【結論】
評価:★★★☆☆(3.5/5)
※視覚的イメージの難易度高
シリーズ内での立ち位置:全3巻の中巻(ダバオ脱出~アデレートへ)
最大の見どころ:ハサウェイの「内面の揺らぎ」と、連邦軍による「オエンベリの虐殺」の生々しい描写
注意点:MSの形状や新キャラクター、複雑な勢力図(偽マフティーや不法居住者など)が文字だけではイメージしづらく、読解にエネルギーを要する
【読むべき人】 ・富野由悠季特有の「正義と悪で割り切れない」重厚な政治サスペンスを好む人 ・映画版を視聴済みで、カットされた心理描写や背景を補完したい人
【合わない人】 ・「連邦 vs ジオン」のような単純明快な対立構造や、爽快なロボットアクションを求めている人 ・「メッサー」や「ケッサリア」などの機体名を聞いて、具体的な形状が脳裏に浮かばない人
【この記事の価値】 小説版特有の「複雑さ」や「イメージのしにくさ」を率直に解説し、映像作品(映画)を視覚的な補助として活用する読み方を提案している点にある。
物語の概要
■ 作品概要
本作は、富野由悠季による小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』全3巻の中巻である。宇宙世紀0105年を舞台に、腐敗した地球連邦政府に対し、反連邦組織「マフティー」が武力抵抗を行う様を描く。 上巻でのダバオ脱出後、ハサウェイ・ノア率いるマフティーはオーストラリア大陸へと戦場を移す。連邦軍による不法居住者への弾圧と、オエンベリでの虐殺行為を目の当たりにし、ハサウェイは連邦政府への怒りを新たにする。物語は、連邦中央閣僚会議が開催されるアデレートへの進軍と、ライバルであるケネス大佐との駆け引き、そして揺れ動くハサウェイの心情を中心に展開する。
■ 主要キャラクター
ハサウェイ・ノア(マフティー・ナビーユ・エリン): 本作の主人公。マフティーのリーダーとしてΞ(クスィー)ガンダムを駆り、アデレート会議阻止のために奔走する。組織の同志であるケリアがいながらも、敵側の加護下にあるギギに強烈に惹かれ、その矛盾した感情に苦悩する。
ギギ・アンダルシア: 本作のヒロイン。ダバオでハサウェイの前から姿を消した後、再びケネスのもとへ戻る。その鋭い直感と予言めいた言動でキルケー部隊の「勝利の女神」として扱われるが、最終的に戦場でハサウェイに救出され、彼のガンダムに同乗することとなる。
ケネス・スレッグ: 地球連邦軍キルケー部隊の司令官。アデレート会議の警備責任者として、ギギの「運」すらも作戦に利用し、マフティーを追い詰める。軍人としての冷徹さと、大人としての柔軟な思考を併せ持つ。
レーン・エイム: ライバル機「ペーネロペー」のパイロット。若さゆえの慢心はあるものの、着実に実戦経験を積み、マフティーの支援船を撃沈するなどの戦果を挙げる。
ケリア・デース: マフティーの構成員であり、ハサウェイのパートナー。ハサウェイの心がギギに向いていることを敏感に察知し、二人の関係には埋めがたい溝が生まれつつある。
■ 物語の特徴
中巻の最大の特徴は、激化する戦闘と並行して描かれる、ハサウェイの「内面の揺らぎ」である。本来のパートナーであるケリアと、宿敵ケネスの側にいるギギとの間で、ハサウェイの心が引き裂かれる様が、富野由悠季特有の緻密な心理描写で綴られている。 また、「オエンベリの虐殺」のエピソードでは、連邦軍による民間人への残虐行為が生々しく描かれており、マフティーがテロリズムに走らざるを得ない世界の残酷さと、正義の曖昧さが浮き彫りになっている。単なるロボットアクションにとどまらない、重厚な政治サスペンスとしての側面も本作の魅力である。
書籍情報
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 中
著者:富野 由悠季 氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:スニーカー文庫
発売日:1990年3月1日
ISBN:9784044101329
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あらすじ・内容
宇宙世紀0100年代。反地球連邦政府組織マフティー・ナビーユ・エリンを率いるハサウェイ・ノアは、スペースシャトルのハイジャック事件を通して、少女ギギ・アンダルシアと出会う。地球に降り、マフティーの本隊と合流したハサウェイは、最新鋭MSのΞ(クスィー)ガンダムを受け取るが、そこには対マフティー部隊のケネス大佐が迫りつつあった──。アニメ界の巨星・富野由悠季が織りなすオリジナル・ガンダム小説第二弾!
感想
登場人物の把握における障壁
読み進めていてまず直面したのは、キャラクターへの馴染みのなさによる混乱である。主人公のハサウェイ、ヒロインのギギ、そして敵対するケネス大佐。
この三人と、さすがに名の知れたブライト・ノア大佐くらいまでは頭に入ってくるのだが、それ以外の人物がどうしても定着しない。
特にマフティー側の仲間や連邦軍の部下たちとなると、名前を見てもピンとこないのが正直なところである。
「ロンド・ベル」のような馴染みある響きがあればまだしも、新しい組織や部隊の中で、誰がどのような役割を担っているのか、整理が追いつかないまま物語が進んでしまうもどかしさがあった。
イメージしづらいモビルスーツ戦
メカニックの描写についても同様の難しさを感じた。
主役機の「Ξ(クスィー)ガンダム」はともかくとして、「メッサー」や「グスタフ・カール」、「ケッサリア」といった機体名が出てきても、具体的な姿が脳裏に浮かんでこない。「ジム」や「ザク」と言われれば即座に形や性能差をイメージできるのだが、本作の機体群にはその前提知識が通用しないため、戦闘シーンの解像度が上がらなかった。
複雑に入り組む勢力図
物語の構造も、かつての「地球連邦対ジオン」のような単純な二項対立ではない点が、理解を難しくしている。
ハサウェイ率いるマフティー、ケネス率いる連邦軍キルケー部隊、そこに不法居住者を摘発するマン・ハンターや、オエンベリに集結した武装集団などが入り乱れる。
さらにややこしいのが、マフティーの名を騙る偽物の軍隊や、それを虐殺する連邦の部隊といった、「正義と悪」では割り切れない泥臭い展開である。
シャアの反乱から十二年が経過しているというのに、世界は落ち着くどころか、むしろ混沌としてぐちゃぐちゃになっている印象を受けた。
この荒廃した空気感こそが本作の味なのだろうが、すっきりとしたわかりやすさは皆無であった。
ギギ・アンダルシアという謎
ヒロインであるギギの行動原理も、相変わらず謎めいている。
香港での生活を唐突に切り上げたり、戦場に近い場所へ移動したりと、その動機が読めない。
周囲から「勝利の女神」などと評されることもあるが、彼女自身が何を考えて動いているのか、その真意は霧の中にあるようだ。
この掴みどころのなさが、物語の不穏さをより一層強めているように思う。
これがニュータイプだと言われたらそうなのかもしれないが…
総括:視覚的な補助を求めて
全体を通して、「誰が」「どこで」「何のために」戦っているのかを把握するのにカロリーを使う読書体験であった。
偽マフティー騒動やオエンベリの虐殺、そこへのケネスの介入など、プロット自体は重厚で複雑である。
小説の文字情報だけでは消化しきれない部分も多く、映像化された映画を見れば、この複雑なパズルももう少し解きやすくなるのではないかと感じた。この中巻は、まさに混迷を極める世界の縮図のような一冊であった。
【追記:映画鑑賞後の再読】
かつて小説を読んだ際は情景が全く思い浮かばなかったが、映画(機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女)鑑賞後に再読すると、不思議と脳内でシーンが鮮明に再生された。
特に印象的だったのは、物語の導入部である。
映画版では冒頭にオエンベリでの凄惨(せいさん)な虐殺シーンが描かれていたが、小説版にその描写はなく、すでに事態が進行した後の場面から始まっていた。
初読時は、時系列や状況が掴めず混乱したものだが、映画であの映像を見ていたおかげで、小説の空白部分が補完され、オエンベリ軍の連中が何を必死にやっていたのかが理解できた。
マフティーには学生運動のようなノリがあり、どこか青臭さが漂い。
対してオエンベリ軍の連中は、あの凄惨な虐殺の生き残りであるせいか、その言葉の端々に泥臭い執念のようなものを感じ取ることができた。
読み進める中で痛感したのは、映画版の再現性の高さと、巧みな構成変更である。
映画独自のアレンジだと思っていたシーンが実は原作通りだったり、逆に原作にあると思っていたシーンが映画の演出だったりと、両者を比較することで新たな発見がいくつもあった。
映画という「正解映像」を補助線として頭に入れて、ようやくこの物語を十全に楽しめたと言える。
裏を返せば、この難解な小説を単体で読み解くことがいかに困難であるか、改めて思い知らされた次第である。
現在は劇場での鑑賞に限られるため、どうしても記憶に頼る部分が多い。 いずれAmazon Primeなどで配信が開始され、繰り返し視聴が可能になれば、その都度細部まで見返し、より詳細な考察を書き記したいと考えている。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
1. ハサウェイ・ノア(マフティー・ナビーユ・エリン)
- 所属:マフティー・ナビーユ・エリン(リーダー)
- 階級:なし(リーダー / パイロット)
- 活躍:
- 支援船ヴァリアントから「Ξ(クスィー)ガンダム」で出撃し、オエンベリへ向かう。
- オエンベリにてキンバレー部隊のモビルスーツと交戦し、グスタフ・カール3機を撃墜、SFSケッサリアを捕獲・破壊する。
- オエンベリの虐殺現場を確認し、捕虜としたキンバレー・ヘイマン大佐を現場に引き合わせる。
- 私設軍のリーダー、ファビオ・リベラと接触し、ダーウィン空港への陽動攻撃を依頼して協力体制を敷く。
- エアーズ・ロック(ウルル)にて、キルケー部隊の偵察隊を迎撃。グスタフ・カール2機を撃破し、SFSケッサリアに同乗していたギギ・アンダルシアを空中で救出する。
2. ギギ・アンダルシア
- 所属:民間人(ケネス・スレッグの協力者 / 「勝利の女神」)
- 階級:なし
- 活躍:
- ダバオのコテージから突然姿を消し、ホンコンのアパートメントを引き払って再びケネスのもとへ戻る。
- ダバオ基地にてメイス・フラゥワーと対峙し、挑発的な言葉で彼女を追い出す。
- ケネスと共にアデレートへ向かう途中、「マフティーの船が沈む」などの予言めいた直感を的中させ、キルケー部隊内で「勝利の女神」として認知される。
- ケネスの提案でエアーズ・ロックへ観光名目の偵察に出るが、戦闘に巻き込まれ、ハサウェイのガンダムによって救出されコックピットに収まる。
3. ケネス・スレッグ
- 所属:地球連邦軍(キルケー部隊司令)
- 階級:大佐
- 活躍:
- アデレート会議の警備責任者として、部隊の指揮と政治的調整に奔走する。
- 戻ってきたギギを受け入れ、彼女の直感を「運」として作戦に取り入れる。
- ギギの「この空港は嫌い」という言葉に従い、ダーウィン空港からの離陸を早め、直後のマフティー(ファビオ隊)による襲撃から間一髪で逃れる。
- ギギをエアーズ・ロックへの偵察(観光)へ送り出す判断を下す。
4. レーン・エイム
- 所属:地球連邦軍(キルケー部隊)
- 階級:中尉
- 活躍:
- 修理された「ペーネロペー」に搭乗し、ビノエ・ハーバー沖でマフティーの支援船「ヴァリアント」を撃沈する戦果を挙げる。
- ギギを「お守り」として作戦に参加させるケネスの方針には懐疑的であり、反感を抱いている。
5. ケリア・デース
- 所属:マフティー・ナビーユ・エリン
- 階級:記述なし(地区支援要員 / 情報収集)
- 活躍:
- 出撃前のハサウェイと会話するが、ギギの存在によるハサウェイの変化を感じ、心の溝を深める。
- 情報収集のため小型ジェットでダーウィンへ先行潜入する。空港襲撃の混乱に乗じて脱出する。
6. キンバレー・ヘイマン
- 所属:地球連邦軍(キンバレー部隊・前司令)
- 階級:大佐
- 活躍:
- オエンベリにて、マフティーを騙る私設軍や住民に対し、モビルスーツを用いた大量虐殺を行う。
- ハサウェイの急襲により捕虜となり、虐殺現場を見せつけられるが、自身の行為を「見せしめ」「報復」として正当化する。
7. ファビオ・リベラ
- 所属:オエンベリ私設軍(偽マフティー軍)
- 階級:リーダー
- 活躍:
- オエンベリでの虐殺を生き延び、ハサウェイと対面。マフティーを騙ったことを認めつつ、独自の反連邦理念を語る。
- ハサウェイの依頼を受け、残存兵力を率いてダーウィン空港を襲撃し、民間輸送機を奪取して陽動作戦を成功させる。
8. エメラルダ・ズービン
- 所属:マフティー・ナビーユ・エリン
- 階級:記述なし(パイロット)
- 活躍:
- メッサーに搭乗し、オエンベリ攻略戦に参加。虐殺現場の生存者保護にあたる。
9. ブライト・ノア
- 所属:地球連邦宇宙軍(ロド・ベル隊 / 独立第13部隊)
- 階級:大佐(艦長)
- 活躍:
- ロンデニオンにて、退役後のレストラン経営を妻ミライと計画していたが、オエンベリの事件を受け、急遽地球への降下命令を受ける。
- 作戦終了後の退役を条件に出撃を承諾し、息子ハサウェイに会えるかもしれないと予感する。
10. ハンドリー・ヨクサン
- 所属:地球連邦政府 刑事警察機構
- 階級:長官
- 活躍:
- アデレートにて、オエンベリの虐殺映像が流出した件への対応に追われる。
- 政府の威信を守るため情報統制を図る一方、現場を知らない軍高官に対し、ブライト・ノアのような実戦経験者の投入を要請する。
11. メイス・フラゥワー
- 所属:民間人(客室乗務員)
- 階級:なし
- 活躍:
- ダバオのケネスのもとを訪れるが、居合わせたギギと対立。ギギの露骨な挑発に激昂して平手打ちを見舞い、その場を去る。
12. ジュリア・スガ
- 所属:マフティー・ナビーユ・エリン
- 階級:記述なし(メカニック / パイロット)
- 活躍:
- ガンダムの最終整備を担当。その後、ケリアを乗せた小型機を操縦しダーウィンへ向かう。
13. ローウェスト・ハインリッヒ
- 所属:マフティー協力者
- 階級:記述なし(地上支援責任者)
- 活躍:
- エアーズ・ロック近郊の合流ポイントにて、ハサウェイたちの補給と支援を行う。敵襲に際してはトレーラー隊を指揮して迅速に撤退する。
14. イラム・マサム
- 所属:マフティー・ナビーユ・エリン
- 階級:幹部
- 活躍:
- ハサウェイと共にガンダムのコックピットに同乗し、作戦の補佐や情報分析を行う。
15. ミライ・ヤシマ(ミライ・ノア)
- 所属:民間人
- 階級:なし
- 活躍:
- ロンデニオンにて夫ブライトを送り出す。オエンベリの事件やモビルスーツ戦の残酷さについてブライトと語り合う。
登場したモビルスーツ
1. Ξ(クスィー)ガンダム
- パイロット:ハサウェイ・ノア(マフティー・ナビーユ・エリン)
- 識別番号:記述なし(通称:ヨガンダム、ガンダム)
- 活躍:
- 支援船ヴァリアントから発進し、水中での気密・バリアーチェックを経て離陸。
- オエンベリ攻略戦:ミノフスキー・クラフトによる飛行性能を活かし、キンバレー部隊のグスタフ・カール部隊(12機)を翻弄。空中戦で3機を撃墜し、後退する敵機の足のバーニアを狙撃して無力化する。さらに離陸しようとした敵SFSケッサリアを破壊および捕獲する。
- エアーズ・ロック(ウルル)の戦い:マフティーの潜伏地点に接近したキルケー部隊の偵察隊(グスタフ・カール2機)を迎撃。地形とロケット・ランチャーの罠を利用して1機を爆砕し、もう1機をビーム・サーベルで腕部ごと切り裂き撃破する。その後、ギギが乗るケッサリアに取り付き、彼女を救出する。
2. メッサー
- パイロット:ガウマン・ノビル、エメラルダ・ズービン、ロッド・ハイン、ハーラ・モーリー、ゴルフ 他
- 識別番号:Me2R(メッサーMe2R)
- 活躍:
- オエンベリ攻略戦:6機がギャルセゾンから展開し、グスタフ・カール部隊と交戦。ガンダムの支援もあり、敵部隊を圧倒する。
- 大陸横断中の夜戦:第3ギャルセゾン隊(ヘンドリックス隊)所属のロッド機とモーリー機が、合流ポイント手前でキルケー部隊の待ち伏せに遭い、撃墜される(ハサウェイが残骸を確認)。
3. グスタフ・カール
- 所属:地球連邦軍 キンバレー部隊 / キルケー部隊
- 識別番号:FD-03
- 活躍:
- オエンベリ攻略戦(キンバレー部隊):12機で迎撃に出るが、Ξガンダムとメッサー隊に敗北。3機のみが逃走する。オエンベリの虐殺において、人間を踏み潰すなどの残虐行為に使用された痕跡が残る。
- エアーズ・ロック偵察(キルケー部隊):2機がケッサリアに搭載されて偵察に出るが、Ξガンダムの奇襲を受け、何もできずに2機とも撃破される。
4. ペーネロペー
- パイロット:レーン・エイム中尉
- 識別番号:記述なし
- 活躍:
- ヴァリアント撃沈:ビノエ・ハーバー沖合にて、マフティーの支援船ヴァリアントを捕捉し、撃沈する(ハサウェイの視点外での出来事として報告される)。
- 前巻での撃墜による修理が完了し、実戦に復帰している。
関連機体(SFS、輸送機、艦船など)
1. ギャルセゾン
- 用途:マフティー用サブ・フライト・システム(SFS)
- 活躍:
- メッサーを搭載し、オーストラリア大陸への侵攻作戦を支える。
- ヘンドリックス・ハイヨー機は夜襲でMSを失いながらも単機で脱出に成功する。
- ファビオ・リベラらオエンベリ軍残党の輸送にも使用される。
2. ヴァリアント
- 用途:マフティー支援船
- 活躍:
- オーストラリア近海までMS部隊を輸送・発進させる。
- ビノエ・ハーバーでの補給後、沖合に出たところでペーネロペーに撃沈される。
3. シーラック
- 用途:マフティー支援船(ヴァリアントの僚船)
- 活躍:
- ヴァリアントと共にMS部隊(ガウマン隊など)を発進させ、別ルートでの支援を行う。
4. ケッサリア(ベース・ジャバー)
- 用途:地球連邦軍用サブ・フライト・システム
- 活躍:
- オエンベリ:グスタフ・カールの運搬に使用。逃走を図った機体がΞガンダムに破壊、および捕獲される。
- エアーズ・ロック:ギギ・アンダルシアを乗せて「観光」名目で偵察に出る。護衛のMSを失った後、Ξガンダムに取り付かれ、クルーとギギを降ろされた後、ブリッジを破壊される。
5. ビッグ・キャリアー
- 用途:地球連邦軍 大型輸送機
- 活躍:
- ケネスやギギ、連邦政府高官の移動に使用される。
- ダーウィン空港にて、オエンベリ軍残党(フェデリコ隊)の襲撃を受け、駐機中の2機が破壊される。
6. 民間輸送機(奪取機)
- 用途:オエンベリ軍(ファビオ一派)の移動手段
- 活躍:
- ダーウィン空港を襲撃したフェデリコたちが奪取し、追撃を振り切って内陸へ逃走する。
出来事一覧
1 スタンディング ポジション
マン・ハンターによる摘発
- 当事者: マン・ハンター(不法居住者摘発部隊) vs 地球の不法居住者
- 発生理由: 連邦政府の政策により、不法居住者を摘発し、隕石採取などの仕事へ強制移送するため。
- 結果: 乱暴な手法で摘発が行われ、陰口を叩かれる存在となっている。
レーン・エイムの撃墜(回想)
- 当事者: レーン・エイム(ペーネロペー) vs 新型のガンダムもどき(ハサウェイ)
- 発生理由: マフティー・ナビーユ・エリンとの戦闘。
- 結果: ペーネロペーが撃墜された。
2 ケリア・デース
ケリアとの口論
- 当事者: ハサウェイ・ノア vs ケリア・デース
- 発生理由: ハサウェイがギギ・アンダルシアと接触し、彼女への関心を否定しきれない態度を見せたことに対し、ケリアが「マフティーに祭り上げられている」と皮肉り、ハサウェイの変化や嘘を指摘したため。
- 結果: ハサウェイは「好きなものでも嫌いになる」と言い返し、気まずい雰囲気(溝)が生まれたままケリアが立ち去る。
クェス・パラヤ殺害(回想)
- 当事者: ハサウェイ・ノア vs クェス・パラヤ
- 発生理由: 「シャアの反乱」におけるモビルスーツ戦の混乱。
- 結果: ハサウェイは初恋の少女(クェス)を自分の手で殺害した。
4 パススルー キャナル
キンバレー部隊による追撃
- 当事者: Ξ(クスィー)ガンダム(ハサウェイ) vs キンバレー部隊(モビルスーツ)
- 発生理由: オエンベリに向かうハサウェイたちの部隊を、キンバレー部隊が追尾・攻撃したため。
- 結果: ハサウェイはミサイル等で応戦し、敵の攻撃を防ぎつつオエンベリへ降下する。
オエンベリの虐殺
- 当事者: キンバレー部隊 vs オエンベリに集結した私設軍隊・住民
- 発生理由: キンバレー部隊による不穏分子(マフティーを騙る集団)の掃討作戦。
- 結果: 数千人規模(一説には数万)が殺害され、死体が放置される惨状となった。
マフティー対キンバレー部隊の空中戦
- 当事者: マフティー部隊(ガンダム、メッサー6機) vs キンバレー部隊(グスタフ・カール12機)
- 発生理由: マフティー部隊がオエンベリの惨状を確認し、敵部隊を排除しようとしたため。
- 結果: ガンダムの性能と連携により、グスタフ・カール3機を撃墜、他もメッサーが撃墜し、逃げ延びたのは3機のみという一方的なマフティー側の勝利となった。
5 マーク オブ オエンベリ
グスタフ・カールの狙撃
- 当事者: Ξガンダム(ハサウェイ) vs グスタフ・カール(後退中)
- 発生理由: 敵機が後退中であったため、無力化を図った。
- 結果: ビーム・ライフルで足のバーニアを狙撃され、機体は制御を失いクリークに落下した。
ケッサリアの破壊と捕獲
- 当事者: Ξガンダム(ハサウェイ) vs ケッサリア(連邦軍ベース・ジャバー)2機
- 発生理由: オエンベリから離陸し逃走しようとしたため。
- 結果: 1機は直撃を受けて爆発、もう1機はガンダムに乗り移られて着陸を余儀なくされ、クルーは武装解除させられ捕虜となった。
捕虜への拷問と処刑(発見)
- 当事者: キンバレー部隊 vs オエンベリ軍の捕虜
- 発生理由: キンバレー部隊による捕虜への尋問・見せしめ。
- 結果: 爪を剥ぐ、手首を針金で縛る、焼き殺すなどの拷問が行われ、女性一人を除き全員死亡していた。
6 マフティー・ナビーユ・エリン
キンバレー・ヘイマンへの尋問
- 当事者: ハサウェイ・ノア vs キンバレー・ヘイマン(捕虜)
- 発生理由: オエンベリでの虐殺行為について問いただすため。
- 結果: ヘイマンは「相手もパイロットを切り刻んだ」「見せしめだった」と弁解する。
ファビオ・リベラとの対立
- 当事者: ハサウェイ・ノア/ガウマン vs ファビオ・リベラ(オエンベリ軍リーダー)
- 発生理由: マフティーの名を騙ったこと、作戦の杜撰さ、今後の協力関係についての意見の相違。
- 結果: 互いに批判し合うが、最終的にハサウェイが「アデレートでの閣僚会議」という情報を提示し、別行動ながらも協力する方向で話が終わる。
女性捕虜への性的暴行(証言)
- 当事者: キンバレー部隊(モビルスーツ) vs 女性捕虜(メイホウ)たち
- 発生理由: 掃討作戦および捕虜への陵辱。
- 結果: モビルスーツで踏み潰す、握り潰すなどの行為が行われ、女性たちは「遊ばれた」と証言した。
10 アプローチ ウォーク
ダーウィン空港襲撃
- 当事者: オエンベリ軍(ファビオ、フェデリコ等) vs ダーウィン空港守備隊
- 発生理由: 輸送機を奪取するため(ハサウェイによる陽動作戦の依頼も含む)。
- 結果: 空港に迫撃砲とミサイルが撃ち込まれ、キャリアー2機が炎上、空港ビルが半壊。オエンベリ軍は民間輸送機を奪取して離脱に成功した。
ヴァリアント撃沈
- 当事者: ペーネロペー(キルケー部隊) vs ヴァリアント(マフティー支援船)
- 発生理由: キルケー部隊による索敵と攻撃。
- 結果: ヴァリアントはビノエ・ハーバー沖合で撃沈された。
11 ガール アンド ウーマン
ギギとメイスの衝突
- 当事者: ギギ・アンダルシア vs メイス・フラゥワー
- 発生理由: メイスが「中年おじさん(ケネス)が相手なの?」と皮肉を言ったのに対し、ギギがケネスとの性的な行為を具体的に示唆して挑発したため。
- 結果: メイスがギギの頬を平手打ちし、部屋を出て行った(その後、メイスはホンコンへ帰る)。
13 インフォメーション
虐殺報道を巡る政治的圧力
- 当事者: ハンドリー・ヨクサン vs マクガバン大臣
- 発生理由: オエンベリでのモビルスーツによる虐殺映像がテレビ放送され、連邦政府の威信に関わると大臣が狼狽したため。
- 結果: ヨクサンは報道機関への圧力や捏造扱いでの処理を示唆して大臣をなだめたが、内心では大臣を軽蔑している。
14 ダメージ イン ダークボトム
マフティー部隊への夜襲
- 当事者: キルケー部隊(モビルスーツ) vs マフティー第3ギャルセゾン隊(ヘンドリックス、ロッド、モーリー)
- 発生理由: 合流ポイントへ向かうマフティー部隊が敵に捕捉されたため。
- 結果: マフティー側のメッサー2機(ロッド機、モーリー機)が撃墜されパイロットが死亡。敵側もグスタフ・カール1機とケッサリア1機を損失した。
17 ウルル
エアーズ・ロックでの戦闘
- 当事者: Ξガンダム(ハサウェイ) vs キルケー部隊(グスタフ・カール2機、ケッサリア1機)
- 発生理由: 敵偵察部隊がマフティーの潜伏地点(エアーズ・ロック)に接近したため、ハサウェイが迎撃に出た。
- 結果: ガンダムはロケット・ランチャーの罠とビーム・サーベルを使用し、グスタフ・カール2機を撃破した。
ケッサリアの制圧
- 当事者: Ξガンダム(ハサウェイ) vs ケッサリア(クルーおよびギギ・アンダルシア)
- 発生理由: グスタフ・カール撃破後、逃走しようとするケッサリアをハサウェイが捕捉・制圧したため。
- 結果: ハサウェイが降伏勧告を行い着陸させる。ギギが同乗していることが判明し、彼女とクルーを降ろした後、ケッサリアのブリッジを破壊して無力化した。
18 ナロウ スペース
コックピット内での口論
- 当事者: ハサウェイ・ノア vs ギギ・アンダルシア
- 発生理由: ハサウェイが「ずっと一緒にいたい」と言いつつ、戦闘対応のためにギギを補助シートに移そうとした矛盾に対し、ギギが「嘘つき」「ヤワ男」と非難したため。
- 結果: 一時的に険悪な沈黙(溝)が生まれたが、その後ギギがハサウェイの立場(マフティーであること)を理解し、同情を示したことで和解ムードとなる。
展開まとめ
1 スタンディング ポジション
夕暮れのコテージとギギの内面
ギギ・アンダルシアは、シャワー後の火照った身体を夕方の海風にさらしながら、コテージのベランダで思索に沈んでいた。海の向こうにいるハサウェイ・ノアと、近隣基地にいるケネス・スレッグ大佐という二人の男性の存在が、彼女の感情を静かに刺激していた。自分に何ができるわけでもないと理解しつつ、その狭間にある立場は不安と高揚を同時にもたらしていた。
孤独と距離の選択
ギギは、精神的な従属を避けるため、基地から距離のあるコテージでの滞在を選んでいた。夕食を一人で取りながら、彼女は孤独と我慢が人生の常であることを受け入れていた。情報を得るためにニュースを流すが、新司令官としてのケネスの着任という既知の事実以上の収穫はなかった。
地球連邦の統治とマン・ハンター
地球連邦政府は、地球居住者の管理と反政府勢力の排除を進める中で、過酷な摘発を行う組織を黙認していた。その結果、マン・ハンターと呼ばれる存在が生まれ、ハサウェイが目にした現実となっていた。地球管理の姿勢は、効率を優先するあまり人道を欠くものとなっていた。
マフティーと三人の現在地
反連邦政府組織マフティー・ナビーユ・エリンの活動活発化を受け、ケネスは新型モビルスーツを携えて太平洋管区に赴任していた。一方、前任者キンバレー・ヘイマンは軍功を求めて作戦を継続していた。ギギは、海の向こうのオーストラリアでハサウェイが私設軍と合流するだろうと予測し、ペーネロペー撃墜の噂から彼の関与を直感していた。その夜、ギギ、ハサウェイ、ケネスは、それぞれ異なる場所で同じ運命の線上に立っていた。
2 ケリア・デース
出撃前のヴァリアントと不穏な兆候
ヴァリアントの無線室では、蒸し暑さの中でオエンベリ方面の状況が確認されていた。チャチャイ・コールマンとヨーゼフ・セデイは、通信途絶を深刻視しつつも全滅とは断定できないと判断していた。さらに、ダバオからコワンチョウやホンコンに向けた警察・軍関係の通信増加が報告され、閣僚会議を巡る動きが陽動ではないかという疑念が共有された。ハサウェイ・ノアは出撃を決断し、傍受の継続を指示した。
中央甲板での準備とケリアとの再会
中央甲板では六機のモビルスーツが出動準備を整えつつあり、整備責任者マクシミリアン・ニコライは補修と補給の完了を報告した。そこへケリア・デースが現れ、ハサウェイに本当に出撃するのかと問いかけた。ハサウェイは、キンバレーの動きを確認し、今後のマフティーの活動に活かすためだと説明したが、その言葉はケリアの反発を招いた。
思想と感情の衝突
ケリアは、ハサウェイが主義に囚われ、マフティーに利用されていると指摘した。ハサウェイは組織の力の弱さを理由にそれを受け入れつつも、内心ではケリアへの負い目と苛立ちを抱えていた。ギギ・アンダルシアの存在が、ハサウェイの内面に現実的な欲望を呼び起こし、その変化がケリアとの溝を深めていた。
決定的な言葉と別離
ギギとの関係を問われたハサウェイは公式的な説明を繰り返し、やがて感情的にケリアを突き放す言葉を口にしてしまった。直後に後悔を覚えたものの、関係を修復することはできなかった。ケリアはそれ以上追及せず、割り切った態度でその場を去った。
共有した過去と断ち切れない絆
ハサウェイは、ケリアがかつて自身の主治医同然の存在であり、精神的に支え続けてくれた過去を思い返していた。未成年時に戦争へ巻き込まれた経験、鬱病からの回復、植物観察官として地球に降りた経緯、そして非合法居住者であるケリアとの出会いと共同生活が、彼の人生を形作っていた。
マフティーへの道と現在の葛藤
クワック・サルヴァーとの出会いをきっかけに、ハサウェイは地球連邦政府の実情を知り、マフティーの活動に身を投じた。やがて中枢戦闘員となった彼は、ケリアから距離を取らざるを得なくなった。ハサウェイはその過去を否定することなく、ただ一つ、ギギという存在を自分の中でどう扱うべきかという問題に直面していた。
3 ヴァリアント
南下する二隻と作戦の全体像
ヴァリアントは、改装された鉱物運搬船シーラックと随伴しながら、バーサス島沿いにチモール海を南下していた。さらに南方には、モビルスーツとベース・ジャバーを支援する二隻の船も展開しており、マフティーは限られた戦力で広域支援体制を敷いていた。階級意識のない船内の雰囲気は、彼らが目指す思想そのものを体現していた。
オエンベリへの出撃判断
ハサウェイ・ノアたちの部隊は、日没までにオエンベリへ到達し、キンバレー部隊が掃討した戦場を確認する任務を負っていた。場合によっては交戦、さらにキルケー部隊の増援を招く危険もあったが、連邦軍の展開を牽制しなければ、今後の作戦に支障を来すと判断された。私設軍との直接的な関係がなくとも、反連邦政府運動の一角として無視できない状況であった。
発進とジュリアの忠告
シーラックとヴァリアントからギャルセゾンが発進し、計六機のモビルスーツが空へ上がった。最後に残ったハサウェイのガンダムは、メカニックのジュリア・スガによる最終整備を受けていた。彼女は作戦の無謀さを指摘しつつも、整備の成果には自信を見せた。ハサウェイは忠告を受け止めながらも、現地確認の必要性を譲らなかった。
水中試験と離陸
ガンダムはヴァリアント船尾から海中へ滑り込み、水圧下で機体の気密性とバリアー性能を確認した。初めての水中投入に緊張しつつも、整備の確かさは証明された。機体は再び水面へ浮上し、疾走から跳躍して空中へと移行し、先行するギャルセゾンを追って姿を消した。
ケリアの不安と決意
ケリア・デースは、その光景を見送りながら、作戦の危険性を強く感じていた。ブリッジでイラム・マサムに問いただしたものの、明確な安心は得られなかった。彼女は未練がましさを自覚しつつ、自身を前線から外す任務変更を艦長に願い出た。
補給と時代の教訓
ヴァリアントとシーラックは別れ、それぞれ次の補給地点へ向かった。長距離通信が制限される時代において、複数の合流地点を想定する堅実な準備は不可欠であった。情報技術への過信が危機対応力を鈍らせる歴史を踏まえ、マフティーは不完全ながらも現実的な運用を続けていた。ヴァリアントは静かな海面を進み、次の任務地へと接近していった。
4 パススルー キャナル
ハサウェイの葛藤と確信
ハサウェイ・ノアは、ケリア・デースに冷たく接してしまった自分を自業自得だと感じつつも、ギギ・アンダルシアとの再会を疑っていなかった。その漠然とした確信は、ギギの強烈な存在感と人を惹きつける性格によるものであり、若さゆえの危うさも自覚していた。
オエンベリへの侵入経路
ハサウェイたちは高度百五十メートルを保ち、二つの島の間の狭い海峡を抜けてオエンベリへ接近した。東側の山波を盾にするのが通常と読まれる中、あえて危険な侵入方位を選択し、キンバレー部隊の想定を外す作戦であった。
初接触と攻撃開始
湿地帯に入ったハサウェイは、煙や人家の痕跡からオエンベリの存在を確認した。偵察中、ミサイル攻撃を受けたことで、敵がキンバレー部隊所属であると判断し、即座に反撃を行った。空中と地上で火球が発生し、戦闘は本格化した。
映像解析と惨状の把握
ガンダムとギャルセゾンは一時離脱し、無人の川底で合流した。解析された映像から、オエンベリに集結していた私設軍隊はほぼ壊滅状態であり、郊外のテント村も含め多数の死体が確認された。キンバレー部隊による大量殺戮は事実であり、誇張ではなかった。
占拠を巡る判断
残存する敵モビルスーツの存在が確認され、正確な情報を得るためにはオエンベリの占拠が必要と判断された。正面戦闘となることを承知の上で、パイロットたちは出撃を望み、士気は高まっていた。一方で、この時間的ロスこそがケリアの懸念した事態であった。
正面戦闘と勝敗
ガンダムとメッサー部隊は、キンバレー部隊のグスタフ・カールと交戦した。ミノフスキー・クラフトによる飛行性能の差は決定的で、ハサウェイは空中戦で敵機を次々に撃墜した。戦闘は一方的な展開となり、敵は大きな損害を被って後退した。
追撃と前進
ベース・ジャバーの撤退により、残存敵機は十分な退路を失い、マフティー側はさらに優位に立った。ハサウェイはオエンベリまで押し出すことを命じ、ガンダムを先頭に部隊は前進を続けた。
5 マーク オブ オエンベリ
撤退する敵機への対処
クスィー・ガンダムは、後退するグスタフ・カールを捕捉した。ハサウェイ・ノアは核融合炉の誘爆を避けるため、脚部バーニアのみを精密に狙撃した。推進制御を失った機体は乾燥したクリークに墜落し、戦闘不能となった。その後処理は後続のメッサーに委ねられた。
ベース・ジャバーの撃破と制圧
オエンベリの廃墟から離陸する敵機影を確認したハサウェイは、識別の迷いを断ち切って攻撃を敢行した。連邦軍ベース・ジャバー、ケッサリアの一機を撃破し、残る一機を行動不能に追い込んだ。周囲を味方機で固めた上で、ハサウェイは投降を命じ、士官とクルーを捕虜とした。
惨状の現地確認
制圧後、ハサウェイはオエンベリ郊外へ降下し、現地の状況を確認した。そこには数え切れない死体が散乱し、戦闘というより一方的な殺戮であったことが明白であった。熱帯の環境下で死体は腐敗し、強烈な臭気が漂っていた。
捕虜収容施設の発見
市街の建物内部を調査した結果、そこがキンバレー部隊の拠点であり、私設軍の捕虜が監禁されていた場所であることが判明した。多数の遺体が確認され、生存者は女性一名のみであった。遺体には拷問の痕跡が残されており、事態の異常さを物語っていた。
生存者への対応と怒り
エメラルダ・ズービンらは生存者の保護を優先し、水を与えながら慎重に対応した。ハサウェイはこの状況を前に、連邦軍の行為を阻止する自らの戦いが正当であると強く感じていた。同時に、捕虜とした連邦軍士官たちをこの現場に引き合わせることを決断し、抑えがたい怒りと嫌悪を自覚していた。
6 マフティー・ナビーユ・エリン
ギギとケネスの距離
夕食後、ギギ・アンダルシアはケネス・スレッグからの連絡を受け、翌朝ホンコンへ向かう手配を整えた。仕事を理由に一時離れる意思を示しつつも、関係を断つつもりはなく、互いに軽口を交わしながらも疲労の色は隠せなかった。二人の関係は曖昧な緊張を孕んだまま続いていた。
マフティーとキンバレーの対峙
一方オエンベリでは、捕虜となったキンバレー・ヘイマン大佐がハサウェイ・ノアを前にしても、彼を真のマフティーとは信じきれずにいた。ハサウェイは声や思想を根拠に自らの正体を示そうとするが、ヘイマンは冷笑的に応じ、部下たちも沈黙を守った。
虐殺の論理と軍人の脆さ
キンバレーは、オエンベリで行われた大量殺戮を「見せしめ」だと語り、部下殺害への報復であると正当化した。その言葉に、ハサウェイは軍服を着た大人たちの精神的な脆弱さと、暴力を正当化する思考の危うさを感じ取った。
捕虜の扱いを巡る判断
ハサウェイは拷問を否定し、捕虜を殺さず利用する方針を示した。世論への訴えや捕虜交換といった現実的な価値を見据えつつも、その判断には嫌悪感と割り切れなさが同居していた。
オエンベリ軍との接触
ハサウェイとガウマンは、オエンベリでマフティーを名乗っていた私設軍の生き残りと接触した。リーダー格のファビオ・リベラは反連邦政府の理念を持つ人物であり、一定の統率力を備えていたが、マフティーを騙った行為と杜撰な作戦が惨事を招いた事実は否定できなかった。
理念と現実の断絶
ハサウェイは、オエンベリ軍と手を組む可能性を冷静に否定した。散った生存者を支える物資も力もなく、互いに未来はないと判断したためである。理念を共有しても、行動と責任を分かち合えない以上、共闘は成立しなかった。
情報戦と進路の分岐
オエンベリ軍は、閣僚会議がコワンチョウに移るという情報を提示したが、ハサウェイはそれを疑い、従来どおりアデレートを主目標とする判断を変えなかった。双方の認識は交わらず、決定的な溝が浮き彫りとなった。
撤退と後味の悪さ
最終的にマフティーはオエンベリから撤退し、捕虜となった連邦軍兵を回収した。生存していた女性捕虜は死亡し、埋葬はオエンベリ軍に任せる判断が下された。ハサウェイは、正義と現実の狭間で割り切れない感情を抱えたまま、次の戦場へ向かうことになった。
7 ギギ & ケネス
マフティーを逃した朝
翌朝、約束どおりコテージを訪れたケネス・スレッグ大佐は、オエンベリでマフティーを取り逃がしたことを淡々と語った。悔しさよりも状況整理を優先する口調であり、ペーネロペーの修理やレーン・エイムの実戦経験といった成果を前向きに捉えていた。
軽口の裏にある緊張
ギギ・アンダルシアは、作戦の遅れを指摘しつつも軽やかに応じ、ケネスの立場と負担を鋭く言い当てた。ケネスは無自覚に口が軽くなり、閣僚護送や部隊運用の煩雑さを語ってしまう。二人の会話は冗談めいていながら、互いの感性を探り合う緊張を含んでいた。
ケネスの内面
ケネスは、若いギギのためにスーツケースを運ぶ自分を道化だと理解しつつも、その行為を肯定していた。戦場に身を置く現実が、彼の中に眠っていた享楽的な感情を露わにし、ギギや過去に出会った女性への思考が交錯していた。
感性と理屈の応酬
会話は次第に抽象的な領域へと移り、ギギは「女の勘」、ケネスは「男の理屈」について語り合った。互いに説明できない感覚を前にしながら、相手の思考の深さを直感的に感じ取っていく。
ニュータイプという話題
宇宙と地球、人間の資質についての話題から、ニュータイプの概念にまで話は及んだ。ケネスは宗教ではなく、人間が本来持つ資質としてそれを捉え、ギギはその考えに興味を示す一方で、彼の内にある攻撃性や瞬発力にも言及した。
ハサウェイの影
ギギは何気なくハサウェイ・ノアの住所を求め、ケネスはそれを渡した。マフティーとハサウェイを重ねる思考が一瞬よぎるものの、ケネスはそれを否定し、冗談めかして流した。
ホンコンへの出発
車は基地に入り、ギギはキルケー部隊の輸送機でホンコンへ向かった。機内では官僚たちがアデレートの名を口にしており、ギギは無関心を装いながらも、その情報を聞き逃さなかった。物語は、静かな移動の中で次の局面への予感を残して締めくくられる。
8 アパートメント
ホンコン到着と警戒
ギギ・アンダルシアはホンコン空港に到着し、官僚たちの喧騒を避けるようにキルケー部隊の若い少尉の護衛を受けた。少尉は治安の悪化と特権的行為への反感を警告し、事前のチップや慎重な行動を勧めた。連邦政府の締め付けが庶民の苛立ちを招き、報復が特権階級に向かう現実が語られた。
都市の変貌と階級意識
リムジンで市内へ向かう途中、ギギは旧世紀の遺跡のような高層ビル群と人の多さに驚嘆した。運転手は人口が最盛期の十分の一であると説明し、地球回帰を強める連邦政府の政策と高級住宅地の存在に触れた。ギギは自らを「愛人」という立場に置き、階級の論理から距離を取る発言で場の緊張を和らげた。
厳重な住居と福祉社会の影
到着したアパートメントは人手による管理を誇示する厳重な施設であった。管理体制や機械的な錠前の選択は、雇用創出と階級の象徴でもあった。語られる福祉政策の歴史は、無条件の保護が人の自立や文化を損ない、最終的に消滅を招いたという反省へと至る。労働の必要性が再評価される時代認識が示された。
居住空間の支配と交渉
ギギは最上階の眺望を確認し、内装や家具の変更を即断即決で指示した。壁紙、カーテン、食器に至るまで選別と価格交渉を行い、管理人と業者の癒着を見抜きつつも主導権を握った。短時間で空間を「階級に属する場」として整える手腕は、彼女が評価される資質そのものであった。
規律の行使と人の選別
配膳に来た中年女性の無愛想な態度と露骨なチップ要求に対し、ギギは即座に解雇を決断した。退職金を提示し、管理人にも人選の厳格化を命じる。これは冷酷さではなく、空間と人の質を維持するための仕事であり、彼女の役割であった。
孤独な夜と記憶
夜景を見下ろしながら一人で食事を済ませ、カタログで家具を選び、発注を終える。ようやく浴室で衣服を脱ぎ、ハサウェイ・ノアの反応を思い出す。彼が今も泥にまみれているだろうと想像しつつ、この贅沢が一夜限りかもしれない現実を受け入れ、用意されたダブルベッドの片隅で眠りについた。
9 アンダーウェアー オン ザ ベッド
ヴァリアント帰還と内省
ハサウェイ・ノアたちは明け方にヴァリアントへ帰還した。ガウマンらがシーラックへ向けて南下する一方、ケリアは情報収集のためダーウィンへ送られていた。合理的判断であると理解しながらも、ハサウェイは安堵を覚える自分に嫌悪を抱き、死臭の残る現場の直後に私情で心が揺れる未熟さを痛感していた。
使命と欲望の乖離
マフティーとしての大義を自覚してきたはずのハサウェイであったが、ギギ・アンダルシアの存在は理性を揺さぶり続けていた。彼女を通じてケネス・スレッグという敵を認識できたと理屈を重ねながらも、感情と肉体からの離脱ができない自分を自覚し、修行不足を思い知らされていた。
情勢分析と敵への評価
イラム・マサムとの会話では、ダバオ、ホンコン、コワンチョウを巡る通信と輸送の動きが整理され、陽動の可能性が示された。ケネス着任後のダバオの活発化は評価され、ハサウェイは強敵としての実力を認めることで、戦士としての倫理を再確認していた。弱者を倒すことに価値はなく、対峙すべきは相応の敵であるという信念が語られた。
ギギの朝の衝動
同じ朝、ギギは半ば眠りながらもハサウェイに連絡すべきだと思い立ち、盗聴を警戒して街へ駆け下り、公衆電話から彼の居留地へ電話をかけた。応対したのはアマダ・マンサン教授であり、ギギは軽やかな言葉でアデレートでの再会を伝言として託した。電話が正確につながった事実は、彼女に慎重さを強いる結果となった。
ダバオの虐殺報道
午後、ダバオでの大量殺戮がケーブルテレビのニュースとして短く報じられた。キルケー部隊とマン・ハンターの影が映り、百名を超える死者と多数の逮捕者が伝えられた。ギギはその信憑性を疑いながらも、虚報ではないと直感していた。
アパートメントの準備と決別
家具搬入と内装の突貫作業が終わり、ギギはベランダで一人食事をとった。二週間後に訪れるはずのカーディアス・バウンデンウッデン伯爵を迎える最低限の準備は整ったが、生活の匂いを刻む時間が残されていないことを悟っていた。自分がここへ戻らない未来を理解しつつ、装身具を換金用に身につけ、「まだ少しは生きていたい」と独白する。
去り際の覚悟
守衛や管理人の問いを笑ってかわし、ギギは坂道を下っていった。パトロンへの別れと、自らが死地へ向かうかもしれない予感を胸に抱きながら、午後の陽光の中へ歩み去った。
10 アプローチ ウォーク
ビノエ・ハーバーへの接近と情報整理
ヴァリアントはダーウィン沖を南下し、ビノエ・ハーバーへの潜入を試みていた。ケリア・デースとジュリア・スガは既にダーウィン入りしているはずであったが、補給地点に身を隠すまでは安全な交信ができない状況であった。教授経由の連絡から、ギギの電話により、連邦政府の閣僚会議がアデレートで開催される可能性が高いと判明した。
ギギの存在とハサウェイの動揺
ギギからの間接的な情報は、作戦上の価値を持ちながらも、ハサウェイの感情を揺さぶった。ウェッジ艦長はギギを特別視しなかったが、その評価はハサウェイの内心に小さな傷を残した。電文は即座に焼却され、感情を排した作戦行動が優先された。
敵情分析とアデレートの意味
ファビオ・リベラらがビノエ・ハーバー周辺に展開している可能性が示され、キルケー部隊の輸送活動は陽動と分析された。連邦政府はキルケー部隊と刑事警察機構を用い、アデレートを前進基地かつ将来的な首都と見なしてマフティー壊滅を狙っていると推測された。
補給計画と部隊の覚悟
ビノエ・ハーバーでの補給はベース・ジャバーの脚部延長と補充機の追加が主眼であり、ゴーラーでの増援が期待された。交替要員不足という現実を前にしつつも、全機をアデレートへ移動させる支援体制は整えられた。代償は自己満足のみという厳しい認識が共有されたが、若いパイロットたちは覚悟を示した。
キルケー部隊の出撃とレーンの違和感
一方、キルケー部隊はケッサリア編隊を発進させた。レーン・エイムは、出撃前のケネスが民間人の少女ギギを伴っている光景に強い違和感を覚えた。彼女は隊内で「大佐のお守り」と呼ばれ、愛人でも親族でもない特異な存在として認識されていた。
ギギへの不可解な親近感
レーンは双眼鏡越しにギギを見つめ、理由の分からない親近感を抱いた。美貌や男女関係とは異なる感覚であり、その正体は掴めなかった。やがて編隊は高度を取り、偵察行動を伴いながらオーストラリア大陸へ進出した。
大陸進攻への前兆
紺碧の空と白雲の下、ケッサリア編隊は展開を完了し、マフティーの支援基地を探るための哨戒を開始した。両陣営は、アデレートをめぐる決定的局面へと静かに歩を進めていた。
11 ガール アンド ウーマン
ギギの突然の帰還
オーストラリア進駐を目前に控えた緊迫した時期、ギギ・アンダルシアは忽然とダバオ基地に現れ、伯爵との関係を断ち切ったことを告げた。アデレート会議の警備、陽動作戦、バリアー設備の移送と多忙を極める中での再登場に、ケネス・スレッグは疲労を隠せなかったが、彼女の「運」を無視することもできなかった。
メナド同行の決定
ギギはホンコンに荷物を預けたまま逃げてきたと語り、アデレートへ向かうケネスのキャリアーで途中まで同行することになる。ダバオでの大量殺戮を嫌悪する彼女の感情を受け止めつつ、ケネスは自らの作戦行動と彼女の身の振り方を同時に調整していた。
メイス・フラゥワーとの対峙
執務室でギギは、長身で成熟した雰囲気を持つメイス・フラゥワーと対面した。互いに大人の女としての距離感を測る会話は次第に緊張を帯び、ギギは意図的に挑発的な言葉を投げる。結果として衝突が起こり、メイスは基地を去ることになった。ギギはケネスのそばに残る選択を明確にしたのである。
ケネスとの共犯関係
メイスを追い出したことについて、ケネスはギギを咎めなかった。むしろ彼女の直感と忠告を信頼し、自身の判断の補強として受け入れた。二人の関係は恋愛でも依存でもなく、運勢と作戦を共有する特異な共犯関係として成立していた。
キャリアー搭乗と周囲の反応
ギギはケネスと共にビッグ・キャリアーに搭乗した。士官たちは、同道者がメイスではなくギギであることに戸惑いを見せたが、ギギは慣れた態度で受け流した。無骨な軍用機の内部で、彼女は緊張と疲労の中、眠りに落ちた。
戦果の報告と予言の成就
飛行中、ケネスはギギに最初に報告すべき情報があると告げた。マフティーの船一隻が撃沈されたという知らせであり、それはギギが口にした「水の下に沈む」という予感に合致していた。前席の士官たちもその戦果に沸き、撃沈された船がヴァリアントである可能性が示唆された。
キルケー部隊での認知
ケネスはその場で、ギギ・アンダルシアを部隊に正式に紹介した。彼女の直感が戦果を導いたとして、士官たちは噂に聞いていた存在を実感し、称賛の声を上げた。こうしてギギは、単なる同伴者ではなく、縁起と予見を担う存在として、キルケー部隊に公然と認知されたのである。
12 ディパーチャー フロム ダーウィン
ビノエ・ハーバーでの短時間補給
ケネスが撃沈報告を出すより前、ヴァリアントはビノエ・ハーバーの湾奥へ潜入していた。旧港跡を避け、目立たない入り江に迷彩を施して停泊し、先行していたケリア・デースとジュリア・スガが支援部隊との接触と受け入れ態勢を整えた。湿地に鉄板を敷く程度の簡易設備のため、物資搬送はミノフスキー・クラフトで浮けるクスィーが要となった。ギャルセゾン三機は物資満載となり、ヴァリアントは補給部品を受領して撤退支援任務へ移る手筈であった。
ファビオ一党の合流と作戦取引
補給の最中、ハサウェイの読み通りファビオ・リベラがチャング・ヘイ、フェデリコ・マルティーニを伴って来訪した。ファビオ側はダーウィン空港制圧のためベース・ジャバー貸与を求めたが、マフティー側に余力はないとして拒否された。代わりにハサウェイは、ダーウィンへの即時攻撃と、アデレート周辺での陽動に三十人規模の協力を要請し、マサムが「日中攻撃でコワンチョウ移動を装う」狙いを説明した。携行ミサイルの供与など条件も整い、ファビオ側が実働部隊を出すことで合意が成立した。
ケリア不在の接触と収集情報
ハサウェイとマサムは、ダーウィン潜入班との接触のため低空飛行で対岸の丘へ移動したが、ケリア本人は現れず代理の青年三名が対応した。彼らは、昼までにダーウィン空港へ入ったビッグ・キャリアーの便数、陸戦隊やマン・ハンターの到着、ホンコン系人員の混在を報告し、ダバオ発の「警備強化要請」が欺瞞である可能性を示した。加えて、エレクトロニクス関連の大型機器、とくに大出力トランスが大量に運び込まれている点を不審として挙げ、アデレート側の意図に未知の要素があることが浮上した。
ヴァリアント撃沈と遅れの致命性
ダーウィン側の報告を受けた直後、ビノエ・ハーバー沖へ出たヴァリアントは、キルケー部隊のペーネロペーに撃沈された。ハサウェイは低空飛行で移動していたため、その夜エアーズ・ロック中継点に着くまで事実を知らなかった。決定的な誤算は、ファビオ一党の行動開始が遅れた点にあり、もしダーウィンでケネスのキャリアー到着と同時に空港攻撃が起きていれば、ケネスとギギはそこで行動不能に陥っていた可能性が示唆された。
ダーウィン空港強襲とケネスの早期離陸
実際の攻撃は、ケネスの乗るビッグ・キャリアーが、高官らを乗せた直後に発生した。ギギが「この空港は嫌い」と漏らしたことに、ケネスは即座に反応し、随伴機の積み込みが残る中で強引に離陸を命じた。高官たちは半ば観光気分で抗議しつつも搭乗させられ、ケネス機が地平線へ消えた後、迫撃砲と短距離ミサイルが空港を直撃し、後続キャリアー二機が炎上、空港ビルも半壊した。攻撃隊は民間輸送機を奪取して損耗少なく離脱し、ケリアも混乱の間に郊外の小型空港から北へ脱出した。
政治的説明と「八卦見」の処理
機内で高官たちは「コワンチョウへ向かうマフティーがダーウィンを強襲した」と理解し、輸送力不足のマフティーが輸送機奪取を狙ったというケネスの説明を受けた。さらに予算増額と増援の必要性をケネスは即座に要求し、官僚側も命拾いの実感から一定の支援姿勢を示した。攻撃を予測できた理由を問われると、ケネスは「八卦見」として詳細を曖昧化し、政治の場で扱いにくい真因の提示を回避した。
ギギの「女神化」と部隊心理
上のキャビンでは、士官、とりわけ女性士官たちがギギを囲み、直感の源を尋ねる形で彼女を英雄視し始めていた。ケネスは、ギギが部隊に受け入れられるほど、自身が彼女を同道することへの顰蹙が薄れるため内心で満足した。キャプテンらは「縁起」を口にし、ギギを呼び込んだのはケネスであると持ち上げた。ケネス自身は、ギギを同衾の相手として選ぶ意識は薄く、むしろ大人として扱いやすいメイスを好ましいと感じていたが、ギギがメイスを一言で退けた経緯の荒さも気掛かりとなり、当面はギギを手元に置く判断へ傾いていった。
13 インフォメーション
地球とオーストラリア大陸の歴史的背景
オーストラリア大陸は、旧世紀には開発に消極的であったが、地球汚染問題の深刻化に伴い、先進諸国の都合によって廃棄物の堆積場と化した地域も生まれた。人類が経済拡大と人口増大を優先した結果、もっとも新しい大陸ですら例外ではなく、地球全体が消耗していった過程が示される。ユニバーサル・センチュリーという時代名は、輝かしい未来ではなく、未来を喪失した代償としての宇宙進出を背負う悲壮な響きを帯びている。
地球居住を巡る制度と危機意識
連邦政府が推進する「地球帰還に関する特例法案」は、地球居住を政府認定者のみに限定し、不法居住者を容易に排除可能とするものであった。これはマン・ハンター的行為を合法化し、官僚機構に属する者のみが自由に地球へ住める構造を強化する。世襲化が進む官僚・議員社会の現状と相まって、この制度は明確な差別政策として機能し得るが、法文上は巧妙に隠蔽されている。
マフティーの思想的動機
ハサウェイたちがアデレート会議に執着する理由は、この法案阻止にあった。民意が中央に届かないスペース・コロニー時代において、彼らは閣僚粛清という極端な手段で、世襲と血縁に支えられた体制を揺さぶろうとしている。これは本来、民主的手続きでなされるべき変革であるが、隔絶された宇宙社会ではそれが機能しないという現実が強調される。
アデレートの占拠と警備体制
ハサウェイたちが次の中継地へ移動する頃、アデレートには閣僚と高級官僚が続々と集結し、街は事実上、連邦政府に占拠された。フェスティバル・センターを中心とする厳重な警備体制は、キンバレー・ヘイマン時代から準備され、ケネス・スレッグの主導で完成に近づいていた。この段階で、会議開催地の変更はほぼ不可能となっていた。
オエンベリ虐殺映像と情報統制
サイド1・ロンデニオンのテレビ局SPTVが、オエンベリでの虐殺映像を放送したことで、事態は急変する。映像には、キンバレー部隊のモビルスーツが私兵を制圧する生々しい場面が含まれ、地球と多数のコロニーで同時に受信された。連邦政府は威信失墜を恐れ、捏造報道として封じ込める方針を協議し、情報通信省や大蔵省を通じた圧力を検討する。
官僚機構の内実と危機感の差
ハンドリー・ヨクサン長官は、参謀本部次官ブラッド・レービェ大佐と会談し、現場感覚の欠如と危機認識の甘さに苛立ちを募らせる。キルケー部隊の問題は個人ではなく組織の欠陥であり、実戦経験者の投入が急務であるとして、独立第十三部隊のブライト・ノアの名を挙げる。中央官僚の鈍重さと、差し迫る現実との乖離が際立つ場面である。
静かに進む次の一手
アデレートでは閣僚会議開催を前に、情報統制と軍事配置が同時進行で進められていた。報道を封じ、警備を固め、問題を先送りにする連邦政府の姿勢は、事態をさらに歪めていく兆しを見せる。一方で、ハサウェイたちの行動は、こうした情報の歪みそのものを突く段階へと移行しつつあった。
14 ダメージ イン ダークボトム
闇と炎の交錯
汚染が完全には戻らない大気の下、サザンクロスの星々は漆黒の大地に冷たい光を刻んでいた。しかし静寂は存在せず、閃光と爆音が夜を引き裂く。モビルスーツ同士の短時間の激突は、威嚇と離脱を繰り返しながら、火球と轟音だけを残して闇へと消えていった。やがて野火が起こり、ゴミの堆積した荒地をなぞるように炎が広がっていく。
不吉な予感
ヨガンダムのコックピットで、ハサウェイ・ノアとイラム・マサムは、地平線に広がる野火を目視し、強い違和感を覚えた。自然発火では説明できない炎の規模に、二人は嫌な予感を抱きつつ現場へ向かう決断を下す。風上へ回り込み、炎を押し分けるように接近した彼らの前に現れたのは、無残にも焼け残ったメッサーの脚部であった。
失われた仲間の痕跡
製造番号から、それがモーリーの機体であることを確認した瞬間、ハサウェイの胸を鋭い痛みが貫いた。周囲を捜索するも、他の機体の残骸はゴミと炎に埋もれ、僚機であったロッド・ハインとヘンドリックス・ハイヨーのギャルセゾンの行方も不明なままであった。戦闘の痕跡は、敵の移動経路を示すもののように見え、二人は深追いを避けて合流ポイントへ急ぐ。
エアーズ・ロックでの合流
闇の中での天測飛行の末、エアーズ・ロック近傍の合流地点に到達する。そこで待っていたのは、3ギャルセゾンが無事であるという報告と引き換えに、仲間を救えなかったという痛切な謝罪だった。さらに、輸送艦ヴァリアントが撃沈された事実も知らされ、ハサウェイは次々と失われる仲間の名を胸の内で反芻する。
戦場の現実
敵の追撃を振り切り、冷静に合流を果たしたリックの行動は称賛されたが、それは同時に、戦場がいかに不均衡で苛烈なものであるかを示していた。キルケー部隊との遭遇で、ロッド機とモーリー機が分散配置された結果、各個撃破された経緯が語られ、勝敗と生存が紙一重である現実が浮き彫りになる。
重さを持つ悲しみ
ハサウェイは、仲間を失う痛みが、かつてクェス・パラヤを失った時と同質の「重さ」を伴うことを思い出していた。悲しみは時間とともに薄れるものではなく、沈殿する錘のように心に残り続ける。その感覚に比べれば、ケリアやギギへの感情は、より世俗的で、逃避的な欲望に過ぎないと理解しながらも、己の内に芽生える衝動に嫌悪を覚える。
歪んだ欲情と自覚
闇に沈むエアーズ・ロックの稜線を見つめながら、ハサウェイは自らの業の深さを痛感する。死と喪失に直面するほど、逆説的に生の衝動が顔を出す。その矛盾を「恥」と呟きながらも、彼はなお、重く不均衡な戦いの只中に身を置き続けるしかなかった。
15 ギギズ スプリング
アリス・スプリング到着
エアーズ・ロック北東に位置するアリス・スプリングは、かつての観光拠点から、マン・ハンターの基地を擁する治安拠点へと変貌していた。煌々とした誘導灯に照らされた滑走路へ、ケネス・スレッグとギギ・アンダルシアを乗せたキャリアーが着陸する。ダーウィンでの混乱を受け、ケネスはやむなく立ち寄りを決断していたが、ギギはこの寄港に意味があると断言していた。
予言の再度の的中
到着時、アデレートへ向かう途中だった連邦軍モビルスーツ部隊が、マフティーの部隊と交戦し、二機を撃墜したという報告がもたらされた。一機は損傷のため修理中であったが、戦果そのものは確実であり、結果としてギギの言葉は再び現実となった。士官や役人たちは、もはや彼女の存在を偶然とは見なさず、守護的な存在として受け入れ始めていた。
ギギへの待遇の変化
ギギはミネッチェ・ケスタルギーノ大尉により、池を望むホテルのスイートへ案内された。彼女は予言者ではないと繰り返しながらも、周囲からは「お守り札」のように扱われ、その期待を一身に集めていた。好意と敬意が入り混じった視線の中で、ギギは自分の立場が微妙にずれてきていることを自覚し始める。
内省と葛藤
バス・タブに身を沈めたギギは、ハサウェイ・ノアとケネス・スレッグ、その二人の間で揺れる自身の感情を整理しようとした。ケネスの有能さと安定感を認めつつも、ハサウェイが抱える切迫感と若さに、より本質的な引力を感じていることを否定できなかった。年長者に寄りかかりたい欲望が、自身の選択を曇らせていることも理解していた。
過去の影と選択
ギギは、かつて親交のあったカーディアス・バウンデンウッデン伯爵を思い出し、老いと死、そして人が何を携えて死ねるのかを考える。長く生きることへの執着と、恐れずに死ねる心境の価値。その教訓は今も彼女の中に残っていた。若い時にしかできないことを選ばなければ後悔する、という結論は揺るがなかった。
ケネスとの会話
部屋を訪れたケネスは、連邦政府内部の腐敗やステイタスへの執着を淡々と語る。その現実的な視点は、ギギにとって明快であり、同時に大人の世界の限界を感じさせるものでもあった。ケネスは彼女を気遣いながらも、戦局を見据えた判断を下し続ける指揮官であった。
エアーズ・ロックへの布石
ギギは観光を口実にエアーズ・ロック行きを提案し、ケネスは彼女をケッサリアで向かわせる決断をする。そこには、キンバレー・ヘイマンの行方や、戦局の不確かな要素が絡んでいた。ギギの直感は、すでに次の局面へと向かっており、彼女自身もまた、最終的にハサウェイのもとへ戻る決意を固めつつあった。
静かな決断
ケネスはギギの額に口づけを残し、彼女を送り出す。ギギは一人残された部屋で、自身の選択が間違いではないと再確認する。若さゆえの選択と、避けられない別れ。そのすべてを抱えたまま、物語は次の局面へ進んでいくのである。
16 ボース ロンデニオン
ブライトの地球降下命令
ロンデニオンで静かな生活を準備していたブライト・ノアは、太平洋管区での作戦支援のため、地球への早朝降下を命じられる。退役を前提とした辞職願いを出していたにもかかわらず、実戦経験豊富な艦長という理由で選ばれた措置であった。この作戦終了後に退役を認めるという約束は取り付けていたが、ミライ・ヤシマにとっては寝耳に水の事態であった。
ミライとの対話と現実的判断
ミライは動揺しながらも即座に行動し、予定していたレストラン用物件の内見を前倒しするため、不動産屋に連絡を入れる。かつてホワイト・ベースで操舵手を務めた頃と変わらぬ反射神経が、ここでも発揮されていた。二人は戦友として結ばれた夫婦であり、互いに軍という環境がもたらす過酷さを理解していた。
ブライトの内省と退役後の展望
ブライトは、数々の戦場で部下の死を見続けた経験から、組織そのものが生み出す悪癖は人間の資質が変わらなければ克服できないと結論づけていた。そのため政治の世界に身を投じる意欲はなく、まずは市井の生活に戻り、小さなレストラン経営から人生を再構築しようとしていた。衣食住に関わる仕事こそが、人としての原点だと考えていたのである。
オエンベリ事件への認識
ミライは、オエンベリで起きた虐殺事件に触れ、実戦経験のない指揮官が地上戦で判断を誤る危険性を指摘する。ブライトは、巨大な武力を持つモビルスーツがゲリラ戦に直面した際の制御の難しさを語り、経験不足が残酷な結果を招くことを冷静に分析していた。
ハサウェイへの思い
出撃前、ブライトは作戦終了後に植物実習を行っている島へ立ち寄り、ハサウェイ・ノアに会う可能性を口にする。ミライは不安を抱きつつも、それを表に出さず、夫を笑顔で送り出した。
エアーズ・ロック偵察作戦
一方、地球ではケネス・スレッグ率いる部隊が、ギギ・アンダルシアを同乗させたケッサリアとグスタフ・カール二機をエアーズ・ロック方面へ向かわせる。表向きは偵察であり、実態は縁起担ぎに近い作戦であった。パイロットたちはギギの存在を吉兆として受け止め、軽やかな雰囲気で出撃していく。
レーン・エイムの反発
レーン・エイムは、この判断に強い不信感を抱く。実戦部隊に民間人同然の少女を同乗させることを愚行と断じ、縁起や勘に頼る指揮官の姿勢を危険視していた。自らの敗北体験を引きずるレーンは、実力以外に戦場で信じられるものはないと考えていたのである。
取り返しのつかない分岐点
結果として、この小規模な偵察出撃は、後に莫大な損害を招くことになる。もしケネスがギギの直感を真の予兆として受け取り、倍の戦力を投入していれば、マフティーはこの時点で殲滅され、アデレートの惨劇は防げた可能性があった。判断の遅れと過信が、取り返しのつかない分岐点を生んだのである。
静かな離陸
ケッサリアとグスタフ・カールは夜明けの空へ消え、ほどなくしてペーネロペーを含む主力部隊もアリス・スプリングを離陸し、アデレートへ向かった。運と判断が交錯する中で、事態はすでに破局へと歩み始めていた。
17 ウルル
聖地ウルルでの急変
アボリジニーの聖地ウルルとマウント・オルガは、夜明けの光に赤く染まり、荒野に孤絶した威容を示していた。その頂に設置された聴音機が異変を捉え、麓で潜伏していたハサウェイ・ノアたちは即座に叩き起こされる。敵接近の兆候を受け、モビルスーツは予定通りゴーラーへ移動、撤退行動が始まった。
撤退と迎撃の分岐
ローウェスト・ハインリッヒの豪胆な判断により、輸送トレーラー隊は西へ退避する。ハサウェイは時間を稼ぐため、ロケット・ランチャーをエアーズ・ロックとマウント・オルガの間に配置し、外部カメラで射角を取るゲリラ戦仕様の迎撃態勢を敷いた。
陽動と接近戦
敵影は二機のグスタフ・カールとベース・ジャバー。ハサウェイは機数を多く見せる陽動で進路を誘導し、砂塵とミノフスキー粒子の濃度上昇という不利を背に、前進して距離を詰める。爆発の連鎖を起点に肉薄し、ビーム・サーベルで一機の機能を断つことに成功した。
ケッサリアへの強襲
砂塵の陰から跳び出したガンダムは、よろめくケッサリアのデッキに着地。投降を勧告し、着陸地点の変更を指示してクルーの動揺を抑える。やがて機体は平原に降り、乗員は下ろされた。
思わぬ再会
ブリッジから現れたのはギギ・アンダルシアであった。彼女は自らを捕虜にするよう求め、ハサウェイは動揺を隠しつつ、ガンダムの掌へ導く。状況の理解が追いつかぬまま、彼は彼女を守る位置取りを選ぶ。
破壊と離脱
クルーの安全を確保した上で、ハサウェイはケッサリアのブリッジのみを精密射撃で破壊。致命的爆発を避けつつ機能を奪い、救援到来を示唆して戦場を離脱した。朝日に照らされるキノコ雲を背に、ガンダムは上昇し、ウルルの戦場は静けさを取り戻す。
余韻
聖地での一戦は、戦術の巧拙だけでなく、感情の交錯をも露わにした。ハサウェイにとって、それは勝利と同時に、選択の重さを刻む出来事となった。
18 ナロウ スペース
救出直後の混乱
低空でホバリングするガンダムのコックピットは強風に晒され、ハサウェイ・ノアは前部ハッチを開けてギギ・アンダルシアを機内へ引き寄せた。荒野を見下ろす恐怖の中、合図を合わせて身を投げ出す判断が功を奏し、ギギはハサウェイの胸元へと収まった。
密着が生む緊張
ギギを膝に乗せたまま速度を上げるハサウェイは、操縦と安全確保の両立を急ぎ、補助シートの展開を決める。一方のギギは冗談めいた言葉と素振りで距離を詰めつつも、内心の硬直を隠し切れず、二人の間には言葉にできない緊張が生まれていた。
言葉の齟齬
再会の喜びから発したハサウェイの率直な言葉は、ギギには軽率に響いた。彼女は強さを期待するがゆえに、安易な情に流れる態度を戒める。ハサウェイはその指摘を受け止め、自身の未熟さと立場の重さを自覚する。
沈黙と理解
補助シートに移ったギギは沈黙を選び、ハサウェイも操縦に集中する。やがて断片的な会話が再開され、キルケー部隊の認識や疑念が整理されていく。ギギは、ハサウェイがマフティーであることを知りつつも、断罪ではなく同情を示した。
役割の告白
ハサウェイは、組織の象徴としての役割を自らが担っている現実を明かす。ギギはそれを「損な役」と受け止め、過剰な正義の行使を危ぶむ。互いの立場は近いようで微妙にずれており、その差異が会話の端々に滲んだ。
世論と孤立
地球での惨事と宇宙側の無関心について、ハサウェイは冷静に語る。スペースノイドの世論が地球に届かない構造こそが、現状を固定化しているという見解であった。ギギはその言葉を静かに受け止め、視線を荒野へ戻す。
同質の悲しみ
変化の乏しい赤茶けた大地を低空で進むガンダムの密室で、二人は同質の悲しみを共有しながらも、完全には重なり合わない位置にいることを悟る。理解は進んだが、溝はなお残り、ナロウ・スペースの沈黙が続いた。
ガンダム シリーズ
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
小説



映画

機動戦士ガンダム



逆襲のシャア

その他フィクション

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