎まれる
        2. 暴漢に絡まれても正体を明かせない。元最強探索者の不自由さ
        3. 死んだはずのナタリーが帰還。懐かしい再会なのに素直に喜べない
        4. アルウィンの手首に黒い斑点。スタンピードを終えても苦しみは終わらない
        5. アルウィンを守るため、未完成の丸薬を盗むマシュー
        6. 死霊魔術師エステル。死んだ恋人を手放せない女の悲しさ
        7. エステルの首をねじ切って丸薬を奪還。マシューの執念が怖い
        8. 丸薬を飲ませて祝宴へ送り出す。その裏で死んだ男がいた
        9. エイプリルの夢とギルドマスターの逮捕。普通の暮らしが突然壊れる
        10. ギルドマスターも信用できない。ドナルドを巡る策略が嫌らしい
        11. エイプリルが賞金首に。守るべき少女が裏社会の獲物になる
        12. 猫のオリバーが隠し財産への鍵? 意外な手掛かりに驚いた
        13. 伝道師ランディの襲撃。敵の目的が分からないことが一番怖い
        14. ナタリーが救援に現れる。旧友の強さが頼もしい
        15. 魔侠同盟の包囲網。助かったと思ったら次の敵が現れる
        16. 財宝を巡る逃走劇。マシューのハッタリとエイプリルの勇気
        17. 財宝を魔物の腹に隠す? マシューとデズの悪知恵がすごい
        18. エイプリルの父親を殺していたのはマシュー。今回最も重かった真実
        19. サマンサの正体も伝道師。もう誰も信用できない
        20. ナタリーが太陽神に忠誠を誓う。旧友の裏切りがつらすぎる
        21. ナタリーがエイプリルの侍女兼護衛に。敵を身近に置くしかない恐怖
        22. 「マデューカス」と呼ばれた瞬間。マシューの過去まで暴かれそうになる
        23. 太陽神アリオストルは何をしたいのか。敵の目的が見えない怖さ
        24. マシューはどこまで罪を重ねるのか。守ることと傷つけることの矛盾
        25. 誰が味方なのか分からない。それでも守るしかない
  5. 考察・解説
      1. ストーリー・プロット
        1. 第1幕:旧友の再会と手首の異変
        2. 第2幕:魔女エステルの強奪と首ねじ切り
        3. 第3幕:ギルドマスターの失脚とエイプリルの保護
        4. 第4幕:隠し財産の探索と伝道師ランディの襲来
        5. 第5幕:ナタリーの介入と地下室の殲滅
        6. 第6幕:ゴミ捨て場の包囲と巻物の自爆
        7. 第7幕:魔物の胎内の金貨と父親の真実
        8. 第8幕:サマンサの休戦とナタリーの裏切り
      2. 主要な転換点
        1. 1:アルウィンの手首の黒い斑点の発現
        2. 2:ギルドマスター・グレゴリーの逮捕と屋敷の差し押さえ
        3. 3:地下宝物庫でのナタリーによる伝道師ランディの討伐
        4. 4:ゴミ捨て場地下での隠し財産の爆砕とグーロからの金貨回収
        5. 5:ナタリーとサマンサの密談および『ロンバルディの鋏』の譲渡
      3. マシューを中心とした人物関係の変化
        1. アルウィン
        2. エイプリル
        3. ナタリー
        4. サマンサ
      4. 主人公の認識と周囲の評価
        1. 主人公自身の認識
        2. 周囲からの評価
        3. 認識の差が現れた場面
      5. 旧友の再会
        1. 死んだはずの旧友との再会
        2. 圧倒的な戦闘力による救出劇
        3. 暗躍と正体露呈の危機
        4. まとめ
      6. アルウィンの病
        1. 迷宮病と薬物「解放」の背景
        2. 直面した新たな異変(黒い斑点の浮出)
        3. マシューの寄り添いと抗解薬による処置
        4. 根本治療への課題と新たなリスク
        5. まとめ
      7. 隠し財産
        1. 魔侠同盟幹部の隠し財産と都市の混乱
        2. 責任者が遺した正規の財産と隠し通路
        3. 処理場地下での交戦と真の回収手段
        4. 財産獲得の代償と明かされた真実
        5. まとめ
      8. 悲劇の真実
        1. 隠し財産騒動の背後にいた父親の素顔
        2. マシューが犯した過ちと因果の交錯
        3. 明かされぬ罪責と背負うべき業
        4. まとめ
      9. ナタリーの裏切り
        1. 密談の発覚と裏切りの露見
        2. 太陽神側との具体的な接触内容
        3. 主人公への追い打ちと正体露呈の危機
        4. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 冒険者パーティ『戦女神の盾』
      1. アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
      2. マシュー(マデューカス)
      3. ラルフ
      4. ノエル
      5. セシリア・マレット
      6. ベアトリス・マレット
      7. ニコラス・バーンズ(ニック・バーンスタイン)
    2. 元『百万の刃』
      1. ナタリー(『暴風』のナタリー)
      2. デズ
    3. 冒険者ギルド『灰色の隣人』支部
      1. グレゴリー(ギルドマスター)
      2. エイプリル
      3. ドナルド
      4. ヘクター
      5. グロリア・ビショップ
      6. 冒険者ギルド職員たち(集団)
    4. 太陽神関係者 / 『ソル・マグニ』
      1. サマンサ(『伝道師』サム / 『黄金の馬車亭』の女将)
      2. ランディ(『伝道師』サム)
      3. ロブ
      4. 黒覆面の男たち(集団)
    5. 裏社会組織(『魔侠同盟』『群鷹会』『まだら狼』)
      1. ハリソン(『火雷』のハリソン)
      2. オズワルド(『鱗雲』のオズワルド)
      3. 『魔侠同盟』の構成員たち(集団)
      4. 『群鷹会』の構成員たち(集団)
      5. 路上の紳士たち(集団)
      6. 薬物の売人たち(集団)
    6. 聖護隊・衛兵・行政
      1. ヴィンセント・バリー・カーライル
      2. ちょびひげの衛兵
      3. 色黒の衛兵
      4. 役人
      5. 衛兵たち(集団)
    7. 死霊魔術師(ラティマー一門)
      1. エステル・ラティマー
      2. ダミアン
    8. 養護施設
      1. エディ
      2. ルーク
      3. ミッキー
      4. ジョーイ
      5. 養護施設の子供たち(集団)
    9. 街の住民・その他関係者
      1. モーリス(エルトン)
      2. ノーラ
      3. チェルシー
      4. ブラッドリー
      5. 庭師
      6. 執事
      7. 新米冒険者
      8. ごつい男
      9. 大男
      10. 黒髪の男の子
      11. 小さな女の子
      12. 年かさの主婦
      13. 使用人たち(集団)
      14. 街の冒険者たち(集団)
      15. 街の住民たち(集団)
  7. 展開まとめ
    1. 序章 『暴風』が吹き荒れるとき
    2. 第二章 原初の神は口を開けて
    3. 第三章 大巨人は立ち上がり
    4. 第四章 牧神は逃げ惑い
    5. 第五章 大地から奈落の底が見えて
    6. 終章 幽冥と夜を生み出す

物語の概要

■ 作品概要

スタンピード終息を受けて街が復興と活気を取り戻す中、マシューは英雄視されるアルウィンとの格差から街の人々に疎まれ、かつての仲間であるナタリーの帰還や、アルウィンの手首に現れた新たな「解放」中毒の黒い斑点といった問題に直面する。

ギルドマスター・グレゴリーの逮捕、裏社会の幹部ヘザーが残した「隠し財産」を巡る孫娘エイプリルの命を狙う抗争、そして太陽神の「伝道師」や「受難者」の暗躍をきっかけに状況が激変する。

マシューはアルウィンとエイプリルを守るため、魔女エステルの撃破や「隠し財産」の暴き出しと回収、伝道師ランディの迎撃などを裏で主導する。

しかし最終的に、エイプリルの父親を過去に実験台として死なせていた残酷な真実を知り、さらにナタリーが太陽神の「伝道師」サマンサと結託して聖遺物『ロンバルディの鋏』を渡していた裏切りを目撃した上、騎士ヴィンセントに過去の正体「マデューカス」を疑われて問い詰められるところまで状況が進む。

■ 主要キャラクター

マシュー
  • 立場・所属:アルウィンのヒモ。元七つ星冒険者パーティ『百万の刃』の戦士「巨人喰い」マデューカス。
  • 主人公との関係:主人公本人。
  • この巻での主な役割:裏工作、アルウィンおよびエイプリルの護衛、脅威の排除、隠し財産の解明。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:死んだはずの旧友ナタリーに『暁光剣』を返還する。アルウィンの黒い斑点を隠す丸薬を死霊魔術師エステルから奪還し、アルウィンに服用させて祝宴へ送り出す。行き場を失ったエイプリルを保護し、裏社会の包囲網を突破して隠し財産を回収。しかし自らが実験台にして死なせた男がエイプリルの実父であった事実を知り、さらにナタリーの裏切りを目撃して孤立と苦悩を深める。
アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード
  • 立場・所属:亡国マクタロード王国の元王女、冒険者パーティ『戦女神の盾』リーダー、「深紅の姫騎士」。
  • 主人公との関係:マシューの養い主であり同居人。
  • この巻での主な役割:迷宮攻略の指揮、エイプリルの保護、領主との交渉。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:手首に現れた黒い斑点に動揺するが、マシューから渡された抗解薬で一時的に症状を消し、正装して領主の祝宴に出席する。グレゴリーが逮捕された際はエイプリルを自宅へ受け入れ、領主と交渉して手配の撤回を引き出し、群衆の前で毅然とした態度を示してエイプリルを救った。
ナタリー
  • 立場・所属:元『百万の刃』の剣士「暴風」ナタリー。
  • 主人公との関係:マシューの冒険者時代の仲間。
  • この巻での主な役割:『暁光剣』の回収、伝道師ランディの撃破、裏での暗躍。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:自害の報を偽装して姿を現し、マシューから『暁光剣』を受け取る。エイプリルが伝道師ランディに襲撃された現場に乱入し、青い手甲を顕現させてランディを両断・撃破する。しかし裏では太陽神に下っており、聖遺物『ロンバルディの鋏』を伝道師サマンサに手渡して迷宮攻略の手駒を要求し、最後はエイプリルの新たな侍女兼護衛として入り込んだ。
エイプリル
  • 立場・所属:冒険者ギルドマスター・グレゴリーの孫娘。
  • 主人公との関係:親しい知人、マシューに字を教える少女。
  • この巻での主な役割:保護対象、事件の渦中に巻き込まれるキーパーソン。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:教育者を志す夢をマシューに語るが、祖父が逮捕されたことで屋敷を差し押さえられ、マシューの家に匿われる。裏社会の幹部ヘザーの隠し財産の鍵として賞金首にされ命を狙われるが、マシューたちに守られ、最後は自爆の巻物を穴へ投げ捨てて窮地を脱した。
グレゴリー
  • 立場・所属:冒険者ギルド「灰色の隣人」支部のギルドマスター。エイプリルの祖父。
  • 主人公との関係:利害の一致する腐れ縁。
  • この巻での主な役割:マシューへの調査依頼、事件の引き金。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ギルド本部の監査役ドナルドを太陽神の信者と偽ってマシューに調査させ、排除を図る。スタンピードの責任や汚職容疑で衛兵に逮捕されるが、アルウィンの交渉と財産の爆散によって釈放され、マシューにマジックアイテムのカードを託した。
サマンサ(サム)
  • 立場・所属:酒場『黄金の馬車亭』の女将、太陽神の「伝道師」。
  • 主人公との関係:敵対勢力の幹部、交渉相手。
  • この巻での主な役割:太陽神側の統括、マシューへの接触。
  • この巻で起きた重要な変化や行動:ザリガニ型の怪物から人間の女将の姿へ自在に変貌する能力を持つ。ドナルドを殺害した後、手紙でマシューを呼び出して大地母神勢力に対抗するための共闘を持ちかけるが拒絶される。裏ではナタリーから『ロンバルディの鋏』を受け取る密談を行っていた。

書籍情報

姫騎士様のヒモ 5
著者:白金透 氏
イラスト:マシマサキ 氏
出版社:KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2023年9月8日
ISBN:9784049151435

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あらすじ・内容

金貨百万枚の少女。悪徳の街で心優しき彼女を守り抜くことはできるのか?

★アルウィンのボイスドラマ好評発売中★

★重版続々の人気シリーズ★

 灰と混沌の迷宮都市。数多のモンスターと財宝を孕むダンジョンの鮮烈な灯り。その影には、必ず害虫が潜む。

 一躍、街の英雄となった姫騎士アルウィン。一方、ヒモのマシューは以前にも増して周囲の人間から疎まれるようになっていた。しかし、光が強くなれば闇もまた然り。アルウィンの症状は着実に進行し、肌に浮き上がる黒い斑点は彼女を苛む。

 そんな二人の前に現れた、マシューの死んだはずの仲間、『百万の刃』のメンバーだったナタリー。彼女のもたらす『暴風』がマシューの周りをにわかに騒がせる。一方、冒険者ギルドでは『スタンピード』収束もつかの間、ギルドマスターが一連の責任を取らされる形で突然逮捕されてしまう。だが、急な出来事には必ず裏がある。死んだやくざ者が残した隠し財産、およそ金貨百万枚。ギルドマスターは唯一、その行方を知っているというのだ。巨万の富を狙い、表社会・裏社会入り乱れる争いが水面下で勃発。加熱した争いは、孫娘のエイプリルにまで及び、マシューとアルウィンは寄る辺なき彼女を守ると決める。

 しかし。街が再び混乱する最悪のタイミングで、太陽神の伝道師たちの魔手が彼らに迫ろうとしていた――

 

 公権力、裏社会、太陽神教。悪意に満ちた三つ巴のなかで、マシューは心優しき少女を守ることができるのか。

 加速する異世界ノワールは第2部へと突入する!

姫騎士様のヒモ5

感想

英雄の影で罪を重ねるマシュー。旧友ナタリーの裏切りと太陽神の思惑

読み終えて、最初に思ったのは「もう何が何だか分からない」ということだった。

もちろん、物語の筋が分からないという意味ではない。

むしろ、一つひとつの事件には理由があり、それぞれの人物が自分の目的で動いている。

問題は、それらがあまりにも複雑に絡み合っていることだ。

スタンピードを終息させたことで、アルウィンは街の英雄として名声を高めていく。

一方、彼女を支えてきたマシューは、相変わらず無職のヒモとして見下されている。

しかも、アルウィンの名声が高まれば高まるほど、マシューへの風当たりは強くなっていく。

この理不尽さが、まず印象に残った。

それだけではない。

死んだはずの旧友ナタリーが現れ、魔剣『暁光剣』の返還を求めてくる。

アルウィンの体には薬物「解放」の後遺症と思われる黒い斑点が浮かび上がり、それを隠すための丸薬を巡って死霊魔術師との殺し合いが始まる。

さらに、ギルドマスターの逮捕によってエイプリルが行き場を失い、裏社会から命を狙われることになる。

そこへ太陽神の「伝道師」まで現れ、最後には信頼していた旧友ナタリーが太陽神に忠誠を誓っていたことが判明する。

いや、もう勘弁してほしい。

自分がマシューの立場だったら、とっくに発狂している自信がある。

敵が多すぎる。

しかも、誰が味方で誰が敵なのか、簡単には判断できない。

助けてくれた人間が裏切り者だったり、守った相手の家族を自分が殺していたりする。

そして何より恐ろしいのが、すべての背後に太陽神アリオストルの存在がちらついていることだ。

第4巻で太陽神そのものが敵である可能性が明らかになったが、第5巻を読んでも、その目的はさっぱり分からない。

今回は、マシューの置かれた理不尽な立場、アルウィンを守るために犯した新たな罪、エイプリルを巡る悲劇、そしてナタリーの裏切りについて、特に考えさせられた。

アルウィンの名声が上がるほど、マシューは疎まれる

スタンピードを終息させたアルウィンは、迷宮都市の英雄となった。

亡国の姫騎士として迷宮攻略を続けてきた彼女にとって、ようやく努力が認められたようにも見える。

第3巻では仲間の死によって心を病み、第4巻では自分の肉体を犠牲にして街を救った。

その苦労を知っているだけに、彼女が称賛されるのはうれしい。

しかし、問題はマシューである。

彼は相変わらず、姫騎士に養われている無職のヒモとして扱われている。

アルウィンが立派な英雄になればなるほど、その隣にいるマシューが目障りになるらしい。

読んでいて、なんとも嫌な気分になった。

そもそも、スタンピードを終息させるためにマシューが何をしたのか、街の人々は知らない。

裏社会の人間を脅して協力させ、冒険者たちをまとめるために奔走し、伝道師と戦い、アルウィンとともに迷宮の奥へ向かった。

その働きがなければ、街はどうなっていたか分からない。

しかし、彼の功績は表に出ない。

むしろ、何もしていない男として扱われてしまう。

この構図が、第1巻から一貫している。

マシューはかつて『百万の刃』に所属した最強クラスの探索者だった。

しかし、太陽神の呪いによって迷宮で力を発揮できなくなり、冒険者としての立場を失った。

現在はアルウィンのヒモである。

周囲の人間は、その肩書きだけを見て判断する。

そして、彼がどれほど危険な仕事をしていても、表向きの評価は変わらない。

ここには、妙な現実味がある。

人間は、目に見える肩書きや職業で評価されやすい。

何をしてきたのか。

どんな苦労をしているのか。

誰を支えているのか。

そういう部分は、外からでは分からない。

マシューの場合、本人が過去の経歴を隠している事情もある。

それでも、アルウィンの名声が高まるほど自分への敵意が増すというのは、あまりにも皮肉だった。

誰かを支えている人間が、その相手の成功によってますます居場所を失っていく。

第5巻では、この残酷な関係が一段と強く描かれているように感じた。

暴漢に絡まれても正体を明かせない。元最強探索者の不自由さ

マシューは酒場の裏で、新米冒険者に絡まれる。

相手は彼を見下し、暴力を振るい、ナイフまで持ち出す。

普通に考えれば、マシューの敵ではない。

彼が本気を出せば、簡単に倒せる相手だろう。

しかし、マシューは自由に力を使えない。

自分の正体を隠しているからだ。

結局、上階から落ちてきた家具が冒険者に直撃し、騒ぎは収まる。

この場面には思わず笑ってしまった。

元最強探索者が、こんな相手にまで面倒な対応を強いられる。

ただし、笑えるだけの場面でもなかった。

強いのに、強さを見せられない。

実績があるのに、実績を語れない。

本当は何者なのかを知ってもらえれば、周囲の扱いは変わるかもしれない。

しかし、それができない事情がある。

マシューは単に能力を失った男ではない。

残された能力さえ、思うように使えない男なのだ。

この不自由さが、彼のヒモ生活をさらに苦しいものにしていると感じた。

死んだはずのナタリーが帰還。懐かしい再会なのに素直に喜べない

第4巻の最後に現れた「暴風」ナタリー。

かつてマシューとともに伝説の冒険者パーティ『百万の刃』で戦った旧友である。

彼女は死んだと伝えられていた。

しかし、実際には仇敵から逃れ、老父を守るために死を偽装していたらしい。

しかも、左腕には自由を奪う呪いを受けている。

そして、自分の身を守るため、魔剣『暁光剣』の返還を求めてきた。

死んだと思っていた仲間が生きていた。

本来なら、感動的な再会になってもおかしくない。

しかし、マシューの反応は複雑だった。

彼はナタリーをデズの部屋へ連れていき、不意打ちで強烈な肘打ちを浴びせる。

かつての仲間たちが受けた傷や、デズの無念を忘れていなかったからだ。

ナタリーは反撃せず、謝罪を約束する。

ここが印象に残った。

長年の仲間だからといって、すべてを水に流せるわけではない。

生きていてくれたことはうれしい。

しかし、死を偽装して姿を消したことで、残された者たちは傷ついた。

マシューの一撃には、怒りだけでなく、そうした複雑な感情も含まれていたように感じる。

そして、彼は隠していた『暁光剣』をナタリーへ返還する。

この時点では、彼女もまた過去の傷を抱えながら生きている一人の人間に見えた。

だからこそ、終盤の裏切りが余計に重く感じられるのである。

アルウィンの手首に黒い斑点。スタンピードを終えても苦しみは終わらない

ある夜、アルウィンが怯えながらマシューの部屋を訪れる。

手首に新しい黒い斑点が現れたのだ。

薬物「解放」の影響を思わせる症状である。

この場面には、嫌な予感がした。

第1巻で明らかになったアルウィンの薬物依存。

第2巻では、その薬物を生み出したニコラスが登場した。

第3巻では、心を病んだ彼女を救うためにマシューが故国へ向かった。

第4巻では、ついにスタンピードを終息させた。

これだけのことを乗り越えたのだから、少しは穏やかに暮らしてほしい。

しかし、体に刻まれた傷は簡単には消えてくれない。

アルウィンが恐れているのは、単なる体調の悪化だけではないだろう。

街の英雄として祝福される立場になったからこそ、薬物依存の過去が知られることへの恐怖も大きいはずだ。

彼女は亡国の王女であり、今では街を救った姫騎士である。

そんな人物の体に、薬物の痕跡が残っている。

それが明るみに出れば、またどんな噂を流されるか分からない。

第4巻では、アルウィンがスタンピードの黒幕だという悪質な噂まで広められた。

ようやく名誉を回復したところで、今度は薬物依存を蒸し返されるかもしれない。

アルウィンが怯えるのも無理はない。

そして、その不安を打ち明けられる相手がマシューであることにも、二人の関係が表れていた。

街の人々は英雄としてのアルウィンを見る。

しかし、マシューはその裏側にいる、傷つきやすい一人の人間を知っている。

だからこそ、彼女は夜中にマシューの部屋を訪れたのだろう。

アルウィンを守るため、未完成の丸薬を盗むマシュー

マシューは薬師ニコラスのもとを訪れる。

しかし、解毒薬の量産は高価な材料費の不足によって止まっていた。

そこでマシューは、実験用の丸薬を密かに持ち出してしまう。

相変わらず、やることが強引である。

普通なら、ニコラスに事情を説明し、薬の安全性を確認するところだろう。

しかし、マシューは待てない。

アルウィンには祝宴への出席が迫っている。

その前に黒い斑点を消してやりたい。

その気持ちは分かる。

ただ、未完成の薬を勝手に持ち出すのは、明らかに危険である。

マシューはアルウィンを守るためなら、手段を選ばない。

それは第1巻から変わっていない。

そして、この「手段を選ばない」という性質が、今回も恐ろしい結果を生む。

丸薬を持ち帰る途中、マシューは黒衣の魔女に襲われる。

麻痺魔法で動きを封じられ、薬を奪われてしまうのだ。

ようやく手に入れた薬が、あっさり奪われる。

アルウィンのために急いでいたマシューからすれば、たまったものではないだろう。

しかし、相手にも薬を必要とする理由があった。

死霊魔術師エステル。死んだ恋人を手放せない女の悲しさ

丸薬を奪った犯人は、死霊魔術師エステルだった。

彼女は迷宮で死んだ恋人ダミアンの遺体を地上に留めるため、腐敗臭を消す薬物を求めて犯行を重ねていた。

この事情を知ったとき、少し複雑な気分になった。

やっていることは許されない。

しかし、動機には理解できる部分がある。

大切な人を失い、その死を受け入れられない。

だから、死体になってもそばに置いておきたい。

もちろん、それで救われるとは思えない。

死んだ人間の体を残しても、生きていた頃の関係が戻るわけではないからだ。

それでも、手放せない。

エステルの姿には、愛情が執着へ変わってしまう怖さがあった。

この作品では、誰かを愛することが必ずしも美しい結果につながらない。

マシューもアルウィンを愛するがゆえに、人を殺してきた。

エステルも恋人を失った悲しみから、他人を襲っている。

両者の事情は違う。

しかし、大切な相手のために道を踏み外しているという点では、似ている部分もある。

だからこそ、二人の戦いは単なる善悪の対決には見えなかった。

エステルの首をねじ切って丸薬を奪還。マシューの執念が怖い

エステルの居場所を突き止めたマシューは、夜の廃屋へ乗り込む。

しかし、相手は死霊魔術師である。

しかも、エステル自身もゾンビ化しており、普通の人間とは違う。

マシューは術によって追い詰められるが、最後には自らの「意地」を解放する。

そして床板を剥がし、怪力でエステルの首をねじ切ってしまう。

相変わらず、容赦がない。

魔術師との戦いなのに、最後は腕力で首をねじ切る。

いかにもマシューらしい決着だった。

ただ、ここで感じたのは痛快さだけではない。

エステルもまた、死んだ恋人を手放せずに苦しんでいた人間である。

その事情を知ったうえで、マシューは殺す。

アルウィンを守るために必要だと判断したからだ。

マシューにとって、相手がどれほど悲しい事情を抱えていても、それだけで見逃す理由にはならない。

この冷酷さが怖い。

しかし、同時に、彼の行動原理が非常にはっきりしているとも感じる。

マシューは、誰も彼も救おうとする英雄ではない。

彼が最も守りたいのはアルウィンである。

そのためなら、同じように大切な人を失った相手でも排除する。

だから、彼の愛情は美しいだけでは済まない。

アルウィンへの献身が深まるほど、そのために犠牲になる人間も増えていく。

第5巻では、その危うさがさらに強くなったように感じた。

丸薬を飲ませて祝宴へ送り出す。その裏で死んだ男がいた

エステルから丸薬を取り戻したマシューは、アルウィンに服用させる。

黒い斑点は一時的に消え、彼女は無事に祝宴へ出席できることになった。

マシューはアルウィンの髪を結い上げ、正装した彼女を送り出す。

この場面だけを見ると、穏やかで優しい時間である。

街の英雄となった姫騎士が、祝宴へ向かう。

その準備を、いつものようにマシューが手伝う。

二人の生活の一場面として、少し微笑ましくも感じられた。

しかし、その直後に恐ろしい事実が明らかになる。

ニコラスが駆けつけ、未完成の薬を飲ませた危険性を問い詰める。

するとマシューは、すでに路上の男を実験台にして安全性を確認していたことが分かる。

しかも、その男は薬の副作用で死んでいた。

ここには言葉を失った。

アルウィンを守るために、別の人間を犠牲にしたのである。

第1巻でマシューがヴァネッサを殺したときにも、強い衝撃を受けた。

今回も同じだ。

いや、今回の方がさらに嫌な予感がした。

なぜなら、死んだ男がどんな人物だったのか、この時点では分からなかったからである。

マシューは夜空に向かって一人で祈りを捧げる。

彼にも罪悪感はあるのだろう。

しかし、祈ったところで死んだ人間は戻らない。

そして、この死が後にエイプリルの人生とつながってくる。

ここが第5巻で最も残酷なところだった。

エイプリルの夢とギルドマスターの逮捕。普通の暮らしが突然壊れる

エイプリルは、将来は教育者になりたいという夢をマシューに語る。

この何気ない会話が印象に残った。

『姫騎士様のヒモ』では、冒険者や裏社会の人間が多く登場する。

迷宮へ潜り、魔物を倒し、金を稼ぐ。

そんな生き方が当たり前の街である。

しかし、エイプリルは教育者になりたいと考えている。

人を殺す仕事でも、危険な迷宮へ挑む仕事でもない。

誰かに何かを教える仕事を目指している。

この普通の夢が、妙にまぶしく感じられた。

ところが、彼女の生活は突然壊されてしまう。

ギルドマスターのグレゴリーが逮捕されたのだ。

汚職やスタンピードの責任を問われ、屋敷まで差し押さえられる。

その結果、エイプリルは行き場を失ってしまう。

マシューとアルウィンは彼女を自宅へ引き取る。

ここには少し安心した。

エイプリルにとって、二人は頼れる大人なのだろう。

しかし、マシューが守ろうとしている相手は、また一人増えてしまった。

アルウィンだけでも大変なのに、今度はエイプリルまで守らなければならない。

しかも、彼女を取り巻く事情は想像以上に危険だった。

ギルドマスターも信用できない。ドナルドを巡る策略が嫌らしい

グレゴリーは、ギルド職員のドナルドが太陽神の信徒ではないかと疑い、マシューに内偵を依頼する。

しかし、実際のドナルドは、ギルド本部から派遣された監査役だった。

グレゴリーの不正を調べるために来ていたのである。

つまり、マシューはギルドマスターの策略に利用されかけたわけだ。

ここにも呆れた。

太陽神の信徒が紛れ込んでいると言われれば、マシューが動くことは分かっている。

その警戒心を利用して、監査役を排除しようとしたのだろう。

しかし、事情が明らかになった直後、異形の怪物たちが襲撃してくる。

ドナルドは殺され、マシューは報告書を持って脱出する。

この一連の流れが、なんとも嫌らしい。

公的な立場にいる人間も、裏で自分の利益を守ろうとしている。

しかも、そこへ太陽神の勢力まで入り込んでくる。

もはや、どこまでが汚職で、どこからが宗教勢力の策略なのか、簡単には見分けられない。

第5巻の混沌は、こういうところから始まっているのだと思う。

エイプリルが賞金首に。守るべき少女が裏社会の獲物になる

グレゴリーの逮捕によって、エイプリルは裏社会から狙われるようになる。

理由は、莫大な隠し財産の存在だった。

死亡した大幹部ヘザーが遺した財産を巡り、裏社会の人間たちが動き始めていたのである。

そして、金庫番とつながりのあったグレゴリーの孫娘であるエイプリルが、財産の在り処を知る人物として狙われる。

これには呆れた。

本人は何も知らないかもしれない。

ただ、祖父の孫娘だというだけで命を狙われる。

しかも、賞金まで懸けられてしまう。

第4巻では、アルウィンが悪質な噂によって街の敵に仕立て上げられた。

今回はエイプリルが、金目当ての人間たちから獲物として扱われる。

この街では、普通に暮らすことさえ難しい。

まして、裏社会の金が関われば、善良な人間でも簡単に巻き込まれる。

マシューはエイプリルを守るため、隠し財産を見つけ出そうと決意する。

この判断にも、彼らしさが出ていた。

逃げ回るだけでは終わらない。

相手が狙っているものを先に押さえ、状況そのものを変えようとする。

ただ、そこへまた太陽神の伝道師が現れるのだから、話がややこしくなる。

猫のオリバーが隠し財産への鍵? 意外な手掛かりに驚いた

グレゴリーが残した言葉は「オリバーを頼れ」。

オリバーとは、エイプリルとともに引き取った野良猫である。

この手掛かりが面白かった。

裏社会の莫大な財産を探すという、物騒な話である。

それなのに、鍵を握っているのが猫とは。

マシューたちはオリバーの動きを追い、隣家の廃屋から地下通路を発見する。

さらに、エイプリルの血筋でしか開かない魔法の扉を抜けると、そこには金銀財宝が眠っていた。

ここは少し冒険物らしい展開で楽しかった。

ただ、財宝を発見したからといって、問題が解決するわけではない。

むしろ、ここからさらに厄介な敵が現れる。

伝道師ランディの襲撃。敵の目的が分からないことが一番怖い

隠し財産を発見したマシューたちの前に、太陽神の伝道師ランディが現れる。

彼が求めていたのは、聖遺物『ロンバルディの鋏』だった。

また太陽神の伝道師である。

第4巻でリーヴァイを倒したのに、もう次の伝道師が現れる。

本当にきりがない。

しかも、今回のランディは、隠し財産そのものより聖遺物を探している。

太陽神の勢力が何を集め、何を実現しようとしているのか、ますます分からなくなった。

マシューは「仮初めの太陽」を使って戦うが、光が途切れると力を失い、首を絞められてしまう。

ラルフやエイプリルまで炎に焼かれそうになる。

ここで改めて、マシューの弱点の恐ろしさを感じた。

彼は地上では圧倒的な力を発揮できる。

しかし、その力は無制限ではない。

太陽神の呪いによって、光が失われれば途端に危険な状態へ追い込まれる。

しかも、敵は太陽神の伝道師である。

自分に呪いを与えた存在の手先と戦わなければならないのだから、皮肉な話だ。

ナタリーが救援に現れる。旧友の強さが頼もしい

マシューたちが追い詰められたところへ、ナタリーが駆けつける。

彼女は返還された『暁光剣』を使い、青い手甲を出現させ、炎の刃でランディを圧倒する。

そして、分裂する敵を焼き尽くし、逃げようとした本体の首を斬り落とす。

さすがは『百万の刃』の元メンバーである。

この戦闘は素直に格好よかった。

マシューが苦戦していた伝道師を、圧倒的な力で倒してしまう。

『暁光剣』を返還したことが、結果的にマシューたちの命を救ったわけだ。

この時点では、ナタリーが戻ってきてくれてよかったと思った。

過去に問題はあったとしても、やはり頼れる仲間なのだろう。

少なくとも、マシューが危険な状況に陥ったとき、助けに来てくれた。

しかし、後から考えると、この場面の印象まで変わってしまう。

ナタリーは本当にマシューを助けるためだけに動いたのだろうか。

それとも、太陽神の勢力の中で、別の目的があったのだろうか。

第5巻の最後を知ると、素直に喜べなくなってしまう。

魔侠同盟の包囲網。助かったと思ったら次の敵が現れる

ランディを倒し、ようやく地上へ戻ったマシューたち。

しかし、そこには『魔侠同盟』の武闘派幹部ハリソンが待ち構えていた。

大勢の部下を率いて、エイプリルと財宝を狙っている。

もう、いい加減にしてほしい。

伝道師との戦いが終わった直後に、今度は裏社会の集団に囲まれる。

本当に休む暇がない。

そこへ群鷹会のオズワルドが現れ、ハリソンを牽制してくれる。

この展開にも驚いた。

第2巻では、アルウィンを妾にしようとしていた男である。

第4巻ではアルウィンに力でねじ伏せられた。

そんなオズワルドが、今回はマシューたちを助ける側に回っている。

もちろん、純粋な善意だけで動いているわけではないだろう。

しかし、この街では敵だった人間が協力者になり、味方だと思った人間が裏切る。

人間関係が固定されていないところが面白い。

同時に、誰を信用すればよいのか分からなくなる。

財宝を巡る逃走劇。マシューのハッタリとエイプリルの勇気

マシューたちはデズの家へ身を寄せるが、賞金目当ての暴徒たちが押し寄せてくる。

そして地下通路を使って逃走するものの、迷宮の入り口付近で追い詰められる。

そこでマシューは、隠し財産がゴミ処理用の穴の地下にあると告げる。

ハッタリを使って敵を誘導するわけだ。

こういう場面では、マシューの頭の回転の速さが光る。

単に力で相手を倒すだけではない。

敵の欲望を利用し、自分に有利な場所へ動かしていく。

しかも、財宝は実際に地下に存在していた。

ハリソンたちは金銀財宝を発見するが、地上には聖護隊が現れ、逃げ道を塞がれてしまう。

追い詰められたハリソンは、エイプリルを人質にして自爆用の巻物を使おうとする。

しかし、エイプリルはその巻物を奪い取り、穴の中へ投げ捨てる。

この行動には驚いた。

これまで守られる立場だった少女が、自分の意志で危機を切り抜けたのである。

もちろん、マシューたちの助けがなければ、ここまで生き延びられなかっただろう。

それでも、最後に自分で行動したことには大きな意味がある。

エイプリルは、ただ助けられるだけの人物ではなかった。

教育者になりたいという夢を持ち、自分の未来を考えている少女である。

その彼女が、恐怖の中でも行動できた。

この場面には、少し救われるものがあった。

財宝を魔物の腹に隠す? マシューとデズの悪知恵がすごい

ハリソンたちとの騒動によって、隠し財産は瓦礫の下へ消えてしまう。

しかし、マシューはただでは終わらない。

事前にデズへ魔物グーロの封印された巻物を隠させていた。

そして後から魔物を召喚し、その腹の中に隠していた金貨を回収する。

よくそんな方法を思いつくものだ。

ここは思わず笑ってしまった。

戦闘だけでなく、金を隠す方法まで物騒である。

しかも、デズとの連携が見事だった。

この二人は長い付き合いだからこそ、細かい説明がなくても互いの意図を理解できるのだろう。

ただし、そこへナタリーが現れ、口止め料として取り分を要求する。

結局、財宝は三等分されることになった。

この場面も、いかにもこの街らしい。

街を救う英雄がいる一方で、裏では財宝を巡る駆け引きが続いている。

マシューたちも、決して清廉潔白な人間ではない。

しかし、だからこそ妙に人間臭い。

きれいごとだけでは生きられない街なのだと、改めて感じた。

エイプリルの父親を殺していたのはマシュー。今回最も重かった真実

第5巻で最も衝撃を受けたのは、エイプリルの父親の正体が明らかになる場面だった。

エイプリルの父親は、かつて魔侠同盟の金庫番として働いていたエルトン、つまりモーリスだった。

そして、マシューはその似顔絵を見て気づいてしまう。

それは、以前に薬の実験台として利用し、死に至らしめた路上の男だった。

ここには本当に言葉を失った。

アルウィンの黒い斑点を消すために、マシューが未完成の丸薬を試した男。

その男が、エイプリルの父親だったのである。

つまり、マシューはエイプリルを守るために命懸けで戦いながら、すでに彼女から父親を奪っていた。

これはあまりにも残酷だ。

第1巻では、アルウィンを守るためにヴァネッサを殺した。

その兄ヴィンセントは、今でもマシューを疑っている。

そして今回は、エイプリルの父親を殺してしまった。

マシューが守ろうとする人間の周囲で、彼自身が新たな悲劇を生んでいる。

この矛盾が苦しい。

マシューは悪人なのだろうか。

少なくとも、無実の人間を実験台にして死なせたことは、許される行為ではない。

アルウィンを守るためだったとしても、それで正当化できるわけではない。

しかし、彼がエイプリルを守ろうとした気持ちまで嘘だったとは思えない。

本気で彼女を助けようとしていた。

だからこそ、真実を知ったときの衝撃も大きかったのだろう。

この作品の恐ろしさは、善意と罪が同じ人物の中に共存しているところである。

誰かを救った人間が、別の誰かの人生を壊している。

しかも、その相手が、今まさに自分の守ろうとしている少女の父親だった。

これほど皮肉な展開もない。

エイプリルがいつか真実を知ったら、どうなるのだろうか。

彼女はマシューを許せるのか。

そもそも、マシューはその事実を打ち明けられるのか。

第5巻を読み終えても、この問題が頭から離れなかった。

サマンサの正体も伝道師。もう誰も信用できない

マシューは呼び出しを受け、『黄金の馬車亭』へ向かう。

そこで女将サマンサが、異形の伝道師サムへと姿を変える。

これにも驚いた。

また身近な人間が太陽神の関係者だったのか。

しかも、サマンサは大地母神の勢力に対抗するため、マシューへ共闘を持ちかける。

ここで、太陽神と大地母神の対立がさらに気になってきた。

これまで太陽神の勢力は、薬物の流通やスタンピード、数々の襲撃に関わってきた。

そのため、マシューが共闘を拒否するのは当然だろう。

しかし、サマンサの話を聞くと、神々の間にも何らかの争いがあるらしい。

そして、人間たちはその争いに巻き込まれている。

これが本当に厄介だ。

マシューたちは自分たちの生活を守りたいだけである。

アルウィンは故国再興のために迷宮を攻略している。

エイプリルは教育者になりたいと考えている。

それぞれに、自分の人生がある。

しかし、神々の争いは、そんな個人の事情など気にしてくれない。

さらにサマンサは、アルウィンが以前のように力を使えば命を落とすと警告する。

ここも気になった。

第4巻で「聖像破壊者」となったアルウィンは、強大な力を発揮した。

しかし、その代償はまだ消えていないらしい。

彼女が再び危険な力を使えば、今度こそ取り返しのつかないことになるのかもしれない。

マシューがどれほど頑張っても、アルウィンの体に残された問題は解決していない。

この事実が、物語に重くのしかかっている。

ナタリーが太陽神に忠誠を誓う。旧友の裏切りがつらすぎる

終盤、マシューは『黄金の馬車亭』の地下にある隠し部屋へ忍び込む。

そこで、サマンサと何者かが密談しているのを聞いてしまう。

相手は聖遺物『ロンバルディの鋏』を差し出し、迷宮攻略のための強力な手駒を要求していた。

そして、その声の主はナタリーだった。

さらに、彼女は太陽神に忠誠を誓う。

ここには本当に驚いた。

ナタリー、お前もか。

第4巻の最後に死んだはずの旧友として現れ、第5巻ではマシューたちを伝道師ランディから救ってくれた。

『暁光剣』を使った戦いも頼もしかった。

ようやく昔の仲間が戻ってきたのだと思っていた。

それなのに、実際には太陽神側に通じていたのである。

もちろん、彼女にも事情があるのかもしれない。

左腕の呪いもある。

過去の仇敵から逃れ、父親を守るために死を偽装していたという事情もある。

しかし、太陽神に忠誠を誓っていたという事実は重い。

マシューにとって、太陽神は自分の人生を壊した存在である。

そして、アルウィンを何度も危険にさらしてきた勢力の頂点でもある。

その相手に、かつて背中を預けた仲間が従っている。

これは相当な裏切りだろう。

しかも、ナタリーはマシューを助けた直後である。

敵なら敵として戦えばよい。

しかし、命を救ってくれた相手が裏で敵とつながっているとなれば、簡単には割り切れない。

何を信じればよいのか分からなくなる。

マシューが絶望するのも無理はない。

ナタリーがエイプリルの侍女兼護衛に。敵を身近に置くしかない恐怖

さらに厄介なのは、その後の展開である。

ナタリーはエイプリルの新しい侍女兼護衛として雇われていた。

これには、もう笑うしかなかった。

敵だと分かった相手が、守るべき少女のすぐそばにいる。

しかも、ナタリーは強い。

第5巻では、マシューが苦戦した伝道師ランディを倒している。

そんな人物が本気で敵に回ったら、簡単には止められないだろう。

一方で、彼女は実際にマシューたちの命を救っている。

エイプリルの護衛としても、これほど頼もしい人物は少ない。

つまり、危険な相手でありながら、同時に必要な戦力でもある。

この関係が厄介だ。

マシューはナタリーの裏切りを知っている。

しかし、それを簡単に周囲へ話せる状況でもない。

そしてナタリー自身も、マシューに口止めを迫る。

もはや、誰が誰を利用しているのか分からない。

第5巻では、味方と敵の境界が完全に曖昧になってしまったように感じる。

「マデューカス」と呼ばれた瞬間。マシューの過去まで暴かれそうになる

ナタリーはマシューを、かつての名前である「マデューカス」と呼ぶ。

そして、その言葉をヴィンセントが聞いてしまう。

ヴィンセントは、マシューが伝説の『巨人喰い』なのではないかと問い詰める。

最後の最後で、また面倒なことになった。

マシューはこれまで、自分の正体を隠してきた。

元最強探索者であることを知られれば、今の生活に大きな影響が出るかもしれない。

しかも、相手はヴィンセントである。

第2巻から、妹ヴァネッサを殺した犯人としてマシューを疑ってきた男だ。

その疑いは正しい。

マシューは実際にヴァネッサを殺している。

そんなヴィンセントに、過去の正体まで知られそうになる。

これは相当に危険な状況だろう。

そして、ナタリーがその名前を口にしたことにも不気味さを感じた。

単に昔の呼び名が出ただけなのか。

それとも、マシューを追い詰める意図があったのか。

この時点では分からない。

しかし、太陽神側に通じていると分かった直後だけに、どうしても疑ってしまう。

第5巻は、最後まで安心させてくれなかった。

太陽神アリオストルは何をしたいのか。敵の目的が見えない怖さ

第4巻では、太陽神アリオストルがマシューに直接語りかけ、試練を乗り越えたと告げた。

そして、第5巻では新たな伝道師が現れ、聖遺物を巡る争いが続いている。

サマンサは大地母神の勢力に対抗するため、マシューへ共闘を持ちかける。

ナタリーも太陽神に忠誠を誓っていた。

これだけの情報が出てきたのに、太陽神の目的は相変わらず分からない。

ここが一番怖い。

単純に世界を滅ぼしたいという話なら、まだ理解できる。

迷宮を支配したいのか。

大地母神と戦いたいのか。

特定の聖遺物を集めたいのか。

マシューやアルウィンを何かに利用したいのか。

可能性はいろいろ考えられるが、決定的なことは分からない。

しかも、太陽神の伝道師たちは、それぞれ違う目的で動いているようにも見える。

リーヴァイは不老不死に執着していた。

ランディは『ロンバルディの鋏』を探していた。

サマンサは大地母神の勢力との対立を語る。

ナタリーは迷宮攻略のための強力な手駒を求めている。

それぞれの思惑が、太陽神の大きな目的とどう結びつくのか。

現時点では分からない。

だからこそ、マシューが何をすれば正解なのかも見えてこない。

敵を倒せばよいという話ではない。

実際、第4巻でリーヴァイを倒しても、新たな伝道師が現れた。

第5巻でランディを倒しても、サマンサやナタリーが動いている。

もしかすると、マシューが敵を倒すこと自体も、太陽神の試練の一部なのかもしれない。

そう考えると、何とも気味が悪い。

敵に勝っているつもりでも、その勝利さえ敵の思惑の中にあるかもしれない。

これほど厄介な状況はないだろう。

マシューはどこまで罪を重ねるのか。守ることと傷つけることの矛盾

第5巻で最も考えさせられたのは、マシューの罪についてだった。

彼はアルウィンを守るために戦っている。

エイプリルも守ろうとしている。

仲間たちを見捨てることもできない。

その姿だけを見れば、頼もしい主人公である。

しかし、彼が誰かを守るために選んだ手段は、必ずしも正しいものではない。

第1巻ではヴァネッサを殺した。

第5巻では未完成の薬を路上の男に試し、死なせてしまった。

しかも、その男はエイプリルの父親だった。

これが重い。

マシューは、自分の罪をなかったことにできない。

そして、読んでいるこちらも、彼を単純に英雄として称賛することはできない。

アルウィンを守りたい気持ちは理解できる。

しかし、だからといって他人を犠牲にしてよいわけではない。

一方で、何もせずにアルウィンを見捨てることも、マシューにはできないのだろう。

この矛盾が、物語の中心にあるように感じる。

マシューは、誰かを守るために悪事を働く男である。

そして、その悪事によって新たな苦しみが生まれる。

彼はその苦しみを背負いながら、また次の誰かを守ろうとする。

これでは、いつまでたっても楽になれない。

しかし、だからといって、彼が何もしなくなればよいとも思えない。

そこが難しい。

第5巻では、マシューの優しさと残酷さが、これまで以上に強く結びついていた。

誰が味方なのか分からない。それでも守るしかない

第5巻は、スタンピード後の平穏な日常を描く巻になるのかと思っていた。

しかし、実際にはまったく違った。

アルウィンの名声が高まる一方で、マシューはますます疎まれる。

薬物「解放」の後遺症は消えず、彼女を守るためにマシューは新たな罪を犯す。

ギルドマスターの逮捕によってエイプリルが狙われ、裏社会の財宝を巡る争いに巻き込まれる。

そして、死んだはずの旧友ナタリーが戻ってきたと思ったら、太陽神に忠誠を誓っていた。

本当に、状況が混沌としすぎている。

自分が当事者だったら、とっくに精神的に参っていると思う。

しかも、マシューはこの状況で、誰かを守るために動き続けている。

アルウィンを守る。

エイプリルを守る。

仲間を守る。

しかし、その過程で人を殺し、罪を重ねてしまう。

第5巻では、特にエイプリルの父親を死なせていた事実が重かった。

マシューはエイプリルを救った。

しかし、彼女から父親を奪ったのもマシューである。

この事実は、どれほど善行を積んでも簡単には消えない。

そして、ナタリーの裏切りによって、過去の仲間さえ信用できなくなってしまった。

第1巻では、太陽神の呪いによって仕事を失った男が、姫騎士のヒモとして生きる物語だった。

しかし、第5巻では、太陽神そのものが敵となり、裏社会も公権力も旧友も入り乱れる争いへと発展している。

もはや、単に迷宮を攻略すれば終わる話ではない。

それでも、マシューが守りたいものは変わらない。

アルウィンが安心して生きられること。

そして、彼女が自分の夢を追い続けられること。

そのために、マシューは今日も泥をかぶり続ける。

ただ、今回は少し考えさせられた。

誰かを守るためなら、どこまで他人を犠牲にしてよいのだろうか。

そして、守るために犯した罪と、どう向き合えばよいのだろうか。

マシューは強い。

しかし、どれほど強くても、死んだ人間を生き返らせることはできない。

エイプリルの父親も、ヴァネッサも戻ってこない。

それが、彼の抱える最も大きな重荷なのかもしれない。

さらに、太陽神アリオストルの意図は依然として謎のままである。

なぜマシューに試練を与えるのか。

なぜ伝道師を次々と送り込むのか。

そして、ナタリーは何を望んで太陽神に従っているのか。

分からないことが増えるばかりだ。

それでも、最後に一つだけ強く感じたことがある。

マシューが本当に恐れるべきものは、目の前の敵だけではない。自分の選択が、大切な人の人生を壊してしまうことなのだろう。

エイプリルの父親の件は、その恐怖を突きつける出来事だった。

そして、旧友ナタリーの裏切りによって、マシュー自身の過去も再び揺らぎ始めた。

太陽神が敵である以上、これからも理不尽な試練は続くのかもしれない。

しかし、神が何を考えているのか分からないからこそ、人間が自分の意志で何を選ぶのかが重要になる。

第5巻は、そんなことを考えさせられる一冊だった。

それにしても、ナタリーまで太陽神側とは。

マシューには、もう少し安心して眠れる日があってもよいのではないだろうか。

次巻では、太陽神の目的が少しでも明らかになることを期待したい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

ストーリー・プロット

第1幕:旧友の再会と手首の異変

街の雑踏の中で、死んだと聞かされていた『百万の刃』の元仲間ナタリーがマシューの前に現れ、魔剣『暁光剣』の返還を求める。自害の噂は老父を敵から守るための偽装であったことを知ったマシューは、デズの心労を晴らすためナタリーに肘打ちを食らわせた後、床下に隠していた『暁光剣』を返却する。

一方、街では英雄アルウィンへの崇拝とヒモであるマシューへの嫌悪が高まり、マシューは路地で暴漢に襲われるなどの被害に遭う。

その夜、迷宮から戻ったアルウィンの右手首に「解放」中毒の新たな黒い斑点が現れ、彼女は恐怖と自己嫌悪に震える。

第2幕:魔女エステルの強奪と首ねじ切り

翌朝、マシューは薬師ニコラスの工房を訪れるが、高価な材料費が不足して解毒薬の量産が停滞していたため、斑点を消す効果のある実験用の丸薬を無断で持ち出す。

しかし帰路、黒衣の魔女に襲撃されて麻痺させられ、丸薬を奪われてしまう。

マレット姉妹から魔女がラティマー一門の死霊魔術師エステルであると突き止めたマシューは、廃屋に乗り込む。

エステルは迷宮で死んだ恋人ダミアンの遺体を地上に留めるため、腐敗臭を消す薬品を求めて凶行に及んでいた。

自身もゾンビ化していたエステルの魔術に追い詰められたマシューは、火事場の「意地」を発動して床板を引き剥がし、怪力でエステルの首をねじ切って丸薬を奪還、廃屋を倒壊させて立ち去る。

第3幕:ギルドマスターの失脚とエイプリルの保護

丸薬をアルウィンに飲ませて手首の斑点を消し、領主の祝宴へ正装した彼女を送り出した後、マシューはギルドへ向かう。

ギルドマスターのグレゴリーから「ギルド内に太陽神の信者がいる」と新任職員ドナルドの内偵を依頼されるが、ドナルドの部屋に潜入したマシューは、彼がグレゴリーの不正を暴きに来たギルド本部の監査役であることを知る。

その直後、半魚人型の怪物サムとザリガニ型の怪物が突入し、ドナルドは頭部を粉砕されて殺害される。

翌日、グレゴリーが汚職とスタンピードの責任を問われて衛兵に逮捕され、屋敷を差し押さえられた孫娘エイプリルを行き場のない状態から救うため、マシューとアルウィンは自宅へ保護する。

第4幕:隠し財産の探索と伝道師ランディの襲来

裏社会では死亡した大幹部ヘザーの「隠し財産」を巡る噂が過熱し、金庫番と繋がりのあったグレゴリーの孫であるエイプリルに五十枚の金貨の賞金がかけられ、命が狙われ始める。

エイプリルを救うため自ら財産を暴くことを決意したマシューは、老猫オリバーの行動を手掛かりに、隣家の廃屋の巨木の根元から地下通路を発見する。

エイプリルの血筋に反応する魔法の扉の先でグレゴリーが孫のために残した金銀財宝を見つけ出すが、そこへ太陽神の「伝道師」ランディが現れ、『ロンバルディの鋏』を出せと要求して襲いかかってくる。

第5幕:ナタリーの介入と地下室の殲滅

マシューは「仮初めの太陽」で反撃するが光が途中で途切れ、ランディに首を絞め上げられ、ラルフやエイプリルも炎に晒される窮地に陥る。

そこへ『暁光剣』を手にしたナタリーが乱入し、炎を一刀両断して救出する。

無数に分裂して群がるランディに対し、ナタリーは『暁光剣』から青い手甲を顕現させて青い炎を放ち、分裂体を焼き払った後、逃走を図る本体の首を一閃で刎ね飛ばして撃破する。

マシューたちは気絶したエイプリルと負傷したラルフを抱えて地上へ脱出する。

第6幕:ゴミ捨て場の包囲と巻物の自爆

地上に出た一行は、『魔侠同盟』の武闘派幹部ハリソン率いる大集団に包囲されるが、『群鷹会』のオズワルドが介入したことでその場を離脱する。

しかし潜伏先の廃屋も賞金目当ての暴徒に取り囲まれ、マシューたちは地下通路を通って迷宮の入り口横のゴミ捨て場へ向かう。

マシューの誘導で地下室に降りたハリソンは本物のヘザーの隠し財産を発見するが、地上をヴィンセント率いる聖護隊に包囲される。

追い詰められたハリソンが自爆用の巻物を広げようとした瞬間、エイプリルが巻物を奪い取って穴へ投げ捨て、地下室ごと財宝は爆発して瓦礫の底へと消え去った。

第7幕:魔物の胎内の金貨と父親の真実

聖護隊に没収される直前、マシューはデズの口内に魔物グーロの封印された巻物を隠させていた。

夜、地下洞窟で召喚したグーロをデズが仕留め、その体内から大量の金貨を回収するが、嗅ぎつけて現れたナタリーに脅し取られ、財宝は三等分される。

翌朝、釈放されたグレゴリーから手紙を見せられたマシューは、ヘザーの金庫番エルトン(本名モーリス)がエイプリルの実の父親であり、自分が以前「抗解薬」の実験台として死なせた路上の男であった事実を突き止められ、自らの過ちに打ちのめされる。

第8幕:サマンサの休戦とナタリーの裏切り

マシューは脅迫状に従って酒場『黄金の馬車亭』を訪れ、女将のサマンサがザリガニ型の伝道師サムであることを知らされる。

大地母神に対抗するための共闘を拒絶したマシューに対し、サマンサはアルウィンがこれ以上力を使えば命を落とすと警告を残す。

その後、酒場の密談を盗み聞きしたマシューは、ナタリーが聖遺物『ロンバルディの鋏』をサマンサに手渡し、太陽神への忠誠を口にして裏切っていた現場を目撃する。

逃げ帰った道中、エイプリルの護衛として雇われたナタリーに口止めされ、直後に現れたヴィンセントから「巨人喰いマデューカス」ではないかと問い詰められる。

主要な転換点

1:アルウィンの手首の黒い斑点の発現
  • それ以前の状況:アルウィンは迷宮攻略を順調に再開し、街の英雄として周囲から称賛されていた。
  • 出来事:深夜、アルウィンの右手首に「解放」中毒の新たな黒い斑点が浮かび上がり、彼女は強い恐怖と絶望に襲われた。
  • 変化:アルウィンの名声失墜と迷宮病再発への恐怖が再び顕在化し、外部の人間との接触を避ける精神的動揺が生じた。
  • 次への影響:マシューがニコラスの元から未完成の抗解薬を持ち出し、それを死霊魔術師エステルに強奪されて取り戻すための死闘へとつながった。
2:ギルドマスター・グレゴリーの逮捕と屋敷の差し押さえ
  • それ以前の状況:グレゴリーはギルドの専制君主として君臨し、その権力によって孫娘エイプリルの安全が完全に保護されていた。
  • 出来事:スタンピードの責任や過去の不正蓄財を問われ、グレゴリーが衛兵に逮捕され、屋敷が封鎖された。
  • 変化:エイプリルを守っていた庇護の傘が消滅し、彼女自身が行き場を失ってマシューの家へ身を寄せることとなった。
  • 次への影響:裏社会の連中が「隠し財産」の情報を引き出すためエイプリルを狙い始め、街全体を巻き込む逃走劇の引き金となった。
3:地下宝物庫でのナタリーによる伝道師ランディの討伐
  • それ以前の状況:マシューは「仮初めの太陽」の機能停止により無力化し、エイプリルやラルフと共にランディに首を絞められ殺害されかけていた。
  • 出来事:『暁光剣』を手にしたナタリーが乱入し、青い炎と手甲の魔力を用いて分裂するランディを完全に切り伏せて討ち取った。
  • 変化:絶体絶命の危機から生還し、エイプリルとラルフの命が救われた。
  • 次への影響:ナタリーが『暁光剣』を完全に操る実力を見せつけたことで、後の隠し財産の分配への介入や、裏での太陽神勢力との暗躍へとつながった。
4:ゴミ捨て場地下での隠し財産の爆砕とグーロからの金貨回収
  • それ以前の状況:ハリソンら『魔侠同盟』と暴徒化した群衆が、エイプリルの身柄とヘザーの隠し財産を奪うため包囲していた。
  • 出来事:エイプリルが自爆の巻物を穴へ投げ捨てて地下室の財宝を粉砕し、マシューは事前にデズの口内へ隠した巻物から召喚したグーロの腹より五十万枚の金貨を回収した。
  • 変化:地上の争奪戦の原因であった隠し財産が消滅したと認識され、エイプリルへの懸賞金と追及の大義名分が消滅した。
  • 次への影響:グレゴリーの釈放が確定し、マシューたちは解毒薬の費用となる膨大な資金を手に入れた。
5:ナタリーとサマンサの密談および『ロンバルディの鋏』の譲渡
  • それ以前の状況:ナタリーは気ままで不器用ながらも、マシューたちの味方として振る舞い、助けてくれる旧友と見なされていた。
  • 出来事:マシューが酒場の地下で、ナタリーが太陽神の伝道師サマンサに聖遺物『ロンバルディの鋏』を手渡し、太陽神への忠誠を誓う現場を目撃した。
  • 変化:かつての仲間が敵勢力の中枢と繋がっている裏切りが発覚し、マシューは完全な絶望と孤独感を突きつけられた。
  • 次への影響:ナタリーがエイプリルの侍女として身近に入り込み、さらにヴィンセントにマシューの正体が露見する危機へと直結した。

マシューを中心とした人物関係の変化

アルウィン
  • 開始時:互いに命綱として支え合う関係でありながら、街の英雄となったアルウィンと無職のヒモであるマシューへの周囲の反発に晒されていた。
  • 主な出来事:手首の斑点発覚によるアルウィンの動揺、マシューが奪還した抗解薬の服用、エイプリルの保護を巡る共同生活、祝宴の髪結い。
  • 巻末時:言葉に出さずとも互いの弱さと立場を深く理解し合い、アルウィンがマシューを「私の命綱」と確信して全幅の信頼を寄せる関係を維持している。
エイプリル
  • 開始時:からかい合いながらも字を教わる師弟のような親しい間柄。
  • 主な出来事:グレゴリー逮捕に伴うマシューの自宅への居候、過酷な逃走劇、命を懸けてマシューを庇い合ったこと、実父を巡る残酷な真実の隠匿。
  • 巻末時:エイプリルはマシューを心から頼れる大人として慕い、マシューは自らが彼女の父親の命を奪った罪悪感を背負いながら彼女を守り続ける立場となった。
ナタリー
  • 開始時:死んだと聞かされていたかつての仲間であり、再会直後は悪口を言い合いながらも戦友としての信頼が残っていた。
  • 主な出来事:『暁光剣』の返還、ランディ戦での救出、隠し財産の強引な三等分、サマンサへの『ロンバルディの鋏』譲渡現場の目撃。
  • 巻末時:ナタリーが太陽神側に寝返っていた裏切りを知り、マシューにとって最も警戒し排除すべき恐るべき敵対者へと変貌した。
サマンサ
  • 開始時:酒場『黄金の馬車亭』の女将と客という表向きの関係。
  • 主な出来事:ドナルド殺害の現場目撃、酒場での怪物への変貌と共闘提案、アルウィンへの力使用に関する警告。
  • 巻末時:直接の交戦は避けているものの、互いの素性と急所を握り合い、手を出せないまま敵対する冷戦状態となった。

主人公の認識と周囲の評価

主人公自身の認識

マシュー自身は、自らを「日光の下でしか本来の力を発揮できない役立たず」「女性に養われ、酒と博打に溺れるロクデナシのヒモ男」と自虐的に規定している。正義や英雄的な行動を冷笑し、自分が泥をかぶり、暴力を振るい、人を殺めるのも、すべては「アルウィンの命綱であり続けるため」という個人的な執着と損得勘定によるものと認識している。

周囲からの評価
  • 一般市民・新米冒険者:「英雄アルウィンの美貌と名声に寄生する醜悪な害虫」「殴られても文句の言えない無力な腰抜け」と軽蔑し、嫌がらせや暴力の対象としている。
  • アルウィン:口が悪く怠惰なダメ男と小言を漏らしつつも、自分の暗闇と弱さを唯一さらけ出せる相手であり、「私を救ってくれる唯一の命綱」として深く敬愛している。
  • エイプリル:「ずるくて口の悪いスケベなヒモ」と呆れながらも、目の奥で深い悲しみを抱え、いざという時には命を懸けて自分を守ってくれる優しい大恩人として慕っている。
  • ヴィンセント:「一見無力なヒモを装いながら、裏で怪異を退け、街の事件の核心に常に存在する油断ならない男」として警戒を強め、終盤には伝説の戦士「マデューカス」ではないかと疑いを抱いている。
認識の差が現れた場面
  • 酒場の裏手での新米冒険者による暴行時:相手はマシューを「脅せば泣き寝入りしてアルウィンから手を引く無力なウジ虫」と侮蔑してナイフを突きつけたが、マシュー自身は相手の暴力に痛痒を感じず、演技指導のように欠点を指摘して冷徹に相手の自滅を誘導していた。
  • 養護施設前でのエディとの対峙時:エディらはマシューを「腕力のない口先だけのデカブツ」と見下して殴りかかったが、マシューは日向で本来の力を一瞬解放してナイフを手の中で真っ二つにへし折り、その圧倒的な実力差で小僧たちを戦慄させた。
  • ゴミ捨て場前でのハリソンら裏社会との対峙時:ハリソンたちはマシューを「ナイフで脅せば命乞いをして財産の場所を吐く哀れなヒモ男」と嘲笑したが、マシュー自身は相手の裏をかいて自爆テロの危険性を排除し、混乱に乗じて真の財産をせしめる策謀を冷静に完遂していた。

旧友の再会

姫騎士様のヒモ第5巻における旧友ナタリーとの再会は、物語の幕開けから怒涛の展開、そして衝撃の結末へと繋がるストーリーの中核をなす。死んだはずのかつての仲間が姿を現した経緯、圧倒的な武力による救出劇、そして裏で進行する不穏な暗躍について整理して解説する。

死んだはずの旧友との再会

・偽装工作の真実

かつてマシューやデズと共に伝説の冒険者パーティ百万の刃で戦った暴風のナタリーは、自ら命を絶ったと伝えられていた。しかし実際は、過去に倒した仇敵の追撃から老父を守るために死亡を偽装していたに過ぎず、マシューらの前に突如として姿を現す。

・魔剣の回収

ナタリーもまた太陽神の呪いによって利き腕である左腕の自由を奪われており、自身の呪いを一時的に解除して護身用とするため、デズが持ち去っていた魔剣暁光剣を回収しに訪れる。

・旧友への制裁と返還

仲間の死を信じ込んで深く傷ついたデズの無念を晴らすため、マシューはギルドの部屋でナタリーの無防備な頭部へ強烈な肘打ちを叩き込む。ナタリーも自責の念から反撃せずこれを受け入れ、マシューは床下に隠していた魔剣を返還する。

圧倒的な戦闘力による救出劇

・窮地への乱入

マシュー、ラルフ、エイプリルが隠し財産の地下室で太陽神の伝道師ランディに追い詰められた際、魔剣を携えたナタリーが颯爽と乱入する。

・伝道師の撃破

魔剣の力を解放して青い手甲と青い炎を操り、分裂して押し寄せる敵を圧倒し、最後は一閃のもとに完全撃破を果たす。

暗躍と正体露呈の危機

・密談現場の目撃

物語の終盤、マシューは酒場の地下隠し部屋で伝道師サマンサとある客の密談を盗み聞きする。その相手こそがナタリーであり、聖遺物ロンバルディの鋏をサマンサへ手渡し、太陽神を称える言葉を口にしていた。

・侍女就任と素性の発覚

ナタリーはエイプリルの新たな侍女兼護衛として現れ、マシューに口止めを迫ると共に、昔の名前であるマデューカスと呼びかける。その呼び名を聖護隊隊長ヴィンセントに聞き咎められたことで、マシューの正体が暴かれる決定的な危機を招く。

まとめ

頼もしい旧友の生還と共闘を描く一方で、裏では太陽神側と密かに繋がっていたナタリーの暗躍が、物語に深い緊張をもたらす。かつての仲間が敵か味方か定まらぬ不穏な影を落とし、主人公の隠された過去をも白日の下に晒す引き金となって次なる波乱を予感させる。

アルウィンの病

姫騎士様のヒモ第5巻におけるアルウィンの病(迷宮病および薬物「解放」の中毒症状)は、彼女の騎士としての名誉や精神状態、そしてマシューとの絆に深く関わる重大な要素として描かれる。

迷宮病と薬物「解放」の背景

アルウィンは大迷宮での過酷なトラウマに起因する精神失調(迷宮病)を抱え、その発作や恐怖を抑えるために禁断の薬物「解放」を服用し続けている。

・強い中毒性と毒性

進行すると首の後ろや手首など血管が浮き出た場所に黒い斑点を生じさせるという深刻な副作用が存在する。

直面した新たな異変(黒い斑点の浮出)

物語の序盤、アルウィンは真夜中に怯えた様子でマシューの部屋を訪れ、右手首の内側に黒い斑点が浮かび上がった事実を打ち明ける。

・心身の消耗と社会的危機の懸念

大迷宮での激戦や聖像破壊者としての覚醒などを経て症状に変化が現れた可能性があり、身体の異常とともに、この斑点が広がることで薬物中毒者である事実が露呈し、マクタロード王家の名誉や戦女神の盾の名声を失う事態を激しく恐れる。

マシューの寄り添いと抗解薬による処置

取り乱すアルウィンに対し、マシューは手首の黒い斑点に優しく唇を落として彼女の恐怖を和らげる対応をとる。

・試作薬の確保と投与

薬師ニコラスが試作していた抗解薬(解毒薬の試作品)を密かに持ち出し、魔女エステルに奪われるなどの曲折を経てアルウィンに投与する。

・症状の沈静化と感謝の表明

この薬によって手首や首の後ろの黒い斑点は綺麗に消え去り、恐怖から脱したアルウィンは自身を救う命綱としてマシューへの深い感謝と信頼を言葉にする。

根本治療への課題と新たなリスク

今回の抗解薬は斑点を一時的に消し去る対症療法にとどまり、飲み過ぎれば心臓や身体に重い負荷をかける危険な試作品という側面も併せ持つ。

・治療薬開発に向けた資金投入

毒素を完全に抜き去る解毒薬の精製には高価な材料費と継続的な処方が不可欠となり、マシューが裏社会から手に入れた財産をニコラスへ提供して開発を進めさせる。

・神威行使に伴う身体への警告

太陽神の伝道師サマンサからは、正当な洗礼を受けずに無理に神の力や魔剣の力を行使し続ければ、次に使った際に命を落とすほどの代償を受けるという不穏な警告も受ける。

まとめ

表面的な斑点の消失によって破滅的な危機は一時的に回避されたものの、肉体と魂に刻まれた毒素や代償の重さは依然として残り続ける。完全な克服に向けた道筋には莫大な資材と危険が伴い、二人の関係性にも更なる試練を予感させる。

隠し財産

姫騎士様のヒモ第5巻における隠し財産を巡る動向は、都市全域を巻き込む争奪戦の契機となり、物語の緊迫感と人間模様を大きく動かす中心軸を形成する。この財産には、裏社会組織の幹部が残した巨額の資金と、冒険者ギルドの長が肉親へ遺した資産という、性質の異なる二つの実態が複雑に交錯する。

魔侠同盟幹部の隠し財産と都市の混乱

裏社会の巨大勢力と結びついた不穏な資金が、都市内に深刻な動揺をもたらす。

・宙に浮いた巨額の資金

裏社会の大組織である魔侠同盟の古参幹部ヘザーが病気および事故によって落命し、組織上層部に無断で金庫番エルトンへ預託していた金貨100万枚相当の隠し資産の所在が不透明となる。

・肉親への懸賞金と暴徒の襲撃

金庫番が混乱の渦中に行方不明となった結果、連絡役と目されたギルドマスターのグレゴリーへ嫌疑が向けられる。責任者の拘束後、裏社会の構成員や金銭に目が眩んだ無法者集団が、孫娘のエイプリルが隠し場所を把握していると誤認し、懸賞金をかけて身柄を狙う事態へ発展する。

責任者が遺した正規の財産と隠し通路

組織の資金とは無関係に、孫娘の将来を守るための別個の遺産が周到に隠匿されていた。

・暗号の解読と経路の発見

老猫を頼れという言葉を手がかりに、猫の捕獲行動を追跡することで、隣接する廃屋の樹洞から地下通路の存在を突き止める。

・血統認証と家族の遺品

当事者の手形のみに反応する魔法の障壁の奥には、生活を守るために密かに蓄えられた財宝と、亡き母の肖像画が厳重に保管されていた。

処理場地下での交戦と真の回収手段

敵対勢力の誘導と、裏をかく回収工作によって事態の決着が図られる。

・虚偽情報の提示と地下区画の破壊

追撃を逸らすため、大迷宮の搬出口地下に財産が存在すると敵幹部らへ偽情報を流して誘導を行う。現場に残されていた書類や残存資産を巡る攻防の末、起爆用具が投げ込まれたことで地下空間ごと爆破され、証拠が隠滅される。

・封印魔物の体内からの回収

あらかじめ資産の一部が封入されていた魔物の巻物を確保し、追及を回避する。夜間に地下空洞で召喚した魔物を討伐し、体外へ約50万枚相当の金貨を取り出すことに成功する。その場へ居合わせた旧友ナタリーからの要求に応じ、最終的に三者で均等に分配する形をとる。

財産獲得の代償と明かされた真実

巨額の資産の回収は救済への道を開いた反面、拭い難い因果の残酷さを白日の下に晒す。

・解毒薬調合の原資確保

獲得した資金を元手に、アルウィンの精神疾患と薬物中毒を治療するための解毒薬開発に必要な莫大な素材費を調達する道筋を確保する。

・金庫番の正体と拭えぬ因果

釈放された責任者との対話を通じて、行方不明となった金庫番の本名がモーリスであり、エイプリルの実父であった事実が判明する。さらにその人物こそ、過去に薬物の安全性を確認する実験対象として関わり、結果として落命に至った路上の中毒者その人であったという痛切な結末が浮き彫りとなる。

まとめ

都市を揺るがした隠し財産の争奪劇は、巨額の資金を手に入れたことで姫騎士の命を繋ぐ手段を確立させた一方、主人公の手で間接的に命を奪った相手が守るべき少女の実父であったという過酷な事実を突きつける。救済の裏に常に血と因果が付きまとう構造が、作品世界の冷徹な陰影を強く印象づける。

悲劇の真実

都市全域を巻き込んだ隠し財産の争奪戦は、莫大な資金の獲得によって深紅の姫騎士の命を繋ぐ道を開いた反面、主人公マシューに拭い難い因果の残酷さを突きつける。ギルドマスターの孫娘エイプリルの生き別れの父親を巡る素性と、アルウィンを救う過程で生じた取り返しのつかない罪の全貌を整理して記述する。

隠し財産騒動の背後にいた父親の素顔

・金庫番の正体

裏社会の大組織である魔侠同盟の大幹部ヘザーが遺した隠し財産を管理していた金庫番エルトンの本名はモーリスであり、エイプリルの実父であった。

・更生への挫折と転落

かつて妻の死を経て幼い娘を義父であるギルドマスターへ託したモーリスは、裏社会から足を洗う資金を得て成長した娘と再び暮らす夢を抱いていた。しかし計画は瓦解し、裏社会からの追及と拷問の末に薬物解放を強制投与され、路上の重度中毒者へと身を持ち崩す結末を迎えた。

マシューが犯した過ちと因果の交錯

・試作薬の実験台

アルウィンの手首に浮かび上がった黒い斑点や薬物中毒を沈静化させるため、マシューは薬師ニコラスが調合した試作品の安全性を確かめる必要に迫られた。その検証対象として、街角で行き倒れていた薬物中毒の男性へ密かに試薬を投与した。

・命の喪失

試薬の激しい副作用によって肉体を蝕まれた男性は、薄れゆく意識の中で娘の名を呟きながら絶命した。

・似顔絵が暴いた残酷な真実

事件の収束後、釈放されたギルドマスターから見せられたエイプリルの実父の似顔絵を目にした瞬間、自らが実験台として命を奪った路上の男こそがモーリスであった事実を悟るに至る。

明かされぬ罪責と背負うべき業

・永遠に断たれた再会

守るべき対象であった少女から、切望していた実の父親との再会の機会を自らの手で永遠に奪い去る結果となった。

・孤独な隠蔽と決意

この痛切な事実は当事者である少女やギルドマスター、さらには庇護対象であるアルウィンにすら打ち明けられることはなく、マシュー単身の胸の奥底へと秘匿された。

まとめ

愛する者を救済するための冷徹な行動が、別の無辜の存在を踏みにじり、守るべき親子の絆を永遠に引き裂いていたという結末は、裏社会に身を浸す代償の重さを如実に物語る。誰にも共有できない罪を一人で抱え込みながら歩み続ける姿が、作品世界に横たわる救いのない業の深さを際立たせる。

ナタリーの裏切り

姫騎士様のヒモ第5巻の終章で明かされるナタリーの裏切りは、物語の前提と主人公マシューの信頼を根底から打ち砕く最大の衝撃的な展開を形成する。死んだはずのかつての盟友が敵対組織と密かに繋がり、さらには主人公の素性を危険に晒すに至るまでの経緯を整理して解説する。

密談の発覚と裏切りの露見

マシューは酒場の地下にある隠し部屋へ潜入し、太陽神の伝道師サマンサとある客による密談を盗み聞きする行動に出た。その場に現れた相手こそ、かつて伝説のパーティ百万の刃で苦楽を共にした旧友、暴風のナタリーであった。

太陽神側との具体的な接触内容

ナタリーは身を隠しながら再起を図る元仲間などではなく、裏で太陽神陣営と深く結託していた。現場で確認された具体的な動向は以下の通りとなる。

  • 聖遺物の引き渡し:隠し財産の現場などから回収した重要遺物ロンバルディの鋏をサマンサへ差し出していた。
  • 狂信的な合言葉の交歓:立ち去る際、相手と共に太陽神はすべてを見ているという教団独自の理念を口にしていた。
  • 戦力の選別:用意された四つ星冒険者を実力不足として打ちのめして退けるなど、迷宮攻略に向けた手駒の厳格な選定を行っていた。
主人公への追い打ちと正体露呈の危機

ナタリーは財産争奪戦において味方として共闘する素振りを見せつつ、水面下では最大の敵対勢力と気脈を通じていた。さらに物語の結末において、以下の重大な危機を招来させる。

  • 警備役への就任と口止め:ギルドマスターの手配によりエイプリルの新たな侍女兼護衛として着任し、マシューに対して過去の口止めを要求した。
  • 過去の旧名の漏洩:その際、マシューのかつての本名であるマデューカスという呼称を不用意に口にした。
  • 治安責任者による察知:背後に控えていた聖護隊隊長ヴィンセントにその名を明瞭に聞き咎められ、主人公が伝説の巨人喰い本人であるという致命的な素性露呈の窮地を招いた。
まとめ

かつての戦友であり、自らも太陽神の呪いを受けた被害者であったはずの人物が、なぜ敵陣営に加担しているのかという謎は深い闇を残す。旧友の偽装と背信、そして主人公の隠された過去が白日の下に晒されかける極限の緊張感が、次なる動乱への決定的な導火線となる。

姫ヒモ4レビュー
まとめ
姫ヒモ6レビュー

登場キャラクター

冒険者パーティ『戦女神の盾』

アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロード

亡国マクタロード王国の元王女を務める。大迷宮の攻略を目指してパーティを率いる。マシューを絶対的な命綱として頼る。

・所属組織、地位や役職  マクタロード王国・元王女。冒険者パーティ『戦女神の盾』・リーダー。

・物語内での具体的な行動や成果  大迷宮『千年白夜』の探索を再開する。手首に浮き出た『解放』の中毒症状である黒い斑点に怯える。マシューから与えられた試薬により斑点を消し去る。正装して領主の館で開かれた祝宴に出席する。エイプリルを自宅に引き取り保護する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  スタンピードを阻止した街の英雄として称賛を受ける。政治的交渉を行って領主の手配を取り下げさせる。

マシュー(マデューカス)

アルウィンの同居人を務める。表向きは養われる立場として振る舞う。裏社会でアルウィンを陰から守る。

・所属組織、地位や役職  アルウィンの同居人。元『百万の刃』メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果  死霊魔術師エステルから薬を奪還してアルウィンへ投与する。じいさまの不正を調べるドナルドの調査に立ち会う。エイプリルを襲撃から守るため隠し財産の探索へ乗り出す。旧友ナタリーとともに伝道師ランディを撃破する。魔物グーロから大量の金貨を回収する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  かつて「巨人喰い」の異名で知られる。終章でヴィンセントに正体を勘づかれる。

ラルフ

『戦女神の盾』の戦士を務める。アルウィンへ強い忠誠心を示す。マシューに対して反発心を抱く。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・戦士。

・物語内での具体的な行動や成果  領主の祝宴に向けて礼服を着用する。エイプリルを守るためマシューに同行して隠し財産を捜索する。地下室で伝道師ランディへ果敢に切りかかる。ランディの反撃を受けて壁に叩きつけられ気絶する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  前線での護衛役として成長した姿を見せる。

ノエル

マクタロード王国出身のスカウトを務める。素早い身のこなしで情報収集や護衛にあたる。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・スカウト。

・物語内での具体的な行動や成果  祝宴への出席を拒むアルウィンを説得しようと試みる。男物の礼服を着てアルウィンの護衛を務める。街を出て行った冒険者たちの負傷理由を調べる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  パーティのスカウトとして前衛や調査を担当する。

セシリア・マレット

五つ星冒険者の魔術師を務める。高い知性と知識を誇る。『戦女神の盾』の後衛を支える。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・構成員。五つ星冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  大迷宮での攻略ペースの遅れに不満を漏らす。マシューへ死霊魔術師ラティマー一門に関する情報を教える。合体魔法を放ってハリソンを感電・昏倒させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  妹のベアトリスとともに強力な攻撃魔法を担当する。

ベアトリス・マレット

五つ星冒険者の魔術師を務める。豪快で素直な性格を示す。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・構成員。五つ星冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューが持ち合わせた干しブドウを欲しがる。セシリアとともにマシューの質問に答える。雷撃魔法を繰り出して暴徒やハリソンを倒す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  五つ星冒険者として絶大な戦闘力を発揮する。

ニコラス・バーンズ(ニック・バーンスタイン)

元神父の薬師を務める。アルウィンの治療薬開発に尽力する。

・所属組織、地位や役職  冒険者パーティ『戦女神の盾』・回復役兼薬師。元サニーヘイズ神父。

・物語内での具体的な行動や成果  解毒薬の開発に必要な資金不足をマシューに説明する。未完成の抗解薬をアルウィンに投与したマシューを厳しく叱責する。解毒薬の正確な服用指示書をマシューへ手渡す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏で解毒薬の研究と精製を継続する。

元『百万の刃』

ナタリー(『暴風』のナタリー)

かつて『百万の刃』で活躍した伝説の剣士を務める。利き腕の自由を失う呪いを受ける。

・所属組織、地位や役職  元『百万の刃』・メンバー。エイプリル付きの侍女兼護衛。

・物語内での具体的な行動や成果  死を偽装して姿を消した後に『暁光剣』を求めてマシューの前に現れる。魔剣の青い炎を用いて伝道師ランディを撃破する。回収した『隠し財産』の三等分を要求する。裏で伝道師サマンサに聖遺物『ロンバルディの鋏』を手渡す。エイプリルの新たな侍女兼護衛へ就任する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューを「マデューカス」と呼び正体判明のきっかけを作る。裏で太陽神側と接触を保つ。

デズ

ドワーフの元冒険者を務める。マシューの固い親友にあたる。

・所属組織、地位や役職  元『百万の刃』メンバー。冒険者ギルド専属職員。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューやエイプリルを自邸に居留させる。マシューの隠し財産探索に協力して体を投げ持ち上げる。口内に魔物グーロの巻物を隠して押収を免れる。地下洞窟でグーロを一撃で仕留めて金貨を取り出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  高水準の腕力と信頼でマシューを力強く助ける。

冒険者ギルド『灰色の隣人』支部

グレゴリー(ギルドマスター)

冒険者ギルドの最高責任者を務める。強大な権力と猜疑心を保持する。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・ギルドマスター。

・物語内での具体的な行動や成果  新任職員ドナルドを太陽神の信徒と疑いマシューに内偵を命じる。スタンピードの責任や汚職の容疑で衛兵に逮捕される。取り調べを乗り切って不釈放を勝ち取りギルドへ復帰する。孫娘のために残した隠し財産の真実をマシューに明かす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  逮捕から復帰して独裁体制を維持する。

エイプリル

ギルドマスターの孫娘にあたる。純粋で正義感の強い性格を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド・見習い職員。

・物語内での具体的な行動や成果  街で子供たちに読み書きを教える教師の夢を語る。じいさまの逮捕と屋敷封鎖により行き場を失う。マシューたちと共に隠し財産の探索へ向かう。ハリソンが持っていた自爆用の巻物を奪って穴へ投げ捨てる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  隠し財産騒動の渦中に置かれるも無事に生還する。ナタリーを新たな侍女として雇う。

ドナルド

ギルド本部から派遣された新任職員を務める。容姿端麗で仕事の処理能力に優れる。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド本部・監査役。

・物語内での具体的な行動や成果  ギルドマスターの不正を調べるため潜入調査を行う。自宅でマシューに追いつめられて正体を明かす。部屋に踏み込んできたザリガニ型の怪人に頭部を撃砕されて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  暗殺されて命を落とす。

ヘクター

ギルドの副長を務める。長年の勤続経験を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・副長。

・物語内での具体的な行動や成果  ギルドマスターの逮捕に伴い一時的に代理を務める。事態の収拾を図れずおろおろと狼狽する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  気弱な性格のため組織をまとめきれずに終わる。

グロリア・ビショップ

義手を装着した鑑定士を務める。サバサバとした人柄を示す。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・鑑定士。

・物語内での具体的な行動や成果  部屋を訪れたマシューにじいさまの逮捕理由を説明する。客からの鑑定料のチョロマカしについて嫌悪感を示す。マシューの軽口を軽快にいなす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  高い鑑定能力でギルドの業務を支える。

冒険者ギルド職員たち(集団)

ギルドの運営を担当する職員集団を指す。

・所属組織、地位や役職  冒険者ギルド『灰色の隣人』支部・職員。

・物語内での具体的な行動や成果  ギルドマスター逮捕の混乱に追われる。冒険者たちの対応に追われて右往左往する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  責任者不在の事態に動揺を隠せずに過ごす。

太陽神関係者 / 『ソル・マグニ』

サマンサ(『伝道師』サム / 『黄金の馬車亭』の女将)

『黄金の馬車亭』の女将を務める。裏では太陽神の『伝道師』として暗躍する。

・所属組織、地位や役職  太陽神アリオストル・伝道師(サム)。『黄金の馬車亭』・女将。

・物語内での具体的な行動や成果  白い錠剤『上昇』を服用してザリガニ型の怪物へ変身する。マシューへ大地母神への抗戦に向けた共闘を持ちかける。アルウィンの無断での神力行使に命の危険があると警告する。地下の部屋でナタリーから『ロンバルディの鋏』を受け取る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  『伝道師』や『受難者』の統括役を担う。

ランディ(『伝道師』サム)

異形の肉体を持つ『伝道師』を務める。承認欲求の強さを見せる。

・所属組織、地位や役職  太陽神アリオストル・伝道師(サム)。

・物語内での具体的な行動や成果  隠し財産の地下室へ侵入して『ロンバルディの鋏』を要求する。マシューの首を締め上げて追い詰める。身体を無数の小さな虫状に分裂させてナタリーへ群がる。ナタリーの魔剣の青い炎により焼き尽くされ首を斬られて滅びる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ナタリーの手で完全に消滅させられる。

ロブ

裏組織『まだら狼』の末端を務める若者を指す。

・所属組織、地位や役職  裏組織『まだら狼』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューの自宅へ不法侵入を試みる。マシューに捕まって拷問を受ける。エイプリルへの懸賞金とヘザーの隠し財産について口を割る。マシューの手で首を折られて死亡する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会の情報をマシューへ漏らした後に絶命する。

黒覆面の男たち(集団)

マシューの自宅を襲撃した集団を指す。

・所属組織、地位や役職  襲撃者。

・物語内での具体的な行動や成果  夜間にマシューの自宅の鍵をこじ開けようとする。脱出したマシューに追撃される。二人までが瞬く間に撲殺される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューの手で排除される。

裏社会組織(『魔侠同盟』『群鷹会』『まだら狼』)

ハリソン(『火雷』のハリソン)

『魔侠同盟』の武闘派幹部を務める。粗暴で恐ろしい筋力を誇る。

・所属組織、地位や役職  『魔侠同盟』・幹部。

・物語内での具体的な行動や成果  ヘザーの隠し財産を奪うためエイプリルを捕らえようとする。ゴミ捨て場地下の隠し部屋で財宝を発見する。囲まれた聖護隊に対して自爆用の巻物を掲げて脅迫する。マレット姉妹の雷撃魔法を受けて昏倒・逮捕される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過激な行動の末に聖護隊へ身柄を拘束される。

オズワルド(『鱗雲』のオズワルド)

暴力団組織『群鷹会』の幹部を務める。計算高い側面を持つ。

・所属組織、地位や役職  『群鷹会』・幹部。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューたちを包囲するハリソンの前に部下を率いて乱入する。英雄であるアルウィンへの攻撃を制止してハリソンを牽制する。マシューへ嫌味を言い交わして引き揚げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会のパワーバランスを考慮して立ち回る。

『魔侠同盟』の構成員たち(集団)

ハリソンに従う大規模な暴力集団を指す。

・所属組織、地位や役職  『魔侠同盟』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルを捕獲するため街の各地へ網を張る。ゴミ捨て場の泥やゴミを掘り返す。聖護隊や冒険者たちと対峙する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ハリソンの捕縛に伴い瓦解する。

『群鷹会』の構成員たち(集団)

オズワルド率いる極道集団を指す。

・所属組織、地位や役職  『群鷹会』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  完全武装してオズワルドに同行する。ハリソンの手下どもを力で散らし道をこじ開ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  組織の威圧感を示して相手を引かせる。

路上の紳士たち(集団)

街の路地裏に身を寄せる浮浪者集団を指す。

・所属組織、地位や役職  『紳士同盟』・構成員。

・物語内での具体的な行動や成果  奪った金を分け合って路地にたむろする。マシューに異臭を放つ廃屋の場所を教える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会の情報源として機能する。

薬物の売人たち(集団)

非合法薬物『解放』をさばく集団を指す。

・所属組織、地位や役職  売人。

・物語内での具体的な行動や成果  路地裏で中毒者相手に薬を売りさばく。警備の強化により身を潜める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  街の監視体制の強化により行動を制限される。

聖護隊・衛兵・行政

ヴィンセント・バリー・カーライル

『聖護隊』の隊長を務める。強い正義感と厳格な規律を保持する。

・所属組織、地位や役職  レイフィール王国・『聖護隊』隊長。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルの保護を求めるマシューの要請を組織の事情から拒絶する。ゴミ捨て場へ部下を率いて出動しハリソン一味を包囲する。マシューの不意打ちの打撃を受けるも耐え忍ぶ。マシューの隠し持つ宝石類を押収する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  終章でナタリーの発言からマシューの正体が「マデューカス」であると気付く。

ちょびひげの衛兵

ベテラン衛兵を務める。マシューへ非公式に情報を与える。

・所属組織、地位や役職  聖護隊(出向)。

・物語内での具体的な行動や成果  街で魔術の麻痺にかかったマシューを助け起こす。エイプリルにお尋ね者の手が回っている事実を独り言の体でマシューへ教える。手紙をマシューへ引き渡す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューに対して一定の配慮を見せる。

色黒の衛兵

若手衛兵を務める。ちょびひげの衛兵と行動を共にする。

・所属組織、地位や役職  聖護隊(出向)。

・物語内での具体的な行動や成果  ちょびひげの衛兵と共に治安維持にあたる。マシューへ警告交じりの助言を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  現場で迅速に捜査をこなす。

役人

領主の命を受けて派遣された中年役人を指す。

・所属組織、地位や役職  領主館・役人。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルの屋敷に板を打ち付けて封鎖を言い渡す。財産没収の通達文を読み上げる。アルウィンの威圧に怯えて態度を一変させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  権力を背景にいばり散らすも強い者には屈する。

衛兵たち(集団)

街の警備や差押えを担当する兵士集団を指す。

・所属組織、地位や役職  衛兵隊。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルの屋敷に木板を打ち付けて立ち入りを禁じる。領主の命令に従って屋敷周辺を固める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  領主の指示の下で機械的に任務を遂行する。

死霊魔術師(ラティマー一門)

エステル・ラティマー

ラティマー一門を破門された死霊魔術師を務める。恋人への深い執着を抱く。

・所属組織、地位や役職  ラティマー一門・はぐれ死霊魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューを麻痺魔法で動けなくして懐の丸薬を奪い去る。死体となった恋人ダミアンの腐敗を止めるため香水や薬を襲撃して奪う。廃屋へ乗り込んできたマシューと戦う。マシューの手で首をねじ切られ廃屋の崩落に巻き込まれて消える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  自らに死霊魔術を施して不死化していたものの完全に押し潰される。

ダミアン

エステルの恋人であり迷宮で戦死した冒険者を指す。

・所属組織、地位や役職  元冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  大迷宮で命を落とした後にゾンビとしてエステルに操られる。腐敗が進んだ状態でベッドに横たわる。廃屋の崩落に伴い地中深く沈む。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  死体となってエステルの魔術で繋ぎ止められる。

養護施設

エディ

養護施設で暮らす少年を務める。強い不満とひねくれた感情を抱く。

・所属組織、地位や役職  養護施設・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果  建物の陰で仲間のガキどもとタバコを吹かす。『魔侠同盟』の手先となってエイプリルを連れ出そうと企てる。マシューにナイフを叩き折られて嗜められる。エイプリルが暴徒に襲われた際に身を挺して庇い殴られる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  自身の行動を悔い改める兆しを見せる。

ルーク

養護施設の少年を務める。マシューを恐れる仕草を見せる。

・所属組織、地位や役職  養護施設・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果  建物の陰で遊んでいたところをマシューに見つかる。エディたちが煙草を吹かしている旨を漏らす。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  素直に知っている事実を話す。

ミッキー

養護施設の年上組の少年を務める。

・所属組織、地位や役職  養護施設・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果  エディたちと共に木箱に座り込む。マシューの接近に舌打ちして隠れる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  エディと行動を共にする。

ジョーイ

養護施設の年上組の少年を務める。

・所属組織、地位や役職  養護施設・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果  エディと共に不穏な企みに加担する。マシューの介入を受けてたじろぐ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューの威圧に屈する。

養護施設の子供たち(集団)

施設で暮らす親のない子供たちを指す。

・所属組織、地位や役職  養護施設・孤児。

・物語内での具体的な行動や成果  エイプリルの訪問を喜ぶ。仮設住宅の周囲で生活を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過酷な環境の中でたくましく過ごす。

街の住民・その他関係者

モーリス(エルトン)

エイプリルの実の父親を務める。過去に密輸や会計に手を染める。

・所属組織、地位や役職  『魔侠同盟』・元金庫番(エルトン)。エイプリルの実父。

・物語内での具体的な行動や成果  妻フローラの死後にエルトンと名を変えてヘザーの金庫番を務める。ヘザーの隠し財産を持ち出してエイプリルと暮らそうと計画する。ハリソンらに捕まって『解放』を強飲させられ路上へ転落する。マシューの抗解薬の実験台とされて副作用で悶絶死する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  マシューの手で命を落とすもその事実が終盤に判明する。

ノーラ

エイプリルの屋敷で働く年配の侍女を務める。

・所属組織、地位や役職  エイプリル家・侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  屋敷の差押え現場で過度の心労から倒れ込む。エイプリルへ励ましの言葉をかけられる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  持病の腰痛悪化に伴い侍女を引退する。

チェルシー

闇の運送屋『トンビ』を務める異国の女性を指す。

・所属組織、地位や役職  闇の運送屋『トンビ』。

・物語内での具体的な行動や成果  マシューからの鈴の合図を受けて幌馬車で駆けつける。気絶したロブに手枷足をはめてマシューの隠れ家へ運ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  言葉が通じないものの金で確実に荷を運ぶ。

ブラッドリー

真夜中に活動する死体回収屋『墓掘人』を務める。

・所属組織、地位や役職  死体回収屋『墓掘人』。

・物語内での具体的な行動や成果  幌馬車を駆って真夜中の街を巡回する。マシューが殺害した敵の死体回収を引き受ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  裏社会の死体処理を長年一手に担う。

庭師

エイプリルの屋敷で雇われていた男性を務める。

・所属組織、地位や役職  エイプリル家・庭師。

・物語内での具体的な行動や成果  倒れ込んだノーラを執事と共に抱え上げて医者へ運ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  屋敷の封鎖に伴い一時解雇される。

執事

エイプリルの屋敷を管理していた男性を務める。

・所属組織、地位や役職  エイプリル家・執事。

・物語内での具体的な行動や成果  ノーラを介抱して診療所へ搬送する。エイプリルへ自分の家に泊まるよう申し出る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  解散後もエイプリルの身を案じる。

新米冒険者

街に新しくやってきた若い剣士を務める。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  酒場の裏でマシューに暴行を加えてナイフで威嚇する。娼館の二階から男に投げ落とされた椅子が直撃して気絶する。マシューに財布から金を抜き取られる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  アルウィンの熱狂的ファンとして暴走する。

ごつい男

娼館の客を務める大柄な男性を指す。

・所属組織、地位や役職  街の住民。

・物語内での具体的な行動や成果  酒場の裏での喧騒に激怒する。二階の窓から椅子を投げ落として新米冒険者をノックアウトする。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  邪魔者を力ずくで沈める。

大男

ナタリーの露店へ絡んできた男性を務める。

・所属組織、地位や役職  街の住民。

・物語内での具体的な行動や成果  ナタリーへ拳を振りかざして襲いかかる。ナタリーにかわされて頭にリュートを叩きつけられ股間を蹴られて昏倒する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ナタリーにあっさりと返り討ちにされる。

黒髪の男の子

妹と共に街を彷徨う孤児の少年を指す。

・所属組織、地位や役職  街の子供。

・物語内での具体的な行動や成果  ナタリーの食べるビスケットを空腹そうに見つめる。マシューからもらった干しブドウを我慢して妹へ手渡す。マシューから養護施設の存在を教えられる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  妹を心から慈しみ行動する。

小さな女の子

黒髪の男の子の妹を務める。

・所属組織、地位や役職  街の子供。

・物語内での具体的な行動や成果  兄から手渡された干しブドウやビスケットを嬉しそうに食べる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  兄に守られて街を移動する。

年かさの主婦

懸賞金に目がくらんだ街の女性を務める。

・所属組織、地位や役職  街の住民。

・物語内での具体的な行動や成果  逃げるエイプリルへ大勢の群衆と共に群がる。エイプリルを押さえつけて自分が賞金をもらうと金切声を上げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  欲望に飲み込まれて暴徒化する。

使用人たち(集団)

エイプリルの屋敷で雇われていた使用人集団を指す。

・所属組織、地位や役職  エイプリル家・使用人。

・物語内での具体的な行動や成果  屋敷の封鎖に伴い門の前に集まる。エイプリルの身を案じつつ解散してそれぞれの親族の家へ避難する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  エイプリルを温かく見守る。

街の冒険者たち(集団)

迷宮都市に滞在する多数の冒険者を指す。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  スタンピード終息後に大量に迷宮へ潜る。マシューへ敵対的な視線を送る。賞金首となったエイプリルを捕まえようと群がる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  欲望や利権に流されて行動する。

街の住民たち(集団)

迷宮都市『灰色の隣人』の市民集団を指す。

・所属組織、地位や役職  街の住民。

・物語内での具体的な行動や成果  街の復興作業に従事する。エイプリルへの懸賞金に目がくらみ暴徒化して追いかける。アルウィンの威圧と説得を受けて正気に戻り散開する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  集団心理により狂気に陥るも収束する。

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まとめ
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展開まとめ

序章 『暴風』が吹き荒れるとき

死んだはずの旧友ナタリーとの再会

マシューとアルウィンが街を歩いていたところ、かつて所属していた伝説の冒険者パーティ『百万の刃』の仲間であるナタリーが現れ、魔剣『暁光剣』の返還を求めてきた。自害したと伝えられていたナタリーは、過去に打ち負かした仇敵からの襲撃を逃れて老父を守るため、偽装工作を行っていただけであった。左腕の自由を失う呪いを受けたナタリーは、自身を守る手段として『暁光剣』を取り戻すべくマシューを追ってきたのである。

『暁光剣』の返還と遺恨の清算

冒険者ギルドにあるデズの部屋へ移動したマシューは、仲間の死に傷ついたデズの無念を晴らすため、ナタリーに不意打ちの強烈な肘打ちを浴びせた。ナタリーは自責の念から反撃せずそれを受け入れ、デズへの謝罪を約束した。マシューは部屋の床下から隠しておいた『暁光剣』を取り出してナタリーへ返還した。ナタリーは街で身を隠しつつ真っ当に生きる道を模索すると言い残し、立ち去っていった。

第一章 魔女の大鍋が煮立ち

街の英雄のヒモに対する逆風と暴漢の返り討ち

アルウィンが迷宮攻略を再開する中、英雄視される彼女と無職のヒモであるマシューへの反発から、マシューは街の人間から嫌がらせを受けていた。酒場の裏で逆上した新米冒険者に暴行を受け、ナイフで脅されたマシューであったが、上の階から投げ落とされた家具が冒険者に直撃して相手は昏倒した。現場の始末を店の女将に任せたマシューは、路地裏で『解放』中毒の衰弱した男性の介抱などを行いながら帰宅した。

アルウィンの手首の黒い斑点と隠された薬の強奪

真夜中、アルウィンが怯えながらマシューの部屋を訪れ、手首に新たな黒い斑点が浮かび上がったことを打ち明けた。翌朝、マシューは薬師ニコラスの元を訪れたが、高価な材料費が不足して解毒薬の量産が止まっていたため、実験用の丸薬を密かに拝借した。その帰路、マシューは黒衣の魔女に奇襲され、麻痺魔法で身動きを封じられた隙にその丸薬を強奪されてしまった。

魔女エステルの正体と地下の死闘

『蛇の女王』のマレット姉妹から情報を集めたマシューは、犯人がラティマー一門の死霊魔術師エステルであると突き止めた。夜、廃屋へ乗り込んだマシューは、迷宮で死んだ恋人ダミアンの死体を地上に留めるため、腐敗臭を消す薬物を求めて犯行を重ねていたエステルと対峙した。ゾンビ化していたエステルに術で追い詰められたマシューは、自らの『意地』を解放して床板を剥がし、怪力でエステルの首をねじ切って丸薬を奪還した。廃屋を崩落させて立ち去ったマシューは、自宅に戻ってアルウィンに薬を飲ませ、斑点を一時的に消し去った。

祝宴への送り出しと実験台の事実

領主の館で開かれるスタンピード終息の祝宴へ向けて、マシューはアルウィンの髪を結い上げ、正装した彼女を送り出した。直後に駆けつけたニコラスから未完成の薬を飲ませた危険性を咎められたが、マシューは路上の男性を実験台にして安全性を確認済みであった。その薬の副作用で命を落とした男を想い、マシューは夜空に一人祈りを捧げた。

第二章 原初の神は口を開けて

エイプリルの将来相談とギルドマスターの依頼

冒険者ギルドでエイプリルから教育者を志す夢を聞かされたマシューは、ギルドマスターのグレゴリーに呼び出された。じいさまは、ギルド職員の中に太陽神の信徒が紛れ込んでいる疑いがあるとして、新任職員ドナルドの内偵をマシューに依頼した。

ドナルドの正体と異形の急襲

ドナルドの自宅へ潜入して拘束したマシューは、彼が太陽神の信徒ではなく、じいさまの不正を暴くために派遣されたギルド本部の監査役であると知らされた。じいさまの策略を悟ったマシューがドナルドに逃走を促した矢先、半魚人風の怪物サムと、ザリガニのような異形の怪物が突入してきた。マシューは怪物を迎撃したものの、ドナルドはザリガニ怪物の手によって頭部を粉砕され、殺害された。

じいさまの逮捕とエイプリルの保護

ドナルドが遺した報告書を回収して脱出した翌日、ギルドマスターのじいさまがスタンピードの責任や汚職容疑で衛兵に逮捕された。屋敷も差し押さえられ、行き場を失ったエイプリルをマシューとアルウィンは自宅へ引き取り、居候の野良猫オリバーも連れて帰宅した。

第三章 大巨人は立ち上がり

エイプリルの苦悩と『隠し財産』の探索決意

アルウィンが料理を手伝い、マシューは自身の過酷な生い立ちを語りながら、エイプリルに寄り添った。一方、裏社会では死亡した大幹部ヘザーが遺した莫大な『隠し財産』を巡る噂が過熱していた。金庫番と繋がりのあったじいさまが逮捕されたことで、在処を吐かせるためエイプリルが狙われていると知ったマシューは、彼女を救うために自ら『隠し財産』を暴く方針を定めた。

空き家の地下室とランディの急襲

じいさまの言葉「オリバーを頼れ」を手掛かりに、猫の動向を追ったマシューたちは、隣家の廃屋の巨木の下から地下通路を発見した。エイプリルの血筋でのみ開く魔法の扉を抜けた先には、じいさまが孫娘のために蓄えた金銀財宝が眠っていた。しかしそこへ、『伝道師』の一人であるランディが現れ、『ロンバルディの鋏』の所在を詰問してきた。

ナタリーの加勢と伝道師の撃破

『仮初めの太陽』の光が途切れてマシューが首を絞められ、ラルフやエイプリルが炎に焼かれそうになった瞬間、『暁光剣』を手にしたナタリーが乱入した。ナタリーは魔剣から青い手甲を顕現させて炎の刃を操り、分裂して群がるランディを焼き尽くし、逃亡を図った本体の首を跳躍の一閃で両断した。

第四章 牧神は逃げ惑い

『魔侠同盟』の包囲とオズワルドの助勢

ナタリーの救援で生還したマシューたちだったが、地上へ出ると『魔侠同盟』の武闘派幹部ハリソン率いる大集団に包囲された。一触即発の窮地に、『群鷹会』のオズワルドが乱入してハリソンを牽制し、その場を離脱させた。

街中の逃走とゴミ捨て場への追い込み

デズの家に身を寄せた後、エイプリルへの懸賞金に狂った暴徒たちが押し寄せた。マシューたちは地下通路を通って迷宮の入り口付近へ向かったが、群衆とハリソンに追い詰められた。マシューはハッタリを効かせ、『隠し財産』が迷宮の入り口横のゴミ処理用の穴の地下にあると告げてハリソンたちを誘導した。

地下の財宝と巻物の爆破

地下に降りたハリソンは本物の金銀財宝を発見したが、地上に『聖護隊』が現れて包囲された。ハリソンはエイプリルを人質にして自爆用の巻物を起動しようとしたが、エイプリルが果敢に巻物を奪い取って穴の中へ投げ捨てた。地下室全体が爆風で吹き飛び、悪党の『隠し財産』は瓦礫の底へと消え去った。

魔物の胎内からの回収と分配

現場から押収品として没収される前に、マシューは密かにデズの口内へ魔物グーロの封印された巻物を隠させていた。その夜、地下洞窟で召喚したグーロをデズが仕留め、その腹の中から大量の金貨を回収することに成功した。そこへ現れたナタリーに口止め料として取り分を要求され、財宝は三等分されることとなった。

明かされた父親の正体と拭えぬ罪悪感

釈放されたじいさまと面会したマシューは、手紙を手がかりに追及し、エイプリルの父親が『魔侠同盟』の金庫番として身を落としていたエルトン(本名モーリス)であった事実を突き止めた。じいさまから渡された似顔絵を見たマシューは、彼こそがかつて自分が薬の実験台にして死に至らしめた路上の男であったことを知り、自らの手で親子の再会を永遠に奪ってしまった現実に打ちのめされた。

第五章 大地から奈落の底が見えて

サマンサの告白と休戦の対話

マシューは呼び出しの手紙に従い、『黄金の馬車亭』を訪れた。女将のサマンサはマシューの前でザリガニ型の『伝道師』サムへと変貌し、大地母神の勢力に対抗するための共闘を持ちかけてきた。マシューが拒絶すると、サマンサは人間の姿に戻り、アルウィンが以前のように力を使えば命を落とすと警告を残して去っていった。

終章 幽冥と夜を生み出す

『黄金の馬車亭』の密談とナタリーの裏切り

酒場の地下にある隠し部屋へ忍び込んだマシューは、サマンサとある客の密談を盗み聞きした。客は手に入れた聖遺物『ロンバルディの鋏』を差し出し、迷宮攻略のための強力な手駒を要求していた。その客の声の主は、かつての仲間であるナタリーであった。ナタリーが太陽神に忠誠を誓う言葉を口にした瞬間、マシューは激しい絶望に襲われ、物音を立てて逃走した。

侍女となったナタリーとヴィンセントの追及

放心状態で酒を飲んだ帰り道、マシューはエイプリルを乗せた馬車に出くわした。そこへ現れたのは、エイプリルの新たな侍女兼護衛として雇われたナタリーであった。ナタリーはマシューに口止めを迫り、昔の名である「マデューカス」と呼びかけた。馬車が去った直後、背後から現れたヴィンセントがその名を聞き咎め、マシューが伝説の『巨人喰い』であるのかと激しく問い詰めてきた。

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